(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
上記表面塗工剤が、アニオン性表面サイズ剤、ポリエチレンワックス、ポリビニルアルコール及び非イオン界面活性剤の少なくとも1つを有する請求項1に記載の多層白板紙。
【発明を実施するための形態】
【0013】
[第一実施形態]
以下、本発明に係る白板紙の一実施形態について説明する。
【0014】
〔白板紙〕
本実施形態に係る白板紙は、表層、表下層、1層又は複数の中層、及び裏層を備える多層抄き合わせ白板紙であって、上記表層が、原料に晒パルプを含み、表面塗工剤が形成する塗工層を備え、上記表層のフリーネスが、480ml以上520ml以下、及び上記表下層のフリーネスが、380ml以上420ml以下であり、上記表層、表下層、1層又は複数の中層、及び裏層に内添サイズ剤が含有され、上記内添サイズ剤の含有量が、下記式(1)を満たし、上記表層と上記表下層とのT字型剥離強度が、300g/5cm以上340g/5cm以下であることを特徴とする。
[A]>[B]>[D]>[C]・・・・・・(1)
上記式(1)中の[A]、[B]、[C]及び[D]は、それぞれ表層、表下層、中層、及び裏層の内添サイズ剤の含有量(質量%)を示す。なお、中層[C]は、1層あたりの内添サイズ剤の含有量である。
【0015】
当該白板紙は、表層、表下層、1層又は複数の中層、及び裏層を備え、多層抄きにより形成される。このように多層抄きとすることで、各層毎にパルプ種や添加剤の種類や量等を調整することができ当該白板紙の機能性を高めることができると共に、各層毎に課題解決のための特有の構成が付与可能となり、単層に比べ各層毎の特性による相乗効果を得ることができる。当該白板紙は、一方の面を表層、他方の面を裏層として形成され、表層から順に、表下層、中層、及び裏層を備える。以下、表層から順に説明する。
【0016】
<表層>
表層には、晒パルプを主体的に配合する。晒パルプとしては、従来印刷用紙用途で多用される、白色度が65以上の広葉樹晒クラフトパルプ及び針葉樹晒クラフトパルプが好適に用いられ、中でもバージンの晒クラフトパルプが紙粉や毛羽立ちを招き難いことから好適に用いられる。
【0017】
(原料パルプ)
他の原料パルプとしては、広葉樹晒クラフトパルプと針葉樹晒クラフトパルプからなるバージンパルプの特性を阻害しない範囲で用いられ、例えば、木材繊維、靭皮繊維、靭皮繊維等からなる天然パルプ、針葉樹晒硫酸塩パルプ(N−BKP)、針葉樹晒亜硫酸塩パルプ(N−BSP)、広葉樹晒亜硫酸塩パルプ(L−BSP)等を用いることができる。この他に、機械パルプ(GP)、ケミサーモメカニカルパルプ(CTMP)、脱墨パルプ(DIP)も配合することができる。
【0018】
広葉樹晒クラフトパルプは、印刷適性向上のために用いられるが、パルプ強度が低く紙剥け対策に適さない。一方、針葉樹晒クラフトパルプは、印刷適正を向上させることは困難だが、パルプ強度が高く紙剥け対策に適している。よって、広葉樹晒クラフトパルプと針葉樹晒クラフトパルプとを所定の配合比率で併用利用することで、印刷適性向上と紙剥け抑制とを両立することができる。
【0019】
広葉樹晒クラフトパルプと針葉樹晒クラフトパルプとの配合比における広葉樹晒クラフトパルプの配合比率が、28質量%以上32質量%以下であるとよい。広葉樹晒クラフトパルプの配合比率が上記下限未満の場合、好適な印刷適正を得ることができないおそれがある。また、針葉樹晒クラフトパルプの配合比率が高くなることで、表層が硬くなり製函の加工時に所謂罫線割れが生じやすくなるおそれがある。一方、広葉樹晒クラフトパルプの配合比率が上記上限を超えた場合、紙剥けが発生しやすくなるおそれがある。また、針葉樹晒クラフトパルプの配合比率が低くなるため、表層の強度が低下するおそれがある。
【0020】
(表面塗工剤)
表層の表出面には、当該表出面の毛羽立ちを抑制するため、表面塗工剤が塗工される。この表面塗工剤は、(1)原紙の表層の繊維に塗工剤が含浸される形態、(2)原紙の表層上に塗工剤による樹脂層が形成される形態、(3)原紙の表層の繊維の表面が塗工剤により被覆される形態、又は(4)これらが組み合わさった形態等が含まれると推測される。
【0021】
塗工手段は、特に限定されないが、例えば、エアーナイフコーター、ブレードコーター、ロッドコーター、カーテンコーター等を用いることができ、又はゲートロールコーター、サイザー等のロールコーターを適宜組み合わせて用いることができる。
【0022】
上記表面塗工剤が、アニオン性表面サイズ剤、ポリエチレンワックス、ポリビニルアルコール、及び非イオン界面活性剤の少なくとも1つを有するとよい。これらを単独、又は組み合わせて用いることにより、毛羽立ちを効果的に抑制することができる。
【0023】
アニオン性表面サイズ剤(オレフィン−マレイン酸共重合体塩)は、単独で使用可能であり、他の表面塗工剤と併用することもできる。また、安価であり、起泡性も少ないため取り扱いが容易である。アニオン性表面サイズ剤としては、酸化澱粉が特に好適であるが、これに限定されることなく、他の澱粉類、例えば、繊維素誘導体、アルギン酸塩など公知のものも使用することができる。また、澱粉類としても、酵素変性澱粉、アセチル化澱粉、ジアルデヒド澱粉等を挙げることができる。さらに、繊維素誘導体としては、カルボキシメチルセルロース等、アルギン酸塩としては、アルギン酸ソーダ等を挙げることができる。水溶液タイプやエマルジョンタイプ等の各種サイズ剤が使用できるが、スチレン−マレイン酸系共重合体塩、スチレン−(メタ)アクリル酸系共重合体塩、オレフィン−無水マレイン酸系共重合体塩及びその部分エステル又は部分アミド等の誘導体塩、酢酸ビニル−マレイン酸系共重合体塩等の水溶液が好適である。塗工量としては、好適な含浸層が形成される量であれば特に限定されないが、例えば、0.48g/m
2以上0.52g/m
2以下とすることができる。
【0024】
ポリエチレンワックスは、単独で使用することはできず、他の表面塗工剤と併用される。安価であるが、過剰に用いるとインク吸収性を損なう傾向にあるので、含有量は少量でよく、例えば、0.06g/m
2以下とすることができる。
【0025】
ポリビニルアルコールは、パルプ繊維相互の接着強度を高めることができ、表出面への塗工適性も良好で、安価である。また、ケン化度が98.0〜99.0mol%、PVAの重合度は450〜2000である完全ケン化PVSを用いることで、皮膜強度、吸湿性、及び架橋効果を向上させることができる。含有量は、例えば、0.34g/m
2以上0.38g/m
2以下とすることができる。
【0026】
非イオン界面活性剤としては、1級、2級又は3級アルコールエトキシラート、アルキルフェノール、エトキシレートジアルキルフェノール、アルキレンオキシドを有するブロックコポリマー、アルキルフェノキシポリエトキシルアルカノール及びポリオキシエチル化アセチレングリコールから選ばれる1以上の組成物を含むものを採用することができる。中でも、HLBがかかる範囲であることを条件として、アルコールエトキシレートが、好ましい。また、非イオン界面活性剤の親水性/脂肪親和性平衡(HLB)の下限としては、8以上であり、10以上が好ましい。一方、HLBの上限としては18以下であり、16以下が好ましい。HLBが上記下限を超えないと、表面塗工剤分散性やパルプ繊維とのなじみが低下するおそれがある。一方、HLBが上記上限を超えると、パルプ繊維と表面塗工剤との親和性が低下するおそれがある。非イオン界面活性剤の含有量としては、パルプ繊維と表面塗工剤とのなじみを確保するため、0.001g/m
2程度が好ましい。
【0027】
(フリーネス)
表層に用いる原料パルプのフリーネスの下限としては、480mlであり、490mlが好ましい。一方、表層の原料パルプのフリーネスの上限としては、520mlであり、510mlが好ましい。当該フリーネスが上記下限を超えない場合、板紙としての地合が緻密になりすぎて吸水性が低下するため、高精細なオフセット印刷において乾燥等の印刷適性を損なうおそれがある。一方、当該フリーネスが上記上限を超える場合、板紙としての地合が悪くなり、印刷適性向上が困難になると共に、紙力が低下し紙剥けが生じ易くなるおそれがある。また、後述する表下層との組合せで、表層の表出面に塗工される表面塗工剤を適度に含浸させ、均一な塗工層を形成するため、フリーネスを上記範囲とする。なお、「フリーネス」とは、JIS−P8121:2012に準拠してカナダ標準濾水度試験機にて測定した濾水度の値である。
【0028】
(内添サイズ剤)
表層は、内添サイズ剤を含有する。内添サイズ剤を含有することで、パルプ繊維の疎水性が高まり、柔軟性をより高めることができる。表層の内添サイズ剤の含有量は、他の層の内添サイズ剤の含有量より小さく、例えば32質量%超36質量%以下とすることができる。
【0029】
内添サイズ剤としては、特に限定されず、例えば、ロジンサイズ剤、強化ロジンサイズ剤、ロジンエマルジョンサイズ剤等のロジン系サイズ剤を用いることができる。中でも、エマルジョンの微粒子の形で繊維間に入り込むロジンエマルジョンサイズ剤が好ましい。エマルジョンサイズ剤は、使用pH領域によって、酸性用、弱酸性用又は中性用使い分けることができる。
【0030】
<表下層>
表下層は、印刷を施す表層の平坦性確保すると共に、中層や裏層に用いる比較的褐色の古紙パルプの色目を隠蔽し見栄えの白さとを確保すること、また、表層と中層及び裏層との層間強度を確保して紙剥けを抑制することを担う。
【0031】
(原料パルプ)
表下層の原料パルプとしては、公益財団法人古紙再生促進センター監修の古紙ハンドブックにて分類されている所謂上物古紙を出発原料に用い、この上物古紙を、脱墨処理を経ないで、高精選処理をした白物古紙パルプを高配合する。上記上物古紙としては上白、コート裁落、上ケント等が挙げられる。脱墨処理された古紙パルプは、微量ながら所謂界面活性剤と言われる脱墨剤が残存し、界面活性剤はパルプ繊維間の離間を招くと共に、サイズ性能が低下する。よって、脱墨処理を経ない、高精選処理された白物古紙パルプを用いる。
【0032】
高精選処理とは、上物古紙を高濃度パルパーにて離解・分散処理する工程、スクリーンにて粗侠雑物を系外に除去する工程、原料濃度30%以上の高濃度に脱水、蒸気加温にてパルプ繊維を柔軟化させた後、ニーダーにて所謂すり潰し分差処理する工程、高濃度ですり潰された原料を原料濃度3%程度の低濃度で高速で回転しているワイヤーへ原料を噴出、脱水し、侠雑物やインクを分離する工程、レファイナーにて分散、叩解処理する工程を備える処理である。上物古紙を高精選処理することで、漂白処理されたバージンパルプと遜色のない原料パルプとすることができる。
【0033】
(フリーネス)
当該表下層に用いる原料パルプのフリーネスは、表層との抄き合わせによる絡み合いを担保するため、表層原料パルプのフリーネスより120ml程度低くすることが好ましく、表下層に用いる原料パルプのフリーネスの下限としては、380mlであり、390mlが好ましい。一方、表下層に用いる原料パルプのフリーネスの上限としては、420mlであり、410mlが好ましい。当該フリーネスが上記下限未満の場合、紙層密度が高くなり抄き合わせ時の紙層同士の絡み合いが少なく、紙剥けの抑制が困難になると共に、表層に印刷を施した際にインクの吸収乾燥を疎外し、インクの裏移りや乾燥不良を招くおそれがある。一方、当該フリーネスが上記上限を超える場合、表層の地合いを低下させ、印刷適正を向上させることができず、表層の強度低下を招き紙剥けの抑制が困難になるおそれがある。
【0034】
(内添サイズ剤)
表下層の内添サイズ剤の含有量は、表層より少なく、中層及び裏層より多い。含有量としては、例えば28質量%以上32質量%以下とすることができる。このように、表下層の内添サイズ剤の含有量を表層の内添サイズ剤の含有量より少なくすることで、表層に含有させた内添サイズ剤が表下層の内添サイズ剤に移行する挙動を示し、表層と表下層とのパルプ繊維間の一体化が進むため、印刷適性と紙剥け抑制の効果を向上させることができる。
【0035】
〔剥離強度〕
表層及び表下層を、上述のような構成とすることにより、表層と表下層とが抄きあわせによる積層に加え、薬剤においても一体化が進み、単一紙層と同様な紙層形成となるため、表層と表下層との剥離強度を向上することができる。表層と表下層とのT字型剥離強度の下限としては、300g/5cmであり、305g/5cmが好ましく、310g/5cmがより好ましい。一方、表層と表下層とのT字型剥離強度の下限としては、340g/5cmであり、335g/5cmが好ましく、330g/5cmがより好ましい。当該T字型剥離強度が上記下限未満の場合、紙剥けを十分に抑制できないおそれがある。一方、当該T字型剥離強度が上記上限を超えた場合、紙剥けの問題は生じないものの紙層の柔軟性が低下するおそれがある。なお、T字型剥離強度とは、JIS−K―6854−3(1999)に記載のT字型剥離強度の試験方法に準じて測定した値をいう。
【0036】
<中層及び裏層>
中層及び裏層は、美粧性を求められる表出面と異なり、製函時の破裂や圧縮強度を確保することと、製造コスト低減を目的に安価な新聞古紙、印刷古紙、包装用紙古紙、オフィス古紙等の古紙を原料とすることができる。
【0037】
(原料パルプ)
中層及び裏層の原料パルプとしては、段ボール古紙を主体とし、新聞古紙、印刷古紙、包装用紙古紙、オフィス古紙等の古紙パルプが挙げられる。これらの古紙パルプは単独、または2種類以上混合して使用してもよい。
【0038】
(フリーネス)
当該中層に用いる原料パルプのフリーネスは、特に限定されないが、表下層との抄き合わせによる絡み合いを担保するため、表下層原料パルプのフリーネスより40ml程度低くすることが好ましく、中層に用いる原料パルプのフリーネスとしては、360ml以上400ml以下とすることができる。また、当該裏層に用いる原料パルプのフリーネスは、特に限定されないが、中層との抄き合わせによる絡み合いを担保するため、中層原料パルプのフリーネスと同程度とすることが好ましく、裏層に用いる原料パルプのフリーネスのとしては、360ml以上400ml以下とすることができる。中層及び裏層に用いる原料パルプのフリーネスを上記範囲とすることで、表下層、中層及び裏層の抄き合わせにおける繊維の絡み合いが向上し、紙剥けを抑制することができ、また、圧縮強度を確保、裏層での製函時の破裂抑制をすることができる。
【0039】
(内添サイズ剤)
中層の内添サイズ剤の含有量は、他の層の含有量と比して最も少なく、裏層の内添サイズ剤の含有量は、表下層より少なく、中層より多い。中層の内添サイズ剤の含有量としては、14質量%以上18質量%以下、裏層の内添サイズ剤の含有量としては、18質量%超23質量%以下とすることができる。このように、中層の内添サイズ剤の含有量を他の層と比して最も少なく、裏層の内添サイズ剤の含有量を表下層より少なく、中層より多いとすることで、含有量の多い紙層から含有量の少ない紙層へと薬剤が移動する挙動が生じ、各紙層毎の抄き合わせながら、紙層を形成するパルプ繊維の抄き合わせによる一体化と相俟って薬剤の一体化も進むことになるため、紙剥け抑制の効果を向上させることができる。
【0040】
<内添薬品>
上述したように、当該白板紙は、表層、表下層、中層、及び裏層に、所定量の内添サイズ剤を含有する。その他、紙力増強剤、層間接着剤を含有することができる。
【0041】
(内添サイズ剤)
各層の内添サイズ剤の含有量としては、印刷適性と紙剥け抑制の効果を向上させるため、表層に最も多く添加し、次いで表下層から裏層、中層にかけて少なくする。
【0042】
白板紙全体のパルプ繊維に対する内添サイズ剤の含有量の下限としては、0.2質量%であり、0.3質量%が好ましい。一方、上記含有量の上限としては、1.0質量%であり、0.8質量%が好ましい。上記含有量の下限を超えない場合、所望する繊維密度とならないおそれがある。一方、上記含有量の上限を超えた場合、抄紙工程の泡立ち又は定着しきれないサイズ剤が循環するなど、工程汚れを生じやすく、生産効率が低下するおそれがある。ここで、内添サイズ剤の含有量は、基紙全体における各層毎の紙層に対するロジン系サイズ剤の含有量を指す。
【0043】
(紙力増強剤)
紙力増強剤としては、特に限定されないが、例えば、アクリルアミド−アクリロニトリル−アクリル酸三元共重合体、アクリルアミド−イタコン酸共重合体を用いることができる。これらの紙力増強剤は、クロライト含有タルクの分散性をさらに向上する効果があり、中でも、アルリルアミド−アクリロニトリル−アクリル酸三元共重合体が好ましい。紙力増強剤の含有量としては、特に限定されないが、例えば、表層に5kg/t以上9kg/t以下とすることができる。
【0044】
(層間接着剤)
層間強度を向上せる方法として、層間接着剤を塗布することができる。層間接着剤としては、特に限定されないが、例えば、安価な澱粉とすることができる。澱粉は、未糊化の澱粉であるのが好ましく、未糊化のコーンスターチがより好ましい。コーンスターチは澱粉粒径が多角形であり、紙層を形成する際にパルプ繊維への絡み合いを多くすることができる。また、平均粒子径が12.0〜16.0μmであるため、パルプ繊維間に歩留りがし易い。層間接着剤をコメ澱粉とした場合、コメ澱粉の平均粒子径は6.0μm未満であるため、ウエットエンドにおいて脱水とともに紙層を形成する繊維間にコメ澱粉粒子が流入し、湿紙同士を重ね合わせる層間の接着力を大きく向上させることが困難である。また、平均粒子径が20.0μmを超えるコムギ澱粉や甘藷、馬鈴薯澱粉は、ウエットエンドにおいて紙層に留まるものの、粒子径が大きいことが原因と推察される層間強度のバラツキや紙層間への澱粉粒子の流入が少ないため、層間の接着力を大きく向上させることが困難である。
【0045】
層間接着剤を塗布する手段としては、特に限定されないが、例えば、スプレー塗布とすることができる。スプレー塗布は、貼合性や経済性では良好な反面、霧滴の飛散により抄紙機が汚れやすい問題を有するため、抄紙段階のワイヤーパートで、所定条件で噴霧することができる。スプレー塗布する方法としては、例えば、ワイヤーパート(抄紙段階)において、下側の湿紙上に澱粉の水溶液を設け、1流体又は気−液2流体スプレーを用いて噴霧することができる。上記スプレーのノズル径としては、未糊化の澱粉で孔を閉塞しないものであれば特に限定されず、例えば、直径0.5mm以上2.5mm以下とすることができ、直径0.8mm以上1.5mm以下とするのが好ましい。上記スプレーは、湿紙幅方向に一列又は複数列と設けることができ、湿紙の表面に均一に噴霧される。スプレーの噴霧圧力は、供給する空気圧にて微細な飛沫が得られれば特に限定されず、例えば、0.3kg/cm
2以上35kg/cm
2以下とすることができる。吐出量としては、湿紙の表面に均一に塗布される量であれば特に限定されず、例えば、0.4リットル/分以上4.0リットル/分以下とすることができる。
【0046】
(硫酸バンド)
層間強度を向上させるために硫酸バンドをさらに添加することが好ましい。硫酸バンドの含有量としては、例えば表層への添加量として、原料パルプ1tに対して固形分換算で25kg以上30kg以下、表下層で21kg以上25kg以下、中層で10kg以上13kg以下、裏層で13kg以上17kg以下とすることができる。
【0047】
<坪量>
坪量は、表下層が最も大きく、裏層が最も小さい。中層は、表下層未満であり、表層は中層以下であり、裏層より大きい。坪量としては、表層で27g/m
2以上35g/m
2以下、表下層で32g/m
2以上42g/m
2以下、中層で35g/m
2以上40g/m
2以下、及び裏層で21g/m
2以上38g/m
2以下とすることができる。このようにすることで、多層抄き合わせの多層紙形成において、本件発明の課題となる印刷面のケバ立ちに対して改善の基盤となる表下層の坪量を多くすることで安定した表層及び中層との抄き合わせが可能になり、本件発明が目的とする表層、表下層、1層又は複数の中層と裏層の一体化を向上させることができる。なお、坪量とは、JIS−P−8124(1998)に記載の坪量の試験方法に準じて測定した値をいう。
【0048】
<剥離強度>
各層の剥離強度としては、インターナルボンドによる層間剥離強度で下限が170mJであり、180mJが好ましい。一方、層間剥離強度の上限は210mJであり、200mJが好ましい。層間剥離強度が上記下限未満の場合、紙剥けを十分抑制できないおそれがある。一方、層間剥離強度が上記上限を超えた場合、多層紙が一体化による罫割れや加工適性が低下するおそれがある。層間剥離試験値の下限値としては、0.9であり、1.0が好ましい。層間剥離試験値の下限値としては、1.3であり、1.2が好ましい。層間剥離試験値が上記下限未満の場合、層間での接合強度が弱い故に印刷時や加工時に層間での剥離が生じるおそれがある。一方、層間剥離試験値が上記上限を超えた場合、紙層自体が剛直化し加工適性が低下するおそれがある。
【0049】
<ベック平滑度>
当該白板紙では、その表出面を平滑にして、摩擦を小さくすべきことから、JIS−P8119(1998)に規定されるベック平滑度(秒)を測定して工程管理や品質管理をすることが好ましい。ベック平滑度は、測定値が大きいほど平滑度が高く、当該白板紙のベック平滑度の下限としては、30秒が好ましく、35秒がより好ましい。ベック平滑度が上記下限未満の場合、当該白板紙の摩擦を小さくすることができず、製造時、印刷時の紙送りで、表出面の傷が生じるおそれがある。
【0050】
<コッブサイズ度>
当該白板紙のコッブサイズ度(60秒)は、表層で、50g/m
2以上90g/m
2以下、裏層で、160g/m
2以上225g/m
2以下であるのが好ましい。このようなサイズ性を有することで、水分の高い環境でも白板紙の強度の低下を抑制することができる。なお、コッブサイズ度(60秒)は、JIS−P−8140(1998年)に準拠して測定した値をいう。
【0051】
<白色度>
当該白板紙の白色度としては、68%以上72%以下が好ましい。白色度が上記下限未満の場合、印刷された文字等が識別しにくくなるおそれがある。一方、白色度が上記上限を超えると、必要な顔料が増大して表面強度が低下したり、顔料の脱落によって紙紛が増加したりするおそれがある。なお、白色度は、JIS−P8148(2001)「紙、板紙及びパルプ−ISO白色度(拡散青色光反射率)の測定方法」に準拠して測定した値をいう。
【0052】
<色調>
当該白板紙の色調としては、JIS−Z−8730(2009)の色差表示方法で、a値が0.00以上1.00以下、b値が−0.05以上1.00以下であることが好ましい。当該a値及びb値を上記範囲とすることで、当該白板紙の見栄え向上と、屋外での暴露に対し見た目の褪色を抑えることができる。
【0053】
<比圧縮強度>
当該白板紙の比圧縮強度としては、110N・m
2/g以上150N・m
2/g以下であることが好ましい。当該比圧縮強度を上記範囲とすることで、当該白板紙を紙器やボール紙に用いても、容器や箱としての強度を確保することができる。なお、比圧縮強度は、JIS−P−8156(2008)「紙及び板紙−圧縮強さ試験方法(ショートスパン法)」に準拠して測定した値をいう。
【0054】
<比破裂強度>
当該白板紙の比破裂強度としては、1.80kPa・m
2/g以上2.40kPa・m
2/g以下であることが好ましい。当該比破裂強度を上記範囲とすることで、当該白板紙を流通で用いる搬送用の容器として利用することができる。なお、比破裂強度は、JIS−P−8112(2008)「紙−破裂強さ試験方法」に準拠して測定した値をいう。
【実施例】
【0055】
以下、実施例によって、さらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。なお、特に限定しない限り各薬剤の含有量は固形分の質量基準の数値である。
【0056】
[実施例1〜25、比較例1〜6]
表層を、表1の条件で得た。表下層、中層、及び裏層を、表2の条件で得た。中層は
1層とした。
【0057】
<表面塗工剤>
表面塗工剤は、表面サイズ剤として、オレフィン−マレイン酸共重合体塩(荒川化学工業株式会社製、ポリマロン1329)、PVAとして、完全ケン化ポリビニルアルコール(日本酢ビ・ポバール株式会社製、JF−17)、剥離剤として、ポリエチレンワックス(東邦化学工業株式会社製、ハイテックE9015)、界面活性剤として、ウレタン化合物(アークロマジャパン株式会社製、ジョルシンLX)を混合したものを、バーコーターを用いて塗布した。
【0058】
<内添薬品>
内添サイズ剤は、変成ロジン(ハリマ化成グループ株式会社製、ハーサイズNES−680)を、マシンタンクで添加した。また、紙力増強剤、カチオン系ポリアクリルアマイド(ハリマ化成グループ株式会社製、ハーマイドTA−238)を、マシンタンクで添加した。
【0059】
上記表層、表下層、中層、及び裏層を抄紙機により抄紙して、表3の白板紙を得た。得られた白板紙は、以下の評価方法にて評価を行った
【0060】
[評価]
下記(1)〜(9)を評価項目とした。
(1)上記表層と上記表下層とのT字型剥離強度が、300g/5cm以上
(2)インターナルボンドによる層間剥離強度が170mJ以上210mJ以下
(3)層間剥離試験値が0.9以上1.3以下
(4)比圧縮強度が、110〜150N・m2/g
(5)非破裂強度が、1.80〜2.40kPa・m2/g
(6)コッブサイス度が、表層で50〜90g/m2、裏層で160〜220g/m2
(7)表層の平滑度が、30秒以上
(8)表層の白色度が、68〜72%
(9)表層の色調が、a値で0.00〜1.00、b値で−0.05〜1.00
【0061】
(評価基準)
◎:すべての評価項目を満足できたもの。
○:すべての評価項目を満足しているが、強度面が上下限のもの。
×:少なくとも1つの評価項目を満足できなかったもの。
【0062】
評価結果は、表3に示す。
【0063】
【表1】
【0064】
【表2】
【0065】
【表3】
【0066】
好適な評価が得られなかった比較例1〜12について検討してみると、
比較例1は、表層の原料パルプのフリーネスが下限未満であるため、評価品質が比破裂強度を除き劣るものとなったと考えられる。
比較例2は、表層の原料パルプのフリーネスが上限を超えているため、比破裂強度は劣るものの、他の評価品質は比較的良好なものであった。
比較例3は、表下層に用いる原料パルプのフリーネスが下限以下であり、抄き合わせ時の濾水性低下の原因と考えられる平滑度や白色度、色調が低下し、見栄えが悪くなった。
比較例4は、表下層の原料パルプのフリーネスが上限以上であり、見栄えは良好なものの、比破裂強度を除き評価品質が劣るものとなった。
比較例5は、表下層中のサイズ剤の含有量が裏層より少ないが故に、中層、裏層からの薬剤の異動が多くなり、相対的に見栄えから評価品質まで劣る結果となった。
比較例6は、表層中のサイズ剤の含有量が表下層より少なく、中層中のサイズ剤の含有を控えたため、見栄え、評価品質とも劣るものとなった。
比較例7は、中層のサイズ剤の含有を控えたため、表層、表下層との相乗効果が得られず、見栄え、評価品質共々劣る結果となった。
比較例8は、表下層中へのサイズ剤の含有を控えたため、表層、裏層のサイズ度や平滑度に代表される見栄え関連の項目は良好なものの、破裂、剥離関連の評価項目が劣る結果となった。
比較例9は、表下層と中層のサイズ剤の含有量を均等にしたものであるが、表層から表下層、中層から裏層への薬剤移動の二極化が生じ、見栄えから評価品質まで劣る結果となった。
比較例10は、裏層のサイズ剤の含有量が少なく、中層との薬剤の含有量差が大きいため、裏面側のコッブサイズ度が高くなり、紙質面では破裂強度が劣る結果となった。
比較例11は、裏層側のサイズ剤含有量を多くした例であるが、裏面側に薬剤が傾聴した結果表層側の品質が劣る結果になった。
比較例12は、裏層のサイズ剤の含有を控えたため、裏面側のコッブサイズ度が高くなり、各紙層中の薬剤が裏面側に異動する傾向が生じ見栄え、評価品質とも劣るものとなった。