【実施例】
【0022】
図1は、本発明の実施例に係る車両用ドアを車外側から見た状態を示す図である。図中では、車両用ドアとして、車両の車両後部に設置される車両用バックドア100を例示している。
図1(a)は、車両用バックドア100を車両後側から見た状態を示している。
図1(b)は、
図1(a)の車両用バックドアからアウタパネル102を取外した状態を示している。
【0023】
車両用バックドア100は、車外に面するアウタパネル102と、アウタパネル102の車内側に取り付けられたインナパネル104(
図1(b)参照)とを備える。アウタパネル102には、
図1(a)に示すように、キーシリンダ106やドアハンドル108などの部品を配置するための第1開口部110a、110bがそれぞれ形成されている。
【0024】
インナパネル104には、
図1(b)に示す三角形状の第2開口部112が形成されている。キーシリンダ106やドアハンドル108などの部品は、インナパネル104の第2開口部112を作業穴として、インナパネル104とアウタパネル102との間に作業者が第2開口部112を通して手を入れるなどして取り付けられる場合がある。このため、インナパネル104の第2開口部112は、車両用バックドア100に正対する方向(本実施例では車両前後方向)から見て、アウタパネル102の第1開口部110a、110bと重なる位置に形成されることがある。
【0025】
インナパネル104の車外側(ここでは車両後側)には、
図1(b)に示すように、ビームパイプ114や、アウタリンフォース116が取り付けられている。ビームパイプ114は、第2開口部112よりも上方で車幅方向に延びていて、その両端118、120がインナパネル104に取り付けられ、インナパネル104を補強している。
【0026】
アウタリンフォース116は、補強部材であり、
図1(b)に示すように、第2開口部112を跨ぐように車幅方向に延びていて、少なくともその両端122、124がインナパネル104に取り付けられている。さらに、インナパネル104のうち、第2開口部112の下縁126の車幅方向中央には、ドアラッチ128が固定されている。
【0027】
ところで車両用バックドア100では、アウタパネル102の第1開口部110a、110bとインナパネル104の第2開口部112とが重なる位置に形成されている。そのため、第1開口部110a、110bから浸入した雨水などの水が、第2開口部112を通って車室内にまで浸入する可能性がある。
【0028】
そこで本実施例では、アウタパネル102の第1開口部110a、110bとインナパネル104の第2開口部112とを隔てることで、第1開口部110a、110bから浸入した水が車室内に浸入することを防止する構成を採用した。
【0029】
車両用バックドア100はさらに、樹脂製のカバー部材130を備える。カバー部材130は、
図1(b)に示すように上下方向に長手の形状となっていて、インナパネル104の第2開口部112の一部を塞いでいる。なおカバー部材130は、アウタリンフォース116よりも車内側(車両前側)に位置している。
【0030】
図2は、
図1(b)のカバー部材130を示す斜視図である。なお図中、手前側が車両後側となる。カバー部材130は、第1開口部110a、110bと第2開口部112とを隔てる隔壁部132を有する。隔壁部132には、中央リブ134と、複数(ここでは4つ)の側部リブ136とが形成されている。
【0031】
中央リブ134は、車外側(車両後側)に突出した山型のリブである。中央リブ134は、隔壁部132の車幅方向中央の所定位置を頂点138とし、頂点から下方に向かって末広がりの連続した軌跡に沿って形成されている。
【0032】
側部リブ136は、車外側に突出したリブであり、隔壁部132の両側端140、142から車幅方向中央にゆくほど下方に傾斜した軌跡に沿ってそれぞれ互いに離間して形成されている。また側部リブ136は、中央リブ134の下方に位置し、少なくとも先端144が上下方向から見て中央リブ134と重なっている。
【0033】
カバー部材130はさらに、隆起部146と、外側フランジ148と、通路150、152とを有する。隆起部146は、側部リブ136よりも下方に位置していて、隔壁部132の下端154近傍から車外側に隆起した部位である。また隆起部146の上縁156は、上方に凸の形状となっている。
【0034】
外側フランジ148は、図示のように、隔壁部132の外縁に沿って車外側に張り出している。通路150、152は、隆起部146と外側フランジ148との間にそれぞれ形成された溝であり、隔壁部132の下端154まで連続している。また、隔壁部132と通路150、152の底部が同一の平面上に形成され連続している。
【0035】
さらにカバー部材130は、係合部158、160と、固定部162、164とを有する。係合部158、160は、隔壁部132の下端154で車幅方向に互いに離間して形成されていて、隔壁部132から車両前側に向かって屈曲した爪形状を有する。固定部162、164は、隔壁部132に形成され係合部158、160よりも上方に位置している。また固定部162、164は、外側フランジ148からさらに車外側に立設していて、クリップ166、168をそれぞれ保持している。
【0036】
ここで隔壁部132の下端154付近には、
図2に示すように、係合部158、160の間に位置する隆起部146の一部170と、係合部158、160の車幅方向外側に位置する通路150、152とが存在している。
【0037】
図3は、
図1(a)の車両用バックドア100を車内側から見た状態を示す図である。
図4は、
図3の車両用バックドア100のA−A断面図である。なお
図3では、手前側が車両前側となる。
図4では、左側が車両前側となる。
【0038】
カバー部材130では、
図3に示すように、隔壁部132から車両前側に屈曲した係合部158、160が、隆起部146の一部170および通路150、152とともに、インナパネル104の第2開口部112の下縁126を挟んでいる。
【0039】
第2開口部112の下縁126の下方には、
図4に示すように、ドアラッチ128が固定されている。
図4では、第2開口部112の下縁126が、係合部158と隆起部146の一部170とで挟まれている様子が示されている。このようにして、カバー部材130は、係合部158、160を用いることで、インナパネル104の第2開口部112の下縁126と係合する。なお係合部158、160は、その車両前側に不図示のパッドを取り付けて、図示を省略するドアトリムに当接させるようにしてもよい。
【0040】
固定部162、164は、
図3に示すように、係合部158、160よりも上方で隔壁部132をアウタリンフォース116に固定している。固定部162、164では、クリップ166、168(
図2参照)をアウタリンフォース116の孔などに挿入することで、隔壁部132をアウタリンフォース116に固定する。
【0041】
車両用バックドア100にカバー部材130を組み付ける場合には、まず、カバー部材130の係合部158、160でインナパネル104を挟み込んでカバー部材130を立てた状態にする。つぎに、カバー部材130を立てた状態で、係合部158、160よりも上方に位置する固定部162、164をアウタリンフォース116に固定する。このように車両用バックドア100によれば、カバー部材130の組付け時に、係合部158、160でインナパネル104を挟み込み、固定部162、164を固定するだけでカバー部材130の固定作業を完了できるため、作業性を向上できる。
【0042】
またカバー部材130は、
図3に示すように、隔壁部132の上端172がインナパネル104の第2開口部112の上縁174の下方に位置していて、第2開口部112の全体ではなく一部を塞いでいる。しかしカバー部材130は、
図4に示すように、車両用バックドア100に正対する方向から見て、アウタパネル102の第1開口部110a、110bの全体に重なるように配置されている。このため、車両用バックドア100では、第1開口部110a、110bと第2開口部112とが重なる位置に形成されていても、カバー部材130の隔壁部132によって、第1開口部110a、110bと第2開口部112とを隔てることができる。
【0043】
ここで車両用バックドア100において、アウタパネル102の第1開口部110a、110bから雨水などの水が浸入した場合について説明する。第1開口部110a、110bから浸入した水は、第1開口部110a、110b全体を覆うカバー部材130の隔壁部132で受け止められ、隔壁部132を伝って下方に流れる。浸入した水が、例えば隔壁部132のうち中央リブ134よりも上方で受け止められると、まず中央リブ134に沿って流れて減速される。
【0044】
中央リブ134により減速された水は、さらに下方に流れて、中央リブ134の下方で上下に重なる位置にある側部リブ136に到達する。そして浸入した水は、側部リブ136によってさらに減速され、その先端144に向かって流れる。このように、浸入した水は、カバー部材130の隔壁部132によって受け止められ、中央リブ134および側部リブ136によって減速される。
【0045】
浸入した水は、中央リブ134および側部リブ136によって減速された後、側部リブ136よりも下方に位置し上方に凸の形状である隆起部146に到達する。隆起部146に到達した水は、隆起部146の上縁156に沿って下方に流れ、さらに隆起部146と外側フランジ148との間の通路150、152を通って下方に流れて、カバー部材130の外に排水される。また、隔壁部132が通路150、152に沿って車内側に凹んでいるため、浸入した水は、通路150、152を確実に通って排水される。
【0046】
本実施例に係る車両用バックドア100では、アウタパネル102の第1開口部110a、110bから浸入した水がカバー部材130により受け止められるため、車室内に浸入することを防止できる。また、カバー部材130で受け止められた水を、隔壁部132の中央リブ134や側部リブ136により減速できるため、水が跳ねることを抑制し、車室内に水が飛散することを防止できる。
【0047】
また、カバー部材130で受け止められた水が隔壁部132の隆起部146の上縁156に沿って下方に流れるため、カバー部材130内への水溜まりを回避し、車両用バックドア100の開閉時に車室内に水が飛散することを防止できる。さらに隆起部146の上縁156に沿って下方に流れた水は、隆起部146の上縁156から通路150、152を通って下方に流れる。このため、浸入した水をインナパネル104とアウタパネル102との間に確実に導いて、車室内に水が飛散することを防止できる。
【0048】
さらにカバー部材130では、隔壁部132の外縁に外側フランジ148を設けたので、剛性を高めることができる。このため、カバー部材130の隔壁部132に凹みなどが発生し難くなることから、カバー部材130の組付け作業の作業性を向上させることができるし、カバー部材130内に水が溜まり難いため、水を確実に排水できる。
【0049】
上記実施例では、固定部162、164のクリップ166、168をアウタリンフォース116の孔に挿入することで、固定部162、164をアウタリンフォース116に固定するようにしたが、これに限定されない。一例として、インナパネル104に孔を形成し、固定部162、164のクリップ166、168をこの孔に挿入することで、固定部162、164をインナパネル104に固定してもよい。また、固定部162、164をアウタパネル102に接着してもよい。このようにすれば、アウタパネル102に孔を設けることなく、固定部162、164をアウタパネル102に固定できる。さらに、アウタリンフォース116の孔やインナパネル104の孔に挿入することで固定部162、164をこれらに固定できるのであれば、固定部162、164では、クリップ166、168に代えてボルト等を用いてもよい。
【0050】
上記実施例では、側部リブ136が中央リブ134の下方で上下に重なる位置に形成されていたが、これに限定されず、側部リブ136が中央リブ134の上方に位置していてもよい。このような場合であっても、カバー部材130の隔壁部132で受け止められた水をこれらの各リブによって減速できるため、水が跳ねることを抑制できる。
【0051】
上記実施例では、車両用ドアとして車両用バックドア100を例示したが、これに限られず、車両の側面に配置される車両用ドアであってもよい。この場合には、アウタパネル102の第1開口部110a、110bとインナパネル104の第2開口部112は、車両用ドア100に正対する方向すなわち車幅方向から見て重なっていて、さらにカバー部材130の中央とは、車両前後方向の中央となる。
【0052】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。