特許第6919503号(P6919503)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6919503
(24)【登録日】2021年7月28日
(45)【発行日】2021年8月18日
(54)【発明の名称】重荷重用空気入りタイヤ
(51)【国際特許分類】
   B60C 13/00 20060101AFI20210805BHJP
   B60C 13/02 20060101ALI20210805BHJP
【FI】
   B60C13/00 C
   B60C13/02
【請求項の数】7
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2017-211042(P2017-211042)
(22)【出願日】2017年10月31日
(65)【公開番号】特開2019-81514(P2019-81514A)
(43)【公開日】2019年5月30日
【審査請求日】2020年9月3日
(73)【特許権者】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104134
【弁理士】
【氏名又は名称】住友 慎太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100156225
【弁理士】
【氏名又は名称】浦 重剛
(74)【代理人】
【識別番号】100168549
【弁理士】
【氏名又は名称】苗村 潤
(74)【代理人】
【識別番号】100200403
【弁理士】
【氏名又は名称】石原 幸信
(72)【発明者】
【氏名】細田 恭弘
【審査官】 赤澤 高之
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−056176(JP,A)
【文献】 特開2014−125108(JP,A)
【文献】 特開平07−164831(JP,A)
【文献】 特開2015−042535(JP,A)
【文献】 特開2010−274740(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C 1/00− 43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
サイドウォール部の表面に、タイヤ半径方向にのびる複数のリッジがタイヤ周方向に並列されたセレーション部と、タイヤ周方向にのびて各リッジと接続される凸状のベントラインと、を備える重荷重用空気入りタイヤであって、
前記リッジのピッチは、タイヤ周方向で変化する、
重荷重用空気入りタイヤ。
【請求項2】
前記セレーション部は、タイヤ周方向に交互に配された第1セレーション部及び第2セレーション部を含み、
前記第2セレーション部での前記ピッチは、前記第1セレーション部での前記ピッチよりも小である請求項1記載の重荷重用空気入りタイヤ。
【請求項3】
前記第2セレーション部での前記ピッチは、前記第1セレーション部での前記ピッチの0.5〜0.8倍である請求項2記載の重荷重用空気入りタイヤ。
【請求項4】
前記ベントラインには、タイヤ加硫金型のベントホールにて吸い上げられたスピューが形成され、
前記第2セレーション部は、タイヤ側面部において前記サイドウォール部を正面から視たときに、タイヤ回転軸と前記スピューとを結ぶ放射線を含む領域に形成されている請求項2又は3に記載の重荷重用空気入りタイヤ。
【請求項5】
前記第2セレーション部は、前記放射線からタイヤ周方向の一方側及び他方側に、10゜〜20゜の領域に形成されている請求項4記載の重荷重用空気入りタイヤ。
【請求項6】
前記ベントラインのビードベースラインからの高さは、タイヤ高さの25〜35%である請求項1乃至5のいずれかに記載の重荷重用空気入りタイヤ。
【請求項7】
前記セレーション部は、前記ベントラインからタイヤ半径方向外側に、タイヤ高さの50〜65%の領域に形成されている請求項6記載の重荷重用空気入りタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、重荷重用空気入りタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、乗用車用の空気入りタイヤにおいては、加硫成形にあたって、サイドウォール部の外表面に生じ易いベアを抑制するために、セレーション部を形成する技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
しかしながら、重荷重用空気入りタイヤにあっては、タイヤ高さが大きいために、サイドウォール部の外表面にセレーション部を設けることのみでは、加硫成形金型と生タイヤの外表面との間に閉じ込められる空気を十分に排出できないことがあり、さらなる改良が期待されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−163018号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、以上のような実状に鑑み案出されたもので、加硫成形金型と生タイヤの外表面との間での空気の流れを向上させて、ベアの発生を抑制できる重荷重用空気入りタイヤを提供することを主たる目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、サイドウォール部の表面に、タイヤ半径方向にのびる複数のリッジがタイヤ周方向に並列されたセレーション部と、タイヤ周方向にのびて各リッジと接続される凸状のベントラインと、を備える重荷重用空気入りタイヤであって、前記リッジのピッチは、タイヤ周方向で変化する。
【0007】
本発明に係る前記重荷重用空気入りタイヤにおいて、前記セレーション部は、タイヤ周方向に交互に配された第1セレーション部及び第2セレーション部を含み、前記第2セレーション部の前記ピッチは、前記第1セレーション部での前記ピッチよりも小であることが望ましい。
【0008】
本発明に係る前記重荷重用空気入りタイヤにおいて、前記第2セレーション部の前記ピッチは、前記第1セレーション部での前記ピッチの0.5〜0.8倍であることが望ましい。
【0009】
本発明に係る前記重荷重用空気入りタイヤにおいて、前記ベントラインには、タイヤ加硫金型のベントホールにて吸い上げられたスピューが形成され、前記第2セレーション部は、タイヤ側面部において前記サイドウォール部を正面から視たときに、タイヤ回転軸と前記スピューとを結ぶ放射線を含む領域に形成されていることが望ましい。
【0010】
本発明に係る前記重荷重用空気入りタイヤにおいて、前記第2セレーション部は、前記放射線からタイヤ周方向の一方側及び他方側に、10゜〜20゜の領域に形成されていることが望ましい。
【0011】
本発明に係る前記重荷重用空気入りタイヤにおいて、前記ベントラインのビードベースラインからの高さは、タイヤ高さの25〜35%であることが望ましい。
【0012】
本発明に係る前記重荷重用空気入りタイヤにおいて、前記セレーション部は、前記ベントラインからタイヤ半径方向外側に、タイヤ高さの50〜65%の領域に形成されていることが望ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明の重荷重用空気入りタイヤは、サイドウォール部の表面に、タイヤ半径方向にのびる複数のリッジがタイヤ周方向に並列されたセレーション部と、タイヤ周方向にのびて各リッジと接続される凸状のベントラインと、を備える。すなわち、重荷重用空気入りタイヤの加硫成形金型では、セレーション部のリッジを形成するための径方向浅溝とベントラインを形成するための周方向溝とが連通する。そして、リッジのピッチは、タイヤ周方向で変化するので、上記径方向浅溝のピッチもタイヤ周方向で変化する。すなわち、セレーション部は、リッジが粗に配列されている領域と、リッジが密に配列されている領域とを含んでいる。そして、リッジが密に配列されている領域では、径方向浅溝の幅は狭く、深さは浅くなり、径方向浅溝を流れる空気の流れが速くなり、ベアの発生が抑制される。また、セレーション部の陰影がタイヤ周方向で変化し、重荷重用空気入りタイヤの外観性能が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の重荷重用空気入りタイヤの一実施形態を示す斜視図である。
図2図1の重荷重用空気入りタイヤの子午線断面図である。
図3図2の重荷重用空気入りタイヤを加硫成形金型と共に示す子午線断面図である。
図4】加硫成形工程の初期段階での加硫成形金型及び生タイヤを、タイヤ周方向に切断して示す断面図である。
図5図1の重荷重用空気入りタイヤの側面図である。
図6】(a)及び(b)は、図1のセレーション部の形状のバリエーションを示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の一形態が図面に基づき説明される。
図1は、本実施形態の重荷重用空気入りタイヤ1の斜視図である。本実施形態の重荷重用空気入りタイヤ(以下、単に「タイヤ」ということがある)1は、トレッド部2と、サイドウォール部3と、ビード部4とを備える。
【0016】
図2は、正規状態におけるタイヤ回転軸を含むタイヤ子午線断面図である。ここで、正規状態とは、タイヤを正規リムにリム組みし、かつ、正規内圧を充填した無負荷の状態である。以下、特に言及されない場合、タイヤの各部の寸法等はこの正規状態で測定された値である。
【0017】
「正規リム」とは、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、当該規格がタイヤ毎に定めるリムであり、例えばJATMAであれば "標準リム" 、TRAであれば "Design Rim" 、ETRTOであれば "Measuring Rim" である。
【0018】
「正規内圧」とは、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、各規格がタイヤ毎に定めている空気圧であり、JATMAであれば "最高空気圧" 、TRAであれば表 "TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES" に記載の最大値、ETRTOであれば "INFLATION PRESSURE" である。
【0019】
図2に示されるように、本実施形態の重荷重用タイヤ(以下、単に「タイヤ」ということがある)1は、トレッド部2からサイドウォール部3をへてビード部4のビードコア5に至るトロイド状のカーカス6、カーカス6のタイヤ半径方向外側かつトレッド部2の内方に配されるベルト層7を備える。
【0020】
カーカス6は、例えば、スチール製のカーカスコードをタイヤ周方向に対して70〜90°の角度で配列した1枚のカーカスプライ6Aから形成される。このカーカスプライ6Aは、一対のビードコア5、5間を跨る本体部6aの両端に、ビードコア5の回りをタイヤ軸方向内側から外側に折り返される折返し部6bを一連に備える。
【0021】
カーカス6の半径方向外側かつトレッド部2の内部には、ベルト層7が配される。このベルト層7は、例えば、スチール製のベルトコードを用いた少なくとも2枚のベルトプライから形成される。本例では、ベルトコードをタイヤ周方向に対して例えば60±15°の角度で配列された第1のベルトプライ7Aと、その外側に積層されかつベルトコードをタイヤ周方向に対して例えば10〜35°の小角度で配列した第2〜第4のベルトプライ7B〜7Dとからなる4枚構造のものが例示されている。
【0022】
ビードコア5は、例えばスチール製のビードワイヤを多列多段に巻回した断面多角形状(例えば断面6角形状)のコア本体を有している。
【0023】
ビードコア5のタイヤ半径方向の外側には、ビードエイペックスゴム8が設けられている。ビードエイペックスゴム8は、カーカスプライ6Aの本体部6aと折返し部6bとの間に配され、かつビードコア5のタイヤ半径方向の外面に接続された底面からタイヤ半径方向の外端に向かって先細状にのびる。
【0024】
図1及び図2に示されるように、サイドウォール部3の外表面には、タイヤ周方向に連続してのびるセレーション部10及びベントライン50が形成されている。
【0025】
セレーション部10は、タイヤ半径方向にのびる複数のリッジ11を含んでいる。各リッジ11はタイヤ周方向に並列されている。リッジ11は、タイヤ半径方向に対して傾斜していてもよい。
【0026】
ベントライン50は、タイヤ軸方向の外側に凸状に突出し、タイヤ周方向に連続してのびる。ベントライン50は、リッジ11と接続されている。
【0027】
本実施形態のベントライン50は、リッジ11のタイヤ半径方向の内端11iで各リッジ11に接続されている。ベントライン50は、リッジ11のタイヤ半径方向の外端11oでリッジ11に接続されていてもよい。また、ベントライン50は、内端11iと外端11oとの間でリッジ11に接続されていてもよい。
【0028】
図3は、重荷重用空気入りタイヤ1を加硫成形金型100と共に示している。重荷重用空気入りタイヤ1の加硫成形金型100では、セレーション部10のリッジ11を形成するための径方向浅溝111とベントライン50を形成するための周方向溝150とが連通する。従って、加硫成形工程でのサイドウォール部3において、加硫成形金型100と生タイヤとの間に閉じ込められる空気は、径方向浅溝111及び周方向溝150を順次介して加硫成形金型100の外部に排出される。既に述べたように、重荷重用空気入りタイヤ1では、乗用車用タイヤと比較すると、タイヤ高さが大きいため、径方向浅溝111の空気排出性能を高めることが重要となる。
【0029】
図1に示されるように、リッジ11のピッチは、タイヤ周方向で変化する。例えば、本実施形態のセレーション部10は、リッジ11が粗に配列されている領域である第1セレーション部20と、リッジ11が密に配列されている領域である第2セレーション部30とを含んでいる。
【0030】
図4は、加硫成形工程の初期段階での加硫成形金型100及び重荷重用空気入りタイヤ1の生タイヤ1Rを、タイヤ周方向に切断して示す断面図である。
【0031】
径方向浅溝111は、生タイヤ1Rの外表面と加硫成形金型100のタイヤ成形面との間の空気を排出するための排出溝として機能する。リッジ11のピッチは、タイヤ周方向で変化するので、第1セレーション部20と比較すると、第2セレーション部30では、径方向浅溝111の幅は狭く、深さは浅くなる。これにより、第2セレーション部30では、径方向浅溝111を流れる空気の流れが速くなり、ベアの発生が抑制される。また、第1セレーション部20と比較すると、第2セレーション部30では、径方向浅溝111の密度が高くなるので、より多くの空気を排出可能となり、ベアの発生が抑制される。
【0032】
また、セレーション部10の陰影がタイヤ周方向で変化し、重荷重用空気入りタイヤ1の外観性能が向上する。
【0033】
図1に示されるように、第1セレーション部20及び第2セレーション部30とは、タイヤ周方向に交互に配されている。これにより、加硫成形時の空気の排出性能に優れた第2セレーション部30がタイヤ周方向に略万遍なく分布する。このため、サイドウォール部3の全体でベアの発生が防止される。
【0034】
第2セレーション部30でのリッジ11のピッチP2は、第1セレーション部20でのリッジ11のピッチP1の0.5〜0.8倍が望ましい。ピッチP2がピッチP1の0.5倍未満の場合、リッジ高さQ2が不足し、第2セレーション部30の凸部112が生タイヤ1Rの外表面と当接した後における空気の排出性能が悪化するおそれがある。また、第2セレーション部30の陰影がぼやけ、重荷重用空気入りタイヤ1の外観性能が低下するおそれがある。一方、ピッチP2がピッチP1の0.8倍を超える場合、リッジ11の数が減少し、空気の排出性能が悪化するおそれがある。
【0035】
図3に示されるように、加硫成形金型100の周方向溝150には、周方向溝150内の空気を加硫成形金型100の外部に排出するためのベントホール151が形成されている。これに伴い、重荷重用空気入りタイヤ1のベントライン50には、加硫成形金型100のベントホール151にて吸い上げられたスピュー51が形成されている。
【0036】
本実施形態では、第2セレーション部30によって加硫成形時の空気の排出性能が高められているため、ベントホール151の数を減少させてもベアの発生を抑制できる。従って、スピュー51の数を減少させることにより、重荷重用空気入りタイヤ1の外観性能を向上させることが可能となる。また、加硫工程の後、スピュー51を切断する工程において、切断するスピュー51が削減されることにより生産効率が向上すると共に、切断後に処分されるスピュー51が削減されうる。
【0037】
本実施形態では、第1セレーション部20でのリッジ11のピッチP1は一定であると共に、第2セレーション部30でのリッジ11のピッチP2も一定である。ピッチP1はタイヤ周方向で変化していてもよく、ピッチP2もタイヤ周方向で変化していてもよい。例えば、第1セレーション部20のピッチP1は、ピッチP2よりも小である範囲で、タイヤ周方向の両端に向って漸減又は漸増してもよく、第2セレーション部30のピッチP2は、ピッチP2よりも小である範囲で、タイヤ周方向の両端に向って漸増又は漸減してもよい。
【0038】
図5は、重荷重用空気入りタイヤ1の側面図である。第2セレーション部30は、タイヤ側面部においてサイドウォール部3を正面から視たときに、タイヤ回転軸Oとスピュー51とを結ぶ放射線RLを含む領域に形成されている。これにより、第2セレーション部30の空気排出空間E(図4参照)から周方向溝150を介してベントホール151に至る排気経路が短縮され、加硫成形時の空気の排出性能がより一層高められ、ベアの発生が抑制される。
【0039】
第2セレーション部30は、放射線RLからタイヤ周方向の一方側及び他方側に、放射角θ2が10゜〜20゜の領域に形成されているのが望ましい。
【0040】
放射角θ2が10゜未満の場合、加硫成形時の空気の排出性能が高められる領域が十分に得られないおそれがある。放射角θ2が20゜を超える場合、加硫工程の初期段階で生タイヤ1Rが金型に接触する際、空気の排出効果が低下するおそれがある。また、第2セレーション部30での陰影がぼやけることからセレーション部10全体の意匠に影響を及ぼすおそれがある。
【0041】
図5に示される形態の重荷重用空気入りタイヤ1では、第2セレーション部30は、放射角2・θ2の領域に形成されている。同様に第1セレーション部20は、放射角2・θ1の領域に形成されている。そして、放射角θ2と放射角θ1と等しい。なお、放射角θ2と放射角θ1とが異なっていてもよい。
【0042】
図2に示されるように、ベントライン50のビードベースラインBLからの高さH0は、タイヤ高さHの25〜35%が望ましい。高さH0がタイヤ高さHの25%未満の場合、ビード部4の歪みが大きい領域にセレーション部10及びベントライン50が位置し、セレーション部10及びベントライン50の表面にクラックが生ずるおそれがある。高さH0がタイヤ高さHの35%を超える場合、生タイヤ1Rに凹部が生じ易いビードエイペックスゴム8の先端部の近傍からベントライン50が離れて配され、加硫成形時の空気の排出性能が十分に高められないおそれがある。
【0043】
セレーション部10は、ベントライン50からタイヤ半径方向外側に、タイヤ高さHの50〜65%の領域に形成されているのが望ましい。すなわち、セレーション部10のタイヤ半径方向長さH1は、タイヤ高さHの50〜65%が望ましい。高さH1がタイヤ高さHの50%未満の場合、加硫成形時の空気の排出性能が十分に高められないおそれがある。高さH1がタイヤ高さHの65%を超える場合、加硫工程の初期段階で生タイヤ1Rが金型に接触する際、空気の排出効果が低下するおそれがある。また、バットレス部の歪みが大きい領域にセレーション部10が位置し、セレーション部10の表面にクラックが生ずるおそれがある。
【0044】
図6において、(a)及び(b)は、図1のセレーション部10の形状のバリエーションを示す断面図である。図6(a)に示される形態では、セレーション部10は、タイヤ周方向に切断した断面の先端が角張った台形状のリッジ11Aを有している。このようなセレーション部10は、陰影が際立ち、重荷重用空気入りタイヤ1の外観性能を高める。図6(b)に示される形態では、セレーション部10は、タイヤ周方向に切断した断面の先端が丸められた台形状のリッジ11Bを有している。このようなセレーション部10は、ゴムの充填性が良好で、ベアの発生が抑制される。また、セレーション部10は、タイヤ周方向に切断した断面の先端が尖った三角形状のリッジを有していてもよい。
【0045】
第1セレーション部20及び第2セレーション部30のうち、一方にはリッジ11Aが他方にリッジ11Bがそれぞれ形成されていてもよく、第1セレーション部20及び第2セレーション部30にリッジ11A及びリッジ11Bが混在していてもよい。
【0046】
以上、本発明の重荷重用空気入りタイヤが詳細に説明されたが、本発明は上記の具体的な実施形態に限定されることなく種々の態様に変更して実施される。
【実施例】
【0047】
図2の基本構造を有するサイズ315/80R22.5の重荷重用空気入りタイヤが、表1及び表2の仕様に基づき試作され、各試供タイヤのベア抑制性能及び外観性能がテストされた。各試供タイヤの主な共通仕様やテスト方法は、以下の通りである。
カーカスプライのコード:スチール
カーカスプライの枚数:1枚
ベルトプライのコード:スチール
ベルトプライの枚数:4枚
【0048】
<ベア抑制性能>
各試供タイヤが1000本ずつ製造され、加硫成形後におけるベアの発生が、目視により検査された。結果は、ベア発生率で表され、数値が小さいほど良好である。
【0049】
<外観性能>
評価者が、各試供タイヤから1m離れ、セレーション部の模様の見栄えを官能評価した。結果は、実施例1を100とする評点で表され、数値が大きいほど良好である。
【0050】
【表1】
【0051】
表1から明らかなように、実施例の重荷重用空気入りタイヤは、比較例に比べてベア抑制性能及び外観性能が有意に向上していることが確認できた。
【0052】
図2の基本構造を有するサイズ315/80R22.5の重荷重用空気入りタイヤが、表2の仕様に基づき試作され、各試供タイヤのベア抑制性能及び耐クラック性能がテストされた。各試供タイヤの主な共通仕様やベア抑制性能に関するテスト方法は、上記と同様である。耐クラック性能に関するテスト方法は、以下の通りである。
【0053】
<耐クラック性能>
各試供タイヤが、22.5×9.00のリムに組み込まれ、内圧:900kPa、荷重:4000kg、速度:90km/hの条件にて、ドラム式走行試験機にて600km走行され、サイドウォール部のクラックが評価者の目視によって確認された。結果は、実施例10を100とする評点で表され、数値が大きいほど良好である。
【0054】
【表2】
【符号の説明】
【0055】
1 :重荷重用空気入りタイヤ
3 :サイドウォール部
10 :セレーション部
11 :リッジ
20 :第1セレーション部
30 :第2セレーション部
50 :ベントライン
51 :スピュー
BL :ビードベースライン
H :タイヤ高さ
H0 :高さ
H1 :高さ
P1 :ピッチ
P2 :ピッチ
RL :放射線
θ1 :放射角
θ2 :放射角
図1
図2
図3
図4
図5
図6