(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記陽極箔の前記誘電体層と前記セパレータの間、及び、前記陰極箔と前記セパレータの間に固体電解質層をそれぞれ有しており、前記セパレータには電解液が含浸されていて、固体電解質が充填されていない請求項1に記載の電解コンデンサ。
さらに、前記積層体を実装するとともに前記積層体の前記第1の側面に引き出された前記陽極箔及び前記陰極箔と電気的に接続される基板と、前記積層体を収容する形で前記基板と接合されたケースを有する請求項1〜10のいずれかに記載の電解コンデンサ。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の電解コンデンサについて説明する。
しかしながら、本発明は、以下の構成に限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲において適宜変更して適用することができる。なお、以下において記載する本発明の望ましい構成を2つ以上組み合わせたものもまた本発明である。
【0012】
以下に示す各実施形態は例示であり、異なる実施形態で示した構成の部分的な置換又は組み合わせが可能であることは言うまでもない。
【0013】
本発明の電解コンデンサは、表面に誘電体層を有する陽極箔と、前記陽極箔と対向する陰極箔と、前記陽極箔と前記陰極箔との間に電解液が含浸または固体電解質が充填されたセパレータとを有する少なくとも1つのコンデンサ素子を含む積層体を備える電解コンデンサであって、前記積層体の積層方向に位置する面を主面、前記陽極箔及び前記陰極箔の引出面を第1の側面とし、前記第1の側面と対向する面を第2の側面、前記第1の側面及び主面と直交する面を第3の側面及び第4の側面とし、前記セパレータの前記第1乃至第4の側面側に位置する端縁は絶縁樹脂で覆われており、かつ、前記絶縁樹脂の前記第1乃至第4の側面の少なくとも1つには切り欠きを有することを特徴とする。
【0014】
本発明の電解コンデンサは、表面に誘電体層を有する陽極箔と、上記陽極箔と対向する陰極箔とを積み重ねた積層型の電解コンデンサであるため、陽極箔及び陰極箔にストレスがかかりにくい。
【0015】
本発明の電解コンデンサで用いられるコンデンサ素子は、陽極箔と陰極箔との間にセパレータが配置され、セパレータの積層体の側面側に位置する端縁を覆う絶縁樹脂に切り欠きを有する。この切り欠きからセパレータに電解液を注入し、電解液の量を精度よくコントロールすることができるため、電解コンデンサの静電容量の低下や静電容量のばらつきが抑えられる。
また、セパレータとして予め電解液を浸みこませた状態のものを積層し、積層後にさらに切り欠きからセパレータに電解液を注入する製造方法により電解コンデンサの製造を行うこともできる。
【0016】
このように、本発明の電解コンデンサは、積層型の電解コンデンサであり、切り欠きからセパレータに電解液を注入することができる電解コンデンサであるが、その具体的な例としての実施形態について、以下に説明する。
【0017】
はじめに、各実施形態の電解コンデンサにおける基本構成を説明する。
本発明の電解コンデンサは、コンデンサ素子を含む積層体と基板とケースとから成る。
この電解コンデンサでは、積層体の電極と基板の電極が接合され、積層体を収容する形でケースと基板が接合されている。
電解コンデンサの全体構造について、
図1から
図4を参照して説明する。
【0018】
図1は、基板、積層体及びケースを組み合わせる前の様子を模式的に示す斜視図である。
図2は、積層体を実装する基板の一例を模式的に示す斜視図である。
図3は、基板に積層体を実装した状態を模式的に示す斜視図である。
図4は、基板に積層体を実装したのちにケースを被せた状態を模式的に示す斜視図である。
【0019】
図1には、基板400、積層体100及びケース500を組み合わせる前の様子を示している。まず、ケース500と基板400について、並びに、基板400、積層体100及びケース500を組み合わせた全体構造について説明する。
積層体100の構造の詳細な説明は後述する。
【0020】
図1には、積層体100を収容し、基板400とともに積層体100を封止するためのケース500を示している。ケースは箱型で樹脂からなる。ケースの材質としては、金属製やセラミック製を使用することもできる。封止方法はシール材を用いて、基板とケースを接合する。金属製のケースを使う場合は、溶接を用いて封止することもできる。
【0021】
図2には、積層体100を実装し、外部回路と接続するための基板400を示している。
基板400は両面に導体が形成された基板であり、絶縁基板430の表面(図で見えている面)に表面外部電極としての陽極外部電極410及び陰極外部電極420が形成されている。
絶縁基板430の表面と対向する絶縁基板430の裏面(図で見えていない面)には外部回路に接続される裏面外部電極としての陽極外部電極および陰極外部電極が形成されている。
【0022】
基板400の表面に形成されている陽極外部電極と裏面に形成されている陽極外部電極は複数の接続導体411によって導通されている。基板400の表面に形成されている陰極外部電極と裏面に形成されている陰極外部電極は複数の接続導体421によって導通されている。基板400の裏面には外部電極が形成されているので、この裏面外部電極を使用して回路基板との接続を行うことができる。
また、変形例として基板側面に電極を形成し、これを介して表面外部電極と裏面外部電極の導通を取ってもよい。
【0023】
図3には、基板400の上に積層体100を実装した状態を示している。
基板400の表面の陽極外部電極410と積層体100の陽極接続電極が半田づけで接続され、かつ、基板400の表面の陰極外部電極420と積層体100の陰極接続電極が半田づけで接続され、対応する面を向かい合わせている。
また、ほかの接合方法として導電性接着剤を用いて接合させることもできる。また、接続電極を形成せずに、陽極箔および陰極箔の引出部と基板の表面外部電極との接合を、直接、導電性接着剤により行ってもよい。
【0024】
図1および
図3に示す基板400には、基板400の周囲に樹脂製のシール材440が形成されている。シール材は熱可塑性樹脂からなる。
積層体100は接続電極が下向きに載置されており、積層体の接続電極と基板の表面外部電極が向かい合う位置になる。
【0025】
積層体の接続電極と基板の表面外部電極は半田づけにより接合されている。
積層体の接続電極については後で説明するが、陽極接続電極は陽極箔と、陰極接続電極は陰極箔と電気的に接続されている電極である。
【0026】
図4には基板400に積層体100を実装したのちにケース500を被せた状態を示している。
基板400に実装された積層体100の上にケース500を被せて、基板400の周囲に設けられた熱可塑性樹脂製のシール材440をケース500と基板400の間に挟んで、加熱・冷却することにより、ケース500と基板400を接合して積層体100を封止する。
電解コンデンサの全体構造は上記の通りである。
【0027】
このような電解コンデンサは、基板の裏面の陽極外部電極および陰極外部電極を使用して面実装をすることができる電解コンデンサとなる。
基板の裏面の陽極外部電極および陰極外部電極は平坦な電極であるので面実装に適している。
【0028】
次に、電解コンデンサに用いられる積層体について説明する。
積層体の具体的な実施形態としては後述するいくつかの実施形態があるが、はじめに各実施形態において共通する事項を説明する。
なお、陽極箔及び陰極箔の表面に設けられる固体電解質層の有無については、実施形態ごとに異なるが、下記には陽極箔及び陰極箔の表面に固体電解質層が設けられた例について説明する。
図5は、コンデンサ素子が複数積層された積層体の一例を模式的に示す斜視図である。
積層体100は、積層方向(T方向)において対向する第1の主面M101及び第2の主面M102、陽極箔および陰極箔の電極引出面である第1の側面S101、第1の側面S101と幅方向(W方向)において対向する第2の側面S102、並びに、第1の側面S101および第1の主面M101と直交する長さ方向(L方向)において対向する第3の側面S103及び第4の側面S104を有する。
なお、本明細書における「側面」は積層方向において対向する主面以外の面を意味する。そして、本発明の電解コンデンサに用いられる積層体ではセパレータの積層体の側面側に位置する端縁を覆う絶縁樹脂の少なくとも1つに切り欠きを有している。
【0029】
第1の側面S101には、陽極箔10及び陰極箔20が同一側面に引き出されており、
図5において図面左側には陰極引出部、右側には陽極引出部が設けられている。
第1の側面S101において、陽極箔10及び陰極箔20以外の部分は絶縁樹脂14、絶縁樹脂24又は封止材54となっている。封止材54も絶縁性の材料である。
陰極引出部及び陽極引出部には、基板上の外部電極に電気的に接続される接続電極を設けることができる。接続電極の詳細については後述する。
【0030】
図6は、
図5に示す積層体の第3の側面の一部を拡大して示す斜視図である。
積層体100の第3の側面S103には、セパレータの端縁を覆う絶縁樹脂14と絶縁樹脂14の一部が切り欠かれた切り欠き15を有している。また、積層体100の第3の側面S103には、セパレータの端縁を覆う絶縁樹脂24と絶縁樹脂24の一部が切り欠かれた切り欠き25を有している。
図6は、絶縁樹脂の切り欠きからセパレータが見える様子を模式的に示している。
【0031】
陽極箔10の上のセパレータ30は、その端縁の一部が絶縁樹脂14で覆われており、絶縁樹脂14の切り欠き15から、その端縁の一部が第3の側面S103に露出している。
陰極箔20の上のセパレータ40は、その端縁の一部が絶縁樹脂24で覆われており、絶縁樹脂24の切り欠き25から、その端縁の一部が第3の側面S103に露出している。
陽極箔10と陰極箔20とがセパレータ30、40を介して積層され、第3の側面S103から絶縁樹脂の切り欠き15、25を通して、各セパレータ30、40の端縁が露出している。
セパレータ30、40と第3の側面S103との間に絶縁樹脂の切り欠き15、25によって、空間が設けられている。よって、切り欠き15、25からセパレータ30、40に電解液を注入することができ、積層後に電解液の量を調整できる。切り欠きから電解液を注入した後、接続電極の引出部以外の部分を樹脂(図示せず)で覆うようにして積層体とする。
なお、切り欠きの形状、寸法及び配置は特に限定されず、電解液の注入効率と絶縁樹脂の接着信頼性を考慮して定めることができる。
【0032】
図7(a)は、陽極箔ユニットの一例を示す斜視図であり、
図7(b)は
図7(a)に示す陽極箔ユニットのA−A線断面図である。
陽極箔ユニット1は、
図7(b)に示すような断面構造を有しており、弁作用金属基体11及び弁作用金属基体の両面に形成された誘電体層12を備える陽極箔10を中心にして、誘電体層12の表面に固体電解質層13が設けられている。
図7(a)では、弁作用金属基体11、誘電体層12及び固体電解質層13の図示は省略して陽極箔10として示している。
そして、
図7(b)の上側に示す固体電解質層13の上にセパレータ30が配置されている。なお、本発明の電解コンデンサの基本構成としては、陽極箔10上の固体電解質層13は必須ではなく、後述する実施形態のように省略してもよい。
なお、弁作用金属基体11の両面には多孔質層(
図7(b)で図示していない)が形成されていることが好ましく、多孔質層の表面に誘電体層12が設けられていることがより好ましい。
【0033】
図7(a)に示すように、セパレータ30の周囲には絶縁樹脂14が設けられている。
セパレータ30の端縁30S1、30S2は絶縁樹脂14S1、14S2でそれぞれ覆われている。
セパレータ30の端縁30S3は、その一部が周期的な形状の絶縁樹脂14S3で覆われている。周期的な形状として、絶縁樹脂14S3は一定間隔を置いて切り欠き15を有していて櫛歯型の構造となっている。その結果、セパレータ30の一部が積層体の側面において周期的な配置で露出するようになっている。このような陽極箔ユニットは積層体に一つであってもよく、あるいは複数含んでもよい。また、切り欠きは、不定の間隔で配置されていてもよい。
セパレータ30の端縁30S4についても、その一部が周期的な形状の絶縁樹脂14S4で同様に覆われている。
【0034】
陽極箔10は、第1の側面側10S1の右側において露出しており、陽極箔10を引き出すことができるようになっている。また、第1の側面側10S1の右側の一部には封止材54が柱状に設けられている。一方、陽極箔10は第1の側面側10S1の左側において封止材54で覆われている。
図7(b)に示す断面図は、セパレータ30の端縁30S3が絶縁樹脂14S3で覆われておらず、かつ、セパレータ30の端縁30S4が絶縁樹脂14S4で覆われている様子を示している。
なお、セパレータの端縁30S1、30S2をそれぞれ覆う絶縁樹脂14S1、14S2の一部に切り欠き15を設けることにより、セパレータの端縁30S1又は30S2の一部を積層体の側面において露出させるようにしてもよい。
また、セパレータの端縁を覆う絶縁樹脂の一部に切り欠きを設けることで、積層体のいずれか一つの側面にセパレータの端縁を露出させればよい。
【0035】
図8(a)は、陰極箔ユニットの一例を示す斜視図であり、
図8(b)は
図8(a)に示す陰極箔ユニットのB−B線断面図である。
陰極箔ユニット2は、
図8(b)に示すような断面構造を有しており、陰極箔20を中心にして、陰極箔20の両面に固体電解質層23が設けられている。
そして、
図8(b)の上側に示す固体電解質層23の上にセパレータ40が配置されている。なお、本発明の電解コンデンサの基本構成としては、陰極箔20上の固体電解質層23は必須ではなく、後述する実施形態のように省略してもよい。
【0036】
図8(a)に示すように、セパレータ40の周囲には絶縁樹脂24が設けられている。
セパレータ40の端縁40S1、40S2は絶縁樹脂24S1、24S2でそれぞれ覆われている。
セパレータ40の端縁40S3は、その一部が周期的な形状の絶縁樹脂24S3で覆われている。周期的な形状として、絶縁樹脂24S3は一定間隔を置いて切り欠き25を有していて櫛歯型の構造となっている。その結果、セパレータ40の一部が積層体の側面において周期的な配置で露出するようになっている。このような陰極箔ユニットは積層体に一つであってもよく、あるいは複数含んでもよい。また、切り欠きは、不定の間隔で配置されていてもよい。
セパレータ40の端縁40S4についても、その一部が絶縁樹脂24S4で同様に覆われている。
【0037】
陰極箔20は、第1の側面側20S1の左側において露出しており、陰極箔20を引き出すことができるようになっている。また、第1の側面側20S1の左側の一部には封止材54が柱状に設けられている。一方、陰極箔20は第1の側面側20S1の右側において封止材54で覆われている。
図8(b)に示す断面図は、セパレータ40の端縁40S3が絶縁樹脂24S3で覆われておらず、かつ、セパレータ40の端縁40S4が絶縁樹脂24S4で覆われている様子を示している。
なお、セパレータの端縁40S1、40S2をそれぞれ覆う絶縁樹脂24S1、24S2の一部に切り欠き25を設けることにより、セパレータの端縁40S1又は40S2の一部を積層体の側面において露出させるようにしてもよい。
また、セパレータの端縁を覆う絶縁樹脂の一部に切り欠きを設けることで、積層体のいずれか一つの側面にセパレータの端縁を露出させればよい。
【0038】
セパレータとしては、例えば、紙、不織布、多孔フィルム等からなるものを使用することができる。セパレータを構成する材料としては、例えば、セルロース、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリフェニレンサルファイド、ナイロン、芳香族ポリアミド、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、レーヨン、ガラス等が挙げられる。
セパレータの厚さは、5μm以上であることが好ましく、100μm以下であることが好ましい。
セパレータの厚さを薄くすることによってESRを低減することができる。
図7(a)及び
図8(a)に示すように陽極箔上と陰極箔上のそれぞれにセパレータを設ける場合、陽極箔上に設けるセパレータと陰極箔上に設けるセパレータの材質や厚さは同じであってもよく異なっていてもよい。
【0039】
陽極箔及び陰極箔は、いわゆる弁作用を示す弁作用金属からなる。弁作用金属としては、例えば、アルミニウム、タンタル、ニオブ、チタン、ジルコニウム等の金属単体、又は、これらの金属を含む合金等が挙げられる。これらの中では、アルミニウム又はタンタルが好ましい。陰極箔を構成する弁作用金属は、陽極箔を構成する弁作用金属と同じであることが好ましいが、異なっていてもよい。
陽極箔は、アルミニウムの金属単体であることが好ましい。
【0040】
陽極箔の表面に形成される誘電体層は、上記弁作用金属の酸化皮膜からなることが好ましい。例えば、陽極箔としてアルミニウム箔が用いられる場合、アジピン酸アンモニウム等を含む水溶液中でアルミニウム箔の表面に対して陽極酸化処理を行うことにより、酸化皮膜からなる誘電体層を形成することができる。
【0041】
陰極箔の表面は、エッチング処理等を施すことによって粗面化されて多孔質となっていることが好ましい。また、陰極箔の表面には、陽極箔の表面に形成されている誘電体層に比べて非常に薄い誘電体層が形成されていてもよい。
【0042】
固体電解質層を構成する材料としては、例えば、ポリピロール類、ポリチオフェン類、ポリアニリン類等の導電性高分子等が挙げられる。これらの中では、ポリチオフェン類が好ましく、PEDOTと呼ばれるポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)が特に好ましい。また、上記導電性高分子は、ポリスチレンスルホン酸(PSS)等のドーパントを含んでいてもよい。なお、固体電解質層は、誘電体層の細孔(凹部)を充填する内層と、誘電体層を被覆する外層とを含むことが好ましい。
【0043】
絶縁樹脂としては、例えば、ポリフェニルスルホン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、シアン酸エステル樹脂、フッ素樹脂(テトラフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体等)、可溶性ポリイミドシロキサンとエポキシ樹脂からなる組成物、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、及び、それらの誘導体又は前駆体等の絶縁性樹脂が挙げられる。
【0044】
封止材としては、樹脂が用いられ、必要に応じてフィラーを含む。
封止材に含まれる樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、フェノール樹脂等が挙げられる。また、封止材に含まれるフィラーとしては、例えば、シリカ粒子、アルミナ粒子、金属粒子等が挙げられる。
【0045】
セパレータに注入する電解液は、酸又は塩基の電解質を溶媒に溶解したものである。溶媒としては、エチレングリコール(C
2H
6O
2)等のグリコール類、γ−ブチロラクトン(C
4H
6O
2)等のラクトン類、スルホラン(C
4H
8O
2S)等のスルホン類等が挙げられる。電解質の酸としては、アジピン酸(C
6H
10O
4)等の脂肪族カルボン酸、フタル酸(C
8H
6O
2)等の芳香族カルボン酸等が挙げられる。電解質の塩基としてはアンモニア(NH
3)、トリエチルアミン(C
6H
15N)等のアミン、テトラメチルイミダゾリニウム(C
7H
15N
2)等のアミジン等が挙げられる。
【0046】
積層体を覆う樹脂は例えば、エポキシ樹脂、フェノール樹脂等が挙げられる。
【0047】
本発明の電解コンデンサを構成する積層体100は、コンデンサ素子を含んでいる。
図9(a)は、陽極ユニット1と陰極ユニット2を積み重ねてなるコンデンサ素子を模式的に示す断面図である。弁作用金属基体11の多孔質状の表面に誘電体層12を有する陽極箔10と、陽極箔10と対向する陰極箔20と、陽極箔10と陰極箔20の間に配置されたセパレータ30、40とでコンデンサ素子5を構成する。
なお、陽極ユニット1の上に陰極ユニット2を積み重ねてなるコンデンサ素子では陽極箔10と陰極箔20の間にセパレータ30が配置されるが、陰極ユニット2の上に陽極ユニット1を積み重ねたコンデンサ素子では陰極箔20と陽極箔10の間にセパレータ40が配置される。
【0048】
図9(b)は、
図9(a)に示すコンデンサ素子を含む積層体の側面に接続電極を形成した積層体の一例を模式的に示す斜視図である。
【0049】
図9(b)には、コンデンサ素子が積層された積層体100の第1の側面S101に陽極接続電極310と陰極接続電極320が形成された状態を示している。
陽極接続電極310及び陰極接続電極320について説明する。
【0050】
陽極接続電極310は、積層体100の側面に引き出された複数の陽極箔の引出と接続され、陰極接続電極320は、積層体100の側面に引き出された複数の陰極箔の引出と接続されている。陽極接続電極310および陰極接続電極320は、第1導電膜と第2導電膜と第3導電膜を有する。第1導電膜はZnめっき膜、第2導電膜はNiめっき膜、第3導電膜はSnめっき膜によって形成されている。Pdめっき膜が第1導電膜にあってもよい。
また、第1導電膜は、陽極箔および陰極箔との接続性の良い金属が好ましい。陽極箔および陰極箔がアルミニウムの場合は、第1導電膜としてZnめっき膜を用いることが好ましい。
なお、接続電極は、一つの導電膜でも複数の導電膜でもよい。
【0051】
また、
図9(b)には接続電極が形成された積層体を示したが、接続電極が形成されていない積層体を使用してもよい。接続電極が形成されてない積層体を使用した場合、陽極箔および陰極箔の引出部と基板の表面の陽極外部電極および陰極外部電極との接合は、直接、導電性接着剤により行えばよい。
【0052】
本発明の電解コンデンサを構成する
図5に示す積層体は、例えば以下の方法により製造することができる。
図10は、陽極箔シートの一例を模式的に示す斜視図であり、
図11は、陰極箔シートの一例を模式的に示す斜視図である。
図10に示す陽極箔シート201には、
図7(a)に示す陽極箔ユニット1となる部位が多数設けられており、陽極箔シート201を所定位置で切断することによって陽極箔ユニットを多数得ることができる。
図11に示す陰極箔シート202には、
図8(a)に示す陰極箔ユニット2となる部位が多数設けられており、陰極箔シート202を所定位置で切断することによって陰極箔ユニットを多数得ることができる。
図10及び
図11では、陽極箔シート201及び陰極箔シート202の切断予定位置を一点鎖線で示している。
【0053】
陽極箔シート201には、陽極箔ユニット1の陽極箔が引き出される側面となる切断予定位置において、第1の貫通穴H1及び第2の貫通穴H2が設けられている。
陰極箔シート202には、陰極箔ユニット2の陰極箔が引き出される側面となる切断予定位置において、第3の貫通穴H3及び第4の貫通穴H4が設けられている。
第1の貫通穴H1及び第4の貫通穴H4は長穴形状であり、第2の貫通穴H2及び第3の貫通穴H3は略丸穴形状である。
各貫通穴は、例えば、レーザ加工、エッチング加工、パンチング加工等によって形成される。
【0054】
このような陽極箔シート201及び陰極箔シート202を交互に積層することにより、積層シートを作製する。
得られる積層シートにおいては、第1の貫通穴H1と第3の貫通穴H3、及び、第2の貫通穴H2と第4の貫通穴H4がそれぞれ積層方向に連通されている。
得られた積層シートの少なくとも一方の主面側から、第1の貫通穴と第3の貫通穴、第2の貫通穴と第4の貫通穴にそれぞれ封止材54を充填することにより、積層ブロック体を作製する。
【0055】
作製された積層ブロック体を熱処理する。熱処理することにより絶縁樹脂および封止材が硬化し、陽極箔と陰極箔を一体化させる。
【0056】
熱処理された積層ブロック体を、
図10及び
図11に示した陽極箔シート201及び陰極箔シート202の切断予定位置で切断する。
【0057】
充填された封止材54は積層体100の第1の側面S101に露出するように略半分に切断される。その結果、
図5に示すような積層体100が得られる。
積層体100の第1の側面S101には、向かって右側に陽極箔10が露出しており、向かって左側に陰極箔20が露出している。そして、第1の側面S101において、向かって右側が陽極箔の引出部、左側が陰極箔の引出部となる。
【0058】
次に、切り欠き15、25からセパレータ30、40に電解液を注入する。電解液の注入は、その注入量を調整しながら行うことができる。例えば、必要な電解液の量を特定しておいて、積層体の合算重量を求めておいて、その合算重量になるように積層体の重量を測定しながら電解液を注入する。
絶縁樹脂および封止材を硬化させるための熱処理の後にセパレータ30、40に電解液が注入されるから、熱処理による熱によって電解液が蒸発してセパレータ内の電解液の量が低下したりばらついたりすることはない。
次に、セパレータ30、40に電解液を注入した積層体100の引出部以外の部分、とくに切り欠き15、25の部分に樹脂を塗付する。
これによって、次工程において陽極箔の引出部及び陰極箔の引出部にそれぞれ接続電極を形成する際に積層体の内部を保護したり、電解液の蒸発を防ぐことができる。
次に第1の側面S101の向かって右側の陽極箔の引出部及び向かって左側の陰極箔の引出部に接続電極を形成する。
【0059】
接続電極は、積層体の側面に露出している陽極箔及び陰極箔の露出部に導電膜をめっきすることにより得られる。例えば、以下の手順で行うことができる。
まず、アルカリ処理剤によって積層体表面の油分を除去する。次に、アルカリエッチングすることにより、陽極箔及び陰極箔の露出部の酸化膜を除去する。次に、スマット除去処理により、陽極箔及び陰極箔の露出部のスマットを除去する。次に、ジンケート処理によりZnを置換析出させて陽極箔及び陰極箔の露出部に第1導電膜としてZn金属膜を形成する。次に、Niめっき処理により、第1導電膜上に第2導電膜としてNi金属膜を形成する。さらに、Snめっき処理により、第2導電膜上に第3導電膜としてSn金属膜を形成する。
以下に、積層体の具体的な実施形態ごとにその特徴を説明する。
【0060】
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態に係る電解コンデンサに用いられる積層体は、陽極ユニットと陰極ユニットとが積み重ねられてなる。この積層体では陽極箔とセパレータの間および陰極箔とセパレータの間に固体電解質層を有する。また、セパレータには電解液が含浸されていて、固体電解質は充填されていない。
第1実施形態の電解コンデンサは、通常時には陽極側の固体電解質層−セパレータ内の電解液−陰極側の固体電解質層を介して陽極箔と陰極箔の間の電子の授受が行われる。一方、セパレータ内に含浸された電解液が無くなった場合、セパレータの厚さ方向の電子の授受は行われなくなるので、故障モードはオープンモードとなる。よって、安全性の高い電解コンデンサとすることができる。
【0061】
また、本発明の第1実施形態に係る電解コンデンサに用いられる積層体の変形例として、陽極箔とセパレータの間、陰極箔とセパレータの間のいずれか一方には固体電解質層を有しており、他方には固体電解質層を有していない形態が挙げられる。
この場合も、セパレータ内に含浸された電解液が無くなった場合の故障モードはオープンモードとなるので、安全性の高い電解コンデンサとなる。
本実施形態の電解コンデンサは、積層型であるから誘電体層にひびが入りにくく、切り欠きからセパレータに電解液を注入することができるので、セパレータ内の電解液の量が低下したりばらついたりすることがなく、静電容量の低下やばらつきを抑えることができる。
【0062】
(第2実施形態)
本発明の第2実施形態に係る電解コンデンサに用いられる積層体は、陽極ユニットと陰極ユニットとが積み重ねられてなる。この積層体では陽極箔とセパレータの間および陰極箔とセパレータの間に固体電解質層を有しない。また、セパレータには電解液が含浸されていて、固体電解質は充填されていない。
第2実施形態の電解コンデンサは、通常時にはセパレータ内の電解液のみを介して陽極箔と陰極箔の間の電子の授受が行われる。一方、セパレータ内に含浸された電解液が無くなった場合、セパレータの厚さ方向における電子の授受は行われなくなるので、故障モードはオープンモードとなる。よって、安全性の高い電解コンデンサとすることができる。
本実施形態の電解コンデンサは、積層型であるから誘電体層にひびが入りにくく、切り欠きからセパレータに電解液を注入することができるので、セパレータ内の電解液の量が低下したりばらついたりすることがなく、静電容量の低下やばらつきを抑えることができる。
【0063】
(第3実施形態)
本発明の第3実施形態に係る電解コンデンサに用いられる積層体は、陽極ユニットと陰極ユニットとが積み重ねられてなる。この積層体では陽極箔とセパレータの間および陰極箔とセパレータの間に固体電解質層を有しない。また、セパレータには導電性高分子を含む固体電解質が充填されているが、電解液は含浸されていない。
セパレータへの固体電解質の充填は、導電性高分子の粒子と溶媒を混合した分散体にセパレータを浸漬した後、このセパレータを乾燥して溶媒を蒸発させ、セパレータに導電性高分子を含む固体電解質を充填することにより行うことができる。なお、セパレータへの固体電解質の充填は、セパレータが陽極箔や陰極箔の上に載置される前のセパレータに対して行う。
第3実施形態の電解コンデンサは、通常時にはセパレータ内に充填された固体電解質のみを介して陽極箔と陰極箔の間の電子の授受が行われる。
本実施形態の電解コンデンサは、積層型であるから誘電体層にひびが入りにくい。
【0064】
(第4実施形態)
本発明の第4実施形態に係る電解コンデンサに用いられる積層体は、陽極ユニットと陰極ユニットとが積み重ねられてなる。この積層体では陽極箔とセパレータの間および陰極箔とセパレータの間に固体電解質層を有しない。また、セパレータには導電性高分子を含む固体電解質が充填されており、かつ、電解液が含浸されている。セパレータへの固体電解質の充填は、第3実施形態と同じ方法で行われる。
本実施形態では、セパレータに導電性高分子を含む固体電解質が充填され、かつ、セパレータには電解液が含浸されている。
第4実施形態の電解コンデンサは、通常時にはセパレータ内に充填された固体電解質及びセパレータ内の電解液を介して陽極箔と陰極箔の間の電子の授受が行われる。
本実施形態の電解コンデンサは、積層型であるから誘電体層にひびが入りにくく、切り欠きからセパレータに電解液を注入することができるので、セパレータ内の電解液の量が低下したりばらついたりすることがなく、静電容量の低下やばらつきを抑えることができる。
【0065】
(第5実施形態)
本発明の第5実施形態に係る電解コンデンサに用いられる積層体は、陽極ユニットと陰極ユニットとが積み重ねられてなる。この積層体では陽極箔とセパレータの間および陰極箔とセパレータの間に固体電解質層を有する。また、セパレータには導電性高分子を含む固体電解質が充填されており、かつ、電解液が含浸されている。セパレータへの固体電解質の充填は、第3実施形態と同じ方法で行われる。
第5実施形態の電解コンデンサは、通常時には陽極側の固体電解質層−セパレータ内の電解液およびセパレータ内の固体電解質−陰極側の固体電解質層を介して陽極箔と陰極箔の間の電子の授受が行われる。
本実施形態の電解コンデンサは、積層型であるから誘電体層にひびが入りにくく、切り欠きからセパレータに電解液を注入することができるので、セパレータ内の電解液の量が低下したりばらついたりすることがなく、静電容量の低下やばらつきを抑えることができる。
【0066】
(第6実施形態)
本発明の第6実施形態に係る電解コンデンサに用いられる積層体は、陽極ユニットと陰極ユニットとが積み重ねられてなる。この積層体では陽極箔とセパレータの間および陰極箔とセパレータの間に固体電解質層を有する。また、セパレータには導電性高分子を含む固体電解質が充填されているが、電解液は含浸されていない。セパレータへの固体電解質の充填は、第3実施形態と同じ方法で行われる。
第6実施形態の電解コンデンサは、通常時には陽極側の固体電解質層−セパレータ内の固体電解質−陰極側の固体電解質層を介して陽極箔と陰極箔の間の電子の授受が行われる。
本実施形態の電解コンデンサは、積層型であるから誘電体層にひびが入りにくい。
【0067】
ここまで説明した本発明の電解コンデンサは、面実装可能な電解コンデンサである。
すなわち、本発明の電解コンデンサは以下のような特徴を有する電解コンデンサを包含する。
以下の電解コンデンサでは、裏面外部電極は電解コンデンサの外周面に平坦な電極として露出しているため、裏面外部電極を使用して電解コンデンサを面実装により実装することができる。
【0068】
[1]表面に誘電体層を有する陽極箔と、
前記陽極箔と対向する陰極箔と、
前記陽極箔と前記陰極箔との間に電解液が含浸または固体電解質が充填されたセパレータとを有する少なくとも1つのコンデンサ素子を含む積層体を備える電解コンデンサであって、
一方面に表面外部電極として表面の陽極外部電極および表面の陰極外部電極を有し、前記一方面に対向する他方面に裏面外部電極として裏面の陽極外部電極および裏面の陰極外部電極をそれぞれ有する基板と、
前記積層体を収容するケースとを有し、
前記陽極箔および前記陰極箔は前記積層体の第1の側面に引き出され、
前記陽極箔は前記基板の前記表面の陽極外部電極に接続され、前記陰極箔は前記基板の前記表面の陰極外部電極に接続され、
前記ケースは前記積層体を収容して前記基板に接合されていることを特徴とする電解コンデンサ。
【0069】
[2]前記積層体は前記第1の側面に前記陽極箔に接続された陽極接続電極および前記陰極箔に接続された陰極接続電極を有し、
前記陽極接続電極は前記基板の前記表面の陽極外部電極に接続され、前記陰極接続電極は前記基板の前記表面の陰極外部電極に接続されていることを特徴とする上記[1]に記載の電解コンデンサ。
【0070】
[3]前記陽極接続電極および前記陰極接続電極はめっき膜を有することを特徴とする上記[2]に記載の電解コンデンサ。
【0071】
[4]前記めっき膜は複数の膜からなることを特徴とする上記[3]に記載の電解コンデンサ。
【0072】
[5]前記めっき膜はZnからなるZnめっき膜を含むことを特徴とする上記[3]または[4]に記載の電解コンデンサ。
【0073】
[6]前記めっき膜はNiからなるNiめっき膜を含むことを特徴とする上記[5]に記載の電解コンデンサ。
【0074】
[7]前記めっき膜はSnからなるSnめっき膜を含むことを特徴とする上記[5]または[6]に記載の電解コンデンサ。
【0075】
[8]前記陽極接続電極と前記基板の前記表面の陽極外部電極との接続および前記陰極接続電極と前記基板の前記表面の陰極外部電極との接続は半田づけによって行われていることを特徴とする上記[1]乃至[7]のいずれかに記載の電解コンデンサ。
【0076】
[9]前記陽極接続電極と前記基板の前記表面の陽極外部電極との接続および前記陰極接続電極と前記基板の前記表面の陰極外部電極との接続は導電性接着剤を介して行われていることを特徴とする上記[1]乃至[7]のいずれかに記載の電解コンデンサ。
【0077】
[10]前記陽極箔と前記基板の前記表面の陽極外部電極との接続および前記陰極箔と前記基板の前記表面の陰極外部電極との接続が導電性接着剤を介して行われていることを特徴とする上記[1]に記載の電解コンデンサ。
【0078】
[11]前記基板の前記表面の陽極外部電極と前記基板の裏面の陽極外部電極の導通および前記基板の前記表面の陰極外部電極と前記基板の裏面の陰極外部電極の導通は複数の接続導体によって取られていることを特徴とする上記[1]乃至[10]のいずれかに記載の電解コンデンサ。
【0079】
[12]前記基板と前記ケースは熱可塑性樹脂製のシール材により接合されていることを特徴とする上記[1]乃至[11]のいずれかに記載の電解コンデンサ。