(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、この発明にかかる車両用インナー後方視認装置の実施形態(実施例)の2例を図面に基づいて詳細に説明する。この明細書において、前、後、上、下、左、右は、この発明にかかる車両用インナー後方視認装置を車両に装備した際の前、後、上、下、左、右である。
【0019】
図において、符号「F」は「前」、「B」は「後」、「U」は上、「D」は「下」、「L」は「左」、「R」は「右」である。また、図面においては、概略図であるため、主要部品を図示し、主要部品以外の部品の図示を省略し、ハッチングの一部を省略する。
【0020】
(実施形態1の構成の説明)
図1〜
図6、
図9は、この発明にかかる車両用インナー後方視認装置の実施形態1を示す。以下、この実施形態1にかかる車両用インナー後方視認装置の構成について説明する。
【0021】
(車両用インナー後方視認装置1の説明)
図中、符号1は、この実施形態1にかかる車両用インナー後方視認装置である。車両用インナー後方視認装置1は、ステー2と、取付機構と、ピボット20と、ブラケット3と、ハウジング4と、ノブ5と、後方視認ユニット6と、切替機構7と、を備える。
【0022】
(ステー2の説明)
ステー2は、
図2に示すように、一端(前端)が取付機構を介して車体、この例では、車両Vのフロントウインドガラス22に脱落可能に取り付けられるものである。ステー2は、この例では、円柱形状もしくはほぼ円柱形状をなし、金属製の部材から構成されている。なお、ステー2は、フロントウインドガラス22以外に、車両Vの天井23(
図9を参照)に取付機構を介して脱落可能に取り付けても良い。
【0023】
(取付機構の説明)
取付機構は、フロントウインドガラス22に固定される固定部材としてのベース21と、ベース21にスクリュー(図示せず)を介して脱落可能に取り付けられている取付部材としての弾性部材(図示せず)と、を有する。弾性部材には、ステー2の一端が取り付けられている。これにより、ハウジング4等に所定値以上の力が加わった時に、弾性部材がベース21から脱落し、ステー2がベース21もしくはフロントウインドガラス22(天井23)から脱落する。
図2中の符号24は、ステー2の一端およびベース21等の取付機構を覆うカバーである。
【0024】
(ピボット20の説明)
ピボット20は、
図3、
図4に示すように、ステー2の他端(後端)に一体に設けられている。ピボット20は、この例では、球形状もしくはほぼ球形状をなし、ステー2と同様に、金属製の部材から構成されている。
【0025】
(ブラケット3の説明)
ブラケット3は、
図1、
図3〜
図6に示すように、ピボット20に、ブッシュ8、押え板80およびスクリュー81を介して、回転可能に取り付けられている。ブラケット3は、この例では、車両Vの後側から前側を見た形状(以下、「正面視形状」と称する)がほぼ長方形の板形状をなし、金属製の部材から構成されている。
【0026】
ブラケット3のほぼ中央部分には、球凹部30が前側に凹んで設けられている。球凹部30の底部分には、透孔31が設けられている。ブラケット3の球凹部30の下側部分には、挿通孔32が設けられている。ブラケット3の上辺の中央部には、係止部33が一体に設けられている。ブラケット3の左右両側辺の上端部には、軸部34がそれぞれ一体に設けられている。ブラケット3の下辺の右側のスイッチ当部35が一体に設けられている。
【0027】
ブッシュ8は、この例では、中空状の球形状をなし、樹脂製もしくはゴム製の部材から構成されている。ブッシュ8の前側部分、後側部分には、透孔82、開口部83が設けられている。押え板80は、この例では、正面視形状がほぼ六角形の板形状をなし、金属製の部材から構成されている。押え板80の上辺には、係止部(図示せず)が一体に設けられている。押え板80の下端部には、ねじ孔84が設けられている。
【0028】
ブッシュ8の内周面は、ピボット20の外周面に外側から嵌合している。ブラケット3の球凹部30の内周面は、ブッシュ8の外周面に外側から嵌合している。ブッシュ8の透孔82およびブラケット3の透孔31中には、ステー2の他端が挿通されている。ブラケット3の係止部33と押え板80の係止部とは、押え板80がブッシュ8の開口部83を覆った状態で、相互に係止されている。ブラケット3の挿通孔32中には、スクリュー81が挿通されていて、かつ、押え板80のねじ孔84中には、スクリュー81がねじ込まれている。
【0029】
これにより、ブラケット3は、ピボット20に、ブッシュ8、押え板80およびスクリュー81を介して、ピボット20の中心OPを中心として(以下、「ピボット20を中心として」と称する)回転可能に取り付けられている。ピボット20、ブラケット3、ブッシュ8、押え板80およびスクリュー81は、ハウジング4、ノブ5、後方視認ユニット6および切替機構7(以下、「ハウジング4等」と称する)をステー2の他端に回転可能に取り付ける球継手を構成する。
【0030】
(ハウジング4の説明)
ハウジング4は、
図1〜
図4、
図6に示すように、ブラケット3の軸部34に軸部34の中心線(
図1を参照。以下、「第1回転中心線」と称する)O1回りに回転可能に取り付けられている。ハウジング4は、この例では、中空状の直方体形状をなし、樹脂製の部材から構成されている。
【0031】
ハウジング4の後側部分は、開口されていて、開口縁部の全周には、リム40が嵌合固定されている。ハウジング4の前側部分の中央部分の上側、下側には、上透孔41、下透孔42がそれぞれ設けられている。ハウジング4の下側部分の中央部には、切欠き43が設けられている。ハウジング4の前側部分の内面(後側の面)であってブラケット3の左右両側部分の上側、下側には、第1軸受部44、第2軸受部45がそれぞれ一体に設けられている。リム40には、横長の長方形の窓部46が設けられている。下透孔42の内側面には、第1ストッパ面47と第2ストッパ面48とがそれぞれ設けられている。
【0032】
ハウジング4の左右の第1軸受部44には、ブラケット3の左右の軸部34が回転可能に軸受されている。これにより、ハウジング4は、ブラケット3に、第1回転中心線O1回りに、第1姿勢(
図3(A)に示す姿勢)と第2姿勢(
図3(B)に示す姿勢)との間を回転可能に取り付けられている。ハウジング4の上透孔41中には、ステー2の他端が挿通されている。上透孔41の内側面とステー2の外側面とは、ハウジング4が、第1回転中心線O1回りに第1姿勢と第2姿勢との間を回転し、また、ピボット20を中心として回転した時に、相互に当接しない程度の寸法を有する。
【0033】
(ノブ5の説明)
ノブ5は、
図1〜
図6に示すように、ハウジング4に取り付けられていて、ブラケット3に第1位置(
図3(A)に示す位置)と第2位置(
図3(B)に示す位置)との間を切替操作可能に係合している。ノブ5は、この例では、正面視形状がほぼT字形の板形状をなし、樹脂製の部材から構成されている。
【0034】
ノブ5の本体部50の下部には、撮み部51が一体に設けられている。本体部50の左右両側には、軸部52が、撮み部51が設けられている方向に対して交差する方向(直交する方向もしくはほぼ直交する方向)にそれぞれ一体に設けられている。ノブ5の左右の軸部52は、ハウジング4の左右の第2軸受部45に、ノブ5の軸部52の中心線(以下、「第2回転中心線」と称する)O2回りに回転可能に軸受されている。これにより、ノブ5は、ハウジング4に、第2回転中心線O2回りに、回転可能に取り付けられている。
【0035】
ノブ5の撮み部51は、ハウジング4の下透孔42中に挿通されている。撮み部51の外側面には、第1ストッパ面53と第2ストッパ面54とがそれぞれ設けられている。ノブ5の第1ストッパ面53とハウジング4の第1ストッパ面47とは、ノブ5を第2位置側から第1位置側に切り替えた時に、相互に当接してノブ5を第1位置に位置させるためのストッパである。ノブ5の第2ストッパ面54とハウジング4の第2ストッパ面48とは、ノブ5を第1位置側から第2位置側に切り替えた時に、相互に当接してノブ5を第2位置に位置させるためのストッパである。
【0036】
(後方視認ユニット6の説明)
後方視認ユニット6は、
図1〜
図3、
図9に示すように、ハウジング4に取り付けられていて、車両Vの後方を視認する。後方視認ユニット6は、表示装置60と、スイッチ61と、ミラー62と、を有する。
【0037】
表示装置60は、この例では、液晶モニタであって、表示面63を有する。表示装置60は、表示面63がハウジング4のリム40の窓部46に臨まれた状態で、ハウジング4内に取り付けられている。表示装置60は、撮像装置64により撮像された車両Vの後方の状況を画像として表示面63に表示する。撮像装置64は、車両Vの外側であって後側の中央に設けられていて、車両Vの後方の状況を撮像する。
図9中の符号Zは、撮像装置64が撮像する範囲を示す。表示装置60と撮像装置64とは、信号線65および画像処理装置(図示せず)を介して接続されている。撮像装置64で撮像された車両Vの後方の状況は、信号線65および画像処理装置を介して、表示装置60の表示面63に画像として表示される。
【0038】
表示装置60の下部には、表示面63の画像の色調、明るさ等を調整する調整部66が設けられている。調整部66は、ハウジング4の切欠き43からハウジング4の下側に突出している。
【0039】
スイッチ61は、表示装置60の前面の下側に、ブラケット3のスイッチ当部35に対向して取り付けられている。スイッチ61には、スイッチ当部35に対して離れたり当たったりして作動する作動部67が設けられている。ハウジング4が第1姿勢に切り替わると、作動部67がブラケット3のスイッチ当部35から離れた状態にあり、スイッチ61は、表示装置60を作動させて表示面63に画像を表示させる。ハウジング4が第2姿勢に切り替わると、作動部67がブラケット3のスイッチ当部35に当たった状態にあり、スイッチ61は、表示装置60を停止させて表示面63に表示されている画像を消す。
【0040】
ミラー62は、表示装置60の表示面63の表面もしくは表面側に、ハウジング4のリム40の窓部46を覆った状態で、設けられている。ミラー62は、ハウジング4が第1姿勢にある時には表示装置60の表示面63の画像を透過させ、ハウジング4が第2姿勢にある時には車両Vの後方の状況を反射像として反射させる。ミラー62は、いわゆる、ハーフミラーである。
【0041】
(切替機構7の説明)
切替機構7は、
図1、
図4〜
図6に示すように、ノブ5を第1位置から第2位置にあるいは第2位置から第1位置に切替操作することにより、ハウジング4が第1姿勢から第2姿勢にあるいは第2姿勢から第1姿勢に切り替わるものである。切替機構7は、固定係合部70と、弾性係合部71および弾性変形部72と、抑制部73と、を有する。
【0042】
固定係合部70は、ブラケット3の下辺の左右両側にそれぞれ設けられている。固定係合部70は、断面凹形状をなし、谷部の凹部700と、凹部700の後側の面の第1ストッパ面701と、凹部700の前側の面の第2ストッパ面702と、から構成されている。
【0043】
弾性係合部71および弾性変形部72は、ノブ5の本体部50と左右の軸部52との間に設けられている。弾性係合部71は、断面凸形状をなし、山部の凸部710と、凸部710の後側の面の第1ストッパ面711と、凸部710の前側の面の第2ストッパ面712と、から構成されている。ノブ5の本体部50と左右の軸部52との間には、凸部710に弾性を付与させるための長孔713が設けられている。なお、長孔713に代えて、長溝であっても良い。
【0044】
これにより、弾性係合部71の凸部710は、固定係合部70の凹部700に弾性係合する。弾性係合部71の凸部710と固定係合部70の凹部700との弾性係合箇所(以下、単に「弾性係合箇所」と称する)は、ノブ5が第1位置から第2位置にあるいは第2位置から第1位置に切り替えられる時の支点Sとなる。弾性変形部72は、ノブ5を切替操作する時に、
図6(A)中の二点鎖線にて示すように、弾性変形する。
【0045】
固定係合部70の第1ストッパ面701と弾性係合部71の第1ストッパ面711とは、ノブ5を弾性係合箇所を支点Sとして第2位置側から第1位置側に切り替えた時に、相互に当接してノブ5を第1位置に位置させるためのストッパである。固定係合部70の第2ストッパ面702と弾性係合部71の第2ストッパ面712とは、ノブ5を弾性係合箇所を支点Sとして第1位置側から第2位置側に切り替えた時に、相互に当接してノブ5を第2位置に位置させるためのストッパである。
【0046】
固定係合部70の第1ストッパ面701、第2ストッパ面702と弾性係合部71の第1ストッパ面711、第2ストッパ面712とから構成されているストッパは、ノブ5の第1ストッパ面53、第2ストッパ面54とハウジング4の第1ストッパ面47、第2ストッパ面48とから構成されているストッパと同様のストッパである。従って、固定係合部70の第1ストッパ面701、第2ストッパ面702と弾性係合部71の第1ストッパ面711、第2ストッパ面712とから構成されているストッパ、もしくは、ノブ5の第1ストッパ面53、第2ストッパ面54とハウジング4の第1ストッパ面47、第2ストッパ面48とから構成されているストッパのうちは、少なくともいずれか一方が設けられていれば良い。なお、ストッパは、前記の箇所以外に設けても良い。
【0047】
抑制部73は、ノブ5の弾性変形部72に一体に設けられている。抑制部73は、側面視形状が半円形もしくはほぼ半円形をなす。抑制部73の円弧面は、ハウジング4の下側部分の内面(上側の面)に当接している。これにより、抑制部73は、弾性変形部72の弾性変形を抑制する。
【0048】
(実施形態1の作用の説明)
この実施形態1にかかる車両用インナー後方視認装置1は、以上のごとき構成からなり、以下、その作用について説明する。
【0049】
(車両用インナー後方視認装置1の車内装備の説明)
図2、
図9に示すように、取付機構のベース21を車体としてのフロントウインドガラス22(もしくは天井23)に接着剤や機械的固定手段等により固定する。ステー2の一端が取り付けられている取付機構の弾性部材をベース21にスクリューにより脱落可能に取り付ける。これにより、ステー2の一端が取付機構を介して車体に脱落可能に取り付けられる。このようにして、車両用インナー後方視認装置1は、車内(車両Vの室内)に装備される。車両用インナー後方視認装置1は、ベース21に対して車両Vの後側に位置する。運転手(ドライバー)Pは、車両用インナー後方視認装置1に対して車両Vの後側に位置する。
【0050】
(画面等角度調整の説明)
ハウジング4の任意の箇所を手等で把持して、ハウジング4を、ピボット20を中心として、運転手Pの視界に合わせて回転させる。すると、ハウジング4を始めとしてブラケット3、ブッシュ8、押え板80、スクリュー81、ノブ5、後方視認ユニット6および切替機構7(以下、「ブラケット3およびハウジング4等」と称する)がピボット20を中心として回転する。これにより、後方視認ユニット6の表示装置60の表示面63およびミラー62の反射面の角度が、運転手Pの視界に合った状態に調整される。
【0051】
(ノブ5の切替操作によるハウジング4の姿勢切替の説明)
ノブ5の撮み部51を指等で撮んで、第2位置に位置するノブ5を弾性係合箇所を支点Sとして第1位置に切り替える。すると、
図3(A)、
図4(A)、
図5(A)に示すように、ノブ5の第1ストッパ面53がハウジング4の第1ストッパ面47に、切替機構7において弾性係合部71の第1ストッパ面711が固定係合部70の第1ストッパ面701に、それぞれ当接して、ノブ5が第1位置に位置する。ノブ5の切替操作により、第2姿勢に位置するハウジング4が、第1回転中心線O1回りに、第1姿勢に回転して位置する。これにより、ハウジング4等が球継手に対して第1姿勢に切り替わる。
【0052】
ノブ5の撮み部51を指等で撮んで、第1位置に位置するノブ5を弾性係合箇所を支点Sとして第2位置に切り替える。すると、
図3(B)、
図4(B)、
図5(B)に示すように、ノブ5の第2ストッパ面54がハウジング4の第2ストッパ面48に、切替機構7において弾性係合部71の第2ストッパ面712が固定係合部70の第2ストッパ面702に、それぞれ当接して、ノブ5が第2位置に位置する。ノブ5の切替操作により、第1姿勢に位置するハウジング4が、第1回転中心線O1回りに、第2姿勢に回転して位置する。これにより、ハウジング4等が球継手に対して第1姿勢に切り替わる。
【0053】
(表示装置60の表示面63の画像の説明)
図3(A)、
図4(A)、
図5(A)に示すように、表示装置モード時、すなわち、ノブ5が第1位置に位置していて、ハウジング4が第1姿勢に位置している時には、スイッチ61の作動部67がブラケット3のスイッチ当部35から離れた状態にある。この結果、スイッチ61の作動部67を押し込まないことで、表示装置60が作動して表示面63には、撮像装置64により撮像された車両Vの後方の状況が画像として表示される。表示面63の画像は、ミラー62を透過して運転手Pの視界の中に入る。運転手Pは、表示装置60の表示面63に表示されている車両Vの後方の状況の画像を視認することにより、車両Vの後方の状況を把握することができる。
【0054】
(ミラー62の反射面の反射像の説明)
図3(B)、
図4(B)、
図5(B)に示すように、ミラーモード時、すなわち、ノブ5が第2位置に位置していて、ハウジング4が第2姿勢に位置している時には、スイッチ61の作動部67がブラケット3のスイッチ当部35に当たった状態にある。この結果、スイッチ61の作動部67を押し込むことで、表示装置60の作動が停止して表示面63に表示されている画像が消える。これにより、車両Vの後方の状況がミラー62の反射面で反射されて反射像として運転手Pの視界の中に入る。運転手Pは、ミラー62の反射面から反射された車両Vの後方の状況の反射像を視認することにより、車両Vの後方の状況を把握することができる。
【0055】
(画面等の角度調整時における力の作用の説明)
例えば、
図4(A)に示すように、ノブ5が第1位置に位置していてハウジング4が第1姿勢に位置する時において、ハウジング4をハウジング操作力F1でピボット20を中心として斜め上側から斜め下側に反時計方向に回転させる。この時、ハウジング操作力F1による回転トルク(F1×L1)が時計方向のピボットトルクT1よりも大きいと、ブラケット3およびハウジング4等がピボット20を中心として回転する。なお、L1は、ピボット20の中心OPとハウジング操作力入力点P1との間の距離である。
【0056】
また、
図4(B)に示すように、ノブ5が第2位置に位置していてハウジング4が第2姿勢に位置する時において、ハウジング4をハウジング操作力F1でピボット20を中心として斜め下側から斜め上側に時計方向に回転させる。この時、ハウジング操作力F1による回転トルク(F1×L1)が反時計方向のピボットトルクT1よりも大きいと、ブラケット3およびハウジング4等がピボット20を中心として回転する。
【0057】
(ノブ5の切替操作時における力の作用の説明)
図4(A)に示すように、ノブ5をノブ操作力F2で弾性係合箇所を支点Sとして第2位置から第1位置に切り替える。この時、ノブ操作力F2とノブ操作長さL2の積(F2×L2)が、ノブトルク(ノブ操作荷重)F3とノブブラケット当面長さL3の積(F3×L3)よりも大きいと、ノブ5が第2位置から第1位置に切り替わって、ハウジング4等が第2姿勢から第1姿勢に切り替わる。なお、ノブ操作長さL2は、ノブ操作力作用点P2と第2回転中心線O2との間の距離である。また、ノブブラケット当面長さL3は、第2回転中心線O2と支点Sとの間の距離である。ノブトルクF3は、ノブブラケット当面に対して垂直であり、ノブ操作力F2の向きに対して逆向きである。
【0058】
また、
図4(B)に示すように、ノブ5をノブ操作力F2で弾性係合箇所を支点Sとして第1位置から第2位置に切り替える。この時、ノブ操作力F2とノブ操作長さL2の積(F2×L2)が、ノブトルク(ノブ操作荷重)F3とノブブラケット当面長さL3の積(F3×L3)よりも大きいと、ノブ5が第1位置から第2位置に切り替わって、ハウジング4等が第1姿勢から第2姿勢に切り替わる。
【0059】
(ピボットトルクT1とノブトルクF3の相対関係の説明)
以下、ピボットトルクT1とノブトルクF3の相対関係について説明する。
図4(A)に示すように、ハウジング操作力F1がハウジング操作力入力点P1において作用すると、ブラケット3に第1回転中心線O1回りに時計方向の回転トルクT2が作用する。回転トルクT2は、ハウジング操作力F1により作用する回転トルクであって、F4×L4に等しい。L4は、ブラケット3の第1回転中心線O1と入力点P1との間の距離である。F4は、ハウジング操作力F1のブラケット3への入力成分であって、入力点P1において距離L2に対して垂直に作用する入力成分である。入力点P1におけるハウジング操作力F1と入力成分F4との間の角度θ1は、入力点P1とピボット20の中心OPを結ぶ線分SL1と、入力点P1と第1回転中心線O1を結ぶ線分SL2と、の間の角度に等しい。なお、
図4(B)においては、回転トルクT2が反時計方向となる。
【0060】
また、
図4(A)に示すように、ノブ操作力F2がノブ操作力作用点P2において作用すると、ブラケット3に第1回転中心線O1回りに反時計方向の回転トルクT3が作用する。回転トルクT3は、ノブ操作力F2により作用する回転トルクであって、F5×L5に等しい。L5は、ブラケット3の第1回転中心線O1と支点Sとの間の距離である。F5は、ノブ操作力F2のブラケット3への入力成分である。入力成分F5は、支点Sにおいて、第1回転中心線O1と支点Sを結ぶ線部SL3に対して垂直であり、ノブトルクF3との間に角度θ2を有する。なお、
図4(B)においては、回転トルクT3が時計方向となる。
【0061】
ここで、ピボットトルクT1がノブトルクF3に対して所定値未満であれば、ブラケット3に第1回転中心線O1回りに作用する回転トルクT2がノブトルクF3に対して小さい。この結果、画面等の角度調整時において、ブラケット3およびハウジング4等をピボット20を中心として回転させた時に、ノブ5は第1位置または第2位置の所定の位置に停止している。
【0062】
しかしながら、ピボットトルクT1がノブトルクF3に対して所定値以上であれば、ブラケット3に第1回転中心線O1回りに作用する回転トルクT2がノブトルクF3に対して大きい。この結果、画面等の角度調整時において、ブラケット3およびハウジング4等をピボット20を中心として回転させた時に、ノブ5は第1位置または第2位置の所定の位置に対してフリーになって所定の位置から動く場合がある。
【0063】
このように、ピボットトルクT1とノブトルクF3とは、画面等の角度調整時において、ブラケット3およびハウジング4等をピボット20を中心として回転させた時に、ノブ5が所定の位置に停止しているかあるいは所定の位置から動くかが決まる相対関係にある。
【0064】
(実施形態1の効果の説明)
この実施形態1にかかる車両用インナー後方視認装置1は、以上のごとき構成および作用からなり、以下、その効果について説明する。
【0065】
この実施形態1にかかる車両用インナー後方視認装置1は、ステー2の他端のピボット20にブラケット3を介してハウジング4等が回転可能に取り付けられているので、ブラケット3およびハウジング4等をピボット20を中心として回動させることにより、画面等の角度を運転手Pの視界に合わせて調整することができる。
【0066】
また、この実施形態1にかかる車両用インナー後方視認装置1は、切替機構7において、ノブ5を切替操作する時に弾性変形する弾性変形部72の弾性変形を抑制する抑制部73が設けられている。このため、この実施形態1にかかる車両用インナー後方視認装置1は、切替機構7の抑制部73により、弾性変形部72の弾性変形量(
図6(A)中の二点鎖線を参照)が、
図7(A)、(B)に示す抑制部73が設けられていない切替機構7Aの弾性変形部72Aの弾性変形量(
図7(A)中の二点鎖線を参照)に比較して小さい。これにより、この実施形態1にかかる車両用インナー後方視認装置1は、抑制部73が設けられていない切替機構7Aに比較して、ノブ5の操作荷重であるノブトルクF3を高くすることができる。
【0067】
このように、この実施形態1にかかる車両用インナー後方視認装置1は、ミラー本体の代わりに、質量が大きい表示装置60、ミラー62およびスイッチ61を、ハウジング4に取り付けて、ブラケット3およびハウジング4等の質量が大きくなった分ピボットトルクT1を高くしても、画面等の角度調整時にノブ5が動くのを防止することができる。すなわち、画面等の角度調整時において、ブラケット3およびハウジング4等をピボット20を中心として回転させた時に、ノブ5が第1位置または第2位置の所定の位置に対して動かない。これにより、この実施形態1にかかる車両用インナー後方視認装置1は、ノブ5が動くことによる不具合、すなわち、ノブ5の操作と連動するスイッチ61が作動して表示装置60がオンオフする不具合、また、画面等の角度調整前における表示装置60の画面が画面等の角度調整後にはミラー62面に変更され、あるいは、画面等の角度調整前におけるミラー62面が画面等の角度調整後には表示装置60の画面に変更される不具合がない。
【0068】
この実施形態1にかかる車両用インナー後方視認装置1は、表示装置60とスイッチ61とミラー62とを有する後方視認ユニット6がハウジング4に取り付けられているものである。このため、この実施形態1にかかる車両用インナー後方視認装置1は、ステー2、球継手(ピボット20、ブラケット3等)、ハウジング4、ノブ5および切替機構7を、後方視認ユニット6用と、防眩ミラー用とに、兼用することができる。
【0069】
また、この実施形態1にかかる車両用インナー後方視認装置1は、ノブ5を第1位置と第2位置との間を切替操作して、ハウジング4等を第1姿勢と第2姿勢とに切り替えることにより、後方視認ユニット6の表示装置60の表示面63とミラー62面とを切り替えることができる。このため、この実施形態1にかかる車両用インナー後方視認装置1は、ノブ5等の既存の技術を利用することにより、ノブ5の既存の切替操作で後方視認ユニット6の表示装置60の表示面63とミラー62面とを切り替えることができる。
【0070】
この実施形態1にかかる車両用インナー後方視認装置1は、ノブ5が本体部50と撮み部51と軸部52と切替機構7の弾性係合部71、弾性変形部72および抑制部73とを有し、一方、ブラケット3が切替機構7の固定係合部70を有するものである。このため、この実施形態1にかかる車両用インナー後方視認装置1は、ノブ5の第1位置と第2位置との間の切替操作により、ハウジング4等を第1姿勢と第2姿勢とに確実に切り替えることができる。
【0071】
この実施形態1にかかる車両用インナー後方視認装置1は、ノブ5に設けられている抑制部73がハウジング4に当接することにより、ノブ5に設けられている弾性変形部72の弾性変形が抑制されるものであるから、弾性変形部72の弾性変形を確実に抑制することができる。
【0072】
(実施形態2の説明)
図8は、この発明にかかる車両用インナー後方視認装置の実施形態2を示す。以下、この実施形態2にかかる車両用インナー後方視認装置について説明する。図中、
図1〜
図7、
図9と同符号は、同一のものを示す。
【0073】
前記の実施形態1にかかる車両用インナー後方視認装置1は、抑制部73をノブ5に一体に設けてハウジング4に当接させたものである。これに対して、この実施形態2にかかる車両用インナー後方視認装置は、抑制部730をハウジング4に一体に設けて弾性変形部に72に当接させたものである。
【0074】
この実施形態2にかかる車両用インナー後方視認装置は、以上のごとき構成からなるので、前記の実施形態1にかかる車両用インナー後方視認装置1とほぼ同様の作用効果を達成することができる。
【0075】
(実施形態1、2以外の例の説明)
なお、前記の実施形態1、2においては、後方視認ユニット6が表示装置60とスイッチ61とミラー62とを有するものである。しかしながら、この発明は、後方視認ユニットとして、表示装置60とスイッチ61とミラー62とを有するもの以外、たとえば、通常のミラーや防眩ミラー等であっても良い。
【0076】
また、前記の実施形態1においては、抑制部73がノブ5に設けられていてハウジング4に当接するものである。一方、前記の実施形態2においては、抑制部730がハウジング4に設けられていてノブ5に当接するものである。しかしながら、この発明は、抑制部を、ノブ5、ハウジング4、ブラケット3のうち少なくとも1つに設け、ノブ5に設けられている抑制部を、ハウジング4、ブラケット3のうち少なくともいずれか一方に当接させるものでも良いし、ハウジング4、ブラケット3に設けられている抑制部を、弾性変形部に当接させるものでも良い。
【0077】
なお、この発明は、前記の実施形態1、2により限定されるものではない。