(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6920021
(24)【登録日】2021年7月28日
(45)【発行日】2021年8月18日
(54)【発明の名称】発泡成形用の加工助剤、これを含む塩化ビニル樹脂系発泡成形組成物、及び発泡成形製品
(51)【国際特許分類】
C08F 220/14 20060101AFI20210805BHJP
C08L 27/06 20060101ALI20210805BHJP
C08J 9/06 20060101ALI20210805BHJP
【FI】
C08F220/14
C08L27/06
C08J9/06CEV
【請求項の数】5
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2018-508152(P2018-508152)
(86)(22)【出願日】2016年8月31日
(65)【公表番号】特表2018-526502(P2018-526502A)
(43)【公表日】2018年9月13日
(86)【国際出願番号】US2016049721
(87)【国際公開番号】WO2017040679
(87)【国際公開日】20170309
【審査請求日】2019年7月22日
(31)【優先権主張番号】62/212,156
(32)【優先日】2015年8月31日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】590002035
【氏名又は名称】ローム アンド ハース カンパニー
【氏名又は名称原語表記】ROHM AND HAAS COMPANY
(74)【代理人】
【識別番号】110000589
【氏名又は名称】特許業務法人センダ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】マイケル・ティー・ペトロ
(72)【発明者】
【氏名】ポール・ヴァン・リーネン
【審査官】
藤井 勲
(56)【参考文献】
【文献】
特公昭52−049020(JP,B1)
【文献】
特開昭58−052327(JP,A)
【文献】
国際公開第99/043741(WO,A1)
【文献】
特開平11−166090(JP,A)
【文献】
特開2001−089591(JP,A)
【文献】
国際公開第2007/036096(WO,A1)
【文献】
国際公開第2010/061630(WO,A1)
【文献】
中国特許出願公開第103060061(CN,A)
【文献】
米国特許第08702716(US,B1)
【文献】
国際公開第2015/045928(WO,A1)
【文献】
国際公開第2015/045930(WO,A1)
【文献】
国際公開第2015/108101(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 220/00 − 220/70
C08L 27/00 − 27/24
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
メタクリル酸メチル30〜70重量%と、メタクリル酸ヘキシル30〜70重量%と、他の共重合性モノマー0〜20重量%と、の重合によって得られるコポリマーを含む、発泡成形用の加工助剤であって、前記コポリマーが、以下の特性、(a)ASTM D2857に準拠して、クロロホルム中1mg/mL、25℃で測定した、17dL/gを超える還元粘度、を有する、加工助剤。
【請求項2】
塩化ビニル樹脂100重量部、及び請求項1に記載の発泡成形用の加工助剤1〜25重量部を含む、塩化ビニル樹脂系発泡成形組成物。
【請求項3】
前記組成物が、130%以上の発泡倍率を示す、請求項2に記載の塩化ビニル樹脂系発泡成形組成物。
【請求項4】
請求項3に記載の塩化ビニル樹脂系発泡成形組成物から形成される発泡成形製品。
【請求項5】
請求項2に記載の塩化ビニル樹脂系発泡成形組成物を押出成形することを含む、塩化ビニル樹脂を発泡成形する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発泡成形用の加工助剤、加工助剤を使用する発泡成形の方法、加工助剤を含む塩化ビニル樹脂系発泡成形組成物、及び発泡成形製品に関する。
【背景技術】
【0002】
建築及び建設業界では、ポリ(塩化ビニル)(PVC)は、発泡形態でしばしば使用される。泡沫は、化学発泡剤と高分子量加工助剤との配合によって生成される。押出成形時に、発泡剤は、分解して高圧のPVC溶融物中に溶解するガスを生成する。ガスがダイを出て、圧力が低下すると、ガスは、PVCを元の体積の2〜3倍に膨張させる気泡を形成する。この時点で、PVCの気泡が破壊するので、高分子量加工助剤を添加して、溶融粘度を上昇させ、絡み合いを与えて、PVC溶融物が弛緩するのを防止し、ならびに付加的なダイスウェル及びさらなる発泡倍率を提供する。市販の発泡加工助剤は、通常1−20Mg/molの極端に高い分子量で、最大30%の他のポリアクリルを有するポリ(メタクリル酸メチル)コポリマーである。
【0003】
発泡加工助剤の効率に影響を及ぼす3つの主要な変数には、分子量、分子構造、及びガラス転移温度(T
g)がある。一般に、より高い分子量は、より高い溶融粘度を有し、より絡み合いを与えるので、より高い発泡倍率を生成する。より少ない分岐及び架橋は、ポリマーがPVCへさらによく混合し得るので、より高い発泡倍率を生成する。一方で、最適なT
gが存在するようであり、高溶融粘度を提供するが、押出成形中に依然絡み合いをほどくことができる。これらの特性を提供するために、典型的には、アクリル酸エチル(EA)またはアクリル酸ブチル(BA)のいずれか/両方の総量15〜20%が使用される。EAまたはBAのいずれかを用いると、結果として生じるコポリマーは、MMAのEAまたはBAに対する交差成長が非常に遅いため、任意の構成成分ホモポリマーよりも低い分子量を有する。BAは、ポリマー主鎖中の第三級水素が、取り除かれやすいので、有意な架橋を促進する。したがって、改善された発泡助剤が、この分野において依然望まれている。
【発明の概要】
【0004】
第1の実施形態において、本開示は、メタクリル酸メチル30〜90重量%と、メタクリル酸ブチル(BMA)、メタクリル酸ペンチル(PMA)、及びメタクリル酸ヘキシル(HMA)からなる群から選択される1つ以上のモノマーの総量10〜70重量%と、他の共重合性モノマー0〜20重量%と、の重合によって得られるコポリマーを含む、発泡成形用の加工助剤であって、コポリマーが、ASTM D2857に準拠して、クロロホルム中1mg/mL、25℃で測定した、8dL/gを超える還元粘度を有する、加工助剤を提供する。
【0005】
第2の実施形態において、本開示は
、塩化ビニル樹脂100重量部、及び
本明細書に開示されているいずれかの実施形態に従う発泡成形用途のための加工助剤1〜25重量部を含む、塩化ビニル樹脂系発泡成形組成物を提供する。
【0006】
第3の実施形態において、本開示は、本明細書で開示されているいずれかの実施形態による、塩化ビニル樹脂系発泡成形組成物から形成される発泡成形製品を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本開示による発泡成形用の加工助剤は、メタクリル酸メチル30〜90重量%(wt%)の重合によって得られるコポリマーを含む。メタクリル酸メチル30〜90重量%のすべての個々の値及び部分範囲は、本明細書に含まれ、開示される、例えば、メタクリル酸メチル由来の単位の量は、下限30、35、40、45、50、55、60、65、75、または80重量%から、上限35、40、45、50、55、60、65、70、80、または90重量%までの範囲であってもよい。例えば、メタクリル酸メチル由来の単位の量は、30〜90重量%、または代替としては30〜55重量%、または代替としては55〜70重量%、または代替としては40〜60重量%の範囲であってもよい。
【0008】
本開示による発泡成形用の加工助剤は、メタクリル酸ブチル(BMA)、メタクリル酸ペンチル(PMA)、及びメタクリル酸ヘキシル(HMA)からなる群から選択される1つ以上のモノマーの総量10〜70重量%の重合によって得られるコポリマーを含む。10〜70重量%のすべての個々の値及び部分範囲は、本明細書に含まれ、開示される、例えば、BMA、PMA、及びHMAの1つ以上由来の単位の量は、下限10、15、20、25、30、35、40、45、50、または55重量%から、上限20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、または70重量%までの範囲であってもよい。例えば、BMA、PMA、及びHMAの1つ以上由来の単位の量は、10〜70重量%、または代替としては15〜42重量%、または代替としては37〜70重量%、または代替としては25〜50重量%の範囲であってもよい。
【0009】
特定の実施形態において、1つ以上のモノマーはBMAである。
【0010】
特定の実施形態において、1つ以上のモノマーはPMAである。
【0011】
特定の実施形態において、1つ以上のモノマーはHMAである。
【0012】
別の実施形態において、本開示は、メタクリル酸メチル30〜70重量%と、メタクリル酸ブチル(BMA)、メタクリル酸ペンチル(PMA)、及びメタクリル酸ヘキシル(HMA)からなる群から選択される1つ以上のモノマーの総量15〜70重量%と、他の共重合性モノマー0〜20重量%と、の重合によって得られるコポリマーからなる、発泡成形用の加工助剤であって、コポリマーが、ASTM D2857に準拠して、クロロホルム中1mg/mL、25℃で測定した、8dL/gを超える還元粘度を有する、加工助剤を提供する。
【0013】
別の実施形態において、本開示は、メタクリル酸メチル30〜90重量%と、メタクリル酸ブチル(BMA)、メタクリル酸ペンチル(PMA)、及びメタクリル酸ヘキシル(HMA)からなる群から選択される1つ以上のモノマーの総量10〜70重量%と、他の共重合性モノマー0〜20重量%と、の重合によって得られるコポリマーから本質的になる、発泡成形用の加工助剤であって、コポリマーが、ASTM D2857に準拠して、クロロホルム中1mg/mL、25℃で測定した、8dL/gを超える還元粘度を有する、加工助剤を提供する。
【0014】
本開示による発泡成形用の加工助剤は、他の共重合性モノマー0〜20重量%の重合によって得られるコポリマーを含む。0〜20重量%のすべての個々の値及び部分範囲は、本明細書に含まれ、開示される、例えば、他の共重合性モノマー由来の単位の量は、下限0、5、10、または15重量%から、上限5、10、15、または20重量%までの範囲であってもよい。例えば、他の共重合性モノマー由来の単位の量は、0〜20重量%、または代替としては0〜10重量%、または代替としては10〜20重量%、または代替としては5〜15重量%の範囲であってもよい。
【0015】
他の共重合性モノマーとしては、メタクリレートと共重合可能な任意のモノマーが挙げられる。このようなモノマーとしては、例えばアクリレート、メタクリレート、架橋剤、及びグラフト結合剤が挙げられる。例示的なモノマーとしては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、アクリル酸エチルヘキシル(EHA)、アクリル酸オクチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸ペンチル、メタクリル酸ヘキシル、メタクリル酸エチルヘキシル(EHMA)、メタクリル酸オクチル、スチレン、酢酸ビニル、メタクリル酸アセトアセトキシエチル、アクリル酸、メタクリル酸、アクリルアミド、メタクリルアミド、メタクリル酸グリシジル、無水マレイン酸が挙げられる。
【0016】
発泡成形用の結果として生じる加工助剤は、ASTM D2857に準拠して、クロロホルム中1mg/mL、25℃で測定した、8dL/gを超える還元粘度を示す。8dl/gを超えるすべての個々の値及び部分範囲は、本明細書に含まれ、開示される。例えば、発泡成形用の加工助剤は、8dL/gを超える、または代替としては9dL/gを超える、または代替としては10dL/gを超える、または代替としては11dL/gを超える、または代替としては14dL/gを超える、または代替としては17dL/gを超える還元粘度を示すことができる。
【0017】
発泡成形用の加工助剤は、任意の既知の乳化重合方法を使用して製造することができる。
【0018】
もっとも一般的な押出成形の実行は、ダイから自由に発泡し、続いて、ある種の較正、及びセルカまたは統合スキンプロセスを伴う。これらのPVC発泡プロセス、及び典型的な配合成分の記述は、Handbook of Polymeric Foams and Foam Technology,Ed.Klemper,D.,Sendijarevic,V.,2.sup.nd edition,Hanser Publishers,Munich,2004 chapter 9で見つけることができる。
【0019】
別の実施形態において、発泡成形用の加工助剤は、多段階乳化重合プロセスを使用して製造することができる。このようなプロセスは、米国特許出願公開第2015/0183944号、及び同第2014/0371396号に開示されおり、これらの開示は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0020】
発泡成形用の加工助剤は、典型的には単離され、自由流動性粉末またはペレットを形成する。粉末粒子は、50〜500ミクロン平均直径を有する。
【0021】
本明細書で開示されている塩化ビニル樹脂系発泡成形組成物は
、塩化ビニル樹脂100重量部、及び
本明細書に開示されているいずれかの実施形態に従う前記発泡成形用途のための加工助剤1〜25重量部を含む。加工助剤の1〜25重量部のすべての個々の値及び部分範囲は、本明細書に開示され、含まれる、例えば、塩化ビニル系発泡成形組成物中の加工助剤の量は、下限1、3、6、9、12、15、または18重量部から、上限2、5、8、11、14、17、または20重量部までの範囲であってもよい。例えば、塩化ビニル系発泡成形組成物中の加工助剤の量は、1〜25重量部、または代替として1〜12重量部、または代替として12〜25重量部、または代替として8〜18重量部であってもよい。
【0022】
別の実施形態において、塩化ビニル樹脂系発泡成形組成物は、熱安定化剤、潤滑剤、耐衝撃性改良剤、充填剤、着色剤、及び他の加工助剤からなる群から選択される、1つ以上の添加剤を含むことができる。
【0023】
本開示はさらに、本明細書で開示されているいずれかの実施形態による、塩化ビニル樹脂系発泡成形組成物から形成される発泡成形製品を提供する。
【0024】
特定の実施形態において、発泡成形製品は、発泡構造部材である。
【0025】
別の実施形態において、本開示は、本明細書で開示されているいずれかの実施形態による、発泡成形用の加工助剤、塩化ビニル樹脂系発泡成形組成物、及び発泡成形製品を提供するが、コポリマーが、他の共重合性モノマーの存在がなく、メタクリル酸メチル60〜70重量%、及びメタクリル酸ブチル30〜40重量%の重合によって得られることを除く。
【0026】
別の実施形態において、本開示は、本明細書で開示されているいずれかの実施形態による、発泡成形用の加工助剤、塩化ビニル樹脂系発泡成形組成物、及び発泡成形製品を提供するが、塩化ビニル樹脂系発泡成形組成物が、130%以上の発泡倍率を示すことを除く。130%以上のすべての個々の値及び部分範囲は、本明細書に含まれ、開示される。例えば、塩化ビニル樹脂系発泡成形組成物は、130%以上、または代替として132%以上、または代替として135%以上、または代替として138%以上の発泡倍率を示すことができる。
【0027】
本開示はさらに、本明細書で開示されているいずれかの実施形態による、塩化ビニル樹脂100重量部、及び加工助剤1〜25重量部を含む、塩化ビニル樹脂系発泡成形組成物を押出成形することを含む、塩化ビニル樹脂を発泡成形するためのプロセスを提供する。
【実施例】
【0028】
以下の実施例は、本発明を例示するが、本発明の範囲を限定することを意図しない。
【0029】
すべての実施例を、表1の様々なモノマー組成物を使用して、以下のように調製した。
【0030】
乳化重合を使用して、発泡加工助剤を製造した。モノマーのエマルジョン、DOWFAX 2A1、及び水を混合し、反応フラスコに添加した。内容物を不活性化した後、ホルムアルデヒドスルホキシル酸ナトリウム、及び鉄塩によって活性化される過硫酸ナトリウムレドックス開始剤系用いて重合を開始した。重合の完了時に、ラテックスを冷却し、乾燥した。DOWFAX 2A1は、The Dow Chemical Company (Midland,MI,USA)から市販されている、アルキルジフェニルオキシドジスルホネート界面活性剤である。
【0031】
比較例1〜5及び発明例1〜11の発泡成形用の加工助剤を、PCT公開第WO2013/095876号において記述されているポリ塩化ビニル樹脂の発泡成形において使用した。その開示は、参照により本明細書に完全に組み込まれている。加工助剤を、7.2phrの濃度で添加した。PCT公開第WO2013/095876号はさらに、本明細書で使用される発泡倍率を測定するための方法について記述している。表1はさらに、実施例の加工助剤のそれぞれに関して、発泡倍率結果を示す。還元粘度を、ASTM D2857に準拠して、クロロホルム中1mg/mL、25℃で測定した。表2は、特定の発明例及び比較例に関しての還元粘度測定値を示す。
【0032】
【表1】
【0033】
【表2】