(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下の実施の形態においては便宜上その必要があるときは、複数のセクションまたは実施の形態に分割して説明するが、特に明示した場合を除き、それらはお互いに無関係なものではなく、一方は他方の一部または全部の変形例、詳細、補足説明等の関係にある。また、以下の実施の形態において、要素の数等(個数、数値、量、範囲等を含む)に言及する場合、特に明示した場合および原理的に明らかに特定の数に限定される場合等を除き、その言及した数に限定されるものではなく、言及した数以上でも以下でもよい。
【0015】
さらに、以下の実施の形態において、その構成要素(要素ステップ等も含む)は、特に明示した場合および原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須のものではないことはいうまでもない。同様に、以下の実施の形態において、構成要素等の形状、位置関係等に言及するときは、特に明示した場合および原理的に明らかにそうでないと考えられる場合等を除き、実質的にその形状等に近似または類似するもの等を含むものとする。このことは、上記数値および範囲についても同様である。
【0016】
以下、実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、実施の形態を説明するための全図において、同一の機能を有する部材には同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。また、以下の実施の形態では、特に必要なとき以外は同一または同様な部分の説明を原則として繰り返さない。
【0017】
また、符号「
−」および「
+」は、導電型がn型またはp型の不純物の相対的な濃度を表しており、例えばn型不純物の場合は、「n
−」、「n
+」の順に不純物濃度が高くなる。
【0018】
(実施の形態1)
本実施の形態の固体撮像素子は、受光素子(光電変換部、光電変換素子)であるフォトダイオードを、縦方向、つまり半導体基板の主面に対して垂直な方向(垂直方向、鉛直方向、上下方向)に複数設けた構造を有するものであり、特に、垂直方向および水平方向において隣り合うフォトダイオード同士の間を絶縁膜により分離することで、フォトダイオード同士の相互間における電子の移動を防ぐものである。縦方向に積層されたフォトダイオードを有する本実施の形態の固体撮像素子は、フォトダイオードを備えた半導体ウェハを2つ用意し、それの半導体ウェハの裏面同士を互いに貼り合わせることで形成することができる。
【0019】
<固体撮像素子の構造および画素の動作>
以下に、
図1〜
図4を用いて、本実施の形態1の固体撮像素子の構造と、固体撮像素子を構成する画素の動作を説明する。
図1および
図2は、本実施の形態である固体撮像素子の構成を示す平面図である。
図3は、本実施の形態の固体撮像素子を示す等価回路図である。
図4は、本実施の形態の固体撮像素子を示す断面図である。
【0020】
図1には、固体撮像素子(半導体チップ)全体の模式的な平面構造を示している。
図2には、1つの画素の平面図を示している。
図3には、1つの画素のうち、1つの光電変換部と当該光電変換部の周辺トランジスタとを含む等価回路図を示している。
図4には、左側から順に画素領域PERおよび周辺回路領域CRを示しており、画素領域PERには、1つの画素のみを示している。
【0021】
ここでは画素の一例として、CMOSイメージセンサにおいて画素実現回路として使用される4トランジスタ型の画素を想定して説明を行うが、それに限るものではない。すなわち、各画素は積層された複数の光電変換部を有し、1つの光電変換部であるフォトダイオードを備えた受光領域の周囲には、転送トランジスタと、周辺トランジスタである3つのトランジスタとが配置されている。ここで、周辺トランジスタとは、リセットトランジスタ、増幅トランジスタおよび選択トランジスタのそれぞれを指す。
【0022】
本実施の形態の固体撮像素子である固体撮像素子は、CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)イメージセンサである。
図1に示すように、固体撮像素子ISは、画素領域(画素アレイ領域)PERと、画素領域PERの周囲を平面視において囲む周辺回路領域CRとを有している。画素領域PERには、複数の画素PEが行列状に配置されている。つまり、固体撮像素子ISを構成する半導体基板の上面には、複数の画素PEが、固体撮像素子ISを構成する半導体基板の主面に沿うX方向およびY方向にアレイ状に並んでいる。
図1に示すX方向は、画素PEが配列されている行方向に沿う方向である。また、当該X方向に対して直交するY方向は、画素PEが配列されている列方向に沿う方向である。
【0023】
平面視において、
図1に示す各画素PEの面積の大部分は、受光部(受光素子)であるフォトダイオードが占めている。画素領域PER、画素PEおよびフォトダイオードは、平面視において矩形の形状を有している。周辺回路領域CRは、例えば画素読み出し回路、出力回路、行選択回路および制御回路などを備えている。
【0024】
複数の画素PEのそれぞれは、照射される光の強度に応じた信号を生成する部分であり、それぞれの画素PEが、縦方向に積層された複数の光電変換部を有している。行選択回路は、複数の画素PEを行単位で選択する。行選択回路によって選択された画素PEは、生成した信号を出力線に出力する。読み出し回路は、画素PEからに出力された信号を読み出して出力回路に出力する。読み出し回路は、複数の画素PEの信号を読み出す。出力回路は、読み出し回路が読み出した画素PEの信号を、固体撮像素子ISの外部に出力する。制御回路は、固体撮像素子IS全体の動作を統括的に管理し、固体撮像素子ISの他の構成要素の動作を制御する。
【0025】
本実施の形態では、1つの画素PEは、縦方向に積層された第1の半導体基板および第2の半導体基板のそれぞれに形成されたフォトダイオードを有している。つまり、1つの画素PEは、積層された2つのフォトダイオードを有している。積層されたそれぞれのフォトダイオードには、周辺トランジスタなどが接続されている。ここで、
図2に、第1の半導体基板の主面(第1主面)近傍に形成されたフォトダイオードと、当該フォトダイオードの周囲のトランジスタおよび素子分離領域を示し、それらの素子からなる回路を
図3に示す。第2の半導体基板に形成された素子のレイアウトおよび回路の構成は、第1の半導体基板に形成された素子のレイアウトおよび回路の構成と同様である。よって、ここでは、第2の半導体基板の主面(第2主面)に形成されたフォトダイオードおよび周辺トランジスタなどの素子のレイアウトおよび回路の図示は省略する。
【0026】
図2に示すように、1つの画素PEは、第1の半導体基板の主面側にフォトダイオードPD1および複数の周辺トランジスタを有しており、平面視におけるフォトダイオードPD1の周りは、素子分離領域EIおよびEI1により囲まれている。フォトダイオードPD1は平面視において矩形の形状を有している。ただし、フォトダイオードPD1が形成された活性領域は、当該矩形の形状の1辺から平面視において一部突出した部分を有しており、当該突出した部分の近傍に転送トランジスタTXが形成されている。
【0027】
転送トランジスタTXは、当該突出した部分に形成された浮遊拡散容量部(浮遊拡散領域)FDと、上記矩形の形状部分に形成されたフォトダイオードPD1を構成するn型半導体領域とをソース・ドレイン領域として有し、平面視において当該ソース・ドレイン領域間に形成されたゲート電極GTを有している。
【0028】
また、1つの画素PE内において、フォトダイオードPD1と隣り合う領域には、接地領域GND、リセットトランジスタRST、増幅トランジスタAMIおよび選択トランジスタSELが形成されている。本願では、リセットトランジスタRST、増幅トランジスタAMIおよび選択トランジスタSELのそれぞれを周辺トランジスタと呼ぶ。ここでは、フォトダイオードPD1および転送トランジスタTXと、リセットトランジスタRSTと、増幅トランジスタAMIおよび選択トランジスタSELと、接地領域GNDとは、それぞれ素子分離領域EIにより区切られた別々の活性領域に形成されている。増幅トランジスタAMIおよび選択トランジスタSELは、同一の活性領域に形成されており、互いのソース・ドレイン領域のうち一方を活性領域内において共有している。
【0029】
選択トランジスタSELはゲート電極GSを有し、増幅トランジスタAMIはゲート電極GAを有し、リセットトランジスタRSTは、ゲート電極GRを有している。ゲート電極GT、GS、GAおよびGRは、いずれも第1の半導体基板上にゲート絶縁膜を介して形成されている。浮遊拡散容量部FD、接地領域GND、ゲート電極GT、GS、GAおよびGRのそれぞれには、第1の半導体基板の主面(第1主面)上に形成されたコンタクトプラグCPが電気的に接続されている。また、選択トランジスタSEL、増幅トランジスタAMIおよびリセットトランジスタRSTのそれぞれのソース・ドレイン領域のうち、選択トランジスタSELおよび増幅トランジスタAMIが互いに共有するソース・ドレイン領域以外のソース・ドレイン領域には、コンタクトプラグCPが電気的に接続されている。なお、フォトダイオードPD1にはコンタクトプラグCPは接続されていない。
【0030】
平面視において、画素PEの第1の半導体基板の主面には、画素PEの周縁部に沿って素子分離領域EI1が環状に形成されている。すなわち、素子分離領域EI1は平面視で矩形の枠状の形状を有しており、フォトダイオードPD1、転送トランジスタTX、周辺トランジスタおよび素子分離領域EIは、いずれも素子分離領域EI1に囲まれている。図示は省略しているが、第2の半導体基板の主面側には、フォトダイオードPD2(
図4参照)および周辺トランジスタなどが、
図2に示すフォトダイオードPD1および周辺トランジスタなどと同様に形成されている。
【0031】
次に、
図3に、1つの画素に積層された2つの光電変換部(フォトダイオード)のうち、1つの光電変換部を含む回路を示す。つまり、1つの画素は、
図3に示す回路を2つ有しており、複数の画素のそれぞれが、
図3に示す回路を2つ有している。ここでは、第1の半導体基板に形成されたフォトダイオードPD1を含む回路について説明し、第2の半導体基板に形成された回路についての説明は省略する。
【0032】
図3に示すように、画素は、光電変換を行うフォトダイオードPD1と、フォトダイオードで発生した電荷を転送する転送トランジスタTXとを有している。また、画素は、転送トランジスタTXから転送される電荷を蓄積する浮遊拡散容量部FDと、浮遊拡散容量部FDの電位を増幅する増幅トランジスタAMIとを有している。画素はさらに、増幅トランジスタAMIで増幅された電位を、読み出し回路(図示しない)に接続された出力線OLに出力するか否かを選択する選択トランジスタSELと、フォトダイオードPD1のカソードおよび浮遊拡散容量部FDの電位を所定電位に初期化するリセットトランジスタRSTとを備えている。
【0033】
転送トランジスタTX、リセットトランジスタRST、増幅トランジスタAMIおよび選択トランジスタSELのそれぞれは、例えばn型のMOSFETである。フォトダイオードPD1のアノードには、マイナス側電源電位Vssである接地電位が印加され、フォトダイオードPD1のカソードは、転送トランジスタTXのソースに接続されている。浮遊拡散容量部FDは、転送トランジスタTXのドレインと、リセットトランジスタRSTのソースと、増幅トランジスタAMIのゲートとに接続されている。リセットトランジスタRSTのドレインと、増幅トランジスタAMIのドレインとには、プラス側電源電位Vddが印加される。増幅トランジスタAMIのソースは、選択トランジスタSELのドレインに接続されている。選択トランジスタSELのソースは、出力線OLに接続されている。
【0034】
次に画素の動作について説明する。まず、転送トランジスタTXおよびリセットトランジスタRSTのゲート電極に所定電位が印加されて、転送トランジスタTXおよびリセットトランジスタRSTがともにオン状態となる。そうすると、フォトダイオードPD1に残存する電荷および浮遊拡散容量部FDに蓄積された電荷がプラス側電源電位Vddに向かって流れて、フォトダイオードPD1および浮遊拡散容量部FDの電荷が初期化される。その後、リセットトランジスタRSTがオフ状態となる。
【0035】
次に、入射光がフォトダイオードPD1のPN接合に照射されて、フォトダイオードPD1で光電変換が発生する。その結果、フォトダイオードPD1に電荷が発生する。この電荷は、転送トランジスタTXによってすべて浮遊拡散容量部FDに転送される。浮遊拡散容量部FDは転送されてきた電荷を蓄積する。これにより、浮遊拡散容量部FDの電位が変化する。
【0036】
次に、選択トランジスタSELがオン状態となると、変化後の浮遊拡散容量部FDの電位が、増幅トランジスタAMIによって増幅され、その後、出力線OLに出力される。そして、読み出し回路は、出力線OLの電位を読み出す。このようにして、画素アレイ部に複数形成された画素のそれぞれから、電荷情報を読出し、撮像素子により撮像した画像を得ることができる。
【0037】
次に、
図4を用いて、本実施の形態の固体撮像素子の断面構造について説明する。本願では、半導体からなる基板と、当該基板上に形成されたエピタキシャル層(エピタキシャル成長層、半導体層)とをまとめて半導体基板と呼ぶ場合がある。ただし、基板とエピタキシャル層を積層して形成された半導体基板から基板を除去した場合でも、残ったエピタキシャル層を半導体基板と呼ぶ。
【0038】
上記フォトダイオードはエピタキシャル層を含む半導体基板の上面に形成されており、上述した各種の回路を構成する電界効果トランジスタのソース・ドレイン領域およびチャネルは、エピタキシャル層を含む半導体基板の上面に形成される。
【0039】
また、ここでは、第1主面および第1主面の反対側の第1裏面を備えた第1の半導体基板と、第2主面および第2主面の反対側の第2裏面を備えた第2の半導体基板とを用意し、第2の半導体基板の表裏をひっくり返した後、第1裏面に第2裏面を接合して形成した固体撮像素子について説明する。上下が逆さまとなった第2の半導体基板については、第2主面側は下側を向き、第2裏面側は上側を向いているものとして説明を行う。すなわち、第2の半導体基板の第2裏面上に、第1の半導体基板が位置している。
【0040】
なお、ここでいう半導体基板の主面とは、半導体基板の面のうち、フォトダイオードおよびトランジスタなどの半導体素子を形成する側の面を指し、ここでは、当該主面の反対側の面を半導体基板の裏面と呼ぶ。
【0041】
図4に、画素領域PERおよび周辺回路領域CRを含む固体撮像素子の断面を示す。画素領域PERにはフォトダイオードPD1、PD2を示し、周辺回路領域CRにはトランジスタQ1、Q2を示しているが、このトランジスタ(電界効果トランジスタ)Q1、Q2は、
図2および
図3を用いて説明した画素内の転送トランジスタTXおよび周辺トランジスタとは異なる素子であり、画素PE内ではない。トランジスタQ1、Q2は、
図1を用いて説明した上述した画素読み出し回路、出力回路、行選択回路または制御回路などを構成する構成するトランジスタである。ただし、各画素PE内の周辺トランジスタは、トランジスタQ1、Q2と同様の構造を有しており、トランジスタQ1、Q2と同様に、比較的浅い深さで形成された素子分離領域EIにより区画されている。
【0042】
図4に示すように、固体撮像素子は、第1の半導体基板であるp
−型の半導体基板SB1と、第2の半導体基板であるp
−型の半導体基板SB2とを有している。半導体基板SB1は、エピタキシャル層EP1からなり、半導体基板SB2は、エピタキシャル層EP2からなる。
図4に示す固体撮像素子では、半導体基板SB1はエピタキシャル層EP1を意味し、半導体基板SB2はエピタキシャル層EP2を意味する。半導体基板SB1は、第1主面および第1主面の反対側の第1裏面を備えており、半導体基板SB2は、第2主面および第2主面の反対側の第2裏面を備えている。半導体基板SB1と半導体基板SB2とは、絶縁膜(酸化絶縁膜)IF1を介して互いに接合されている。
【0043】
半導体基板SB2は、表裏を逆さまにされており、その第2裏面は上側を向いている。よって、半導体基板SB1の第1裏面と、半導体基板SB2の第2裏面とは、絶縁膜IF1を挟んで対向している。半導体基板SB1、SB2のそれぞれは、エピタキシャル成長層(半導体層)からなり、例えばSi(シリコン)層からなる。絶縁膜IF1は、例えば酸化シリコン膜からなる。図では絶縁膜IF1は1つの膜として示されているが、実際には、絶縁膜IF1は2つの酸化シリコン膜を貼り合わせた積層構造を有している。つまり、半導体基板SB1、SB2のそれぞれの間には2つの酸化シリコン膜が縦方向に重ねて形成されている。半導体基板SB2は、半導体基板SB1よりも縦方向の厚さが大きい。
【0044】
画素領域PERには、複数の画素PEが横方向に並んでおり、
図4ではそのうちの1つの画素PEを示している。画素PEでは、第1の半導体基板SB1の上面(第1主面)に、素子同士を分離する素子分離領域(素子分離部、素子分離膜)EI、EI1が形成されている。ただし、ここでは画素PEに形成された素子分離領域EIを示していない。素子分離領域EIは、半導体基板SB1の上面に形成された溝内に埋め込まれた酸化シリコン膜などの絶縁膜により構成されている。また、素子分離領域EI1は、半導体基板SB1を貫通する貫通孔内に埋め込まれた酸化シリコン膜などの絶縁膜により構成されている。画素領域PERでは、隣り合う画素PE同士を分離するため、各画素PEの横方向の端部に素子分離領域EI1を設けている。ここでいう横方向(水平方向)とは、例えば半導体基板SB1の第1主面に沿う方向である。
【0045】
素子分離領域EI1は、半導体基板SB1を貫通している。つまり、素子分離領域EI1は、半導体基板SB1の上面(第1主面)から下面(第1裏面)に亘って形成されており、素子分離領域EI1の下面は、絶縁膜IF1に接している。また、素子分離領域EI、EI1のそれぞれの上面は、後述する層間絶縁膜IL1の下面に接している。素子分離領域EI、EI1のそれぞれの上面の高さは、半導体基板SB1の上面の高さと略同一である。素子分離領域EI、EI1はSTI(Shallow Trench Isolation)構造を有している。
【0046】
素子分離領域EIの深さは、素子分離領域EI1の深さよりも浅い。つまり、素子分離領域EIの下面は、半導体基板SB1の途中深さに位置しており、素子分離領域EIの下面と絶縁膜IF1とは互いに離間している。ここでいう深さ、つまり、半導体基板SB1の第1主面に形成された溝、素子分離領域および半導体領域の深さとは、半導体基板SB1の第1主面から半導体基板SB1の第1裏面に向かう下向きの方向における、半導体基板SB1の第1主面からの距離を指す。
【0047】
素子分離領域EI1は、
図2に示すように画素PEの周縁部に沿って環状に形成されており、かつ、素子分離領域EI1は複数の画素PEのすべてに形成される。このため、素子分離領域EI1は、画素領域PERと周辺回路領域CRとの間にも形成される。これにより、画素領域PERと周辺回路領域CRとの間の電子の移動を防ぐことができる。
【0048】
画素PE内において素子分離領域EI、EI1から露出する領域の半導体基板SB1の上面(活性領域)には、フォトダイオードPD1が形成されている。フォトダイオードPD1は、半導体基板SB1の上面に形成されたp
+型半導体領域PRと、p
+型半導体領域PRの底面に接してp
+型半導体領域PRの下の半導体基板SB1内に形成されたn型半導体領域NRとを有している。すなわち、フォトダイオードPD1は、p
+型半導体領域PRおよびn型半導体領域NRのPN接合により構成されている。n型半導体領域NRのn型の不純物(例えばP(リン)またはAs(ヒ素))の濃度は、半導体基板SB1の不純物濃度よりも高い。
【0049】
p
+型半導体領域PRは、半導体基板SB1の表面電位を接地電位(GND)に固定することで、フォトダイオードPD1を構成するn型半導体領域NRを完全空乏化(電荷転送)し易くする役割を有している。また、p
+型半導体領域PRが形成されていることで、半導体基板SB1の表面であるシリコン表面の準位を高濃度のp型不純物層で覆われる。これにより、当該シリコン表面は正孔で覆われるため、暗電流の発生を抑えることができる。
【0050】
画素PEにおいて、フォトダイオードPD1が形成された活性領域内の半導体基板SB1の第1主面には、フォトダイオードPD1と離間してn型半導体領域である浮遊拡散容量部FDが形成されている。浮遊拡散容量部FDの深さは、n型半導体領域NRの深さよりも浅い。また、半導体基板SB1の第1主面において隣り合う浮遊拡散容量部FDおよびn型半導体領域NRの間の当該第1主面の直上には、ゲート絶縁膜を介してゲート電極GTが形成されている。ゲート電極GT、浮遊拡散容量部FDおよびn型半導体領域NRは、転送トランジスタTXを構成している。n型半導体領域NRは転送トランジスタTXのソース領域を構成し、浮遊拡散容量部FDは転送トランジスタTXのドレイン領域を構成している。
【0051】
ここで、図には示していないが、各画素PEの半導体基板SB1の第1主面近傍には、フォトダイオードPD1および転送トランジスタTXの他に、周辺トランジスタであるリセットトランジスタ、増幅トランジスタおよび選択トランジスタが形成されている。固体撮像素子により撮像を行った場合、光を受光したフォトダイオードPD1に電荷が信号として発生し、当該電荷を、転送トランジスタTXにより転送用トランジスタTXのドレイン領域に接続された浮遊拡散容量部FDに転送する。この信号は、増幅トランジスタおよび選択トランジスタにより増幅されて上記出力線に出力される。このようにして、撮像により得られた信号を読出すことができる。なお、リセットトランジスタは、浮遊拡散容量部FDに溜まった電荷をリセットするために用いられる。
【0052】
周辺回路領域CRでは、半導体基板SB1の上面にチャネル領域を有するトランジスタQ1が形成されている。ここでは、トランジスタQ1はnチャネル型のMISFET(Metal Insulator Semiconductor Field Effect Transistor)であるものとして説明するが、トランジスタQ1はpチャネル型のMISFETでもよい。トランジスタQ1は、素子分離領域EIにより規定された活性領域において、半導体基板SB1の上面上にゲート絶縁膜を介して形成されたゲート電極G1を有している。ゲート電極G1の横の半導体基板SB1の上面には、平面視においてゲート電極G1を挟むように、ソース・ドレイン領域SD1が形成されている。トランジスタQ1は、ゲート電極G1およびソース・ドレイン領域SD1からなる。
【0053】
周辺回路領域CRでは、トランジスタQ1が形成された半導体基板SB1の第1主面に、p型の不純物(例えばB(ホウ素)が導入されたp型半導体領域であるウェルW1が形成されている。ウェルW1の深さは、ソース・ドレイン領域SD1よりも深い。また、周辺回路領域CRには複数のトランジスタQ1と、その他の種類の半導体素子が形成されており、それらの素子同士の間は、素子分離領域EIにより分離されている。素子分離領域EIは、画素PEに形成された素子分離領域EI(図示しない)と同様の構成および深さを有している。つまり、画素領域PERおよび周辺回路領域CRに形成された素子分離領域EIの深さは、素子分離領域EI1の深さよりも浅い。
【0054】
転送トランジスタTXおよびトランジスタQ1のそれぞれのゲート絶縁膜は例えば酸化シリコン膜からなり、ゲート電極GT、G1は例えばポリシリコン膜からなる。ソース・ドレイン領域SD1は、半導体基板SB1の上面にn型の不純物(例えばP(リン)またはAs(ヒ素))が導入されたn型半導体領域からなる。トランジスタQ1が動作する際には、ソース・ドレイン領域SD1の間の半導体基板SB1の上面にチャネルが形成される。図示は省略するが、ソース・ドレイン領域SD1およびゲート電極G1のそれぞれの上面は、CoSi(コバルトシリサイド)などからなるシリサイド層により覆われている。
【0055】
半導体基板SB1上には、素子分離領域EI、EI1、フォトダイオードPD1およびトランジスタQ1を覆うように、層間絶縁膜IL1が形成されている。層間絶縁膜IL1は、半導体基板SB1の第1主面側から順に積層されたコンタクト層および複数の配線層のそれぞれを構成する層間絶縁膜からなる。つまり、層間絶縁膜IL1は、半導体基板SB1の第1主面上に積層された複数の層間絶縁膜を含んでいる。また、図では転送トランジスタTXおよびトランジスタQ1のそれぞれのゲート絶縁膜と層間絶縁膜IL1とが一体となっているものとして図示を行っている。
【0056】
コンタクト層を構成する層間絶縁膜は、半導体基板SB1上に堆積した窒化シリコン膜からなるライナー膜(エッチングストッパ膜)と、当該ライナー膜上に堆積された酸化シリコン膜とを含む。層間絶縁膜IL1を構成する各層間絶縁膜の上面は、図示していないが、平坦化されている。複数の配線層は、例えば、半導体基板SB1の第1主面側から順に積層された第1配線層および第2配線層を含んでいる。積層された配線層の数は2層より多くても少なくてもよい。
【0057】
第1配線層は配線M1を含み、第2配線層は配線M1上に配置された配線M2を含んでいる。配線M1、M2は、例えば主にCu(銅)またはAl(アルミニウム)などからなる。コンタクト層である層間絶縁膜を縦方向に貫通する複数のコンタクトホール内にはコンタクトプラグCPが埋め込まれている。コンタクトプラグCPは、例えば主にW(タングステン)からなる。コンタクトプラグCPは、配線M1と、第1の半導体基板の第1主面に形成された半導体素子とを電気的に接続している。
【0058】
図4では、浮遊拡散容量部FDおよびソース・ドレイン領域SD1に接続されたコンタクトプラグCPを示している。配線M1と配線M2とは、それらの間の層間絶縁膜IL1を貫通するビアにより互いに電気的に接続されている。当該ビアは、例えば主にCu(銅)からなる。層間絶縁膜IL1は、配線M1、M2を覆っており、層間絶縁膜IL1の上面は平坦である。フォトダイオードPD1および後述のフォトダイオードPD2に照射される光が各配線により遮蔽されることを防ぐため、フォトダイオードPD1の直上には配線M1、M2は形成されていない。
【0059】
画素領域PERおよび周辺回路領域CRにおいて、半導体基板SB1の下には、上述した素子および配線を含む構造と同様の構造が上下逆さとなって形成されている。すなわち、半導体基板SB1の下に絶縁膜IF1を介して形成された半導体基板SB2の第2主面には、フォトダイオードPD2および転送トランジスタTXおよびトランジスタQ2が形成されている。
【0060】
つまり、画素PE内において、半導体基板SB2の下面(第2主面)にはフォトダイオードPD2および浮遊拡散容量部FDが形成されており、半導体基板SB2の第2主面の下にゲート絶縁膜を介して形成されたゲート電極GTと、フォトダイオードPD2および浮遊拡散容量部FDとは、転送トランジスタTXを構成している。浮遊拡散容量部FDはn型半導体領域であり、フォトダイオードPD2は、半導体基板SB2の第2主面に形成されたp
+型半導体領域PRと、p
+型半導体領域PRの上面に接してp
+型半導体領域PRの上の半導体基板SB2内に形成されたn型半導体領域NRとを有している。また、図示はしていないが、1つの画素PEの半導体基板SB2の第2主面側には周辺トランジスタも形成されている。
【0061】
また、周辺回路領域CRにおいて、半導体基板SB2の第2主面の下にゲート絶縁膜を介して形成されたゲート電極G2と、半導体基板SB2の第2主面に形成されたn型半導体領域であるソース・ドレイン領域SD2とは、トランジスタQ2を構成している。周辺回路領域CRの半導体基板SB2の第2主面には、p型半導体領域であるウェルW2が形成されている。
【0062】
画素領域PERの各画素PEにおいて、フォトダイオードPD2、転送トランジスタTXおよび周辺トランジスタ(図示しない)は、半導体基板SB2の第2主面から第2裏面に亘って形成された素子分離領域EI2により囲まれている。つまり、1つの画素PE内のフォトダイオードPD2、転送トランジスタTXおよび周辺トランジスタ(図示しない)は、素子分離領域EI2により他の画素PEの素子と分離されている。
【0063】
また、1つの画素PE内では、フォトダイオードPD2、転送トランジスタTXおよび周辺トランジスタ(図示しない)のそれぞれが、半導体基板SB2の第2主面に形成された素子分離領域EI(図示しない)により互いに分離されている。また、周辺回路領域CRに形成されたトランジスタQ2を含む複数の素子のそれぞれは、素子分離領域EIにより互いに分離されている。素子分離領域EI2の深さは、半導体基板SB1、SB2に形成された素子分離領域EIの深さよりも深い。素子分離領域EI2は、素子分離領域EI1の直下に形成され、フォトダイオードPD2はフォトダイオードPD1の直下に形成されている。ここでいう深さ、つまり、半導体基板SB2の第2主面に形成された溝、素子分離領域および半導体領域の深さとは、半導体基板SB2の第2主面から半導体基板SB2の第2裏面に向かう上向きの方向における、半導体基板SB2の第2主面からの距離を指す。ここでは、素子分離領域EI1、EI2は絶縁膜が深い溝内に充填された構造を有しているが、素子分離領域EI1、EI2のそれぞれの内部に空隙が存在していてもよい。
【0064】
半導体基板SB2の厚さが半導体基板SB1の厚さより大きいため、素子分離領域EI2の厚さは素子分離領域EI1の厚さより大きい。また、フォトダイオードPD2の深さは、フォトダイオードPD1の深さよりも大きい。これは、フォトダイオードPD1で検出する光よりも波長が長い光をフォトダイオードPD2で検出するためである。つまり、縦方向の距離が大きいフォトダイオードPD2を形成するため、半導体基板SB2の厚さは半導体基板SB1の厚さより大きい。なお、半導体基板SB1に形成されたp
+型半導体領域PRと半導体基板SB2に形成されたp
+型半導体領域PRとのそれぞれの深さは互いに同じでも異なっていてもよいが、半導体基板SB2に形成されたn型半導体領域NRの深さは、半導体基板SB1に形成されたn型半導体領域NRの深さよりも深い。本願でいう厚さとは、膜、層または基板などの縦方向の大きさを指す。
【0065】
半導体基板SB2の下には、素子分離領域EI、EI2、フォトダイオードPD2およびトランジスタQ2を覆うように、層間絶縁膜IL2が形成されている。層間絶縁膜IL2は、半導体基板SB2の第2主面側から順に積層されたコンタクト層および複数の配線層のそれぞれを構成する層間絶縁膜からなる。層間絶縁膜IL2内には、半導体基板SB1上の構造と同様に、複数のコンタクトプラグCPおよび配線M1、M2が形成されている。ただし、フォトダイオードPD2は、半導体基板SB2の第2裏面の上側から半導体基板SB2の第2主面側に入射する光を検出する光電変換部(受光素子)であるため、フォトダイオードPD2の直下に配線M1、M2が配置されていてもよい。
【0066】
層間絶縁膜IL2の下面は、平坦であり、当該下面には支持基板SSB2が接合されている。支持基板SSB2は、例えばSi(シリコン)基板からなり、支持基板SSB2上の構造が変形することなどを防ぐ役割を有する。
【0067】
半導体基板SB1上に形成された層間絶縁膜IL1の上面上には、表面保護膜であるパッシベーション膜PFが形成されている。パッシベーション膜PFは、例えば、酸化シリコン膜と、当該酸化シリコン膜上に配置された窒化シリコン膜とから形成されている。画素領域PERにおいて、パッシベーション膜PF上には、マイクロレンズMLが形成されている。マイクロレンズMLは上面が曲面である半球状の膜からなり、各画素PEに1つずつ形成されている。マイクロレンズMLは、フォトダイオードPD1、PD2のそれぞれの直上に形成されている。
【0068】
撮像時において、撮像素子に照射された光は、マイクロレンズML、各配線層を順に透過してフォトダイオードPD1またはPD2に達する。フォトダイオードPD1のPN接合に入射光が照射されることで、フォトダイオードPD1およびフォトダイオードPD1の下の半導体基板SB1において光電変換が起こる。また、フォトダイオードPD2のPN接合に入射光が照射されることで、フォトダイオードPD2およびフォトダイオードPD2の上の半導体基板SB2において光電変換が起こる。その結果、電子が発生し、この電子は、フォトダイオードPD1、PD2のそれぞれのn型半導体領域NR内に電荷として溜まる。このように、フォトダイオードPD1、PD2は、入射光の光量に応じた信号電荷を、その内部に生成する受光素子、つまり光電変換素子である。
【0069】
ここで、フォトダイオードPD1は、比較的波長が短い光を検出する受光素子であり、フォトダイオードPD2は、比較的波長が長い光を検出する受光素子である。例えば、フォトダイオードPD1では青い光を検出し、フォトダイオードPD2では赤い光を検出する。フォトダイオードPD2ではフォトダイオードPD1で検出する光よりも波長が長い光を検出するため、フォトダイオードPD2はフォトダイオードPD1よりも大きい深さを有している。
【0070】
なお、光電変換により半導体基板SB1、SB2のそれぞれの内部に生じた電子は、電子が溜まりやすいn型半導体領域NRに集まり、n型半導体領域NR内に電荷として蓄積される。また、n型半導体領域NRと半導体基板SB1との間のPN接合も、フォトダイオードPD1を構成しており、n型半導体領域NRと半導体基板SB2との間のPN接合も、フォトダイオードPD2を構成している。ここでは、半導体基板SB1の第1主面および半導体基板SB2の第2主面に高濃度のp
+型半導体領域PRを形成することを説明したが、フォトダイオードPD1、PD2のそれぞれは、p
+型半導体領域PRを有していなくてもよい。つまり、フォトダイオードPD1はn型半導体領域NRおよび半導体基板SB1のみにより構成され、フォトダイオードPD2はn型半導体領域NRおよび半導体基板SB2のみにより構成されていてもよい。
【0071】
ここで、本実施の形態の固体撮像素子の主な特徴の1つは、各画素PEのフォトダイオードPD1、PD2のそれぞれが縦方向および横方向において絶縁膜に囲まれており、他の画素PEの素子に対し素子分離領域EI1、EI2により分離されていることにある。つまり、フォトダイオードPD1は素子分離領域EI1、層間絶縁膜IL1および絶縁膜IF1に囲まれており、フォトダイオードPD2は素子分離領域EI2、層間絶縁膜IL2および絶縁膜IF1に囲まれている。そのため、素子分離領域EI1は半導体基板SB1を貫通して層間絶縁膜IL1と絶縁膜IF1とに接しており、素子分離領域EI2は半導体基板SB2を貫通して層間絶縁膜IL2と絶縁膜IF1とに接している。
【0072】
また、本実施の形態の固体撮像素子の主な特徴の1つは、半導体基板SB2および素子分離領域EI2のそれぞれの厚さが、半導体基板SB1および素子分離領域EI1のそれぞれの厚さより大きいことにある。
【0073】
<固体撮像素子の製造方法>
以下に、本実施の形態の固体撮像素子の製造方法について、
図5〜
図12を用いて説明する。
図5〜
図12は、本実施の形態の固体撮像素子の製造工程中の断面図である。
図5〜
図12の各図では、左から順に画素領域PERおよび周辺回路領域CRを示している。また、
図12では、周辺回路領域CRの右側にパッド領域PDRを示している。
【0074】
固体撮像素子の製造工程では、まず、
図5に示すように、例えば単結晶シリコン(Si)からなるp型の半導体基板(半導体ウェハ)SB1およびSB2のそれぞれを用意する。半導体基板SB1は、後の工程においてフォトダイオードおよびトランジスタなどの半導体素子が形成される第1主面と、その反対側の第1裏面とを有している。半導体基板SB2は、後の工程においてフォトダイオードおよびトランジスタなどの半導体素子が形成される第2主面と、その反対側の第2裏面とを有している。
【0075】
半導体基板SB1は、単結晶シリコンからなる基板S1と、基板S1上にエピタキシャル成長法により形成されたエピタキシャル層EP1とを備えており、積層構造を有している。半導体基板SB2は、単結晶シリコンからなる基板S2と、基板S2上にエピタキシャル成長法により形成されたエピタキシャル層EP2とを備えており、積層構造を有している。
【0076】
ここでは、ダイシングにより切削される前の半導体基板を半導体ウェハと呼ぶ。また、半導体基板と、製造工程において半導体基板上に形成される素子および配線層などとを含めて半導体ウェハと呼ぶ。半導体基板SB1は第1半導体ウェハであり、半導体基板SB2は第2半導体ウェハである。
【0077】
本実施の形態の固体撮像素子の製造工程では、例えば
図7を用いて説明する工程において第1半導体ウェハおよび第2半導体ウェハのそれぞれの上下の向きを逆さまにする。また、
図10を用いて説明する工程以降では、第2半導体ウェハのみ、上下が逆さまの状態となる。つまり、逆さまになった半導体ウェハの裏面は上方向を向き、主面は下方向を向く。ここでは、半導体ウェハの主面が上向きである場合、当該半導体ウェハの主面側の方向を上方向と呼び、当該半導体ウェハの裏面側の方向を下方向と呼ぶ。また、半導体ウェハの裏面が上向きである場合、当該半導体ウェハの裏面側の方向を上方向と呼び、当該半導体ウェハの主面側の方向を下方向と呼ぶ。
【0078】
なお、半導体基板SB1、SB2のそれぞれは別々の半導体ウェハであり、ここでは、半導体基板SB1、SB2に対して行う同様の工程のそれぞれを同じタイミングで行う場合について説明する。しかし、半導体基板SB1、SB2のそれぞれに対し同時進行で処理を行う必要はなく、例えば、半導体基板SB1について
図5〜
図9を用いて説明する工程を行った後、半導体基板SB2について
図5〜
図9を用いて説明する工程を行ってもよい。すなわち、第1半導体ウェハと第2半導体ウェハとを接合する工程(
図10参照)の前までは、第1半導体ウェハおよび第2半導体ウェハのいずれか一方に対して優先的に、素子の形成、配線層の形成、裏面の研磨、および、裏面を覆う絶縁膜の形成などの工程を行ってもよい。
【0079】
次に、
図6に示すように、半導体基板SB1の第1主面に、2種類の深さの溝を形成する。すなわち、半導体基板SB1の第1主面の画素領域PERおよび周辺回路領域CRのそれぞれに比較的浅い溝を形成し、半導体基板SB1の第1主面の画素領域PERに比較的深い溝を形成する。これにより、半導体基板SB1の画素領域PERの第1主面には、浅い溝と、当該溝よりも深い溝とが形成される。これらの溝は、半導体基板SB1上に形成した絶縁膜からなるパターンをマスク(ハードマスク)として用いてエッチングを行うことで形成することができる。半導体基板SB2の第2主面に対しても、同様に浅い溝と深い溝とを形成する。ただし、半導体基板SB2の第2主面の深い溝は、半導体基板SB1の第1主面の深い溝よりも深く形成する。
【0080】
続いて、上記工程で形成した溝内に、例えばCVD(Chemical Vapor Deposition)法を用いて絶縁膜を埋め込んだ後、CMP(Chemical Mechanical Polishing)法を用いて、半導体基板SB1の第1主面および半導体基板SB2の第2主面のそれぞれの上の当該絶縁膜を除去する。これにより、当該浅い溝内に残された当該絶縁膜により、素子分離領域EIが形成される。また、半導体基板SB1の第1主面の深い溝内に残された当該絶縁膜により素子分離領域EI1が形成され、半導体基板SB2の第2主面の深い溝内に残された当該絶縁膜により素子分離領域EI2が形成される。素子分離領域EI2の深さは、素子分離領域EI1の深さよりも深い。
【0081】
ここでは、素子分離領域EI、EI1およびEI2をSTI(Shallow Trench Isolation)法で形成している。浅い溝内に絶縁膜を埋め込んで素子分離領域EIを形成する工程と、深い溝内に絶縁膜を埋め込んで素子分離領域EI1またはEI2を形成する工程とは、それぞれ別々に行ってもよい。素子分離領域EI、EI1およびEI2のそれぞれは、例えば酸化シリコン膜からなる。なお、半導体基板SB1の第1主面の素子分離領域EIの深さは、素子分離領域EI1の深さと同じであってもよく、半導体基板SB2の第2主面の素子分離領域EIの深さは、素子分離領域EI2の深さと同じであってもよい。
【0082】
続いて、フォトリソグラフィ技術およびイオン注入法を用いて、半導体基板SB1の周辺回路領域CRの第1主面にp型のウェルW1を形成し、半導体基板SB2の周辺回路領域CRの第2主面にp型のウェルW2を形成する。当該イオン注入では、p型の不純物(例えばB(ホウ素))を打ち込む。なお、本実施の形態では周辺回路領域CRにnチャネル型のトランジスタを形成することについて説明をするが、周辺回路領域CRの図示していない領域には、pチャネル型のトランジスタも形成する。pチャネル型のトランジスタを形成する箇所では、nチャネル型のトランジスタを形成する際に半導体基板SB1、SB2に形成する不純物領域の導電型を異なる導電型とする。
【0083】
続いて、フォトリソグラフィ技術およびイオン注入法を用いて、半導体基板SB1の画素領域PERの主面にフォトダイオードPD1を形成する。ここでは、半導体基板SB1の画素領域PERの上面にn型の不純物(例えばP(リン)またはAs(ヒ素))を例えばイオン注入法により打ち込むことでn型半導体領域NRを形成し、半導体基板SB1の画素領域PERの上面にp型の不純物(例えばB(ホウ素))を例えばイオン注入法により打ち込むことでp
+型半導体領域PRを形成する。p
+型半導体領域PRの深さは、n型半導体領域NRよりも浅い。フォトダイオードPD1は、主にn型半導体領域NRからなり、ここでは、p
+型半導体領域PRと、n型半導体領域NRの周囲の半導体基板SB1であるp型半導体領域とにより構成されている。すなわち、フォトダイオードPD1は、n型半導体領域およびp型半導体領域のPN接合により構成されている。
【0084】
また、半導体基板SB2の画素領域PERの第2主面に同様にフォトダイオードPD2を形成する。ただし、フォトダイオードPD2を構成するn型半導体領域NRの深さは、フォトダイオードPD1を構成するn型半導体領域NRの深さよりも深い。
【0085】
半導体基板SB1の画素領域PERでは、平面視において複数のフォトダイオードPD1が並んで形成されており、各フォトダイオードPD1は、素子分離領域EI、EI1により規定された活性領域に形成されている。ここでは、半導体基板SB1の第1主面において複数のフォトダイオードPD1が形成された領域のそれぞれが1つの画素PEとなる。言い換えれば、1つの画素PEは1つのフォトダイオードPD1を有している。半導体基板SB2においても同様に、1つの画素PEは1つのフォトダイオードPD2を有する。ただし、後の工程で半導体基板SB1、SB2を貼り合わせるため、最終的に、1つの画素PEは2つの受光素子(光電変換部)であるフォトダイオードPD1、PD2を有することとなる。
【0086】
続いて、半導体基板SB1上に転送トランジスタTXと、トランジスタQ1と、転送トランジスタTX、トランジスタQ1およびフォトダイオードPD1のそれぞれを覆う複数の配線層からなる積層配線層とを形成する。本実施の形態の固体撮像素子の製造方法の主な特徴は、トランジスタおよび配線層の形成工程にはないため、ここでは当形成工程の具体的な説明を省略する。nチャネル型のMISFETである転送トランジスタTXは画素領域PERに形成され、nチャネル型のMISFETであるトランジスタQ1は周辺回路領域CRに形成される。n型半導体領域NRは、転送トランジスタTXのソース領域を構成している。また、画素領域PERの図示していない領域に周辺トランジスタを形成する。
【0087】
転送トランジスタTX、周辺トランジスタおよびフォトダイオードPD1は、平面視において素子分離領域EI1により囲まれている。転送トランジスタTXは半導体基板SB1の第1主面に形成された浮遊拡散容量部FDおよび当該第1主面上のゲート電極GTを有し、トランジスタQ1は半導体基板SB1の第1主面に形成されたソース・ドレイン領域SD1および当該第1主面上のゲート電極G1を有している。トランジスタQ1が形成された活性領域は、素子分離領域EIにより規定されている。
【0088】
半導体基板SB2上にも、同様に転送トランジスタTXと、トランジスタQ2と、転送トランジスタTX、トランジスタQ2およびフォトダイオードPD2のそれぞれを覆う複数の配線層からなる積層配線層とを形成する。半導体基板SB2上の転送トランジスタTXは半導体基板SB2の第2主面に形成された浮遊拡散容量部FDおよび当該第2主面上のゲート電極GTを有し、トランジスタQ2は半導体基板SB2の第2主面に形成されたソース・ドレイン領域SD2および当該第2主面上のゲート電極G2を有している。トランジスタQ2が形成された活性領域は、素子分離領域EIにより規定されている。
【0089】
半導体基板SB1上の層間絶縁膜IL1内の配線M1、M2は、フォトダイオードPD1の直上には形成しないが、半導体基板SB2上の層間絶縁膜IL2内の配線M1、M2は、フォトダイオードPD2の直上に形成してもよい。配線M1は、フォトダイオードPD1、PD2、転送トランジスタTX、トランジスタQ1、Q2などの素子に対し、コンタクトプラグCPを介して電気的に接続されている。配線M1と配線M1上の配線M2とは、ビアを介して電気的に接続されている、半導体基板SB1上の積層配線層の上面は層間絶縁膜IL1により構成され、半導体基板SB2上の積層配線層の上面は層間絶縁膜IL2により構成されている。
【0090】
次に、
図7に示すように、第1半導体ウェハの主面側、つまり層間絶縁膜IL1の上面に支持基板SSB1を貼り付ける。支持基板SSB1は、支持基板SSB1上の配線層および半導体基板SB1を含む構造が変形することなどを防ぐ役割を有する。同様に、第2半導体ウェハの主面側、つまり層間絶縁膜IL2の上面に支持基板SSB2を貼り付ける。支持基板SSB1、SSB2のそれぞれは、例えばSi(シリコン)基板からなる。
【0091】
続いて、半導体基板SB1、つまり第1半導体ウェハの上下を逆さまにする。また、半導体基板SB2、つまり第2半導体ウェハの上下を逆さまにする。つまり、半導体基板SB1の第1裏面と半導体基板SB2の第2裏面とのそれぞれを上向きにする。
【0092】
次に、
図8に示すように、半導体基板SB1の第1裏面を例えばCMP法で研磨(研削)し、半導体基板SB2の第2裏面を例えばCMP法で研磨(研削)する。これにより、第1裏面および第2裏面を後退させることで、素子分離領域EI1、EI2のそれぞれを露出させる。この工程により、基板S1、S2のそれぞれは全て除去される。半導体基板SB1の第1裏面であるエピタキシャル層EP1の裏面は、素子分離領域EI1の上面まで後退し、半導体基板SB2の第2裏面であるエピタキシャル層EP2の裏面は、素子分離領域EI2の上面まで後退する。
【0093】
その結果、素子分離領域EI2の深さは素子分離領域EI1の深さより深いため、当該研磨工程の後の半導体基板SB2の厚さは、当該研磨工程の後の半導体基板SB1の厚さよりも厚くなる。ここでは、半導体基板SB1、SB2のそれぞれのn型半導体領域NRは第1裏面および第2裏面のそれぞれにおいて露出しない。
【0094】
次に、
図9に示すように、例えばプラズマCVD法を用いて、第1半導体ウェハの裏面、つまり半導体基板SB1の第1裏面を覆う絶縁膜(酸化絶縁膜)IF2を形成(堆積)し、例えばプラズマCVD法を用いて、第2半導体ウェハの裏面、つまり半導体基板SB2の第2裏面を覆う絶縁膜(酸化絶縁膜)IF3を形成(堆積)する。絶縁膜IF2は素子分離領域EI1の上面に接して素子分離領域EI1の当該上面を覆っており、絶縁膜IF3は素子分離領域EI2の上面に接して素子分離領域EI2の当該上面を覆っている。絶縁膜IF2、IF3のそれぞれは、例えば酸化シリコン膜からなる。また、絶縁膜IF2、IF3は、プラズマCVD法により形成された絶縁膜であって、例えばSiN(窒化シリコン)膜、SiCN(炭窒化シリコン)膜、SiC(炭化シリコン)膜などにより形成されていてもよい。
【0095】
絶縁膜IF2、IF3の形成方法として、例えば熱酸化法を用いることが考えられるが、熱酸化法を用いた場合、既に形成した配線M1、M2およびビアなどが熱負荷を受けるため、ここでは半導体基板SB1、SB2の温度上昇が小さい成膜方法であるプラズマCVD法を用いて絶縁膜IF2、IF3を形成する。
【0096】
次に、
図10に示すように、第1半導体ウェハの裏面と第2半導体ウェハの裏面とを接合する。つまり、
図9に示す絶縁膜IF2の上面と、
図9に示す絶縁膜IF3の上面とを貼り合わせて接合する。これにより、半導体基板SB1の第1裏面と、半導体基板SB2の第2裏面とが対向した状態で、第1半導体ウェハおよび第2半導体ウェハからなる積層ウェハを形成する。
図10では、
図9に示す絶縁膜IF2、IF3のそれぞれが一体となって形成された絶縁膜IF1を示す。つまり、絶縁膜IF1は、実際には絶縁膜IF2、IF3からなる積層構造を有する。また、第1半導体ウェハと第2半導体ウェハとを接合することで、フォトダイオードPD1とフォトダイオードPD2とは、絶縁膜IF1を介して縦方向に対向する。すなわち、ここではフォトダイオードPD1とフォトダイオードPD2とが平面視で重なるように、第1半導体ウェハと第2半導体ウェハとを接合する。
【0097】
続いて、第1半導体ウェハの裏面において露出する絶縁膜IF2と第2半導体ウェハの裏面において露出する絶縁膜IF3とを貼り合わせた後に、400℃で熱処理を行うことで接合強度を高める。熱処理を行うと絶縁膜IF2、IF3のそれぞれの表面から水分が除去される脱離反応が起こり、これにより、例えばSiO(酸化シリコン)からなる絶縁膜IF2、IF3の相互間の境界で絶縁膜IF2と絶縁膜IF3とが酸素原子を共有する。よって、絶縁膜IF2と絶縁膜IF3とは共有結合するため、第1半導体ウェハと第2半導体ウェハとは強固に接合される。
【0098】
上記のように、本実施の形態では、半導体素子および配線層が既に形成された第1半導体ウェハと、半導体素子および配線層が既に形成された第2半導体ウェハとを絶縁膜IF1を介して接合する。これにより、
図10に示すように、支持基板SSB2上に積層配線層、半導体基板SB2、絶縁膜IF1、半導体基板SB1、積層配線層および支持基板SSB1が配置された積層ウェハが形成される。
【0099】
次に、
図11に示すように、支持基板SSB1を層間絶縁膜IL1の上面から剥がし取る。これにより支持基板SSB1は積層ウェハから除去され、層間絶縁膜IL1の上面が露出する。
【0100】
次に、
図12に示すように、層間絶縁膜IL1、半導体基板SB1、絶縁膜IF1および半導体基板SB2を貫通し、層間絶縁膜IL2の途中深さまで達する貫通ビア(上下チップ導電接続部、TSV:Through Silicon Via)TSVを形成する。
図12では、周辺回路領域CRの隣りに、パッド領域PDRを示している。パッド領域PDRは、層間絶縁膜IL1上にボンディングパッドなどを形成する領域である。図では周辺回路領域CRとパッド領域PDRとを別々に示しているが、パッド領域PDRは周辺回路領域CR内の一部と考えてもよい。ここでは、貫通ビアTSVをパッド領域PDRに形成する。貫通ビアTSVの上面は層間絶縁膜IL1の上面の位置と同等の高さで平坦化されている。また、貫通ビアTSVの底面は、層間絶縁膜IL2内の配線M1に電気的に接続されている。
【0101】
貫通ビアTSVを形成する際には、フォトリソグラフィ技術およびドライエッチング法を用いて、層間絶縁膜IL1、半導体基板SB1、絶縁膜IF1および半導体基板SB2を貫通し、層間絶縁膜IL2の途中深さまで達する貫通孔(接続孔)を形成する。これにより、当該貫通孔の底部において、層間絶縁膜IL2内の配線M1の上面を露出させる。その後、例えば酸化シリコン膜からなる絶縁膜IF4をCVD法などにより層間絶縁膜IL1上に堆積した後、ドライエッチングを行うことで、層間絶縁膜IL1の上面上の絶縁膜IF4と、貫通孔の底面を覆う絶縁膜IF4とを除去する。これにより、貫通孔の側面にのみ絶縁膜IF4を残し、貫通孔の底部において、層間絶縁膜IL2内の配線M1の上面を露出させる。
【0102】
続いて、例えばTa(タンタル)を含むバリア導体膜と、例えばCu(銅)からなる薄いシード膜とを、貫通孔の側面および底面を覆うように形成した後、めっき法を用いて、シード膜上に、例えばCu(銅)からなる主導体膜を形成し、これにより、貫通孔内を完全に埋め込む。その後、例えばCMP法により、層間絶縁膜IL1上の余分なバリア導体膜、シード膜および主導体膜を除去することで層間絶縁膜IL1の上面を露出させ、これにより、貫通孔に埋め込まれたバリア導体膜、シード膜および主導体膜からなる貫通ビアTSVを形成する。図では、バリア導体膜、シード膜および主導体膜のそれぞれを区別せず、貫通ビアTSVを単層の膜として示している。
【0103】
上記のように貫通ビアTSVを形成した後、層間絶縁膜IL1上にパッドPDを形成し、続いて、層間絶縁膜IL1の上面およびパッドPDを覆うパッシベーション膜PFを形成する。パッドPDは層間絶縁膜IL1上に形成された導体膜からなるパターンであり、一部のパッドPDの底面は、貫通ビアTSVの上面に接続されている。つまり、当該パッドPDは、貫通ビアTSVを介して、第2半導体ウェハに形成されている配線および素子に電気的に接続されている。また、一部のパッドPDの底面は、ビア(図示しない)を介して、第1半導体ウェハに形成されている配線および素子に電気的に接続されている。パッドPDは、層間絶縁膜IL1上に例えばスパッタリング法により形成した金属膜(例えばAl(アルミニウム)膜)をフォトリソグラフィ技術およびエッチング法を用いて加工することで形成する。
【0104】
パッシベーション膜PFは、素子分離領域EI1上およびパッドPD上に、例えば、CVD法により酸化シリコン膜および窒化シリコン膜を順に積層することで形成することができる。パッシベーション膜PFは、反射防止膜としても機能する。つまり、パッシベーション膜PFは、半導体基板SB1の第1主面側からフォトダイオードPD1、PD2に入射する光が、素子分離領域EI1上で反射することを防ぐ役割を有する。続いて、フォトリソグラフィ技術およびエッチング法を用いてパッシベーション膜PFの一部を除去することで、パッドPDの上面の一部を露出させる。なお、この工程でパッシベーション膜PFを開口した箇所は、図に示していない。露出したパッドPDは、ボンディングワイヤを接着させる対象であるボンディングパッドとして用いられる。
【0105】
続いて、画素領域PERにおいて、パッシベーション膜PF上にマイクロレンズMLを形成する。マイクロレンズMLは平面視において円形に形成された半球状の絶縁膜からなる。ここでは、1つの画素PEにマイクロレンズMLを1つ形成する。マイクロレンズMLは、フォトダイオードPD1、PD2のそれぞれの直上に形成される。言い換えれば、平面視におけるマイクロレンズMLの中心は、平面視でフォトダイオードPD1およびPD2と重なっている。マイクロレンズMLは、例えば、パッシベーション膜PF上に形成した膜を、平面視において円形のパターンに加工した後、例えば当該膜を加熱することで当該膜の上面および側面からなる表面を丸め、これにより当該膜をレンズ状に加工することで形成する。
【0106】
その後、第1半導体ウェハおよび第2半導体ウェハからなる積層ウェハをダイシングにより切削することで個片化し、これにより、複数の半導体チップのそれぞれである固体撮像素子(
図1参照)を得る。以上の工程により、本実施の形態の固体撮像素子が略完成する。
【0107】
<本実施の形態の効果>
以下に、本実施の形態の固体撮像素子の製造方法の効果について、
図41〜43に示す比較例を用いて説明する。
図41は、比較例の固体撮像素子である固体撮像素子の断面図である。
図42および
図43は、比較例の固体撮像素子の製造工程中の断面図である。
【0108】
図41に示す比較例の固体撮像素子は、フォトダイオードPDAと、フォトダイオードPDA上に形成されたフォトダイオードPDBと、フォトダイオードPDB上に形成された光電変換膜PCからなる光電変換素子とを1つの画素PEに有している。つまり、比較例の固体撮像素子では、1つの画素PE内に3つの光電変換部が縦方向に並んで配置されている。
【0109】
主にn型半導体領域からなるフォトダイオードPDAと、主にn型半導体領域からなるフォトダイオードPDBとの間には、光学干渉膜OIが介在している。光学干渉膜OIは、例えば、酸化シリコン膜、シリコン膜および酸化シリコン膜を積層した構造を有している。フォトダイオードPDA、PDBのそれぞれの周囲は、p型半導体領域PRAにより囲まれている。このp型半導体領域PRAは、画素領域にアレイ状に並ぶ複数の画素の相互間を分離する役割を有している。フォトダイオードPDAおよび光学干渉膜OIからなる積層膜と隣り合う位置に、縦型トランジスタQAが形成されている。縦型トランジスタQAはp型半導体領域PRAを貫通してフォトダイオードPDBの下面に接続されている。縦型トランジスタQAは、フォトダイオードPDBに蓄積された電荷(情報)を読出す役割を有している。
【0110】
また、フォトダイオードPDA、光学干渉膜OIおよびフォトダイオードPDBからなる積層膜と隣り合う位置に、プラグPGがp型半導体領域PRAを貫通して形成されている。プラグPGは、プラグPGの上面に接続された電極EDと、光電変換膜PCの下面を覆う透明電極TE1とを介して光電変換膜PCに電気的に接続されている。光電変換膜PCの下面は透明電極TE1に接しており、光電変換膜PCの上面は透明電極TE2に覆われている。フォトダイオードPDA、PDB、光電変換膜PCおよび透明電極TE2のそれぞれの直上には、マイクロレンズMLが形成されている。
【0111】
図41に示す比較例の固体撮像素子の製造工程では、まず、第1の支持基板と、第1の支持基板上のp型のシリコン基板とからなる基板を用意する。このシリコン基板は、後の工程でフォトダイオードPDAが形成される基板である。続いて、シリコン基板上に光学干渉膜OIのパターンを形成する。ここで、シリコン基板の上面の一部は光学干渉膜OIから露出する。
【0112】
続いて、エピタキシャル成長法を用いて、シリコン基板上および光学干渉膜OI上に、p型のエピタキシャル層を形成する。ここでは、光学干渉膜OIの横で露出する。シリコン基板の上面からエピタキシャル層が成長し続け、これにより形成されたエピタキシャル層が光学干渉膜OIの上面の全体を覆う。このエピタキシャル層は、後にフォトダイオードPDBが形成される層である。
【0113】
続いて、第2の支持基板を、エピタキシャル層の上面に貼り付けた後、第1の支持基板を除去し、これによりシリコン基板の下面を露出させる。続いて、平面視において光学干渉膜OIと重ならない位置でシリコン基板を貫通し、シリコン基板の下面から、エピタキシャル層の途中深さまで達する縦型トランジスタQAを形成する。続いて、光学干渉膜OIの直下のシリコン基板内にn型不純物を導入することで、フォトダイオードPDAを形成する。その後、シリコン基板の下面に、他のトランジスタなどからなる回路を形成する。
【0114】
続いて、第3の支持基板をシリコン基板の下面に貼り付けた後、第2の支持基板を除去することで、エピタキシャル層の上面を露出させる。続いて、光学干渉膜OIの直上のエピタキシャル層内にn型不純物を導入することで、フォトダイオードPDBを形成する。その後、フォトダイオードPDA、PDBおよび光学干渉膜OIと平面視において重ならない位置において、シリコン基板およびエピタキシャル層を貫通するプラグPGを形成する。
【0115】
続いて、エピタキシャル層上に絶縁膜を形成した後、当該絶縁膜を貫通する電極EDを形成する。その後、当該絶縁膜上に透明電極TE1、光電変換膜PC、透明電極TE2、マイクロレンズMLを順に形成した後、第3の支持基板を除去する。これにより、
図41に示す固体撮像素子が形成される。光学干渉膜OIは、上下のフォトダイオードPDA、PDBのそれぞれの光学的な色分解性能の向上を目的として設けられたものである。
【0116】
このようにして形成された比較例の固体撮像素子では、p型半導体領域PRAにより横方向において隣り合う画素PE同士の分離を行っているため、隣り合う画素PE同士の間での電子の移動(電子クロストーク)を十分に防ぐことができない問題がある。この場合、撮像を行った際に、正確な画像を得られない問題が生じ、固体撮像素子の性能が低下する。
【0117】
また、上記した比較例の製造工程では、下層のフォトダイオードPDAが形成される領域であるシリコン基板と、上層のフォトダイオードPDBが形成される領域であるエピタキシャル層とを含む基板を形成した後に、フォトダイオードPDA、フォトダイオードPDB、縦型トランジスタQAおよびその他のトランジスタを形成している。つまり、ここでは、シリコン基板およびエピタキシャル層を含む基板を用意した後に、当該基板の上面および下面のそれぞれに順に素子を形成している。このような場合、支持基板の貼り合わせ工程と除去工程とが繰り返し行われるため、工程が多くなる。その結果、固体撮像素子の製造工程が煩雑になり、固体撮像素子の製造コストが増大する問題が生じる。
【0118】
次に、
図42および
図43を用いて、他の比較例の固体撮像素子の製造工程について説明する。当該比較例の固体撮像素子は、
図41を用いて説明した比較例の固体撮像素子と同様に、フォトダイオードからなる2つの光電変換部と、光電変換膜からなる光電変換部とを縦方向に積層した構造を各画素に有するものである。
【0119】
図42に示すように、まず、第1の支持基板SSBAと、支持基板SSBA上に形成されたシリコン基板SBAからなる基板を用意する。続いて、シリコン基板SBA上に、酸化シリコン膜、窒化シリコン膜および酸化シリコン膜を順に積層した積層膜からなる光学干渉膜OIを形成する。続いて、第2の支持基板SSBBと、支持基板SSBB上に形成されたシリコン基板SBBからなる基板を用意する。続いて、支持基板SSBBおよびシリコン基板SBBを含む基板の主面を、光学干渉膜OIの上面に接合する。これにより、
図42に示す構造を得る。
【0120】
次に、図示は省略するが、支持基板SSBAを除去することで、シリコン基板SBAの下面を露出させる。続いて、シリコン基板SBAの下面近傍にフォトダイオードPDAを形成し、フォトダイオードPDAと隣り合う位置のシリコン基板SBAの下面に転送トランジスタTXを形成する。また、ここでは図示していない周辺トランジスタ、および、周辺回路領域のトランジスタなどもシリコン基板SBAの下面側に形成する。
【0121】
次に、図示は省略するが、第3の支持基板をシリコン基板SBAの裏面に貼り付けた後、支持基板SSBBを除去することで、シリコン基板SBBの上面を露出させる。続いて、シリコン基板SBBの上面近傍にフォトダイオードPDBを形成し、フォトダイオードPDBと隣り合う位置のシリコン基板SBBの上面に転送トランジスタTXを形成する。また、ここでは図示していない周辺トランジスタ、および、周辺回路領域のトランジスタなどもシリコン基板SBBの上面側に形成する。
【0122】
次に、
図43に示すように、シリコン基板SBB上に絶縁膜を形成した後、当該絶縁膜を貫通する電極EDを形成する。その後、当該絶縁膜上に透明電極TE1、光電変換膜PC、透明電極TE2、マイクロレンズMLを順に形成した後、第3の支持基板を除去する。これにより固体撮像素子が形成される。光学干渉膜OIは、上下のフォトダイオードPDA、PDBのそれぞれの光学的な色分解性能の向上を目的として設けられたものである。
【0123】
このようにして形成された比較例の固体撮像素子では、
図41に示す比較例の固体撮像素子と同様に、p型半導体領域PRAにより横方向において隣り合う画素PE同士の分離を行っているため、隣り合う画素PE同士の間での電子の移動(電子クロストーク)を十分に防ぐことができない問題がある。
【0124】
また、
図42および
図43を用いて説明した比較例の固体撮像素子の製造工程では、互いに素子および配線層が形成されてシリコン基板SBA、SBBのそれぞれを接合した後に、フォトダイオードPDA、フォトダイオードPDB、転送トランジスタTXおよびその他のトランジスタを形成している。このような場合、支持基板の貼り合わせ工程と除去工程とが繰り返し行われるため、工程が多くなる。その結果、固体撮像素子の製造工程が煩雑になり、固体撮像素子の製造コストが増大する問題が生じる。
【0125】
また、
図41および
図43のそれぞれに示す固体撮像素子では、フォトダイオードPDAの下と、フォトダイオードPDBの上とのそれぞれに、トランジスタなどの素子に電気的に接続された配線を含む配線層を形成することが考えられる。この場合、配線は素子形成時に生じる熱により負荷を受けるため、配線層の形成工程は、下側のシリコン基板の下面近傍にフォトダイオードPDAおよびトランジスタなどの素子を形成し、上側のシリコン基板の下面近傍にフォトダイオードPDBおよびトランジスタなどの素子を形成した後に行う必要がある。
【0126】
その場合、例えば、フォトダイオードPDA、PDBを形成した後、フォトダイオードPDB上に配線層を形成し、続いて、フォトダイオードPDB上に第4の支持基板を貼り付け、フォトダイオードPDAの下の支持基板を除去する。その後、フォトダイオードPDAの下に配線層を形成し、続いて、第4の支持基板を除去してから、フォトダイオードPDAの下に第5の支持基板を貼り付けてから、フォトダイオードPDB上に上記配線層を介して透明電極TE1、光電変換膜PC、透明電極TE2およびマイクロレンズMLを形成する。このように、素子に接続された配線層を上下に形成する場合、さらに支持基板の貼り合わせおよび除去の工程が増えるため、固体撮像素子の製造コストが増大する。このような問題は、下側のフォトダイオードPDAが形成されるシリコン層(シリコン基板)と、上側のフォトダイオードPDBが形成されるシリコン層(エピタキシャル層またはシリコン基板)からなる積層基板を用意した後に、それぞれのシリコン層に素子を形成するために生じる。
【0127】
本実施の形態の固体撮像素子は、
図4に示すように、1つの画素PEが、下側のフォトダイオードPD2と、フォトダイオードPD2上の上側のフォトダイオードPD1とを有し、異なる波長の光を光電変換対象とすることができるものである。すなわち、フォトダイオードPD1では短波長の光を光電変換して検出することができ、フォトダイオードPD2では長波長の光を光電変換して検出することができる。よって、短波長の光を光電変換する画素と、長波長の光を光電変換する画素とを平面視において並べて形成する場合に比べて、画素数および画素の面積の低下を防ぎ、かつ、固体撮像素子を微細化することができる。言い換えれば、同じ面積の固体撮像素子であれば画素数を増大させることができ、同じ画素数であれば感度を向上することができる。よって、画素数または画素面積の増大により固体撮像素子の性能を向上させることが容易となる。
【0128】
ここで、本実施の形態のフォトダイオードPD1は、平面視において素子分離領域EI1により周囲を囲まれており、フォトダイオードPD2は、平面視において素子分離領域EI2により周囲を囲まれているため、画素PEと隣り合う他の画素のフォトダイオードとの間で電子の移動(電子クロストーク)が起こることを防ぐことができる。すなわち、素子分離領域EI1は層間絶縁膜IL1の下面から絶縁膜IF1の上面に亘って形成されており、素子分離領域EI2は層間絶縁膜IL2の上面から絶縁膜IF1の下面に亘って形成されているため、画素PEにおける半導体基板SB1および半導体基板SB2のそれぞれの内部に生じた電子が、他の画素に移動することを防ぐことができる。
【0129】
また、半導体基板SB1の第1裏面と半導体基板SB2の第2裏面とを対向させて接合させる場合、半導体基板SB1、SB2の相互間に絶縁膜を形成せず、半導体基板SB1、SB2同士を直接接合させることも考えられる。しかし、この場合、フォトダイオードPD1、PD2の間にp型半導体領域が存在していても、半導体基板SB1、SB2同士の間で電子が移動し、電子クロストークが起きる虞がある。本実施の形態では、縦方向において、フォトダイオードPD1とフォトダイオードPD2とは、絶縁膜IF1により分離されているため、半導体基板SB1の第1裏面と半導体基板SB2の第2裏面とを対向させて接合させた場合であっても、フォトダイオードPD1、PD2の相互間で電子が移動することを防ぐことができる。
【0130】
このように、フォトダイオードPD1は素子分離領域EI1、層間絶縁膜IL1および絶縁膜IF1により囲まれており、フォトダイオードPD2は素子分離領域EI2、層間絶縁膜IL2および絶縁膜IF1により囲まれているため、画素同士の間での電子の移動、および、縦方向における電子の移動を防ぐことができる。したがって、
図41〜
図43を用いて説明した比較例のように、フォトダイオードの周囲のp型半導体領域のみにより画素間の分離を行う場合に比べ、電子クロストークの発生を防ぐことができるため、固体撮像素子の性能を向上させることができる。
【0131】
また、半導体基板SB1と半導体基板SB2とは絶縁膜IF1により分離されているため、画素領域PERおよび周辺回路領域CRのいずれにおいても、半導体基板SB1と半導体基板SB2とのそれぞれの電位を別々に制御することができる。さらに、半導体基板SB1と半導体基板SB2とは絶縁膜IF1により分離されていることにより、半導体基板SB1と半導体基板SB2との間での周辺回路同士の干渉が起こることに起因するノイズの発生などを抑えることができる。
【0132】
また、本実施の形態の固体撮像素子の製造工程では、フォトダイオードPD1およびトランジスタQ1などの素子と、当該素子上の積層配線層とを備えた半導体基板SB1を用意し、フォトダイオードPD2およびトランジスタQ2などの素子と、当該素子上の積層配線層とを備えた半導体基板SB2を用意した後で、それらの基板同士を接合している。このため、第1半導体ウェハと第2半導体ウェハを接合した後に、半導体基板SB1、SB2に対する半導体素子の形成工程を行う必要がなく、積層配線層の形成工程を行う必要もない。
【0133】
すなわち、上記比較例では、上下のシリコン層(シリコン基板、エピタキシャル層)のそれぞれに対し素子または配線層の製造工程を行う度に支持基板を張り替える必要があり、製造工程が煩雑化しているが、本実施の形態では、素子および配線層を形成した半導体ウェハ同士を接合しているため、支持基板の貼り付けおよび除去の工程数を低減することができる。よって、ここでは、固体撮像素子の製造工程を簡略化し、固体撮像素子の製造コストを低減することができる。
【0134】
なお、本実施の形態では、STI構造を有する素子分離領域EI1、EI2を形成することについて説明したが、素子分離領域EI1、EI2はDTI(Deep Trench Isolation)構造を有していてもよい。つまり、例えば第1半導体ウェハの製造工程では、素子分離領域EI1を形成せずに
図6に示すフォトダイオードPD1、転送トランジスタTXおよびトランジスタQ1を形成した後、それらの素子を覆う層間絶縁膜を形成する。続いて、当該層間絶縁膜を貫通して半導体基板SB1の途中深さまで達する溝を形成した後、当該溝内に酸化シリコン膜などの絶縁膜を埋め込むことで、DTI構造の深い素子分離領域EI1を形成することができる。
【0135】
<変形例1>
図13に、本実施の形態の変形例1である固体撮像素子の平面図を示す。
図13は、
図2と同様に画素の平面レイアウトを示すものであるが、
図13では2つの画素を並べて示している。
【0136】
図13に示すように、1つの画素PEのそれぞれが、素子分離領域EI1により囲まれた領域内にフォトダイオードPD1、転送トランジスタTXおよび接地領域GNDを備えている点は、
図2に示す構造と同じである。ただし、ここでは、互いに隣り合う2つの画素のうち、一方の画素PEにのみ選択トランジスタSELと増幅トランジスタAMIが形成され、他方の画素PEにのみリセットトランジスタRSTが形成されている点で、
図2に示す構造と異なる。ここでは、一方の画素PEの浮遊拡散容量部FDおよびゲート電極GAと、他方の画素PEの浮遊拡散容量部FDおよびリセットトランジスタRSTのソース領域とが、互いに配線(図示しない)により電気的に接続されている。
【0137】
本変形例では、隣り合う2つの画素PE同士で、周辺トランジスタを共有している。このため、画素PEのそれぞれにおいてフォトダイオードPD1の形成領域を拡げることができる。したがって、固体撮像素子の性能を向上させることができる。
【0138】
<変形例2>
図14に、本実施の形態の変形例2である固体撮像素子の断面図を示す。
図14は、
図4に対応する断面図である。ここでは、積層された2つのフォトダイオードに加えて、当該2つのフォトダイオードの上方にさらに光電変換膜からなる受光素子を形成することについて説明する。
【0139】
図14に示すように、本変形例の固体撮像素子は、層間絶縁膜IL1上であって、フォトダイオードPD1、PD2のそれぞれの直上に、光電変換膜PCを有している。言い換えれば、フォトダイオードPD1、PD2および光電変換膜PCは、平面視において互いに重なる位置に形成されている。光電変換膜PCは各画素PEおいて、マイクロレンズMLの直下に1つ形成されている。光電変換膜PCの下面は下部電極LEに接しており、光電変換膜PCは下部電極およびビアを介して、層間絶縁膜IL1内の配線M2に電気的に接続されている。また、光電変換膜PCの上面は、当該上面に接する上部電極UEに覆われている。ここでは、光電変換膜PCとパッシベーション膜PFは互いに隣接して形成され、パッシベーション膜PFは上部電極UEの上面を覆っていないが、パッシベーション膜PFの一部は上部電極UEの上面を覆っていてもよい。
【0140】
層間絶縁膜IL1上には、層間絶縁膜IL3が形成されており、下部電極LEの側面および上面の一部は層間絶縁膜IL3により覆われている。下部電極LEの上面の他の一部は層間絶縁膜IL3の開口部において光電変換膜PCの下面に接している。光電変換膜PCおよび上部電極UEは、層間絶縁膜IL3上であって、マイクロレンズMLの直下に形成されている。周辺回路領域CRには、下部電極LE、光電変換膜PCおよび上部電極UEは形成されていない。
【0141】
光電変換膜PCは、光電変換素子(光電変換部、受光素子)である。ここでは、第1の波長領域の光をフォトダイオードPD2で検出し、第2の波長領域の光をフォトダイオードPD1で検出し、第3の波長領域の光を光電変換膜PCで検出する。ここでは、例えば第1の波長領域の光、第2の波長領域の光および第3の波長領域の光の順に波長が短くなる。例えば、一番下のフォトダイオードPD2により赤色の光を検出し、中間のフォトダイオードPD1により青色の光を検出し、一番上の光電変換膜PCにより緑色の光を検出する。これにより、1つの画素PEで赤、青、緑の何れの光も光電変換することができる。
【0142】
光電変換膜PCは、第3の波長領域の光を吸収する特性を有する材料(例えば、無機光電変換膜、有機光電変換膜または量子フィルムなど)からなる。光電変換膜PCは、ローダーミン系色素、メラシアニン系色素またはキナクリドンなどを含む有機光電変換材料で構成されている。光電変換膜PCは、入射光のうち特定の波長領域の光を吸収し、電子に返還するものである。光電変換膜PCは縦方向において上部電極UEおよび下部電極LEにより挟まれている。
【0143】
下部電極LEおよび上部電極UEは、第1の波長領域の光および第2の波長領域の光を透過する材料により構成されている。下部電極LEおよび上部電極UEは、例えばITO(酸化インジウムスズ)膜またはIZO(酸化インジウム亜鉛)膜などの光透過性材料からなる。層間絶縁膜IL3は、例えば酸化シリコン膜からなる。このように、本実施の形態は、光電変換部が1つの画素に3つ重ねて形成されている固体撮像素子に適用することもできる。
【0144】
以下に、
図15〜
図17を用いて、本変形例の固体撮像素子の製造方法を説明する。
図15〜
図17は、本変形例の固体撮像素子の製造工程中の断面図である。なお、
図16には、パッド領域PDRを示している。
【0145】
まず、
図5〜
図11を用いて説明した工程と同様の工程を行うことで、第1半導体ウェハと第2半導体ウェハを接合し、層間絶縁膜IL1の上面を露出させる。
【0146】
次に、
図15に示すように、画素領域PERにおいて、層間絶縁膜IL1の上面に形成されたビアホール内に埋め込まれ、配線M2の上面に接続されたビアを形成する。続いて、層間絶縁膜IL1上および当該ビア上に、例えばスパッタリング法により金属膜を形成した後、フォトリソグラフィ技術およびエッチング法を用いて当該金属膜を加工することで、当該金属膜からなる下部電極LEを画素領域PERに形成する。下部電極LEは例えばITO膜からなり、下部電極LEの下面は上記ビアの上面に接続されている。下部電極LEは、フォトダイオードPD1、PD2のそれぞれの直上に形成されている。下部電極LEは、例えばスパッタリング法により形成することができる。続いて、例えばCVD法を用いて、下部電極LEを覆う層間絶縁膜IL3を、層間絶縁膜IL1上に形成する。層間絶縁膜IL3は例えば酸化シリコン膜からなる。
【0147】
次に、
図16に示すように、
図12を用いて説明した貫通ビアTSV、パッドPDおよびパッシベーション膜PFの形成工程と同様の工程を行う。これにより、層間絶縁膜IL3、IL1、半導体基板SB1、絶縁膜IF1および半導体基板SB2を貫通し、層間絶縁膜IL2の途中深さまで達する貫通ビアTSVを形成し、層間絶縁膜IL3上にパッドPDおよびパッシベーション膜PFを形成する。その後、フォトリソグラフィ技術およびエッチング法を用いて、画素領域PERのパッシベーション膜PFを除去する。
【0148】
次に、
図17に示すように、フォトリソグラフィ技術およびエッチング法を用いて、画素領域PERの層間絶縁膜IL3の一部を開口し、これにより、フォトダイオードPD1、PD2のそれぞれの直上において、下部電極LEの上面の一部を露出させる。続いて、層間絶縁膜IL3上に光電変換膜PCと、上部電極UEとを順に形成した後、上部電極UEおよび光電変換膜PCをパターニングすることで、上部電極UEおよび光電変換膜PCをフォトダイオードPD1、PD2のそれぞれの直上に残す。光電変換膜PCの下面の一部は、下部電極LEの上面に接続されている。上部電極UEは、例えばスパッタリング法により形成することができる。
【0149】
続いて、下部電極LE、光電変換膜PCおよび上部電極UEを覆うように、マイクロレンズMLを形成する。その後は、積層ウェハをダイシングして個片化することで、本変形例の固体撮像素子が略完成する。このように、本実施の形態は、光電変換部が1つの画素に3つ重ねて形成されている固体撮像素子の製造方法に適用することもできる。
【0150】
<変形例3>
以下に、
図18〜
図21を用いて、本実施の形態の変形例3である固体撮像素子の製造方法を説明する。
図18〜
図21は、本変形例の固体撮像素子の製造工程中の断面図である。ここでは、第1の半導体基板および第2の半導体基板のそれぞれをSOI(Silicon On Insulator)基板として用意し、これらを互いに接合する場合について説明する。
【0151】
まず、
図18に示すように、
図5を用いて説明した工程と同様にして、第1の半導体基板SB1および第2の半導体基板SB2を用意する。ここでは、
図5の構造と異なり、半導体基板SB1は基板S1とエピタキシャル層EP1との間に絶縁膜(埋込み酸化膜)BOXを有しており、半導体基板SB2は基板S2とエピタキシャル層EP2との間に絶縁膜(埋込み酸化膜)BOXを有している。すなわち、半導体基板SB1、SB2のそれぞれはSOI基板である。つまり、エピタキシャル層EP1、EP2は、SOI層である。
【0152】
ここで、エピタキシャル層EP2の厚さは、エピタキシャル層EP1の厚さよりも大きい。エピタキシャル層EP1は、エピタキシャル層EP1に形成されるフォトダイオードPD1(
図21参照)が光電変換する第2の波長領域(短波長可視光)に応じて薄く形成され、エピタキシャル層EP2は、エピタキシャル層EP2に形成されるフォトダイオードPD2(
図21参照)が光電変換する第1の波長領域(短波長可視光)に応じて厚く形成される。
【0153】
次に、
図19に示すように、
図6を用いて説明した工程と同様にして、各素子および積層配線層を形成する。ここでは、素子分離領域EI1をエピタキシャル層EP1を貫通させて形成する。つまり、素子分離領域EI1の下面は、絶縁膜BOXの上面に達する。同様に、素子分離領域EI2をエピタキシャル層EP2を貫通させて形成する。エピタキシャル層EP2の厚さは、エピタキシャル層EP1の厚さよりも大きいため、素子分離領域EI2は素子分離領域EI1よりも深く形成される。
【0154】
また、フォトダイオードPD1はエピタキシャル層EP1内に形成され、フォトダイオードPD1を構成するn型半導体領域NRは、絶縁膜BOXの上面に達していない。同様に、フォトダイオードPD2はエピタキシャル層EP2内に形成され、フォトダイオードPD2を構成するn型半導体領域NRは、絶縁膜BOXの上面に達していない。
【0155】
次に、
図20に示すように、
図7および
図8を用いて説明した工程と同様にして、支持基板が貼り付けられた各半導体基板を逆さにした後、例えばCMP法により半導体基板SB1の第1裏面および半導体基板SB2の第2裏面を研磨する。ここでは、絶縁膜BOXの上面が露出するまで基板S1、S2を研磨することで、基板S1、S2を除去する。このとき、絶縁膜BOXは研磨工程のストッパ膜として機能するため、研磨量の制御性を向上させることができる。すなわち、半導体基板SB1の第1裏面および半導体基板SB2の第2裏面の後退量を制御することができる。
【0156】
次に、
図21に示すように、例えばウェットエッチング法を用いて第1半導体ウェハおよび第2半導体ウェハのそれぞれの裏面の絶縁膜BOXを除去することで、エピタキシャル層EP1、EP2、素子分離領域EI1およびEI2のそれぞれの裏面(上面)を露出させる。その後、
図9〜
図12を用いて説明した工程と同様の工程を行うことで、本変形例の固体撮像素子が略完成する。すなわち、ここでは、第1半導体ウェハおよび第2半導体ウェハのそれぞれの裏面を覆う絶縁膜IF2、IF3(
図9参照)を形成したあと、第1半導体ウェハおよび第2半導体ウェハのそれぞれの裏面を接合することで、絶縁膜IF1を形成し、続いて、層間絶縁膜IL1上にパッシベーション膜PFおよびマイクロレンズMLを形成する。
【0157】
ただし、
図20に示す絶縁膜BOXは除去せず、かつ、絶縁膜IF2、IF3を形成せずに第1半導体ウェハおよび第2半導体ウェハを接合してもよい。これにより、第1半導体ウェハおよび第2半導体ウェハのそれぞれの裏面の絶縁膜BOX同士が張り合わされて、絶縁膜IF1が形成される。この場合、絶縁膜BOXの除去工程および絶縁膜IF2、IF3の形成工程を省略することができるため、固体撮像素子の製造コストを低減することができる。
【0158】
本変形例のように、本実施の形態はSOI基板を用いた固体撮像素子に適用することができる。ここでは、SOI基板を用いることで、第1半導体ウェハおよび第2半導体ウェハの薄膜化工程(
図20参照)での制御性を向上させる効果を得ることができる。
【0159】
(実施の形態2)
以下に、本実施の形態2の固体撮像素子の構造について、
図22を用いて説明する。
図22は、本実施の形態の固体撮像素子を示す断面図である。ここでは、第1半導体ウェハと第2半導体ウェハとの間に、負の電荷が固定された膜を形成することで、暗電流の発生を防ぐことについて説明する。
【0160】
図20に示すように、本実施の形態の固体撮像素子は、半導体基板SB1、SB2の相互間の構造を除き、前記実施の形態1の固体撮像素子と同様の構造を有している。ここで、半導体基板SB2の上面(第2裏面)と、半導体基板SB1の下面(第1裏面)との間には、半導体基板SB2側から順に形成された絶縁膜IF3、絶縁膜IF4および絶縁膜IF2が形成されている。半導体基板SB2の上面(第2裏面)は絶縁膜IF3に接し、半導体基板SB1の下面(第1裏面)は絶縁膜IF2に接している。絶縁膜IF2、IF3は、例えば酸化シリコン膜、窒化シリコン膜、炭窒化シリコン膜または炭化シリコン膜からなる。実際には、絶縁膜IF3は2つの膜からなる積層構造を有しており、絶縁膜IF3は絶縁膜IF2よりも膜厚が大きい。
【0161】
絶縁膜IF4は、負の電荷が固定された膜(負の電荷を有する膜)であり、例えば、HfO(酸化ハフニウム)膜からなる。
【0162】
以下に、
図23を用いて、本実施の形態である固体撮像素子の製造方法を説明する。
図23は、本実施の形態の固体撮像素子の製造工程中の断面図である。ここではまず、
図5〜
図8を用いて説明した工程を行う。
【0163】
次に、
図23に示すように、半導体基板SB1の第1裏面を覆うように、絶縁膜IF2、絶縁膜IF4および絶縁膜IF5を順に形成し、半導体基板SB2の第2裏面を覆うように、絶縁膜IF3を形成する。絶縁膜IF4は例えばHfO膜からなり、絶縁膜IF5は例えば酸化シリコン膜からなる。絶縁膜IF4、IF5は、例えばCVD法により形成することができる。
【0164】
その後は、
図10〜
図12を用いて説明した工程と同様の工程を行うことで、
図22に示す固体撮像素子が略完成する。すなわち、ここでは、第1半導体ウェハの裏面において露出する絶縁膜IF5と、第2半導体ウェハの裏面において露出する絶縁膜IF3とを接合させることで、積層ウェハを形成する。
図22では、絶縁膜IF5は絶縁膜IF3と一体化したものとして、絶縁膜IF3のみを示している。すなわち、絶縁膜IF3は2つの絶縁膜からなる積層構造を有しているため、絶縁膜IF2よりも膜厚が大きい。
【0165】
なお、
図23では、第1の半導体基板SB1の第1裏面に絶縁膜IF4を堆積する場合について説明したが、第1の半導体基板SB1の第1裏面に絶縁膜IF2のみを堆積し、第2の半導体基板SB2の第2裏面に絶縁膜IF3を介して絶縁膜IF4および絶縁膜IF5を堆積してもよい。この場合、完成した固体撮像素子では、絶縁膜IF4上の絶縁膜IF2の膜厚が、絶縁膜IF3よりも大きくなる。
【0166】
本実施の形態では、フォトダイオードPD1、PD2のそれぞれを、他の画素に対して素子分離領域EI1、EI2により分離しており、かつ、素子および配線層を形成した第1半導体ウェハと第2半導体ウェハとを互いに接合して積層ウェハを形成することで、前記実施の形態1と同様の効果を得ることができる。
【0167】
また、本実施の形態の固体撮像素子では、フォトダイオードPD1が形成された半導体基板SB1とフォトダイオードPD2が形成された半導体基板SB2との間に、負の固定電荷を有する絶縁膜IF4を、絶縁膜IF2またはIF3を介して形成している。絶縁膜IF4が負の電荷を有していることで、絶縁膜IF4に対し絶縁膜IF2を介して隣接している半導体基板SB1内には正の電荷(正孔)が誘起される。正孔は、半導体基板SB1内において、絶縁膜IF4側の第1裏面近傍に生じる。同様に、絶縁膜IF4に対し絶縁膜IF3を介して隣接している半導体基板SB2内には正の電荷(正孔)が誘起される。正孔は、半導体基板SB2内において、絶縁膜IF4側の第2裏面近傍に生じる。
【0168】
フォトダイオードを有するシリコン層内では、当該シリコン層と絶縁膜とが接する界面において電子が発生し易く、この電子の存在により、暗電流が発生する問題がある。暗電流とは、固体撮像素子の画素領域のうち、光が照射されていない画素において当該電子が生じることにより発生する電流である。このため、暗電流が発生すると固体撮像素子の撮像性能が低下する。
【0169】
本実施の形態の固体撮像素子では、半導体基板SB1と絶縁膜IF2との界面で生じる電子を、絶縁膜IF4の負の電荷により半導体基板SB1の第1裏面に誘起された正孔により消滅させることができる。同様に、半導体基板SB2と絶縁膜IF3との界面で生じる電子を、絶縁膜IF4の負の電荷により半導体基板SB2の第2裏面に誘起された正孔により消滅させることができる。よって、暗電流の発生を防ぐことができるため、固体撮像素子の性能を向上させることができる。
【0170】
なお、
図22に示す絶縁膜IF2、IF3は形成しなくてもよい。また、前記実施の形態1の変形例2で説明した光電変換膜PC(
図14参照)を本実施の形態に適用してもよい。
【0171】
<変形例1>
以下に、本実施の形態の変形例1である固体撮像素子の構造について、
図24を用いて説明する。
図24は、本変形例の固体撮像素子を示す断面図である。ここでは、第1半導体ウェハと第2半導体ウェハとの間に、負の電荷が固定された膜を2つ重ねて形成することで、暗電流の発生を防ぐことについて説明する。
【0172】
図24に示すように、本変形例の固体撮像素子は、半導体基板SB1、SB2の相互間の構造を除き、
図22に示す固体撮像素子と同様の構造を有している。ここで、半導体基板SB2の上面(第2裏面)と、半導体基板SB1の下面(第1裏面)との間には、半導体基板SB2側から順に形成された絶縁膜IF3、絶縁膜IF7、絶縁膜IF6、絶縁膜IF4および絶縁膜IF2が形成されている。半導体基板SB2の上面(第2裏面)は絶縁膜IF3に接し、半導体基板SB1の下面(第1裏面)は絶縁膜IF2に接している。絶縁膜IF2、IF3およびIF6は、例えば酸化シリコン膜、窒化シリコン膜、炭窒化シリコン膜または炭化シリコン膜からなる。実際には、絶縁膜IF6は2つの膜からなる積層構造を有しており、絶縁膜IF6は絶縁膜IF2、IF3のいずれよりも膜厚が大きい。
【0173】
絶縁膜IF4、IF7は、負の電荷が固定された膜であり、例えば、HfO(酸化ハフニウム)膜からなる。すなわち、
図22に示す固体撮像素子では負の電荷が固定された絶縁膜IF4を1つのみ形成しているが、ここでは負の電荷が固定された2つの絶縁膜IF4、IF7を、絶縁膜IF6を介して互いに重ねて形成している。
【0174】
以下に、
図25を用いて、本実施の形態である固体撮像素子の製造方法を説明する。
図25は、本実施の形態の固体撮像素子の製造工程中の断面図である。ここではまず、
図5〜
図8を用いて説明した工程を行う。
【0175】
次に、
図25に示すように、半導体基板SB1の第1裏面を覆うように、絶縁膜IF2、絶縁膜IF4および絶縁膜IF6を順に形成し、半導体基板SB2の第2裏面を覆うように、絶縁膜IF3、絶縁膜IF7および絶縁膜IF8を順に形成する。つまり、絶縁膜IF2を形成した後、露出している絶縁膜IF2の面を覆うように、絶縁膜IF4および絶縁膜IF6を順に形成し、絶縁膜IF3を形成した後、露出している絶縁膜IF3の面を覆うように、絶縁膜IF7および絶縁膜IF8を順に形成する。
【0176】
絶縁膜IF4、IF7は例えばHfO膜からなり、絶縁膜IF6、IF8は例えば酸化シリコン膜からなる。絶縁膜IF4、IF6、IF7およびIF8は、例えばCVD法により形成することができる。
【0177】
その後は、
図10〜
図12を用いて説明した工程と同様の工程を行うことで、
図24に示す固体撮像素子が略完成する。すなわち、ここでは、第1半導体ウェハの裏面において露出する絶縁膜IF6と、第2半導体ウェハの裏面において露出する絶縁膜IF8とを接合させることで、積層ウェハを形成する。
図24では、絶縁膜IF8は絶縁膜IF6と一体化したものとして、絶縁膜IF6のみを示している。すなわち、絶縁膜IF6は2つの絶縁膜からなる積層構造を有しているため、絶縁膜IF2、IF3のいずれよりも膜厚が大きい。
【0178】
本変形例では、前記実施の形態1と同様の効果を得ることができる。
【0179】
また、半導体基板SB1の第1裏面の下に絶縁膜IF2を介して、負の固定電荷を有する絶縁膜IF4を形成しており、半導体基板SB2の第2裏面の上に絶縁膜IF3を介して、負の固定電荷を有する絶縁膜IF7を形成している。これにより、各画素PEにおいて暗電流が生じることを防ぐことができる。
【0180】
さらに、ここでは絶縁膜IF2、IF3のそれぞれの膜厚を同等に揃えることが容易である。なぜならば、
図25を用いて説明した工程で用意した第1半導体ウェハと第2半導体ウェハとを接合する際に、対向して接続されるのは絶縁膜IF6、IF8であり、半導体基板SB1に接する絶縁膜IF2および半導体基板SB2に接する絶縁膜IF3ではないためである。よって、2つのウェハの接合に起因して、絶縁膜IF2、IF3のいずれか一方が厚膜化することを防ぐことができる。
【0181】
絶縁膜IF2の膜厚と絶縁膜IF3の膜厚との間に差があると、絶縁膜IF4、IF7を形成したことにより得られる暗電流の抑制効果が、下側のフォトダイオードPD2と上側のフォトダイオードPD1との間でばらつく。これに対し、本変形例では、絶縁膜IF2、IF3のそれぞれを同等の厚さで形成することができるため、下側のフォトダイオードPD2と上側のフォトダイオードPD1とのそれぞれにおいて同様に暗電流の抑制効果を得ることができる。
【0182】
また、絶縁膜IF2、IF3のいずれか一方が厚膜化することを防ぐことができるため、上下のフォトダイオードPD1、PD2における暗電流の抑制効果を同等に揃えることを目的として、絶縁膜IF2、IF3のうちの厚い方に合わせて他方を厚膜化する必要がない。すなわち、絶縁膜IF2、IF3の両方を薄膜化することができるため、暗電流の抑制効果をより顕著に得ることができる。
【0183】
なお、前記実施の形態1の変形例2で説明した光電変換膜PC(
図14参照)を本変形例に適用してもよい。
【0184】
<変形例2>
本実施の形態の変形例2である固体撮像素子の構造について、
図26を用いて説明する。また、本実施の形態の変形例2である固体撮像素子の製造方法について、
図27および
図28を用いて説明する。
図26は、本変形例の固体撮像素子を示す断面図である。
図27および
図28は、本変形例の固体撮像素子の製造工程中の断面図である。本変形例は、第1半導体ウェハと第2半導体ウェハとの間に、短波長の光を反射し、長波長の光を透過する膜を形成するものである。
【0185】
図26に示す本変形例の固体撮像素子は、絶縁膜IF2、IF3の相互間に、負の固定電荷を有する絶縁膜IF4(
図22参照)ではなく、例えばシリコンまたは窒化シリコンからなる反射膜RF1が形成されている点で、
図22に示す固体撮像素子と異なり、他の構造は
図22に示す固体撮像素子と同じである。
【0186】
このような固体撮像素子は、
図27に示すように、
図23を用いて説明した工程において、負の固定電荷を有する絶縁膜IF4ではなく、例えばシリコンまたは窒化シリコンからなる反射膜RF1を形成することで製造することができる。反射膜RF1は、例えばCVD法により形成することができる。つまり、
図27に示す工程では、半導体基板SB1上に絶縁膜IF2、反射膜RF1および絶縁膜IF5を順に形成し、半導体基板SB2上に絶縁膜IF3を形成した後、第1半導体ウェハと第2半導体ウェハとを接合する。この場合、
図26に示す絶縁膜IF3は絶縁膜IF2よりも厚く形成される。
【0187】
これに対し、半導体基板SB1、SB2のそれぞれの上に絶縁膜を介して反射膜を形成した後、それらの反射膜同士を接合してもよい。その場合の固体撮像素子の製造工程では、まず
図5〜
図8を用いて説明した工程を行う。その後、
図28に示すように、半導体基板SB1上に絶縁膜IF2、反射膜RF2を順に形成し、半導体基板SB2上に絶縁膜IF3、反射膜RF3を順に形成する。
【0188】
その後は、
図10〜
図12を用いて説明した工程と同様の工程を行うことで、
図26に示す固体撮像素子が略完成する。すなわち、ここでは、第1半導体ウェハの裏面において露出する反射膜RF2と、第2半導体ウェハの裏面において露出する反射膜RF3とを接合させることで、積層ウェハを形成する。ここでは、反射膜RF2および反射膜RF3は一体化して反射膜RF1を構成している。つまり、反射膜RF1は2つの膜からなる積層構造を有している。
【0189】
本変形例では、前記実施の形態1と同様の効果を得ることができる。
【0190】
また、反射膜RF1は、反射膜RF1の上のフォトダイオードPD1で検出する対象である短波長の光を反射し、反射膜RF1の下のフォトダイオードPD2で検出する対象である長波長の光を透過する膜である。半導体基板SB1の上方からマイクロレンズMLを透過して半導体基板SB1側に照射された光のうち、短波長の光の一部はフォトダイオードPD1で光電変換されるが、他の一部の光はフォトダイオードPD1を透過して絶縁膜IF2に達する。絶縁膜IF2に達した当該短波長の光は、絶縁膜IF2と絶縁膜IF4との境界でフォトダイオードPD1側に反射して、フォトダイオードPD1で光電変換される。よって、フォトダイオードPD1における感度を向上させることができる。
【0191】
これに対し、半導体基板SB1の上方からマイクロレンズMLを透過して半導体基板SB1側に照射された光のうち、長波長の光は反射膜RF1を透過してフォトダイオードPD2に達し、フォトダイオードPD2により光電変換される。このため、反射膜RF1を形成したことに起因してフォトダイオードPD2における感度が低下することを防ぐことができる。また、短波長の光がフォトダイオードPD2で光電変換されることにより、色分解性能を向上することができる。
【0192】
なお、
図26に示す絶縁膜IF2、IF3は形成しなくてもよい。また、前記実施の形態1の変形例2で説明した光電変換膜PC(
図14参照)を本変形例に適用してもよい。
【0193】
<変形例3>
本実施の形態の変形例3である固体撮像素子の構造について、
図29を用いて説明する。また、本実施の形態の変形例3である固体撮像素子の製造方法について、
図30を用いて説明する。
図29は、本変形例の固体撮像素子を示す断面図である。
図30は、本変形例の固体撮像素子の製造工程中の断面図である。本変形例は、第1半導体ウェハと第2半導体ウェハとの間に、短波長の光を反射し、長波長の光を透過する膜を2層重ねて形成するものである。
【0194】
図29に示す本変形例の固体撮像素子は、絶縁膜IF2、IF3の相互間に、負の固定電荷を有する絶縁膜IF4、IF7(
図24参照)ではなく、例えばシリコンまたは窒化シリコンからなる反射膜RF2、RF3が形成されている点で、
図24に示す固体撮像素子と異なり、他の構造は
図24に示す固体撮像素子と同じである。すなわち、半導体基板SB2上には、順に絶縁膜IF3、反射膜RF3、絶縁膜IF6、反射膜RF2、絶縁膜IF2および半導体基板SB1が配置されている。
【0195】
このような固体撮像素子は、
図30に示すように、
図25を用いて説明した工程において、負の固定電荷を有する絶縁膜IF4、IF7ではなく、例えばシリコンまたは窒化シリコンからなる反射膜RF2、RF3を形成することで製造することができる。反射膜RF2、RF3は、例えばCVD法により形成することができる。つまり、
図30に示す工程では、半導体基板SB1上に絶縁膜IF2、反射膜RF2および絶縁膜IF6を順に形成し、半導体基板SB2上に絶縁膜IF3、反射膜RF3および絶縁膜IF8を形成した後、第1半導体ウェハと第2半導体ウェハとを接合する。この場合、
図29に示す絶縁膜IF6は、絶縁膜IF2、IF3のいずれよりも厚く形成される。
【0196】
反射膜RF2、RF3は、反射膜RF2、RF3の上のフォトダイオードPD1で検出する対象である短波長の光を反射し、反射膜RF2、RF3の下のフォトダイオードPD2で検出する対象である長波長の光を透過する膜である。本変形例では、光が固体撮像素子に入射した際に、絶縁膜IF2と反射膜RF2との境界、および、絶縁膜IF6と反射膜RF3との境界のそれぞれにおいて短波長の光を反射することができる。これにより、本実施の形態の前記変形例2の効果をより顕著に得ることができる。
【0197】
また、反射膜を複数形成することで、検出対象の波長光に最適な反射性能および透過特性を有する多層膜を第1の半導体基板および第2の半導体基板の相互間に形成することができる。すなわち、固体撮像素子の特性の調整が容易になる。
【0198】
なお、前記実施の形態1の変形例2で説明した光電変換膜PC(
図14参照)を本変形例に適用してもよい。
【0199】
(実施の形態3)
以下に、本実施の形態3の固体撮像素子の構造について、
図31および
図32を用いて説明する。
図31は、本実施の形態の固体撮像素子を示す断面図である。
図31では、画素アレイ領域PERにおいて互いに隣り合う2つの画素PE1、PE2と周辺回路領域CRとを示している。
図32は、本実施の形態の固体撮像素子を示す平面図である。
図32では、アレイ状に並ぶ9つの画素における上層のフォトダイオードの平面レイアウトと下層のフォトダイオードの平面レイアウトとを並べて示している。ここでは、第1半導体ウェハと第2半導体ウェハとを重ねた積層イメージセンサにおいて、隣り合う2つの画素を用いて4種類の波長の光を検出することについて説明する。
【0200】
図31に示すように、本実施の形態の固体撮像素子は、パッシベーション膜PFとマイクロレンズMLとの間にカラーフィルタCF1またはCF2が形成されている点を除き、前記実施の形態1の固体撮像素子と同様の構造を有している。画素PE1と画素PE2とが互いに隣り合って配置されており、画素PE1のマイクロレンズMLの直下にはカラーフィルタCF1が形成され、画素PE2のマイクロレンズMLの直下にはカラーフィルタCF2が形成されている。
【0201】
画素PE1は、フォトダイオードPD1およびフォトダイオードPD1の下のフォトダイオードPD2を備えており、画素PE2は、フォトダイオードPD3およびフォトダイオードPD3の下のフォトダイオードPD4を備えている。フォトダイオードPD1、PD2とカラーフィルタCF1とは平面視において互いに重なっており、フォトダイオードPD3、PD4とカラーフィルタCF2とは平面視において互いに重なっている。
【0202】
図32に示すように、画素領域PER(
図1および
図31参照)内の画素PE1と画素PE2とは、X方向およびY方向において交互に配置されている。
図32には、半導体基板SB1(
図31参照)に形成された上側のフォトダイオードPD1、PD3の配置を上側に示し、半導体基板SB2(
図31参照)に形成された下側のフォトダイオードPD2、PD4の配置を下側に示している。つまり、
図32の上側に示す9つの画素PE1、PE2と、
図32の下側に示す9つの画素PE1、PE2とは、実際には平面視において重なっている。フォトダイオードPD1、PD3は、X方向およびY方向において交互に配置されており、フォトダイオードPD2、PD4は、X方向およびY方向において交互に配置されている。
【0203】
本実施の形態では、前記実施の形態1と同様の効果を得ることができる。
【0204】
ここで、フォトダイオードPD2は、赤色の光を光電変換する受光部であり、フォトダイオードPD1、PD4は、緑色の光を光電変換する受光部であり、フォトダイオードPD3は、青色の光を光電変換する受光部である。また、緑色の光のうち、長波長側の光はフォトダイオードPD1において検出し、短波長側の光はフォトダイオードPD3により検出する。つまり、受光する光の波長の長さは、フォトダイオードPD3、PD4、PD1およびPD2の順に長くなる。すなわち、フォトダイオードPD3では可視光のうち最も短い波長領域の光を検出し、フォトダイオードPD2では可視光のうち最も長い波長領域の光を検出する。
【0205】
このような色分解性能は、
図31に示す画素PE1、PE2において、透過率が異なるカラーフィルタCF1、CF2をそれぞれ形成することにより実現することができる。
図33において、光の波長(横軸)とカラーフィルタCF1、CF2の透過率(縦軸)との関係をグラフで示す。
図33では、カラーフィルタCF1の透過率を表したグラフを実線で示し、カラーフィルタCF2の透過率を表したグラフを破線で示している。
【0206】
図33に示すように、カラーフィルタCF2は、青色の波長領域Bと、緑色の波長領域Gとの光を透過し、赤色の波長領域Rの光を透過しない材料からなる。カラーフィルタCF1は、青色の波長領域Bの光を透過せず、緑色の波長領域Gと、赤色の波長領域Rとの光を透過する材料からなる。言い換えれば、カラーフィルタCF2において、青色の波長領域Bの光および緑色の波長領域Gの光のそれぞれの透過率は、赤色の波長領域Rの光の透過率より高い。また、カラーフィルタCF1において、赤色の波長領域Rの光および緑色の波長領域Gの光のそれぞれの透過率は、青色の波長領域Bの光の透過率より高い。
【0207】
したがって、
図31に示すカラーフィルタCF2の直下において、フォトダイオードPD3では青色の光を検出し、フォトダイオードPD4では緑色の光を検出することができる。また、
図31に示すカラーフィルタCF1の直下において、フォトダイオードPD1では緑色の光を検出し、フォトダイオードPD2では赤色の光を検出することができる。すなわち、カラーフィルタCF1は、カラーフィルタCF2よりも長い波長の光を透過するものである。カラーフィルタCF1、CF2は、例えば有機膜からなり、例えば、色素を含有する感光性材料からなる。
【0208】
積層されたフォトダイオードを有さず、各画素に1つのみフォトダイオードを備えた固体撮像素子では、赤色、長波長領域の緑色、短波長領域の緑色、および、青色の各色の光を別々に光電変換する部分(ベイヤ)を、平面視において並ぶ4つの画素により構成する必要があるため、固体撮像素子の感度性能が低下する問題がある。これに対し、本実施の形態では、互いに隣り合う一対の画素PE1、PE2のそれぞれに、異なる波長の光を透過するカラーフィルタCF1、CF2を設けることで、当該一対の画素PE1、PE2により赤、青および緑の可視光のそれぞれを検出することができる。したがって、1つの画素における平面視での受光面積を大きくすることができるため、固体撮像素子の感度性能を向上させることができる。
【0209】
以下に、
図34を用いて、本実施の形態である固体撮像素子の製造方法を説明する。
図34は、本実施の形態の固体撮像素子の製造工程中の断面図である。
図34では、画素領域PERにおける2つの画素が形成される領域と、周辺回路領域CRとを示している。
図34は、
図11を用いて説明した工程に対応する工程中の断面図である。本実施の形態の固体撮像素子の製造方法は、カラーフィルタを形成する点を除き、前記実施の形態1と同様である。
【0210】
ここではまず、
図5〜
図11を用いて説明した工程を行う。すなわち、互いに横方向に隣り合うフォトダイオードPD1およびPD3を備えた第1半導体ウェハと、互いに横方向に隣り合うフォトダイオードPD2およびPD4を備えた第2半導体ウェハとを用意し、それらのウェハの裏面同士を接合する。その後、支持基板SSB1(
図10参照)を除去することで、
図34に示す構造を得る。ここで、画素PE1の上層の半導体基板SB1にはフォトダイオードPD1が形成され、画素PE1の下層の半導体基板SB2にはフォトダイオードPD2が形成されている。また、画素PE2の上層の半導体基板SB1にはフォトダイオードPD3が形成され、画素PE2の下層の半導体基板SB2にはフォトダイオードPD4が形成されている。
【0211】
次に、
図12を用いて説明した工程と同様にして、貫通ビアTSV(図示しない)、パッドPD(図示しない)およびパッシベーション膜PFを形成する。続いて、画素PE1のフォトダイオードPD1、PD2の直上において、パッシベーション膜PF上にカラーフィルタCF1を形成する。続いて、画素PE2のフォトダイオードPD3、PD4の直上において、パッシベーション膜PF上にカラーフィルタCF2を形成する。カラーフィルタCF1、CF2は、例えば有機膜からなるパターンである。
【0212】
続いて、画素PE1のカラーフィルタCF1の直上、および、画素PE2のカラーフィルタCF2の直上のそれぞれにマイクロレンズMLを形成する。その後、第1半導体ウェハおよび第2半導体ウェハからなる積層ウェハをダイシングにより切削することで個片化し、これにより、
図31に示す固体撮像素子を得る。以上の工程により、本実施の形態の固体撮像素子が略完成する。
【0213】
なお、前記実施の形態1の変形例2で説明した光電変換膜PC(
図14参照)を本変形例に適用してもよい。
【0214】
<変形例1>
以下に、本実施の形態の変形例1である固体撮像素子の構造について、
図35を用いて説明する。
図35は、本変形例の固体撮像素子を示す断面図である。ここでは、カラーフィルタを上層の配線層とマイクロレンズの間ではなく、上層のフォトダイオードと、上層の配線層との間に形成することについて説明する。
【0215】
図35に示すように、本変形例の固体撮像素子は、パッシベーション膜PF上にカラーフィルタを有しておらず、半導体基板SB1と層間絶縁膜IL1との間にカラーフィルタCF3、CF4が形成されている点を除き、
図31に示す固体撮像素子と同様の構造を有している。すなわち、フォトダイオードPD1の直上には、フォトダイオードPD1の上面を覆うカラーフィルタCF3が、層間絶縁膜IL1の下に形成されている。また、フォトダイオードPD3の直上には、フォトダイオードPD3の上面を覆うカラーフィルタCF4が、層間絶縁膜IL1の下に形成されている。カラーフィルタCF3は、例えば赤色および緑色の波長領域の光を透過し、青色の光を遮蔽する膜である。カラーフィルタCF4は、例えば青色および緑色の光を透過し、赤色の光を遮蔽する膜である。
【0216】
カラーフィルタCF3、CF4のそれぞれは、例えば、半導体基板SB1上およびゲート電極GT上に、順に酸化シリコン膜、窒化シリコン膜、酸化シリコン膜および窒化シリコン膜を積層した膜からなる。つまり、カラーフィルタCF3、CF4のそれぞれは、酸化シリコン膜および窒化シリコン膜の積層膜からなる。カラーフィルタCF3、CF4のそれぞれは、酸化シリコン膜と窒化シリコン膜との割合を変更することで、透過する光の波長領域を調整することができる膜である。
【0217】
このような固体撮像素子の製造工程では、
図36に示すように、
図6を用いて説明した工程と同様に、フォトダイオードPD1、PD3、トランジスタQ1(
図6参照)および転送トランジスタTXを半導体基板SB1の上面近傍に形成する。
図36は、本実施の形態の固体撮像素子の製造工程中の断面図である。なお、
図36では周辺回路領域CRの図示を省略している。
【0218】
その後、フォトダイオードPD1を覆うカラーフィルタCF3と、フォトダイオードPD3を覆うカラーフィルタCF4とを形成し、続いて半導体基板SB1上に配線層を形成する。つまり、例えば、画素PE1においてフォトダイオードPD1およびゲート電極GTのそれぞれの上に交互に積層された酸化シリコン膜および窒化シリコン膜からなる積層膜を形成した後、当該積層膜を加工することで、当該積層膜からなるカラーフィルタCF3を形成する。続いて、画素PE2においてフォトダイオードPD3およびゲート電極GTのそれぞれの上に交互に積層された酸化シリコン膜および窒化シリコン膜からなる積層膜を形成した後、当該積層膜を加工することで、当該積層膜からなるカラーフィルタCF4を形成する。その後、半導体基板SB1の第1主面、カラーフィルタCF3およびCF4のそれぞれの上に、層間絶縁膜IL1を含む配線層を形成する。これにより、
図36に示す構造を得る。
【0219】
次に、
図7〜
図12を用いて説明した工程と同様の工程を行うことで、
図35に示す本変形例の固体撮像素子が略完成する。
【0220】
図31を用いて説明した固体撮像素子と同様に、本変形例では、フォトダイオードPD2では赤色の光を検出し、フォトダイオードPD1では比較的長波長の緑の光を検出し、フォトダイオードPD4では比較的短波長の緑の光を検出し、フォトダイオードPD3では青色の光を検出する。本変形例では、
図31〜
図34を用いて説明した固体撮像素子およびその製造方法と同様の効果を得ることができる。
【0221】
また、カラーフィルタCF3、CF4は、
図31に示すカラーフィルタCF1、CF2に比べて熱に対する耐性が高い。したがって、本変形例の固体撮像素子では、高温の状況で使用した場合にカラーフィルタCF3、CF4が劣化することを防ぐことができる。
【0222】
<変形例2>
以下に、本実施の形態の変形例2である固体撮像素子の構造について、
図37を用いて説明する。
図37は、本変形例の固体撮像素子を示す断面図である。ここでは、
図31を用いて説明したカラーフィルタを設け、さらに、下層のフォトダイオードの下に反射膜を形成することについて説明する。
【0223】
図37に示すように、下層の半導体基板SB2と、半導体基板SB2の下の層間絶縁膜IL2との間に、例えばW(タングステン)膜などからなる反射膜RF4が形成されている。画素PE1、PE2のそれぞれの反射膜RF4は、フォトダイオードPD2、PD4のそれぞれの下面、つまり半導体基板SB2の第2主面を覆い、半導体基板SB2の下のゲート電極GTの下面の一部を覆っている。反射膜RF4は、層間絶縁膜IL2並びに層間絶縁膜IL2内の配線M1およびM2のそれぞれよりも上に形成されている。
【0224】
反射膜RF4は、フォトダイオードPD2およびゲート電極GTなどに対して電気的に接続されていない浮遊状態の導電膜である。反射膜RF4は、フォトダイオードPD1が光電変換する波長領域の光およびフォトダイオードPD2が光電変換する波長領域の光を反射する膜である。
【0225】
このような固体撮像素子の製造工程では、
図38に示すように、
図6を用いて説明した工程と同様に、フォトダイオードPD2、PD4、トランジスタQ2(
図6参照)および転送トランジスタTXを半導体基板SB2の上面近傍に形成する。
図38は、本実施の形態の固体撮像素子の製造工程中の断面図である。なお、
図38では周辺回路領域CRの図示を省略している。
【0226】
その後、フォトダイオードPD2、PD4のそれぞれを覆う反射膜RF4を、例えばスパッタリング法により形成し、続いて半導体基板SB2上に配線層を形成する。つまり、例えば、フォトダイオードPD2、PD4およびゲート電極GTを覆うタングステン膜を形成した後、当該タングステン膜を加工することで、画素PE1、PE2のそれぞれに反射膜RF4を形成する。その後、半導体基板SB2の第2主面上および反射膜RF4上に、層間絶縁膜IL2を含む配線層を形成する。これにより、
図38に示す構造を得る。
【0227】
次に、
図7〜
図11および
図34を用いて説明した工程と同様の工程を行うことで、
図37に示す本変形例の固体撮像素子が略完成する。
【0228】
図31を用いて説明した固体撮像素子と同様に、本変形例では、フォトダイオードPD2では赤色の光を検出し、フォトダイオードPD1では比較的長波長の緑の光を検出し、フォトダイオードPD4では比較的短波長の緑の光を検出し、フォトダイオードPD3では青色の光を検出する。
【0229】
本変形例では、
図31〜
図34を用いて説明した固体撮像素子およびその製造方法と同様の効果を得ることができる。さらに、本変形例では、反射膜RF4を形成することで、固体撮像素子の上方からマイクロレンズMLを介して照射された光のうち、フォトダイオードPD1〜PD4を透過した光を反射膜RF4により反射し、この反射光を各フォトダイオードで収集することで、固体撮像素子の感度性能を向上させることができる。
【0230】
なお、
図37に示すカラーフィルタCF1、CF2を設けず、
図35に示す変形例1の固体撮像素子に本変形例の反射膜RF4を形成してもよい。
【0231】
<変形例3>
以下に、本実施の形態の変形例3である固体撮像素子の構造について、
図39を用いて説明する。
図39は、本変形例の固体撮像素子を示す断面図である。ここでは、第2半導体ウェハの配線を反射膜として用いることについて説明する。
【0232】
図39に示すように、本変形例の固体撮像素子の構造は、層間絶縁膜IL2内の配線のレイアウトを除き、
図31に示す固体撮像素子の構造と同じである。ここでは、フォトダイオードPD2の直下の配線M1を、平面視においてフォトダイオードPD2の全体と重なるように広げて形成している。つまり、フォトダイオードPD2の下面の全体が、平面視において配線M1と重なっている。なお、層間絶縁膜IL2内の配線M1ではなく配線M2をフォトダイオードPD2と重なるように形成してもよい。配線M1、M2は、フォトダイオードPD1が光電変換する波長領域の光およびフォトダイオードPD2が光電変換する波長領域の光を反射する膜である。
【0233】
本変形例では、フォトダイオードPD2の下の配線M1またはM2を反射膜として使用することで、固体撮像素子の感度性能を向上させることができる。
【0234】
<変形例4>
以下に、本実施の形態の変形例4である固体撮像素子の構造について、
図40を用いて説明する。
図40は、本変形例の固体撮像素子を示す断面図である。ここでは、前記実施の形態1の変形例2と、本実施の形態の変形例2とを組み合わせた構造について説明する。
【0235】
図40に示すように、本変形例の固体撮像素子は、フォトダイオードPD1、PD3のそれぞれの上部を覆うカラーフィルタCF3、CF4を備えている。カラーフィルタCF3、CF4の構成は、
図35を用いて説明した構成と同じである。また、本実施の形態の固体撮像素子は、前記実施の形態1の変形例2で説明した下部電極LE、光電変換膜PCおよび上部電極UEを備えている。
【0236】
ここで、
図35を用いて説明した固体撮像素子と同様に、フォトダイオードPD2では赤色の光を検出し、フォトダイオードPD1では長波長領域の緑色の光を検出し、フォトダイオードPD4では短波長領域の緑色の光を検出し、フォトダイオードPD3では青色の光を検出する。これに加えて、本変形例では、光電変換部(受光素子)である光電変換膜PCを各画素PE1、PE2に設けている。各画素PE1、PE2の下部電極LE、光電変換膜PCおよび上部電極UEは、互いに一体となっており、電気的に接続されている。ここでは、光電変換膜PCは、赤、青および緑以外の波長領域の光を光電変換により検出する。例えば、光電変換膜PCでは、赤色の光よりも波長が長い赤外線などの光を検出する。
【0237】
本変形例では、光電変換部を多数形成することで、光電変換する対象となる光の波長領域をさらに広げることができる。また、検出光の波長領域を細分化することもできる。
【0238】
以上、本発明者らによってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。
【0239】
その他、実施の形態に記載された内容の一部を以下に記載する。
【0240】
(付記1)平面視で複数並べられた画素を備えた固体撮像素子であって、
互いに積層された第1半導体基板および第2半導体基板と、
前記第1半導体基板と前記第2半導体基板との間に介在し、かつ、前記第1半導体基板の下面および前記第2半導体基板の上面に接する第1絶縁膜と、
複数の前記画素のそれぞれにおいて前記第1半導体基板内に形成された第1受光素子と、
複数の前記画素のそれぞれにおいて前記第2半導体基板内に形成された第2受光素子と、
前記第1半導体基板の上面から前記下面に亘って貫通し、互いに隣り合う前記画素のそれぞれに形成された前記第1受光素子同士を分離する第1素子分離領域と、
前記第2半導体基板の前記上面から下面に亘って貫通し、互いに隣り合う前記画素のそれぞれに形成された前記第2受光素子同士を分離する第2素子分離領域と、
を有する、固体撮像素子。
【0241】
(付記2)(付記1)の固体撮像素子において、
前記第1半導体基板の前記上面に形成され、前記第1絶縁膜と離間する第3素子分離領域と、
前記第2半導体基板の前記下面に形成され、前記第1絶縁膜と離間する第4素子分離領域と、
をさらに有する、固体撮像素子。
【0242】
(付記3)(付記1)の固体撮像素子において、
前記第2受光素子は、前記第1受光素子が光電変換する光よりも長い波長の光を光電変換する、固体撮像素子。
【0243】
(付記4)(付記1)の固体撮像素子において、
前記第1絶縁膜は、
前記第2半導体基板上に順に形成された第3絶縁膜、負の電荷を有する第4絶縁膜、第6絶縁膜、負の電荷を有する第7絶縁膜および第2絶縁膜を有し、
前記第6絶縁膜の膜厚は、前記第2絶縁膜および前記第3絶縁膜のいずれの膜厚よりも大きい、固体撮像素子。
【0244】
(付記5)(付記1)の固体撮像素子において、
前記第2受光素子の直下に形成された、前記第1受光素子が光電変換する第1波長領域の光および前記第2受光素子が光電変換する第2波長領域の光を反射する第2反射膜をさらに有する、固体撮像素子。
【0245】
(付記6)平面視で複数並べられた画素を備えた固体撮像素子の製造方法であって、
(a)第1主面および前記第1主面の反対側の第1裏面を有し、前記第1主面に形成された複数の第1受光素子と、複数の前記第1受光素子同士を分離し、前記第1主面に形成された第1素子分離領域とを備えた第1半導体基板を用意する工程、
(b)第2主面および前記第2主面の反対側の第2裏面を有し、前記第2主面に形成された複数の第2受光素子と、複数の前記第2受光素子同士を分離し、前記第2主面に形成された第2素子分離領域とを備えた第2半導体基板を用意する工程、
(c)前記第1半導体基板の前記第1裏面を研磨することで前記第1素子分離領域を露出させる工程、
(d)前記第2半導体基板の前記第2裏面を研磨することで前記第2素子分離領域を露出させる工程、
(e)前記(c)工程の後、前記第1半導体基板の前記第1裏面および前記第1素子分離領域に接して前記第1裏面を覆う第2絶縁膜を形成する工程、
(f)前記(d)工程の後、前記第2半導体基板の前記第2裏面および前記第2素子分離領域に接して前記第2裏面を覆う第3絶縁膜を形成する工程、
(g)前記第1裏面と前記第2裏面とを対向させて前記第1半導体基板および前記第2半導体基板を接合させることで、前記第2絶縁膜および前記第3絶縁膜を含む第1絶縁膜を形成する工程、
を有し、
複数の前記画素のそれぞれは、前記第2受光素子および前記第2受光素子上の前記第1受光素子を有する、固体撮像素子の製造方法。
【0246】
(付記7)(付記6)の固体撮像素子の製造方法において、
前記(a)工程では、第1基板、前記第1基板上の第9絶縁膜および前記第9絶縁膜上の第1半導体層を含む前記第1半導体基板であって、前記第1半導体層の上面である前記第1主面に形成された複数の前記第1受光素子と、前記第1主面から前記第1半導体層の下面に亘って貫通する前記第1素子分離領域とを備えた前記第1半導体基板を用意し、
前記(b)工程では、第2基板、前記第2基板上の第10絶縁膜および前記第10絶縁膜上の第2半導体層を含む前記第2半導体基板であって、前記第2半導体層の上面である前記第2主面に形成された複数の前記第2受光素子と、前記第2主面から前記第2半導体層の下面に亘って貫通する前記第2素子分離領域とを備えた前記第2半導体基板を用意し、
前記(c)工程では、前記第1半導体基板の前記第1裏面を研磨することで、前記第1基板を除去した後、前記第9絶縁膜を除去することで、前記第1素子分離領域を露出させ、
前記(d)工程では、前記第2半導体基板の前記第2裏面を研磨することで、前記第2基板を除去した後、前記第10絶縁膜を除去することで、前記第2素子分離領域を露出させる、固体撮像素子の製造方法。
【0247】
(付記8)(付記6)の固体撮像素子の製造方法において、
(g3)前記(g)工程の前に、露出している前記第2絶縁膜の下面を覆うように、負の電荷を有する第4絶縁膜および第6絶縁膜を順に形成する工程、
(g4)前記(g)工程の前に、露出している前記第3絶縁膜の下面を覆うように、負の電荷を有する第7絶縁膜および第8絶縁膜を順に形成する工程、
をさらに有し、
前記(g)工程では、前記第1半導体基板および前記第2半導体基板を接合させることで、前記第2絶縁膜、前記第3絶縁膜、前記第4絶縁膜、前記第6絶縁膜、前記第7絶縁膜および前記第8絶縁膜を含む前記第1絶縁膜を形成する、固体撮像素子の製造方法。