特許第6920682号(P6920682)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ デュプロ精工株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6920682-抄紙装置及び湿紙の脱水方法 図000002
  • 特許6920682-抄紙装置及び湿紙の脱水方法 図000003
  • 特許6920682-抄紙装置及び湿紙の脱水方法 図000004
  • 特許6920682-抄紙装置及び湿紙の脱水方法 図000005
  • 特許6920682-抄紙装置及び湿紙の脱水方法 図000006
  • 特許6920682-抄紙装置及び湿紙の脱水方法 図000007
  • 特許6920682-抄紙装置及び湿紙の脱水方法 図000008
  • 特許6920682-抄紙装置及び湿紙の脱水方法 図000009
  • 特許6920682-抄紙装置及び湿紙の脱水方法 図000010
  • 特許6920682-抄紙装置及び湿紙の脱水方法 図000011
  • 特許6920682-抄紙装置及び湿紙の脱水方法 図000012
  • 特許6920682-抄紙装置及び湿紙の脱水方法 図000013
  • 特許6920682-抄紙装置及び湿紙の脱水方法 図000014
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6920682
(24)【登録日】2021年7月29日
(45)【発行日】2021年8月18日
(54)【発明の名称】抄紙装置及び湿紙の脱水方法
(51)【国際特許分類】
   D21F 9/02 20060101AFI20210805BHJP
   D21F 1/00 20060101ALI20210805BHJP
【FI】
   D21F9/02 Z
   D21F1/00
【請求項の数】6
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2016-173693(P2016-173693)
(22)【出願日】2016年9月6日
(65)【公開番号】特開2018-40074(P2018-40074A)
(43)【公開日】2018年3月15日
【審査請求日】2019年7月10日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】390002129
【氏名又は名称】デュプロ精工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100138014
【弁理士】
【氏名又は名称】東山 香織
(72)【発明者】
【氏名】奥野 将人
【審査官】 長谷川 大輔
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭60−252798(JP,A)
【文献】 特公昭47−021241(JP,B1)
【文献】 米国特許第05468349(US,A)
【文献】 実公昭51−021121(JP,Y1)
【文献】 特開平07−214030(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D21B1/00−1/38
D21C1/00−11/14
D21D1/00−99/00
D21F1/00−13/12
D21G1/00−9/00
D21H11/00−27/42
D21J1/00−7/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
抄紙ワイヤー上に形成された湿紙を、前記抄紙ワイヤーとの間で挟持し、脱水する脱水ローラを備え、前記抄紙ワイヤーは、前記脱水ローラが前記湿紙に接触する湿紙挟持部において所定範囲に亘って前記脱水ローラの外周面に沿って走行するよう配置され、前記湿紙挟持部は、前記湿紙を保持しつつ走行する前記抄紙ワイヤーの途中位置に設けられ、前記脱水ローラは、前記抄紙ワイヤーが上方へ向けて湾曲した湾曲部に設置される抄紙装置。
【請求項2】
前記脱水ローラは第1脱水ローラを構成し、前記第1脱水ローラに抄紙ワイヤーを介して対向配置された第2脱水ローラが設けられ、前記第1脱水ローラ及び第2脱水ローラの双方の軸心を含む平面が、鉛直面に対し所定角度傾斜するよう設置される請求項1に記載の抄紙装置。
【請求項3】
前記第1脱水ローラ及び前記第2脱水ローラのニップ部が、前記第1脱水ローラの軸心を含む鉛直面より抄紙ワイヤーの走行方向下流側に位置するよう前記第1脱水ローラ及び前記第2脱水ローラが配置される請求項2に記載の抄紙装置。
【請求項4】
抄紙ワイヤー上に形成された湿紙を脱水ローラによって押圧し、脱水する湿紙の脱水方法であって、前記湿紙を保持しつつ走行する前記抄紙ワイヤーの途中位置に設けられた湿紙挟持部において、前記湿紙に接触する前記脱水ローラと、所定範囲に亘って前記脱水ローラの外周面に沿って走行する抄紙ワイヤーとの間で湿紙を挟持し、前記抄紙ワイヤーが上方へ向けて湾曲した湾曲部に設置された前記脱水ローラによって湿紙を脱水する湿紙の脱水方法
【請求項5】
前記脱水ローラが第1脱水ローラとして構成され、前記第1脱水ローラと、前記第1脱水ローラに抄紙ワイヤーを介して対向配置された第2脱水ローラとの双方の軸心を含む平面が、鉛直面に対し所定角度傾斜するよう配置された前記第1脱水ローラ及び前記第2脱水ローラによって、抄紙ワイヤー上に形成された湿紙を脱水する請求項4に記載の抄紙装置。
【請求項6】
前記第1脱水ローラと前記第2脱水ローラのニップ部が、前記第1脱水ローラの軸心を含む鉛直面より抄紙ワイヤーの走行方向下流側に位置するよう配置された前記第1脱水ローラと前記第2脱水ローラとによって湿紙を挟持し脱水する請求項5に記載の湿紙の脱水方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は抄紙装置及び湿紙の脱水方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ヘッドボックスから抄紙ワイヤー上に供給され、形成された湿紙を、脱水ローラによって押圧し、脱水する技術が知られている。下記特許文献1には、抄紙ワイヤーを介して上下に対向設置された一対の脱水ローラによって、水平方向に走行する抄紙ワイヤーを挟持し、これにより抄紙ワイヤー上の湿紙を脱水する古紙処理装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平7-214030号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1に記載の装置では、湿紙が一対の脱水ローラのニップ部から下流側へ抜けた直後に、脱水ローラの押圧から解放され、湿紙から絞り出されていた液体分が再度湿紙に逆戻りすることがある。このように抄紙ワイヤー上の湿紙を効率よく脱水することが困難となる場合があった。
【0005】
本発明は上記した課題を解決するものであり、抄紙ワイヤー上に形成された湿紙を効率よく脱水することが可能な抄紙装置及び湿紙の脱水方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明にかかる抄紙装置は、抄紙ワイヤー上に形成された湿紙を前記抄紙ワイヤーとの間で挟持し、脱水する脱水ローラを備え、前記抄紙ワイヤーは、脱水ローラが前記湿紙に接触する湿紙挟持部において所定範囲に亘って前記脱水ローラの外周面に沿って走行するよう配置され、前記湿紙挟持部は、前記湿紙を保持しつつ走行する前記抄紙ワイヤーの途中位置に設けられ、前記脱水ローラは、前記抄紙ワイヤーが上方へ向けて湾曲した湾曲部に設置される
【0008】
そして、前記構成において、前記脱水ローラは第1脱水ローラを構成し、前記第1脱水ローラに抄紙ワイヤーを介して対向配置された第2脱水ローラが設けられ、前記第1脱水ローラ及び第2脱水ローラの双方の軸心を含む平面が、鉛直面に対し所定角度傾斜するよう設置される。
【0009】
更に、前記各構成において、前記第1脱水ローラ及び前記第2脱水ローラのニップ部が、前記第1脱水ローラの軸心を含む鉛直面より抄紙ワイヤーの走行方向下流側に位置するよう前記第1脱水ローラ及び前記第2脱水ローラが配置される。
【0010】
更に、本発明にかかる湿紙の脱水方法は、抄紙ワイヤー上に形成された湿紙を脱水ローラによって押圧し、脱水する湿紙の脱水方法であって、前記湿紙を保持しつつ走行する前記抄紙ワイヤーの途中位置に設けられた湿紙挟持部において、前記湿紙に接触する前記脱水ローラと、所定範囲に亘って前記脱水ローラの外周面に沿って走行する抄紙ワイヤーとの間で湿紙を挟持し、前記抄紙ワイヤーが上方へ向けて湾曲した湾曲部に設置された前記脱水ローラによって湿紙を脱水する。
【0012】
また、前記構成において前記脱水ローラが第1脱水ローラとして構成され、前記第1脱水ローラと、前記第1脱水ローラに抄紙ワイヤーを介して対向配置された第2脱水ローラとの双方の軸心を含む平面が、鉛直面に対し所定角度傾斜するよう配置された前記第1脱水ローラ及び前記第2脱水ローラによって、抄紙ワイヤー上に形成された湿紙を脱水する。
【0013】
更に、前記構成において、前記第1脱水ローラと前記第2脱水ローラのニップ部が、前記第1脱水ローラの軸心を含む鉛直面より抄紙ワイヤーの走行方向下流側に位置するよう配置された前記第1脱水ローラと前記第2脱水ローラとによって湿紙を挟持し脱水する。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、抄紙ワイヤー上に形成された湿紙を、前記抄紙ワイヤーとの間で挟持し、脱水する脱水ローラを備え、前記抄紙ワイヤーは、前記脱水ローラが前記湿紙に接触する湿紙挟持部において所定範囲に亘って前記脱水ローラの外周面に沿って走行するよう配置され、前記湿紙挟持部は、前記湿紙を保持しつつ走行する前記抄紙ワイヤーの途中位置に設けられるので、抄紙ワイヤー上に形成された湿紙を脱水ローラと抄紙ワイヤーで挟持し、脱水することで効率よく湿紙を脱水することができる。また、前記脱水ローラは、前記抄紙ワイヤーが上方へ向けて湾曲した湾曲部に設置されるので、湿紙に含まれる液体分を脱水の際効率よく下方へと導くことができる。
【0016】
そして、前記脱水ローラは第1脱水ローラを構成し、前記第1脱水ローラに抄紙ワイヤーを介して対向配置された第2脱水ローラが設けられ、前記第1脱水ローラ及び第2脱水ローラの双方の軸心を含む平面が、鉛直面に対し所定角度傾斜するよう設置される場合は、抄紙ワイヤー上に形成された湿紙を第1脱水ローラと抄紙ワイヤーで挟持し、脱水することで効率よく湿紙を脱水することができるとともに、第2脱水ローラによって湿紙に含まれる液体分を脱水の際効率よく下方へと導くことができる。
【0017】
更に、前記第1脱水ローラ及び前記第2脱水ローラのニップ部が、前記第1脱水ローラの軸心を含む鉛直面より抄紙ワイヤーの走行方向下流側に位置するよう前記第1脱水ローラ及び前記第2脱水ローラが配置される場合は、第1脱水ローラによって湿紙を予備的に脱水し、その後、第2脱水ローラとの間で湿紙を挟持することで、更に脱水することができる。
【0018】
更に、本発明に係る湿紙の脱水方法は、前記湿紙を保持しつつ走行する前記抄紙ワイヤーの途中位置に設けられた湿紙挟持部において、前記湿紙に接触する前記脱水ローラと、所定範囲に亘って前記脱水ローラの外周面に沿って走行する抄紙ワイヤーとの間で湿紙を挟持し、脱水するので、抄紙ワイヤー上に形成された湿紙を脱水ローラと抄紙ワイヤーで挟持し、脱水することで効率よく湿紙を脱水することができる。更に、前記抄紙ワイヤーが上方へ向けて湾曲した湾曲部に設置された前記脱水ローラによって湿紙を脱水するので、効率よく湿紙を脱水することができる。
【0020】
更に、前記脱水ローラが第1脱水ローラとして構成され、前記第1脱水ローラと、前記第1脱水ローラに抄紙ワイヤーを介して対向配置された第2脱水ローラとの双方の軸心を含む平面が、鉛直面に対し所定角度傾斜するよう配置された前記第1脱水ローラ及び前記第2脱水ローラによって、抄紙ワイヤー上に形成された湿紙を脱水する場合は、第2脱水ローラによって湿紙に含まれる液体分を脱水の際効率よく下方へと導くことができる。
【0021】
また、前記第1脱水ローラと前記第2脱水ローラのニップ部が、前記第1脱水ローラの軸心を含む鉛直面より抄紙ワイヤーの走行方向下流側に位置するよう配置された前記第1脱水ローラと前記第2脱水ローラとによって湿紙を挟持し脱水する場合は第1脱水ローラによって湿紙を予備的に脱水し、その後、第2脱水ローラと湿紙を挟持することで、更に脱水することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の一実施形態に係る抄紙装置を備えた製紙装置の構成概略図である。
図2】前記抄紙装置の概略構成を示す縦断面図である。
図3】前記抄紙装置の脱水部周辺の部分拡大図である。
図4】前記脱水部の力の向きを示す図である。
図5】前記脱水部の圧力の変化を示す図である。
図6】本発明の他の実施形態に係る抄紙装置の概略構成を示す縦断面図である。
図7】前記抄紙装置の脱水部周辺の部分拡大図である。
図8】前記脱水部の圧力の変化を示す図である。
図9参考として示す抄紙装置の概略構成を示す縦断面図である。
図10】前記抄紙装置の脱水部周辺の部分拡大図である。
図11参考として示す抄紙装置の脱水部周辺の部分拡大図である。
図12参考として示す抄紙装置の概略構成を示す縦断面図である。
図13】前記抄紙装置の脱水部周辺の部分拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
(第1の実施形態)
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。図1は、第1の実施形態にかかる抄紙装置を備えた製紙装置の構成概略図である。図1に示す製紙装置は、古紙を製紙原料とする古紙再生処理装置100である場合を示している。図1において、古紙再生処理装置100は、再生パルプ製造部1、脱墨部2、抄紙部3、仕上部4及び各部を制御する制御部8を備えてなる。尚、以下の第1〜第4の実施形態では、本発明にかかる抄紙装置Qが、古紙10を原料として再生紙7を製造する古紙再生処理装置100の抄紙部3に用いられる場合について記載するが、必ずしもこれに限定されず、木材等の他のパルプ原料を製紙原料とする製紙装置の抄紙部に用いても構わない。
【0024】
再生パルプ製造部1は、古紙10を離解してパルプ懸濁液を製造する。脱墨部2は、再生パルプ製造部1において製造されたパルプ懸濁液を脱墨する。抄紙部3は、脱墨部2において得られた脱墨後のパルプ懸濁液を抄紙して湿紙Wを形成し、得られた湿紙Wを脱水し、乾燥する。仕上部4は、抄紙部3において得られた仕上げ前の再生紙7を裁断等することにより仕上げを行って定型サイズの再生紙7を得る。制御部8は古紙再生処理装置100全体の動作を制御する。再生パルプ製造部1及び脱墨部2は、それぞれ公知の再生パルプ製造装置及び脱墨装置を利用可能である。
【0025】
図2は、抄紙部3を構成する抄紙装置Qの概略構成を示す縦断面図である。尚、以下では、図2に示す抄紙装置Qの右側を「前側」、左側を「後側」、図2の紙面の手前を「右側」、紙面の奥側を「左側」として説明することとする。抄紙部3は、湿紙形成部11、脱水部14及び乾燥部15が図示しない筐体内に収容されてなる。筐体内には、左右一対の図示しない側板が配設されており、この側板が各部を構成するほとんどのローラを、回動自在に軸支している。
【0026】
湿紙形成部11では、湿紙Wが形成される。湿紙形成部11は、ヘッドボックス12と、ワイヤー部13とを備える。ヘッドボックス12は、脱墨後のパルプ懸濁液を抄紙ワイヤー23上に均一に供給するためのものである。ヘッドボックス12は、パルプ懸濁液を貯留する貯留部18と、貯留部18に貯留するパルプ懸濁液を抄紙ワイヤー23上に流出させる流出部19と、貯留部18の底部に形成されたパルプ懸濁液の流入部20とを備える。
【0027】
流入部20は、脱墨部2から脱墨後のパルプ懸濁液を取出し、貯留部18へ送るための図示しない輸送ポンプが接続されている。
【0028】
ワイヤー部13は、抄紙ワイヤー23と、張力調整部36と、抄紙ワイヤー23を走行させる図示しないワイヤー駆動部とを備える。抄紙ワイヤー23は複数のベルトローラ24に掛け渡され、展張され、無端状に形成される。抄紙ワイヤー23は上側を走行する往路軌道の下流側端部近傍に設けられた湾曲部21において、上方へ向けて水平面に対し約5°乃至85°程度湾曲して走行する。
【0029】
張力調整部36は、抄紙ワイヤー23の張力を調整する。張力調整部36は、ベルトローラ241の幅方向両端部近傍にそれぞれ設けられる。張力調整部36は、張力調整部材37、軸支部材41及び固定部材42を備える。張力調整部材37は例えば圧縮バネによって構成される。抄紙ワイヤー23が掛け渡される図2において左側に示す流出部19の下方に設置された3個のベルトローラ24のうち、上下方向中央のベルトローラ241は、水平方向へ移動自在に構成されている。このベルトローラ241の回転軸242は、軸支部材41によって軸支される。固定部材42は装置本体を構成する図示しない側板に固定される。張力調整部材37は、固定部材42と軸支部材41との間に圧縮状態で設置される。これより、軸支部材41は、張力調整部材37によって固定部材42に対して前側へ付勢される。軸支部材41が前側へ移動されることで、ベルトローラ241の回転軸242が前側へ所定の押圧力で付勢され、抄紙ワイヤー23に所定量の張力が付与される。
【0030】
抄紙ワイヤー23は、ヘッドボックス12から供給されるパルプ懸濁液を濾過して湿紙Wを形成する。上側を走行する往路軌道の抄紙ワイヤー23の下方には、複数の水切り板26が所定間隔で配置されている。水切り板26はパルプ懸濁液を水切りする。各水切り板26は抄紙ワイヤー23の走行方向と交差する左右幅方向に向けて延在し、抄紙ワイヤー23の下面に摺接される。これにより、水切り板26が抄紙ワイヤー23の網目から流下する液体分である白水を下方へと導くようになっている。
【0031】
また、水切り板26の下方には、該水切り板26より、または抄紙ワイヤー23の網目から直接流下する白水を受ける受水部27を設けている。受水部27は図示しない配管、ガイド等により下方に設置された白水タンク29に接続されている。白水タンク29は、内部に収容する白水を再生パルプ製造部1及び脱墨部2に送るための図示しない配管及び白水循環用ポンプを備え、受水部27において回収した白水を再利用可能に構成している。
【0032】
脱水部14は、脱水ローラ45を備えた脱水ローラ部43により構成される。脱水ローラ45は、抄紙ワイヤー23の上方へ向けて湾曲した湾曲部21に設置される。脱水ローラ45は、抄紙ワイヤー23を掛け渡すベルトローラ24を兼ねて構成される。図3は、脱水部14周辺の部分拡大図である。抄紙ワイヤー23は、脱水ローラ45との間で湿紙Wを挟持する湿紙挟持部28において、所定範囲Gに亘って脱水ローラ45の外周面に沿って走行するよう配置される。図3では、湿紙挟持部28において、脱水ローラ45が抄紙ワイヤー23の上面乃至後側面に接触するよう設置される場合を示す。抄紙ワイヤー23には張力調整部36によって所定量の張力が付与されている。脱水ローラ45は、この張力調整部36によって張力の付与された抄紙ワイヤー23に所定圧力で接触し、抄紙ワイヤー23上に形成された湿紙Wを抄紙ワイヤー23との間で挟持し、脱水する。
【0033】
脱水ローラ45は、ワイヤー駆動部に連結機構を介して連結され、抄紙ワイヤー23が掛け渡される他のローラ24と同期して回転駆動される。
【0034】
脱水ローラ45の材質は、ステンレス、鉄やアルミ等の金属、ウレタン、ナイロン、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、塩化ビニル、ABS系樹脂やフッ素系樹脂等の合成樹脂、これらが層状に形成され、組み合わせて用いられたもの、金属または合成樹脂のいずれかまたは双方と合成繊維や天然繊維とが組み合わせて用いられたもの等とすることができる。
【0035】
これらのうち、脱水ローラ45に金属を用いることで、強度を確保できる。抄紙ワイヤー23によって濾過され、形成された湿紙Wは、脱水部14による脱水前後の状態では、含水率が比較的高いために脱水ローラ45が金属であっても張りつきの問題が生じにくい。しかし、脱水ローラ45をシリコン樹脂やフッ素系樹脂、またはこれらによって表面加工したものとすることで、湿紙Wの剥離性が向上する。
【0036】
図2に示す乾燥部15は、挟持用ベルト48、乾燥ドラム50、温度センサ66及びスクレーパ55を備えている。挟持用ベルト48は、抄紙ワイヤー23から受け渡された湿紙Wを乾燥ドラム50との間で挟持して走行する。挟持用ベルト48は、無端状に形成され、乾燥ドラム50及び複数のベルトローラ49に掛け渡されている。
【0037】
挟持用ベルト48は、乾燥ドラム50の外周の略4分の3の範囲に巻回される。挟持用ベルト48は、上方に向けて突出して走行する抄紙ワイヤー23に対向するよう上方に向けて突出して走行する。抄紙ワイヤー23と挟持用ベルト48とは、対向位置において接触することなく所定量離間して配置される。挟持用ベルト48は、図示しない挟持用ベルト駆動部によって走行駆動される。
【0038】
挟持用ベルト48は、乾燥ドラム50に巻回された範囲で、湿潤状態にある湿紙Wを乾燥ドラム50との間で挟持して搬送する。挟持用ベルトの材質は特に限定されず、例えば、金属、ポリエステルやポリフェニレンサルファィド等の合成繊維、麻や木綿等の天然繊維が用いられる。挟持用ベルト48は、経糸と緯糸を織り込んだ織物によって形成されることが湿紙Wの乾燥効率が高い点で好ましい。
【0039】
乾燥ドラム50は、中空円筒状に形成された筒体58を備え、該筒体58の筒心に直交する左右の側面は、円盤形状の蓋体59により閉塞されている。また、筒体58は、複数の支持ローラ61により回転自在に支持されている。筒体58の内周面には、加熱手段62を備えている。加熱手段62は、柔軟で可撓性を有し、シート状に形成されたシリコンラバーヒータ等の加熱体により構成され、該加熱体が、乾燥ドラム50の内周面に全周に亘って貼着されている。筒体58は、挟持用ベルト48が挟持用ベルト駆動部によって走行駆動されることにより、従動して回転する。
【0040】
温度センサ66は、図2に示すように、乾燥ドラム50の上部後方に設置される。温度センサ66は、筒体58の表面温度を検出する。本実施形態では、温度センサ66が、筒体58の表面に摺動接触し、筒体58の温度を検出する構成としたが、筒体58に非接触のセンサを用いてもよい。スクレーパ55は、乾燥ドラム50の上部後方であって温度センサ66より乾燥ドラム50の回転方向上流側に設置される。スクレーパ55は乾燥用ベルト47から乾燥後の再生紙を剥がし、再生紙を仕上部4へと案内する。
【0041】
(仕上部)
図1に示す仕上部4は、帯状の再生紙を所定のシートサイズにカットする裁断刃(図示省略)を備えている。裁断刃は、左右一対のスリッターとカッターとを備える。スリッターは、丸刃により構成される。カッターは、幅方向に沿って延在する上下一対の直刃により構成される。裁断刃の下方には、裁断により生じた端材を回収する図示しない端材回収箱が設置されている。
【0042】
(制御部)
制御部8は、古紙再生処理装置100全体の動作を制御する。
【0043】
(作用)
本実施形態にかかる古紙再生処理装置100の作用につき以下に説明する。まず、再生パルプ製造部1において所定量の古紙10を所定量の水とともに所定時間攪拌することで、パルプ懸濁液を製造する。次に、得られたパルプ懸濁液を脱墨部2へ送り、脱墨処理を行って、脱墨後のパルプ懸濁液を得る。脱墨後のパルプ懸濁液に対し、脱墨部2においてまたは脱墨部2から抄紙部3への流通経路の途中位置で加水し、抄紙に適する所定のパルプ濃度に調製し、抄紙部3のヘッドボックス12へ送る。
【0044】
パルプ懸濁液は、ヘッドボックス12の流入部20から貯留部18に流入する。そして、パルプ懸濁液は、流出部19から抄紙ワイヤー23上に流出される。抄紙ワイヤー23上に供給されたパルプ懸濁液は、液体分が抄紙ワイヤー23の網目を通り抜ける。その後、パルプ懸濁液の液体分は、抄紙ワイヤー23の内方位置で水切り板26により下方の受水部27へと導かれ、受水部27で受水された後、白水タンク29内に収容される。白水タンク29内の白水は、再生パルプ製造部1や脱墨部2等へ送られ、再利用される。
【0045】
抄紙ワイヤー23上に残存したパルプは、水分を比較的多く含んだ繊維の層である湿紙Wとして形成される。制御部8は、抄紙ワイヤー23上で形成される湿紙Wの先端領域の紙厚を、この先端領域に続く抄紙本領域に設定される抄紙本領域厚より厚い抄紙先端領域厚で湿紙Wを形成するよう制御する。
【0046】
このため制御部8は、湿紙Wの先端領域を形成するときの抄紙ワイヤー23の走行速度を、抄紙本領域を形成するときより遅くするようワイヤー駆動部を制御する。また、これに替えて、制御部8は、ヘッドボックス12から抄紙ワイヤー23上へパルプ懸濁液の供給を開始し、湿紙Wの先端領域を形成するときに抄紙ワイヤー23の走行を所定時間停止するよう制御してもよい。更に、制御部8は、輸送ポンプの駆動量を湿紙Wの先端領域を形成するときの方が、抄紙本領域を形成するときより多くするよう制御し、流入部19へ流入させるパルプ懸濁液の量を多くすることで、湿紙Wの先端領域を厚くしてもよい。
【0047】
湿紙Wの先端領域が形成された後、この先端領域が脱水部14に至ると、湿紙Wは、脱水ローラ45の外周面に沿って上方へ向けて湾曲して走行する抄紙ワイヤー23と脱水ローラ45との間で挟持され、脱水される。図3において水平方向へ走行する抄紙ワイヤー23上の湿紙Wは、脱水ローラ45によって上から押圧され、抄紙ワイヤー23との間で挟持されることで、湿紙Wに含まれる液体分が抄紙ワイヤー23の下方へ導かれる。そして、脱水ローラ45の外周面に沿って湾曲して走行する抄紙ワイヤー23との間で徐々に脱水される。湿紙Wは、抄紙ワイヤー23の張力によって押圧される。
【0048】
よって、従来技術のように、水平方向に走行する抄紙ワイヤー23の上下に対向配置された一対の脱水ローラによって湿紙Wが挟持される場合に比較して、小さい押圧力で押圧されることとなる。この場合、含水率の高い状態のまま一対の脱水ローラのニップ位置で大きな押圧力で強引に押圧された場合より湿紙Wに含まれる繊維の移動が少なくなり、乾燥の後に得られる再生紙の品質を向上可能である。
【0049】
以下では、抄紙ワイヤー23上の湿紙Wが脱水部14において受ける圧力pの変化を考える。まず、湿紙挟持部28において抄紙ワイヤー23と脱水ローラ45とによって湿紙Wを挟持する際に湿紙Wにかかる力Fの総量を求める。例えば、抄紙ワイヤー23の張力について、図2に示す幅方向両側の張力調整部材37の縮んだ長さにバネ定数を乗算して得られた値の合計が80kgfであったとする。この場合、抄紙ワイヤー23には走行方向に沿った80kgfの張力Tが付与されていると考えられる。往路軌道の抄紙ワイヤー23が湾曲部21において水平方向から傾斜方向へ方向転換する際、図3に示すように、前側上方へ向けて傾斜走行する抄紙ワイヤー23の走行面と水平面となす角度をαとする。
【0050】
抄紙ワイヤー23には、走行方向上流側及び下流側に向けて等しい大きさの張力Tu,Tdが付与されていると思われる。このTu、Tdの合計は、張力調整部36で付与された張力Tの大きさに等しいと考えられる。ここで、小型の抄紙装置Qの場合には、抄紙ワイヤー23の走行速度が大型機に比較して非常に遅いので、抄紙ワイヤー23の走行に伴う張力Tu、Tdの大きさの違いがないものと仮定する。張力調整部36で付与された80kgfが抄紙ワイヤー23の上流側及び下流側の双方に同等量だけかかるとすると、Tu,Tdの値はいずれも40kgfとなる。
【0051】
脱水ローラ45は、装置本体を構成する側板に回転自在に軸支されている。このため、脱水ローラ45の設置位置は移動せず、脱水ローラ45が抄紙ワイヤー23との間で湿紙Wを挟持する際、脱水ローラ45の自重を考慮する必要はない。抄紙ワイヤー23は、脱水ローラ45に所定の張力Tで接触することで、反作用として脱水ローラ45から当該張力Tに応じた力fcを受けていると考えられる。湿紙Wは、脱水ローラ45から張力Tに応じた力fcを受け、また、抄紙ワイヤー23から力fbを受けて、これら脱水ローラ45と抄紙ワイヤー23とに挟持され、押圧されると考えられる。
【0052】
湿紙Wが、脱水ローラ45から受ける力fcの向きは、抄紙ワイヤー23の走行位置に応じて変化すると考えられる。湿紙Wが脱水ローラ45に接触する範囲Gである湿紙挟持部28全体では、力fcの向きは、湿紙挟持部28の中間点において脱水ローラ45の接線方向に直交する方向となると考えられる。これは、湿紙挟持部28を図3に示すように例えば4分割した場合、脱水ローラ45の中心Cから、湿紙挟持部28の中間点であるK3で示す位置へと向かう矢印fcの方向となると思われる。一方、湿紙Wが湿紙挟持部28全体で抄紙ワイヤー23から受ける力fbの向きは、湿紙Wが脱水ローラ45から受ける力fcと向きが逆方向で同じ大きさであると考えられる。
【0053】
湿紙Wが湿紙挟持部28全体で抄紙ワイヤー23から受ける力fbは、K3の位置において抄紙ワイヤー23の走行方向上流側及び下流側に付与されている張力Tu,Tdを、力fbの向きに合成したものに等しいとして考える。
【0054】
図4は、図3のK3の位置において湿紙Wが抄紙ワイヤー23から受ける力fbの向きと大きさを示す図である。K3において抄紙ワイヤー23の走行方向上流側へ向けた張力Tuは、図4で水平方向左向きである。張力Tuを、K3において脱水ローラ45の中心Cに向かう方向に分解すると、得られる分力Tucは、Tuc=Tucosαである。K3での抄紙ワイヤー23の走行方向下流側へ向けた張力Tdは、水平方向からαの角度だけ傾斜した方向である。張力Tdを、K3において脱水ローラ45の中心Cに向かう方向に分解すると、得られる分力Tdcは、Tdc=Tdcosαである。
【0055】
抄紙ワイヤー23の走行方向上流側に向けた張力Tuと、下流側に向けた張力Tdとがいずれも40kgfであるとし、αの値がα=60°とする場合には、fb=Tucosα+Tdcosα=40kgfとなる。この力fbは、湿紙挟持部28全体で、湿紙Wを押圧する力Fの総量であると考えられる。
【0056】
次に、得られた力Fの総量と、湿紙挟持部28の面積とを基にして、湿紙挟持部28において湿紙Wを挟持する際の単位面積当たりの押圧力の変化を考える。
図3に示すK1の位置は、抄紙ワイヤー23が水平方向から傾斜方向へ走行方向を変更し走行する際に、抄紙ワイヤー23上の湿紙Wが、脱水ローラ45の下部に接触し、脱水ローラ45と抄紙ワイヤー23とによって挟持され始め、押圧開始される地点である。この場合、湿紙Wが脱水ローラ45及び抄紙ワイヤー23から受ける単位面積当たりの押圧力である圧力p1は、非常に小さくほぼ0kgf/cmに近い値であると考えられる。
【0057】
また、図3のK5の位置は、湿紙挟持部28の終点である。K5では、湿紙Wが、脱水ローラ45と抄紙ワイヤー23との間で挟持されなくなり、押圧力から解放される。この場合にも、K1と同様に湿紙Wが受ける圧力p5は、非常に小さくほぼ0kgf/cmに近い値であると考えられる。
【0058】
K3の位置は、湿紙挟持部28の中間点である。抄紙ワイヤー23上の湿紙Wが脱水ローラ45との間で挟持されることで湿紙Wが受ける圧力p3は、K3の位置で最大となると考えられる。抄紙ワイヤー23上の湿紙Wが脱水ローラ45との間で挟持されることで湿紙Wが受ける圧力pは、近似的にK1からの距離に比例して増大し、K3で最大となり、K3からK5までは、K1からK5までと同じ割合で減少すると仮定する。
【0059】
図5は、抄紙ワイヤー23上の湿紙Wが脱水部14において受ける圧力pの変化を算出するための図である。図5において横軸は、湿紙挟持部28の始点K1からの長さLを示す。湿紙挟持部28の始点K1からの終点K5までの長さは、脱水ローラ45の直径が10cm、α=60°のときは、L5=10×π×α/360≒5.24cmとなる。このK1からK5までの長さL5は、湿紙挟持部28の抄紙ワイヤー23の走行方向における全体の長さに等しく、脱水ローラ45の周方向の長さであって、抄紙ワイヤー23が湿紙Wを介して接触する範囲Gの長さに等しい。K1からK3までの長さL3は、L3≒5.24/2=2.62cmとなる。
【0060】
図5の縦軸を、湿紙Wを押圧する圧力pの大きさとすると、図5の斜線で塗りつぶし、太線で囲まれた三角形abcの面積S1は、K1,K5における圧力p=0kgf/cm2で、圧力pが、近似的にK1からの距離に比例して増大し、K3で最大となり、K3からK5までは、K1からK5までと同じ割合で減少すると仮定したときに、湿紙Wを押圧する力Fの総量を、湿紙Wの幅1cmあたりに換算した値Iに相当する。
【0061】
抄紙ワイヤー23の走行方向に直交する幅方向では、湿紙Wを挟持する圧力pが、同じ値になるとする。抄紙ワイヤー23の幅方向の長さyが、y=20cmのとき、湿紙挟持部28全体で湿紙Wを押圧する力Fの総量を幅1cmあたりに換算した値Iは、I=F/y=40kgf/20cm=2kgf/cmとなる。
【0062】
三角形abcの面積S1=L5×p3/2であり、S1=I=2kgf/cmであるので、p3の値は、p3=2×I/L5=2×2/5.24≒0.76kgf/cmとなる。実際に湿紙Wを抄紙ワイヤー23と脱水ローラ45で挟持し、押圧する際の圧力pの変化は、図5において一点鎖線で示すサインカーブに似た曲線Rのようになると考えられる。
【0063】
抄紙ワイヤー23上の湿紙Wは、脱水ローラ45との間で挟持され、押圧された後、抄紙ワイヤー23の上方に向けて走行する。これより、図2に示すように湿紙Wの先端領域は斜め上へ向けて搬送される。湿紙Wの先端領域は厚く形成されており、且つ脱水部14で脱水されることで、該湿紙Wはある程度のコシを有することとなる。湿紙Wの先端領域Gが抄紙ワイヤー23の転換位置Tに至ったときに、抄紙ワイヤー23から分離され、図2において実線で示すように斜め右上方へ向けて独立して搬送される。
【0064】
抄紙ワイヤー23から上方へ伸びた湿紙Wの先端領域Gの長さが、所定長さに至ると、二点鎖線で示すように、湿紙Wの先端領域Gは自重によって座屈する。そして、抄紙ワイヤー23に対向する挟持用ベルト48によって支持される。湿紙Wの先端領域Gは挟持用ベルト48と乾燥ドラム50の間に入り込み、これらの当接部分において挟持用ベルト48と乾燥ドラム50との間で挟持され搬送される。
【0065】
湿紙Wは、加熱手段62によって加熱された乾燥ドラム50に当接される。これより、湿潤状態にある湿紙Wは、乾燥され、仕上げ前の帯状の再生紙7が得られる。尚、乾燥ドラム50は、温度センサ66によって温度が検出され、所定温度に維持されている。
【0066】
乾燥部15で得られた仕上げ前の帯状の再生紙7は、スクレーパ55によって乾燥用ベルト47から剥離され、仕上部4に送られる。仕上部4に送られた帯状の再生紙7は、裁断刃で所定のシートサイズに裁断されて再生紙7が完成する。その際、スリッターは、帯状の再生紙の幅方向両端部を長手方向に沿って裁断する。カッターは、上直刃が下直刃に対し、上下動し、再生紙を幅方向に沿って裁断する。裁断刃により裁断された再生紙7の端材は、端材回収箱に回収される。端材回収箱内の端材は、図1に示すように再生パルプ製造部1に戻され、再度古紙原料として再生紙7の製造に利用される。
【0067】
(第2の実施形態)
図6は第2の実施形態にかかる抄紙装置Qaの概略構成を示す縦断面図である。上記第1の実施形態では、脱水部14が1個の脱水ローラ45によって構成されたが、本第2の実施形態では、脱水部14aは、抄紙ワイヤー23aを介して対向し、抄紙ワイヤー23a上に形成された湿紙Wを挟持し、脱水する一対の脱水ローラ45aを備える。一対の脱水ローラ45aは、抄紙ワイヤー23aとの間で湿紙Wを挟持可能な第1脱水ローラ67と、前記第1脱水ローラ67に抄紙ワイヤー23aを介して湿紙挟持部28の中間位置K3aにニップ部Nが形成されるよう対向配置された第2脱水ローラ68とが設けられる。第1脱水ローラ67は、周回走行する抄紙ワイヤー23aの外方に設置される。第2脱水ローラ68は、抄紙ワイヤー23aの内方に設置される。
【0068】
図7は、脱水部14aの部分拡大図である。同図に示すように、抄紙ワイヤー23aは第1脱水ローラ67との湿紙挟持部28aにおいて第1脱水ローラ67の外周面に沿って走行するよう配置される。即ち、第1脱水ローラ67は、湾曲部21aにおいて、水平方向から上方へ向けて湾曲して走行する抄紙ワイヤー23aの上面及び後側面に接触する。また、第1脱水ローラ67及び第2脱水ローラ68の双方の軸心C1、C2を含む平面Aは、鉛直面V1、VNに対し所定角度θ1傾斜するよう設置される。所定角度θ1としては5°乃至85°程度の範囲とすることが好ましい。
【0069】
第1脱水ローラ67と第2脱水ローラ68とのニップ部Naは、第1脱水ローラ67の軸心C1を含む鉛直面V1より往路軌道の抄紙ワイヤー23aの走行方向下流側に位置するよう第1脱水ローラ67及び第2脱水ローラ68が配置される。そして、第2脱水ローラ68の軸心C2は、第1脱水ローラ67と第2脱水ローラ68とのニップ部Naを含む鉛直面VNより往路軌道の抄紙ワイヤー23aの走行方向下流側となる前方に位置するよう設置される。第2脱水ローラ68は、ニップ部Naにおいて抄紙ワイヤー23aを介して第1脱水ローラ67との間で湿紙Wを挟持し、脱水する。
【0070】
第1脱水ローラ67は、装置本体を構成する側板に回動自在に軸支されている。第2脱水ローラ68は、第1脱水ローラ67に近接する方向へ移動可能な状態で、前記側板に回動自在に軸支される。図6に示すように、第2脱水ローラ68の回転軸681の幅方向両端部は、第1脱水ローラ67の回転軸671に、引張りばねによって構成される押圧力付与部材69により連結される。この押圧力付与部材69の付勢力により、第2脱水ローラ68は、第1脱水ローラ67に近接する方向に付勢される。
【0071】
第1脱水ローラ67は抄紙ワイヤー23aに接触している間継続して、湿紙Wを当該抄紙ワイヤー23aとの間で挟持し押圧し、脱水している。ニップ部Naより後側の領域では、湿紙Wが第1脱水ローラ67によって抄紙ワイヤー23aに向けて押圧されることで、湿紙Wに含まれる液体分がより多く抄紙ワイヤー23aの下方へ導かれ、網目を通過する。
【0072】
ニップ部Naにおいては、第1脱水ローラ67と第2脱水ローラ68とによって挟持された湿紙Wが脱水されて生じた液体分が、第2脱水ローラ68の後側周面を下方へと伝う。これより、第1の実施形態のように第2脱水ローラ68がない場合に比較して、ニップ部Naにおいて湿紙Wを一対の脱水ローラ45aで挟持し、脱水でき、より多くの液体分を湿紙Wから除去することができる。また、網目を通過した液体分が第2脱水ローラ68によって適正に下方へ案内されることで、より効率よく脱水することができる。
【0073】
湿紙Wが脱水部14aにおいて受ける圧力paの変化を考える。本第2の実施形態では、上記第1の実施形態において算出した抄紙ワイヤー23の張力Tによる押圧力に加え、押圧力付与部材69によって押圧力が付与される。押圧力の付与の際、幅方向両側の押圧力付与部材69がそれぞれ伸長した長さに当該押圧力付与部材69を構成する引張りばねのバネ定数を乗算して得られた値の合計fpがfp=150kgfであったとする。この場合、湿紙Wには第1脱水ローラ67が設置された側、及び第2脱水ローラ68が設置された側の双方から150kgfで押圧されていると考えられうる。
【0074】
抄紙ワイヤー23aの走行方向に直交する幅方向の長さを20cmとし、第1脱水ローラ67と第2脱水ローラ68とのニップ幅を0.5cmであるとすると、ニップ部Naにおいて湿紙Wが押圧される際の圧力pnは、pn=150/(20×0.5)=15kgf/cmとなる。
【0075】
この両ローラ67,68によって湿紙Wを挟持する圧力pnは、上記実施形態1のK3における第2脱水ローラ68が設置されない状態で湿紙Wを脱水する際の圧力p3に比較して約20倍の大きさとなる。このニップ部Naにおける圧力pnの値を図5のグラフに追加すると図8において斜線で塗りつぶした太い実線で示す四角形defgのようになる。実際に湿紙Wを抄紙ワイヤー23aと脱水ローラ45aで挟持し、押圧する際の圧力pの変化は、図8において二点鎖線で示す曲線Raように、抄紙ワイヤー23aの張力Tにより湿紙Wを押圧する圧力pcと一対の脱水ローラ67,68により湿紙Wを押圧する圧力pnとが合わされた圧力の分布になると思われる。
【0076】
このように、本実施形態では、湿紙Wは、一対の脱水ローラ67,68のニップ部Naまでに、圧力pが徐々に大きくなる状態で押圧され、繊維の状態が乱されず、適正に脱水され、且つ、ニップ部Naにおいて十分に強い圧力で押圧できるので、脱水効果を格段に向上可能である。
【0077】
参考形態1
図9参考形態1として示す抄紙装置Qbの概略構成を示す縦断面図である。図10は前記抄紙装置Qbの脱水部14bの部分拡大面図である。図9では、ヘッドボックス12b及び抄紙ワイヤー23bに対する乾燥ドラム50bの設置高さが図2,6に示す上記第第1、2の実施形態に係る乾燥ドラム50,50aより低く設定されている。
【0078】
また、図9では、抄紙ワイヤー23bが上方に向けて湾曲して走行していない。往路軌道を走行する上側の抄紙ワイヤー23bの下流側端部で、抄紙ワイヤー23bは下方へ向けて湾曲して走行するよう設置される。脱水部14bを構成する脱水ローラ45bは、水平方向へ向けて上側を走行する往路軌道の抄紙ワイヤー23bの下流側端部近傍位置に設置される。
【0079】
脱水部14bでは、一対の脱水ローラ45bによって抄紙ワイヤー23b上に形成された湿紙Wを脱水する。脱水部14bは、抄紙ワイヤー23bの外方且つ上方に設置される第1脱水ローラ67bと、第1脱水ローラ67bに抄紙ワイヤー23bを介して対向し、抄紙ワイヤー23bの内方に設置された第2脱水ローラ68bとを備える。第2脱水ローラ68bは、抄紙ワイヤー23aを掛け渡すベルトローラ24bを兼ねて構成する。
【0080】
図10に示すように、第1脱水ローラ67b及び第2脱水ローラ68bの双方の軸心C1b、C2bを含む平面Bが、鉛直面Vbに対し所定角度θ2傾斜するよう設置される。傾斜角度としては5°乃至85°程度の範囲とすることが好ましい。
【0081】
第1脱水ローラ67bは、第1脱水ローラ67bと第2脱水ローラ68bとのそれぞれの軸心C1b,C2bの水平方向における中間点Mを含む鉛直面Vbより抄紙ワイヤー23bの往路軌道の走行方向後方に第1脱水ローラ67bの軸心C1bが位置するよう設置される。一方、第2脱水ローラ68bは、前記鉛直面Vbより抄紙ワイヤー23bの往路軌道の走行方向前方に第2脱水ローラ67bの軸心C2bが位置するよう設置される。
【0082】
図9では、挟持用ベルト48bは、乾燥ドラム50bの前側の略半円部分に巻回される。挟持用ベルト48bは、乾燥ドラム50bの下部で乾燥ドラム50bから離れ、抄紙ワイヤー23bの下方位置にまで後方へ延びて設置される。挟持用ベルト23bがかけられるベルトローラ49bの一つは、抄紙ワイヤー23bが走行方向を上側から下側へ転換する転換位置Tbの真下より後側、即ち図9において左方に位置する。
【0083】
第1脱水ローラ67bは、湿紙Wが第1脱水ローラ67bと第2脱水ローラ68bとのそれぞれの軸心C1b,C2bの水平方向における中間点Mに至る前の段階で抄紙ワイヤー23bとの間で湿紙Wを挟持し、脱水される。これより、湿紙Wに含まれる液体分を、網目を通して下方へ導くことができる。網目を通過した液体分は、湿紙Wの含水率や抄紙ワイヤー23bの走行速度にもよるが、ほとんどが網目に保持されたまま第2脱水ローラ68b設置位置まで至る。そして、第2脱水ローラ68bの後側外周面に沿って下方へと案内され、第2脱水ローラ68bの外周面の最下点から受水部27bへ落下する。
【0084】
参考形態1に係る抄紙部3bでは、湿紙Wの先端領域が抄紙ワイヤー23bの転換位置Tbに至り、抄紙ワイヤー23bの走行方向が転換されるとき、湿紙Wの自重によって下方へ進行しようとする。この結果、湿紙Wの先端領域は抄紙ワイヤー23bから分離され、独立した状態で移動し、その後下方に設置された挟持用ベルト48bによって支持され挟持用ベルト48bの走行に伴って前方へ向けて搬送される。
【0085】
尚、湿紙Wが転換位置Tbにおいて抄紙ワイヤー23bからより確実に分離され、挟持用ベルト48へ受け渡されるようにするため、湿紙Wの先端領域を、当該先端領域に続く本領域より厚くするようにしてもよい。よって、例えば、湿紙Wの先端領域を形成する際、抄紙ワイヤー23bの走行速度を遅くするよう制御したり、ヘッドボックス12bから抄紙ワイヤー23bに供給されるパルプ懸濁液の下流側への流れを堰き止めることで、抄紙ワイヤー23b上で形成される湿紙Wの先端領域の紙厚を、前記先端領域に続く抄紙本領域より厚くしてもよい。
【0086】
湿紙Wの先端領域が、挟持用ベルト48bと乾燥ドラム50bとの当接部に至り、挟持用ベルト48bと乾燥ドラム50bとの間で挟持され、脱水され、乾燥される。これより、参考形態1に係る抄紙装置Qbは、抄紙ワイヤー23bの下方に挟持用ベルト48bが設置され、湿紙Wの先端領域が抄紙ワイヤー23bから挟持用ベルト48bへ受け渡されるので、湿紙Wの先端領域がより確実に挟持用ベルト48に受け渡されうる。
【0087】
参考形態2
図11は、参考形態2として示す抄紙装置Qdの脱水部14dの部分拡大図である。参考形態2では、第2脱水ローラ68dの設置高さが、図10に示す上記参考形態1の第2脱水ローラ68bより、所定量高い位置とされる。これ以外の構成は参考形態1と同じである。図11に示すように、第2脱水ローラ68dの設置位置を変更し、第1脱水ローラ67dにより近接させることで、第1脱水ローラ67dと第2脱水ローラ68dとの間で湿紙Wを参考形態1より強い力で挟持し、押圧し、脱水することができる。
【0088】
第2脱水ローラ68dは、参考形態1と同様に、抄紙ワイヤー23dを掛け渡すベルトローラ24dを兼ねて構成される。第1脱水ローラ67d及び第2脱水ローラ68dの双方の軸心C1d、C2dを含む平面Dが、鉛直面Vdに対し所定角度θ3傾斜するよう設置される。傾斜角度としては5°乃至85°程度の範囲とすることが好ましい。
【0089】
一対の脱水ローラ45dのニップ部Ndが、一対の脱水ローラ45dのうち抄紙ワイヤー23dとの間で湿紙Wを挟持可能な一方の脱水ローラ45dである第1脱水ローラ45dの軸心C1dを含む鉛直面V1dより抄紙ワイヤー23dの走行方向下流側に位置するよう一対の脱水ローラ45dが配置される。
【0090】
第1脱水ローラ67dは、湿紙Wが第1脱水ローラ67dと第2脱水ローラ68dとのニップ部Ndに至る前の段階で抄紙ワイヤー23dとの間で湿紙Wを挟持し、脱水する。これより、湿紙Wに含まれる液体分を、網目を通して下方へ導くことができる。
【0091】
この第1段階の脱水の後、ニップ部Ndにおいて、湿紙Wは第1脱水ローラ67dと第2脱水ローラ68dによって第1段階の脱水より強い力で押圧され、脱水される。これより、第1段階の第1脱水ローラ67dと抄紙ワイヤー23dによる脱水によって網目を通過し保持されている液体分と、第1脱水ローラ67dと第2脱水ローラ68dとの挟持により湿紙から絞り出された液体分の双方が、第2脱水ローラ68bの後側外周面に沿って下方へと案内される。そして、下方へ落下し受水部27dに受け止められる。
【0092】
第1脱水ローラ67dと第2脱水ローラ68dの双方の軸心C1d、C2dを含む平面Dが、鉛直方向Vdに対して所定量θ3傾斜し、上位に位置する第1脱水ローラ67dがニップ部Ndを含む鉛直面Vdより前方に位置するので、第1脱水ローラ67dと抄紙ワイヤー23d及び第1脱水ローラ67dと第2脱水ローラ68dという2段階の脱水によって生じた液体分が、いずれも第2脱水ローラ68dの後側周面を伝って下方へと導かれる。これより、従来のように上下に設置された一対の脱水ローラの双方の軸心を通る面が、鉛直方向となるよう一対の脱水ローラが配置される場合に比較して、ニップ部Ndの周辺で網目を通過した液体分を適正に下方へ案内することができ、効率よく脱水可能である。
【0093】
参考形態3
図12参考形態3に係る抄紙装置Qeの概略構成を示す縦断面図である。図13は前記抄紙装置Qeの脱水部14eの部分拡大面図である。抄紙装置Qeは、湿紙形成部11eの上方に脱水部14eが設けられ、更に脱水部14eの上方に乾燥部15eが設けられる。参考形態3では、脱水部14eは、脱水ローラ45eに加え、脱水用ベルト31を備える。また、乾燥部15eは、乾燥ドラム50eに加え、乾燥用ベルト47を備える。
【0094】
脱水用ベルト31は、湿潤状態にある湿紙Wを搬送する無端状の搬送ベルトとして構成される。脱水用ベルト31は、フェルト、毛布等の吸水性の素材により形成され、複数のローラ32の間に掛け渡されてなる。脱水用ベルト31は下方に配設された抄紙ワイヤー23e及び上方に配設された乾燥部15eの乾燥用ベルト47に所定箇所でそれぞれ当接しており、この当接部分において、順次湿紙Wを転移するようになっている。
【0095】
脱水部14eは、脱水ローラ部43eを備える。脱水ローラ部43eは、抄紙ワイヤー23eと脱水用ベルト31との当接箇所に設置されている。脱水ローラ部43eでは、抄紙ワイヤー23eと脱水用ベルト31を表裏方向に挟持し、抄紙ワイヤー23eと脱水用ベルト31の間で湿紙Wを押圧して脱水しつつ、湿紙Wを抄紙ワイヤー23eから脱水用ベルト31に転移させる。
【0096】
脱水ローラ部43eは、脱水用ベルト31の内方に設置された第1脱水ローラ67eと、抄紙ワイヤー23eの内方であって、第1脱水ローラ67eの斜め下方対向位置に設置された第2脱水ローラ68eを備える。第1脱水ローラ67eは、脱水用ベルト31を掛け渡すベルトローラ32を兼ねて構成される。第1脱水ローラ67eは、他のベルトローラ32とともに図示しない脱水用ベルト駆動部に連結される。脱水用ベルト駆動部が駆動すると、第1脱水ローラ67e及び他のベルトローラ32が回転駆動され、脱水用ベルト31を走行させる。
【0097】
第1脱水ローラ67eと第2脱水ローラ68eとは、双方の軸心C1e、C2eを含む平面Eが鉛直面V1eに対して所定角度θ5で傾斜する。また、上位の第1脱水ローラ67eは、抄紙ワイヤー23e及び脱水用ベルト31の搬送方向で前方に位置し、下位の第2脱水ローラ68eは、抄紙ワイヤー23e及び脱水用ベルト31の走行方向で後方に位置する。
【0098】
一対の脱水ローラ45eのニップ部Neが、前記一対の脱水ローラ45eのうち抄紙ワイヤー23eとの間で湿紙Wを挟持可能な一方の脱水ローラ45eである第1の脱水ローラ67eの軸心C1eを含む鉛直面V1eより抄紙ワイヤー23eの走行方向上流側に位置するよう一対の脱水ローラ45eが配置されている。
【0099】
上位の第1脱水ローラ67eは双方の脱水ローラ45eが抄紙ワイヤー23e及び脱水用ベルト31を介して当接するニップ部Neを基準位置として、この基準位置から抄紙ワイヤー23e及び脱水用ベルト31の走行方向で前方に向けた軸心C1e回りの所定角度範囲に相当する外周領域に、抄紙ワイヤー23e及び脱水用ベルト31が重なっている。下位の第2脱水ローラ68eは、ニップ部Neから抄紙ワイヤー23e及び脱水用ベルト31の走行方向後方に向けた軸心C2e回りの所定角度範囲に相当する外周領域に抄紙ワイヤー23e及び脱水用ベルト31が重なっている。
【0100】
乾燥用ベルト47は、脱水用ベルト31から転写された湿紙Wを搬送する。乾燥用ベルト47は、乾燥ドラム50e及び、転写ローラ77を含む複数のベルトローラ72の間に掛け渡されている。
【0101】
乾燥部15eは更に転写部76を備える。転写部76は、脱水用ベルト31と乾燥用ベルト47との間で湿紙Wを挟持し、湿紙Wを脱水用ベルト31から乾燥用ベルト47へ転写させる転写ローラ77を備える。転写ローラ77は、乾燥用ベルト47の内方に設置される第1転写ローラ78と、脱水用ベルト31の内方に設置される第2転写ローラ79とを備える。第1転写ローラ78と第2転写ローラ79とは、対向して配置され、両ローラ78,79の双方の回転軸を含む面は鉛直面から所定角度傾斜している。
【0102】
第1転写ローラ78は図示しない乾燥用ベルト駆動部に連結部により連結される。乾燥用ベルト駆動部の駆動によって第1転写ローラ78はベルトローラ72と同期して回転する。
【0103】
挟持用ベルト48eは、乾燥用ベルト47との間で湿紙Wを挟持して走行する。挟持用ベルト48eは、無端状に形成され、乾燥ドラム50及び複数のベルトローラ49eに掛け渡されている。
【0104】
乾燥用ベルト47と挟持用ベルト48eとは、乾燥ドラム50eに巻回された範囲を含む所定箇所で重ね合わされて走行し、この乾燥用ベルト47と挟持用ベルト48eとの間で、湿潤状態にある湿紙Wを挟持して搬送する。
【0105】
乾燥ドラム50eの下方には先端剥がし部52が設置される。先端剥がし部52は、所定のタイミングで乾燥用ベルト47に接触して、湿紙Wの先端領域を乾燥用ベルト47から剥離させる。先端剥がし部52は、剥離板56と揺動部57とを備える。剥離板56は、所定のタイミングで揺動部57によって揺動される。
【0106】
先端剥がし部52の後方にはカレンダー部54が設けられる。カレンダー部54は、乾燥ドラム50eの外周面に対向して設置される。カレンダー部54は乾燥用ベルト47との間で湿紙Wを挟持し搬送するカレンダーローラ63を有する。カレンダーローラ63は、湿紙Wに当接するプレス位置と、湿紙Wから離間する退避位置とに亘って変位可能に構成されている。
【0107】
スクレーパ55eは、乾燥用ベルト47から乾燥後の再生紙を剥離し、再生紙を仕上部4へと案内する。
【0108】
抄紙ワイヤー23e上の湿紙Wが脱水用ベルト31との当接部30に至ると、湿紙Wは抄紙ワイヤー23eから脱水用ベルト31へと転移される。脱水用ベルト31は、湿潤状態にある湿紙Wを担持しつつ走行する。抄紙ワイヤー23e及び脱水用ベルト31は脱水ローラ部45eへの進入時に相互間の角度θ6が1°〜30°を為す搬送軌道を形成している。
【0109】
この構成により、抄紙ワイヤー23e及び脱水用ベルト31は、双方の脱水ローラ45eが当接するニップ部Neに到達する前に、抄紙ワイヤー23eと脱水用ベルト31のベルト間が漸次的に狭くなりつつ双方の間に湿紙Wを挟持する状態となる。湿紙Wを挟持する状態で抄紙ワイヤー23e及び脱水用ベルト31が下位の第2脱水ローラ68eの外周面上に重なる。よって、一対の脱水ローラ45eによってニップ部Neにおいて湿紙Wを挟持し脱水する前に、抄紙ワイヤー23aと脱水用ベルト31とによって脱水し、吸水率の高い脱水用ベルト31に湿紙Wの液体分を吸収させることができる。
【0110】
この予備的な脱水動作の後に、湿紙Wを挟持する抄紙ワイヤー23e及び脱水用ベルト31をニップ部Neで脱水ローラ45eでプレスして湿紙Wを抄紙ワイヤー23eから脱水用ベルト31へ転移させる。これより、湿紙Wの地合が良好なものとなる。
【0111】
このように、予備的な脱水操作を行うことで、脱水ローラ45eのプレスによって絞り出された液体分にとともに繊維が抄紙ワイヤー23e及び脱水用ベルト31の搬送方向の下流側へ押し戻されて流動するといった問題を解消可能である。そして、抄紙ワイヤー23eから脱水用ベルト31への湿紙Wの転写性能が阻害されて湿紙Wの地合が不良となるのを防止できる。
【0112】
脱水用ベルト31上の湿紙Wが転写部77に至ると、脱水用ベルト31から乾燥用ベルト47へと転写される。乾燥用ベルト47は、湿紙Wを担持しつつ走行する。湿紙Wの先端領域が、先端剥がし部52の設置位置に近づくと、制御部8によって揺動部57が駆動され、剥離板56が図12において二点鎖線で示すよう反時計回りに揺動する。そして、剥離板56の前側端縁が乾燥用ベルト47に接触し、乾燥用ベルト47の下面に担持された湿紙Wを、乾燥用ベルト47から剥離させる。このように、湿紙Wの先端領域が乾燥用ベルト47から剥離された後、制御部8は、再び揺動部57を駆動する。そして、先ほどとは逆の図12において時計回りに剥離板56を揺動して剥離板56を乾燥用ベルト47に対し非接触となる位置に揺動させる。
【0113】
制御部8は、乾燥用ベルト47から剥離された湿紙Wの先端領域がカレンダー部54を通過した後に、カレンダーローラ63を退避位置からプレス位置へ移動する。そして、カレンダーローラ63によって湿紙Wを乾燥用ベルト47及び乾燥ドラム50に押し当ててプレスする。これより、得られる再生紙7の平坦度を高める。
【0114】
尚、上記各実施形態では、古紙再生処理装置100に脱墨部2を設けたが、脱墨部2を省略しても構わない。また、上記第2の実施形態では、一対の脱水ローラ45aは、抄紙ワイヤー23aとの間で湿紙Wを挟持可能な第1脱水ローラ67と、前記第1脱水ローラ67に抄紙ワイヤー23aを介して湿紙挟持部28の中間位置K3aにニップ部Naが形成されるよう対向配置された第2脱水ローラ68とが設けられたが、ニップ部Naの位置が湿紙挟持部28の中間位置とは異なる位置としてもよい。例えば、湿紙挟持部の中間位置より抄紙ワイヤーの走行方向上流側または下流側のいずれかの位置としてもよい。例えば、図7において二点鎖線で示すように、ニップ部Nfが湿紙挟持部28aの中間位置より下流側のK4aの位置とするよう第2脱水ローラ682を配置することも可能である。この場合にも、地合を乱すことなく、適正に効率よく湿紙を脱水することができる。
【符号の説明】
【0115】
Na〜Nf ニップ部、Q,Qa〜Qe 抄紙装置、W 湿紙、45、45a〜45e 脱水ローラ、28,28a〜28e 湿紙挟持部、23、23a〜23e 抄紙ワイヤー。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13