特許第6919306号(P6919306)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6919306
(24)【登録日】2021年7月28日
(45)【発行日】2021年8月18日
(54)【発明の名称】車両用ドア
(51)【国際特許分類】
   B60J 5/10 20060101AFI20210805BHJP
   B60J 5/04 20060101ALN20210805BHJP
【FI】
   B60J5/10 Z
   !B60J5/04 T
【請求項の数】3
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2017-85953(P2017-85953)
(22)【出願日】2017年4月25日
(65)【公開番号】特開2018-184048(P2018-184048A)
(43)【公開日】2018年11月22日
【審査請求日】2020年3月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002082
【氏名又は名称】スズキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124110
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 大介
(74)【代理人】
【識別番号】100120400
【弁理士】
【氏名又は名称】飛田 高介
(74)【代理人】
【識別番号】110000349
【氏名又は名称】特許業務法人 アクア特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】堀之内 義樹
【審査官】 浅野 麻木
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−144727(JP,A)
【文献】 特公昭44−011446(JP,B1)
【文献】 特開平08−230468(JP,A)
【文献】 実開昭56−143359(JP,U)
【文献】 実開昭57−144778(JP,U)
【文献】 特開2016−225341(JP,A)
【文献】 特開2007−176303(JP,A)
【文献】 実開昭57−019182(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60J 5/10
B60J 5/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車外に面するアウタパネルと、該アウタパネルの車内側に取り付けられたインナパネルとを備える車両用ドアにおいて、
前記アウタパネルは、所定の第1開口部を有し、
前記インナパネルは、当該車両用ドアに正対する方向から見て前記第1開口部と重なる位置に形成された第2開口部を有し、
当該車両用ドアはさらに、当該車両用ドアに正対する方向から見て前記第1開口部全体に重なるように該第1開口部と前記2開口部とを隔てる隔壁部を有する樹脂製のカバー部材を備え、
前記カバー部材はさらに、
前記隔壁部の下端に形成され該隔壁部とともに前記第2開口部の下縁を挟むことで前記インナパネルと係合する係合部と、
前記隔壁部に形成され前記係合部よりも上方で該隔壁部を所定の部材に固定する固定部と
前記隔壁部の下端近傍から車外側に隆起した隆起部であり、該隆起部の上縁は上方に凸の形状となっている隆起部とを有することを特徴とする車両用ドア。
【請求項2】
前記カバー部材はさらに、
前記隔壁部のうち、前記カバー部材を上下方向から見たときの外形の長手方向の中央の所定位置を頂点とする下方に向かって末広がりの連続した軌跡に沿って車外側に突出する中央リブと、
前記隔壁部の端部から前記中央にゆくほど下方に傾斜した軌跡に沿って車外側に突出する1つ以上の側部リブであり、上下方向から見て前記中央リブと重なる側部リブとを有することを特徴とする請求項1に記載の車両用ドア。
【請求項3】
前記カバー部材はさらに、
前記隔壁部の外縁に沿って車外側に張り出した外側フランジと、
前記隆起部と前記外側フランジとの間に形成され、前記隔壁部の下端まで連続する通路とを有することを特徴とする請求項1または2に記載の車両用ドア。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用ドアに関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車などの車両のドアは、その車外に面するアウタパネルと、アウタパネルの車内側に取り付けられたインナパネルとを備える。特許文献1には、車両用ドアとして後部ドア構造が記載されている。この後部ドア構造は、インナパネルと、アウタパネルと、インナパネルとアウタパネルとの間に取り付けられた補強部材とを備える。
【0003】
特許文献1のインナパネルは、後部ドアの外形に沿う形状の枠部と、枠部の下部側から両側部側に向かって延びる一対の補強部と、枠部の上部に設けられる窓枠部の下枠部分を形成する横ビームとを備える。補強部材は、横ビームとアウタパネルとの間に跨って取り付けられている。
【0004】
特許文献1の後部ドア構造では、横ビームとアウタパネルとの間に補強部材が跨って取り付けられているので、インナパネルの補強部と横ビームとで囲まれる領域の振動が抑制され、その結果、より確実に車両の静粛性を確保できる、としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−37161号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、アウタパネルの所定箇所には、キーシリンダやドアハンドルなどの部材を配置するための開口部が形成されている。そしてこれらの部材は、例えばインナパネルに形成された作業用の開口部を通して、作業者が車内側からインナパネルとアウタパネルとの間に手を入れるなどして取り付けられる。このため、インナパネルの開口部は、車両用ドアに正対する方向から見て、アウタパネルの開口部と重なっていることが多い。
【0007】
このように、車両用ドアにおいて、アウタパネルの開口部とインナパネルの開口部とが重なる位置に形成されていると、アウタパネルの開口部から浸入した雨水などの水が、インナパネルの開口部を通って車室内に浸入してしまう可能性がある。
【0008】
特許文献1に記載の後部ドア構造は、アウタパネルとインナパネルとの間を跨いで補強部材が取り付けられているものの、補強部材は、アウタパネルの開口部から浸入した水を受け止めるものではない。つまり、特許文献1では、アウタパネルの開口部とインナパネルの開口部とは重なっているものの、アウタパネルの開口部から浸入した水が車室内にまで浸入することを防止する点について何ら対策が講じられていない。
【0009】
本発明は、このような課題に鑑み、アウタパネルの開口部から浸入した水が車室内に浸入することを防止できる車両用ドアを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明にかかる車両用ドアの代表的な構成は、車外に面するアウタパネルと、アウタパネルの車内側に取り付けられたインナパネルとを備える車両用ドアにおいて、アウタパネルは、所定の第1開口部を有し、インナパネルは、車両用ドアに正対する方向から見て第1開口部と重なる位置に形成された第2開口部を有し、車両用ドアはさらに、車両用ドアに正対する方向から見て第1開口部全体に重なるように第1開口部と2開口部とを隔てる隔壁部を有する樹脂製のカバー部材を備え、カバー部材はさらに、隔壁部の下端に形成され隔壁部とともに第2開口部の下縁を挟むことでインナパネルと係合する係合部と、隔壁部に形成され係合部よりも上方で隔壁部を所定の部材に固定する固定部とを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、アウタパネルの開口部から浸入した水が車室内に浸入することを防止できる車両用ドアを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の実施例に係る車両用ドアを車外側から見た状態を示す図である。
図2図1(b)のカバー部材を示す斜視図である。
図3図1(a)の車両用バックドアを車内側から見た状態を示す図である。
図4図3の車両用バックドアのA−A断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値などは、発明の理解を容易とするための例示に過ぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0014】
本発明の一実施の形態に係る車両用ドアは、車外に面するアウタパネルと、アウタパネルの車内側に取り付けられたインナパネルとを備える車両用ドアにおいて、アウタパネルは、所定の第1開口部を有し、インナパネルは、車両用ドアに正対する方向から見て第1開口部と重なる位置に形成された第2開口部を有し、車両用ドアはさらに、車両用ドアに正対する方向から見て第1開口部全体に重なるように第1開口部と2開口部とを隔てる隔壁部を有する樹脂製のカバー部材を備え、カバー部材はさらに、隔壁部の下端に形成され隔壁部とともに第2開口部の下縁を挟むことでインナパネルと係合する係合部と、隔壁部に形成され係合部よりも上方で隔壁部を所定の部材に固定する固定部とを有することを特徴とする。
【0015】
上記構成では、車両用ドアのアウタパネルには、キーシリンダやドアハンドルなどの部材を配置するための第1開口部が形成されている。アウタパネルの第1開口部から雨水などの水が浸入した場合、浸入した水は、第1開口部全体を覆うカバー部材の隔壁部で受け止められる。受け止められた水は、隔壁部の下端の係合部まで流れて、さらにインナパネルの第2開口部の下縁に到達する。このように上記構成によれば、アウタパネルの第1開口部から浸入した水が、カバー部材により受け止められるため、車室内に水が浸入することを防止できる。
【0016】
また、カバー部材を組み付ける場合、まず、カバー部材の係合部でインナパネルを挟み込むことでカバー部材を立てた状態にする。つぎに、カバー部材を立てた状態で、係合部よりも上方に位置する固定部を所定の部材に固定する。所定の部材は、例えばインナパネル、アウタパネル、インナパネルとアウタパネルとの間に配置された補強部材のいずれかとしてよい。このように上記構成によれば、カバー部材の組付け時に、カバー部材の係合部でインナパネルを挟み込み、固定部を固定するだけでカバー部材の固定作業を完了できるため、作業性を向上できる。なおインナパネル、補強部材に固定部を固定する場合には、インナパネル、補強部材に孔を形成し、固定部としてクリップやボルトを用いてこれらを孔に挿入すればよい。またアウタパネルに固定部を固定する場合には、クリップやボルトではなく接着すれば、アウタパネルに孔を設ける必要がない。
【0017】
上記のカバー部材はさらに、隔壁部のうち、カバー部材を上下方向から見たときの外形の長手方向の中央の所定位置を頂点とする下方に向かって末広がりの連続した軌跡に沿って車外側に突出する中央リブと、隔壁部の端部から中央にゆくほど下方に傾斜した軌跡に沿って車外側に突出する1つ以上の側部リブであり、上下方向から見て中央リブと重なる側部リブとを有するとよい。なお隔壁部のうち、カバー部材を上下方向から見たときの外形の長手方向の中央とは、車両用ドアが車両用バックドアであれば、車幅方向の中央であり、車両の側部に配置される車両用ドアであれば、車両前後方向の中央である。
【0018】
これにより、アウタパネルの第1開口部から浸入した水は、カバー部材の隔壁部で受け止められ、隔壁部を伝って下方に流れる。このとき、中央リブが側部リブより上方に位置する場合には、浸水した水は、まず中央リブに沿って流れて減速される。中央リブにより減速された水は、中央リブの下方で上下に重なる位置にある側部リブに到達し、側部リブによってさらに減速され中央側に向かって流れて下方に流れ落ちる。なお側部リブが中央リブより上方に位置する場合には、浸水した水は、まず側部リブに沿って流れて減速され、つぎに中央リブに沿って流れて減速される。このように、浸入した水は、カバー部材によって受け止められ、さらに隔壁部の中央リブおよび側部リブによって減速されるので、水が跳ねることを抑制し、車室内に水が飛散することを防止できる。
【0019】
上記のカバー部材はさらに、隔壁部の下端近傍から車外側に隆起した隆起部であり、隆起部の上縁は上方に凸の形状となっている隆起部を有するとよい。これにより、アウタパネルの第1開口部から浸入した水は、カバー部材の隔壁部で受け止められ、さらに隔壁部の下端近傍に位置する隆起部の上縁に沿って下方に流れる。よって、カバー部材内への水溜まりを回避し、車両用ドアの開閉時に車室内に水が飛散することを防止できる。
【0020】
上記のカバー部材はさらに、隔壁部の外縁に沿って車外側に張り出した外側フランジと、隆起部と外側フランジとの間に形成され、隔壁部の下端まで連続する通路とを有するとよい。
【0021】
これにより、浸入した水は、カバー部材の隔壁部で受け止められ、隔壁部の隆起部の上縁に沿って下方に流れ、さらに隆起部と外側フランジとの間の通路を通って下方に流れる。このため、浸入した水は、隔壁部の隆起部の上縁から通路を通ってインナパネルとアウタパネルとの間に確実に導かれ、車室内に水が飛散することを防止できる。また、隔壁部の外縁に外側フランジを設けたので、カバー部材の剛性を高めることができる。このため、隔壁部に凹みなどが発生し難くなることから、カバー部材の組付け作業の作業性を向上させることができるし、カバー部材内に水が溜まり難いため、水を確実に排水できる。
【実施例】
【0022】
図1は、本発明の実施例に係る車両用ドアを車外側から見た状態を示す図である。図中では、車両用ドアとして、車両の車両後部に設置される車両用バックドア100を例示している。図1(a)は、車両用バックドア100を車両後側から見た状態を示している。図1(b)は、図1(a)の車両用バックドアからアウタパネル102を取外した状態を示している。
【0023】
車両用バックドア100は、車外に面するアウタパネル102と、アウタパネル102の車内側に取り付けられたインナパネル104(図1(b)参照)とを備える。アウタパネル102には、図1(a)に示すように、キーシリンダ106やドアハンドル108などの部品を配置するための第1開口部110a、110bがそれぞれ形成されている。
【0024】
インナパネル104には、図1(b)に示す三角形状の第2開口部112が形成されている。キーシリンダ106やドアハンドル108などの部品は、インナパネル104の第2開口部112を作業穴として、インナパネル104とアウタパネル102との間に作業者が第2開口部112を通して手を入れるなどして取り付けられる場合がある。このため、インナパネル104の第2開口部112は、車両用バックドア100に正対する方向(本実施例では車両前後方向)から見て、アウタパネル102の第1開口部110a、110bと重なる位置に形成されることがある。
【0025】
インナパネル104の車外側(ここでは車両後側)には、図1(b)に示すように、ビームパイプ114や、アウタリンフォース116が取り付けられている。ビームパイプ114は、第2開口部112よりも上方で車幅方向に延びていて、その両端118、120がインナパネル104に取り付けられ、インナパネル104を補強している。
【0026】
アウタリンフォース116は、補強部材であり、図1(b)に示すように、第2開口部112を跨ぐように車幅方向に延びていて、少なくともその両端122、124がインナパネル104に取り付けられている。さらに、インナパネル104のうち、第2開口部112の下縁126の車幅方向中央には、ドアラッチ128が固定されている。
【0027】
ところで車両用バックドア100では、アウタパネル102の第1開口部110a、110bとインナパネル104の第2開口部112とが重なる位置に形成されている。そのため、第1開口部110a、110bから浸入した雨水などの水が、第2開口部112を通って車室内にまで浸入する可能性がある。
【0028】
そこで本実施例では、アウタパネル102の第1開口部110a、110bとインナパネル104の第2開口部112とを隔てることで、第1開口部110a、110bから浸入した水が車室内に浸入することを防止する構成を採用した。
【0029】
車両用バックドア100はさらに、樹脂製のカバー部材130を備える。カバー部材130は、図1(b)に示すように上下方向に長手の形状となっていて、インナパネル104の第2開口部112の一部を塞いでいる。なおカバー部材130は、アウタリンフォース116よりも車内側(車両前側)に位置している。
【0030】
図2は、図1(b)のカバー部材130を示す斜視図である。なお図中、手前側が車両後側となる。カバー部材130は、第1開口部110a、110bと第2開口部112とを隔てる隔壁部132を有する。隔壁部132には、中央リブ134と、複数(ここでは4つ)の側部リブ136とが形成されている。
【0031】
中央リブ134は、車外側(車両後側)に突出した山型のリブである。中央リブ134は、隔壁部132の車幅方向中央の所定位置を頂点138とし、頂点から下方に向かって末広がりの連続した軌跡に沿って形成されている。
【0032】
側部リブ136は、車外側に突出したリブであり、隔壁部132の両側端140、142から車幅方向中央にゆくほど下方に傾斜した軌跡に沿ってそれぞれ互いに離間して形成されている。また側部リブ136は、中央リブ134の下方に位置し、少なくとも先端144が上下方向から見て中央リブ134と重なっている。
【0033】
カバー部材130はさらに、隆起部146と、外側フランジ148と、通路150、152とを有する。隆起部146は、側部リブ136よりも下方に位置していて、隔壁部132の下端154近傍から車外側に隆起した部位である。また隆起部146の上縁156は、上方に凸の形状となっている。
【0034】
外側フランジ148は、図示のように、隔壁部132の外縁に沿って車外側に張り出している。通路150、152は、隆起部146と外側フランジ148との間にそれぞれ形成された溝であり、隔壁部132の下端154まで連続している。また、隔壁部132と通路150、152の底部が同一の平面上に形成され連続している。
【0035】
さらにカバー部材130は、係合部158、160と、固定部162、164とを有する。係合部158、160は、隔壁部132の下端154で車幅方向に互いに離間して形成されていて、隔壁部132から車両前側に向かって屈曲した爪形状を有する。固定部162、164は、隔壁部132に形成され係合部158、160よりも上方に位置している。また固定部162、164は、外側フランジ148からさらに車外側に立設していて、クリップ166、168をそれぞれ保持している。
【0036】
ここで隔壁部132の下端154付近には、図2に示すように、係合部158、160の間に位置する隆起部146の一部170と、係合部158、160の車幅方向外側に位置する通路150、152とが存在している。
【0037】
図3は、図1(a)の車両用バックドア100を車内側から見た状態を示す図である。図4は、図3の車両用バックドア100のA−A断面図である。なお図3では、手前側が車両前側となる。図4では、左側が車両前側となる。
【0038】
カバー部材130では、図3に示すように、隔壁部132から車両前側に屈曲した係合部158、160が、隆起部146の一部170および通路150、152とともに、インナパネル104の第2開口部112の下縁126を挟んでいる。
【0039】
第2開口部112の下縁126の下方には、図4に示すように、ドアラッチ128が固定されている。図4では、第2開口部112の下縁126が、係合部158と隆起部146の一部170とで挟まれている様子が示されている。このようにして、カバー部材130は、係合部158、160を用いることで、インナパネル104の第2開口部112の下縁126と係合する。なお係合部158、160は、その車両前側に不図示のパッドを取り付けて、図示を省略するドアトリムに当接させるようにしてもよい。
【0040】
固定部162、164は、図3に示すように、係合部158、160よりも上方で隔壁部132をアウタリンフォース116に固定している。固定部162、164では、クリップ166、168(図2参照)をアウタリンフォース116の孔などに挿入することで、隔壁部132をアウタリンフォース116に固定する。
【0041】
車両用バックドア100にカバー部材130を組み付ける場合には、まず、カバー部材130の係合部158、160でインナパネル104を挟み込んでカバー部材130を立てた状態にする。つぎに、カバー部材130を立てた状態で、係合部158、160よりも上方に位置する固定部162、164をアウタリンフォース116に固定する。このように車両用バックドア100によれば、カバー部材130の組付け時に、係合部158、160でインナパネル104を挟み込み、固定部162、164を固定するだけでカバー部材130の固定作業を完了できるため、作業性を向上できる。
【0042】
またカバー部材130は、図3に示すように、隔壁部132の上端172がインナパネル104の第2開口部112の上縁174の下方に位置していて、第2開口部112の全体ではなく一部を塞いでいる。しかしカバー部材130は、図4に示すように、車両用バックドア100に正対する方向から見て、アウタパネル102の第1開口部110a、110bの全体に重なるように配置されている。このため、車両用バックドア100では、第1開口部110a、110bと第2開口部112とが重なる位置に形成されていても、カバー部材130の隔壁部132によって、第1開口部110a、110bと第2開口部112とを隔てることができる。
【0043】
ここで車両用バックドア100において、アウタパネル102の第1開口部110a、110bから雨水などの水が浸入した場合について説明する。第1開口部110a、110bから浸入した水は、第1開口部110a、110b全体を覆うカバー部材130の隔壁部132で受け止められ、隔壁部132を伝って下方に流れる。浸入した水が、例えば隔壁部132のうち中央リブ134よりも上方で受け止められると、まず中央リブ134に沿って流れて減速される。
【0044】
中央リブ134により減速された水は、さらに下方に流れて、中央リブ134の下方で上下に重なる位置にある側部リブ136に到達する。そして浸入した水は、側部リブ136によってさらに減速され、その先端144に向かって流れる。このように、浸入した水は、カバー部材130の隔壁部132によって受け止められ、中央リブ134および側部リブ136によって減速される。
【0045】
浸入した水は、中央リブ134および側部リブ136によって減速された後、側部リブ136よりも下方に位置し上方に凸の形状である隆起部146に到達する。隆起部146に到達した水は、隆起部146の上縁156に沿って下方に流れ、さらに隆起部146と外側フランジ148との間の通路150、152を通って下方に流れて、カバー部材130の外に排水される。また、隔壁部132が通路150、152に沿って車内側に凹んでいるため、浸入した水は、通路150、152を確実に通って排水される。
【0046】
本実施例に係る車両用バックドア100では、アウタパネル102の第1開口部110a、110bから浸入した水がカバー部材130により受け止められるため、車室内に浸入することを防止できる。また、カバー部材130で受け止められた水を、隔壁部132の中央リブ134や側部リブ136により減速できるため、水が跳ねることを抑制し、車室内に水が飛散することを防止できる。
【0047】
また、カバー部材130で受け止められた水が隔壁部132の隆起部146の上縁156に沿って下方に流れるため、カバー部材130内への水溜まりを回避し、車両用バックドア100の開閉時に車室内に水が飛散することを防止できる。さらに隆起部146の上縁156に沿って下方に流れた水は、隆起部146の上縁156から通路150、152を通って下方に流れる。このため、浸入した水をインナパネル104とアウタパネル102との間に確実に導いて、車室内に水が飛散することを防止できる。
【0048】
さらにカバー部材130では、隔壁部132の外縁に外側フランジ148を設けたので、剛性を高めることができる。このため、カバー部材130の隔壁部132に凹みなどが発生し難くなることから、カバー部材130の組付け作業の作業性を向上させることができるし、カバー部材130内に水が溜まり難いため、水を確実に排水できる。
【0049】
上記実施例では、固定部162、164のクリップ166、168をアウタリンフォース116の孔に挿入することで、固定部162、164をアウタリンフォース116に固定するようにしたが、これに限定されない。一例として、インナパネル104に孔を形成し、固定部162、164のクリップ166、168をこの孔に挿入することで、固定部162、164をインナパネル104に固定してもよい。また、固定部162、164をアウタパネル102に接着してもよい。このようにすれば、アウタパネル102に孔を設けることなく、固定部162、164をアウタパネル102に固定できる。さらに、アウタリンフォース116の孔やインナパネル104の孔に挿入することで固定部162、164をこれらに固定できるのであれば、固定部162、164では、クリップ166、168に代えてボルト等を用いてもよい。
【0050】
上記実施例では、側部リブ136が中央リブ134の下方で上下に重なる位置に形成されていたが、これに限定されず、側部リブ136が中央リブ134の上方に位置していてもよい。このような場合であっても、カバー部材130の隔壁部132で受け止められた水をこれらの各リブによって減速できるため、水が跳ねることを抑制できる。
【0051】
上記実施例では、車両用ドアとして車両用バックドア100を例示したが、これに限られず、車両の側面に配置される車両用ドアであってもよい。この場合には、アウタパネル102の第1開口部110a、110bとインナパネル104の第2開口部112は、車両用ドア100に正対する方向すなわち車幅方向から見て重なっていて、さらにカバー部材130の中央とは、車両前後方向の中央となる。
【0052】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明は、車両用ドアに利用することができる。
【符号の説明】
【0054】
100…車両用バックドア、102…アウタパネル、104…インナパネル、106…キーシリンダ、108…ドアハンドル、110a、110b…第1開口部、112…第2開口部、114…ビームパイプ、116…アウタリンフォース、118、120…ビームパイプの両端部、122、124…アウタリンフォースの両端部、126…第2開口部の下縁、128…ドアラッチ、130…カバー部材、132…隔壁部、134…中央リブ、136…側部リブ、138…中央リブの頂点、140、142…隔壁部の両側端、144…側部リブの先端、146…隆起部、148…外側フランジ、150、152…通路、154…隔壁部の下端、156…隆起部の上縁、158、160…係合部、162、164…固定部、166、168…クリップ、170…隆起部の一部、172…隔壁部の上端、174…第2開口部の上縁
図1
図2
図3
図4