(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記制御部は、前記平均勾配が所定値より大きいとき、前記第1冷却モードまたは前記第2冷却モードを選択し、前記平均勾配が所定値以下のとき、前記第3冷却モードまたは前記第4冷却モードを選択する
ことを特徴とする請求項2に記載の車両のエンジン冷却制御装置。
前記第1冷却回路部のメインラジエータファンおよび前記第2冷却回路部のサブラジエータファンは、いずれも冷却風が前記エンジンに吹き付けられるように吹き出される配置としてある
ことを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の車両のエンジン冷却制御装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、引用文献1のようなエンジンの運転が停止した時点の、エンジンの潤滑油温度や、エンジンの排気系に設けられる機器であるターボチャージャの出口の冷却水温により、複数の冷却装置の作動を制御する技術は、エンジン運転停止時のターボチャージャの潤滑油温度、冷却水温だけに注目して制御する技術なので、効果的とはいえない。
すなわち、エンジン運転停止時のエンジンや、ターボチャージャや、エンジンルームの温度は、エンジンの運転が停止するまでの車両運転状態、すなわちエンジン運転停止直近における車両の走行状態によりそれぞれ異なる。
【0006】
例えばエンジンの運転が停止するまでの直近の走行状態として、走行風の通風がエンジンルームに期待できない低車速で、かつ大きな走行負荷での走行、例えば急な勾配の坂道を登坂走行である場合、登坂走行を終えた直後にエンジンの運転を停止すると、エンジンルームの走行風による運転中の冷却が期待できないため、エンジンルームやエンジンやターボチャージャなどは、かなり高温となる傾向にある。
【0007】
反対にエンジンの運転が停止するまでの直近の走行状態が、走行風がエンジンルームにおいて期待できる高車速で、小走行負荷の走行、例えば平坦な道を高速で走行する場合、高速走行の直後でエンジンの運転を停止すると、エンジンルームやエンジンやターボチャージャは、車両走行中の走行風により冷却され、温度上昇は抑えられ傾向にある。
つまり、熱害をもたらす要因となる、エンジン、ターボチャージャ(エンジン排気系に付く機器)、エンジンルームの温度は、低・中速走行からのエンジン運転停止時や、高速走行からのエンジン運転停止時など、エンジン運転が停止するまで直近の車両の運転状態に応じて異なる。
【0008】
しかし、引用文献1のようなエンジンの運転が停止したときのエンジンの潤滑油温度、ターボチャージャ出口の冷却水温に応じて、複数の冷却装置を制御するだけでは、こうした温度上昇がもたらす熱害発生に対して的確に対応できない。
そこで、本発明の目的は、エンジン運転停止時、エンジンが停止する直前の直近の車両の走行状態に基づき、エンジン、エンジンの排気系に設けられる機器、エンジンルームの温度上昇が効果的に抑えられる車両のエンジン冷却制御装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の態様は、エンジンルームに収められるエンジンと、エンジンの冷却水を冷却するメインラジエータと当該メインラジエータを通じて冷却風をエンジンルームへ送風するメインラジエータファンとを有する第1冷却回路部と、エンジンの排気系に設けられる機器を冷却するサブラジエータと上記機器との間に循環ポンプで冷却媒体を循環させるサブ冷却回路と、サブラジエータを通じ冷却風をエンジンルームへ送風するサブラジエータファンとを有する第2冷却回路部と、エンジンが運転してから停止するまでの車両の走行状態を履歴として記録する履歴手段と、エンジンの運転が停止したとき、エンジン停止直前の直近の履歴情報に基づき冷却要求度合いを判定する判定手段と、判定手段による冷却要求度合いの判定に基づき第1冷却回路部および第2冷却回路部を制御する制御手段とを具備し
、履歴手段は、車両が登坂走行したときの路面の勾配情報と車両の車速情報とを含む走行状態を履歴として記録し、判定手段は、車両が登坂走行後にエンジンの運転が停止したとき、エンジン停止直前の直近における平均勾配と平均車速とを算出し、当該平均勾配と平均車速とに基づき冷却要求度合いの判定を行い、制御部は、平均勾配と平均車速とにより判定された冷却要求度合いに基づき第1冷却回路部および第2冷却回路部を制御することにある。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、エンジンの運転が停止すると、メインラジエータおよびメインラジエータファン(いずれも第1冷却回路部)、サブラジエータ、サブラジエータファンおよび循環ポンプ(いずれも第2冷却回路部)は、その停止直前の直近の運転履歴情報で
ある平均勾配と平均車速で判定される冷却要求具合に基づき制御されるから、変化するエンジン運転停止直近の走行状態に準じて、エンジン、エンジンの排気系に設けられる機器、エンジンルームを適切に冷却できる。
【0011】
それ故、効果的にエンジン、エンジンの排気系に設けられる機器、エンジンルームの温度上昇が抑えられ、熱害に対し的確に対処することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を
図1から
図5に示す一実施形態にもとづいて説明する。
図1(a)は自動車などの車両の前部を示し、
図1(b)は同車両前部のエンジンルームに搭載されている各機器の構成を示していて、
図1中1は同車両の車体、3は同車体1の前部に形成されたエンジンルーム、5は同エンジンルーム3内に収められたレシプロ式のエンジン(多気筒)である。ちなみに
図1(a)中、符号Fは車両前側を示し、符号Rha車両後側を示している。
【0014】
エンジン5は、吸気マニホルド7の有る吸気側が車体前部に形成されている走行風入口9側に向き、排気マニホルド8(
図1(b)に一部図示)の有る排気側を車体1の中央に有する車室1a側(一部だけ図示)と隣接させて、エンジンルーム3に据え付けられている。このエンジン5の排気系をなす排気マニホルド8には、エンジン5を過給運転するターボチャージャ11(本願のエンジン排気系に設けられる機器に相当)が設けられている。つまり、エンジン5は、ターボチャージャ11が車室1a側に位置した横置きの姿勢でエンジンルーム3内に収められている。ちなみに、エンジン5の上部には水冷式のインタークーラ13が配置されている。
【0015】
各部を詳しく説明すると、
図1(b)に示されるようにエンジン5は、往復動可能にピストン15を収めたシリンダ17や、ピストン15とコンロッド19を介して接続されるクランクシャフト21や、クランクシャフト21の軸トルクで駆動されるウォータポンプ23をもつシリンダブロック25と、同シリンダブロック25の下部に組み合わさるオイルパン27と、シリンダブロック25の頭部に組み合わさる、燃焼室29や、吸・排気ポート31,33や、吸・排気弁35,37や、吸・排気用動弁機構(図示しない)、点火プラグ39、燃料噴射ノズル(図示しない)などをもつシリンダヘッド41とを有して構成される。ちなみに、シリンダブロック25やシリンダヘッド41の内部には、冷却水路43が形成され、同冷却水路43がウォータポンプ23と連通している。
【0016】
ターボチャージャ11は、コンプレッサ側11aをなす、コンプレッサハウジング47内に収めたコンプレッサホイール49と、タービン側11bをなす、タービンハウジング51内に収めたタービンホイール53とをシャフト部材55にて同軸に連結し、当該シャフト部材55を軸受ユニット57にて回転自在に軸受けして構成される。軸受ユニット57には、高温となるターボチャージャ11を冷却するための冷却水路59が形成してある。
【0017】
エンジン5の吸気マニホルド7は、スロットルバルブ61、インタークーラ13、ターボチャージャ11のコンプレッサハウジング47を介してエアクリーナ62に接続され、エアクリーナ62から吸入空気が取り込める。60は吸気通路を示す。またエンジン5の排気マニホルド8は、ターボチャージャ11のタービンハウジング51を介して触媒63に接続され、エンジン5からの排気ガスは、ターボチャージャ11、触媒63を通じて排気される。64は、エンジン5の排気ガスが流れる排気通路を示す。これにより、ターボチャージャ11は、タービンホイール53がエンジン5の排熱エネルギーを受けると、コンプレッサホイール49が駆動され、吸入空気が燃焼室29へ押し込まれるという、過給運転が行われる。
【0018】
一方、エンジンルーム3の走行風入口9には、エンジン冷却制御装置を構成する機器であるメインラジエータ装置67(本願の第1冷却回路部に相当)と、同じくサブラジエータ装置69(本願の第2冷却回路部に相当)が車幅方向に並んで設けられている。
具体的にはメインラジエータ装置67は、例えば走行風入口9とエンジン5との間に配置されたメインラジエータ71と、同メインラジエータ71の熱交換部とエンジン5との間に配置された、複数の電動ファンでなるメインラジエータファン73とを有している。メインラジエータ71は、走行風入口9の片側の多くを占めるように配置される。そしてメインラジエータ71は、メインラジエータ71から延びるメイン通路75を介して、エンジン5のウォータポンプ23や冷却水路43と連通している。つまり、エンジン5は、ウォータポンプ23にて循環する冷却水(冷却媒体)にて冷却される。ちなみにメインラジエータファン73は、外気を冷却風としてメインラジエータ71を通じエンジンルーム3へ送風する。
【0019】
サブラジエータ装置69は、例えば水冷式のインタークーラ冷却装置77を流用して構成される。例えばインタークーラ冷却装置77は、メインラジエータ71と隣接して車幅方向に並んで配置されたサブラジエータ79と、同サブラジエータ79の熱交換部とエンジン5との間に配置された、電動ファンでなるサブラジエータファン81とを有している。サブラジエータ装置69は、メインラジエータ装置67より冷却能力が小さい。このため、サブラジエータ79はメインラジエータ71よりも熱交換部が小さく、サブラジエータファン81は、メインラジエータファン73の2基に対し1基としてある。サブラジエータ79から延びたサブ通路83はインタークーラ13に至る。サブ通路83には、例えば電動ポンプでなる循環ポンプ85が介装され、サブラジエータ79から送られる冷却水(冷却媒体)にて、インタークーラ13の冷却が行われる。つまり、インタークーラ13により、過給された吸入空気が冷却される構造となっている。
【0020】
またインタークーラ13からは、ターボ冷却通路86(本願の流路に相当)が延びている。このターボ冷却通路86が、ターボチャージャ11の冷却水路59に接続され、サブラジエータ79からの冷却水がターボチャージャ11を介してサブラジエータ79へ戻るターボ冷却回路84(本願のサブ冷却回路に相当)を構成している。これにより、ターボチャージャ11は、サブラジエータ79を循環する冷却水(冷却媒体)にて冷却される。つまり、インタークーラ冷却装置77を流用したサブラジエータ装置69にて、ターボ―チャージャ11の冷却が行われる構造となっている。
【0021】
むろん、エンジンルーム3やエンジン5やターボチャージャ11は、メインラジエータファン73、サブラジエータファン81からの冷却風により、冷却される構造になっている。またメインラジエータファン73、サブラジエータファン81は、いずれも冷却風が直接、エンジン5に吹き付けられる位置に配置され、メインラジエータファン73、サブラジエータファン81から吹き出される冷却風にて、効果的にエンジン5やターボチャージャ11が冷却される構造となっている。
【0022】
また車両には、エンジン運転停止時における熱害(主にターボチャージャ運転停止による)を防ぐために、
図2のブロック図に示されるような構成のエンジン冷却制御装置87が設けられている。エンジン冷却制御装置87は、車両が停止しエンジン5の運転が停止したとき、そのエンジン停止直前の直近の車両運転状態の履歴情報に基づき、メインラジエータ装置67、サブラジエータ装置69を制御するものである。
【0023】
具体的にはエンジン冷却制御装置87は、例えばマイクロコンピュータで構成されるECU89(本願の制御部に相当)を有している。ECU89には、
図2に示されるように各機器が接続されている。
具体的にはECU89には、エンジン5の冷却水温を検出するエンジン冷却水温センサ91(以下、E/G水温センサ91という:
図1)、ターボチャージャ11の出口冷却水温を検出するターボチャージャ出口水温センサ93(以下、T/C水温センサ93という:
図1)、ターボチャージャ11の出口排気ガスの温度を検出する排気温センサ95(
図1)、車両の車速を検出する車速センサ97、車両走行中における路面勾配を検出する勾配センサ99、エンジン5をオンオフするイグニションキースイッチ101(以下、I/Gスイッチ101という)、メインラジエータファン73、サブラジエータファン81および循環ポンプ85などが接続される。
【0024】
またECU89には、エンジン5を運転してから停止するまでの車両の走行状態を履歴として記憶する履歴機能(本願の履歴手段に相当)が設定されている。特に履歴機能は、エンジン5の運転負荷の情報となる、登坂走行、同走行時における路面の勾配情報、例えば単位時間当たりの登り勾配や、エンジンルーム3の通風情報となる車速情報を含む、エンジン5が運転を開始してからエンジン5が停止するまでの走行状態の記録を行うものとしている。
【0025】
むろんECU89には、I/Gスイッチ101のオンオフ情報や車速センサ97の車速情報に基づき、車両停止、エンジン運転停止を検出するエンジン停止検出機能も設定されている。
さらにECU89には、エンジン5の運転が停止すると、エンジン運転停止直前の過去の車両運転状態の履歴に基づき、その時点で求められるエンジンルーム3の冷却の度合い、すなわち冷却要求度合いを判定する判定機能(本願の判定手段に相当)が設定されている。この判定機能は、例えば車両運転履歴の情報を用いてエンジン運転停止前、過去10minにおける平均勾配と平均車速とを算出し、算出した平均勾配と平均車速とに基づき、エンジンルーム3の冷却要求具合いを判定する。
【0026】
具体的には、算出した平均勾配と、エンジン負荷具合を判定する基準となる所定勾配値の閾値αとを対比して、エンジン5の負荷具合を種々割り出し、また算出した平均車速と、エンジンルーム3への導入風速の基準となる所定車速値の閾値βや閾値γとを対比して、エンジンルーム3の冷却具合いを種々割り出すことによって、エンジン運転停止時点におけるエンジンルーム3、エンジン5、ターボチャージャ11の温度状況を割り出し、エンジン運転停止時点でどれだけの冷却が要求されるのかが判定するものである。ここでは、閾値αとして例えば勾配3%、閾値β、γとして例えば60km/h、80km/hが用いてある。
【0027】
さらにECU89には、大小の冷却要求度合いに応じたパターン制御により、メインラジエータ装置67、サブラジエータ装置69の各部を制御する冷却実行機能が設定されている。同機能は、冷却度の高い順に、「メインラジエータファン73、サブラジエータファン81、循環ポンプ85が運転」する第1冷却モードと、「サブラジエータファン81、循環ポンプ85だけが運転」する第2冷却モードと、「メインラジエータファン73、サブラジエータファン81だけが運転」する第3冷却モードと、「サブラジエータファン81だけが運転する」第4冷却モードとが設定されている。
【0028】
冷却実行機能は、冷却要求具合いの判定結果に基づき上記第1〜4冷却モードの中からモードを選択し、例えば10minを1サイクルとしたタイマー制御により、T/C出口冷却水温が、ターボチャージャ11の冷却を必要としない温度になるまで実行する機能で設定され、どのようなエンジン停止直近の状況に際してもエンジンルーム3の冷却が適切に行えるようにしている。具体的には、平均勾配が所定勾配値(所定値)より大きいときは、第1冷却モードまたは第2冷却モードが選択され、平均勾配が所定勾配値以下(所定値以下)のときは、第3冷却モードまたは第4冷却モードが選択される。さらに平均車速と所定車速値(所定値)との対比から、どちらかのモードが決定されるものとしている。
【0029】
なお、ECU89には、エンジン運転停止時、エンジン5の暖機が終了していない場合、すなわち過去10minにおいてエンジン5の冷却水の温度が所定温度の閾値bに達しないと判定された場合は冷却制御を実行させない、エンジン運転停止時、エンジン5の運転が高負荷運転であることが明らかな場合、例えば過去10minのエンジン5の平均排気温が、高負荷運転を判定する温度値を越え、さらに越えた時間の積算が所定積算値の閾値cを越えるとき場合、無条件に最も高い冷却をもたらす第1冷却モードを実行させる設定が施されている。
【0030】
つぎに、このように構成されたエンジン冷却制御装置87の作用を、
図3に示すフローチャート、
図4および
図5に示すエンジンルーム3の平面図を参照して説明する。
車両は、I/Gスイッチ101をオンして、エンジン5の運転を開始してから、アクセル操作やハンドル操作を行うことにより、走行する。この際、エンジン5の排熱エネルギーにより、ターボチャージャ11のタービンホイール53は駆動され、さらにコンプレッサホイール49は駆動される。すると、エンジン5へ吸入される吸入空気は、燃焼室29へ押し込まれ、ターボチャージャ11による過給運転が行われる。
【0031】
車両走行中、ECU89の履歴機能は、単位時間当たり、路面の勾配を検出、車速を検出(勾配センサ99や車速センサ97の出力)、エンジン5の冷却水の温度を検出(E/G水温センサ91の出力)、エンジン5の排気ガスの温度を検出(排気温センサ95の出力)し続け、履歴として記録している。
車両走行を終え、ブレーキ操作で車両を停止させる。そして、停止直後にステップS1のようにI/Gスイッチ101をキーオフ操作して、エンジン5のアイドル運転を停止させたとする。
【0032】
このとき、既にエンジン5が暖機を終えていると、まず、エンジンルーム3の状況を把握する。そして、現在のエンジン運転停止状態における冷却の具合いの判定が行われる。これは、ステップS1から、ステップS3およびステップS5を経て、ステップS7へと進み、まず、エンジン5の負荷運転具合を判定することから始まる。
ステップS7は、車両の走行状態の履歴から、エンジン5の運転が停止するまでの過去10minにおける登り勾配の単位当たりの勾配平均degを算出し、同勾配平均を閾値α(例えば勾配3%:所定値)と対比する。この対比により、エンジン5が直近において、どれだけ負荷が強いられていたかが把握される。これにより、過給運転が強いられるエンジン5の負荷が大きい登坂走行などの場合と、エンジン5の負荷の小さい平坦路走行などの場合とに分けられる。
【0033】
ここで、エンジン運転停止直近において登坂走行が行われ、エンジン負荷は大きいものであったと判定された場合、ステップS9へ進み、つぎに同じくエンジン運転停止直近におけるエンジンルーム3の通風具合の判定が行われる。
エンジンルーム3の通風具合の判定は、走行風が走行風入口9からエンジンルーム3へ導入する風速から割り出すことで行われる。そのため、ステップS9では、車両の走行状態の履歴から過去10minの平均車速を算出し、同平均車速を低・中車速の登坂走行を考慮した閾値β(例えば60km/h)と対比する。この対比により、登坂走行で平均車速が低いときや登坂走行で平均車速が比較的高いなど、直近の走行状態を考慮したエンジンルーム3の雰囲気温度の上昇具合が把握される。
【0034】
こうしたエンジン5の負荷具合の判定やエンジンルーム3の走行風の導入具合の判定により、エンジン5の負荷が大きく、エンジンルーム3の走行風が期待できないという、熱的に最も厳しく、高い冷却が求められる状態であることや、それよりも若干、求められる冷却が低い状態であるということが判定される。
熱的に最も厳しい場合は(エンジン負荷が大、走行風が期待できない)、ステップS9からステップS11へ進み、最も高い冷却能力でエンジンルーム3、エンジン5、ターボチャージャ11を冷却させるため、第1冷却モードを選択する。これにより、ECU89は、
図4に示されるようにメインラジエータファン73、サブラジエータファン81、循環ポンプ85を運転する。
【0035】
すると、所定時間(10min)を1サイクルとしたメインラジエータファン73、サブラジエータファン81の運転にしたがい、外気がエンジン5の各部へ向けて送風され、エンジンルーム3に導入される(
図4)。これにより、エンジン5、ターボチャージャ11は、冷却風と接触して冷却され、エンジンルーム3は、冷却風の強制対流や同対流がもたらす伝熱により冷却される。と共に温度上昇しているターボチャージャ11は、サブラジエータ79、ターボチャージャ11の冷却水路59を循環する冷却水で強制的に冷却される(接触伝熱による)。つまり、最も熱的に厳しいときは、メインラジエータ装置67およびサブラジエータ装置69の双方がフルに稼働され、エンジンルーム3の雰囲気温度を最も高い冷却能力で低下させる。
【0036】
こうした第1冷却モードの運転は、ステップS13のようにT/C出口冷却水温が閾値aに達するまで行われる。T/C出口冷却水温が閾値aに達すれば、十分にエンジンルーム3を含む機器の冷却が行われたと判定し、メインラジエータ装置67(第1冷却回路部)のメインラジエータファン73、サブラジエータ装置69(第2冷却回路部)のサブラジエータファン81、循環ポンプ85の運転を停止する。
【0037】
またステップS9で、上記よりも熱的に厳しくないと判定されると、温度上昇の要因となっているターボチャージャ11を重点的に冷却すべく、ステップS15へ進み、第2冷却モードを選択し、サブラジエータファン81、循環ポンプ85だけを運転する。
すると、所定時間(10min)を1サイクルとしたサブラジエータファン81の運転にしたがい、外気がエンジン5へ向けて送風され、エンジンルーム3に冷却風が導入される。と共に温度上昇が著しいターボチャージャ11に冷却水が循環し、ターボチャージャ11を重点に冷却する。
【0038】
これにより、サブラジエータ装置69の各部だけをフルに稼働させるという、ターボチャージャ11の内外を重点においた冷却により、エンジンルーム3の冷却は十分に行われ、エンジンルーム3の雰囲気温度は低下する。つまり、エンジンルーム3の直近の状況に対応した冷却が行われる。
むろん、ステップS17のようにT/C出口冷却水温が閾値aに達すれば、十分にエンジンルーム3を含む機器の冷却が行われたと判定され、サブラジエータ装置69(第2冷却回路部)のサブラジエータファン81、循環ポンプ85の運転を終える。
【0039】
一方、ステップS7において、エンジン5の負荷の小さい平坦路走行などと判定されると、ステップS19へ進み、このときのエンジンルーム3の通風具合を判定する。
ステップS9では、車両の走行状態の履歴から過去10minの平均車速を算出し、同平均車速を平坦走行を考慮した閾値β(例えば80km/h)と対比する。この対比により、高車速で走行するという、走行風が期待できるときのエンジンルーム3の雰囲気温度の上昇具合が把握される。
【0040】
このエンジンルーム3の走行風の導入具合の判定により、エンジン5の負荷が小さく、エンジンルーム3の走行風が期待できるという状況の中において、求められる冷却の具合いの判定が行われる。
このエンジン運転停止の状況の中で、冷却要求度合いが大きい場合(例えば80km/hを下回る場合)は、エンジン5の温度上昇が、エンジンルーム3の温度上昇に関与していると判定される。この場合、ステップS21へ進み、第3冷却モードを選択し、メインラジエータファン73、サブラジエータファン81だけを運転する。
【0041】
すると、所定時間(10min)を1サイクルとしたメインラジエータファン73、サブラジエータファン81の運転にしたがい、外気がエンジン5へ向けて送風され、エンジンルーム3に導入される(
図3と同様)。
これにより、メインラジエータファン73とサブラジエータファン81との稼働で、エンジン5に冷却風を吹き付けるという、エンジン5を重点とした冷却だけで、エンジンルーム3の冷却は十分に行われ、エンジンルーム3の雰囲気温度は低下する。つまり、同エンジンルーム3の直近の状況に対応した冷却が行われる。
【0042】
そして、ステップS23に至り、T/C冷却水温の検出が開始される(例えば、一旦、循環ポンプ85を作動)。ステップS25のようにT/C出口冷却水温が閾値aに達すれば、十分にエンジンルーム3を含む機器の冷却が行われたと判定され、メインラジエータファン73、サブラジエータファン81の運転を終える。
またステップS19で、エンジン5の温度上昇の関与が小さいと判定されると、ステップS27へ進み、第4冷却モードを選択して、サブラジエータファン81だけを運転する。
【0043】
すると、所定時間(10min)を1サイクルとしたサブラジエータファン81の運転にしたがい、外気がエンジン5へ向けて送風され、エンジンルーム3に導入される(
図4と同様)。
これにより、サブラジエータファン81の稼働で、エンジン5に冷却風を吹き付けるという冷却だけで、エンジンルーム3の冷却は十分に行われ、エンジンルーム3の雰囲気温度は低下する。つまり、同エンジンルーム3の直近の状況に対応した冷却が行われる。
【0044】
そして、ステップS29に至り、上記同様、T/C冷却水温の検出が開始される。ステップS31のようにT/C出口冷却水温が閾値aに達すれば、十分にエンジンルーム3を含む機器の冷却が行われたと判定され、サブラジエータファン81の運転を終える。
なお、エンジン運転停止時、エンジン5の冷却水温が暖機運転を終えたことを判定する冷却水温の閾値aに達していなければ(ステップS3)、エンジン冷却は実行しない。またエンジン運転停止時、過去10minのエンジン5の平均排気温が、高負荷運転を判定する温度値を越え、さらに越えた時間の積算が所定積算値の閾値cを越えるという、エンジン5の運転が高負荷運転であることが明らかな場合(ステップS5)、無条件に最も高い冷却をもたらす第1冷却モードを実行させる。
【0045】
以上のようにエンジン運転停止時、その停止直近の車両の走行状態に基づきメインラジエータ装置67(第1冷却回路部)、サブラジエータ装置69(第2冷却回路部)を制御したので、低・中速走行からの停止時や高速走行からの停止時といった、どのような状況からでも、エンジンルーム3、エンジン5、ターボチャージャ11(エンジン排気系に設けられる機器)を適切に冷却できる。
【0046】
それ故、効果的にエンジンルーム3、エンジン5、ターボチャージャ11(エンジン排気系に設けられる機器)の温度上昇が抑えられ、熱害に対し的確に対処することができる。特に、ターボチャージャ11が排気系に設けられるエンジン5には有効である。
しかも、車両が登坂走行したときの勾配情報、車両の車速情報を含む走行情報を履歴として残し、登坂走行後のエンジン運転停止時、エンジン停止直前の直近における平均勾配と平均車速とを算出して、同平均勾配と同平均車速とに基づき冷却要求度合いの判定を行い、同冷却要求度合いに基づきメインラジエータ装置67(第1冷却回路部)、サブラジエータ装置69(第2冷却回路部)を制御したことにより、登坂走行後、エンジン5の運転を停止した場合でも、適切にエンジンルーム3、エンジン5、ターボチャージャ11を冷却することができる。
【0047】
そのうえ、メインラジエータファン73、サブラジエータファン81および循環ポンプ85が運転する第1冷却モード、サブラジエータファン81および循環ポンプ85だけが運転する第2冷却モード、メインラジエータファン73およびサブラジエータファン81だけが運転する第3冷却モード、サブラジエータファン81だけが運転する第4冷却モードの中から冷却要求具合に基づきモード選択を行う、すなわち冷却要求具合に応じて、大小種々の冷却能力で冷却するようにしたので、消費電力の負担を抑えつつエンジン運転停止後における冷却ができる。特に平均勾配が所定勾配値(所定値)より大きいとき、第1冷却モードまたは第2冷却モードを選択し、平均勾配が所定勾配値以下(所定値以下)のとき、第3冷却モードまたは第4冷却モードを選択することにより、適切に冷却モードを選択することができる。
【0048】
またメインラジエータファン73、サブラジエータファン81は、いずれも冷却風が、直接、エンジン5に吹き付けるように配置されているので、冷却しにくいターボチャージャ11が車室側に配置される横置きのエンジン5の姿勢やエンジンルーム3でも、冷却が期待できる。
加えて、サブラジエータ装置69は、インタークーラ冷却装置77を流用して構成したので、コストを抑えた簡単な構造ですむ。
【0049】
なお、本発明は、上述した一実施形態に限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲内で種々可変して実施しても構わない。