特許第6919650号(P6919650)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6919650
(24)【登録日】2021年7月28日
(45)【発行日】2021年8月18日
(54)【発明の名称】液状分散体及びその用途
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/19 20060101AFI20210805BHJP
   A61K 8/29 20060101ALI20210805BHJP
   A61K 8/34 20060101ALI20210805BHJP
   A61K 8/04 20060101ALI20210805BHJP
   A61K 8/894 20060101ALI20210805BHJP
   A61Q 1/02 20060101ALI20210805BHJP
   A61Q 1/10 20060101ALI20210805BHJP
   B01F 17/52 20060101ALI20210805BHJP
   B01F 17/38 20060101ALI20210805BHJP
   B01F 17/42 20060101ALI20210805BHJP
【FI】
   A61K8/19
   A61K8/29
   A61K8/34
   A61K8/04
   A61K8/894
   A61Q1/02
   A61Q1/10
   B01F17/52
   B01F17/38
   B01F17/42
【請求項の数】9
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2018-519121(P2018-519121)
(86)(22)【出願日】2017年4月5日
(86)【国際出願番号】JP2017014291
(87)【国際公開番号】WO2017203846
(87)【国際公開日】20171130
【審査請求日】2019年10月25日
(31)【優先権主張番号】特願2016-106448(P2016-106448)
(32)【優先日】2016年5月27日
(33)【優先権主張国】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000174541
【氏名又は名称】堺化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】特許業務法人 安富国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】芦田 拓郎
(72)【発明者】
【氏名】真柄 光一郎
(72)【発明者】
【氏名】佐野 晃文
(72)【発明者】
【氏名】四家 彩渚
【審査官】 星 浩臣
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−117190(JP,A)
【文献】 特開2010−100580(JP,A)
【文献】 特開2007−119741(JP,A)
【文献】 特開2014−088374(JP,A)
【文献】 特開2014−205628(JP,A)
【文献】 特開平06−032991(JP,A)
【文献】 特開2016−199509(JP,A)
【文献】 特開2014−097942(JP,A)
【文献】 特開2002−080771(JP,A)
【文献】 特開2010−195694(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00−8/99
A61Q 1/00−90/00
B01J 13/00
C09C 1/00−3/12
C09D 15/00−17/00
Japio−GPG/FX
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
多価アルコール(A)、非イオン性界面活性剤(B)及び疎水化処理無機粉体(C)を含む液状分散体であって、
該多価アルコール(A)と非イオン性界面活性剤(B)との質量比(A/B)は、70〜95/30〜5であり、
該疎水化処理無機粉体(C)の含有量は、液状分散体の総量100質量%に対し、60質量%以上であり、
該液状分散体100質量%中の水分量は1質量%以下である
ことを特徴とする液状分散体。
【請求項2】
更に、レシチン及び/又は水添レシチン(D)を含む
ことを特徴とする請求項1記載の液状分散体。
【請求項3】
前記疎水化処理無機粉体(C)の平均粒子径は、150〜700nmである
ことを特徴とする請求項1に記載の液状分散体。
【請求項4】
前記疎水化処理無機粉体(C)は、シリコーン、アルキルシラン、脂肪酸(塩)、アミノ酸(塩)及びアルキルリン酸(塩)からなる群より選択される少なくとも1種で表面処理された無機粉体である
ことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の液状分散体。
【請求項5】
前記多価アルコール(A)は、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、ペンチレングリコール、グリセリン、ジグリセリン、トリグリセリン及びポリグリセリンからなる群より選択される少なくとも1種である
ことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の液状分散体。
【請求項6】
前記非イオン性界面活性剤(B)は、ポリエーテル変性シリコーンである
ことを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の液状分散体。
【請求項7】
25℃での粘度が2000〜50万mPa・sである
ことを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の液状分散体。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかに記載の液状分散体からなる
ことを特徴とする化粧料原料。
【請求項9】
請求項1〜7のいずれかに記載の液状分散体を含む
ことを特徴とする化粧料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液状分散体及びその用途に関する。より詳しくは、疎水化処理された無機粉体を含む液状分散体、これを用いた化粧料原料及び化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
無機粉体は、着色剤や充填材等として様々な用途に使用されており、例えば顔料級酸化チタンや酸化鉄等は、化粧料や塗料用途で着色顔料として好適に用いられている。これらの無機粉体は、綺麗な発色を促すべく、分散媒に分散させた分散体の状態で使用することが知られている(例えば特許文献1参照)。また、無機粉体は表面が親水性であるため、汗や雨等の水分に対する耐水性を発揮させるために、無機粉体を表面処理した後に分散体とする技術も開発されている(例えば特許文献2〜4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012−097259号公報
【特許文献2】国際公開第2013/018827号パンフレット
【特許文献3】国際公開第2015/125622号パンフレット
【特許文献4】特開2016−74660号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、無機粉体の分散媒への分散処理に際しては、その処理に設備や人員が必要であるため、例えば小規模多品種用途ではコスト面で不利である他、分散処理には高度なノウハウも要する。それゆえ、原料供給元が無機粉体を液状分散体の状態で提供することができれば、分散媒への分散処理が簡略化されるため望ましい。だが、無機粉体、中でも特に微粒子に比べて粒子径が大きい(例えば粒子径が約150nm以上の)無機粉体は、分散媒中で沈降しやすいため、分散安定性が良好でなく、ケーキングや相分離(色わかれ等)等が生じるといった課題があり、安定した液状分散体として提供することが困難であった。
【0005】
特許文献1には、レーザー粒径分析器による粒子径が100nm超である顔料とポリビニルピロリドンとを含む水性分散体が記載されている。だが、顔料の分散安定性をより高め、安定した液状分散体とするための工夫の余地があった。
【0006】
特許文献2〜4には、有機表面処理された微粒子無機粉体を水に分散させた分散体が記載されている。この分散体は、感触や取扱い性が良好で、汗や水に強い撥水性の高い化粧料を与えることができるものであり、化粧料原料として特に有用なものである。だが、使用されている無機粉体はいずれも微粒子であるため、顔料級の、例えば150nm以上の平均粒子径を有する無機粉体を用いた場合にも、より安定な液状分散体とするための工夫の余地があった。また、O/W型化粧料(水中油型化粧料)のみならず、W/O型化粧料(油中水型化粧料)に適用した場合も無機粉体による効果をより一層発揮できるようにするための工夫の余地もあった。
【0007】
本発明は、上記現状に鑑みてなされたものであり、長時間安定して分散状態を維持することができ、しかもO/W型化粧料及びW/O型化粧料の両者に好適に適用することができる液状分散体を提供することを目的とする。また、この液状分散体を用いた化粧料原料及び化粧料を提供することも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、多価アルコール、非イオン性界面活性剤及び疎水化処理された無機粉体(疎水化処理無機粉体と称す)を含む液状分散体が、発色や感触、取扱い性が良好で、汗や水に強い撥水性の高い化粧料を与えることができることに着目し、更に鋭意検討を重ねるうち、この液状分散体を水を実質的に含まないものとする(すなわち具体的には、液状分散体100質量%中の水分量を1質量%以下にする)と、例えば平均粒子径が150nm以上の疎水化処理無機粉体を用いた場合にも、液状分散体作製直後の粘度が適切なものとなるため、長時間安定して分散状態を維持でき、経時のケーキングや相分離が充分に抑制されることを見いだした。この液状分散体は、分散体として保管や輸送が容易であるうえ、液状分散体を分散媒に分散する際の分散処理を簡略化又は省略することができるため、各種原料として有用であり、化粧料原料として特に有用である。この液状分散体はまた、O/W型化粧料及びW/O型化粧料の両者に好適に適用することができる。このようにして上記課題をみごとに解決することができることに想到し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち本発明は、多価アルコール(A)、非イオン性界面活性剤(B)及び疎水化処理無機粉体(C)を含む液状分散体であって、該液状分散体100質量%中の水分量は1質量%以下である液状分散体である。
【0010】
上記液状分散体は、更に、レシチン及び/又は水添レシチン(D)を含むことが好ましい。これにより、例えば化粧料に使用した際の疎水化処理無機粉体(C)の肌への付着性が向上し、化粧持ちの向上等、使用性が更に良好になる。
【0011】
上記多価アルコール(A)と非イオン性界面活性剤(B)との質量比(A/B)は、70〜95/30〜5であることが好ましい。これにより、疎水化処理無機粉体(C)の分散が良好になる。
【0012】
上記疎水化処理無機粉体(C)の平均粒子径は、150〜700nmであることが好ましい。通常、このような顔料級とされる粒径を持つ無機粉体は沈降しやすいため、従来の技術常識によると、液状分散体としたときの分散安定性は良好ではないと考えられている。だがこの技術常識に反し、本発明の液状分散体では、このような粒径を持つ疎水化処理無機粉体(C)を含む場合であっても極めて良好な分散安定性を有するため、着色顔料用途に特に有用である。
【0013】
上記疎水化処理無機粉体(C)は、シリコーン、アルキルシラン、脂肪酸(塩)、アミノ酸(塩)及びアルキルリン酸(塩)からなる群より選択される少なくとも1種で表面処理された無機粉体であることが好ましい。これにより、表面処理対象の無機粉体の親水性部分が充分に封鎖され、例えば水溶性高分子を含む化粧料に配合した際に、当該無機粉体(C)と水溶性高分子とのゲル形成が抑制されるとともに、使用時のキシミ感も充分に低減し、耐水性も向上する。
【0014】
上記多価アルコール(A)は、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、ペンチレングリコール、グリセリン、ジグリセリン、トリグリセリン及びポリグリセリンからなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。これにより、非イオン性界面活性剤(B)が疎水化処理無機粉体(C)の表面により均一に配向でき、液状分散体がより一層安定する。
【0015】
上記非イオン性界面活性剤(B)は、ポリエーテル変性シリコーンであることが好ましい。これにより、液状分散体の安定性や化粧料に使用した際の使用感等が更に良好になる。ポリエーテル変性シリコーンはまた、安全性や熱安定性が高い点でも好適である。
【0016】
上記液状分散体は、25℃での粘度が2000〜50万mPa・sであることが好ましい。これにより、疎水化処理無機粉体(C)がより動きにくく(すなわち沈降しにくく)なるため、分散安定性がより一層向上する。
【0017】
本発明はまた、上記液状分散体からなる化粧料原料でもある。
本発明は更に、上記液状分散体を含む化粧料でもある。
【発明の効果】
【0018】
本発明の液状分散体は、長時間安定して分散状態を維持することができる。それゆえ、分散媒への分散処理を簡略化又は省略することができ、分散処理に要するコスト低減に寄与することもできる。また、この液状分散体は、発色や感触、取扱い性が良好で、汗や水に強い撥水性の高い化粧料を与えることができるため、化粧料原料として特に有用である。特に、O/W型化粧料及びW/O型化粧料の両者に好適に適用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の一例について具体的に説明するが、本発明は以下の記載のみに限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲で適宜変更して適用することができる。
【0020】
〔液状分散体〕
本発明の液状分散体は、多価アルコール(A)、非イオン性界面活性剤(B)及び疎水化処理無機粉体(C)を含む。これら必須成分の合計含有量は、液状分散体の総量100質量%に対し、80質量%以上であることが好ましい。より好ましくは85質量%以上、更に好ましくは90質量%以上、特に好ましくは95質量%以上、最も好ましくは97質量%以上である。なお、必要に応じて、その他の成分を含んでもよく、各含有成分はそれぞれ1種又は2種以上を使用することができる。
以下、各含有成分について説明する。
【0021】
−多価アルコール(A)−
多価アルコール(A)は、2価以上のアルコールであれば特に限定されないが、例えば、炭素数1〜20の多価アルコールであることが好ましい。より好ましくは、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、ペンチレングリコール、グリセリン、ジグリセリン、トリグリセリン及びポリグリセリンからなる群より選択される少なくとも1種である。これにより、非イオン性界面活性剤(B)が疎水化処理無機粉体(C)の表面により均一に配向でき、液状分散体がより一層安定する。中でも特に1,3−ブチレングリコールを用いることが好ましい。1,3−ブチレングリコールの場合、化粧料へ配合した場合、人体への安全性が高い点で特に好ましい。
【0022】
多価アルコール(A)の含有量は、液状分散体の総量100質量%に対し、10質量%以上であることが好ましい。これにより、液状分散体の分散安定性がより向上する。より好ましくは15質量%以上、更に好ましくは20質量%以上である。上限は特に限定されないが、他の成分による効果を高めるため、50質量%以下であることが好ましい。より好ましくは45質量%以下、更に好ましくは40質量%以下である。
【0023】
−非イオン性界面活性剤(B)−
非イオン性界面活性剤(B)は、非イオン性(ノニオン性)の界面活性剤として通常使用される化合物であれば特に限定されず、例えば、ポリエーテル又はその誘導体、ポリエーテルアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアルケニルフェニルエーテル、ポリエーテル脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリエーテルソルビタン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ポリエーテルヒマシ油、ポリエーテル硬化ヒマシ油、ポリエーテル変性シリコーン、ポリグリセリン変性シリコーン等が挙げられる。中でも、ポリエーテル脂肪酸エステル、ポリエーテルソルビタン脂肪酸エステル及び/又はポリエーテル変性シリコーンを用いることが好ましい。より好ましくは、ポリエーテル変性シリコーンを少なくとも用いることであり、これにより、液状分散体の安定性や化粧料に使用した際の使用感等が更に良好になる。ポリエーテル変性シリコーンはまた、安全性や熱安定性が高い点でも好適である。
【0024】
非イオン性界面活性剤(B)はまた、1,3−ブチレングリコールに20質量%濃度で混合した際に、35℃において透明溶解又は微濁する化合物(非イオン性界面活性剤が室温にてペースト状〜固体の場合は加温して均一にしたのち35℃にして確認)であることが好適である。これにより、疎水化処理無機粉体(C)表面に効率的に非イオン性界面活性剤による層を形成することができるため、液状分散体の分散安定性がより向上する。
なお、2種以上の非イオン性界面活性剤を組み合わせて使用する場合は、液状分散体中に配合する混合比で混合した非イオン性界面活性剤について上述した試験を行った場合に、透明溶解又は微濁することが好適である。
【0025】
非イオン性界面活性剤(B)は更に、水に20質量%濃度で混合した際に、35℃において不溶又は白濁する化合物(非イオン性界面活性剤が室温にてペースト状〜固体の場合は加温して均一にしたのち35℃にして確認)であることも好適である。これにより、化粧料原料として化粧料に配合する際、水への分散性が損なわれることなく、得られる化粧料の耐水性がより優れたものとなる。
なお、2種以上の非イオン性界面活性剤を組み合わせて使用する場合は、液状分散体中に配合する混合比で混合した非イオン性界面活性剤について上述した試験を行った場合に、不溶又は白濁することが好適である。
【0026】
本明細書中、「透明溶解」とは、得られた混液の35℃における光路長10mmでのヘーズ値が10未満であることを意味し、「微濁」とは、得られた混液の35℃における光路長10mmでのヘーズ値が10以上、且つ、全光透過率が30%以上である状態であることを意味する。また、「不溶」とは、混合させても溶け残りが生じたり、又は、一見混濁したように見えても1時間経過後には相分離してしまったりする状態を意味し、「白濁」とは、得られた混液の35℃における光路長10mmでのヘーズ値が10以上、且つ、全光透過率が30%未満である状態であることを意味する。
【0027】
非イオン性界面活性剤(B)のHLB(親水親油バランス)は、例えば、6〜12であることが好ましい。HLBがこの範囲内にあると、疎水化処理無機粉体(C)の分散性がより高まる他、例えばこの液状分散体をO/W型化粧料(水中油型化粧料)に配合した際でも疎水化処理無機粉体(C)の肌への吸着性が良好になり、耐水性も向上する。
なお、非イオン性界面活性剤(B)を2種以上用いる場合は、その混合物のHLBが上記範囲内にあることが好ましい。
【0028】
本明細書中、HLBは、W.C.Grifinnによって定義された次式によって求められる。
HLB=(E+P)/5
(NHLBは、HLB値を表す。Eは、非イオン性界面活性剤(B)の分子全体に対する、非イオン性界面活性剤(B)が有するポリエーテル部の割合(質量%)を表す。Pは、非イオン性界面活性剤(B)の分子全体に対する、非イオン性界面活性剤(B)が有する多価アルコール部の割合(質量%)を表す。)
【0029】
非イオン性界面活性剤(B)の含有量は、多価アルコール(A)と非イオン性界面活性剤(B)との質量比(A/B)が70〜95/30〜5となるように設定することが好ましい。これにより、疎水化処理無機粉体(C)の分散が良好になる。また、本発明の液状分散体は、非イオン性界面活性剤(B)を少量にしても分散安定性を良好に保つことができるため、非イオン性界面活性剤(B)の量を低減して液状分散体使用時の安定性を向上することが可能になる。この観点から、上記質量比(A/B)は、より好ましくは72〜95/28〜5、更に好ましくは73〜95/27〜5である。
【0030】
−疎水化処理無機粉体(C)−
疎水化処理無機粉体(C)は、平均粒子径が150〜700nmであることが好ましい。通常、このような顔料級とされる粒径を持つ無機粉体は沈降しやすいため、従来の技術常識によると、液状分散体としたときの分散安定性は良好ではないと考えられている。だがこの技術常識に反し、本発明の液状分散体では、このような粒径を持つ疎水化処理無機粉体(C)を含む場合であっても極めて良好な分散安定性を有するため、着色顔料用途に特に有用である。より綺麗な発色を奏させる観点から、より好ましくは180nm以上、更に好ましくは200nm以上である。
【0031】
本明細書中、無機粉体の平均粒子径とは、走査型電子顕微鏡写真(SEM写真)でランダムに選択した200個の粒子の粒子径を測定し、その一次粒子径の平均を算出するという方法によって測定された値を意味する。個々の一次粒子径の算出には、最小外接円の直径を使用する。
【0032】
疎水化処理無機粉体(C)の形状は特に限定されず、例えば、球状(略球状も含む)、棒状、針状、紡錘状、板状、六角板状、針状凝集体、無定形状等が挙げられる。
形状は、走査型電子顕微鏡等によって観察することができる。
【0033】
疎水化処理無機粉体(C)を構成する無機粉体(原料無機粉体とも称す)は特に限定されず、例えば酸化チタン、酸化鉄、酸化亜鉛、酸化セリウム、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、シリカ、水酸化アルミニウム、アルミナ、窒化硼素、タルク、マイカ、カオリン等が挙げられる。中でも、酸化チタン、酸化鉄、酸化亜鉛、酸化セリウム及びこれらの複合体が好ましく、これにより、化粧料用途により有用なものとなる。より好ましくは、酸化チタン及び/又は酸化鉄を用いることである。また、調色等の目的で、酸化チタン、酸化鉄を任意の量で混合して使用してもよい。
【0034】
原料無機粉体はまた、その表面がその他の無機材料で被覆された複合粉体であってもよい。この場合、複合粉体を疎水化処理することで、疎水化処理無機粉体(C)として用いることになる。その他の無機材料は特に限定されず、例えば、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化セリウム、酸化鉄、酸化バリウム、含水ケイ酸、シリカ、水酸化アルミニウム、アルミナ、ジルコニア等が挙げられる。これら無機材料による被覆量は、例えば、疎水化処理後の無機粉体の総量100質量%に対し、0〜25質量%であることが好ましい。より好ましくは2〜20質量%である。
【0035】
疎水化処理無機粉体(C)は、原料無機粉体(上記複合粉体であってもよい)を疎水化処理したものである。疎水化処理とは、疎水性有機表面処理剤で原料無機粉体の表面を処理することを意味する。疎水化処理によって、処理対象の原料無機粉体表面の親水性部分が封鎖されるため、耐水性及び撥水性が向上するとともに、例えば水溶性高分子を含む化粧料に配合した際に、疎水化処理無機粉体(C)と水溶性高分子とのゲル形成が抑制され、使用時のキシミ感も充分に低減し、化粧料用途により有用なものとなる。
【0036】
ここで、疎水化処理無機粉体(C)(すなわち疎水化処理された無機粉体)は、疎水化度が高いものが好ましい。これにより、液状分散体の安定性をより増すことができる。疎水化度とは、疎水化処理された無機粉体を圧粉して表面が均一な平板状にし、表面に水1μLを滴下した際の水滴の接触角の大きさによって測定することができ、接触角が45度以上が好ましく、より好ましくは60度以上、更に好ましくは90度以上である。
【0037】
疎水性有機表面処理剤としては、粒子表面の疎水化処理に通常使用される有機系表面処理剤であれば特に限定されないが、シリコーン、アルキルシラン、脂肪酸(塩)、アミノ酸(塩)及びアルキルリン酸(塩)からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。これにより、上述した疎水化処理による効果がより一層発揮されるうえ、無機粉体からの当該表面処理剤の遊離が充分に抑制されるため、分散安定性が更に向上する。
【0038】
上記塩としては特に限定されず、例えば、金属塩、アンモニウム塩、有機アミン塩が好ましい。金属塩を構成する金属原子としては、例えば、ナトリウム、リチウム、カリウム、ルビジウム、セシウム等の1価金属;亜鉛、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム等の2価金属;アルミニウム等の3価金属;鉄、チタン等のその他の金属;等が挙げられる。有機アミン塩を構成する有機アミン基としては、例えば、モノエタノールアミン基、ジエタノールアミン基、トリエタノールアミン基等のアルカノールアミン基;モノエチルアミン基、ジエチルアミン基、トリエチルアミン基等のアルキルアミン基;エチレンジアミン基、トリエチレンジアミン基等のポリアミン基;等が挙げられる。上記塩の中でも好ましくは、アンモニウム塩、ナトリウム塩又はカリウム塩であり、より好ましくはナトリウム塩である。
【0039】
上記疎水性有機表面処理剤の中でも、シリコーンが好ましい。シリコーンとしては、例えば、メチルハイドロゲンポリシロキサン、ジメチルポリシロキサン、メチルハイドロゲンポリシロキサンとジメチルポリシロキサンとのコポリマー、トリメトキシシリル基やトリエトキシシリル基等の反応性トリアルコキシシリル基含有オルガノポリシロキサン等が好適である。
【0040】
無機粉体の疎水化処理においては、処理後の無機粉体(疎水化処理無機粉体(C))の総量100質量%に対し、0.1〜10質量%の割合で疎水化処理が施されることが好適である。0.1質量%以上であることで、撥水性や耐水性がより向上する。なお、10質量%を超えても疎水化処理の効果が頭打ちとなる。より好ましくは0.2〜9質量%、更に好ましくは0.5〜8質量%である。
【0041】
疎水化処理無機粉体(C)の含有量は、液状分散体の総量100質量%に対し、40質量%以上であることが好適である。このような高濃度にすることで、各種の原料として液状分散体を使用する際に少量配合で必要な効果を発揮することができる。より好ましくは50質量%以上、更に好ましくは55質量%以上、特に好ましくは60質量%以上である。中でも酸化チタンを無機粉体として使用した場合には、60質量%以上とすることが一層好ましく、特に好ましくは65質量%以上、最も好ましくは70質量%以上である。上限は特に限定されないが、他の成分の含有量を考慮すると、95質量%以下であることが好ましく、より好ましくは90質量%以下である。
【0042】
−水−
本発明の液状分散体は、水を実質的に含まない。「水を実質的に含まない」とは、液状分散体100質量%中の水分量が1質量%以下であることを意味する。本発明では、このように水を実質的に含まない状態でも長時間安定して分散状態を維持することができるという、これまでの技術常識からは想定できない異質な効果を有するうえ、O/W型化粧料及びW/O型化粧料のいずれにも好適に適用することができる。液状分散体100質量%中の水分量は、好ましくは1質量%未満、より好ましくは0.8質量%以下、更に好ましくは0.5質量%以下、特に好ましくは0.3質量%以下、最も好ましくは0.2質量%以下である。
【0043】
本明細書中、液状分散体中の水分とは、原料成分の一つとしての水だけでなく、不純物(例えば、各原料成分中の不純物としての水)も含む。すなわち液状分散体中の水分量は、水の添加量及び仕込み量と、各原料成分に予め含まれる水分量とを合計した値で算出する。各原料成分中の水分量は、後述する実施例に記載のとおり、カールフィッシャー滴定法にて測定する。
【0044】
−レシチン及び/又は水添レシチン(D)−
本発明の液状分散体は、更に、レシチン及び/又は水添レシチン(D)を含むことが好ましい。レシチン及び/又は水添レシチン(D)を含有することで、疎水化処理無機粉体(C)の肌への付着性が向上し、化粧持ちが向上する。
なお、レシチン及び/又は水添レシチンを「(水添)レシチン」と総称することもある。
【0045】
レシチン及び/又は水添レシチン(D)の含有量(2種用いる場合はその合計量)は、疎水化処理無機粉体(C)の総量100質量部に対し、0.01〜10質量部の割合が好適である。0.01質量部未満であると付着性の向上があまり期待できず、また10質量部を超えるとべたつき等の問題が出てくる可能性がある。より好ましくは0.1〜8質量部、更に好ましくは0.5〜5質量部、特に好ましくは0.5〜3質量部である。
【0046】
−その他の成分−
本発明の液状分散体は、必要に応じて、上述した多価アルコール(A)、非イオン性界面活性剤(B)、疎水化処理無機粉体(C)、並びに、レシチン及び/又は水添レシチン(D)以外のその他の成分を含んでもよい。その他の成分としては特に限定されないが、例えば、パラオキシ安息香酸アルキルエステル、安息香酸、安息香酸ナトリウム、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、フェノキシエタノール、サリチル酸、石炭酸、ソルビン酸、パラクロルメタクレゾール、ヘキサクロロフェン、塩化ベンザルコニウム、塩化クロルヘキシジン、感光素、フェノキシエタノール等の防菌防腐剤や抗菌剤等が挙げられる。
【0047】
その他の成分の含有量は、例えば、液状分散体の総量100質量%に対し、20質量%以下であることが好ましい。より好ましくは15質量%以下、更に好ましくは10質量%以下、特に好ましくは5質量%以下である。
【0048】
本発明の液状分散体を得るための製造方法としては特に限定されず、上述した成分を混合することにより作製すればよい。混合方法も限定されず、均一に分散させることができる通常の手法を採用すればよい。例えば、ビーズミル、ジェットミル、高圧ホモジナイザー等の分散機・装置を用いてもよいが、本発明の液状分散体はこれらの高価な分散機・装置を使用しなくても簡易な攪拌機で容易に作製することができるため、ビーズミル等の高価な分散機が不要になるという利点も有する。
【0049】
本発明の液状分散体は、25℃での粘度が2000〜50万mPa・sであることが好適である。粘度がこの範囲内にあると、疎水化処理無機粉体(C)がより動きにくく(すなわち沈降しにくく)なるため、分散安定性がより一層向上する。特に疎水化処理無機粉体(C)の平均粒子径が150nm以上である場合にこの効果が顕著になり、経時的な増粘がより充分に抑制されて、分散安定性が向上する。上記粘度の上限は、より好ましくは30万mPa・s以下、更に好ましくは10万mPa・s以下、特に好ましくは5万mPa・s以下である。上記粘度の下限は、より好ましくは3000mPa・s以上、更に好ましくは5000mPa・s以上、特に好ましくは7000mPa・s以上、最も好ましくは8000mPa・s以上である。
【0050】
上記でいう「25℃での粘度」とは、多価アルコール(A)、非イオン性界面活性剤(B)、疎水化処理無機粉体(C)、並びに、レシチン及び/又は水添レシチン(D)以外の成分を含まない場合の液状分散体の粘度であり、この液状分散体を作製し、40℃で1日静置した後、25℃まで冷却し、B型粘度計(LVDV1M、英弘精機社製)にて測定した値である(測定温度:25℃)。
【0051】
〔用途〕
本発明の液状分散体は、長時間安定して分散状態を維持することができるため、分散体として保管や輸送が容易であるうえ、当該液状分散体を分散媒に分散する際の分散処理を簡略化又は省略することができる。それゆえ、各種原料として有用であり、化粧料原料、塗料原料、インキ原料として特に有用である。中でも、本発明の液状分散体は発色や感触、取扱い性が良好で、汗や水に強い撥水性の高い化粧料を与えることができるため、化粧料原料として極めて有用である。このように本発明の液状分散体からなる化粧料原料は、本発明の一つである。また本発明の液状分散体を含む化粧料、塗料組成物又はインキ組成物も、本発明者による発明に包含される。このうち化粧料について以下に更に説明する。
【0052】
〔化粧料〕
本発明の化粧料は、上述した本発明の液状分散体を含む。このような化粧料の製造方法は特に限定されず、通常の化粧料の製法に従えばよい。
【0053】
上記化粧料としては特に限定されず、例えば、スキンケア製品、頭髪製品、メークアップ製品、紫外線防御用製品等が挙げられる。化粧料の形状も特に限定されず、例えば、液状、乳液状、クリーム状、固形状、ペースト状、ゲル状、多層状、ムース状、スプレー状等が挙げられる。
【0054】
上記化粧料はまた、油性化粧料、水性化粧料、O/W型化粧料(水中油型化粧料)、W/O型化粧料(油中水型化粧料)のいずれであってもよい。すなわち本発明の液状分散体は、これらのいずれにも好適に適用することができる。中でも、O/W型化粧料及びW/O型化粧料の両者に特に好ましく適用することができる。O/W型化粧料としては、アニオン性の水溶性高分子と併用される化粧料が好ましいが、この場合、本発明の液状分散体を使用することで、アニオン性の水溶性高分子と併用しても粘度低下やゲル化等が生じることがなく耐水性も向上し、またW/O型化粧料においては、化粧料を肌に塗布した後、水の蒸発により顔料の肌への付着性が向上し、化粧持ちを向上させることができる。特に、レシチンや水添レシチン等を加えることにより、肌への付着性が著しく向上する。
【0055】
上記化粧料には、必要に応じて、化粧品分野で通常使用されている任意の水性成分、油性成分を1種又は2種以上含んでもよい。水性成分及び油性成分としては特に限定されないが、例えば、油剤、界面活性剤、保湿剤、高級アルコール、金属イオン封鎖剤、天然又は合成高分子、水溶性又は油溶性高分子、紫外線遮蔽剤、各種抽出液、薬剤成分、色剤(染料、顔料等)、防腐剤、酸化防止剤、色素、増粘剤、pH調整剤、香料、冷感剤、制汗剤、殺菌剤、皮膚賦活剤、各種粉体等が挙げられる。
【実施例】
【0056】
本発明を詳細に説明するために以下に実施例を挙げるが、本発明はこれらの例のみに限定されるものではない。特に断りのない限り、「%」は「質量%(重量%)」を、「部」は「質量部(重量部)」を、それぞれ意味する。
なお、各種物性等は以下のようにして評価した。
【0057】
1、各原料成分中の水分量(カールフィッシャー滴定)
(1)無機粉体中の水分量
滴定セルにメタノールを入れ、水分気化装置(平沼産業社製「EVAPORATER EV−2000」)にセットし、ブランク操作を行ってから試料0.5gを投入した。加熱保持時間10分で水分測定装置(平沼産業社製「AQUA COUNTER AQV−2200」)を用いて水分量を測定した。
(2)油(無機粉体以外の原料)中の水分量
滴定セルにメタノールを入れ、ブランク操作をしてから試料0.5gを投入し、水分測定装置(平沼産業社製「AQUA COUNTER AQV−2200」)で水分量を測定した。
【0058】
2、粘度
液状分散体を作製後、40℃で1日又は1週間静置した後、25℃まで冷却し、B型粘度計(LVDV1M、英弘精機社製)にて測定した(測定温度:25℃)。
【0059】
3、ケーキング及び上澄み
液状分散体を作製後、40℃で静置し、1週間後に目視で確認した。
表では、ケーキング又は上澄みが発生したものを「発生」と記載し、発生しなかったものを「なし」と記載した。
【0060】
4、粒度
(1)粒度分布
白色の無機粉体を含む液状分散体について、水で希釈後、堀場製作所製「LA−950」にてメディアン径D50を測定した。
(2)グラインドゲージ
有色の無機粉体を含む液状分散体について、JIS K5600(1999年)に従い、50μmグラインドゲージにより測定した。
【0061】
実施例1
金属ビーカーに、表1に示す量で1,3−ブチレングリコール(ダイセル社製)、非イオン性界面活性剤(信越化学工業社製「KF−6013」、ポリエーテル変性シリコーン)、酸化チタン(堺化学工業社製「MKR−1S」、酸化チタン98.5%、ハイドロゲンジメチコン1.5%、平均粒子径:200nm)の順で投入した。それぞれ投入時に、金ベラを用いて馴染ませ、撹拌機で混合した。このようにして得た液状分散体について、上述した評価を行った。結果を表1に示す。
【0062】
実施例2
各原料成分の量を表1に示す量に変更したこと以外は、実施例1と同様にして液状分散体を作製し、上述した評価を行った。結果を表1に示す。
【0063】
実施例3
酸化チタンの平均粒子径を500nmに変更したこと以外は、実施例1と同様にして液状分散体を作製し、上述した評価を行った。結果を表1に示す。
【0064】
実施例4
酸化チタンを酸化鉄(黄色)三好化成社製「SI−イエロー LL−100P LHC」、ハイドロゲンジメチコン処理、平均粒子径:700nm)に変更したこと、及び、各原料成分の量を表1に示す量に変更したこと以外は、実施例1と同様にして液状分散体を作製し、上述した評価を行った。結果を表1に示す。
【0065】
実施例5
酸化チタンを酸化鉄(赤色)(三好化成社製「SI−レッド R−516PS LHC」、ハイドロゲンジメチコン処理、平均粒子径:700nm)に変更したこと、及び、各原料成分の量を表1に示す量に変更したこと以外は、実施例1と同様にして液状分散体を作製し、上述した評価を行った。結果を表1に示す。
【0066】
実施例6
酸化チタンを酸化鉄(黒色)(三好化成社製「SI−ブラック BL−100P LHC」、ハイドロゲンジメチコン処理、平均粒子径:300nm)に変更したこと、及び、各原料成分の量を表1に示す量に変更したこと以外は、実施例1と同様にして液状分散体を作製し、上述した評価を行った。結果を表1に示す。
【0067】
実施例7
金属ビーカーに、表1に示す量で1,3−ブチレングリコール(ダイセル社製)、非イオン性界面活性剤(信越化学工業社製「KF−6013」、ポリエーテル変性シリコーン)、レシチン(J−オイルミルズ製「レシチンCL」)、酸化チタン(堺化学工業社製「MKR−1S」、酸化チタン98.5%、ハイドロゲンジメチコン1.5%、平均粒子径:200nm)の順で投入した。それぞれ投入時に、金ベラを用いて馴染ませ、撹拌機で混合した。このようにして得た液状分散体について、上述した評価を行った。結果を表1に示す。
【0068】
実施例8
酸化チタン(堺化学工業社製MKR−1S」、酸化チタン98.5%、ハイドロゲンジメチコン1.5%、平均粒子径:200nm)60.1g、酸化鉄(黄色)(三好化成社製「SI−イエロー LL−100P LHC」、ハイドロゲンジメチコン処理、平均粒子径:700nm)2.6g、酸化鉄(黒色)(三好化成社製「SI−ブラック BL−100P LHC」、ハイドロゲンジメチコン処理、平均粒子径:300nm)0.7g、酸化鉄(赤色)(三好化成社製「SI−レッド R−516PS LHC」、ハイドロゲンジメチコン処理、平均粒子径:700nm)7.8gを混合し、肌色に調色した疎水化処理無機粉体を得た。
金属ビーカーに、表1に示す量で1,3−ブチレングリコール(ダイセル社製)、非イオン性界面活性剤(信越化学工業社製「KF−6013」、ポリエーテル変性シリコーン)上記肌色に調色した疎水化処理無機粉体の順で投入した。それぞれ投入時に、金ベラを用い馴染ませ、撹拌機で混合した。このようにして得た液状分散体について、上述した評価を行った。結果を表1に示す。
【0069】
比較例1
非イオン性界面活性剤を使用しなかったこと及び各原料成分の量を表1に示す量に変更したこと以外は、実施例1と同様にして液状分散体を作製しようとしたが、分散しなかった。それゆえ、液状分散体を得ることができなかった。
【0070】
比較例2
金属ビーカーに、表1に示す量で1,3−ブチレングリコール(ダイセル社製)、非イオン性界面活性剤(信越化学工業社製「KF−6013」、ポリエーテル変性シリコーン)、酸化チタン(堺化学工業社製「MKR−1S」、酸化チタン98.5%、ハイドロゲンジメチコン1.5%、平均粒子径:200nm)、水の順で投入した。それぞれ投入時に、金ベラを用いて手で馴染ませた。このようにして得た液状分散体について、上述した評価を行った。結果を表1に示す。
【0071】
上述のカールフィッシャー滴定法にて測定した各原料成分100質量%中の水分量は、以下のとおりである。
平均粒子径200nmの酸化チタン:0.126質量%
平均粒子径500nmの酸化チタン:0.103質量%
酸化鉄(赤色):0.130質量%
酸化鉄(黄色):0.487質量%
酸化鉄(黒色):0.061質量%
1,3−ブチレングリコール:0.262質量%
非イオン性界面活性剤(KF−6013):0.272質量%
レシチン:0.186質量%
【0072】
【表1】
【0073】
表1より、以下のことを確認した。
実施例1〜6、8は、多価アルコール(A)、非イオン性界面活性剤(B)及び疎水化処理無機粉体(C)を含む液状分散体であり、実施例7は更にレシチン及び/又は水添レシチン(D)を含む液状分散体であって、かつ液状分散体100質量%中の水分量が1質量%以下である例であるが、この場合、粘度が経時的に安定しており、上澄みやケーキングの発生も抑制された液状分散体が得られた。実施例1〜3、7ではメディアン径D50も小さく、疎水化処理無機粉体(C)の分散が良好であり、実施例4〜6、8ではグラインドゲージによる粗粒確認を行った場合にも粗粒は確認されなかった。
また、実施例1〜8で得た液状分散体はいずれも、O/W型化粧料(水中油型化粧料)のみならず、W/O型化粧料(油中水型化粧料)にも安定に配合することができた。
【0074】
これに対し、比較例1は、非イオン性界面活性剤(B)のいずれかを使用しなかった例であるが、この場合は分散せず、液状分散体を得ることができなかった。また表には記載していないが、実施例1において非イオン性界面活性剤の代わりにポリビニルピロリドンを使用した場合についても検討したところ、この場合も分散せず、液状分散体を得ることができなかった。比較例2は、原料成分として水を含む例であるが、この場合、W/O型化粧料(油中水型化粧料)に配合し、50℃1週間の条件で静置を行うと分離し、安定性が悪く、また比較例2で得た液状分散体は、当初は流動性のある液状であったが、1週間経過後には流動性に著しく劣る状態(固化)となっていた。
【0075】
以上より、多価アルコール(A)、非イオン性界面活性剤(B)及び疎水化処理無機粉体(C)を含み、更にレシチン及び/又は水添レシチン(D)を配合した場合でも、液状分散体100質量%中の水分量が1質量%以下であるという構成とすることによって初めて、長時間安定して分散状態を維持することができ、しかもO/W型化粧料及びW/O型化粧料の両者に好適に適用可能な液状分散体となることが分かった。
【0076】
(処方例)
実施例9(O/Wファンデーション)
下記表2に示す成分を用い、以下の製造方法にてO/Wファンデーションを得た。
(製造方法)
(1)成分15〜18を成分19の一部に均一に混合する。
(2)成分1〜7を均一に混合し、加熱する。
(3)成分8〜14及び成分19の残部を均一に混合し、加熱する。
(4)上記(3)に上記(2)を添加して乳化し、冷却して上記(1)を添加し、O/Wファンデーションを得た。
【0077】
【表2】
【0078】
以上のようにして得られた実施例9のO/Wファンデーションは、経時変化を起こさず安定で、また使用感に関しても、塗布時の肌へののび広がりが良くなめらかで、後肌のべたつき感もキシミ感もなく、化粧持ちに優れたO/Wファンデーションであった。
【0079】
実施例10(O/Wファンデーション)
下記表3に示す成分を用い、以下の製造方法にてO/Wファンデーションを得た。
(製造方法)
(1)成分16〜19を成分20の一部に均一に混合する。
(2)成分1〜8を均一に混合し、加熱する。
(3)成分9〜15及び成分20の残部を均一に混合し、加熱する。
(4)上記(3)に上記(2)を添加して乳化し、冷却して上記(1)を添加し、O/Wファンデーションを得た。
【0080】
【表3】
【0081】
以上のようにして得られた実施例10のO/Wファンデーションは、経時変化を起こさず安定で、また使用感に関しても、塗布時の肌へののび広がりが良くなめらかで、後肌のべたつき感もキシミ感もなく、紫外線防御効果のある化粧持ちに優れたO/Wファンデーションであった。
【0082】
実施例11(O/Wファンデーション)
下記表4に示す成分を用い、以下の製造方法にてO/Wファンデーションを得た。
(製造方法)
(1)成分11〜14を成分17の一部に均一に混合する。
(2)成分1〜6を均一に混合し、加熱する。
(3)成分7〜10及び成分17の残部を均一に混合し、加熱する。
(4)上記(3)に上記(2)を添加して乳化し、冷却して成分15、16及び上記(1)を添加し、O/Wファンデーションを得た。
【0083】
【表4】
【0084】
以上のようにして得られた実施例11のO/Wファンデーションは、経時変化を起こさず安定で、また使用感に関しても、塗布時の肌へののび広がりが良くなめらかで、後肌のべたつき感もキシミ感もなく、非常に化粧持ちに優れた紫外線遮断効果の高いO/Wファンデーションであった。
【0085】
実施例12(W/Oファンデーション)
下記表5に示す成分を用い、以下の製造方法にてW/Oファンデーションを得た。
(製造方法)
(1)成分8〜11を成分15の一部に均一に混合する。
(2)成分1〜7を均一に混合する。
(3)成分12〜14及び成分15の残部を均一に混合し、上記(1)を添加する。
(4)上記(2)に上記(3)を添加して乳化し、W/Oファンデーションを得た。
【0086】
【表5】
【0087】
以上のようにして得られた実施例12のW/Oファンデーションは、経時変化を起こさず安定で、また使用感に関しても、塗布時の肌へののび広がりが良くなめらかで止まりも良く、後肌のべたつき感もキシミ感もなく、化粧持ちに優れたW/Oファンデーションであった。
【0088】
実施例13(W/Oファンデーション)
下記表6に示す成分を用い、以下の製造方法にてW/Oファンデーションを得た。
(製造方法)
(1)成分6〜9を成分15の一部に均一に混合する。
(2)成分1〜5を均一に混合する。
(3)成分10〜14及び成分15の残部を均一に混合し、上記(1)を添加する。
(4)上記(2)に上記(3)を添加して乳化し、W/Oファンデーションを得た。
【0089】
【表6】
【0090】
以上のようにして得られた実施例13のW/Oファンデーションは、経時変化を起こさず安定で、また使用感に関しても、塗布時の肌へののび広がりが良くなめらかで止まりも良く、後肌のべたつき感もキシミ感もなく、非常に化粧持ちに優れたW/Oファンデーションであった。
【0091】
実施例14(O/Wマスカラ)
下記表7に示す成分を用い、以下の製造方法にてO/Wマスカラを得た。
(製造方法)
(1)成分10を成分11の一部に均一に混合する。
(2)成分2〜4及び成分11の残部を混合する。
(3)上記(2)に成分5を加え、更に成分6を添加する。
(4)上記(3)に成分7,8を加え、均一して加熱する。
(5)上記(4)に加熱した成分1を加えて乳化する。
(6)上記(5)に成分9及び上記(1)を加え、均一にしてO/Wマスカラを得た。
【0092】
【表7】
【0093】
以上のようにして得られた実施例14のO/Wマスカラは、経時変化を起こさず安定で、また使用感に関しても、塗布時の睫毛へののび・付きが良くなめらかでべたつきもなく、化粧持ちに優れたO/Wマスカラであった。