(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
カルディリネア(Caldilinea)sp.由来のタガトース−ビスリン酸アルドラーゼ(tagatose−bisphosphate aldolase);これを発現する微生物;または前記微生物の培養物のうちの1つ以上とフルクトースを接触させ、前記フルクトースを直接タガトースに転換する段階を含み、前記タガトース−ビスリン酸アルドラーゼの基質がフルクトースである、タガトースの製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本出願をより詳細に説明する。しかし、本出願に開示した一実施様態の説明及び実施例は、共通事項について他の実施形態の説明及び実施例においても適用できる。また、本出願の詳細な説明に開示された様々な要素のすべての組み合わせは、本出願の権利範囲に属することはもちろんである。それだけでなく、下記記述された具体的な説明によって本発明出願の権利範囲が制限されるものではない。
【0012】
また、当該技術分野の通常の知識を有する者は、通常の実験だけを行って本出願に記載された本出願の特定様態に対する多数の等価物を認識するか確認することができる。さらに、これらの同等物は本出願に含まれるものと意図される。
【0013】
本出願は、タガトース−ビスリン酸アルドラーゼがフルクトース−4−エピメラーゼの活性を有することを新たに解明したことに特徴がある。
【0014】
フルクトース−4−エピメラーゼまたはその変異体は、D−フルクトース(果糖)の4番炭素の位置をエピマー化してD−タガトースに転換させる特徴がある。前記フルクトース−4−エピメラーゼはタガトース−ビスリン酸アルドラーゼ(tagatose−bisphosphate aldolase)の活性を有し、D−タガトース1,6−ビスリン酸(D−tagatose 1,6−bisphosphate)を基質として、ジヒドロキシアセトンリン酸(glycerone phosphate)とD−グリセルアルデヒド3−リン酸(D−glyceraldehyde 3−phosphate)を生産する。
【0015】
一方、タガトース−ビスリン酸アルドラーゼ(tagatose−bisphosphate aldolase:EC4.1.2.40)は、下記[反応式1]のようにD−タガトース1,6−ビスリン酸(D−tagatose 1,6−bisphosphate)を基質として、ジヒドロキシアセトンリン酸(glycerone phosphate)とD−グリセルアルデヒド3−リン酸(D−glyceraldehyde 3−phosphate)を生産し、ガラクトース代謝に関与することが公知されたことがあるが、前記タガトース−ビスリン酸アルドラーゼがタガトースを生産する活性を有するかについての研究は皆無である。
【0016】
[反応式1]
D−タガトース1,6−ビスリン酸 ⇔ ジヒドロキシアセトンリン酸 + D−グリセルアルデヒド3−リン酸
【0017】
本出願に至って、前記タガトース−ビスリン酸アルドラーゼ(tagatose−bisphosphate aldolase)がフルクトース−4−エピメラーゼの活性を有するという事実を新たに明らかにした。したがって、本出願の一具現例は、フルクトースからタガトースを製造するに当たり、タガトース−ビスリン酸アルドラーゼ(tagatose−bisphosphate aldolase)をフルクトース−4−エピメラーゼとして用いることを含むタガトース−ビスリン酸アルドラーゼの新規な用途を提供する。また、本出願の別の具現例は、タガトース−ビスリン酸アルドラーゼ(tagatose−bisphosphate aldolase)をフルクトース−4−エピメラーゼとして用いてフルクトースからタガトースを製造する方法を提供する。
【0018】
本出願の目的を達成するための一つの様態は、カルディリネア(Caldilinea)sp.由来のタガトース−ビスリン酸アルドラーゼ(tagatose−bisphosphate aldolase);これを発現する微生物;または前記微生物の培養物を1つ以上含むタガトース生産用組成物を提供する。
【0019】
前記組成物はフルクトースをさらに含んでもよく、前記フルクトースは、具体的には、D−フルクトース(fructose)であってもよいが、これに制限されない。
【0020】
本出願のタガトース−ビスリン酸アルドラーゼは、耐熱性微生物由来の酵素またはその変異体であってもよく、例えば、カルディリネア(Caldilinea)sp.由来の酵素またはその変異体であってもよい。具体的には、カルディリネア・アエロフィラ(Caldilinea aerophila)DSM 14535由来の酵素またはその変異体であってもよい。
【0021】
一具現例として、本出願のタガトース−ビスリン酸アルドラーゼは耐熱性の高い酵素であってもよい。具体的には、本出願のタガトース−ビスリン酸アルドラーゼは、50℃〜70℃で最大活性の50%〜100%、60%〜100%、70%〜100%または75%〜100%の活性を示しうる。より具体的には、本出願のタガトース−ビスリン酸アルドラーゼは、55℃〜60℃、または60℃〜70℃で最大活性の80%〜100%または85%〜100%の活性を示しうる。
【0022】
本出願において、前記タガトース−ビスリン酸アルドラーゼは、配列番号1またはそれと85%以上の同一性を有するものであってもよい。
【0023】
具体的には、前記タガトース−ビスリン酸アルドラーゼは、配列番号1またはそれと85%以上の同一性を有するものであってもよく、一例として、フルクトースを基質としてタガトースを生産できれば限定せずに含まれてもよい。具体的には、前記タガトース−ビスリン酸アルドラーゼは基質であるフルクトースからタガトースへの転換率(転換率=タガトース重量/初期フルクトース重量×100)が0.01%以上、具体的には、0.1%以上、より具体的には、0.3%以上のものであってよい。より具体的には、転換率は0.01%〜40%の範囲、0.1%〜30%の範囲、0.3%〜25%の範囲、または0.3%〜20%の範囲であってもよい。
【0024】
本出願のタガトース−ビスリン酸アルドラーゼまたはその変異体は、本出願の前記酵素またはその変異体を発現するDNA、例えば、配列番号2でこれらをE. coliなどの菌株に形質転換させた後、これを培養して培養物を収得し、前記培養物を破砕して、カラムなどを介して精製して収得したものであってもよい。前記形質転換用菌株は、大腸菌(Escherichia coli)のほか、コリネバクテリウム・グルタミカム(Corynebacterum glutamicum)、アスペルギルス・オリゼ(Aspergillus oryzae)、またはバチルス・ サブチリス(Bacillus subtilis)などがある。
【0025】
本出願の一具現例によれば、本出願のタガトース−ビスリン酸アルドラーゼは、配列番号1のアミノ酸配列と85%以上の遺伝的相同性または同一性を有するアミノ酸配列を含んでもよいが、これに制限されるものではない。他の具現例によると、本出願のタガトース−ビスリン酸アルドラーゼは、配列番号1のアミノ酸配列と少なくとも85%、90%、95%、96%、97%、98%、または99%の相同性または同一性を有するポリペプチドを含んでもよい。また、このような相同性または同一性を有し、前記タンパク質に相応する効能を示すアミノ酸配列であれば、一部の配列が欠失、変形、置換、または付加されたアミノ酸配列を有する機能性断片(functional fragment)も、本出願の範囲内に含まれるのは自明である。
【0026】
また、コドン縮退性(codon degeneracy)によって、前記配列番号1のアミノ酸配列を含むタンパク質またはそれと相同性または同一性を有するタンパク質に翻訳されうるポリヌクレオチドも含まれるのは自明である。また、公知の遺伝子配列から調製されうるプローブ、例えば、前記塩基配列の全体または一部に対する相補配列と厳格な条件下でハイブリッド化し、配列番号1のアミノ酸を含むタンパク質の活性を有するタンパク質をコードする配列であれば制限なく含まれてもよい。前記「厳しい条件」とは、ポリヌクレオチド間の特異的混成化を可能にする条件を意味する。これらの条件は、文献(例えば、非特許文献1)に具体的に記載されている。例えば、相同性または同一性が高い遺伝子同士、80%以上、具体的には、85%以上、具体的には、90%以上、より具体的には、95%以上、さらに具体的には、97%以上、特に具体的には、99%以上の相同性または同一性を有する遺伝子同士でハイブリッド化する。そして、それより相同性または同一性が低い遺伝子同士はハイブリッド化しない条件、または通常のサザンハイブリッド化の洗浄条件である60℃、1×SSC 、0.1%SDS、具体的には、60℃、0.1×SSC、0.1%SDS、より具体的には、68℃、0.1×SSC、0.1%SDSに相当する塩濃度及び温度で1回、具体的には、2回〜3回洗浄する条件を挙げられる。
【0027】
つまり、本出願において、「特定の配列番号に記載されたアミノ酸配列を含むか成るタンパク質またはポリペプチド」と記載されていても、その配列番号のアミノ酸配列を含むか成るポリペプチドと同一あるいは相応する活性を有する場合であれば、一部の配列が欠失、変形、置換、保存的置換または付加されたアミノ酸配列を有するタンパク質も、本出願で用いられるのは自明である。例えば、前記変異型ポリペプチドと同一あるいは相応する活性を有する場合であれば、前記アミノ酸配列の前後にタンパク質の機能を変更していない配列の追加、自然に発生しうる突然変異、そのサイレント突然変異(silent mutation)または保存的置換を除外することなく、これらの配列の追加、あるいは突然変異を有する場合でも、本願の範囲内に属するのが自明である。
【0028】
前記「保存的置換(conservative substitution)」は、1つのアミノ酸を類似の構造的及び/または化学的性質を有する別のアミノ酸に置換させることを意味する。 これらのアミノ酸置換は、一般的に残基の極性、電荷、溶解度、疎水性、親水性、及び/または両親媒性(amphipathic nature)での類似性に基づいて発生しうる。例えば、陽に荷電された(塩基性)アミノ酸は、アルギニン、リジン、及びヒスチジンを含み;陰に荷電された(酸性)アミノ酸は、グルタミン酸及びアスパラギン酸を含み;芳香族アミノ酸は、フェニルアラニン、トリプトファン、及びチロシンを含み;疎水性アミノ酸は、アラニン、バリン、イソロイシン、ロイシン、メチオニン、フェニルアラニン、チロシン及びトリプトファンを含む。
【0029】
混成化は、たとえ混成化の厳密度に応じて塩基間のミスマッチ(mismatch)が可能としても、2つのポリヌクレオチドが相補的配列を有することを要求する。用語、「相補的」は、互いに混成化が可能であるヌクレオチド塩基間の関係を記述するのに用いられる。例えば、DNAに関すると、アデノシンはチミンに相補的であり、シトシンはグアニンに相補的である。したがって、本出願は、また、実質的に類似のポリヌクレオチド配列だけでなく、全体配列に相補的な単離されたポリヌクレオチド断片を含みうる。
【0030】
具体的には、相同性または同一性を有するポリヌクレオチドは、55℃のTm値で混成化段階を含む混成化条件を用い、上述した条件を用いて探知してもよい。また、前記Tm値は、60℃、63℃または65℃であってもよいが、これに制限されるものではなく、その目的に応じて当業者によって適切に調節されてもよい。
【0031】
ポリヌクレオチドを混成化する適切な厳密度は、ポリヌクレオチドの長さ及び相補性の程度に依存し、変数は当該技術分野でよく知られている(非特許文献1の9.50−9.51、11.7−11.8参照)。
【0032】
相同性(homology)または同一性(identity)は、2つの与えられたアミノ酸配列または塩基配列と関連された程度を意味し、パーセンテージで示されてもよい。用語、相同性及び同一性は、多くの場合、相互交換的に用いられてもよい。
【0033】
保存された(conserved)ポリヌクレオチドまたはポリペプチドの配列相同性または同一性は標準配列アルゴリズムによって決定されるし、用いられるプログラムによって確立されたデフォルトのギャップペナルティが一緒に用いられてもよい。実質的には、相同性を有するか(homologous)または同一な(identical)配列は、一般的に配列全体または全長の少なくとも約50%、60%、70%、80%または90%以上に沿って中間または高い厳しい条件(stringent conditions)でハイブリッドしてもよい。ハイブリッドするポリヌクレオチドでコドンの代わりに縮退コドンを含有するポリヌクレオチドも考慮されうる。
【0034】
任意の2つのポリヌクレオチドまたはポリペプチド配列が、相同性、類似性または同一性を有するかどうかは、例えば、非特許文献2と同じデフォルトのパラメータを用いて「FASTA」プログラムのような公知のコンピュータアルゴリズムを利用して決定してもよい。または、EMBOSSパッケージのニードルマンプログラム(EMBOSS:The European Molecular Biology Open Software Suite、非特許文献3)(バージョン5.0.0またはそれ以降のバージョン)で実行されるような、ニードルマン−ウンシュ(Needleman−Wunsch)アルゴリズム(非特許文献4)を用いて決定してもよい。(GCGプログラムパッケージ(Devereux, J., et al, Nucleic AcidsResearch 12: 387(1984))、BLASTP、BLASTN、FASTA(Atschul, [S.] [F.,] [ET AL, J MOLEC BIOL 215]: 403(1990);Guide to Huge Computers, Martin J. Bishop, [ED.,] Academic Press, San Diego,1994、及び[CARILLO ETA/.](1988)SIAM J Applied Math 48: 1073を含む)。また、国立生物工学情報データベースセンターのBLAST、またはClustalWを用いて相同性、類似性または同一性を決定してもよい。
【0035】
ポリヌクレオチドまたはポリペプチドの相同性、類似性または同一性は、例えば、非特許文献5に公知されたように、例えば、非特許文献4のようなGAPコンピュータプログラムを利用して配列情報を比較することによって決定してもよい。要約すると、GAPプログラムは、2つの配列のうち、より短いものからのシンボルの全体数で同様の配列されたシンボル(つまり、ヌクレオチドまたはアミノ酸)の数を割った値として定義する。GAPプログラムのためのデフォルトパラメータは、(1)一進法の比較マトリックス(同一性のための1及び非同一性のための0の値を含有する)及び非特許文献6に開示されたように、非特許文献7の加重された比較マトリックス(またはEDNAFULL(NCBI NUC4.4のEMBOSSバージョン)置換マトリックス);(2)各ギャップのための3.0のペナルティ及び各ギャップの各記号のための追加の0.10ペナルティ(またはギャップ開放ペナルティ10、ギャップ延長ペナルティ0.5);及び(3)末端ギャップのための無ペナルティを含んでもよい。したがって、本願で用いられたものとして、用語、「相同性」または「同一性」は、配列間の関連性(relevance)を示す。
【0036】
本出願の他の一つの様態は、前記タガトース−ビスリン酸アルドラーゼを暗号化するポリヌクレオチドと、前記ポリヌクレオチドを含む発現ベクター及び前記発現ベクターを含む形質転換体を提供する。
【0037】
本出願において、用語「ポリヌクレオチド」は、DNAまたはRNA分子を包括的に含む意味を有し、ポリヌクレオチドで基本構成単位であるヌクレオチドは、天然ヌクレオチドに加えて、糖または塩基部位が変形された類似体も含んでもよい(非特許文献8及び9参照)。
【0038】
前記ポリヌクレオチドは、本出願の配列番号1のアミノ酸配列を含むポリペプチドを暗号化するポリヌクレオチドまたは配列番号1と85%以上の相同性または同一性を有しながらフルクトース−4−エピメラーゼ活性を有するポリペプチドを暗号化するポリヌクレオチドであってもよい。具体的には、例えば、前記配列番号1またはそれに85%以上の同一性を有するアミノ酸配列を含むタガトース−ビスリン酸アルドラーゼを暗号化するポリヌクレオチドは、配列番号2の塩基配列と少なくとも85%、90% 、95%、96%、97%、98%、99%または100%の相同性または同一性を有するポリヌクレオチドであってもよい。加えて、前述したように、本出願のポリヌクレオチドはコドン縮退性(codon degeneracy)によって本出願のタガトース−ビスリン酸アルドラーゼに翻訳されうるポリヌクレオチドを含んでもよく、前記配列番号2の塩基配列について相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドと厳格な条件下で混成化し、本出願のフルクトース−4−エピメラーゼの活性を有するポリペプチドを暗号化するポリヌクレオチドも含むことができるのは自明である。
【0039】
本出願で用いられてもよいタガトース−ビスリン酸アルドラーゼを発現する微生物は、前記ポリヌクレオチドを含む組換えベクターを含む微生物であってもよい。前記ベクターは、本出願のポリヌクレオチドが作動可能に連結された形態であってもよい。本出願において、用語「作動可能に連結された」とは、一般的に機能を実行するように塩基発現調節配列と目的とするタンパク質をコードする塩基配列が作動可能に連結されてコードする塩基配列の発現に影響を与えることができる。ベクターとの動作可能な連結は、当業界の公知の遺伝子組換え技術を利用して製造してもよく、部位特異的DNA切断及び連結は、当業界の切断及び連結酵素などを使用して製作してもよい。
【0040】
本出願において、用語「ベクター」は、有機体、例えば、宿主細胞に塩基のクローニング及び/または転移のための任意の媒体をいう。ベクターは、他のDNA断片が結合して結合された断片の複製をもたらすことができる複製単位(replicon)であってもよい。ここで、「複製単位」とは、生体内でDNA複製の自己ユニットとして機能する、つまり、自らの調節によって複製可能な任意の遺伝的単位(例えば、プラスミド、ファージ、コスミド、染色体、ウイルス)をいう。本出願の用語「ベクター」は、試験管内、生体外または生体内で有機体、例えば、宿主細胞に塩基を導入するためのウイルス及び非ウイルス媒介物を含んでもよく、ミニ球型DNA、Sleeping Beautyのようなトランスポゾン(非特許文献10)、または人工染色体を含んでもよい。通常用いられるベクターの例としては、天然の状態であるか、組換えされた状態のプラスミド、コスミド、ウイルス、バクテリオファージが挙げられる。例えば、ファージベクターまたはコスミドベクターとしては、pWE15、m13、MBL3、MBL4、IXII、ASHII、APII、t10、t11、Charon4A、及びCharon21Aなどを用いてもよく、プラスミドベクターとしては、pBR系、pUC系、pBluescriptII系、pGEM系、pTZ系、pCL系とpET系などを用いてもよい。本出願で使用可能なベクターは、特に制限されず、公知の組換えベクターを用いてもよい。また、前記ベクターは、様々な抗生剤抵抗性遺伝子をさらに含むことを特徴とする組換えベクターであってもよい。本出願において、用語「抗生剤抵抗性遺伝子」とは、抗生剤に対して抵抗性を有する遺伝子であって、これを有している細胞は、該当の抗生剤を処理した環境でも生存するため、大腸菌で大量にプラスミドを得る過程で選別マーカーとして有用に用いられる。本出願で抗生剤抵抗性遺伝子は、本出願の核心的技術であるベクターの最適な組み合わせによる発現効率に大きく影響を与える要素がないため、選別マーカーとして一般的に使用される抗生剤抵抗性遺伝子を制限なく使用してもよい。具体的な例としては、、アンピシリン(ampicilin)、テトラサイクリン(tetracyclin)、カナマイシン(kanamycin)、クロラムフェニコール(chloroamphenicol)、ストレプトマイシン(streptomycin)、またはネオマイシン(neomycin)に対する抵抗遺伝子などを使用してもよい。
【0041】
本出願で用いられてもよいタガトース−ビスリン酸アルドラーゼを発現する微生物は、前記酵素を暗号化するポリヌクレオチドを含むベクターを宿主細胞内に導入する方法を用いてもよく、前記ベクターを形質転換させる方法はポリヌクレオチドを細胞内に導入するあらゆる方法も含まれてもよく、当該分野で公知されたように、適切な標準技術を選択して行ってもよい。エレクトロポレーション(electroporation)、リン酸カルシウム共沈(calcium phosphate co−precipitation)、レトロウイルス感染(retroviral infection)、微細注入法(microinjection)、DEAEデキストラン(DEAE dextran)、カチオン性リポソーム(cationic liposome)法及び熱ショック法などが含まれてもよいが、これに制限されない。
【0042】
形質転換された遺伝子は、宿主細胞内に発現することさえできれば、宿主細胞の染色体内に挿入された形態及び染色体外に位置している形態すべてを含んでもよい。また、前記遺伝子はポリペプチドを暗号化しうるポリヌクレオチドとしてDNA及びRNAを含み、宿主細胞内に導入されて発現できるものであれば、制限なく用いられてもよい。例えば、前記遺伝子は、それ自体で発現されるのに必要なすべての要素を含むポリヌクレオチド構造体である発現カセット(expression cassette)の形態で宿主細胞に導入されてもよい。前記発現カセットは、通常、前記遺伝子に作動可能に連結されているプロモーター(promoter)、転写終結シグナル、リボソーム結合部位及び翻訳終結シグナルを含んでもよい。前記発現カセットは、それ自体の複製が可能な組換えベクターの形態であってもよい。また、前記遺伝子は、それ自体またはポリヌクレオチド構造体の形態で宿主細胞に導入され、宿主細胞で発現に必要な配列と作動可能に連結されたものであってもよい。
【0043】
本出願の微生物は、本出願のポリヌクレオチドまたは本出願の組換えベクターを含み、本出願のタガトース−ビスリン酸アルドラーゼを生産しうる微生物であれば、原核微生物及び真核微生物いずれも含まれてもよい。例えば、エシェリキア(Escherichia)属、エルウィニア(Erwinia)属 、セラチア(Serratia)属 、プロビデンシア(Providencia)属、コリネバクテリウム(Corynebacterium)属 、及びブレビバクテリウム(Brevibacterium)属に属する微生物菌株が含まれてもよく、具体的には、大腸菌(E. coli)またはコリネバクテリウム・グルタミカム(Corynebacterium glutamicum)であってもよいが、これに制限されない。
【0044】
本出願の微生物は、前記ポリヌクレオチドまたはベクター導入の他にも、様々な公知の方法により本出願のタガトース−ビスリン酸アルドラーゼを発現しうる微生物をすべて含んでもよい。
【0045】
本出願の微生物の培養物は、本出願のタガトース−ビスリン酸アルドラーゼを発現する微生物を培地で培養して製造したものであってもよい。
【0046】
本出願において、用語「培養」は、前記微生物を適当に調節された環境条件で生育させることを意味する。本願の培養過程は当業界に公知の適当な培地と培養条件に応じて行われてもよい。このような培養過程は選択される菌株に応じて当業者が容易に調整して用いてもよい。前記微生物を培養する段階は、特にこれに制限されないが、公知の回分式培養方法、連続式培養方法、流加式培養方法などにより行われてもよい。この時、培養条件は特に制限されないが、塩基性化合物(例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムまたはアンモニア)または酸性化合物(例えば、リン酸または硫酸)を用いて、適正pH(例えば、pH5〜9、具体的には、pH7〜9)を調節してもよい。また、培養中には、脂肪酸ポリグリコールエステルのような消泡剤を用いて気泡生成を抑制してもよく、また、培養物の好気状態を維持するために、培養物内に酸素または酸素含有気体を注入したり、嫌気及び微好気の状態を維持するために気体を注入せず、あるいは窒素、水素または二酸化炭素ガスを注入してもよい。培養温度は、25〜40℃、具体的には、30〜37℃を維持してもよいが、これに制限されない。培養期間は、所望の有用物質の生産量が収得できるまで続けてもよく、具体的には、約0.5時間〜60時間培養してもよいが、これに制限されない。また、用いられる培養用培地は炭素供給源としては、糖及び炭水化物(例えば、グルコース、スクロース、ラクトース、フルクトース、マルトース、糖蜜、でん粉及びセルロース)、油脂及び脂肪(例えば、大豆油、ヒマワリの種油、ピーナッツ油及びココナッツ油)、脂肪酸(例えば、パルミチン酸、ステアリン酸及びリノール酸)、アルコール(例えば、グリセロール及びエタノール)及び有機酸(例えば、酢酸)などを個別に用いたりまたは混合して用いてもよいが、これに制限されない。窒素供給源としては、窒素含有有機化合物(例えば、ペプトン、酵母抽出液、肉汁、麦芽抽出液、トウモロコシ浸漬液、大豆粕粉及びウレア)、または無機化合物(例えば、硫酸アンモニウム、塩化アンモニウム、リン酸アンモニウム、炭酸アンモニウム及び硝酸アンモニウム)などを個別に用いたりまたは混合して用いてもよいが、これに制限されない。リン供給源としては、リン酸二水素カリウム、リン酸水素二カリウム、これに相応するナトリウム含有塩などを個別に用いたりまたは混合して用いてもよいが、これに制限されない。また、培地には他の金属塩(例えば、硫酸マグネシウムまたは硫酸鉄)、アミノ酸及びビタミンのような必須成長促進物質を含んでもよい。
【0047】
本出願のタガトース生産用組成物は、フルクトースを直接タガトースに転換させるフルクトース−4−エピメラーゼ活性を有するタガトース−ビスリン酸アルドラーゼ;これを発現する微生物または前記微生物の培養物を含むものであって、基質であるフルクトース以外のほかの酵素を含まないことを特徴とすることができる。
【0048】
本出願のタガトース生産用組成物は、当該タガトース生産用組成物に通常用いられる任意の適切な賦形剤をさらに含んでもよい。このような賦形剤としては、例えば、保存剤、湿潤剤、分散剤、懸濁化剤、緩衝剤、安定化剤または等張化剤などであってもよいが、これに限定されるものではない。
【0049】
本出願のタガトース生産用組成物は、金属をさらに含んでもよい。一具現例では、本出願の金属は2価陽イオンを含む金属であってもよい。具体的には、本出願の金属はニッケル(Ni)、マグネシウム(Mg)またはマンガン(Mn)であってもよい。より具体的には、本出願の金属は金属イオンまたは金属塩であってもよく、より具体的には、本出願の金属はマンガン、ニッケルからなる群から選択されるものであってもよく、さらに具体的には、前記金属塩は、MgSO
4、NiSO
4、NiCl
2、MgCl
2、MnCl
2またはMnSO
4であってもよい。
【0050】
本出願の他の一つの様態は、カルディリネア(Caldilinea)sp.由来のタガトース−ビスリン酸アルドラーゼ(tagatose−bisphosphate aldolase);これを発現する微生物;または前記微生物の培養物のうちの1つ以上とフルクトースを接触させ、前記フルクトースをタガトースに転換する段階を含むタガトースの製造方法を提供する。前記用語、タガトース−ビスリン酸アルドラーゼ、微生物は前述した通りである。
【0051】
一具現例として、本出願の接触は、pH5.0〜pH9.0の条件で、30℃〜80℃の温度条件で、及び/または0.5時間〜48時間行ってもよい。
【0052】
具体的には、本出願の接触は、pH6.0〜pH9.0の条件またはpH7.0〜pH9.0の条件で行ってもよい。また、本出願の接触は35℃〜80℃、40℃〜80℃、45℃〜80℃、50℃〜80℃、55℃〜80℃、60℃〜80℃、30℃〜70℃、35℃〜70℃、40℃〜70℃、45℃〜70℃、50℃〜70℃、55℃〜70℃、60℃〜70℃、30℃〜65℃、35℃〜65℃、40℃〜65℃、45℃〜65℃、50℃〜65℃、55℃〜65℃、30℃〜60℃、35℃〜60℃、40℃〜60℃、45℃〜60℃、50℃〜60℃または55℃〜60℃の温度条件で行ってもよい。また、本出願の接触は0.5時間〜36時間、0.5時間〜24時間、0.5時間〜12時間、0.5時間〜6時間、1時間〜48時間、1時間〜36時間、1時間〜24時間、1時間〜12時間、1時間〜6時間、3時間〜48時間、3時間〜36時間、3時間〜24時間、3時間〜12時間、3時間〜6時間、6時間〜48時間、6時間〜36時間、6時間〜24時間、6時間〜12時間、12時間〜48時間、12時間〜36時間、12時間〜24時間、18時間〜48時間、18時間〜36時間、または18時間〜30時間行ってもよい。
【0053】
一具現例として、本出願の接触は金属の存在下で行ってもよい。用いられてもよい金属は、前述した様態のとおりである。
【0054】
別の具現例として、本出願のタガトースの製造方法は、フルクトースに金属イオンまたは金属塩をさらにもっと接触させて、フルクトースをタガトースに転換させることを含んでもよい。具体的には、前記金属はマンガン、ニッケルからなる群から選択される1つ以上の金属であってもよい。
【0055】
本出願の製造方法は、製造されたタガトースを分離及び/または精製する段階をさらに含んでもよい。前記分離及び/または精製は、本出願の技術分野で通常用いられる方法を用いてもよく、非限定的な例として、透析、沈殿、吸着、電気泳動、イオン交換クロマトグラフィー及び分別結晶などを用いてもよい。前記精製は1つの方法だけ行ってもよく、2つ以上の方法を一緒に行ってもよい。
【0056】
また、本出願の製造方法は、前記分離及び/または精製する段階の前後に脱色及び/または脱塩を行う段階をさらに含んでもよい。前記脱色及び/または脱塩を行うことにより、より品質に優れたタガトースを得ることができる。
【0057】
他の具現例として、本出願の製造方法は、本出願のタガトースに転換する段階、分離及び/または精製する段階、または脱色及び/または脱塩する段階の後にタガトースを結晶化する段階をさらに含んでもよい。前記結晶化は、通常用いる結晶化方法を用いて行ってもよい。例えば、冷却結晶化方法を用いて結晶化を行ってもよい。
【0058】
別の具現例として、本出願の製造方法は、前記結晶化する段階の前にタガトースを濃縮する段階をさらに含んでもよい。前記濃縮は結晶化の効率を高めうる。
【0059】
別の具現例として、本出願の製造方法は、本出願の分離及び/または精製する段階の後、未反応のフルクトースを本出願の酵素、前記酵素を発現する微生物または前記微生物の培養物と接触させる段階、本出願の結晶化する段階の後に結晶が分離された母液を前記分離及び/または精製段階に再利用する段階、またはその組み合わせをさらに含んでもよい。
【0060】
以下、本出願の実施例及び実験例を介してより詳細に説明する。しかし、これらの実施例及び実験例は、本出願を例示的に説明するためのもので、本出願の範囲がこれらの実施例及び実験例に限定されるものではない。
【0061】
実施例1:新規なタガトース−ビスリン酸アルドラーゼをコードする遺伝子を含む組換え発現ベクター及び形質転換体の製造
新規な耐熱性のフルクトース−4−エピメラーゼを提供するために、代表的にカルディリネア属であるカルディリネア・アエロフィラ(Caldilinea aerophila)DSM 14535由来のタガトース−ビスリン酸アルドラーゼの遺伝子情報を取得し、大腸菌で発現可能なベクター及び形質転換微生物を製造した。
【0062】
具体的には、KEGG(Kyoto Encyclopedia of Genes and Genomes)及びNCBI(National Center for Biotechnology Information)に登録されたカルディリネア・アエロフィラDSM 14535の遺伝子配列からタガトース−ビスリン酸アルドラーゼの遺伝子配列を選抜し、前記微生物のアミノ酸配列(配列番号1)と塩基配列(配列番号2)の情報をもとに、前記酵素の塩基配列を含む大腸菌で発現可能な組換えベクターpBT7−C−His−CJ_CA_F4Eを製造した((株)バイオニア、大韓民国)。
【0063】
前記組換えベクターは、熱ショック(heat shock transformation、Sambrook and Russell:Molecular cloning、2001)によって大腸菌BL21(DE3)に形質転換した後、50%グリセロールに冷凍保管して使用した。前記形質転換した菌株をE. coli BL21(DE3)/CJ_CA_F4Eと命名し、ブダペスト条約下の国際寄託機関である韓国微生物保存センター(Korean Culture Center of Microorganisms、KCCM)に2017年08月11日付けで寄託し、寄託番号KCCM12094Pを付与された。
【0064】
実施例2:組換え酵素の製造及び精製
前記実施例1で製造した形質転換菌株であるE. coli BL21(DE3)/CJ_CA_F4Eから組換え酵素を製造するために、形質転換した微生物をアンピシリン(ampicillin)抗生剤が含まれたLB液体培地5mLを含む培養チューブに接種し、600nmで吸光度が2.0になるまで37℃の振とう培養器で種菌培養を行った。前記種菌培養の結果、得られた培養液をLBとタンパク質の発現調節因子である乳糖とが含まれた液体培地を含む培養フラスコに接種して本培養を行った。前記種菌培養及び本培養は、攪拌速度180rpm及び37℃の条件で行った。次に、前記培養液を8,000rpmで4℃で20分間遠心分離した後、菌体を回収した。前記回収された菌体を50mM Tris−HCl(pH8.0)緩衝溶液で2回洗浄し、10mMイミダゾール(imidazole)と300mM NaClが含まれている50mM NaH
2PO
4(pH8.0)緩衝溶液に再懸濁した。前記再懸濁された菌体を細胞破砕機(sonicator)を用いて破砕し、13,000rpmで4℃で20分間遠心分離した後、上澄み液のみを取った。前記上澄み液をHis−tag親和性クロマトグラフィーを用いて精製して、20mMイミダゾール、及び300mM NaClを含有する50mM NaH
2PO
4(pH8.0)緩衝溶液を充填剤の10倍の液量で流して非特異的結合が可能なタンパク質を除去した。続いて、250mMイミダゾール及び300mM NaClを含有する50mM NaH
2PO
4(pH8.0)緩衝溶液をさらに流して溶出精製した後、50mM Tris−HCl(pH8.0)緩衝溶液で透析し、酵素の特性解析のために精製酵素CJ_CA_F4Eを確保した。
【0065】
実施例3:フルクトースからタガトースへの転換及び活性の確認
前記実施例2で確保した本出願の組換え酵素CJ_CA_F4Eのフルクトース−4−エピメラーゼ活性を測定するために、30重量%フルクトースに50mM Tris−HCl(pH8.0)、1mM NiSO
4と20mg/mL CJ_CA_F4Eを添加して、60℃で10時間反応させた。
【0066】
反応後に残存するフルクトース及び生成物であるタガトースの定量はHPLCを用いて分析した。HPLC分析は、Shodex Sugar SP0810カラムを使用し、カラム温度は80℃にして、移動相である水の流速は1mL/minで流した(
図1)。
【0067】
実験の結果、本出願のCJ_CA_F4Eの酵素反応によるフルクトースからタガトースへの転換率は1.6%と確認された。
【0068】
実施例4:温度による組換え酵素の活性の確認
前記実施例2で製造した酵素であるCJ_CA_F4Eのフルクトース−4−エピメラーゼ活性に対する温度の影響力を調査するために、10重量%フルクトースを含む50mM Tris−HCl(pH8.0)緩衝溶液に、1mg/mLのCJ_CA_F4Eを添加して、45℃、50℃、55℃、60℃、65℃及び70℃の様々な温度で3時間反応させた。前記反応完了後、反応物のタガトースはHPLCを用いて定量分析した。
【0069】
実験の結果、CJ_CA_F4Eは60℃で最大活性を示し、55℃〜65℃で最大活性の80%以上、すべての温度範囲で最大活性の40%以上を維持した(
図2)。
【0070】
実施例5:金属イオン添加による本出願組換え酵素の活性確認
前記実施例2で製造した酵素であるCJ_CA_F4Eのフルクトース−4−エピメラーゼ活性の金属イオン別の影響力を確認するために、10重量%フルクトースを含む50mM Tris−HCl(pH8.0)緩衝溶液に、1mg/mLのCJ_CA_F4Eと各1mMの様々な金属イオン(ZnSO
4、MgCl
2、MnCl
2、NH
4Cl、CaCl
2、Na
2SO
4、CuSO
4、MgSO
4、MnSO
4、(NH
4)
2SO
4、またはNiSO
4)を添加して、60℃で5時間反応させた。反応完了後、反応物のタガトースをHPLCを用いて定量分析した。
【0071】
実験の結果、CJ_CA_F4Eは MnCl
2、 MnSO
4及びNiSO
4それぞれの添加によって活性が増加することが示され、マンガンまたはニッケルイオンが活性を増加させることを確認した(
図3)。
【0072】
以上の説明から、本発明が属する技術分野の当業者は、本発明がその技術的思想や必須の特徴を変更せず、他の具体的な形態で実施されうることを理解できるだろう。これに関連し、以上で記述した実施例はすべての面で例示的なものであり、限定的なものではないものと理解しなければならない。本発明の範囲は、前記詳細な説明より、後述する特許請求の範囲の意味及び範囲、そしてその等価概念から導き出されるすべての変更または変形された形態が本発明の範囲に含まれるものと解釈されるべきである。