特許第6919915号(P6919915)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6919915ペロブスカイト/ポリマー複合発光材料、製造方法及び用途
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6919915
(24)【登録日】2021年7月28日
(45)【発行日】2021年8月18日
(54)【発明の名称】ペロブスカイト/ポリマー複合発光材料、製造方法及び用途
(51)【国際特許分類】
   C09K 11/66 20060101AFI20210805BHJP
   C09K 11/02 20060101ALI20210805BHJP
   C09K 11/08 20060101ALI20210805BHJP
   C09K 11/75 20060101ALI20210805BHJP
   C09K 11/74 20060101ALI20210805BHJP
   C09K 11/61 20060101ALI20210805BHJP
   B82Y 20/00 20110101ALI20210805BHJP
   B82Y 40/00 20110101ALI20210805BHJP
【FI】
   C09K11/66
   C09K11/02 Z
   C09K11/08 A
   C09K11/75
   C09K11/74
   C09K11/61
   B82Y20/00
   B82Y40/00
【請求項の数】2
【全頁数】34
(21)【出願番号】特願2019-194263(P2019-194263)
(22)【出願日】2019年10月25日
(62)【分割の表示】特願2017-559529(P2017-559529)の分割
【原出願日】2016年5月13日
(65)【公開番号】特開2020-29559(P2020-29559A)
(43)【公開日】2020年2月27日
【審査請求日】2019年10月25日
(31)【優先権主張番号】201510245596.6
(32)【優先日】2015年5月14日
(33)【優先権主張国】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】520186174
【氏名又は名称】致晶科技(北京)有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110002262
【氏名又は名称】TRY国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】鍾 海政
(72)【発明者】
【氏名】周 青超
(72)【発明者】
【氏名】張 峰
(72)【発明者】
【氏名】黄 海龍
【審査官】 井上 恵理
(56)【参考文献】
【文献】 特許第6609326(JP,B2)
【文献】 特開2008−227330(JP,A)
【文献】 特開2014−082377(JP,A)
【文献】 特開2014−156580(JP,A)
【文献】 特開2007−302501(JP,A)
【文献】 特表2013−505346(JP,A)
【文献】 国際公開第2014/196319(WO,A1)
【文献】 GUANGRU, L. et al.,Efficient Light-Emitting Diodes Based on Na.nocrystalline Perovskite in a Dielectric Polymer Matrix,NANO LETTERS,米国,(2015.02.24), No.15,p.2640-2644
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09K 11/00− 11/89
H01L 33/00− 33/64
C07F 1/00− 5/06
C07F 7/00− 7/30
C07F 9/00− 19/00
B82Y 52/00− 99/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
マトリックス、ペロブスカイト型ナノ粒子及び表面配位子を含み、前記ペロブスカイト型ナノ粒子が前記マトリックスに分散し、前記ペロブスカイト型ナノ粒子と前記マトリックスとの質量比が1:(1〜50)であり、
前記ペロブスカイト型ナノ粒子がコアを有し、前記コアの構造式がCsABCH=NHNHPbClBr3−x(0≦x≦3)又はRNHAB、又は(RNHABであり、ここで、AとBは配位八面体構造を構成し、RNH又はRNHは前記八面体構造の隙間に充填され、Rはメチルであり、Rは有機分子基であり、AはGe、Sn、Pb、Sb、Bi、Cu又はMnであり、BがCl、Br、Iから選択される少なくとも1種であり、
前記Rが、長鎖有機分子基、エチル基又はアリール基であり、又は、前記Rが、炭素数が4を超える飽和アルキル基又は不飽和アルキル基であり、
前記マトリックスがポリマーで構成され、前記ポリマーがポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリフッ化ビニリデン−トリフルオロエチレン共重合体(P(VDF−TrFE))、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリ酢酸ビニル(PVAc)、セルロースアセテート(CA)、シアノセルロース(CNA)、ポリスルホン(PSF)の少なくとも1つを含み前記表面配位子が前記コアの表面に形成され、前記表面配位子が有機酸又は長鎖有機アミンであり、前記有機酸が、炭素数が少なくとも3である飽和アルカン酸又は不飽和アルカン酸を含み、前記長鎖有機アミンが炭素数4〜24のアルキルアミン又は芳香族アミンであることを特徴とする複合発光材料。
【請求項2】
トリックスを第1有機溶媒に溶解させ、第1溶液を得るステップ(1)であって、前記マトリックスと前記第1有機溶媒との質量比が1:(1〜50)となるステップ(1)と、
無機金属ハロゲン化物及び有機アミンハロゲン化物塩を第2有機溶媒に溶解させ、第2溶液を得るステップ(2)であって、前記無機金属ハロゲン化物と前記有機アミンハロゲン化物塩とのモル比が1:(0.1〜3)となり、前記第2有機溶媒と前記無機金属ハロゲン化物との質量比が1:(0.01〜0.1)となり、前記第2有機溶媒と、前記無機金属ハロゲン化物及び前記有機アミンハロゲン化物塩の和との質量比が1:(0.01〜0.1)であるステップ(2)と、
前記第1溶液と第2溶液を混合し、前駆体溶液を形成するステップ(3)であって、前記前駆体溶液において、前記第1溶液と前記第2溶液との質量比が1:(0.02〜1)であり、前記前駆体溶液に表面配位子をさらに加え、前記表面配位子が有機酸又は長鎖有機アミンであり、前記第2溶液と前記表面配位子との質量比が1:(0.001〜0.3)であるステップ(3)と、
前記前駆体溶液をテンプレートに移転するステップ(4)と、
前記前駆体溶液を有する前記テンプレートを乾燥し、複合発光材料を得るステップ(5)と、
を含み、前記第1有機溶媒及び前記第2有機溶媒が、それぞれ独立してN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、リン酸トリメチル(TMP)、リン酸トリエチル(TEP)、N−メチルピロリドン(NMP)、ジメチルアセトアミド(DMAc)からなる群から選択される少なくとも1つであり、前記第1有機溶媒及び前記第2有機溶媒が相溶することを特徴とする複合発光材料の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2015年5月14日に中国国家知識産権局に提出した、出願番号:201510245596.6の特許出願の優先権を主張し、参照によりその内容をすべてここに組み込む。
本発明は、材料分野に関し、具体的には、本発明は、ペロブスカイトナノ材料による複合材料及びその製造方法に関する。さらに具体的には、本発明は、ペロブスカイト/ポリマー複合発光材料、製造方法、及び用途に関する。
【背景技術】
【0002】
ペロブスカイトは、最初セラミック酸化物の1種を指していた。その岩石サンプルは、1839年にドイツの鉱物学者グスタフ・ローゼによって中央ロシアにあるウラル山脈で見つけられ、その主要成分がペロブスカイトにおけるチタン酸カルシウム(CaTiO)化合物であるため、名前が付けられたようである。結晶学において、その分子式における各化合物の比(1:1:3)を略称とするため、「113構造」とも呼ばれている。理想的なペロブスカイト構造の一般式はABXであり、ここで、AはK、Na、Pb2+、Ba2+等の20種類以上の元素、BはCr3+、Nb5+、Zr4+等の50種類以上の元素であってもよく、XはO、Cl、Br、I、S等のアニオンで構成されてもよい。中心金属カチオンBとアニオンXは、配位八面体構造を形成し、Aは八面体の隙間に存在し、BXアニオンの電荷を平衡させる作用を奏する。このような材料についての研究の進展に伴い、Aは伝統的な無機カチオンに加え、正に帯電した分子であってもよいことが見出された。有機−無機ハイブリッドペロブスカイト材料は、有機アミンで無機ペロブスカイトのAサイトの原子を置換して形成されたものである。ハイブリッドペロブスカイト構造については、有機アミンが無機八面体の隙間に充填されるために、寛容因子tの制限を満たすことが必要である。寛容因子が0.8≦t≦0.9の範囲内であれば、三次元のペロブスカイト構造を形成するので、有機アミン鎖が隙間に入るか否かはA、B、Xの原子半径に依存する。ハロゲン化鉛、ハロゲン化スズが無機層であるハイブリッドペロブスカイト構造では、三次元構造を形成可能なのは、短鎖アミンである場合が多く、一般的に、CHNHMX(M=Pb、Sn)、NHCH=NHSnI等である。Aが長鎖アミンカチオンである場合、隣接する八面体の間の隙間が収容するのに不十分であるため、無機層が広げられ、各八面体は、共通頂点を介して結合し、無限に伸長するネットワーク構造となるように拡張し、有機アミンは、アミンにおける水素及びハロゲンイオンにより水素結合を形成して無機層の空間内に伸長し、有機鎖同士はファンデルワールス力により互いに作用することで、有機層と無機層が交互に分布するハイブリッド構造を形成する。
【0003】
有機−無機ハイブリッドペロブスカイト材料は、分子レベルで有機材料及び無機材料の利点を組合せるため、無機成分としての良好な熱安定性、機械性能及び電磁的特性を有するだけでなく、有機成分としての加工・製膜の容易さ等の利点も有し、その無機層と有機層が交互に積層して形成する独特な量子井戸構造により、量子閉じ込め効果及び誘電閉じ込め効果の二重作用下で数多くの独特な光電性能を有する。様々なペロブスカイト材料では、CHNHPbIが高吸収係数及び大キャリア移動度を有するため、光起電分野において非常に大きな適用可能性を有することが発見された。2009年に、桐蔭横浜大学の宮坂力(Tsutomu Miyasaka)は、初めて薄いペロブスカイト(CHNHPbI)層を吸光層として色素増感太陽電池に使用することにより、光電変換率が3.8%であるペロブスカイト太陽電池を得た。その後、研究者らは、電池を改良して変換効率を倍増した。2012年8月に、グラッツェル(Gratzel)に主導される韓国成均館大学及びスイス連邦工科大学ローザンヌ校の実験室は、固体の正孔輸送材料(hole transport materials,HTM)を太陽電池に導入することにより、電池効率は10%に高められ、電池の不安定の問題が解決され、また、新型のペロブスカイト太陽電池は、従来の液体電解質電池よりも、パッケージされやすくなった。その後、ペロブスカイト太陽電池は、新しい研究の焦点となっていた。同年、オックスフォード大学のヘンリー・スナイス(Henry Snaith)は、電池におけるTiOをアルミニウム材(Al)に変更することにより、ペロブスカイトは、電池シートにおいて光の吸収層だけではなく、電荷を輸送する半導体材料としても作用するようになった。それによって、ペロブスカイト電池の変換効率は15%に向上した。2013年8月に、カリフォルニア大学ロサンゼルス校の華裔科学者である楊陽に主導される研究チームがScience定期刊行物に発表した最新の研究論文に記載されるように、ペロブスカイト構造層を改良し、より適切な電荷輸送材料を選択することにより、ペロブスカイト太陽電池の変換効率は最大19.3%に達しているが、それが現在報告されているもののうち、最も高い効率である。
【0004】
ペロブスカイト材料は、光起電分野に非常に大きな応用の将来性を有するだけでなく、その励起子発光の特性により、半値幅が狭く、発光の色純度が高く、電子注入に適する特徴を有するとともに、有機成分及び無機成分を調整することにより発光特性の制御を実現することができ、照明、表示、レーザー、光検出器等の分野に独特な応用価値を有する。しかし、ハイブリッドペロブスカイト材料の内部に存在する固有の欠陥により、強い励起子は低温でしか得られず、室温での発光効率が低温の1%より低いため、このような材料の発光分野での応用は厳しく制限される。該材料の寸法を縮小し、結晶粒子のサイズを縮小すると、各結晶粒子内部の欠陥数が減少し、且つ体積の収縮に伴い、その自己集合の分布方式により、欠陥数がさらに減少することで、室温での高発光効率が可能となる。2012年にAkihiro KojimaらはChemistry Lettersに、多孔質アルミナテンプレートによりCHNHPbBrナノ粒子を合成し、該粒子の発光波長が523nmであり、CHNHPbBr本体材料と比較して、ナノレベルの粒子の発光が顕著に強くなることを報告した。しかし、アルミナテンプレートの制限により、該材料は、発光分野に適していない。2014年に、Luciana C.Schmidtは、Journal of American Chemistry Societyに、熱注入法によりCHNHPbBrナノ粒子を合成したことを報告した。該方法では、ODE(1−オクタデセン)を溶媒として使用し、80℃の反応環境において、メチルアミン臭化物塩、長鎖有機アミン臭化物塩、臭化鉛等の原料を加え、原料を溶液に均一に分散させ、最後にアセトンを加え、共沈法によりCHNHPbBr粒子を得た。該粒子の発光波長は526nmであり、蛍光量子収率は20%に達した。2015年に、北京理工大学の鐘海政教授の研究チームがACS Nanoに発表したように、配位子補助再沈殿技術により波長が調整可能なCHNHPbX(X=Cl、Br、I)コロイド量子ドットが得られ、最も高い蛍光量子収率は70%に達し、且つ色域面積がNTSC面積の1.3倍の超広色域LEDデバイスが得られ、該材料が広色域表示において極めて大きな適用可能性を示す(特許出願番号:201410612348.6)ことが明らかになった。しかし、該合成方法により製造されたペロブスカイト量子ドットがデバイスに応用される際に、合成過程で導入される大量な有機溶媒を予め除去する必要があり、且つ適切なパッケージ材料が求められている。LEDバックライトディスプレイでは高品質の蛍光粉を必要とし、リモートLEDデバイスでは大面積且つ均一性が良好な薄膜を必要とする。従って、高品質のペロブスカイト蛍光粉又は大面積で均一性が良好な薄膜を如何にして得るかは、LEDの応用分野の重大な課題となっている。
【0005】
然しながら、従来のペロブスカイト/ポリマー複合発光材料及びその製造方法には、改良の余地がある。
【発明の概要】
【0006】
本発明は、本発明者らの以下の事情及び課題についての発見及び知見に基づいてなされたものである。
【0007】
現在、ペロブスカイトナノ材料に基づくポリマー複合発光材料、例えば、ペロブスカイトナノ材料を含むポリマー薄膜には、蛍光量子収率が高くなく、安定性の保証が困難である等の問題がある。本発明者らは、鋭意検討及び実験を重ねた結果、従来のペロブスカイトナノ材料の合成方法では、煩雑な精製工程、例えば、反応過程において加えられた大量の有機溶媒及び長鎖表面配位子の除去によりペロブスカイトナノ材料を取得する必要があり、この工程がペロブスカイトナノ材料の発光特性に好ましくない影響を与えることがあり、且つ、分離精製により得られたペロブスカイトナノ材料もペロブスカイトナノ材料のポリマーマトリックスにおける分散及びデバイスにおける使用効果に影響を与えることを見出した。ペロブスカイトナノ材料をマトリックス材料に分散させて複合材料を形成することによりペロブスカイトナノ材料としての特性を示すことができるが、このような簡単な複合プロセスではペロブスカイトナノ材料の優れた特性を十分に維持できない。以上より、従来の単独のペロブスカイトナノ材料は、非常に高い蛍光量子収率を達成できるが、ペロブスカイトナノ材料を含むポリマーマトリックス複合材料には、蛍光量子収率が高くなく、透明性が劣る等の問題が存在し、また、最終的に得られた複合材料のデバイスにおける安定性の保証も困難である。
【0008】
本発明は、上記技術的課題の少なくとも1つをある程度解決することを目的とする。本発明は、従来のペロブスカイト量子ドット合成方法を改良し、ペロブスカイト量子ドットのポリマーマトリックスにおけるインサイチュ製造を実現し、得られた複合材料はフレキシブル薄膜であり、蛍光量子収率が高く、従来のペロブスカイト量子ドットの溶液をバックライト付きディスプレイ等の光電子デバイスに応用するのが困難である問題を解決するペロブスカイト/ポリマー複合発光材料及びその製造方法を提供することを目的とする。
【0009】
本発明の製造方法は、非常に簡単で、大規模製造が可能であり、工業生産に適し、製造されたペロブスカイト/ポリマー複合発光材料はペロブスカイト成分として、高蛍光量子収率、高発光色純度、波長調整が可能等の利点を有するだけでなく、ポリマー成分としての、加工が容易で、機械的強度が高く、柔軟性が良好である等の利点を有する。また、ペロブスカイト粒子がポリマーマトリックスに包まれることで、外部環境、例えば、酸素ガス、空気湿度等の影響が遮断されるため、該複合材料の蛍光の安定性が顕著に増強され、広色域LEDバックライトディスプレイ、フレキシブルディスプレイにおいて広範な市場の将来性を有する。
【0010】
本発明の一態様において、複合発光材料を提供する。本発明の実施例によれば、該複合発光材料は、マトリックス及びペロブスカイト型ナノ粒子を含み、上記ペロブスカイト型ナノ粒子は、上記マトリックスに分散し、上記ペロブスカイト型ナノ粒子と上記マトリックスとの質量比は1:(1〜50)である。それによって、該複合材料が高蛍光量子収率、高フォトルミネッセンス効率、高透明性、及び低生産コスト等の利点の少なくとも1つを有することを達成できる。
【0011】
本発明の実施例によれば、上記ペロブスカイト型ナノ粒子と上記マトリックスとの質量比は1:(2〜50)である。それによって、該複合発光材料のフォトルミネッセンス特性をさらに向上させることができる。
【0012】
本発明の実施例によれば、上記ペロブスカイト型ナノ粒子と上記マトリックスとの質量比は1:(5〜50)である。それによって、該複合発光材料のフォトルミネッセンス特性をさらに向上させることができる。
【0013】
本発明の実施例によれば、上記ペロブスカイト型ナノ粒子の少なくとも1つの次元におけるサイズは10nm以下である。それによって、該複合発光材料の性能をさらに向上させることができる。
【0014】
本発明の実施例によれば、上記ペロブスカイト型ナノ粒子はコアを有し、上記コアの構造式はCsAB、RNHAB又は(RNHABであり、ここで、AとBは配位八面体構造を構成し、RNH又はRNHは上記八面体構造の隙間に充填され、Rはメチル基であり、Rは有機分子基であり、AはGe、Sn、Pb、Sb、Bi、Cu又はMnであり、BはCl、Br、Iから選択される少なくとも1種である。それによって、良好な発光性能を有するペロブスカイト型ナノ粒子を得ることができる。
【0015】
本発明の実施例によれば、上記マトリックスはポリマーで構成される。上記ポリマーは、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリフッ化ビニリデン−トリフルオロエチレン共重合体(P(VDF−TrFE))、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリ酢酸ビニル(PVAc)、セルロースアセテート(CA)、シアノセルロース(CNA)、ポリスルホン(PSF)、芳香族ポリアミド(PA)、ポリイミド(PI)、ポリカーボネート(PC)、ポリスチレン(PS)の少なくとも1つを含む。それによって、ポリマー鎖における電気陰性基と、上記ペロブスカイト成分におけるR又はRの電気陽性イオンとの相互作用により、ペロブスカイトナノ材料のポリマーにおける均一分散を実現することができる。さらに、上記ポリマーは、ペロブスカイトナノ材料に対して制限作用を有する。その制限作用は、ペロブスカイト型ナノ粒子のインサイチュ成長を制限すること、及び生成したペロブスカイト型ナノ粒子のマトリックス内の運動を制限することを含む。このような制限作用により、ペロブスカイト型ナノ粒子のサイズを制御するができる。上記ポリマーは、透明マトリックスとして最終製品である複合材料の性能を向上させることもできる。
【0016】
本発明の実施例によれば、該複合発光材料は添加剤を更に含む。上記添加剤は、上記マトリックスに分散し、シリカ、窒化ホウ素ナノシート、グラフェン及びカーボンナノチューブの少なくとも1つを含む。それによって、上記添加剤によりペロブスカイト型ナノ粒子のサイズをさらに制限し、該複合材料に合理的な構造を提供することができる。また、上記ナノ材料で構成される添加剤は、該複合発光材料の電気的、機械的及びその他の物理的及び化学的特性をさらに向上させることができる。
【0017】
本発明の実施例によれば、Rは長鎖有機分子基、エチル基又はアリール基である。それによって、該ペロブスカイト型ナノ粒子のフォトルミネッセンス特性をさらに向上させることができる。
【0018】
本発明の実施例によれば、Rは炭素数が4を超える飽和アルキル基又は不飽和アルキル基である。それによって、該ペロブスカイト型ナノ粒子のフォトルミネッセンス特性をさらに向上させることができる。
【0019】
本発明の実施例によれば、上記ペロブスカイト型ナノ粒子は、表面配位子をさらに含む。上記表面配位子は、上記コアの表面に形成され、有機酸又は長鎖有機アミンである。それによって、該複合材料におけるペロブスカイト型ナノ粒子に有機ハイブリッド基を提供し、ペロブスカイト型ナノ粒子の構造を改良することで、該複合材料の性能を向上させることができる。
【0020】
本発明の実施例によれば、上記有機酸は、炭素数が少なくとも3である飽和アルカン酸又は不飽和アルカン酸を含む。上記長鎖有機アミンは、炭素数4〜24のアルキルアミン又は芳香族アミンである。ファンデルワールス力により有機酸又は有機アミンを上記ペロブスカイト型ナノ粒子のコアの表面に吸着させることにより、ペロブスカイト型ナノ粒子をさらに制限する目的を達成できる。該制限作用は、ペロブスカイト型ナノ粒子のインサイチュ成長を制限すること、及び生成したペロブスカイト型ナノ粒子のマトリックス内の運動を制限することを含む。それによって、該ペロブスカイト型ナノ粒子の安定性をさらに向上させ、該複合材料の性能を向上させることができる。
【0021】
本発明の別の態様において、ペロブスカイト/ポリマー複合発光材料を提供する。該複合発光材料は、ペロブスカイトとポリマーの2つの部分で構成され、ペロブスカイト粒子はポリマー分子の隙間に嵌め込まれる。図1に示すように、図における1はペロブスカイト粒子、2はポリマー鎖であり、ペロブスカイト粒子とポリマーとの質量比は、ペロブスカイト粒子:ポリマー=1:(1〜50)である。上記ペロブスカイトの構造式は、RNHAB又は(RNHABであり、ここで、AとBは配位八面体構造を構成し、RNH又はRNHはAとBで構成される配位八面体の隙間に充填され、Rはメチル基、Rは長鎖有機分子基であり、Aは金属Ge、Sn、Pb、Sb、Bi、Cu又はMnのいずれか1種であり、BはCl、Br、Iのいずれか1種であり、上記ポリマーは、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリ酢酸ビニル(PVAc)、セルロースアセテート(CA)、ポリスルホン(PSF)、芳香族ポリアミド(PA)、ポリイミド(PI)、ポリカーボネート(PC)、ポリスチレン(PS)のいずれか1種である。
【0022】
本発明の別の態様において、複合発光材料の製造方法を提供する。本発明の実施例によれば、上記方法は、マトリックスを第1有機溶媒に溶解させ、第1溶液を得るステップ(1)と、無機金属ハロゲン化物及び有機アミンハロゲン化物塩を第2有機溶媒に溶解させ、第2溶液を得るステップ(2)と、上記第1溶液と第2溶液とを混合し、前駆体溶液を形成するステップ(3)と、上記前駆体溶液をテンプレートに移転するステップ(4)と、上記前駆体溶液を有する上記テンプレートを乾燥し、上記複合発光材料を得るステップ(5)と、を含む。それによって、ペロブスカイト型ナノ粒子/ポリマー複合発光材料を簡単に得ることができ、生産コストが低く、操作が簡単で、大規模な普及に有利であり、且つ得られた複合発光材料は良好な性能を有する。
【0023】
本発明の実施例によれば、上記第1有機溶媒及び上記第2有機溶媒は、それぞれ独立してN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、リン酸トリメチル(TMP)、リン酸トリエチル(TEP)、N−メチルピロリドン(NMP)、ジメチルアセトアミド(DMAc)からなる群から選択される少なくとも1つであり、上記第1有機溶媒及び上記第2有機溶媒は相溶する。マトリックス、無機金属ハロゲン化物、及び有機アミンハロゲン化物塩は、いずれも上記有機溶媒に対して良好な溶解性を有する。
【0024】
本発明の実施例によれば、上記マトリックスはポリマーから構成される。上記ポリマーは、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリフッ化ビニリデン−トリフルオロエチレン共重合体(P(VDF−TrFE))、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリ酢酸ビニル(PVAc)、セルロースアセテート(CA)、シアノセルロース(CNA)、ポリスルホン(PSF)、芳香族ポリアミド(PA)、ポリイミド(PI)、ポリカーボネート(PC)、ポリスチレン(PS)の少なくとも1種を含む。それによって、ポリマー鎖における電気陰性基と、上記ペロブスカイト成分における電気陽性イオンとの相互作用により、ペロブスカイトナノ材料のポリマーにおける均一分散を実現することができる。さらに、上記ポリマーは、ペロブスカイトナノ材料に対して制限作用を有する。その制限作用は、ペロブスカイト型ナノ粒子のインサイチュ成長及び生成したペロブスカイト型ナノ粒子のマトリックス内の運動を制限することを含む。このような制限作用により、ペロブスカイト型ナノ粒子のサイズを制御することができる。上記ポリマーは、透明マトリックスとして最終製品である複合材料の性能を向上させることもできる。
【0025】
本発明の実施例によれば、上記無機金属ハロゲン化物は、Ge、Sn、Pb、Sb、Bi、Cu、Mnのハロゲン化物塩の少なくとも1種であり、上記有機アミンハロゲン化物塩の一般式は、RNHBであり、Rは、飽和アルキル基、不飽和アルキル基、又はアリール基であり、Bは、Cl、Br又はIから選択される少なくとも1つである。それによって、良好なフォトルミネッセンス特性を有するペロブスカイト型ナノ粒子を形成することができる。
【0026】
本発明の実施例によれば、上記飽和アルキル基は、メチル基、エチル基、又は炭素数が4を超える長鎖飽和アルキル基である。それによって、該ペロブスカイト型ナノ粒子のフォトルミネッセンス特性をさらに向上させることができる。
【0027】
本発明の実施例によれば、上記第1溶液における上記マトリックスと上記第1有機溶媒との質量比は1:(1〜50)である。それによって、適切なマトリックス含有量を有する第1溶液を得ることができ、マトリックスのペロブスカイト型ナノ粒子のサイズに対する限定効果をさらに向上させることができる。
【0028】
本発明の実施例によれば、上記第1溶液における上記マトリックスと上記第1有機溶媒との質量比は1:(2〜50)である。それによって、適切なマトリックス含有量を有する第1溶液を得ることができ、マトリックスのペロブスカイト型ナノ粒子のサイズに対する限定効果をさらに向上させることができる。
【0029】
本発明の実施例によれば、上記第1溶液における上記マトリックスと上記第1有機溶媒との質量比は1:(5〜50)である。それによって、適切なマトリックス含有量を有する第1溶液を得ることができ、マトリックスのペロブスカイト型ナノ粒子のサイズに対する限定効果をさらに向上させることができる。
【0030】
本発明の実施例によれば、上記第2溶液における上記無機金属ハロゲン化物と上記有機アミンハロゲン化物塩又はハロゲン化セシウムとのモル比は1:(0.1〜3)であり、上記第2有機溶媒と上記無機金属ハロゲン化物との質量比は1:(0.01〜0.1)である。それによって、無機金属ハロゲン化物と上記有機アミンハロゲン化物塩又はハロゲン化セシウムとの比を適切な範囲に制御でき、形成されたペロブスカイト型ナノ粒子の性能を向上させることができる。
【0031】
本発明の実施例によれば、上記第2溶液における上記第2有機溶媒と、上記無機金属ハロゲン化物及び上記有機アミンハロゲン化物塩の和との質量比は1:(0.01〜0.1)である。それによって、形成されたペロブスカイト型ナノ粒子の性能をさらに向上させることができる。
【0032】
本発明の実施例によれば、上記前駆体溶液中の上記第1溶液と上記第2溶液との質量比は1:(0.02〜1)である。それによって、該方法により得られた複合発光材料の性能をさらに向上させることができる。
【0033】
本発明の実施例によれば、上記第1溶液には、添加剤がさらに含まれる。上記添加剤は、シリカ、窒化ホウ素ナノシート、グラフェン及びカーボンナノチューブの少なくとも1つを含み、上記マトリックスと上記添加剤との質量比は1:(0.01〜0.5)である。それによって、上記添加剤によりペロブスカイト型ナノ粒子のサイズをさらに限定し、該複合材料に合理的な構造を提供することができる。上記ナノ材料で構成される添加剤は、該複合発光材料の電気などの物理的・化学的特性を向上させることができる。
【0034】
本発明の実施例によれば、ステップ(3)の後でかつステップ(4)の前に、上記前駆体溶液に表面配位子を加えるステップをさらに含む。上記表面配位子は、有機酸又は長鎖有機アミンであり、上記第2溶液と上記表面配位子との質量比は1:(0.001〜0.3)である。それによって、該複合材料におけるペロブスカイト型ナノ粒子に有機ハイブリッド基を提供し、ペロブスカイト型ナノ粒子の構造を改良し、該複合材料の性能を向上させることができる。
【0035】
本発明の実施例によれば、上記有機酸は、炭素数が少なくとも3の飽和アルカン酸又は不飽和アルカン酸を含む。上記長鎖有機アミンは、炭素数4〜24のアルキルアミン又は芳香族アミンである。ファンデルワールス力により上記有機酸又は有機アミンを上記ペロブスカイト型ナノ粒子コアの表面に吸着させることにより、ペロブスカイト型ナノ粒子をさらに制限する目的を達成できる。その制限作用は、ペロブスカイト型ナノ粒子のインサイチュ成長を制限すること、及び生成したペロブスカイト型ナノ粒子のマトリックスにおける運動を制限することを含む。それによって、該ペロブスカイト型ナノ粒子の安定性をさらに向上させることができることで、該複合材料の性能を向上させる。
【0036】
本発明の実施例によれば、ステップ(4)において、スピンコート法、ディップコート法、エレクトロスピニング法、溶液沈降法、スプレーコート法、ドクターブレード法又はキャスティング法により上記前駆体溶液をテンプレートに移転する。それによって、薄膜等の形状を有する複合発光材料を簡単に得ることができる。
【0037】
本発明の実施例によれば、ステップ(5)において、上記乾燥は真空乾燥であり、上記真空乾燥の気圧は0.01〜0.1MPa、温度は20〜110℃、乾燥時間は0.5〜48hである。それによって、該有機溶媒系の揮発条件を制御することにより、上記マトリックスの結晶、添加剤の分布、ペロブスカイト型ナノ粒子のコア形成及び成長を制御することができ、複合材料の性能を向上させる。
【0038】
本発明の実施例によれば、上記真空乾燥の温度は30〜70℃である。それによって、複合材料の性能をさらに向上させることができる。
【0039】
本発明の実施例によれば、上記真空乾燥されて得られた上記複合発光材料の厚さは0.001〜5mmである。それによって、該方法による複合発光材料の性能をさらに向上させることができる。
【0040】
本発明の実施例によれば、上記第1溶液は、以下の手順に従って調製される。上記マトリックスと上記第1有機溶媒との質量比が1:(1〜50)となるように上記マトリックスを上記第1有機溶媒に溶解させ、機械撹拌により12h混合することで、上記マトリックスを完全に溶解させ、透明な混合溶液を得ることにより、第1溶液を得る。それによって、該方法による複合発光材料の性能をさらに向上させることができる。
【0041】
本発明の実施例によれば、上記第1溶液は、以下の手順に従って調製される。上記マトリックスと上記第1有機溶媒との質量比が1:(1〜50)となるように上記マトリックスを上記第1有機溶媒に溶解させ、機械撹拌により12h混合することで上記マトリックスを完全に溶解させ、透明な混合溶液を得、上記マトリックスと上記添加剤との質量比が1:(0.01〜0.5)となるように上記透明な混合溶液に上記添加剤を加え、機械撹拌により1〜3h均一に混合し、第1溶液を得る。それによって、添加剤を利用することで、該方法による複合発光材料の性能をさらに向上させることができる。
【0042】
本発明の実施例によれば、上記第2溶液は、以下の手順に従って調製される。上記無機金属ハロゲン化物と上記有機アミンハロゲン化物塩又はハロゲン化セシウムとのモル比が1:(0.1〜3)となるように上記無機金属ハロゲン化物と上記有機アミンハロゲン化物塩又はハロゲン化セシウムとを混合し、上記第2有機溶媒と上記無機金属ハロゲン化物との質量比が1:(0.01〜0.1)となるように得られた混合物を上記第2有機溶媒に加え、15分間超音波処理し、上記超音波処理された混合液を濾過処理し、濾液を上記第2溶液として回収する。それによって、該方法による複合発光材料の性能をさらに向上させることができる。
【0043】
本発明の実施例によれば、上記第2有機溶媒と、上記無機金属ハロゲン化物及び有機アミンハロゲン化物塩の和との質量比は、1:(0.01〜0.1)である。それによって、該方法による複合発光材料の性能をさらに向上させることができる。
【0044】
本発明の実施例によれば、上記第1溶液と上記第2溶液との質量比が1:(0.02〜1)となるように上記第1溶液と上記第2溶液とを混合し、2h機械撹拌し、上記前駆体溶液を得る。それによって、該方法による複合発光材料の性能をさらに向上させることができる。
【0045】
本発明の実施例によれば、上記前駆体溶液は、以下の手順に従って調製される。上記第1溶液と上記第2溶液との質量比が1:(0.02〜1)となるように上記第1溶液と上記第2溶液とを混合し、さらに、上記第2溶液と上記表面配位子との質量比が1:(0.001〜0.3)となるように上記表面配位子を加え、2h機械撹拌し、上記前駆体溶液を得る。それによって、表面配位子の添加により、該方法による複合発光材料の性能をさらに向上させることができる。
【0046】
本発明の別の態様において、上記のようなペロブスカイト/ポリマー複合発光材料の製造方法を提供する。該製造方法は、以下のステップを含む。
【0047】
ステップ(1)では、質量百分率濃度をポリマー:有機溶媒=1:(1〜50)に制御するようにポリマーを有機溶媒に溶解させ、12h超音波を用いて混合し、ポリマーを完全に溶解させた後、均一で粘稠なポリマー溶液を得、質量百分率濃度をポリマー溶液:添加剤=1: (0〜0.5)に制御するように製造されたポリマー溶液に添加剤を加え、超音波により1〜3hかけて均一に混合し、得られた溶液を第1溶液とする。上記ポリマーは、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリ酢酸ビニル(PVAc)、セルロースアセテート(CA)、ポリスルホン(PSF)、芳香族ポリアミド(PA)、ポリイミド(PI)、ポリカーボネート(PC)、ポリスチレン(PS)のいずれか1種であり、上記添加剤は、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリエチレングリコール(PEG)のいずれか1種であり、上記有機溶媒は、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、リン酸トリメチル(TMP)、リン酸トリエチル(TEP)、N−メチルピロリドン(NMP)、ジメチルアセトアミド(DMAc)のいずれか1種である。
【0048】
ステップ(2)では、モル比を無機ハロゲン化物塩:有機アミンハロゲン化物塩=1:(0.1〜3)に制御するように無機ハロゲン化物塩と有機アミンハロゲン化物塩粉末とを混合し、さらに、質量百分率濃度を有機溶媒:無機ハロゲン化物塩=1:(0.01〜0.1)に制御するように有機溶媒を加え、混合した後、15分間超音波処理し、透明な混合液を得、超音波処理されて得られた透明な混合物を濾過し、濾液を第2溶液として回収する。該ステップにおいて、上記無機ハロゲン化物塩は、金属Ge、Sn、Pb、Sb、Bi、Cu、Mnのハロゲン化物塩のいずれか1種であり、上記有機溶媒は、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、リン酸トリメチル(TMP)、リン酸トリエチル(TEP)、N−メチルピロリドン(NMP)、ジメチルアセトアミド(DMAc)のいずれか1種であり、上記有機アミンハロゲン化物塩は、一般式がC2n+1NBの飽和アルキルアミンハロゲン化物塩(n≧1、BはCl、Br、Iのいずれか1種である)、一般式がC2n−1NBの不飽和アルキルアミンハロゲン化物塩又は芳香族アミンハロゲン化物塩(n≧2、BはCl、Br、Iのいずれか1種である)である。
【0049】
ステップ(3)では、ステップ(1)における上記第1溶液とステップ(2)における上記第2溶液とを体積比を第1溶液:第2溶液=1:(0.02〜1)に制御するように混合し、2h超音波処理し、均一に混合した前駆体溶液を得る。
【0050】
ステップ(4)では、上記ステップ(3)における上記的前駆体溶液を、スピンコート法、ディップコート法、エレクトロスピニング法、溶液沈降法、スプレーコート法又はキャスティング法により、前駆体溶液を均一に分散させ、且つ前駆体溶液の透明基板又は金型における厚さを0.001〜5mmに制御するように、透明基板又は金型に移転し、その後、前駆体溶液が塗布された基板又は金型を真空乾燥オーブンに入れ、真空乾燥オーブンにおける気圧が0.01−0.1MPa、温度が30〜70℃である条件で0.5〜48h乾燥することで、有機溶媒を除去し、ペロブスカイト/ポリマー複合発光材料を得る。
【0051】
本発明が提供するペロブスカイト/ポリマー複合発光材料の製造方法の利点は、以下の通りである。
1、本発明の製造方法は、操作が簡単で、コストが低く、バッチ製造の制限がなく、工業生産に適し、大面積のペロブスカイト/ポリマー複合発光薄膜を得ることができる。
2、本発明の方法により製造されたペロブスカイト型ナノ粒子に基づく複合材料は、ポリマー分子間の隙間によりペロブスカイトの寸法の成長を制限し、原料を節約し、且つ、ポリマー分子間の隙間のサイズを容易に調整することができる。
3、本発明の方法は、粒径及び成分が異なるペロブスカイト/ポリマー複合発光材料を製造でき、発光強度が高く、蛍光量子収率は80〜90%に達し、発光波長が可視領域全体をカバーすることができる。
4、本発明の方法により製造されたペロブスカイト/ポリマー複合発光材料は、ポリマーマトリックスによりペロブスカイト粒子が包まれるため、酸素ガス、空気湿度等の影響を遮断することで、外部環境の発光への影響が軽減され、安定性が顕著に増強され、且つ化学腐食に耐える。
5、本発明の方法により製造されたペロブスカイト/ポリマー複合発光材料は、力学的強度が高く、柔軟性が良好である特徴を有し、フレキシブルディスプレイデバイスにおいて潜在的な応用価値を有する。
6、本発明の方法により製造されたペロブスカイト/ポリマー複合発光材料は、半値幅が狭く、発光色の純度が高いため、実務的応用の要求を満たすことができ、広色域LED表示、レーザー、非線形光学等の分野における広範な応用の将来性を有する。
【0052】
本発明の別の態様において、半導体デバイスを提供する。本発明の実施例によれば、該半導体デバイスは、上記の複合発光材料を含む。それによって、上記のポリマーを含有する複合発光材料をそのまま半導体デバイスにおける関連する構造として使用することができ、該半導体デバイスの製造過程を簡略化し、生産コストを低減させるとともに、該半導体デバイスの性能を保証することができる。
【0053】
本発明の実施例によれば、上記半導体デバイスは、エレクトロルミネッセンスデバイス、フォトルミネッセンスデバイス、太陽電池、ディスプレイデバイス、センサーデバイス、圧電デバイス、又は非線形光学デバイスである。それによって、上記半導体デバイスの性能をさらに向上させることができる。
【0054】
本発明の実施例によれば、上記半導体デバイスは、フレキシブルデバイスである。それによって、上記半導体デバイスの性能をさらに向上させることができる。
【0055】
本発明の実施例によれば、上記フレキシブルデバイスの基板は、上記複合発光材料で形成される。それによって、上記複合発光材料のポリマーマトリックスの可撓性によりそれをフレキシブルデバイスの基板に使用することで、基板がペロブスカイト型ナノ粒子の発光性能を兼ねることができる。
【0056】
本発明の実施例によれば、上記半導体デバイスは、LCDディスプレイデバイスであり、上記複合発光材料は、上記LCDディスプレイデバイスのバックライトモジュールに設けられる。それによって、上記複合発光材料を利用してバックライトモジュールの発光効率及び効果を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0057】
図1】本発明の方法による複合発光材料の構造模式図である。
図2】本発明の実施例に係るフレキシブルエレクトロルミネッセンスデバイスの構造模式図である。
図3】本発明の実施例に係るLCDディスプレイデバイスのバックライトモジュールの構造模式図である。
図4】本発明の実施例に係る圧電デバイスの構造模式図である。
図5】本発明の実施例1におけるCHNHPbI/PVAc複合材料の蛍光発光スペクトルである。
図6】本発明の実施例5におけるCHNHPbBr/PVDF複合薄膜の蛍光発光スペクトルである。
図7】本発明の実施例5におけるCHNHPbBr/PVDF複合材料の可視領域における光透過率スペクトルである。
図8】本発明の実施例11におけるCHNHPbBrxI3−x/PVDF複合材料の蛍光発光スペクトルである。
図9】本発明の実施例15における(CNHPbBr/PVDF−CNA複合材料の蛍光発光スペクトルである。
図10】本発明の実施例27におけるCHNHPbBr/PVDF−CA複合材料の蛍光発光スペクトルである。
図11】本発明の実施例27におけるCHNHPbBr量子ドット/PVDF−CAフレキシブル複合薄膜の日光及び紫外線ランプにおける実際の効果である。
図12】本発明の実施例31において構築されたフォトルミネッセンスデバイスの構造模式図、及び製造された高色域白色LEDの色座標図である。
図13】本発明の実施例6におけるCHNHPbBr量子ドット/PVDF複合薄膜の光透過率スペクトルである。
【発明を実施するための形態】
【0058】
以下、本発明の実施例を詳しく説明する。これらの実施例の例示を図面に示し、同一又は類似の符号で同一又は類似の部材、又は同一又は類似の機能を有する部材を示す。以下、図面を参照しながら説明する実施例は例示的であり、本発明を解釈するためのものに過ぎず、本発明を制限するものではない。
【0059】
理解を容易にするために、以下、まず本発明の方法により製造されたペロブスカイト型ナノ粒子の複合材料の形成原理について簡単に説明する。
【0060】
無機金属ハロゲン化物、有機アミンハロゲン化物塩、表面配位子、ポリマーマトリックス、添加剤等の原料成分はすべて、同一の有機溶媒系に溶解でき、この有機溶媒系に均一に分散することを達成でき、マクロ構造及びミクロ構造のいずれにおいても相分離が発生しない。有機溶媒系が外部作用により徐々に揮発する場合、マトリックスは、溶媒の揮発に伴って集合し、反応中間体を束縛又は制限可能なミクロ構造を形成する一方、有機溶媒の揮発により、有機アミンハロゲン化物塩と無機金属ハロゲン化物分子で形成された反応中間体が飽和溶解度に徐々に近づき、有機溶媒のさらなる揮発に伴い、反応中間体がナノ材料のコア形成臨界濃度に達してコア形成を迅速に開始する。その過程において、無機金属カチオンとハロゲンアニオンが配位八面体を形成し、有機アミンカチオンが隣接する八面体の間の隙間に入ってペロブスカイト構造を形成する。有機アミンハロゲン化物塩と無機金属ハロゲン化物分子の間に水素結合作用があるため、それらは迅速に自己結合することで、無機金属カチオンとハロゲンアニオンが配位八面体を形成し、有機アミンカチオンが隣接する八面体の間の隙間に入ってハイブリッドペロブスカイト構造を形成する。マトリックスに形成されたミクロ構造が結晶核の成長を制限するため、反応中間体のマトリックスにおける拡散が制限され、粒子の3次元方向に沿った成長が制限され、ペロブスカイト粒子のサイズがナノレベルに制限される。つまり、有機溶媒の揮発により、ポリマー鎖の運動が制限され、形成されたペロブスカイト粒子の表面を被覆することで、粒子の3次元方向に沿った成長が制限される。
【0061】
本発明の一態様において、ペロブスカイト/ポリマー複合発光材料を提供する。本発明の実施例によれば、図1に示すように、該複合発光材料は、ペロブスカイト型ナノ粒子から構成され、ペロブスカイト型ナノ粒子1はマトリックス2に均一に分散している。なお、本発明において、ペロブスカイト型ナノ粒子は広い意味で理解されるべきである。即ち、本発明において、ペロブスカイト型ナノ粒子は、量子ドットであってもよく、ナノシートであってもよく、ナノワイヤーであってもよい。該ペロブスカイト粒子の少なくとも1つの次元におけるサイズが10nmであればよい。つまり、本発明において、ペロブスカイト型ナノ粒子は、粒径が10nm以下の量子ドット、直径が10nm以下のナノワイヤー、又は厚さが10nm以下のナノシートであってもよい。ペロブスカイト型ナノ粒子とマトリックスとの質量比は1:(1〜50)である。このような複合材料は、高蛍光量子収率、高フォトルミネッセンス効率、高透明性、及び低生産コスト等の利点の少なくとも1つを有する。
【0062】
本発明の実施例によれば、該複合発光材料の性能をさらに向上させるために、複合発光材料におけるペロブスカイト型ナノ粒子とマトリックスとの質量比を調整することにより該複合発光材料の性能を調整制御することができる。具体的には、本発明の実施例によれば、ペロブスカイト型ナノ粒子とマトリックスとの質量比を1:(2〜50)としてもよい。本発明の別の実施例において、ペロブスカイト型ナノ粒子とマトリックスとの質量比を1:(5〜50)としてもよい。それによって、該複合発光材料のフォトルミネッセンス特性をさらに向上させることができる。
【0063】
本発明の実施例によれば、マトリックスはポリマーである。例えば、ポリマーは、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリフッ化ビニリデン−トリフルオロエチレン共重合体(P(VDF−TrFE))、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリ酢酸ビニル(PVAc)、セルロースアセテート(CA)、シアノセルロース(CNA)、ポリスルホン(PSF)、芳香族ポリアミド(PA)、ポリイミド(PI)、ポリカーボネート(PC)、及びポリスチレン(PS)からなる群から選択される少なくとも1種である。これらのポリマーをマトリックスとして使用することは、上記ポリマーがペロブスカイト型ナノ粒子反応原料と同一の有機溶媒系を有し、ポリマーマトリックスそれ自体が透明であり、ポリマーマトリックスそれ自体が優れた水・酸素耐性、圧電特性、誘電特性、力学的特性を有するためである。具体的には、PVDF及びP(VDF−TrFE)は、1単位あたりの炭素原子の電気陰性が最も強く、且つそれ自体が優れた圧電特性、力学的特性を有するため、主要なマトリックスとして他のポリマーマトリックスと共同で使用されることにより、より優れた性能を有する複合発光材料が得られる。
【0064】
本発明の実施例によれば、ペロブスカイト型ナノ粒子は、構造式がCsAB、RNHAB又は(RNHABのコアを有する。AとBは配位八面体構造を構成し、RNH又はRNHはAとBで構成される配位八面体の隙間に充填される。本発明の実施例によれば、Aは、Ge、Sn、Pb、Sb、Bi、Cu、及びMnから選択される少なくとも1種であり、Bは、Cl、Br、及びIから選択される少なくとも1種である。本発明の実施例によれば、Rはメチル基であり、Rは有機分子基であってもよい。具体的には、本発明の実施例によれば、Rは、エチル基、炭素数が4以上の飽和アルキル基若しくは不飽和アルキル基、又はアリール基であってもよい。例えば、本発明の具体的な実施例において、Rは、炭素数4〜24の飽和アルキル基又は不飽和アルキル基であってもよい。それによって、実際に該ペロブスカイト型ナノ粒子を形成する金属元素及びハロゲン、並びにコアを構成する正八面体における隙間のサイズに応じて、R又はR基を含有する適切な有機アミンを選択して充填することにより、本発明の実施例におけるペロブスカイト型ナノ粒子成分の発光効率及び安定性を向上させることができ、また、ペロブスカイト型ナノ粒子を形成する成分及び形態を選択することにより、発光波長の調整を実現することができる。
【0065】
本発明の実施例によれば、一部のペロブスカイト型ナノ粒子の表面に表面配位子が分布されてもよい。つまり、該ペロブスカイト型ナノ粒子は、表面配位子をさらに含み、表面配位子がコアの表面に形成されてもよい。本発明の実施例によれば、表面配位子は、有機酸又は長鎖有機アミンであってもよく、且つ表面配位子は、ペロブスカイト型ナノ粒子の表面を発散状に被覆する。ファンデルワールス力により有機酸又は有機アミンを上記ペロブスカイト型ナノ粒子のコア表面に吸着させることにより、ペロブスカイト型ナノ粒子をさらに制限する目的を達成できる。このような制限作用は、ペロブスカイト型ナノ粒子のインサイチュ成長を制限すること、及び生成したペロブスカイト型ナノ粒子のマトリックスにおける運動を制限することを含む。それによって、該ペロブスカイト型ナノ粒子の安定性をさらに向上させ、該複合材料の性能を向上させることができる。また、有機酸又は有機アミンの使用により、粒状、片状又は線状のペロブスカイト型ナノ粒子を形成するように、ペロブスカイト型ナノ粒子の形態を制御することができる。
【0066】
具体的には、表面配位子を形成する有機酸は、炭素数が少なくとも3である飽和アルカン酸又は不飽和アルカン酸であってもよい。本発明のいくつかの実施例において、該有機酸は、一般式がC2n+1COOH(n≧2)である飽和アルカン酸、又は一般式がC2n−1COOH(n≧2)である不飽和アルカン酸であってもよい。例えば、上記一般式に該当する炭素数3〜24の有機酸であってもよい。表面配位子を形成する長鎖有機アミンの分子式は、RNHであってもよく、ここで、Rは飽和直鎖アルキル基若しくは飽和分岐鎖アルキル基、又は不飽和直鎖アルキル基若しくは不飽和分岐鎖アルキル基である。さらに具体的には、Rは、4〜24個の炭素原子を含むアルキル基又はアリール基であってもよい。
【0067】
本発明の実施例によれば、該複合発光材料は、添加剤を含んでもよい。具体的には、添加剤は、シリカ、窒化ホウ素ナノシート、グラフェン、カーボンナノチューブの少なくとも1種であってもよい。それによって、該複合材料に合理的な構造を提供することで、該複合材料は、より優れた性能を有する。具体的には、シリカ又は窒化ホウ素ナノシートの添加により、マトリックスにおいてネットワーク構造を形成することができることで、ポリマー分子鎖の運動状態を抑制することができ、特に、常温下で分子鎖が運動可能なポリマーマトリックスに対して、上記添加剤の添加により、ペロブスカイト型ナノ粒子のポリマーマトリックスにおける安定性をさらに向上させることができる。グラフェン又はカーボンナノチューブ等の熱伝導性/導電性カーボンナノ材料の添加により、ポリマーマトリックスの熱伝導性を向上させ、ペロブスカイト型ナノ粒子に基づく複合材料の熱安定性をさらに向上させることができる。
【0068】
本発明の別の態様において、ペロブスカイト/ポリマー複合発光材料を提供する。本発明が提供するペロブスカイト/ポリマー複合発光材料は、ペロブスカイトとポリマーの2つの部分で構成され、ペロブスカイト粒子はポリマー分子の隙間に嵌め込まれる。図1において、1はペロブスカイト粒子、2はポリマー鎖であり、ペロブスカイト粒子とポリマーとの質量比はペロブスカイト粒子:ポリマー=1:(1〜50)である。上記ペロブスカイトの構造式は、RNHAB又は(RNHABであり、ここで、AとBは配位八面体構造を構成し、RNH又はRNHはAとBで構成される配位八面体の間の隙間に充填され、Rはメチル基、Rは長鎖有機分子基であり、Aは金属Ge、Sn、Pb、Sb、Bi、Cu又はMnのいずれか1種であり、BはCl、Br、Iのいずれか1種である。上記ポリマーは、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリ酢酸ビニル(PVAc)、セルロースアセテート(CA)、ポリスルホン(PSF)、芳香族ポリアミド(PA)、ポリイミド(PI)、ポリカーボネート(PC)、ポリスチレン(PS)のいずれか1種である。
【0069】
本発明の別の態様において、複合発光材料の製造方法を提供する。本発明の実施例によれば、該方法は以下のステップを含む。
【0070】
第1溶液を得るステップ(1)
本発明の実施例によれば、該ステップにおいて、マトリックスを第1有機溶媒に溶解させ、第1溶液を得る。具体的には、第1有機溶媒は、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、リン酸トリメチル(TMP)、リン酸トリエチル(TEP)、N−メチルピロリドン(NMP)、ジメチルアセトアミド(DMAc)から選択される少なくとも1つを含む。上記ポリマーで構成される第1有機溶媒は、マトリックスと良好な相容性を有するだけでなく、マトリックス、添加剤、無機金属ハロゲン化物、有機アミンハロゲン化物塩及び表面配位子等の成分を同一の溶媒系に溶解させることができる。本発明の実施例によれば、マトリックスは、ポリマーで構成される。ポリマーは、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリフッ化ビニリデン−トリフルオロエチレン共重合体(P(VDF−TrFE))、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリ酢酸ビニル(PVAc)、セルロースアセテート(CA)、シアノセルロース(CNA)、ポリスルホン(PSF)、芳香族ポリアミド(PA)、ポリイミド(PI)、ポリカーボネート(PC)、ポリスチレン(PS)の少なくとも1種であってもよい。それによって、ポリマー鎖における電気陰性基と、上記ペロブスカイト成分におけるR又はRの電気陽性イオンとの相互作用により、ペロブスカイト型ナノ粒子のポリマーにおける均一分散を実現することができる。さらに、ポリマーマトリックスは、ペロブスカイト型ナノ粒子に対して制限作用を有する。その制限作用は、ペロブスカイト型ナノ粒子のインサイチュ成長を制限すること、及び生成したペロブスカイト型ナノ粒子のマトリックス内の運動を制限することを含む。また、ポリマーは、ペロブスカイト型ナノ粒子の透明マトリックスとして、最終製品である複合材料の性能を向上させることもできる。マトリックスと第1有機溶媒との質量比は、1:(1〜50)であってもよい。それによって、適切なマトリックス含有量を有する第1溶液を得ることができ、マトリックスのペロブスカイト型ナノ粒子のサイズに対する限定効果をさらに向上させることができる。本発明の別の実施例によれば、第1溶液において、マトリックスと第1有機溶媒との質量比は1:(2〜50)又は1:(5〜50)であってもよい。それによって、適切なマトリックス含有量を有する第1溶液を得ることができ、マトリックスのペロブスカイト型ナノ粒子のサイズに対する限定効果をさらに向上させることができる。
【0071】
本発明の実施例によれば、該ステップにおいて、第1溶液には、添加剤をさらに含んでもよい。本発明の実施例によれば、添加剤は、シリカ、窒化ホウ素ナノシート、グラフェン及びカーボンナノチューブの少なくとも1つを含み、マトリックスと添加剤との質量比は、1:(0.01〜0.5)であってもよい。それによって、上記添加剤を利用してペロブスカイト型ナノ粒子のサイズをさらに限定し、該複合材料に合理的な構造を提供することができる。また、上記ナノ材料で構成される添加剤は、該複合発光材料の電気的特性、力学的特性等の物理的・化学的特性をさらに向上させることができる。該方法により形成される複合発光材料に対する添加剤の作用は、上述した複合発光材料における添加剤の作用と同様の特徴及び利点を有するため、ここでは、その詳細については省略する。
【0072】
本発明の実施例によれば、第1溶液の調製は、高速分散機を使用して分散を行うことができる。それによって、第1溶液の均一性及び分散性をさらに向上させ、複合材料の効果を向上させることができる。具体的には、第1溶液は、以下の手順に従って調製することができる。マトリックスと第1有機溶媒との質量比が1:(1〜50)となるようにマトリックスを第1有機溶媒に溶解させ、機械撹拌により12h混合することで、マトリックスを完全に溶解させ、透明な混合溶液を得る。マトリックスと添加剤との質量比を1:(0.01〜0.5)に制御するように透明な混合溶液に添加剤を加え、機械撹拌により1〜3hかけて均一に混合して第1溶液を得る。それによって、該方法による複合発光材料の性能をさらに向上させることができる。
【0073】
第2溶液を得るステップ(2)
本発明の実施例によれば、該ステップにおいて、無機金属ハロゲン化物及び有機アミンハロゲン化物塩を第2有機溶媒に溶解させ、第2溶液を得る。本発明の実施例によれば、第2有機溶媒は、DMF、DMSO、TMP、TEP、NMP、DMAcから選択される少なくとも1つを含み、且つ第2有機溶媒と第1有機溶媒が相溶する。なお、本発明において、「相溶」という用語は、第1有機溶媒と第2有機溶媒とを混合するときに、混合溶液に層分離現象が発生しないことをいう。それによって、第1溶液と第2溶液を混合して均一な有機溶媒系を形成することができる。つまり、第1溶液及び第2溶液に溶解した無機金属ハロゲン化物、有機アミンハロゲン化物塩、表面配位子、ポリマーマトリックス、添加剤等の原料成分は、第1有機溶媒及び第2有機溶媒における溶解度に顕著な差異がなく、マクロ構造及びミクロ構造のいずれにおいても、相分離が発生しない。無機金属ハロゲン化物と有機アミンハロゲン化物塩とのモル比は、1:(0.1〜3)であってもよく、第2有機溶媒と無機金属ハロゲン化物との質量比は、1:(0.01〜0.1)であってもよい。本発明の別の実施例によれば、第2有機溶媒の質量と、無機金属ハロゲン化物及び有機アミンハロゲン化物塩又はハロゲン化セシウムの質量の和との比を1:(0.01〜0.1)に制御してもよい。それによって、無機金属ハロゲン化物と上記有機アミンハロゲン化物塩との比を適切な範囲内に制御できることで、形成されるペロブスカイト型ナノ粒子の性能を向上させることができる。本発明の実施例によれば、無機金属ハロゲン化物は、Ge、Sn、Pb、Sb、Bi、Cu、Mnのハロゲン化物塩の少なくとも1種であってもよい。有機アミンハロゲン化物塩の一般式はRNHB、ハロゲン化セシウムの一般式はCsBであってもよく、ここで、Rは、飽和アルキル基、不飽和アルキル基又はアリール基であり、飽和アルキル基は、メチル基、エチル基、又は炭素数が4を超える長鎖飽和アルキル基であり、Bは、Cl、Br又はIから選択される少なくとも1つである。それによって、良好なフォトルミネッセンス特性を有するペロブスカイト型ナノ粒子を形成することができる。当業者が理解できるように、無機金属ハロゲン化物と有機アミンハロゲン化物塩又はハロゲン化セシウムとが後続のステップにおいてペロブスカイト型ナノ粒子のコアを形成するため、上記無機金属ハロゲン化物及び有機アミンハロゲン化物塩の具体的な種類は、実際に必要なペロブスカイト型ナノ粒子の種類に応じて選択することができる。形成したペロブスカイト型ナノ粒子のコアの各部分及び選択原則について、以上に詳しく説明したので、ここでは省略する。
【0074】
具体的には、第2溶液は、以下の手順に従って調製することができる。無機金属ハロゲン化物と有機アミンハロゲン化物塩又はハロゲン化セシウムとのモル比を1:(0.1〜3)に制御するように、無機金属ハロゲン化物と有機アミンハロゲン化物塩又はハロゲン化セシウム粉末とを混合し、さらに、第2有機溶媒と無機金属ハロゲン化物との質量比を1:(0.01〜0.1)、又は第2有機溶媒の質量と、無機金属ハロゲン化物及び有機アミンハロゲン化物塩又はハロゲン化セシウムの質量の和との比を1:(0.01〜0.1)に制御するように、第2有機溶媒を加え、混合後、15分間超音波処理を行い、透明混合液を得、超音波処理された透明混合液を濾過し、濾液を第2溶液として回収する。
【0075】
前駆体溶液を形成するステップ(3)
本発明の実施例によれば、該ステップにおいて、第1溶液と第2溶液とを混合し、前駆体溶液を得る。具体的には、第1溶液と第2溶液との質量比は、1:(0.02〜1)であってもよい。それによって、該方法による複合発光材料の性能をさらに向上させることができる。
【0076】
本発明の実施例によれば、該方法による複合発光材料の性能をさらに向上させるために、本発明の実施例によれば、該方法は、以下のステップをさらに含む。
【0077】
前駆体溶液に表面配位子(本発明において、有機配位子とも呼ばれる)を加える。本発明の実施例によれば、具体的には、表面配位子は、有機酸又は長鎖有機アミンであり、前駆体溶液において、第2溶液と有機配位子との質量比は1:(0.001〜0.3)である。それによって、該複合材料におけるペロブスカイト型ナノ粒子に有機ハイブリッド基を提供でき、ペロブスカイト型ナノ粒子の構造を改良し、該複合材料の性能を向上させることができる。本発明の実施例によれば、該複合材料のペロブスカイト型ナノ粒子の成分において、表面配位子は、有機酸又は長鎖有機アミンであってもよい。ファンデルワールス力により有機酸又は有機アミンを上記ペロブスカイト型ナノ粒子のコア表面に吸着させることにより、ペロブスカイト型ナノ粒子をさらに制限する目的を達成できる。該制限作用は、ペロブスカイト型ナノ粒子のインサイチュ成長を制限すること、及び生成したペロブスカイト型ナノ粒子のマトリックスにおける運動を制限することを含む。それによって、該ペロブスカイト型ナノ粒子の安定性をさらに向上させ、該複合材料の性能を向上させることができる。具体的には、有機酸は、炭素数が少なくとも3の飽和アルカン酸又は不飽和アルカン酸であってもよく、長鎖有機アミンは、炭素数4〜24のアルキルアミン又は芳香族アミンであってもよい。なお、上記有機酸又は長鎖有機アミンは、上述した複合発光材料における表面配位子と同様の特徴及び利点を有するため、ここでは、その詳細については省略する。
【0078】
本発明の実施例によれば、前駆体溶液は、以下の手順に従って調製してもよい。第1溶液と第2溶液との質量比が1:(0.02〜1)となるように第1溶液と第2溶液を混合し、さらに、第2溶液と表面配位子との質量比が1:(0.001〜0.3)となるように上記表面配位子を加え、2h機械撹拌し、表面配位子が混合されている前駆体溶液を得る。それによって、該方法による複合発光材料の性能をさらに向上させることができる。
【0079】
移転するステップ(4)
本発明の実施例によれば、該ステップにおいて、均一に混合した前駆体溶液を適切な方法によりテンプレートに移転し、形状が異なる複合材料を形成する。テンプレートは、特定の形状を有する金型又は基板であってもよい。テンプレートの具体的な形態について、当業者であれば、実際の応用時の複合発光材料の形状に対する具体的な要求に応じて設計することができる。具体的には、前駆体溶液を基板又は金型に移転する方法は、スピンコート法、ディップコート法、エレクトロスピニング法、溶液沈降法、スプレーコート法、ドクターブレード法又はキャスティング法を含んでもよい。それによって、薄膜等の形状を有する複合発光材料を容易に得ることができる。
【0080】
乾燥するステップ(5)
本発明の実施例によれば、該ステップにおいて、前駆体溶液を有する上記テンプレートを乾燥し、上記複合発光材料を得る。具体的には、前駆体溶液が付着しているテンプレートを真空乾燥オーブンに入れ、一定の条件下で前駆体溶液中の有機溶媒を除去することができる。それによって、該有機溶媒系の揮発条件を制御することにより上記マトリックスの結晶、添加剤の分布、ペロブスカイト型ナノ粒子のコア形成及び成長を制御し、複合材料の性能を向上させることができる。例えば、本発明の具体的な実施例によれば、真空乾燥オーブンにおける気圧は0.01〜0.1MPa、温度は20〜110℃、乾燥処理は0.5〜48h、得られるペロブスカイト型ナノ粒子に基づく複合材料の厚さは0.001〜5mmであってもよい。
【0081】
本発明の別の態様において、上記のペロブスカイト/ポリマー複合発光材料の製造方法を提供する。具体的には、本発明のペロブスカイト/ポリマー複合発光材料の製造方法は、以下のステップを含む。
ステップ(1)では、ポリマーと有機溶媒との質量比を1:(1〜50)に制御するようにポリマーを有機溶媒に溶解させ、超音波により12時間混合し、ポリマーを完全に溶解させた後、均一で粘稠なポリマー溶液を得、質量比をポリマー:添加剤=1:(0〜0.5)に制御するようにポリマー溶液に添加剤を加え、超音波により1〜3時間均一に混合し、第1溶液を得る。上記有機溶媒は、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、リン酸トリメチル(TMP)、リン酸トリエチル(TEP)、N−メチルピロリドン(NMP)又はジメチルアセトアミド(DMAc)のいずれか1種であり、上記添加剤は、ポリビニルピロリドン(PVP)又はポリエチレングリコール(PEG)のいずれか1種である。
ステップ(2)では、モル比を無機ハロゲン化物塩:有機アミンハロゲン化物塩=1:(0.1〜3)に制御するように無機ハロゲン化物塩と有機アミンハロゲン化物塩の粉末を混合し、さらに、質量比を有機溶媒:無機ハロゲン化物塩=1:(0.01〜0.1)に制御するように有機溶媒を加え、混合後、15分間超音波処理し、透明混合液を得、超音波処理された透明混合液を濾過し、濾液を第2溶液として回収する。上記無機ハロゲン化物塩は、金属Ge、Sn、Pb、Sb、Bi、Cu又はMnのハロゲン化物塩のいずれか1種であり、上記有機溶媒は、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、リン酸トリメチル(TMP)、リン酸トリエチル(TEP)、N−メチルピロリドン(NMP)又はジメチルアセトアミド(DMAc)のいずれか1種であり、上記有機アミンハロゲン化物塩は、一般式がC2n+1NB(n≧1、BはCl、Br又はIのいずれか1種である)の飽和アルキルアミンハロゲン化物塩、又は一般式がC2n−1NB(n≧2、BはCl、Br又はIのいずれか1種)不飽和アルキルアミンハロゲン化物塩若しくは芳香族アミンハロゲン化物塩である。
ステップ(3)では、体積比を第1溶液:第2溶液=1:(0.02〜1)に制御するようにステップ(1)の第1溶液とステップ(2)の第2溶液を混合し、2時間超音波を用いて混合し、均一に混合した前駆体溶液を得る。
ステップ(4)では、スピンコート法、ディップコート法、エレクトロスピニング法、溶液沈降法、スプレーコート法又はキャスティング法により、上記ステップ(3)の前駆体溶液を、透明基板又は金型における厚さを0.001〜5mmに制御するように透明基板又は金型に移転し、均一に分散させ、その後、前駆体溶液が塗布されている基板又は金型を真空乾燥オーブンに入れ、真空乾燥オーブンにおける気圧が0.01〜0.1MPa、温度が30〜70℃である条件で0.5〜48h乾燥することで、有機溶媒を除去し、ペロブスカイト/ポリマー複合発光材料を得る。
【0082】
本発明の製造方法において、ペロブスカイト原料の種類、比率を調整することにより、様々な発光波長のペロブスカイト/ポリマー複合発光材料を製造することができる。また、ポリマー、溶媒、及び添加剤の種類を調整することにより、様々な粒径のペロブスカイト/ポリマー複合発光材料を製造することができる。
【0083】
本発明の別の態様において、半導体デバイスを提供する。本発明の実施例によれば、該半導体デバイスは、上記の複合発光材料を含む。それによって、上記のポリマーを含む複合発光材料をそのまま半導体デバイスにおける関連構造として使用することにより、該半導体デバイスの製造プロセスを簡略化し、生産コストを低減させるとともに、該半導体デバイスの性能を保証することができる。
【0084】
本発明の実施例によれば、半導体デバイスは、エレクトロルミネッセンスデバイス、フォトルミネッセンスデバイス、太陽電池、ディスプレイデバイス、センサーデバイス、圧電デバイス、又は非線形光学デバイスである。それによって、上記半導体デバイスの性能をさらに向上させることができる。本発明の別の実施例によれば、半導体デバイスは、フレキシブルデバイスであってもよい。それによって、上記半導体デバイスの性能をさらに向上させることができる。
【0085】
本発明の実施例によれば、該半導体デバイスは、フレキシブルデバイスであってよい。図2に示すように、上記複合発光材料は、薄膜であって、エレクトロルミネッセンスデバイスにおけるフレキシブル透明基板の形成にそのまま用いられるのもであってもよい。本発明の別の実施例によれば、該フレキシブルデバイスは、エレクトロルミネッセンス材料から構成された発光層をさらに備えてもよい。それにより、ペロブスカイト型ナノ粒子のフォトルミネッセンス特性とエレクトロルミネッセンスによる発光とを結合して、該フレキシブルデバイスの発光性能をさらに向上させることができる。当業者が理解できるように、上記フレキシブルデバイスは、そのデバイス性能を達成するための構造、例えば、図2に示される金属陰極、金属陽極、電子輸送層、正孔輸送層等をさらに備えてもよいが、ここでは、その詳細については省略する。
【0086】
本発明の実施例によれば、上記複合発光材料は、LCDディスプレイデバイスにも応用することができる。具体的には、図3に示すように、上記のような複合発光材料を成膜し、LCDバックライトモジュールの多層膜構造の間に挿入してもよく、上記複合発光材料をそのままLCDバックライトモジュールにおける導光板、拡散膜又はプリズム膜の上面若しくは下面に塗布してもよく、それにより、青色LEDを光源とする高色域LCDバックライトモジュールを実現することができる。
【0087】
本発明の実施例によれば、上記半導体デバイスが圧電デバイスである場合、図4に示すように、圧電効果を有するペロブスカイト粒子/ポリマー複合発光材料を採用し、合理的な電気的構造、例えば、金属電極、シールド層、導電性フレキシブル基板及び回路(図示せず)などの構造の設計により、外力作用による電位差を出力することで、圧電、センシング等の多機能を有する半導体デバイスを実現することができる。
【0088】
以下、具体的な実施例により本発明を説明する。なお、以下の実施例は、説明するためのものに過ぎず、本発明の範囲を制限しない。また、特記のない限り、条件又はステップが具体的に記載されていない方法は、いずれも常法であり、使用する試薬及び材料は商業的に入手できる。
【0089】
実施例1
ステップ(1)では、質量比をポリマー:有機溶媒=1:5に制御するようにポリマーを有機溶媒に溶解させ、12h超音波を用いて混合し、ポリマーを完全に溶解させた後、均一で粘稠なポリマー溶液を得、超音波により1hかけて均一に混合した溶液を第1溶液とした。上記ポリマーは、ポリ酢酸ビニル(PVAc)、上記有機溶媒は、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)であった。
【0090】
ステップ(2)では、モル比を無機金属ハロゲン化物:有機アミンハロゲン化物塩=1:1に制御するように、無機金属ハロゲン化物と有機アミンハロゲン化物塩の粉末を混合し、さらに質量比を有機溶媒:無機金属ハロゲン化物=1:0.01に制御するように有機溶媒を加え、混合後、15分間超音波処理することで透明混合液を得、超音波処理された透明混合液を濾過し、濾液を第2溶液として回収した。該ステップにおいて、上記無機金属ハロゲン化物は金属PbI、上記有機溶媒はN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、上記有機アミンハロゲン化物塩はCHNHIであった。
【0091】
ステップ(3)では、質量比を第1溶液:第2溶液=1:0.02に制御するようにステップ(1)の上記第1溶液とステップ(2)の上記第2溶液とを混合し、2h超音波処理することで、均一に混合した前駆体溶液を得た。
【0092】
ステップ(4)では、上記ステップ(3)の上記前駆体溶液を、スピンコート法により、透明なガラス片での前駆体溶液の厚さを0.01mmに制御するように透明なガラス片に移転し、均一に分散させた後、前駆体溶液が塗布されている透明なガラス片を真空乾燥オーブンに入れ、真空乾燥オーブンにおける気圧が0.01MPa、温度が30℃の条件で48h乾燥することで、有機溶媒を除去し、茶褐色のCHNHPbI量子ドット/PVAc複合薄膜を得た。該複合薄膜は、ガラス片から剥離することができ、365nmの紫外線ランプ下でローズレッド光を発光した。蛍光分光計の測定により、該複合薄膜は近赤外領域で発光し、発光ピーク位置は726nmあった。図5は、得られたCHNHPbI量子ドット/PVAc複合薄膜の蛍光発光スペクトルである。
【0093】
実施例2
以下のこと以外は実施例1と同様に操作した。即ち、第1溶液におけるポリマーと有機溶媒との質量比を1:50に制御し、第2溶液における有機溶媒と(無機金属ハロゲン化物+有機アミンハロゲン化物塩)との質量比を1:0.02に制御した。超音波による溶液混合の代わりに、機械撹拌による溶液混合を行い、真空乾燥オーブン温度を80℃に設定した。CHNHPbI量子ドット/PVAc複合薄膜を得た。
【0094】
実施例3
以下のこと以外は実施例1と同様に操作した。即ち、第1溶液において、ポリマーはセルロースアセテート(CA)、有機溶媒はジメチルスルホキシド(DMSO)、ポリマーと有機溶媒との質量比は1:10であった。質量百分率濃度比をポリマー溶液:添加剤=1:0.1に制御するようにポリビニルピロリドン(PVP)添加剤を加え、2h超音波を用いて混合した。第2有機溶媒において、有機溶媒はジメチルスルホキシド(DMSO)、有機アミンハロゲン化物塩はCHNHCl、無機金属ハロゲン化物は塩化鉛であり、無機金属ハロゲン化物と有機アミンハロゲン化物塩とのモル比を1:1.5に制御し、有機溶媒と無機金属ハロゲン化物との質量比を1:0.02に制御した。前駆体溶液において、第1溶液と第2溶液との体積比を1:0.3に制御した。前駆体溶液をディップコート法により透明なガラス片での前駆体溶液の厚さを0.5mmに制御するように透明なガラス片に移転し、真空乾燥オーブンにおける気圧が0.02MPa、温度が40℃の条件で40h乾燥することで、淡青色のCHNHPbCl量子ドット/CA複合薄膜を得た。該複合薄膜は、ガラス片から剥離することができ、365nmの紫外線ランプ下で淡青色光を発光した。蛍光分光計で該複合薄膜を測定した結果、発光ピーク位置は490nmであった。
【0095】
実施例4
以下のこと以外は実施例3と同様に操作した。即ち、第2溶液において、有機溶媒と(無機金属ハロゲン化物+有機アミンハロゲン化物塩)との質量比を1:(0.02)に制御した。ステップ(3)の超音波の代わりに、2h機械撹拌し、さらに高速分散機により5分間分散した。CHNHPbCl量子ドット/CA複合薄膜を得た。
【0096】
実施例5
以下のこと以外は実施例1と同様に操作した。即ち、第1溶液において、ポリマーはポリフッ化ビニリデン(PVDF)、有機溶媒はリン酸トリメチル(TMP)であり、ポリマーと有機溶媒との質量比を1:20に制御した。第2溶液において、無機ハロゲン化物塩は臭化鉛、有機溶媒はリン酸トリメチル(TMP)、有機アミンハロゲン化物塩はCHNHBrであり、無機ハロゲン化物塩と有機アミンハロゲン化物塩とのモル比を1:0.5、有機溶媒と無機ハロゲン化物塩との質量比を1:0.03に制御した。前駆体溶液において、第1溶液と第2溶液との体積比を1:0.04に制御した。前駆体溶液のガラス培養皿での厚さを1mmに制御するように前駆体溶液を溶液沈降法によりガラス培養皿に移転し、真空乾燥オーブンにおける気圧が0.03MPa、温度が50℃の条件で5h乾燥することで、CHNHPbBr量子ドット/PVDF複合薄膜を得た。該複合薄膜は、濃緑色であり、ガラス培養皿から剥離することができ、365nmの紫外線ランプ下で緑色光を発光した。蛍光分光計で該複合薄膜を測定した結果、発光ピーク位置は515nmであった。図6は、得られたCHNHPbBr量子ドット/PVDF複合薄膜の蛍光発光スペクトルであり、図7は、複合薄膜の光透過率スペクトルである。
【0097】
実施例6
以下のこと以外は実施例1と同様に操作した。即ち、第1溶液において、ポリマーはポリフッ化ビニリデン(PVDF)、添加剤はシリカ、有機溶媒はリン酸トリメチル(TMP)であった。ポリマーと有機溶媒との質量比を1:20に制御し、機械撹拌により12h混合し、ポリマーを完全に溶解させた後、ポリマー溶液と添加剤との質量百分率濃度を1:0.2に制御するように添加剤を加え、機械撹拌により3hかけて均一に混合した。第2溶液において、無機金属ハロゲン化物は臭化鉛、有機溶媒はリン酸トリメチル(TMP)、有機アミンハロゲン化物塩はCHNHBrであった。無機金属ハロゲン化物と有機アミンハロゲン化物塩とのモル比を1:0.5、有機溶媒と(無機金属ハロゲン化物+有機アミンハロゲン化物塩)との質量比を1:0.03に制御した。前駆体溶液において、第1溶液と第2溶液との体積比を1:0.04に制御し、2h機械撹拌した。前駆体溶液を前駆体溶液のガラス培養皿での厚さを1mmに制御するように溶液沈降法によりガラス培養皿に移転し、真空乾燥オーブンにおける気圧が0.03MPa、温度が50℃の条件で5h乾燥し、CHNHPbBr量子ドット/PVDF複合薄膜を得た。該複合薄膜は、濃緑色であり、ガラス培養皿から剥離することができ、365nmの紫外線ランプで緑色光を発光した。蛍光分光計で該複合薄膜を測定した結果、発光ピーク位置は515nmであった。図13は、複合薄膜の光透過率スペクトルである。
【0098】
本実施例で使用されるシリカ材料は、ネットワーク状のシリカであり、第201410177799.1号の中国特許(発明の名称「ナノ結晶ドープ光学ガラスの製造方法」)に開示された方法により合成してもよいが、北京理工大学から入手してもよい。
【0099】
実施例7
以下のこと以外は実施例1と同様に操作した。即ち、第1溶液において、質量比をポリマー:有機溶媒=1:30に制御し、磁気撹拌により12h混合し、質量百分率濃度をポリマー溶液:添加剤=11:0.2に制御するように添加剤を加え、磁気撹拌3h混合した。ポリマーはポリスルホン(PSF)、添加剤はポリエチレングリコール(PEG)、有機溶媒はリン酸トリエチル(TEP)であった。第2溶液において、モル比を無機金属ハロゲン化物:有機アミンハロゲン化物塩=1:2、質量比を有機溶媒:無機金属ハロゲン化物=1:0.04に制御した。無機金属ハロゲン化物はヨウ化ゲルマニウム、有機溶媒はリン酸トリエチル(TEP)、有機アミンハロゲン化物塩はヨウ化エチルアミンであった。前駆体溶液において、体積比を第1溶液:第2溶液=1:0.1に制御し、2h磁気撹拌した。前駆体溶液を透明PMMAでの前駆体溶液の厚さを0.15mmに制御するようにエレクトロスピニング法により透明PMMA片に移転し、真空乾燥オーブンにおける気圧が0.04MPa、温度が60℃の条件で10h乾燥することで有機溶媒を除去し、透明なPMMA片に付着した(CNHGeI量子ドット/PSF複合材料を得た。該複合材料は、黒色であり、発光領域は赤外領域であった。
【0100】
実施例8
以下のこと以外は実施例7と同様に操作した。第1溶液において、質量百分率濃度をポリマー溶液:添加剤=1:0.3に制御した。第2溶液において、有機溶媒と(無機金属ハロゲン化物+有機アミンハロゲン化物塩)との質量比を1:0.04に制御し、前駆体溶液を移転する際に、透明PMMA片での前駆体溶液の厚さを0.001mmに制御した。透明なPMMA片に付着した(CNHGeI量子ドット/PSF複合材料を得た。
【0101】
実施例9
以下のこと以外は実施例1と同様に操作した。即ち、第1溶液において、ポリマーはポリフッ化ビニリデン(PVDF)、有機溶媒はN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)であった。ポリマーと有機溶媒との質量比を1:40に制御した。第2溶液において、無機ハロゲン化物塩は臭化鉛、有機溶媒はN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、有機アミンハロゲン化物塩は塩化メチルアミンであった。無機ハロゲン化物塩と有機アミンハロゲン化物塩とのモル比を1:2.5、有機溶媒と無機ハロゲン化物塩との質量比を1:0.05に制御した。前駆体溶液において、第1溶液と第2溶液との体積比を1:0.06に制御した。前駆体溶液を透明ポリカーボネート(PC)片での前駆体溶液の厚さを2mmに制御するようにスプレーコート法により透明なポリカーボネート(PC)片に移転し、真空乾燥オーブンにおける気圧が0.05MPa、温度が70℃の条件で20h乾燥することで、透明ポリカーボネート(PC)片に付着したCHNHPbClBr3−x(0≦x≦3)量子ドット/PVDF複合材料を得た。該複合材料は、青緑色であり、紫外線ランプの照射下で青緑色であった。
【0102】
実施例10
ステップ(1)では、質量比をポリマー:有機溶媒=1:40に制御するようにポリマーを有機溶媒に溶解させ、機械撹拌により12h混合し、ポリマーを完全に溶解させた後、均一で粘稠なポリマー溶液を得、上記調製されたポリマー溶液に、質量百分率濃度をポリマー溶液:添加剤=1:0.4に制御するように添加剤を加え、機械撹拌により3hかけて均一に混合して得られた溶液を第1溶液とした。上記ポリマーは、質量比1:1のポリフッ化ビニリデン(PVDF)とポリアクリロニトリル(PAN)との混合物であり、上記添加剤は、DMFに溶解可能なカーボンナノチューブであり、上記有機溶媒は、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)であった。
【0103】
ステップ(2)では、モル比を無機金属ハロゲン化物:有機アミンハロゲン化物塩=1:2.5に制御するように無機金属ハロゲン化物と有機アミンハロゲン化物塩の粉末を混合し、さらに、質量比を有機溶媒:(無機金属ハロゲン化物+有機アミンハロゲン化物塩)=1:0.05に制御するように有機溶媒を加え、混合後、15分間超音波処理することで、透明混合液を得、超音波処理された透明混合液を濾過し、濾液を第2溶液として回収した。該ステップにおいて、上記無機金属ハロゲン化物は臭化鉛であり、上記有機溶媒はN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)であり、上記有機アミンハロゲン化物塩は塩化ホルムアミジンであった。
【0104】
ステップ(3)では、体積比を第1溶液:第2溶液=1:0.12に制御するようにステップ(1)の第1溶液とステップ(2)の第2溶液を混合し、さらに、第2溶液と有機配位子との質量比を1:0.01に制御するようにN,N’−ジフェニル−1,4−フェニレンジアミンを有機配位子として加え、2h機械撹拌し、さらに高速分散機により2min撹拌し、均一に混合した前駆体溶液を得た。
【0105】
ステップ(4)では、上記ステップ(3)の前駆体溶液をスプレーコート法により、前駆体溶液の透明なポリカーボネート(PC)片での厚さを0.005mmに制御するように透明なポリカーボネート(PC)片に移転し均一に分散させ、その後、前駆体溶液が塗布された透明なポリカーボネート(PC)片を真空乾燥オーブンに入れ、真空乾燥オーブンにおける気圧が0.05MPa、温度が70℃の条件で20h乾燥することで有機溶媒を除去し、透明なポリカーボネート(PC)片に付着したCH=NHNHPbClBr3−x(0≦x≦3)量子ドット/PVDF複合材料を得た。該複合材料は、青緑色であり、紫外線ランプの照射下で青緑色であった。
【0106】
実施例11
以下のこと以外は実施例1と同様に操作した。即ち、第1溶液において、質量比をポリマー:有機溶媒=1:50に制御し、機械撹拌により12h混合し、3h超音波を用いて混合した。ポリマーはポリフッ化ビニリデン(PVDF)、有機溶媒はN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)であった。第2溶液において、モル比を無機金属ハロゲン化物:有機アミンハロゲン化物塩=1:1に制御し、さらに質量比を有機溶媒:無機金属ハロゲン化物=1:0.06に制御するように有機溶媒を加えた。無機金属ハロゲン化物は臭化鉛、有機溶媒はN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、有機アミンハロゲン化物塩はヨウ化メチルアミンであった。前駆体溶液において、体積比を第1溶液:第2溶液=1:0.07に制御し、さらに、第2溶液と有機配位子との質量比が1:0.01となるように2−エチルヘキシルアミンを有機配位子として加え、2h機械撹拌した。前駆体溶液をキャスティング法により前駆体溶液の透明なシリカゲル片での厚さを2.5mmに制御するように透明なシリカゲル片に移転し、真空乾燥オーブンにおける気圧が0.06MPa、温度が70℃の条件で25h乾燥することで有機溶媒を除去し、透明シリカゲル片に付着したCHNHPbIBr3−x(0≦x≦3)量子ドット/PVDF複合材料を得た。該複合材料は、深紅色であった。図8は、複合材料の蛍光発光スペクトルである。
【0107】
実施例12
以下のこと以外は実施例11と同様に操作した。即ち、質量百分率濃度をポリマー溶液:添加剤=1:0.5に制御するように第1溶液にDMFに溶解可能なグラフェンを加え、機械撹拌により3h混合した。第2溶液において、有機溶媒と(無機金属ハロゲン化物+有機アミンハロゲン化物塩)との質量比は1:0.06であった。真空乾燥オーブンの温度を90℃に設定した。透明なシリカゲル片に付着したCHNHPbIBr3−x(0≦x≦3)量子ドット/PVDF複合材料を得た。
【0108】
実施例13
以下のこと以外は実施例1と同様に操作した。即ち、第1溶液において、質量比をポリマー:有機溶媒=1:25に制御し、さらに、質量比をポリマー溶液:添加剤=1:0.5に制御するようにポリマー溶液に添加剤を加え、超音波により3hかけて均一に混合した。ポリマーはポリフッ化ビニリデン(PVDF)、添加剤はポリビニルピロリドン(PVP)、有機溶媒はN−メチルピロリドン(NMP)であった。第2溶液において、モル比を無機ハロゲン化物塩:有機アミンハロゲン化物塩=1:3、質量比を有機溶媒:無機ハロゲン化物塩=1:0.07に制御した。無機ハロゲン化物塩はヨウ化スズ、有機溶媒はN−メチルピロリドン(NMP)、有機アミンハロゲン化物塩はヨウ化メチルアミンであった。前駆体溶液において、体積比を第1溶液:第2溶液=1:0.08に制御した。前駆体溶液をキャスティング法により、研磨したポリテトラフルオロエチレン容器での前駆体溶液の厚さを3mmに制御するように研磨したポリテトラフルオロエチレン容器に移転し、均一に分散させ、真空乾燥オーブンにおける気圧が0.07MPa、温度が50℃の条件で30h乾燥することで有機溶媒を除去し、黒色のCHNHSnI量子ドット/PVDF複合材料を得た。
【0109】
実施例14
以下のこと以外は実施例1と同様に操作した。即ち、第1溶液において、質量比をポリマー:有機溶媒=1:25に制御し、さらに、質量百分率濃度をポリマー溶液:添加剤=1:0.5に制御するように添加剤を加え、超音波により3hかけて均一に混合した。ポリマーはポリアクリロニトリル(PAN)、添加剤はカーボンナノチューブ、有機溶媒はN−メチルピロリドン(NMP)であった。第2溶液において、モル比を無機金属ハロゲン化物:有機アミンハロゲン化物塩=1:3に制御し、さらに、質量比を有機溶媒:(無機金属ハロゲン化物+有機アミンハロゲン化物塩)=1:0.07に制御するように有機溶媒を加えた。無機金属ハロゲン化物はヨウ化スズ、有機溶媒はN−メチルピロリドン(NMP)、有機アミンハロゲン化物塩はヨウ化メチルアミンであった。前駆体溶液において、体積比を第1溶液:第2溶液=1:0.08に制御し、さらに、第2溶液と有機配位子との質量比が1:0.02となるようにオクタデシルアミンを有機配位子として加えた。前駆体溶液をキャスティング法により、研磨したポリテトラフルオロエチレン容器での前駆体溶液の厚さを5mmに制御するように研磨したポリテトラフルオロエチレン容器に移転し、均一に分散させ、真空乾燥オーブンにおける気圧が0.07MPa、温度が100℃の条件で30h乾燥することで有機溶媒を除去し、黒色のCHNHSnI量子ドット/PAN複合材料を得た。
【0110】
実施例15
以下のこと以外は実施例1と同様に操作した。即ち、第1溶液において、質量比をポリマー:有機溶媒=1:15に制御し、ポリマーはポリフッ化ビニリデン(PVDF)、有機溶媒はN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)であった。第2溶液において、モル比を無機金属ハロゲン化物:有機アミンハロゲン化物塩=1:1.5、質量比を有機溶媒:無機金属ハロゲン化物=1:0.08に制御し、無機金属ハロゲン化物は臭化鉛、有機溶媒はN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、有機アミンハロゲン化物塩は臭化フェニルエチルアミンであった。前駆体溶液において、体積比を第1溶液:第2溶液=1:0.09に制御した。前駆体溶液をスピンコート法により、透明なガラス片での前駆体溶液の厚さを3.5mmに制御するように透明なガラス片に移転し、均一に分散し、真空乾燥オーブンにおける気圧が0.08MPa、温度が60℃の条件で35h乾燥することで有機溶媒を除去し、淡黄色の(CNHPbBr量子ドット/PVDF複合薄膜を得た。該複合薄膜は、ガラス片から剥離することができ、その発光ピーク位置は、535nmであった。図9は、複合材料の蛍光発光スペクトルである。
【0111】
実施例16
以下のこと以外は実施例15と同様に操作した。即ち、第1溶液において、質量比が1:1のポリフッ化ビニリデン(PVDF)とシアノセルロース(CNA)との混合物をポリマーとして使用した。第2溶液において、質量比を有機溶媒:(無機金属ハロゲン化物+有機アミンハロゲン化物塩)=1:0.08に制御した。前駆体溶液において、第2溶液と有機配位子との質量比が1:0.03となるようにn−オクチルアミンを有機配位子として加え、前駆体溶液のガラス片での厚さを0.03mmに制御するように前駆体溶液をガラス片に移転した。最終的に、(CNHPbBr量子ドット/PVDF複合薄膜を得た。
【0112】
実施例17
以下のこと以外は実施例1と同様に操作した。即ち、第1溶液において、質量比をポリマー:有機溶媒=1:10に制御し、12h超音波を用いて混合した後、質量比をポリマー溶液:添加剤=1:0.3に制御するように添加剤を加え、3h超音波を用いて混合した。ポリマーは芳香族ポリアミド(PA)、添加剤はポリエチレングリコール(PEG)、有機溶媒はN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)であった。第2溶液において、モル比を無機ハロゲン化物塩:有機アミンハロゲン化物塩=1:1.5、質量比を有機溶媒:無機ハロゲン化物塩=1:0.09に制御し、無機ハロゲン化物塩は臭化銅、有機溶媒はN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、有機アミンハロゲン化物塩は臭化メチルアミンであった。前駆体溶液において、体積比を第1溶液:第2溶液=1:1に制御した。前駆体溶液をキャスティング法により前駆体溶液のガラス培養皿での厚さを4mmに制御するようにガラス培養皿に移転し、均一に分散し、真空乾燥オーブンにおける気圧が0.09MPa、温度が70℃の条件で40h乾燥することで有機溶媒を除去し、濃紫色のCHNHCuBr量子ドット/PA複合薄膜を得た。
【0113】
実施例18
以下のこと以外は実施例1と同様に操作した。即ち、第1溶液において、質量比をポリマー:有機溶媒=1:10に制御し、12h超音波を用いて混合した後、質量百分率濃度をポリマー溶液:添加剤=1:0.3に制御するように添加剤を加え、超音波により3hかけて均一に混合した。ポリマーはポリフッ化ビニリデン(PVDF)、上記添加剤はDMFに溶解可能なグラフェン、上記有機溶媒はN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)であった。第2溶液において、モル比を無機金属ハロゲン化物:有機アミンハロゲン化物塩=1:1.5、質量比を有機溶媒:(無機金属ハロゲン化物+有機アミンハロゲン化物塩)=1:0.09に制御した。無機金属ハロゲン化物は塩化銅、有機溶媒はN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、有機アミンハロゲン化物塩は臭化メチルアミンであった。前駆体溶液において、体積比を第1溶液:第2溶液=1:1に制御し、さらに、オレイルアミンとn−ヘキシルアミンとの体積比を1:1、第2溶液と有機配位子との質量比を1:0.04に制御するようにオレイルアミン及びn−ヘキシルアミンを有機配位子として加えた。前駆体溶液をスピンコート法により前駆体溶液のガラス片での厚さを0.05mmに制御するように透明なガラス片に移転し、その後、前駆体溶液が塗布されたガラス片を真空乾燥オーブンに入れ、真空乾燥オーブンにおける気圧が0.09MPa、温度が70℃の条件で40h乾燥することで有機溶媒を除去し、濃紫色のCHNHCuClBr3−x/PVDF複合薄膜を得た。
【0114】
実施例19
以下のこと以外は実施例1と同様に操作した。即ち、第1溶液において、質量比をポリマー:有機溶媒=1:10に制御し、12h超音波を用いて混合した後、質量比をポリマー溶液:添加剤=1:0.4に制御するように添加剤を加え,3h超音波を用いて混合した。ポリマーはポリイミド(PI)、添加剤はポリビニルピロリドン(PVP)、有機溶媒はN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)であった。第2溶液において、モル比を無機ハロゲン化物塩:有機アミンハロゲン化物塩=1:1.5、質量比を有機溶媒:無機ハロゲン化物塩=1:0.1に制御した。無機ハロゲン化物塩は塩化ビスマス、有機溶媒はN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、有機アミンハロゲン化物塩はヨウ化フェニルエチルアミンであった。前駆体溶液において、体積比を第1溶液:第2溶液=1:0.5に制御し、前駆体溶液をキャスティング法により前駆体溶液のガラス培養皿での厚さを4.5mmに制御するようにガラス培養皿に移転し、真空乾燥オーブンにおける気圧が0.1MPa、温度が70℃の条件で48h乾燥することで有機溶媒を除去し、白色の(CNHBiCl量子ドット/PI複合材料を得た。
【0115】
実施例20
以下のこと以外は実施例1と同様に操作した。即ち、第1溶液において、質量比をポリマー:有機溶媒=1:10に制御した。ポリマーはポリカーボネート(PC)、有機溶媒はN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)であった。第2溶液において、モル比を無機ハロゲン化物塩:有機アミンハロゲン化物塩=1:1.5、質量比を有機溶媒:無機ハロゲン化物塩=1:0.05に制御した。有機溶媒はN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、有機アミンハロゲン化物塩はヨウ化メチルアミンであった。前駆体溶液において、体積比を第1溶液:第2溶液=1:0.5に制御した。前駆体溶液をキャスティング法により前駆体溶液の透明なPMMA金型における厚さを5mmに制御するように透明なPMMA金型に移転し、真空乾燥オーブンにおける気圧が0.01MPa、温度が30℃の条件で48h乾燥することで有機溶媒を除去し、黒紫色のCHNHMnI量子ドット/PC複合材料を得た。
【0116】
実施例21
以下のこと以外は実施例1と同様に操作した。即ち、第1溶液において、質量比をポリマー:有機溶媒=1:10に制御し、12h超音波を用いて混合し、質量百分率濃度をポリマー溶液:添加剤=1:0.4に制御するように添加剤を加え、3h超音波を用いて混合した。ポリマーはポリイミド(PI)、添加剤は窒化ホウ素ナノシート、有機溶媒はN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)であった。第2溶液において、モル比を無機金属ハロゲン化物:有機アミンハロゲン化物塩=1:1.5、質量比を有機溶媒:(無機金属ハロゲン化物+有機アミンハロゲン化物塩)=1:0.1に制御した。無機金属ハロゲン化物は塩化ビスマス、有機溶媒はN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、有機アミンハロゲン化物塩はヨウ化フェニルエチルアミンであった。前駆体溶液において、質量比を第1溶液:第2溶液=1:0.5に制御し、さらに、オレイン酸とn−オクチルアミンとの体積比を1:1、第2溶液と有機配位子との質量比を1:0.05に制御するようにオレイン酸及びn−オクチルアミンを有機配位子として加えた。前駆体溶液をキャスティング法により前駆体溶液のガラス培養皿での厚さを4mmに制御するようにガラス培養皿に移転し、真空乾燥オーブンにおける気圧が0.1MPa、温度が70℃の条件で48h乾燥することで有機溶媒を除去し、白色の(CNHBiCl量子ドット/PI複合材料を得た。
【0117】
実施例22
以下のこと以外は実施例1と同様に操作した。即ち、第1溶液において、質量比をポリマー:有機溶媒=1:10に制御した。ポリマーはポリカーボネート(PC)、有機溶媒はN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)であった。第2溶液において、モル比を無機金属ハロゲン化物:有機アミンハロゲン化物塩=1:1.5、質量比を有機溶媒:(無機金属ハロゲン化物+有機アミンハロゲン化物塩)=1:0.05に制御した。無機金属ハロゲン化物はヨウ化マンガン、有機溶媒はN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、有機アミンハロゲン化物塩はヨウ化メチルアミンであった。前駆体溶液において、体積比を第1溶液:第2溶液=1:0.5に制御し、さらに、カプロン酸及びドデシルアミンを有機配位子として、カプロン酸とドデシルアミンとの体積比を1:1、第2溶液と有機配位子との質量比を1:0.02に制御するように加えた。前駆体溶液をスピンコート法により前駆体溶液の透明なPMMA金型における厚さを0.07mmに制御するように透明なPMMA金型に移転し、真空乾燥オーブンにおける気圧が0.01MPa、温度が30℃の条件で48h乾燥することで有機溶媒を除去し、黒紫色のCHNHMnI量子ドット/PC複合材料を得た。
【0118】
実施例23
以下のこと以外は実施例1と同様に操作した。即ち、第1溶液において、質量比をポリマー:有機溶媒=1:10に制御した。ポリマーはポリスチレン(PS)、有機溶媒はN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)であった。第2溶液において、モル比を無機ハロゲン化物塩:有機アミンハロゲン化物塩=1:1.5、質量比を有機溶媒:無機ハロゲン化物塩=1:0.05に制御した。無機ハロゲン化物塩は塩化アンチモン、有機溶媒はN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、有機アミンハロゲン化物塩は塩化メチルアミンであった。前駆体溶液において、体積比を第1溶液:第2溶液=1:0.5に制御した。前駆体溶液をスピンコート法により前駆体溶液の透明石英ガラス片での厚さを0.5mmに制御するように透明な石英ガラス片に移転し、真空乾燥オーブンにおける気圧が0.01MPa、温度が70℃の条件で8h乾燥することで有機溶媒を除去し、白色のCHNHSbCl量子ドット/PS複合材料を得た。
【0119】
実施例24
以下のこと以外は実施例1と同様に操作した。即ち、第1溶液において、質量比をポリマー:有機溶媒=1:15に制御した。ポリマーはポリスチレン(PS)、有機溶媒はN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)であった。第2溶液において、モル比を無機金属ハロゲン化物:有機アミンハロゲン化物塩=1:1.5、質量比を有機溶媒:(無機金属ハロゲン化物+有機アミンハロゲン化物塩)=1:0.05に制御した。無機金属ハロゲン化物は塩化アンチモン、有機溶媒はN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、有機アミンハロゲン化物塩は塩化メチルアミンであった。前駆体溶液において、体積比を第1溶液:第2溶液=1:0.7に制御し、さらに、オレイン酸を有機配位子として第2溶液と有機配位子との質量比を1:0.04に制御するように加えた。前駆体溶液をスピンコート法により前駆体溶液の透明石英ガラス片での厚さを0.25mmに制御するように透明石英ガラス片に移転し、真空乾燥オーブンにおける気圧が0.01MPa、温度が70℃の条件で8h乾燥することで有機溶媒を除去し、白色のCHNHSbCl量子ドット/PS複合材料を得た。
【0120】
実施例25
以下のこと以外は実施例1と同様に操作した。即ち、第1溶液において、質量比をポリマー:有機溶媒=1:10に制御した。ポリマーはポリフッ化ビニリデン(PVDF)、有機溶媒はジメチルアセトアミド(DMAc)であった。第2溶液において、モル比を無機ハロゲン化物塩:有機アミンハロゲン化物塩=1:1.5、質量比を有機溶媒:無機ハロゲン化物塩=1:0.05に制御した。無機ハロゲン化物塩はヨウ化スズ、有機溶媒はジメチルアセトアミド(DMAc)、有機アミンハロゲン化物塩は4−アミノ−1−ブテンヨウ素塩であった。前駆体溶液において、体積比を第1溶液:第2溶液=1:0.5に制御した。前駆体溶液をスピンコート法により前駆体溶液のITOガラスでの厚さを0.2mmに制御するようにITOガラスに移転し、真空乾燥オーブンにおける気圧が0.02MPa、温度が30℃の条件で48h乾燥することで有機溶媒を除去し、赤色の(CH=CHCHCHNHSnI量子ドット/PVDF複合材料を得た。
【0121】
実施例26
以下のこと以外は実施例1と同様に操作した。即ち、第1溶液において、質量比をポリマー:有機溶媒=1:5に制御した。ポリマーは芳香族ポリアミド(PA)、有機溶媒はジメチルアセトアミド(DMAc)であった。第2溶液において、モル比を無機金属ハロゲン化物:有機アミンハロゲン化物塩=1:1.5、質量比を有機溶媒:(無機金属ハロゲン化物+有機アミンハロゲン化物塩)=1:0.02に制御した。無機金属ハロゲン化物はヨウ化スズ、有機溶媒はジメチルアセトアミド(DMAc)、有機アミンハロゲン化物塩は4−アミノ−1−ブテンヨウ素塩であった。前駆体溶液において、体積比を第1溶液:第2溶液=1:0.8に制御し、さらに、バレリアン酸及び3−ビニルヘキシルアミンを有機配位子として第2溶液と有機配位子との質量比を1:0.04に制御するように加えた。前駆体溶液をスピンコート法により前駆体溶液のITOガラスでの厚さを0.1mmに制御するようにITOガラスに移転し、真空乾燥オーブンにおける気圧が0.02MPa、温度が30℃の条件で48h乾燥することで有機溶媒を除去し、赤色の(CH=CHCHCHNHSnI量子ドット/PA複合材料を得た。
【0122】
実施例27
以下のこと以外は実施例1と同様に操作した。即ち、第1溶液において、質量比をポリマー:有機溶媒=1:10に制御した。ポリマーはポリフッ化ビニリデン(PVDF)とセルロースアセテート(CA)との混合物、有機溶媒はジメチルアセトアミド(DMAc)であった。第2溶液において、モル比を無機ハロゲン化物塩:有機アミンハロゲン化物塩=1:1.5、質量比を有機溶媒:無機ハロゲン化物塩=1:0.05に制御した。無機ハロゲン化物塩は臭化鉛、有機溶媒はジメチルアセトアミド(DMAc)、有機アミンハロゲン化物塩は臭化メチルアミンであった。前駆体溶液において、体積比を第1溶液:第2溶液=1:0.5に制御した。前駆体溶液をスピンコート法により前駆体溶液のFTOガラスでの厚さを0.3mmに制御するようにFTOガラスに移転し、真空乾燥オーブンにおける気圧が0.02MPa、温度が30℃の条件で48h乾燥することで有機溶媒を除去し、緑色のCHNHPbBr量子ドット/PVDF−CA複合薄膜を得た。該複合薄膜は、ガラス片から剥離することができ、良好な可撓性を有し、365nmの紫外線ランプで強い緑色光を発光した。蛍光分光計で該複合薄膜を測定した結果、発光ピーク位置は515nmであった。図10は、得られたCHNHPbBr量子ドット/PVDF−CAフレキシブル複合薄膜の蛍光発光スペクトルであり、図11は、得られたCHNHPbBr量子ドット/PVDF−CAフレキシブル複合薄膜の日光及び紫外線ランプでの実際の効果を示す。
【0123】
実施例28
以下のこと以外は実施例1と同様に操作した。即ち、第1溶液において、質量比をポリマー:有機溶媒=1:35に制御し、12h超音波を用いて混合した後、質量百分率濃度をポリマー溶液:添加剤=1:0に制御するように添加剤を加え、3h超音波を用いて混合した。ポリマーはポリフッ化ビニリデン(PVDF)とセルロースアセテート(CA)との混合物、有機溶媒はジメチルアセトアミド(DMAc)であった。第2溶液において、モル比を無機金属ハロゲン化物:有機アミンハロゲン化物塩=1:1.5、質量比を有機溶媒:無機金属ハロゲン化物=1:0.01に制御した。無機金属ハロゲン化物は臭化鉛、有機溶媒はジメチルアセトアミド(DMAc)、有機アミンハロゲン化物塩は臭化メチルアミンであった。前駆体溶液において、体積比を第1溶液:第2溶液=1:0.4に制御し、さらに、1,2−ジフェニルエチルアミンを有機配位子として第2溶液と有機配位子との質量比が1:0.04となるように加えた。前駆体溶液をスピンコート法により前駆体溶液のFTOガラスでの厚さを0.75mmに制御するようにFTOガラスに移転し、真空乾燥オーブンにおける気圧が0.02MPa、温度が30℃の条件で48h乾燥することで有機溶媒を除去し、緑色のCHNHPbBr量子ドット/PVDF−CA複合薄膜を得た。該複合薄膜は、ガラス片から剥離することができ、良好な可撓性を有し、365nmの紫外線ランプで強い緑色光を発光した。蛍光分光計で該複合薄膜を測定した結果、発光ピーク位置は515nmであった。
【0124】
実施例29
以下のこと以外は実施例1と同様に操作した。即ち、第1溶液において、質量比をポリマー:有機溶媒=1:35に制御した。ポリマーはポリフッ化ビニリデン(PVDF)、有機溶媒はジメチルアセトアミド(DMAc)であった。第2溶液において、質量比を有機溶媒:無機金属ハロゲン化物=1:0.01に制御するように無機金属ハロゲン化物に有機溶媒を加え、質量比を脱イオン水:ハロゲン化セシウム=1:1、モル比を無機金属ハロゲン化物:ハロゲン化セシウム=1:1.5に制御するようにハロゲン化セシウムに微量の脱イオン水を加え、ハロゲン化セシウムの水溶液を無機金属ハロゲン化物の有機溶媒にゆっくりと加え、混合後、15分間超音波処理し、透明な混合液を得、超音波処理された透明な混合液を濾過し、得られた濾液を第2溶液として回収した。無機金属ハロゲン化物は臭化鉛、有機溶媒はジメチルアセトアミド(DMAc)、ハロゲン化セシウムは塩化セシウムであった。前駆体溶液において、体積比を第1溶液:第2溶液=1:0.4に制御し、さらに、2−ブチルテトラデシルアミンを有機配位子として第2溶液と有機配位子との質量比が1:0.04となるように加えた。前駆体溶液のITOガラスでの厚さを0.075mmに制御するように前駆体溶液をスピンコート法によりITOガラスに移転し、真空乾燥オーブンにおける気圧が0.02MPa、温度が30℃の条件で48h乾燥し、淡緑色のCsPbBrCl3−x量子ドット/PVDF複合薄膜を得た。該複合薄膜は、ガラス片から剥離することができ、良好な可撓性を有し、365nmの紫外線ランプ下で青色光を発光した。蛍光分光計で該複合薄膜を測定した結果、発光ピーク位置は450nmであった。
【0125】
実施例30
以下のこと以外は実施例29と同様に操作した。即ち、第1溶液において、質量比をポリマー:有機溶媒=1:35に制御し、12h超音波を用いて混合した後、質量百分率濃度をポリマー溶液:添加剤=1:0に制御するように添加剤を加え、3h超音波を用いて混合した。ポリマーはポリフッ化ビニリデン−トリフルオロエチレン共重合体(P(VDF−TrFE))、有機溶媒はジメチルアセトアミド(DMF)であった。第2溶液において、モル比を無機金属ハロゲン化物:ハロゲン化セシウム=1:1、質量比を有機溶媒:無機金属ハロゲン化物=1:0.01に制御した。無機金属ハロゲン化物はヨウ化鉛、有機溶媒はジメチルアセトアミド(DMF)、ハロゲン化セシウムは臭化セシウムであった。前駆体溶液において、体積比を第1溶液:第2溶液=1:0.4に制御し、さらに、1−フェニルエチルアミンを有機配位子として第2溶液と有機配位子との質量比が1:0.04となるように加えた。前駆体溶液をスピンコート法により前駆体溶液のITOガラスでの厚さを0.06mmに制御するようにITOガラスに移転し、真空乾燥オーブンにおける気圧が0.02MPa、温度が30℃の条件で48h乾燥することで有機溶媒を除去し、深紅色のCsPbBr3−x量子ドット/P(VDF−TrFE)複合薄膜を得た。該複合薄膜は、ガラス片から剥離することができ、良好な可撓性を有し、365nmの紫外線ランプ下で赤色光を発光した。蛍光分光計で該複合薄膜を測定した結果、発光ピーク位置は630nmであった。
【0126】
実施例31
本実施例5で製造されたCHNHPbBr量子ドット/PVDF複合材料を使用して高色域の白色LED発光デバイスを製造した。具体的には、以下の通りである。
【0127】
ステップ(1)シリカゲル樹脂/赤色蛍光粉末の混合溶液の調製
質量比1:1でシリカゲル6550A及び6550Bを合計5g秤量し、25mL小型ビーカーに入れ、ガラス棒で10分間撹拌し、その後1gの赤色蛍光粉末(KSF)を秤量し、小型ビーカーに入れ、10分間撹拌し続け、均一に混合した後、真空引きにより撹拌時に発生した気泡を除去し、混合溶液を得た。
【0128】
ステップ(2)シリカゲル樹脂/赤色蛍光粉末の複合薄層の調製
ステップ(1)で調製された混合溶液を表面が滑らかなガラス片に均一に塗布し、その後、150℃のオーブンで1h硬化させ、赤色光を発光するシリカゲル/KSF複合薄膜を得た。
【0129】
ステップ(3)高色域の白色LEDデバイスの製造
調製されたCHNHPbBr量子ドット/PVDF複合薄膜とステップ(2)で調製されたシリカゲル/KSF複合薄膜を組合せて白色LEDデバイス構造に応用することで、高色域の白色LEDデバイスを得た。図12は、上記白色LEDデバイスの構造模式図、及び製造された高色域の白色LEDの色座標図である。
【0130】
本実施例で使用されるKSF赤色蛍光粉末は、公開番号がCN103429701A(発明の名称は「色が安定したマンガンドープした燐光体」)の明細書に開示された方法により合成してもよいが、北京理工大学から入手してもよい。
【0131】
実施例32
実施例5、11で調製されたCHNHPbBr量子ドット/PVDF複合材料及びCHNHPbBr3−x量子ドット/PVDF複合材料を使用して、高色域の白色LED発光デバイスを製造した。具体的には、以下の通りである。
【0132】
ステップ(1)CHNHPbBr3−x量子ドット/PVDF発光層の調製
実施例5の実験プログラムに従って前駆体溶液を調製し、上記前駆体溶液を滴下ピペットにより吸い取って、前駆体溶液の厚さを0.2mmに制御するようにパッチ型青色LEDの反射カップに移転し、その後、前駆体溶液を含むパッチ型青色LEDを真空乾燥オーブンに入れ、0.01MPa、70℃で2h乾燥した後、取り出した。
【0133】
ステップ(2)ポリメチルメタクリレート(PMMA)薄膜中間層の製造
0.5gのPMMA粉末を秤量し10mLガラス瓶に入れ、さらに、5mLのトリクロロメタン溶媒を量り取り、ガラス瓶に入れ、4h超音波を用いて混合し、透明なPMMA溶液を得た。上記PMMA溶液を滴下ピペットにより吸い取って、PMMA溶液の厚さを0.1mmより薄く制御するようにステップ(1)で製造されたパッチ型青色LEDにおけるCHNHPbBr3−x量子ドット/PVDF発光層上に塗布し、真空乾燥オーブンに入れ、0.05MPa、50℃で5h乾燥した後、取り出した。
【0134】
ステップ(3)CHNHPbBr量子ドット/PVDF発光層の製造
実施例3の実験プログラムに従って前駆体溶液を調製し、上記前駆体溶液を滴下ピペットにより吸い取って、前駆体溶液の厚さを0.1mmに制御するようにステップ(2)で製造されたパッチ型青色LEDにおけるPMMA薄膜上に移転し、真空乾燥オーブンに入れ、0.01MPa、70℃で2h乾燥した後、取り出し、高色域の白色LED発光デバイスを得た。
【0135】
実施例33
本実施例5で調製されたペロブスカイト/ポリマー複合発光材料を使用して、液晶ディスプレイ(LCD)用の高色域バックライトを製造した。以下、42インチのLCDを例として、具体的な手順を説明する。
【0136】
ステップ(1)42インチのCHNHPbBr3−x量子ドット/PVDF発光層の製造
実施例11の実験プログラムに従って所要量の前駆体溶液を調製し、上記前駆体溶液をドクターブレード装置により前駆体溶液の厚さを0.2mmに制御するようにサイズの対応するガラス基板に均一に移転し、その後、前駆体溶液を含むガラス基板を真空乾燥オーブンに入れ、0.01MPa、70℃で2h乾燥した後、取出した。その後、膜移転技術により調製されたCHNHPbBr3−x量子ドット/PVDF発光膜をLCDバックライトモジュールにおける導光板、拡散膜又はプリズム膜に移転した。又は、プロセスを簡略化するために、上記前駆体溶液をそのままドクターブレード装置によりLCDバックライトモジュールの導光板、拡散膜又はプリズム膜に移転し、そして同様の条件で乾燥することで一体の発光層を形成してもよい。
【0137】
ステップ(2)42インチのCHNHPbBr量子ドット/PVDF発光層の調製
実施例5の実験プログラムに従って前駆体溶液を調製し、上記前駆体溶液をドクターブレード装置により前駆体溶液の厚さを0.1mmに制御するように基板(ここで使用した基板は、ガラス板又はLCDバックライトモジュールの導光板、拡散膜、プリズム膜を含む)に均一に移転し、真空乾燥オーブンに入れ、0.01MPa、70℃で2h乾燥した後、取り出して高発光効率のCHNHPbBr量子ドット/PVDF発光膜を得た。
【0138】
ステップ(3)LCDバックライトモジュールの組み立て
ステップ(1)、(2)で得られた発光膜をLCDバックライトモジュールに挿入し、LCDバックライトモジュールの光源を青色光源に変更してもよい。青色光源から発した光は、導光板を通し、さらに赤色の発光層及び緑色の発光層を通すことにより、最後に赤、緑、青の三原色の複合した白色を形成した。
【0139】
実施例34
本実施例は、ペロブスカイト/ポリマー複合発光材料を使用して圧電デバイスを製造した。具体的には、以下の通りである。
【0140】
ステップ(1)では、実施例18の実験プログラムに従って前駆体溶液を調製し、その後、前駆体溶液の厚さを0.1mmに制御するように上記前駆体溶液を基板(ここで使用した基板は、ITO導電性ガラス、又は表面に金メッキ/銀メッキしたPET、PCフレキシブルポリマー基板を含む)に均一に塗布し、真空乾燥オーブンに入れ、0.01MPa、70℃で2h乾燥した後、取り出してCHNHCuClBr3−x/PVDF複合薄膜を得た。
【0141】
ステップ(2)では、調製されたCHNHCuClBr3−x/PVDF複合薄膜の表面に金電極又は銀電極をメッキし、そして電極上に保護層を塗布することにより、簡単な圧電デバイスの原型を得、導線により複合薄膜に基づく圧電デバイスの両極をオシロスコープに接続した。
【0142】
ステップ(3)では、製造された複合薄膜に基づく圧電デバイスに周期的な作用力を印加することにより、オシロスコープに周期的なパルス電圧信号が表示されることができる。
【符号の説明】
【0143】
1 ペロブスカイト型ナノ粒子
2 マトリックス
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
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図10
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図13