(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6921061
(24)【登録日】2021年7月29日
(45)【発行日】2021年8月18日
(54)【発明の名称】デジタルラジオ受信機におけるアナログ経路とデジタル経路の時間的整合のための方法及び装置
(51)【国際特許分類】
H04B 1/16 20060101AFI20210805BHJP
H04H 60/12 20080101ALI20210805BHJP
H04H 40/18 20080101ALI20210805BHJP
H04H 20/22 20080101ALI20210805BHJP
【FI】
H04B1/16 Z
H04H60/12
H04H40/18
H04H20/22
【請求項の数】20
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2018-515586(P2018-515586)
(86)(22)【出願日】2016年9月6日
(65)【公表番号】特表2018-534831(P2018-534831A)
(43)【公表日】2018年11月22日
(86)【国際出願番号】US2016050408
(87)【国際公開番号】WO2017053057
(87)【国際公開日】20170330
【審査請求日】2019年8月1日
(31)【優先権主張番号】14/862,800
(32)【優先日】2015年9月23日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】517284201
【氏名又は名称】アイビクィティ デジタル コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100088694
【弁理士】
【氏名又は名称】弟子丸 健
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100067013
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 文昭
(74)【代理人】
【識別番号】100086771
【弁理士】
【氏名又は名称】西島 孝喜
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100109335
【弁理士】
【氏名又は名称】上杉 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120525
【弁理士】
【氏名又は名称】近藤 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100139712
【弁理士】
【氏名又は名称】那須 威夫
(72)【発明者】
【氏名】ヴィンセレット スコット
【審査官】
対馬 英明
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許出願公開第2013/0003904(US,A1)
【文献】
国際公開第2010/058511(WO,A1)
【文献】
特開2013−084334(JP,A)
【文献】
特開2002−261635(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2010/0027719(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 1/06
H04B 1/16
H04H 20/00−20/46
H04H 20/51−20/86
H04H 20/91−40/27
H04H 40/90−60/98
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アナログ部分及びデジタル部分を有するラジオ放送信号を受信するステップと、
前記ラジオ放送信号のデジタル部分から前記ラジオ放送信号のアナログ部分を分離するステップと、
前記ラジオ放送信号のアナログ部分を表す第1のオーディオサンプルストリームを生成するステップと、
前記ラジオ放送信号のデジタル部分を表す第2のオーディオサンプルストリームを生成するステップと、
前記第1及び第2のオーディオサンプルストリームをデシメーションして、デシメーションされたオーディオサンプルストリームの第1及び第2のストリームを生成するステップと、
前記デシメーションされたオーディオサンプルストリームの第1及び第2のストリームにおける対応するサンプル間で第1の範囲の有効な結果を有する第1のオフセットの値を推定するステップと、
前記第1及び第2のオーディオサンプルストリームのうちの1つを第1のシフト値だけシフトし、ここで前記第1のシフト値は前記第1の範囲の有効な結果に基づいて決定されるものであるステップと、
シフトされた前記第1の又は第2の及びシフトされていない前記第2の又は第1のオーディオサンプルストリームをデシメーションして、デシメーションされたオーディオサンプルの第3及び第4のストリームを生成するステップと、
前記デシメーションされたオーディオサンプルストリームの第3及び第4のストリームにおける対応するサンプル間で第2の範囲の有効な結果を有する第2のオフセットの値を推定するステップと、
前記第1の範囲と第2の範囲の有効な結果の共通部分に基づいて、最終的なオフセットの値を特定するステップと、
前記第1及び第2のオーディオサンプルストリームのうちの1つを前記最終的なオフセットの値だけシフトして、前記第1のオーディオサンプルストリームと前記第2のオーディオサンプルストリームとを整合させるステップと、
を含む方法。
【請求項2】
前記第1のオフセットの値は、前記第1及び第2のデシメーションされたオーディオサンプルストリームのサンプルに対して相互相関を行ない、最も相関のある前記デシメーションされたストリームのサンプル間のオフセットを決定することによって推定され、前記第1のシフト値は、それが、前記相互相関の相関誤差に等しく、前記相関誤差は事前にデシメーションされたオーディオサンプルストリームに対して、nを整数として±nサンプルである、ように選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第1のシフト値は、前記第1の範囲の有効な結果の範囲内になるように選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記第1のオーディオサンプルストリームと前記第2のオーディオサンプルストリームとを混合して、オーディオ出力を生成するステップを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記第1及び第2のオーディオサンプルストリームのうちの1つを第2のオフセットの値だけシフトするステップと、
シフトされた前記第1の又は第2の及びシフトされていない前記第2の又は第1のオーディオサンプルストリームをデシメーションして、デシメーションされたオーディオサンプルストリームの第5及び第6のストリームを生成するステップと、
前記デシメーションされたオーディオサンプルストリームの第5及び第6のストリームにおける対応するサンプル間で第3の範囲の有効な結果を有する第3のオフセットの値を推定するステップと、
を更に含み、前記最終的なオフセットの値を特定するステップは、前記第1及び第2の範囲の有効な結果と前記第3の範囲の有効な結果との共通部分に基づくものである、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記第1のオーディオサンプルストリームと前記第2のオーディオサンプルストリームとを混合して、オーディオ出力を生成するステップを更に含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記第1及び第2のオーディオサンプルストリームをデシメーションして、デシメーションされたオーディオサンプルストリームの第1及び第2のストリームを生成するステップと、前記第1及び第2のオーディオサンプルストリームをデシメーションして、デシメーションされたオーディオサンプルの第3及び第4のストリームを生成するステップは、異なるデシメーションレートで実行される、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
処理回路を備えるラジオ受信機であって、前記処理回路は、
アナログ部分及びデジタル部分を有するラジオ放送信号を受信し、
前記ラジオ放送信号のデジタル部分から前記ラジオ放送信号のアナログ部分を分離し、
前記ラジオ放送信号のアナログ部分を表す第1のオーディオサンプルストリームを生成し、
前記ラジオ放送信号のデジタル部分を表す第2のオーディオサンプルストリームを生成し、
前記第1及び第2のオーディオサンプルストリームをデシメーションして、デシメーションされたオーディオサンプルストリームの第1及び第2のストリームを生成し、
前記デシメーションされたオーディオサンプルストリームの第1及び第2のストリームにおける対応するサンプル間で第1の範囲の有効な結果を有する第1のオフセットの値を推定し、
前記第1及び第2のオーディオサンプルストリームのうちの1つを第1のシフト値だけシフトし、ここで前記第1のシフト値は前記第1の範囲の有効な結果に基づいて決定されるものであり、
シフトされた前記第1の又は第2の、及びシフトされていない前記第2の又は第1のオーディオサンプルストリームをデシメーションして、デシメーションされたオーディオサンプルの第3及び第4のストリームを生成し、
前記デシメーションされたオーディオサンプルストリームの第3及び第4のストリームにおける対応するサンプル間で第2の範囲の有効な結果を有する第2のオフセットの値を推定し、
前記第1の範囲と第2の範囲の有効な結果の共通部分に基づいて、最終的なオフセットの値を特定し、
前記第1及び第2のオーディオサンプルストリームのうちの1つを前記最終的なオフセットの値だけシフトして、前記第1のオーディオサンプルストリームと前記第2のオーディオサンプルストリームとを整合させるように構成されている、
ことを特徴とするラジオ受信機。
【請求項9】
前記第1のオフセットの値は、前記第1及び第2のデシメーションされたオーディオサンプルストリームのサンプルに対して相互相関を行ない、最も相関のある前記デシメーションされたストリームのサンプル間のオフセットを決定することによって推定されるものであり、前記受信機は更に、前記第1のシフト値は、それが、前記相互相関の相関誤差に等しく、前記相関誤差は事前にデシメーションされたオーディオサンプルストリームに対して、nを整数として±nサンプルである、ように選択するように構成される、請求項8に記載のラジオ受信機。
【請求項10】
前記受信機は更に、前記第1の範囲の有効な結果の範囲内になるように、前記第1のシフト値を選択するように構成される、請求項8に記載のラジオ受信機。
【請求項11】
前記受信機は更に、前記第1のオーディオサンプルストリームと前記第2のオーディオサンプルストリームとを混合して、オーディオ出力を生成するように構成される、請求項8に記載のラジオ受信機。
【請求項12】
前記受信機は更に、前記第1及び第2のオーディオサンプルストリームのうちの1つを第2のオフセットの値だけシフトし、シフトされた前記第1の又は第2の及びシフトされていない前記第2の又は第1のオーディオサンプルストリームをデシメーションして、デシメーションされたオーディオサンプルストリームの第5及び第6のストリームを生成し、前記デシメーションされたオーディオサンプルストリームの第5及び第6のストリームにおける対応するサンプル間で第3の範囲の有効な結果を有する第3のオフセットの値を推定するように構成されており、前記最終的なオフセットの値を特定するステップは、前記第1及び第2の範囲の有効な結果と前記第3の範囲の有効な結果との共通部分に基づくものである、請求項8に記載のラジオ受信機。
【請求項13】
前記受信機は更に、前記第1のオーディオサンプルストリームと前記第2のオーディオサンプルストリームとを混合して、オーディオ出力を生成するように構成される、請求項12に記載のラジオ受信機。
【請求項14】
前記受信機は更に、前記第1及び第2のオーディオサンプルストリームをデシメーションして、デシメーションされたオーディオサンプルストリームの第1及び第2のストリームを生成する機能と、前記第1及び第2のオーディオサンプルストリームをデシメーションして、デシメーションされたオーディオサンプルの第3及び第4のストリームを生成する機能を異なるデシメーションレートで実行するように構成される、請求項8に記載のラジオ受信機。
【請求項15】
処理システムにステップを実行させるように適合されたコンピュータプログラム命令を含む非一時的な有形のコンピュータ可読媒体であって、前記ステップは、
アナログ部分及びデジタル部分を有するラジオ放送信号を受信するステップと、
前記ラジオ放送信号のデジタル部分から前記ラジオ放送信号のアナログ部分を分離するステップと、
前記ラジオ放送信号のアナログ部分を表す第1のオーディオサンプルストリームを生成するステップと、
前記ラジオ放送信号のデジタル部分を表す第2のオーディオサンプルストリームを生成するステップと、
前記第1及び第2のオーディオサンプルストリームをデシメーションして、デシメーションされたオーディオサンプルストリームの第1及び第2のストリームを生成するステップと、
前記デシメーションされたオーディオサンプルストリームの第1及び第2のストリームにおける対応するサンプル間で第1の範囲の有効な結果を有する第1のオフセットの値を推定するステップと、
前記第1及び第2のオーディオサンプルストリームのうちの1つを第1のシフト値だけシフトし、ここで前記第1のシフト値は前記第1の範囲の有効な結果に基づいて決定されるものであるステップと、
シフトされた前記第1の又は第2の及びシフトされていない前記第2の又は第1のオーディオサンプルストリームをデシメーションして、デシメーションされたオーディオサンプルの第3及び第4のストリームを生成するステップと、
前記デシメーションされたオーディオサンプルストリームの第3及び第4のストリームにおける対応するサンプル間で第2の範囲の有効な結果を有する第2のオフセットの値を推定するステップと、
前記第1の範囲と第2の範囲の有効な結果の共通部分に基づいて、最終的なオフセットの値を特定するステップと、
前記第1及び第2のオーディオサンプルストリームのうちの1つを前記最終的なオフセットの値だけシフトして、前記第1のオーディオサンプルストリームと前記第2のオーディオサンプルストリームとを整合させるステップと、
を含む、ことを特徴とするコンピュータ可読媒体。
【請求項16】
前記第1のオフセットの値は、前記第1及び第2のデシメーションされたオーディオサンプルストリームのサンプルに対して相互相関を行ない、最も相関のある前記デシメーションされたストリームのサンプル間のオフセットを決定することによって推定されるものであり、前記コンピュータプログラム命令は更に、前記処理システムに、前記第1のシフト値は、それが、前記相互相関の相関誤差に等しく、前記相関誤差は事前にデシメーションされたオーディオサンプルストリームに対して、nを整数として±nサンプルである、ように選択させるように適合されている、請求項15に記載のコンピュータ可読媒体。
【請求項17】
前記コンピュータプログラム命令は更に、前記第1の範囲の有効な結果の範囲内になるように、前記処理システムに前記第1のシフト値を選択させるように適合されている、請求項15に記載のコンピュータ可読媒体。
【請求項18】
前記コンピュータプログラム命令は更に、前記処理システムに、前記第1のオーディオサンプルストリームと前記第2のオーディオサンプルストリームとを混合して、オーディオ出力を生成させるように適合されている、請求項15に記載のコンピュータ可読媒体。
【請求項19】
前記コンピュータプログラム命令は更に、前記処理システムに、
前記第1及び第2のオーディオサンプルストリームのうちの1つを第2のオフセットの値だけシフトさせ、
シフトされた前記第1の又は第2の及びシフトされていない第2の又は第1のオーディオサンプルストリームをデシメーションして、デシメーションされたオーディオサンプルストリームの第5及び第6のストリームを生成させ、
前記デシメーションされたオーディオサンプルストリームの第5及び第6のストリームにおける対応するサンプル間で第3の範囲の有効な結果を有する第3のオフセットの値を推定させる、
ように適合されており、前記最終的なオフセットの値を特定するステップは、前記第1及び第2の範囲の有効な結果と前記第3の範囲の有効な結果との共通部分に基づくものである、請求項15に記載のコンピュータ可読媒体。
【請求項20】
前記コンピュータプログラム命令は更に、前記処理システムに、異なるデシメーションレートで、前記第1及び第2のオーディオサンプルストリームをデシメーションして、デシメーションされたオーディオサンプルストリームの第1及び第2のストリームを生成し、前記第1及び第2のオーディオサンプルストリームをデシメーションして、デシメーションされたオーディオサンプルの第3及び第4のストリームを生成させる、ように適合されている、請求項19に記載のコンピュータ可読媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
記載される方法及び装置は、デジタルラジオ放送受信機に関し、詳細には、デジタルラジオ受信機におけるアナログ経路とデジタル経路の時間的整合のための方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
デジタルラジオ放送技術は、移動体受信機、携帯型受信機、及び固定受信機にデジタルオーディオ及びデータサービスを提供する。インバンドオンチャンネル(IBOC)デジタルオーディオ放送(DAB)と呼ばれる、デジタルラジオ放送の1つのタイプは、既存の中波(MF)及び超短波(VHF)無線帯域で地上波送信機を使用する。iBiquity Digital Corporation(アイビクイティデジタルコーポレイション)により開発されたHD Radio(HDラジオ)(商標)技術は、デジタルラジオ放送及び受信のためのIBOC実施構成の一例である。
【0003】
IBOC信号は、複数のデジタル変調キャリアと組み合わせてアナログ変調キャリアを含むハイブリッドフォーマットで、又はアナログ変調キャリアが使用されない全デジタルフォーマットで送信することができる。ハイブリッドモードを使用すると、放送事業者は、より高品質でより堅牢なデジタル信号と共にアナログAM及びFMを同時に送信し続けることができ、放送事業者の現在の周波数割り当てを維持しながら、放送事業者自体及びその聴取者がアナログからデジタルにラジオを変換することが可能になる。
【0004】
IBOC技術は、既存のアナログ放送フォーマットよりも優れたデジタル品質オーディオを提供することができる。各IBOC信号は、既存のAM又はFMチャンネル割り当てのスペクトルマスク内で送信されるので、新しいスペクトル割り当てを必要としない。IBOCは、スペクトルの節減を促進しながら、放送事業者が、現行ベースの聴取者にデジタル品質オーディオを提供することを可能にする。
【0005】
全米放送事業者協会(National Association of Broadcasters)及び全米家電協会(Consumer Electronics Association)の支援を受けた標準化団体である全米ラジオシステム委員会(National Radio Systems Committee)は、2005年9月にNRSC−5で指定されたIBOC規格を採用した。NRSC−5(その開示内容が引用により本明細書に組み込まれる)は、AM及びFM放送チャンネルを介してデジタルオーディオ及び補助データを放送するための要件を明記している。この規格及びその参考文献は、RF/送信サブシステム並びにトランスポート及びサービス多重サブシステムの詳細な説明を含む。この規格のコピーは、http://www.nrscstandards.org/standards.aspにおいてNRSCから入手することができる。iBiquityのHDラジオ技術は、NRSC−5 IBOC規格の実施構成である。HDラジオ技術に関する更なる情報は、www.hdradio.com及びwww.ibiquity.comで見出すことができる。
【0006】
他のタイプのデジタルラジオ放送システムは、衛星デジタルオーディオラジオサービス(SDARS、例えば、XMラジオ(商標)、Sirius(登録商標))、デジタルオーディオラジオサービス(DARS、例えば、WorldSpace(登録商標))などの衛星システム、並びにデジタル・ラジオ・モンディエール(DRM)、Eureka 147(DABデジタルオーディオ放送(登録商標)の商標付き)、DABバージョン2、及びFMeXtra(登録商標)などの地上波システムを含む。本明細書で使用される「デジタルラジオ放送」という語句は、インバンドオンチャンネル放送、並びに他のデジタル地上波放送及び衛星放送を含むデジタルオーディオ及びデータ放送を包含する。
【0007】
AM及びFM両方のインバンドオンチャンネル(IBOC)放送システムは、アナログ変調キャリア及び複数のデジタル変調サブキャリアを含むコンポジット信号を利用する。プログラムコンテンツ(例えば、オーディオ)は、アナログ変調キャリア及びデジタル変調サブキャリア上で冗長的に送信することができる。アナログオーディオは、送信機においてダイバーシティ遅延により遅延が生じる。
【0008】
デジタルオーディオ信号が存在しない場合(例えば、最初にチャンネルが同調されたとき)には、アナログAM又はFMバックアップオーディオ信号が、オーディオ出力に送られる。デジタルオーディオ信号が利用可能になると、デジタルオーディオ信号において混合しながら、混合機能が円滑にアナログバックアップ信号を減衰させて、最終的にはこのアナログバックアップ信号をデジタルオーディオ信号に置き換えて、遷移によりオーディオプログラムのある程度の連続性が維持されるようにする。同様の混合は、デジタル信号を損なうチャンネル機能停止中に生じる。この場合、デジタル信号を減衰させることによってアナログ信号が漸次的に出力オーディオ信号に混合され、オーディオ出力にてデジタル破損が生じたときに、オーディオがアナログに完全に混合されるようになる。デジタルオーディオ信号の破損は、ダイバーシティ遅延時間中、オーディオデコーダ若しくは受信機における巡回冗長検査(CRC)誤り検出手段又はその他のデジタル検出手段により検出することができる。
【0009】
IBOCシステムのデジタルオーディオ信号とアナログオーディオ信号との間の混合の概念は、米国特許第7,546,088号、第6,178,317号、第6,590,944号、第6,735,257号、第6,901,242号、及び第8,180,470号において既に記載されており、これらの開示内容は、引用により本明細書に組み込まれる。ダイバーシティ遅延及び混合は、デジタル機能停止が生じたときに、受信機が、デジタルオーディオギャップをアナログ信号で満たすことを可能にする。ダイバーシティ遅延により、移動体環境において短時間の機能停止が生じたとき(例えば、移動体受信機が橋の下を通過するとき)にオーディオ出力が相応の品質を有することが確保される。これは、時間ダイバーシティにより、機能停止がデジタル及びアナログ信号用のオーディオプログラムの異なるセグメントに影響をもたらすことに起因する。
【0010】
受信機において、アナログ経路とデジタル経路は、別個に、すなわち非同期的に処理することができる。ソフトウェア実施構成において、例えば、アナログ及びデジタル復調処理は、異なるソフトウェアスレッドを使用して別々のタスクとして処理することができる。アナログ及びデジタル信号の後続の混合には、これらの信号が混合される前に、信号が時間的に整合されることが必要となる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
デジタル経路における信号とアナログ経路における信号との間の時間的整合を特定する1つの技法は、2つのオーディオストリームのサンプル間の相関を行って、この相関のピークを探し求める。この技法は、多数の乗算演算及び大量のメモリを必要とする可能性がある。
【0012】
少ない乗算回数と少ないメモリ要件で所望の精度を達成できる時間的整合検出技法を有することが望ましいことになる。
【課題を解決するための手段】
【0013】
第1の実施形態において、ラジオ信号を処理するための方法は、アナログ部分及びデジタル部分を有するラジオ放送信号を受信するステップと、該ラジオ放送信号のデジタル部分からラジオ放送信号のアナログ部分を分離するステップと、ラジオ放送信号のアナログ部分を表す第1のオーディオサンプルストリームを生成するステップと、ラジオ放送信号のデジタル部分を表す第2のオーディオサンプルストリームを生成するステップと、第1及び第2のオーディオサンプルストリームをデシメーションして、デシメーションされたオーディオサンプルストリームの第1及び第2のストリームを生成するステップと、デシメーションされたオーディオサンプルストリームの第1及び第2のストリームにおける対応するサンプル間で有効な結果の第1の範囲を有する第1のオフセットの値を推定するステップと、第1及び第2のオーディオサンプルストリームのうちの1つを第1のシフト値だけシフトするステップと、第1及び第2のオーディオサンプルストリームをデシメーションして、デシメーションされたオーディオサンプルの第3及び第4のストリームを生成するステップと、デシメーションされたオーディオサンプルストリームの第3及び第4のストリームにおける対応するサンプル間で有効な結果の第2の範囲を有する第2のオフセットの値を推定するステップと、有効な結果の第1の範囲と第2の範囲との共通部分に基づいて、最終的なオフセットの値を特定するステップと、第1及び第2のオーディオサンプルストリームのうちの1つを該最終的なオフセットの値だけシフトして、第1のオーディオサンプルストリームと第2のオーディオサンプルストリームとを整合させるステップと、を含む。
【0014】
別の実施形態において、ラジオ受信機は、処理回路を含み、該処理回路は、アナログ部分及びデジタル部分を有するラジオ放送信号を受信し、ラジオ放送信号のデジタル部分からラジオ放送信号のアナログ部分を分離し、ラジオ放送信号のアナログ部分を表す第1のオーディオサンプルストリームを生成し、ラジオ放送信号のデジタル部分を表す第2のオーディオサンプルストリームを生成し、該第1及び第2のオーディオサンプルストリームをデシメーションして、デシメーションされたオーディオサンプルストリームの第1及び第2のストリームを生成し、該デシメーションされたオーディオサンプルストリームの第1及び第2のストリームにおける対応するサンプル間で有効な結果の第1の範囲を有する第1のオフセットの値を推定し、第1及び第2のオーディオサンプルストリームのうちの1つを第1のシフト値だけシフトし、第1及び第2のオーディオサンプルストリームをデシメーションして、デシメーションされたオーディオサンプルの第3及び第4のストリームを生成し、該デシメーションされたオーディオサンプルストリームの第3及び第4のストリームにおける対応するサンプル間で有効な結果の第2の範囲を有する第2のオフセットの値を推定し、有効な結果の第1の範囲と第2の範囲との共通部分に基づいて、最終的なオフセットの値を特定し、第1及び第2のオーディオサンプルストリームのうちの1つを該最終的なオフセットの値だけシフトして、第1のオーディオサンプルストリームと第2のオーディオサンプルストリームとを整合させるように構成されている。
【0015】
別の実施形態において、処理システムにステップを実行させるように適合されたコンピュータプログラム命令を含む非一時的な有形のコンピュータ可読媒体が提供され、該ステップは、アナログ部分及びデジタル部分を有するラジオ放送信号を受信するステップと、該ラジオ放送信号のデジタル部分からラジオ放送信号のアナログ部分を分離するステップと、ラジオ放送信号のアナログ部分を表す第1のオーディオサンプルストリームを生成するステップと、ラジオ放送信号のデジタル部分を表す第2のオーディオサンプルストリームを生成するステップと、該第1及び第2のオーディオサンプルストリームをデシメーションして、デシメーションされたオーディオサンプルストリームの第1及び第2のストリームを生成するステップと、該デシメーションされたオーディオサンプルストリームの第1及び第2のストリームにおける対応するサンプル間で有効な結果の第1の範囲を有する第1のオフセットの値を推定するステップと、第1及び第2のオーディオサンプルストリームのうちの1つを第1のシフト値だけシフトするステップと、第1及び第2のオーディオサンプルストリームをデシメーションして、デシメーションされたオーディオサンプルの第3及び第4のストリームを生成するステップと、該デシメーションされたオーディオサンプルストリームの第3及び第4のストリームにおける対応するサンプル間で有効な結果の第2の範囲を有する第2のオフセットの値を推定するステップと、有効な結果の第1の範囲と第2の範囲との共通部分に基づいて、最終的なオフセットの値を特定するステップと、第1及び第2のオーディオサンプルストリームのうちの1つを該最終的なオフセットの値だけシフトして、第1のオーディオサンプルストリームと第2のオーディオサンプルストリームとを整合させるステップと、を含む。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】例示的なデジタルラジオ放送送信機の機能ブロック図である。
【
図2】特定の実施形態による例示的なデジタルラジオ放送受信機の機能ブロック図である。
【
図3】受信機における別個のデジタル信号経路及びアナログ信号経路を示す機能ブロック図である。
【
図4】時間的整合モジュールの要素を示す機能ブロック図である。
【
図5】特定の実施形態による時間的整合のための方法のフローブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本明細書で記載される実施形態は、デジタルラジオ放送信号のデジタル成分及びアナログ成分の処理に関する。本開示の態様は、例示的なIBOCシステムとの関連で示されているが、本開示は、IBOCシステムに限定されるものではなく、また本明細書の教示は、デジタルラジオ放送信号の他の形態にも適用できることを理解されたい。
【0018】
図面を参照すると、
図1は、デジタルオーディオラジオ放送信号を放送する例示的なデジタルラジオ放送送信機10のブロック図である。例示的なデジタルラジオ放送送信機は、例えば、AM又はFM IBOC送信機などのDAB放送送信機とすることができる。入力信号源12は、送信すべき信号を提供する。信号源の信号は、例えば、声又は音楽を表すことができるアナログプログラム信号、及び/又は交通情報などのメッセージデータを表すことができるデジタル情報信号など、様々な形態をとることができる。ベースバンドプロセッサ14は、ソースコーディング、インターリービング、及び前方誤り訂正などの様々な既知の信号処理技法に従って信号源の信号を処理して、ライン16及び18上の複合ベースバンド信号の同相及び直角位相成分を生成し、また、送信機ベースバンドサンプリングクロック信号20を生成する。デジタルアナログコンバータ(DAC)22は、送信機ベースバンドサンプリングクロック20を使用してベースバンド信号をアナログ信号に変換して、ライン24上にアナログ信号を出力する。アナログ信号は、周波数がシフトアップされ、アップコンバータブロック26においてフィルタリングされる。これは、ライン28上で中間周波数f
ifのアナログ信号を生成する。中間周波数フィルタ30は、エイリアス周波数を除去して、ライン32上で中間周波数信号f
ifを生成する。局部発振器34は、ライン36上の信号f
loを生成し、ミキサ38によってライン32上の中間周波数信号とミックスされて、ライン40上の和信号及び差信号を生成する。イメージ除去フィルタ42により、不要な相互変調成分及びノイズが除去され、ライン44上で変調キャリア信号f
cを生成する。次に、高出力増幅器(HPA)46は、この信号をアンテナ48に送る。
【0019】
一実施例において、DAB信号の送信の基本単位は、典型的には持続時間がおよそ1秒のモデムフレームである。例示的なAM及びFM IBOC DAB送信システムは、モデムフレームを単位にしてデジタルオーディオ及びデータを構成する。幾つかの送信システムは、各モデムフレームに固定数のオーディオフレームを割り当てることによって単純化され且つ強化される。オーディオフレーム周期は、オーディオフレームにおいてサンプルをレンダリングする、例えば、ユーザに対してオーディオを再生するのに必要な時間の長さである。例えば、オーディオフレームが、1024個のサンプルを含み、サンプリング周期が22.67μsecである場合、オーディオフレーム周期は、約23.2ミリ秒である。スケジューラは、各モデムフレーム内のオーディオフレームに割り当てられる全ビット数を決定する。モデムフレーム持続時間は、デジタルオーディオ放送システムにおいて予期される可能性があるフェージング及び短い機能停止又はノイズバーストなどの影響を軽減するのに十分に長いインターリービング時間を可能にすることができるので、好都合である。従って、主デジタルオーディオ信号は、モデムフレームを単位にして処理することができ、オーディオ処理、誤り軽減、及び符号化の方式は、欠点が付加されることなく、この比較的大きなモデムフレームを利用することができる。
【0020】
典型的な実施構成において、オーディオエンコーダを用いて、ラジオチャンネルを介したIBOC信号の送受信に関してより効率的で堅牢な方法でオーディオサンプルをオーディオフレームに圧縮することができる。オーディオエンコーダは、各モデムフレームに対するビット割り当てを使用してオーディオフレームを符号化する。モデムフレーム内の残りのビットは通常、多重化されたデータ及びオーバーヘッドが利用する。最初に、米国94103−4938、カリフォルニア州サンフランシスコ、999ブラナンストリート所在のドルビーラボラトリーズ社(Dolby Laboratories,Inc.)の符号化技術により開発されたHDCエンコーダ、アドバンストオーディオコーディング(AAC)エンコーダ、MPEG−1オーディオレイヤ3(MP3)エンコーダ、又はWindowsメディアオーディオ(WMA)エンコーダなど、何らかの好適なオーディオエンコーダが、圧縮されたオーディオフレームを生成することができる。AAC、MP3、及びWMAなどの典型的な不可逆オーディオ符号化方式は、オーディオデータを圧縮するのに修正離散コサイン変換(MDCT)を利用する。MDCTベースの方式は通常、固定サイズのブロック単位でオーディオサンプルを圧縮する。例えば、AAC符号化において、エンコーダは、長さ1024サンプルの単一のMDCTブロック又は128個のサンプルの8個のブロックを使用することができる。従って、例えば、AACエンコーダを使用した実施構成において、各オーディオフレームは、1024個のオーディオサンプルの単一のブロックから構成することができ、各モデムフレームは、64個のオーディオフレームを含むことができる。他の典型的な実施構成において、各オーディオフレームは、2048個のオーディオサンプルの単一のブロックから構成することができ、各モデムフレームは、32個のオーディオフレームを含むことができる。モデムフレーム当たりのサンプルブロックサイズとオーディオフレームとの他の何らかの好適な組み合わせを利用することができる。
【0021】
例示的なIBOC DABシステムにおいて、放送信号は、主プログラムサービス(MPS)オーディオ、MPSデータ(MPSD)、補足的プログラムサービス(SPS)オーディオ、及びSPSデータ(SPSD)を含むことができる。MPSオーディオは、主オーディオプログラミングソースとしての役割を果たす。ハイブリッドモードでは、MPSオーディオは、アナログ送信及びデジタル送信の両方で既存のアナログラジオプログラミングフォーマットを維持する。プログラムサービスデータ(PSD)としても知られるMPSDは、音楽タイトル、アーチスト、アルバム名、その他などの情報を含む。補足的プログラムサービスは、補足的オーディオコンテンツ並びにPSDを含むことができる。また、放送局情報サービス(SIS)が提供され、この放送局情報サービスは、コールサイン、絶対時間、GPSに関連する位置、及び放送局で利用可能なサービスを表すデータなどの放送局情報を含む。幾つかの実施形態において、高度アプリケーションサービス(AAS)を提供でき、この高度アプリケーションサービスは、多くのデータサービス又はストリーム及びアプリケーション特有コンテンツをAM又はFMスペクトルの1つのチャンネルを介して供給して、放送局が主周波数の補足的又はサブチャンネル上で複数のストリームを放送できるようにする能力を含む。
【0022】
デジタルラジオ放送受信機は、送信機に関して記載された機能の一部の逆のことを実施する。
図2は、例示的なデジタルラジオ放送受信機50のブロック図である。例示的なデジタルラジオ放送受信機50は、例えば、AM又はFM IBOC受信機などのDAB受信機とすることができる。DAB信号は、アンテナ52上で受信される。バンドパスプリセレクトフィルタ54は、周波数f
cの所望の信号を含む、関心対象の周波数帯域を通過させるが、f
c−2f
ifのイメージ信号を除去する(低サイドローブの注入局部発振器において)。低ノイズ増幅器(LNA)56が信号を増幅する。増幅された信号は、ミキサ58において、同調局部発振器62によってライン60上に供給される局部発振器信号f
loとミックスされる。これにより、ライン64上に和信号(f
c+f
lo)と差信号(f
c−f
lo)が生成される。中間周波数フィルタ66は、中間周波数信号f
ifを通過させ、関心対象の変調信号の帯域幅の外側にある周波数を減衰させる。アナログデジタルコンバータ(ADC)68は、フロントエンドクロック70を用いて、ライン72上のデジタルサンプルを生成するよう動作する。デジタルダウンコンバータ74は、この信号を周波数シフト、フィルタリング、及びデシメーションして、ライン76及び78上のより低いサンプルレートの同相及び直角位相信号を生成する。また、デジタルダウンコンバータ74は、受信機ベースバンドサンプリングクロック信号80を出力する。次に、ベースバンドプロセッサ82は、フロントエンドクロック70と同じ発振器から生成されるか又は生成されない場合があるマスタクロック84を用いて、追加の信号処理を提供するよう動作する。ベースバンドプロセッサ82は、オーディオシンク88への出力のためライン86上で出力オーディオサンプルを生成する。出力オーディオシンクは、オーディオビデオ受信機又はカーステレオシステムなどのオーディオをレンダリングするのに好適な何らかのデバイスとすることができる。
【0023】
図3は、受信機における別個のデジタル信号経路及びアナログ信号経路を示す機能ブロック図である。ハイブリッドラジオ放送信号は、アンテナ52上で受信され、ADC68においてデジタル信号に変換される。次に、ハイブリッドラジオ放送信号は、デジタル信号経路90とアナログ信号経路92とに分割される。デジタル信号経路90において、以下でより詳細に説明されるように、デジタル信号は、取得され、復調されて、デジタルオーディオサンプルに復号される。デジタル信号は、デジタル信号経路90において時間T
DIGITALを費やし、この時間は、デジタル信号の取得時間、並びにデジタル信号経路の復調及び復号時間によって決まることになる可変の時間である。取得時間は、フェージング及びマルチパスなどの電波伝播干渉に起因してデジタル信号の強度に応じて変わる可能性がある。
【0024】
対照的に、アナログ信号(すなわち、デジタル化されたアナログオーディオサンプル)は、アナログ信号経路92において時間T
ANALOGを費やす。T
ANALOGは通常、処理系依存の一定の時間である。アナログ信号経路92は、ベースバンドプロセッサ82上でデジタル信号経路と同一の場所に配置することができ、或いは、独立したアナログ処理チップ上で別個に配置することができる点に留意されたい。デジタル信号経路を通って伝播するのに費やされる時間T
DIGITAL及びアナログ信号経路を通って移動するのに費やされる時間T
ANALOGは、異なる場合があるので、デジタル信号からのサンプルをアナログ信号からのサンプルと所定量内に整合させて、これらのサンプルが、オーディオ遷移モジュール94において円滑に組み合わせることができるようになることが望ましい。整合精度は、好ましくは、アナログからデジタルへの混合及びその逆の混合の際にオーディオ歪みの導入が最小限になるように選択されることになる。デジタル信号及びアナログ信号は、組み合わされて、オーディオ遷移モジュール94を通って伝播する。次いで、組み合わされたデジタルオーディオ信号は、デジタルアナログコンバータ(DAC)96を介してレンダリングするようアナログに変換される。本明細書で用いられる場合、本開示における特定のデータサンプルストリームに関する「アナログ」又は「デジタル」という表現は、両方のデータストリームが本明細書で記載される処理においてデジタルフォーマットであるので、サンプルストリームが抽出されたラジオ信号を一般的に意味する。
【0025】
デジタル経路における信号とアナログ経路における信号との間の時間的整合を特定するための1つの技法は、これら2つのオーディオストリームのサンプル間の相関を行って、この相関のピークを求める。1つのサンプルストリームとして比較されるデジタル及びアナログオーディオの時間サンプルは、他に対して時間的にシフトされている。整合誤差は、相関ピークまでサンプルストリームに対してオフセットを連続的に適用することによって計算することができる。ピーク相関における2つのサンプル間の時間オフセットが、整合誤差である。整合誤差が特定されると、デジタル及び/又はアナログオーディオサンプルのタイミングは、デジタルオーディオとアナログオーディオとの円滑な混合が可能になるように調整することができる。
【0026】
n点相関において、n
2回の乗算が存在し、メモリ要件は、各ストリームで2n個のサンプル、又は4n個の全サンプルである。0.5秒の検索範囲及び44.1kのサンプルレートにおいては、これには、約4億8700万回の乗算及び88kByteのメモリを必要とする。この技法の精度は、±1サンプルである。乗算の回数及び必要なメモリを低減するために、多くのシステムは、入力オーディオストリームをダウンサンプリングして、このダウンサンプリングされたデータに対して相関を実施する。データが、5だけダウンサンプリングされる場合、全サンプル数は、1/5だけ低減され、全乗算回数は、1/25だけ低減される。±2.5のサンプル精度である解析精度のトレードオフがある。
【0027】
ダウンサンプリングされたオーディオストリームを使用して所望の精度内でアナログオーディオストリームとデジタルオーディオストリームとの間のオフセットを特定するための方法及び装置を有することが望ましいことになる。
【0028】
1つの実施形態において、最初に受信したデータストリーム間の遅延の検出及び調整は、整合推定モジュールによって行うことができる。整合推定モジュールは、1又は2以上のプロセッサ又は他の回路を使用して、2つのデータストリームのうちのどちらが先行するかを検出し、これらデータストリーム間の時間オフセットの量を特定するように実行することができる。時間オフセットは、各データストリームにおける全サンプル数のうちのごく一部であるサンプル数に基づいて特定することができる。整合推定モジュールは、検出された時間オフセットに基づいて整合を調整し、より具体的には整合を低減させる1又は2以上の制御信号を生成することができる。整合の調整は、1又は2以上のサンプルレートコンバータのサンプリングレートを変えること、又は先入先出メモリにおけるポインタ離隔距離の調整など、様々な方法によって行うことができる。整合はまた、アナログサンプルストリームがデジタルサンプルストリームよりも先行する場合に、オーディオアーチファクトを回避するよう十分に遅いレートで連続的に又は増分的に調整することができる。整合推定モジュールは、サンプルストリームが十分に整合されたときに調整を停止して、混合動作を開始できることが示す信号を混合ユニットに供給することができる。
【0029】
図4は、ダウンサンプリングされたオーディオストリームを使用して所望の精度内でアナログオーディオストリームとデジタルオーディオストリームとの間のオフセットを特定するための装置の機能ブロック図である。
図4の実施形態において、デジタル信号経路90は、受信したデジタル変調信号の内容を表す第1のサンプルストリームをライン100上に供給する。第1のサンプルストリームからのサンプルは、バッファ102に記憶される。ライン104上の第1のサンプルストリームは、アンチエイリアシングフィルタ106によってフィルタリングされて、ブロック108で示されるようにダウンサンプリング(デシメーション)され、ライン110上に第1のデシメーションされたサンプルストリームが生成される。アナログ信号経路92は、受信したアナログ変調信号の内容を表す第2のサンプルストリームをライン112上に供給する。第2のサンプルストリームからのサンプルは、バッファ114内に記憶される。ライン116上の第2のサンプルストリームは、アンチエイリアシングフィルタ118によってフィルタリングされて、ブロック120で示されるようにダウンサンプリング(デシメーション)され、ライン122上に第2のデシメーションされたサンプルストリームが生成される。相関器124は、第1及び第2のデシメーションされたサンプルストリームのサンプルに対して相互相関を行い、ピーク検出器126が、最も相関のあるデシメーションされたストリームのサンプル間のオフセットを特定する。入力信号のデシメーションに起因して、ピーク検出器の出力は、実際には、可能性のあるストリームオフセットの範囲を表している。次いで、このオフセット範囲を使用して、ブロック128で示される第1及び第2のサンプルストリームのうちの1つについてシフト値を特定する。次に、シフトされたサンプルストリームがデシメーションされて、シフトされていないストリームからのデシメーションされたサンプルと関連付けられる。シフトされた入力を用いて推定を複数回実行することにより、有効な結果の範囲は、第1の推定の有効な結果の範囲と第2の推定の有効な結果の範囲との共通部分に限定される。シフト、デシメーション、相関、及びピーク検出の各ステップは、第1及び第2のサンプルストリームの時間的整合の所望の精度が達成されるまで、繰り返すことができる。この時点で、制御信号は、ライン130上に出力される。次いで、混合制御部132は、この制御信号を使用して、アナログ信号経路とデジタル信号経路とを混合することができる。
【0030】
相関器によって行われる相関演算は、各ストリームからのデシメーションされたデータを共に乗算することを含むことができる。乗算の結果は、ノイズとして現れる可能性があり、データストリームが時間的に整合されたときに大きなピークを有する。
【0031】
図示の実施形態において、ピーク検出器は、経時的に相関結果を解析して、デジタルデータストリームが時間的に整合されたことを示すピークを探すことができる。幾つかの実施形態において、二乗関数が、相関器によって出力される積を二乗して、ピークを更に強調することができる。受信したデータに基づいて、ピーク検索ユニットは、アナログデータストリームとデジタルデータストリームとの間の相対的遅延の指示を出力することができる。相対的遅延の指示は、2つのデータストリームのうちのどちらが他方を先行しているかの指示を含むことができる。
【0032】
アナログ及びデジタルデータストリームが十分に整合されると、混合動作を開始することができる。混合動作は、上記で説明されるように行うことができ、出力オーディオへのアナログデータストリームの影響を低減しながら、これに応じて、デジタルデータストリームが排他的信号源となるまで、デジタルデータストリームの影響を増大させる。
【0033】
図5は、ラジオ同時放送から抽出された2つのデータストリーム間の相対的時間オフセットを特定する方法の一実施形態のフロー図である。
図5の方法は、
図4に示され本明細書で記載される装置によって実施することができ、他のハードウェア実施形態並びにソフトウェア実施形態及びこれらの組み合わせを用いて、本方法を実行することができる。
【0034】
図5は、ブロック140におけるアナログサンプルストリームとブロック142におけるデジタルサンプルストリームを示している。アナログサンプルストリームは、ブロック144においてアンチエイリアシングフィルタによってフィルタリングされ、ブロック146においてデシメーションされて、ライン148上にデシメーションされたアナログサンプルストリームが生成される。デジタルサンプルストリームは、ブロック150においてアンチエイリアシングフィルタによってフィルタリングされ、ブロック152においてデシメーションされて、ライン154上にデシメーションされたデジタルサンプルストリームが生成される。デシメーションの前に、アンチエイリアシングフィルタが必要とされる。ブロック156において、相関及びピーク検出動作がデシメーションされたアナログ及びデジタルサンプルストリームに対して実行される。これにより、ブロック158において示されるように、デシメーションされたアナログ及びデジタルサンプルストリーム間のオフセットを表すオフセット値が生成される。このオフセット値が、所望の精度に特定された場合(ブロック160)、ブロック162において、オフセット値が出力される。オフセット値が、所望の精度に特定されなかった場合(ブロック160)、ブロック164において、サンプルのシフト値が設定され、元のサンプルストリームのうちの1つ(
図5の実施例では、デジタルサンプルストリーム)が、このシフト値だけシフトされて、シフトされたデジタルサンプルストリームを使用して相関及びピーク検出が繰り返される。
【0035】
所望の精度、例えば、±1サンプルを達成するため、相関アルゴリズムが複数回実行される。アルゴリズムが実行される度に、ストリームのうちの1つの開始点が、現在の結果によって求められた量だけオフセットされる。
【0036】
1つの実施形態において、ラジオ信号を処理するための方法は、アナログ部分及びデジタル部分を有するラジオ放送信号を受信するステップと、このラジオ放送信号のデジタル部分からラジオ放送信号のアナログ部分を分離するステップと、ラジオ放送信号のアナログ部分を表す第1のオーディオサンプルストリームを生成するステップと、ラジオ放送信号のデジタル部分を表す第2のオーディオサンプルストリームを生成するステップと、これら第1及び第2のオーディオサンプルストリームをデシメーションして、デシメーションされたオーディオサンプルストリームの第1及び第2のストリームを生成するステップと、これらデシメーションされたオーディオサンプルストリームの第1及び第2のストリームにおける対応するサンプル間で有効な結果の第1の範囲を有する第1のオフセットの値を推定するステップと、第1及び第2のオーディオサンプルストリームのうちの1つを第1のシフト値だけシフトするステップと、第1及び第2のオーディオサンプルストリームをデシメーションして、デシメーションされたオーディオサンプルの第3及び第4のストリームを生成するステップと、これらデシメーションされたオーディオサンプルストリームの第3及び第4のストリームにおける対応するサンプル間で有効な結果の第2の範囲を有する第2のオフセットの値を推定するステップと、有効な結果の第1の範囲と第2の範囲との共通部分に基づいて、最終的なオフセットの値を特定するステップと、第1及び第2のオーディオサンプルストリームのうちの1つを最終的なオフセットの値だけシフトして、第1のオーディオサンプルストリームと第2のオーディオサンプルストリームとを整合させるステップと、を含む。
【0037】
具体例として、サンプルストリームが、4倍だけデシメーションされたと仮定する。相関は、事前にデシメーションされたサンプルストリームに対して±2サンプルの誤差を有する。入力データをシフトし、2回推定を実行することによって、相関誤差は、±1サンプルに低減することができる。2回アルゴリズムを実行して、±1サンプルの精度を達成する実施例は、以下の通りである。最初の実行後の結果が、デジタルストリームがアナログストリームより+4サンプル先行していると仮定する。従って、有効な結果の範囲は、+2サンプル先行及び+6サンプル先行である(すなわち、結果が、4±2サンプル精度である)。
//2回目の実行において、デジタル開始点を2サンプルだけ前進させる。
//有効な結果の範囲がシフトされ、ここでは+4サンプルと+8サンプルの間である。
if(2nd run result=+4)
{
//+4の解に対する有効な結果の範囲は、+2から+6である。
//しかしながら、最初の推定から、この範囲は+4から+8であるはずである。
//これらの共通部分は、+4から+6であり、これは新しい有効範囲である。
//従って、5の最終結果を選択することは、+/−1サンプルの誤差を有する。
}
else if (2nd run result=+8)
{
//+8の解に対する有効な結果の範囲は、+6から+10である。
//しかしながら、最初の推定から、この範囲は、+4から+8であるはずである。
//これらの共通部分は、+6から+8であり、これは新しい有効範囲である。
//従って、7の最終結果を選択することは、+/−1サンプルの誤差を有する。
}
【0038】
このアルゴリズムは、2回実行されるので、全乗算回数は、n
2と比較して2*((n/4)
2)=0.125*n
2であり、これは87.5%の節減を表す。必要な全メモリは、(2*n)と比較して(2*(n/4))サンプルであり、これは75%のメモリ節減を表す。記載の実施例では、4だけのダウンサンプリングを使用して、一貫性のため複数回アルゴリズムを実行して、より高い分解能の時間的整合を達成している。
【0039】
各連続推定においてシフトされるサンプル数は、次の推定に対する2つの有効解の間の有効な推定結果範囲をセットすることによって最適に特定される。上記の実施例を使用すると、最初の推定後の有効な結果範囲は、+2から+6サンプルである。次の推定においては、可能性のある有効解は、0、4、8、その他である。入力を2サンプル上方にシフトすることによって、2回目の推定における有効範囲は+4から+8となり、これは2回目の推定の2つの可能性のある有効解の間に等しい。入力をシフトして、有効な結果範囲を再整合させることにより、後続の推定の結果範囲が、最初の結果範囲と重なり合い、可能性のある有効結果を限定することになる。
【0040】
代替として、可能性のある結果の範囲を0から+4に下方にシフトする−2サンプルのシフトを用いることができ、この場合も同様に、2回目の推定の2つの可能性のある結果の間に等しい。
【0041】
この手法の拡張は、後続の推定において入力サンプルのデシメーション比を変更することとなる。これにより、乗算及びメモリの更なる節減を可能にすることができる。
【0042】
別の実施形態において、ラジオ受信機は、処理回路を含み、この処理回路は、アナログ部分及びデジタル部分を有するラジオ放送信号を受信し、このラジオ放送信号のデジタル部分からラジオ放送信号のアナログ部分を分離し、ラジオ放送信号のアナログ部分を表す第1のオーディオサンプルストリームを生成し、ラジオ放送信号のデジタル部分を表す第2のオーディオサンプルストリームを生成し、これら第1及び第2のオーディオサンプルストリームをデシメーションして、デシメーションされたオーディオサンプルストリームの第1及び第2のストリームを生成し、これらデシメーションされたオーディオサンプルストリームの第1及び第2のストリームにおける対応するサンプル間で有効な結果の第1の範囲を有する第1のオフセットの値を推定し、第1及び第2のオーディオサンプルストリームのうちの1つを第1のシフト値だけシフトし、第1及び第2のオーディオサンプルストリームをデシメーションして、デシメーションされたオーディオサンプルの第3及び第4のストリームを生成し、これらデシメーションされたオーディオサンプルストリームの第3及び第4のストリームにおける対応するサンプル間で有効な結果の第2の範囲を有する第2のオフセットの値を推定し、有効な結果の第1の範囲と第2の範囲との共通部分に基づいて、最終的なオフセットの値を特定し、第1及び第2のオーディオサンプルストリームのうちの1つを最終的なオフセットの値だけシフトして、第1のオーディオサンプルストリームと第2のオーディオサンプルストリームとを整合させるように構成される。
【0043】
別の実施形態において、処理システムにステップを実行させるように適合されたコンピュータプログラム命令を含む非一時的な有形のコンピュータ可読媒体が提供され、本ステップは、アナログ部分及びデジタル部分を有するラジオ放送信号を受信するステップと、このラジオ放送信号のデジタル部分からラジオ放送信号のアナログ部分を分離するステップと、ラジオ放送信号のアナログ部分を表す第1のオーディオサンプルストリームを生成するステップと、ラジオ放送信号のデジタル部分を表す第2のオーディオサンプルストリームを生成するステップと、これら第1及び第2のオーディオサンプルストリームをデシメーションして、デシメーションされたオーディオサンプルストリームの第1及び第2のストリームを生成するステップと、これらデシメーションされたオーディオサンプルストリームの第1及び第2のストリームにおける対応するサンプル間で有効な結果の第1の範囲を有する第1のオフセットの値を推定するステップと、第1及び第2のオーディオサンプルストリームのうちの1つを第1のシフト値だけシフトするステップと、第1及び第2のオーディオサンプルストリームをデシメーションして、デシメーションされたオーディオサンプルの第3及び第4のストリームを生成するステップと、これらデシメーションされたオーディオサンプルストリームの第3及び第4のストリームにおける対応するサンプル間で有効な結果の第2の範囲を有する第2のオフセットの値を推定するステップと、有効な結果の第1の範囲と第2の範囲との共通部分に基づいて、最終的なオフセットの値を特定するステップと、第1及び第2のオーディオサンプルストリームのうちの1つを最終的なオフセットの値だけシフトして、第1のオーディオサンプルストリームと第2のオーディオサンプルストリームとを整合させるステップと、を含む。
【0044】
本明細書で記載される方法及び装置は、ラジオ受信機の様々な実施形態及び上述のように該実施形態において実行される処理により実施することができ、本明細書で明示的に記載されていない他の様々なハードウェア及び/又はソフトウェアの実施形態で利用することができる。
【0045】
既存のハイブリッドデジタルラジオにおいては、放送局に同調した後、アナログオーディオが最初に再生している間、デジタルオーディオが取得されている。デジタルオーディオの取得後、混合が行われ、これによりデジタルオーディオが出力され、アナログオーディオは再生されなくなる。上述の方法が用いられない場合、デジタルオーディオは、取得すると即座に再生されることになるが、2つのオーディオストリームは、整合されず、アナログオーディオからデジタルオーディオへの切り替え時にエコーが聞こえる可能性がある。上述の時間的整合を含めることで、デジタルオーディオへの移行を遅延させながら、聴取者にシームレスな移行が保証されることになる。
【0046】
本発明について幾つかの実施形態に関して説明してきたが、添付の特許請求の範囲によって定められる発明の範囲から逸脱することなく、開示された実施形態に対して様々な変更を行うことができることは、当業者には明らかであろう。上述の実施形態及び他の実施形態は、特許請求の範囲の範囲内にある。
【符号の説明】
【0047】
140 アナログサンプル
142 デジタルサンプル
144、150 フィルタ
146、152 デシメーション
156 相関器及びピーク検出器
158、162 オフセット値
164 シフト値