特許第6920173号(P6920173)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6920173
(24)【登録日】2021年7月28日
(45)【発行日】2021年8月18日
(54)【発明の名称】ベルトコンベア支持装置
(51)【国際特許分類】
   E21D 9/12 20060101AFI20210805BHJP
【FI】
   E21D9/12 B
【請求項の数】5
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2017-212868(P2017-212868)
(22)【出願日】2017年11月2日
(65)【公開番号】特開2019-85727(P2019-85727A)
(43)【公開日】2019年6月6日
【審査請求日】2020年7月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】594036135
【氏名又は名称】株式会社東宏
(74)【代理人】
【識別番号】100082418
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 朔生
(74)【代理人】
【識別番号】100167601
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 信之
(74)【代理人】
【識別番号】100201329
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 真二郎
(72)【発明者】
【氏名】小林 雅彦
【審査官】 柿原 巧弥
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−065000(JP,A)
【文献】 実開平04−037123(JP,U)
【文献】 特開昭60−013199(JP,A)
【文献】 特開2001−225930(JP,A)
【文献】 特開2016−169554(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2015/0232280(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E21D 9/12
B65G 21/12
B61D 47/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
造物が路盤の側壁付近から上方に露出し、前記構造物が、坑内中央に面する第一面と、前記第一面と隣接し前記側壁に面する第二面と、を備えているトンネル坑内において、ベルトコンベアを昇降自在に支持する、ベルトコンベア支持装置であって、
上部の支持台でベルトコンベアを支持する支持部と、
路盤上に配置し前記支持部と上部で接続する基部と、
前記基部と接続し、当接材と、前記当接材の前記基部に対する高さを調整する調整機構と、を有する傾斜当接部と、を備え、
前記支持部又は前記基部の少なくとも一方は、前記支持台を路盤に対して昇降する昇降機構を有し、
前記当接材は、底面と、係止部と、を有し、
前記底面を前記構造物の第一面に当接可能、かつ前記係止部を前記構造物の第二面に係止可能に構成したことを特徴とする、
ベルトコンベア支持装置。
【請求項2】
前記昇降機構を、前記基部における前記支持部との接続部に配置したことを特徴とする、請求項1に記載のベルトコンベア支持装置。
【請求項3】
前記昇降機構及び前記調整機構の少なくとも一方が、ジャッキベースであることを特徴とする、請求項1又は2に記載のベルトコンベア支持装置。
【請求項4】
前記基部の下部に複数の車輪を備えることを特徴とする、請求項1乃至のいずれか一項に記載のベルトコンベア支持装置。
【請求項5】
前記複数の車輪が、前記支持台に対し、前記傾斜当接部の反対側に偏って配置することを特徴とする、請求項に記載のベルトコンベア支持装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トンネル工事に用いるベルトコンベア支持装置に係り、特にトンネル側壁沿いのインバート露出部上でも安定してベルトコンベアを支持可能な、ベルトコンベア支持装置に係る。
【背景技術】
【0002】
トンネル工事において、切羽で発生したズリを坑外へ搬送するためのベルトコンベアが配置される。ベルトコンベアは、坑壁の天井付近から吊り下げて配置する(図5)。
しかし、防水シート工の施工区間では、坑壁へ防水シートを展張するために坑壁からベルトコンベア支持装置にコンベアを一時的に受け替える必要がある。
特許文献1には、チェーンブロック等の昇降機構を用いた上下スライド式のベルトコンベア支持装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017−125321号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来技術には次のような欠点がある。
<1>トンネルインバートの施工区間では、トンネル側壁沿いの路盤からインバートの端部が上方に露出する。この場合、支持装置を側壁に近づけると支持脚がインバートに干渉するため、側壁沿いに設置することができない。
<2>インバートとの干渉を避けるため、支持装置を側壁から離して配置すると工事車両の通行や施工の邪魔になる。
<3>装置を側壁に近づけるため、支持装置の支持脚を上部構造から坑内側にずらして接続すると、重心が側壁側に偏心するため、不安定になり転倒のおそれがある。
【0005】
本発明の目的は、これら従来技術の課題を解決可能なベルトコンベア支持装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記のような課題を解決するための本発明のベルトコンベア支持装置は、ベルトコンベアを支持する支持部と、路盤上に配置する基部と、当接材と調整機構を有する傾斜当接部と、を備え、支持部と基部の少なくとも一方が昇降機構を有し、当接材が構造物の第一面に当接可能であることを特徴とする。
この構成によれば、側壁沿いのインバート露出部上でも安定してベルトコンベアを支持することができる。
【0007】
本発明のベルトコンベア支持装置は、当接材が構造物の第一面に当接する底面と第二面に係止する係止部を備えていてもよい。
この構成によれば、基部が側壁から中央へ滑動することを防止することができる。
【0008】
本発明のベルトコンベア支持装置は、昇降機構を基部と支持部の接続部に配置してもよい。
この構成によれば、作業員が操作しやすい高さで支持台の昇降操作を行うことができる。
【0009】
本発明のベルトコンベア支持装置は、昇降機構と調整機構の少なくとも一方がジャッキベースであってもよい。
この構成によれば、支持台の昇降操作が容易である。
【0010】
本発明のベルトコンベア支持装置は、基部の下部に複数の車輪を備えていてもよい。
この構成によれば、坑内における移設が容易である。
【0011】
本発明のベルトコンベア支持装置は、複数の車輪が傾斜当接部の反対側に偏って配置していてもよい。
この構成によれば、より側壁に近接した位置に配置することができる。
【発明の効果】
【0012】
以上の構成より、本発明のベルトコンベア支持装置は次の効果の少なくともひとつを備える。
<1>インバート部であってもベルトコンベア支持装置を側壁に近づけて設置することができる。このため、仮設設備の省スペース化を図ることができる。
<2>仮設設備の省スペース化によって坑内の断面を広く利用できるため、工事車両の通行や施工が容易になり、工事全体の施工効率が上がる。
<3>インバート上でもベルトコンベアを安定して支持できるため、転倒のおそれがなく安全性が高い。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明のベルトコンベア支持装置の説明図。
図2】本発明のベルトコンベア支持装置の説明図。
図3】基部及び傾斜当接部の説明図。
図4】実施例2の説明図。
図5】従来技術の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照しながら本発明のベルトコンベア支持装置について詳細に説明する。
【実施例1】
【0015】
[ベルトコンベア支持装置]
<1>全体の構成(図1)。
本発明のベルトコンベア支持装置1は、トンネル坑内においてズリ出し用のベルトコンベアAを昇降自在に支持する装置である。
ベルトコンベア支持装置1は、ベルトコンベアAの下部を支える支持部10と、路盤上に配置し支持部10と上部で接続する基部20と、基部20と接続する傾斜当接部30と、を有する。
ベルトコンベア支持装置1は、傾斜当接部30を備えることにより、構造物Bが露出した坑内側壁近傍でもベルトコンベアAを安定して支持可能である点に特徴を有する。
【0016】
<1.1>路盤の状態(図2)。
本発明のベルトコンベア支持装置1は、トンネルインバート等の構造物Bが設置された路盤において使用する。
トンネルインバートは、坑内の底部から逆アーチに形成され、両端部が側壁近傍から路盤の上方に露出する。
トンネルインバートの露出部分は、坑内中央に面する第一面b1と、第一面b1に隣接し坑内側壁に面する第二面b2を備えている。
【0017】
<2>支持部。
支持部10は、ベルトコンベア支持装置1の上部構造である。
支持部10は、フレーム11と、フレーム11の上部に設置する支持台12と、を少なくとも備える。
本例では、フレーム11として、建枠を組んでなる仮設足場を採用する。仮設足場は軽量で搬送し易く、かつ組立が容易というメリットがある。
支持台12は、ベルトコンベアAを下部から支持する部材である。
支持台12の幅は、ベルトコンベアAの支持フレームの幅に対応させる。
【0018】
<3>基部(図3)。
基部20は、ベルトコンベア支持装置1の下部構造である。
基部20は、台座21と、台座21の上部に設置した複数の昇降機構22と、台座21の下部に配置した複数の車輪23と、を備える。
本例では、台座21として鋼製の枠状体を採用する。
【0019】
<3.1>昇降機構。
昇降機構22は、支持台12を路盤に対して昇降させてベルトコンベアAの受け替え及び高さ調整をするための装置である。
本例では昇降機構22として、台座21の上部から突起するネジ棒に螺着して、ネジ棒に沿って上下移動可能なハンドル付きのジャッキベースを採用する。
各ネジ棒にフレーム11の脚パイプを外挿してジャッキベースで高さを調整する。ジャッキベースの構造については公知なのでここでは詳述しない。
昇降機構22を台座21の上部に設置することによって、作業員の手の届く高さで容易に支持台12を昇降させることができるので作業性が非常に高い。
なお、昇降機構22は台座21の上部に限らず、フレーム11の上部、下部、または中間部等に設けてもよい。
【0020】
<3.2>車輪。
車輪23は、ベルトコンベア支持装置1の移動手段である。
本例では、車輪23として台座21の下部に配設した4つのキャスターを採用する。なお、車輪23の数は4つに限られない。
キャスターにはロックして移動を規制可能なブレーキ機構を備える。
本例では、4つの車輪23を、支持台12に対して傾斜当接部30の反対側に偏った位置に配置する。
これによって、ベルトコンベア支持装置1をより側壁に近接した位置に配置することができる。
【0021】
<4>傾斜当接部(図3)。
傾斜当接部30は、構造物Bの傾斜面に当接してベルトコンベア支持装置1の安定を図るための構造である。
傾斜当接部30は、基部20の台座21に接続する支柱31と、支柱31の下部に付設する当接材32と、当接材32の台座21に対する高さを調整する調整機構33と、を備える。
本例では、2つの傾斜当接部30を台座21の一側の対応する2カ所に設ける。
本例では、支柱31として、周面にネジを切り、下部に当接材32と接続するプレートを付設した部材を採用する。
台座21の一側に上下方向に挿通孔を穿設し、挿通孔内に支柱31を上下移動可能に挿通する。
【0022】
<4.1>当接材。
当接材32は、構造物Bの第一面b1に当接する部材である。
本例では、当接材32として支柱31の下部に付設したコマ材を採用する。
当接材32の下面は、構造物Bの第一面b1に対面する方向、すなわち路盤側から側壁側に傾斜する。
【0023】
<4.2>調整機構。
調整機構33は、当接材32の台座21に対する高さを調整するための機構である。
本例では、支柱31に切ったネジに螺着して、支柱31に沿って上下移動可能なハンドル付きのジャッキベースを採用する。ジャッキベースの構造については公知なのでここでは詳述しない。
【0024】
<5>使用方法。
引き続き、ベルトコンベア支持装置1によるベルトコンベアAの受替え作業について説明する。
昇降機構22を回転して支持台12を低い位置に下げるとともに、調整機構33を回転して当接材32を上方に上げておく。
ベルトコンベア支持装置1をベルトコンベアAの下方に移動させ、傾斜当接部30をインバート上に配置する。
車輪23をロックして位置決めする。この際、台座21上にウェイトを配置して安定性を高めてもよい。
調整機構33を回転して当接材32を下ろし、下面をインバートの第一面b1に当接させる。なお、ここで「当接」とは厳密な意味での面当接ではなく、第一面b1に沿った向きで接触させることを意味する。
当接材32の下面と第一面b1との間に隙間が生じる場合には、板状のスペーサやタオルなどを介挿して調整してもよい。
昇降機構22を回転して支持台12を持ち上げて、ベルトコンベアAの支持フレームを下方から受け替える。
坑壁のブラケットから吊っていた吊り具をベルトコンベアAから取り外す。
本発明のベルトコンベア支持装置1は、以上のような簡易な作業によってベルトコンベアAを支持台12上に受け替えることができ。
また、構造物Bの露出した路盤上でもベルトコンベアAを安定して支持することができる。
【実施例2】
【0025】
[当接材の他の形態]
当接材32の他の形態の実施例について説明する(図4)。
ベルトコンベアAの稼働時、その振動によって、ベルトコンベア支持装置1の基部20にはトンネル中央方向に滑動する力が働く。
そこで本例では、当接材32に底面32aに加えて、構造物Bの第二面b2に係止して滑動を防止するための係止部32bを備える(図4(a))。
底面32aと係止部32bの内角は、構造物Bの第一面b1と第二面b2の角度に対応させる。ただし、必ずしも厳密に一致させる必要はなく、少なくとも係止部32bが第二面b2に係って、ベルトコンベア支持装置1のトンネル中央方向への滑動を抑止できればよい。
本例の当接材32の形状は一体のコマ材型の他、ヒンジ回転式としてもよい(図4(b))。この場合、当接材32を回転させて構造物Bに合わせから蝶ナットを締めることで、底面32aと係止部32bの向きを第一面b1と第二面b2に合わせることができる。
また、当接材32を構造物Bの連続方向に沿った長尺一体構造としてもよい(図4(c))。
本例では、従来ベルトコンベアAの支持に不利であったインバート露出部の形状を利用して、逆にベルトコンベア支持装置1の安定性を高めることができる。
【符号の説明】
【0026】
1 ベルトコンベア支持装置
10 支持部
11 フレーム
12 支持台
20 基部
21 台座
22 昇降機構
23 車輪
30 傾斜当接部
31 支柱
32 当接材
32a 底面
32b 係止部
33 調整機構
A ベルトコンベア
B 構造物
b1 第一面
b2 第二面
図1
図2
図3
図4
図5