特許第6919448号(P6919448)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6919448
(24)【登録日】2021年7月28日
(45)【発行日】2021年8月18日
(54)【発明の名称】内燃機関
(51)【国際特許分類】
   F01M 13/04 20060101AFI20210805BHJP
   F16H 57/027 20120101ALI20210805BHJP
   F16H 57/04 20100101ALI20210805BHJP
【FI】
   F01M13/04 F
   F16H57/027
   F16H57/04
【請求項の数】5
【全頁数】29
(21)【出願番号】特願2017-177993(P2017-177993)
(22)【出願日】2017年9月15日
(65)【公開番号】特開2019-52605(P2019-52605A)
(43)【公開日】2019年4月4日
【審査請求日】2020年7月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002082
【氏名又は名称】スズキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001380
【氏名又は名称】特許業務法人東京国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】尾関 久志
【審査官】 池田 匡利
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2012/0017866(US,A1)
【文献】 特開2013−217473(JP,A)
【文献】 特開平5−296019(JP,A)
【文献】 特開2007−321740(JP,A)
【文献】 実開昭61−186714(JP,U)
【文献】 特開平6−257420(JP,A)
【文献】 特開2015−113772(JP,A)
【文献】 特開平4−179813(JP,A)
【文献】 特開2006−083934(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01M 13/04
F16H 57/027
F16H 57/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブローバイガス流入口、および軸受ハウジングを有し、かつ前記ブローバイガス流入口に繋がるブリーザ室を区画するケースと、
前記軸受ハウジングに設けられる軸受と、
前記ブリーザ室の外側に配置され、かつ前記軸受に回転可能に支持される回転体と、を備え、
前記ブローバイガス流入口は、前記軸受ハウジングの周囲であって、前記回転体の回転中心線に沿う方向から見て前記回転体に覆い隠される位置に配置され、
前記ケースは、前記ケースに一体に設けられ、前記軸受ハウジングから突出し、かつ前記回転体の回転中心線に沿う方向から見て前記ブローバイガス流入口の少なくとも一部を覆う鍔部を有する内燃機関。
【請求項2】
前記鍔部は、前記ブローバイガス流入口の開口縁のうち前記軸受ハウジングに近い部位を覆う請求項1に記載の内燃機関。
【請求項3】
前記ケースに一体に設けられ、前記ブローバイガス流入口の開口縁のうち前記回転体の回転方向における前側に沿って前記軸受ハウジングの径方向へ延び、かつ前記ケースから前記回転体へ向かって突出する堤部を備える請求項1または2に記載の内燃機関。
【請求項4】
前記堤部は、前記軸受ハウジングから延びて前記ケースの縁に達している請求項3に記載の内燃機関。
【請求項5】
前記回転体は、クラッチと、前記クラッチによって回転力を伝達または遮断するプライマリードリブンギアと、を備える請求項1から4のいずれか1項に記載の内燃機関。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は内燃機関に関する。
【背景技術】
【0002】
変速装置室、およびブローバイガスからオイルミストを分離するブリーザ室をクランクケース内に備える内燃機関が知られている。
【0003】
ブローバイガスがブリーザ室へ流入する際、ブローバイガスと一緒に潤滑油の飛沫がブリーザ室に流入しないことが望ましい。そこで、従来の内燃機関は、潤滑油の飛沫がブリーザ室に流入することを防ぐために、潤滑油の飛沫の発生源とブローバイガス流入孔との間に、ブローバイガス流入孔を遮蔽する蓋状のブリーザプレートを備えている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−321740号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の内燃機関のように、クランクケースとは別部品(別体)のブリーザプレートを製作したり、取り付けたりすることは、内燃機関の重量やコストを増加させる。
【0006】
そこで、本発明は、従来のような別体のブリーザプレートを用いることなく、その重量およびコストを低減可能な内燃機関を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記の課題を解決するため本発明に係る内燃機関は、ブローバイガス流入口、および軸受ハウジングを有し、かつ前記ブローバイガス流入口に繋がるブリーザ室を区画するケースと、前記軸受ハウジングに設けられる軸受と、前記ブリーザ室の外側に配置され、かつ前記軸受に回転可能に支持される回転体と、を備え、前記ブローバイガス流入口は、前記軸受ハウジングの周囲であって、前記回転体の回転中心線に沿う方向から見て前記回転体に覆い隠される位置に配置され、前記ケースは、前記ケースに一体に設けられ、前記軸受ハウジングから突出し、かつ前記回転体の回転中心線に沿う方向から見て前記ブローバイガス流入口の少なくとも一部を覆う鍔部を有している。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、従来のような別体のブリーザプレートを用いることなく、その重量およびコストを低減可能な内燃機関を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の実施形態に係る内燃機関が適用される自動二輪車の一例を示す左側面図。
図2】本発明の実施形態に係る内燃機関を示す正面図。
図3】本発明の実施形態に係る内燃機関を示す左側面図。
図4】本発明の実施形態に係る内燃機関の潤滑構造の模式的な系統図。
図5】本発明の実施形態に係る内燃機関の潤滑系統の模式的な斜視図。
図6図2のVI−VI線における本発明の実施形態に係る内燃機関の断面図。
図7図2のVII−VII線における本発明の実施形態に係る内燃機関の断面図。
図8図3のVIII−VIII線における本発明の実施形態に係る内燃機関の断面図。
図9】本発明の実施形態に係る内燃機関のピストンとピストンジェットとの関係を模式的に示す概略図。
図10】本発明の実施形態に係る内燃機関のピストンとピストンジェットの他の例との関係を模式的に示す概略図。
図11】本実施形態に係る内燃機関の右側ケース半体の右側面の部分拡大図。
図12】本実施形態に係る内燃機関のクラッチ室の一部の斜視図。
図13図11のXIII−XIII線における本実施形態に係る内燃機関のブローバイガス流入口の断面図。
図14図6の一部を拡大して本実施形態に係る内燃機関のブリーザ室を示す図。
図15図7の一部を拡大して本実施形態に係る内燃機関のブリーザ室を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明に係る内燃機関の実施形態について図1から図15を参照して説明する。なお、複数の図面中、同一または相当する構成には同一の符号が付されている。
【0011】
図1は、本発明の実施形態に係る内燃機関が適用される自動二輪車の一例を示す左側面図である。
【0012】
なお、本実施形態における前後、上下、左右の表現は、自動二輪車1の乗員を基準にする。
【0013】
図1に示すように、本実施形態に係る自動二輪車1は、前後に延びる車体フレーム2と、車体フレーム2の前方に配置される前輪5と、車体フレーム2の前端部に配置されて前輪5を回転可能に支えるステアリング機構6と、車体フレーム2の後方に配置される後輪7と、車体フレーム2の後部に配置されて後輪7を回転可能に支えるスイングアーム8と、車体フレーム2に搭載される内燃機関11(以下、単に「エンジン11」と言う。)と、を備えている。また、自動二輪車1は、車体フレーム2の前半部上方に配置されてエンジン11へ供給される燃料を貯蔵する燃料タンク12と、車体フレーム2の後半部上方に配置されて搭乗者を着座させるシート13と、車体フレーム2の一部を覆い隠す車体カバー15と、を備えている。
【0014】
車体フレーム2は、所謂クレードルタイプである。車体フレーム2は、一体に組み合わされる複数の鋼鉄製中空管を備えている。つまり、車体フレーム2は、ヘッドパイプ21と、メインチューブ22と、ダウンチューブ23と、左右一対のシートレール25と、左右一対のシートピラー26と、を備えている。
【0015】
ヘッドパイプ21は、車体フレーム2の前端上部に配置されている。ヘッドパイプ21は、ステアリング機構6を車両の左右方向へ操舵買おうに支持している。
【0016】
メインチューブ22は、ヘッドパイプ21の後面上部に接続される前端部から斜め後ろ下方へ傾斜して延び、途中で湾曲して下方へ垂れ下がっている。
【0017】
ダウンチューブ23は、ヘッドパイプ21の後面下方に接続される前端部からメインチューブ22よりもさらに下方へ傾斜しながら後方へ延び、途中で湾曲して後方へ向かっている。
【0018】
左右一対のシートレール25は、メインチューブ22の湾曲部に接続される前端部から分岐し、かつ斜め後ろ上方へ緩く傾斜して延びている。
【0019】
左右一対のシートピラー26は、メインチューブ22の下端部に接続される前端部から分岐し、かつ斜め後ろ上方へ傾斜して延び、シートレール25の長さの中間部位に合流してシートレール25を支えている。
【0020】
ステアリング機構6は、サスペンション機構(図示省略)が内装され、かつ前輪5を回転可能に支持する左右一対のフロントフォーク27と、前輪5の上方に覆い被さるフロントフェンダー28と、フロントフォーク27の頂部に固定されるハンドル29と、を備えている。
【0021】
前輪5は、左右のフロントフォーク27の間に挟まり、左右のフロントフォーク27の下端部に架設される車軸を中心に回転する。
【0022】
スイングアーム8は、車体フレーム2に設けられるピボット軸(図示省略)によって支持され、上下方向へ揺動可能である。スイングアーム8の後端部には、後輪7を回転可能に支持する車軸が設けられている。リアクッションユニット31は、車体フレーム2とスイングアーム8との間に架設されている。リアクッションユニット31は、後輪7から車体フレーム2に伝わる力を緩衝する。
【0023】
ドライブチェーン32は、エンジン11の出力を後輪7へ伝達し、後輪7を回転させる。
【0024】
エンジン11は、メインチューブ22とダウンチューブ23との間に配置されて、メインチューブ22およびダウンチューブ23に固定されている。
【0025】
エンジン11の斜め前上方には、エンジン11各部の潤滑と冷却とを行う潤滑油を冷却するオイルクーラー33が設けられている。オイルクーラー33は、自動二輪車1の走行風に晒されやすいように、フロントフェンダー28および前輪5を正面に臨む位置を避けて配置されることが好ましい。
【0026】
燃料タンク12は、もっぱらメインチューブ22に支持されている。燃料タンク12は、ヘッドパイプ21の直後からシートレール25の前端部近傍に渡って膨らんでいる。
【0027】
シート13は、燃料タンク12の後方に設けられている。シート13は、左右のシートレール25に跨がり、シートレール25の後端部に達している。
【0028】
車体カバー15は、それぞれ合成樹脂製のフロントカバー35と、左右一対のサイドカバー36と、リアカバー37と、を含んでいる。
【0029】
フロントカバー35は、ヘッドパイプ21の前方に設けられている。フロントカバー35は、ステアリング機構6に固定されている。
【0030】
サイドカバー36は、燃料タンク12の後部下方に連接し、メインチューブ22、シートレール25およびシートピラー26に渡って逆三角形に拡がり、これらを左右から挟み込んでいる。
【0031】
リアカバー37は、シート13の後半部の左右両側面の下端部にそれぞれ連接して後方へ拡がり、シート13の後方まで延びて合流する。
【0032】
次に、本実施形態に係るエンジン11について詳細に説明する。
【0033】
図2は、本発明の実施形態に係る内燃機関を示す正面図である。
【0034】
図3は、本発明の実施形態に係る内燃機関を示す左側面図である。
【0035】
図2および図3に示すように、本実施形態に係るエンジン11は、例えば50ccクラスや250ccクラスの小排気量の内燃機関である。また、エンジン11は、4サイクル単気筒の内燃機関である。エンジン11は、クランクケース41と、クランクケース41に組み合わされるシリンダー42と、シリンダー42に組み合わされるシリンダーヘッド43と、シリンダーヘッド43に組み合わされるヘッドカバー44と、を備えている。
【0036】
クランクケース41は、アルミニウム合金製である。クランクケース41は、エンジン11の下半部に配置されている。クランクケース41は、一体化された変速装置ケース45を備えている。
【0037】
クランクケース41は、左側ケース半体51と、右側ケース半体52と、を備えている。クランクケース41は左右に分割できる。左右のケース半体51、52は、クランクシャフト47の回転中心線に実質的に略直交する結合面41aで組み合わされている。換言すると、左右のケース半体51、52は、結合面41aで一体化されている。クランクケース41は、クランクシャフト47の回転中心線に実質的に直交する結合面41aで組み合わされる左右一対のケース半体51、52を有している。
【0038】
また、クランクケース41は、左側ケース半体51の左側に設けられる左側ケースカバー53と、右側ケース半体52の右側に設けられる右側ケースカバー54と、を備えている。左側ケースカバー53はマグネトカバーであり、右側ケースカバー54はクラッチカバーである。
【0039】
シリンダー42は、シリンダーボア48の中心線、つまりピストン49の移動方向をやや前方へ傾けた前傾姿勢でクランクケース41の上面前部に結合されている。
【0040】
シリンダーヘッド43は、シリンダー42の頂部に結合されてシリンダー42を塞いでいる。シリンダーヘッド43の正面には排気ポート(図示省略)の出口フランジ43aが設けられている。シリンダーヘッド43の背面には吸気ポート(図示省略)の入口フランジ43bが設けられている。
【0041】
ヘッドカバー44は、シリンダーヘッド43の頂部に結合されてシリンダーヘッド43を塞いでいる。
【0042】
エンジン11には、オイルホース55、56を介してオイルクーラー33が接続されている。
【0043】
オイルクーラー33は、冷却風を生じさせるファン57を備えている。オイルクーラー33は、オイルホース55から流れ込む潤滑油をファン57の風や自動二輪車1の走行風によって冷却し、オイルホース56からエンジン11へ冷却後の潤滑油を戻す。
【0044】
オイルホース55、56は、エンジン11とオイルクーラー33との間で潤滑油を流通させる。
【0045】
下方に配置されるオイルホース55は、エンジン11からオイルクーラー33へオイルを送る。オイルホース55は、シリンダー42の正面壁と右側面壁との角部から延び、シリンダー42の正面を迂回してオイルクーラー33へ延びている。オイルホース55は、オイルクーラー33の底部に接続されている。
【0046】
上方に配置されるオイルホース56(第一戻し油路)は、オイルクーラー33からエンジン11へ潤滑油を戻す。オイルホース56は、シリンダー42の正面壁と左側面壁との角部からオイルクーラー33へ延びている。オイルホース56は、オイルクーラー33の頂部に接続されている。
【0047】
図4は、本発明の実施形態に係る内燃機関の潤滑構造の模式的な系統図である。
【0048】
図4に示すように、本実施形態に係るエンジン11は、クランクケース41、シリンダー42、およびシリンダーヘッド43に設けられて潤滑油を流通させる内燃機関側油路としてのオイル通路59を備えている。換言すると、エンジン11は、油冷式である。
【0049】
また、エンジン11は、クランクケース41の底部に設けられて潤滑油を貯留するオイル貯留部としてのオイルパン61を備えている。
【0050】
エンジン11は、オイルパン61に貯留されている潤滑油をクランクシャフト47、ピストン49、動弁機構62、変速装置63のカウンターシャフト65、および変速装置63のドライブシャフト66を含む被潤滑部へ供給して、これらを潤滑および冷却する。
【0051】
クランクケース41は、クランクシャフト47が収容されるクランク室67と、変速装置63が収容される変速装置室68と、を有している。変速装置室68は、変速装置ケース45に区画されている。換言すると、クランクケース41はクランク室67を区画し、変速装置ケース45は変速装置室68を区画している。クランク室67、および変速装置室68は、エンジン11の前後方向に並んでいる。クランク室67は、クランクケース41の前半部に配置され、変速装置室68はクランクケース41の後半部に配置されている。
【0052】
クランクシャフト47は、クランク室67内に回転可能に支持されている。クランクシャフト47は、クランクケース41の幅方向、つまりエンジン11の幅方向に回転中心線を向けている。ピストン49は、シリンダー42のシリンダーボア48に往復運動可能に収容されている。ピストン49は、シリンダー42内を往復動する。動弁機構62は、シリンダーヘッド43の動弁室(図示省略)に収容されている。カウンターシャフト65およびドライブシャフト66は、変速装置室68に収容されている。
【0053】
オイルクーラー33は、オイル通路59の最高点よりも上方に配置されている。オイルクーラー33は、オイル通路59を流通する潤滑油(図示省略)を冷却する。なお、内燃機関の潤滑構造は、エンジン11のオイル通路59およびオイルクーラー33を含んでいる。
【0054】
クランクケース41のオイル通路59aは、オイルパン61から潤滑油を汲み上げて、シリンダー42のオイル通路59bへ送り込む往路と、シリンダー42のオイル通路59bからオイルパン61へ潤滑油を戻す復路と、を含んでいる。
【0055】
クランクケース41のオイル通路59aの往路は、オイルパン61からクランクシャフト47の軸端47aへ潤滑油を導くクランクシャフト潤滑油路75と、オイルパン61から導かれる潤滑油をピストン49へ吹き掛けるピストン冷却油路76と、を備えている。
【0056】
クランクシャフト47の軸端47aへ供給された潤滑油は、クランクシャフト47を回転可能に支持する軸受(図示省略)や、クランクシャフト47とピストン49とを連結するコンロッド(図示省略)を潤滑して、クランク室67内に滴り落ちる。
【0057】
ピストン49に吹き掛けられた潤滑油は、クランク室67内に滴り落ちる。
【0058】
シリンダー42のオイル通路59bは、シリンダーヘッド43へ直接的に繋がる第一オイル通路81と、オイルホース55を介してオイルクーラー33に繋がる第二オイル通路82と、オイルホース56を介してオイルクーラー33に繋がり、かつシリンダーヘッド43に繋がる第三オイル通路83と、を含んでいる。
【0059】
なお、オイルホース56は、オイルクーラー33で冷却された潤滑油をシリンダー42内のオイル通路59bに戻す第一戻し油路である。
【0060】
シリンダーヘッド43のオイル通路59cは、シリンダー42の第一オイル通路81から流れ込む潤滑油を動弁機構62へ導く第四オイル通路84と、シリンダー42の第三オイル通路83から流れ込む潤滑油で排気ポート69の周囲を冷却する第五オイル通路85と、を含んでいる。
【0061】
シリンダー42のオイル通路59bは、シリンダーヘッド43の第五オイル通路85から流れ込む潤滑油を燃焼室70の周囲に環流させる第六オイル通路86と、第六オイル通路86からクランクケース41内へ潤滑油を戻す第七オイル通路87と、を備えている。
【0062】
なお、第七オイル通路87は、オイルクーラー33から戻ってシリンダー42およびシリンダーヘッド43を冷却した潤滑油をクランクケース41へ戻す第二戻し油路である。
【0063】
クランクケース41のオイル通路59aの復路部分は、シリンダー42の第七オイル通路87から流出する潤滑油を貯留する貯留部89と、貯留部89に繋がる第八オイル通路88と、を備えている。
【0064】
貯留部89は、変速装置室68に開放されている。そのため、貯留部89の潤滑油は、貯留部89を満たしつつ、貯留部89から変速装置室68に溢れ出る(図4中の実線矢印OF)。貯留部89から変速装置室68に溢れ出した潤滑油は、変速装置63を潤滑する。変速装置63を潤滑した潤滑油は、オイルパン61へ滴り落ちる。
【0065】
第八オイル通路88は、貯留部89からカウンターシャフト65の軸端65a、およびドライブシャフト66の軸端66aの少なくとも一方へ潤滑油を導く変速装置潤滑油路である。本実施形態に係る第八オイル通路88は、貯留部89からカウンターシャフト65の軸端65aへ潤滑油を導く第一変速装置潤滑油路91と、貯留部89からドライブシャフト66の軸端66aへ潤滑油を導く第二変速装置潤滑油路92と、を含んでいる。
【0066】
また、エンジン11は、クランク室67の底部に溜まった潤滑油を、変速装置室68へ汲み出す回収ポンプとしてのスカベンジングポンプ95を備えている。クランク室67の底部には、クランクシャフト47を潤滑してクランク室67内に滴り落ちる潤滑油、およびピストン49を冷却してクランク室67内に滴り落ちる潤滑油が溜まる。
【0067】
図5は、本発明の実施形態に係る内燃機関の潤滑系統の模式的な斜視図である。
【0068】
図4に加えて、図5に示すように、本実施形態に係るエンジン11は、オイルパン61から潤滑油を吸い上げるオイルポンプ96と、オイルポンプ96に吸い込まれる潤滑油から異物を除去する第一オイルフィルター98と、オイルポンプ96から吐出される潤滑油から異物を除去する第二オイルフィルター99と、を備えている。オイルポンプ96および第二オイルフィルター99は、クランクケース41のオイル通路59aの往路部分に設けられている。
【0069】
クランクケース41のオイル通路59aは、左側ケース半体51および右側ケース半体52のそれぞれに設けられてクランクケース41の結合面41aで接続されている。
【0070】
オイルポンプ96は、被潤滑部に潤滑油を圧送するフィードポンプである。オイルポンプ96は、クランクシャフト47の下方に配置されている。オイルポンプ96は、クランクシャフト47に回転一体の補機ドライブギア(図示省略)によって駆動される。オイルポンプ96の出力は、クランクシャフト47の回転数、つまりエンジン11の回転数に依存している。つまり、オイルポンプ96は、エンジン11の回転数が高まるほど多くの潤滑油を吐出する。オイルポンプ96の駆動によって、オイルパン61内の潤滑油はクランクケース41のオイル通路59aに吸い込まれる。オイルポンプ96は、ポンプ吐出側オイル通路101を介して第二オイルフィルター99に繋がれている。ポンプ吐出側オイル通路101は、オイルポンプ96から潤滑油が吐出される送給油路である。クランクケース41のオイル通路59aに吸い込まれた潤滑油は、第二オイルフィルター99を通過して異物を除去される。
【0071】
第二オイルフィルター99を通過した潤滑油は、クランクシャフト潤滑油路75を経てクランクシャフト47の軸端47aへ達する。また、第二オイルフィルター99を通過した潤滑油は、ピストン冷却油路76を経てピストン49に吹き掛けられる。
【0072】
さらに、第二オイルフィルター99を通過した潤滑油は、シリンダー42の第二オイル通路82、およびオイルホース55を経てオイルクーラー33で冷却される。オイルクーラー33で冷却された潤滑油は、オイルホース56、および第三オイル通路83を経てシリンダーヘッド43の第五オイル通路85へ至る。第五オイル通路85を通過して排気ポート69を冷却した潤滑油は、第六オイル通路86へ流れ込み、燃焼室70を冷却する。第六オイル通路86を通過して燃焼室70を冷却した潤滑油は、第七オイル通路87からクランクケース41へ戻される。
【0073】
また、シリンダー42で分岐して第一オイル通路81へ流れ込んだ潤滑油は、シリンダー42を上方へ登りシリンダーヘッド43の第四オイル通路84へ至り、動弁機構62を潤滑する。
【0074】
そして、第七オイル通路87からクランクケース41へ戻された潤滑油は、貯留部89に貯留される。貯留部89に貯留される潤滑油の一部は、貯留部89から第八オイル通路88に流れ出る。第八オイル通路88のうち第一変速装置潤滑油路91を通る潤滑油は、カウンターシャフト65の軸端65aへ達する。カウンターシャフト65の軸端65aに達した潤滑油は、カウンターシャフト65の軸芯に沿って延びる穴に流れ込み、カウンターシャフト65に回転可能に支持されるカウンターギア105を潤滑する。カウンターギア105を潤滑した潤滑油は、変速装置室68内を滴下してオイルパン61へ戻る。
【0075】
一方、第八オイル通路88のうち第二変速装置潤滑油路92を通る潤滑油は、ドライブシャフト66の軸端66aへ達する。ドライブシャフト66の軸端66aに達した潤滑油は、ドライブシャフト66の軸芯に沿って延びる穴に流れ込み、ドライブシャフト66に回転可能に支持されるドライブギア106を潤滑する。ドライブギア106を潤滑した潤滑油は、変速装置室68内を滴下してオイルパン61へ戻る。
【0076】
また、貯留部89で貯留される潤滑油の一部は、貯留部89から溢れ出して、変速装置室68内へ直接的に滴下する。変速装置室68内に滴下した潤滑油は、変速装置に掛かり、カウンターギア105やドライブギア106を潤滑し、変速装置室68内を滴下してオイルパン61へ戻る。
【0077】
なお、エンジン11のオイル通路59は、オイルホース56、第七オイル通路87、および第八オイル通路88の少なくともいずれか1つの途中に設けられる第二貯留部108を備えていても良い。例えば、本実施形態に係るオイル通路59は、第七オイル通路87の途中に設けられる第二貯留部108を備えている。第二貯留部108は、第二貯留部108からマグネトー109に潤滑油を導くマグネトー冷却通路としての第九オイル通路111に繋がれている。
【0078】
そして、オイル通路59の貯留部89は、オイルクーラー33よりも下方に配置されている。そのため、オイルクーラー33から流出する潤滑油は、オイルホース56、およびシリンダー42のオイル通路59bを経て貯留部89に流れ落ちる。換言すると、オイルクーラー33から流出する潤滑油は、オイルクーラー33の頂部と貯留部89との水頭によって貯留部89に達する。つまり、オイルポンプ96は、潤滑油をオイルクーラー33の頂部まで揚程できればよい。
【0079】
また、カウンターシャフト65の軸端65a、およびドライブシャフト66の軸端66aのうち第八オイル通路88に繋がる軸端は、貯留部89よりも下方に配置されている。つまり、本実施形態に係るエンジン11のオイル通路59において、第一変速装置潤滑油路91に繋がるカウンターシャフト65の軸端65aは、貯留部89よりも下方に配置され、第二変速装置潤滑油路92に繋がるドライブシャフト66の軸端66aも、貯留部89よりも下方に配置されている。そのため、貯留部89から流出する潤滑油は、第一変速装置潤滑油路91を経てカウンターシャフト65の軸端65aに流れ落ち、第二変速装置潤滑油路92を経てドライブシャフト66の軸端66aに流れ落ちる。貯留部89は変速装置室68に解放されているため、貯留部89から流出する潤滑油は、貯留部89とカウンターシャフト65の軸端65aとの水頭によってカウンターシャフト65の軸端65aに達し、貯留部89とドライブシャフト66の軸端66aとの水頭によってドライブシャフト66の軸端66aに達する。つまり、オイルポンプ96の吐出圧は、カウンターシャフト65の軸端65a、およびドライブシャフト66の軸端66aには作用しない。
【0080】
貯留部89は、左右一対のケース半体51、52に跨がり、かつ実質的に全幅に渡って樋状に延びて変速装置室68に開放されている。
【0081】
第八オイル通路88は、貯留部89の幅方向における一方の端部89aからカウンターシャフト65の軸端65aへ潤滑油を導き、貯留部89の幅方向における他方の端部89bからドライブシャフト66の軸端66aへ潤滑油を導く。つまり、第八オイル通路88のうち第一変速装置潤滑油路91は、貯留部89の左側の端部89aからカウンターシャフト65の軸端65aへ潤滑油を導く。第八オイル通路88のうち第二変速装置潤滑油路92は、貯留部89の右側の端部89bからドライブシャフト66の軸端66aへ潤滑油を導く。
【0082】
第八オイル通路88は、実質的に全長に渡って下り傾斜している。つまり、第一変速装置潤滑油路91は、貯留部89の左側の端部89aからカウンターシャフト65の軸端65aへ向かって、その全長に渡って下り傾斜している。第二変速装置潤滑油路92は、貯留部89の右側の端部89bからドライブシャフト66の軸端66aへ向かって、その全長に渡って下り傾斜している。
【0083】
図6は、図2のVI−VI線における本発明の実施形態に係る内燃機関の断面図である。
【0084】
図7は、図2のVII−VII線における本発明の実施形態に係る内燃機関の断面図である。
【0085】
なお、図6および図7は、クランクケース41の結合面41aにおけるエンジン11の断面図に相当する。換言すると、図6は、結合面41a側から見た右側ケース半体52であり、図7は、結合面41a側から見た左側ケース半体51である。
【0086】
図6および図7に示すように、本実施形態に係るエンジン11のクランクケース41は、クランク室67の下方と変速装置室68の下方とに跨がって潤滑油を貯留するオイル貯留室121を有するオイルパン61と、クランク室67と変速装置室68とを隔てる第一共通隔壁122と、クランク室67とオイル貯留室121とを隔てる第二共通隔壁123と、変速装置室68内に設けられ、第一共通隔壁122に対面して吐出油路125を区画する吐出油路区画壁126と、第一共通隔壁122からオイルパン61に延びて、オイルパン61のうちクランク室67の下方部分と変速装置室68の下方部分との間における潤滑油の移動を妨げる板体部128と、を備えている。
【0087】
また、クランクケース41は、ブローバイガスからオイルミストを分離するブリーザ室129を備えている。換言すると、クランクケース41は、クランク室67、および変速装置室68に加えてブリーザ室129を区画している。ブリーザ室129は、変速装置室68に併設され、かつ変速装置室68の上方に配置されている。
【0088】
クランクケース41、変速装置ケース45、オイルパン61、板体部128は、クランクシャフト47に直交する結合面41aで一対のケース半体51、52に分割可能である。
【0089】
オイルパン61は、クランクケース41に一体化されるオイル貯留部である。オイルパン61は、潤滑油を貯留するオイル貯留室121を区画している。オイル貯留室121は、変速装置室68に繋がれている一方、第二共通隔壁123によってクランク室67から隔離されている。
【0090】
第一共通隔壁122は、クランクケース41に一体化されている。第一共通隔壁122は、クランクケース41と変速装置ケース45とで共有されている。換言すると、第一共通隔壁122の一方の面は、クランク室67の内面の一部を担い、第一共通隔壁122の他方の面は、変速装置室68の内面の一部を担っている。第一共通隔壁122は、実質的に一様な厚さ(一方の面と他方の面との面間の距離)を有している。第一共通隔壁122は、クランクシャフト47のカウンターウェイト47bの外形に倣って円弧状に拡がっている。
【0091】
第二共通隔壁123は、クランクケース41に一体化されている。クランクケース41とオイルパン61とで共有されている。換言すると、第二共通隔壁123の一方の面は、クランク室67の内面の一部を担い、第二共通隔壁123の他方の面は、オイル貯留室121の内面の一部を担っている。第二共通隔壁123は、実質的に一様な厚さ(一方の面と他方の面との面間の距離)を有している。
【0092】
スカベンジングポンプ95は、第一共通隔壁122と第二共通隔壁123との合流部分、かつ右側ケース半体52に設けられている。スカベンジングポンプ95は、第一共通隔壁122と第二共通隔壁123との合流部分に設けられるスカベンジングポンプハウジング131に収容されている。
【0093】
スカベンジングポンプ95は、所謂トロコイド型ポンプである。スカベンジングポンプ95は、アウターローター95aと、インナーローター95bと、を備えている。スカベンジングポンプ95は、アウターローター95a、およびインナーローター95bの回転中心線をクランクケース41の幅方向へ向けている。換言すると、アウターローター95a、およびインナーローター95bの回転中心線、つまりスカベンジングポンプ95の回転中心線は、クランクシャフト47の回転中心線に対して平行に配置されている。
【0094】
スカベンジングポンプ95は、クランク室67よりもオイルパン61の底壁132の内面、つまりオイルパン61の底面61aに近い。スカベンジングポンプ95のうち、オイルパン61の底面61aに最も近い部位95cは、クランク室67のうち、オイルパン61の底面61aに最も近い部位67aよりも、オイルパン61の底面61aに近い。
【0095】
スカベンジングポンプハウジング131は、右側ケース半体52に設けられてスカベンジングポンプ95を収容するポンプ収容部131aと、左側ケース半体51に設けられてポンプ収容部131aを塞ぐポンプ収納蓋部131bと、を含んでいる。スカベンジングポンプハウジング131は、クランク室67に繋がる吸込口135と、変速装置室68に繋がる吐出口136と、を有している。スカベンジングポンプ95の両方の端面は、吸込口135にも吐出口136にも面している。スカベンジングポンプ95は、両方の端面から潤滑油を吸い込み、両方の端面から潤滑油を吐出させる。吸込口135は、スカベンジングポンプ95の端面から吐出される潤滑油をスカベンジングポンプ95の径方向へ流出させる。つまり、スカベンジングポンプ95は、潤滑油を径方向から吸い込んで、径方向へ吐出させる。
【0096】
吸込口135は一対ある。一方の吸込口135は、左側ケース半体51のポンプ収納蓋部131bに設けられている。他方の吸込口135は、右側ケース半体52のポンプ収容部131aに設けられている。吐出口136は一対ある。一方の吐出口136は、左側ケース半体51のポンプ収納蓋部131bに設けられている。他方の吐出口136は、右側ケース半体52のポンプ収容部131aに設けられている。
【0097】
スカベンジングポンプハウジング131の吸込口135は、第二共通隔壁123の後端部に配置されている。第二共通隔壁123は、スカベンジングポンプハウジング131の吸込口135に向かって下り傾斜している。換言すると、第二共通隔壁123の一方の面、つまりクランク室67側の面は、スカベンジングポンプハウジング131の吸込口135に向かって下り傾斜している。
【0098】
吐出油路区画壁126は、第一共通隔壁122の変速装置室68側の壁面、換言すると変速装置室68の内壁面に対面している。吐出油路区画壁126は、スカベンジングポンプハウジング131から変速装置室68の高さ方向へ延びている。吐出油路区画壁126は、変速装置室68の左右両側壁内面に達して、変速装置室68の幅いっぱいに拡がっている。換言すると、吐出油路区画壁126は、クランクケース41の左右両側壁内面に達して、クランクケース41の幅いっぱいに拡がっている。吐出油路区画壁126と第一共通隔壁122との間には、吐出油路125が区画されている。吐出油路125は、変速装置室68の上方へ向かって開放されている。つまり、吐出油路125は、吐出油路区画壁126を堤とするオイル溜まりでもある。吐出油路125は、スカベンジングポンプ95から変速装置室68へ潤滑油を吐出させる。吐出油路125の底部は、スカベンジングポンプ95の吐出口136に繋がっている。換言すると、スカベンジングポンプ95は、クランク室67に溜まった潤滑油を変速装置室68に通じる吐出油路125へ吐出する。なお、オイルパン61に貯留される潤滑油の油面OLは、吐出油路区画壁126の最高位よりも若干低い。油面OLは、水平状態で変速装置63のギアに触れない。
【0099】
板体部128は、スカベンジングポンプ95の下部からクランクケース41の後方へ向かって延びている。板体部128は、変速装置室68の真下にあって、変速装置室68の奥行き(前後方向の寸法)の実質的に前側半分の範囲に延びている。板体部128の一方の外面は、変速装置室68を臨み、板体部128の他方の外面は、オイルパン61の底面61aを臨んでいる。
【0100】
板体部128は、潤滑油をオイルパン61から吸い出す吸込口141と、吸込口141に繋がって潤滑油を流通させるフィルター上流側オイル通路142と、を有している。
【0101】
フィルター上流側オイル通路142は、第一オイルフィルター98に繋がっている。フィルター上流側オイル通路142は、吸込口141から吸い込まれる潤滑油を第一オイルフィルター98へ導く。
【0102】
第一オイルフィルター98は、左側ケース半体51に設けられている。第一オイルフィルター98は、左側ケース半体51の左側へ開放されるフィルター収容部143に配置されている。フィルター収容部143は、左側ケースカバー53、つまりマグネトカバーによって閉じられている。フィルター収容部143は、フィルター上流側オイル通路142に繋がっている。また、フィルター収容部143は、左側ケース半体51、および右側ケース半体52を横断するフィルター下流側オイル通路144を介してオイルポンプ96に繋がっている。
【0103】
板体部128は、オイルパン61の底壁132から離れている。換言すると、フィルター上流側オイル通路142を区画する板体部128の壁146とオイルパン61の底壁132とは離間している。フィルター上流側オイル通路142を区画する壁146とオイルパン61の底壁132との隙間は、潤滑油を貯留するオイル貯留室121の一部である。この隙間、つまり板体部128とオイルパン61の底壁132との隙間は、通常、潤滑油で満たされている。この隙間は、オイル貯留室121の他の部位よりもエンジン11の上下方向に狭い。卑近な表現ではあるが、この隙間は、実質的に、オイル貯留室121の他の部位よりも天井高が低い。
【0104】
板体部128は、吐出油路125よりもオイルパン61の底面61aに近い。板体部128は、スカベンジングポンプハウジング131よりもオイルパン61の底面61aに近い。板体部128の他方の外面の後端縁部は、板体部128の他の部位に比べてオイルパン61の底壁132に最も近い。この部位は、オイル貯留室121で最も高さの低い部位である。
【0105】
板体部128とオイルパン61の底面61aとの隙間部分を境にして、オイル貯留室121のクランク室67側の部分は、クランクケース41の前側から後ろ側へ向かってやや後ろ下がりに傾斜する第二共通隔壁123と、スカベンジングポンプハウジング131に沿ってクランクケース41の前側から後ろ側へ向かって円弧形に天井高の低くなる部分と、スカベンジングポンプハウジング131から延びる板体部128によって段状に天井高の低くなる板体部128とオイルパン61の底面61aとの隙間部分に達している。第二共通隔壁123とスカベンジングポンプハウジング131との境界は、フィルター下流側オイル通路144を区画する壁面によって円弧形に天井高を下げている。
【0106】
オイル貯留室121の変速装置室68側の部分は、板体部128の天井にあたる壁面が、変速装置室68の上方を臨んで、段状に底上げされている。
【0107】
板体部128は、オイル貯留室121の左右両側壁内面に達して、オイル貯留室121の幅いっぱいに拡がっている。換言すると、板体部128は、クランクケース41の左右両側壁内面に達して、実質的にクランクケース41の幅いっぱいに拡がっている。フィルター上流側オイル通路142も、オイル貯留室121の左右両側壁内面に達して、オイル貯留室121の幅いっぱいに拡がっている。換言すると、フィルター上流側オイル通路142は、クランクケース41の左右両側壁内面に達して、実質的にクランクケース41の幅いっぱいに拡がっている。フィルター上流側オイル通路142の吸込口141は、クランクケース41の幅方向中央部に設けられている。つまり、吸込口141は、左側ケース半体51と右側ケース半体52との結合面41aを跨いでいる。吸込口141は、オイル貯留室121からオイル通路59に潤滑油を吸い上げる、オイル通路59全体の入り口にあたる。吸込口141は、オイルパン61の底面61a、つまりオイルパン61の底壁132の内面へ向いている。吸込口141は、オイルパン61の底面61aを臨む、板体部128の他方の外面の後端縁部に配置されている。吸込口141は、板体部128の他の部位に比べてオイルパン61の底壁132に最も近い部位である、板体部128の他方の外面の後端縁部の中央部に設けられている。
【0108】
オイル貯留室121に貯留される潤滑油は、エンジン11を搭載する自動二輪車1の加速、および減速によって液面動揺(スロッシング)を生じる。潤滑油は、自動二輪車1が加速する際にはエンジン11の後方、つまり変速装置室68側へ移動する一方、自動二輪車1が減速する際にはエンジン11の前方、つまりクランク室67側へ移動する。液面揺動によって、変速装置63のギアが潤滑油に浸ると、変速装置63のギアが潤滑油を攪拌し、ひいてはギアの回転の抵抗になる。また、液面揺動によって、オイル通路59の入り口にあたる吸込口141が油面の外側に露出してしまうと、被潤滑部への潤滑油の供給が一時的に絶たれてしまう虞もある。
【0109】
そこで、本実施形態に係るエンジン11は、オイル貯留室121の潤滑油中に板体部128を備えている。板体部128とオイルパン61の底壁132との隙間は、オイル貯留室121内にあって、オイル貯留室121のうちクランク室67の真下の部分と変速装置室68の真下の部分とを繋げつつ、両部分よりも天井高が低く、潤滑油が流動する流路断面積を狭めている(絞っている)。そのため、自動二輪車1の加速、または減速によって生じるオイル貯留室121内の潤滑油の流動、特にクランク室67の真下の部分と変速装置室68の真下の部分との間の潤滑油の往来が、板体部128とオイルパン61の底壁132との隙間によって抑制される。このクランク室67の真下の部分と変速装置室68の真下の部分との間の潤滑油の往来の抑制効果は、オイル貯留室121内の液面揺動を遅らせ、抑制する。
【0110】
図8は、図3のVIII−VIII線における本発明の実施形態に係る内燃機関の断面図である。
【0111】
なお、図8は、スカベンジングポンプ95の回転中心線を通る。
【0112】
図8に示すように、本実施形態に係るエンジン11のクランクケース41は、右側ケース半体52の右側面に設けられるオイルブロック147を備えている。
【0113】
オイルブロック147は、右側ケース半体52と協働してクランクケース41のオイル通路59aを区画している。オイルブロック147は、右側ケースカバー54に覆い隠されている。
【0114】
オイルポンプ96およびスカベンジングポンプ95は、いずれか一方のケース半体51、52、本実施形態においては右側ケース半体52に設けられている。右側ケース半体52は、クランクシャフト47の回転中心線方向において逆向きに開口され、オイルポンプ96およびスカベンジングポンプ95のそれぞれを収容する一対のポンプ収容部131a、151aを有している。
【0115】
オイルポンプ96は、第一共通隔壁122と第二共通隔壁123との合流部分、かつ右側ケース半体52に設けられている。オイルポンプ96は、第一共通隔壁122と第二共通隔壁123との合流部分に設けられるオイルポンプハウジング151に収容されている。
【0116】
オイルポンプ96は、スカベンジングポンプ95と同様に、所謂トロコイド型ポンプである。オイルポンプ96は、アウターローター96aと、インナーローター96bと、を備えている。オイルポンプ96は、アウターローター96a、およびインナーローター96bの回転中心線をクランクケース41の幅方向へ向けている。換言すると、アウターローター96a、およびインナーローター96bの回転中心線、つまりオイルポンプ96の回転中心線は、クランクシャフト47の回転中心線に対して平行に配置されている。オイルポンプ96の回転軸芯96cと、スカベンジングポンプ95の回転軸芯95dとは、同軸上にあって一体化されている。一体化された回転軸芯96c、95dの一方の軸端は、右側ケース半体52の右側面よりも右側方、かつオイルブロック147の右側面よりも右側方へ突出している。回転軸芯96c、95dの一方の軸端には、クランクシャフト47に回転一体の補機ドライブギアに噛み合わされる補機ドリブンギア152が設けられている。
【0117】
オイルポンプハウジング151は、右側ケース半体52に設けられてオイルポンプ96を収容するポンプ収容部151aと、オイルブロック147に設けられてポンプ収容部151aを塞ぐポンプ収納蓋部151bと、を含んでいる。オイルポンプハウジング151は、第一オイルフィルター98に繋がる吸込口155と、第二オイルフィルター99に繋がる吐出口156と、を有している。
【0118】
オイルポンプハウジング151の吸込口155は一対ある。一方の吸込口155は、オイルブロック147のポンプ収納蓋部151bに設けられている。他方の吸込口155は、右側ケース半体52のポンプ収容部151aに設けられている。吐出口156は一対ある。一方の吐出口156は、オイルブロック147のポンプ収納蓋部151bに設けられている。他方の吐出口156は、右側ケース半体52のポンプ収容部151aに設けられている。オイルポンプ96の両方の端面は、吸込口155にも吐出口156にも面している。オイルポンプ96は、両方の端面から潤滑油を吸い込み、両方の端面から潤滑油を吐出させる。吸込口155は、オイルポンプ96の端面から吐出される潤滑油をオイルポンプ96の径方向へ流出させる。つまり、オイルポンプ96は、潤滑油を径方向から吸い込んで、径方向へ吐出させる。
【0119】
スカベンジングポンプハウジング131の吸込口135は、クランク室67の後端部中央部に配置されている。換言すると、クランク室67は、案内油路158からスカベンジングポンプ95へ潤滑油を吸い込む吸込口135を有している。
【0120】
クランク室67の底部は、クランク室67に溜まった潤滑油をスカベンジングポンプ95へ案内する案内油路158である。案内油路158は、スカベンジングポンプ95の吸込口135に向かって下り傾斜するとともに、スカベンジングポンプ95の吸込口135に向かって幅(クランクケースの幅方向寸法)を狭める。
【0121】
そして、クランクケース41は、ポンプ吐出側オイル通路101と案内油路158とを表裏一対の壁面159a、159bで隔てる隔壁159を備えている。隔壁159は、右側ケース半体52に設けられている。つまり、クランクケース41は、オイルポンプ96から吐出される潤滑油が流通するポンプ吐出側オイル通路101と、スカベンジングポンプ95へ潤滑油を導く案内油路158と、を隔壁159の表裏に隣り合わせて区画している。
【0122】
隔壁159は、オイルポンプ96のクランク室67側への投影領域PAに掛かり、スカベンジングポンプ95へ近づくにつれて変速装置室68側へ湾曲して吸込口135に達する。隔壁159は、実質的に一様な板厚を有している。
【0123】
クランク室67側の壁面159aは、案内油路158を区画するクランク室67の内壁面の一部である。壁面159aは、オイルポンプ96の回転中心線に実質的に直交する方向からオイルポンプ96に近づき、クランクケース41の結合面41aへ向かって円弧を描きながら方向を変化させ、投影領域PAから脱して結合面41aへ近づくにつれて円弧を描きながらクランク室67の後端縁に近づいて、一対の吸込口135のうち、オイルポンプ96に近い側のスカベンジングポンプ95の端面に繋がる吸込口135aに達する。
【0124】
壁面159bは、ポンプ吐出側オイル通路101を区画する右側ケース半体52の壁面の一部である。壁面159bは、一対の吸込口155のうち、スカベンジングポンプ95に近い側のオイルポンプ96の端面に繋がる吸込口155aから円弧を描きながらオイルポンプ96の径方向へ離れ、クランクケース41の結合面41aから離れる方向へ延びて投影領域PAに侵入し、さらに結合面41aから離れるにつれて円弧を描きながらオイルポンプ96の径方向へ向きを変えてオイルポンプ96から離れる。
【0125】
図9は、本発明の実施形態に係る内燃機関のピストンとピストンジェットとの関係を模式的に示す概略図である。
【0126】
図4から図7に加えて、図9に示すように、本実施形態に係るエンジン11は、ピストン49へ潤滑油を噴射するオイル噴射部としてのピストンジェット171を備えている。
【0127】
ピストン49は、一対のピンボス173と、一対のスカート174と、ピンボス173とスカート174とを接続する一対のサイドウォール175と、を備えている。また、ピストン49は、一対のピンボス173の内側面173a、一対のスカート174の内側面174a、および一対のサイドウォール175の内側面175aに囲まれるピストン内側領域176を有している。
【0128】
クランクケース41のオイル通路59aは、ピストンジェット171に繋がっている。
【0129】
ピストンジェット171は、一対のピンボス173のそれぞれに潤滑油を噴射する一対のオイル噴射孔178を有している。一対のオイル噴射孔178は、シリンダーボア48の中心線に対して対称であって、かつ一対のピンボス173の間に挟まれる領域に配置されている。一対のオイル噴射孔178は、クランクケース41に直接的に穿たれた加工穴である。
【0130】
ピストンジェット171は、ピストン49が上死点TDCにあるとき、ピンボス173に潤滑油を吹き掛け、ピストン49が下死点BDCにあるとき、ピストン内側領域176に潤滑油を吹き掛ける。より詳しくは、ピストンジェット171の一方のオイル噴射孔178は、ピストン49が上死点TDCにあるとき、一方のピンボス173に潤滑油を吹き掛け、ピストン49が下死点BDCにあるとき、ピストン内側領域176に潤滑油を吹き掛ける。ピストンジェット171の他方のオイル噴射孔178は、ピストン49が上死点TDCにあるとき、他方のピンボス173に潤滑油を吹き掛け、ピストン49が下死点BDCにあるとき、ピストン内側領域176に潤滑油を吹き掛ける。つまり、ピストンジェット171は、ある一つのオイル噴射孔178で、一対のピンボス173のいずれか一方と、ピストン内側領域176に潤滑油を吹き掛けることができる。
【0131】
ピストンジェット171の潤滑油の噴射方向Jは、一対のスカート174よりもピストン内側領域176を指向している。
【0132】
また、ピストンジェット171の潤滑油の噴射方向Jは、上死点TDCにあるピストン49のピンボス173の内側縁181tと下死点BDCにあるピストン49のピンボス173の内側縁181bとの間に挟まれる噴射領域182に含まれている。この噴射方向Jは、ピストン49が上死点TDCにあるとき、ピンボス173の内側縁181tよりも外側の領域、つまりピストン内側領域176の外側へ潤滑油を吹き掛け、ピストン49が下死点BDCにあるとき、ピンボス173の内側縁181bよりも内側の領域、つまりピストン内側領域176へ潤滑油を吹き掛ける。このような噴射方向Jは、ピストン49が上死点TDCと下死点BDCとの間で往復移動する際に、ピンボス173とピストン内側領域176とへ交互に潤滑油を拭きかけて、両方の箇所と、両方の箇所の間の部位を冷却し、潤滑する。
【0133】
なお、下死点BDCにあるピストン49のピンボス173の内側縁181bとオイル噴射孔178とを結ぶ直線の延長線は、上死点TDCにあるピストン49のピンボス173の外側縁183に達している、またはそれよりも外側に達していることが好ましい。また、ピストンジェット171の潤滑油の噴射角度は、噴射領域182の外側に広がっていても良い。
【0134】
また、ピストンジェット171の潤滑油の噴射角度は、極力狭い方が良い。噴射角度が狭い方が、潤滑油を狙った箇所へより集中して潤滑油を吹き掛けることができる。
【0135】
図10は、本発明の実施形態に係る内燃機関のピストンとピストンジェットの他の例との関係を模式的に示す概略図である。
【0136】
なお、他の例のピストンジェット171Aにおいて、図9に示したピストンジェット171と同じ構成には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0137】
図10に示すように、本実施形態に係るエンジン11のピストンジェット171Aは、一対のピンボス173のそれぞれに潤滑油を噴射する一対のオイル噴射孔178Aを有している。一対のオイル噴射孔178Aは、シリンダーボア48の中心線に対して対称であって、かつ一対のピンボス173の間に挟まれる領域の外側に配置されている。
【0138】
ピストンジェット171Aは、ピストン49が下死点BDCにあるとき、ピンボス173に潤滑油を吹き掛け、ピストン49が上死点TDCにあるとき、ピストン内側領域176に潤滑油を吹き掛ける。より詳しくは、ピストンジェット171Aの一方のオイル噴射孔178Aは、ピストン49が下死点BDCにあるとき、一方のピンボス173に潤滑油を吹き掛け、ピストン49が上死点TDCにあるとき、ピストン内側領域176に潤滑油を吹き掛ける。ピストンジェット171Aの他方のオイル噴射孔178Aは、ピストン49が下死点BDCにあるとき、他方のピンボス173に潤滑油を吹き掛け、ピストン49が上死点TDCにあるとき、ピストン内側領域176に潤滑油を吹き掛ける。つまり、ピストンジェット171Aは、ある一つのオイル噴射孔178で、一対のピンボス173のいずれか一方と、ピストン内側領域176に潤滑油を吹き掛けることができる。
【0139】
また、ピストンジェット171の潤滑油の噴射方向Jは、上死点TDCにあるピストン49のピンボス173の内側縁181tと下死点BDCにあるピストン49のピンボス173の内側縁181bとの間に挟まれる噴射領域182Aに含まれている。この噴射方向Jは、ピストン49が上死点TDCにあるとき、ピンボス173の内側縁181tよりも内側の領域、つまりピストン内側領域176へ潤滑油を吹き掛け、ピストン49が下死点BDCにあるとき、ピンボス173の内側縁181bよりも外側の領域、つまりピストン内側領域176の外側の領域へ潤滑油を吹き掛ける。このような噴射方向Jは、ピストン49が上死点TDCと下死点BDCとの間で往復移動する際に、ピンボス173とピストン内側領域176とへ交互に潤滑油を拭きかけて、両方の箇所と、両方の箇所の間の部位を冷却し、潤滑する。
【0140】
なお、上死点TDCにあるピストン49のピンボス173の内側縁181tとオイル噴射孔178Aとを結ぶ直線は、下死点BDCにあるピストン49のピンボス173の外側縁183を通る、またはそれよりも外側を通ることが好ましい。また、ピストンジェット171Aの潤滑油の噴射角度は、噴射領域182Aの外側に広がっていても良い。換言すると、図9、および図10に示すように、本実施形態に係るピストンジェット171、171Aは、ピストン49が上死点TDCおよび下死点BDCのいずれか一方にあるとき、ピンボス173に潤滑油を吹き掛け、ピストン49が上死点TDCおよび下死点BDCのいずれか他方にあるとき、ピストン内側領域176に潤滑油を吹き掛ける。
【0141】
次いで、エンジン11のブリーザ室129について詳しく説明する。
【0142】
図11は、本実施形態に係る内燃機関の右側ケース半体の右側面の部分拡大図である。
【0143】
図12は、本実施形態に係る内燃機関のクラッチ室の一部の斜視図である。
【0144】
図13は、図11のXIII−XIII線における本実施形態に係る内燃機関のブローバイガス流入口の断面図である。
【0145】
図11から図13に示すように、本実施形態に係るエンジン11のクランクケース41は、軸受ハウジング201と、ブローバイガス流入口202と、を備えている。
【0146】
軸受ハウジング201およびブローバイガス流入口202は、右側ケース半体52の壁部のうち、右側ケースカバー54に覆い隠される部位、つまりクラッチ室203内の部位に設けられている。
【0147】
軸受ハウジング201は、軸受205を保持している。軸受205は、カウンターシャフト65を回転自在に支えている。軸受ハウジング201および軸受205は、カウンターシャフト65を介してクラッチ206およびプライマリードリブンギア207を回転自在に支えている。
【0148】
プライマリードリブンギア207は、カウンターシャフト65に回転可能に設けられている。クランクシャフト47には、プライマリードライブギア(図示省略)が回転一体に設けられている。プライマリードライブギアは、カウンターシャフト65のプライマリードリブンギア207に常時噛み合わされている。プライマリードリブンギア207は、クラッチ206の接続によって回転力をカウンターシャフト65に伝達し、またはクラッチ206の切断(断絶、遮断)によって回転力をカウンターシャフト65から遮断する。
【0149】
クラッチ206は、カウンターシャフト65の軸端部に設けられている。クラッチ206は、クランクシャフト47とカウンターシャフト65との間で回転(回転駆動力)を伝達したり遮断したりする。クラッチ206は、カウンターシャフト65とプライマリードリブンギア207との回転を一体化させたり、別体化させたりして、クランクシャフト47とカウンターシャフト65との間で回転(回転駆動力)を伝達したり遮断したりする。
【0150】
クラッチ206およびプライマリードリブンギア207は、クラッチ室203に収容されている。つまり、クラッチ206およびプライマリードリブンギア207は、ブリーザ室129の外側に配置されている。クラッチ206およびプライマリードリブンギア207は、カウンターシャフト65を回転軸とする回転体である。つまり、クラッチ206、プライマリードリブンギア207、およびカウンターシャフト65の回転中心線は、実質的に一致している。
【0151】
ブローバイガス流入口202は、クラッチ室203とブリーザ室129とを繋ぐブローバイガスの流路である。ブローバイガス流入口202は、クラッチ室203からブリーザ室129へブローバイガスを流入させる(図13中の実線矢印F)。
【0152】
ブローバイガス流入口202は、軸受ハウジング201の周囲の一部であって、カウンターシャフト65の回転中心線に沿う方向から見て(例えば図11)クラッチ206およびプライマリードリブンギア207に覆い隠される位置に配置されている。ブローバイガス流入口202は、軸受ハウジング201の外周形状に倣って、部分円環形(弧形)を有している。ブローバイガス流入口202は、部分円環の周方向の開口寸法L1に比べて径方向の開口寸法L2の方が小さい。
【0153】
貯留部89からドライブシャフト66の軸端66aへ潤滑油を導く第二変速装置潤滑油路92が軸受ハウジング201の下方の縁部を迂回する一方、ブローバイガス流入口202は、軸受ハウジング201の上方に配置されている。換言すると、軸受ハウジング201は、上方側のブローバイガス流入口202と、下方側の第二変速装置潤滑油路92との間に挟まれている。
【0154】
クラッチ206、およびプライマリードリブンギア207が回転する際、第二変速装置潤滑油路92からカウンターシャフト65の軸端66aへ供給される潤滑油は、変速装置63に加えてクラッチ206、およびプライマリードリブンギア207の潤滑にも用いられる。クラッチ206、およびプライマリードリブンギア207を潤滑した潤滑油は、クラッチ206、およびプライマリードリブンギア207の回転によってクラッチ室203内に飛び散る。
【0155】
このクラッチ206、およびプライマリードリブンギア207から飛び散る潤滑油の飛沫は、クラッチ206、およびプライマリードリブンギア207に形成される重量軽減口(図示省略)、窪み(図示省略)や、クラッチ206とプライマリードリブンギア207との間の衝撃を緩衝するスプリング(図示省略)などの非平坦形状部分によってカウンターシャフト65の回転中心線方向の速度成分、およびクラッチ206、およびプライマリードリブンギア207の周方向(回転方向)の速度成分を付与される。そのため、クラッチ206、およびプライマリードリブンギア207から飛び散る潤滑油の飛沫は、クラッチ206、およびプライマリードリブンギア207から径方向外側へ向かって放射状に飛び散る一方、カウンターシャフト65の回転中心線方向(軸方向)、および周方向(回転方向)へも拡散する。この結果、ブローバイガスに含まれる潤滑油の飛沫の一部は、ブローバイガス流入口202へ向かう。
【0156】
そこで、本実施形態に係るエンジン11のクランクケース41は、クランクケース41に一体に設けられ、軸受ハウジング201から突出し、かつクラッチ206およびプライマリードリブンギア207の回転中心線に沿う方向から見てブローバイガス流入口202の少なくとも一部を覆う鍔部211を備えている。
【0157】
鍔部211は、ブローバイガス流入口202の開口縁のうち軸受ハウジング201に近い部位、つまり部分円環形の内径側202aを覆っている。鍔部211は、ブローバイガス流入口202の内径側202aの全幅(軸受ハウジング201の周方向における全長)に渡っていることが好ましい。鍔部211は、ブローバイガス流入口202の全体を覆っていても良い。ただし、鋳造製のクランクケース41の場合には、鍔部211は、ブローバイガス流入口202の外径側より大きくないことが好ましい。
【0158】
また、クランクケース41は、クランクケース41に一体に設けられ、ブローバイガス流入口202の開口縁のうちクラッチ206およびプライマリードリブンギア207の回転方向(図11中の実線矢印R)における前側202bに沿って軸受ハウジング201の径方向へ延び、かつクランクケース41からクラッチ206およびプライマリードリブンギア207へ向かって突出する堤部212を備えている。
【0159】
堤部212は、軸受ハウジング201から延びてクランクケース41の縁に達している。換言すると、堤部212は、軸受ハウジング201に突き当たる一方の端部と、クランクケース41の縁に突き当たる他方の端部と、を備えている。堤部212は、軸受ハウジング201の中心、つまりクラッチ206およびプライマリードリブンギア207の回転中心線を通り、かつ軸受ハウジング201の径方向へ延びる仮想的な直線に倣って延びている。
【0160】
なお、堤部212は、ブローバイガス流入口202の前側202bの全長に及んでいることが好ましい。堤部212は、軸受ハウジング201から離れていても良いし、クランクケース41の縁から離れていても良い。堤部212は、軸受ハウジング201の中心を通り、かつ軸受ハウジング201の径方向へ延びる仮想的な直線に対して傾いていても良く、湾曲していても良い。
【0161】
鍔部211および堤部212は、クランクケース41に一体成形されている。鋳造製のクランクケース41では、鍔部211および堤部212は、鋳型によってクランクケース41に一体成形される。換言すると、ブローバイガス流入口202、鍔部211、および堤部212は、鋳型によってクランクケース41に形成される。鍔部211、および堤部212は、従来のエンジンにおけるブリーザプレートのようにネジなどの締結部品を用いることなく、クランクケース41に一体成形されている。
【0162】
鍔部211および堤部212は、クラッチ206およびプライマリードリブンギア207の回転に伴って飛び散る潤滑油の飛沫が、ブローバイガスとともにブローバイガス流入口202に直接的に飛び込む(流れ込む、流入する)ことを防いでいる。潤滑油の飛沫は、クラッチ206およびプライマリードリブンギア207の径方向外側へ向かって飛び散るとともに、カウンターシャフト65の軸方向および周方向へ拡散する。鍔部211および堤部212は、卑近な表現であるが家屋の庇や、帽子の鍔のように機能して、飛び散る潤滑油の飛沫を遮り、ブローバイガス流入口202に潤滑油の飛沫が飛び込むことを防ぐ。鍔部211は、もっぱら軸方向へ拡散する潤滑油の飛沫を遮り、堤部212は、もっぱら周方向へ拡散する潤滑油の飛沫を遮る。
【0163】
図14は、図6の一部を拡大して本実施形態に係る内燃機関のブリーザ室を示す図である。
【0164】
図15は、図7の一部を拡大して本実施形態に係る内燃機関のブリーザ室を示す図である。
【0165】
図13に加えて、図14および図15に示すように、本実施形態に係るエンジン11のブリーザ室129は、所謂ラビリンス構造を有している。つまり、ブリーザ室129は、右側ケース半体52と左側ケース半体51とに跨がって区画される複数の小部屋215を有している。
【0166】
複数の小部屋215は、ブローバイガス流入口202に繋がる第一小部屋216aと、第一小部屋216aに繋がる第二小部屋216bと、第二小部屋216bに繋がる第三小部屋216cと、を含んでいる。
【0167】
各小部屋215は、右側ケース半体52と左側ケース半体51とに跨がって区画される。つまり、各小部屋215は、クランクケース41の結合面41aを境にして右側ケース半体52に区画されている部分と、左側ケース半体51に区画されている部分を含んでいる。右側ケース半体52側の部分小部屋215aは、左側ケース半体51へ向かって開放され、左側ケース半体51側の部分小部屋215bは、右側ケース半体52へ向かって開放されている。
【0168】
ここで、部分小部屋215aと部分小部屋215bとの境、つまり結合面41aに交差して隣り合う小部屋215の方向へ拡がり、かつ部分小部屋215aおよび部分小部屋215bのそれぞれを二分する仮想的な分割面DPを定める。この分割面DPを基準(境)に、分割される部分小部屋215aの一方側を部分小部屋215aの一方の隅部217aaとし、他方側を部分小部屋215aの他方の隅部217abとする。また、分割面DPを基準(境)に、分割される部分小部屋215bの一方側を部分小部屋215bの一方の隅部217baとし、他方側を部分小部屋215bの他方の隅部217bbとする。換言すると、各小部屋215は、一対の部分小部屋215a、215bを有し、4つの隅部217aa、隅部217ab、隅部217ba、隅部217bbを有している。
【0169】
なお、小部屋215の形状は、矩形に限られず、三角形や台形を含む多角形や、円形、および楕円形であっても良い。これらの形状の小部屋215についても、結合面41aに交差する仮想的な分割面DPを基準に4つに領域に区画して、それら区画を隅部と呼ぶ。
【0170】
また、本実施形態において各隅部217aa、217ab、217ba、および217bbの配置を理解しやすいように、隅部217aaを右下隅部217aaと呼び、隅部217abを右上隅部217abと呼び、隅部217baを左下隅部217baと呼び、隅部217bbを左上隅部217bbと呼ぶ。ただし、各小部屋215の方向性はこれに限られず、各隅部217aa、217ab、217ba、および217bbを前後方向に分割するものや、水平面または垂直面に対して傾いて分割されるものであっても良い。
【0171】
そして、ブローバイガス流入口202は、第一小部屋216aの右下隅部217aa(右側ケース半体52側の一方の隅部aa)に配置されている。第一小部屋216aと第二小部屋216bとは、左上隅部217bb(左側ケース半体51側の他方の隅部217bb)で繋がっている。第二小部屋216bと第三小部屋216cとは、右下隅部217aa(右側ケース半体52側の一方の隅部217aaで繋がっている。つまり、各小部屋215は、ある隅部で上流側の小部屋215に繋がり、小部屋215の中央部を経て、あるいは小部屋215の中央部を跨いで対角する隅部で下流側の小部屋215に繋がっている。
【0172】
換言すると、ブリーザ室129は、第一小部屋216aおよび第二小部屋216bの左上隅部217bbを繋げる第一ブローバイガス流通口218aと、第二小部屋216bおよび第三小部屋216cの右下隅部217aaを繋げる第二ブローバイガス流通口218bと、を有している。卑近な表現ではあるが、ブリーザ室129は、各小部屋215の中央部を経ながらブローバイガスをジグザグに流通させる。このようなジグザグの流通経路は、限られた容積の中でより長距離の流路長さを獲得できる。
【0173】
複数の小部屋215は、湾曲する隔壁221によって間仕切りされている。隔壁221は複数あって、小部屋215毎に対面している。複数の小部屋215は、ブローバイガス流入口202に近い上流側の第一小部屋216aから下流側の第三小部屋216cへ向かって扇形の中心から遠ざかるように層状に並んでいる。複数の小部屋215は、ブリーザ室129全体で部分円環を重ねたように並んでいる。
【0174】
このように並ぶ部分円環形の小部屋215は、ブローバイガスの流れに遠心力を生じさせる。この遠心力は、ブローバイガスに含まれる飛沫した潤滑油をブローバイガスから遠心分離させる。ブリーザ室129は、ブローバイガスのジグザグの流通経路に遠心分離効果を相乗させる。
【0175】
また、ブローバイガスの流れにおいて、第二小部屋216bよりも下流側の小部屋215、つまり第三小部屋216cは、右側ケース半体52に設けられてブローバイガスの流れを第三小部屋216cの右側ケース半体52側(部分小部屋215a側)から左側ケース半体51側(部分小部屋215b側)を経て再び右側ケース半体52側(部分小部屋215a側)へ往来させる仕切板223を有している。
【0176】
仕切板223は、第三小部屋216cの結合面41aに達して部分小部屋215aの部分小部屋215aを二分している。つまり、仕切板223は、第三小部屋216c内のブローバイガスの流れを湾曲させる。
【0177】
複数の小部屋215は、ブローバイガス流入口202から遠ざかるほど(下流側へ行くほど)、曲率半径の大きい隔壁221に間仕切りされ、曲率半径の大きい部分円環形になる。そのため、下流側の小部屋215は、上流側の小部屋215よりも、より大きい容積を確保しやすい。そこで、第二小部屋216bよりも下流側の小部屋215、つまり第三小部屋216cを仕切板223で小部屋215内をさらに細分化することで、ブローバイガスの流れを多数回湾曲させて、ブローバイガスに含まれる飛沫した潤滑油をブローバイガスから分離させる。
【0178】
なお、仕切板223は、1つの小部屋215に複数あっても良い。つまり、仕切板223は、右側ケース半体52または左側ケース半体51に設けられてブローバイガスの流れを小部屋215の一方のケース半体側(右側ケース半体52および左側ケース半体51のいずれか一方側)から他方のケース半体側(右側ケース半体52および左側ケース半体51の他方側)を経て再び一方のケース半体側へ往来させる。
【0179】
それぞれの小部屋215の底部には、小部屋215内で凝縮した潤滑油を流出させるオイル流出孔225が設けられている。オイル流出孔225は、クランクケース41の結合面41aを跨いでいる。オイル流出孔225は、左右のケース半体51、52それぞれに設けられる切り欠き状の凹部を組み合わせた開口である。
【0180】
本実施形態に係るブリーザ室129は、クラッチ室203からブローバイガス流入口202を通じて第一小部屋216aの右下隅部217aaにブローバイガスを流入させる(図14中の実線矢印f1)。また、ブリーザ室129は、第一小部屋216aの右下隅部217aaに流れ込んだブローバイガスを、第一小部屋216aの中央部(結合面41a近傍)を経て第一小部屋216aの左上隅部217bbへ導く(図15中の実線矢印f2)。ブリーザ室129は、第一小部屋216aの左上隅部217bbに達したブローバイガスを、第一ブローバイガス流通口218aを通じて第二小部屋216bの左上隅部217bbに流入させる(図15中の実線矢印f3)。ブリーザ室129は、第二小部屋216bの左上隅部217bbに流れ込んだブローバイガスを、第二小部屋216bの中央部(結合面41a近傍)を経て第二小部屋216bの右下隅部217aaへ導く(図15中の実線矢印f4)。ブリーザ室129は、第二小部屋216bの右下隅部217aaに達したブローバイガスを、第二ブローバイガス流通口218bを通じて第三小部屋216cの右下隅部217aaに流入させる(図14中の実線矢印f5)。ブリーザ室129は、第三小部屋216cの右下隅部217aaに流れ込んだブローバイガスを、仕切板223を迂回させるように右側ケース半体52側(部分小部屋215a側)から左側ケース半体51側(部分小部屋215b側)を経て再び右側ケース半体52側(部分小部屋215a側)へ往来させる(図15中の実線矢印f6)。そして、ブリーザ室129は、第三小部屋216cの右上隅部217abに達したブローバイガスを、クランクケース41の外面に突出したブローバイガス流出管226から流出させる(図14中の実線矢印f7)。
【0181】
なお、ブリーザ室129は、ブローバイガス流入口202および各小部屋215間のブローバイガスの流通経路がエンジン11の上下左右に反転して配置されていても良い。例えば、ブローバイガス流入口202は、左側ケース半体51に設けられていても良く、各小部屋215を繋ぐブローバイガス流通口(第一ブローバイガス流通口218a、第二ブローバイガス流通口218b)も、左右が反転していて良い。
【0182】
また、ブローバイガス流入口202は、第一小部屋216aの右上隅部217abに繋がっていても良い。この場合、第一ブローバイガス流通口218aは、第一小部屋216aおよび第二小部屋216bの左下隅部217baを繋げていることが好ましい。第二ブローバイガス流通口218bも同様である。
【0183】
ここで、右側ケース半体52、および左側ケース半体51のいずれか一方を第一ケース半体と呼び、他方を第二ケース半体と呼ぶ。つまり、ブリーザ室129は、第一ケース半体と第二ケース半体とに跨がって区画される複数の小部屋215を有している。
【0184】
エンジン11は、右側ケース半体52のうちブリーザ室129を区画する第一壁部51b、および左側ケース半体51のうちブリーザ室129を区画する第二壁部51aのそれぞれに一体に設けられる内燃機関懸架用ボス228を備えている。内燃機関懸架用ボス228は、右側ケース半体52に一体に設けられるボス半体228aと、左側ケース半体51に一体に設けられるボス半体228bと、を有している。ボス半体228aおよびボス半体228bは、クランクケース41の結合面41aで結合されて一体化される。
【0185】
ブリーザ室129は、小部屋215を間仕切りする隔壁221によってラビリンス構造を有する。そのため、ブリーザ室129は、クランクケース41の他の部位よりも高い剛性を有している。内燃機関懸架用ボス228は、このように高い剛性を有するブリーザ室129に一体化されている。
【0186】
また、ブリーザ室129の第三小部屋216cには、室内を横断する仕切板223が設けられている。仕切板223は、内燃機関懸架用ボス228の径方向へ延びている。そのため、第三小部屋216cは、クランクケース41の他の部位よりも高い剛性を有している。内燃機関懸架用ボス228は、このように高い剛性を有するブリーザ室129の第三小部屋216cに一体化されている。
【0187】
本実施形態に係るエンジン11は、軸受ハウジング201から突出し、かつクラッチ206の回転中心線に沿う方向から見てブローバイガス流入口202の少なくとも一部を覆う鍔部211を備えている。鍔部211は、回転体、例えばクラッチ206やプライマリードリブンギア207から飛沫する潤滑油のブローバイガス流入口202を通じたブリーザ室129への侵入を防ぐ。そのため、エンジン11は、ブリーザ室129への潤滑油の飛沫の浸入を防ぐことができる。
【0188】
また、本実施形態に係るエンジン11は、ブローバイガス流入口202の開口縁のうち軸受ハウジング201に近い部位、つまり内径側202aの部位を覆う鍔部211を備えている。回転体、例えばクラッチ206やプライマリードリブンギア207から飛沫する潤滑油は、回転体の径方向外側へ拡散する。そのため、鍔部211は、回転体の径方向内側から外側へ拡散する潤滑油の飛沫のブローバイガス流入口202への侵入を防ぐ。そのため、エンジン11は、ブリーザ室129への潤滑油の飛沫の浸入をより確実に防ぐことができる。
【0189】
さらに、本実施形態に係るエンジン11は、ブローバイガス流入口202の開口縁のうちクラッチ206の回転方向における前側の部位に沿って軸受ハウジング201の径方向へ延び、かつクランクケース41からクラッチ206へ向かって突出する堤部212を備えている。堤部212は、回転体、例えばクラッチ206やプライマリードリブンギア207から飛沫する潤滑油のうち回転体の回転に引きずられて回転体の径方向へ飛沫する潤滑油のブローバイガス流入口202を通じたブリーザ室129への侵入を防ぐ。そのため、エンジン11は、ブリーザ室129への潤滑油の飛沫の浸入を防ぐことができる。
【0190】
さらにまた、本実施形態に係るエンジン11は、軸受ハウジング201から延びてクランクケース41の縁に達する堤部212を備えている。そのため、エンジン11は、ブリーザ室129への潤滑油の飛沫の浸入を防ぎ、かつブローバイガス流入口202を有するクランクケース41を補強することができる。
【0191】
なお、ブローバイガス流入口202の配置は、クランクケース41のうちクラッチ206またはプライマリードリブンギア207に対面する部位に限られない。ブローバイガス流入口202は、ブリーザ室129の配置にともなって、例えば、クランクシャフト47に設けられるプライマリードライブギアに対面する部位や、補機ドリブンギア152に対面する部位に設けられていても良い。
【0192】
したがって、本実施形態に係るエンジン11によれば、従来のような別体のブリーザプレートを用いることなく、その重量およびコストを低減できる。
【符号の説明】
【0193】
1…自動二輪車、2…車体フレーム、5…前輪、6…ステアリング機構、7…後輪、8…スイングアーム、11…内燃機関、11…エンジン、12…燃料タンク、13…シート、15…車体カバー、21…ヘッドパイプ、22…メインチューブ、23…ダウンチューブ、25…シートレール、26…シートピラー、27…フロントフォーク、28…フロントフェンダー、29…ハンドル、31…リアクッションユニット、32…ドライブチェーン、33…オイルクーラー、35…フロントカバー、36…サイドカバー、37…リアカバー、41…クランクケース、41a…結合面、42…シリンダー、43…シリンダーヘッド、43a…出口フランジ、43b…入口フランジ、44…ヘッドカバー、45…変速装置ケース、47…クランクシャフト、47a…軸端、47b…カウンターウェイト、48…シリンダーボア、49…ピストン、51…左側ケース半体、51a…第二壁部、52…右側ケース半体、51b…第一壁部、53…左側ケースカバー、54…右側ケースカバー、55、56…オイルホース、57…ファン、59…オイル通路、59a…クランクケースのオイル通路、59b…シリンダーのオイル通路、59c…シリンダーヘッドのオイル通路、61…オイルパン、61a…底面、62…動弁機構、63…変速装置、65…カウンターシャフト、65a…軸端、66…ドライブシャフト、66a…軸端、67…クランク室、67a…部位、68…変速装置室、69…排気ポート、70…燃焼室、75…クランクシャフト潤滑油路、76…ピストン冷却油路、81…第一オイル通路、82…第二オイル通路、83…第三オイル通路、84…第四オイル通路、85…第五オイル通路、86…第六オイル通路、87…第七オイル通路、88…第八オイル通路、89…貯留部、89a…一方の端部、89b…他方の端部、91…第一変速装置潤滑油路、92…第二変速装置潤滑油路、95…スカベンジングポンプ、95a…アウターローター、95b…インナーローター、95c…オイルパンの底面に最も近い部位、95d…回転軸芯、96…オイルポンプ、96a…アウターローター、96b…インナーローター、96c…回転軸芯、98…第一オイルフィルター、99…第二オイルフィルター、101…ポンプ吐出側オイル通路、105…カウンターギア、106…ドライブギア、108…第二貯留部、109…マグネトー、111…第九オイル通路、121…オイル貯留室、122…第一共通隔壁、123…第二共通隔壁、125…吐出油路、126…吐出油路区画壁、128…板体部、129…ブリーザ室、131…スカベンジングポンプハウジング、132…オイルパンの底壁、131a…ポンプ収容部、131b…ポンプ収納蓋部、135…吸込口、135a…吸込口、136…吐出口、141…吸込口、142…フィルター上流側オイル通路、143…フィルター収容部、144…フィルター下流側オイル通路、146…板体部の壁、147…オイルブロック、151…オイルポンプハウジング、152…補機ドリブンギア、151a…ポンプ収容部、151b…ポンプ収納蓋部、155…吸込口、155a…吸込口、156…吐出口、158…案内油路、159…隔壁、159a…クランク室側の壁面、159b…壁面、171、171A…ピストンジェット、173…ピンボス、173a…内側面、174…スカート、174a…内側面、175…サイドウォール、175a…内側面、176…ピストン内側領域、178、178A…オイル噴射孔、181t…内側縁、181b…内側縁、182、182A…噴射領域、183…外側縁、201…軸受ハウジング、202…ブローバイガス流入口、202a…内径側、202b…前側、203…クラッチ室、205…軸受、206…クラッチ、207…プライマリードリブンギア、211…鍔部、212…堤部、215…小部屋、215a…右側ケース半体側の部分小部屋、215b…左側ケース半体側の部分小部屋、216a…第一小部屋、216b…第二小部屋、216c…第三小部屋、217a…一方の隅部、217b…他方の隅部、217aa…右下隅部、217ab…右上隅部、217ba…左下隅部、217bb…左上隅部、218a…第一ブローバイガス流通口、218b…第二ブローバイガス流通口、221…隔壁、223…仕切板、225…オイル流出孔、226…ブローバイガス流出管、228…内燃機関懸架用ボス、228a…右側ケース半体のボス半体、228b…左側ケース半体のボス半体。
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