(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記溝部は、前記ストレインリリーフの最先端部よりも前記カテーテル本体の基端側であり、かつ、前記ハブの先端部よりも前記カテーテル本体の先端側の範囲において、前記カテーテル本体の外表面の全周に設けられる、請求項3に記載のイントロデューサー用シース。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(実施形態1)
以下、各図を参照して本実施形態に係るイントロデューサー組立体10を説明する。
【0011】
図1〜
図4は、イントロデューサー組立体10の各部を説明するための図、
図5〜
図7は、イントロデューサー用シース100を使用した治療方法の説明に供する図である。
【0012】
図2を参照して、本明細書では、イントロデューサー用シース100においてハブ(ハブ)120が配置される側(
図2中の上側)を「基端側」と称する。イントロデューサー用シース100において基端側とは反対側に位置し、生体管腔R内に導入される側(
図2中の下側)を「先端側」と称する。また、イントロデューサー用シース100が延伸する方向(
図2中の上下方向)を「軸方向」と称する。また、「先端部」とは、先端(最先端)およびその周辺を含む一定の範囲を意味し、「基端部」とは、基端(最基端)およびその周辺を含む一定の範囲を意味するものとする。
【0013】
また、
図6(A)および
図6(B)を参照して、イントロデューサー用シース100が経皮的に生体管腔Rに導入されることによって創傷した生体組織Wの部位Pのことを「創傷部位」と称する。
【0014】
図1に示すように、本実施形態に係るイントロデューサー組立体10は、イントロデューサー用シース100と、ダイレーター200と、を有している。以下、イントロデューサー用シース100およびダイレーター200について詳説する。
【0015】
イントロデューサー用シース100は、血管等の生体管腔R内に留置されて、その内腔116に、例えばカテーテル、ガイドワイヤー等の治療器具を挿通して、それらを生体管腔R内へ導入するために使用される。生体管腔R内へ導入したガイドワイヤー等を使用して、例えば、経皮的冠動脈形成術(PTCA/PCI)などの手技(以下、目的の手技)を行うことができる。経皮的冠動脈形成術のアプローチ法として、イントロデューサー用シースを足から導入するTFI(Trans Femoral intervention)や腕からイントロデューサー用シースを導入するTRI(Trans Radial
intervention)がある。
【0016】
図2および
図5(F)を参照して、イントロデューサー用シース100は、経皮的に生体管腔Rに導入されるカテーテル本体110と、カテーテル本体110の基端側に接続されたハブ120と、生体組織Wの創傷部位Pを治療可能な止血剤を有する薬剤部160と、を備える。そして、薬剤部160は、カテーテル本体110の外表面117の基端側に配置される。イントロデューサー用シース100は、ハブ120の先端部121を覆い、かつ、カテーテル本体110の基端側の所定範囲を囲むストレインリリーフ130をさらに備える。
【0017】
カテーテル本体110は、内部に内腔116が延在する略円筒形状の管状部材で構成されている。カテーテル本体110は、
図2に示すように、テーパー状の先端部111と、先端部111の基端側に位置する本体部115と、本体部115の基端側に位置し、ハブ120に連結された基端部113と、を有している。
【0018】
カテーテル本体110の構成材料としては、特に限定されないが、例えば、ポリオレフィン(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、アイオノマー、またはこれら二種以上の混合物など)、ポリオレフィンエラストマー、ポリオレフィンの架橋体、ポリ塩化ビニル、ポリアミド、ポリアミドエラストマー、ポリエステル、ポリエステルエラストマー、ポリウレタン、ポリウレタンエラストマー、フッ素樹脂、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリアセタール、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリエーテルエーテルケトンなどの高分子材料またはこれらの混合物などを用いることができる。
【0019】
カテーテル本体110の外表面117には、湿潤時に表面潤滑性を付与する親水性潤滑層170が配置されている。
【0020】
親水性潤滑層170を構成する材料は、水性溶媒との接触時に親水性及び膨潤性を示す材料である。このような材料を含む層は、カテーテル本体110を体内に挿入する際、親水性及び潤滑性(表面潤滑性)を発現する。そのため、親水性潤滑層が配置されたカテーテル本体は、円滑に体内に挿入でき、術者の操作性を向上できる。また、例えば、カテーテル本体110が血管などの体腔に挿入される場合には、その親水性及び潤滑性(表面潤滑性)により組織損傷を低減し、患者への負担を軽減できる。
【0021】
親水性潤滑層170を構成する材料は、水性溶媒との接触時に親水性及び膨潤性を示す材料であれば特に制限されず、公知の材料が使用できる。具体的には、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルメチルアクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルメチルメタクリレート、β−メチルグリシジルメタクリレート、アリルグリシジルエーテル等のエポキシ基含有単量体と、N−メチルアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、アクリルアミド等の親水性単量体との共重合体;上記親水性単量体から構成される(共)重合体;ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース等のセルロース系高分子物質;多糖類、ポリビニルアルコール、メチルビニルエーテル−無水マレイン酸共重合体、水溶性ポリアミド、ポリ(2−ヒドロキシエチル(メタ)クリレート)、ポリエチレングリコール、ポリアクリルアミド、ポリビニルピロリドン、ならびに米国特許第4100309号および特開昭59−19582号公報に記載されるポリビニルピロリドンとポリウレタンとの共重合体などが挙げられる。これらの親水性潤滑層170を構成する材料は、1種を単独で使用されてもあるいは2種以上を混合物の形態で使用してもよい。
【0022】
図2を参照して、ハブ120には、カテーテル本体110の基端部113が固定された内腔122と、内腔122に連通するサイドポート124と、が形成されている。
【0023】
サイドポート124には、可撓性を有するチューブ151(
図1を参照)の一端が液密に接続される。チューブ151の他端は、例えば三方活栓150が装着される。この三方活栓150のポートからチューブ151を介してカテーテル本体110の内腔116内に、例えば生理食塩水のような液体を注入することが可能となっている。チューブ151は、例えば、ポリ塩化ビニル製の公知のチューブで構成することができる。
【0024】
ハブ120の構成材料としては、特に限定されないが、硬質樹脂のような硬質材料が好適である。硬質樹脂の具体例としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリスチレン等が挙げられる。
【0025】
ハブ120の基端部123には、カテーテル本体110内に流れ込んだ血液が外部へ漏洩するのを防止する止血弁140を取り付けている。止血弁140は、ダイレーター本体210の挿通を可能にするクロスカット140aが形成された弾性部材により構成している。止血弁140は、略楕円形の膜状(円盤状)に形成されており、所定のキャップ145を嵌め込むことによりハブ120に対して液密に固定している。
【0026】
止血弁140の構成材料としては、特に限定されないが、例えば、弾性部材であるシリコーンゴム、ラテックスゴム、ブチルゴム、イソプレンゴム等が挙げられる。
【0027】
カテーテル本体110の基端部113は、ハブ120の連結部125aに固定されている。カテーテル本体110の基端部113とハブ120の連結部125aとは、例えば、接着剤により固定することができる。
【0028】
図2に示すように、ストレインリリーフ130は、カテーテル本体110およびハブ120に対して外嵌されている。ストレインリリーフ130は、ハブ120の先端部121を覆い、かつ、カテーテル本体110の基端側の所定範囲を囲んでいる。
【0029】
ストレインリリーフ130の構成材料としては、特に限定されないが、例えば、天然ゴム、シリコーン樹脂等が挙げられる。
【0030】
図1に示すように、ダイレーター200は、カテーテル本体110に挿通可能な管状体により構成されたダイレーター本体210と、ハブ120と接続可能に構成されたダイレーターハブ220と、を有している。
【0031】
ダイレーター200は、イントロデューサー用シース100のカテーテル本体110を生体管腔R内に挿入するときに、カテーテル本体110の折れを防いだり、皮膚の穿孔を広げたりするために用いられる。
【0032】
ダイレーター本体210は、カテーテル本体110に挿通されると、その先端部211が、カテーテル本体110の先端部111から突出した状態となる。ダイレーター本体210の先端部211は、先端側へ向けて先細るテーパー形状に形成している。
【0033】
ダイレーター本体210を構成する材料は、特に制限されず、ダイレーター本体210として従来使用されるのと同様の材料を使用できる。具体的には、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)等のポリオレフィン、ナイロン、ポリエチレンテレフタレート(PET)等のポリエステル、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)等のフッ素系ポリマーなどが挙げられる。
【0034】
ダイレーターハブ220の構成材料としては、特に限定されないが、硬質樹脂のような硬質材料が好適である。硬質樹脂の具体例としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリスチレン等が挙げられる。
【0035】
図2〜
図4を参照して、薬剤部160について詳説する。
【0036】
薬剤部160は、生体組織Wの創傷部位Pを治療可能な止血剤を有する。
【0037】
止血剤の種類は特に限定されず、例えば、トロンボプラスチン、トロンビン、メナジオン亜硫酸水素ナトリウム、アセトメナフトン、ε−アミノカプロン酸、トラネキサム酸、カルバゾクロムスルホン酸ナトリウム、アドレノクロムモノアミノグアニジンメタンスルホン酸塩などを使用できる。また、止血剤は、三洋化成工業株式会社製マツダイト(登録商標)等の販売されている外科用止血剤を使用してもよい。
【0038】
図2を参照して、薬剤部160は、カテーテル本体110の外表面117の基端側に配置される。
【0039】
カテーテル本体110の外表面117の基端側に薬剤部160が配置されることにより、生体組織Wに薬剤部160を接触させることなく、イントロデューサー用シース100を経皮的に生体管腔Rに導入し、目的の手技を行える。そして、目的の手技を終えた後に、カテーテル本体110の基端側を創傷部位Pに挿入することによって、薬剤部160の少なくとも一部を創傷部位Pに接触させることができる(
図6(A)参照)。さらに、薬剤部160の少なくとも一部を創傷部位Pに接触させた状態でカテーテル本体110の基端側を創傷部位Pから抜去することによって、薬剤部160の少なくとも一部を創傷部位Pに留置できる(
図6(B)および
図7参照)。薬剤部160は止血剤を有するから、薬剤部160の少なくとも一部を創傷部位Pに接触させるとともに留置することによって、創傷部位Pの止血を促進できる。
【0040】
さらに付言すれば、目的の手技中に止血剤を創傷部位Pに留置する方法として、例えば、次のような方法が考えられる。すなわち、管状の部材の内腔に止血剤を保持させ、カテーテル本体110を創傷部位Pに挿入する動作に連動させて、あるいは当該動作とは独立させて、当該管状の部材を創傷部位Pに挿入し、創傷部位Pに挿入された状態において当該管状の部材における止血剤の保持を解除して、止血剤を創傷部位Pに留置する方法が考えられる。管状の部材における止血剤の保持の解除は、例えば、管状の部材の内腔から止血剤を押し出すなどの方法による。
【0041】
しかしながら、管状の部材を使用した止血剤の創傷部位Pへの留置方法の場合、カテーテル本体110に加えて管状の部材を創傷部位Pに挿入することに起因して創傷部位Pが広がってしまうため、さらなる出血を招き、かえって止血しにくくなる虞がある。また、止血剤を創傷部位Pに留置するためには、管状の部材における止血剤の保持を解除する操作が必要になるため、止血剤を創傷部位Pに留置する際の手順が複雑になる。
【0042】
本実施形態に係るイントロデューサー用シース100によれば、止血剤を創傷部位Pに留置する際に創傷部位Pを過度に広げてしまうことを回避できるとともに、上述した管状の部材における止血剤の保持を解除するなどの操作が不要になる。そのため、簡便な構造および手順によって、創傷部位Pの止血を促進できる。
【0043】
薬剤部160は、ストレインリリーフ130が囲むカテーテル本体110の所定範囲に配置される。
【0044】
これにより、イントロデューサー用シース100の運搬中や目的の手技中に、他の物体や生体組織W等に薬剤部160が接触することを防止できる。そのため、創傷部位Pに薬剤部160を導入する前にイントロデューサー用シース100から薬剤部160が剥落することを防止できる。
【0045】
図3(A)および
図3(B)を参照して、ストレインリリーフ130は、カテーテル本体110の外表面117から抜去可能に構成される。
【0046】
カテーテル本体110の外表面117からストレインリリーフ130を抜去することによって、ストレインリリーフ130が囲むカテーテル本体110の所定範囲に配置された薬剤部160を容易に露出させることができる。そのため、創傷部位Pへの薬剤部160の導入作業が容易になる。
【0047】
ストレインリリーフ130は、カテーテル本体110の基端側から先端側に向かって延びてなるスリット134と、スリット134と異なる位置に配置されてなる把持部135と、を有する。把持部135を把持してカテーテル本体110から遠ざかる方向にストレインリリーフ130を引っ張ることによって、カテーテル本体110の外表面117からストレインリリーフ130を抜去できる。
【0048】
スリット134は、ストレインリリーフ130の最先端部132から基端部133に至るまで連続的に形成されている。しかしながら、スリット134の形態は、把持部135を把持してカテーテル本体110から遠ざかる方向にストレインリリーフ130を引っ張ることによって、ストレインリリーフ130をカテーテル本体110の外表面117から抜去できる限りにおいて、特に限定されない。例えば、スリット134は、ストレインリリーフ130の最先端部132から基端部133に向かって、ストレインリリーフ130の一部のみに延びていてもよい。また、ストレインリリーフ130の最先端部132から基端部133に向かって、複数のスリット134が断続的に延びていてもよい。
【0049】
把持部135は、カテーテル本体110の径方向に見て、スリット134が配置されている側とは反対側に配置されている。把持部135は、ストレインリリーフ130の先端側において、カテーテル本体110の外表面117から遠ざかる方向に向かってストレインリリーフ130から突出している。把持部135は、ストレインリリーフ130の最先端部132から基端部133に向かう方向に向かって延びている。
【0050】
図4を参照して、カテーテル本体110の外表面117とストレインリリーフ130の内表面130aとの間には空間部Vが形成されている。そして、薬剤部160は、ストレインリリーフ130の内表面130aに接触しない。
【0051】
これにより、ストレインリリーフ130に薬剤部160が貼り付くことを回避できるから、カテーテル本体110からストレインリリーフ130を抜去する際に、ストレインリリーフ130とともに薬剤部160が剥落することを防止できる。
【0052】
ストレインリリーフ130の形状は、カテーテル本体110の外表面117とストレインリリーフ130の内表面130aとの間に空間部Vが形成され、ストレインリリーフ130の内表面130aに薬剤部160が接触しない限りにおいて特に限定されない。本実施形態では、ストレインリリーフ130は、先端領域Y1と、先端領域Y1に接続してなり、先端領域Y1よりもカテーテル本体110の基端側に配置され、カテーテル本体110の外表面117から遠ざかる方向に傾斜しつつ延びている中間領域Y2と、中間領域Y2に接続してなり、中間領域Y2よりも基端側に配置されている基端領域Y3と、を備える。
【0053】
図2および
図4を参照して、カテーテル本体110は、第1領域A1と、第1領域A1よりも基端側に配置され、かつ、第1領域A1の外径D1よりも小さい外径D2を有する第2領域A2と、を有する。第2領域A2は、ストレインリリーフ130の最先端部132よりもカテーテル本体110の基端側に設けられている。そして、薬剤部160は、第2領域A2に配置されている。なお、カテーテル本体110は、その内腔116にカテーテル等の医療デバイスが挿入されるため、第1領域A1の内径d1と第2領域A2の内径d2が同じであることが好ましい。
【0054】
創傷部位Pに薬剤部160を導入する際には、薬剤部160において最初に生体組織Wに接触する先端部160aに生体組織Wからの抵抗が大きく作用する。第1領域A1の外径D1よりも小さい外径D2を有する第2領域A2に薬剤部160が配置されることによって、薬剤部160を創傷部位Pに導入する際に、薬剤部160の先端部160aに生体組織Wが接触しにくくなり、生体組織Wから先端部160aに作用する抵抗を小さくできる。そのため、薬剤部160を創傷部位Pに導入する際に、イントロデューサー用シース100から薬剤部160が剥落することを防止できる。
【0055】
また、ストレインリリーフを有するイントロデューサー用シースは、カテーテル本体とストレインリリーフの境界部において剛性が大きく変化するため、カテーテル本体を曲げた際、ストレインリリーフの最先端部付近でカテーテル本体のキンクが発生する場合がある。しかしながら、本実施形態に係るイントロデューサー用シース100は、第1領域A1の外径D1よりも小さい外径D2を有する第2領域A2がストレインリリーフ130の最先端部132よりも基端側に配置される。そのため、イントロデューサー用シース100は、薬剤部160を有する第2領域A2を設けても十分な耐キンク性を備える。
【0056】
カテーテル本体110は、第2領域A2よりも基端側に配置され、かつ、第2領域A2の外径D2よりも大きい外径D3を有する第3領域A3と、を有する。そして、第2領域A2は、カテーテル本体110の内空に向かって窪んだ溝部Sgである。なお、カテーテル本体110は、その内腔116にカテーテル等の医療デバイスが挿入されるため、第1領域A1の内径d1、第2領域A2の内径d2、及び第3領域A3の内径d3が同じであることが好ましい。
【0057】
薬剤部160が配置されている第2領域A2が溝部Sgであることによって、カテーテル本体110の外表面117において薬剤部160が配置されている領域(第2領域A2)と、配置されていない領域(第1領域A1および第3領域A3)との境界がより明確になる。そのため、カテーテル本体110の外表面117において薬剤部160が配置されている範囲をより明確に把握できるから、より確実に薬剤部160を創傷部位Pに接触させるとともに留置できる。
【0058】
溝部Sgは、ストレインリリーフ130の最先端部132よりもカテーテル本体110の基端側であり、かつ、ハブ120の先端部121よりも先端側の範囲において、カテーテル本体110の外表面117の全周に設けられる。
【0059】
これにより、カテーテル本体110の全周にわたって薬剤部160を配置できる。そのため、薬剤部160を創傷部位Pに導入した際に、創傷部位Pに対する薬剤部160の接触面積を増加させることができる。
【0060】
薬剤部160の厚みは特に限定されず、例えば0.01mm以上0.15mm以下の範囲に設定できる。溝部Sgの深さHは、薬剤部160の厚みよりも大きい。溝部Sgの深さHは、例えば、0.01mm以上0.20mm以下の範囲に設定できる。
【0061】
溝部Sgの幅L1は特に限定されないが、例えば5mm以上30mm以内の範囲に設定できる。ハブ120の先端部121から溝部Sgまでの距離L2は特に限定されないが、例えば0mm以上70mm以内の範囲に設定できる。
【0062】
親水性潤滑層170の一部は、薬剤部160の先端部160aを覆う。
【0063】
これにより、創傷部位Pに薬剤部160を導入する際に、薬剤部160の先端部160aに生体組織Wから作用する抵抗を抑制できる。そのため、創傷部位Pに薬剤部160を導入する際に、薬剤部160がイントロデューサー用シース100から剥落することを防止できる。
【0064】
薬剤部160は、止血剤を搭載した薬剤担体を有する。薬剤担体は、体温で軟化する生分解材料である。これにより、薬剤部160を創傷部位Pに接触させたときに薬剤部160が軟化するから、薬剤部160の少なくとも一部をより確実に創傷部位Pに留置できる。
【0065】
薬剤担体を構成する生分解材料の種類は特に限定されないが、例えばゼラチンを使用できる。
【0066】
次に、本実施形態に係るイントロデューサー組立体10を使用した治療方法を説明する。
【0067】
本実施形態に係るイントロデューサー組立体10を使用した治療方法は、イントロデューサー用シース100を留置するステップと、目的の手技を行うステップと、薬剤部160を創傷部位Pに導入するステップと、薬剤部160の少なくとも一部を創傷部位Pに留置するステップと、を有する。
【0068】
図5(A)〜(F)を参照して、イントロデューサー用シース100を留置するステップでは、イントロデューサー用シース100を留置しようとする生体管腔Rに導入針50を穿刺し(
図5(A)参照)、導入針50の内腔50aを通して、ガイドワイヤー60を生体管腔Rに挿入し(
図5(B)参照)、ガイドワイヤー60を生体管腔Rに留置したまま導入針50を生体管腔Rから抜去して、ガイドワイヤー60を生体管腔Rに留置し(
図5(C)参照)、生体管腔Rに留置されたガイドワイヤー60にダイレーター200を沿わせつつ、イントロデューサー組立体10を穿刺し(
図5(D)および
図5(E)参照)、イントロデューサー用シース100を生体管腔Rに留置したまま、イントロデューサー用シース100からガイドワイヤー60およびダイレーター200を抜去する。
【0069】
目的の手技を行うステップでは、イントロデューサー用シース100を生体管腔Rに留置した状態において、イントロデューサー用シース100の止血弁140を通して生体管腔R内にカテーテルやガイドワイヤー等の治療器具を導入して、例えば経皮的冠動脈形成術(PTCA)などの手技を行う。そして、手技が終了した際、生体管腔R内に導入された治療器具は、生体管腔R内から抜去される。
【0070】
図6(A)を参照して、創傷部位Pに薬剤部160を導入するステップでは、薬剤部160を露出させ、イントロデューサー用シース100の基端側を創傷部位Pに向けて移動させ、創傷部位Pに薬剤部160を導入し、薬剤部160の少なくとも一部を創傷部位Pに接触させる。
【0071】
薬剤部160を露出させる際には、ストレインリリーフ130の把持部135を把持し、カテーテル本体110から遠ざかる方向に把持部135を引っ張る。これにより、カテーテル本体110がストレインリリーフ130のスリット134を通過し、ストレインリリーフ130はカテーテル本体110から抜去される。
【0072】
イントロデューサー用シース100の基端側を創傷部位Pに向けて移動させる際には、ガイドワイヤー60とダイレーター200とをイントロデューサー用シース100の止血弁140を通して挿入し、ガイドワイヤー60とダイレーター200とがイントロデューサー用シース100の内腔に挿入された状態において、イントロデューサー用シース100を移動させる。
【0073】
薬剤部160を露出させるのは、ガイドワイヤー60とダイレーター200とをイントロデューサー用シース100の止血弁140を通して挿入する前であってもよいし、挿入した後であってもよい。
【0074】
図6(B)を参照して、薬剤部160の少なくとも一部を創傷部位Pに留置させるステップでは、薬剤部160の少なくとも一部を創傷部位Pに接触させた状態において、生体管腔Rからイントロデューサー用シース100を抜去し、薬剤部160の少なくとも一部を創傷部位Pに留置する。薬剤部160は止血剤を有するから、薬剤部160の少なくとも一部を創傷部位Pに接触させるとともに留置することによって、創傷部位Pの止血を促進できる。
【0075】
また、薬剤部160の少なくとも一部を創傷部位Pに留置させるステップでは、創傷部位Pのうち生体管腔Rに近い側の部位に、薬剤部160の少なくとも一部を留置する。これにより、例えば止血剤を含むシート材料を皮膚に貼り付ける等の方法と比較して、効果的に創傷部位Pの止血を促進できる。
【0076】
イントロデューサー用シース100の生体管腔Rからの抜去は、創傷部位Pを圧迫しつつ行う。これにより、生体管腔Rからイントロデューサー用シース100を抜去する際に、創傷部位Pが薬剤部160に対してより強く押し付けられる。そのため、イントロデューサー用シース100を抜去する動作に連動させて、創傷部位Pに薬剤部160をこすり付けてそぎ落とすことができる。その結果、薬剤部160の少なくとも一部をより効率的に創傷部位Pに留置できる。
【0077】
また、イントロデューサー用シース100が生体管腔Rから抜去されたとき、薬剤部160が有する止血剤によって、創傷部位Pはある程度止血された状態にある。そのため、イントロデューサー用シース100を抜去後の止血状態の維持は、バンテージ等を使用して行うことが可能である。
【0078】
すなわち、本実施形態に係るイントロデューサー用シース100によれば、イントロデューサー用シース100を生体管腔Rから抜去した後に、バンデージ等により、短時間で創傷部位Pを止血することができる。そのため、創傷部位Pの止血に要する時間を短縮し、患者への身体的な負担を軽減することができる。また、創傷部位Pの止血に要する時間を短縮することで、神経の圧迫によるしびれや痛みの発生を抑制することができる。これらのことは、患者への身体的な負担を軽減できるばかりでなく、次の点でも有用である。
【0079】
すなわち、創傷部位Pを圧迫して止血する場合には、上述したしびれや痛みを防止するため、医師や看護師等の医療従事者は、通常、創傷部位Pを圧迫するバルーン等の内圧を所定の時間ごと(例えば1時間ごと)に徐々に下げていく減圧操作を行う。こうした減圧作業は、医療従事者にとって大きな負担となっている。本実施形態に係るイントロデューサー用シースは、こうした減圧作業を軽減できるため、医療従事者の負担軽減という点においても有用である。
【0080】
本実施形態に係るイントロデューサー用シース100によれば、生体組織Wの創傷部位Pを治療可能な止血剤を有する薬剤部160を備える。そして、薬剤部160は、カテーテル本体110の外表面117の基端側に配置される。カテーテル本体110の外表面117の基端側に薬剤部160が配置されることにより、薬剤部160を生体組織Wに接触させることなく、イントロデューサー用シース100を経皮的に生体管腔Rに導入して目的の手技を行える。そして、目的の手技を終えた後に、カテーテル本体110の基端側を創傷部位Pに挿入することによって、薬剤部160の少なくとも一部を創傷部位Pに接触させることができる。さらに、薬剤部160の少なくとも一部を創傷部位Pに接触させた状態でカテーテル本体110の基端側を創傷部位Pから抜去することによって、薬剤部160の少なくとも一部を創傷部位Pに留置できる。薬剤部160は止血剤を有するから、薬剤部160の少なくとも一部を創傷部位Pに接触させるとともに留置することによって、創傷部位Pの止血を促進できる。従って、経皮的に生体管腔に導入されたイントロデューサー用シースを抜去した後に、創傷部位の止血に要する時間を短縮し、もって、患者への身体的な負担を軽減することができる。
【0081】
また、本実施形態に係るイントロデューサー用シース100によれば、ハブ120の先端部121を覆い、かつ、カテーテル本体110の基端側の所定範囲を囲むストレインリリーフ130をさらに備える。そして、薬剤部160は、ストレインリリーフ130が囲むカテーテル本体110の所定範囲に配置される。これにより、イントロデューサー用シース100の運搬中や目的の手技中に、他の物体や生体組織W等に薬剤部160が接触することを防止できる。そのため、創傷部位Pに薬剤部160を導入する前にイントロデューサー用シース100から薬剤部160が剥落することを防止できる。よって、イントロデューサー用シース100を用いた創傷部位Pの止血に要する時間の短縮をより確実に行える。
【0082】
また、本実施形態に係るイントロデューサー用シース100によれば、カテーテル本体110は、第1領域A1と、第1領域A1よりも基端側に配置され、かつ、第1領域A1の外径D1よりも小さい外径D2を有する第2領域A2を有する。そして、薬剤部160は、第2領域A2に配置される。創傷部位Pに薬剤部160を導入する際には、薬剤部160において最初に生体組織Wに接触する先端部160aに生体組織Wからの抵抗が大きく作用する。第1領域A1の外径D1よりも小さい外径D2を有する第2領域A2に薬剤部160が配置されることによって、薬剤部160を創傷部位Pに導入する際に、薬剤部160の先端部160aに生体組織Wが接触しにくくなり、生体組織Wから薬剤部160の先端部160aに作用する抵抗を小さくできる。そのため、薬剤部160を創傷部位Pに導入する際に、イントロデューサー用シース100から薬剤部160が剥落することを防止できる。よって、薬剤部160をより確実に創傷部位Pに留置できるため、イントロデューサー用シース100を用いた創傷部位Pの止血に要する時間の短縮をさらに確実に行える。
【0083】
また、本実施形態に係るイントロデューサー用シース100によれば、カテーテル本体110は、第2領域A2よりも基端側に配置され、かつ、第2領域A2の外径D2よりも大きい外径D3を有する第3領域A3と、を有する。そして、薬剤部160は、第2領域A2に配置され、第2領域A2は、カテーテル本体110の内空に向かって窪んだ溝部Sgである。薬剤部160が配置されている第2領域A2が溝部Sgであることによって、カテーテル本体110の外表面117において薬剤部160が配置されている領域(第2領域A2)と、配置されていない領域(第1領域A1および第3領域A3)との境界がより明確になる。そのため、カテーテル本体110の外表面117において薬剤部160が配置されている範囲をより明確に把握できるから、より確実に薬剤部160を創傷部位Pに接触させるとともに留置できる。よって、イントロデューサー用シース100を用いた創傷部位Pの止血に要する時間の短縮をさらに確実に行える。
【0084】
また、本実施形態に係るイントロデューサー用シース100によれば、溝部Sgは、ストレインリリーフ130の最先端部132よりもカテーテル本体110の基端側であり、かつ、ハブ120の先端部121よりもカテーテル本体110の先端側の範囲において、カテーテル本体110の外表面117の全周に設けられる。これにより、カテーテル本体110の全周にわたって薬剤部160を配置できる。そのため、薬剤部160を創傷部位Pに導入した際に、創傷部位Pに対する薬剤部160の接触面積を増加させることができる。よって、イントロデューサー用シース100を用いた創傷部位Pの止血に要する時間の短縮をさらに確実に行える。
【0085】
また、本実施形態に係るイントロデューサー用シース100によれば、カテーテル本体110の外表面117には、湿潤時に表面潤滑性を付与する親水性潤滑層170が配置されている。そして、親水性潤滑層170の少なくとも一部は、薬剤部160の先端部160aを覆う。創傷部位Pに薬剤部160を導入する際には、薬剤部160において最初に生体組織Wに接触する先端部160aに生体組織Wからの抵抗が大きく作用する。親水性潤滑層170の少なくとも一部が薬剤部160の先端部160aを覆うことによって、創傷部位Pに薬剤部160を導入する際に、薬剤部160の先端部160aに生体組織Wから作用する抵抗を抑制できる。そのため、創傷部位Pに薬剤部160を導入する際に、イントロデューサー用シース100から薬剤部160が剥落することを防止できる。よって、イントロデューサー用シース100を用いた創傷部位Pの止血に要する時間の短縮をさらに確実に行える。
【0086】
また、本実施形態に係るイントロデューサー用シース100によれば、薬剤部160は、止血剤を搭載した薬剤担体をさらに有する。そして、薬剤担体は、体温で軟化する生分解材料である。これにより、薬剤部160は、薬剤部160が創傷部位Pに接触した後、体温により軟化する。そのため、薬剤部160は、薬剤部160を創傷部位Pに導入する際、体温による軟化が進んでいないため、比較的硬い状態で皮膚の創傷部位Pを通過する。これにより、薬剤部160が皮膚で脱落することを防止することができる。また、薬剤部160は、創傷部位Pに接触した後に体温で軟化するため、薬剤部160の少なくとも一部をより確実に創傷部位Pに留置できる。よって、イントロデューサー用シース100を用いた創傷部位Pの止血に要する時間の短縮をさらに確実に行える。
【0087】
(実施形態2)
上述した実施形態1に係るイントロデューサー組立体10では、薬剤部160は、ストレインリリーフ130が囲むカテーテル本体110の所定範囲に配置された。本実施形態に係るイントロデューサー組立体20は、カテーテル本体310の外表面117の基端側かつストレインリリーフ330の外側に薬剤部360が配置される点において、上述した実施形態1に係るイントロデューサー組立体10と異なる。
【0088】
イントロデューサー組立体10は、イントロデューサー用シース300と、ダイレーター200と、を有する。ダイレーター200の構成は、上述した実施形態1と同様であるから、説明を省略する。
【0089】
図8および
図9を参照して、本実施形態に係るイントロデューサー用シース300は、経皮的に生体管腔Rに導入されるカテーテル本体310と、カテーテル本体310の基端側に接続されたハブ120と、生体組織Wの創傷部位Pを治療可能な止血剤を有する薬剤部360と、ハブ120の先端部121を覆い、かつ、カテーテル本体310の基端側の所定範囲を囲むストレインリリーフ330と、を備える。カテーテル本体310は、第1領域B1と、第1領域B1よりも基端側に配置され、かつ、第1領域B1の外径D31よりも小さい外径D32を有する第2領域B2と、を有する。そして、第2領域B2の先端B2aは、ストレインリリーフ330の最先端部332よりも先端側に位置し、薬剤部360は、第2領域B2に配置される。本実施形態に係るイントロデューサー用シース300は、薬剤部360を覆うカバー部材380をさらに備える。
【0090】
以下、本実施形態に係るイントロデューサー用シース300について説明する。なお、上述した実施形態1に係るイントロデューサー用シース100と同一の構成については同一の符号を付して説明を省略する。
【0091】
ストレインリリーフ330の構成は、抜去可能に構成されていない点を除いて、上述した実施形態1に係るストレインリリーフ130の構成と同じである。具体的には、ストレインリリーフ330は、スリット134と、把持部135と、を有さない点を除いて、上述した実施形態1に係るストレインリリーフ130と同様の構成である。
【0092】
第2領域B2の先端B2aは、ストレインリリーフ330の最先端部332よりも先端側に位置し、薬剤部360は、第2領域B2に配置される。すなわち、薬剤部360は、カテーテル本体310の外表面117の基端側かつストレインリリーフ330の外側に配置されている。
【0093】
これにより、ストレインリリーフ330を抜去することなく薬剤部360を創傷部位Pに薬剤部360を導入できるから、創傷部位Pの止血の促進を迅速に行うことができる。また、ストレインリリーフ330を抜去可能に構成する必要がないから、イントロデューサー用シース300の構造がより簡便になり、製造が容易になる。
【0094】
カテーテル本体310は、第2領域B2よりも基端側に配置され、かつ、第2領域B2の外径D32よりも大きい外径D33を有する第3領域B3と、を有する。第2領域B2は、カテーテル本体310の内腔116に向かって窪んだ溝部Sgである。そして、第3領域B3は、ストレインリリーフ330の最先端部332よりも先端側に位置する。
【0095】
薬剤部360の厚みは、上述した実施形態1に係る薬剤部160と同様に設定できる。溝部Sgの深さHは、薬剤部360の厚みよりも大きい。溝部Sgの深さHは、上述した実施形態1に係る薬剤部160と同様に設定できる。
【0096】
溝部Sgの幅L1は、上述した実施形態1に係る薬剤部160と同様に設定できる。ストレインリリーフ330の最先端部332から溝部Sgまでの距離L32は特に限定されないが、例えば、0mm以上10mm以内の範囲に設定できる。
【0097】
カバー部材380は、薬剤部360を覆う。これにより、イントロデューサー用シース300の運搬中や目的の手技中に、他の物体や生体組織Wに薬剤部360が接触することを防止できる。そのため、創傷部位Pに薬剤部360を導入する前に、イントロデューサー用シース300から薬剤部360が剥落することを防止できる。
【0098】
カバー部材380の先端部380aは、カテーテル本体310の外表面117に取り外し可能に固定される。これにより、カバー部材380の先端部380aを把持してカバー部材380を薬剤部360から取り外し、カバー部材380から薬剤部360を露出させることができる。
【0099】
カバー部材380はチューブ形状を備えるが、薬剤部360を覆うことができる限りにおいてカバー部材380の形状はこれに限定されない。カバー部材380を構成する材料は特に限定されず、例えば樹脂製のフィルムをカバー部材380として使用できる。
【0100】
カテーテル本体310は、薬剤部360の先端部360aが視覚的に確認できるマーカー部318を有する。これにより、カテーテル本体310の外表面117において薬剤部360が配置されている箇所をより明確に把握できるから、より確実に薬剤部360を創傷部位Pに接触させるとともに留置できる。
【0101】
マーカー部318は、カテーテル本体310の色とは異なる色を備えてなり、カテーテル本体310の周方向に沿って一定の幅を備えた帯状に形成されている。マーカー部318の色は特に限定されないが、例えば白色とすることができる。マーカー部318の幅は特に限定されないが、例えば5mm以上30mm以下の範囲に設定できる。
【0102】
薬剤部360の色は、カテーテル本体310の色と異なる。これにより、カテーテル本体310の外表面117において薬剤部360が配置されている範囲を明確に把握できる。そのため、創傷部位Pへの薬剤部360の導入をさらに確実にできる。また、カテーテル本体310の外表面117に薬剤部360が配置されているか否かを容易に判別できるから、薬剤部360が配置されていないイントロデューサー用シース300を誤使用するリスクを低減できる。
【0103】
薬剤部360の色は特に限定されないが、例えば白色とすることができる。薬剤部360の着色方法は特に限定されず、公知の着色料を薬剤部360に混ぜることによって薬剤部360を着色できる。
【0104】
本実施形態に係るイントロデューサー組立体20を使用した治療方法は、イントロデューサー用シース300を留置するステップと、目的の手技を行うステップと、薬剤部360を創傷部位Pに導入するステップと、薬剤部360の少なくとも一部を創傷部位Pに留置するステップと、を有する。薬剤部360を創傷部位Pに導入するステップ以外は、上述した実施形態1に係る治療方法と同様のため説明を省略する。
【0105】
創傷部位Pに薬剤部360を導入するステップは、薬剤部360を露出させる手順を除いて、上述した実施形態1に係る治療方法における創傷部位Pに薬剤部160を導入するステップと同じである。
【0106】
薬剤部360を露出させる際には、カバー部材380の先端部380aを把持し、カテーテル本体310から遠ざかる方向にカバー部材380を引っ張り、カテーテル本体310からカバー部材380を取り外し、薬剤部360を露出させる。
【0107】
本実施形態に係るイントロデューサー用シース300によれば、カテーテル本体310は、第1領域B1と、第1領域B1よりも基端側に配置され、かつ、第1領域B1の外径D31よりも小さい外径D32を有する第2領域B2と、を有する。そして、第2領域B2の先端B2aは、ストレインリリーフ330の最先端部132よりもカテーテル本体310の先端側に位置し、薬剤部360は第2領域B2に配置される。これにより、ストレインリリーフ330を抜去することなく創傷部位Pに薬剤部360を接触させるとともに留置できる。よって、イントロデューサー用シース300を用いた創傷部位Pの止血に要する時間の短縮をより迅速に行うことができる。
【0108】
また、本実施形態に係るイントロデューサー用シース300によれば、カテーテル本体310は、第2領域B2よりも基端側に配置され、かつ、第2領域B2の外径D32よりも大きい外径D33を有する第3領域B3と、を有する。薬剤部360は、第2領域B2に配置され、第2領域B2は、カテーテル本体310の内腔116に向かって窪んだ溝部Sgである。そして、第3領域B3は、ストレインリリーフ330の最先端部132よりも先端側に位置する。これにより、カテーテル本体310の外表面117において薬剤部360が配置されている領域(第2領域B2)と、配置されていない領域(第1領域B1および第3領域B3)との境界がより明確になる。そのため、カテーテル本体310の外表面117において薬剤部360が配置されている範囲をより明確に把握できるから、より確実に薬剤部360を創傷部位Pに接触させるとともに留置できる。よって、イントロデューサー用シース300を用いた創傷部位Pの止血に要する時間の短縮をさらに確実に行える。
【0109】
また、本実施形態に係るイントロデューサー用シース300によれば、カテーテル本体310は、薬剤部360の先端部360aが視覚的に確認できるマーカー部318を有する。これにより、カテーテル本体310の外表面117において薬剤部360が配置されている箇所をより明確に把握できるから、より確実に薬剤部360を創傷部位Pに接触させるとともに留置できる。よって、イントロデューサー用シース300を用いた創傷部位Pの止血に要する時間の短縮をさらに確実に行える。
【0110】
(改変例)
上述した実施形態2では、ハブ120とストレインリリーフ330とは別体として構成されていた。しかしながら、ハブ120とストレインリリーフ330とは一体的に構成されていてもよい。
【0111】
図10は、本改変例に係るイントロデューサー用シースの基端側の断面図である。
【0112】
図10に示すように、本改変例に係るイントロデューサー用シースでは、ハブ120とストレインリリーフ330とは一体的に構成されている。具体的には、ストレインリリーフ330は、ハブ120の先端部121から延出されてカテーテル本体310の先端側に向かって縮径しつつ延びてなり、カテーテル本体310の基端側の所定範囲を囲んでいる。
【0113】
ハブ120とストレインリリーフ330とは同一の材料によって構成し得る。ハブ120とストレインリリーフ330とを構成する材料は、第1実施形態においてハブ120を構成する材料として上述した材料と同じものを使用し得る。ハブ120とストレインリリーフ330とは、例えば射出成形などを用いた一体成形により形成し得る。
【0114】
本改変例に係るイントロデューサー用シースによれば、上述した実施形態2に係るイントロデューサー用シース300が奏する作用・効果に加えて、次の作用・効果を奏する。
【0115】
すなわち、ハブ120とストレインリリーフ330とが一体的に構成されていることによって、ハブ120とストレインリリーフ330とが別体として構成されている場合と比較して、部品点数を軽減できる。また、ハブ120とストレインリリーフ330とを組み立てる工程を減らせるから、製造過程における生産性が向上する。よって、本改変例に係るイントロデューサー用シースによれば、患者への身体的な負担を軽減することができるイントロデューサー用シースを低コストに提供できる。
【0116】
以上、実施形態1並びに実施形態2およびその改変例を通じて本発明に係るイントロデューサー用シースを説明したが、本発明は説明した各構成のみに限定されるものでなく、特許請求の範囲の記載に基づいて適宜変更することが可能である。
【0117】
例えば、上述した実施形態1では、ストレインリリーフ130に薬剤部160が完全に覆われており、上述した実施形態2では、ストレインリリーフ330から薬剤部360が完全に露出されていた。しかしながら、薬剤部の一部がストレインリリーフに覆われるとともに、薬剤部の他の一部がストレインリリーフから露出されていてもよい。当該構成によっても、上述した実施形態1および実施形態2と同様に、創傷部位Pの止血を促進し、止血に要する時間を短縮できる。
【0118】
ただし、薬剤部の一部がストレインリリーフに覆われるとともに、薬剤部の他の一部がストレインリリーフから露出される構成の場合、ストレインリリーフの先端部とカテーテル本体110との間に薬剤部の一部が介在することになる。そのため、ストレインリリーフの先端部に薬剤部の一部が接触し易くなる。接触を回避するために、ストレインリリーフの先端部とカテーテル本体110の外表面117との間に隙間を設ける方法も考えられる。しかしながら、カテーテル本体110の基端側の部位の動きにストレインリリーフが追従しにくくなるため、カテーテル本体110を折れ曲がりにくくするというストレインリリーフの本来の機能を効果的に発揮できなくなる虞がある。上述した実施形態1および実施形態2によれば、このような問題は発生しないため、上述した実施形態1および上述した実施形態2の形態の方がより好ましい。
【0119】
また、上述した実施形態1および実施形態2では、親水性潤滑層170の少なくとも一部は、薬剤部の先端部を覆った。しかしながら、親水性潤滑層の少なくとも一部が、薬剤部の全体を包囲するように構成してもよい。
【0120】
また、上述した実施形態1では、ストレインリリーフ130は、カテーテル本体110の外表面117から抜去可能に構成されたが、ストレインリリーフ130に覆われている薬剤部160を露出し得る限りにおいて特に限定されない。例えば、ストレインリリーフの先端部がカテーテル本体の基端側に向かってめくり上げることができるように構成されてもよい。
【0121】
さらに、上述した実施形態1並びに実施形態2およびその改変例に係るイントロデューサー用シースはストレインリリーフを有していたが、本発明は、ストレインリリーフを有する形態に限定されず、ストレインリリーフを有していない形態によっても実施できる。ストレインリリーフを有していない状態であっても、上述した実施形態1および実施形態2に係るイントロデューサー用シースと同様の作用・効果を奏する。
【0122】
本出願は、2016年9月1日に出願された日本国特許出願第2016−171038号に基づいており、その開示内容は、参照により全体として引用されている。