特許第6921073号(P6921073)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6921073
(24)【登録日】2021年7月29日
(45)【発行日】2021年8月18日
(54)【発明の名称】膜の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B01D 67/00 20060101AFI20210805BHJP
   B01D 71/16 20060101ALI20210805BHJP
   B01D 71/26 20060101ALI20210805BHJP
   B01D 71/34 20060101ALI20210805BHJP
   B01D 71/36 20060101ALI20210805BHJP
   B01D 71/38 20060101ALI20210805BHJP
   B01D 71/42 20060101ALI20210805BHJP
   B01D 71/52 20060101ALI20210805BHJP
   B01D 71/56 20060101ALI20210805BHJP
   B01D 71/62 20060101ALI20210805BHJP
   B01D 71/68 20060101ALI20210805BHJP
   C08J 9/28 20060101ALI20210805BHJP
   C08J 5/18 20060101ALI20210805BHJP
【FI】
   B01D67/00
   B01D71/16
   B01D71/26
   B01D71/34
   B01D71/36
   B01D71/38
   B01D71/42
   B01D71/52
   B01D71/56
   B01D71/62
   B01D71/68
   C08J9/28 101
   C08J9/28CEZ
   C08J5/18CEW
【請求項の数】19
【全頁数】28
(21)【出願番号】特願2018-526126(P2018-526126)
(86)(22)【出願日】2016年11月21日
(65)【公表番号】特表2018-535823(P2018-535823A)
(43)【公表日】2018年12月6日
(86)【国際出願番号】EP2016078338
(87)【国際公開番号】WO2017085322
(87)【国際公開日】20170526
【審査請求日】2019年11月21日
(31)【優先権主張番号】1520466.2
(32)【優先日】2015年11月20日
(33)【優先権主張国】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】506400111
【氏名又は名称】アプライド・バイオミメティック・エイ/エス
(74)【代理人】
【識別番号】100157934
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 隼明
(72)【発明者】
【氏名】グルゼラコウスキー,マリウス ピョートル
(72)【発明者】
【氏名】チャン,イエン
【審査官】 青木 太一
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2011/069050(WO,A1)
【文献】 米国特許第06495043(US,B1)
【文献】 特開2009−112895(JP,A)
【文献】 韓国公開特許第10−2013−0080427(KR,A)
【文献】 国際公開第2011/118486(WO,A1)
【文献】 特開2011−025110(JP,A)
【文献】 The JEFFAMINE Polyetheramines,HUNTSMAN,2020年10月21日,全文, 全図,[online],URL,https://pdf4pro.com/view/the-jeffamine-polyetheramines-huntsman-24de09.html
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 53/22
B01D 61/00−71/82
C02F 1/44
C08J 5/00− 5/02
C08J 5/12− 5/22
C08J 9/00− 9/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記各工程を含む膜の製造方法:
a)膜形成ポリマー、そのポリエーテル主鎖に結合した少なくとも1つの第1級又は第2級アミン基を有するポリエーテルであって、水に対する溶解度が、21℃で、少なくとも0.1%W/Vである水溶性ポリエーテルアミン及び溶媒を一緒に混合する工程、該混合物は該ポリエーテルアミンと化学的に反応する成分を含まない;及び
b)該混合物をキャストして、該ポリマーを固体膜に形成する工程。
【請求項2】
ポリエーテルアミンの水に対する溶解度が、21℃で、少なくとも0.2%W/Vである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ポリエーテルアミンが、21℃で水と混和性である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
ポリエーテルアミンが、2,500までの分子量を有する、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
ポリエーテルアミンが、1,000までの分子量を有する、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
ポリエーテルアミンが、150〜1,000の範囲内の分子量を有する、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
ポリエーテルアミンが、2つ以上のエチレンオキシド及び/又はプロピレンオキシドモノマー単位及び少なくとも1つの第1級又は第2級アミン単位−NHX(ここで、Xは、水素原子又はC1−4アルキル基である)を含む、請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
ポリエーテルアミンが、下記式を有するモノアミン又はジアミン:
【化1】
又は下記式を有するモノアミン、ジアミン又はトリアミン:
【化2】
(各式中、Y、Y'及びY”は、それぞれ独立して、その少なくとも1つが、第1級又は第2級アミン基を含む末端基を表し、PAOは、少なくとも2つのエチレンオキシド及び/又はプロピレンオキシドモノマー単位からなるポリアルキレンオキシド鎖を表す。)である、請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
ポリエーテルアミンが、下記式を有する請求項8に記載の方法:
【化3】
(式中、aは存在するプロピレンオキシドモノマー単位の数を表し、bは存在するエチレンオキシドモノマー単位の数を表す。);又は一般式:
【化4】
(式中、Rは水素原子又はメチル基を表し、R'は水素原子、メチル基又はエチル基を表し、dは0又は1であり、c、e及びfは存在するプロピレンオキシド及び/又はエチレンオキシドモノマー単位の数である。)。
【請求項10】
ポリエーテルアミンが、以下の各式の1つを有する、請求項1〜9のいずれか一項に記載の方法:
【化5】
(式中、RはH又はCHであり、x及びyはポリエーテル鎖中のプロピレンオキシド及び/又はエチレンオキシドモノマー単位の数である。);
【化6】
(式中、xはポリエーテル鎖中のプロピレンオキシドモノマー単位の数である。);
【化7】
(式中、x及びzはポリマー鎖中の2つのブロック中のプロピレンオキシドモノマー単位の数であり、yはポリエーテル鎖中のエチレンオキシドモノマー単位の数である。);
【化8】
(式中、xは2又は3である);
【化9】
(式中、x、y及びzは、合わせて、分岐ポリマー鎖中に存在するプロピレンオキシドモノマー単位の合計数を表し、nは0又は1であり、Rは水素、メチル又はエチルである。);又は
上記式(V)〜(IX)の1つの化合物であって、1つ以上のNH末端基が第2級アミン基に変換されている化合物。
【請求項11】
ポリエーテルアミンが式(IX)を有し、そのポリエチレンオキシドのモル数が5〜6の間である;又はポリエーテルアミンが式(VI)を有し、式(VI)中のxが平均で6〜7である、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
膜形成ポリマーが、セルロースアセテート/トリアセテート;ポリアミド;ポリピペラジン;ポリベンズイミダゾリン;ポリスルホン;ポリオール;ポリアクリロニトリル;ポリエーテルスルホン;ポリスルホン;ポリ(フタラジノンエーテルスルホンケトン;ポリ(ビニルブチラール);ポリフッ化ビニリデン;ポリ(テトラフルオロエチレン);ポリプロピレン;ポリエチレン;及びポリエーテルエーテルケトンから選択される、請求項1〜11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
膜形成ポリマーが、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリフッ化ビニリデン、ポリアクリロニトリル、又はポリエチレンから選択される、請求項1〜12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
工程(a)で使用される溶媒が、N,N−ジメチルホルムアミドN−メチル−2−ピロリドン、ジメチルアセトアミド、アセトン、DMSO、又はTHFであるか、又はそれを含む、請求項1〜13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
工程(b)が、工程(a)で生成した混合物を、そのポリマーが不溶性である媒体中に浸漬することを含む、請求項1〜14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
媒体が、水性媒体である、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
工程(b)で得られた膜に、続いてコーティングが施される、請求項1〜16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
請求項1〜17のいずれか一項に記載の方法によって製造可能な膜。
【請求項19】
ナノろ過膜又は逆浸透膜である、請求項18に記載の膜。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、膜(membranes)の製造方法に関する。その形成された膜は、有利な特性を有しており、新規であると考えられる。
【背景技術】
【0002】
膜(membrane)形成のために典型的に用いられる合成又は天然ポリマーとしては、数ある中でも、ポリスルホン(PS)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリアクリロニトリル(PAN)及びポリエチレン(PE)が包含される。これらのポリマーは、様々なキャスティング技術によって膜に成形される。産業、実験室又は家庭の環境において操作される従来の限外ろ過ポリマー膜は、一般に、2μm〜50nmの幅広い表面細孔径(surface pore size)によって特徴付けられ、広範囲な透過流束(fluxes)を送達する(deliver)。膜スキン層の表面細孔が膜の最小細孔である場合、表面細孔径は膜の分画分子量(molecular cut-off)(一般に、その分離膜によって、所定の分子量の溶質の90%が保持されると当業者に理解される)を決定する。膜の細孔径と分画分子量との関係は標準化されていないが、業界は細孔径、分画分子量及び溶質の保持についての範囲とガイドラインを設定している。一例として、ミリポア(Millipore)社は、「タンジェンシャルフローろ過によるタンパク質濃度及び透析ろ過」と題するガイドラインを発行した。これは、細孔径及び分画分子量を交換可能に用いて、ろ過プロセスを分類している。細孔径と膜を通る液体の透過流束(flux)との間の関係は、膜の細孔径の減少に伴う流量(flow)の急激な減少によって、特徴付けられる。
【0003】
一般に、50nm/100kDaの分画範囲を特徴とする限外ろ過膜は、いくつかのウイルス及び細菌を除去する。しかしながら、精密ろ過(MF)膜及び限外ろ過(UF)膜についてウイルス除去が報告されているにもかかわらず、市場にある膜は、微生物学的に安全でないフィード(feed)について、飲料水の精製用には、承認されていない。これは、細菌の中には1〜2μmより小さいサイズ(500nm)のものがあり、又17nm程度の小さいウイルス(例えば、ブタサーコウイルス、一本鎖DNAウイルス(クラスII))及びB型肝炎ウイルス(HBV−30〜42nm)よりも大きいと考えられる最小のDNAバクテリオファージのPhi-X174ファージ(4kb)が観察され得るという事実によるだろう。
【0004】
UFプロセスにおける保持は、シーディングと電荷除去の両方によって行われる。従って、膜の細孔径が、除去すべき粒子の最小サイズよりも小さい場合のみにおいて、細菌及びウイルス(並びに他の小さな溶質)を除去するために首尾よく適用することができる。
【0005】
膜(membranes)を制作する多くの異なる方法が知られている。キャスティング法(casting processes)では、それ自体水に不溶性の膜形成ポリマーを、水に溶解する溶剤に溶解する。得られた溶液を、水を入れた急冷タンク(quenching tank)中に流し込む(cast)と、溶剤は水に溶解し、ポリマーは沈殿して固相になる。膜の最終形態は、製造条件及び流し込まれる溶液の成分に依存し、その完成膜は、一般に、膜本体とはかなり異なる特性を有する表面層を有するであろう。膜の重要な性能パラメータは、膜を通る液体の潜在的な透過流速、及び分画分子量点(molecular weight cut-off point)、即ち膜を通過することができる分子の最大分子量である。とりわけ、膜の表面層及び本体の両方の多孔性、密度及び均一性は、これらの性能パラメータを決定する上で重要であり、膜性能を損なうであろう欠陥、特にマクロボイドの形成を防止することが特に重要である。
【0006】
細孔形成の制御を助けるために、細孔形成添加剤、例えばLiCl及びポリビニルピロリドン(PVP)又はポリエチレングリコール(PEG、ポリエチレンオキシド、PEOとしても知られている)等の高分子量有機添加剤を使用することが知られている。例えば、WO 2011/069050は、ポリアルキレングリコール、ポリアルキレンオキシド、ポリオキソアルキレン、アクリルアミド、カテコールアミン及びポリエーテルアミンから選択され得るポリマー添加剤の使用を述べている(しかし証明していない)。実際には、これらの添加剤の多くは作用せず、膜の特性の仕立ては依然として困難な作業である。ラリアら(Lalia et al), Desalination, 326 (2013) 77-95は、様々な方法を議論しているレビュー論文であり、「適切な製造方法を選択することによって、その表面特性及び断面形態を含む膜の細孔構造を“仕立てる”方法に関する広範な知識が存在するという事実にもかかわらず、耐汚染性、耐化学薬品性、高い透過流束及び選択性を伴う高い機械的強度を有する信頼性の高い膜を製造することが依然として難題である。」と結論付けている。
【0007】
予め形成された膜の後処理においてポリエーテルアミンを使用することが知られており(例えば、WO 2007/078880及びCN 104587840参照)、そしてそのキャスティング法(casting process)において、ポリエーテルアミンを、キャスティング混合物中の成分と化学的に反応するか又はドープする条件下で、使用することが知られている。従って、例えば、US 4,787,976は、ポリエーテルアミンと反応するプレポリマーの使用を含む、膜の製造方法を開示している。この方法では、凝固液と接触して重合可能なプレポリマーと、そのプレポリマーと容易に反応せず、凝固液に実質的に不溶性であるポリマーとを含むキャスティング溶液が形成される。凝固液は、ポリアミンを含む水であってもよい。ポリアミンは、凝固液の添加時にプレポリマーと反応し、固体ポリマーはポリアミンの添加と同時に沈殿する。リムら(Lim et al), J. Sol-Gel. Sci. Techn. (2007) 43,35-40は、3−イソシアナトプロピルトリエトキシシラン(IPTS)を、ポリエーテルセグメントを含むジアミンと反応させ、続いて複合膜を形成することを記載している。ジャラルら(Jalal et al), Reactive & Functional Polymers (2014), 85, 1-10は、添加されたジアミンと反応するエポキシ変性ポリシルセスキオキサンの添加によって変性されたポリ(エーテルイミドスルホン)膜を記載している。ガサラら(Gassara et al), J. Mem. Sci., 2013, 436, 36-46は、アミノオリゴマーによる化学的後処理を用いてポリ(エーテルイミド)膜を処理することを記載している。フォムデュマら(Phomduma et al), Ad. Mat. Res., 2014, 931-932, pp63-67には、ポリエーテルジアミン−PEOの水溶液によるポリ(エーテルイミド)膜の形成後処理が記載されている。シディークら(Siddique et al), J. Mem. Sci. 465 (2014)は、ジェファーミン(Jeffamine)400であるポリエーテルアミンを用いたポリイミド膜の形成後架橋を記載している。また、非キャスティング法において、ポリエーテルアミンを使用することも知られている(例えば、WO 2002/046298、WO 2002/046299及びJP 2004/224989参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】WO 2011/069050
【特許文献2】WO 2007/078880
【特許文献3】CN 104587840
【特許文献4】US 4,787,976
【特許文献5】WO 2002/046298
【特許文献6】WO 2002/046299
【特許文献7】JP 2004/224989
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Lalia et al, Desalination, 326 (2013) 77-95
【非特許文献2】Lim et al, J. Sol-Gel. Sci. Techn. (2007) 43,35-40
【非特許文献3】Jalal et al, Reactive & Functional Polymers (2014), 85, 1-10
【非特許文献4】Gassara et al, J. Mem. Sci., 2013, 436, 36-46
【非特許文献5】Phomduma et al, Ad. Mat. Res., 2014, 931-932, pp63-67
【非特許文献6】Siddique et al, J. Mem. Sci. 465 (2014)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
我々は、ここに、ポリエーテルアミンと反応性である成分を含まないキャスティング混合物中に特定の種類のポリエーテルアミンを含めることによって、改良された膜が形成され得ることを見出した。得られた膜は、緻密で均一な表面層、均一で透過性の高い本体を有し、欠陥の発生率が低い。
【課題を解決するための手段】
【0011】
第1の側面において、本発明は、下記各工程を含む膜(a membrane)の製造方法を提供する:
a)膜形成ポリマー、水溶性ポリエーテルアミン、及び溶媒を一緒に混合する工程、該混合物は該ポリエーテルアミンと化学的に反応する成分を含まない;及び
b)該混合物をキャストして(casting)、該ポリマーを固体膜に形成する工程。
【0012】
第2の側面において、本発明は、下記各工程を含む膜の製造方法を提供する:
a)膜形成ポリマー、2,500までの分子量を有するポリエーテルアミン及び溶媒を一緒に混合する工程、該混合物は該ポリエーテルアミンと化学的に反応する成分を含まない;及び
b)該混合物をキャストして、該ポリマーを固体膜に形成する工程。
【0013】
本発明の方法により製造された膜は新規であると考えられ、従って本発明はこれらの膜それ自体をも提供する。
【0014】
本発明は、キャスティング溶液(casting solution)がポリエーテルアミンと反応性の成分を含有しない場合であっても、膜をキャストする(casting a membrane)際に、キャスティング溶液中に特定のポリエーテルアミンを含むことにより、結果的に改良された特性を有する膜が得られるという驚くべき知見に基づいている。この効果は、代替ポリエーテルアミンを使用する場合には、観察されない。
【0015】
ポリエーテルアミン
ポリエーテルアミンは、そのポリエーテル主鎖、一般にはそのポリマー鎖末端、に結合した少なくとも1つの第1級又は第2級アミン基を有するポリエーテルである。この文脈における「ポリマー」は、二量体、三量体及びオリゴマーを含むと理解されるべきである。ポリエーテルアミンには、モノ−、ジ−、トリ−又はマルチ−官能性の第1級及び第2級アミンが含まれる。そのポリエーテルは、典型的には、エチレンオキシド及び/又はプロピレンオキシドモノマー単位を含む。多くのものが市販されており、例えばハンツマン(Huntsman)社によってジェファーミン(JEFFAMINE、登録商標)の名称の下で製造されている製品、又はBASF社のD−T200〜5000(又はバクスドア(Baxxodur、登録商標))の製品である。
【0016】
いくつかのポリエーテルアミンは水溶性であり、これらは本発明の第1の側面において、好ましくは本発明の第2の側面において、使用される。好ましくは、ポリエーテルアミンの溶解度は、21℃で、少なくとも0.1%W/V、特に少なくとも0.2%W/Vである。最も好ましくは、ポリエーテルアミンは、21℃で、水と混和性である。
【0017】
水中でのポリエーテルアミンの溶解度は標準的な動的光散乱(Dynamic Light Scattering)法を用いて測定することができ、適切なプロトコルを以下に記載する。DLSは、ポリエーテルアミン及び水が混合された場合に存在するあらゆる粒子のサイズ及び数を検出し、監視する。ポリエーテルアミンは、水に溶解するのが遅くなることがあるが、その溶解した溶液は、一度溶液が形成された後に放置しても、時間の経過と共に相分離することはない。
【0018】
本発明における使用に適したポリエーテルアミンとしては、2つ以上のエチレンオキシド及び/又はプロピレンオキシドモノマー単位及び少なくとも1つ、例えば1、2又は3つの第1級又は第2級アミン単位−NHXを有するものを包含する。ここで、Xは、水素原子又はC1−4アルキル基、例えばメチル、エチル、n−プロピル又はイソプロピル基である。ポリエーテルアミンの分子量は、勿論、存在するモノマー単位の数に依存して変化する。本発明の第2の側面において、好ましくは本発明の第1の側面において、その分子量は2,500まで、例えば2,000まで、又は1,500まで、又は1,000までである。それは、例えば130〜2,500、例えば130〜2,000、例えば150〜1,000、例えば150〜600の範囲内であり得る。一般に、ポリエーテルアミンの水溶性と分子量との間に相関性が存在する:分子量はポリエーテルアミンの親水性に影響を及ぼし、エチレンオキシドモノマー単位の含有量がより高い又はプロピレンオキシドモノマー単位の含有量がより低いポリエーテルアミンは、一般に、より親水性が高くなり、従って水溶性となるであろう。
【0019】
ポリエーテルアミンは、例えば、下記略式(schematic formula)を有するモノアミン又はジアミンであってもよい:
【化1】
又は下記略式を有するモノアミン、ジアミン又はトリアミンであってもよい:
【化2】
各式中、Y、Y'及びY”は、それぞれ独立して、その少なくとも1つが、第1級又は第2級アミン基を含む末端基を表し、PAOは、少なくとも2つのエチレンオキシド及び/又はプロピレンオキシドモノマー単位からなるポリアルキレンオキシド鎖を表す。適切なアミン含有末端基としては、(i)−NHX基(Xは、C1−4アルキル基例えばメチル基、又は特に水素原子を表す)、及び(ii)C1−4アルキル基(−NHX基によって置換されていても又は−NH−基によって割り込まれていてもよい)が包含される。末端基がアミノ基を含まない場合、それは、例えば、水素原子、C1−4アルキル基、−OH基、又は−OC1−4アルキル基であり得る。PAO鎖は、直鎖であってもよく、この場合、ポリエーテルアミンは、下記略式を有することができる:
【化3】
式中、aは存在するプロピレンオキシド(PO)モノマー単位の数を表し、bは存在するエチレンオキシド(EO)モノマー単位の数を表し、a又はbのいずれかがゼロであってよいこと、及びPOモノマー単位及びEOモノマー単位の双方が存在する場合、これらは、ランダム、交互又はブロックの順序で配列していてよいことが、理解されるであろう。あるいは、PAO鎖は分岐していてもよく、この場合、ポリエーテルアミンは、下記一般式を有することができる:
【化4】
式中、Rは水素原子又はメチル基を表し、R'は水素原子、メチル基又はエチル基を表し、dは0又は1であり、c、e及びfは存在するPOモノマー単位及び/又はEOモノマー単位の数である。
【0020】
市販のポリエーテルアミンとしては、以下の各式の化合物を包含する:
【化5】
式中、RはH又はCHであり、x及びyはポリエーテル鎖中のEO/POモノマー単位の数である。ハンツマン(Huntsman)社のジェファーミン(JEFFAMINE、登録商標)Mシリーズのポリエーテルアミンはこのタイプのものである。
【化6】
式中、xはポリエーテル鎖中のPOモノマー単位の数である。ハンツマン社のジェファーミンDシリーズのポリエーテルアミンはこのタイプのものである。
【化7】
式中、x及びzはポリマー鎖中の2つのブロック中のPOモノマー単位の数であり、yはポリエーテル鎖中のEOモノマー単位の数である。ハンツマン社のジェファーミンEDシリーズのポリエーテルアミンはこのタイプのものである。
【化8】
式中、xは2又は3である。ハンツマン社のジェファーミンEDRシリーズのポリエーテルアミンはこのタイプのものである。
【化9】
式中、x、y及びzは、合わせて、分岐ポリマー鎖中に存在するPOモノマー単位の合計数を表し、nは0又は1であり、Rは水素、メチル又はエチルである。ハンツマン社のジェファーミンTシリーズのポリエーテルアミンはこのタイプのものである。
【0021】
上記各市販品において、1つ以上のNH末端基は、例えば、下記のような第2級アミン基に変換され得る:
【化10】
ハンツマン社のジェファーミンSD及びSTシリーズのポリエーテルアミンはこのタイプのものである。
【0022】
ジェファーミン(JEFFAMINE)の商標の下で、入手可能な上記の各タイプの特定の化合物は、以下のものを含む:
モノアミン:M−600(XTJ−505)、M−1000(XTJ−506)、M−2070。
ジアミン:D−230、HK−511、D−400、XTJ−582、D−2000、XTJ−578。
ジアミン(EOベース):ED−600(XTJ−500)、ED−900(XTJ−501)、ED−2003(XTJ−502)。
ジアミン(PTMEGベース):XTJ−542、XTJ−548、XTJ−559。
ジアミン(高反応性):EDR−148(XTJ−504)、EDR−176(XTJ−590)。
トリアミン:T−403。
第2級アミン:SD−231(XTJ−584)、SD−401(XTJ−585)、SD−2001(XTJ−576)、ST−404(XTJ−586)。
実験用アミン:XTJ−435、XTJ−436、XTJ−566、XTJ−568。
【0023】
1つの態様においては、上記式(IX)のポリエーテルアミンの使用が好ましい。このタイプの1つの好ましい化合物は、POのモル数が5〜6であって、およそ440の分子量を有する化合物である。この化合物は、ジェファーミン(JEFFAMINE、登録商標)T403として市販されている。別の態様においては、式(VI)のポリエーテルアミンの使用が好ましい。このタイプの1つの好ましい化合物は、式(VI)のxが平均6〜7であって、およそ430の分子量を有する化合物である。この化合物はジェファーミンD400として市販されている。本発明の方法において使用され得る他の特定のジェファーミンのポリエーテルアミンには、M600、M1000、ED600及びED2003が含まれる。
【0024】
ポリマー
膜を製造するために典型的に使用される任意のポリマーが、本発明において使用され得るが、但し、ポリエーテルアミンと反応性ではない。膜を製造するために一般的に使用されるポリイミド(PI)及びポリエーテルイミド(PEI)ポリマーは、ポリエーテルアミンと反応するので、本発明での使用には適していない。適切なポリマーとしては、例えば、以下のものが包含される:
・セルロースアセテート/トリアセテート
・ポリアミド(芳香族ポリアミドを含む)
・ポリピペラジン
・ポリベンズイミダゾリン
・ポリオール(ポリフェノールを含む)
・ポリアクリロニトリル(PAN)
・ポリエーテルスルホン(PES)
・ポリスルホン(PS)
・ポリ(フタラジノンエーテルスルホンケトン)(PPESK)
・ポリ(ビニルブチラール)
・ポリフッ化ビニリデン(PVDF)
・ポリ(テトラフルオロエチレン)(PTFE)
・ポリプロピレン(PP)
・ポリエチレン(PE)
・ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)
【0025】
特に好ましいポリマーはPS、PES、PVDF、PAN及びPEであり、PS、PES及びPVDFがとりわけ好ましい。
【0026】
溶剤
使用される溶媒又は溶媒の混合物は、勿論、ポリマー及び存在する任意の添加剤の性質に依存する。一般に、溶媒は、ポリマー及び添加剤を溶解すべきであり、急冷浴(quench bath)中で使用される非溶媒(例えば、水又はアルコール)と混和性であるべきである。膜キャスティング法(membrane casting processes)で使用することが知られている溶媒のいずれも使用することができる。適切な溶媒としては、例えば、DMF、NMP、ジメチルアセトアミド、アセトン、DMSO及びTHFが包含される。溶媒の混合物を使用してもよい。加えて、キャスティング混合物(casting mixture)は、水が最も一般的な例である非溶媒を含むことができるが、他の非溶媒、例えばアルコール、例えばC1−4アルカノール、又はグリコールエーテル、例えばメトキシエタノール、エトキシエタノール又はプロポキシエタノール、特にメトキシエタノールを使用することができる。このような非溶媒は、粘度がキャスティング構成(casting configuration)において重要であり、沈殿速度に影響を及ぼす可能性があるので、一般に粘度調整剤として作用するように含まれる。
【0027】
キャスティングの追加的添加物
ポリエーテルアミン添加剤と同様に、キャスティング混合物は、当該技術分野において公知の任意の追加の添加剤を含有してもよい。多孔性を高め、ある種の膜の形態を引き起こすために、いわゆる「細孔形成」添加剤が典型的には膜キャスティングドープ(membrane casting dope)に添加される。LiCl等の無機添加剤を使用することができる。あるいは、疎水性ポリマー又はブロックコポリマー、例えばポリビニルピロリドン(PVP)及びポリエチレングリコール(PEG)を添加してもよい。一例として、膜形成ポリマーとしてPS、PES又はPVDFを利用する調合物(formulations)に10%までのPVPを添加することにより、細孔径が増大し、より高い経膜的透過流束を達成できることが知られている。そのような添加剤を、ポリエーテルアミンに加えて、本発明において使用することができる。
【0028】
キャスティング混合物は、ポリエーテルアミンと反応性である成分を含有すべきではない。具体的には、それは、ポリエーテルアミンと架橋するか、さもなければ反応する反応性モノマー又はプレポリマーを含むべきではない。
【0029】
キャスティング工程
本発明方法の工程(a)は、ポリマー、ポリエーテルアミン、溶媒及び任意の追加的成分を一緒に混合して、キャスティング溶液又はドープを作製することを含む。ドープは、透明な溶液であってもよく、エマルション又は懸濁液であってもよい。ポリエーテルアミン対ポリマーの重量比は、完成膜の細孔構造を決定する重要なパラメータである。それは、例えば1:0.1〜1:200W/Wの範囲内であり得るが、好ましくは、ポリマーが、少なくともポリエーテルアミンの重量に等しい重量で存在する。その重量比は、例えば1:1〜1:100W/W、例えば1:2〜1:50W/W、特に1:5〜1:40W/Wであり得る。
【0030】
溶媒中のポリマーの濃度は、適切には1〜80%W/W、例えば4〜60%W/W、例えば8〜35%W/W、特に12〜21%W/Wの範囲内である。
【0031】
溶媒中のポリエーテルアミンの濃度は、適切には1〜90%W/W、例えば1〜5%W/W、特に0.01〜3%W/Wの範囲内である。
【0032】
工程(a)は、工程(b)と同時に実施することができるが、1つの好ましい態様では、工程(a)を第1工程として実施し、これが完了した後、工程(b)を次の工程として実施する。
【0033】
工程(b)は、工程(a)の混合物をキャストして(casting)膜を形成することを含み、任意の公知のキャスティング技術を含み得る。キャスティングは、溶媒中のポリマーと添加剤の混合物からの膜形成ポリマーの沈殿である。転相(Phase inversion)は、以下のことで引き起こされる:
・浸漬沈殿−ポリマーと添加剤が溶媒に溶解し、続いて非溶媒媒体中に浸漬されて、膜を形成する。使用される最も一般的な非溶媒媒体は水であるが、他の液体、例えばアルコールも使用することができる。
・熱析出−ポリマーが、所定の温度で溶媒に溶解し、キャストされ、冷却されて、沈殿した膜を形成する。
・蒸発誘起沈殿−ポリマーと添加剤が溶媒に溶解し、その溶液が支持体又はランニングベルト上にキャストされた後に、揮発性物質を蒸発させる。
・電気紡糸(Electrospinning)。
・延伸(Stretching)。
・トラックエッチング(Track etching)。
・界面重合。
【0034】
好ましくは、工程(b)は、工程(a)で生成した混合物を、ポリマーが不溶性の媒体、特に水性媒体である媒体中に浸漬することを含む。
【0035】
膜は、基材(backing)又は支持体(support)、例えば布地(fabric)、典型的には不織布ポリエステル又はポリプロピレン、の上にキャストされ得るが、任意の形態の基材を使用することができる。キャスティングは、様々な構成の膜を形成するために達成されることができる。例えば、ドクターブレード又はダイコータを用いて、押出ナイフを通してポリマー溶液を押出すことを含んで作製されたフラットシート膜(flat-sheet membranes);粘性ドープを、押出ノズルを通して、繊維の外側及び内側上の急冷溶液(quenching solution/solutions)中に押し込まれてなる中空糸膜(hollow fiber membranes);管状膜(tubular membranes);又はファイバープレート(Fibreplate、登録商標)タイプの膜。
【0036】
溶媒は、一般に、キャスティングプロセスの一部として除去される。
【0037】
膜が形成された後、任意の所望の形成後の工程が実行されてもよい。例えば、膜の表面は、任意の所望の方法で官能化されてもよく、所望であれば、様々なコーティングが適用されてもよい。膜は、例えば、飲料水(細菌及びウイルス除去)用の限外ろ過、逆浸透前処理、廃水、食品加工用途、及びタンパク質ろ過等の広範囲の適用における有用性を見出す。1つの好ましい態様において、本発明による膜は、ナノろ過膜又は逆浸透膜用の従来のコーティングを供給されるので、そのような膜のための支持体として作用する。ナノろ過膜及び逆浸透膜は、従来の膜を使用する場合には、著しい圧密化(compaction)をもたらし、従って流量を減少させる、高圧条件下で使用されている。
【0038】
本発明の方法は、改良された除去能力(rejection capabilities)、所定の分画分子量(molecular cut off)での特に例外的に高い水透過性を有し、膜表面での汚染(fouling)が減少されている膜を、結果的にもたらす。本発明は、細孔のサイズ、数及び構造の正確な制御を可能にし、従って、特定の用途のための膜の設計を可能にする。かくして、本発明は、低エネルギー、小細孔、高多孔性、防汚性/容易洗浄性、及び高透過性の限外ろ過膜の調製における有用性を見出す。
【0039】
本発明の第1の側面は、各請求項の主題である。本発明の第2の側面は、以下の各項により特徴付けられる。
【0040】
1.下記各工程を含む膜(a membrane)の製造方法:
a)膜形成ポリマー、2,500までの分子量を有するポリエーテルアミン及び溶媒を一緒に混合する工程、該混合物は該ポリエーテルアミンと化学的に反応する成分を含まない;及び
b)該混合物をキャストして(casting)、該ポリマーを固体膜に形成する工程。
【0041】
2.ポリエーテルアミンが、2,000までの分子量を有する、前記項1に記載の方法。
【0042】
3.ポリエーテルアミンが、1,000までの分子量を有する、前記項2に記載の方法。
【0043】
4.ポリエーテルアミンが、150〜1,000の範囲内の分子量を有する、前記項3に記載の方法。
【0044】
5.ポリエーテルアミンが、水溶性であり、特に水混和性である、前記項のいずれか一項に記載の方法。
【0045】
6.ポリエーテルアミンが、2つ以上のエチレンオキシド及び/又はプロピレンオキシドモノマー単位及び少なくとも1つの第1級又は第2級アミン単位−NHX(ここで、Xは、水素原子又はC1−4アルキル基である)を含む、前記項のいずれか一項に記載の方法。
【0046】
7.ポリエーテルアミンが、以下の略式を有するモノアミン又はジアミン:
【化11】
又は以下の略式を有するモノアミン、ジアミン又はトリアミン:
【化12】
(各式中、Y、Y'及びY”は、それぞれ独立して、その少なくとも1つが、第1級又は第2級アミン基を含む末端基を表し、PAOは、少なくとも2つのエチレンオキシド及び/又はプロピレンオキシドモノマー単位からなるポリアルキレンオキシド鎖を表す。)である、前記項のいずれか一項に記載の方法。
【0047】
8.ポリエーテルアミンが、以下の略式を有する前記項7に記載の方法:
【化13】
(式中、aは存在するプロピレンオキシドモノマー単位の数を表し、bは存在するエチレンオキシドモノマー単位の数を表す。);又は一般式:
【化14】
(式中、Rは水素原子又はメチル基を表し、R'は水素原子、メチル基又はエチル基を表し、dは0又は1であり、c、e及びfは存在するプロピレンオキシド及び/又はエチレンオキシドモノマー単位の数である。)。
【0048】
9.ポリエーテルアミンが、以下の各式の1つを有する、前記項のいずれか一項に記載の方法。
【化15】
(式中、RはH又はCHであり、x及びyはポリエーテル鎖中のプロピレンオキシド及び/又はエチレンオキシドモノマー単位の数である。);
【化16】
(式中、xはポリエーテル鎖中のプロピレンオキシドモノマー単位の数である。);
【化17】
(式中、x及びzはポリマー鎖中の2つのブロック中のプロピレンオキシドモノマー単位の数であり、yはポリエーテル鎖中のエチレンオキシドモノマー単位の数である。);
【化18】
(式中、xは2又は3である);
【化19】
(式中、x、y及びzは、合わせて、分岐ポリマー鎖中に存在するプロピレンオキシドモノマー単位の合計数を表し、nは0又は1であり、Rは水素、メチル又はエチルである。);又は
上記式(V)〜(IX)の1つの化合物であって、1つ以上のNH末端基が第2級アミン基に変換されている化合物。
【0049】
10.ポリエーテルアミンが式(IX)を有し、そのポリエチレンオキシドのモル数が5〜6の間である;又はポリエーテルアミンが式(VI)を有し、式(VI)中のxが平均で6〜7である、前記項9に記載の方法。
【0050】
11.膜形成ポリマーが、セルロースアセテート/トリアセテート;ポリアミド;ポリピペラジン;ポリベンズイミダゾリン;ポリスルホン;ポリオール;ポリアクリロニトリル;ポリエーテルスルホン;ポリスルホン;ポリ(フタルアジノンエーテルスルホンケトン;ポリ(ビニルブチラール);ポリフッ化ビニリデン;ポリ(テトラフルオロエチレン);ポリプロピレン;ポリエチレン;及びポリエーテルエーテルケトンから選択される、前記項のいずれか一項に記載の方法。
【0051】
12.膜形成ポリマーが、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリフッ化ビニリデン、ポリアクリロニトリル、又はポリエチレンから選択される、前記項のいずれか一項に記載の方法。
【0052】
13.工程(a)で使用される溶媒が、DMF、NMP、ジメチルアセトアミド、アセトン、DMSO、又はTHFであるか、又はそれを含む、前記項のいずれか一項に記載の方法。
【0053】
14.工程(a)で調製された混合物が、非溶媒も含む、前記項のいずれか一項に記載の方法。
【0054】
15.非溶媒が、水又はアルコールである、前記項14に記載の方法。
【0055】
16.工程(a)で調製された混合物が、1つ以上の公知の細孔形成添加剤をも含む、前記項のいずれか一項に記載の方法。
【0056】
17.工程(b)が、工程(a)で生成した混合物を、ポリマーが不溶性である媒体中に浸漬することを含む、前記項のいずれか一項に記載の方法。
【0057】
18.工程(b)で得られた膜に引き続いてコーティングを施す、前記項のいずれか一項に記載の方法。
【0058】
19.前記項のいずれか一項に記載の方法により製造可能な膜。
【0059】
20.ナノろ過膜又は逆浸透膜である前記項19に記載の膜。
【図面の簡単な説明】
【0060】
図1〜16及び18〜26は、実施例に記載された試験の結果を示す。
【0061】
図1】実施例1〜5の膜と比較して、市販の膜の透過流束速度(flux rates)と分画分子量の比較を示す。
図2】実施例1及び比較用の実施例6及び7の膜の透過流束速度と分画分子量の比較を示す。
図3】実施例1、8及び9の膜に添加された異なる量のポリエーテルアミンの効果を示す。
図4】BSA試験における比較用のGE Osmonice社のUF膜の透過流束の低下を示す。
図5】BSA試験における実施例1の膜の透過流束の低下を示す。
図6】実施例1の膜のBSA除去率を示す。
図7】実施例1の膜のSEM(走査電子顕微鏡)写真を示し、表面は左側に、断面は右側に示されている。
図8】実施例2の膜のSEM写真を示しており、表面は左側に、断面は右側に示されている。
図9】実施例3の膜のSEM写真を示しており、表面は左側に、断面は右側に示されている。
図10】実施例4の膜のSEM写真を示しており、表面は左側に、断面は右側に示されている。
図11】実施例5の膜のSEM写真を示しており、表面は左側に、断面は右側に示されている。
図12】市販されている膜であるMillipore Biomax 30kDa(細孔径10〜20nm)のSEM写真を示しており、表面は左側に、断面は右側に示されている。
図13】市販されている膜であるSterlitech PVDFのSEM写真を示しており、表面は左側に、断面は右側に示されている。
図14】Sterlitech PES00325100(0.03μm)膜の表面のSEMを示す。
図15】実施例8の膜の表面のSEMを示す。
図16】実施例9の膜の表面のSEMを示す。
図17】各実施例に記載された膜を作製するために使用される特注のパイロットキャスティングラインの概略図を示す。
図18】実施例15の膜のSEM写真を示しており、表面は左側に、断面は右側に示されている。
図19】実施例16の膜のSEM写真を示しており、表面は左側に、断面は右側に示されている。
図20】実施例17の膜のSEM写真を示しており、表面は左側に、断面は右側に示されている。
図21】実施例18の膜のSEM写真を示しており、表面は左側に、断面は右側に示されている。
図22】実施例19の膜のSEM写真を示しており、表面は左側に、断面は右側に示されている。
図23】実施例20の膜のSEM写真を示しており、表面は左側に、断面は右側に示されている。
図24】実施例21の膜のSEM写真を示しており、表面は左側に、断面は右側に示されている。
図25】PEOを添加物として用いて作製した、実施例22の比較用の膜のSEM顕微鏡写真を示しており、表面は左側に、断面は右側に示されている。
図26】アクリルアミドを添加物として用いて作製した、実施例22の比較用の膜のSEM写真を示しており、表面は左側に、断面は右側に示されている。
【実施例】
【0062】
以下の実施例は、本発明を説明するものである。
【0063】
実施例では、種々のポリエーテルアミンを使用した。それぞれの場合において、それらの水への溶解度を、DLS及び以下のプロトコルを用いて測定した。マルバーン社のゼータサイザーナノ−S(Malvern ZetaSizer Nano-S)光散乱(DLS)装置を使用して、水中のポリエーテルアミンの所定の濃度での粒子の形成を観察した。溶解度を測定するべくポリエーテルアミンの濃度を増加させたときの粒子数の増加を測定するために、計数率と減衰器のモニタリングの組み合わせを使用した。基準物質としてポリスチレンラテックス(RI:1.590;吸収:633nmで0.010)を、及び分散剤として水(粘度:0.9781cP;RI:1.330)を、使用した。測定は、21℃で、Science Brandの使い捨てマイクロキュベット(サンプル容量100μL)で行った。各試料は5回測定され、各測定は11回の平均とした。ポリエーテルアミン及び水が完全に混和しない場合、DLS測定は、目に見える相分離が観察される時点まで続けた。
【0064】
実施例1.PS
膜(細孔サイズ20〜30nm)
実施例1の膜を以下のように調製した:567gのポリスルホン(BASF社ULTRASON(登録商標)S6010)、265gの2−メトキシエタノール(Sigma-Aldrich社284467)及び63gのポリエーテルアミン(Huntsman社JT403、分子量440、水に混和性)を、70℃で、8時間の機械的撹拌下に、2422gのN,N−ジメチルホルムアミド(Sigma-Aldrich社D158550)中に溶解した。室温迄冷却したら、ドープを脱気し、ドクターブレード(ギャップ0.25μm)を用いて、30fpm(フィート/分)で、不織ポリエステル裏地(Hirose社05TH100)上にキャストした。膜は、溶解したポリマードープが水(非溶媒)中に浸漬されている急冷タンク(quench tank)内で形成された。キャスティング工程は、Cut Membranes Canadaによって構築されたパイロットキャスティングラインを使用して実施した。その模式図を図17に示す。図17において、1は水を入れた急冷タンクであり;2は裏地3のロールであり、それはグラナイト石支持体4上を通過する。ドープは、ドクターブレード5を使用して、6で添加される。追加のローラー8は、ドープを、急冷タンクを通して布地上に運び、完成した膜は、電動モータによって駆動されるローラー7によって、取り込まれる。
【0065】
実施例2.PS
膜(細孔径12nm)
実施例2の膜を以下のように調製した:696.78gのポリスルホン(BASF社ULTRASON(登録商標)S6010)、265gの2−メトキシエタノール(Sigma-Aldrich社284467)及び63gのポリエーテルアミン(Huntsman社JT403)を、70℃で、8時間の機械的撹拌下に、2292gのN,N−ジメチルホルムアミド(Sigma-Aldrich社D158550)中に溶解した。室温迄冷却したら、ドープを脱気し、ドクターブレード(ギャップ0.25μm)を用いて、30fpmで、不織ポリエステル裏地(Hirose社05TH100)上にキャストした。膜は、溶解したポリマードープが水中に浸漬されている急冷タンク内で形成された。キャスティング工程は、前述のパイロットキャスティングラインを使用して実施した。
【0066】
実施例3.PES
膜(細孔径20〜30nm)
実施例3の膜を以下のように調製した:630gのポリエーテルスルホン(BASF社ULTRASON(登録商標)S6020p)、331gのイソプロパノール(Sigma-Aldrich社278475)及び33.18gのポリエーテルアミン(Huntsman社JD400、分子量430、水に混和性)を、70℃で、8時間の機械的撹拌下に、2321gのN,N−ジメチルホルムアミド(Sigma-Aldrich社D158550)中に溶解した。室温迄冷却したら、ドープを脱気し、ドクターブレード(ギャップ0.25μm)を用いて、30fpmで、不織ポリエステル裏地(Hirose社05TH100)上にキャストした。膜は、溶解したポリマードープが水中に浸漬されている急冷タンク内で形成された。キャスティング工程は、前述のパイロットキャスティングラインを使用して実施した。
【0067】
実施例4.PVDF
膜(細孔径50〜100nm)
実施例4の膜を以下のように調製した:464gのポリフッ化ビニリデン(Solvay社Solef(登録商標)1015/1001)、塩基性条件下でPVDFが架橋されないようにするために使用される18.2gのギ酸(Sigma-Aldrich社F0507)及び54gのポリエーテルアミン(Huntsman社JT403)を、70℃で、8時間の機械的撹拌下に、2778gのN,N−ジメチルホルムアミド(Sigma-Aldrich社D158550)中に溶解した。室温迄冷却したら、ドープを脱気し、ドクターブレード(ギャップ0.25μm)を用いて、30fpmで、不織ポリエステル裏地(Hirose社05TH100)上にキャストした。膜は、溶解したポリマードープが水中に浸漬されている急冷タンク内で形成された。キャスティング工程は、前述のパイロットキャスティングラインを使用して実施した。
【0068】
実施例5.PS
膜(細孔径20〜40nm)
実施例5の膜を以下のように調製した:567gのポリスルホン(BASF社ULTRASON(登録商標)S6010)、265gの2−メトキシエタノール(Sigma-Aldrich社284467)及び63.04gのポリエーテルアミン(Huntsman社JM600、分子量600、水に混和性)を、70℃で、8時間の機械的撹拌下に、2420gのN,N−ジメチルホルムアミド(Sigma-Aldrich社D158550)中に溶解した。室温迄冷却したら、ドープを脱気し、ドクターブレード(ギャップ0.25μm)を用いて、30fpmで、不織ポリエステル裏地(Hirose社05TH100)上にキャストした。膜は、溶解したポリマードープが水中に浸漬されている急冷タンク内で形成された。キャスティング工程は、前述のパイロットキャスティングラインを使用して実施した。
【0069】
実施例6(比較用).PSポリエチレンイミン0.8kDa
膜(細孔径20〜50nm)
実施例6の膜を以下のように調製した:630gのポリスルホン(BASF社ULTRASON(登録商標)S6010)、265gの2−メトキシエタノール(Sigma-Aldrich社284467)及び8.29gの0.8kDaポリエチレンイミン(Sigma-Aldrich社408719)を、70℃で、8時間の機械的撹拌下に、2412gのN,N−ジメチルホルムアミド(Sigma-Aldrich社D158550)中に溶解した。室温迄冷却したら、ドープを脱気し、ドクターブレード(ギャップ0.25μm)を用いて、30fpmで、不織ポリエステル裏地(Hirose社05TH100)上にキャストした。膜は、溶解したポリマードープが水中に浸漬されている急冷タンク内で形成された。キャスティング工程は、前述のパイロットキャスティングラインを使用して実施した。
【0070】
実施例7(比較用).PSポリアリルアミン65kDa

実施例7の膜を以下のように調製した:630gのポリスルホン(BASF社ULTRASON(登録商標)S6010)、265gの2−メトキシエタノール(Sigma-Aldrich社284467)及び33.18gの65kDaポリアリルアミン(Sigma-Aldrich社479144)を、70℃で、8時間の機械的撹拌下に、2387gのN,N−ジメチルホルムアミド(Sigma-Aldrich社D158550)中に溶解した。室温迄冷却したら、ドープを脱気し、ドクターブレード(ギャップ0.25μm)を用いて、30fpmで、不織ポリエステル裏地(Hirose社05TH100)上にキャストした。膜は、溶解したポリマードープが水中に浸漬されている急冷タンク内で形成された。キャスティング工程は、前述のパイロットキャスティングラインを使用して実施した。
【0071】
実施例8(細孔径20〜30nm)
実施例8の膜を以下のように調製した:567gのポリスルホン(BASF社ULTRASON(登録商標)S6010)、265gの2−メトキシエタノール(Sigma-Aldrich社284467)及び33.15gのポリエーテルアミン(Huntsman社JT403)を、70℃で、8時間の機械的撹拌下に、2450gのN,N−ジメチルホルムアミド(Sigma-Aldrich社D158550)中に溶解した。室温迄冷却したら、ドープを脱気し、ドクターブレード(ギャップ0.30μm)を用いて、30fpmで、不織ポリエステル裏地(Hirose社05TH100)上にキャストした。膜は、溶解したポリマードープが水中に浸漬されている急冷タンク内で形成された。キャスティング工程は、前述のパイロットキャスティングラインを使用して実施した。
【0072】
実施例9(細孔径20〜30nm)
実施例9の膜を以下のように調製した:567gのポリスルホン(BASF社ULTRASON(登録商標)S6010)、265gの2−メトキシエタノール(Sigma-Aldrich社284467)及び16.6gのポリエーテルアミン(Huntsman社JT403)を、70℃で、8時間の機械的撹拌下に、2467gのN,N−ジメチルホルムアミド(Sigma-Aldrich社D158550)中に溶解した。室温迄冷却したら、ドープを脱気し、ドクターブレード(ギャップ0.28μm)を用いて、30fpmで、不織ポリエステル裏地(Hirose社05TH100)上にキャストした。膜は、溶解したポリマードープが水中に浸漬されている急冷タンク内で形成された。キャスティング工程は、前述のパイロットキャスティングラインを使用して実施した。
【0073】
実施例10(細孔径20〜30nm)
Hirose社から供給された裏地の代わりに、Awa社から供給された不織ポリエステル裏地(AWA#2)を使用したことを除いて、実施例1の方法に正確に従った。
【0074】
実施例11〜14:膜の特性評価及び試験
【0075】
実施例11:純水の透過流束及び分画分子量
Amicon撹拌式セル(EMD Millipore社5124、撹拌式セルModel 8400、400ml)を用いて純水の透過流束試験を行った。膜をセルにはめ込み、そのセルを脱イオン水で満たし、0〜5バールの圧力の圧縮空気で加圧した。透過液を12秒間収集し、既知の表面積及び圧力に基づいて、透過度GFD/PSIを算出した。
【0076】
膜の分画分子量及び除去特性を、デキストランを溶質として使用して、試験した。更に、牛血清アルブミン(BSA)及びペプシンの除去を、除去率及び汚染性の試験に使用した。
【0077】
分画分子量の試験は、PB緩衝液(pH7.5)中の様々な分子量(1kDa〜10000kDa)のデキストラン(America Polymer Standards Corporation)の混合物を用いて、行った。試験膜を、Amicon撹拌式セル(EMD Millipore社5121、Model 8010、10ml)中に据え付けた。0.5g/リットルの濃度のデキストランの混合物を含むフィード溶液5mlを、蠕動ポンプ(Cole-Palmer社Masterflex L/Sモデル番号4551-10)を用いて、0.094ml/minで、膜を貫流させ、最初の0.5mlの透過液を捨て、続く0.5mlの透過液をクロマトグラフィー及びフィードとの比較のために集めた。攪拌と組み合わせた低い流速は、濃度分極による影響を受けない測定を可能にする。透過液及びフィードを、3カラム設定(PL Aquagel-OH、それぞれ、1000〜60,000;20,000〜200,000;及び200,000〜10,000,000)のRID検出器を用いたHPLC(Agilent Technologies社、1260 Infinity)を使用して、分子量分布について評価した。フィードの分布を、所定の溶出体積での透過液の分布と比較して、下記式における除去率に帰着させた:
R=RID(フィード)−RID(透過液)/RID(フィード)
【0078】
特定の膜の分画分子量は、90%の除去率が観察される溶質の分子量として定義される。
【0079】
図1は、マーケットリーダーであるMillipore社BioMax 30kDのPES膜を含む種々の市販の膜の膜性能データを、異なる膜形成ポリマーの調合物にポリエーテルアミンを添加した膜と比較して示すものである。分画分子量は、種々のポリエーテルアミンを用いて容易に操作することができること、及び得られた膜は、対応する分画分子量において、競合する膜よりも改良された透過性によって特徴付けられることが明らかである。商業的に入手可能な限外ろ過膜は、非常に高い圧力(30PSI+)で作動されるように設計されているが、本発明による膜は、1〜100+PSIの範囲で首尾よく作動することができる。
【0080】
図2は、実施例1に従って、ポリエーテルアミンをドープ添加剤として用いて調製した膜の膜性能データを、他のポリアミン含有添加剤を用いて調製した比較用の実施例6及び7の膜と比較して示すものである。ポリエーテルアミンがドープ添加剤として使用された膜は、ポリアミン含有添加剤を用いて調製された膜と比較して、改良された透過性によって特徴付けられることが明らかである。
【0081】
図3は、実施例1、8及び9で調製した膜に添加した異なる量のポリエーテルアミンの効果を示す。
【0082】
実施例12:BSA除去及び汚染性試験
BSA(ウシ血清アルブミン)除去及び汚染性の検討を、GE Osmonics社のHigh Pressure ROセル(Sterlitech 1230060)を使用して、リサイクリングモードのタンジェンシャルフロー下で行った。合計4リットルの溶液を使用して0.15GPMの定常値でクロスフローを維持するために、システムの圧力を膜の透過性に合わせた。
【0083】
フィード:脱イオン水中、BSA(Fitzgerald社30-AB70)1g/リットル、50mM NaCl(Sigma-Aldrich社S9888)。
【0084】
BSAを用いて除去及び汚染性について試験した膜を、特定の圧力下でタンジェンシャルフロー形態で試験した。透過液及びフィードのサンプリングを30分間隔で同時に行い、除去率を、Quick Start(登録商標)Bradfordプロテインアッセイ(BIORAD社)を用いて測定した。
【0085】
透過流束は、GFD/PSI値を計算するために、既知の表面積を用いて標準化された単位時間で、透過液を収集することによって測定した。実施例1の膜及びGE Osmonics社の30kDaポリスルホン膜(Sterlitech(登録商標))を用いて、準備した膜の比較透過流束低下試験(BSAによる汚染)を行った。透過流速の低下は、一定量の透過水(リットル/m)にわたってモニターされた。
【0086】
試験1:GE Osmonics社30kDa膜
32psiでの初期流量=0.067GFD
試験条件=50mM NaCl+1g/L BSAフィード溶液、操作圧力=32psi。全フィード量は4リットルであり、フィード汚染(feed fouling)のリサイクルモードをシステムに適用した。結果を、図4に示す。
【0087】
試験2:実施例1のポリエーテルアミン膜、25kDa
4.5psiでの初期流量=8.4GFD
試験条件:50mM NaCl+1g/L BSAフィード溶液、操作圧力=4.5psi。全フィード量は4リットルであり、フィード汚染のリサイクルモードをシステムに適用した。
【0088】
示された結果から、両方の膜に対して必要な圧力は、GE Osmonics社30kDaのPS膜を通す透過を駆動するのに必要な32PSIと、実施例1の膜はこの膜の高い透過性による4PSIとで、異なっていることが明らかである。両方の膜は90%以上のBSA除去率を特徴とするが、実施例1の膜は98%以上のBSA除去率を示している。実施例1の膜の結果は図6に示されている。実施例1の膜の初期透過性はGE Osmonics社の膜よりも89倍高く、両方の膜は100リットル/m以上の透過流束低下を示した。実施例1の膜は、GE Osmonics社の膜の3倍の定常状態透過流束値を示した。
【0089】
実施例13:SEM
FEI XL30環境制御型走査型電子顕微鏡及びSEMピンスタブ(Ted Pella、Inc. 16111)を使用して、走査電子顕微鏡法を実施した。膜サンプルを切断し、カーボンテープ(Ted Pella、Inc. 16085-1)を用いてスタブに取り付けた。SEMチャンバー内の帯電を避けるために、試料を金の薄層で被覆した。金を、VG/Polaron SC 7620上で、30秒間スパッターした。各膜試料について、表面及び断面の画像を収集した。
【0090】
検討された膜において、ポリエーテルアミンを使用する利点は、上記の実施例10及び11に示された性能数値によって説明され、膜表面の多孔性及び膜断面を示す顕微鏡写真で視覚化される。実施例1〜5に従って調製した膜を、市販の競合製品とさらに比較した。実施例1〜5に従って調製した膜のSEM画像をそれぞれ図7〜11に示す。これらの図のそれぞれは、左側にその表面を、右側にその断面を示している。図7〜11に示す画像は、図12に示すMillipore社Biomax 30kDa(細孔径10〜20nm)及び図13に示すSterlitech社のPVDF膜である、各市販品の膜と比較して、細孔径及び細孔径分布が改良され又は競合できることを示す。実施例1〜5に従って調製された限外ろ過膜のさらなる有益な特性、即ちミクロボイド及びマクロボイドの欠如は、図7〜11の断面画像で観察することができる。これは、圧密化が通常観察される、より高い圧力での膜安定性にとって重要である。これは、NF膜及びRO膜のコーティングのための支持材料として膜を使用する場合に特に重要であり、より高い圧力が著しい圧密化及び流量の減少をもたらす。
【0091】
膜の構造に対するポリエーテルアミンの有益な影響は、図10に示すポリエーテルアミンで調製した実施例4のPVDFベースの膜の断面画像を、図13に示すSterlitech社から購入したPVDF膜の断面顕微鏡写真と比較するときに、際立って見える。
【0092】
図14は、Sterlitech(PES00325100)の市販のPESベースの膜(0.03μm)を示す。この膜は、30nmの細孔径によって特徴付けられると言われているが、これは図14において示される表面の多孔性によって支持されていない。図9、15及び16は、それぞれ実施例3、8及び9の膜を示し、比較において、優れた表面特性を明らかに示している。
【0093】
実施例14:細菌除去試験:E.coli BL21(DE3)を除去するための実施例1及び10の膜の使用
大腸菌(E. Coli)懸濁液を以下のように調製した。500mlのLBブロス(ナノ純水500ml中にトリプトン5g、NaCl 2.5g及び酵母2.5g)を調製した。試料を2つの1L培養フラスコに分注し(各フラスコ中250ml)、オートクレーブした。培養フラスコを、一晩培養を開始するまで冷却した。一晩培養物は、無菌技術を用いて、250μlの滅菌カナマイシン及び10μlのカナダ培養種(Canadian culture seed)を各フラスコに添加することによって調製した。培養物を、37℃、225rpmで16時間培養した。OD600は2.14として測定された。その一晩培養物を滅菌遠心分離瓶に分配し、5000rpmで10分間遠心分離した。上清を注ぎ出した。残った細胞ペレットを、元の培養液の容量で用いた滅菌PBS中に分配し、5000rpmでさらに10分間遠心分離した。上清を廃棄した後、細胞ペレットをPBS中に分配した。細胞を振盪して細胞の均一な分布を得、PBSを用いて体積を500mlにした。この時点でのOD600は2.257と測定された。PBS緩衝液中のこの懸濁液をフィードとして使用し、OD600=2.14、推定細胞数は約10CFU/mlである。
【0094】
膜の試験手順:
1.実施例1の76mmの膜をスタンプし、Amiconセル(モデル8400)に組み込んだ;実施例1の膜の純水透過流束を5psiで試験した。
2.50mlのPBS緩衝液を実施例1の膜に5psi未満で通してすすぎ、流量データ(flow data)を30秒間測定した。PBSを、光学濃度(OD)測定のため及び細胞計数ネガティブコントロールとして、収集した。
3.200mlの大腸菌をフィードとして使用した。試験は、300rpmで撹拌しながら、5psiで実施し、開始点で流量データを記録し、次いで、細菌除去パーセンテージを決定するために、プレーティング用の1〜2mlの透過液を回収した。寒天プレートは、製造者の指示に従って調製した。異なる時間に、OD測定用のサンプルを収集した。
4.大腸菌フィードがなくなるまで試験を行い、膜を脱イオン水で完全に洗浄した後、5psiで純水透過流束を再試験し、それを試験前の透過流束と比較した。
【0095】
以下の結果が得られた:
フィード:CFU/ml=21×10/0.2ml=1.05×10
透過液:CFU/ml=20.5/0.2ml=1.025×10
これは、1−1.025×10/1.05×10、又は0.9999999の細菌除去率%に相当する。
【0096】
実施例10の膜を用いて同じ手順を実施した。この場合、絶対細菌除去が得られた。
【0097】
実施例15〜21:異なるポリエーテルアミンの比較
Huntsman社によって製造された以下のポリエーテルアミンのそれぞれを用いて実施例1の手順を繰り返した。各実験について、得られた膜の走査電子顕微鏡法を実施例13に記載されたように行い、得られた顕微鏡写真(膜の表面は左側及び断面は右側)を図18〜22に示す。
【0098】
実施例15:ジェファーミン(JEFFAMINE、登録商標)M1000、分子量1,000、水に混和性(図18
実施例16:ジェファーミンD400、分子量430、水に混和性(図19
実施例17:ジェファーミンED600、分子量600、水に混和性(図20
実施例18:ジェファーミンED2003、分子量2,000、水に混和性(図21
実施例19(比較用):ジェファーミンT3000、分子量3,000、水への溶解度0.050%W/V(図22
実施例20(比較用):ジェファーミンD4000、分子量4,000、水への溶解度0.0025%W/V(図23
実施例21(比較用):ジェファーミンTM5000、分子量5,000、水への溶解度0.040%W/V(図24
【0099】
この結果は、本発明に従って特定のポリエーテルアミンをキャスティングプロセス中の添加剤として使用する場合には、ミクロボイド及びマクロボイドの欠如とともに、均一な細孔径及び細孔径分布を有する高品質の表面が得られることを明らかに示している。対照的に、本発明によらない代替的なポリエーテルアミンの使用は、目に見えて劣った膜をもたらす。
【0100】
実施例22(比較用)
ポリエーテルアミン添加剤を同じ量の異なる添加剤で置き換えた以外は、実施例1の手順を繰り返した。使用した添加剤は、WO2011/069050に記載されているタイプのもの(ポリアルキレンオキシド、アクリルアミド及びカテコールアミン)であった。すべての場合において、ドープ溶液は相分離又はミクロ相分離し、不安定なドープ溶液をもたらし、結果的に、膜が形成されないか又は欠陥で特徴付けられる膜が形成されることが判明した。ポリアルキレンオキシド(PEO100,000、Sigma-Aldrich社181986)の場合、ドープ溶液は非常に濁っており、ミクロ相分離しており、得られた膜は図25に示されるように一様でなく欠陥があった。透過流束試験では、その膜は、(実験計画の範囲内で)測定できない分画分子量及び低い純水流量特性によって、特徴付けられた。添加剤としてアクリルアミド(Sigma-Aldrich社A3553)を使用した膜の場合、形成された膜は、実施例1の膜と比較して、細孔径が増加しており、従ってより高い分画分子量、及びより低い純水の透過流束特性によって、特徴付けられた。図26は、その膜の表面及び断面のSEMを示す。添加物がカテコールアミン(ドーパミン塩酸塩、Sigma-Aldrich社H8502)の場合、脱気段階の間にドープが相分離して、有用な膜をキャストすることが不可能であることが判った。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
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図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26