特許第6919793号(P6919793)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6919793
(24)【登録日】2021年7月28日
(45)【発行日】2021年8月18日
(54)【発明の名称】ガスケットおよび医療用注射器
(51)【国際特許分類】
   A61M 5/315 20060101AFI20210805BHJP
   A61M 5/28 20060101ALI20210805BHJP
【FI】
   A61M5/315 512
   A61M5/28
【請求項の数】7
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2016-82321(P2016-82321)
(22)【出願日】2016年4月15日
(65)【公開番号】特開2017-189528(P2017-189528A)
(43)【公開日】2017年10月19日
【審査請求日】2019年2月4日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002310
【氏名又は名称】特許業務法人あい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】増山 義和
(72)【発明者】
【氏名】中野 宏昭
【審査官】 川島 徹
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2016/0101239(US,A1)
【文献】 実開平03−063344(JP,U)
【文献】 特開2015−146871(JP,A)
【文献】 特開2014−47828(JP,A)
【文献】 特開2016−33401(JP,A)
【文献】 特表2004−525011(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 5/315
A61M 5/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
弾性体で構成された本体と、この本体の表面に積層された不活性樹脂フィルムとを含む医療用注射器に用いられるガスケットであって、
前記ガスケットは、中心軸方向に延びる短い円柱形状をなし、当該円柱形状の外側周面に、シリンジの内周面と摺接する摺接部を備えた環状リブを3つ有し、3つの環状リブは、前記ガスケットの先端から後端に向かって、前記中心軸方向に所定の間隔を空けて配列されており、
最も先端に位置する最先端の環状リブの摺接部の前記中心軸方向の長さは、前記円柱形状の外側周面の前記中心軸方向の長さに対して、1〜25%の割合を占めており、
前記最先端の環状リブの後方側に位置する第2の環状リブ及びさらにその後方側に位置する第3の環状リブの各摺接部の前記中心軸方向の長さは、それぞれ、前記円柱形状の外側周面の前記中心軸方向の長さに対して、0〜15%の割合を占めており、
前記最先端の環状リブを除く残りの各環状リブは、前記シリンジに挿入された状態において、径方向の圧縮率が、前記最先端の環状リブの径方向の圧縮率に比べて小さく、
前記最先端の環状リブの摺接部の直径はDとされ、前記第2の環状リブの摺接部の直径はDとされ、前記第3の環状リブの摺接部の直径はDとされていて、
>D 及び D>D
の関係を満足していることを特徴とする、ガスケット。
【請求項2】
前記最先端の環状リブには、その摺接部に、レーザー加工によって形成された円周方向に延びる円環溝が1本以上設けられていることを特徴とする、請求項1に記載のガスケット。
【請求項3】
前記円環溝は、当該溝の両縁に未加工部よりも盛り上がった凸部が備わっており、当該凸部の高さが2〜100μmであることを特徴とする、請求項2に記載のガスケット。
【請求項4】
前記円環溝は、溝幅が200μm以下であることを特徴とする、請求項2または3に記載のガスケット。
【請求項5】
前記最先端の環状リブは、前記シリンジに挿入された状態において、径方向の圧縮率が1〜8%であることを特徴とする、請求項1〜のいずれか一項に記載のガスケット。
【請求項6】
前記不活性樹脂フィルムは、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、エチレンテトラフルオロエチレン共重合体フィルム(ETFE)、または、超高分子量ポリエチレン(UHWPE)であることを特徴とする、請求項1〜のいずれか一項に記載のガスケット。
【請求項7】
筒状をしたシリンジバレルと、
前記シリンジバレルに打柱される請求項1〜のいずれか一項に記載のガスケットと、を含む医療用注射器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、医療用注射器に用いられるガスケットおよび当該ガスケットを有する医療用注射器に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、使用時の簡便性に優れ、誤用を無くす意味において、予め薬液がシリンジバレル内に充填されたプレフィルドシリンジの使用が拡大している。これらのプレフィルドシリンジのゴム部材は使用されるまで薬液に直接接しているため、耐薬品性、耐ガス透過性、耐水蒸気透過性、耐老化性等が優れたブチルゴム系のガスケット、ノズルキャップが多く使用されている。
【0003】
しかし、ゴム材質からの溶出物や、ゴム材質との相互作用により影響を受け易いバイオ製剤等もある。また、ブチル系ゴム部材では、ガスケットの摺動性改善、ノズルキャップの固着防止の目的で、シリンジバレルの内壁、ガスケット、ノズルキャップのゴム表面に潤滑剤として、オイルタイプおよび硬化タイプのシリコーンが塗布されることがある。製剤の種類によっては、バレル内壁やゴム部材からシリコーンコート剤が脱落して異物となり、製剤品質に重大な悪影響を与える場合がある。
【0004】
そこで、その対策として、フッ素樹脂フィルム等をゴムに積層することにより、シリコーンを使用しない製品が開発され、硝子製シリンジまたは樹脂製プレフィルドシリンジに適用されている。
ガスケットに使用する積層フィルムとしてのフッ素樹脂フィルムは、耐薬品性に優れ、摩擦係数が最も小さいPTFEが適している。シリコーン潤滑剤が使用可能な場合は、ETFEフィルム材質の積層でも問題はない。PTFEの多くはスカイビング法、キャスティング法等により製造されている。
【0005】
接液面、シリンジ内壁と接する摺動シール部にフッ素樹脂フィルムを積層したガスケットでは、気密性と摺動抵抗が課題となる。特にスカイビング法で製造されたフィルムは表面粗さが粗いのでシリンジ内壁との気密性に問題が生じ易い。
気密性を悪くする要因として、上記の積層されたフィルムの平滑性(表面粗さ)および、シリンジ内径に対するガスケットの圧縮率に影響するシリンジ内径バラツキがある。シリンジ内径公差が、樹脂シリンジでは±0.1mm以内の高精度であるが、硝子シリンジでは生地管の内径バラツキが大きく、5mL以下のサイズでも内径公差は±0.15mmと大きい。
【0006】
また、表面粗さがRa0.05μm以下のPTFEフィルムを積層しても液モレに問題が生ずることがある。これはPTFEフィルムをPTFEの融点230℃以下である成型温度170℃で積層成型したにも拘らず、積層フィルムの表面には金型表面の微細な凹凸痕が転写されてシール性に影響するためである。
気密性および摺動抵抗の課題を解決するために、ガスケットの形状を、円柱状のたいこ形状にしたもの(たとえば、特許文献1)や、円柱状の本体周面に複数の環状リブを形成したもの(たとえば、特許文献2、特許文献3の図3(e)を参照)が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平9−206377号公報
【特許文献2】特許第4550365号公報
【特許文献3】特許第3387775号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、従来のガスケット形状は、いずれのものであっても、気密性および摺動抵抗が完全に解決されているとはいい難かった。
そこで、本発明は、摺動抵抗値を下げ、かつ、液封止性の高い不活性樹脂フィルムで積層されたガスケットを提供することを主たる目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するためのこの発明は、以下の構成を有している。
請求項1に記載の発明は、弾性体で構成された本体と、この本体の表面に積層された不活性樹脂フィルムとを含む医療用注射器に用いられるガスケットであって、前記ガスケットは、中心軸方向に延びる短い円柱形状をなし、当該円柱形状の外側周面に、シリンジの内周面と摺接する摺接部を備えた環状リブを3つ有し、3つの環状リブは、前記ガスケットの先端から後端に向かって、前記中心軸方向に所定の間隔を空けて配列されており、最も先端に位置する最先端の環状リブの摺接部の前記中心軸方向の長さは、前記円柱形状の外側周面の前記中心軸方向の長さに対して、1〜25%の割合を占めており、前記最先端の環状リブの後方側に位置する第2の環状リブ及びさらにその後方側に位置する第3の環状リブの各摺接部の前記中心軸方向の長さは、それぞれ、前記円柱形状の外側周面の前記中心軸方向の長さに対して、0〜15%の割合を占めており、前記最先端の環状リブを除く残りの各環状リブは、前記シリンジに挿入された状態において、径方向の圧縮率が、前記最先端の環状リブの径方向の圧縮率に比べて小さく、前記最先端の環状リブの摺接部の直径はDとされ、前記第2の環状リブの摺接部の直径はDとされ、前記第3の環状リブの摺接部の直径はDとされていて、D>D 及び D>Dの関係を満足していることを特徴とする、ガスケットである。
【0010】
請求項2に記載の発明は、前記先端の環状リブには、その摺接部に、レーザー加工によって形成された円周方向に延びる円環溝が1本以上設けられていることを特徴とする、請求項1に記載のガスケットである。
請求項3に記載の発明は、前記円環溝は、当該溝の両縁に未加工部よりも盛り上がった凸部が備わっており、当該凸部の高さが2〜100μmであることを特徴とする、請求項2に記載のガスケットである。
【0011】
請求項4に記載の発明は、前記円環溝は、溝幅が200μm以下であることを特徴とする、請求項2または3に記載のガスケットである
【0012】
請求項に記載の発明は、前記最先端の環状リブは、前記シリンジに挿入された状態において、径方向の圧縮率が1〜8%であることを特徴とする、請求項1〜のいずれか一項に記載のガスケットである。
【0013】
請求項に記載の発明は、前記不活性樹脂フィルムは、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、エチレンテトラフルオロエチレン共重合体フィルム(ETFE)、または、超高分子量ポリエチレン(UHWPE)であることを特徴とする、請求項1〜のいずれか一項に記載のガスケットである。
請求項に記載の発明は、筒状をしたシリンジバレルと、前記シリンジバレルに打柱される請求項1〜のいずれか一項に記載のガスケットと、を含む医療用注射器である。
【発明の効果】
【0014】
請求項1記載の発明によれば、先端の環状リブの摺接部が薬液の封止を確実に行うと共に、その摺動抵抗も低い。よって、封止性および操作性を両立させたガスケットとすることができる。
請求項2、3および4記載の発明によれば、円環溝の両縁に形成された凸部により、より封止性が向上したガスケットを提供することができる。
【0015】
求項記載の発明によれば、封止性および摺動性を両立させたガスケットとすることができる。
請求項記載の発明によれば、薬液に対する影響がないガスケットを作ることができる。
【0016】
請求項記載の発明によれば、長期保存に耐え、操作性、封止性のよい医療用注射器、特にプレフィルドシリンジを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1は、この発明の一実施形態に係るガスケットの半断面正面図である。
図2図2は、図1におけるA部分の拡大図である。
図3図3は、この発明の一実施形態に係るガスケットが装着された医療用注射器の一例を示す半断面正面図である。
図4図4は、従来のガスケットの外観形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下には、図面を参照して、この発明の実施形態について具体的に説明をする。
図1は、この発明の一実施形態に係るガスケット10の半断面正面図で、右半分が断面で示されている。
図1を参照して、この発明の一実施形態に係るガスケット10は、弾性体で構成された本体11と、本体11の表面に積層された不活性樹脂フィルム12とを有している。本体11を構成する弾性体は、ゴム材質のものを使用でき、合成ゴム、熱可塑性エラストマまたはこれらをブレンドした材料で形成することができる。より具体的には、ブチルゴム、ハロゲン化ブチルゴム、スチレンブタジエンゴム、ブタジエンゴム、エピクロルヒドリンゴム、ネオプレンゴム、エチレンプロピレン系ゴム等を用いて作ることができる。
【0019】
本体11の表面に積層された不活性樹脂フィルム12は、本体11からの成分の移行を阻止でき、かつ、ゴムよりも摺動性の優れるもの、すなわちゴムより摩擦係数の小さいフィルムであれば、その種類は特に限定されない。一例として、医療用途に実績のある超高分子量ポリエチレンやフッ素系樹脂のフィルムを挙げることができ、より具体的なものとして、次の3種類が挙げられる。
【0020】
(1)ホモPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)のスカイビング法フィルム(たとえば日本バルカー工業株式会社製の商品名「バルフロン」)、
(2)変性PTFE(テトラフルオロエチレンモノマーと数%のパーフルオロアルコキシドモノマーとの共重合体)のスカイビング法フィルム(たとえば日本バルカー工業株式会社製の商品名「ニューバルフロン」)、
(3)超高分子量ポリエチレン(たとえば作新工業製のスカイビング法フィルムの商品名「ニューライトNL−W」)等を使用することができる。
【0021】
再び図1を参照して、ガスケット10は、短い円柱形状をなしており、その先端面17は、たとえば軸中心部が突出する鈍角の山形形状をしている。また、後端面18から軸方向に堀り込まれた雌ねじ形状の嵌合凹部19が形成されている。嵌合凹部19は、ガスケット10を操作する際に用いるプランジャのヘッド部がねじ込まれ得る構成である。
ガスケット10の円柱形状の外側周面(摺動側面部)20には、シリンジの内周面と摺接する3つの環状リブ13、14、15が、ガスケット10の先端面17側から後端面18側に向かって軸方向に所定の間隔をあけて配列されている。このうち、先端の環状リブ13は、シリンジの内周面と摺接する摺接部16を有し、摺接部16の直線長さ(軸方向長さ)Hは、円柱形状の外側周面20の直線長さ(外側周面20の軸方向長さ)Hに対して、1〜25%の割合を占めている。
【0022】
すなわち、H:H=(1〜25):100
の寸法関係を有している。
これがこの実施形態の特徴の1つである。
軸方向に見て、先端の環状リブ13の下方側には第2の環状リブ(中間環状リブ)14が設けられており、さらにその下方側には第3の環状リブ(末端環状リブ)15が設けられている。この実施形態では、中間環状リブ14も末端環状リブ15も、その断面視が円弧状に膨らんだリブであり、シリンジの内周面と摺接する摺接部16は直線長さ(軸方向長さ)を有さずシリンジの内周面とほぼ点接触で摺接する環状リブとして構成されている。
【0023】
より一般的に述べれば、先端環状リブ13を除く残りの環状リブである中間環状リブ14および末端環状リブ15の摺接部16の直線長さ(軸方向長さ)HおよびHは、外側周面20の直線長さ(外側周面の軸方向長さ)Hに対して、それぞれ、0〜15%の割合を占めていればよい。
すなわち、H:H=(0〜15):100
かつ、
:H=(0〜15):100
の寸法関係であることが望ましい。
【0024】
さらに、先端環状リブ13の直径をD、中間環状リブ14の直径をD、末端環状リブ15の直径をDとしたとき、
>D
>D
の関係を有する形状とされている。
【0025】
また、先端環状リブ13の径方向の圧縮率は、1〜8%とされており、中間環状リブ14および末端環状リブ15の各径方向の圧縮率は、先端環状リブ13の径方向の圧縮率に比べてやや小さくされている。先端環状リブ13と中間環状リブ14および末端環状リブ15との圧縮率の調整は、本体11に穿設された嵌合凹部19の内径の大きさ等によって行うことができる。
【0026】
なお、この実施形態では、先端環状リブ13以外に、中間環状リブ14および末端環状リブ15という2つの環状リブを設けた例を説明しているが、先端環状リブ13以外の環状リブは、2つに限定されるものではなく、1つであってもよいし、3つ以上であってもよい。
図2は、図1におけるA部分の拡大図である。
【0027】
図1および図2を参照して、先端環状リブ13の摺接部16には、レーザー加工によって形成された円周方向に延びる円環溝22が、1本以上設けられているのが望ましい。
この円環溝22について、図2を参照してより具体的に説明をする。
溝22は、不活性樹脂フィルム12の表面から窪まされた溝となっており、本体11は溝22に応じて窪んだりしてはいない。すなわち、溝22は、本体11の形状には全く影響を与えておらず、不活性樹脂フィルム12にのみ形成された溝となっている。
【0028】
溝22が形成された領域は、不活性樹脂フィルム12の厚みが、溝22が形成されていない部分の厚みTに比べて薄くなっている。
溝22の幅Wは、200μm以下が望ましく、好ましくは100μm以下、より好ましくは50μm以下であればよい。
溝22の両縁には、不活性樹脂フィルム12の元の厚みTよりも若干厚くなる凸部21が形成されている。この凸部21は、レーザー光により溝22を加工した際に、レーザー光により不活性樹脂フィルム12の表面が蒸発もしくは分解され、その素材の一部が溝の両縁に再蓄積されることにより形成されたものである。
【0029】
凸部21の高さは、2〜100μmであることが、局所的に適切な面圧を得る上で、望ましい。
図3は、この発明の一実施形態に係るガスケット10が装着された医療用注射器(プレフィルドシリンジ)30の一例を示す半断面正面図である。
プレフィルドシリンジ30は、円筒形状のシリンジバレル31と、シリンジバレル31の先端に装着された封止キャップ32と、シリンジバレル31の後端から打栓されたガスケット10とを含んでいる。シリンジバレル31内には、所定の薬液が充填されている。
【0030】
使用時には、封止キャップ32が取り外されて注射針が装着され、ガスケット10の後端面からプランジャ(図示せず)が螺合され、プランジャが操作されてガスケット10が摺動されることにより、シリンジバレル31内の薬液が注射針を介して投与される。
かかる構成において、ガスケット10は、先端環状リブ13が適切に薬液の封止を行うとともに、先端環状リブ13の摺動抵抗も比較的少ないので、摺動性に優れ、操作性が良く、しかも封止性(気密性および液密性)の良い医療用注射器30とすることができる。
【実施例】
【0031】
実施例1、実施例2、実施例3および比較例2として、図1に示す形態のガスケットを製造した。また、比較例1として、図4に示す形態のガスケットを製造した。製造したガスケットの材料の詳細は、次の通りである。
(1)本体11の材質
塩素化ブチルゴム材質(JISA 硬さ58度)
(2)不活性樹脂フィルム12の材質
変性PTFE
スカイビング法フィルム:日本バルカー工業株式会社製 商品名「ニューバルフロン」
フィルム厚さT=70μm 中心線平均粗面粗さ0.11μm
【0032】
(3)製造方法
塩素化ブチルゴム製未加硫ゴムシートに、PTFEスカイビング法、厚さ70μm、片面接着処理したフィルムを重ねて、成型金型上に置き、真空プレスで175℃で10分成型し加硫接着させた。
ガスケットは、1mL用COP樹脂シリンジ(シリンジバレルの内径6.35mm)に適する形態に形成した。
(4)レーザー光による加工
円環溝22の形成を、レーザー光による加工で行った。
使用装置:株式会社キーエンス製3−Axis二酸化炭素LaserMarker ML−Z9550Tを用い、波長9300nmのレーザー光を照射し、円環溝22を形成した。
(5)各実施例、比較例の形態、寸法は、次の通りである。
【0033】
[実施例1]
環状リブの数:3
:7.0mm
:6.65mm
:1.0mm
:6.6mm
:1.0mm
:6.6mm
:1.0mm
円環溝22:無
[実施例2]
環状リブの数:3
:7.0mm
:6.6mm
:1.5mm
:6.55mm
:0.5mm
:6.55mm
:0.5mm
円環溝22:有
[実施例3]
環状リブの数:3
:7.0mm
:6.7mm
:0.5mm
:6.55mm
:0mm
:6.55mm
:0mm
円環溝22:有
[比較例1]
環状リブの数:2
:7.0mm
:6.6mm
:3.0mm
:6.6mm
:2.0mm
円環溝22:無
[比較例2]
環状リブの数:3
:7.0mm
:6.6mm
:1.5mm
:6.6mm
:1.0mm
:6.6mm
:1.0mm
円環溝22:無
【0034】
<試験方法>
(1)摺動性
加工後の製品をシリンジバレルに挿入し、プランジャで100mm/minの速度で押し込む際に要する力を精密万能試験機(AG−X 100kN、株式会社島津製作所製)を用いて計測した。摺動距離10mmから15mmでの摺動に要する力の平均値を摺動抵抗として記録した。
(2)薬液の封止性
成型後の製品をシリンジバレルに打栓後、試験液を充填し、反対側をキャップした。40℃にて1週間静置後、ビデオマイクロスコープ(ライカマイクロシステムズ株式会社製DVM5000)にて対物レンズ50倍で観察し、液漏れの有無を測定した。20個の製品を観察し、試験液がガスケットの最大径D部分を越えたものは、液漏れと判定し、その個数を記載した。2以下を良好とした。試験液は水に色素(メチレンブルー シグマアルドリッチジャパン合同会社製)0.2g/L、および界面活性剤(ポリソルベート80 日油株式会社製)1.0g/L加えたものを使用し、シリンジバレルはシクロオレフィン樹脂製 内径φ6.35mmを使用した。
<総合評価>
表1に、総合評価を示す。また、表2に、評価基準を示す。
【0035】
【表1】
【0036】
【表2】
【符号の説明】
【0037】
10 ガスケット
11 本体
12 不活性樹脂フィルム
13、14、15 環状リブ
16 摺接部
17 先端面
18 後端面
19 嵌合凹部
20 円柱形状の外側周面
21 凹部
22 円環溝
30 医療用注射器(プレフィルドシリンジ)
31 シリンジバレル
32 封止キャップ
図1
図2
図3
図4