(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、搬送ベルトは、搬送方向と交差する交差方向における一方側と他方側と
で、搬送ベルトの移動量に差が生じる場合がある。特許文献1に記載の印刷装置では、搬
送ベルトの移動量を検出する移動量検出部は、交差方向における一方側と他方側とのうち
のどちらか片方にしか設けられていない。このような構成では、交差方向における搬送ベ
ルトの一方側と他方側とで生じた移動量の差を検出することが困難であった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の
形態又は適用例として実現することが可能である。
【0006】
[適用例1]本適用例に係る印刷装置は、媒体に印刷を行う印刷部と、回転移動するこ
とで前記媒体を搬送方向に搬送する搬送ベルトと、前記搬送方向に沿って設けられている
第1スケール部及び第2スケール部と、前記第1スケール部に対して相対的な移動量を検
出する第1検出部と、前記第2スケール部に対して相対的な移動量を検出する第2検出部
と、前記第1スケール部又は前記第1検出部と一体に移動するように構成され、前記搬送
方向と交差する交差方向において前記搬送ベルトの中心よりも一方側を把持して前記搬送
ベルトと共に移動する第1把持部と、前記第2スケール部又は前記第2検出部と一体に移
動するように構成され、前記交差方向において前記搬送ベルトの中心よりも他方側を把持
して前記搬送ベルトと共に移動する第2把持部と、前記第1検出部の検出する第1移動量
と前記第2検出部の検出する第2移動量との差が基準値以上であるか否かを判断する制御
部と、を備えていることを特徴とする。
【0007】
本適用例によれば、印刷装置は、搬送方向に沿って設けられた第1スケール部に対して
相対的な移動量を検出する第1検出部と、第1スケール部又は第1検出部と一体で移動し
、搬送方向と交差する交差方向において搬送ベルトの中心よりも一方側を把持する第1把
持部と、を備えている。すなわち、第1検出部は、搬送ベルトの一方側における移動量(
第1移動量)を検出する。また、印刷装置は、搬送方向に沿って設けられた第2スケール
部に対して相対的な移動量を検出する第2検出部と、第2スケール部又は第2検出部と一
体で移動し、搬送方向と交差する交差方向において搬送ベルトの中心よりも他方側を把持
する第2把持部と、を備えている。すなわち、第2検出部は、搬送ベルトの他方側におけ
る移動量(第2移動量)を検出する。そして、印刷装置は、第1移動量と第2移動量との
差が基準値以上であるか否かを判断する制御部を備えている。これにより、印刷装置は、
搬送ベルトの一方側の移動量と他方側の移動量とで基準値以上の差が生じたことを検出す
ることができる。
【0008】
[適用例2]上記適用例に記載の印刷装置において、前記制御部は、前記第1移動量と
前記第2移動量とのうちの一方の移動量に基づいて前記搬送ベルトの前記回転移動を制御
することが好ましい。
【0009】
本適用例によれば、制御部は、第1移動量と第2移動量とのうちの一方の移動量に基づ
いて搬送ベルトの回転移動を制御するので、搬送ベルトの制御が複雑化することを抑制す
ることができる。
【0010】
[適用例3]上記適用例に記載の印刷装置において、前記制御部は、前記第1移動量と
前記第2移動量とを平均した平均移動量に基づいて前記搬送ベルトの前記回転移動を制御
することが好ましい。
【0011】
本適用例によれば、制御部は、第1移動量と第2移動量とを平均した平均移動量に基づ
いて搬送ベルトの回転移動を制御するので、搬送ベルトの一方側と他方側との移動量の差
が大きくなることを抑制することができる。
【0012】
[適用例4]上記適用例に記載の印刷装置において、前記制御部は、前記第1移動量と
前記第2移動量との差が基準値以上であると判断した場合に、前記印刷部による前記媒体
への印刷を停止することが好ましい。
【0013】
本適用例によれば、制御部は、第1移動量と第2移動量との差が基準値以上であると判
断した場合に、印刷部による媒体への印刷を停止するので、媒体に画像品質の低下した画
像が印刷されることを事前に防ぐことができる。
【0014】
[適用例5]上記適用例に記載の印刷装置において、前記制御部は、要求される画像品
質の異なる複数の印刷モードからいずれかの印刷モードの入力を受け付け、受け付けた印
刷モードの画像品質に応じた基準値を用いることが好ましい。
【0015】
本適用例によれば、制御部は、印刷モードの画像品質に応じた基準値を用いるので、好
適に媒体に印刷を行うことができる。
【0016】
[適用例6]上記適用例に記載の印刷装置において、前記制御部は、印刷する画像の種
類の入力を受け付け、受け付けた画像の種類に応じた基準値を用いることが好ましい。
【0017】
本適用例によれば、制御部は、印刷する画像の種類に応じた基準値を用いるので、好適
に媒体に印刷を行うことができる。
【0018】
[適用例7]上記適用例に記載の印刷装置において、前記搬送ベルトが前記媒体を搬送
した回数をnとした時、前記制御部は、前記第1移動量と前記第2移動量との差を算出し
第n移動量差として記憶し、前記第n移動量差を記憶した時より前に算出させた前記第1
移動量と前記第2移動量との差を第n−1移動量差として記憶させていることが好ましい
。
【0019】
本適用例によれば、印刷装置は、第1移動量と第2移動量との差を時系列で第n−1移
動量差、第n移動量差として記憶するので、搬送ベルトの一方側と他方側との移動量の差
の経時的な変化を確認することができる。
【0020】
[適用例8]上記適用例に記載の印刷装置において、前記制御部は、前記第n移動量差
に対する第n−1移動量差の変化量が基準値以上であると判断した場合に、警告動作を行
うことが好ましい。
【0021】
本適用例によれば、制御部は、第n移動量差に対する第n−1移動量差の変化量が基準
値以上の場合、警告動作を行う。第1移動量差と第2移動量差とを比較することで第1移
動量と第2移動量との差が大きくなることを予測することが可能になるので、事前に装置
の異常をユーザーに知らせることができる。
【0022】
[適用例9]上記適用例に記載の印刷装置において、前記制御部は、前記基準値として
、第1基準値と、前記第1基準値よりも低い値の第2基準値とを用いることが可能であり
、前記第1移動量と前記第2移動量との差が、前記第1基準値未満、前記第2基準値以上
であると判断した場合に、予備警告動作を行うことが好ましい。
【0023】
本適用例によれば、制御部は、第1基準値と第2基準値との2つの基準値を用いて第1
移動量と第2移動量との差が、基準値以上であるか否かを判断する。そして、制御部は、
第1移動量と第2移動量との差が、第1基準値未満、第2基準値以上であると判断した場
合に、予備警告動作を行う。例えば、第1基準値を第1移動量と第2移動量との差の許容
限界に設定し、第2基準値を第1基準値より低い値に設定することで、第1移動量と第2
移動量との差が許容限界に近づいていることをユーザーに知らせることができる。
【0024】
[適用例10]上記適用例に記載の印刷装置は、前記搬送ベルトを回転移動させる駆動
部を備え、前記駆動部は、前記印刷部よりも前記搬送方向の下流側に設けられ、前記第1
把持部及び前記第2把持部は、前記印刷部よりも前記搬送方向の上流側で前記搬送ベルト
を把持することが好ましい。
【0025】
本適用例によれば、搬送ベルトの駆動部は印刷部よりも下流側に設けられ、第1、第2
把持部は印刷部より上流側で搬送ベルトを把持する。搬送ベルトを把持した第1、第2把
持部を搬送ベルトと共に搬送方向に移動させるために駆動部を回転駆動した場合、搬送ベ
ルトの回転移動方向において駆動部より搬送方向の下流側、かつ、第1、第2把持部より
搬送方向の上流側の部分の搬送ベルトは緩みやすい。駆動部を印刷部よりも下流側、第1
、第2把持部を印刷部より上流側に設けることで、搬送ベルトに緩みが生じやすい範囲を
短くすることができるので、第1移動量と第2移動量との差を生じ難くさせることができ
る。
【0026】
[適用例11]本適用例に係る印刷装置のベルト移動量差検出方法は、媒体に印刷を行
う印刷部と、回転移動することで前記媒体を搬送方向に搬送する搬送ベルトと、前記搬送
方向に沿って設けられている第1スケール部及び第2スケール部と、前記第1スケール部
に対して相対的な移動量を検出する第1検出部と、前記第2スケール部に対して相対的な
移動量を検出する第2検出部と、前記第1スケール部又は前記第1検出部と一体に移動す
るように構成され、前記搬送方向と交差する交差方向において前記搬送ベルトの中心より
も一方側を把持して前記搬送ベルトと共に移動する第1把持部と、前記第2スケール部又
は前記第2検出部と一体に移動するように構成され、前記交差方向において前記搬送ベル
トの中心よりも他方側を把持して前記搬送ベルトと共に移動する第2把持部と、を備えた
印刷装置のベルト移動量差検出方法であって、前記第1検出部の検出する第1移動量と前
記第2検出部の検出する第2移動量との差が基準値以上であるか否かを判断する判断工程
を含んでいることを特徴とする。
【0027】
本適用例によれば、印刷装置のベルト移動量差検出方法は、第1検出部の検出する第1
移動量と第2検出部の検出する第2移動量との差が基準値以上であるか否かを判断する判
断工程を含んでいる。第1移動量は、搬送方向に沿って設けられた第1スケール部と第1
検出部との相対的な移動量である。第1スケール部又は第1検出部は、搬送方向と交差す
る交差方向において搬送ベルトの中心よりも一方側を把持する第1把持部と一体で移動す
るので、第1検出部は、搬送ベルトの一方側における移動量を検出する。第2移動量は、
搬送方向に沿って設けられた第2スケール部と第2検出部との相対的な移動量である。第
2スケール部又は第2検出部は、交差方向において搬送ベルトの中心よりも他方側を把持
する第2把持部と一体で移動するので、第2検出部は、搬送ベルトの他方側における移動
量を検出する。したがって、ベルト移動量差検出方法によれば、搬送ベルトの一方側の移
動量(搬送量)と他方側の移動量(搬送量)とで基準値以上の差が生じたことを検出する
ことができる。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。なお、以下の各図におい
ては、各層や各部材を認識可能な程度の大きさにするため、各層や各部材の尺度を実際と
は異ならせている。
また、
図1から
図4では、説明の便宜上、互いに直交する三軸として、X軸、Y軸及び
Z軸を図示しており、軸方向を図示した矢印の先端側を「+側」、基端側を「−側」とし
ている。X軸に平行な方向を「X軸方向」、Y軸に平行な方向を「Y軸方向」、Z軸に平
行な方向を「Z軸方向」という。
【0030】
(実施形態)
<印刷装置の概略構成>
図1は、実施形態に係る印刷装置の概略全体構成を示す模式図である。
図2は、印刷装
置の要部を示す平面図である。まず、本実施形態に係る印刷装置100の概略構成につい
て
図1及び
図2を参照して説明する。なお、本実施形態では、媒体95に画像などを形成
することで媒体95に捺染を行うインクジェット式の印刷装置100を例に上げて説明す
る。
【0031】
図1に示すように、印刷装置100は、媒体搬送部20、媒体密着部60、印刷部40
、乾燥ユニット27、第1ベルト移動量計測部70a、第2ベルト移動量計測部70b、
洗浄ユニット50などを備えている。そして、これらの各部を制御する制御部1を有して
いる。印刷装置100の各部は、フレーム部90に取り付けられている。
【0032】
媒体搬送部20は、媒体95を搬送方向に搬送するものである。媒体搬送部20は、媒
体供給部10、搬送ローラー22、搬送ベルト23、ベルト回転ローラー24、ベルト駆
動ローラー25、搬送ローラー26,28、及び媒体回収部30を備えている。まず、媒
体供給部10から媒体回収部30に至る媒体95の搬送経路について説明する。なお、本
実施形態では、重力に沿う方向をZ軸とし、印刷部40において媒体95が搬送される方
向をX軸とし、Z軸及びX軸の双方と交差する媒体95の幅方向をY軸とする。また、媒
体95の搬送方向又は搬送ベルト23の移動方向に沿う位置関係を「上流側」「下流側」
ともいう。
【0033】
媒体供給部10は、画像を形成させる媒体95を印刷部40側に供給するものである。
媒体95としては、例えば、綿、ウール、ポリエステルなどの布帛が用いられる。媒体供
給部10は、供給軸部11及び軸受部12を有している。供給軸部11は、円筒状又は円
柱状に形成されており、円周方向に回転可能に設けられている。供給軸部11には、帯状
の媒体95がロール状に巻かれている。供給軸部11は、軸受部12に対して着脱可能に
取り付けられている。これにより、予め供給軸部11に巻かれた状態の媒体95は、供給
軸部11と共に軸受部12に取り付けできるようになっている。
【0034】
軸受部12は、供給軸部11の軸方向の両端を回転可能に支持している。媒体供給部1
0は、供給軸部11を回転駆動させる回転駆動部(図示せず)を有している。回転駆動部
は、媒体95が送り出される方向に供給軸部11を回転させる。回転駆動部の動作は、制
御部1によって制御される。搬送ローラー22は、媒体95を媒体供給部10から搬送ベ
ルト23まで中継する。
【0035】
搬送ベルト23は、搬送ベルト23を回転させる少なくとも2つのローラー間に保持さ
れ、搬送ベルト23が回転移動することで媒体95を搬送方向(+X軸方向)に搬送させ
る。詳しくは、搬送ベルト23は、帯状のベルトの両端部が接続されて無端状に形成され
、ベルト回転ローラー24及びベルト駆動ローラー25の2つのローラー間に掛けられて
いる。搬送ベルト23は、ベルト回転ローラー24とベルト駆動ローラー25との間の部
分が水平になるように、所定の張力が作用した状態で保持されている。搬送ベルト23の
表面(支持面)23aには、媒体95を粘着させる粘着層29が設けられている。搬送ベ
ルト23は、搬送ローラー22から供給され、後述する媒体密着部60で粘着層29に密
着された媒体95を支持(保持)している。これにより、伸縮性のある布帛などを媒体9
5として扱うことができる。
【0036】
ベルト回転ローラー24及びベルト駆動ローラー25は、搬送ベルト23の内周面23
bを支持する。なお、ベルト回転ローラー24とベルト駆動ローラー25との間に、搬送
ベルト23を支持するローラーなどの支持部が設けられた構成であってもよい。
【0037】
ベルト駆動ローラー25は、搬送ベルト23を回転移動させる駆動部であり、ベルト駆
動ローラー25を回転駆動させるモーター(図示せず)を有している。駆動部としてのベ
ルト駆動ローラー25は、媒体95の搬送方向に対して印刷部40よりも下流側に設けら
れ、ベルト回転ローラー24は、印刷部40よりも上流側に設けられている。ベルト駆動
ローラー25が回転駆動されるとベルト駆動ローラー25の回転に伴って搬送ベルト23
が回転し、搬送ベルト23の回転によりベルト回転ローラー24が回転する。搬送ベルト
23の回転により、搬送ベルト23に支持された媒体95が搬送方向(+X軸方向)に搬
送され、後述する印刷部40で媒体95に画像が形成される。
【0038】
本実施形態では、搬送ベルト23の表面23aが印刷部40と対向する側(+Z軸側)
において媒体95が支持され、媒体95が搬送ベルト23と共にベルト回転ローラー24
側からベルト駆動ローラー25側に搬送される。また、搬送ベルト23の表面23aが洗
浄ユニット50と対向する側(−Z軸側)においては、搬送ベルト23のみがベルト駆動
ローラー25側からベルト回転ローラー24側に移動する。なお、搬送ベルト23は、媒
体95を密着させる粘着層29を備えているものと説明したが、これに限定するものでは
ない。例えば、搬送ベルトは、静電気で媒体をベルトに吸着させる静電吸着式のベルトで
あってもよい。
【0039】
搬送ローラー26は、画像の形成された媒体95を搬送ベルト23の粘着層29から剥
離させる。搬送ローラー26,28は、媒体95を搬送ベルト23から媒体回収部30ま
で中継する。
【0040】
媒体回収部30は、媒体搬送部20によって搬送された媒体95を回収する。媒体回収
部30は、巻取り軸部31及び軸受部32を有している。巻取り軸部31は、円筒状又は
円柱状に形成されており、円周方向に回転可能に設けられている。巻取り軸部31には、
帯状の媒体95がロール状に巻き取られる。巻取り軸部31は、軸受部32に対して着脱
可能に取り付けられている。これにより、巻取り軸部31に巻き取られた状態の媒体95
は、巻取り軸部31と共に取り外せるようになっている。
【0041】
軸受部32は、巻取り軸部31の軸線方向の両端を回転可能に支持している。媒体回収
部30は、巻取り軸部31を回転駆動させる回転駆動部(図示せず)を有している。回転
駆動部は、媒体95が巻き取られる方向に巻取り軸部31を回転させる。回転駆動部の動
作は、制御部1によって制御される。
【0042】
次に、媒体搬送部20に沿って設けられている媒体密着部60、第1ベルト移動量計測
部70a、第2ベルト移動量計測部70b、印刷部40、乾燥ユニット27及び洗浄ユニ
ット50の各部について説明する。
【0043】
媒体密着部60は、媒体95を搬送ベルト23に密着させるものである。媒体密着部6
0は、印刷部40より上流側(−X軸側)に設けられている。媒体密着部60は、押圧ロ
ーラー61、押圧ローラー駆動部62及びローラー支持部63を有している。押圧ローラ
ー61は、円筒状又は円柱状に形成されており、円周方向に回転可能に設けられている。
押圧ローラー61は、搬送方向に沿った方向に回転するように、軸線方向が搬送方向と交
差するように配置されている。ローラー支持部63は、搬送ベルト23を介して押圧ロー
ラー61と対向する搬送ベルト23の内周面23b側に設けられている。
【0044】
押圧ローラー駆動部62は、押圧ローラー61を鉛直方向の下方側(−Z軸側)に押圧
しながら搬送方向(+X軸方向)、及び搬送方向と逆向きの方向(−X軸方向)に押圧ロ
ーラー61を移動させる。搬送ベルト23に重ね合された媒体95は、押圧ローラー61
とローラー支持部63との間で搬送ベルト23に押し当てられる。これにより、搬送ベル
ト23の表面23aに設けられている粘着層29に媒体95を確実に粘着させることがで
き、搬送ベルト23上での媒体95の浮きの発生を防止することができる。
【0045】
第1ベルト移動量計測部70a及び第2ベルト移動量計測部70bは、搬送方向におい
て媒体密着部60と印刷部40との間に設けられている。第1ベルト移動量計測部70a
は、搬送方向と交差する交差方向(Y軸方向)において搬送ベルト23の中心よりも一方
側(+Y軸側)に設けられ、第2ベルト移動量計測部70bは、搬送方向と交差する方向
において搬送ベルト23の中心よりも他方側(−Y軸側)に設けられている。第1ベルト
移動量計測部70a及び第2ベルト移動量計測部70bの構成については、後で詳述する
。
【0046】
印刷部40は、搬送ベルト23の配置位置に対して上方(+Z軸側)に配置され、搬送
ベルト23の表面23a上に載置された媒体95に印刷を行うものである。印刷部40は
、ヘッドユニット42、ヘッドユニット42が搭載されるキャリッジ43、キャリッジ4
3を搬送方向と交差する媒体95の幅方向(Y軸方向)に移動させるキャリッジ移動部4
5などを有している。本実施形態のヘッドユニット42は、4つのサブユニット42aで
構成され、さらに、サブユニット42aには、搬送ベルト23に載置された媒体95に図
示しないインク供給部から供給されたインク(例えば、イエロー、シアン、マゼンタ、ブ
ラックなど)を液滴に吐出する複数の吐出ヘッド(図示せず)が備えられている。
【0047】
キャリッジ移動部45は、搬送ベルト23の上方(+Z軸側)に設けられている。キャ
リッジ移動部45は、Y軸方向に沿って延在する一対のガイドレール45a,45bを有
している。ガイドレール45a,45bは、搬送ベルト23の外側に垂直に設けられてい
るフレーム部90a,90bの間に架け渡されている。ヘッドユニット42は、キャリッ
ジ43と共にY軸方向に沿って往復移動可能な状態でガイドレール45a,45bに支持
されている。
【0048】
キャリッジ移動部45は、図示しない移動機構及び動力源を備えている。移動機構とし
ては、例えば、ボールねじとボールナットとを組み合わせた機構や、リニアガイド機構な
どを採用することができる。さらに、キャリッジ移動部45は、キャリッジ43をガイド
レール45a,45bに沿って移動させるための動力源として、モーター(図示せず)を
有している。モーターとしては、ステッピングモーター、サーボモーター、リニアモータ
ーなどの種々のモーターを採用することができる。制御部1の制御によりモーターが駆動
されると、ヘッドユニット42は、キャリッジ43と共にY軸方向に沿って移動する。
【0049】
乾燥ユニット27は、搬送ローラー26と搬送ローラー28との間に設けられている。
乾燥ユニット27は、媒体95上に吐出されたインクを乾燥するものであり、乾燥ユニッ
ト27には、例えば、IRヒーターが含まれ、IRヒーターを駆動させることにより媒体
95上に吐出されたインクを短時間で乾燥させることができる。これにより、画像などの
形成された帯状の媒体95を巻取り軸部31に巻き取ることができる。
【0050】
洗浄ユニット50は、X軸方向においてベルト回転ローラー24とベルト駆動ローラー
25の間に配置されている。洗浄ユニット50は、洗浄部51、押圧部52及び移動部5
3を有している。移動部53は、床面99に沿って洗浄ユニット50を一体的に移動させ
て所定の位置に固定させる。
【0051】
押圧部52は、例えば、エアーシリンダー56とボールブッシュ57とで構成された昇
降装置であり、その上部に備えられている洗浄部51を搬送ベルト23の表面23aに当
接させるものである。洗浄部51は、ベルト回転ローラー24とベルト駆動ローラー25
との間で所定の張力が作用した状態で掛けられ、ベルト駆動ローラー25からベルト回転
ローラー24に向かって移動する搬送ベルト23の表面(支持面)23aを下方(−Z軸
方向)から洗浄する。
【0052】
洗浄部51は、洗浄槽54、洗浄ローラー58及びブレード55を有している。洗浄槽
54は、搬送ベルト23の表面23aに付着したインクや異物の洗浄に用いる洗浄液を貯
留する槽であり、洗浄ローラー58及びブレード55は洗浄槽54の内側に設けられてい
る。洗浄液としては、例えば、水や水溶性溶剤(アルコール水溶液など)を用いることが
でき、必要に応じて界面活性剤や消泡剤を添加させてもよい。
【0053】
洗浄ローラー58が回転すると、洗浄液が搬送ベルト23の表面23aに供給されると
共に、洗浄ローラー58と搬送ベルト23とが摺動する。これにより、搬送ベルト23に
付着したインクや媒体95としての布帛の繊維などが洗浄ローラー58で取り除かれる。
【0054】
ブレード55は、例えば、シリコンゴムなどの可撓性の材料で形成することができる。
ブレード55は、搬送ベルト23の搬送方向において洗浄ローラー58よりも下流側に設
けられている。搬送ベルト23とブレード55とが摺動することにより、搬送ベルト23
の表面23aに残っている洗浄液が除去される。
【0055】
図3は、第1ベルト移動量計測部の構成を示す斜視図である。
図4は、
図2におけるA
−A線での断面図である。なお、第2ベルト移動量計測部70bは、搬送方向と交差する
交差方向における搬送ベルト23の中心に関して、第1ベルト移動量計測部70aと対称
に構成されているので、その斜視図の図示は省略する。
まず、
図2から
図4を参照して第1ベルト移動量計測部70aの構成について説明する
。
【0056】
第1ベルト移動量計測部70aは、印刷部40の上流側に設けられ、搬送ベルト23の
+Y軸側に位置している。
第1ベルト移動量計測部70aは、搬送方向(X軸方向)に沿って設けられている第1
スケール部75aと、第1スケール部75aに対して相対的な移動量を検出する第1検出
部85aと、第1検出部85aと一体に移動するように構成され、交差方向(Y軸方向)
において搬送ベルト23の中心よりも一方側(+Y軸側)を把持して搬送ベルト23と共
に移動する第1把持部80aと、を有している。
【0057】
詳しくは、第1ベルト移動量計測部70aは、媒体95の搬送方向(X軸方向)に沿っ
て長い直方体状の基台71、基台71の上方に設けられているスケール貼付け部73、基
台71上に設けられX軸方向に延在するガイドレール72に沿って移動する第1把持部8
0a、第1把持部80aを搬送方向の上流側に移動させる戻し部76などを含んでいる。
【0058】
スケール貼付け部73は、基台71の長手方向(X軸方向)の両端に垂直に設けられて
いる柱部73a,73bの間に架け渡されている。第1ベルト移動量計測部70aにおけ
るスケール貼付け部73は、−Y軸方向に庇状に突出する突出部を有し、その一部が平面
視にて搬送ベルト23と重なっている。
第1スケール部75aは、スケール貼付け部73の突出部の下面(−Z軸側の面)に備
えられている。本実施形態の第1スケール部75aには、極性の異なる磁石が交互に配置
された磁気スケールが用いられている。
【0059】
第1把持部80aは、把持基板81、ガイドブロック82、第1検出部85aなどを含
んでいる。把持基板81は、搬送ベルト23の幅方向(Y軸方向)に長い長方形の板状を
なしている。把持基板81の−Y軸側の端部81cは、平面視にてスケール貼付け部73
の−Y軸側の側壁73cと略一致し、搬送ベルト23と重なっている。把持基板81の+
Y軸側の端部81dは、平面視にて基台71の+Y軸側の側壁71dよりも+Y軸方向に
突出している。把持基板81の底面(−Z軸側の面)には、ガイドブロック82が設けら
れている。ガイドブロック82には、基台71からX軸方向に沿って凸状に突出するガイ
ドレール72の形状に倣った、−Z軸側に開口する凹状の溝が形成されている。ガイドブ
ロック82とガイドレール72とが係合することで、第1把持部80aは搬送方向(X軸
方向)に沿って往復移動可能に構成されている。
【0060】
把持基板81の上面(+Z軸側の面)には、弾性部材83が設けられている。弾性部材
83は、把持基板81よりも短い長方形の板状をなしている。弾性部材83の+Y軸側の
端部83dは、把持基板81の略中央で把持基板81と接合されている。弾性部材83の
−Y軸側の端部83cは、平面視にて把持基板81の−Y軸側の端部81cと略一致して
いる。把持基板81の端部81cと弾性部材83の端部83cとは、搬送ベルト23の厚
さよりも僅かに広い隙間を有している。第1把持部80aは、弾性部材83の弾性力によ
って把持基板81の端部81cと弾性部材83の端部83cとの間で搬送ベルト23を挟
持可能に構成されている。弾性部材83の材料としては、炭素繊維などを使用することが
できる。
【0061】
第1把持部80aは、平面視にて搬送ベルト23と重ならない弾性部材83の上面(+
Z軸側の面)に強磁性体84を有している。強磁性体84としては、鉄、ニッケル、コバ
ルトなどを用いることができる。
【0062】
また、第1把持部80aの把持基板81の下面であって強磁性体84と対向する位置に
は、第1把持部80aを把持状態と非把持状態とに切り替える切替え部74が設けられて
いる。切替え部74は、電磁石を含んでおり、電磁石に電流が流れる場合に生じる磁力に
よって強磁性体84が切替え部74(電磁石)に引き寄せられる。この時、弾性部材83
が把持基板81側に弾性変形し、その弾性力によって搬送ベルト23が把持基板81と弾
性部材83との間に把持される把持状態になる。また、電磁石に流れる電流が遮断された
場合、第1把持部80aは把持状態から非把持状態になる。
【0063】
第1検出部85aは、弾性部材83の端部83cの上面であって、第1スケール部75
aと対向する位置に設けられている。第1検出部85aは、磁界の変化を電気信号に変化
する素子(例えば、ホール素子やMR素子など)を備えており、第1スケール部75aに
対して相対的な移動量を検出する。本実施形態の第1検出部85aは、第1スケール部7
5aに近接配置させるための台座の上に設けられている。第1検出部85aは、第1把持
部80aと一体に移動するように構成されている。
【0064】
戻し部76は、非把持状態の第1把持部80aを搬送方向と逆方向(−X軸方向)に移
動させるものである。戻し部76は、移動レバー78と、移動レバー78を搬送方向に沿
って往復移動させるレバー移動部77とを含んでいる。レバー移動部77は、搬送方向に
長い直方体形状をなし、基台71の+Y軸側の側壁71dに固定されている。レバー移動
部77の上面(+Z軸側の面)及び下面(−Z軸側の面)には、搬送方向に延びる凹状の
ガイド溝が形成されている。
【0065】
移動レバー78は、ガイド溝の形状に倣った凸状の突起を有する台座78aと台座78
aから鉛直方向(+Z軸方向)に延びる長柄部78bとを有している。移動レバー78は
、レバー移動部77のガイド溝と台座78aとが係合しX軸方向に沿って往復移動可能に
構成されている。レバー移動部77は、移動レバー78を搬送方向に往復移動させる図示
しない移動機構を備えている。移動機構としては、例えば、エアーシリンダーなどを採用
することができる。移動レバー78が、レバー移動部77によって搬送方向の上流側に移
動されると、移動レバー78の長柄部78bと第1把持部80aの把持基板81とが当接
し、非把持状態の第1把持部80aが搬送方向と逆方向の上流側に戻される。これにより
、第1把持部80aを搬送ベルト23と共に繰り返し移動させることが可能となる。
【0066】
第1ベルト移動量計測部70aは、上述のように構成されているので、第1検出部85
aは、第1把持部80aに把持された搬送ベルト23と共に搬送方向(+X軸方向)に移
動し、搬送ベルト23の+Y軸側(一方側)の移動量(以下、第1移動量という)を検出
する。
【0067】
第2ベルト移動量計測部70bは、印刷部40の上流側に設けられ、搬送ベルト23の
−Y軸側に位置している。
第2ベルト移動量計測部70bは、搬送方向に沿って設けられている第2スケール部7
5bと、第2スケール部75bに対して相対的な移動量を検出する第2検出部85bと、
第2検出部85bと一体に移動するように構成され、交差方向において搬送ベルト23の
中心よりも他方側(−Y軸側)を把持して搬送ベルト23と共に移動する第2把持部80
bと、を有している。
【0068】
第2ベルト移動量計測部70bは、交差方向において第1ベルト移動量計測部70aと
対称の同一構成であるので、その構成の説明は省略する。
第2検出部85bは、第2把持部80bに把持された搬送ベルト23と共に搬送方向(
+X軸方向)に移動し、搬送ベルト23の−Y軸側(他方側)の移動量(以下、第2移動
量という)を検出する。
【0069】
本実施形態の第1、第2把持部80a,80bは、印刷部40よりも搬送方向の上流側
で搬送ベルト23を把持する。把持状態の第1、第2把持部80a,80bを搬送ベルト
23と共に搬送方向に移動させるためにベルト駆動ローラー25を回転駆動した場合、搬
送ベルト23は弾性を有しているため、搬送ベルト23の回転移動方向においてベルト駆
動ローラー25より搬送方向の下流側、かつ、第1、第2把持部80a,80bより搬送
方向の上流側の部分の搬送ベルト23は緩みやすい。第1、第2把持部80a,80bを
印刷部40より上流側に設けることで、第1、第2把持部80a,80bを印刷部40よ
り下流側に設けた場合より、搬送ベルト23に緩みが生じやすい範囲を短くすることがで
きるので、第1移動量と第2移動量との差を生じ難くさせることができる。
【0070】
なお、本実施形態では、第1、第2検出部85a,85bが第1、第2把持部80a,
80bと一体で移動し、第1、第2スケール部75a,75bが固定された構成を示した
が、第1、第2スケール部が第1、第2把持部と一体で移動し、第1、第2検出部が固定
された構成であってもよい。
また、本実施形態では、第1スケール部75aと第1検出部85aとの相対的移動量、
及び第2スケール部75bと第2検出部85bとの相対的移動量を磁界の変化によって求
める所謂磁気式エンコーダーを例示したが、光学的変化によって移動量を求める光学式エ
ンコーダーであってもよい。
【0071】
<電気的構成>
図5は、印刷装置の電気的な構成を示す電気ブロック図である。次に、印刷装置100
の電気的構成について
図5を参照して説明する。
【0072】
印刷装置100は、印刷条件などが入力される入力装置6や印刷装置100の各部の制
御を行う制御部1などを備えている。入力装置6としては、表示部6aを備えたデスクト
ップ型あるいはラップトップ型のパーソナルコンピューター(PC)や、タブレット型端
末、携帯型端末等を使用することができる。入力装置6は、印刷装置100と別体で設け
られていてもよい。
【0073】
制御部1は、インターフェイス部(I/F)2、CPU(Central Processing Unit)
3、記憶部4、制御回路5などを含んで構成されている。インターフェイス部2は、入力
信号や画像を取り扱う入力装置6と制御部1との間でデータの送受信を行うためのもので
ある。CPU3は、第1、第2検出部85a,85bを含む各種の検出器群7からの入力
信号処理や、印刷装置100の印刷動作の制御を行うための演算処理装置である。例えば
、CPU3は、第1、第2検出部85a,85bから出力されCPU3に入力された入力
信号から搬送ベルト23の第1、第2移動量を算出する。
記憶部4は、CPU3のプログラムを格納する領域や作業領域などを確保するための記
憶媒体であり、RAM(Random Access Memory)、EEPROM(Electrically Erasabl
e Programmable Read Only Memory)などの記憶素子を有している。
【0074】
制御部1は、制御回路5から出力する制御信号によってヘッドユニット42に備えられ
ている吐出ヘッドの駆動を制御して媒体95に向かってインクを吐出させる。制御部1は
、制御回路5から出力する制御信号によってキャリッジ移動部45に備えられているモー
ターの駆動を制御してヘッドユニット42が搭載されているキャリッジ43を主走査方向
(Y軸方向)に往復移動させる。制御部1は、制御回路5から出力する制御信号によって
ベルト駆動ローラー25に備えられているモーターの駆動を制御して搬送ベルト23を回
転移動させる。これにより、搬送ベルト23上に載置された媒体95が搬送方向(+X軸
方向)に移動される。
【0075】
制御部1が、キャリッジ移動部45及びヘッドユニット42を制御して吐出ヘッドから
インクを吐出させながらヘッドユニット42(キャリッジ43)を移動させる主走査と、
ベルト駆動ローラー25を制御して媒体95を搬送方向に搬送させる副走査と、を交互に
繰り返す印刷動作によって媒体95に画像などが形成される。
【0076】
制御部1は、制御回路5から出力する制御信号によって切替え部74に備えられている
電磁石に流す電流を制御して第1、第2把持部80a,80bを把持状態と非把持状態と
に切り替える。制御部1は、制御回路5から出力する制御信号によってレバー移動部77
の移動機構を制御して移動レバー78を搬送方向に沿って往復移動させる。また、制御部
1は、図示しない各装置を制御する。
【0077】
<ベルト移動量差検出方法>
図6は、ベルト移動量差検出方法を説明するフローチャート図である。
図7は、印刷モ
ードと基準値との関係を示すテーブルである。
図8は、画像の種類と基準値との関係を示
すテーブルである。
次に、印刷装置100の印刷動作におけるベルト移動量検出方法について
図6から
図8
を参照して説明する。
【0078】
ステップS1は、印刷データを受信する印刷情報受信工程である。制御部1は、入力装
置6から媒体95に画像を記録する印刷データや印刷情報の入力を受信し記憶部4に格納
する。
【0079】
ステップS2は、基準値を設定する基準値設定工程である。ステップS1で受信する印
刷情報には、印刷モード又は画像の種類の情報が含まれている。また、記憶部4には、例
えば、
図7に示すような印刷モードと基準値との関係を示すテーブル、及び
図8に示すよ
うな画像の種類と基準値との関係を示すテーブルが予め格納されている。
【0080】
図7に示すように、印刷モードには、例えば「超高画質」、「高画質」、「速い」など
と表現される、要求される画像品質の異なる複数のモードが用意されている。各印刷モー
ドには、後述するステップS5の判断工程における判断基準となる基準値が設定され、印
刷モードによって第1基準値と第2基準値との2つの基準値を用いることが可能となって
いる。例えば、印刷モードが「超高画質」の場合には、第1基準値:「中」と第2基準値
:「低」とが用いられ、印刷モードが「速い」の場合には、第1基準値:「高」のみが用
いられる。制御部1は、複数の印刷モードからいずれかの印刷モードの入力を受け付けた
場合、記憶部4に格納されているテーブルを参照し、受け付けた印刷モードの画像品質に
応じた基準値を設定する。なお、第1基準値は、所望の画像品質が満たせなくなる値に設
定され、第2基準値は、第1基準値よりも低い値に設定される。このように、印刷モード
の画像品質に応じた基準値を用いることで、媒体95に好適に印刷を行うことができる。
【0081】
図8に示すように、画像の種類には、例えば「線画像」、「面画像」などと表現される
複数の種類が用意されている。ここでは、「線画像」は、テキストや罫線などを主体とす
る画像を意味し、「面画像」は、写真やイラストなどを主体とする画像を意味する。例え
ば、画像の種類が「線画像」の場合には、罫線のズレが視認されやすいので、第1基準値
:「中」と第2基準値:「低」とが用いられ、画像の種類が「面画像」の場合には、第1
基準値:「高」と第2基準値:「中」とが用いられる。制御部1は、印刷する画像の種類
の入力を受け付けた場合、記憶部4に格納されているテーブルを参照し、受け付けた画像
の種類に応じた基準値を用いる。なお、第1基準値は、所望の画像品質が満たせなくなる
値に設定され、第2基準値は、第1基準値よりも低い値に設定される。このように、画像
の種類に応じた基準値を用いることで、媒体95に好適に印刷を行うことができる。
【0082】
ステップS3は、第1把持部80a,80bを搬送ベルト23に把持させる把持工程で
ある。制御部1は、切替え部74の電磁石に電流を流して電磁石に磁力を発生させる。こ
れにより、第1、第2把持部80a,80bは、把持状態となり搬送ベルト23を把持す
る。
【0083】
ステップS4は、搬送ベルト23を搬送方向に搬送させる副走査工程である。制御部1
は、ベルト駆動ローラー25を制御して把持状態の第1、第2把持部80a,80bを搬
送ベルト23と共に移動させる。制御部1は、搬送ベルト23の移動に伴って、第1検出
部85aから出力される信号から第1移動量を算出し、第2検出部85bから出力される
信号から第2移動量を算出し、第1移動量と第2移動量とのうちの一方の移動量に基づい
て搬送ベルト23の回転動作を制御する。
【0084】
本実施形態では、制御部1は、第1移動量に基づいて搬送ベルト23の回転動作を制御
するので、搬送ベルト23の制御が複雑化することを抑制することができる。そして、制
御部1は、第1検出部85aで検出される第1移動量にしたがって、第1把持部80aが
、第1位置(初期位置)から第1位置よりも搬送方向の下流側に位置する第2位置まで移
動した場合に搬送ベルト23の回転を停止させる。なお、最初の副走査工程では、第1位
置と第2位置との間隔は印刷動作を開始させる所定位置までの搬送量である。2回目以降
の副走査工程では、第1位置と第2位置との間隔は印刷動作中の改行量である。
【0085】
ステップS5は、第1検出部85aの検出する第1移動量と第2検出部85bの検出す
る第2移動量との差は基準値(第1基準値)以上であるか否かを判断する判断工程である
。搬送ベルト23は、弾性を有しているため、交差方向における一方側と他方側とで移動
量(搬送量)に僅かなずれを生じる恐れがある。このため、制御部1は、搬送ベルト23
の移動(搬送)を停止させた後、第1検出部85aの検出する第1移動量(搬送ベルト2
3の一方側の移動量)と第2検出部85bの検出する第2移動量(搬送ベルト23の他方
側の移動量)との差を算出し、その差が第1基準値以上であるか否かを判断する。第1移
動量と第2移動量との差が第1基準値未満の場合(ステップS5:No)は、ステップS
6に進む。第1移動量と第2移動量との差が第1基準値以上の場合(ステップS5:Ye
s)、制御部1は、所望の画像品質が得られないと判断し、印刷部40による媒体95へ
の印刷を停止(終了)する。これにより、媒体95に画像品質の低下した画像が印刷され
ることを事前に防ぐことができる。なお、制御部1は、印刷停止時、第1基準値を超えた
ので印刷を停止したことを、表示部6aに表示するようにしてもよい。
【0086】
ステップS6は、第1検出部85aの検出する第1移動量と第2検出部85bの検出す
る第2移動量との差は基準値(第2基準値)以上であるか否かを判断する判断工程である
。第2基準値が設定されていない場合、又は第1移動量と第2移動量との差が第2基準値
未満の場合(ステップS6:No)は、ステップS8に進む。第1移動量と第2移動量と
の差が第2基準値以上の場合(ステップS6:Yes)は、ステップS7に進む。
【0087】
ステップS5及びステップS6で説明したように、制御部1は、第1検出部85aで検
出された搬送ベルト23の一方側における移動量(第1移動量)と、第2検出部85bで
検出された搬送ベルト23の他方側における移動量(第2移動量)との差が基準値(第1
基準値又は第2基準値)以上であるか否かを判断する。これにより、搬送ベルト23の一
方側の移動量と他方側の移動量とで基準値以上の差が生じたことを検出することができる
。
【0088】
ステップS7は、ユーザーに予備警告を行う予備警告工程である。制御部1は、第1移
動量と第2移動量との差が第1基準値未満、第2基準値以上であった場合に、画像品質が
低下する恐れがあると判断し、予備警告動作を行う。
予備警告動作とは、第1移動量と第2移動量との差は、第1基準値未満の許容範囲内で
はあるが、許容範囲の限界(第1基準値)に近づいていることを報知する動作である。制
御部1は、インターフェイス部2を介して入力装置6の表示部6aに、例えば「ベルト移
動量の差が大きくなってきています。印刷は可能ですが、メンテナンスを推奨します」と
いったメッセージを表示する。これにより、第1移動量と第2移動量との差(搬送ベルト
23の一方側と他方側との移動量の差)が許容限界に近づいていることをユーザーに知ら
せることができる。なお、本実施形態では、予備警告動作は、入力装置6の表示部6aに
予備警告としてのメッセージを表示するものと説明したが、印刷装置は予備警告動作を行
う報知部を備え、報知部から音声や光などを発することでユーザーに予備警告を報知させ
るようにしてもよい。
【0089】
ステップS8は、媒体95に向かってインクを吐出する主走査工程である。制御部1は
ヘッドユニット42及びキャリッジ移動部45を制御して、ヘッドユニット42の搭載さ
れたキャリッジ43を搬送方向と交差する媒体95の幅方向(Y軸方向)に移動させなが
らヘッドユニット42から媒体95に向かってインクを吐出する主走査を行う。
【0090】
ステップS9は、搬送ベルト23を把持している第1、第2把持部80a,80bを非
把持状態にさせる非把持工程である。制御部1は、切替え部74の電磁石に流れていた電
流を遮断して電磁石の磁力を消磁させる。これにより、第1、第2把持部80a,80b
は、非把持状態となる。
【0091】
ステップS10は、戻し部76を搬送方向の上流側に戻す戻し工程である。制御部1は
、レバー移動部77を制御して第1、第2把持部80a,80bよりも搬送方向の下流側
の所定位置に待機している移動レバー78を搬送方向の上流側に移動させる。これにより
、第1、第2把持部80a,80bと移動レバー78とが当接し、第2位置に位置してい
る非把持状態の第1、第2把持部80a,80bが第1位置に戻される。これにより、把
持状態の第1、第2把持部80a,80bを搬送ベルト23と共に第1位置から第2位置
へ繰り返し移動させることができる。その後、移動レバー78は、第2位置よりも搬送方
向の下流側に移動され、所定位置に待機する。なお、説明の便宜上、ステップS8の主走
査工程からステップS10の戻し工程までを異なるステップで説明したが、ステップS7
及びステップS8はステップS6と略同時に行われる。
【0092】
ステップS11は、次行の印刷データがあるかを判断する判断工程である。制御部1は
、記憶部4に格納されている印刷データを参照して次行の印刷データがあるかを判断する
。次行の印刷データがある場合(ステップS11:Yes)は、ステップS3に戻りステ
ップS3からステップS11を繰り返す。これにより、主走査と副走査とが繰り返され媒
体95に画像などが印刷される。次行の印刷データがない場合(ステップS11:No)
は、制御部1は、印刷装置100の印刷動作を終了する。
【0093】
なお、ステップS4において、制御部1は、第1移動量と第2移動量とのうちの一方の
移動量に基づいて搬送ベルト23の回転動作を制御するものと説明したが、制御部1は、
第1移動量と第2移動量とを平均した平均移動量に基づいて搬送ベルト23の回転動作を
制御してもよい。これにより、搬送ベルト23の一方側と他方側との移動量の差が大きく
なることを抑制することができる。
また、本実施形態では、1度の副走査工程及び主走査工程ごとに戻し工程を行うフロー
を示したが、副走査工程及び主走査工程を複数回繰り返した後に、第1、第2把持部80
a,80bが複数回で移動した移動量を1度の戻し工程で戻すフローとしてもよい。
【0094】
以上述べたように、本実施形態に係る印刷装置100及びベルト移動量差検出方法によ
れば、以下の効果を得ることができる。
印刷装置100は、交差方向における搬送ベルト23の一端側の移動量を計測する第1
ベルト移動量計測部70aと、搬送ベルト23の他端側の移動量を計測する第2ベルト移
動量計測部70bとを備えている。第1ベルト移動量計測部70aは、搬送方向に沿って
設けられた第1スケール部75aと、第1スケール部75aに対して相対的な移動量を検
出する第1検出部85aと一体で移動し搬送ベルト23の一方側を把持する第1把持部8
0aとを有している。第2ベルト移動量計測部70bは、搬送方向に沿って設けられた第
2スケール部75bと、第2スケール部75bに対して相対的な移動量を検出する第2検
出部85bと一体で移動し搬送ベルト23の他方側を把持する第2把持部80bとを有し
ている。この構成により、第1検出部85aは、搬送ベルト23の一端側の移動量を計測
し、第2検出部85bは、搬送ベルト23の他端側の移動量を計測する。また、印刷装置
100は、第1移動量と第2移動量との差が基準値以上であるか否かを判断する制御部1
を備えている。これにより、印刷装置100は、搬送ベルト23の一方側の移動量と他方
側の移動量とで基準値以上の差が生じたことを検出することができる。
【0095】
印刷装置100の制御部1は、第1移動量に基づいて搬送ベルト23の回転動作を制御
するので、搬送ベルト23の制御が複雑化することを抑制することができる。
印刷装置100の制御部1は、第1移動量と第2移動量との差が第1基準値以上の場合
に所望の画像品質が得られないと判断し、印刷部40による媒体95への印刷を停止する
。これにより、媒体95に画像品質の低下した画像が印刷されることを事前に防ぐことが
できる。
【0096】
印刷装置100の制御部1は、複数の印刷モード又は画像の種類からいずれかの印刷モ
ード又は画像の種類の入力を受け付けた場合、記憶部4に格納されているテーブルを参照
し、受け付けた印刷モードの画像品質又は画像の種類に応じた基準値を用いる。また、基
準値は、第1基準値と第2基準値との2つの基準値を用いることが可能となっており、第
1基準値は、所望の画像品質が満たせなくなる値に設定され、第2基準値は、第1基準値
よりも低い値に設定される。これにより、媒体95に好適に印刷を行うことができる。
印刷装置100の第1、第2把持部80a,80bは、印刷部40よりも搬送方向の上
流側で搬送ベルト23を把持する。これにより、第1、第2把持部80a,80bを印刷
部40より下流側に設けた場合より、搬送ベルト23に緩みが生じやすい範囲を短くする
ことができるので、第1移動量と第2移動量との差を生じ難くさせることができる。
【0097】
印刷装置100のベルト移動量差検出方法は、第1検出部85aの検出する第1移動量
と第2検出部85bの検出する第2移動量との差が基準値以上であるか否かを判断する判
断工程を含んでいる。第1移動量は、搬送方向に沿って設けられた第1スケール部75a
と第1検出部85aとの相対的な移動量である。第1検出部85aは、搬送方向と交差す
る交差方向において搬送ベルト23の中心よりも一方側を把持する第1把持部80aと一
体で移動するので、第1検出部85aは、搬送ベルト23の一方側における移動量を検出
する。第2移動量は、搬送方向に沿って設けられた第2スケール部75bと第2検出部8
5bとの相対的な移動量である。第2検出部85bは、交差方向において搬送ベルト23
の中心よりも他方側を把持する第2把持部80bと一体で移動するので、第2検出部85
bは、搬送ベルト23の他方における移動量を検出する。したがって、ベルト移動量差検
出方法によれば、搬送ベルト23の一方側の移動量(搬送量)と他方側の移動量(搬送量
)とで基準値以上の差が生じたことを検出することができる。
【0098】
なお、本発明は上述した実施形態に限定されず、上述した実施形態に種々の変更や改良
などを加えることが可能である。変形例を以下に述べる。
【0099】
(変形例)
図9は、変形例に係るベルト移動量差検出方法を説明するフローチャート図である。図
10は、搬送ベルトの移動量差変化量を例示するグラフである。本変形例で説明する印刷
装置100のベルト移動量差検出方法は、第1移動量と第2移動量との差(移動量差)を
時系列で記憶し、さらに前後で記憶した移動量差の変化量が基準値以上になった場合に警
告動作を行うところが実施形態と異なっている。
以下、変形例に係る印刷装置100の印刷動作におけるベルト移動量差検出方法につい
て
図9及び
図10を参照して説明する。なお、印刷装置100の構成は、実施形態と同一
であるので、その説明は省略する。また、
図9に示すフローチャートのうち、ステップS
101は、実施形態で説明したステップS1と同じであり、ステップS102及びステッ
プS103は実施形態で説明したステップS3及びステップS4と同じであり、ステップ
S107〜ステップS110は実施形態で説明したステップS8〜ステップS11と同じ
であるので、その説明は省略する。
【0100】
ステップS104は、移動量差を算出し記憶する移動量差変化量記憶工程である。搬送
ベルト23が媒体95を搬送した回数(副走査の回数)をnとした時、制御部1は、第1
移動量(搬送ベルト23の一方側の移動量)と第2移動量(搬送ベルト23の他方側の移
動量)との差を算出し第n移動量差として記憶部4に記憶する。これにより、搬送ベルト
23の一方側と他方側との移動量の差(移動量の差=第2移動量−第1移動量)の経時的
な変化を確認することができる。さらに、制御部1は、第n移動量差を記憶した時より前
に算出され記憶部4に記憶された、第1移動量と第2移動量との差である第n−1移動量
差に対する第n移動量差の変化量(以下、移動量差変化量という)を算出し、記憶部4に
記憶する。
【0101】
例えば、1回目の副走査(n=1)により算出された第1移動量と第2移動量との差は
第1移動量差として記憶部4に記憶され、2回目の副走査(n=2)により算出された第
1移動量と第2移動量との差は第2移動量差として記憶部4に記憶される。そして、2回
目の副走査において制御部1は、第1移動量差に対する第2移動量差の差(移動量差変化
量=第2移動量差−第1移動量差)を算出する。なお、1回目の副走査の場合には、第1
移動量差を移動量差変化量とする。これにより、移動量差変化量の経時的な変化を把握す
ることができる。
【0102】
図10のグラフは、1回目から13回目まで副走査させた時に算出された移動量差変化
量の一例を示している。
図10に示すグラフの縦軸は、移動量差変化量を表し、所定の基
準値が設定されている。横軸は、副走査の回数nを表している。このグラフより、1回目
から9回目までの副走査では、搬送ベルト23の一方側の移動量と他方側の移動量とは、
所定の移動量に対して略同じであることが分かる。10回目以降の副走査では、移動量差
変化量が+基準値側へ連続的に変化しているので、第2移動量(搬送ベルト23の他方側
の移動量)が増加し続けていることが分かる。これにより、第1移動量と第2移動量との
差(搬送ベルト23の一方側と他方側との移動量の差)が大きくなることを予測すること
が可能になる。
【0103】
ステップS105は、移動量差変化量が基準値以上であるか否かを判断する判断工程で
ある。制御部1は、記憶部4に記憶された移動量差変化量を参照し、移動量差変化量が所
定の基準値以上であるかを判断する。移動量差変化量が所定の基準値未満の場合(ステッ
プS105:No)は、ステップS107に進む。移動量差変化量が所定の基準値以上の
る場合(ステップS105:Yes)は、ステップS106に進む。
【0104】
ステップS106は、ユーザーに警告を行う警告工程である。制御部1は、第n移動量
差に対する第n−1移動量差の変化量(移動量差変化量)が基準値以上である場合に、画
像品質が低下すると判断して警告動作を行う。例えば、
図10においては、第13回目の
副走査で算出された移動量差変化量(第13移動量差に対する第12移動量差の変化量)
が基準値以上であるため、第13回目の副走査工程を行った後に警告動作が行われること
となる。制御部1は、警告動作として、インターフェイス部2を介して入力装置6の表示
部6aに、例えば「ベルト移動量の差が大きくなってきています。メンテナンスを実施し
て下さい」といったメッセージを表示する。これにより、装置の異常を事前にユーザーに
知らせることができる。なお、本変形例では、警告動作は、入力装置6の表示部6aに予
備警告としてのメッセージを表示するものと説明したが、印刷装置は警告動作を行う報知
部を備え、報知部から音声や光などを発することでユーザーに予備警告を報知させるよう
にしてもよい。