(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6920462
(24)【登録日】2021年7月28日
(45)【発行日】2021年8月18日
(54)【発明の名称】オキシレスベラトロールのアルトカルプス・ヒルスタスからの新規な抽出方法
(51)【国際特許分類】
C07C 37/72 20060101AFI20210805BHJP
C07C 37/82 20060101ALI20210805BHJP
C07C 37/84 20060101ALI20210805BHJP
C07C 37/74 20060101ALI20210805BHJP
C07C 39/21 20060101ALI20210805BHJP
A61K 36/60 20060101ALN20210805BHJP
A61P 31/18 20060101ALN20210805BHJP
A61K 31/05 20060101ALN20210805BHJP
【FI】
C07C37/72
C07C37/82
C07C37/84
C07C37/74
C07C39/21
!A61K36/60
!A61P31/18
!A61K31/05
【請求項の数】1
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2019-555560(P2019-555560)
(86)(22)【出願日】2016年12月22日
(65)【公表番号】特表2020-503387(P2020-503387A)
(43)【公表日】2020年1月30日
(86)【国際出願番号】US2016068161
(87)【国際公開番号】WO2018118059
(87)【国際公開日】20180628
【審査請求日】2019年8月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】513146837
【氏名又は名称】マジード ムハンメド
(73)【特許権者】
【識別番号】514112927
【氏名又は名称】カリアナム ナガブシャナム
(73)【特許権者】
【識別番号】519228278
【氏名又は名称】ナヤク マハデバ
(73)【特許権者】
【識別番号】519228290
【氏名又は名称】アナンタナラヤナン ナガラジャン
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100218578
【弁理士】
【氏名又は名称】河井 愛美
(72)【発明者】
【氏名】マジード ムハンメド
(72)【発明者】
【氏名】ナガブシャナム カリアナム
(72)【発明者】
【氏名】ナヤク マハデバ
(72)【発明者】
【氏名】アナンタナラヤナン ナガラジャン
【審査官】
桜田 政美
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2016/056029(WO,A1)
【文献】
POVICHIT, Nasapon et al.,Antiglycation and antioxidant activities of oxyresveratrol extracted from the heartwood of Artocarpus lakoocha Roxb.,Maejo International Journal of Science and Technology,2010年,Vol.4,pp.454-461.
【文献】
SUN, Hong-Yi et al.,Efficient Synthesis of Natural Polyphenolic Stilbenes: Resveratrol, Piceatannol and Oxyresveratrol,Chemical and Pharmaceutical Bulletin,2010年,Vol.58, No.11,pp.1492-1496
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
CAplus/REGISTRY(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
C07C 39/21
C07C 37/72
C07C 37/74
C07C 37/82
C07C 37/84
A61K 31/05
A61K 36/60
A61P 31/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルトカルプス・ヒルスタスからのオキシレスベラトロールの新規な抽出方法であって、前記方法が、
a)アルトカルプス・ヒルスタスの木を、切断し、乾燥し、及びすり潰して粗粉末にする工程、
b)工程aの粉末状の材料を、熱エタノール(9倍
容積)を用いて
抽出する工程、
c)工程bの前記エタノール抽出物を、濾過して分離する工程、
d)工程cの前記抽出物を、50−55℃の真空下で濃縮して厚いペーストにする工程、
e)工程dの前記抽出物を、65−70℃の真空棚段乾燥器中で
乾燥し、粉末を得る工程、
f)工程eの前記粉末を、エタノール(2倍
容積)中に溶解する工程、
g)工程fの前記エタノール抽出物を、連続的な攪拌下で10倍
容積の水にゆっくりと加える工程、
h)工程gから得られた前記不溶物を、濾過により分離して透明層を得る工程、
i)工程hの前記透明層を、クロロホルム(1倍
容積)を用いて洗浄し、及びクロロホルム層を廃棄する工程、
j)工程iの前記透明層を、酢酸エチル(1倍
容積)を用いて抽出する工程、
k)工程jの前記酢酸エチル層を、50−55℃の真空下で濃縮して厚いペーストにする工程、
l)工程kの前記濃縮抽出物を、65−70℃の真空棚段乾燥器中で乾燥して粉末を得る工程、
m)工程lの前記粉末を、水(4倍
容積)に溶解し、及び攪拌下で80−90℃になるまで8時間加熱する工程、
n)工程mの前記水層を、10−15℃になるまで8時間冷却し、及び結晶化する工程、
o)工程nから得られた前記結晶を、濾過する工程、
p)工程oの前記結晶を、70−75℃の真空中で乾燥する工程、
q)工程pの前記結晶を、その
1H及び
13C NMRスペクトル並びにそのLCMSスペクトルから、STR#1で表されるオキシレスベラトロールとして特徴づける工程、
STR#1
を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オキシレスベラトロール(Oxyresveratrol)のアルトカルプス・ヒルスタス(Artocarpus hirsutus;A.hirsutus)からの抽出方法に関連する。
【背景技術】
【0002】
オキシレスベラトロールは、クワ科(Moraceae)、ユリ科(Liliaceae)、グネツム科(Gnetaceae)などを包含する多くの広く分布する植物の根、葉、茎及び果実に見られる水素置換スチルベンである。この化合物の生物活性は、以下の科学論文に十分に記述されている;
1.Li Xu,Chao Liu,Wei Xiang,Hu Chen,Xiaoli Qin and Xhanzhi Huang,Advances in the Study of Oxyresveratrol,International Journal of Pharmacology,2014,10,44−54
2.Likhitwitayawuid,K,Sornsute,A.,Sritularak,B.,Ploypradith,P.,Chemical transformations of oxyresveratrol(trans−2,4,3’,5’−tetrahydroxystilbene) into a potent tyrosinase inhibitor and a strong cytotoxic agent.(Bioorganic & Medicinal Chemistry Letters,2006,16,5650−5653)
【0003】
これは、HIVの適度な(modest)抑制についても報告されている(Likhitwitayawuid K,Sritularak B,Benchanak K,Lipipun V,Mathew J,Schinazi RF,Phenolics with antiviral activity from Millettia erythrocalyx and Artocarpus lakoocha,Nat Prod Res.2005 Feb;19(2):177−82)。
【0004】
オキシレスベラトロールはいくつかのアルトカルプス種(A.lakoocha Roxb.;A.champlasha Roxb.;A.champlasha Roxb.;A.heterophyllus;A. gomezianus Wall.)から、HPLC,カラムクロマトグラフィーなどのようなクロマトグラフ技術を用いて単離されている(Nasapon Povichit,Ampai Phrutivorapongkul,Maitree Suttajit and Pimporn Leelapornpisid,Antiglycation and antioxidant activities of Oxyresveratrol extracted from the heartwood of Artocarpus lakoocha Roxb.,Maejo Int.J.Sci.Technol.2010,4(03),454−461)。これらの技術は高価かつ時間のかかるものであるが、簡便で費用のかからず、かつ信頼できる単離方法が、オキシレスベラトロールの大規模工業生産方法のために技術的に望まれている。本発明は、そのような技術的問題を、高い回収率を有する、アルトカルプス・ヒルスタスからのオキシレスベラトロールの簡便な溶媒−溶媒精製方法を開示することにより解決する。
【0005】
簡便で、商業的に実現可能なアルトカルプス・ヒルスタスからのオキシレスベラトロールの抽出方法を開示することは、本発明の主目的である。
本発明は前記目的を果たし、かつさらなる関連する利点を提供する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
アルトカルプス・ヒルスタスからのオキシレスベラトロールの抽出方法を開示する。より具体的には、本発明は、簡便な溶媒−溶媒精製方法を用いたアルトカルプス・ヒルスタスからのオキシレスベラトロールの新規な抽出方法を開示する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は、
1H−NMR(DMSO−d
6、300MHz):δ9.72(1H、s、5−OH)、9.54(1H、sOH)、9.32(2H、s、OH)、7.33(1H、d、J=8.7Hz、H−6)、7.14(1H、d、J=16.5Hz、H−α)、6.76(1H、d、J=16.5Hz、H−β)、6.34(2H、d、J=2.1Hz、H−2’及びH−6’)、6.30(1H、d、J=2.4Hz、H−3)、6.24(1H、dd、J=8.4及び2.1Hz、H−5)、6.06(1H、t、J=2.1Hz、H−4’)を示す。
【
図2】
図2は、オキシレスベラトロールの
13C NMR(DMSO−d
6、75MHz):δ158.75(C−3’及び5’)、158.37(C−4)、156.30(C−2)、140.36(C−1’)、127.60(C−6)、124.97(C−β)、123.57(C−α)、115.61(C−1)、107.60(C−5)、104.34(C−2’及び6’)、102.87(C−4’)、101.70(C−3)を示す。
【
図3a】
図3aは、アルトカルプス・ヒルスタスから得られた化合物オキシレスベラトロールの液体クロマトグラフィー質量分析(LCMS)を示す。
【
図3b】
図3bは、アルトカルプス・ヒルスタスから得られた化合物オキシレスベラトロールの液体クロマトグラフィー質量分析(LCMS)を示す。
【
図4】
図4は、アルトカルプス・ヒルスタスから得られた化合物オキシレスベラトロールの高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を示す。
【発明を実施するための形態】
【0008】
最も好ましい実施形態においては、本発明はアルトカルプス・ヒルスタスからのオキシレスベラトロールの新規な抽出方法を開示し、前記方法は、
a)アルトカルプス・ヒルスタスの木を、切断し、乾燥し、及びすり潰して粗粉末にする工程、
b)工程aの粉末状の材料を、熱エタノール(9倍量)を用いて完全に抽出する工程、
c)工程bの前記エタノール抽出物を、濾過して分離する工程、
d)工程cの前記抽出物を、50−55℃の真空下で濃縮して厚いペーストにする工程、
e)工程dの前記抽出物を、65−70℃の真空棚段乾燥器中で完全に乾燥し、粉末を得る工程、
f)工程eの前記粉末を、エタノール(2倍量)中に溶解する工程、
g)工程fの前記エタノール抽出物を、連続的な攪拌下で10倍量の水にゆっくりと加える工程、
h)工程gから得られた前記不溶物を、濾過により分離して透明層を得る工程、
i)工程hの前記透明層を、クロロホルム(1倍量)を用いて洗浄し、及びクロロホルム層を廃棄する工程、
j)工程iの前記透明層を、酢酸エチル(1倍量)を用いて抽出する工程、
k)工程jの前記酢酸エチル層を、50−55℃の真空下で濃縮して厚いペーストにする工程、
l)工程kの前記濃縮抽出物を、65−70℃の真空棚段乾燥器中で乾燥して粉末を得る工程、
m)工程lの前記粉末を、水(4倍量)に溶解し、及び攪拌下で80−90℃になるまで8時間加熱する工程、
n)工程mの前記水層を、10−15℃になるまで8時間冷却し、及び結晶化する工程、
o)工程nから得られた前記結晶を、濾過する工程、
p)工程oの前記結晶を、70−75℃の真空中で乾燥する工程、
q)工程pの前記結晶を、その
1H及び
13C NMRスペクトル並びにそのLCMSスペクトルから、STR#1で表されるオキシレスベラトロールとして特徴づける工程、
STR#1
を含む。
【0009】
本発明の他の特徴及び利点は、本発明の原理を例として説明する添付の図面と併せて、以下の詳細な記述により明らかになろう。
【0010】
実施例
抽出物の準備
アルトカルプス・ヒルスタスの木を、収集及び切断して小片にし、日陰で乾燥させた。乾燥させた材料をすり潰して粗粉末にし、かつ気密容器に保管した。粉末にした材料を、浸漬する量の熱エタノール(3倍量×3回)で完全に抽出した。エタノール抽出物を、濾過により分離し、かつクリーンコンテナに収集した。まとめた抽出物を、50−55℃の真空下で濃縮して厚いペーストにし、かつ真空棚段乾燥器中で乾燥し、粉末を得た。粉末にした抽出物を、室温で、気密容器内で収集及び保管した。
【0011】
活性化合物の単離及び特徴づけ
アルトカルプス・ヒルスタスの木からの粉末状エタノール抽出物を、少量(2倍量)のエタノールに再溶解し、かつ10倍量の水に注いだ。材料を濾過して、水溶性分画及び不溶性分画に分離した。次いで水溶性分画を酢酸エチル(1倍量)で抽出し、酢酸エチル層を完全に乾燥させて粉末を得た。次いで酢酸エチル分画から得られた粉末を水(4倍量)に注ぎ、80−90℃で8時間攪拌した。室温に冷却した後、溶液を濾過し、かつ結晶化固体材料を真空下で、65−75℃で乾燥させた。この濾過した結晶化材料を、その
1H及び
13C NMR スペクトル及びそのLCMSスペクトルからオキシレスベラトロールとして特徴づけ、かつ結晶化材料は、報告された値と比較可能であった。単離されたオキシレスベラトロールは、以下の値を示した:C
14H
12O
4.融点:191−194℃。色:ペールブラウン微細粉末、APCI−MS m/z 245.00(M+H
+)及び245.05(M−H
-)(C
14H
12O
4は244.2426を要する)。化合物の純度を、HPLCによりさらに確かめた。
【0012】
本発明を、好ましい実施形態を参照して説明したが、本発明がそれに限定されないことは、当技術分野の当業者により明確に理解されるであろう。むしろ、本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲と併せてのみ理解されるべきである。
本発明のまた別の態様は、以下のとおりであってもよい。
〔1〕アルトカルプス・ヒルスタスからのオキシレスベラトロールの新規な抽出方法であって、前記方法が、
a)アルトカルプス・ヒルスタスの木を、切断し、乾燥し、及びすり潰して粗粉末にする工程、
b)工程aの粉末状の材料を、熱エタノール(9倍量)を用いて完全に抽出する工程、
c)工程bの前記エタノール抽出物を、濾過して分離する工程、
d)工程cの前記抽出物を、50−55℃の真空下で濃縮して厚いペーストにする工程、
e)工程dの前記抽出物を、65−70℃の真空棚段乾燥器中で完全に乾燥し、粉末を得る工程、
f)工程eの前記粉末を、エタノール(2倍量)中に溶解する工程、
g)工程fの前記エタノール抽出物を、連続的な攪拌下で10倍量の水にゆっくりと加える工程、
h)工程gから得られた前記不溶物を、濾過により分離して透明層を得る工程、
i)工程hの前記透明層を、クロロホルム(1倍量)を用いて洗浄し、及びクロロホルム層を廃棄する工程、
j)工程iの前記透明層を、酢酸エチル(1倍量)を用いて抽出する工程、
k)工程jの前記酢酸エチル層を、50−55℃の真空下で濃縮して厚いペーストにする工程、
l)工程kの前記濃縮抽出物を、65−70℃の真空棚段乾燥器中で乾燥して粉末を得る工程、
m)工程lの前記粉末を、水(4倍量)に溶解し、及び攪拌下で80−90℃になるまで8時間加熱する工程、
n)工程mの前記水層を、10−15℃になるまで8時間冷却し、及び結晶化する工程、
o)工程nから得られた前記結晶を、濾過する工程、
p)工程oの前記結晶を、70−75℃の真空中で乾燥する工程、
q)工程pの前記結晶を、その1H及び13C NMRスペクトル並びにそのLCMSスペクトルから、STR#1で表されるオキシレスベラトロールとして特徴づける工程、
STR#1
を含む、方法。