特許第6919441号(P6919441)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6919441
(24)【登録日】2021年7月28日
(45)【発行日】2021年8月18日
(54)【発明の名称】自動運転システム
(51)【国際特許分類】
   G05D 1/02 20200101AFI20210805BHJP
   A01B 69/00 20060101ALI20210805BHJP
   B62D 6/00 20060101ALI20210805BHJP
   B62D 137/00 20060101ALN20210805BHJP
【FI】
   G05D1/02 N
   A01B69/00 303M
   B62D6/00
   B62D137:00
【請求項の数】4
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2017-174185(P2017-174185)
(22)【出願日】2017年9月11日
(65)【公開番号】特開2019-49896(P2019-49896A)
(43)【公開日】2019年3月28日
【審査請求日】2020年3月2日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000125
【氏名又は名称】井関農機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092794
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 正道
(74)【代理人】
【識別番号】110000899
【氏名又は名称】特許業務法人新大阪国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】有村 浪漫
【審査官】 中田 善邦
(56)【参考文献】
【文献】 特開2016−021890(JP,A)
【文献】 特開平06−113607(JP,A)
【文献】 国際公開第2016/009688(WO,A1)
【文献】 国際公開第2014/065071(WO,A1)
【文献】 特開2015−173630(JP,A)
【文献】 特開2007−248336(JP,A)
【文献】 特開2000−166313(JP,A)
【文献】 特許第5667731(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05D1/00−1/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
圃場における少なくとも基準経路に関する基準経路情報を格納するサーバと、
作業車両の位置を測定する測位装置と、
前記サーバに格納された前記基準経路情報、および測定された前記位置の情報に基づいて、前記圃場における前記作業車両の自動運転を制御する、前記作業車両に搭載される制御装置と、
を備え、
前記自動運転が制御される作業車両の台数は、単数または複数であり、
前記サーバは、前記基準経路情報を格納し、
前記制御装置は、前記サーバに格納された前記基準経路情報に基づいて、前記圃場における前記作業車両の自動運転経路に関する自動運転経路情報を生成し、前記自動運転経路情報に基づいて、前記自動運転を制御し、
前記測位装置は、前記作業車両、および前記作業車両に載置される携帯端末の少なくとも一方に搭載され、
前記携帯端末は、前記サーバへの情報書込み、および前記サーバからの情報読出しを実行し、
前記携帯端末の画面に周辺圃場に関する圃場情報を検索するためのタッチボタンが表示され、現在地から各圃場の圃場情報として格納された代表点までの距離が所定値より小さい圃場を表示し、
前記サーバに格納された前記基準経路情報は、ユーザの指示に基づいて、前記制御装置へ読込まれ、
前記制御装置は、前記基準経路情報の読込みが終了すると、前記基準経路の経路始点へ向かう自動運転を制御し、
前記経路始点へ向かう前記自動運転は、車両向きが前記基準経路の向きと一致するように前記基準経路の中途点へ前記作業車両を前進させた後、走行軌跡への収束を利用して車両向きの基準経路の向きとの一致を判定し、前記中途点から前記経路始点へ向かって前記作業車両を後進させることにより完了させられることを特徴とする自動運転システム。
【請求項2】
前記サーバは、前記基準経路情報を含む、前記圃場における自動運転経路に関する自動運転経路情報を格納し、
前記制御装置は、前記サーバに格納された前記自動運転経路情報に基づいて、前記自動運転を制御することを特徴とする請求項1に記載の自動運転システム。
【請求項3】
前記基準経路情報は、前記圃場における手動運転を利用してあらかじめ生成され、前記サーバに格納された情報であることを特徴とする請求項1または2に記載の自動運転システム。
【請求項4】
前記サーバは、前記圃場における作業に関する作業情報を格納し、
前記制御装置は、前記サーバに格納された前記作業情報に基づいて、前記自動運転を制御することを特徴とする請求項1からの何れかに記載の自動運転システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トラクタなどのような作業車両のための自動運転システムに関する。
【背景技術】
【0002】
作業車両の位置を測定する測位装置と、圃場における少なくとも基準経路に関する基準経路情報、および測定された位置の情報に基づいて、基準経路に基づいて算定された圃場における目標走行経路に沿った作業車両の自動運転を制御する、作業車両に搭載される制御装置と、を備えた自動運転システムが、知られている(たとえば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016−021890号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、本発明者は、自動運転のための作業段取り時間を節約することが望ましいと考えている。
【0005】
たとえば、本発明者は、サーバに格納された情報は、インターネット接続によりダウンロード可能であり、設定情報の読込みによる作業の再現に繰返し利用されることが望ましいと考えている。
【0006】
本発明は、上述された従来の課題を考慮し、自動運転のための作業段取り時間を節約することができる自動運転システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の本発明は、圃場における少なくとも基準経路に関する基準経路情報を格納するサーバと、
作業車両の位置を測定する測位装置と、
前記サーバに格納された前記基準経路情報、および測定された前記位置の情報に基づいて、前記圃場における前記作業車両の自動運転を制御する、前記作業車両に搭載される制御装置と、
を備え、
前記自動運転が制御される作業車両の台数は、単数または複数であり、
前記サーバは、前記基準経路情報を格納し、
前記制御装置は、前記サーバに格納された前記基準経路情報に基づいて、前記圃場における前記作業車両の自動運転経路に関する自動運転経路情報を生成し、前記自動運転経路情報に基づいて、前記自動運転を制御し、
前記測位装置は、前記作業車両、および前記作業車両に載置される携帯端末の少なくとも一方に搭載され、
前記携帯端末は、前記サーバへの情報書込み、および前記サーバからの情報読出しを実行し、
前記携帯端末の画面に周辺圃場に関する圃場情報を検索するためのタッチボタンが表示され、現在地から各圃場の圃場情報として格納された代表点までの距離が所定値より小さい圃場を表示し、
前記サーバに格納された前記基準経路情報は、ユーザの指示に基づいて、前記制御装置へ読込まれ、
前記制御装置は、前記基準経路情報の読込みが終了すると、前記基準経路の経路始点へ向かう自動運転を制御し、
前記経路始点へ向かう前記自動運転は、車両向きが前記基準経路の向きと一致するように前記基準経路の中途点へ前記作業車両を前進させた後、走行軌跡への収束を利用して車両向きの基準経路の向きとの一致を判定し、前記中途点から前記経路始点へ向かって前記作業車両を後進させることにより完了させられることを特徴とする自動運転システムである。
第2の本発明は、前記サーバは、前記基準経路情報を含む、前記圃場における自動運転経路に関する自動運転経路情報を格納し、
前記制御装置は、前記サーバに格納された前記自動運転経路情報に基づいて、前記自動運転を制御することを特徴とする第1の本発明の自動運転システムである。
第3の本発明は、前記基準経路情報は、前記圃場における手動運転を利用してあらかじめ生成され、前記サーバに格納された情報であることを特徴とする第1または第2の本発明の自動運転システムである。
第4の本発明は、前記サーバは、前記圃場における作業に関する作業情報を格納し、
前記制御装置は、前記サーバに格納された前記作業情報に基づいて、前記自動運転を制御することを特徴とする第1から第3の何れかの本発明の自動運転システムである。
本発明に関連する第1の明は、圃場における少なくとも基準経路に関する基準経路情報を格納するサーバと、
作業車両の位置を測定する測位装置と、
前記サーバに格納された前記基準経路情報、および測定された前記位置の情報に基づいて、前記圃場における前記作業車両の自動運転を制御する、前記作業車両に搭載される制御装置と、
を備え、
前記自動運転が制御される作業車両の台数は、単数または複数であることを特徴とする自動運転システムである。
【0008】
これにより、サーバに格納された基準経路情報に基づいて、圃場における作業車両の自動運転を制御するので、自動運転のための作業段取り時間を節約することができる。
【0009】
本発明に関連する第2の明は、前記サーバは、前記基準経路情報を格納し、
前記制御装置は、前記サーバに格納された前記基準経路情報に基づいて、前記圃場における前記作業車両の自動運転経路に関する自動運転経路情報を生成し、前記自動運転経路情報に基づいて、前記自動運転を制御することを特徴とする本発明に関連する第1の明の自動運転システムである。
【0010】
これにより、制御装置は、サーバに格納された基準経路情報に基づいて、圃場における作業車両の自動運転経路に関する自動運転経路情報を生成するので、作業車両の側の条件に基づいて自動運転を制御することができる。
【0011】
本発明に関連する第3の明は、前記サーバは、前記基準経路情報を含む、前記圃場における自動運転経路に関する自動運転経路情報を格納し、
前記制御装置は、前記サーバに格納された前記自動運転経路情報に基づいて、前記自動運転を制御することを特徴とする本発明に関連する第1の明の自動運転システムである。
【0012】
これにより、制御装置は、サーバに格納された自動運転経路情報に基づいて、自動運転を制御するので、作業車両の側の大きな情報処理負担なく自動運転を制御することができる。
【0013】
本発明に関連する第4の明は、前記測位装置は、前記作業車両、および前記作業車両に載置される携帯端末の少なくとも一方に搭載されることを特徴とする本発明に関連する第1から第3の何れかの明の自動運転システムである。
【0014】
これにより、測位装置は、作業車両、および作業車両に載置される携帯端末の少なくとも一方に搭載されるので、作業車両の位置の測定に関して高い利便性および融通性を有する構成を実現することができる。
【0015】
本発明に関連する第5の明は、前記基準経路情報は、前記圃場における手動運転を利用してあらかじめ生成され、前記サーバに格納された情報であることを特徴とする本発明に関連する第1から第4の何れかの明の自動運転システムである。
【0016】
これにより、基準経路情報は、圃場における手動運転を利用してあらかじめ生成されるので、基準経路情報の生成に関して高い利便性を有する構成を実現することができる。
【0017】
本発明に関連する第6の明は、前記サーバは、前記圃場における作業に関する作業情報を格納し、
前記制御装置は、前記サーバに格納された前記作業情報に基づいて、前記自動運転を制御することを特徴とする本発明に関連する第1から第5の何れかの明の自動運転システムである。
【0018】
これにより、サーバに格納された作業情報に基づいて、自動運転を制御するので、自動運転の制御に関して高い利便性を有する構成を実現することができる。
【0019】
本発明に関連する第7の明は、前記サーバへの情報書込み、および前記サーバからの情報読出しを実行する携帯端末を備えたことを特徴とする本発明に関連する第1から第6の何れかの明の自動運転システムである。
【0020】
これにより、サーバへの情報書込み、およびサーバからの情報読出しを実行する携帯端末を備えるので、サーバへの情報書込み、およびサーバからの情報読出しに関して高い利便性を有する構成を実現することができる。
【0021】
本発明に関連する第8の明は、前記サーバに格納された前記基準経路情報は、ユーザの指示に基づいて、前記制御装置へ読込まれ、
前記制御装置は、前記基準経路情報の読込みが終了すると、前記基準経路の経路始点へ向かう自動運転を制御することを特徴とする本発明に関連する第1から第7の何れかの明の自動運転システムである。
【0022】
これにより、基準経路情報の読込みが終了すると、基準経路の経路始点へ向かう自動運転を制御するので、基準経路の経路始点へ向かう自動運転の制御に関して高い利便性を有する構成を実現することができる。
【0023】
本発明に関連する第9の明は、前記経路始点へ向かう前記自動運転は、車両向きが前記基準経路の向きと一致するように前記基準経路の中途点へ前記作業車両を移動させた後、前記中途点から前記経路始点へ向かって前記作業車両を後進させることにより完了させられることを特徴とする本発明に関連する第8の明の自動運転システムである。
【0024】
これにより、経路始点へ向かう自動運転は、車両向きが基準経路の向きと一致するように基準経路の中途点へ作業車両を移動させた後、中途点から経路始点へ向かって作業車両を後進させることにより完了させられるので、基準経路の経路始点へ向かう自動運転の制御に関して高い正確性を有する構成を実現することができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明により、自動運転のための作業段取り時間を節約することが可能な自動運転システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本発明における実施の形態の自動運転システムのブロック図
図2】本発明における実施の形態の自動運転システムの模式的な左側面図
図3】本発明における実施の形態の自動運転システムの模式的な部分平面図(その一)
図4】本発明における実施の形態のトラクタの部分斜視図
図5】本発明における実施の形態の携帯端末の画面の説明図(その一)
図6】本発明における実施の形態の携帯端末の画面の説明図(その二)
図7】本発明における実施の形態の携帯端末の画面の説明図(その三)
図8】本発明における実施の形態の携帯端末の画面の説明図(その四)
図9】本発明における実施の形態の自動運転システムの模式的な部分平面図(その二)
図10】本発明における実施の形態の自動運転システムの模式的な平面図
図11】本発明における実施の形態の自動運転システムの模式的な部分平面図(その三)
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、図面を参照しながら、本発明における実施の形態について詳細に説明する。
【0028】
はじめに、図1〜3を参照しながら、本実施の形態の自動運転システムの構成および動作について具体的に説明する。
【0029】
ここに、図1は本発明における実施の形態の自動運転システムのブロック図であり、図2は本発明における実施の形態の自動運転システムの模式的な左側面図であり、図3は本発明における実施の形態の自動運転システムの模式的な部分平面図(その一)である。
【0030】
本実施の形態の自動運転システムは、圃場における少なくとも基準経路に関する基準経路情報を格納するサーバ110と、トラクタ200の位置を測定する外付GPS(Global Positioning System)300aおよび内蔵GPS300bと、サーバ110に格納された基準経路情報、および測定された位置の情報に基づいて、圃場におけるトラクタ200の自動運転を制御する、トラクタ200に搭載される自動運転制御部220と、を備えた自動運転システムである。
【0031】
図3においては、実線で示された基準経路が、車両幅Wとともに、経路始点Aと経路終点Bとの間の直線状のA−B線により設定されており、トラクタ200の自動運転が矢印に沿って制御される自動運転経路は点線で示されている。
【0032】
自動運転が制御されるトラクタ200の台数は、単数または複数である。
【0033】
すなわち、自動運転が制御されるトラクタ200の台数は、一であってもよいし、二以上であってもよい。
【0034】
自動運転が制御されるトラクタ200の台数が単数である具体例は、たとえば、以下の具体例Xである。具体例Xにおいては、ユーザが、トラクタ200を運転して耕耘作業を実行し、一年後に同じトラクタ200を運転して耕耘作業を実行する。
【0035】
自動運転が制御されるトラクタ200の台数が複数である具体例は、たとえば、以下の具体例YおよびZである。具体例Yにおいては、第1のユーザが自身のトラクタ200を運転して耕耘作業を実行し、別の第2のユーザが一年後に自身のトラクタ200を運転して耕耘作業を実行する。具体例Zにおいては、ユーザが、先行する第1のトラクタ200をリモートコントロールで運転して草刈り作業を実行しながら、同時に別の第2のトラクタ200を運転して耕耘作業を実行する。
【0036】
経路始点Aおよび経路終点B、ならびに基準経路の方向および向きなどは、さまざまである。
【0037】
たとえば、本発明における作業車両の一例である、農薬散布を行うための乗用管理機の作業幅が耕耘作業機を装着するためのトラクタ200の作業幅より大きい場合においては、乗用管理機の基準経路に関する圃場端からの距離はトラクタ200の基準経路に関する圃場端からの距離より大きい。本発明における作業車両の一例である、田植機のホイールベースがトラクタ200のホイールベースより小さい場合においては、田植機の基準経路に関する圃場端からの距離はトラクタ200の基準経路に関する圃場端からの距離より小さい。このような圃場端からの距離は、たとえば、経路始点Aと圃場端との間の距離、または経路終点Bと圃場端との間の距離により与えられる。
【0038】
したがって、一つの圃場について、さまざまな基準経路情報が基準経路情報サーバ110に格納されていてもよい。
【0039】
つぎに、図1を主として参照しながら、本実施の形態の自動運転システムの構成および動作についてより具体的に説明する。
【0040】
本実施の形態の自動運転システムの構成および動作について説明しながら、本発明に関連する発明における自動運転方法の一例についても説明する。
【0041】
トラクタ200は、ロボットトラクタなどである。
【0042】
近距離通信制御部211は、携帯端末400との通信のためのコントローラである。
【0043】
本発明における実施の形態のトラクタ200の部分斜視図である図4においては、トラクタ200のキャビン5000に載置された携帯端末400が示されている。前輪5100の後方のキャビン5000には、メータパネル251がダッシュボードカバー5200、ステアリングホイール5300および座席5400とともに配置される。ステアリングホイール5300の周りには、前後進レバー5510およびアクセルレバー5520が配置される。座席5400の前方には、クラッチペダル5610、左ブレーキペダル5621および右ブレーキペダル5622、ならびにアクセルペダル5630が配置される。
【0044】
ネットワーク通信制御部212は、サーバ110との通信のためのコントローラである。
【0045】
エンジン制御部213は、エンジン回転センサ1110からの信号を入手し、エンジンを制御する、トラクタ200のエンジンの制御のためのコントローラである。
【0046】
作業機昇降制御部214は、作業機昇降センサ2110からの信号を入手し、メインシリンダ2213を操作するためのメイン上昇ソレノイド2211およびメイン下降ソレノイド2212を制御する、トラクタ200に接続された耕耘機などのような作業機20101の制御のためのコントローラである。
【0047】
走行制御部215は、方位センサ3110、切れ角センサ3120、ステアリングホイールセンサ3130、車速センサ3140、ブレーキセンサ3150、および副変速レバー操作位置センサ3160からの信号を入手し、ステアリングシリンダ3213を操作するための左ステアリングソレノイド3211および右ステアリングソレノイド3212、油圧PTO(Power Take Off)クラッチ3222を操作するためのPTOクラッチソレノイド3221、左ブレーキ3232を操作するための左ブレーキソレノイド3231、右ブレーキ3242を操作するための右ブレーキソレノイド3241、前後進クラッチ3252を操作するための前後進ソレノイド3251、ならびに主変速クラッチ3262を操作するための主変速ソレノイド3261を制御する、トラクタ200の一般的な制御のためのコントローラである。
【0048】
自動運転制御部220は、上述されたさまざまなコントローラなどを統括し、ロボットトラクタ機能を実現するための中心的な役割を果たす、最上位のコントローラである。
【0049】
トラクタ200の内部における通信接続には、CAN(Controller Area Network)などが利用される。
【0050】
リモコン受信機222を経由して実行される、リモコン221と自動運転制御部220との間の通信接続には、429MHz帯の電波による無線通信などが利用される。
【0051】
クラウド100および公衆無線LAN(Local Area Network)を経由して実行される、サーバ110とネットワーク通信制御部212との間の通信接続には、Wi−Fi規格に基づいた近距離無線通信などが利用される。
【0052】
携帯端末400と近距離通信制御部211との間の通信接続には、赤外線通信、またはBluetooth(登録商標)規格に基づいた近距離無線通信などが利用される。
【0053】
クラウド100および公衆無線LANを経由して実行される、サーバ110と携帯端末400との間の通信接続には、Wi−Fi規格に基づいた近距離無線通信などが利用される。
【0054】
携帯端末400および管理PC(Personal Computer)には、機械情報管理サービスに対応したアプリケーションソフトウェアがインストールされている。
【0055】
サーバ110は、圃場における少なくとも基準経路に関する基準経路情報、および圃場における作業に関する作業情報を格納する農業ICT(Information and Communication Technology)クラウドコンピュータなどである。
【0056】
基準経路情報は、圃場における手動運転を利用してあらかじめ生成され、サーバ110に格納された情報である。
【0057】
基準経路情報は、携帯端末400および管理PCなどの機械情報管理サービスに対応した圃場マップ操作機能を利用してあらかじめ生成され、サーバ110に格納されてもよい。
【0058】
播種、施肥および薬剤散布などに関する作業情報の生成には、携帯端末400および管理PCなどが利用される。
【0059】
サーバ110に格納された情報は、インターネット接続によりダウンロード可能であり、設定情報の読込みによる作業の再現に繰返し利用される。したがって、トラクタ200にのみならず、トラクタ200と異なる他のトラクタ200にも、サーバ110に格納された設定情報が読込まれるので、自動運転のための作業段取り時間を節約することができる。
【0060】
携帯端末400は、サーバ110への情報書込み、およびサーバ110からの情報読出しを実行するタブレット端末スマートデバイスなどである。
【0061】
サーバ110に格納された情報は、携帯端末400を経由して自動運転制御部220へ読込まれてもよいし、携帯端末400を経由せず自動運転制御部220へ読込まれてもよい。SIM(Subscriber Identity Module)契約が有効でなく、携帯端末400のインターネット接続が利用可能でない場合においても、自動運転制御部220のインターネット接続が利用可能であれば、ネットワーク通信制御部212を利用して自動運転制御部220へ読込まれる情報は近距離通信制御部211を利用して携帯端末400へ転送可能である。
【0062】
同様に、圃場における手動運転を利用してあらかじめ生成された基準経路情報などは、携帯端末400を経由してサーバ110へ格納されてもよいし、携帯端末400を経由せずサーバ110へ格納されてもよい。
【0063】
そして、トラクタ200のキャビン5000に載置される携帯端末400と異なる他の携帯端末400が、サーバ110への情報書込み、およびサーバ110からの情報読出しを実行してもよい。
【0064】
トラクタ200のメータパネル251より表示性能および操作性能においてしばしば優れている、トラクタ200のキャビン5000に載置される携帯端末400には、ロボットトラクタ操作機能などがスマートデバイス拡張機能として実装される。
【0065】
本発明における実施の形態の携帯端末400の画面の説明図(その一)である図5においては、「トラクタ1」についての画面(その一)が示されている。「リモコン」タッチボタンおよび「圃場検索」タッチボタンを表示させるための「拡張機能」タッチボタンが、利用可能である。
【0066】
本発明における実施の形態の携帯端末400の画面の説明図(その二)である図6においては、「トラクタ1」についての画面(その二)が示されている。上述された「リモコン」タッチボタンおよび「圃場検索」タッチボタンが、利用可能である。
【0067】
上述された「リモコン」タッチボタンにより、「リモコン」機能が、利用可能である。より具体的には、リモコン221の電池消耗の場合においても自動運転制御部220の制御を命令することができるように、携帯端末400はリモコン221の役割を果たす。
【0068】
本発明における実施の形態の携帯端末400の画面の説明図(その三)である図7においては、「トラクタ1」についての画面(その三)が示されている。「停止」タッチボタン、「ホーン」タッチボタン、「前進」タッチボタン、「後進」タッチボタン、「作業機上げ」タッチボタンおよび「作業機下げ」タッチボタンが、利用可能である。このように、携帯端末400は、リモコン221の役割を果たす。
【0069】
上述された「圃場検索」タッチボタンにより、「圃場検索」機能が、利用可能である。より具体的には、内蔵GPS300bのGPS情報に紐付けられている、サーバ110に格納された周辺圃場の作業情報は、携帯端末400において表示されたロボットトラクタ操作専用画面の上のフリックおよびスワイプをともなうGUI(Graphical User Interface)オペレーションによりインターネット接続を利用して検索可能である。
【0070】
本発明における実施の形態の携帯端末400の画面の説明図(その四)である図8においては、「トラクタ1」および「圃場F1」についての画面(その四)が示されている。「作業情報」を含む「圃場情報」が詳細に表示されており、「前回設定で開始」タッチボタンおよび「新規設定」タッチボタンが利用可能である。このように、周辺圃場の作業情報は、インターネット接続を利用して検索可能である。
【0071】
本発明における実施の形態の自動運転システムの模式的な部分平面図(その二)である図9においては、複数の圃場F1、F2、F3、F4、F5およびF6が圃場の代表点P1、P2、P3、P4、P5およびP6とともに示されている。圃場F1、F2、F4およびF5は、現在地からの距離が上述された圃場の代表点に関して所定値V0より小さい周辺圃場である。
【0072】
本発明における実施の形態の自動運転システムの模式的な平面図である図10においては、複数の圃場F1、F2、F3、F4、F5およびF6が示されている。圃場F1、F2、F4およびF5は、周辺圃場である。携帯端末400の画面においては、「周辺圃場」に関する「圃場情報」を検索するためのタッチボタンが利用可能である。サーバ110においては、「代表点座標」、「面積」、「A点座標」および「B点座標」に関する情報、および「作業情報」を含む、複数の圃場F1、F2、F3…に関する「圃場情報」が格納されている。「作業情報」は、「主変速」、「副変速」、「車速」、「エンジン回転数」および「作業幅」に関する情報である。
【0073】
外付GPS300aおよび内蔵GPS300bは、トラクタ200の位置を測定するGNSS(Global Navigation Satellite System)機構などである。
【0074】
外付GPS300aは、トラクタ200に搭載される。内蔵GPS300bは、トラクタ200に載置される携帯端末400に搭載される。
【0075】
自動運転制御部220は、サーバ110に格納された基準経路情報、および測定された位置の情報、ならびにサーバ110に格納された作業情報に基づいて、圃場におけるトラクタ200の自動運転を制御する、トラクタ200に搭載されるロボットコントローラなどである。
【0076】
本実施の形態においては、サーバ110は、基準経路情報を格納し、自動運転制御部220は、サーバ110に格納された基準経路情報に基づいて、圃場におけるトラクタ200の自動運転経路に関する自動運転経路情報を生成し、自動運転経路情報に基づいて、自動運転を制御する。
【0077】
自動運転制御部220は自動運転経路情報を自ら生成するので、隣接運転経路間の距離は適切にカスタマイズされ、車両幅に応じた作業幅などに関するトラクタ200の側の条件に基づいて自動運転を制御することができる。
【0078】
基準経路の経路始点Aの緯度および経度、ならびに基準経路の経路終点Bの緯度および経度の情報は、A−B線の情報としてサーバ110に格納される。このような直線状のA−B線の情報は、圃場における自動ステアリング基準線としての基準経路を与える。したがって、前回作業時のA−B線の情報は、今回作業時の隣接運転経路間の距離が前回作業時の隣接運転経路間の距離と異なる場合においても、今回作業時のA−B線の情報として利用可能である。
【0079】
なお、サーバ110は、基準経路情報を含む、圃場における自動運転経路に関する自動運転経路情報を格納し、自動運転制御部220は、サーバ110に格納された自動運転経路情報に基づいて、自動運転を制御する、変形例の実施の形態も、考えられる。このような変形例の実施の形態においては、自動運転制御部220は自動運転経路情報を自ら生成する必要がないので、トラクタ200の側の大きな情報処理負担なく自動運転を制御することができる。
【0080】
サーバ110に格納された基準経路情報は、ユーザの指示に基づいて、自動運転制御部220へ読込まれ、自動運転制御部220は、基準経路情報の読込みが終了すると、基準経路の経路始点Aへ向かう自動運転を制御する。
【0081】
経路始点Aへ向かう自動運転は、車両向きが基準経路の向きと一致するように基準経路の中途点へトラクタ200を移動させた後、中途点から経路始点Aへ向かってトラクタ200を後進させることにより完了させられる。
【0082】
本発明における実施の形態の自動運転システムの模式的な部分平面図(その三)である図11においては、トラクタ200の経路始点Aへ向かう自動運転が矢印に沿って制御される自動運転経路は太い実線で示されている。厳密には、太い実線で示された自動運転経路は外付GPS300aまたは内蔵GPS300bの軌跡であり、車両向きの基準経路の向きとの一致は、たとえば、このような軌跡の基準経路への収束を利用して判定される。トラクタ200は、基準経路に沿ってしばらく前進させられながら、経路始点Aと経路終点Bとの間の点である中途点に至るので、車両向きはかなり正確に基準経路の向きと一致する。
【0083】
前回作業時のA−B線の情報が携帯端末400のGUIオペレーションにより設定された場合においては、トラクタ200は基準経路の経路始点Aへ直行せず近くの中途点へ向かって行くので、予期せぬ向きにおけるトラクタ200の突然な移動が抑制され、基準経路の経路始点Aへ向かう正確な自動運転を安全に制御することができる。
【0084】
そして、トラクタ200が使用されるトラクタとして携帯端末400のGUIオペレーションにより選択された時点で、アナログ情報およびオンオフ切替えのためのデジタル情報などのような、播種、施肥および薬剤散布などに関する設定情報としての作業情報は、近距離通信制御部211を利用して自動運転制御部220へ自動的に読込まれ、携帯端末400において表示される。作付け作物に基づいた圃場の作業情報が面倒なユーザの指示なくダウンロード可能であるので、ユーザフレンドリーな構成が実現される。
【0085】
なお、本発明に関連する発明におけるプログラムは、上述された本発明に関連する発明における自動運転方法の全部または一部のステップ(または、工程、動作もしくは作用など)の動作をコンピュータに実行させるためのプログラムであり、コンピュータと協働して動作するプログラムである。
【0086】
また、本発明に関連する発明における記録媒体は、上述された本発明に関連する発明における自動運転方法の全部または一部のステップ(または、工程、動作もしくは作用など)の全部または一部の動作をコンピュータに実行させるためのプログラムを記録する記録媒体であり、コンピュータにより読取り可能であり、読取られたプログラムがコンピュータと協働して利用される記録媒体である。
【0087】
なお、上述された「一部のステップ(または、工程、動作もしくは作用など)」は、それらの複数のステップの内の、一つまたは幾つかのステップを意味する。
【0088】
また、上述された「ステップ(または、工程、動作もしくは作用など)の動作」は、ステップの全部または一部の動作を意味する。
【0089】
また、本発明に関連する発明におけるプログラムは、インターネットなどの伝送媒体、または光、電波または音波などの伝送媒体の中を伝送し、コンピュータにより読取られ、コンピュータと協働して動作してもよい。
【0090】
また、記録媒体としては、ROM(Read Only Memory)などが含まれる。
【0091】
また、上述された本発明におけるコンピュータは、CPU(Central Processing Unit)などの純然たるハードウェアに限らず、ファームウェア、OS(Operating System)、そしてさらに周辺機器を含んでもよい。
【0092】
なお、上述されたように、本発明における構成は、ソフトウェア的に実現されてもよいし、ハードウェア的に実現されてもよい。
【0093】
サーバ110は、本発明におけるサーバの一例である。トラクタ200は、本発明における作業車両の一例である。外付GPS300aは本発明における測位装置の一例であり、内蔵GPS300bも本発明における測位装置の一例である。自動運転制御部220は、本発明における制御装置の一例である。携帯端末400は、本発明における携帯端末の一例である。
【産業上の利用可能性】
【0094】
本発明における自動運転システムは、自動運転のための作業段取り時間を節約することができ、トラクタなどのような作業車両のための自動運転システムに利用する目的に有用である。
【符号の説明】
【0095】
100 クラウド
110 サーバ
200 トラクタ
201 作業機
211 近距離通信制御部
212 ネットワーク通信制御部
213 エンジン制御部
214 作業機昇降制御部
215 走行制御部
220 自動運転制御部
221 リモコン
222 リモコン受信機
251 メータパネル
300a 外付GPS
300b 内蔵GPS
400 携帯端末
1110 エンジン回転センサ
2110 作業機昇降センサ
2211 メイン上昇ソレノイド
2212 メイン下降ソレノイド
2213 メインシリンダ
3110 方位センサ
3120 切れ角センサ
3130 ステアリングホイールセンサ
3140 車速センサ
3150 ブレーキセンサ
3160 副変速レバー操作位置センサ
3211 左ステアリングソレノイド
3212 右ステアリングソレノイド
3213 ステアリングシリンダ
3221 PTOクラッチソレノイド
3222 油圧PTOクラッチ
3231 左ブレーキソレノイド
3232 左ブレーキ
3241 右ブレーキソレノイド
3242 右ブレーキ
3251 前後進ソレノイド
3252 前後進クラッチ
3261 主変速ソレノイド
3262 主変速クラッチ
5000 キャビン
5100 前輪
5200 ダッシュボードカバー
5300 ステアリングホイール
5400 座席
5510 前後進レバー
5520 アクセルレバー
5610 クラッチペダル
5621 左ブレーキペダル
5622 右ブレーキペダル
5630 アクセルペダル
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11