特許第6920147号(P6920147)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 富士重工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6920147-車両の走行安定化促進装置 図000002
  • 特許6920147-車両の走行安定化促進装置 図000003
  • 特許6920147-車両の走行安定化促進装置 図000004
  • 特許6920147-車両の走行安定化促進装置 図000005
  • 特許6920147-車両の走行安定化促進装置 図000006
  • 特許6920147-車両の走行安定化促進装置 図000007
  • 特許6920147-車両の走行安定化促進装置 図000008
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6920147
(24)【登録日】2021年7月28日
(45)【発行日】2021年8月18日
(54)【発明の名称】車両の走行安定化促進装置
(51)【国際特許分類】
   B60R 19/52 20060101AFI20210805BHJP
【FI】
   B60R19/52 M
【請求項の数】8
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2017-175386(P2017-175386)
(22)【出願日】2017年9月13日
(65)【公開番号】特開2019-51743(P2019-51743A)
(43)【公開日】2019年4月4日
【審査請求日】2020年8月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】110000383
【氏名又は名称】特許業務法人 エビス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小島 直記
(72)【発明者】
【氏名】跡部 圭一
(72)【発明者】
【氏名】野嵜 隆司
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 勝海
【審査官】 塚本 英隆
(56)【参考文献】
【文献】 特開平06−247347(JP,A)
【文献】 特開2014−137331(JP,A)
【文献】 特開2008−006855(JP,A)
【文献】 特開昭61−207273(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 19/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両についての走行中の風が吹きつけられる箇所において車幅方向に沿って左右に並べて設けられ、風圧により回転軸の周囲で回転可能な右検出ルーバおよび左検出ルーバと、
前記右検出ルーバの回転量と前記左検出ルーバの回転量とを検出する検出部と、
左右の風圧の違いに起因した回転量の差に基づいて、前記車両の走行安定性が向上するように前記車両を制御する制御部と、
を有する、
車両の走行安定化促進装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記右検出ルーバと前記左検出ルーバとの共通の回転量に基づいて、前記車両の走行安定性が向上するように前記車両を制御する、
請求項1記載の車両の走行安定化促進装置。
【請求項3】
前記右検出ルーバおよび前記左検出ルーバは、
前記車両の前面のフロントグリルにおいて、前記車両の車幅方向に沿って並べて延在するように設けられ、
前記回転軸が前記車両の車幅方向に沿うように設けられる、
請求項1または2記載の車両の走行安定化促進装置。
【請求項4】
前記車両の前面のフロントグリルにおいて車両の車幅方向に沿って延在する回転軸の周囲で角度を調整して開口率を制御可能な右開口調整ルーバおよび左開口調整ルーバ、を有し、
前記制御部は、
前記回転量の差が検出された場合、前記車両の前室へ吹き込む風量を調整する際に、前記右開口調整ルーバおよび前記左開口調整ルーバによる開口率に差を持たせる、
請求項1から3のいずれか一項記載の車両の走行安定化促進装置。
【請求項5】
前記車両の左右への操舵、前記車両の左右それぞれの制動、前記車両の左右それぞれの駆動を制御する制御装置、を有し、
前記制御部は、前記回転量の差が検出された場合、前記車両の走行安定性が向上するように、前記制御装置による左右への操舵または左右それぞれの制動もしくは駆動を制御する、
請求項1から3のいずれか一項記載の車両の走行安定化促進装置。
【請求項6】
前記車両の前面のフロントグリルにおいて車両の車幅方向に沿って延在する回転軸の周囲で角度を調整して開口率を制御可能な右開口調整ルーバおよび左開口調整ルーバと、
前記車両の左右への操舵、前記車両の左右それぞれの制動、前記車両の左右それぞれの駆動を制御する制御装置と、
を有し、
前記制御部は、前記回転量の差が検出された場合、
前記車両のエンジンまたは補器を温める必要があときには、前記右開口調整ルーバおよび前記左開口調整ルーバを閉じたまま、前記制御装置による左右への操舵または左右それぞれの制動もしくは駆動を制御し、
前記エンジンまたは補器を温める必要がないときには、前記車両の前室へ吹き込む風量を調整する際に、前記右開口調整ルーバおよび前記左開口調整ルーバによる開口率に差を持たせる、
請求項1または2記載の車両の走行安定化促進装置。
【請求項7】
前記制御部は、
前記車両の進行方向に対して斜め方向からの横風を受けている場合、前記右開口調整ルーバおよび前記左開口調整ルーバの中で、抵抗が大きい側を小さい側より開くように開口率を制御する、
請求項4または6記載の車両の走行安定化促進装置。
【請求項8】
前記制御部は、
コーナリング中には、前記右開口調整ルーバおよび前記左開口調整ルーバの中で、コーナリングの内側を閉じて外側を開けるように開口率を制御する、
請求項4または6記載の車両の走行安定化促進装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の走行安定化促進装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1では、車両の左右両側面に圧力センサを設け、この圧力センサの検出に基づいて、車両の前面に設けたシャッタを開閉制御する。
これにより、たとえば横風がある場合にシャッタを閉じることができる。これにより、風の影響を受け難くできる可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012−001112号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1では、基本的にシャッタを開状態と閉状態との間で切り替えるだけである。
これに対し、車両に吹き付ける風は、様々な圧力、様々な向きで、車両に吹き付けられる。しかたがって、特許文献1の技術では、車両に吹き付ける様々な風に対して適応的に車両の安定化を促進できるとは限らない。
特に、特許文献1では車両の左右両側面に設けた圧力センサにより風圧を検出している。この場合、基本的に圧力センサが設けられる左右両側面に対して垂直に作用する圧力しか検出できない。それ以外の方向から車両へ吹き付ける風については、圧力を正確に検出できない。また、風向きについても、右側または左側を判断できるだけに過ぎない。
【0005】
このように車両では、できるかぎり多様な風に対して車両の走行安定性を向上できるようにすることが求められている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る車両の走行安定化促進装置は、車両についての走行中の風が吹きつけられる箇所において車幅方向に沿って左右に並べて設けられ、風圧により回転軸の周囲で回転可能な右検出ルーバおよび左検出ルーバと、前記右検出ルーバの回転量と前記左検出ルーバの回転量とを検出する検出部と、左右の風圧の違いに起因した回転量の差に基づいて、前記車両の走行安定性が向上するように前記車両を制御する制御部と、を有する。
【0007】
好適には、前記制御部は、前記右検出ルーバと前記左検出ルーバとの共通の回転量に基づいて、前記車両の走行安定性が向上するように前記車両を制御する、とよい。
【0008】
好適には、前記右検出ルーバおよび前記左検出ルーバは、前記車両の前面のフロントグリルにおいて、前記車両の車幅方向に沿って並べて延在するように設けられ、前記回転軸が前記車両の車幅方向に沿うように設けられる、とよい。
【0009】
好適には、前記車両の前面のフロントグリルにおいて車両の車幅方向に沿って延在する回転軸の周囲で角度を調整して開口率を制御可能な右開口調整ルーバおよび左開口調整ルーバ、を有し、前記制御部は、前記回転量の差が検出された場合、前記車両の前室へ吹き込む風量を調整する際に、前記右開口調整ルーバおよび前記左開口調整ルーバによる開口率に差を持たせる、とよい。
【0010】
好適には、前記車両の左右への操舵、前記車両の左右それぞれの制動、前記車両の左右それぞれの駆動を制御する制御装置、を有し、前記制御部は、前記回転量の差が検出された場合、前記車両の走行安定性が向上するように、前記制御装置による左右への操舵または左右それぞれの制動もしくは駆動を制御する、とよい。
【0011】
好適には、前記車両の前面のフロントグリルにおいて車両の車幅方向に沿って延在する回転軸の周囲で角度を調整して開口率を制御可能な右開口調整ルーバおよび左開口調整ルーバと、前記車両の左右への操舵、前記車両の左右それぞれの制動、前記車両の左右それぞれの駆動を制御する制御装置と、を有し、前記制御部は、前記回転量の差が検出された場合、前記車両のエンジンまたは補器を温める必要があときには、前記右開口調整ルーバおよび前記左開口調整ルーバを閉じたまま、前記制御装置による左右への操舵または左右それぞれの制動もしくは駆動を制御し、前記エンジンまたは補器を温める必要がないときには、前記車両の前室へ吹き込む風量を調整する際に、前記右開口調整ルーバおよび前記左開口調整ルーバによる開口率に差を持たせる、とよい。
【0012】
好適には、前記制御部は、前記車両の進行方向に対して斜め方向からの横風を受けている場合、前記右開口調整ルーバおよび前記左開口調整ルーバの中で、抵抗が大きい側を小さい側より開くように開口率を制御する、とよい。
【0013】
好適には、前記制御部は、コーナリング中には、前記右開口調整ルーバおよび前記左開口調整ルーバの中で、コーナリングの内側を閉じて外側を開けるように開口率を制御する、とよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明の風検出装置では、検出ルーバを用いて、その周囲を通過する風により回転した検出ルーバの回転量に基づいて風圧を検出する。よって、車両に吹き付けられる風の向きが、車両の表面に対して垂直な方向ではなくても、その風の圧力を好適に検出することができる。様々な方向から吹き付ける風の圧力を好適に検出することができる。しかも、検出ルーバは、その周囲を風が通過することにより回転するので、検出ルーバが設けられる箇所において車両の表面に沿って流れる風が生じたとしても、検出ルーバの周囲へ向けて吹き込む風により、車両に吹き付けられる風の圧力を検出することができる。車両が走行することによりその表面に沿って生じ得る気流の影響を受け難くできる。
その結果、本発明の風検出装置では、車両の走行中に、その車両に吹きつける風の圧力を好適に検出することができる。車両の挙動に影響を与える風の圧力を好適に検出することができる。
また、その風検出装置を用いた走行安定化促進装置では、検出ルーバの回転量に基づいて風検出装置の検出部により検出された回転量差に基づいて、車両の走行安定性が向上するように開口調整ルーバの開口率を調整することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は、本発明の第1実施形態に係る自動車の走行状態の一例の説明図である。
図2図2は、図1の自動車の走行安定化促進装置の構成の説明図である。
図3図3は、図2の制御部による走行安定化促進処理の一例を示すフローチャートである。
図4図4は、図1に対応した開口調整ルーバの制御状態の一例の説明図である。
図5図5は、第2実施形態に係る走行安定化促進装置の構成の説明図である。
図6図6は、第3実施形態に係る走行安定化促進装置の構成の説明図である。
図7図7は、図6の制御部による走行安定化促進処理の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態を、図面に基づいて説明する。
【0017】
[第1実施形態]
図1は、本発明の第1実施形態に係る自動車1の走行状態の一例の説明図である。
図1(A)では、自動車1は、直進している。この状態で右斜め前方向から横風が自動車1の車体に吹き付けている。この場合、車体の前面に当たる横風の一部は、車体の前面に設けられたフロントグリル11を通じて、車体の前室内に入る。これにより、車体の前室に配置されたエンジン3、駆動モータ、バッテリなどの補器を空気で冷却することができる。
図1(B)では、自動車1は、右側へ操舵され、右方向へコーナリングしている。この状態で右斜め前方向から横風が自動車1の車体に吹き付けている。この場合、車体の前面に当たる横風の一部は、車体の前面に設けられたフロントグリル11を通じて、車体の前室内に入る。これにより、車体の前室に配置されたエンジン3、駆動モータ、バッテリなどの補器を空気で冷却することができる。
【0018】
ところで、図1のように走行する自動車1に横風が吹き付けると、自動車1の走行の安定性が低下する可能性がある。図1(A)の直進する自動車1が左右へふらついたり、図1(B)のコーナリング中の進路が本来の進路から外側へずれたりする可能性がある。
そこで、たとえば自動車1の左右両側面に圧力センサを設け、この圧力センサの検出に基づいて、自動車1の前面に設けたシャッタを開閉制御する。シャッタを閉じることにより横風の影響を受け難くできる可能性がある。
しかしながら、自動車1に吹き付ける風は、様々な圧力、様々な向きで、自動車1に吹き付けられる。したがって、シャッタを開状態と閉状態との間で切り替えるだけである場合、自動車1に吹き付ける様々な風に対して適応的に自動車1の安定化を促進できるとは限らない。
特に、自動車1の左右両側面に設けた圧力センサにより風圧を検出している場合には、基本的に圧力センサが設けられる左右両側面に対して垂直に作用する圧力しか検出できない。それ以外の方向から自動車1へ吹き付ける風については、圧力を正確に検出できない。また、風向きについても、右側または左側を判断できるだけに過ぎない。
このように自動車1では、できるかぎり多様な風に対して自動車1の走行安定性を向上できるようにすることが求められている。
【0019】
図2は、図1の自動車1の走行安定化促進装置10の構成の説明図である。
図2の走行安定化促進装置10は、自動車1の前面に設けられたフロントグリル11、検出部12、制御部13、駆動装置14、を有する。
【0020】
自動車1の前面に設けられたフロントグリル11は、自動車1の車幅方向に沿って延在する複数のルーバを有する。フロントグリル11には、走行中の風が吹きつけられる。
一番上には、右検出ルーバ15および左検出ルーバ16が、自動車1の車幅方向に並べて、風圧に応じて個別に回転可能に設けられる。右検出ルーバ15および左検出ルーバ16は、自動車1の水平方向に沿ってほぼ左右に並べて設けられる。
その下側には、右開口調整ルーバ17および左開口調整ルーバ18が、自動車1の車幅方向に並べて三段で、個別に回動可能に設けられる。
【0021】
駆動装置14は、三段の右開口調整ルーバ17および左開口調整ルーバ18を個別に回転駆動する。また、所定の角度に調整した右開口調整ルーバ17および左開口調整ルーバ18を、その調整角度に維持するように保持する。
駆動装置14は、たとえば電動モータ、リンク機構、ロック機構で構成することができる。
これにより、フロントグリル11は、全開と前閉との間で任意の開口率に調整することができる。
なお、駆動装置14は、右検出ルーバ15および左検出ルーバ16についても、個別に回転駆動してよい。この場合、右検出ルーバ15および左検出ルーバ16は、駆動調整された角度を基準として、その状態から風圧により回転可能であればよい。
【0022】
また、右開口調整ルーバ17および左開口調整ルーバ18は、長手方向(車幅方向)に沿う回転軸が、ルーバの上下幅の中央に設定されている。
これに対し、右検出ルーバ15および左検出ルーバ16は、長手方向に沿う回転軸が、ルーバの上下幅の中央より下側に設定されている。
したがって、たとえば右検出ルーバ15についての回転軸の上側に突出して風圧を受ける第一部19は、回転軸の下側に突出して風圧を受ける第二部20より、大きい面積を有する。
左検出ルーバ16についての第一部19と第二部20ともに同様の関係にある。
これにより、右検出ルーバ15および左検出ルーバ16は、自動車1の前面に向けた風の圧力を受けると、フロントグリル11の一番上において、回転軸の上側の第一部19が後ろへ下がり、回転軸の下側の第二部20が前へ出るように回転することになる。右検出ルーバ15および左検出ルーバ16の直上には、自動車1のフロントフード4が配置されている。このため、自動車1の前にいる人は、右検出ルーバ15および左検出ルーバ16が後ろに下がったようになったとしてもその状態を目視で確認しにくい。
【0023】
検出部12は、風圧に応じて個別に回転可能な右検出ルーバ15の回転量および左検出ルーバ16の回転量を検出する。右検出ルーバ15および左検出ルーバ16は、その周囲を通過する風の圧力に応じた角度まで回転し得る。
検出部12は、たとえば回転したルーバの位置を光学的に検出しても、ルーバの回転軸に設けられたエンコーダにより検出してもよい。また、ルーバの回転量に応じてひずむように設けられたひずみゲージで構成されてもよい。
検出部12は、このほかにも、右検出ルーバ15の回転量と左検出ルーバ16の回転量との差を検出してよい。
【0024】
制御部13は、検出部12の検出結果に基づいて、自動車1に作用する風圧に対する走行安定性が向上するように、自動車1を制御する。
ここでは具体的には、制御部13は、右検出ルーバ15と左検出ルーバ16との回転量の差に基づいて、駆動装置14を用いて、右開口調整ルーバ17の開口率と左開口調整ルーバ18の開口率とを個別に制御する。
【0025】
図3は、図2の制御部13による走行安定化促進処理の一例を示すフローチャートである。
制御部13は、自動車1の走行中に図3の処理を、繰り返し実行する。
【0026】
図3の処理において、制御部13は、まず、検出部12から、右検出ルーバ15の回転量と左検出ルーバ16の回転量とを取得する(ステップST1)。
そして、制御部13は、右検出ルーバ15の回転量と左検出ルーバ16の回転量とから、検出ルーバ15,16に吹き付ける風の風圧を演算する(ステップST2)。たとえば、右検出ルーバ15の回転量と左検出ルーバ16の回転量との平均的な回転量を演算し、その平均的な回転量から、自動車1の検出ルーバ15,16に吹き付ける風の風圧を演算する。風圧が高くなると、検出ルーバ15,16の回転量は大きくなる。
また、制御部13は、右検出ルーバ15の回転量と左検出ルーバ16の回転量との差を演算し、その回転量の差から、自動車1の検出ルーバ15,16に吹き付ける風の風向きを推定する(ステップST3)。一般的に、自動車1の前方に対する風向きの角度が大きくなるほど、回転量の差が大きくなると考えられる。
なお、回転量と風圧との関係や、回転量の差と風向きとの関係は、予めテーブルデータとしてメモリに保持し、制御部13は、そこから検出値に基づいて選択するようにしてもよい。
【0027】
次に、制御部13は、風の圧力および向きに応じた自動車1の安定化制御を実施する(ステップST4)。
安定化制御において、制御部13は、まず、風の状態に応じた左右ぞれぞれの開口率を演算する。
たとえば制御部13は、風圧に応じて前室へ吹き込む風量を調整するように、左右平均の開口率を演算する(ステップST5)。
また、制御部13は、風向きに応じて、全体の開口率を確保するように左右それぞれの開口率を演算する。たとえば風向きに応じた係数を用いて、風上側の開口率を下げて風下側の開口率を上げる(ステップST6)。
次に、制御部13は、演算した左右それぞれの開口率が得られるように、駆動装置14により右開口調整ルーバ17および左開口調整ルーバ18の角度を制御する(ステップST7)。また、駆動装置14は、調整された角度において右開口調整ルーバ17および左開口調整ルーバ18を保持する。
これにより、自動車1の前面のフロントグリル11において、左右別々の開口率を得ることができる。
【0028】
図4は、図1に対応した開口調整ルーバ17,18の制御状態の一例の説明図である。
【0029】
図4(A)は、図1(A)のように直進中の自動車1に対して右側から斜めに横風が吹き付けている場合での、右開口調整ルーバ17および左開口調整ルーバ18の開口調整状態の一例を示している。
この場合、右検出ルーバ15は、左検出ルーバ16より大きく回転している。
そして、右開口調整ルーバ17および左開口調整ルーバ18は閉じることを基本として制御され、エンジン3の冷却等のための最小限の流入量が得られるように、全体の開口率が演算される。
また、その全体の開口率は、基本的にそのすべてを風上側の右開口調整ルーバ17で確保し、それでも不足する場合に風下上側の左開口調整ルーバ18を開くように制御する。
これにより、直進中の自動車1を左右へふらつかせる可能性がある横風がエンジン3室に流入することを抑制し、そのふらつきを抑えることができる。
【0030】
図4(B)は、図1(B)のように右へコーナリング中の自動車1に対して右側から斜めに横風が吹き付けている場合での、右開口調整ルーバ17および左開口調整ルーバ18の開口調整状態の一例を示している。
この場合、右検出ルーバ15は、左検出ルーバ16より大きく回転している。
そして、横風が吹き付けられるコーナの内側の右開口調整ルーバ17は、全閉状態に閉じられる。
また、コーナの外側の左開口調整ルーバ18は、全開状態に開かれる。
これにより、コーナの内側から斜めに吹き付ける横風がある場合、風圧により自動車1の内側を外側と比べて相対的に抑えることができる。
その結果、右へコーナリング中の自動車1は、相対的に左側が前へ進みやすくなり、コーナの内側へ向くように回転しやすくなる。コーナの外側へのふくらみを抑制し、トレーサビリティを向上できる。
【0031】
以上のように、本実施形態では、自動車1についての走行中の風が吹きつけられる箇所には、右検出ルーバ15および左検出ルーバ16とが左右に並べて設けられる。そして、風圧により回転軸の周囲で回転可能な右検出ルーバ15および左検出ルーバ16についての、左右の風圧の違いに起因した回転量の差に基づいて、自動車1に作用する風向きに対して自動車1の走行安定性が向上するように自動車1を制御する。よって、自動車1に吹き付ける風の風向きを左右の回転量の差として検出し、その風向きに応じて自動車1を制御して、自動車1の走行安定性を向上させることができる。自動車1に吹き付ける風についての圧力だけでなく、風向きに応じて、自動車1の走行安定性を向上させることが可能になる。
【0032】
本実施形態では、自動車1についての走行中の風が吹きつけられる箇所に右検出ルーバ15および左検出ルーバ16とを左右に並べて設けている。これにより、その検出値に基づいて、自動車1に作用する風の圧力および向きに応じた自動車1の走行安定性の向上制御を実施し得る。
【0033】
本実施形態では、右検出ルーバ15および左検出ルーバ16は、自動車1の前面のフロントグリル11において、自動車1の車幅方向に沿って並べて延在するように設けられ、回転軸が自動車1の車幅方向に沿うように設けられる。よって、自動車1の意匠性を大きく変更しないように、自動車1の前面に右検出ルーバ15および左検出ルーバ16を左右方向に並べて設けることができる。
【0034】
本実施形態では、回転量の差に基づいて、右開口調整ルーバ17と左開口調整ルーバ18との開口率に差を持たせる。よって、自動車1に作用する風向きに応じて開口率を調整して、風圧の影響を減らし、自動車1の走行安定性を向上させることができる。
【0035】
本実施形態では、横風が作用している場合、自動車1は横風の下流側へ押し流されるように進行しやすくなるが、抵抗が大きい側、すなわち風が吹き付ける側を小さい側より開くように開口率を制御することにより、車体が風圧で振れたり回転したりしてしまうことを抑制できる。
【0036】
本実施形態では、コーナリング中には、右開口調整ルーバ17および左開口調整ルーバ18の中で、コーナリングの内側を閉じて外側を開けるように開口率を制御する。よって、コーナリングで回る方向の側から向かい風が吹いている場合、自動車1の内側に作用する風圧を外側に対して相対的に増やし、自動車1がより内向きに回転するように回り込みやすくできる。コーナのトレーサビリティを向上させ、ステアリング操舵時の安定性を向上させることができる。
【0037】
[第2実施形態]
次に、本発明の第2実施形態に係る走行安定化促進装置10について説明する。
本実施形態では、第1実施形態と同様の構成については同一の符号をして説明を省略する。以下においては、主に、第1実施形態との相違点について説明する。
【0038】
図5は、第2実施形態に係る走行安定化促進装置10の構成の説明図である。
図5において、操舵装置31は、自動車1のハンドル操作を自動制御により実施する。
制御部13は、風の圧力および向きに応じた自動車1の安定化制御において、操舵装置31により操舵を微調整する。
【0039】
制御部13は、右検出ルーバ15の回転軸と左検出ルーバ16の回転量との間に差が検出された場合、自動車1に作用する風向きに対して自動車1の走行安定性が向上するように、操舵装置31による左右への操舵を制御する。
たとえば図1(B)のように右へコーナリング中に右側から横風が吹き付ける場合、右へ微小に操舵を切りましする。
これにより、右へコーナリング中の自動車1は、さらにコーナの内側へ向くように進行する。コーナの外側へのふくらみを抑制し、トレーサビリティを向上できる。
また、制御部13は、フロントグリル11による左右の開口率の制御とともに、操舵装置31による操舵の微調整を実施するようにしてもよい。
【0040】
以上のように、本実施形態では、左右の検出ルーバの回転量の差に基づいて、操舵を制御する。よって、自動車1に作用する風向きに応じて操舵して、自動車1の走行安定性を向上させることができる。
【0041】
なお、本実施形態では、制御部13は操舵装置31を制御して、自動車1の走行を安定化させている。
この他にもたとえば、制御部13は、自動車1の左右それぞれの制動装置、または自動車1の左右それぞれの駆動を制御する駆動装置14を制御して、自動車1の走行を安定化させてもよい。
【0042】
[第3実施形態]
次に、本発明の第3実施形態に係る走行安定化促進装置10について説明する。
本実施形態では、上述した実施形態と同様の構成については同一の符号をして説明を省略する。以下においては、主に、上述した実施形態との相違点について説明する。
【0043】
図6は、第3実施形態に係る走行安定化促進装置10の構成の説明図である。
図6の走行安定化促進装置10は、自動車1の前面に設けられたフロントグリル11、検出部12、制御部13、駆動装置14、操舵装置31、を有する。
【0044】
図7は、図6の制御部13による走行安定化促進処理の一例を示すフローチャートである。
【0045】
図7の処理において、制御部13は、右検出ルーバ15の回転量と左検出ルーバ16の回転量とから自動車1に吹き付ける風の圧力と風向きを推定した後、自動車1の安定化制御を実施する(ステップST4)。
安定化制御において、制御部13は、まず、エンジン3の暖気が必要であるか否かを判断する(ステップST11)。制御部13は、エンジン3の実際の検出温度、エンジン3の始動後の経過時間により、暖気の要否を判断すればよい。
【0046】
そして、エンジン3の暖気が不要である場合、制御部13は、第1実施形態と同様に、風圧に応じて前室へ吹き込む風量を調整するように左右平均の開口率を演算し(ステップST5)、風向きに応じて、全体の開口率を確保するように左右それぞれの開口率を演算する(ステップST6)。
また、制御部13は、演算した左右それぞれの開口率が得られるように、駆動装置14により右開口調整ルーバ17および左開口調整ルーバ18の角度を制御する(ステップST7)。また、駆動装置14は、調整された角度において右開口調整ルーバ17および左開口調整ルーバ18を保持する。
これにより、自動車1の前面のフロントグリル11において、左右別々の開口率を得ることができる。
【0047】
逆に、エンジン3の暖気が必要である場合、制御部13は、第2実施形態と同様に、風圧および風向きに応じた操舵トルクを演算する(ステップST12)。
そして、制御部13は、駆動装置14により右開口調整ルーバ17および左開口調整ルーバ18を完全に閉じさせ(ステップST13)、操舵装置31を用いて操舵トルクで操舵をアシストする制御を実施する(ステップST14)。
【0048】
以上のように、本実施形態では、暖気が必要である場合には、回転量の差に基づいて、操舵を制御する。このように、右開口調整ルーバ17および左開口調整ルーバ18を閉じたままにして暖気を図りつつ、自動車1の走行安定性を向上させることができる。
【0049】
上記実施形態は、本発明の好適な実施形態の例であるが、本発明はこれに限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変形または変更が可能である。
【符号の説明】
【0050】
1…自動車(車両)、3…エンジン、4…フロントフード、10…走行安定化促進装置、11…フロントグリル、12…検出部、13…制御部、14…駆動装置、15…右検出ルーバ(検出ルーバ)、16…左検出ルーバ(検出ルーバ)、17…右開口調整ルーバ(開口調整ルーバ)、18…左開口調整ルーバ(開口調整ルーバ)、19…第一部、20…第二部、31…操舵装置(制御装置)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7