特許第6919368号(P6919368)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6919368
(24)【登録日】2021年7月28日
(45)【発行日】2021年8月18日
(54)【発明の名称】重金属汚染土の貯蔵構造
(51)【国際特許分類】
   B09C 1/08 20060101AFI20210805BHJP
   B09B 1/00 20060101ALI20210805BHJP
   E02D 17/18 20060101ALI20210805BHJP
【FI】
   B09C1/08
   B09B1/00 FZAB
   E02D17/18 A
【請求項の数】7
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2017-128152(P2017-128152)
(22)【出願日】2017年6月30日
(65)【公開番号】特開2019-10610(P2019-10610A)
(43)【公開日】2019年1月24日
【審査請求日】2020年5月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000549
【氏名又は名称】株式会社大林組
(74)【代理人】
【識別番号】100171619
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 顕雄
(74)【代理人】
【識別番号】110002550
【氏名又は名称】AT特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】三浦 俊彦
(72)【発明者】
【氏名】西田 憲司
(72)【発明者】
【氏名】山田 祐樹
(72)【発明者】
【氏名】森下 智貴
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 甫
【審査官】 齊藤 光子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2017−012966(JP,A)
【文献】 特開2002−294692(JP,A)
【文献】 特開2011−240289(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B09B1/00−5/00
B01C1/00−1/10
C02F1/28
E02D17/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
地盤側から順に遮水層及び、重金属を含む汚染土層が積層され、前記汚染土層から前記遮水層の上面に流下する浸出水が当該遮水層の面に向けて案内される第1土部と、
前記遮水層の法面よりも外側に、該法面に接して設けられ、前記第1土部から浸出する浸出水を流通させると共に、当該浸出水に含まれる前記重金属を吸着する吸着材が混合された吸着層を有する第2盛土部と、を備える
ことを特徴とする重金属汚染土の貯蔵構造。
【請求項2】
前記第1土部の前記遮水層と前記汚染土層との層間に、前記遮水層よりも透水係数の高い排水層が設けられると共に前記吸着層が、前記遮水層及び、前記排水層の各法面と接して設けられており、前記汚染土層から流下する浸出水が前記排水層内を流れて前記吸着層に案内される
請求項1に記載の重金属汚染土の貯蔵構造。
【請求項3】
前記吸着層内に埋設され、前記吸着層内の浸出水の流れを部分的に遮ることにより当該吸着層内における浸出水流路を長くする遮水部材をさらに備える
請求項1又は2に記載の重金属汚染土の貯蔵構造。
【請求項4】
前記遮水部材が、前記吸着層内に上下に間隔をおいて互い違いに対向配置されて前記浸出水流路を蛇行させる複数枚の遮水シートである
請求項3に記載の重金属汚染土の貯蔵構造。
【請求項5】
前記遮水シートが、そのシート面を浸出水の流れ方向上流側から下流側に向かって上り勾配となるように傾斜させて前記吸着層内に埋設された
請求項4に記載の重金属汚染土の貯蔵構造。
【請求項6】
前記遮水部材が、前記吸着層内に鉛直方向に埋設された遮水シートであり、当該遮水シートのシート面と前記遮水層の前記側面との間に浸出水が一時的に堰き止められて滞留する
請求項3に記載の重金属汚染土の貯蔵構造。
【請求項7】
前記第1土部の少なくとも前記吸着層と接する部位に法面補強層が形成されており、前記第2盛土部が前記第1盛土部から分離可能に構成されている
請求項1から6の何れか一項に記載の重金属汚染土の貯蔵構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、重金属が含まれる汚染土を貯蔵する貯蔵構造に関する。
【背景技術】
【0002】
掘削で発生するずりには、土壌環境基準で規定される重金属(例えば、カドミウム、鉛、六価クロム、水銀、砒素、セレン、フッ素、ホウ素)が含まれていることがある。土壌溶出量基準や含有量基準に不適合の場合には、重金属の封じ込め措置などの対策を行う必要がある。
【0003】
この対策の一例として吸着層工法がある。吸着層工法とは、降雨等により盛土内に浸透した浸透水に汚染土層内の重金属を溶出させて吸着層に浸出させ、浸出水が吸着層を通過する間に、重金属を吸着材に吸着させることにより、浸出水における重金属の濃度(以下、単に汚染濃度ともいう)を環境に影響を与えないレベルに低減させて排出する工法である。この種の吸着層工法に用いられる一般的な盛土構造として、例えば、特許文献1〜3には、砕石や砂等の母材と吸着材とを混合した吸着層を、汚染土層の下部に略全面に亘って設けた構造が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011−240289号公報
【特許文献2】特開2012−110852号公報
【特許文献3】特開2014−226589号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、浸出水の汚染濃度を効果的に低減させるには、吸着層に混合される吸着材と浸出水に含まれる重金属との接触頻度(重金属が吸着材に接触して吸着される機会)を高めることが望まれる。
【0006】
上記従来の一般的な盛土構造では、吸着層が汚染土層の下部に広範囲に亘って設けられるため、吸着層の体積は必然的に大きくなる。このため、吸着材の混合量を単純に増加させることにより、吸着材と重金属との接触頻度を高めようとすると、吸着材量が汚染濃度に対して過剰になることで、費用が無駄に嵩むといった課題がある。一方、汚染濃度に対して適量な吸着材を体積の大きい吸着層に混合させると、単位体積当たりの吸着材量が減少することにより接触頻度の低下を招き、汚染濃度を効果的に低減できなくなる課題もある。
【0007】
また、汚染土層からの重金属の浸出が長期化し、これに伴い吸着層の吸着能力が劣化した場合には、吸着層を掘削除去して新たに入れ替える盛土の再施工が必要となる。上記従来の盛土構造では、吸着層が汚染土層の下部全面に亘って敷設されているため、吸着層を入れ替える際には、上層の汚染土層を含めた盛土全体の掘削除去が必要となり、再施工に要する工期の長期化、さらには、工費が嵩むといった課題もある。
【0008】
本開示の技術は、再施工性を容易にしつつ、吸着層における吸着材と重金属との接触頻度を効果的に高めることが可能な重金属汚染土の貯蔵構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示の技術は、地盤側から少なくとも遮水層及び、重金属を含む汚染土層が積層され、前記汚染土層から前記遮水層の上面に流下する浸出水が当該遮水層の側面に向けて案内される盛土本体部と、前記盛土本体部の外側に、少なくとも前記遮水層の前記側面に接して設けられ、前記盛土本体部から浸出する浸出水を流通させると共に、当該浸出水に含まれる前記重金属を吸着する吸着材が混合された吸着層と、を備えることを特徴とする。
【0010】
また、前記盛土本体部の前記遮水層と前記汚染土層との層間に、前記遮水層よりも透水係数の高い排水層が設けられ、前記汚染土層から流下する浸出水が当該排水層内を流れて前記遮水層の前記側面に向けて案内されることが好ましい。
【0011】
また、前記吸着層内に埋設され、前記吸着層内の浸出水の流れを部分的に遮ることにより当該吸着層内における浸出水流路を長くする遮水部材をさらに備えることが好ましい。
【0012】
また、前記遮水部材が、前記吸着層内に上下に間隔をおいて互い違いに対向配置されて前記浸出水流路を蛇行させる複数枚の遮水シートであってもよい。
【0013】
また、前記遮水シートが、そのシート面を浸出水の流れ方向上流側から下流側に向かって上り勾配となるように傾斜させて前記吸着層内に埋設されてもよい。
【0014】
また、前記遮水部材が、前記吸着層内に鉛直方向に埋設された遮水シートであり、当該遮水シートのシート面と前記遮水層の前記側面との間に浸出水が一時的に堰き止められて滞留するものでもよい。
【0015】
また、前記盛土本体部の少なくとも前記吸着層と接する部位に法面補強層が形成されてもよい。
【発明の効果】
【0016】
本開示の重金属汚染土の貯蔵構造によれば、再施工性を容易にしつつ、吸着層における吸着材と重金属との接触頻度を効果的に高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本実施形態に係る盛土を示す模式的な縦断面図である。
図2】本実施形態に係る盛土の要部を示す模式的な縦断面図である。
図3】本実施形態に係る集水構造を示す模式的な斜視図である。
図4】本実施形態に係る盛土の施工手順を説明する模式的図である。
図5】本実施形態に係る第2盛土部の再施工手順を説明する模式的図である。
図6】(A)は、本実施形態に係る盛土における浸出水の流れを模式的に説明する縦断面図である。(B)は、一般的な盛土を示す模式的な縦断面図である。
図7】本実施形態に係る吸着層の各種変形例を示す模式的な縦断面図である。
図8】通水試験用の試験装置を模式的に説明する図である。
図9】(A)は、通水試験の使用材料を説明する図である。(B)は、通水試験の試験ケースを説明する図である。
図10】通水試験の試験結果を説明する折れ線グラフである。
図11】他の実施形態に係る盛土を示す模式的な縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。図1に示す盛土1は、本発明に係る重金属汚染土の貯蔵構造の一例を示している。盛土1は、側面に法面を有する断面略台形状に形成されており、盛土本体部としての第1盛土部1Aと、第1盛土部1Aの下側法面に隣接して設けられた第2盛土部1Bとを備えている。
【0019】
[第1盛土部]
第1盛土部1Aは、地盤Gから順に、遮水層(難透水層)2と、排水層3と、汚染土層4と、第1覆土層5とを積層して構成されている。
【0020】
遮水層2は、汚染土層4から排水層3に浸出した浸出水の地盤Gへの浸透を遮るものであり、第1盛土部1Aにおける最下層、具体的には地盤Gの表面に敷設され、その上面には排水層3が積層されている。遮水層2の上面は、水平面状に形成されるか、或は、その外周縁(法頭)に向かって僅かに下る傾斜面状に形成されており、汚染土層4から排水層3に浸出した浸出水が第1盛土部1Aの外周方向へ案内されるようになっている。遮水層2の厚さは、特に限定されないが、例えば30cm〜50cm程度である。
【0021】
遮水層2は、平面視において、地盤Gの表面に排水層3の下面外周(法尻)よりも広く敷設されており、その側面には所定の勾配角度で傾斜する法面2Aが設けられている。法面2Aの勾配は、特に限定されないが、例えば1:0.5程度とされる。本実施形態において、法面2Aには、好ましくは、平面視ハニカム格子構造のテラセル(登録商標)或は、シート状のジオテキスタイルやジオグリッド等により形成した法面補強層2Bが設けられている。
【0022】
遮水層2の透水係数P1は、ため池の遮水基準である1.0×10−7m/s以下に定められている。本実施形態では、山砂70%と粘性土30%の混合土を締め固めることで、透水係数P1が9.20×10−8m/sの遮水層2を形成している。粘性土としては、例えば、関東化成株式会社の商品名「トチクレー」を用いることができる。
【0023】
排水層3は、汚染土層4から浸出した浸出水を遮水層2の上面に沿って第1盛土部1Aの外周方向へ案内するものであり、汚染土層4と遮水層2との層間に形成されている。すなわち、排水層3の下面は遮水層2の上面に接しており、排水層3の上面は汚染土層4の下面に接している。また、排水層3は、平面視において、遮水層2の上面に遮水層2の上面外周(法頭)よりも内側に敷設されており、その側面には所定の勾配角度で傾斜する法面3Aが設けられている。法面3Aの勾配は、特に限定されないが、好ましくは、法面2Aの勾配と同等の1:0.5程度とされる。法面3Aには、好ましくは、テラセル(登録商標)或は、ジオテキスタイルやジオグリッド等により形成した法面補強層3Bが設けられている。
【0024】
本実施形態において、排水層3は、砕石と、山砂や川砂等の砂材とを混合した混合材を締め固めることで形成される。排水層3は、例えば、7号砕石90%と山砂10%とを混合した混合材により、遮水層2の上面を覆うように敷均して締め固めることで形成される。このように形成した排水層3では、例えば透水係数P2が1.76×10−3m/sになり、遮水層2の透水係数P1よりも1.0×10m/s以上高い値(P2>P1)になっている。
【0025】
汚染土層4は、掘削などによって生じた汚染土を盛り立てることで形成される。本実施形態の汚染土は砒素を含んだずりである。汚染土層4は、平面視において、排水層3の上面に排水層3の上面外周(法頭)よりも内側に敷設されており、その側面には所定の勾配角度で傾斜する下側法面4A及び、上側法面4Bが設けられている。下側法面4Aの勾配は、好ましくは、各法面2A,3Aの勾配と同等の1:0.5程度とされ、上側法面4Bの勾配は、好ましくは、各法面2A,3A,4Aの勾配よりも小さい1:1.8程度とされる。汚染土層4の透水係数P3は、少なくとも、遮水層2の透水係数P1よりも高い値(P3>P1)になっている。
【0026】
第1覆土層5は、汚染土層4の外表面を覆うことで、汚染土の飛散や流出を防止するものである。この第1覆土層5には砕石や土砂を用いることができる。本実施形態の第1覆土層5は、砕石7号を用いて形成されており、汚染土層4の下側法面4A、上側法面4B及び、上面4Cを一連に覆っている。第1覆土層5のうち、少なくとも下側法面4Aに対応する部位には、テラセル(登録商標)或は、ジオテキスタイルやジオグリッド等により形成した法面補強層5Bが設けられている。
【0027】
[第2盛土部]
第2盛土部1Bは、地盤Gから順に、吸着層6と、第2覆土層7とを積層して構成されている。
【0028】
吸着層6は、汚染土層4から排水層3を介して浸出する浸出水に含まれる重金属を吸着するものであり、遮水層2及び排水層3の各法面2A,3Aに沿って設けられている。具体的には、図2に示すように、吸着層6は、縦断面を略台形状又は略三角形状とされ、その内側面6Bが遮水層2及び排水層3の各法面2A,3Aと接するように、排水層3の法頭(法面補強層3Bの上端)から遮水層2の法尻(法面補強層2Bの下端)に亘って形成されている。吸着層6の外側面(法面)6Aの勾配は、特に限定されないが、好ましくは、汚染土層4の上側法面4Bの勾配と同等の1:1.8程度とされる。
【0029】
吸着層6は、砕石と、山砂や川砂等の砂材と、重金属の吸着材とを混合した混合材を締め固めることで形成される。本実施形態では、重金属として砒素を対象にしているため、砒素吸着材を用いている。砒素吸着材としては、例えば、石原産業株式会社の商品名「フィックスオール(登録商標)FB」を用いることができる。このフィックスオールFBは、主成分として酸化鉄及び硫酸カルシウムを含み、酸化鉄粒子の比表面積が180m/g以上となっている。
【0030】
吸着層6は、7号砕石90%と山砂10%を混合した母材に、砒素吸着材を汚染濃度に適した必要量(例えば、30〜50kg/m)添加して混合したものを、地盤Gの表面と、遮水層2及び排水層3の各法面2A,3Aとを覆うように敷均して締め固めることで形成される。このように形成した吸着層6では、例えば透水係数P4が排水層3の透水係数P2と同等の1.76×10−3m/sになり、遮水層2の透水係数P1よりも1.0×10m/s以上高い値(P4≒P2>P1)になっている。
【0031】
第2覆土層7は、吸着層6の法面6Aを覆うことで、吸着層6の法面補強層として機能するものである。この第2覆土層7には、第1覆土層5と同様の砕石や土砂等を用いることができる。本実施形態において、第2覆土層7は、好ましくは、テラセル(登録商標)或は、ジオテキスタイルやジオグリッド等により形成されている。
【0032】
[集水構造]
次に、図2,3に基づいて、集水構造20の詳細について説明する。集水構造20は、吸着層6の吸着能力(浸出水の砒素濃度)をモニタリングするものであり、複数本の有孔パイプ部材21A〜Cと、各有孔パイプ部材21A〜Cに対応する複数個の一次集水桝22A〜Cと、各一次集水桝22A〜Cを接続する排水溝23と、各一次集水桝22A〜Cから流出する浸出水を集めて貯留する最終集水桝24(図3にのみ示す)とを備えている。なお、図2中において、符号8は、地盤Gと吸着層6との間に敷設されて浸出水の地盤Gへの浸透を防止する遮水シートを示している。遮水シート8は、好ましくは、各法面補強層2B,3Bの層間から一次集水桝22A〜Cの上縁近傍に亘って敷設されている。
【0033】
有孔パイプ部材21A〜Cは、吸着層6内を流れる浸出水の少なくとも一部を外部に取り出すもので、側面に複数の貫通孔が穿設された基端側を吸着層6内に埋設されている。また、有孔パイプ部材21A〜Cは、側面に貫通孔を有しない先端側を第2覆土層7の外方に突出させている。本実施形態において、各有孔パイプ部材21A〜Cは、図3に示すように、第2覆土層7の法尻の長手方向に適宜間隔(例えば、50〜100m間隔)で配置されており、これら有孔パイプ部材21A〜Cによって吸着層6が複数のモニタリング区間A〜Cに区分されている。
【0034】
一次集水桝22A〜Cは、例えば、上部が開放した略筐体状のコンクリート製の集水桝であって、各有孔パイプ部材21A〜Cの先端部下方に対応する地盤Gにそれぞれ埋設されている。各一次集水桝22A〜Cには、対応する各有孔パイプ部材21A〜Cから排出される浸出水が貯留される。
【0035】
排水溝23は、例えば、上部が開放したコンクリート製のU字溝であって、第2覆土層7の法尻と隣接する地盤Gに埋設されている。また、排水溝23は、各一次集水桝22A〜Cを接続するように、第2覆土層7の法尻長手方向と略並行に延設されている(図3参照)。排水溝23の溝深は、一次集水桝22A〜Cよりも浅く形成されており、一次集水桝22A〜Cに貯留された浸出水の水位が排水溝23の底面よりも上昇すると、各一次集水桝22A〜Cから排水溝23内に浸出水が流出するようになっている。また、排水溝23の底面は、長手方向の一端側(図3中左側)から他端側(図3中右側)に向かって下る傾斜面状に形成されており、各一次集水桝22A〜Cから排水溝23内に流出した浸出水が排水溝23の他端側へ案内されるようになっている。
【0036】
図3に示す最終集水桝24は、例えば、上部が開放した略筐体状のコンクリート製の集水桝であって、排水溝23の他端(下流側端)が位置する地盤Gに埋設されている。最終集水桝24は、好ましくは、その容積を各一次集水桝22A〜Cよりも大きく形成されている。最終集水桝24内には、各一次集水桝22A〜Cから流出して排水溝23内を流れる浸出水が貯留されるようになっている。
【0037】
以上のように構成された集水構造20では、以下の手順(1)〜(3)に従い、吸着層6の吸着能力(浸出水の砒素濃度)をモニタリングすることができる。
【0038】
(1)まず、最終集水桝24内に貯留された浸出水の砒素濃度を計測し、該計測値に変化が確認された場合(例えば、砒素濃度が所定の管理値を超えた場合)には、各一次集水桝22A〜C内に貯留された浸出水の砒素濃度をそれぞれ個別に計測する。
【0039】
(2)各一次集水桝22A〜Cのうち、浸出水の砒素濃度が管理値を超えている一次集水桝22A〜Cが存在すれば、当該一次集水桝22A〜C内の浸出水の砒素濃度を引き続きモニタリングする。
【0040】
(3)モニタリングの結果、浸出水の砒素濃度が管理値を超えていれば、当該一次集水桝22A〜Cに対応する有孔パイプ部材21A〜Cのモニタリング区間A〜C(例えば、一次集水桝22B内の浸出水の砒素濃度が管理値を超えていれば、有孔パイプ部材21Bに対応するモニタリング区間B)の吸着層6に吸着能力の劣化が生じていると推定される。このような場合には、該当するモニタリング区間Bの吸着層6及び第2覆土層7を掘削除去して、吸着層6を新たに入れ替える第2盛土部1Bの再施工が行われる。再施工の詳細手順については後述する。
【0041】
[施工手順、再施工手順]
次に、図4に基づいて、本実施形態の盛土1の施工手順について説明する。
【0042】
まず、図4(A)に示すように、地盤Gの表面に、遮水層2となる混合土を敷均して締め固め、その側面に法面補強層2Bを設けることで、遮水層2を形成する。
【0043】
次に、図4(B)に示すように、遮水層2の上面に、排水層3となる混合材を遮水層2の法頭よりも内側に敷均して締め固め、その側面に法面補強層3Bを設けることで、排水層3を形成する。
【0044】
次に、図4(C)に示すように、排水層3の上面に、汚染土層4となる汚染土を排水層3の法頭よりも内側に敷均すと共に、汚染土を覆うように第1覆土層5となる砕石等を敷均して締め固め、さらに、その下側の側面に法面補強層5Bを設ける。これにより、地盤Gから順に、遮水層2、排水層3、汚染土層4及び、第1覆土層5を積層した第1盛土部1Aが完成する。
【0045】
最後に、図4(D)に示すように、吸着層6となる混合材を、地盤Gの表面及び、各法面補強層2B,3Bの側面に敷均して締め固めることで、吸着層6が形成され、さらに、吸着層6の側面を覆うように第2覆土層7となる砕石等を敷均して締め固めて補強することで、第2盛土部1Bが完成する。
【0046】
このようにして完成した盛土1は、第1盛土部1Aと、第2盛土部1Bとが分離可能に構成されている。このため、例えば、汚染土層4からの汚染物質の浸出が長期化し、これに伴い吸着層6の吸着能力が劣化した場合には、第1盛土部1Aを掘削除去することなく、第2盛土部1Bのみを掘削除去し、吸着層6を新たに入れ替える再施工を行うことができる。以下、図5に基づいて、第2盛土部1Bの再施工手順について説明する。
【0047】
まず、図5(A)に示すように、吸着能力が劣化した部分の第2盛土部1Bを、第2覆土層7、吸着層6の順に掘削除去する。この際、第1盛土部1Aの法面は、法面補強層2B,3B,5Bにより強固に補強されているので、第2盛土部1Bを除去しても、崩壊することなく、また、亀裂等も生じることなくその形状を維持される。
【0048】
次に、図5(B)に示すように、新たな吸着材を含む混合材を、地盤Gの表面及び、各法面補強層2B,3Bの側面に敷均して締め固めることで、新たな吸着層6が形成される。この際、遮水シート8や有孔パイプ部材21A〜Cに劣化や破損等が生じていれば、これらも新たなものに取り換える。
【0049】
最後に、図5(C)に示すように、新たな吸着層6の側面を覆うように第2覆土層7となる砕石等を敷均して締め固めて補強することで、第2盛土部1Bの再施工を終了する。このように、第2盛土部1Bの再施工を行う際は、第1盛土部1Aを残しつつ、吸着能力が劣化した部分の吸着層6及び、該吸着層6を覆う第2覆土層7のみを掘削除去し、当該除去した個所に新たな吸着層6を入れ替えればよいので、盛土全体の再施工が必要となる従前構造に比べ、工期の短縮化が図られると共に、工費も効果的に削減することができる。また、吸着層6の吸着能力が劣化する都度、汚染土層4を含む第1盛土部1Aを残しつつ、第2盛土部1Bのみを再施工すればよいので、汚染物質の拡散防止を図りつつ、汚染土を長期間に亘って継続的に貯蔵することが可能になる。
【0050】
[吸着作用]
次に、本実施形態の盛土1による重金属の吸着作用を説明する。
【0051】
図6に示すように、降雨等により汚染土層4に浸透した浸透水は、符号F1の矢印で示すように、汚染土層4の内部を流下する。その際、汚染土に含まれる砒素が浸透水に溶出される。このため、浸透水における砒素濃度は汚染土層4の下方になるほど高くなる。浸透水は、汚染土層4の下面から排水層3に浸出する。ここで、排水層3の下面と遮水層2の上面が接しているので、符号F2の矢印で示すように、排水層3に流下した浸出水は、遮水層2の上面に沿って排水層3内を盛土1の外周方向に向かって流れる。排水層3の法面3Aに到達すると、符号F3の矢印で示すように、浸出水は吸着層6を下向きに流れて、吸着層6から地盤Gへと排出される。
【0052】
ここで、浸出水に溶出された砒素は、吸着層6の内部を流れている間に吸着材に吸着される。本実施形態において、吸着層6は汚染土層4の下部全面に敷設されることなく、遮水層2及び排水層3の側面に設けられている。すなわち、図6(B)に示すような、吸着層600が遮水層200と汚染土層400との層間に広範囲に亘って敷設された従前の盛土100に比べ、本実施形態では、吸着層6の体積が相対的に小さく抑えられており、略同量の吸着材を混合させた場合には、単位体積当たりに吸着材が多く含まれる(吸着材が集中する)ようになっている。このように、単位体積当たりの吸着材の混合量が多くなると、吸着層6内における砒素と吸着材との接触頻度(接触機会)が確実に高められるようになり、吸着層6から排出される浸出水の砒素濃度を効果的に低減することが可能になる。また、一般的な土木施工上、吸着材を吸着層6に均一に混合させるには、単位体積当たりの吸着材の量を所定量以上(例えば、30〜50kg/m以上)確保することが好ましい。本実施形態では、単位体積当たりの吸着材の混合量が多くなるので、従前の盛土100に比べ、吸着材を均一に混合しやすくなり、施工性を確実に向上することができる。
【0053】
[変形例]
図7(A)〜(C)は、吸着層6内における浸出水流路を長くすることにより、浸出水に含まれる砒素と吸着材との接触頻度を効果的に高めるようにした吸着層6の各種変形例を示す模式的な縦断面図である。
【0054】
図7(A)に示す一例は、吸着層6内を略水平方向に延びる複数枚(図示例では2枚)の遮水シート9A,Bを上下に間隔をおいて互い違いに対向配置することで、浸出水流路を略蛇行状に形成したものである。具体的には、上側の第1遮水シート9Aは、吸着層6内を遮水層2の法頭(法面補強層2Bの側面上端)から第2覆土層7の内側面に向かって略水平方向に延びると共に、その先端部と第2覆土層7の内側面との間に浸出水を流下させる流路を確保して吸着層6内に埋設されている。下側の第2遮水シート9Bは、第1遮水シート9Aよりも下方の吸着層6内を第2覆土層7の内側面から遮水層2の法面2Aに向かって略水平方向に延びると共に、その先端部と遮水層2の法面2Aとの間に浸出水を流下させる流路を確保して吸着層6内に埋設されている。
【0055】
すなわち、排水層3から吸着層6内に浸出した浸出水は、図中矢印F1で示すように、第1遮水シート9Aの上面に沿って流され、第1遮水シート9Aの先端部から第2遮水シート9Bの上面に流下される。さらに、第2遮水シート9Bに流下した浸出水は、図中矢印F2で示すように、第2遮水シート9Bの上面に沿って流され、第2遮水シート9Bの先端から地盤Gの表面に流下されることで、浸出水が吸着層6内を略蛇行状に流されるようになる。このように、吸着層6内の浸出水流路を略蛇行状に長く形成すると、浸出水に含まれる砒素と吸着材との接触頻度が効果的に高められるようになり、浸出水の砒素濃度を確実に低減することが可能になる。
【0056】
図7(B)に示す一例は、図7(A)の第1及び第2遮水シート9A,Bを傾斜させたものである。具体的には、上側の第1遮水シート9Aは、遮水層2側から第2覆土層7側に向かって上り勾配となるように、そのシート面を所定の角度で傾斜させている。下側の第2遮水シート9Bは、第2覆土層7側から遮水層2側に向かって上り勾配となるように、そのシート面を所定の角度で傾斜させている。
【0057】
すなわち、排水層3から吸着層6内に浸出した浸出水は、図中矢印F1で示すように、第1遮水シート9Aの勾配面を上ると共に、第1遮水シート9Aの先端部から第2遮水シート9Bに流下される。さらに、第2遮水シート9Bに流下した浸出水は、図中矢印F2で示すように、第2遮水シート9Bの勾配面を上ると共に、第2遮水シート9Bの先端から地盤Gの表面に流下されることで、浸出水が吸着層6内を斜めに上りながら略蛇行状に流されるようになる。このように、吸着層6内の浸出水流路を上り勾配を有する蛇行状に形成すると、浸出水の流速が低く抑えられることで、浸出水に含まれる砒素と吸着材との接触頻度が効果的に高められるようになり、浸出水の砒素濃度を確実に低減することが可能になる。
【0058】
図7(C)に示す一例は、吸着層6内に遮水シート9Cをそのシート面が略鉛直方向となるように埋設することで、吸着層6内の浸出水の流れを一時的に堰き止めて滞留させる流路を形成したものである。具体的には、遮水シート9Cは、吸着層6内を地盤Gの表面から遮水層2の法面2Aと略平行に斜め上方に延びると共に、その上端部と第2覆土層7の内側面との間に浸出水を流通させる流路を確保して吸着層6内に埋設されている。
【0059】
すなわち、排水層3から吸着層6内に浸出した浸出水は、図中矢印F1で示すように、遮水層2の法面2Aと遮水シート9Cとの間に堰き止められて滞留し、その水位が遮水シート9Cの上端部よりも上昇すると、図中矢印F2で示すように、遮水シート9Cを超えて流されるようになる。このように、浸出水を吸着層6内に一時的に滞留させると、浸出水に含まれる砒素と吸着材との接触頻度が効果的に高められるようになり、浸出水の砒素濃度を確実に低減することが可能になる。
【0060】
なお、図7(A)〜(C)に示される何れの変形例においても、浸出水流路を形成する部材は遮水シート9A〜Cとして説明したが、吸着層6内に流路を区画できる部材であれば、遮水性を有するプレート部材等であってもよい。
【0061】
[通水試験]
砒素と吸着材との接触頻度を高めることで砒素の吸着効率が高くなることを、通水試験によって確認した。以下、通水試験について説明する。通水試験は、図8に示す試験装置50を用いて行った。試験装置50は、通水カラム51と、送液チューブ52と、貯留容器53と、送液ポンプ54と、三方弁55と、採取容器56とを備えている。
【0062】
通水カラム51は、模擬汚染水57を模擬吸着層58に通水させるための部材であり、円筒カラム61と、第1栓部材62と、第2栓部材63と、第1フィルタ材64と、第2フィルタ材65とを備えている。円筒カラム61は、内径が100mmであり、高さ(上下方向の長さ)が150mmである。そして、円筒カラム61の下端を第1栓部材62によって塞ぐと共に第1フィルタ材64を配置した状態で、模擬吸着層58を高さが60mmとなるまで充填する。充填後、模擬吸着層58の上面に第2フィルタ材65を配置した状態で、円筒カラム61の上端を第2栓部材63によって塞いでいる。
【0063】
第1栓部材62及び第2栓部材63にはそれぞれ、栓の厚さ方向を貫通する貫通孔が形成されている。そして、第1栓部材62には、第1送液チューブ52Aの下流側端部が挿入され、第2栓部材63には、第2送液チューブ52Bの上流側端部が挿入されている。
【0064】
貯留容器53には、模擬汚染水57が貯留されるとともに、第1送液チューブ52Aの上流側端部が挿入されている。送液ポンプ54は、第1送液チューブ52Aの途中に設けられており、貯留容器53に貯留された模擬汚染水57を、第1送液チューブ52Aを通じて所定速度で通水カラム51へ供給する。三方弁55は、第2送液チューブ52Bの途中に設けられており、通水カラム51から排出された模擬汚染水57´を、第2送液チューブ52Bの下流側に流すか、廃液容器(不図示)に排出するかを選択する。採取容器56には、第2送液チューブ52bの下流側端部が挿入されており、第2送液チューブ52Bから排出される浸出水57´を採取する。
【0065】
図9(A)に示すように、通水試験では、模擬汚染水57として濃度が0.1mg/Lの砒素溶液を用いた。また、模擬吸着層58の土壌として4号珪砂や6号珪砂を用い、砒素吸着材として前述のフィックスオールFBを用いた。そして、所定割合で砒素吸着材を土壌に混合することにより、模擬吸着層58の基となる混合土を作製した。
【0066】
通水試験では、図9(B)に示す6種類の試験ケースA〜Fを対象にした。試験ケースAでは、砒素吸着材を土壌に対して5kg/tの比率で添加及び混合して模擬吸着層58を作製した。そして、0.2mL/minの通水速度で模擬汚染水57を模擬吸着層58へ通水した。試験ケースBでは、砒素吸着材を土壌に対して5kg/tの比率で添加及び混合して模擬吸着層58を作製した。そして、2mL/minの通水速度で模擬汚染水57を模擬吸着層58へ通水した。試験ケースCでは、砒素吸着材を土壌に対して5kg/tの比率で添加及び混合して模擬吸着層58を作製した。そして、20mL/minの通水速度で模擬汚染水57を模擬吸着層58へ通水した。試験ケースDでは、砒素吸着材を土壌に対して20kg/tの比率で添加及び混合して模擬吸着層58を作製した。そして、0.2mL/minの通水速度で模擬汚染水57を模擬吸着層58へ通水した。試験ケースEでは、砒素吸着材を土壌に対して20kg/tの比率で添加及び混合して模擬吸着層58を作製した。そして、2mL/minの通水速度で模擬汚染水57を模擬吸着層58へ通水した。試験ケースFでは、砒素吸着材を土壌に対して20kg/tの比率で添加及び混合して模擬吸着層58を作製した。そして、20mL/minの通水速度で模擬汚染水57を模擬吸着層58へ通水した。
【0067】
通水試験の試験結果を図10(A),(B)のグラフに示す。各グラフの縦軸は、採取容器56で採取した浸出水57´に含まれる砒素濃度、すなわち、模擬吸着層58を通過した後の浸出水57´における砒素濃度を示している。また、各グラフの横軸は、模擬吸着層58への通水量を示している。
【0068】
通水試験では、試験ケースA〜Fのそれぞれについて、模擬吸着層58へ所定量通水する毎に浸出水57´の砒素濃度を測定し、通水量と砒素濃度の関係を取得した。砒素濃度に関し、環境庁告示第46号では、土壌における環境基準値を0.01mg/Lに定めている。このため、通水試験では、砒素濃度が0.01mg/Lに到達するまでの通水量を、各試験ケースで比較した。
【0069】
図10(A)に示すように、砒素吸着材を5kg/tの比率で添加した試験ケースA〜Cでは、何れも通水量が約80L程度で砒素濃度は0.01mg/Lを超過した。
【0070】
図10(B)に示すように、砒素吸着材を20kg/tの比率で添加した試験ケースD〜Fでは、何れも通水量が約200Lに到達するまでの期間に亘って、砒素濃度は略0mg/L近傍で概ね推移した。そして、通水量が約300Lを越えると砒素濃度が上昇し、約400Lで0.01mg/Lに到達した。
【0071】
砒素吸着材を5kg/tの比率で添加した試験ケースA〜Cでは、砒素濃度0.01mg/Lに到達するまでの通水量は約80Lであり、砒素吸着材を20kg/tの比率で添加した試験ケースD〜Fでは、砒素濃度0.01mg/Lに到達するまでの通水量は約400Lであることから、単位体積当たりの砒素吸着材の混合量が多いほど、砒素と砒素吸着材との接触頻度が高められることで、砒素の処理能力が向上することを確認できた。本実施形態の盛土1のように、吸着層6の体積を小さく抑え、単位体積当たりの砒素吸着材の混合量を多くすると、吸着層6内における砒素と砒素吸着材との接触頻度を高められることができる。このため、盛土1では、砒素を吸着層6に効果的に吸着させることができる。
【0072】
[その他]
なお、本発明は、上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、適宜変形して実施することが可能である。
【0073】
上記実施形態において、吸着層6は、遮水層2及び排水層3の各法面2A,3Aと接するように設けられるものとして説明したが、例えば、図11に示すように、吸着層6の高さを遮水層2の高さと同程度にし、排水層3を吸着層6の上面まで延設してもよい。この場合も、吸着層6の体積が小さく抑えられ、単位定積当たりの吸着材量が多く確保されることにより、吸着層6内における砒素と吸着材との接触頻度を確実に高めることができる。
【0074】
また、上記実施形態において、遮水層2と汚染土層4との層間には排水層3が設けられるものとして説明したが、当該排水層3を省略して、遮水層2の上面に汚染土層4を直接的に積層してもよい。この場合は、遮水層2と汚染土層4との間に、浸出水を盛土1の幅方向に案内する横樋を設けることが好ましい。
【0075】
また、吸着対象の重金属に関し、上記実施形態では砒素を例に挙げて説明したが、砒素に限定されるものではない。砒素に加え、カドミウム、鉛、六価クロム、水銀、セレン、フッ素、ホウ素など、土壌環境基準で規定される重金属であれば、吸着対象の重金属になる。
【符号の説明】
【0076】
1…盛土,1A…第1盛土部(盛土本体部),1B…第2盛土部,2…遮水層(難透水層),2A…遮水層の法面,2B…遮水層の法面補強層,3…排水層,3A…排水層の法面,3B…排水層の法面補強層,4…汚染土層,4A…汚染土層の下側法面,4B…汚染土層の上側法面,4C…汚染土層の上面,5…第1覆土層,5B…第1覆土層の法面補強層,6…吸着層,6A…吸着層の法面,7…第2覆土層,9A〜C…遮水シート(遮水部材),20…集水構造,21A〜C…有孔パイプ部材,22A〜C…一次集水桝,23…排水溝,24…最終集水桝,50…通水試験の試験装置,51…通水カラム,52…送液チューブ,52A…第1送液チューブ,52B…第2送液チューブ,53…貯留容器,54…送液ポンプ,55…三方弁,56…採取容器,57…模擬汚染水,57´…浸出水,58…模擬吸着層,61…円筒カラム,62…第1栓部材,63…第2栓部材,64…第1フィルタ材,65…第2フィルタ材,G…地盤
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