特許第6920265号(P6920265)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6920265
(24)【登録日】2021年7月28日
(45)【発行日】2021年8月18日
(54)【発明の名称】建設機械
(51)【国際特許分類】
   E02F 9/00 20060101AFI20210805BHJP
   B60K 13/04 20060101ALI20210805BHJP
   B62D 25/10 20060101ALI20210805BHJP
【FI】
   E02F9/00 N
   B60K13/04 D
   B62D25/10 J
【請求項の数】4
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2018-181869(P2018-181869)
(22)【出願日】2018年9月27日
(65)【公開番号】特開2020-51129(P2020-51129A)
(43)【公開日】2020年4月2日
【審査請求日】2020年9月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005522
【氏名又は名称】日立建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002457
【氏名又は名称】特許業務法人広和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中野 真
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 智之
(72)【発明者】
【氏名】除村 直樹
【審査官】 深田 高義
(56)【参考文献】
【文献】 特開2017−172114(JP,A)
【文献】 特開2016−69964(JP,A)
【文献】 特開2018−53579(JP,A)
【文献】 特開2013−76264(JP,A)
【文献】 特開2010−106777(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02F 9/00
B60K 13/04
B62D 25/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持構造体をなし前側に作業装置が取付けられた車体フレームと、
前記車体フレームの後側に設けられたカウンタウエイトと、
前記カウンタウエイトの前側に位置して前記車体フレーム上に左,右方向に延びる横置き状態に設けられたエンジンと、
前記エンジンの長さ方向の一側に位置して排気ガスを処理するマフラ装置と、
前記車体フレームの左,右両側に立設された左,右の側面板および前記左,右の側面板の上端に配置され前記エンジンと前記マフラ装置とを含む搭載機器をメンテナンスするための開口部を有する上面板からなる建屋カバーと、
前記エンジンの上方に位置して前記上面板の前記開口部を覆い前記カウンタウエイト側を回動支点とし前記エンジン側を自由端として開閉可能なエンジンカバーと、
前記マフラ装置の上方に位置して前記上面板の前記開口部を覆い前記側面板側を回動支点とし前記エンジン側を自由端として開閉可能なマフラカバーとからなる建設機械において、
前記エンジンカバーと前記マフラカバーとの間には、前記マフラカバーを開閉するときに足場となるマフラカバー開閉用ステップが設けられ、
前記エンジンカバーには、前記エンジンカバーが閉じられた状態では前記マフラカバー開閉用ステップへの進入を規制する進入規制部材が設けられていることを特徴とする建設機械。
【請求項2】
前記建屋カバーの前記上面板は、前記開口部の前側に前記エンジンカバーを開閉するときに足場となるエンジンカバー開閉用ステップを備えていることを特徴とする請求項1に記載の建設機械。
【請求項3】
前記進入規制部材は、前記エンジンカバーを閉じた状態で前記マフラカバー開閉用ステップの上方に位置して前記エンジンカバーから前記マフラカバーに向けて延び前記エンジンカバーを開閉するときに把持される取っ手からなることを特徴とする請求項1に記載の建設機械。
【請求項4】
前記進入規制部材は、前記エンジンカバーを開放した状態では前記マフラカバー開閉用ステップへの進入を許可し、かつ前記マフラカバー開閉用ステップから前記カウンタウエイト側への進入を規制することを特徴とする請求項1に記載の建設機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジン等の搭載機器を覆うエンジンカバーを備えた建設機械に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、建設機械としての油圧ショベルは、自走可能な下部走行体と、下部走行体上に旋回可能に設けられた上部旋回体と、上部旋回体の前側に俯仰の動作が可能に設けられた作業装置とにより構成されている。
【0003】
上部旋回体は、支持構造体をなす車体フレームと、車体フレームの後側に設けられたカウンタウエイトと、カウンタウエイトの前側に位置して車体フレーム上に左,右方向に延びる横置き状態に設けられたエンジンと、エンジンの長さ方向の一側に位置して排気ガスを処理するマフラ装置と、車体フレームの左,右両側に立設された左,右の側面板および前記左,右の側面板の上端に配置され前記エンジンと前記マフラ装置とを含む搭載機器をメンテナンスするための開口部を有する上面板からなる建屋カバーと、エンジンの上方に位置して上面板の開口部を覆いカウンタウエイト側を回動支点としエンジン側を自由端として開閉可能なエンジンカバーと、マフラ装置の上方に位置して上面板の開口部を覆い側面板側を回動支点としエンジン側を自由端として開閉可能なマフラカバーとを含んで構成されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2017−172114号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、作業者は、建屋カバーの上面板に上ってエンジンカバーおよびマフラカバーを開放し、エンジン等の搭載機器のメンテナンス作業を行う。この場合、エンジンカバーおよびマフラカバーの開放作業は、建屋カバーの上面板のうち予め決められた場所で行う必要がある。しかし、作業者がこの予め決められた場所とは異なる場所でエンジンカバー等の開放作業を行った場合には、エンジンカバーおよび周囲の他の部材が作業者に接触して作業者の姿勢が不安定になる虞がある。
【0006】
本発明は上述した従来技術の問題に鑑みなされたもので、本発明の目的は、適切な場所でエンジンカバーおよびマフラカバーの開閉作業を行わせることができる建設機械を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決するため、本発明の建設機械は、支持構造体をなし前側に作業装置が取付けられた車体フレームと、前記車体フレームの後側に設けられたカウンタウエイトと、前記カウンタウエイトの前側に位置して前記車体フレーム上に左,右方向に延びる横置き状態に設けられたエンジンと、前記エンジンの長さ方向の一側に位置して排気ガスを処理するマフラ装置と、前記車体フレームの左,右両側に立設された左,右の側面板および前記左,右の側面板の上端に配置され前記エンジンと前記マフラ装置とを含む搭載機器をメンテナンスするための開口部を有する上面板からなる建屋カバーと、前記エンジンの上方に位置して前記上面板の前記開口部を覆い前記カウンタウエイト側を回動支点とし前記エンジン側を自由端として開閉可能なエンジンカバーと、前記マフラ装置の上方に位置して前記上面板の前記開口部を覆い前記側面板側を回動支点とし前記エンジン側を自由端として開閉可能なマフラカバーとからなっている。
【0008】
そして、本発明が採用する構成の特徴は、前記エンジンカバーと前記マフラカバーとの間には、前記マフラカバーを開閉するときに足場となるマフラカバー開閉用ステップが設けられ、前記エンジンカバーには、前記エンジンカバーが閉じられた状態では前記マフラカバー開閉用ステップへの進入を規制する進入規制部材が設けられている。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、作業者に適切な場所でエンジンカバーおよびマフラカバーの開閉作業をさせることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の実施形態に係る油圧ショベルを示す正面図である。
図2】上部旋回体等を拡大して示す平面図である。
図3】上部旋回体のカウンタウエイト、エンジンカバー、およびマフラカバー等を左斜め上方からみた斜視図である。
図4図3中のエンジンカバーを開放した状態を示す斜視図である。
図5】本発明の変形例に係るエンジンカバーに設けられた進入規制部材を示す図3と同様の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態に係る建設機械の代表例として、クローラ式の油圧ショベルを例に挙げ、添付図面に従って詳細に説明する。
【0012】
図1において、建設機械としての油圧ショベル1は、自走可能な下部走行体2と、下部走行体2上に旋回可能に搭載され、下部走行体2と共に車体を構成する上部旋回体3と、上部旋回体3の前側に俯仰の動作が可能に設けられ土砂の掘削作業等を行う作業装置4とにより構成されている。
【0013】
上部旋回体3は、支持構造体をなし前側に作業装置4が取付けられた車体フレーム5と、車体フレーム5の後側に設けられ、作業装置4との重量バランスをとるカウンタウエイト6と、車体フレーム5の前部左側に設けられオペレータが搭乗するキャブ7と、カウンタウエイト6の前側に位置して車体フレーム5上に左,右方向に延びる横置き状態に設けられたエンジン8と、エンジン8の右側(長さ方向の一側)に位置して排気ガスを処理するマフラ装置11と、エンジン8とマフラ装置11等の搭載機器を収容する建屋カバー13と、建屋カバー13に設けられエンジン8の上方を覆う開閉可能なエンジンカバー21と、建屋カバー13に設けられマフラ装置11の上方を覆う開閉可能なマフラカバー18とを含んで構成されている。
【0014】
エンジン8は、車体フレーム5の後側でカウンタウエイト6の前側に位置して車体フレーム5上に左,右方向に延びる横置き状態で搭載されている。このエンジン8は、後述の機械室17内で車体フレーム5上に防振状態で支持されている。そして、エンジン8の左側(長さ方向の他側)には、図示しない熱交換器に冷却風を供給するための冷却ファン(図示せず)が設けられている。一方、エンジン8の右側(長さ方向の一側)には、図示しない油圧ポンプが設けられている。そして、油圧ポンプの上方には、後述のマフラ装置11が設けられている。
【0015】
作動油タンク9は、作業装置4を挟んでキャブ7とは左,右方向の反対側に設けられている。即ち、作動油タンク9は、車体フレーム5の右側に設けられている。この作動油タンク9は、下部走行体2および作業装置4等に設けられたアクチュエータを駆動するための作動油を貯えるものである。一方、燃料タンク10は、作動油タンク9の右側に隣接して車体フレーム5上に設けられている。この燃料タンク10は、エンジン8を駆動するための燃料を貯えるものである。
【0016】
マフラ装置11は、エンジン8の右側(長さ方向の一側)に配置されている。マフラ装置11は、後述する機械室17の右側で油圧ポンプの上方に位置して車体フレーム5上に設けられている。マフラ装置11は、排気管を介してエンジン8に接続され、エンジン8から排出される排気ガスに含まれる一酸化炭素(CO)、炭化水素(HC)等を酸化して除去すると共に、排気ガスに含まれる窒素酸化物(NOx)を浄化する。また、マフラ装置11は、排気ガスの騒音を低減する。マフラ装置11で浄化処理された排気ガスは、尾管12を介して外部へと排出される。
【0017】
建屋カバー13は、車体フレーム5の左,右両側に立設された左,右の側面板14,15および左,右の側面板14,15の上端に配置されエンジン8とマフラ装置11とを含む搭載機器をメンテナンスするための開口部16Aを有する上面板16からなっている。
【0018】
左側面板14は、キャブ7とカウンタウエイト6との間に配設されている。左側面板14は、熱交換器に対面して設けられ、熱交換器をメンテナンスするときに開閉可能となっている。一方、右側面板15は、燃料タンク10とカウンタウエイト6との間に配設されている。右側面板15は、油圧ポンプに対面して設けられ、油圧ポンプをメンテナンスするときに開閉可能となっている。
【0019】
上面板16は、左,右の側面板14,15の上端に位置してカウンタウエイト6、キャブ7、および作動油タンク9の間に配設されている。上面板16には、カウンタウエイト6の前側にエンジン8とマフラ装置11とを含む搭載機器をメンテナンスするための開口部16Aが形成されている。上面板16は、作業者がエンジン8等のメンテナンスをするときに上る部分である。
【0020】
この場合、上面板16は、開口部16Aの前側に後述のエンジンカバー21を開閉するときに足場となるエンジンカバー開閉用ステップ16Bを備えている。エンジンカバー開閉用ステップ16Bは、上面板16のうち前,後方向に開閉される後述のエンジンカバー21の前側に配設されている。即ち、エンジンカバー開閉用ステップ16Bは、エンジンカバー21のヒンジ21Bと対面した位置に配設されている。
【0021】
機械室17は、建屋カバー13によって覆われ、エンジン8、熱交換器、マフラ装置11を含む搭載機器を収容している。この機械室17の上側は、開口部16Aにより開口しており、常時は後述のエンジンカバー21とマフラカバー18とにより覆われ(閉塞され)ている。機械室17には、左側から順に、熱交換器、エンジン8、マフラ装置11が並んで配置されている。
【0022】
次に、機械室17の上方を覆うマフラカバー18、マフラカバー開閉用ステップ20、およびエンジンカバー21について説明する。
【0023】
マフラカバー18は、マフラ装置11の上方に位置して上面板16の開口部16Aを覆っている。即ち、マフラカバー18は、機械室17の右側を覆っている。このマフラカバー18は、マフラ装置11をメンテナンスするときに開放されるもので、右端側18A(右側面板15側の端部)にヒンジ18Bが設けられている。これにより、マフラカバー18は、右端側18A(右側面板15側の端部)を回動支点とし、左端側18C(エンジン8側の端部)を自由端として開閉可能となっている。
【0024】
マフラカバー18の左端側18C(自由端側)には、マフラカバー18を開閉するときに把持されるマフラカバー用取っ手19が上方に向けて突出している。このマフラカバー用取っ手19は、後述するエンジンカバー21のエンジンカバー用取っ手22よりも後側(カウンタウエイト6側)に設けられている。作業者は、後述のマフラカバー開閉用ステップ20を足場として、マフラカバー用取っ手19を把持することによりマフラカバー18の開閉操作を行うことができる。
【0025】
マフラカバー開閉用ステップ20は、マフラカバー18の左側に隣接して上面板16の開口部16Aを前,後方向に跨いで設けられている。即ち、マフラカバー開閉用ステップ20は、後述のエンジンカバー21とマフラカバー18との間に位置して、上面板16のエンジンカバー開閉用ステップ16Bからカウンタウエイト6に向けて延びている。マフラカバー開閉用ステップ20は、マフラカバー用取っ手19によりマフラカバー18の開閉操作を行うときの足場となる部分である。
【0026】
マフラカバー開閉用ステップ20は、作業者が安定した姿勢でマフラカバー18の開閉操作を行うことができるように、マフラカバー18の開閉方向(左,右方向)の自由端側である左端側18Cに隣接して配設されている。マフラカバー開閉用ステップ20は、後述のエンジンカバー21が閉じているときにはエンジンカバー用取っ手22により進入が規制されている。また、マフラカバー開閉用ステップ20は、エンジン8、マフラ装置11のメンテナンスをするときに作業者の足場にもなる。
【0027】
エンジンカバー21は、マフラカバー開閉用ステップ20の左側に隣接して設けられている。即ち、エンジンカバー21は、エンジン8の上方に位置して機械室17の左側を覆っている。このエンジンカバー21は、エンジン8をメンテナンスするときに開放されるもので、後端側21A(カウンタウエイト6側の端部)にヒンジ21Bが設けられている。これにより、エンジンカバー21は、後端側21A(カウンタウエイト6側の端部)を回動支点とし、前端側21C(エンジン8側の端部)を自由端として開閉可能となっている。
【0028】
次に、本発明の進入規制部材を構成するエンジンカバー用取っ手22について説明する。
【0029】
エンジンカバー用取っ手22は、エンジンカバー21を開閉するときに把持されるもので、エンジンカバー21の前端側21C(自由端側)に設けられている。図2図3に示すように、エンジンカバー用取っ手22は、エンジンカバー21を閉じた状態でマフラカバー開閉用ステップ20の上方に位置して、エンジンカバー21からマフラカバー18に向けて延びている。即ち、エンジンカバー用取っ手22は、エンジンカバー21から右側(マフラカバー開閉用ステップ20側)に向けて突出している。
【0030】
図2に示すように、エンジンカバー用取っ手22とマフラカバー18との間の寸法Aは、作業者が足を入れることができない程度に小さい間隔となっている。これにより、エンジンカバー用取っ手22は、エンジンカバー21が閉じられた状態ではマフラカバー開閉用ステップ20の上方に位置してマフラカバー開閉用ステップ20への進入を規制している。
【0031】
従って、エンジンカバー21を開放するときには、作業者をエンジンカバー21の前側に位置するエンジンカバー開閉用ステップ16Bに導くことができる。即ち、作業者は、必然的にエンジンカバー21の自由端側であるエンジンカバー21の前側でエンジンカバー21の開放動作をすることになる。これにより、作業者に安定した姿勢でエンジンカバー21の開閉操作をさせることができる。
【0032】
昇降ステップ23は、作動油タンク9の前側に設けられている。この昇降ステップ23は、上部旋回体3の右前側に位置して、車体フレーム5と作動油タンク9との間で階段状に設けられている。昇降ステップ23は、作業者が建屋カバー13の上面板16に昇降するときの通路となっている。
【0033】
本実施形態による油圧ショベル1は、上述の如き構成を有するもので、次にその動作について説明する。
【0034】
まず、オペレータはキャブ7に搭乗してエンジン8を作動させる。そして、オペレータが、キャブ7内に設けられた走行用の操作レバー(図示せず)を操作することにより、油圧ショベル1を走行させることができ、作業用の操作レバー(図示せず)を操作することにより、作業装置4を用いて土砂の掘削作業を行うことができる。
【0035】
次に、機械室17内に配置されたエンジン8、マフラ装置11等の搭載機器のメンテナンスを行う場合について説明する。
【0036】
まず、作業者は、昇降ステップ23から建屋カバー13の上面板16上に上がる。次に、作業者は、エンジンカバー21のエンジンカバー用取っ手22を把持して、エンジンカバー21を上方に持上げる。これにより、ヒンジ21Bを回動支点としてエンジンカバー21を開放することができる。
【0037】
この場合、エンジンカバー用取っ手22は、エンジンカバー21とマフラカバー18との間に配設されたマフラカバー開閉用ステップ20上に延びている。従って、作業者は、エンジンカバー用取っ手22が邪魔になり、マフラカバー開閉用ステップ20に進入することができない。これにより、作業者は、必然的にエンジンカバー21の前側に位置するエンジンカバー開閉用ステップ16Bを足場としてエンジンカバー21の開放作業を行うことになる。
【0038】
エンジンカバー21を開放した後には、エンジンカバー用取っ手22がマフラカバー開閉用ステップ20上から外れるので、作業者はマフラカバー開閉用ステップ20に進入可能となる。従って、作業者は、エンジンカバー開閉用ステップ16Bからマフラカバー開閉用ステップ20に移動しながらエンジンカバー21をカウンタウエイト6側に完全に開放することができる。この場合、エンジンカバー用取っ手22は、作業者よりもカウンタウエイト6側に位置している。従って、マフラカバー開閉用ステップ20に移動した作業者は、エンジンカバー用取っ手22によりカウンタウエイト6側への移動が抑制される。
【0039】
そして、作業者は、マフラカバー開閉用ステップ20を足場としながら、マフラカバー用取っ手19を把持してマフラカバー18を上方に持上げる。これにより、ヒンジ18Bを回動支点としてマフラカバー18を開放することができる。その後、作業者は、建屋カバー13の上面板16およびマフラカバー開閉用ステップ20を足場として、エンジン8、マフラ装置11等の搭載機器のメンテナンスを行うことができる。
【0040】
マフラカバー18を開放するときおよび搭載機器のメンテナンスをするときには、エンジンカバー用取っ手22がカウンタウエイト6の前側、かつマフラカバー開閉用ステップ20の後端側の上方に位置して、マフラカバー開閉用ステップ20からカウンタウエイト6側への進入を抑制している。これにより、エンジンカバー用取っ手22は、作業者が不用意にカウンタウエイト6側(上部旋回体3の後端側)に移動するのを防止している。そして、搭載機器のメンテナンスが終了した場合には、マフラカバー18およびエンジンカバー21を閉塞する。
【0041】
かくして、本実施形態の建設機械によれば、支持構造体をなし前側に作業装置4が取付けられた車体フレーム5と、前記車体フレーム5の後側に設けられたカウンタウエイト6と、前記カウンタウエイト6の前側に位置して前記車体フレーム5上に左,右方向に延びる横置き状態に設けられたエンジン8と、前記エンジン8の長さ方向の一側に位置して排気ガスを処理するマフラ装置11と、前記車体フレーム5の左,右両側に立設された左,右の側面板14,15および前記左,右の側面板14,15の上端に配置され前記エンジン8と前記マフラ装置11とを含む搭載機器をメンテナンスするための開口部16Aを有する上面板16からなる建屋カバー13と、前記エンジン8の上方に位置して前記上面板16の前記開口部16Aを覆い前記カウンタウエイト6側を回動支点とし前記エンジン8側を自由端として開閉可能なエンジンカバー21と、前記マフラ装置11の上方に位置して前記上面板16の前記開口部16Aを覆い前記側面板側を回動支点とし前記エンジン8側を自由端として開閉可能なマフラカバー18とからなる。
【0042】
そして、前記エンジンカバー21と前記マフラカバー18との間には、前記マフラカバー18を開閉するときに足場となるマフラカバー開閉用ステップ20が設けられ、前記エンジンカバー21には、前記エンジンカバー21が閉じられた状態では前記マフラカバー開閉用ステップ20への進入を規制する進入規制部材(エンジンカバー用取っ手22)が設けられている。これにより、エンジンカバー21を開放するときに、マフラカバー開閉用ステップ20への進入を抑制することができるので、作業者に適切な場所でエンジンカバー21の開閉作業を行わせることができる。
【0043】
また、上述した従来技術に記載された作業者の足場となるステップは、エンジンカバーにより覆われる構成となっている。しかし、本実施形態によるマフラカバー開閉用ステップ20は、エンジンカバー21とマフラカバー18との間に設けられており、エンジンカバー21により覆われていない。従って、エンジンカバー21の大きさを抑え、軽量化することが可能になり、作業者が楽にエンジンカバー21を開け閉めすることができる。また、マフラカバー開閉用ステップ20をエンジンカバー21により覆っていないので、マフラカバー開閉用ステップ20を覆うためにエンジンカバー21を高く形成する必要がない。従って、エンジンカバー21の高さを低減することが可能となり、結果としてオペレータの後方視界を良好に保つことができる。
【0044】
また、前記建屋カバー13の前記上面板16は、前記開口部16Aの前側に前記エンジンカバー21を開閉するときに足場となるエンジンカバー開閉用ステップ16Bを備えている。これにより、作業者にエンジンカバー開閉用ステップ16Bを足場として、エンジンカバー21の開閉作業を行わせることができる。
【0045】
また、前記進入規制部材は、前記エンジンカバー21を閉じた状態で前記マフラカバー開閉用ステップ20の上方に位置して前記エンジンカバー21から前記マフラカバー18に向けて延び前記エンジンカバー21を開閉するときに把持される取っ手(エンジンカバー用取っ手22)からなる。これにより、エンジンカバー21の開閉作業に用いられるエンジンカバー用取っ手22をマフラカバー開閉用ステップ20への進入の規制としているので、コストを削減させることができる。
【0046】
また、前記進入規制部材は、前記エンジンカバー21を開放した状態では前記マフラカバー開閉用ステップ20への進入を許可し、かつ前記マフラカバー開閉用ステップ20から前記カウンタウエイト6側への進入を規制する。これにより、作業者がマフラカバー開閉用ステップ20からカウンタウエイト6側(上部旋回体3の後端側)に進入(移動)するのを防止することができる。
【0047】
なお、上述した実施形態では、エンジンカバー用取っ手22を進入規制部材とした場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限らず、例えば図5に示す変形例のように、エンジンカバー用取っ手31とは別個に進入規制部材32を設けてもよい。
【0048】
また、上述した実施形態では、建設機械として、クローラ式の下部走行体2を備えた油圧ショベル1を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限らず、例えばホイール式の下部走行体を備えた油圧ショベルに適用してもよい。それ以外にも、ホイールローダ、ダンプトラック、油圧クレーン等の他の建設機械にも広く適用することができる。
【符号の説明】
【0049】
1 油圧ショベル(建設機械)
4 作業装置
5 車体フレーム
6 カウンタウエイト
8 エンジン
11 マフラ装置
13 建屋カバー
14 左側面板
15 右側面板
16 上面板
16A 開口部
18 マフラカバー
20 マフラカバー開閉用ステップ
21 エンジンカバー
22 エンジンカバー用取っ手(進入規制部材)
32 進入規制部材
図1
図2
図3
図4
図5