特許第6920199号(P6920199)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6920199-抗微生物剤耐性を回避する抗下痢製剤 図000010
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6920199
(24)【登録日】2021年7月28日
(45)【発行日】2021年8月18日
(54)【発明の名称】抗微生物剤耐性を回避する抗下痢製剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 38/48 20060101AFI20210805BHJP
   A23K 10/30 20160101ALI20210805BHJP
   A23K 20/10 20160101ALI20210805BHJP
   A23K 20/158 20160101ALI20210805BHJP
   A23K 20/163 20160101ALI20210805BHJP
   A23K 50/30 20160101ALI20210805BHJP
   A23K 50/60 20160101ALI20210805BHJP
   A61K 9/10 20060101ALI20210805BHJP
   A61K 9/14 20060101ALI20210805BHJP
   A61K 47/18 20060101ALI20210805BHJP
   A61K 47/24 20060101ALI20210805BHJP
   A61P 1/12 20060101ALI20210805BHJP
【FI】
   A61K38/48
   A23K10/30
   A23K20/10
   A23K20/158
   A23K20/163
   A23K50/30
   A23K50/60
   A61K9/10
   A61K9/14
   A61K47/18
   A61K47/24
   A61P1/12 171
【請求項の数】10
【全頁数】25
(21)【出願番号】特願2017-530955(P2017-530955)
(86)(22)【出願日】2015年8月24日
(65)【公表番号】特表2017-532369(P2017-532369A)
(43)【公表日】2017年11月2日
(86)【国際出願番号】US2015046509
(87)【国際公開番号】WO2016032944
(87)【国際公開日】20160303
【審査請求日】2018年8月17日
【審判番号】不服2020-10748(P2020-10748/J1)
【審判請求日】2020年8月3日
(31)【優先権主張番号】62/041,175
(32)【優先日】2014年8月25日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】517068232
【氏名又は名称】アナタラ・ライフサイエンスズ・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100120112
【弁理士】
【氏名又は名称】中西 基晴
(74)【代理人】
【識別番号】100106080
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 晶子
(72)【発明者】
【氏名】マイノット,トレーシー・エル
(72)【発明者】
【氏名】ウォルシュ,ジョン
【合議体】
【審判長】 原田 隆興
【審判官】 冨永 みどり
【審判官】 大久保 元浩
(56)【参考文献】
【文献】 中国特許出願公開第1548154(CN,A)
【文献】 特表平02−500838(JP,A)
【文献】 特表2011−505385(JP,A)
【文献】 特表2007−535575(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K
BIOSIS/MEDLINE/EMBASE/CAplus(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブロメラインと、カルボキシメチルセルロースと、レシチンと、EDTAとを含む、離乳していないまたは離乳した子豚における下痢を予防または治療するための経口製剤であって、前記製剤が、50−75wt%のブロメラインを含む自由流動性粉末か、または適切な液体中のこの粉末の懸濁液である、経口製剤。
【請求項2】
腸溶性ポリマーを含まない、請求項1に記載の経口製剤。
【請求項3】
クエン酸をさらに含む、請求項1に記載の経口製剤。
【請求項4】
単回の治療有効量で、子豚に投与される、子豚の下痢の可能性を減少させるための請求項1に記載の経口製剤。
【請求項5】
下痢が離乳前下痢で、製剤が子豚の離乳前に投与される、請求項に記載の経口製剤。
【請求項6】
下痢が離乳後下痢で、製剤が子豚の離乳時に投与される、請求項に記載の経口製剤。
【請求項7】
製剤の投与量が、ブロメラインの単回量の40−60mg/kgを提供する、請求項に記載の経口製剤。
【請求項8】
製剤の投与量が、ブロメラインの単回量の20−30mg/kgを提供する、請求項に記載の経口製剤。
【請求項9】
子豚集団の各子豚に単回の治療有効量で投与される、子豚の集団において子豚の死亡を減少させるための請求項1に記載の経口製剤。
【請求項10】
適切な液体が水である請求項1に記載の経口製剤
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
政府の権利
なし
【0002】
関連出願
本出願は、2014年8月25日に出願された米国仮特許出願第62/041175号明細書の優先権を主張し、この内容が参照により本明細書に援用される。
【背景技術】
【0003】
下痢は、ブタおよび人間での問題である。子ブタの下痢(scour)(下痢(diarrhea))は、毎年全世界で生まれる16億匹の子ブタの内の数億匹に影響を及ぼす養豚において最も一般的な問題の内の1つである。下痢により、体重増加の抑制、高額な費用の処置および高頻度の死亡が生じる可能性がある。子ブタは若年齢で健康に戻るが、後年では体重および成績で不利なままの傾向がある。従って、下痢は、子ブタの健康だけでなく飼養場の採算性へも悪影響を及ぼす。
【0004】
下痢はまた、ヒトでの深刻な問題でもある。下痢は発展途上世界において第2位の死因(下痢により毎年150万人超の子供が死亡する)であり、栄養失調の主な原因である。5歳未満の子供の間では、毎年約40億の下痢の症例が発生すると推定される。下痢はまた、発展途上地域への旅行者にとっても深刻な問題(毎年4000万人もの人々が影響を受ける)であり、軍事行動中の兵士にとって主要な問題である。
【0005】
下痢の原因は多種多様である。毒素原性大腸菌(Enterotoxigenic Escherichia coli)(ETEC)は、離乳していない子ブタおよび離乳したばかりの子ブタでの下痢の最も一般的な原因の1つである。その他の重要な病原体として、ロタウイルスと、原生動物である豚イソスポーラ(Isospora suis)によって引き起こされるコクシジウム症とが挙げられ、生後3週以内の子ブタが主に影響を受ける。ETECとの共感染で、コクシジウム症に起因する高い死亡率が観測される。
【0006】
ETECはまた、発展途上国における幼児での下痢の最も一般的な原因の1つでもあり、その他の下痢を引き起こす病原体と比べて高い死亡リスクを伴う。ETECはまた、発展途上地域への旅行者での下痢の最もよく見られる原因でもあり、場合によっては発病率が70%もの高さである。発展途上国において5歳未満の子供に影響を及ぼすその他の重要な病原体として、ロタウイルス、クリプトスポリジウム(Cryptosporidium)、シゲラ(Shigella)、エロモナス(Aeromonas)、ビブリオ・コレラ(Vibrio cholerae)O1およびカンピロバクター(Campylobacter)が挙げられる。腸管凝集性大腸菌(Enteroaggregative E.coli)(EAEC)、シゲラ(Shigella)、カンピロバクター(Campylobacter)、サルモネラ(Salmonella)、エロモナス(Aeromonas)、プレジオモナス(Plesiomonas)および非コレラビブリオ(noncholera Vibrio)は、旅行者の下痢のその他の重要な原因である。
【0007】
これらの同じ上記病原体は米国でも下痢を引き起こしており、腸管出血性大腸菌(enterohaemorrhagic E.coli)(EHEC、または志賀毒素産生大腸菌(Shiga toxin−producing E.coli)、STEC)、リステリア(Listeria)、エルシニア(Yersinia)、サイクロスポーラ(Cyclospora)、ジアルジア(Giardia)、カルシウイルスおよびその他の腸管系ウイルスも米国で下痢を引き起こす。クロストリジウム・ディフィシル(Clostridium difficile)は院内感染の主要な原因である。まとめると、これらの病原体は、毎年の米国での下痢の2億超の症例の原因である。多くの場合、感染性病原体が必ずしも原因とは限らない。例えば、HIV感染患者およびがん患者では、下痢は化学療法の慢性副作用として起こる場合がある。下痢はまた、炎症性腸疾患の患者でのように、内分泌腫瘍、糖尿病または慢性炎症により誘発されるホルモン不均衡の結果の場合もある。
【0008】
下痢を引き起こす全ての病原体は臨床症候群が著しく異なり、この臨床症候群として、発病の機序、病原性および発生生態が挙げられる。ETEC等のいくつかの病原体は非侵襲性であり、特定の付着因子による小腸上の腸細胞受容体への付着により、およびエンテロトキシンの産生により、下痢を誘発する。シゲラ(Shigella)等のその他の病原体は侵襲性であり、腸のバリア機能を変化させ、炎症または吸収面の喪失および吸収不良を誘発することにより、下痢を誘発する。この多様性は、下痢の全ての原因に対して単純で効果的な予防または処置を設計しようと試みている研究者に非常に大きな課題を提起する。
【0009】
病原体の多様性および下痢を誘発する因子の数の多さにもかかわらず、細菌毒素または炎症性メディエータが下痢の最も一般的な原因を誘発する。毒素は概して、環状AMP、環状GMPまたは細胞内Ca2+等のシグナル伝達分子を始動させ、このシグナル伝達分子は、腸内塩化物(Cl)チャンネルを順番に活性化し、Clの分泌が増加し、その結果として体液が分泌される。体液分泌のレベルが、小腸から失われた水および電解質を再吸収する結腸の能力を超えて増加すると、重度の脱水および最終的には死亡に到る可能性がある下痢が結果として起こる。化学療法剤および炎症性物質も、これらのシグナル伝達分子を活性化することにより下痢を誘発する。図1を参照されたい。これらの環状ヌクレオチドまたはカルシウムのシグナル伝達経路を標的とする薬剤は分泌抑制剤であり、従って効果的な広域抗下痢薬であると期待されるだろう。
【0010】
大腸菌(Escherichia coli)等の病原菌の摂取により、ヒトでは下痢(diarrhea)が起こる可能性があり、ブタでは下痢(scour)が起こる可能性がある。高密度なまたは混雑した生育条件を伴うことが多い現代の養豚では、下痢が特に懸念されている。
【0011】
抗生物質は、ヒトでの下痢(diarrhea)およびブタでの下痢(scour)の処置に有効な手段である。畜産では、下痢を予防的に防ぐために抗生物質が動物飼料に日常的に添加される場合もある。しかしながら、定期的で広範な抗生物質の使用は、病原菌の抗生物質耐性株が増殖することを可能にしている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
そのため、当分野では、病原菌の抗生物質耐性株の更なる増殖を助長することなくヒトでの下痢(diarrhea)およびブタでの下痢(scour)を処置するためのおよび予防するための手段が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者はある手段を発見した。本発明者の解決策は病原菌を死滅させず、そのため、従来の意味での「抗生物質」ではなく、抗生物質耐性菌の増殖を選択的に支持しない。むしろ、本発明者の解決策は、病原菌が消化管の内面に付着するのを防止するだけである。消化管の内面に付着することができないので、病原菌は宿主動物の消化管を無傷で通過し、宿主動物の便中に排出される。本発明者の解決策はまた、その他の下痢を引き起こす微生物(例えばウイルスおよび寄生生物)に対しても作用する。本発明者の解決策はこのことを、下痢を引き起こす微生物を死滅させようとまたはこの微生物を標的にしようと試みるのではなく、侵襲および腸細胞内の分泌経路をブロックすることにより行なう。本発明者の解決策は有毒ではなく、有毒な代謝産物または残留物が生成されず、そのため、本発明者の解決策は、ヒトでの使用ならびにブタ、ウシおよび家禽等の食用動物での使用ならびに水産養殖(例えば魚および貝の養殖)での使用に適している。本発明者の解決策はまた、伴侶動物(例えばイヌおよびネコ)、観賞魚等にも有用である。本発明者は、食用動物、伴侶動物および魚を包含するために、添付した特許請求の範囲において用語「動物用」を使用する。更に、本発明者の解決策は、Fmoc樹脂合成等の標準的な工業用ポリペプチド合成技術を使用して合成され得るが、代わりに、ある特定の植物抽出物からも製造され得る。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】下痢のいくつかの考えられる原因を示す図である。
図2】本発明者の配合物の3種の考えられる作用機序を示す図である。
図3】未処置の子ブタと比較して、本発明者の配合物の単回投与後での下痢である離乳後子ブタの数を経時的に示すグラフである。
図4】未処置の子ブタと比較して、本発明者の配合物の単回投与後での離乳後子ブタの総臨床スコアを経時的に示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明者の発明は、ブロメライン、BLANOSE(登録商標)カルボキシメチルセルロースナトリウム、無水クエン酸、EPIKURON(登録商標)135Fレシチン油およびエチレンジアミン四酢酸、二ナトリウム塩二水和物(「EDTA」)の水性経口懸濁液を配合することを必要とする。例えば、適切な配合を表1に示す。
【0016】
【表1】
【0017】
この配合から自由流動性粉末が得られる。この流動性粉末を、大腸菌(E.coli)またはその他の微生物により誘発される下痢(diarrhea)(「下痢(scours)」)を予防すべく哺乳子ブタに経口投与するために、2mLの水に懸濁させることができる。より大きな動物またはヒトに投与する場合には、使用量を増加させることができる。本発明者はこれより、これらの成分それぞれについて更に詳細に説明する。
【0018】
ブロメライン
ブロメラインは、パイナップル植物(アナナス・コモスス(Ananas comosus))から得られる粗タンパク質分解抽出物に対する集合名である。下記の2種の形態のブロメラインが知られている:新鮮なパイナップルの果実から得られる果実ブロメライン、およびこの植物の茎から得られる茎ブロメライン。ブロメラインの主な商業的供給源は茎ブロメラインであり、用語「ブロメライン」および「茎ブロメライン」を互換的に使用する。
【0019】
果物を収穫した後、茎からブロメラインを調製する。この茎の皮を剥がし、粉砕し、次いで圧搾し、可溶性ブロメライン成分を含むジュースを得る。更なる処理として、白黄色のまたは黄褐色の最終乾燥粉末を得るための圧搾ジュースの濃縮、ろ過および乾燥が挙げられる。得られたブロメライン抽出物は、タンパク質消化酵素(タンパク質分解酵素またはプロテアーゼと称される)と、より少量でのいくつかのその他の物質、例えばペルオキシダーゼ、酸性ホスファターゼ、ある特定のプロテアーゼインヒビターおよびカルシウムとの混合物である。
【0020】
ブロメライン中の主要なタンパク質分解酵素は、茎ブロメラインと称されるプロテアーゼ(CAS37189−34−7(EC3.4.22.32))であるが、果実ブロメライン抽出物中の主要なプロテアーゼは、果実ブロメライン(EC3.4.22.33)と称される。これらのプロテアーゼ酵素は、スルフヒドリルプロテアーゼと呼ばれる。なぜならば、機能するためにはシステイン側鎖の遊離スルフヒドリル基が必要とされるからである。茎ブロメラインはタンパク質の切断に対して広範な特異性を有し、小分子物質の中でもZ−Arg−Arg−|−NHMecに対して高い優先度を有する。果物ブロメラインはBz−Phe−Val−Arg−|−NHMecに対して高い優先度を有する。
【0021】
別途限定されない限り(例えば「果物ブロメライン」)、本発明者は本明細書において、パイナップル茎からの粗抽出物に言及するために用語「ブロメライン」を使用し、主なプロテアーゼを説明するために「茎ブロメラインプロテアーゼ」を使用する。
【0022】
パイナップルは、南アメリカおよび中央アメリカの先住民の間で薬用植物としての長い伝統を有する。ブロメラインの最初の単離は、パイナップルの果物から1891年にベネズエラ人化学者Vicente Marcanoにより記録された。1892年に、Elliott P.JoslinおよびFrank Sherman Mearaに支援されたRussell Henry Chittendenがこの物質を十分に調べ、この物質を「ブロメリン」と称した。後に用語「ブロメライン」が紹介され、元々の用語は、パイナップル科の植物の任意のメンバーからの任意のプロテアーゼに適用された。
【0023】
ブロメラインは民間および現代の医薬用途としての長い歴史を有し、代替医療での有望な治癒剤として調査され続けている。ブロメラインはまた、植物療法剤(phytotherapeutical drug)としても広く受け入れられている。ブロメラインは、1957年に治療的栄養補助剤として初めて紹介された。最初、ブロメラインに関する研究はハワイで行なわれたが、より近年では、アジア、欧州およびラテンアメリカの国々で行なわれている。最近では、ドイツの研究者がブロメライン研究に大きな関心を持っている。現在では、ブロメラインは、ドイツにおいて13番目に最も広く使用されている植物薬である。
【0024】
ブロメラインの治療的有用性の一部は、血小板凝集の可逆的阻害、狭心症の可逆的阻害、気管支炎および副鼻腔炎の可逆的阻害、外科手術による外傷、血栓性静脈炎および腎盂腎炎の処置である。ブロメラインを、腫れ(炎症)を縮小させるために、特に鼻および洞の腫れ(炎症)を縮小させるために、外科手術または損傷の後に使用することもできる。ブロメラインはまた、激しい運動の後の筋肉痛を予防するためにも使用される。ブロメラインはまた、腫瘍細胞の増殖を妨げるおよび血液凝固を遅延させるとも報告されている。www.nlm.nih.gov/medlineplus/druginfo/natural/895.htmlを参照されたい。ブロメラインはまた、枯草熱に、腫れおよび潰瘍を含む腸疾患(潰瘍性結腸炎)の処置に、熱傷後の死滅したおよび損傷した組織の除去(デブリードマン)に、肺中での水の堆積(肺水腫)の予防に、筋肉の弛緩に、筋収縮の刺激に、抗生物質の吸収の改善に、がんの予防に、陣痛の短縮に、および脂肪の身体からの除去(body get rid)の補助にも使用される。食品の調製では、ブロメラインは、食肉軟化剤としておよびビールを清澄化するために使用される。
【0025】
乳房、結腸直腸および形質細胞腫のがん患者を処置するための(ブロメライン、トリプシン、キモトリプシンおよびパパイン等のタンパク質分解酵素の組合せからなる)全身酵素療法が欧州で調べられている。実験用大腸炎を有するマウスでは、パイナップル茎からのまたは新鮮なジュースからの6ヶ月にわたる食餌ブロメラインにより、結腸炎症の重症度が低下し、結腸中のがん病変の数が減少した。
【0026】
ブロメライン補給剤は、その他の薬剤(アモキシシリン、抗生物質、抗凝固薬/抗血小板薬)と共に摂取された場合、外科手術後に、心拍数、血液凝固および出血に関連するリスクが増大する場合がある。
【0027】
ブロメラインの抗転移活性および抗炎症活性は、このブロメラインのタンパク質分解活性から明らかに独立している。ほとんど解明されていないが、ブロメラインの多様な生物学的効果は、この化合物の極めて珍しい性質である膜障壁を横切る能力に依存していると思われる。
【0028】
有望な抗炎症剤としてブロメラインは関節炎の処置に有用であり得るが、このブロメラインの使用に関するヒトでの研究では確認されておらず、Food and Drug AdministrationまたはEuropean Food Safety Authorityにより、そのような効果に関する健康強調表示付きで承認されてもいない。Natural Medicines Comprehensive Databaseは、ブロメラインは、トリプシン(別のプロテアーゼ)およびルチン(ソバで発見された物質)と併用された場合、変形性関節症の管理においていくつかの処方鎮痛剤と同程度の効果があることを示唆する。ブロメラインとトリプシンおよびルチンとを組み合わせる製品(WOBENZYME(商標))が市販されており、疼痛を軽減し、変形性関節症を有する人の膝関節機能を改善すると思われる。しかしながら、National Institutes of Healthは、「ブロメラインがその他の用途のいずれかで有効であるかどうかを決定するための十分な科学的根拠がない」と述べている。同文献を参照されたい。ブロメラインはまた、名称ANANASE(商標)の製品として数カ国で入手可能である。
【0029】
ブロメラインは、あらゆるその他の疾患で有効であると科学的に証明されておらず、あらゆるその他の障害の処置にFood and Drug Administrationにより認可されていない。
【0030】
ブロメラインは、タイ、台湾およびパイナップルが栽培されている世界のその他の熱帯地域で製造されている。
【0031】
ブロメラインは、効果的な広域抗下痢剤の可能性が示されている。なぜならば、ブロメラインは、下痢の根本の原因(炎症経路および分泌経路)を標的とするからである。ブロメラインは三重の作用機序を有する。図2を参照されたい。最初に、ブロメラインは細菌の小腸への付着を防止し、その結果、細菌のコロニー形成が防止される。2番目に、ブロメラインは、過剰な体液分泌および下痢の根本の原因である細菌毒素および炎症性メディエータの作用を防止する、および逆にする。ブロメラインはこのことを、エンテロトキシンおよび炎症性メディエータにより誘発される環状AMP、環状GMPおよびCa2+の細胞内シグナル伝達経路(腸の体液分泌および分泌性下痢を誘発する)をブロックすることにより行なう。3番目に、ブロメラインはまた、ERK−2、JNKおよびp38マイトジェン活性化プロテイン(MAP)キナーゼ経路の活性化を防止して、TNFα、IFNγおよびIL−6等の炎症性サイトカインの産生および作用を低減させることにより、炎症も阻害する。これらの経路および炎症性サイトカインは、シゲラ(Shigella)、サルモネラ(Salmonella)およびクロストリジウム・ディフィシル(Clostridium difficile)により誘発される腸バリアの機能不全で、および慢性炎症(例えば炎症性腸疾患(IBD)の患者)で、重要な役割を果たす。
【0032】
ブロメラインは下痢の根本の機序に対して作用することから、特定の種類の病原体を標的とするのみの抗生物質およびワクチンとは異なり、ブロメラインは下痢の様々な原因に対して有効であることができる。また、ブロメラインは抗生物質ではなく、病原体を標的としないことから、ブロメラインは、世界規模の深刻な健康問題である抗生物質耐性の深刻化する問題の一因となるものではない。
【0033】
本発明者の製剤の使用により、離乳時の炎症が予防され、腸の健康が改善されて飼料摂取が増加する。離乳は子ブタの一生における臨界期である。子ブタは、雌ブタからの別離、非常に消化のよい乳からあまり消化がよくないおよびより複雑な固体飼料への移行、新しい環境、同腹子からの移動および別離、ならびに見慣れないブタとの接触に対処しなければならない。これらのストレス因子により、飼料摂取が減少して子ブタの成長が低下する可能性がある。
【0034】
加えて、離乳したばかりのブタの免疫系および消化器系はまだ成熟しておらず、子ブタは抗原負荷(栄養または微生物)の影響をより受けやすく、この抗原負荷により炎症反応が引き起こされる可能性がある。炎症は腸の消化能力および吸収能力に悪影響を及ぼし、腸全体の健康が、動物が病原体の影響をより受けやすくなる契機となる。飼料摂取が減少した動物は病原体曝露時に不健康であり、病気になるだろう。
【0035】
子ブタの胃の中に飼料がないと微生物が不均衡になり、疾患の発生がより高くなる。そのため、ブタの一生でのこの短い離乳段階が広範囲に及ぶ因果関係を有する可能性があり、子ブタの全飼育期間に悪影響を及ぼす。
【0036】
ブロメラインの抗炎症活性により、腸の炎症が減少し、子ブタが疾患から保護され、更に離乳後の期間中に子ブタの飼料摂取が増加する。
【0037】
BLANOSE(登録商標)カルボキシメチルセルロースナトリウム
工業用のセルロースは、木材パルプおよび綿から主に得られる。クラフトプロセスを使用して、セルロースを、植物の別の主成分であるリグニンから分離する。セルロースは味がなく、無臭であり、20〜30の接触角で親水性であり、水およびほとんどの有機溶媒に不溶であり、キラルであり、生分解性である。セルロースは、このセルロースを高温にて濃酸で処理することにより、このセルロースのグルコース単位に化学的に分解され得る。
【0038】
セルロースはD−グルコース単位に由来し、このD−グルコース単位はβ(1→4)−グリコシド結合を介して縮合する。この連結モチーフは、デンプン中に、グリコーゲン中におよびその他の炭水化物中に存在するα(1→4)−グリコシド結合用のものとは対照的である。セルロースは直鎖ポリマーであり、デンプンとは異なり、らせん化または分枝化が起きず、分子は長くてやや硬い棒状の配座を採用し、グルコース残基のエクアトリアル配座により補助されている。1本の鎖からのグルコース上の複数個のヒドロキシル基が、同じ鎖上のまたは隣接する鎖上の酸素原子と水素結合を形成し、鎖を互いに並べてしっかりと保持し、高い引張強度を有するミクロフィブリルを形成する。このミクロフィブリルは細胞壁中で引張強度を付与し、セルロースミクロフィブリルは多糖マトリックス中に噛み込まれる。
【0039】
デンプンと比較して、セルロースは更により結晶性である。デンプンは(料理等で)水中において60〜70℃を超えて加熱されると結晶から非晶質への転移を受けるが、セルロースが水中で非晶質になるためには320℃の温度および25MPaの圧力が必要である。
【0040】
セルロースのいくつかの異なる結晶構造が知られており、これらの結晶構造は鎖間のおよび鎖内の水素結合の位置に対応する。天然セルロースはセルロースIであり、構造はIαおよびIβである。細菌および藻類により産生されるセルロースはIαに富んでいるが、高等植物のセルロースは主にIβからなる。再生セルロース繊維中のセルロースはセルロースIIである。セルロースIからセルロースIIへの転換は不可逆であり、このことは、セルロースIが準安定でありセルロースIIが安定であることを示唆する。様々な化学処理により、セルロースIIIおよびセルロースIVの構造を作ることが可能である。セルロースの多くの性質は、このセルロースの鎖長または重合の程度、1つのポリマー分子を構成するグルコース単位の数によって決まる。木材パルプ由来のセルロースは典型的には300〜1700単位の鎖長を有し、綿およびその他の植物繊維ならびにバクテリアセルロースは800〜10,000単位の範囲の鎖長を有する。セルロースの分解により生じる非常に短い鎖長の分子はセロデキストリンとして知られており、長鎖セルロースと比較して、セロデキストリンは典型的には水および有機溶媒に可溶である。
【0041】
メチルセルロース(methyl cellulose)(またはメチルセルロース(methylcellulose))は、セルロースに由来する化学化合物である。メチルセルロースは、純粋な形態では親水性の白色粉末であり、冷水(温水ではない)に溶解し、透明な粘性溶液またはゲルを形成する。メチルセルロースは様々な商品名で販売され、様々な食品および化粧品で増粘剤および乳化剤として使用され、便秘の処置でも使用される。セルロースのように、メチルセルロースは消化されず、無毒であり、アレルゲンではない。
【0042】
メチルセルロースは自然界には存在せず、セルロースを苛性溶液(例えば水酸化ナトリウム溶液)と共に加熱して塩化メチルで処理することにより、合成的に製造される。その後の置換反応では、ヒドロキシル残基(−OH官能基)がメトキシド(−OCH基)に置き換えられる。
【0043】
置換されるヒドロキシル基の数に応じて、様々な種類のメチルセルロースを調製することができる。セルロースは、連結された多数のグルコース分子からなるポリマーであり、各グルコース分子から3個のヒドロキシル基が露出している。所与の形態のメチルセルロースの置換度(DS)は、1個のグルコース当たりの置換されたヒドロキシ基の平均数として定義される。そのため、DSの理論的最大値は3.0であるが、より一般的な値は1.3〜2.6である。様々なメチルセルロース調製物も、このメチルセルロース調製物のポリマー骨格の平均長が異なることができる。
【0044】
メチルセルロースの下限臨界溶液温度(LCST)は40℃〜50℃である。LCST未満の温度ではメチルセルロースは水に容易に溶解し、LCSTを超えるとメチルセルロースは不溶であり、このことは、メチルセルロースの飽和溶液を加熱することにより固体に変えることができる(なぜならばメチルセルロースが析出し得るからである)という逆説的効果を有する。このことが起こる温度はDS値によって決まり、DS値が高いほど溶解性および析出温度は低い。なぜならば、極性ヒドロキシル基がマスクされるからである。冷水によるメチルセルロース溶液の調製は困難であり、粉末が水と接触すると、この粉末の周りにゲル層が形成されて水の粉末中への拡散が劇的に遅くなり、従って内部は乾燥したままである。
【0045】
カルボキシメチルセルロース(CMC)またはセルロースガムは、セルロース骨格を作るグルコピラノースモノマーのヒドロキシル基の一部にカルボキシメチル基(−CH−COOH)が結合しているセルロース誘導体である。カルボキシメチルセルロースは、そのナトリウム塩、即ちカルボキシメチルセルロースナトリウムとして使用されることが多い。
【0046】
CMCは食品科学において、粘度調整剤または増粘剤として、およびアイスクリーム等の様々な製品中の乳濁液を安定化させるために使用される。CMCはまた、多くの非食品(例えば個人用潤滑剤、歯磨き粉、緩下剤、ダイエット剤、水性塗料、洗浄剤、織物用サイズ剤)および様々な紙製品の成分でもある。CMCは、高粘度であり、無毒であり、主要な供給源線維が針葉樹パルプまたはコットンリンターのいずれかであるために低刺激性であると一般に考えられていることから主として使用される。CMCは、グルテンフリー食品および低脂肪食品で広く使用される。CMCはまた、医薬品において増粘剤としても使用される。
【0047】
カルボキシメチルセルロースナトリウム(クロスカルメロースナトリウムとしても知られている)は、内部架橋したカルボキシメチルセルロースナトリウムである。カルボキシメチルセルロースナトリウムは、医薬製剤において超崩壊剤として使用される。
【0048】
表1中の例示的な配合物では、Ashland Chemical Co.,Covington KY USAから市販されているBLANOSE(登録商標)ブランドの食品グレードのカルボキシメチルセルロースナトリウムが使用されている。食品グレードおよび医薬品グレードのカルボキシメチルセルロースナトリウムは、その他のベンダー、例えばSigma−Aldrich Inc.およびSpectrum Chemical,Inc.から市販されている。カルボキシメチルセルロースナトリウムに加えて、またはカルボキシメチルセルロースナトリウムの代わりに、その他のゲル化剤を使用することができる。
【0049】
無水クエン酸
クエン酸は汎用化学品であり、多種多様なサプライヤから市販されている。クエン酸は主に、酸味料、調味料およびキレート剤として使用される。
【0050】
クエン酸は式Cの弱有機酸である。クエン酸は、天然の防腐剤/保存剤(conservative)であり、食品および飲料品に酸味(acidic taste)または酸味(sour taste)を付加するためにも使用される。生化学では、クエン酸の共役塩基(クエン酸塩)はクエン酸回路において中間体として重要であり、全ての好気性生物の代謝で生じる。クエン酸の共役塩基は3個のカルボキシル(R−COOH)基からなる。
【0051】
室温では、クエン酸は白色の結晶性粉末である。クエン酸は、無水(水フリー)型でまたは一水和物として存在することができる。無水物型は温水から結晶化するが、一水和物はクエン酸を冷水から結晶化させる場合に生じる。一水和物を、78℃超に加熱することにより無水物型に転換させることができる。
【0052】
クエン酸の主要な用途は、食品および飲料品での、特にソフトドリンクでの、調味料および防腐剤である。クエン酸塩の緩衝性を使用して医薬品のpHが調節される。食品添加剤は、United States Pharmacopoeiaにより刊行されているFood Chemicals Codexにより規定されていることから、使用するクエン酸はクエン酸の純度要件に適合することが好ましい。
【0053】
いかなる理論上のメカニズムにも拘束されることを意図しないが、本発明者の製剤におけるクエン酸は、親油性レシチン油が親水性ブロメラインから分離しないようにする乳化剤として機能すると思われる。更に、クエン酸は優れたキレート剤であり、金属に結合する。例えば、クエン酸を使用して、ボイラおよびエバポレータから石灰スケールを除去する。クエン酸を使用して水を軟化させることができ、そのためクエン酸は石鹸および洗濯用洗剤で有用である。硬水中の金属をキレート化させることにより、これらのクリーナーは、水を軟化させる必要なく発泡して良好に働くことができる。本発明者の配合物ではキレート活性が重要である。なぜならば、金属イオンがブロメラインの生物活性を妨げる場合があるからである。
【0054】
EPIKURON(登録商標)135Fレシチン油
レシチンは乳化特性および潤滑特性を有し、界面活性剤である。市販のレシチンは、食品製造業者が使用する場合、油中でのリン脂質の混合物である。種から抽出した油を水脱ガムすることにより、レシチンを得ることができる。レシチンは様々なリン脂質の混合物であり、組成はレシチンの起源によって決まる。レシチンの主要な供給源はダイズ油である。レシチンのその他の供給源(例えばヒマワリ油)を使用して、ダイズアレルギーの懸念を回避することができる。ダイズ由来のおよびヒマワリ由来のレシチンでの主なリン脂質は、ホスファチジルコリン、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジルエタノールアミンおよびホスファチジン酸である。これらはそれぞれ、PC、PI、PEおよびPAと省略されることが多い。精製リン脂質は企業により商業的に製造されている。
【0055】
レシチンの性能を改変して、レシチンを、このレシチンを添加する製品に適したものにするために、レシチンを酵素的に加水分解することができる。加水分解レシチンでは、リン脂質の一部は、ホスホリパーゼによって除去される1個の脂肪酸を有する。そのようなリン脂質はリゾリン脂質と呼ばれる。最も一般的に使用されるホスホリパーゼはホスホリパーゼA2であり、このホスホリパーゼA2はグリセロールのC2位の脂肪酸を除去する。レシチンを、分画と呼ばれるプロセスにより改変することもできる。このプロセス中では、レシチンをアルコール(通常はエタノール)と混合させる。ホスファチジルコリン等のいくつかのリン脂質はエタノールへの良好な溶解性を有するが、その他のほとんどのリン脂質はエタノールにあまり溶解しない。エタノールをレシチンスラッジから分離し、その後、エタノールを蒸発させて除去し、ホスファチジルコリン富化レシチン画分を得る。
【0056】
ダイズ由来レシチン栄養補助食品は、19〜21%のホスファチジルコリン、8〜20%のホスファチジルエタノールアミン、20〜21%のイノシトールリン脂質、33〜35%のダイズ油、2〜5%のステロール、5%の炭水化物/なし、1%の水分および5〜11%のその他のリン脂質で構成されている。レシチンは、ヒト用食品、動物飼料、医薬品、塗料での用途およびその他の工業用途に使用される。製薬工業では、レシチンは、湿潤剤、安定化剤およびコリン富化キャリアとして作用し、乳化およびカプセル化で役立ち、良好な分散剤である。レシチンは、「一般に安全と認められる」状態でヒト食用にUnited States Food and Drug Administrationにより承認されている。レシチンはまた、食品添加物(E322と呼ばれる)としてEuropean Unionにも許可されている。表1の例示的な配合物は、レシチンを乳化剤として使用する。乳化剤として、レシチンはいくつかの利点を与える。動物飼料では、レシチンは脂肪およびタンパク質の含有量を高め、ペレット化を改善する。調査研究から、ダイズ由来レシチンは、血清コレステロールおよび血清トリグリセリドの低下への有意な効果を有し、更にラットの血中でのHDL(「善玉コレステロール」)レベルを増加させることが示されている。レシチンはヒトにより完全に代謝され得、そのため、摂取された場合にヒトにより十分に許容され、無毒である。(対照的に、ある特定のその他の乳化剤は腎臓を介して排泄され得るだけである)。しかしながら、レシチンに加えて、またはレシチンの代わりに、その他の乳化剤を使用することができる。
【0057】
エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム塩二水和物(「EDTA」)
エチレンジアミン四酢酸(EDTAと広く省略される)はキレート剤である。エチレンジアミン四酢酸は無色の水溶性固体である。エチレンジアミン四酢酸の共役塩基はエチレンジアミン四酢酸塩である。
【0058】
エチレンジアミン四酢酸の有効性は、そのキレート剤としての役割(即ち、エチレンジアミン四酢酸のCa2+およびFe3+等の金属イオンを捕捉する能力)により生じる。キレート化活性は本発明者の製剤に有利である。なぜならば、金属イオン(例えば、畜産で使用される水道水中に一般的に存在する金属イオン)がブロメラインの活性を妨げるまたは阻害する場合があるからである。
【0059】
EDTAにより拘束された後、金属イオンは溶液中に残るが反応性の低下を示す。EDTAはいくつかの塩として製造され、特にEDTA二ナトリウムおよびEDTAカルシウム二ナトリウムとして製造されている。
【0060】
工業では、EDTAは水溶液中の金属イオンを捕捉するために主に使用される。織物工業では、EDTAは、染色した製品の色を金属イオン不純物が変更することを防止する。EDTAは、金属イオン(特にMn2+)の能力により過酸化水素の不均化が触媒されるのを阻害する。同様の方法で、EDTAは、触媒的酸化脱色を防止するために防腐剤または安定化剤として一部の食品に添加され、触媒的酸化脱色は金属イオンにより触媒される。アスコルビン酸および安息香酸ナトリウムを含むソフトドリンクでは、EDTAはベンゼン(発がん物質)の形成を軽減する。
【0061】
EDTAは、例えば水銀中毒および鉛中毒を処置するためのキレート療法の実施に際して、金属イオンに結合するために使用される。EDTAは、身体から過剰な鉄を除去するために同様の方法で使用される。この療法は、地中海貧血症の処置に適用されるように、輸血の繰り返しの合併症を処置するために使用される。U.S.FDAは、1953年7月16日、Versenateというブランド名での鉛中毒用のEDTAの使用を承認し、製薬会社Rikerに対して認可した。一部の代替医療専門医は、フリーラジカルが血管壁を傷つけるのを防止する強力な抗酸化物質としてEDTAが作用し、そのためアテローム性動脈硬化症が軽減されると信じている。U.S.FDAは、アテローム性動脈硬化症の処置に関してEDTAを承認していない。
【0062】
作用のあらゆる仮想的モデルに拘束されることを意図しないが、EDTAはまた、おそらくクエン酸の防腐作用を高めるために、本発明者の製剤において防腐剤としての機能も果たすことができる。
【0063】
EDTAに加えて、またはEDTAの代わりに、別のキレート剤を使用することができる。例えば、金属イオンと結合するがEDTAと比べて生分解性が高く窒素の含有量が低いキレート配位子が使用されるだろう。
【0064】
例えば、イミノジコハク酸(IDS)を使用することができる。1998年から商業的に使用されているイミノジコハク酸(IDS)は、わずか7日後に約80%が生分解する。IDSはカルシウムに特によく結合し、その他の重金属イオンとの安定した化合物を形成する。EDTAと比べてキレート化後の毒性が低いことに加えて、IDSの製造は環境に優しい。加えて、IDSは、大規模に収穫することができるアグロバクテリウム・ツメファシエンス(Agrobacterium tumefaciens)(BY6)で見出されるIDSエピメラーゼおよびC−Nリアーゼの使用により分解される。加えて、両方の酵素により触媒される反応はいかなる補助因子も必要とせず、そのため直接適用され得る。
【0065】
同様に、ポリアスパラギン酸を使用することができる。BAYPURE(商標)DS100として市販されているポリアスパラギン酸は、環境に優しい方法で製造されている。ポリアスパラギン酸は、イミノジコハク酸のようにカルシウムおよびその他の重金属イオンに結合する。ポリアスパラギン酸はEDTAと比べて7.2meq/gという高い値を有し、EDTAはわずか6.0meq/gである。ポリアスパラギン酸はより高い理論的容量を有するが、実際の適用では、ポリアスパラギン酸は、より低いイオン濃縮溶液で低い効率を示す。DSは、腐食防止剤、廃水添加剤および農業用ポリマー等の多くの実用的用途を有する。BAYPURE(商標)DS100をベースとする洗濯用洗剤は、EUフラワーエコラベル(EU flower ecolable)を達成する世界初の洗濯用洗剤であった。
【0066】
同様に、エチレンジアミン−N,N’−ジコハク酸(EDDS)を使用することができる。EDTAの構造異性体として、エチレンジアミン−N,N’−ジコハク酸には下記の3種の異性体が存在し得る:(S,S)、(R,S)/(S,R)および(R,R)が、S,S−異性体のみが容易に生分解可能である。EDDSは、20日で83%という驚くほど高い生分解率を示す。生分解率はまた、キレート化される金属イオンによっても異なる。例えば、鉛とEDDSとの錯体および亜鉛とEDDSとの錯体は比較的同じ安定性を有するが、鉛錯体は亜鉛錯体と比べて効率的に生分解される。2002年の時点で、EDDSは欧州において商業的に大々的に有名であり、毎年約15%の需要率の増加が見込まれている。
【0067】
同様に、メチルグリシン二酢酸(MGDA)を使用することができる。BASF GmbHから市販されているメチルグリシン二酢酸(MGDA)は、グリシンから製造されている。MGDAは、68%超の高い生分解率を有するが、その他の多くのキレート剤とは異なり、適応された細菌の助けがなくても分解することができる。加えて、EDDSまたはIDSとは異なり、MGDAは、高い安定性を維持しつつより高い温度に耐えることができ、全pH範囲に耐えることもできる。結果として、MGDAのキレート強度は、多くの市販のキレート剤と比べて強い。
【0068】
同様に、L−グルタミン酸N,N−二酢酸、四ナトリウム塩(GLDA)を使用することができる。そのようなアミノポリカルボキシレートをベースとするキレート剤は、水性系において金属イオンを制御するために使用される。
【実施例】
【0069】
本発明者は、実際の商業的畜産条件下で、3つの異なる種類の環境および3つの異なる地域で成長するブタに対して本発明者の製剤を試験し、ブタの2つの異なる年齢群−離乳前(離乳していない)および離乳直後を評価した。
【0070】
・試験1(スペイン)−本発明者の製剤は、子ブタでの離乳後の下痢の発生率、重症度および持続期間を低減させた。本発明者の製剤はまた、抗生物質の必要性を低減させ、飼料転換率(FCR)を改善した。
【0071】
・試験2(フランス)−本発明者の製剤は、1日当たりの平均体重増加を改善し、飼料中の抗生物質と比較した場合に食物転換率を改善した。
【0072】
・試験3(フィリピン)−本発明者の製剤は、抗生物質と比較して離乳前の子ブタにおける子ブタの死亡を低減させた。
【0073】
・試験4(オーストラリア)−本発明者の製剤は、抗生物質と比較して離乳前の子ブタにおける子ブタの死亡を低減させた。
【0074】
実施例1−スペイン(離乳直後の子ブタ)
目的:この研究の目的は、離乳時での本発明者の製剤の単回経口投与(4ml)により、大腸菌(E.coli)の病歴がある商業的養豚場での下痢を低減することができるかどうかを比較することであった。
【0075】
研究の概要:この研究は、子ブタの2つの並行群を比較する盲検無作為化野外試験であった。本発明者は、下記の2つの試験群(1つの試験群当たりn=72)を使用した:1.本発明者の製剤および2.処置なし。離乳日(0日目)に、各同腹子中の子ブタを無作為に2つの異なる処置群に割り当て、秤量し、次いで固有の識別(ID)番号を付与した。次いで、一方の群の子ブタに本発明者の製剤の単回用量を投与し、次いで離乳用の檻に運んだ。別の群の子ブタは未処置のままであったが同様に取り扱った。
【0076】
臨床パラメータ:子ブタを、下痢およびあらゆるその他の疾患の兆候に関して毎日モニタリングした。子ブタが下痢の兆候を示すと、この子ブタのID番号、糞便の硬度および子ブタの全身状態を、採点システム(表2)を使用して記録した。
【0077】
【表2】
【0078】
動物の健康、具合が悪いまたは瀕死への分類は、総臨床スコアに基づいていた(表3)。総臨床スコアは、各ブタに関する糞便の硬度のスコアと全身状態のスコアとの合計である。このスコアは、子ブタの健康に関する全般的な指標を付与する。数匹の子ブタは下痢の可能性があるが依然として健康に見え、その他の子ブタは、軽症の下痢の可能性があるが瀕死である。本発明者の製剤は子ブタの臨床スコアを有意に低下させ、従って、未処置のブタと比較して全般的な健康を改善した。
【0079】
【表3】
【0080】
抗生物質処置:この研究中に投与した全ての抗生物質処置を記録した(動物ID、日付、製品、用量および投与経路)。
【0081】
子ブタの体重:0日目(離乳時)、7日目および14日目に、子ブタを個々に秤量した。1日当たりの平均体重増加(ADG)を算出した。
【0082】
飼料摂取量:1つの檻当たりの飼料摂取量も評価して飼料転換率(FCR)を決定した。FCRは、飼料摂取量をブタの体重で除算したものと等しい。
【0083】
データ分析:下痢の発生率、臨床スコアまたは罹患率(全身状態+糞便の硬度)、処置率および死亡率を評価するために、使用した統計学的手法は、ポアソンおよび2項誤差を有する線形混合モデルであった。部屋/性別は変量効果であり、処置は固定効果であった。GenStat for Windows.(2007).10th Edn.VSN International Ltd.,Hemel Hempstead,UKで分析を行なった。体重および1日当たりの平均体重増加の場合、使用した統計学手法は、標準誤差を有する線形混合モデルであった。第一種過誤(Type 1 error)は≦0.05であった。
【0084】
結果
臨床パラメータ:
・離乳時に投与した本発明者の製剤の単回用量により、未処置のブタと比較した場合に、(0日目から離乳後19日目まで)下痢の発生率を有意に40%低下させた(図3)(p<0.05)。この単回用量により子ブタが19日にわたり保護され、このことは効果の長期間の持続を示した。この飼養場での下痢の原因は大腸菌(E.coli)であった。
【0085】
・この研究の継続期間の間中、本発明者の製剤で処置した子ブタの群の総下痢スコア(全ての下痢スコアの合計)は、未処置の群での253と比較して98であった。
【0086】
・本発明者の製剤は、子ブタの全般的な健康を有意に改善し、または臨床スコアを低下させ、従って、未処置の子ブタと比較した場合に重症疾患は少なかった(図4)(p<0.05)。
【0087】
・本発明者の製剤は、未処置のブタ(n=38)と比較した場合に病気のブタの数(n=16)を有意に58%減少させた(p<0.05)。
【0088】
・本発明者の製剤は、対照(33例の処置)に対して抗生物質による処置が必要な数を55%(15例の処置)減少させた。
【0089】
・本発明者の製剤で処置した群(4例)および未処置の群(3例)における死亡(全ての原因)は同数であった。
【0090】
ブタの成績
・離乳後2週間における本発明者の製剤で処置した子ブタの1日当たりの平均体重増加は、未処置の子ブタと比べて22%高かった(それぞれ50±7.1g対39±7.0g)。離乳後42日で、本発明者の製剤で処置した子ブタは対照の子ブタと比べて0.2kg(1.6%)重かったが、この増加は有意ではなかった。
【0091】
・離乳後の最初の2週間において、本発明者の製剤で処置した子ブタは、未処置のブタと比べて8.4%の有意に良好な飼料転換率を有した(それぞれ2.84±1.22対3.1±1.20)。全体として(0日目〜42日目)、本発明者の製剤は、飼料転換率を2.7%改善した(1.46±0.06対1.50±0.06)。
【0092】
未処置の群と比較した本発明者の製剤の全体的なFCRの改善はあまり大きくない(0.04または2.7%)が、FCRの0.01の改善毎に1匹のブタ当たりの飼料コストを$0.28〜$0.30削減することができることに留意すべきである(2008年の価格をベースとする−飼料のコストは大きく上昇しており、そのため現在の利益はより大きいだろう)。また、育成飼料のFCRの0.1%の改善により、200匹の雌ブタ単位の採算性を毎年約$6,000改善することができるとも算出されている。FCRの5%改善は、オーストラリアの養豚業に対して$28,000,000の潜在的価値を有する(http://www.australianpork.com.au)。
【0093】
FCRの成績の改善は重要である。なぜならば、豚肉製造では飼料のコストが主要なコストであり、通常は全ての製造経費の60〜80パーセントを占めるからである。FCRのあらゆる改善により、飼料コストを削減することができ、採算性を改善することができる。
【0094】
結論:
離乳時に投与される本発明者の製剤の単回用量により、下痢の発生率、持続期間および重症度が低減される。本発明者の製剤はまた、抗生物質による処置の必要性も低減し、子ブタの成長も改善する。従って、本発明者の製剤は子ブタの健康および成績を改善し、従って飼養場の生産性を改善する。
【0095】
実施例2−フランス(離乳した子ブタ)
背景:成長を促進するための飼料添加剤としての抗生物質は現在、欧州では禁止されているが、獣医の監督下での処方抗生物質の飼料への添加が下痢等の急性症状の予防および処置に認められている。
【0096】
目的:この研究の目的は、本発明者の製剤の単回用量を投与した子ブタの飼料転換率を、抗生物質である飼料コリスチンと比較することであった。
【0097】
研究の概要:この研究は、子ブタの下記の3つの並行群(1つの群当たりn=89)を比較する盲検対照無作為化野外試験(blinded,controlled,randomised field trial)であった:1.コリスチン、2.本発明者の製剤および3.処置なし。この研究では、全ての同腹子を無作為に選んで異なる処置を受けさせ、従って、同腹子を全同腹子単位で処置する。
【0098】
この飼養場での離乳は2段階で行なわれる。第1段階では、子ブタを雌ブタから引き離すことにより離乳させる(−5日目)。次いで、0日目に、子ブタをその離乳用の檻に移す。
【0099】
−5日目に、群1の子ブタに、14日(−5日目〜9日目)にわたりプレスターター飼料中のコリスチン(飼料1トン当たり9kgの抗生物質プレミックス)を投与した。その他の2つの群には、プレスターター飼料のみを投与した。0日目(離乳後5日目)に、子ブタをその離乳直後の檻に移す際に、群2の子ブタに本発明者の製剤の単回用量を投与した。群3の子ブタは未処置であった。
【0100】
分析:研究1の通り。
【0101】
結果:
ブタの成績
・本発明者の製剤で処置した子ブタは、この研究の全ての段階において、コリスチンを投与した子ブタと比較して1日当たりの平均体重増加が有意に高かった(P<0.05、表4)。飼料中のコリスチンで処置した子ブタは、未処置のブタと比べて体重増加が低い等、全ての群の中で体重増加が最低であった(P<0.05)。
【0102】
【表4】
【0103】
・全体として(150日齢で)、本発明者の製剤を投与した子ブタの全平均体重増加は、対照のブタと比べて2%(または1.71kg)高く、飼料中のコリスチンを投与した子ブタと比べて3.9%(または3.25kg)高かった(P<0.05)。
【0104】
・飼料摂取量をプレスターター段階(−5日目〜9日目)のみで測定した。本発明者の製剤で処置した子ブタは、飼料中のコリスチンを投与した子ブタと比較して、離乳期中での飼料摂取量が高かった(表5)。
【0105】
【表5】
【0106】
・飼料転換率(FCR)をプレスターター段階(−5日目〜9日目)のみで測定した。本発明者の製剤のみで処置した子ブタは、その他の全ての群と比べて最高のFCR(1.82)(P<0.009)を有した(表5)。本発明者の製剤で処置した子ブタは、コリスチンで処置した子ブタ(2.71)と比較して33%改善された。本発明者の製剤で処置した子ブタは未処置のブタと比べて飼料摂取量が低いにもかかわらず(表5)、この子ブタは未処置のブタ(1.96)と比較してFCRが7%改善された(表6)。これらの成績の結果は、本発明者の製剤が飼料中のコリスチンと比較して大きな利点を有することを示す。
【0107】
【表6】
【0108】
コリスチンのFCRへの悪影響は、腸内菌叢へのコリスチンの副作用、そしてその結果としてのブタの腸の健康および栄養摂取への悪影響による可能性がある。
【0109】
結論:本発明者の製剤は、子ブタの体重増加を改善し、飼料転換率を改善した。
【0110】
実施例3−フィリピン(離乳していない子ブタまたは離乳前の子ブタ)
背景:フィリピンのこの飼養場では、下痢が原因の死亡率が高い。
【0111】
目的:この研究の目的は、離乳していない子ブタにおいて本発明者の製剤の有効性を抗生物質と比較することであった。
【0112】
研究の概要:この研究は、子ブタの2つの群を比較する無作為化野外試験であった。この飼養場での死亡率は非常に高いことから、陰性対照(非投薬群)は存在しない。試験群(1つの群当たりn=38)は、1.本発明者の製剤(2用量)および2.抗生物質(3日毎に経口投与した)であった。子ブタに本発明者の製剤を3日齢で投与した。6日齢で後続用量(follow up dose)を投与した。
【0113】
結果:
臨床パラメータ
この研究では、下痢が原因で少数が死亡した。しかし、本発明者の製剤で処置した群では、(全ての原因による)死亡が有意に5%低かった。抗生物質を投与した子ブタでは死亡率は21%であった(P<0.05)。
【0114】
成績パラメータ
・離乳時に、本発明者の製剤を投与した子ブタは、抗生物質で処置した子ブタと比べて0.1kg重かった。この研究では陰性対照が存在しなかったことから、その他の野外試験で観測されたように、本発明者の製剤により未処置のブタと比較して体重が増加したかどうかは不明である。
【0115】
実施例4−オーストラリア(離乳していない子ブタまたは離乳前の子ブタ)
目的:この研究の目的は、離乳前(pre−weaning)(離乳前(sucker))の下痢の病歴を有するオーストラリアの飼養場での子ブタの死亡率および罹患率の低下における本発明者の製剤(2mL)の有効性を調べることであった。
【0116】
研究の概要:この研究を、オーストラリア、Northern Victoriaに位置する商業養豚場で行なった。この飼養場は、出産後3〜4日で離乳前の下痢が普通に起こるという問題の歴史がある。この研究の前月に飼養場から得た糞便サンプルは、下痢が大腸菌(E.coli)(K99、STa毒素遺伝子)およびロタウイルスの複合感染に起因することを示した。ワクチンおよび抗生物質等の現在のアプローチは、この問題を適切に制御するのに失敗していた。
【0117】
この研究は、子ブタの2つの並行群を比較する盲検プラセボ対照無作為化野外試験(blinded,placebo controlled,randomised field trial)であった。飼養場および飼養場労働者を処置に対して盲検化した。
【0118】
21の同腹子(233匹の子ブタ)に本発明者の製剤(2mL)を2日齢で投与し(群1)、23の同腹子(229匹の子ブタ)にプラセボを投与した(群2)。
【0119】
各群には、同数の未経産の雌ブタの同腹子(または初めての母親)が含まれていた。
【0120】
飼養場の通常の管理ルーチンを継続させ、この管理ルーチンとして、雌ブタのワクチン接種、抗生物質および抗コクシジウム剤等の通常の薬物療法、ならびに小さい子ブタまたは健康障害の子ブタが別の雌ブタへと移動し得る子ブタの乳子交換が挙げられる。
【0121】
この試験を、Pig Specialist Centre,Victorian Department of Economic Development,Jobs,Transport and Resourcesからの独立した獣医および研究者により行なった。適切な統計学的分析を決定し、独立した生物測定学者により適用した。
【0122】
この試験では、2〜21日齢での死亡および下痢の発生率、罹患率(または子ブタの臨床状態)ならびに体重増加および1日あたりの平均体重増加(ADG)を調べた。子ブタを、下痢およびあらゆるその他の疾患の兆候に関して毎日モニタリングした。子ブタが下痢の兆候を示すと、この子ブタのID番号、糞便の硬度および子ブタの全身状態を、表2に記載の採点システムを使用して記録した。
【0123】
ひどく元気がないことを確認した全ての子ブタを人道的な理由で安楽死させた。試験中に安楽死させたまたは死亡を確認した子ブタを、死亡から12時間以内に剖検した。
【0124】
データ分析:
2種の処置を、小屋の中で無作為に21〜23回繰り返した。
【0125】
1つの檻の中の子ブタの同腹子が実験単位である。
【0126】
適切な統計学的分析を決定し、独立した生物測定学者により適用した。
【0127】
1つの檻当たりの平均最大下痢スコアおよび罹患率スコアを、分散を安定化させるためにlog+0.05変換した後の一元配置分散分析(ANOVA)で分析した。全ての子ブタに関するADGはANOVAに不適切であった。なぜならば、残差は、フィットさせた値の範囲全体で正規分布でも均一でもなかったからである。そのため、発明者らは、ノンパラメトリック(分布によらない)Kruskal−Wallis検定を使用した。
【0128】
死亡率および下痢の発生率および罹患率を、小さいセルサイズ(small cell size)に適したExact Binary Regressionを使用して分析した。有意性に関して両側検定を使用した。
【0129】
ANOVAおよびKruskal Wallis検定を、R version 2.7.2(2008).The R Foundation for Statistical Computingを使用して実施した。Exact Binary Regressionを、StatExact(Cytel Statistical Software,Cytel Software Corporation,MA,USA)により実施した。
【0130】
結果:
臨床パラメータ
この研究を、下痢の予期される発症前に本発明者の製剤を子ブタに投与する予防的研究として設計した。しかしながら、製品の投与前に、462匹の子ブタの内の59匹(12.8%)で下痢が明らかであった。下痢の予期される発症と比べて早かったにもかかわらず、全ての子ブタをこの研究に含めており、除外しなかった。
【0131】
表7は、全ての原因に起因する両方の群における離乳前の死亡数を示す。本発明者の製剤は、子ブタの死亡率を有意に47.8%低下させた(p<0.02)。対照群では229匹中36匹(15.7%)の子ブタが死亡したのに対して、本発明者の製剤で処置した子ブタでは233匹中19匹(8.2%)の子ブタが死亡した。
【0132】
【表7】
【0133】
この研究における子ブタの主要な死因(81.8%)は、死後の所見に基づいて下痢および病的な成長(ill thrift)と診断した。
【0134】
病因
7日齢未満である24匹の子ブタからサンプルを採取した。この研究では、優勢な病原体を同定しなかった。23例の糞便サンプルを(好気性および嫌気性)培養し、下痢の原因として可能性のある細菌(大腸菌(E.coli)およびクロストリジウム(Clostridia))を単離した。本発明者の製剤で処置した1匹の子ブタは、非溶血性大腸菌(E.coli)に対して陽性(STa陽性)の結果であり、対称群からの2匹の子ブタから2種の溶血性大腸菌(E.coli)単離株(K88)を得た。これらの対照の子ブタの内の1匹は、非溶血性大腸菌(E.coli)(K88)に共感染していた。クロストリジウム種(Clostridia spp)を単離しなかった。Rotavirus ELISA(IDEXX Rota−Corona−K99、IDEXX Montpellier SAS、France)により、21例の糞便サンプルの内の9例(42.8%)は陽性または弱陽性の結果であった。しかしながら、7例のサンプルはいずれもロタウイルスRTPCRに対して陽性ではなく、ロタウイルス感染を示す腸病変はなかった。
【0135】
解剖した子ブタの高い割合26/53(49%)が空腹であり、このことは、この飼養場に存在する下痢/病的な成長は、子ブタの最適以下の栄養摂取および乏しい乳汁保護(lactogenic protection)となる不十分な初乳および子ブタの乳の摂取に起因している可能性があることを示唆している。
【0136】
罹患率
本発明者の製剤はまた、重度の罹患率または生命を脅かす疾患も低減させた(スコア4)。生命を脅かす疾患を有する子ブタの内、または瀕死と見なした子ブタの内、本発明者の製剤で処置した群における瀕死の28匹の子ブタの内の19匹と比較して、対照の子ブタでは38匹中36匹が死亡した。
【0137】
成績パラメータ
表8は、両方の群に関する(処置日からである2日目から21日目までの)体重増加の平均および範囲ならびに1日当たりの平均体重増加(ADG)を示す。
【0138】
【表8】
【0139】
本発明者の製剤は、体重増加および1日当たりの平均体重増加を5.7%(または1匹の子ブタあたり224g)および5.6%増加させた。しかし、これらの増加は同腹子レベルでは統計的に有意ではなかった(p=0.49)(しかし、個々の子ブタレベルでは有意であった、p<0.04)。
【0140】
考察および結論:
この研究の結果は、本発明者の製剤を使用して、非特異的病因の下痢/病的な成長による問題を有する飼養場での離乳前の死亡率を低下させることができることを示唆する。
【0141】
生後1週以内の子ブタの中での主要な死因は、病的な成長および良好な生育の失敗である。生後24時間以内に初乳を摂取できない子ブタは、不十分なエネルギー摂取に起因して、雌ブタまたは接触による押しつぶしの結果としての早期死亡のリスクがある。ヒトの乳児とは異なり、抗体は、雌ブタから胎盤を介して子ブタに運ばれない。そのため移行抗体がなく、子ブタは非常に感染しやすい。たとえ子ブタが最初の数日を生き延びても、乳の摂取が不十分であり続ければ、子ブタは、この子ブタのより頑強な同腹子と比較して、(雌ブタの乳中の乳抗体および免疫性因子からの)低い乳汁免疫(lactogenic immunity)に起因して感染性疾患に屈する可能性が高い。雌ブタによる乳産生の不足または子ブタによる低い消費のいずれかにより適切な乳摂取を維持することができない子ブタは、同腹子との競争でのまたは後年の感染性疾患に対する無力に起因して、早期死亡に再び屈する可能性が高い。
【0142】
この研究では、本発明者の製剤は、商業的飼養場での離乳前の子ブタの間での離乳前の死亡率を半減させた。その作用様式は、生後1週間以内の瀕死の子ブタの生命力の改善、従って生存性の改善によると考えられる。このことは、死亡するまたは安楽死させなければならない臨床的瀕死と分類した、本発明者の製剤で処置した子ブタの割合が、同じ臨床カテゴリでの対照群の76.6%と比較して低い(45.2%)ことにより実証される。
【0143】
本発明者の製剤で処置した子ブタは、対照群の子ブタと比べて5.7%速く成長した。この体重増加の差異は有意ではなかったが、この差異は離乳時の生体重での約225gの差異と等しい。離乳時体重は、子ブタのその後の成長および生存と正の関連を示す。
【0144】
まとめ
ここで、本発明者の開示を前提として、ある特定の変形および代替を容易に行なうことができる。例えば、表1の製剤は、下痢を予防するための哺乳子ブタの予防的処置に適した投薬量を提供する。下痢を(予防よりはむしろ)処置するための使用に必要な用量は異なる場合があり、当業者は適切な用量を容易に導き出すことができるだろう。同様に、成熟した大人のブタまたはヒトを処置するための使用に必要な用量はより大きい場合があり、当業者は、適切な用量を容易に導き出すことができるだろう。
【0145】
本発明者の製剤を経口ドレンチとして提供することができ、例えば、水による再構成を必要とする粒状粉末として提供することができる。離乳後の下痢を予防するために、本発明者の製剤を、離乳日(下痢の予期される発症の1〜2日前)に単回のみの経口用量4ml(0.24g)として投与することができる。離乳前の下痢を予防するために、特定の飼養場の問題の期間に応じて、2ml(0.12g)の単回経口用量を2〜5日齢で投与することができる。3〜7日後に反復投与が必要な場合がある。処置として、疾患の症状が現れると本発明者の製剤をすぐに投与することができる(2mlまたは4mlのいずれか)。
【0146】
本発明者の製剤を飼料添加剤として提供することができ、例えば、ブタ飼料に添加され得る粒状粉末として調製される飼料添加剤として提供することができる。製品の完全な分散を確実にするために、最終混合物への組み込み前に、この製品を適切な量の飼料成分と最初に混合すべきである。本発明者の製剤を、プレミックスのみとしてまたは最終混合物に組み込まれるプレミックスとして給餌することができる。推奨される用量レベルは、連続14日にわたる毎日の給餌で体重1kg当たり本発明者の製剤40mgである。
【0147】
また、飲料システムにより、水中の本発明者の製剤を搬送することもできる。あるいは、ブロメラインを使用して等価な経口ドレンチを作ることができ、この等価な経口ドレンチは添加剤と共に製剤化され、液体中での再構成を必要とする。離乳後の下痢を予防するために、この等価な経口ドレンチを、離乳日(下痢の予期される発症の1〜2日前)に単回のみの経口用量(125mg)として投与することができる。離乳前の下痢を予防するために、特定の飼養場の問題の期間に応じて、62.5mgの単回経口用量を2〜5日齢で投与することができる。3〜7日後に反復投与が必要な場合がある。処置として、疾患の症状が現れると、この等価な経口ドレンチをすぐに投与することができる(62.5mgまたは125mgのいずれか)。
【0148】
あるいは、ブロメラインを使用して等価の飼料添加剤を作ることができ、例えば、ブタ飼料に添加され得る粉末として等価の飼料添加物を作ることができる。製品の完全な分散を確実にするために、最終混合物への組み込み前に、この製品を適切な量の飼料成分と最初に混合すべきである。この等価の飼料添加剤を、プレミックスのみとしてまたは最終混合物に組み込まれるプレミックとして給餌することができる。推奨される用量レベルは、連続14日にわたる毎日の給餌で体重1kg当たりブロメライン20mgである。
【0149】
あるいは、本発明者の製剤を、錠剤およびカプセルならびにヒトに適したその他の剤形として提供することができる。
【0150】
当業者は、様々な適応症用に本発明者の製剤を調整することができる。例えば、本発明者の製剤を、生産動物(ウシ、ブタ等)での下痢(scour)およびヒトでの下痢(diarrhea)の予防および処置のために使用することができる。また、本発明者の製剤を使用して、炎症を軽減することにより腸の健康を改善することもできる。あるいは、本発明者の製剤を処方して、生産動物における飼料摂取の増加を促進し、結果として体重増加および飼料転換効率を促進することができる。本発明者の製剤を使用して、動物飼料中での抗生物質の必要性およびヒトへの急性投与の必要性を低下させることができる。また、本発明者の製剤を使用してヒトの炎症性腸疾患を寛解させることもできる。
【0151】
発明の態様
態様1
抗下痢に有効な量のブロメラインを含み、腸溶性ポリマーを実質的に含まない動物用経口製剤。
態様2
抗下痢に有効な量のブロメラインを含み、フタル酸塩(pthalate)を実質的に含まない動物用経口製剤。
態様3
前記フタル酸塩が酢酸フタル酸セルロースを含む、態様2に記載の動物用経口製剤。
態様4
抗下痢に有効な量のブロメラインとキレート剤とを含む動物用経口製剤。
態様5
前記キレート剤がEDTAを含む、態様4に記載の動物用経口製剤。
態様6
抗下痢に有効な量のブロメラインと、前記ブロメラインの水への溶解性を改善するのに有効な量の乳化剤とを含む動物用経口製剤。
態様7
前記乳化剤がレシチンを含む、態様6に記載の動物用経口製剤。
態様8
クエン酸を更に含む態様7に記載の動物用経口製剤。
態様9
カルボキシメチルセルロースを含む抗下痢経口剤形。
態様10
ブロメラインを更に含む態様9に記載の剤形。
態様11
前記経口剤形が飲料または経口ドレンチである、態様10に記載の剤形。
態様12
前記剤形が動物用剤形である、態様10に記載の剤形。
態様13
ヒト、動物または魚における抗微生物剤耐性の腸内病原性微生物の増殖を予防する方法であって、(a)腸内病原性微生物に感染しやすいヒト、動物または魚を同定すること、次いで、(b)前記ヒト、動物または魚が前記腸内病原性微生物により下痢になるのを予防するのに有効な量のブロメラインを前記ヒト、動物または魚に経口投与することであり、この経口投与により、前記ヒト、動物または魚は前記腸内病原性微生物にもはや感染しやすくなく、前記ヒト、動物または魚に、前記腸内病原性微生物による下痢を処置するためにまたは予防するために抗微生物に有効な量の抗微生物剤を投与しない、経口投与すること、を含む方法。
態様14
ヒト、動物または魚における腸内病原性微生物の増殖を予防する方法であって、(a)腸内病原性微生物に感染しやすいヒト、動物または魚を同定すること、次いで、(b)前記ヒト、動物または魚が前記腸内病原性微生物により病気になるのを予防するのに有効な量のブロメラインを前記ヒト、動物または魚に経口投与することであり、この経口投与により、前記ヒト、動物または魚は前記腸内病原性微生物にもはや感染しやすくなく、前記ヒト、動物または魚に、前記腸内病原性微生物による前記感染を処置するためにまたは予防するために抗微生物に有効な量の抗微生物剤を投与しない、経口投与すること、を含む方法。
態様15
前記剤形が動物飼料である、態様2に記載の剤形。
そのため、本発明者は、本発明の法律上の適用範囲が本明細書に列挙した具体例によって画定されず、法定の特許請求の範囲およびこの許容される等価物で画定されることを意図する。
図1
図2
図3
図4