(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ポリアミド樹脂(A)及びポリオレフィン系エラストマー(B)を含むポリマー成分を含む樹脂組成物から形成されたバリア層を最内層として有する冷媒輸送ホースであって、
前記最内層は前記冷媒輸送ホース内を流れる冷媒及びオイルと直接接し、
前記ポリマー成分は、ポリオレフィン骨格にポリアミドブロックがグラフトされた構造を有するブロック共重合体(C)を更に含み、
ブロック共重合体(C)の含有量は、ポリマー成分100質量部に対して、5〜45質量部であり、
ポリオレフィン系エラストマー(B)及びブロック共重合体(C)の合計含有量が、ポリマー成分100質量部に対して、70質量部未満であり、
ブロック共重合体(C)が、示差走査熱量測定(DSC)において二峰性の融解ピークを有し、低温側の融解ピーク温度が85℃以上であり、高温側の融解ピーク温度が200℃以上である、冷媒輸送ホース。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
冷媒輸送ホース内において輸送される媒体には一般的に冷媒の他に潤滑油が含まれる。潤滑油には微量の水分が存在し、この水分自体や添加剤(特に潤滑油に含まれる極圧剤)の加水分解により発生した酸が原因でポリアミド樹脂組成物層が劣化する場合がある。これを解決するため、酸化マグネシウムやハイドロタルサイトなどの受酸剤をポリアミド樹脂層に添加することにより耐久性の向上が図られているが、近年では耐久性の更なる向上が求められている。また、冷媒輸送ホースの機能としてバリア性に優れることも求められる。
【0005】
したがって、本発明の目的は、耐久性及びバリア性の双方に優れる冷媒輸送ホースを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的は、ポリアミド樹脂(A)及びポリオレフィン系エラストマー(B)を含むポリマー成分を含む樹脂組成物から形成されたバリア層を最内層として有する冷媒輸送ホースであって、
前記最内層は前記冷媒輸送ホース内を流れる冷媒及びオイルと直接接し、
前記ポリマー成分は、ポリオレフィン骨格にポリアミドブロックがグラフトされた構造を有するブロック共重合体(C)を更に含み、
ブロック共重合体(C)の含有量は、ポリマー成分100質量部に対して、5〜45質量部であり、
ポリオレフィン系エラストマー(B)及びブロック共重合体(C)の合計含有量が、ポリマー成分100質量部に対して、70質量部未満であり、
ブロック共重合体(C)が、示差走査熱量測定(DSC)において二峰性の融解ピークを有し、低温側の融解ピーク温度が85℃以上であり、高温側の融解ピーク温度が200℃以上である、冷媒輸送ホースにより達成される。
【0007】
従来から使用されてきたポリアミド樹脂(A)及びポリオレフィン系エラストマー(B)に加えて、ポリオレフィン骨格にポリアミドがグラフトされた上記特定のブロック共重合体(C)を上記特定量で使用することにより、耐久性及びバリア性の双方に優れる冷媒輸送ホースを得ることができる。特に、従来用いられていた酸化マグネシウムやハイドロタルサイトなどの受酸剤を添加した配合と比較して冷媒輸送ホースの耐久性を向上させることが可能となる。
【0008】
本発明の冷媒輸送ホースの好ましい態様は以下のとおりである。
(1)ポリオレフィン系エラストマー(B)の少なくとも一部が酸変性されている。
(2)ポリアミド樹脂(A)がナイロン6である。
【発明の効果】
【0009】
本発明の冷媒輸送ホースはバリア性及び耐久性に優れる。したがって、本発明の冷媒輸送ホースをカーエアコン等の機器に使用した場合には冷媒輸送機能を長期に亘って維持することが可能である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明において、冷媒輸送ホースのバリア層を形成する樹脂組成物は、ポリアミド樹脂(A)、ポリオレフィン系エラストマー(B)、及びポリオレフィン骨格にポリアミドブロックがグラフトされた構造を有するブロック共重合体(C)を含む。以下、本発明の実施形態を具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。また、以下に説明するあらゆる構成の任意の組み合わせも本発明に含まれる。
【0012】
<ポリアミド樹脂(A)>
本発明で用いられるポリアミド樹脂(A)は、例えば、アミノ酸、ラクタムあるいはジアミンとジカルボン酸を主たる構成成分とするポリアミドである。これらの構成成分の具体例を挙げるとε−カプロラクタム、エナントラクタム、ω−ラウロラクタムなどのラクタム、ε−アミノカプロン酸、11−アミノウンデカン酸、12−アミノドデカン酸などのアミノ酸、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ウンデカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、2,2,4−/2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン、5−メチルノナメチレンジアミン、m−キシリレンジアミン、p−キシリレンジアミン、1,3−ビスアミノメチルシクロヘキサン、1,4−ビスアミノメチルシクロヘキサン、ビス−p−アミノシクロヘキシルメタン、ビス−p−アミノシクロヘキシルプロパン、イソホロンジアミンなどのジアミン、アジピン酸、スベリン酸、アゼライン酸、ゼバシン酸、ドデカン2酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、ダイマー酸などのジカルボン酸がある。これらの構成成分は単独あるいは2種以上の混合物の形で重合に供され、得られるポリアミド樹脂はホモポリマー、コポリマーのいずれであっても良い。
【0013】
特に本発明で有効に用いられるポリアミド樹脂(A)としては、ポリカプラミド(ナイロン6)、ポリヘキサメチレンアジパミド(ナイロン66)、ポリテトラメチレンアジパミド(ナイロン46)、ポリヘキサメチレンセバカミド(ナイロン610)、ポリウンデカンアミド(ナイロン11)、ポリドデカンアミド(ナイロン12)、ポリヘキサメチレンアジパミド/ヘキサメチレンテレフタルアミド共重合体(ナイロン66/6T)、ポリカプラミド/ポリヘキサメチレンアジパミド共重合体(ナイロン6/66)が挙げられ、これらは1種を単独で用いても良く、2種以上を混合して用いても良い。特に、ナイロン6が好ましい。
【0014】
ポリアミドの重合度については特に制限はなく、1質量%濃度の硫酸溶液の25℃における相対粘度(以下、単に「相対粘度」と称す場合がある。)が1.5〜5.0の範囲内にあるものを任意に用いることができる。また、ポリアミド樹脂(A)は、その末端基がモノカルボン酸化合物および/またはジカルボン酸化合物あるいはモノアミン化合物および/またはジアミン化合物の1種以上を任意の段階でポリアミドに添加することにより末端基濃度が調節されていてもよい。
【0015】
ポリアミド樹脂(A)の含有量は、十分なバリア性を確保する観点から、バリア層を形成する樹脂組成物に含まれるポリマー成分100質量部に対して、5〜95質量部、好ましくは10〜90質量部、より好ましくは20〜80質量部、更に好ましくは30〜70質量部、好ましくは30質量部を超え70質量部以下である。
【0016】
<ポリオレフィン系エラストマー(B)>
バリア層を形成する樹脂組成物には、ポリオレフィン系エラストマー(B)が含まれる。ポリオレフィン系エラストマー(B)の配合により、本発明におけるポリアミド樹脂組成物で形成されるバリア層の柔軟性、耐久性が向上する。
【0017】
ポリオレフィン系エラストマー(B)としては、例えば、エチレン・ブテン共重合体、EPR(エチレン−プロピレン共重合体)、変性エチレン・ブテン共重合体、EEA(エチレン−エチルアクリレート共重合体)、変性EEA、変性EPR、変性EPDM(エチレン−プロピレン−ジエン三元共重合体)、アイオノマー、α−オレフィン共重合体、変性IR(イソプレンゴム)、変性SEBS(スチレン−エチレン−ブチレン−スチレン共重合体)、ハロゲン化イソブチレン−パラメチルスチレン共重合体、エチレン−アクリル酸変性体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、及びその酸変性物、及びそれらを主成分とする混合物等が挙げられる。これらは1種を単独で用いても良く、2種以上を混合して用いても良い。
【0018】
バリア層を形成する樹脂組成物とポリオレフィン系エラストマー(B)とを相溶状態、即ち、良好な分散状態とするために、エラストマーの少なくとも一部が無水マレイン酸等により酸変性されていることが好ましい。より好ましくはポリオレフィン系エラストマー(B)のうちの40〜100質量%が酸変性されており、特に好ましくは使用するポリオレフィン系エラストマー(B)の全てが酸変性されている。良好な分散形態を得るために用いるエラストマーの全体の平均の酸価(酸変性率)は0.8mg−CH
3ONa/g以上であることが好ましく、その上限は特に限定されないが、好ましくは30mg−CH
3ONa/g以下、より好ましくは15mg−CH
3ONa/g以下である。
【0019】
本発明に係るポリアミド樹脂組成物中のポリオレフィン系エラストマー(B)含有量は、少な過ぎるとポリオレフィン系エラストマー(B)を配合したことによる柔軟性、耐久性の改善効果を十分に得ることができず、多過ぎるとガスバリア性が低下するため、バリア層を形成する樹脂組成物に含まれるポリマー成分100質量部に対して、5質量部以上65質量部未満、好ましくは10〜60質量部、更に好ましくは15〜55質量部、特に好ましくは15〜50質量部であり、最も好ましくは18〜36質量部である。
【0020】
<ブロック共重合体(C)>
ブロック共重合体(C)は、ポリオレフィンの骨格(主鎖)にポリアミドブロックがグラフト結合したポリマーである。ブロック共重合体(C)は、単純なポリアミド樹脂と比較して、酸と反応する箇所が少ないので、ホース内を流れる冷媒及びオイルに由来する酸による加水分解が生じにくく、バリア層の耐久性が向上させることができる。ブロック共重合体(C)は、例えば、官能基を有するポリオレフィン系(共)重合体とその官能基と反応する機能性ポリアミドとを溶融状態で混合することにより得られる。ブロック共重合体(C)をポリアミド樹脂(A)及びポリオレフィン系エラストマー(B)に配合することにより耐久性が飛躍的に向上する。ブロック共重合体(C)の骨格となるポリオレフィンは上述のポリオレフィン系エラストマーで例示したポリオレフィンと同様のものでよく、ブロック共重合体(C)のポリアミドブロックは上述のポリアミド(A)で例示したポリアミドと同様のものでよく、これらは後述する特定の融解ピーク温度が得られるように適宜選択される。特にポリアミド6グラフトポリオレフィンが好ましい。
【0021】
ブロック共重合体(C)の含有量は、ポリマー成分100質量部に対して、5〜45質量部である。5質量部未満であると、耐久性、特に、耐乾熱老化性、耐油老化性向上の効果が十分に得られない。45質量部を超えるとバリア性が低下する。ブロック共重合体(C)の好ましい含有量は、バリア層を形成する樹脂組成物に含まれるポリマー成分100質量部に対して、好ましくは8〜32質量部、より好ましくは10〜30質量部、更に好ましくは12〜28質量部、特に好ましくは15〜25質量部、最も好ましくは16〜24質量部である。
【0022】
また、本発明において、ポリマー成分100質量部に対して、ポリオレフィン系エラストマー(B)及びブロック共重合体(C)の合計含有量が、ポリマー成分100質量部に対して、70質量部未満であることが必要である。70質量部を超えるとバリア性が低下する。ポリオレフィン系エラストマー(B)及びブロック共重合体(C)の合計含有量は、ポリマー成分100質量部に対して、好ましくは68質量部以下、より好ましくは65質量部以下、更に好ましくは60質量部以下であり、下限については好ましくは20質量部以上、より好ましくは30質量部以上、更に好ましくは40質量部以上である。
【0023】
ブロック共重合体(C)は、示差走査熱量測定(DSC)において二峰性の融解ピークを有し、低温側の融解ピーク温度が85℃以上であり、高温側の融解ピーク温度が200℃以上である。低温側の融解ピークはポリオレフィン骨格に由来し、高温側の融解ピークはポリアミドブロックに由来する。低温側の融解ピーク温度が85℃未満であると、十分な耐油老化性が得られない。高温側の融解ピーク温度が200℃未満であると、十分な耐油老化性及び乾熱老化性が得られない。
【0024】
ブロック共重合体(C)の低温側の融解ピーク温度は、好ましくは90℃以上、より好ましくは100℃以上であり、上限は高温側の融解ピークよりも低ければよく、200℃未満、好ましくは150℃以下である。低温側の融解ピークの好ましい範囲は90〜120℃、好ましくは95℃〜110℃、更に好ましくは100℃〜105℃である。
【0025】
ブロック共重合体(C)の高温側の融解ピーク温度の上限は好ましくは300℃以下、より好ましくは250℃以下である。高温側の融解ピーク温度の好ましい範囲は200〜230℃、より好ましくは210〜220℃である。
【0026】
<その他の成分>
バリア層に含まれる樹脂組成物は酸化防止剤を含んでいてもよい。酸化防止剤としては、セミヒンダードフェノール、レスヒンダードフェノール、ヒンダードフェノール、フェノールアクリレート、ビスフェノールなどの多様なフェノール系化合物や、チオエーテル化合物、メルカプトベンズイミダゾール化合物、ジチオカルバミン酸化合物、チオウレア化合物などの硫黄系酸化防止剤を使用することができる。酸化防止剤の添加量は、ポリマー成分100質量部に対して3.0質量部以下が好ましく、より好ましくは0.3質量部〜1質量部、特に好ましくは0.4質量部〜0.8質量部である。
【0027】
また、バリア層に含まれる樹脂組成物は金属不活性化剤を含んでいてもよい。金属不活性化剤としては、ヒンダードフェノール構造を有するフェノール系化合物を使用することができる。金属不活性化剤の含有量は、ポリマー成分100質量部に対して通常0.01質量部〜1.5質量部、好ましくは0.05質量部〜1質量部、さらに好ましくは0.05質量部〜0.5質量部である。
【0028】
さらに、バリア層に含まれる樹脂組成物は、他の添加剤、すなわち、滑剤、帯電防止剤、受酸剤、上述した(A)、(B)及び(C)以外の他の樹脂成分、着色剤、老化防止剤、結晶核剤、充填剤、補強材、耐熱剤、耐光剤、などを1種以上含んでいてもよい。
【0029】
本発明の組成物を用いたホースとその製造方法も特に限定されないが、以下に一例を説明する。
【0030】
<冷媒輸送ホース及びその製造方法>
本発明の冷媒輸送ホースのバリア層は、耐久性および耐久性に優れるため、液体、ガスなど多様な物質の冷媒輸送用のホースのバリア層として適しており、バリア層に1層以上の他の層が積層された複層構造の冷媒輸送ホースに特に適している。
【0031】
図1の符号10はホースの具体例を示している。このホース10は冷媒輸送ホースであって、その製造方法は特に限定されないが、一般的には、本発明における上記の樹脂組成物を溶融させ、その溶融物をマンドレル(管型)上に押し出してバリア層12を形成する。
【0032】
バリア層12の膜厚は、バリア性を考慮すると厚い方が好ましいが、膜厚が厚すぎると柔軟性が低下する。従って、バリア層12の膜厚は50μm〜400μmが好ましく、より好ましくは150μm〜350μmである。図示しているようにバリア層12は最内層であり、使用時においてホース内を流れる冷媒及びオイル(潤滑油等)と接する。
【0033】
複層構造とする場合は、一般に、バリア層12の上に、ゴム層14、18、22と、補強糸層16、20のいずれか1以上を積層する。ここでは、バリア層12の外周上に、内側ゴム層14、第1補強糸層16、中間ゴム層18、第2の補強糸層20、外側ゴム層22を記載した順番に形成している。
【0034】
補強糸層16、20は特に限定されず、通常用いられる補強糸を用いることが可能である。一般的には、ポリエステル、全芳香族ポリエステル、ナイロン、ビニロン、レーヨン、アラミド、ポリアリレート、ポリエチレンナフタレート及びこれらの混撚り糸が用いられ、これら補強糸をスパイラル状に巻き溶けて形成する。
【0035】
補強糸層の層数は2層に限定されず、1層でもよいし、3層以上でもよいが、補強糸層を複数層設ける場合は、スパイラルの向きを隣接する他の補強糸層と逆方向とすることが好ましい。
【0036】
ゴム層14、18、22を構成するゴムとしては、一般にブチルゴム(IIR)、塩素化ブチルゴム(C1−IIR)、塩素化ポリエチレン、クロロスルホン化ポリエチレン、臭素化ブチルゴム(Br−IIR)、イソブチレン−ブロモパラメチルスチレン共重合体、EPR(エチレン−プロピレン共重合体)、EPDM(エチレン−プロピレン−ジエン三元共重合体)、NBR(アクリロニトリルブタジエンゴム)、CR(クロロプレンゴム)、水素添加NBR、アクリルゴム、エチレンアクリルゴム(AEM)、これらのゴムの2種以上のブレンド物、或いは、これらのゴムを主成分とするポリマーとのブレンド物、好ましくはブチル系ゴム、EPDM系ゴムが用いられる。これらのゴムには、通常用いられる充填剤、加工助剤、老化防止剤、加硫剤、加硫促進剤等の配合処方を適用できる。
【0037】
これらゴム層14、18、22に用いるゴム種は同種であっても、異種であってもよいが、中間ゴム層18には内側ゴム層14及び外側ゴム層22と接触性の良いゴムを用いることが好ましい。
【0038】
内層ゴム層14の厚さは、柔軟性の面から0.5〜4mm程度とするのが好ましい。中間ゴム層18の厚さは0.1〜0.6mm程度、外側ゴム層22の厚さは0.5〜2mm程度とするのが好ましい。
【0039】
本発明では、バリア層に使用されるポリマーとして、従来から使用されてきたポリアミド樹脂(A)及びポリオレフィン系エラストマー(B)に加えて、ポリオレフィン骨格にポリアミドがグラフトされた上記特定のブロック共重合体(C)を上記特定量で使用することにより、耐久性及び加工性の双方に優れる冷媒輸送ホースを得ることができる。特に従来用いられていたポリアミド樹脂(A)とポリオレフィン系エラストマーとの組み合わせに対して酸化マグネシウムやハイドロタルサイトなどの受酸剤を添加した配合と比較して耐久性が向上している。
【実施例】
【0040】
(1)シートの作製
下記表に示す材料を表に示した配合で東洋精機製作所製の二軸混練機を用いて溶融混練を行い、樹脂ペレットを得た。その後、東洋精機製作所製のTダイ成形機を用い、厚さ0.35mmの樹脂シートを得た。この樹脂シートを用い、以下の評価試験を行った。
【0041】
(2)評価
(2−1)初期引張特性
0.35mmの樹脂シートを、引張試験用のダンベル片に打ち抜き、これについて引張速度100mm/minの速度で破断試験を行い、引張破断伸度、引張破断強度を測定した。
(2−2)150℃乾熱老化試験
0.35mmの樹脂シートを、引張試験用のダンベル片に打ち抜き、150℃に設定したオーブン内に静置し、168h熱処理を行ったサンプルについて、引張速度100mm/minの速度で破断試験を行い、引張破断伸度、引張破断強度を測定し、老化前の同試験項目を100%と定義し、劣化率として表した。
(2−3)150℃耐油老化試験
0.35mmの樹脂シートを、引張試験用のダンベル片に打ち抜き、水分量を2000ppmに調製したオイル(ダフニーハーメチックオイルSP−A2:出光興産株式会社製)を47g耐圧容器に入れ、ダンベル片を投入した。この耐圧容器を、−30℃に設定された冷凍オーブン内で30分間冷却した後、5分間真空引きを行った。常温に戻した耐圧容器を、150℃に設定したオーブンに投入し168h経過するまで、オーブン内に設置した。このサンプルを引張速度100mm/minの速度で破断試験を行い、引張破断伸度、引張破断強度を測定し、老化前の同試験項目を100%と定義し、劣化率として表した。
(2−4)バリア性
バリア性試験は、0.35mmの樹脂シートを、差圧式ガス・蒸気透過率測定装置(GTR−30XAD2、G2700T−F、GTRテック(株)・ヤナコテクニカルサイエンス(株)製)を用い、差圧法(JIS K 7126−1)、測定温度90℃、冷媒はR−134aを用いて測定を行った。
(2−5)融解ピーク温度の測定
使用したブロック共重合体について、示差走査熱量計を用い、昇温速度10℃/min、常温から280℃まで昇温した後、10℃/minの速度で常温まで冷却、その後10℃/minの昇温速度で温度を制御した。融点は第二昇温プログラムで見られた融解熱量曲線の極小値(融解ピーク)を読み取った。
【0042】
【表1】
【0043】
【表2】
【0044】
上記表1及び2に記載された材料は下記の通りである。
【0045】
「無水マレイン酸変性エラストマー」(三井化学社製タフマーMH7010、マレイン酸変性α−オレフィンポリマー(エチレン−ブテン共重合体))
「無変性エラストマー」(三井化学社製タフマーTX610、エチレン−1−ブテン共重合体)
「MgO」酸化マグネシウム
「DHT−4A」(協和化学工業社製合成ハイドロタルサイト)
「ナイロン6(1011FB)」(宇部興産社製、低粘度ナイロン6)
「ナイロン6(1022B)」(宇部興産社製、中粘度ナイロン6)
「ナイロン6(1022UM)」(宇部興産社製、ヨウ化カリウム及びヨウ化銅を含むナイロン6)
「ブロック共重合体(LP81)」(東京材料社製アポリヤLP81、低温側融解ピーク69℃、高温側融解ピーク216℃、PA6グラフトポリオレフィン)
「ブロック共重合体(LP91)」(東京材料社製アポリヤLP91、低温側融解ピーク102℃、高温側融解ピーク216℃、PA6グラフトポリオレフィン)
「ブロック共重合体(LB91)」(東京材料社製アポリヤLB91、高温側融解ピーク187℃、PA11グラフトポリオレフィン)
「銅害防止剤(CDA−6)」(ADEKA社製、N’1,N’12−ビス(2−ヒドロキシベンゾイル)ドデカンジヒドラジド)
「銅害防止剤(CDA−10)」(ADEKA社製、N,N’−ビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニル]ヒドラジン)
「フェノール系酸化防止剤(GA−80)」(住友化学製、SUMILIZER(登録商標)GA−80)
「イオウ系酸化防止剤(TP−D)」(住友化学製、SUMILIZER(登録商標)TP−D)