(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1を参照して本発明の実施形態にかかる開封片付き包装体について説明する。
図1は本実施形態にかかる開封片付き包装体の全体正面図である。開封片付き包装体1は包装体2および包装体2に接合された開封片3から構成されている。
【0015】
〔包装体〕
包装体2は、帯状の母材フィルムから形成された筒状体の内部に内容物を充填し、その両端を閉じることで形成されている。
【0016】
(筒状体)
筒状体は、帯状の母材フィルムが筒状に巻かれ、長手方向に伸びる両側辺が重ね合わせられ、重ね合わせられた両側辺が長手方向に沿って溶着されることにより筒状の形状を形成している。帯状の母材フィルムの両側辺の重ね合わせは、母材フィルムの長手方向に伸びる一方の辺の表(おもて)面と他方の辺の裏面とを接触させ重ね合わせる封筒貼り、および母材フィルムの長手方向に伸びる両側の辺の表面同士または裏面同士を接触させ重ね合わせる合掌貼りのいずれの方法で重ね合わせてもよい。
【0017】
内部に内容物が充填された筒状体は、その両端が閉じられ、閉鎖部4を形成している。本実施形態において、筒状体の両端の閉鎖は、内容物が充填された筒状体の各端部を集束させ、集束させた部分を合成樹脂テープで両側から挟み、集束させた部分を合成樹脂テープとともに加熱溶着することにより結紮することで行っている。しかしながら内容物が筒状体内に密封できれば結紮する方法に限定されず、例えば、筒状体の端部をアルミワイヤー等で封止する方法であってもよい。合成樹脂テープを形成する合成樹脂としては、塩化ビニリデン−塩化ビニル共重合体、塩化ビニリデン−メチルメタクリレート共重合体、または塩化ビニリデン−塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体を好適に用いることができる。なお、合成樹脂テープを用いずに、筒状体の集束させた部分を直に溶着して結紮してもよい。
【0018】
(母材フィルム)
母材フィルムとしては高分子フィルム(以下、第1高分子フィルム)が用いられる。母材フィルムから筒状体を形成する際に母材フィルムどうしを高速で加熱溶着させるため、母材フィルムは高周波シールが可能な塩化ビニリデン系共重合体樹脂から形成されていることが望ましい。塩化ビニリデン系共重合体樹脂は、塩化ビニリデン系共重合体を主成分として含有する樹脂である。本明細書において塩化ビニリデン系共重合体とは、塩化ビニリデンと、塩化ビニリデンと共重合可能な単量体との共重合体を意図している。
【0019】
塩化ビニリデンと共重合可能な単量体としては、例えば塩化ビニル、酢酸ビニル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸ラウリルまたはアクリル酸ステアリル等のアクリル酸アルキルエステル(アルキル基の炭素数1〜18);メタクリル酸メチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸ラウリル、またはメタクリル酸ステアリル等のメタクリル酸アルキルエステル(アルキル基の炭素数1〜18);アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のシアン化ビニル;スチレン等の芳香族ビニル;酢酸ビニル等の炭素数1〜18の脂肪族カルボン酸のビニルエステル;炭素数1〜18のアルキルビニルエーテル;アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸等のビニル重合性不飽和カルボン酸;マレイン酸、フマル酸、イタコン酸等のビニル重合性不飽和カルボン酸のアルキルエステル(部分エステルを含み、アルキル基の炭素数1〜18);その他、ジエン系単量体、官能基含有単量体、多官能性単量体等を挙げることができる。これらの単量体は、単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの単量体の中でも、塩化ビニル、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、アクリル酸ブチルまたは酢酸ビニルが好ましく、特に好ましくは塩化ビニルである。したがって、特に好ましい塩化ビニリデン系共重合体は、塩化ビニリデン−塩化ビニル共重合体である。
【0020】
塩化ビニリデン系共重合体における塩化ビニリデン単量体単位の含有比率は、好ましくは70質量%以上、より好ましくは80質量%以上である。塩化ビニリデン単量体単位の含有比率の上限は、特にないが、押出加工性等の観点から、通常99質量%、多くの場合95質量%である。
【0021】
第1高分子フィルムを用いた包装体の120℃における収縮率は、9%以上であることが好ましく、11%以上であることがより好ましく、12%以上であることがさらに好ましい。第1高分子フィルムを用いた包装体の収縮率は、例えば、第1高分子フィルムを形成する樹脂を、押し出し機スクリューを用いて溶融押し出した後、二軸延伸することによって制御することが可能である。しかしながら、制御方法はこれに限らない。
【0022】
本明細書における第1高分子フィルムを用いた包装体の120℃における収縮率とは、充填物が詰まっている包装体の長手方向に20mm間隔の印を入れた後、120℃、0.2MPaの熱水中で15分間加圧加熱した後、印の間隔を測定し、その変化率を%単位で算出した値である。
【0023】
第1高分子フィルムを形成する際、押出加工性の改善等のために種々の添加剤を含有させることができる。添加剤としては、例えば、可塑剤、安定剤、抗酸化剤、界面活性剤、および顔料等が挙げられ、用途に応じて、適宜組み合わせて用いることができる。有機化合物および無機化合物のいずれも、添加剤として使用することができる。有機化合物は、重合体であってもよい。
【0024】
可塑剤としては、例えば、アセチルトリブチルサイトレート(ATBC)、ジアセチル化モノラウリルグリセライド(DALG)、ジブチルセバケート(DBS)およびジオクチルセバケート(DOS)等が挙げられる。
【0025】
安定剤としては、例えば、エポキシ化大豆油(ESBO)またはエポキシ化亜麻仁油(ELO)等のエポキシ化油;脂肪酸アルキルエステルのアミド誘導体;水酸化マグネシウム;およびピロリン酸四ナトリウム等が挙げられる。
【0026】
抗酸化剤としては、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチル−フェノール(BHT)、トリエチレングリコール−ビス[3−(3−tert−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、2,4−ジメチル−6−S−アルキルフェノール、2,4−ジメチル−6−(1−メチルペンタデシル)フェノールおよびこれらの混合物等のフェノール系抗酸化剤;チオジプロピオン酸およびジステアリルチオジプロピオネート等のチオエーテル系抗酸化剤;ならびにトリスノニルフェニルホスファイトおよびジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト等のホスファイト系抗酸化剤等が挙げられる。
【0027】
界面活性剤としては、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル等のノニオン系界面活性剤等が挙げられる。
【0028】
顔料としては、アゾ系顔料(例えば、不溶性モノアゾ系顔料、不溶性ジスアゾ系顔料、縮合アゾ系顔料)、フタロシアニン系顔料、アントラキノン系顔料、キナクリドン系顔料、チオインジゴ系顔料、ペリノン系顔料、ジオキサジン系顔料、イソインドリノン系顔料およびイソインドリン系顔料等の有機顔料;酸化チタン、コバルトブルー、二酸化ケイ素、アルミニウム系顔料、マイカおよびカーボンブラック等の無機顔料;ならびに炭酸カルシウムおよび酸化マグネシウム等の体質顔料等が挙げられる。
【0029】
また第1高分子フィルムには滑剤が含有されていてもよい。本実施形態では、一般に使用される滑剤を選択することができ、無機滑剤または有機滑剤を使用することができ、好ましくは有機滑剤である。
【0030】
無機滑材としては、二酸化珪素、ゼオライトおよび炭酸カルシウム等を挙げることができる。
【0031】
有機滑剤としては、従来有機滑剤として使用されている飽和脂肪酸アミド、不飽和脂肪酸アミドおよび置換アミド等を好ましく使用することができる。飽和脂肪酸アミドとしては、例えば、ブチルアミド、吉草酸アミド、カプロン酸アミド、カプリル酸アミド、カプリン酸アミド、ラウリン酸アミド、ミリスチン酸アミド、パルミチン酸アミド、ステアリン酸アミド、アラキジン酸アミドおよびベヘニン酸アミド等を使用することができる。不飽和脂肪酸アミドとしては、オレイン酸アミドおよびエルカ酸アミド等を使用することができる。また、N−オレイルパルチミン酸アミド、N−ステアリルステアリン酸アミド、N−ステアリルオレイン酸アミド、N−オレイルステアリン酸アミドおよびN−ステアリルエルカ酸アミド等の置換アミド、メチロールステアリン酸アミド等のメチロールアミド、メチレンビスステアリン酸アミドおよびエチレンビスヒドロキシステアリン酸アミド等の飽和脂肪酸ビスアミド、エチレンビスエルカ酸アミド等の不飽和脂肪酸ビスアミド、ならびにm−キシリレンビスヒドロキシステアリン酸アミド等の芳香族系ビスアミド等を使用することができる。
【0032】
(内容物)
包装体2に充填される内容物は、食用としての魚の肉である魚肉練り肉(魚肉練製品および魚肉ソーセージの原料)が主原料として好適に用いられるが、獣肉用の練肉あるいはプロセスチーズ等であってもよい。魚肉練り肉は、典型的には、当初糊状であり、加熱する前はゾル状であり、加熱によりゲル状となる。
【0033】
〔開封片〕
開封片3は、包装体2の開封を容易にするために包装体2に取り付けられた、高分子フィルム(以下、第2高分子フィルム)によって形成された部材である。より詳細には、開封片3はその縁の一部をつまむことができるように包装体2に接合されている。
【0034】
開封片3を構成する第2高分子フィルムは、後の工程で、第1高分子フィルムによって形成された包装体2に接合されることを踏まえ、塩化ビニリデン系共重合体樹脂から形成されていることが望ましい。塩化ビニリデン系共重合体樹脂としては、上記(母材フィルム)にて説明した塩化ビニリデン系共重合体を挙げることができる。特に好ましい塩化ビニリデン系共重合体は、塩化ビニリデン−塩化ビニル共重合体である。塩化ビニリデン−塩化ビニル共重合体樹脂から形成されている場合、1種類の塩化ビニリデン−塩化ビニル共重合体により構成されていてもよく、2種類以上の塩化ビニリデン−塩化ビニル共重合体を含んで構成されていてもよい。
【0035】
塩化ビニリデン系共重合体における塩化ビニリデン単量体単位の含有比率は、好ましくは70質量%以上、より好ましくは80質量%以上である。塩化ビニリデン単量体単位の含有比率の上限は、特にないが、押出加工性等の観点から、通常99質量%、多くの場合95質量%である。
【0036】
第2高分子フィルムの120℃における収縮率は15.0%以上であり、好ましくは17.0%以上であり、より好ましくは18.0%以上である。第2高分子フィルムの120℃における収縮率が上記の範囲にあることにより、開封片付き包装体1の開封を行うために開封片3を剥がす際に、開封片3が途中で切れてしまうことを防ぐことができる。
【0037】
開封片3が途中で切れてしまうことを防止するという観点からは、第2高分子フィルムの120℃における収縮率の上限はないが、例えば、30%以下であり、好ましくは28%以下であり、より好ましくは、25%以下である。一方、開封片付き包装体1を加熱凝固処理する際に外観不良となることを防ぐ観点からは、第2高分子フィルムの120℃における収縮率は、23.0%以下であることが好ましい。
【0038】
本明細書における第2高分子フィルムの120℃における収縮率とは、高分子フィルムをMD方向(押出流れ方向)に100mm、TD方向(幅方向)に20mm切り取ったサンプル片において、120℃、0.2MPaの熱水中で15分間加圧加熱した後、MD方向の寸法を測定し、その変化率を%単位で算出した値である。
【0039】
第2高分子フィルムの収縮率が大きいほど、開封片3をつまんでめくるときのフィルムの抵抗力も大きくなると考えられる。したがって、開封片3が引き伸ばされて厚みが薄くなることによる強度低下が起きにくくなり、開封片3が切れにくくなるものと推定される。
【0040】
第2高分子フィルムの収縮率は、例えば、第2高分子フィルムを形成する樹脂を、押し出し機スクリューを用いて溶融押し出した後、二軸延伸することによって制御することが可能である。例えば、第2高分子フィルムが塩化ビニリデン−塩化ビニル共重合体である場合に、第2高分子フィルムの120℃における収縮率を上記範囲に制御するためには、塩化ビニリデン−塩化ビニル共重合体樹脂を溶融押出し、インフレーション二軸延伸(MD方向:1.2〜6.0倍、TD方向:1.2〜6.0倍)した後に、MD方向とTD方向を5〜10%緩和(収縮)処理し、さらに、テンター装置を用いて、フィルムのMD方向とTD方向を収縮しないように拘束(緊張)した状態で40℃〜110℃で熱処理(緊張熱処理)することが望ましい。
【0041】
また、第1高分子フィルムを用いた包装体の収縮率との関係でいえば、第2高分子フィルムにおける収縮率の方が第1高分子フィルムを用いた包装体における収縮率よりも大きく、その差が0を超え6.0以下であることが好ましい。第2高分子フィルムにおける収縮率と第1高分子フィルムを用いた包装体における収縮率との差は、より好ましくは、1以上6以下であり、さらに好ましくは、2以上6以下である。第1高分子フィルムを用いた包装体の収縮率と第2高分子フィルムの収縮率とがこの関係を満たすことにより、包装体2を構成する第1高分子フィルムが開裂し易くなり、結果として、開封片3の切れを防止することができる。第1高分子フィルムを用いた包装体の収縮率と第2高分子フィルムの収縮率とが上記の関係を満たすことにより、開封片付き包装体1を加熱凝固処理した後、包装体2を開封しようとすると、包装体2を構成する第1高分子フィルムの接合部に応力集中が起こり、第1高分子フィルムが開裂しやすくなるものと推定される。
【0042】
第2高分子フィルムを形成する際、押出加工性の改善等のために種々の添加剤を含有することができる。使用可能な添加剤としては、第1高分子フィルムの形成に用いられ得る添加剤と同じである。
【0043】
本実施形態における開封片3は矩形形状を有しているが、その一端を手指でつまんで包装体2からめくるように引っ張ることができる限り形状は特に制限されるものではなく、正方形、矩形、三角形および五角形等の多角形ならびに円形および楕円形等の形状をとることができる。
【0044】
上述の通り、開封片付き包装体1において、開封片3は包装体2に接合されている。具体的には、開封片3の接合部において、包装体2に接合されている。
図2に本実施形態における開封片3の接合部を示す。接合部は主接合部5および仮押さえ部6によって構成されている。主接合部5および仮押さえ部6は、開封片3を包装体2に接着させるとともに、包装体を開封する際に起点となる切れ目を包装体に与えるものである。仮押さえ部6のシール強度は、主接合部5のシール強度よりも弱いことが好ましい。超音波接合により主接合部5および仮押さえ部6を設ける場合、仮押さえ部6におけるアンビル高さを主接合部5におけるアンビル高さと変えることで、仮押さえ部6のシール強度を、主接合部5のシール強度よりも弱くすることができる。あるいは、仮押さえ部6におけるアンビルまたはホーンをローレット加工することで、仮押さえ部6のシール強度を、主接合部5のシール強度よりも弱くすることができる。
【0045】
開封片3を包装体2に接合させる方法は、超音波溶着が好適に用いられるが、高周波溶着等の他の接合方法を用いることもできる。また、開封片3を包装体2に接合させる方法は溶着に限定されず、例えば接着剤を用いるといった接着等の方法を用いてもよい。
【0046】
開封片3の接合部の形状は
図2に示す形態に制限されるものではない。例えば
図3の(a)から(f)のような形態であってもよく、さらに別の形態であってもよい。
【0047】
〔開封片付き包装体の製造〕
開封片付き包装体1は、以下の要領で製造される。筒状体となる帯状の母材フィルムおよび開封片3を形成するための第2高分子フィルムが、それぞれ原反として製造装置に設置される。そして、帯状の母材フィルムは引き出され、第2高分子フィルムは開封片3として切り出され、母材フィルムと開封片3とが接合部によって接合される。開封片3が接合された帯状の母材フィルムは、両側辺が重なるように筒状に巻かれ、重ね合わせられた部分に縦シールがなされ、筒状体が形成される。その後、筒状体に内容物が充填され、所定の間隔(包装体2の長さ)で内容物がしごかれて筒状体内に内容物の不存在部が形成される。この不存在部が束ねられ、合成樹脂テープが巻かれて溶着されることによりシールされる。そして、端部の密封性が保たれるように束ねられた不存在部のシールされた中間が切断される。以上により、開封片付き包装体1が得られる。開封片付き包装体1は、
必要に応じてその後に加熱凝固処理が行われる。
【実施例】
【0048】
〔実施例1〕
(母材フィルムの製造)
塩化ビニリデン(VD)および塩化ビニル(VC)の重合時におけるモノマー仕込み質量比(VD/VC)が81/19である共重合体(100質量部)に、アセチルトリブチルサイトレート(ATBC)、ジブチルセバケート(DBS)およびエポキシ化植物油を合計8質量部配合し、さらにエポキシ基含有ポリマー、界面活性剤、ステアリン酸アミドおよび二酸化珪素を合計1.4質量部加えて、ポリ塩化ビニリデン系樹脂を得た。次に、得られたポリ塩化ビニリデン系樹脂を、直径90mmの押出機スクリューを用いて溶融押出した後、二軸延伸することにより、母材フィルムを得た。
【0049】
(開封片用フィルムの製造)
塩化ビニリデン(VD)および塩化ビニル(VC)の重合時におけるモノマー仕込み質量比(VD/VC)が80/20である共重合体(100質量部)に、アセチルトリブチルサイトレート(ATBC)、ジブチルセバケート(DBS)およびエポキシ化植物油を合計8質量部配合し、さらにステアリン酸アミドおよび二酸化珪素を合計0.1質量部加えて、ポリ塩化ビニリデン系樹脂を得た。次に、得られたポリ塩化ビニリデン系樹脂を、直径90mmの押出機スクリューを用いて円筒状に溶融押出した後、インフレーション二軸延伸し(MD:2.7倍、TD:4.1倍)、140℃でMD方向に8%、TD方向に7%緩和(収縮)させて(加熱ゾーンの通過時間は約1秒間)、フィルムaを得た。その後、フィルムaをさらに60℃で1分間、MD方向とTD方向に収縮しないように拘束して熱処理(以下、緊張熱処理)して、総厚80μm(厚さ40μmのフィルムの2層重ね)の開封片用フィルムbを得た。
【0050】
(開封片付き包装体の製造)
母材フィルムを幅80mmに裁断した。また、開封片用フィルムを幅20mmに裁断し、開封片を作製した。開封片を長さ12mmに裁断した後、超音波シールによって、母材フィルムに開封片を超音波溶着(接合部形状は
図2)することで、開封片付き母材フィルムを得た。開封片付き母材フィルムを筒状に成形しながら、充填物(魚肉50質量%、氷水28.6質量%、植物油10質量%、コーンスターチ8質量%、大豆たんぱく2質量%および食塩1.4質量%を含むペースト)を自動充填包装機(クレハ社製、商品名:KAP3000型自動充填包装機)にて充填し、開封片付き母材フィルムの端部を収束しつつ、補強テープを添えて超音波溶着で溶融シールし、密封して包装体を得た。なお、筒状の開封片付き母材フィルムにおいては、折幅(円周の半分の長さ)が36mm、カット長(包装体から充填物を抜き取り、筒状の開封片付き母材フィルムを平らに押し広げて長手方向に測定した際の長さ)が210mm、質量が65gとなるように条件を調整した。包装体を120℃、0.2MPaの熱水中で15分間加圧加熱殺菌し、加熱殺菌後の包装体を得た。
【0051】
〔実施例2〕
開封片用フィルムの製造において、フィルムaをさらに80℃で1分間、緊張熱処理して、総厚80μm(厚さ40μmのフィルムの2層重ね)の開封片用フィルムcを得た。
【0052】
母材フィルムおよび開封片付き包装体は、実施例1と同様にして製造した。
【0053】
〔実施例3〕
開封片用フィルムの製造において、フィルムaをさらに100℃で1分間、緊張熱処理して、総厚80μm(厚さ40μmのフィルムの2層重ね)の開封片用フィルムdを得た。
【0054】
母材フィルムおよび開封片付き包装体は、実施例1と同様にして製造した。
【0055】
〔実施例4〕
開封片用フィルムの製造において、フィルムaをさらに110℃で1分間、緊張熱処理して、総厚80μm(厚さ40μmのフィルムの2層重ね)の開封片用フィルムeを得た。
【0056】
母材フィルムおよび開封片付き包装体は、実施例1と同様にして製造した。
【0057】
〔比較例1〕
開封片用フィルムの製造において、フィルムaをさらに110℃で5秒間、MD方向に0.8%、TD方向に25%収縮させることにより、総厚80μm(厚さ40μmのフィルムの2層重ね)の開封片用フィルムfを得た。
【0058】
母材フィルムおよび開封片付き包装体は、実施例1と同様にして製造した。
【0059】
〔比較例2〕
開封片用フィルムの製造において、フィルムaをさらに120℃で1分間、緊張熱処理して、総厚80μm(厚さ40μmのフィルムの2層重ね)の開封片用フィルムgを得た。
【0060】
母材フィルムおよび開封片付き包装体は、実施例1と同様にして製造した。
【0061】
〔比較例3〕
開封片用フィルムの製造において、フィルムaを外径76mmの鉄管に480m巻き取ったロールを60℃で3日間熱処理することにより、総厚80μm(厚さ40μmのフィルムの2層重ね)の開封片用フィルムhを得た。
【0062】
母材フィルムおよび開封片付き包装体は、実施例1と同様にして製造した。
【0063】
(包装体の収縮率の測定方法)
包装体の長手方向に20mm間隔の印を入れた後、120℃、0.2MPaの熱水中で15分間加圧加熱殺菌した。加熱殺菌後の印の間隔を測定し、その変化率を%単位で算出した結果(n=5の平均値)、17.0%であった。
【0064】
(開封片用フィルムの収縮率の測定方法)
開封片用フィルムをMD方向に100mm、TD方向に20mm切り取った後、120℃、0.2MPaの熱水中で15分間加圧加熱した。加圧加熱後のMD方向の寸法を測定し、その変化率を%単位で算出(n=5の平均値)した。なお、各開封片用フィルムにおける包装体の収縮率との差を表1に示すが、値が正である場合には、開封片用フィルムの収縮率の方が包装体の収縮率よりも大きいことを表しており、値が負である場合には、開封片用フィルムの収縮率の方が包装体の収縮率よりも小さいことを表している。
【0065】
〔開封性能評価〕
加熱殺菌後の包装体について開封成功率を求め、開封性能の評価を実施した。10人のパネラーがそれぞれについて3回(3本)開封を行い、合計30本での開封率を求めた。この際、切れ無し率とは開封片から開封を行った際、開封片が途中で切れずに開封できた割合の平均値を示している。結果を表1に示す。表1に示す通り、実施例1〜4に係る開封片付き包装体では、開封成功率が比較例1および2の開封片付き包装体と比較して向上している。
【0066】
〔加熱殺菌後の開封片の外観判別〕
加熱殺菌後の開封片の外観を目視し、開封片の形が明らかに変形してしまったものを×、ほとんど変形していないものを○とし、評価した(n=5)。結果を表1に示す。表1に示す通り、実施例1〜4に係る開封片付き包装体では、加熱殺菌後の開封片の外観が良好であった。一方、開封片フィルムの収縮率が23%を超える比較例3では、開封片の形が明らかに変形していた。
【0067】
【表1】