(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記熱可塑性補強層(2c)は、前記内側ライナー(2p)を形成する前記熱可塑性ポリマー材料のポリマーファミリーと同じかまたは異なっていてよい、ポリマーファミリーの熱可塑性マトリックスを含み、両方のポリマーファミリーは、ポリオレフィン、ポリアミド、ポリエステル、ポリウレタン、ポリカーボネート、ポリアリールエーテルケトン、ポリ塩化ビニルの群から選択され、前記熱可塑性マトリックスの前記ポリマーファミリーは、前記内側ライナーを形成する前記熱可塑性ポリマー材料の前記ポリマーファミリーと接着適合性がある、請求項1に記載の複合圧力容器。
前記内側ライナー(2p)は、前記熱可塑性補強層と前記内側ライナーとの接着を強化するために、前記内側ライナーと前記熱可塑性補強層との間に挟まれた結合層(2a)をさらに含む、請求項1から5のいずれか一項に記載の複合圧力容器。
熱可塑性補強層(2c)は、連続補強繊維(11)の束またはテープを反応性熱可塑性前駆体(12r)に通し、前記補強繊維に含浸させ、こうして含浸させた前記補強繊維(l0i)を前記内側ライナーの前記円筒形の部分の周りに巻き付けるか、または配置し、反応性組成物が熱可塑性マトリックスを形成するのに必要なプロセス条件を適用することによる、フィラメントまたはテープワインディングまたは配置によって適用される、請求項7に記載のプロセス。
前記外側熱硬化性補強構造体(3c)は、前記熱可塑性補強層(2c)上での、反応性熱硬化性樹脂に埋め込まれた補強繊維のフィラメントまたはテープワインディングまたは配置によって適用される、請求項7から10のいずれか一項に記載のプロセス。
前記外側熱硬化性補強構造体(3c)は、編組されるか、織られるか、またはフィラメントを巻き付けられた補強繊維の布地で前記本体を巻き、熱硬化性樹脂で前記布地を含浸することによって、適用され、プロセス条件は、前記熱硬化性樹脂を架橋させるために維持される、請求項7から10のいずれか一項に記載のプロセス。
前記熱可塑性補強層(2c)は、前記長手方向軸X1に対して80〜100°で構成される角度で配置された繊維を含む、請求項7から12のいずれか一項に記載のプロセス。
前記外側熱硬化性補強構造体は、前記長手方向軸X1に対して5〜79°で構成される角度で螺旋状に配置された、少なくともある割合の補強繊維と、任意選択で前記長手方向軸X1に対して80〜100°で構成される角度で配置された別の割合の補強繊維とを含む、請求項7から12のいずれか一項に記載のプロセス。
【背景技術】
【0002】
高い圧力の流体を貯蔵するための複合圧力容器は、特に容器が移動式である場合に、金属の圧力容器よりも軽量なため有利であり、例えば、輸送(自動車、航空宇宙産業、鉄道など)の分野で圧縮流体を燃料として貯蔵するための圧力容器がある。複合圧力容器は、典型的には、(補強されていない)熱可塑性ポリマー、例えばPAまたはHDPEで作られた、内側ライナーを含む。内側ライナーは、内側キャビティを画定し、概して、内側キャビティを閉じるドーム形状のキャップが両側面に配置された、長手方向軸X1に沿って延びる実質的に円筒形の部分を含む。対応するコネクタを備えた、少なくとも1つの開口部が、加圧流体を内側キャビティに注入し、内側キャビティから抽出するために設けられる。構造を補剛し、圧力容器が加圧流体で満たされたときに内側キャビティの中の高い圧力に抵抗するようにするため、内側ライナーは、外側熱硬化性補強構造体を形成する連続繊維補強複合積層物に囲まれる。複合圧力容器の例は、例えば、特許文献1に記載されている。
【0003】
外側熱硬化性補強構造体は、内側キャビティ内の高い圧力に耐えるために複合圧力容器によって必要とされる強度および剛性を提供する。
図1(a)に示すように、所望の機械的特性を提供するために、外側熱硬化性補強構造体は、特定のパターンに従って配置された連続補強繊維を含み、特定のパターンは、概して以下を含む。
・フープ方向に配置された、すなわち、長手方向軸X1に対して80〜100°で構成される角度で配置された、ある割合の繊維3h、および、
・螺旋方向に配置された、すなわち、長手方向軸X1に対して10〜70°で構成される角度で配置された、ある割合の繊維3x。
補強繊維は、熱硬化性マトリックスに埋め込まれて連続繊維補強熱硬化性複合材を形成する。
【0004】
外側熱硬化性補強構造体は、以下の方法を含む、種々の技術によって内側ライナー上に巻かれ得る。外側熱硬化性補強構造体は、ポリマーマトリックスの凝固時に繊維補強熱硬化性複合材の外側シェルを形成するように、液体状態の熱硬化性樹脂を含浸させた補強繊維の束またはテープを巻き付けることによって、フィラメントワインディング(FW)またはテープワインディング(TW)(本明細書では、組み合わせて「フィラメントワインディング」と呼び、フィラメントワインディングおよびテープワインディングの両方を含める)により適用され得る。巻き角は、当技術分野で周知のように非常に正確に制御され得、ある割合の繊維の束またはテープは、フープ方向に配置され、別の割合の繊維は螺旋状に配置される。
【0005】
あるいは、編組予備成形物は、内側ライナーの上に形成または挿入され、樹脂トランスファ成形(RTM)または真空注入プロセス(VIP)などの注入技術によって液体熱硬化性樹脂を含浸させることができる。この技術は、フィラメントワインディングより速いという利点を有するが、編組された繊維のクリンピングおよびうねりは、最終的な複合材の強度および剛性に悪影響を及ぼす。
【0006】
複合圧力容器を製造するのに使用される技術に関わらず、複合容器を不可逆的に破壊し得る現象は、圧力容器内側の圧力の急な損失の場合に観察されている。場合によっては、
図1(b)に示すように、内側ライナーは、例えば加圧流体の急速放出によって引き起こされる、圧力の損失の作用を受けて、外側熱硬化性補強構造体から剥離し、潰れ得る。内側ライナーの潰れは、内側ライナーの引き裂きまたは穿刺など、不可逆の損傷を引き起こし得る。この場合、複合圧力容器は、破壊され、修理できず、取り換えなければならない。この現象は、加圧ガスが内側ライナーの壁に浸透し、内側ライナーと外側熱硬化性補強構造体との間の界面にとどまる場合に拡大し、よって、実質的に、内側ライナーの壁にわたる圧力差が増大し、それに応じて剥離のリスクが増大する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、複合圧力容器内の圧力の急な損失の場合における内側ライナーの剥離および潰れの問題に対する解決策を提案する。本発明のこの利点および他の利点は、以下のセクションにおいてさらに詳細に説明する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
添付の独立請求項は本発明を定義する。従属請求項は好適な実施形態を定義する。具体的には、本発明は、複合圧力容器に関し、複合圧力容器は、
(a)長手方向軸X1に沿って延びる円筒形の部分を含み、かつ熱可塑性ポリマー材料で作られた内側ライナーを含む本体と、
(b)本体の周りに巻かれ、かつ補強繊維および熱硬化性マトリックスを含む連続繊維補強熱硬化性マトリックス複合材で作られた外側熱硬化性補強構造体と
を含む。
【0010】
本体は、内側ライナーの円筒形の部分に接着された、補強繊維および熱可塑性マトリックスを含む連続繊維補強熱可塑性複合材で作られた熱可塑性補強層をさらに含むことを特徴としている。
【0011】
熱可塑性補強層は、内側ライナーを形成する熱可塑性ポリマー材料のポリマーファミリーと同じかまたは異なっていてよい、ポリマーファミリーの熱可塑性マトリックスを含む。両方のポリマーファミリーは、ポリオレフィン、ポリアミド、ポリエステル、ポリウレタン、ポリカーボネート、ポリアリールエーテルケトンの群から選択され得る。熱可塑性マトリックスのポリマーファミリーは、内側ライナーを形成する熱可塑性ポリマー材料のポリマーファミリーと接着適合性がなければならない。
【0012】
2つの熱可塑性樹脂は、内側ライナーの熱可塑性樹脂が分散成分x
2pd=γ
2pd/γ
2pを有し、熱可塑性補強層の熱可塑性マトリックスが分散成分x
2cd=γ
2cd/γ
2cを有する場合に、接着適合性があるとみなされ得、ここで、x
2pd=x
2cd×(1±ε)であり、ε=0.2、好ましくはε=0.15、さらに好ましくはε=0.1であり、γ
2p、γ
2cは、内側ライナー2pの熱可塑性樹脂および熱可塑性補強層2cの熱可塑性マトリックスそれぞれの表面エネルギーであり、γ
2pd、γ
2cdは分散表面エネルギーである。この条件により、同じかまたは少なくとも同様のポリマー間で最良の接着が行われる理由が説明される。
【0013】
熱可塑性補強層は、以下の中から選択され得る。
・補強繊維が長手方向軸X1に対して80〜100°で構成される角度で配置されている、フィラメントもしくはテープを巻き付けられるかもしくは配置された構造体、または、
・補強繊維が編組もしくは織物を形成する構造体。
【0014】
外側熱硬化性補強構造体は、以下の中から選択され得る。
・少なくともある割合の補強繊維が長手方向軸X1に対して5〜79°で構成される角度で螺旋状に配置され、任意選択で、別の割合の補強繊維が長手方向軸X1に対して80〜100°で構成される角度で配置されている、フィラメントもしくはテープを巻き付けられるかもしくは配置された構造体、または、
・補強繊維が編組もしくは織物を形成する構造体。
【0015】
内側ライナーは、熱可塑性補強層と内側ライナーとの接着を強化するために、内側ライナーと熱可塑性補強層との間に挟まれた結合層を含み得る。
【0016】
本発明はまた、前述したような複合圧力容器を製造するためのプロセスに関し、このプロセスは、以下の:
(a)熱可塑性ポリマー材料で作られ、長手方向軸X1に沿って延びる円筒形の部分を含む、内側ライナーを用意するステップと、
(b)熱可塑性補強層を内側ライナーの円筒形の部分上に巻くステップであって、熱可塑性補強層は、熱可塑性マトリックスに埋め込まれた連続補強繊維を含む連続繊維補強熱可塑性複合材で作られる、ステップと、
(c)熱可塑性マトリックスを凝固させて、内側ライナーの円筒形の部分に接着した連続繊維補強熱可塑性複合材を形成し、よって、本体を形成するステップと、
(d)連続繊維補強熱硬化性マトリックス複合材で作られた外側熱硬化性補強構造体を、本体上に巻いて、複合圧力容器を形成するステップと
を含む。
【0017】
第1の実施形態では、熱可塑性補強層は、予備成形物の形態で適用され得、予備成形物は、以下の、
・一方向の連続補強繊維、および繊維もしくは粉末の形態の固体熱可塑性離散粒子が、密接に接触している、トウプレグ(towpreg)、または、
・一方向の連続補強繊維が固体の連続熱可塑性マトリックスに埋め込まれている、プリプレグ、
から選択され、熱可塑性樹脂は、融解温度または軟化温度を超えて加熱されて、融解または軟化した熱可塑性樹脂を備える、加熱されたトウプレグまたはプリプレグを、加熱されたトウプレグまたはプリプレグを内側ライナーの円筒形の部分上に巻き付けるかまたは配置する前に、融解または軟化した熱可塑性樹脂による繊維の含浸を促すために圧力を加えて、形成する。
【0018】
第2の実施形態では、熱可塑性補強層は以下の、
・巻かれたライナーを形成するために、トウプレグを編組するか、織るか、または巻き付けることによって得られた布地で内側ライナーを巻くステップであって、トウプレグは、繊維または粉末の形態の固体熱可塑性離散粒子と密接に接触している一方向の連続補強繊維を含む、ステップと、
・こうして巻かれた布地を加熱して、トウプレグの熱可塑性離散粒子を融解するステップと、
・巻かれたライナーが成形キャビティ内に位置付けられた状態で内側ライナーの内側に加圧ガスを吹き付けて、布地をプレスし、こうして融解した熱可塑性樹脂による補強繊維の含浸を促すステップと、
・布地を冷却して熱可塑性マトリックスを凝固させるステップと
を適用され得る。
【0019】
第3の実施形態では、熱可塑性補強層は、連続補強繊維の束またはテープを反応性熱可塑性前駆体に通し、補強繊維に含浸させ、こうして含浸させた補強繊維10iを内側ライナーの円筒形の部分の周りに巻き付けるか、または配置し、反応性組成物が熱可塑性マトリックスを形成するのに必要なプロセス条件を適用することによる、フィラメントまたはテープワインディングまたは配置によって適用され得る。
【0020】
熱可塑性補強層は、好ましくは、長手方向軸X1に対して80〜100°で構成される角度で配置された繊維を含む。
【0021】
外側熱硬化性補強構造体は、熱可塑性補強層上での、反応性熱硬化性樹脂に埋め込まれた補強繊維のフィラメントまたはテープワインディングまたは配置によって適用され得る。あるいは、外側熱硬化性補強構造体は、編組されるか、織られるか、またはフィラメントを巻き付けられた補強繊維の布地で本体を巻き、熱硬化性樹脂で布地を含浸することによって、適用され得、プロセス条件は、熱硬化性樹脂を架橋させるために維持される。
【0022】
外側熱硬化性補強構造体は、好ましくは、長手方向軸X1に対して5〜79°で構成される角度で螺旋状に配置された、少なくともある割合の補強繊維を含む。任意選択で、別の割合の補強繊維が、長手方向軸X1に対して80〜100°で構成される角度で配置され得る。
【0023】
本発明の性質をさらに十分に理解するために、添付図面と共に理解される以下の詳細な説明を参照する。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明は、特に輸送(陸上、航空、または水上輸送)の分野において、圧縮流体、例えば、圧縮天然ガス(CNG)、圧縮水素ガス(CHG)、液化石油ガス(LPG)などを貯蔵および送達するのに一般的に使用されるタイプの複合圧力容器1に関する。本発明の複合圧力容器は、ポリオレフィンまたはポリアミドなどであるがこれらに制限されない熱可塑性ポリマー材料で作られ、加圧流体を貯蔵するための内側キャビティ4を画定する、内側ライナー2pを含む本体2bを含む。内側ライナー2pは、長手方向軸X1に沿って延びる円筒形の部分を含み、内側キャビティ4を閉じかつ画定するドーム形状のエンドキャップが、長手方向軸X1に沿って両側に配置されている。
【0026】
キャビティ内の高い圧力に抵抗するため、複合圧力容器は、本体の周りに巻かれた外側熱硬化性補強構造体3cを含む。外側熱硬化性補強構造体は、熱硬化性マトリックス13に埋め込まれた補強繊維11を含む、連続繊維補強熱硬化性マトリックス複合材で作られている。
【0027】
熱可塑性ポリマーと熱硬化性複合材との間の接着が必ずしも強力ではないので、具体的には、内側ライナーがポリオレフィン、例えば高密度ポリエチレン(HDPE)またはポリプロピレン(PP)で作られている場合、加圧流体が圧力容器から急に排出された際に剥離のリスクがある。剥離のリスクは、内側ライナーの壁に浸透し、内側ライナーと外側熱硬化性補強構造体との間の界面にとどまることができる小分子で構成された加圧ガスでは、特に高い。
【0028】
今日までわずかかしか成功していないが、この問題を解決しようとする当技術分野の努力は、例えばライナーの外側表面をプラズマなどによって処理することによって、内側ライナーと外側熱硬化性補強構造体との間の接着を高めることに集中してきたが、本発明の要旨は、このような接着を改善しようとすることではなく、本体2bを補強しようとすることである。本発明の複合圧力容器の本体2bは、内側ライナーの円筒形の部分に接着された、補強繊維11および熱可塑性マトリックス12を含む、連続繊維補強熱可塑性複合材で作られた熱可塑性補強層2cをさらに含む。
【0029】
本文書では、以下の表現は、その一般的に認識される定義に従うか、または少なくとも完全に一致する、以下の意味を有する。
・「(連続)繊維補強熱硬化性/熱可塑性複合材」は、熱硬化性/熱可塑性ポリマーのポリマーマトリックスに埋め込まれた、連続補強繊維、例えば、炭素繊維(CF)、ガラス繊維(GF)、またはアラミド繊維(AF)を含む、複合材料である。
・「連続繊維」は、エンドレス繊維に適用されるが、80mm超の平均長さを有する任意の繊維にも適用される。これは、複合構造体に加えられる全負荷がポリマーマトリックスから、少なくとも80mmの長さを有する繊維に伝達され得るので、当技術分野では理にかなっている。本文書で言及されるすべての補強繊維は、連続繊維である。
・「融解温度」は、半結晶性の熱可塑性樹脂にのみ適用され、超えると結晶がなくなる温度を特徴とする。
・「軟化温度」は、非晶質の熱可塑性樹脂に適用され、超えると非晶質の熱可塑性樹脂の粘度が繊維を流動させ含浸するのに十分低くなる温度を指す。
・「熱可塑性樹脂を凝固させる」は、流動性の液体状態から、非流動性の半結晶性固体または固体の非晶質ポリマーへ変化することを意味する。
・「熱硬化性樹脂を凝固させる」は、流動性の液体樹脂から、非流動性の硬化した熱硬化性樹脂へ変化することを意味する。
・「熱可塑性樹脂」または「熱可塑性ポリマー」または「熱可塑性マトリックス」は、特定の温度を超えると柔軟または成形可能となり、冷却されると凝固する、ポリマーのファミリーである。これらは、共有結合によって互いに結合しないポリマー鎖で構成される。熱可塑性樹脂の粘度は、高温であっても、一般的には、熱硬化性樹脂で通常適用される技術、例えば樹脂トランスファ成形(RTM)などによって、高密度の補強繊維層(dense bed of reinforcing fibre)に含浸するには高すぎる。
・「熱硬化性樹脂」または「熱硬化性ポリマー」または「熱硬化性マトリックス」は、低粘度の樹脂から不可逆的に硬化または架橋されたポリマーのファミリーである。硬化プロセスは、樹脂を共有結合鎖の不融性ポリマーネットワークに変化させ、しばしば触媒と混合することによって熱または適切な放射線の作用により誘発される。未硬化樹脂の低い粘度により、注入技術、例えば樹脂トランスファ成形(RTM)などによる、高密度の繊維層の含浸が可能である。
・「プリプレグ」は、部分硬化した熱硬化性樹脂または熱可塑性樹脂を含浸させた連続補強繊維のテープを指す。
・「トウプレグ」は、繊維または粉末など、粒子形態の固体熱可塑性ポリマーと密接に接触している連続補強繊維の束またはテープを指す。
・「布地」は、糸で作られた2次元のテキスタイル構造体である。これは、とりわけ、織物、編組、編物を含む。
・「織物」または「織布」は、糸(緯糸と呼ばれる)が、緯糸に垂直な、一連の平行な糸(縦糸と呼ばれる)と織り交ざる、布地である。織り交ざるパターンは、平織布、綾織物、繻子などを形成するよう、様々であってよい。織物は、二重曲率形状に適応するように限られたドレープ性を有する。
・「編組」は、3つまたは4つ以上の糸が斜めの構成で互いに交差するように、それらを織り交ぜることによって得られる。平坦な編組、管状編組(スリーブ)、および厚み全体にわたる3D編組(through thickness 3D-braid)がある。編組のドレープ性は、概して、織物のドレープ性より優れている。
【0030】
本体−内側ライナー2p
内側ライナー2pは、補強されていない熱可塑性ポリマーで作られ、これは、貯蔵圧力で貯蔵するように設計された流体に、実質的に不浸透性でなければならない。完全に不浸透であることは、内側ライナーと補強構造体との間に形成された界面において加圧ガスが移動する前述した問題があるすべての流体で達成することが常に可能であるとは限らない。好適な熱可塑性樹脂は以下を含む:
・ポリオレフィン、例えば、(高密度)ポリエチレン((HD)PE)、ポリプロピレン(PP)、
・ポリアミド、例えばPA6、PA66、PA12、
・ポリエステル、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、
・ポリウレタン、
・ポリカーボネート、
・ポリアリールエーテルケトン、例えば、PEEK、PEK、PEKK、PEEKK、PEKEKK。
【0031】
ガスバリア材料が、内側ライナーに含まれて、特定のガスに対する不浸透性を高めることができる。
【0032】
内側ライナー2pは、ドーム形状のキャップによって両端部が閉じられた実質的に円筒形の部分を含むキャビティ4を備えた中空本体を画定する。これは、キャビティの内部を管および弁のシステム(不図示)と流体接続するために適切な接続部を備えた、少なくとも1つの開口部5を含む。少なくとも1つの開口部は、概して、長手方向軸X1に沿って、ドーム形状のキャップのうちの一方(または両方)の上に中心がある。
図2(a)では、単一の開口部5を備えた内側ライナー2pが示されている。内側ライナーは、回転成形によって製造され得るが、好ましくは、射出成形された予備成形物または押し出されたパリソンを吹込み成形することによって製造される。
【0033】
本体−熱可塑性補強層2c
熱可塑性補強層2cは本体の一部である。これは、キャビティの急な減圧の場合に潰れることに対して内側ライナーを補強するのに使用される。これは、少なくとも内側ライナーの円筒形の部分に接着される。実際、内側ライナーの円筒形の部分の単曲率により、さらに構造的に安定した二重曲率のドーム形状のキャップよりも、屈曲変形および潰れを起こしやすい。適用に応じて、熱可塑性補強層の連続補強繊維は、炭素繊維(CF)、ガラス繊維(GF)、またはアラミド繊維(AF)とすることができる。
【0034】
一実施形態では、熱可塑性補強層2cの少なくともある割合の連続補強繊維11は、長手方向軸X1に対して80〜100°で構成される角度で配置される。このような配置は、フープ方向と呼ばれる。フープ方向の補強繊維は、キャビティ内の高い圧力に対する圧力容器の抵抗を増大させるのに特に有用である。しかしながら、これらはまた、圧縮による潰れに対して内側ライナーを相当補剛する。
【0035】
あるいは、または付随して、熱可塑性補強層2cは、織物または編組に配置された補強繊維の少なくとも一部を含み得る。編組中の連続補強繊維は、概して螺旋状に配置される。織物が使用される場合、連続補強繊維の向きは、布地の向きによって決まる。織物は、縦糸が長手方向軸X1に平行(または垂直)な状態で、内側ライナーの円筒形の部分の周りに巻かれ得、その結果、緯糸繊維はフープ方向に配置される。あるいは、織物は、長手方向軸X1と角度をなして巻かれ得、その結果、螺旋状に配置された繊維を生じる。織り交ぜられた繊維のうねりにより、織られるかまたは編組された繊維で達成される内側ライナーの強化および補剛は、一方向繊維の積層パイルよりも低い。しかしながら、本体の製造は、布地では、より速い。
【0036】
熱可塑性補強層2cの熱可塑性マトリックスは、ポリオレフィン(例えば、(HD)PE、PP)、ポリアミド(例えば、PA6、PA66、PA12)、ポリエステル(例えば、PET、PEN)、ポリウレタン、ポリカーボネート、ポリアリールエーテルケトン(例えば、PEEK、PEK、PEKK、PEEKK、PEKEKK)の群の中から選択され得る。熱可塑性マトリックスは、内側ライナー2pの熱可塑性樹脂への接着が、複合圧力容器の所望の適用のために十分強力であるように、選択しなければならない。適合性試験が、例えば、内側ライナーと熱可塑性補強層の熱可塑性マトリックスとの間に十分強い結合を形成するための熱可塑性ポリマーの接着適合性対(adhesion compatible couple)を決定するために剥離試験によって、実行され得る。最も強い結合は、概して、同じ化学的性質の熱可塑性樹脂によって、すなわち、同じポリマーまたは少なくとも同じポリマーファミリーを使用して、形成される。
【0037】
異なる熱可塑性樹脂が、内側ライナーおよび熱可塑性マトリックスに使用される場合、熱可塑性樹脂の接着適合性対の選択は、互いに接触する際、熱可塑性マトリックスが、内側ライナーの熱可塑性樹脂の固体表面を湿潤させる液相を形成することを考慮に入れなければならない。固体表面の高い固体表面エネルギーγsが、より低い液体表面エネルギーγlを有する液体材料の湿潤、および液相(=熱可塑性マトリックス)の凝固後の2つの熱可塑性樹脂の接着を高めるという、当技術分野における一般的な合意がある。さらに、固相および液相の分散成分x
d=γ
d/γと極性成分x
p=γ
p/γとの一致も、液体表面と固体表面との間の湿潤、および液相の凝固後の接着を高める。ポリマーの表面張力γ、ならびに極性成分x
pおよび分散成分x
dは、教科書で得られる。例えば、Table 1(表1)は、一連の熱可塑性樹脂の表面エネルギーγ、分散表面エネルギーγ
dおよび極性表面エネルギーγ
pの値、ならびに分散成分x
dおよび極性成分x
pの値を示す。
【0039】
比較的低い表面エネルギーおよびゼロの極性成分は、ポリオレフィンが多くの材料に接着することが困難な理由を明白にする。ポリ塩化ビニル(PVC)は、分散成分x
d=5%で約42mJ/m
2の表面エネルギーを有し、ポリオレフィンと接着適合性対を形成する最も見込みのある候補と思われるが、接着は、より極性の熱可塑性対、例えばPA12とPETによるものより低い。
【0040】
経験則で、2つの熱可塑性樹脂は、内側ライナーの熱可塑性樹脂が分散成分x
2pd=γ
2pd/γ
2pを有し、熱可塑性補強層の熱可塑性マトリックスが分散成分x
2cd=γ
2cd/γ
2cを有する場合に、接着適合性があるとみなされ得、ここで、x
2pd=x
2cd×(1±ε)であり、ε=0.2、好ましくはε=0.15、さらに好ましくはε=0.1であり、γ
2p、γ
2cは、内側ライナー2pの熱可塑性樹脂および熱可塑性補強層2cの熱可塑性マトリックスそれぞれの表面エネルギーであり、γ
2pd、γ
2cdは分散表面エネルギーである。
【0041】
所与の適用について十分に接着適合性がない2つの熱可塑性樹脂が、熱可塑性補強層の熱可塑性マトリックスとして、また内側ライナーの熱可塑性樹脂として選択される場合、結合層2a(不図示)が、内側ライナーの円筒形の部分の外側表面に適用され得る。例えば、市場で容易に入手でき、一般的に、適合性が不十分な熱可塑性層の同時押出し成形に使用される、タイ層(tie layer)は、ポリアミドまたはポリエステルに結合したポリオレフィンなどの、適合性が不十分な熱可塑性樹脂間の接着を高めるために、結合層として使用され得る。タイ層の例は、エチレン酢酸ビニル(EVA)、エチレンメチルアクリレート(EMA)、エチレンアクリル酸(EAA)およびエチレンメタクリル酸(EMAA)などの、酸変性オレフィンコポリマー、ならびに、エチレングラフト化無水マレイン酸(ethylene-grafted-maleic anhydride)(AMP)を含む。無水物変性ポリエチレンは、ポリオレフィンが、ポリアミドまたはエチレンビニルアルコールコポリマー(EVOH)と結合しなければならない場合に、しばしば使用され、これは、アミン末端基と反応してイミドを形成し、アルコールと反応してエステル架橋を形成するためである。AMPは、PETおよびPVDCとのポリオレフィンの接着を改善するためにも使用され得る。
【0042】
理想的には、内側ライナーと熱可塑性補強層との間の接着は、剥離が凝集破壊を伴う、すなわち、亀裂が界面に沿って(だけでは)なく、界面にわたって広がるように、なされ得る。凝集破壊は、同じ熱可塑性樹脂が内側ライナーおよび熱可塑性補強層のマトリックスの両方に使用された場合に、観察された。
【0043】
外側熱硬化性補強構造体3c
先行技術の複合圧力容器と同じように、本発明の複合圧力容器の外側熱硬化性補強構造体3cは、必要な容器強度および剛性を提供して、キャビティに収容される加圧流体の内圧に抵抗する。熱可塑性補強層2cへの本体の接着は、外側熱硬化性補強構造体が、キャビティの内側から外側に向かって内側ライナーの壁に加えられて、外側シェルを形成する外側熱硬化性補強構造体に本体を押し付ける圧力への抵抗を提供するので、最適化される必要はない。キャビティの内側が押し下げられた場合、本体は、熱可塑性補強層2cのおかげで、潰れないように十分剛性である。本発明に必須ではないが、外側熱硬化性補強構造体3cと熱可塑性補強層との間の接着は、例えば、プラズマ、コロナなどによって、または接着層を追加することによって、本体の外側表面を表面処理することにより高められ得る。
【0044】
外側熱硬化性補強構造体は、熱硬化性マトリックスに埋め込まれた連続補強繊維を含む。好適な実施形態では、少なくともある割合の連続補強繊維11が、長手方向軸X1に対して5〜79°で構成される角度で本体2b上に、例えばフィラメントまたはテープワインディングまたは配置によって、螺旋状に配置される。別の割合の連続補強繊維は、長手方向軸X1に対して80〜100°で構成される角度で、フープ方向に配置され得る。これは、熱可塑性補強層が、複合圧力容器の最適な強度を確実にするために、フープ方向に配置された任意のまたは十分な連続補強繊維を含まない場合に、特に有利である。補強繊維の配向角は、本体2bの円筒形の部分において測定される。
【0045】
代替的または付随的な実施形態では、少なくともある割合の連続補強繊維は、織られるかまたは編組された構造体として配置される。熱可塑性補強層について前述したように、連続補強繊維は、長手方向軸X1と角度をなして巻かれた、編組された構造体または織られた構造体の場合に、螺旋状に配置され得る。熱可塑性補強層2cがフープ方向に配置された連続補強繊維を含まない場合、外側熱硬化性補強構造体3cがフープ方向に連続補強繊維を含むのが好ましい。縦糸が長手方向軸X1に平行な状態で織物が巻かれると、緯糸繊維はフープ方向に配置される。
【0046】
プロセス
前述したような複合圧力容器は、以下の:
(a)熱可塑性ポリマー材料で作られ、長手方向軸X1に沿って延びる円筒形の部分を含む内側ライナー2pを設けるステップと、
(b)熱可塑性補強層2cを内側ライナーの円筒形の部分上に巻くステップであって、熱可塑性補強層は、熱可塑性マトリックス12に埋め込まれた連続補強繊維11を含む連続繊維補強熱可塑性複合材で作られる、ステップと、
(c)熱可塑性マトリックス12を凝固させて、内側ライナーの円筒形の部分に接着した連続繊維補強熱可塑性複合材を形成し、よって、本体2bを形成するステップと、
(d)連続繊維補強熱硬化性マトリックス複合材で作られた外側熱硬化性補強構造体3cを、本体上に巻いて、複合圧力容器を形成するステップと
を含むプロセスによって製造され得る。
【0047】
プロセス−熱可塑性補強層2c
図4〜
図6は、本発明による本体2bを形成するための内側ライナー2pに接着された熱可塑性補強層2cを形成するためのいくつかの技術を示す。2つの主要なルート:乾式ルート(
図4および
図5を参照)、ならびに湿式ルート(
図6を参照)が考えられる。
【0048】
プロセス−熱可塑性補強層2c−乾式ルート
乾式ルートは、トウプレグまたはプリプレグを使用する。一般的に熱硬化性樹脂で適用される、樹脂射出成形(RIM)などの注入技術による、連続補強繊維層の含浸は、熱可塑性樹脂では、実質的により高い粘度により、使用され得ず、含浸を持続不能なレベルまで遅くする。この理由から、熱可塑性トウプレグは、ポリマーを融解する前に補強繊維および固体熱可塑性粒子の密接な接触をもたらし、熱可塑性溶融物が補強繊維層に含浸するために流れなければならない、流動距離を短縮する。補強繊維および熱可塑性粒子のさらに密接な接触および分散により、この流動距離が減少し、熱可塑性溶融物による繊維含浸が加速され容易になる。トウプレグは、室温において非常に可撓性であり、テキスタイル布地、例えば織物または編組へと変形され得る。
【0049】
図3(a)に示すように、トウプレグは、固体熱可塑性離散粒子12と密接に接触して分散された連続補強繊維11で形成される。
図3(b)および
図3(c)に示すように、熱可塑性離散粒子は、繊維12fの形態で、よって、いわゆる混合繊維を形成するか、または、粉末12pの形態で、よって、粉末含浸トウプレグを形成することができる。トウプレグは、室温において可撓性であり、テキスタイル布地、例えば織物、編組などへと変形され得る。トウプレグの補強繊維は、熱可塑性粒子を、その融解温度または非晶質の熱可塑性樹脂の軟化温度を超えて加熱することによって、含浸させ得る。圧力を加えると、補強繊維を含浸し熱可塑性複合材を形成するのに必要とされる、短縮された流動距離にわたる、融解した熱可塑性樹脂の流れが促される。トウプレグ、またはトウプレグで作られた布地は、圧縮成形、ブラダー成形、フィラメント(トウ)ワインディングまたは配置、プルトルージョン、スタンピングなどを含むがこれらに制限されない、当技術分野で既知の多数の技術によって、複合部分へと変形され得る。繊維を含浸させると、この複合部分は、冷却されて熱可塑性樹脂を凝固させることができる。
【0050】
プリプレグは、熱可塑性樹脂によって含浸させた連続補強繊維のテープである。プリプレグは、溶融物の流れを押し進めるために一対のシリンダーを連続的に通過する、加熱されたトウプレグから形成され得る。結果として得られるプリプレグは、室温においてトウプレグよりはるかに堅く、複雑な外形上でのそれらのドレープ性は非常に限られる。混合糸の例は、米国特許第5910361号に見られる。粉末含浸トウプレグを用いた熱可塑性プリプレグの製造は、例えば、米国特許出願公開第2001001408号に記載されている。
【0051】
図4(a)に示すように、熱可塑性補強層は、炉20を通じて、熱可塑性マトリックスの融解/軟化温度を超えてトウプレグ10を加熱し、このように加熱されたトウプレグ10tを融解した熱可塑性樹脂と共にフィラメントワインディングすることによって、内側ライナーの円筒形の部分上に巻かれ得る(当然、同じプロセスがプリプレグで実行され得る)。内側ライナーとの接触領域における、加熱されたトウプレグ10tの張力は、熱可塑性溶融物による補強繊維の含浸を促すのに必要とされる圧力を生じるのに十分でなければならない。追加の圧力が、内側ライナーとのトウプレグの接触領域においてローラーにより加えられ得る(=ローラー補助によるフィラメントワインディング)。冷却されると、熱可塑性樹脂は凝固され、よって、熱可塑性補強層2cを形成する。あるいは、または付随的に、
図4(a)に示すように、トウプレグは、加熱されたトウプレグを内側ライナーの周りに巻き付ける前に炉内で繊維の含浸を促す圧力を生じるために、炉20内に位置するいくつかのローラーの上および下を通ることができる。
【0052】
図4(b)は、内側ライナーおよびトウプレグを所定のパターンに従って位置付けるロボットアーム23によるトウプレグ配置によって内側ライナーが巻かれるところを示す。
図4(c)に示すように、パターンが単に繊維をフープ方向に配置している場合、トウ配置プロセスは、ローラー補助によるフィラメントワインディングと同等となる。トウ配置により、きわめて入り組んだパターンに従ってトウプレグまたはテープを位置付けることができる。
【0053】
図5は、熱可塑性補強層2cを内側ライナー2pの外側表面に接着するための代替的な技術を示す。トウプレグは、テキスタイル布地の形態で、内側ライナー上に巻かれ得る。例えば編組または織物の形態で。
図5(a)は、適切な寸法で別個に製造された管状編組(=スリーブ)を示す。編組された構造体内部の繊維の角度が、スリーブを引っ張ることによって変化され得るので、スリーブは、より大きな直径まで引き伸ばされて内側ライナー上に嵌まり、解放されて内側ライナーの外形に完全に嵌合することができる。代替的な実施形態では、トウプレグは、本来の場所で、内側ライナー上に直接編組されて、内側ライナーの外形に完全に嵌まることができる。
【0054】
織物は、長手方向軸X1に対する繊維のアライメント角度を制御して、内側ライナーの円筒形の部分上に巻かれ得る。例えば、縦糸は、長手方向軸X1に平行とすることができ、緯糸は、フープ方向に配置され得る。あるいは、織物は、繊維が長手方向軸X1と角度をなして巻かれて、螺旋状に配置された繊維をもたらし得る。
【0055】
巻かれた布地は次に、熱可塑性粒子12の融解/軟化温度を超えて加熱され、成形キャビティ内に位置付けられる。圧力が、加圧流体(例えば、空気)を内側ライナーに吹き込むことによって加えられ、内側ライナーの壁の膨らみを誘発し、これにより、加熱された布地を、成形キャビティの壁に押し付ける。圧力および温度は、熱可塑性溶融物による補強繊維の含浸を完了するのに十分な時間にわたり、維持されなければならない。熱可塑性溶融物は、冷却されて凝固し、よって、熱可塑性補強層2cを内側ライナー上に形成し、補強され、型から抜き出され得る本体2bを生じることができる。
【0056】
第1の代替案では、内側ライナーを巻く布地は、成形キャビティの外側で、例えば赤外炉内で、加熱され、より低い温度の成形キャビティ内に位置付けられ得る。第2の代替案では、巻かれたライナーは、加熱された成形キャビティ内に位置付けられ得、これは、その後、冷却されて、熱可塑性樹脂を凝固させる。第1の代替案は、型が断続的に加熱および冷却される必要がないので、一般的により短くより安価なプロセスサイクルを生じるが、補強繊維の不完全な含浸のリスクは、成形キャビティ内での含浸中における熱可塑性溶融物の温度の低下により高くなる。第2のオプションは、より長くより高価なプロセスサイクルを費やして、補強繊維の含浸を最適化する条件を保証し、それは、サイクルごとに、型が融解温度を超えて加熱され、凝固温度未満に冷却されなければならないためである。
【0057】
プロセス−熱可塑性補強層2c−湿式ルート
図6(a)に示すように、いくつかの熱可塑性樹脂は、熱可塑性前駆体12aと熱可塑性反応性化合物12bとを混合して熱可塑性反応性前駆体12rを形成し、これを反応させて熱可塑性樹脂を形成することによって、反応性熱可塑性システムから、本来の場所で製造され得る。このような反応性熱可塑性樹脂の利点は、開始成分(熱可塑性前駆体12aおよび熱可塑性反応性化合物12b)が低い粘度を有し、それらを熱硬化性樹脂のように処理することができることである。このような反応性システムの例は、ポリオールとポリイソシアネートの反応による熱可塑性ポリウレタン(TPU)の重合を含む(例えば、米国特許第8034873号を参照)。別の例は、例えば、米国特許第5747634号に記載されるような、ポリアミドを形成するための活性化アニオン性ラクタムの重合である。
【0058】
図6(a)に示すように、熱硬化性複合材のフィラメントワインディングに使用されるのと同様のフィラメント/テープワインディングの構成は、反応性熱可塑性システムを使用して熱可塑性補強層を製造するのに使用され得る。熱可塑性前駆体12aおよび熱可塑性反応性化合物12bは、混合チャンバと流体連通している別個のタンク内に適切な状態で貯蔵される。熱可塑性前駆体12aおよび熱可塑性反応性化合物12bは、計量されて混合チャンバに入れられ、ここで、混合されて、反応性熱可塑性前駆体12rを形成し、これが、含浸チャンバ21に移され、補強繊維11の束またはテープによって連続して横断される。反応性熱可塑性前駆体12rは低い粘度を有するので、含浸チャンバ内での通過する繊維11の含浸は、迅速かつ容易で、よって、内側ライナー2p上に巻き付けられるかまたは設置された、含浸繊維束/テープ10iを形成する。反応性熱可塑性前駆体12rは、反応させられて、内側ライナーに接着された熱可塑性補強層2cを形成し、一緒になって本発明の複合圧力容器の本体2bを形成する。
【0059】
プロセス−外側熱硬化性補強構造体3c
外側熱硬化性補強構造体3cは、複合圧力容器の分野で一般的に使用されるように、熱硬化性マトリックスに埋め込まれた補強繊維を含む。これは、当技術分野で既知の任意の技術によって適用され得る。具体的には、外側熱硬化性補強構造体は、ワインディングもしくは配置プロセスによって、または注入プロセスによって、適用され得る。
【0060】
プロセス−外側熱硬化性補強構造体3c−ワインディング/配置
図7は、熱硬化性複合材のワインディングプロセスを示し、外側熱硬化性補強構造体3cが、熱可塑性補強層2c上での、反応性熱硬化性樹脂に埋め込まれた補強繊維のフィラメントまたはテープワインディングまたは配置によって適用される。熱硬化性前駆体13aおよび反応性熱硬化性化合物13bは、混合チャンバと流体連通している別個のタンク内に適切な状態で貯蔵される。熱硬化性前駆体13aおよび熱硬化性反応性化合物13bは、計量されて混合チャンバ内に入れられ、ここで、混合されて、反応性熱硬化性前駆体13rを形成し、これは、含浸チャンバ21に移され、補強繊維11の束またはテープによって連続的に横断され、よって、本体2b上に巻き付けられるかまたは配置された、含浸繊維束/テープ14iを形成する。反応性熱硬化性前駆体13rは、硬化させられて、外側熱硬化性補強構造体3cを形成する、架橋した熱硬化性複合材を生じ、よって、本発明の複合圧力容器の製造が完了する。
【0061】
繊維束/テープは、当技術分野で周知のような所望のパターンに従って、非常に正確に適用され得る。熱可塑性補強層2cがフープ方向に配置された補強繊維を全くまたはほとんど含まない場合、外側補強層3cが、所望の機械的特性を達成するためにフープ方向に配置された十分な割合の補強繊維を含むことが好ましい。
【0062】
プロセス−外側熱硬化性補強構造体3c−注入
外側熱硬化性補強構造体3cはまた、2段階プロセスで適用され得、この2段階プロセスは、(a)乾燥補強繊維構造体を本体2b上に適用し、その後、(b)注入技術によって反応性熱硬化性前駆体13rで乾燥繊維構造体を含浸することを含む。
【0063】
乾燥補強繊維(すなわち、樹脂を含浸させていない)は、(
図8(a)に示すような)フィラメント/テープワインディングまたは配置、本来の場所での本体上への編組、編組されたスリーブまたは織られた布地などの布地で本体を巻くことによって、本体2b上に適用され得る。
【0064】
こうして得られる乾燥補強繊維構造体の含浸は、注入プロセス、例えば樹脂射出成形(RIM)、樹脂トランスファ成形(RTM)、真空注入プロセス(VIP)などによって、実行され得る。
図8(b)に示すように、樹脂注入は、乾燥繊維を通じて反応性熱硬化性前駆体13rを注入することからなり、巻かれた本体は、成形キャビティまたは真空バッグ内に封入される。型は、バッグよりも良い表面仕上げを生じるが、当然、より高価である。注入は、例えば、RIMで適用されるように、
図8(b)に示すようなポンプで、反応性熱硬化性前駆体を加圧することによって駆動され得る。あるいは、またはさらに、注入は、成形キャビティまたは真空バッグに封入された乾燥繊維内部で真空を引くことによって駆動され得る。真空は単独でRTMにおいて使用され、加圧および真空の両方が、
図8(b)に示すような、いわゆる真空支援RIMで使用される。
【0065】
反応性熱硬化性前駆体を架橋するのに必要なプロセス条件は、硬化を完了させ、外側補強構造体を形成する熱硬化性複合材を生じるために十分な時間にわたり維持されなければならない(
図8(c)を参照)。
【0066】
したがって、本発明は、内側ライナーと外側熱硬化性補強構造体との間の接着を高めるための試みがなされていないので、潰れる内側ライナーの問題に対する最初の解決策を提供するが、この問題は、キャビティ4の内側が急に押し下げられた場合に潰れないよう十分な強度および剛性を有する本体を形成するために、内側ライナーに熱可塑性補強層を接着することで内側ライナーを補強することによって、解決される。
本発明は、(a)長手方向軸X1に沿って延びる円筒形の部分を含み、かつ熱可塑性ポリマー材料で作られた内側ライナー(2p)を含む本体(2b)と、(b)本体の周りに巻かれ、かつ補強繊維(11)および熱硬化性マトリックス(13)を含む連続繊維補強熱硬化性マトリックス複合材で作られた外側熱硬化性補強構造体(3c)とを含む、複合圧力容器(1)に関し、本体は、内側ライナーの円筒形の部分に接着された、補強繊維(11)および熱可塑性マトリックス(12)を含む連続繊維補強熱可塑性複合材で作られた熱可塑性補強層(2c)をさらに含むことを特徴とする。