(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6921167
(24)【登録日】2021年7月29日
(45)【発行日】2021年8月18日
(54)【発明の名称】拡張バルーン用中心マーカ
(51)【国際特許分類】
A61M 25/10 20130101AFI20210805BHJP
A61M 25/098 20060101ALI20210805BHJP
【FI】
A61M25/10
A61M25/10 550
A61M25/098
【請求項の数】14
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2019-203113(P2019-203113)
(22)【出願日】2019年11月8日
(62)【分割の表示】特願2018-500725(P2018-500725)の分割
【原出願日】2016年6月24日
(65)【公開番号】特開2020-72920(P2020-72920A)
(43)【公開日】2020年5月14日
【審査請求日】2019年11月8日
(31)【優先権主張番号】14/955,453
(32)【優先日】2015年12月1日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】62/202,984
(32)【優先日】2015年8月10日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500498763
【氏名又は名称】ジャイラス エーシーエムアイ インク
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】特許業務法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】バロー ジャン エル
(72)【発明者】
【氏名】ディトゥリオ ジェレミー
(72)【発明者】
【氏名】マセス エリカ
【審査官】
川島 徹
(56)【参考文献】
【文献】
特表2003−507096(JP,A)
【文献】
特開平05−042224(JP,A)
【文献】
特表2008−513125(JP,A)
【文献】
国際公開第2015/102801(WO,A1)
【文献】
特開平10−276974(JP,A)
【文献】
特開平06−142208(JP,A)
【文献】
特表2014−527858(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2003/0018353(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 25/10
A61M 25/098
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バルーン拡張器(10,20)であって、
膨張可能バルーン(19)と、
前記膨張可能バルーンを通じて延びるコアワイヤ(18)と、
前記バルーン拡張器内の幾何学的中心に位置する単一の視覚的マーカバンド(11)と、
前記膨張可能バルーンの遠位端よりも遠位側に配置された第1X線不透過性マーカ(24)と、
前記膨張可能バルーンの近位端よりも近位側に配置された第2X線不透過性マーカ(24)と、
を有し、
前記単一の視覚的マーカバンドは、狭帯域光観察で使用される特定の波長の光に対して選択的反射性を有する、バルーン拡張器。
【請求項2】
前記単一の視覚的マーカバンドは燐光性である、請求項1に記載のバルーン拡張器。
【請求項3】
前記単一の視覚的マーカバンドは、粗外表面を有する、請求項1に記載のバルーン拡張器。
【請求項4】
前記コアワイヤはシース(23)を通じて延び、前記コアワイヤは前記膨張可能バルーンに対して相対移動可能であり、前記バルーン拡張器はワイヤ誘導式バルーン拡張器(20)である、請求項1に記載のバルーン拡張器。
【請求項5】
前記単一の視覚的マーカバンドは、前記バルーン拡張器内のシース(23)に配置される、請求項2に記載のバルーン拡張器。
【請求項6】
前記コアワイヤは、装置(13)の遠位端に強く固定され、前記バルーン拡張器はワイヤ固定式バルーン拡張器(10)である、請求項1に記載のバルーン拡張器。
【請求項7】
前記単一の視覚的マーカバンドは、前記バルーン拡張器内の前記コアワイヤに配置される、請求項4に記載のバルーン拡張器。
【請求項8】
内視鏡を更に有し、前記内視鏡は前記バルーン拡張器が通過するワーキングチャネルを有する、請求項1に記載のバルーン拡張器。
【請求項9】
前記単一の視覚的マーカバンドは長さが10mmである、請求項1に記載のバルーン拡張器。
【請求項10】
前記単一の視覚的マーカバンドは、前記コアワイヤにパッド印刷される、請求項1に記載のバルーン拡張器。
【請求項11】
第2視覚的マーカバンドが、前記膨張可能バルーンの近位端に向かって近位側にて、外側シースに配置される、請求項8に記載のバルーン拡張器。
【請求項12】
前記第1X線不透過性マーカ(24)が前記視覚的マーカバンドの下に配置される、請求項1に記載のバルーン拡張器。
【請求項13】
前記膨張可能バルーンは三段階の膨張径に膨張するよう構成された、請求項10に記載のバルーン拡張器。
【請求項14】
前記内視鏡は、狭帯域光観察型内視鏡である、請求項8に記載のバルーン拡張器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、2015年8月10日に出願された米国特許仮出願第62/202984号の利益を主張する2015年12月1日に出願された米国特許出願第14/955453号の利益を主張し、これらの全体の内容はあらゆる目的のために本明細書に参照により組み込まれる。
【0002】
本発明はバルーン拡張装置及び方法に関し、特に内視鏡と組み合わせたバルーン拡張に関する。
【背景技術】
【0003】
体内組織の拡張方法として、一般的に拡張バルーンが使用されることが知られている。この用途の1つとして、食道拡張がある。これは食道内腔を拡張する、内視鏡を用いた医療処理である。食道拡張バルーン又はバルーンカテーテルは、食道内腔が狭くなることによる数多くの健康状態や、食道内の運動性低下の処置に利用できる。別の用途として、バルーンカテーテルは血管形成術において、体内経路を拡張するために使用できる。具体的には、血管形成術では、バルーンカテーテルを使用して血小板を崩したり、圧迫したりして、動脈を拡張する。更なる用途として、尿道前立腺部をバルーン拡張して、前立腺肥大による障害部位を処置できる。
【0004】
バルーン配置にあたって、膨張前にバルーンを障害部位の中心に置くことが非常に重要である。障害部位の中心にバルーンを配置できないと、障害を取り除くまでに膨張収縮のサイクルを繰り返す必要が生じ得るため、処置にかかる時間が長くなり得る。
【0005】
過去数十年かけて、拡張バルーン分野は多様な発展を遂げた。そして、対象部位の中心に配置しやすくするため、シース又は拡張可能バルーンの近位端又は遠位端のいずれかに可視及びX線不透過性マーカが使用されるようになっている。当該マーカはバルーン拡張器を障害部位の略近傍に配置しやすくするが、障害部位の幾何学的中心への配置を実現可能とは限らない。狭窄部中心に配置されなかったバルーンは、膨張の際に奥又は手前のいずれかに移動してしまい、外科医が処置中にバルーンをしぼませて、狭窄部に再配置する必要が生じ得る。したがって、バルーン拡張器の幾何学的中心点から外れたマーカは、不要な処置時間の延長につながりかねない。
【0006】
本技術に属する文献として、米国特許第8,388,642号及び米国特許第5,423,755号のような特許文献が挙げられる。これらはあらゆる目的のため、参照により、本明細書に組み込まれる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
これら手法があってなお、膨張を試みる前に、内視鏡による視覚化の関心領域の中心点へのバルーンの配置を信頼して視覚的に確認できるようにする内視鏡装置が求められている。更に、患者の傷害を防ぎ、患者転帰を改善するため、関心領域近傍のバルーン位置を高信頼で視認及び透視認可能とする装置も求められている。バルーン拡張器の中心マーカが生理学的障害部位の幾何学的中心に配置できることが望ましい。障害部位を最小化して効果的に経路を空けるために必要な膨張回数を減じて処置時間を短縮することが望ましい。視覚的マーカをバルーンの幾何学的中心に配置することが望ましい。特定の周波数の可視光を選択的に透過する内視鏡を使用した位置決めのために、特定の波長の光を選択的に反射するバルーン視覚的マーカが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示は、2015年8月10日に出願された米国特許仮出願第62/202984号の優先権及び2015年12月1日に出願された米国特許出願第14/955453号の優先権を主張し、これらの全体の内容はあらゆる目的のために本明細書に参照により組み込まれる。本発明は、消化管拡張のための、拡張バルーンカテーテルの改善を対象とする。より具体的には、本発明は、コアワイヤの外表面(ワイヤ固定式バルーン拡張器(fixed wire balloon dilator)の場合)、又はコアワイヤを囲繞するシースの外表面(ワイヤ誘導式バルーン拡張器(wire guided balloon dilator))の拡張バルーンの幾何学的中心点に配置された単一の視覚的マーカを使用して、関心領域中心に信頼して配置できる拡張バルーンカテーテルを提供して、上述の要件のうちの1つ以上を満たす。
【0009】
典型的な拡張バルーンは、コア部材又はコアワイヤを有する遠位端を有する。当該部材は、ステンレス鋼又はニチノールのような超弾性合金等の高強度材料製であり、シャフト内部空間を伸びて、バルーンに直接又は間接的に取り付けられる。コア部材の近位端は、通常カテーテルシャフトの近位部又は、カテーテルシャフトの近位端の牽引部材に取り付けられる。コア部材の遠位端は、バルーンの近位端又は遠位端のいずれかにてカテーテルシャフトに取り付けられてもよい。
【0010】
拡張バルーン拡張器構造の改善に寄与するいくつかの要素としては、拡張バルーン製造に使用される種類の材料が挙げられる。本発明において、バルーンはナイロン製でセミコンプライアントで、カテーテルはナイロン製であってもよい。バルーンは略透明材料、透明材料、半透明材料又はこれらの組み合わせでできていてもよい。これにより、バルーン内の視覚的マーカがはっきりと視認可能となる。更に、コアワイヤの外表面(ワイヤ固定式バルーン拡張器の場合)、又はコアワイヤを囲うシースの外表面(ワイヤ誘導式バルーン拡張器の場合)の拡張バルーン内の中心点に配置された視覚的マーカを包含する設計は、本発明のバルーン拡張器による、改善した配置方法に寄与する。
【0011】
視覚的中心マーカは、使用者が狭窄部の拡張に理想的なバルーンの配置を実現しやすくするように設けられる。膨張の際にバルーンはずれてしまう可能性がある。その場合、拡張を何度も試みる必要が生じ得る。具体的には、バルーン拡張器が狭窄部よりも少し奥に配置されると、膨張の際にバルーン拡張器は奥側に移動又はずれてしまう可能性が高い。また、バルーン拡張器が狭窄部よりも少し手前に配置されると、膨張の際にバルーン拡張器は手前側に移動又はずれてしまう可能性が高い。中心マーカは、バルーンが毎回適切に配置されることを保証し、膨張、収縮の繰り返しを最小限に留め得る。
【0012】
ワイヤを内蔵するバルーンの場合、中心コアワイヤの外表面にマーカを貼り付けたり、印刷したり、又はパッド印刷したりしてもよい。ワイヤ誘導式バルーンであれば、カテーテルの外表面の、バルーンカテーテル中心点に対応する位置に視覚的インジケータを貼り付けたり、印刷したり、又は塗装したりすることで、カテーテルに中心マーカを設けることもできる。
【0013】
ワイヤ固定式又はワイヤ誘導式拡張バルーン構造では、マーカバンドを使用してもよい。ワイヤ固定式バルーンの場合、食道狭窄部拡張に、拡張カテーテルを使用できる。ワイヤ誘導式バルーンの場合、食道、十二指腸、幽門、大腸狭窄部を含む消化管狭窄部拡張に、拡張カテーテルを使用できる。ワイヤ固定式バルーンカテーテルは、胃内視鏡での使用に適し、ワイヤ誘導式バルーンカテーテルは胃内視鏡と大腸内視鏡の両方での使用に適したものであってもよい。
【0014】
ワイヤ固定式先端は、ペバックス製遠位部とナイロン製近位部を持つように、2材成型されてもよい。ワイヤ固定式バルーンは食道内の狭窄部の拡張での使用が想定されている。ワイヤ固定式バルーンカテーテルは胃内視鏡での使用に特に適したものである。
【0015】
ワイヤ誘導式バルーンカテーテルは食道、十二指腸、幽門、大腸における狭窄部を含む、消化管内の狭窄部の拡張に使用されることが想定される。ワイヤ誘導式バルーンカテーテルは、特に胃内視鏡及び大腸内視鏡での使用に適したものである。
【0016】
バルーン拡張器が膨張した内視鏡により、画像を撮像できる。中心マーカを使用して、使用者は拡張の関心領域の中心点に正確にバルーン拡張器を配置できる。
【0017】
したがって、本発明の一態様によると、装置とバルーン拡張器であって、膨張可能バルーンと、膨張可能バルーン内に延在するコアワイヤと、バルーン拡張器内の中心に位置する単一の視覚的マーカバンドとを有する装置及びバルーン拡張器が提供される。
【0018】
本発明は更に、本稿記載の特徴の1つ又は組み合わせにより特徴づけられてもよい。当該特徴としては、コアワイヤがシース内に延在すること、コアワイヤはバルーンに対して相対移動可能でバルーン拡張器がワイヤ誘導式バルーン拡張器であること、単一の視覚的マーカバンドがバルーン拡張器内のシース上に配置されることと、コアワイヤが装置の遠位端に強固に固定されてバルーン拡張器がワイヤ固定式バルーン拡張器であることと、バルーン拡張器内のコアワイヤに視覚的マーカバンドが配置されることと、内視鏡がバルーン拡張器を通すワーキングチャネルを有することと、単一の視覚的マーカバンドの長さが10mmであることと、単一の視覚的マーカバンドがワイヤにパッド印刷されることと、第2視覚的マーカバンドが外側シース上の膨張可能バルーンの近位端近傍に配置されることと、第1放射線不透過性マーカバンドが膨張可能バルーンの遠位端よりも遠位側に配置されて第2放射線不透過性マーカバンドが膨張可能バルーンの近位端よりも近位側に配置されることと、膨張可能バルーンが三段階の膨張径に膨張することと、が挙げられる。
【0019】
本発明の別実施形態によると、バルーン拡張器を内視鏡内で伸ばすことと、バルーン拡張器及び内視鏡を、体内経路を通じて狭窄部を開けるための関心領域へ誘導することと、バルーン拡張器が所望の領域の狭窄部の中心点に初期配置されることを保証するよう、単一の視覚的マーカの位置を視覚化することと、バルーン拡張器を膨張させることと、バルーン拡張器が効果的に所望の領域を拡張することを保証するように、膨張中に視覚的マーカの位置を観察することと、を含む方法が提供される。
【0020】
本発明は更に、本稿記載の特徴の1つ又は組み合わせにより特徴づけられてもよい。当該特徴としては、膨張可能バルーンを三段階の膨張径に膨張させる工程や、バルーン拡張器が効果的に所望の領域を拡張することを保証するように、視覚的要素の位置を観察する工程と、バルーン拡張器が更に少なくとも、バルーンの遠位端より遠位側に配置される第1放射線不透過性マーカバンドと、バルーンの近位端よりも近位側に配置される第2放射線不透過性マーカバンドとを有することと、蛍光透視によりバルーン拡張器の位置を確認する工程と、を含む。
【0021】
更なる特徴、利点、及び適用分野は、本明細書に提供される説明から明らかになるであろう。説明及び具体的な例は、単に例示目的のために意図され、本開示の範囲を限定することを意図されないことを理解されたい。
【図面の簡単な説明】
【0022】
本明細書に説明される図面は、単に例示目的のためであり、決して本開示の範囲を制限することを意図されない。
【0023】
【
図1】本発明の一態様を表すワイヤ固定式バルーン拡張カテーテルの側面図である。
【
図2】本発明の一態様を表すワイヤ固定式バルーン拡張カテーテルの斜視図である。
【
図3】本発明の一態様を表すワイヤ固定式バルーン拡張カテーテルの、
図4の線A−Aに沿った断面図である。
【
図4】本発明の一態様を表すワイヤ固定式バルーン拡張カテーテルの部分斜視図である。
【
図5】本発明の一態様を表すワイヤ誘導式バルーン拡張カテーテルの側面図である。
【
図6】本発明の一態様を表すワイヤ誘導式バルーン拡張カテーテルの斜視図である。
【
図7】本発明の一態様を表すワイヤ誘導式バルーン拡張カテーテルの、
図8の線B−Bに沿った断面図である。
【
図8】本発明の一態様を表すワイヤ誘導式バルーン拡張カテーテルの部分斜視図である。
【
図9A】本発明の一態様を表すワイヤ誘導式バルーン拡張カテーテルの側面図である。
【
図9B】本発明の一態様を表すワイヤ誘導式バルーン拡張カテーテルの、
図9Aの線9B−9Bに沿った断面図である。
【
図10A】本発明の一態様を表すワイヤ固定式バルーン拡張カテーテルの側面図である。
【
図10B】本発明の一態様を表すワイヤ固定式バルーン拡張カテーテルの、
図10Aの線10B−10Bに沿った断面図である。
【
図11】患者体内で使用されている本発明の装置を表すワイヤ誘導式バルーン拡張カテーテルの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下の説明は、本質的に例示的なものであって、本開示、並びにその適用や用途を限定する意図はない。
【0025】
以下のとおり、本稿にて教示する装置及び方法は、対象領域の中心により正確にバルーンを配置するための、膨張可能バルーンの中心における視覚的マーカバンドを提案するものである。
【0026】
視覚的マーカ
構造的に、視覚的マーカバンドは2mmから15mmの範囲、好ましくは5mmから10mmの範囲、最も好ましくは7mmから8mmの範囲の長さで延在してもよい。この長さとは、装置の遠位端から近位端への方向の長さである。マーカバンドは、コアワイヤ又はシースの外周全体に延在してもよく、外周の一部で延在してもよく、バルーン拡張器の一方側のみから視認可能であってもよく、バルーン拡張器の両側から視認可能であってもよく、あるいはこれら態様を組み合わせてもよい。視覚的マーカバンドはコアワイヤ又はシース外周の360°全体に延在してもよく、外周の270°から359°の範囲で延在してもよく、外周の180°から269°の範囲で延在してもよく、あるいは外周の180°未満の範囲で延在してもよい。追加的な視覚的マーカバンドを、例えばカテーテルのバルーンの近位端よりも若干近位側又はバルーンの遠位端よりも若干遠位側に設けられてもよい。X線不透過性マーカバンドを1つ以上の視覚的マーカの下に配置してもよい。X線不透過性マーカバンドはバルーンの遠位端、近位端、又はその両方に設けられ、X線透視による配置を容易にしてもよい。ワイヤを内蔵するバルーンの場合、中心コアワイヤの外表面にマーカが貼り付けられたり、印刷されたり、パッド印刷されたりしてもよい。ワイヤ誘導式バルーンであれば、カテーテルの外表面の、バルーンカテーテル中心点に対応する位置に視覚的インジケータを貼り付けたり、印刷したり、又は塗装したりすることで、カテーテルに中心マーカを設けることもできる。マーカは、ナイロン、収縮チューブ、プラスチック、インク、又はその組み合わせであってもよい。
【0027】
機能的には、これらマーカバンドの目的は、バルーンが内視鏡面から十分進んで、膨張を安全に開始できることを使用者に示すことや、バルーンが動かないように、バルーンを狭窄部の幾何学的中心に配置可能とすることである。機能的に、中心視覚的マーカは燐光性であってもよく、特定の波長に照射されるとより明るく反射してもよく、光に曝露されると帯電してもよく、白色光よりも高輝度で発光してもよい。マーカバンドは、膨張前は畳まれたバルーン材料を通じて視認可能で、膨張中、膨張後はバルーンの側壁を通じて視認可能であってもよい。マーカバンドは、顔料を含んでもよく、燐光性であってもよく、光に曝露されると電荷を帯びてもよく(即ち蓄光性であってもよく)、特定の周波数では白色光よりも高輝度で発光してもよく、反射率が40から93(日射反射指数)の間であってもよく、特定の波長の光に照射されるとより明るく反射してもよく、特定の波長に対して分光放射輝度を有してもよく、平滑な表面を有してもよく、鏡面反射するように構成されてもよく、粗面を有してもよく、拡散反射するように構成されてもよく、又はこれら態様の組み合わせを有してもよい。マーカバンドは、蛍光性であってもよく、玉虫色であってもよく、光輝性であってもよく、化学発光性であってもよく、電界発光性であってもよく、熱発光性であってもよく、光刺激発光性であってもよく、熱せられないと発光する表面を有してもよく、冷発光可能であってもよく、あるいはこれら態様の組み合わせを有してもよい。
【0028】
機能的には、内視鏡とともに視覚的マーカを使用することで、バルーンが内視鏡面から十分進んで、膨張を安全に開始できることを使用者に示したり、バルーンが動かないように、バルーンを狭窄部の幾何学的中心に配置したりすることが可能となる。
【0029】
バルーン
構造的には、バルーン、カテーテル、又はその両方は、ナイロン製でセミコンプライアントであってもよい。バルーンは略透明材料、透明材料、半透明材料又はこれらの組み合わせでできていてもよい。これにより、バルーン内の視覚的マーカがはっきりと視認可能となる。バルーンの最遠位端部から最近位端部までで測定したバルーン長は、20mmから90mmの範囲であってもよく、好ましくは50mmから70mmの範囲であり、最も好ましくは55mmから66mmの範囲内である。より曲がりくねった体内部位及び/又は曲がりくねった体内部位で発見された狭窄部では、より短いバルーン長が望ましい場合がある。バルーン長65mmのワイヤ誘導式バルーンでは、三段階の膨張レベルでの膨張径は6mm、7mm、8mmであってもよい。バルーン長65mmのワイヤ誘導式バルーンでは、三段階の膨張レベルでの膨張径は8.5mm、9.5mm、10.5mmであってもよい。バルーン長55mmのワイヤ誘導式バルーンでは、膨張径は11mmから20mmまでで等間隔となってもよく、あるいはその内の任意の組み合わせであってもよい。バルーン長90mmのワイヤ固定式バルーンでは、膨張径は6mmから10.5mmまでで等間隔となってもよく、あるいはその内の任意の組み合わせであってもよい。バルーン長80mmのワイヤ固定式バルーンでは、膨張径は11mmから20mmまでで等間隔となってもよく、あるいはその内の任意の組み合わせであってもよい。
【0030】
機能的に、バルーン内の空気圧が特定のレベルにまで昇圧できるように、バルーンはバルーン拡張器の近位部に、内部空間を介して流体連通してもよい。本発明の一実施形態では、バルーンカテーテルが対応する圧力の印加に応じて三段階の特定の直径となるように膨張可能であってもよい。バルーン拡張器は二段階バルーン拡張器、三段階バルーン拡張器、又は四段階バルーン拡張器であってもよい。
【0031】
ワイヤ固定式バルーンカテーテル
構造的に、ワイヤ固定式先端は、例えばペバックス製遠位部とナイロン製近位部を持つように、2材成型されてもよい。コアワイヤは、遠位端の非外傷性先端部に取り付けられてもよい。コアワイヤは、様々な機構により先端に取り付けられてもよい。コアワイヤの先端領域に、成型中、コアワイヤを非外傷性先端部に安定して固定できる鋸歯、螺旋、又はその他パターンを形成してもよい。
【0032】
機能的に、ワイヤ固定式バルーンカテーテルの先端は、バルーンカテーテルを定位置に進めるように使用してもよい。先端が剛性であり、コアワイヤが先端に接続されていることにより、このような誘導が実現できる。コアワイヤを先端に固定することで、バルーンカテーテルを内視鏡に再挿入したり、患者からバルーンカテーテルを取り除いたりする際に、コアワイヤが先端での固定位置にとどまることを保証できる。
【0033】
ワイヤ誘導式バルーンカテーテル
構造的に、ワイヤ誘導式バルーンカテーテルの先端は、例えばナイロンカテーテルにペバックスがオーバーモールドされたものであってもよい。ワイヤ誘導式バルーンカテーテルでは、シースに通されたコアワイヤが、拡張バルーンカテーテルの定位置への誘導に寄与する。シースは、バルーンカテーテルの遠位端に接続されてもよく、非外傷性先端部が設けられる。構造的に、ワイヤ誘導式バルーンカテーテルでは、シースに通され得るコアワイヤが、拡張バルーンカテーテルの定位置への誘導に寄与する。シースは、バルーンカテーテルの遠位端に接続されてもよく、非外傷性先端部が設けられる。単一の視覚的マーカバンドをバルーンの中心点に設けてもよい。
【0034】
機能的に、ワイヤ誘導式バルーンカテーテルは使用者にまず、コアワイヤを定位置まで進め、その後バルーンカテーテルをコアワイヤ上で伸ばすことを可能とする。ワイヤ誘導式バルーンカテーテルは、装置に予め設けられたコアワイヤとの使用に適したものであってもよい。コアワイヤは、曲がりくねった人体部位での関心領域までの誘導や、バルーンカテーテルのより曲がりくねった人体部位内や届きにくい領域への伸長を可能とするものであってもよい。コアワイヤの直径は、0.01cmから0.20cmの範囲内であってもよく、好ましくは0.03cmから0.15cmの範囲内であり、最も好ましくは0.08cmから0.09cmの範囲内である。
【0035】
ラベル
三段階の対象膨張径や、圧力設定点を示すように、カテーテルにラベルを設けてもよい。ラベルは、明るくない操作室でも見やすいように、蓄光性、燐光性、又はその組み合わせを有してもよい。バルーンは、50%/50%の造影剤/生理食塩水混合物により、膨張装置を使用して膨らまされてもよい。バルーンは、造影剤と生理食塩水との任意の組み合わせ、造影剤100%、生理食塩水100%により膨張されてもよい。
【0036】
内視鏡
様々な内視鏡を使用して、バルーン拡張器と協働で対象領域の照明を実現してもよい。膨張を試みる前に、内視鏡視覚化により関心領域中心点でのバルーン配置を高信頼で視覚的に確認可能とするあらゆる装置を、本発明の装置と使用してもよい。消化管では、好ましくは消化管内視鏡が使用される。内視鏡は、バルーン拡張器を通すワーキングチャネルと、可撓性先端部と、視覚化機能とを有してもよい。
【0037】
バルーン拡張器は内視鏡内で伸ばし、バルーン拡張器及び内視鏡を、体内経路を通じて狭窄部を開けるための関心領域へ誘導し、バルーン拡張器が所望の領域の狭窄部の中心点に初期配置されることを保証するよう、単一の視覚的マーカの位置を視覚化し、バルーン拡張器を膨張させバルーン拡張器が効果的に所望の領域を拡張することを保証するように、膨張中に視覚的マーカの位置を確認してもよい。
【0038】
NBI(狭帯域光観察)は、血管や粘膜面上のその他組織の視認性を向上する光学的撮像技術である。NBIは、白色光を、ヘモグロビンに吸収され、人体組織のみを透過する特定の光波長にフィルタリングする。短い波長だと、粘膜の上層のみを透過するが、長めの波長だと粘膜奥深くまで透過する。NBI光は、ヘモグロビンに強く吸収される2つの特定波長のみを含む。NBIにより、モニターでは、粘膜面上の毛細血管は茶色に映り、静脈や粘膜下層はシアン色に映る。特定の波長に対して選択的に反射性を有する視覚的マーカを、NBI技術を利用する内視鏡に組み合わせることは、膨張前に畳まれたバルーン材料を介した、そして膨張中及び膨張後にバルーン材料の単一層を介した視覚的マーカの視認性を最大限引き出す方法の1つであろう。
【0039】
コアワイヤ
構造的に、コアワイヤは、ワイヤ固定式バルーン拡張器の非外傷性先端部に取り付けられてもよい。コアワイヤは、様々な機構により取り付けられてもよい。コアワイヤの先端領域に、成型中、コアワイヤを非外傷性先端部に安定して固定できる鋸歯、螺旋、又はその他パターンを形成してもよい。
【0040】
ワイヤ固定式バルーン拡張器では、コアワイヤは、バルーンの幾何学的中心点に、視覚的マーカが設けられる。コアワイヤは、遠位端に接続され、その接続点はX線透視により視認可能である。
【0041】
ワイヤ誘導式バルーン拡張器では、シース内部に、装置の関心領域への挿入中にコアワイヤが通され得る内部空間又は空間が設けられる。シースに通されたコアワイヤが、拡張バルーンカテーテルの定位置への誘導に寄与できる。シースは遠位端に接続され、非外傷性先端部を持つ。1つ以上の視覚的マーカバンドを、シース表面上のバルーンの中心点に設けてもよい。
【0042】
バルーン首
構造的に、バルーン首は、バルーン一端で、バルーンの口に向かって先細りになる縮径部が設けられてもよい。
【0043】
機能的に、バルーン首は、膨張中にバルーンの上下部を互いに引き離すように付勢する付勢手段を有してもよい。
【0044】
バルーン口
構造的に、ワイヤ固定式バルーン拡張器では、バルーン口はコアワイヤを囲うシースの終端であって、コアワイヤのみがバルーン長さ方向に延びる部位である。
【0045】
機能的に、バルーン首は、膨張媒体がバルーン内に入り、そしてバルーン内から抜ける部位である。
【0046】
シース
構造的に、シースはワイヤ誘導式バルーンカテーテルにおいて、非外傷性先端部に固定されたポリマー経路であって、コアワイヤ挿入のため、バルーン拡張器の近位端まで延在する。
【0047】
機能的に、シースはコアワイヤが通過して、挿入時に曲がりくねった経路での誘導を補助する経路として機能する。シースの外表面は、膨張前後及び膨張中の視覚化のため、視覚的マーカがバルーンの幾何学的中心に配置可能とする静止表面として機能する。
【0048】
以下に図面を参照して、本教示の例示的実施形態を説明する。
図1は、ワイヤ固定式拡張バルーンカテーテル10の先端領域を詳細に示す側面図である。コアワイヤ18は、遠位端13にて非外傷性先端部12に取り付けられる。コアワイヤ18は、様々な機構により取り付けられてもよい。コアワイヤの先端領域に、成型中、コアワイヤ18を非外傷性先端部に安定して固定できる鋸歯、螺旋、又はその他パターンを形成してもよい。単一の視覚的マーカバンド11はバルーン19の中心点に設けられる。X線不透過性マーカ24は、バルーン19の近位端及び遠位端の両方に設けられる。バルーン19の中心に設けられた視覚的マーカ11は、遠位端14及び近位端15を有する。視覚的マーカ11の長さは、視覚的マーカ11の遠位端14と近位端15との間の距離を測定することで判定できる。バルーン19は完全に膨張した状態で図示されている。三段階の特定の直径へ膨張する機能が、人体内関心領域の中心点にバルーンを保持することに寄与し得る。
【0049】
図2はワイヤ固定式拡張バルーンカテーテル10の遠位端領域を示す斜視図である。同図では、バルーン19の曲線的な遠位部32及び曲線的な近位部33がはっきりと確認できる。
【0050】
図3は、
図4の線A−Aに沿った、ワイヤ固定式バルーンカテーテル10の断面図である。コアワイヤ18は遠位端13にて、非外傷性先端部の材料で囲繞されている。バルーン口22に向かって先細りするバルーンの首における縮径部21により、バルーン19の外表面が視認可能である。
【0051】
図4は、ワイヤ固定式バルーンカテーテル10の部分斜視図である。コアワイヤ18は、バルーンの中心点に視覚的マーカ11が設けられている。コアワイヤ18は遠位端13に接続されて、その接続点が視認可能となる。バルーン首21は、バルーン19のバルーン口22に至る縮径部として示されている。
【0052】
図5は、ワイヤ誘導式バルーンカテーテル20の遠位端領域の側面図である。コアワイヤ18はシース23を通って、拡張バルーンカテーテルの定位置への誘導を補助する。シース23は、遠位端13に接続され、非外傷性先端部12を有する。単一の視覚的マーカバンド11は、シース23表面上の、バルーン19の中心点に設けられる。X線不透過性マーカ24は、バルーン19の近位端及び遠位端の両方に設けられる。バルーン19の中心に設けられた視覚的マーカ11は、遠位端14及び近位端15を有する。視覚的マーカ11の長さは、視覚的マーカ11の遠位端14と近位端15との間の距離を測定することで判定できる。バルーン19は完全に膨張した状態で図示されている。三段階の特定の直径へ膨張する機能が、人体内関心領域の中心点を中心にバルーンを保持することに寄与し得る。
【0053】
図6は、ワイヤ誘導式拡張バルーンカテーテル20の遠位端領域を示す斜視図である。同図では、バルーン19の曲線的な遠位部32及び曲線的な近位部33がはっきりと確認できる。
【0054】
図7は、
図8の線B−Bに沿った、ワイヤ誘導式バルーンカテーテル20の断面図である。コアワイヤ18は、装置を関心領域へと挿入する際に、内部空間25を通過できる。バルーン口22に向かって先細りするバルーン首における縮径部21により、バルーン19の外表面が視認可能である。
【0055】
図8は、ワイヤ誘導式バルーンカテーテル20の部分斜視図である。装置の挿入時に、コアワイヤ18はシース23を通過できる。シース23は、バルーンの中心点に視覚的マーカ11が設けられている。バルーン首21は、バルーン19のバルーン口22に至る縮径部として示されている。
【0056】
図9Aはワイヤ誘導式バルーン拡張器20の全体側面図である。バルーン19は、シース23上のバルーン19の中心点に視覚的マーカ11が配置されており、完全に膨張した状態で示されている。追加的な視覚的マーカ11が、外側シース上のバルーン拡張器の近位領域に図示されている。非外傷性先端部12が設けられることで、挿入時に患者に外傷を与える可能性が低減される。装置の近位端で、膨張媒体口26は、バルーン19内に、膨張内部空間27を介して膨張媒体が入るための入り口となる。更に、コアワイヤ18がコアワイヤ内部空間29を介して挿入されるためのコアワイヤ口28が装置近位端に設けられている。
【0057】
図9Bは、ワイヤ誘導式バルーン拡張器20の断面図である。バルーン19は、視覚的マーカ11の周囲に示されている。視覚的マーカ11は、バルーン19内の中心に位置する。
【0058】
図10Aは、ワイヤ固定式バルーン拡張器10の全体側面図である。バルーン19は、コアワイヤ18上のバルーン19の中心点に視覚的マーカ11が配置されており、完全に膨張した状態で示されている。追加的な視覚的マーカ11が、外側シース上のバルーン拡張器の近位領域に図示されている。非外傷性先端部12が設けられることで、挿入時に患者に外傷を与える可能性が低減される。装置の近位端で、膨張媒体口26は、バルーン19内に、膨張内部空間27を介して膨張媒体が入るための入り口となる。
【0059】
図10Bは、ワイヤ固定式バルーン拡張器10の断面図である。バルーン19は、視覚的マーカ11の周囲に示されている。視覚的マーカ11は、バルーン19内の中心に位置する。
【0060】
図11は、人体内関心領域31におけるバルーン19の側壁を通じた斜視図である。コアワイヤ18上に形成された視覚的マーカ11がはっきりと見え、人体内関心領域31近傍に容易に配置できる。
【符号の説明】
【0061】
10 ワイヤ固定式バルーンカテーテル
11 視覚的マーカ
12 非外傷性先端部
13 遠位端
14 視覚的マーカ遠位端
15 視覚的マーカ近位端
18 コアワイヤ
19 バルーン
20 ワイヤ誘導式バルーンカテーテル
21 バルーン首
22 バルーン口
23 シース
24 X線不透過性マーカ
25 空洞
26 膨張媒体口
27 膨張内部空間
28 コアワイヤ口
29 コアワイヤ内部空間/シース
30 ラベル
31 体内領域
32 バルーン遠位端
33 バルーン近位端