(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
繊維状充填材が一方向材であり、該繊維状充填材の充填方向に対する前記複合材料の、JIS K7017に準拠して測定される23℃での略垂直方向の曲げ強度が60MPa以上である、請求項3記載の複合材料。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明の複合材料は、シクロオレフィンモノマーを含む重合性組成物を型内で塊状重合させて得られるシクロオレフィン系樹脂の成形体であり、繊維状充填材を含有することを一つの特徴とする。
【0008】
上記本発明の複合材料は、例えば本発明の製造方法により製造することができる。本発明の製造方法は、
型内に繊維状充填材を載置する工程(1)、
本発明の重合性組成物を該繊維状充填材に含浸させる工程(2)、
繊維状充填材に含浸させた該重合性組成物を塊状重合させて、該重合性組成物が硬化した複合材料を得る工程(3)、並びに
該複合材料を脱型する工程(4)、を含む方法である。
【0009】
重合性組成物
本発明の重合性組成物は、シクロオレフィンモノマー、メタセシス重合触媒、ラジカル発生剤、ジイソシアネート化合物及び多官能(メタ)アクリレート化合物、並びに所望により配合される任意成分を、公知の方法に従って、適宜混合することにより調製される。
【0010】
前記任意成分としては、活性剤、活性調節剤、エラストマー及び酸化防止剤等が挙げられる。
【0011】
まず、重合性組成物に含有される各成分について説明する。
【0012】
シクロオレフィンモノマー
シクロオレフィンモノマーは、分子内に脂環式構造と炭素−炭素二重結合とを有する化合物である。
【0013】
シクロオレフィンモノマーを構成する脂環式構造としては、単環、多環、縮合多環、橋かけ環およびこれらの組み合わせ多環などが挙げられる。脂環式構造を構成する炭素数に格別な制限はないが、通常4〜30個、好ましくは5〜20個、より好ましくは5〜15個である。
【0014】
シクロオレフィンモノマーとしては、単環シクロオレフィンモノマーや、ノルボルネン系モノマーなどが挙げられ、ノルボルネン系モノマーが好ましい。ノルボルネン系モノマーは、ノルボルネン環構造を分子内に有するシクロオレフィンモノマーである。これらは、アルキル基、アルケニル基、アルキリデン基、アリール基などの炭化水素基や、極性基などによって置換されていてもよい。また、ノルボルネン系モノマーは、ノルボルネン環の二重結合以外に、二重結合を有していてもよい。
【0015】
単環シクロオレフィンモノマーとしては、シクロブテン、シクロペンテン、シクロオクテン、シクロドデセン、シクロペンタジエン、1,5−シクロオクタジエンなどが挙げられる。
【0016】
ノルボルネン系モノマーの具体例としては、ジシクロペンタジエン、メチルジシクロペンタジエンなどのジシクロペンタジエン類;
テトラシクロ[6.2.1.1
3,6.0
2,7]ドデカ−4−エン、9−エチリデンテトラシクロ[6.2.1.1
3,6.0
2,7]ドデカ−4−エン、9−フェニルテトラシクロ[6.2.1.1
3,6.0
2,7]ドデカ−4−エン、テトラシクロ[6.2.1.1
3,6.0
2,7]ドデカ−9−エン−4−カルボン酸、テトラシクロ[6.2.1.1
3,6.0
2,7]ドデカ−9−エン−4,5−ジカルボン酸無水物などのテトラシクロドデセン類;
2−ノルボルネン、5−エチリデン−2−ノルボルネン、5−ビニル−2−ノルボルネン、5−フェニル−2−ノルボルネン、アクリル酸5−ノルボルネン−2−イル、メタクリル酸5−ノルボルネン−2−イル、5−ノルボルネン−2−カルボン酸、5−ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸、5−ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸無水物などのノルボルネン類;
7−オキサ−2−ノルボルネン、5−エチリデン−7−オキサ−2−ノルボルネンなどのオキサノルボルネン類;
テトラシクロ[9.2.1.0
2,10.0
3,8]テトラデカ−3,5,7,12−テトラエン(1,4−メタノ−1,4,4a,9a−テトラヒドロ−9H−フルオレンともいう)、ペンタシクロ[6.5.1.1
3,6.0
2,7.0
9,13]ペンタデカ−4,10−ジエン、ペンタシクロ[9.2.1.0
2,10.0
3,8]ペンタデカ−5,12−ジエン、トリシクロペンタジエンなどの四環以上の環状オレフィン類;などが挙げられる。
【0017】
これらのシクロオレフィンモノマーのうち、極性基を有しないシクロオレフィンモノマーが、低吸水性の成形体を得ることができるので好ましい。またテトラシクロ[9.2.1.0
2,10.0
3,8]テトラデカ−3,5,7,12−テトラエンなどの芳香族性の縮合環を有するものを用いると重合性組成物の粘度を下げることができる。
【0018】
これらのシクロオレフィンモノマーは一種を単独で用いても良いし、二種以上を組み合わせて用いてもよい。組み合わせることで、得られるシクロオレフィン系樹脂の物性を適宜調整することができる。
なお、本発明の重合性組成物には、本発明の効果の発現が阻害されない限り、上述したシクロオレフィンモノマーと共重合可能な任意のモノマーが含まれていてもよい。
【0019】
メタセシス重合触媒
本発明に用いられるメタセシス重合触媒は、シクロオレフィンモノマーを開環重合できるものであれば特に限定されず、公知のものを使用することができる。
【0020】
本発明に用いられるメタセシス重合触媒は、遷移金属原子を中心原子として、複数のイオン、原子、多原子イオンおよび/または化合物が結合してなる錯体である。遷移金属原子としては、第5、6および8族(長周期型周期表、以下同様)の原子が使用される。それぞれの族の原子は特に限定されないが、第5族の原子としては、たとえばタンタルが挙げられ、第6族の原子としては、例えば、モリブデンやタングステンが挙げられ、第8族の原子としては、例えば、ルテニウムやオスミウムが挙げられる。これら遷移金属原子の中でも、第8族のルテニウムやオスミウムが好ましい。すなわち、本発明に使用されるメタセシス重合触媒としては、ルテニウム又はオスミウムを中心原子とする錯体が好ましく、ルテニウムを中心原子とする錯体がより好ましい。ルテニウムを中心原子とする錯体としては、カルベン化合物がルテニウムに配位してなるルテニウムカルベン錯体が好ましい。ここで、「カルベン化合物」とは、メチレン遊離基を有する化合物の総称であり、(>C:)で表されるような電荷のない2価の炭素原子(カルベン炭素)を持つ化合物をいう。ルテニウムカルベン錯体は、塊状開環重合時の触媒活性に優れるため、得られる重合体には未反応のモノマーに由来する臭気が少なく、生産性良く良質な重合体が得られる。また、酸素や空気中の水分に対して比較的安定であって、失活しにくいので、大気下でも使用可能である。メタセシス重合触媒は、一種類のみを使用しても良く、複数の種類を組み合わせて使用しても良い。
【0021】
ルテニウムカルベン錯体としては、下記一般式(1)又は一般式(2)で表されるものが挙げられる。
【0023】
上記一般式(1)及び(2)において、R
1及びR
2は、それぞれ独立して、水素原子;ハロゲン原子;又はハロゲン原子、酸素原子、窒素原子、硫黄原子、リン原子もしくは珪素原子を含んでいてもよい炭素数1〜20の有機基;であり、これらの基は、置換基を有していてもよく、また、互いに結合して環を形成していてもよい。R
1及びR
2が互いに結合して環を形成した例としては、フェニルインデニリデン基などの、置換基を有していてもよいインデニリデン基が挙げられる。
【0024】
ハロゲン原子、酸素原子、窒素原子、硫黄原子、リン原子もしくは珪素原子を含んでいてもよい炭素数1〜20の有機基の具体例としては、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数2〜20のアルケニル基、炭素数2〜20のアルキニル基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数2〜20のアルケニルオキシ基、炭素数2〜20のアルキニルオキシ基、炭素数6〜20のアリールオキシ基、炭素数1〜8のアルキルチオ基、カルボニルオキシ基、炭素数1〜20のアルコキシカルボニル基、炭素数1〜20のアルキルスルホニル基、炭素数1〜20のアルキルスルフィニル基、炭素数1〜20のアルキルスルホン酸基、炭素数6〜20のアリールスルホン酸基、ホスホン酸基、炭素数6〜20のアリールホスホン酸基、炭素数1〜20のアルキルアンモニウム基、及び炭素数6〜20のアリールアンモニウム基等を挙げることができる。これらの、ハロゲン原子、酸素原子、窒素原子、硫黄原子、リン原子もしくは珪素原子を含んでいてもよい炭素数1〜20の有機基は、置換基を有していてもよい。置換基の例としては、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜10のアルコキシ基、及び炭素数6〜10のアリール基等を挙げることができる。
【0025】
X
1及びX
2は、それぞれ独立して、任意のアニオン性配位子を示す。アニオン性配位子とは、中心金属原子から引き離されたときに負の電荷を持つ配位子であり、例えば、ハロゲン原子、ジケトネート基、置換シクロペンタジエニル基、アルコキシル基、アリールオキシ基、カルボキシル基などを挙げることができる。
【0026】
L
1及びL
2は、ヘテロ原子含有カルベン化合物又はヘテロ原子含有カルベン化合物以外の中性電子供与性化合物を表す。ヘテロ原子含有カルベン化合物及びヘテロ原子含有カルベン化合物以外の中性電子供与性化合物は、中心金属から引き離されたときに中性の電荷を持つ化合物である。触媒活性向上の観点からヘテロ原子含有カルベン化合物が好ましい。ヘテロ原子とは、周期律表第15族及び第16族の原子を意味し、具体的には、窒素原子、酸素原子、リン原子、硫黄原子、ヒ素原子、及びセレン原子などを挙げることができる。これらの中でも、安定なカルベン化合物が得られる観点から、窒素原子、酸素原子、リン原子、及び硫黄原子が好ましく、窒素原子が特に好ましい。
【0027】
前記ヘテロ原子含有カルベン化合物としては、下記一般式(3)又は(4)で示される化合物が好ましく、触媒活性向上の観点から、下記一般式(3)で示される化合物が特に好ましい。
【0029】
上記一般式(3)及び(4)中、R
3、R
4、R
5及びR
6は、それぞれ独立して、水素原子;ハロゲン原子;又はハロゲン原子、酸素原子、窒素原子、硫黄原子、リン原子もしくは珪素原子を含んでいてもよい炭素数1〜20個の有機基;を表す。ハロゲン原子、酸素原子、窒素原子、硫黄原子、リン原子もしくは珪素原子を含んでいてもよい炭素数1〜20の有機基の具体例は、上記一般式(1)及び(2)の場合と同様である。
また、R
3、R
4、R
5及びR
6は任意の組合せで互いに結合して環を形成していてもよい。
【0030】
なお、本発明の効果がより一層顕著になることから、R
5及びR
6が水素原子であることが好ましい。また、R
3及びR
4は、置換基を有していてもよいアリール基が好ましく、置換基として炭素数1〜10のアルキル基を有するフェニル基がより好ましく、メシチル基が特に好ましい。
【0031】
前記中性電子供与性化合物としては、例えば、酸素原子、水、カルボニル類、エーテル類、ニトリル類、エステル類、ホスフィン類、ホスフィナイト類、ホスファイト類、スルホキシド類、チオエーテル類、アミド類、イミン類、芳香族類、環状ジオレフィン類、オレフィン類、イソシアニド類、及びチオシアネート類等が挙げられる。
【0032】
上記一般式(1)及び(2)において、R
1、R
2、X
1、X
2、L
1及びL
2は、それぞれ単独で、及び/又は任意の組合せで互いに結合して、多座キレート化配位子を形成してもよい。
【0033】
また、本発明で用いるルテニウムカルベン錯体としては、上記一般式(1)又は(2)で表される化合物の中でも、本発明の効果がより顕著になるという点より、上記一般式(1)で表される化合物が好ましく、中でも、以下に示す一般式(5)又は一般式(6)で表される化合物であることがより好ましい。
【0036】
上記一般式(5)中、Zは、酸素原子、硫黄原子、セレン原子、NR
12、PR
12又はAsR
12であり、R
12は、水素原子;ハロゲン原子;又はハロゲン原子、酸素原子、窒素原子、硫黄原子、リン原子もしくは珪素原子を含んでいてもよい炭素数1〜20の有機基;であるが、本発明の効果がより一層顕著になることから、Zとしては酸素原子が好ましい。
【0037】
なお、R
1、R
2、X
1及びL
1は、上記一般式(1)及び(2)の場合と同様であり、それぞれ単独で、及び/又は任意の組み合わせで互いに結合して、多座キレート化配位子を形成しても良いが、X
1及びL
1が多座キレート化配位子を形成せず、かつ、R
1及びR
2は互いに結合して環を形成していることが好ましく、置換基を有していてもよいインデニリデン基であることがより好ましく、フェニルインデニリデン基であることが特に好ましい。
また、ハロゲン原子、酸素原子、窒素原子、硫黄原子、リン原子又は珪素原子を含んでいてもよい炭素数1〜20の有機基の具体例としては、上記一般式(1)及び(2)の場合と同様である。
【0038】
上記一般式(5)中、R
7及びR
8は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数2〜20のアルケニル基、又は炭素数6〜20のヘテロアリール基で、これらの基は、置換基を有していてもよく、また、互いに結合して環を形成していてもよい。置換基の例としては、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜10のアルコキシ基又は炭素数6〜10のアリール基を挙げることができ、環を形成する場合の環は、芳香環、脂環およびヘテロ環のいずれであってもよいが、芳香環を形成することが好ましく、炭素数6〜20の芳香環を形成することがより好ましく、炭素数6〜10の芳香環を形成することが特に好ましい。
【0039】
上記一般式(5)中、R
9、R
10及びR
11は、それぞれ独立して、水素原子;ハロゲン原子;又はハロゲン原子、酸素原子、窒素原子、硫黄原子、リン原子もしくは珪素原子を含んでいてもよい炭素数1〜20の有機基;であり、これらの基は、置換基を有していてもよく、互いに結合して環を形成していてもよい。また、ハロゲン原子、酸素原子、窒素原子、硫黄原子、リン原子もしくは珪素原子を含んでいてもよい炭素数1〜20の有機基の具体例としては、上記一般式(1)及び(2)の場合と同様である。
R
9、R
10及びR
11は、水素原子又は炭素数1〜20のアルキル基であることが好ましく、水素原子又は炭素数1〜3のアルキル基であることが特に好ましい。
【0040】
なお、上記一般式(5)で表わされる化合物の具体例及びその製造方法としては、例えば、国際公開第03/062253号(特表2005−515260)に記載のもの等が挙げられる。
【0043】
上記一般式(6)中、mは、0又は1である。mは1が好ましく、その場合、Qは、酸素原子、窒素原子、硫黄原子、メチレン基、エチレン基又はカルボニル基であり、好ましくはメチレン基である。
【0045】
は、単結合または二重結合であり、好ましくは単結合である。
【0046】
R
1、X
1、X
2及びL
1は、上記一般式(1)及び(2)の場合と同様であり、それぞれ単独で、及び/又は任意の組み合わせで互いに結合して、多座キレート化配位子を形成しても良いが、X
1、X
2及びL
1が多座キレート化配位子を形成せず、かつ、R
1は水素原子であることが好ましい。
【0047】
R
13〜R
21は、水素原子;ハロゲン原子;又はハロゲン原子、酸素原子、窒素原子、硫黄原子、リン原子もしくは珪素原子を含んでいてもよい炭素数1〜20の有機基;であり、これらの基は、置換基を有していてもよく、互いに結合して環を形成していてもよい。また、ハロゲン原子、酸素原子、窒素原子、硫黄原子、リン原子又は珪素原子を含んでいてもよい炭素数1〜20の有機基の具体例としては、上記一般式(1)及び(2)の場合と同様である。
R
13は、好ましくは炭素数1〜20のアルキル基、より好ましくは炭素数1〜3のアルキル基であり、R
14〜R
17は、好ましくは水素原子であり、R
18〜R
21は、好ましくは水素原子又はハロゲン原子である。
【0048】
なお、上記一般式(6)で表わされる化合物の具体例及びその製造方法としては、例えば、国際公開第11/079799(特表2013−516392)に記載のもの等が挙げられる。
【0049】
また、上記一般式(1)で表される化合物としては、上記一般式(5)又は一般式(6)で表される化合物のほか、以下の化合物(7)も好適に用いることができる。化合物(7)において、PCy
3はトリシクロヘキシルホスフィンを示し、Mesはメシチル基を示す。
【0051】
メタセシス重合触媒の使用量は、反応に使用する全シクロオレフィンモノマー1モルに対して、好ましくは0.005ミリモル以上であり、より好ましくは0.01〜50ミリモル、さらに好ましくは0.015〜20ミリモルである。
【0052】
ラジカル発生剤
ラジカル発生剤は、加熱によってラジカルを発生し、それによりシクロオレフィン系樹脂において架橋反応を誘起する作用を有する。ラジカル発生剤が架橋反応を誘起する部位は、主にシクロオレフィン系樹脂の炭素−炭素二重結合であるが、飽和結合部分でも架橋が生ずることがある。
【0053】
ラジカル発生剤としては、有機過酸化物、ジアゾ化合物および非極性ラジカル発生剤が挙げられる。有機過酸化物としては、例えば、t−ブチルヒドロペルオキシド、p−メンタンヒドロペルオキシド、クメンヒドロペルオキシドなどのヒドロペルオキシド類;ジ−t−ブチルペルオキシド、ジクミルペルオキシド、t−ブチルクミルペルオキシドなどのジアルキルペルオキシド類;ジプロピオニルペルオキシド、ベンゾイルペルオキシドなどのジアシルペルオキシド類;2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルペルオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルペルオキシ)−3−ヘキシン、1,3−ジ(t−ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼンなどのペルオキシケタール類;t−ブチルペルオキシアセテート、t−ブチルペルオキシベンゾエートなどのペルオキシエステル類;t−ブチルペルオキシイソプロピルカルボナート、ジ(イソプロピルペルオキシ)ジカルボナートなどのペルオキシカルボナート類;t−ブチルトリメチルシリルペルオキシドなどのアルキルシリルペルオキシド;などが挙げられる。中でも、特に塊状重合におけるメタセシス重合反応に対する障害が少ない点で、ジアルキルペルオキシドが好ましい。
【0054】
ジアゾ化合物としては、例えば、4,4'−ビスアジドベンザル(4−メチル)シクロヘキサノン、4,4'−ジアジドカルコン、2,6−ビス(4'−アジドベンザル)シクロヘキサノン、2,6−ビス(4'−アジドベンザル)−4−メチルシクロヘキサノン、4,4'−ジアジドジフェニルスルホン、4,4'−ジアジドジフェニルメタン、2,2'−ジアジドスチルベンなどが挙げられる。
【0055】
非極性ラジカル発生剤としては、2,3−ジメチル−2,3−ジフェニルブタン、2,3−ジフェニルブタン、1,4−ジフェニルブタン、3,4−ジメチル−3,4−ジフェニルヘキサン、1,1,2,2−テトラフェニルエタン、2,2,3,3−テトラフェニルブタン、3,3,4,4−テトラフェニルヘキサン、1,1,2−トリフェニルプロパン、1,1,2−トリフェニルエタン、トリフェニルメタン、1,1,1−トリフェニルエタン、1,1,1−トリフェニルプロパン、1,1,1−トリフェニルブタン、1,1,1−トリフェニルペンタン、1,1,1−トリフェニル−2−プロペン、1,1,1−トリフェニル−4−ペンテン、1,1,1−トリフェニル−2−フェニルエタンなどが挙げられる。
【0056】
重合性組成物におけるラジカル発生剤の量としては、使用する全シクロオレフィンモノマー100質量部に対して、通常、0.1〜10質量部、好ましくは0.5〜5質量部である。ラジカル発生剤が少なすぎると、架橋反応が不十分になって複合材料の曲げ強度が低下し、一方、ラジカル発生剤が多すぎると、架橋反応が過大になり複合材料が脆くなる傾向がある。
【0057】
ジイソシアネート化合物
ジイソシアネート化合物としては、例えば、4,4’−ジイソシアン酸メチレンジフェニル(MDI)、トルエン−2,4−ジイソシアネート、4−メトキシ−1,3−フェニレンジイソシアネート、4−イソプロピル−1,3−フェニレンジイソシアネート、4−クロル−1,3−フェニレンジイソシアネート、4−ブトキシ−1,3−フェニレンジイソシアネート、2,4−ジイソシアネートジフェニルエーテル、1,4−フェニレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート(XDI)、1,5−ナフタレンジイソシアネート、ベンジジンジイソシアネート、o−ニトロベンジジンジイソシアネート、及び4,4’−ジイソシアネートジベンジルなどの芳香族ジイソシアネート化合物;メチレンジイソシアネート、1,4−テトラメチレンジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、及び1,10−デカメチレンジイソシアネートなどの脂肪族ジイソシアネート化合物;4−シクロヘキシレンジイソシアネート、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、1,5−テトラヒドロナフタレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水添MDI、及び水添XDIなどの脂環式ジイソシアネート化合物;などや、これらのジイソシアネート化合物と低分子量のポリオールやポリアミンを、末端がイソシアネートとなるように反応させて得られるポリウレタンプレポリマー;などが挙げられる。また、これらの化合物をイソシアヌレート体、ビューレット体、アダクト体、又はポリメリック体とした、多官能のイソシアネート基を有するもので、従来使用されている公知のものが、特に限定なく使用できる。そのようなものとしては、例えば、2,4−トルイレンジイソシアネートの二量体、トリフェニルメタントリイソシアネート、トリス−(p−イソシアネートフェニル)チオフォスファイト、多官能芳香族イソシアネート化合物、多官能芳香族脂肪族イソシアネート化合物、多官能脂肪族イソシアネート化合物、脂肪酸変性多官能脂肪族イソシアネート化合物、ブロック化多官能脂肪族イソシアネート化合物などの多官能ブロック型イソシアネート化合物、ポリイソシアネートプレポリマーなどが挙げられる。これらの中でも、入手容易性、及び取り扱い容易性に優れることから、多官能非ブロック型イソシアネート化合物である、芳香族ジイソシアネート化合物、脂肪族ジイソシアネート化合物、及び脂環式ジイソシアネート化合物が好適に用いられる。
これらの化合物は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0058】
なお、多官能ブロック型イソシアネート化合物とは、分子内の少なくとも2つのイソシアネート基を活性水素含有化合物と反応させて、常温では不活性としたものである。当該イソシアネート化合物は、一般的にはアルコール類、フェノール類、ε−カプロラクタム、オキシム類、及び活性メチレン化合物類等のブロック剤によりイソシアネート基がマスクされた構造を有する。多官能ブロック型イソシアネート化合物は、一般的に常温では反応しないため保存安定性に優れるが、通常140〜200℃の加熱によりイソシアネート基が再生され、優れた反応性を示しうる。
【0059】
ジイソシアネート化合物は、分子内の活性水素反応性基が、併用する多官能(メタ)アクリレート化合物、好ましくは、多官能(メタ)アクリレート化合物に存在する水酸基や後述する繊維状充填材表面の水酸基、シクロオレフィン系樹脂の水酸基等と化学結合を形成し、結果として、シクロオレフィン系樹脂と繊維状充填材との密着性を向上させる役目を果たすと考えられる。
【0060】
ジイソシアネート化合物は、それぞれ単独で、又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。本発明の重合性組成物へのジイソシアネート化合物の配合量は、全シクロオレフィンモノマー100質量部に対して、好ましくは0.5〜20質量部、より好ましくは1〜15質量部、さらに好ましくは2〜10質量部である。この範囲にあれば、樹脂の強度や耐熱性も制御しつつ、繊維状充填材と樹脂の密着性を両立でき、好ましい。
【0061】
多官能(メタ)アクリレート化合物
さらに本発明においては、繊維状充填材の密着性を高め、得られる複合材料の機械的強度を向上させる観点から、多官能(メタ)アクリレート化合物を用いる。当該化合物をジイソシアネート化合物と共に用いることで、ジイソシアネート化合物の密着性向上剤又は密着性付与剤としての機能が相乗的に高められるものと推定される。
【0062】
多官能(メタ)アクリレート化合物の好ましい例としては、以下の一般式:
【0064】
(式中、RはH又はCH
3を表し、mは0〜3の整数であり、nは0又は1である。)で示される化合物が挙げられる。より具体的には、多官能アクリレート化合物としては、エチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート及びネオペンチルグリコールジメタクリレートが好ましい例として挙げられる。
【0065】
多官能アクリレート化合物は、それぞれ単独で、又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。それらの化合物の配合量としては、使用する全シクロオレフィンモノマー100質量部に対して、好ましくは0.5〜20質量部、より好ましくは1〜15質量部、さらに好ましくは2〜10質量部である。この範囲にあれば、ジイソシアネート化合物の密着性向上剤又は密着性付与剤としての機能が相乗的に高められ、シクロオレフィン系樹脂と繊維状充填材との密着性が優れたものとなり、好ましい。
【0066】
任意成分
本発明の重合性組成物には、例えば、活性剤、活性調節剤、エラストマー及び酸化防止剤等の任意成分が含まれていても良い。
【0067】
活性剤は、上述したメタセシス重合触媒の共触媒として作用し、該触媒の重合活性を向上させる化合物である。活性剤としては、例えば、エチルアルミニウムジクロリド、ジエチルアルミニウムクロリドなどのアルキルアルミニウムハライド;これらのアルキルアルミニウムハライドの、アルキル基の一部をアルコキシ基で置換したアルコキシアルキルアルミニウムハライド;有機スズ化合物;などが用いられる。活性剤の使用量は、特に限定されないが、通常、重合性組成物で使用する全メタセシス重合触媒1モルに対して、0.1〜100モルが好ましく、より好ましくは1〜10モルである。
【0068】
活性調節剤は、2以上の反応原液を混合して重合性組成物を調製し、型内に注入して重合を開始させる際に、注入途中で重合が開始することを防止するために用いられる。
【0069】
メタセシス重合触媒として周期表第5族または第6族の遷移金属の化合物を用いる場合の活性調節剤としては、メタセシス重合触媒を還元する作用を持つ化合物などが挙げられ、アルコール類、ハロアルコール類、エステル類、エーテル類、ニトリル類などを用いることができる。中でもアルコール類およびハロアルコール類が好ましく、ハロアルコール類が特に好ましい。
【0070】
アルコール類の具体例としては、n−プロパノール、n−ブタノール、n−ヘキサノール、2−ブタノール、イソブチルアルコール、イソプロピルアルコール、t−ブチルアルコールなどが挙げられる。ハロアルコール類の具体例としては、1,3−ジクロロ−2−プロパノール、2−クロロエタノール、1−クロロブタノールなどが挙げられる。
【0071】
メタセシス重合触媒として、特にルテニウムカルベン錯体を用いる場合の活性調節剤としては、ルイス塩基化合物が挙げられる。ルイス塩基化合物としては、トリシクロペンチルホスフィン、トリシクロヘキシルホスフィン、トリフェニルホスフィン、トリフェニルホスファイト、n−ブチルホスフィンなどのリン原子を含むルイス塩基化合物;n−ブチルアミン、ピリジン、4−ビニルピリジン、アセトニトリル、エチレンジアミン、N−ベンジリデンメチルアミン、ピラジン、ピペリジン、イミダゾールなどの窒素原子を含むルイス塩基化合物;などが挙げられる。また、ビニルノルボルネン、プロペニルノルボルネンおよびイソプロペニルノルボルネンなどの、アルケニル基で置換されたノルボルネンは、前記のシクロオレフィンモノマーであると同時に、活性調節剤としても働く。これらの活性調節剤の使用量は、用いる化合物によって適宜調整すればよい。
【0072】
エラストマーとしては、例えば、天然ゴム、ポリブタジエン、ポリイソプレン、スチレン−ブタジエン共重合体(SBR)、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体(SBS)、スチレン−イソプレン−スチレン共重合体(SIS)、エチレン−プロピレン−ジエンターポリマー(EPDM)、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)およびこれらの水素化物などが挙げられる。エラストマーを重合性組成物に溶解させて用いることにより、その粘度を調節することができる。また、エラストマーを添加することで、得られる複合材料の耐衝撃性を改良できる。エラストマーの使用量は、重合性組成物中の全シクロオレフィンモノマー100質量部に対して好ましくは0.5〜20質量部、より好ましくは2〜10質量部である。
【0073】
酸化防止剤としては、フェノール系、リン系、アミン系などの各種のプラスチック・ゴム用酸化防止剤が挙げられる。
【0074】
重合性組成物の調製
本発明の重合性組成物は、公知の方法に従って、上記各成分を適宜混合することにより調製されるが、反応直前に2以上の反応原液を混合することにより調製してもよい。当該反応原液は、1液のみでは塊状重合しないが、全ての液を混合すると、各成分を所定の割合で含む重合性組成物となるように、上記した各成分を2以上の液に分けて調製される。かかる2以上の反応原液の組み合わせとしては、用いるメタセシス重合触媒の種類により、下記(a)、(b)の二通りが挙げられる。
【0075】
(a):前記メタセシス重合触媒として、単独では重合反応活性を有しないが、活性剤を併用することで重合反応活性を発現するものを用いることができる。この場合は、シクロオレフィンモノマーおよび活性剤を含む反応原液(A)と、シクロオレフィンモノマーおよびメタセシス重合触媒を含む反応原液(B)とを用い、これらを混合することで重合性組成物を得ることができる。さらに、シクロオレフィンモノマーを含み、かつメタセシス重合触媒および活性剤のいずれも含まない反応原液(C液)を併用してもよい。
【0076】
(b):また、メタセシス重合触媒として、単独で重合反応活性を有するものを用いる場合は、シクロオレフィンモノマーを含む反応原液(i)と、メタセシス重合触媒を含む反応原液(ii)とを混合することで重合性組成物を得ることができる。このとき反応原液(ii)としては、通常、メタセシス重合触媒を少量の不活性溶媒に溶解または分散させたものが用いられる。かかる溶媒としては、例えば、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、トリメチルベンゼン等の芳香族炭化水素;メチルエチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、2−ヘプタノン、4−ヒドロキシ−4−メチル−2−ペンタノン等のケトン類;テトラヒドロフラン等の環状エーテル類;ジエチルエーテル、ジクロロメタン、ジメチルスルホキシド、酢酸エチルなどが挙げられるが、芳香族炭化水素が好ましく、トルエンが特に好ましい。
【0077】
ラジカル発生剤、ジイソシアネート化合物、多官能(メタ)アクリレート化合物及び前記任意成分は、前記反応原液のいずれに含有させてもよいし、又は、前記反応原液以外の混合液の形で添加してもよい。
【0078】
後述のように、本発明の製造方法は、公知の樹脂成型方法を適用して行うことができるが、上記反応原液の混合は、適用する樹脂成型方法に応じて適宜混合装置を選択し、それを使用して行うのが好ましい。当該装置としては、例えば、反応射出成型法で一般的に用いられる衝突混合装置のほか、ダイナミックミキサーやスタティックミキサーなどの低圧混合機などが挙げられる。反応原液をそれらの装置に導入すると直ちに混合されて重合性組成物が形成されるが、後述の樹脂成型方法においては、得られた重合性組成物はそのまま型内に注入されることになる。
【0079】
複合材料の製造方法
本発明の製造方法は、所望する複合材料の形状に応じて、適宜、公知の樹脂成型方法を適用して行うことができる。当該樹脂成型方法としては、例えば、反応射出成型法(RIM法)、レジントランスファー成型法(RTM法)及びインフュージョン成型法が挙げられる。
【0080】
工程(1)では、型内に繊維状充填材を載置する。
【0081】
繊維状充填材
本発明に使用される繊維状充填材としては、本発明分野で使用されるものであれば特に限定されない。入手性および有用性の観点から、繊維状充填材としては、好ましくは、炭素繊維及びガラス繊維からなる群より選択される1種以上である。炭素繊維とガラス繊維とを併用する場合、両者の混合比率は限定されないが、混合効果の観点から、炭素繊維1質量部に対してガラス繊維0.1〜10質量部が好ましい。
【0082】
本発明に用いられる繊維状充填材の形態は、特に限定されず、繊維状充填材を一方向に引き揃えた一方向材、織物、不織布、マット、ニット、組み紐、ロービング、チョップド等から適宜選択すればよい。中でも、一方向材、織物、ロービング等の連続繊維の形態であるのが好ましく、一方向材がより好ましい。一方向材は、重合性組成物の含浸性を高度に向上でき、また、繊維の割合が高いため、得られる複合材料の機械的強度を高度に向上させることができ、好適である。
織物の形態としては、従来公知のものが利用可能であり、例えば、平織、繻子織、綾織、3軸織物などの繊維が交錯する織り構造の全てが利用できる。また、織物の形態としては、2次元だけでなく、織物の厚み方向に繊維が補強されているステッチ織物や3次元織物等も利用できる。
【0083】
繊維状充填材を織物等で使用する場合、通常、繊維束糸条として利用する。繊維束糸条1本中のフィラメント数としては、特に限定はないが、好ましくは1,000〜100,000本、より好ましくは5,000〜50,000本、さらに好ましくは10,000〜30,000本の範囲である。
【0084】
本発明で用いる炭素繊維としては、特に限定はなく、例えば、アクリル系、ピッチ系、レーヨン系等の、従来公知の方法で製造される各種の炭素繊維を任意に用いることができる。これらのなかでも、ポリアクリロニトリル繊維を原料として製造されるPAN系炭素繊維は、メタセシス開環重合反応の阻害を起こさず、得られる複合材料において機械的強度及び耐熱性等の特性を向上させることができ、好適に用いられる。
【0085】
炭素繊維は、その弾性率が高いほど剛性を維持できるため、炭素繊維強化複合材料の厚みを薄くでき、好ましい。一方、弾性率が高すぎると引張伸度が低下する場合がある。炭素繊維としては、樹脂含浸ストランド引張試験(JIS R−7601)による引張弾性率が、200〜400GPaの範囲にあるものが好ましく、220〜300GPaの範囲にあるものがより好ましい。また、炭素繊維としては、引張伸度が高いものが好ましい。引張伸度としては、好ましくは1.7%以上、より好ましくは1.85%以上、特に好ましくは2%以上である。かかる引張伸度に上限は特にないが、通常、2.5%以下である。炭素繊維の引張伸度は、前記樹脂含浸ストランド引張試験により測定することができる。炭素繊維の引張伸度が高いほど、繊維が強くて扱いやすく、得られる複合材料の機械的強度が高くなり、好ましい。
【0086】
炭素繊維のマトリックス樹脂との密着性をより向上させる観点から、炭素繊維の表面に、少なくとも、カルボキシル基又は水酸基等の活性水素含有基を適当量存在させるのが好ましい。炭素繊維の活性水素含有基の量は、X線光電子分光法により測定される表面酸素濃度(O/C)で定量することができる。炭素繊維の活性水素含有基の量としては、O/Cで、0.02〜0.2であるのが好ましい。この範囲にあれば、シクロオレフィンモノマー又はジイソシアネート化合物に含有される活性水素反応性基の炭素繊維に対する作用性が高まり、炭素繊維表面の酸化の程度も適度であり、好適である。炭素繊維の活性水素含有基の量としては、O/Cで、より好ましくは0.04〜0.15、さらに好ましくは0.06〜0.1である。
【0087】
活性水素含有基を炭素繊維に導入する方法は、特に限定されず、通常用いられる方法を適宜採用すればよい。オゾン法や酸溶液中での電解酸化などがあるが、好ましくは溶液中の酸化反応が経済的に優れてよい。この際、活性水素含有基の量は、電流量や温度、酸性浴中の滞在時間、酸性度などで適宜調整可能である。
【0088】
炭素繊維の表面状態は、特に限定されず、平滑でも凹凸であってもよい。アンカー効果が期待できることから、凹凸であるのが好ましい。この凹凸の程度は適宜選択すればよい。炭素繊維表面への凹凸の導入は、例えば、上記した溶液中の酸化反応の際に同時に行うことができる。
【0089】
炭素繊維の断面形状としては、特に限定はないが、実質的に円形であるのが好ましい。断面形状が円形であると、重合性組成物を含浸させる際、フィラメントの再配列が起こりやすくなり、繊維間への重合性組成物の浸み込みが容易になる。また、繊維束の厚みを薄くすることが可能となり、ドレープ性に優れた複合材料を得やすい利点がある。なお、断面形状が実質的に円形であるとは、その断面の外接円半径Rと内接円半径rとの比(R/r)を変形度として定義した場合に、この変形度が1.1以下であることをいう。
【0090】
炭素繊維の長さは、用途に応じて適宜選択すればよく、短繊維及び長繊維のいずれのものも用いることができる。得られる複合材料の機械的強度をより高める観点から、炭素繊維の長さは、通常、1cm以上、好ましくは2cm以上、より好ましくは3cm以上であり、特に連続繊維である炭素繊維を用いるのが好ましい。
【0091】
本発明に用いる炭素繊維は、予めサイジング剤を付着してなるものである必要はないが、繊維毛羽立ちによる成形後物性低下の不具合や、マトリックス樹脂であるシクロオレフィンポリマーと炭素繊維との密着性をより向上させる観点から、予めサイジング剤を付着してなる炭素繊維を用いるのが好ましい。
【0092】
サイジング剤としては、特に限定はなく、公知のものを用いることができる。サイジング剤としては、例えば、エポキシ樹脂;ウレタン樹脂;ビニルエステル樹脂;ポリアミド樹脂;ナイロン樹脂、ポリエチレンやポリプロピレンなどポリオレフィン樹脂;ポリエステル樹脂;及びフェノール樹脂;からなる群から選ばれる少なくとも1種を挙げることができる。サイジング剤としては、入手が容易であることから、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、ビニルエステル樹脂、及びポリオレフィン樹脂からなる群から選ばれる少なくとも1種が好ましく、エポキシ樹脂及び/又はビニルエステル樹脂がより好ましい。
【0093】
このようなサイジング剤の具体例としては、いずれも松本油脂製薬社製の製品として、KP-226、KP-0110、KP-136、KP-300、KP-752、及びKP-1005などの、エポキシ樹脂からなるサイジング剤;KP-2816、KP-2817、KP-2807、KP-2820、及びKP-2821などの、ウレタン樹脂からなるサイジング剤;KP-371やKP-372などの、ビニルエステル樹脂からなるサイジング剤;KP-1008などのナイロン樹脂からなるサイジング剤;P-138などのポリエチレン樹脂からなるサイジング剤;TPE-100やTPE-102などの、ポリプロピレン樹脂からなるサイジング剤;KP-880やKP-881などの、ポリエステル樹脂からなるサイジング剤;などが挙げられる。
【0094】
炭素繊維へのサイジング剤の付着は、サイジング剤を炭素繊維に接触させることにより行うことができる。その際、サイジング剤を水、又はアセトンなどの有機溶剤に分散又は溶解し、分散液又は溶液として使用するのが好ましい。サイジング剤の分散性を高め、液安定性を良好にする観点から、当該分散液又は溶液には適宜界面活性剤を添加するのが好ましい。
【0095】
炭素繊維へのサイジング剤の付着量としては、炭素繊維とサイジング剤との合計量を100質量%として、通常、0.1〜5質量%、好ましくは0.2〜3質量%、より好ましくは0.5〜2質量%である。付着量がこの範囲にあれば、適度な炭素繊維の収束性が得られ、炭素繊維の充分な耐擦過性が得られて機械的摩擦などによる毛羽の発生が抑制され、また、シクロオレフィンモノマーの含浸性が向上し、得られる複合材料にあっては機械的強度が向上し得る。
【0096】
炭素繊維とサイジング剤との接触は、ローラー浸漬法やローラー接触法など、一般に工業的に用いられている方法により適宜行うことができる。炭素繊維とサイジング剤との接触は、通常、サイジング剤の分散液又は溶液を用いて行われるため、該接触後、乾燥工程に供し、サイジング剤の分散液や溶液に含まれていた水、又は有機溶剤を除去すればよい。乾燥工程は、熱風、熱板、ローラー、各種赤外線ヒーターなどを熱媒として利用した方法などにより行うことができる。
なお、炭素繊維へのサイジング剤の付着は、前記した、炭素繊維表面への活性水素含有基の導入や凹凸の導入の後に行うのが好ましい。
【0097】
本発明に用いられるガラス繊維は、特に限定されるものではなく、例えば、連続繊維、織布及び不織布等の形状を有するものが挙げられ、種々の厚みのものが市販品として入手可能である。ガラス繊維の形状や厚みは得られる複合材料の用途に応じて適宜選択できる。
【0098】
本発明に使用されるガラス繊維の目付量は使用目的に応じて適宜選択されるが、600g/m
2以上が好ましく、600〜2000g/m
2がより好ましく、640〜1800g/m
2がさらに好ましい。ガラス繊維の目付量が過度に少ないと、隣り合うガラス繊維同士の間に隙間ができて、得られる複合材料の機械的強度が不充分となり、一方、過度に目付量が多いと可撓性が低下したり、隣り合うガラス繊維同士が重なる箇所ができて重合性組成物の含浸性を損ねる傾向がある。
【0099】
ガラス繊維は、表面を疎水化処理されていることが好ましい。疎水化処理されたガラス繊維を用いることで、得られる複合材料中にガラス繊維を均一に分散させることができ、複合材料の剛性や寸法安定性を均一にでき、さらには異方性を小さくすることができる。疎水化処理に用いられる処理剤としては、シランカップリング剤、チタネートカップリング剤、アルミニウムカップリング剤、脂肪酸、油脂、界面活性剤、ワックス、その他の高分子などが挙げられる。これらの処理剤はサイジング剤としての機能も果たしうる。
【0100】
成形型
使用する型は、所望する複合材料の形状を考慮し、適用する樹脂成型方法に従って、適宜選択すればよい。本発明の製造方法では、低粘度の反応原液を用い、比較的低温低圧で成形できるため、成形に用いる型は、必ずしも剛性の高い高価な金型である必要はなく、金属製の型に限らず、樹脂製の型、または単なる型枠を用いることができる。
【0101】
繊維状充填材は、適用する樹脂成型方法に応じ、選択された型内に当該方法の実施に好適な様式で適宜載置すればよい〔工程(1)〕。工程(2)を行う前に、適宜、型内を窒素ガスなどの不活性ガスで置換しておくか、又は型内を減圧しておいてもよい。
【0102】
工程(2)では、所定の重合性組成物を、型内に載置された繊維状充填材に含浸させる。
【0103】
RIM法
本法では、特に限定されないが、通常、割型構造、すなわち、コア型とキャビティー型を有する成形型が用いられる。コア型とキャビティー型は、所望する複合材料の形状にあった空隙部(キャビティー)を形成するように作製される。繊維状充填材は、該成形型の空隙部に載置される。重合性組成物の繊維状充填材への含浸は型内に重合性組成物を注入して行われる。本発明の重合性組成物は低粘度であり基材への含浸性に優れるので、繊維状充填材に均一に含浸させることができる。
【0104】
RIM法による2液反応型樹脂の成形では、成形時に型内へ原料(重合性組成物)を注入する圧力が、樹脂を注入する射出成形の1/30〜1/500程度である。このため、型内への充填性が非常に良好であり、多様な形状を容易に成形することが可能である。型内への注入圧が非常に小さいため、型内に発生する内部圧力も非常に小さく、このため、射出成形に使用する金型に比べて、型に要求される強度が大幅に低減されることとなり、型の設計が容易になる。従って、大型成形品の型も設計が容易となり、樹脂製配管部材の展開が困難な大口径の配管部材への展開も容易となる。また、常温域での成形が可能であるという特徴を有する。
【0105】
重合性組成物を成形型のキャビティー内に充填する際の充填圧力(注入圧)は、通常0.01〜10MPa、好ましくは0.02〜5MPaである。また、型締圧力は通常0.01〜10MPaの範囲内である。
【0106】
RTM法
RTM(レジントランスファーモールディング)法では、繊維状充填材を敷き詰めた合わせ型に重合性組成物を注入することにより、該組成物を繊維状充填材に含浸させる。
RTM法による成形は、RIM法と同様に型内に発生する圧力が小さいことに加え、反応原液を混合する際、RIM法ほど混合圧力を必要としないため、混合設備を比較的簡易化することが可能である。また、一般に重合の速度もRIM法よりも緩やかであることから含浸の面で有利となることが多い。
【0107】
重合性組成物を成形型のキャビティー内に充填する際の充填圧力(注入圧)は、通常0.01〜10MPa、好ましくは0.02〜5MPaである。また、型締圧力は通常0.01〜10MPaの範囲内である。
【0108】
インフュージョン成型法
インフュージョン成形法では、真空圧(0.1〜100Pa程度)によって、重合性組成物を型内に充填し、繊維状充填材に含浸させる。具体的には、成形型の上に繊維状充填材を置き、所望により、離型シート及び樹脂拡散材を配置した状態で、繊維状充填材を気密性フィルムと粘着性のシーラントで覆い、気密空間内の空気を吸引排気し、減圧状態にする。この減圧状態で、気密空間内に重合性組成物を注入して、重合性組成物を繊維状充填材に含浸させる。この方法は、片面を気密性フィルムで覆うため金型が半分で済むだけでなく、汚れない、臭気のない成形法で、大型成形品、厚物成形品等、高強度の成形品の成形に適している。離型シート、樹脂拡散材、気密性フィルム、シーラント、重合性配合液導入口は配合液に接する側の最外層として成形中重合性組成物に容易に溶解しないことが好ましい。これら重合性組成物側最外層の材質としてはポリエチレン、ポリプロピレン、ナイロン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリメチル(メタ)アクリレート、シリコーン樹脂などが挙げられるほか、金属部材も用いることができる。
【0109】
本発明の製造方法にはさらに、上記方法のほか、改良された方法として、ライト−レジントランスファーモールディング(L−RTM)成形法を適用することもできる。基本的には、インフュージョン成形法とRTM法を組み合わせた成形方法であって、凹凸で構成された型の凹型に繊維状充填材を載置し、凸型を被せ、外周フランジ部と型の中央部にて減圧する。型の内部を真空(0.1〜100Pa程度)にして型締めを行い、外周から重合性組成物を注入し、該組成物を繊維状充填材に含浸させる。余分な重合性組成物は型中央のポットに溜まる。重合性組成物は、外周から押し込む状態となり、該組成物の注入は、減圧と加圧により行われることになる。重合性組成物を成形型のキャビティー内に充填する際の充填圧力(注入圧)は、通常0.01〜10MPa、好ましくは0.02〜5MPaである。また、型締圧力は通常0.01〜10MPaの範囲内である。
【0110】
その他の含浸法
その他の含浸法として、例えば、フィラメントワインディング法などにより任意の円筒にドライの状態で繊維状充填材を巻き付けたものを用意し、該繊維状充填材を重合性組成物中に浸漬して該組成物を含浸させる方法、該繊維状充填材に対し重合性組成物をスプレーして該組成物を含浸させる方法、該繊維状充填材に対し前記反応原液の組み合わせで個々の反応原液を個別にスプレーし、スプレーと同時に反応原液を混合して重合性組成物を含浸させる方法などを用いることができる。
【0111】
繊維状充填材に含浸させる重合性組成物と繊維状充填材との量的関係としては、重合性組成物1質量部に対して繊維状充填材が0.6〜4質量部であることが好ましく、0.8〜3質量部であることがより好ましく、1〜2質量部であることがさらに好ましい。かかる範囲にあれば、得られる複合材料の曲げ強度が良好に発揮され、好適である。
【0112】
なお、重合性組成物を成形型に注入等して繊維状充填材に含浸せしめ、そのまま所定時間維持してもよい。維持時間としては、通常、1〜200分程度が好ましい。そのようにして維持することにより、重合性組成物を繊維状充填材の隅々にまで充分行き渡らせることができる。
【0113】
工程(3)では、繊維状充填材に含浸させた重合性組成物を塊状重合させて、該重合性組成物が硬化した複合材料を得る。
【0114】
塊状重合は、重合性組成物が注入等された型を加熱することで行われる。塊状重合時の温度、即ち型温度としては、最高温度が90℃以上300℃以下であることが好ましい。該最高温度は、より好ましくは100〜270℃、さらに好ましくは120〜250℃である。また、塊状重合時の最低温度としては、好ましくは40〜90℃、より好ましくは50〜85℃である。塊状重合の開始温度は、通常、0〜40℃の範囲、好ましくは10〜30℃の範囲である。塊状重合は、重合性組成物を型内に注入等するか、又は反応原液を所定の混合装置に導入した後、好ましくは20秒〜60分、より好ましくは20秒〜40分で完了するが、そのまま60〜200分程度維持してもよい。また、加熱は一段階で行っても二段階以上の複数段階で行ってもよい。二段階で加熱する場合、例えば、一段階目の加熱を、型温度を好ましくは60〜110℃、より好ましくは70〜100℃とし、加熱時間を好ましくは10〜120分、より好ましくは20〜100分とし、二段階目の加熱を、型温度を好ましくは111〜250℃、より好ましくは120〜200℃とし、加熱時間を好ましくは10〜120分、より好ましくは20〜100分とする態様が挙げられる。
【0115】
塊状重合の終了後、例えば、型枠を型開きして脱型することにより〔工程(4)〕、複合材料を得ることができる。本明細書において脱型とは、用いた成形型から、得られた複合材料を取り出すことをいう。製造直後の複合材料は高温状態にあるため、脱型は、常温まで冷却した後に行うのが好ましい。
【0116】
複合材料
以上のようにして、本発明の複合材料が得られる。即ち、本発明の複合材料は、繊維状充填材に含浸した、シクロオレフィンモノマー、メタセシス重合触媒、ラジカル発生剤、ジイソシアネート化合物及び多官能(メタ)アクリレート化合物を含む重合性組成物が硬化したものである。本発明の複合材料の強度は、繊維状充填材の充填方向に対する該複合材料の略垂直方向の曲げ強度として評価することができる。具体的な評価方法は後述の通りである。
【0117】
本発明において、23℃における上記曲げ強度として例えば、60MPa以上である複合材料は、十分な機械的強度を有する複合材料として評価できるため、好ましい。上記略垂直方向の曲げ強度として65MPa以上である複合材料がより好ましく、70MPa以上である複合材料がさらに好ましい。複合材料において、繊維状充填材と重合物との接着が不十分な場合、上記略垂直方向の曲げ強度が顕著に低下する。
【0118】
本発明の複合材料は、特定の成分を有する本発明の重合性組成物を用いて製造されるので、複合材料から生じる臭気が抑制されている。従って、本発明によれば、複合材料の製造に従事する者の作業環境を大きく改善することができる。複合材料の臭気の有無は、例えば後述の複数のパネラーによる評価で判定することができる。
【0119】
本発明の複合材料中の繊維状充填材の量は、好ましくは40〜85質量%、より好ましくは45〜80質量%、さらに好ましくは50〜65質量%である。繊維状充填材の量がかかる範囲にあれば、所望の曲げ強度が複合材料により充分に発揮される。本発明においては、繊維状充填材及び重合性組成物の質量の合計と、製造された複合材料の質量は同一であるとみなせるので、本発明の複合材料中の繊維状充填材の量は、繊維状充填材の充填量及び重合性組成物の充填量、または複合材料の比重などから算出することができる。
【実施例】
【0120】
以下、本発明を実施例に基づいてさらに詳細に説明するが、本発明はかかる実施例に何ら限定されるものではない。
【0121】
[実施例1]インフュージョン成形法
離型処理された内寸長さ300mm、幅250mmのクロムメッキSS400平板に、長さ250mm、幅200mmに切断した日精株式会社製一方向炭素繊維(U−200C)(目付200g/m
2)を5枚同一方向に積層して繊維状充填材とした。離型シート及び樹脂拡散材を配置した状態で、繊維状充填材を気密性フィルムと気密シーラントで覆って気密空間を形成した。オイルポンプを用いて気密空間の内部を100Paまで減圧し、一体物を得た。ここで使用した繊維状充填材は、一方向材を同一方向に積層しているので、一方向材である。
【0122】
20℃に設定したRIMモノマー(日本ゼオン社製)100質量部、トリメチロールプロパントリメタクリレート(TMPT) 5質量部、4,4’−ジイソシアン酸メチレンジフェニル 5質量部、ジ−t−ブチルペルオキシド(化薬アクゾ社製、製品名「カヤブチルD(登録商標)」)1.7質量部、及びメタセシス重合触媒として前記化合物(7) 0.04質量部からなる重合性組成物32gを上記で得られた一体物(以後「型」と称す)内一杯に導入し繊維に含浸せしめた。なお、その際、型は40℃に設定した。減圧ラインと組成物導入ラインを閉塞し、型を1時間放置した。引き続き型を90℃に昇温して0.5時間放置したのち、さらに200℃まで昇温し1時間放置した。なお、上記のRIMモノマーの組成は、ジシクロペンタジエン約90質量部及びトリシクロペンタジエン約10質量部からなり、メタセシス重合触媒の使用量は、これらの全シクロオレフィンモノマー1モルに対して0.055ミリモルであった。
【0123】
型を常温まで冷却したのち硬化した複合材料を脱型した。得られた複合材料の臭気を下記の方法で評価した結果、臭気は「無し」と判定した。次いで、JIS K7017に準拠して、得られた複合材料の23℃で0°方向の曲げ強度を測定した結果、1440MPaであった。さらに、同条件で90°方向の曲げ強度を測定した結果、82MPaであった。製造条件及び評価結果を表1及び表2に示す。
【0124】
[実施例2〜5]
表1に示すように製造条件を変更したこと以外は実施例1と同様の方法で複合材料を製造した。製造条件及び評価結果を表1及び2に示す。
【0125】
[比較例1〜4]
表1に示すように製造条件を変更したこと以外は実施例1と同様の方法で複合材料を製造した。製造条件及び評価結果を表1及び2に示す。
【0126】
【表1】
【0127】
【表2】
【0128】
上記の表より、実施例の方法で製造された本発明の複合材料は、いずれも臭気が無く、かつ90°方向(略垂直方向)で所望の曲げ強度を有する機械的強度に優れた複合材料であることが分かった。
一方、ジイソシアネート化合物を使用しなかった方法(比較例1)で製造された複合材料は、略垂直方向の曲げ強度は60MPaを超えていたものの、臭気が生じていた。さらに、多官能アクリレート化合物のTMPTを使用しなかった方法(比較例2〜4)で製造された複合材料は、臭気は無かったものの、略垂直方向の曲げ強度はいずれも60MPaをはるかに下回るものであった。
【0129】
[臭気の評価]
得られた複合材料の臭気の有無を次のようにして評価した。
本発明分野の研究開発又は製造に数年以上従事する男性5名をパネラーに選んだ。上記の各実施例及び比較例において、200℃昇温1時間放置後、常温まで冷却した複合材料を取り出す際に、目、鼻腔、咽頭いずれかの粘膜に違和感を感じたかどうかについて、各パネラーに尋ねた。1名以上のパネラーが違和感を感じた場合、その複合材料は臭気「有り」と判定し、全てのパネラーが違和感を感じなかった場合、その複合材料は臭気「無し」と判定した。