(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
第1のキャパシタと、第2のキャパシタと、第1のインダクタと、不平衡信号ポートと、第1の平衡信号ポートと、第2の平衡信号ポートと、第3のキャパシタと、第2のインダクタと、第3のインダクタと、直流電源ポートとを備え、
前記不平衡信号ポートと前記第1の平衡信号ポートとの間には、前記第1のキャパシタと前記第2のキャパシタとが直列に接続され、かつ当該直列に接続された前記第1のキャパシタおよび前記第2のキャパシタに、前記第1のインダクタが並列に接続されており、
前記第1のキャパシタと前記第2のキャパシタとの間のノードに前記第2の平衡信号ポートが接続されており、
前記第2のインダクタは、前記第1の平衡信号ポートと、前記第2の平衡信号ポートとの間に接続されており、
前記第3のインダクタは、前記第2の平衡信号ポートと前記直流電源ポートとの間に接続されており、
前記第3のキャパシタは、前記第3のインダクタと前記直流電源ポートとの間のノードとグランドとの間に接続されていることを特徴とする、バラン。
前記複数の誘電体層の積層方向と直交する方向から見たときに、前記第1のインダクタと前記第2のキャパシタとの間に、前記第1のキャパシタが配置されていることを特徴とする、請求項2に記載のバラン。
前記複数の誘電体層の積層方向と直交する方向から見たときに、前記第1のインダクタと前記第2のインダクタとの間に、前記第1のキャパシタが配置されていることを特徴とする、請求項3に記載のバラン。
【発明を実施するための形態】
【0013】
この開示の特徴とするところを、この開示の実施形態に基づき、図面を参照しながら説明する。なお、以下に示す実施の形態においては、同一のまたは共通する部分について図中同一の符号を付し、その説明は繰り返さないことがある。
【0014】
なお、後述する分解斜視図は、模式図である。例えば誘電体層およびパターン導体の厚み、ならびにビア導体の太さなどは、模式的なものである。また、製造工程上で発生する各構成要素の形状のばらつきなどは、各図面に必ずしも反映されていない。すなわち、この明細書中で説明のために用いられる図面は、たとえ実際の製品と異なる部分があったとしても、本質的な面で実際の製品を表すものと言うことができる。
【0015】
−バランの第1の実施形態−
この開示に従うバランの第1の実施形態であるバラン100について、
図1ないし
図8を用いて説明する。
【0016】
<バランの等価回路および構造>
図1は、バラン100の等価回路図である。バラン100は、第1のキャパシタC1と、第2のキャパシタC2と、第1のインダクタL1と、不平衡信号ポートPO1と、第1の平衡信号ポートPO2と、第2の平衡信号ポートPO3とを備えている。
【0017】
不平衡信号ポートPO1と第1の平衡信号ポートPO2との間には、第1のキャパシタC1と第2のキャパシタC2とが直列に接続されている。かつ、直列に接続された第1のキャパシタC1および第2のキャパシタC2に、第1のインダクタL1が並列に接続されている。第1のキャパシタと第2のキャパシタとの間のノードに、第2の平衡信号ポートPO3が接続されている。
【0018】
図2は、バラン100の外観斜視図である。バラン100は、積層体10と、第1の外部電極20と、第2の外部電極30と、第3の外部電極40と、第4の外部電極50とを備えている。積層体10は、例えば直方体状である。ただし、積層体10の形状は、これに限られない。
【0019】
第1の外部電極20は、積層体10の第1の主面(図の上面側)と長手方向に沿った第1の側面(図の奥側)と第2の主面(図の下面側)とに亘って形成されている。第3の外部電極40は、積層体10の第1の主面と長手方向に沿った第2の側面(図の手前側)と第2の主面とに亘って、第1の外部電極20と対向して形成されている。
【0020】
第2の外部電極30は、積層体10の第1の主面と長手方向に沿った第2の側面と第2の主面に亘って、第3の外部電極40と間隔をおいて形成されている。第4の外部電極50は、積層体10の第1の主面と長手方向に沿った第1の側面と第2の主面に亘って、第2の外部電極30と対向し、第1の外部電極20と間隔をおいて形成されている。
【0021】
第1の外部電極20と第2の外部電極30と第3の外部電極40と第4の外部電極50とは、それぞれ角張ったC字状で、形成時の誤差を除いて同じ形状に形成されている。ただし、各外部電極の形状はこれに限られない。
【0022】
第1の外部電極20は、
図1に示されたバラン100の等価回路図における不平衡信号ポートPO1に対応する不平衡信号電極である。第2の外部電極30は、等価回路図における第1の平衡信号ポートPO2に対応する第1の平衡信号電極である。第3の外部電極40は、等価回路図における第2の平衡信号ポートPO3に対応する第2の平衡信号電極である。第4の外部電極50は、バラン100においては、積層体10内に形成された回路と接続されていないダミー電極となっている。
【0023】
なお、第4の外部電極50は、必要に応じて、積層体10内に形成された回路を接地するためのグランド電極としてもよい。その際、積層体10内に形成された回路には、インピーダンス整合などのためのインダクタまたはキャパシタなどがさらに付加されていてもよい。
【0024】
図3は、バラン100の分解斜視図である。バラン100は、構成層LS1ないしLS12を含んでいる。構成層LS1および構成層LS2は、第1の外層部OP1を構成している。構成層LS3ないしLS7は、前述の等価回路図における第1のインダクタL1を構成する構成要素を含むインダクタ部LPを構成している。
【0025】
構成層LS8ないしLS10は、前述の等価回路図における第1のキャパシタC1および第2のキャパシタC2をそれぞれ構成する構成要素を含むキャパシタ部CPを構成している。構成層LS11および構成層LS12は、第2の外層部OP2を構成している。
【0026】
バラン100は、複数の誘電体層が積層された積層体10と、誘電体層の層間に配置された複数のパターン導体と、誘電体層を貫通して配置された複数のビア導体とを含んでいる。すなわち、積層体10は一体である。ただし、構成層LS2ないしLS11は、説明をしやすくするため、各誘電体層の第1の主面(図の上面側)にパターン導体が配置されることにより形成されているように図示されている。
【0027】
図4は、バラン100の第1の外層部OP1の分解斜視図(構成層LS1および構成層LS2)を詳細に説明した分解斜視図である。構成層LS1では、誘電体層DL1の第1の主面および側面に外部電極導体20a、外部電極導体30a、外部電極導体40aおよび外部電極導体50aが形成されている。外部電極導体20aは、後述する外部電極導体20bないし20lと共に、前述の形状の第1の外部電極20を構成する位置に形成されている。外部電極導体30a、外部電極導体40aおよび外部電極導体50aも同様である。
【0028】
誘電体層DL1は、例えば低温焼成セラミック材料を含む。以下で説明する各誘電体層も同様である。また、外部電極導体20aは、例えばCu粒子の焼結体が基材であり、Auめっき膜またはSnめっき膜がその表面上に形成されてなる。以下で説明する各外部電極導体も同様である。
【0029】
構成層LS2では、誘電体層DL2の側面に外部電極導体20b、外部電極導体30b、外部電極導体40bおよび外部電極導体50bが形成され、第1の主面に2つの矩形が接続された形状のパターン導体P1が形成されている。パターン導体P1は、積層体10内に構成された回路を、第1の外部電極20に接続している。パターン導体P1は、第1の外部電極20に接続される一方端部が幅広になっているが、これに限られない。
【0030】
また、構成層LS2では、誘電体層DL2を貫通し、パターン導体P1の他方端部に接続されるビア導体(点線にて表示、以下同様)が形成されている。
【0031】
図5は、バラン100の第1のインダクタL1を含むインダクタ部LPの分解斜視図(構成層LS3ないしLS7)を詳細に説明した分解斜視図である。構成層LS3では、誘電体層DL3の側面に外部電極導体20c、外部電極導体30c、外部電極導体40cおよび外部電極導体50cが形成され、第1の主面にパターン導体P2が形成されている。パターン導体P2は、L字状であり、第1のインダクタL1の一部である。
【0032】
構成層LS3では、それぞれ誘電体層DL3を貫通し、パターン導体P2の一方端部と他方端部とに接続された2つのビア導体が形成されている。上記の構成層LS2に形成されたビア導体は、パターン導体P2の角部に接続されている。なお、ビア導体の接続位置は、点線で表示され、内部にハッチングが施された円により表されている(以下同様)。
【0033】
構成層LS4では、誘電体層DL4の側面に外部電極導体20d、外部電極導体30d、外部電極導体40dおよび外部電極導体50dが形成され、第1の主面にパターン導体P3およびパターン導体P4が形成されている。パターン導体P3は、L字状であり、第1のインダクタL1の一部である。パターン導体P4は、正方形状であり、ビア導体同士の接続を中継している。ただし、パターン導体P4は、必須ではない。
【0034】
構成層LS4では、それぞれ誘電体層DL4を貫通し、パターン導体P3の一方端部に接続されたビア導体と、パターン導体P4に接続されたビア導体とが形成されている。上記の構成層LS3のビア導体のうち、パターン導体P2の一方端部に接続されたビア導体は、パターン導体P3の他方端部に接続されている。また、パターン導体P2の他方端部に接続されたビア導体は、パターン導体P4に接続されている。
【0035】
構成層LS5では、誘電体層DL5の側面に外部電極導体20e、外部電極導体30e、外部電極導体40eおよび外部電極導体50eが形成され、第1の主面にパターン導体P5およびパターン導体P6が形成されている。パターン導体P5は、角張ったC字状であり、第1のインダクタL1の一部である。パターン導体P6は、パターン導体P4と同様の形状と機能を有している。
【0036】
構成層LS5では、それぞれ誘電体層DL5を貫通し、パターン導体P5の一方端部に接続されたビア導体と、パターン導体P6に接続されたビア導体とが形成されている。上記の構成層LS4のビア導体のうち、パターン導体P3の一方端部に接続されたビア導体は、パターン導体P5の他方端部に接続されている。また、パターン導体P4に接続されたビア導体は、パターン導体P6に接続されている。
【0037】
構成層LS6では、誘電体層DL6の側面に外部電極導体20f、外部電極導体30f、外部電極導体40fおよび外部電極導体50fが形成され、第1の主面にパターン導体P7およびパターン導体P8が形成されている。パターン導体P7は、角張ったC字状であり、第1のインダクタL1の一部である。パターン導体P8は、パターン導体P4と同様の形状と機能を有している。
【0038】
構成層LS6では、それぞれ誘電体層DL6を貫通し、パターン導体P7の一方端部に接続されたビア導体と、パターン導体P8に接続されたビア導体とが形成されている。上記の構成層LS5のビア導体のうち、パターン導体P5の一方端部に接続されたビア導体は、パターン導体P7の他方端部に接続されている。また、パターン導体P6に接続されたビア導体は、パターン導体P8に接続されている。
【0039】
構成層LS7では、誘電体層DL7の側面に外部電極導体20g、外部電極導体30g、外部電極導体40gおよび外部電極導体50gが形成され、第1の主面にパターン導体P9およびパターン導体P10が形成されている。パターン導体P9は、角張ったC字状であり、第1のインダクタL1の一部である。パターン導体P10は、パターン導体P4と同様の形状と機能を有している。
【0040】
構成層LS7では、それぞれ誘電体層DL7を貫通し、パターン導体P9の一方端部に接続されたビア導体と、パターン導体P10に接続されたビア導体とが形成されている。上記の構成層LS6のビア導体のうち、パターン導体P7の一方端部に接続されたビア導体は、パターン導体P9の他方端部に接続されている。また、パターン導体P8に接続されたビア導体は、パターン導体P10に接続されている。
【0041】
図6は、バラン100の第1のキャパシタC1および第2のキャパシタC2を含むキャパシタ部CPの分解斜視図(構成層LS8ないしLS10)を詳細に説明した分解斜視図である。構成層LS8では、誘電体層DL8の側面に外部電極導体20h、外部電極導体30h、外部電極導体40hおよび外部電極導体50hが形成され、第1の主面にパターン導体P11およびパターン導体P12が形成されている。パターン導体P11は、I字状であり、第1のキャパシタC1の一方電極である。パターン導体P12は、パターン導体P4と同様の形状と機能を有している。
【0042】
構成層LS8では、誘電体層DL8を貫通し、パターン導体P12に接続されたビア導体が形成されている。上記の構成層LS7のビア導体のうち、パターン導体P9の一方端部に接続されたビア導体は、パターン導体P12に接続されている。また、パターン導体P10に接続されたビア導体は、パターン導体P11の一方端部に接続されている。
【0043】
構成層LS9では、誘電体層DL9の側面に外部電極導体20i、外部電極導体30i、外部電極導体40iおよび外部電極導体50iが形成され、第1の主面にパターン導体P13およびパターン導体P14が形成されている。パターン導体P13は、L字状であり、第1のキャパシタC1の他方電極と、第2のキャパシタC2の他方電極とを兼ねている。
【0044】
すなわち、パターン導体P13は、第1のキャパシタC1と第2のキャパシタC2とを接続し、かつ積層体10内に形成された回路を、第3の外部電極40に接続している。パターン導体P14は、パターン導体P4と同様の形状と機能を有している。
【0045】
構成層LS9では、誘電体層DL9を貫通し、パターン導体P14に接続されたビア導体が形成されている。上記の構成層LS8のビア導体は、パターン導体P14に接続されている。
【0046】
構成層LS10では、誘電体層DL10の側面に外部電極導体20j、外部電極導体30j、外部電極導体40jおよび外部電極導体50jが形成され、第1の主面にパターン導体P15およびパターン導体P16が形成されている。パターン導体P15は、I字状であり、第2のキャパシタC2の一方電極である。パターン導体P16は、パターン導体P4と同様の形状と機能を有している。
【0047】
構成層LS10では、それぞれ誘電体層DL10を貫通し、パターン導体P15の一方端部に接続されたビア導体と、パターン導体P16に接続されたビア導体とが形成されている。上記の構成層LS9のビア導体は、パターン導体P16に接続されている。
【0048】
図7は、バラン100の第2の外層部OP2の分解斜視図(構成層LS11および構成層LS12)を詳細に説明した分解斜視図である。構成層LS11では、誘電体層DL11の側面に外部電極導体20k、外部電極導体30k、外部電極導体40kおよび外部電極導体50kが形成され、第1の主面に2つの矩形が接続された形状のパターン導体P17が形成されている。パターン導体P17は、積層体10内に形成された回路を、第2の外部電極30に接続している。パターン導体P17は、第3の外部電極40に接続される一方端部が幅広になっているが、これに限られない。
【0049】
上記の構成層LS10のビア導体のうち、パターン導体P15の一方端部に接続されたビア導体は、パターン導体P17の一方端部(第2の外部電極30に近接している側の端部)に接続されている。また、パターン導体P16に接続されたビア導体は、パターン導体P17の他方端部に接続されている。
【0050】
構成層LS12は、誘電体層DL12の第2の主面および側面に外部電極導体20l、外部電極導体30l、外部電極導体40lおよび外部電極導体50lが形成されたものである。
【0051】
以上で説明したように、バラン100では、積層体10内に第1のキャパシタC1と第2のキャパシタC2と第1のインダクタL1とが形成されている。また、それらのキャパシタおよびインダクタにより構成される回路に接続されるように、第1の外部電極20と第2の外部電極30と第3の外部電極40とが形成されている。第1の外部電極20は、前述したように、不平衡信号電極である。第2の外部電極30は、第1の平衡信号電極である。第3の外部電極40は、第2の平衡信号電極である。
【0052】
第1の外部電極20と第2の外部電極30との間には、第1のキャパシタC1と第2のキャパシタC2とが直列に接続されている。かつ、直列に接続された第1のキャパシタC1および第2のキャパシタC2に、第1のインダクタが並列に接続されている。第1のキャパシタC1と第2のキャパシタC2との間のノードに、第3の外部電極40が接続されている。
【0053】
すなわち、バラン100では、積層体10内において、インダクタ同士間の電磁界結合が生じない。したがって、バラン100は、挿入損失の増大を抑制することができる。
【0054】
また、積層体の積層方向から見たとき、インダクタ同士が積層体10内において隣り合って配置されていない。したがって、バラン100は、挿入損失の増大を抑制しながら、実装面積の増大を抑制することができる。
【0055】
また、バラン100では、誘電体層DL1ないしDL12の積層方向と直交する方向から見たときに、第1のインダクタL1と第2のキャパシタC2との間に、第1のキャパシタC1が配置されている。また、誘電体層DL1ないしDL12の積層方向から見たときに、第1のインダクタL1と第1のキャパシタC1の少なくとも一部とが重なるように配置されている。かつ、第1のキャパシタC1と第2のキャパシタC2の少なくとも一部とが重なるように配置されている。
【0056】
具体的には、バラン100では、第1のインダクタL1を構成するパターン導体P9と、第1のキャパシタC1の一方電極であるパターン導体P11の一部とが重なっている。また、第1のキャパシタC1の一方電極であるパターン導体P11の一部と、第2のキャパシタC2の他方電極であるパターン導体P13の一部とが重なっている。そのため、第1のインダクタL1と第2のキャパシタC2との間の電磁界結合を、第1のキャパシタC1が抑制することができる。
【0057】
バラン100において、第2のキャパシタC2は、インピーダンス整合に寄与している。したがって、第1のインダクタL1と第2のキャパシタC2との間の電磁界結合が抑制されることにより、インピーダンス整合の設計からのずれを抑制することができる。
【0058】
<実験例>
図8は、バラン100の周波数に対する挿入損失の変化を表すグラフ、およびバラン100の周波数に対するインピーダンスの変化を表すスミスチャートである。なお、これらの実験例は、キャパシタンス、インダクタンス、ならびに各信号ポートのグランドに対するインピーダンスの実部および虚部を適宜の値としてシミュレーションを行なった場合の計算結果である。シミュレーションは、0.1GHzから15.0GHzまでの周波数範囲において行なった。
【0059】
図8(A)に示されているように、このシミュレーションでは、周波数3.0GHzにおいて、S(2,1)は−0.583(dB)となっている。すなわち、バラン100では、挿入損失の増大が抑制されていることが分かる。
【0060】
また、
図8(B)に示されているように、このシミュレーションでは、周波数3.0GHzにおいて、インピーダンスは0.983−j0.113(Ω)となっている。すなわち、バラン100では、インピーダンス整合が十分取れていることが分かる。
【0061】
−バランの第2の実施形態−
この開示に従うバランの第2の実施形態であるバラン100Aについて、
図10を用いて説明する。
【0062】
<バランの等価回路および構造>
図9は、バラン100Aの等価回路図である。バラン100Aは、前述のバラン100の構成に加えて、第3のキャパシタC3と、第4のキャパシタC4と、第2のインダクタL2と、第3のインダクタL3と、直流電源ポートPO4とをさらに備えている。
【0063】
第2のインダクタL2は、第1の平衡信号ポートと、前述の第2の平衡信号ポートとの間に接続されている。第3のインダクタL3は、第2の平衡信号ポートと直流電源ポートPO4との間に接続されている。
【0064】
第3のキャパシタC3は、第3のインダクタL3と直流電源ポートPO4との間のノードとグランドとの間に接続されている。第4のキャパシタC4は、第1のキャパシタC1と第1のインダクタL1との接続点と、不平衡信号ポートPO1との間に接続されている。第4のキャパシタC4は、バラン100Aのインピーダンス整合のための素子として用いられている。ただし、第4のキャパシタC4は、必須ではない。
【0065】
第2のインダクタL2と第3のインダクタL3と第3のキャパシタC3と直流電源ポートPO4とは、バラン100Aにおいて直流電圧供給回路を構成している。バラン100Aが直流電圧供給回路を備えることにより、例えばバラン100Aに接続されているICを駆動させるための直流電圧供給回路を電子機器の回路基板上に別途備える必要がなくなる。その結果、電子機器の小型化を進めることができる。
【0066】
なお、第2のインダクタL2と第3のインダクタL3と第3のキャパシタC3とは、前述の第4のキャパシタC4と同様に、バラン100Aのインピーダンス整合のための素子と兼用させることができる。この場合、インピーダンス整合のための素子をさらに設ける必要がないため、部品点数を削減することができる。延いては、バラン100Aの小型化を進めることができる。
【0067】
また、バラン100Aでは、インピーダンス整合が第4のキャパシタC4により行なわれているが、インダクタおよびキャパシタを含むインピーダンス整合回路により行なわれてもよい。
【0068】
バラン100Aでは、パターン導体、またはパターン導体およびビア導体により、バラン100の構成に加えて、上記の各キャパシタおよび各インダクタと、不図示の直流電源入力電極と、不図示のグランド電極とがさらに形成されている。
【0069】
第2のインダクタL2は、第2の外部電極30(
図2参照)と、第2の平衡信号ポートとの間に接続されている。第3のインダクタL3は、第2の平衡信号ポートと直流電源入力電極との間に接続されている。第3のキャパシタC3は、第3のインダクタL3と直流電源入力電極との間のノードとグランド電極との間に接続されている。
【0070】
バラン100Aにおいても、誘電体層DL1ないしDL12の積層方向と直交する方向から見たときに、第1のインダクタL1と第2のキャパシタC2との間に、第1のキャパシタC1を配置することができる。また、誘電体層DL1ないしDL12の積層方向から見たときに、第1のインダクタL1と第1のキャパシタC1の少なくとも一部とが重なるように配置することができる。かつ、第1のキャパシタC1と第2のキャパシタC2の少なくとも一部とが重なるように配置することができる。
【0071】
具体的には、バラン100Aにおいても、第1のインダクタL1を構成するパターン導体P9と、第1のキャパシタC1の一方電極であるパターン導体P11の一部とが重なるように配置することができる。また、第1のキャパシタC1の一方電極であるパターン導体P11の一部と、第2のキャパシタC2の他方電極であるパターン導体P13の一部とが重なるように配置することができる。そのため、第1のインダクタL1と第2のキャパシタC2との間の電磁界結合を、第1のキャパシタC1が抑制することができる。
【0072】
また、バラン100Aでは、誘電体層DL1ないしDL12の積層方向から見たときに、第1のインダクタL1と第2のインダクタL2との間に、第1のキャパシタC1を配置することができる。これにより、第1のインダクタL1と第2のインダクタL2との間の電磁界結合を抑制することができる。
【0073】
−バランの第3の実施形態−
この開示に従うバランの第3の実施形態であるバラン100Bについて、
図10を用いて説明する。
【0074】
<バランの等価回路>
図10は、バラン100Bの等価回路図である。バラン100Bは、前述のバラン100の構成に加えて、第5のキャパシタC5と、第6のキャパシタC6と、第7のキャパシタC7と、第8のキャパシタC8と、第3のインダクタL3と、第4のインダクタL4と、第5のインダクタL5とをさらに備えている。
【0075】
第3のインダクタL3は、前述の第2の平衡信号ポートとグランドとの間に接続されている。
【0076】
第5のキャパシタC5と、第6のキャパシタC6と、第7のキャパシタC7と、第8のキャパシタC8と、第4のインダクタL4と、第5のインダクタL5とは、ローパスフィルタLPFを構成するように接続されている。
【0077】
図10では、第4のインダクタL4と第5のインダクタL5とが直列に接続され、かつ直列に接続された第4のインダクタL4および第5のインダクタL5に、第5のキャパシタC5が並列に接続されている。第4のインダクタL4と第5のキャパシタC5との接続点とグランドとの間に、第6のキャパシタC6が接続されている。第4のインダクタL4と第5のインダクタL5との間のノードと、グランドとの間に、第7のキャパシタC7が接続されている。そして、第5のインダクタL5と第5のキャパシタC5との接続点とグランドとの間に、第8のキャパシタC8が接続されている。
【0078】
ローパスフィルタLPFは、第1のキャパシタC1と第1のインダクタL1との接続点と、不平衡信号ポートPO1との間に接続されている。ローパスフィルタLPFの構成は、上記に限られない。
【0079】
バラン100Bでは、上記の構成により、コモンモード特性を改善し、また高調波を減衰させることができる。
【0080】
なお、バラン100Bでは、ローパスフィルタLPFが設けられているが、減衰させたい信号に合わせて、ローパスフィルタ、バンドパスフィルタおよびハイパスフィルタのうちの少なくとも1つが設けられるようにしてもよい。
【0081】
また、バラン100Bでは、インピーダンス整合が第3のインダクタL3により行なわれているが、インダクタおよびキャパシタを含むインピーダンス整合回路により行なわれてもよい。
【0082】
今回開示された各実施の形態は、矛盾しない範囲で適宜組み合わされて実施されることも予定されている。この明細書に開示された実施形態は、例示的なものであって、この開示に係る発明は、上記の実施形態および変形例に限定されるものではない。すなわち、この開示に係る発明の範囲は、請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。また、上記の範囲内において、種々の応用、変形を加えることができる。
【0083】
この開示に係る発明が適用されるバランとしては、例えば低温焼成セラミックと、パターン導体およびビア導体とを同時焼成して得られる積層バランが挙げられるが、これに限られない。