(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
30〜70重量%のPDLA及び70〜30重量%のPLLAを含む上記溶融物が、PDLAの固体粒子及びPLLAの固体粒子を該押出機のフィーダゾーンに供給すること、そして該sc−PLA形成ゾーンの前に配置された、該押出機中の溶融ゾーン中で該PDLA及びPLLAを溶融することによって得られる、請求項1に記載の方法。
【背景技術】
【0002】
ポリ(乳酸)若しくはポリ乳酸又はポリラクチド(PLA)は、乳酸から誘導される生分解性熱可塑性脂肪族ポリエステルである。乳酸のキラル性故に、ポリラクチドの異なる幾つかの形、すなわち、L−ラクチドの重合によって生じる生成物であるポリ−L−ラクチド(PLLA)とD−ラクチドの重合によって生じる生成物であるポリ−D−ラクチド(PDLA)とが存在する。L−ラクチドとD−ラクチドとのコポリマーは、引き下げられた融点及びより遅い結晶化速度を有するPLAポリマーを生じる。
【0003】
PLLA及びPDLAを適切に混合すると、共結晶化が、ステレオコンプレックスポリ乳酸(sc−PLA)と呼ばれる特定のラセミ結晶タイプを結果として生じることができる。この特定のタイプのPLAは一般的に、個々の親ホモポリマーよりも40〜50℃高い状態、すなわちおよそ220〜240℃、に事実上ある、増加された溶融範囲を示す。ここで、sc−PLAは、PLAコポリマーの溶融ブレンドによっても生じることができるが、PLLA及びPDLAから作製されたsc−PLAに比べて融点が引き下げられていることが注目される。この場合、異なるコポリマーは、高い(反対の)立体化学的純度をやはり必要とする。実際には、PLAコポリマーで作製されたそのようなsc−PLAブレンドは、180〜220℃の溶融範囲を示す。少量の化学的に異なるコモノマーもやはりPLAステレオコンプレックス共結晶化を可能にすることがさらに理解される。
【0004】
従って、この明細書全体にわたって使用されるPLLA及びPDLAは、sc−PLA形成をやはり可能にするラクチドのコポリマーを含むことが意図される。
【0005】
PLLAとPDLAとのステレオコンプレックスは、液体及び気体の炭化水素の回収における使用の目的で記載されている。欧州特許出願公開第3048240号明細書(東レ株式会社)が参照される。ステレオコンプレックスは、市場の標準PLAタイプに比べて高い溶融熱により、本出願にとって大いに魅力的なものとなる。この文献において、PLLA及びPDLAの一方は、50〜300kg/molの重量平均分子量を有し、他方は、10〜200kg/molの重量平均分子量を有する。ポリマーブレンドは、好ましくは繊維の形、特に1〜5cmの長さ及び100〜1000デシテックスの繊度、又は1〜10mmの長さ及び0.3〜5デシテックスの繊度を有する短繊維の形をしている。粒子の使用も記載されている。ステレオコンプレックスは、様々な重合及び反応物の混合によって得られることができる。
【0006】
欧州特許出願公開第2746318号明細書(Total Research)は、PLLA/PDLAステレオコンプレックスポリマーを製造する為の方法であって、下記工程:L−ラクチドを重合して、PLLAを得る工程、D−ラクチドを重合して、PDLAを得る工程、並びにPLLA及びPDLAを押出機中、超臨界流体の存在下で混合し、それによってPLLA/PDLAステレオコンプレックスポリマーを調製し、ステレオコンプレックスから超臨界流体を任意選択で除去する工程を含む上記方法を記述する。生成物は、ダイに通して押し出されて、ストランドを形成し、次いで切断されて、ペレットを形成する。超臨界流体の存在は、溶融物におけるセグメント移動性の増加によってステレオコンプレックスの形成を増加させると思われる。本明細書に記載される方法の不利な点は、超臨界流体の使用であり、これにより高圧要件及び複雑な操作の為に投資コストの高い複雑なプロセスになる。
【0007】
欧州特許出願公開第2116575号明細書(帝人株式会社及びその他)は、PLLA及びPDLAを一緒に160〜225℃の温度で混練する工程、及び混練された生成物を結晶化した後、得られた固体を溶融混練する工程によって、高分子量、特に100kg/mol超のポリ乳酸を生成する為の方法を記述する。PDLA及びPLLAを一緒に混練する工程は、二軸押出機又は混練機を使用して実施されることができることが示される。実施例において、株式会社井元製作所の実験室サイズのPPK混練押出機が、約10秒の滞留時間で使用された。この参考文献は、この方法が商業規模でいかに実施されることができるかについて情報を提供していない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
当技術分野において、高含有量のポリ乳酸ステレオコンプレックスを含む粒子、特に2mm未満、特に1mm未満、より具体的には0.75mm未満、の平均体積径[4.3]を有する粒子を製造する為の方法が求められている。これらの粒子には多くの用途がある。例えば、それらは、地下の岩石から液体及び気体の炭化水素を回収するのに使用される水性懸濁液で有益に使用されることができる。
【0009】
当技術分野において、市販のポリマー処理設備で効率的に実施されることができる、そのような粒子を製造する為の方法が求められている。本発明は、sc−PLA粒子の工業規模での生成を可能にする方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、ポリ−D−ラクチド(PDLA)とポリ−L−ラクチド(PLLA)とのステレオコンプレックスを含む粒子を製造する為の方法であって、
30〜70重量%のPDLA及び70〜30重量%のPLLAを含む溶融物を二軸押出機中のsc−PLA形成ゾーンを通じて押し出すこと、ここで、該sc−PLA形成ゾーンは、該PDLA及びPLLAの融点を超え且つ220℃未満のバレル温度で操作される、
ここで、該sc−PLA形成ゾーンの後に仕上げゾーンが続き、該仕上げゾーンは、160℃未満のバレル温度で操作される、
ここで、該仕上げゾーンの後に該押出機の終端部が続き、ここで、該押出機の該終端部は、0のダイヘッド抵抗を有する、及び
固体のステレオコンプレックス粒子を該押出機の該終端部から回収すること、
を含む上記方法に関する。
【0011】
本発明に従う方法は、1mm未満、特に0.75mm未満、の平均体積平均径[4.3]を有する粒子を、従来の押出機の改変によって得られることができる装置で効率的且つ連続的に得ることが可能になることが判った。本発明の更なる利点及びその具体的な実施態様は、更なる詳述から明らかになるだろう。
【0012】
本発明に従う方法の決定的な一新規性は、粉末を得る為の粉砕工程を不要にする可能性である。該方法は、典型的には15〜50mg(2〜5ミリメートルサイズ)のPLLA及びPDLAポリマーのペレットから自由流動性のサブミリメートルサイズのステレオコンプレックスPLA粉末への単純な単一工程変換を可能にする。
【0013】
本発明の特徴は、該押出機が、該PDLA及びPLLAの融点を超え且つ220℃未満のバレル温度で操作されるsc−PLA形成ゾーンを備えることである。該sc−PLA形成ゾーンにおいて、該PDLA及びPLLAは、液相においてせん断条件下で完全に混合されて、ステレオコンプレックスの形成を開始する。二軸押出機の使用がまた本発明の特徴であり、なぜならば、それは、必要な激しい混合状態を得ることを可能にするからである。該sc−PLA形成ゾーンの該バレル温度は、該PDLA及びPLLAの融点〜220℃未満である。該バレル温度が低すぎる場合、該PDLA及びPLLAは、ステレオコンプレックスを形成することができるほど溶融されない。220℃を超えるバレル温度は高すぎて、ステレオコンプレックス粒子が形成されない。該sc−PLA形成ゾーンにおいて、そこに存在する材料の温度は、一般に該PDLA及びPLLAの融点を超え且つ220℃未満である。
【0014】
本発明の更なる特徴は、該sc−PLA形成ゾーンの後に仕上げゾーンが続き、160℃未満のバレル温度で、且つ該sc−PLA形成ゾーンの温度未満で操作されることである。該仕上げゾーンにおいて、該sc−PLA材料の温度は、形成される粒子の特性に悪影響を及ぼす220℃を超えないように制御されている。
【0015】
本発明の更なる特徴は、本発明において使用される該押出機が、該押出機の終端部において0のダイヘッド抵抗を有することである。従来、押出機には、バレルの最後の部分に明確な寸法の押出ダイが1(又はバレルの数によっては、1超)設けられており、最終材料が押出機から出る。ダイを通した押出によって、ストランド、パイプ、シート、テープなどを形成する。ポリマーストランドの具体的な場合では、市販のペレット製造機又は切断機が、造形された粒子を生み出す為に使用される。押出ダイにより、材料フロー特性、ダイ幾何形状、押出機設定などに応じておよそ数バール〜数百バールのダイヘッド抵抗になる。典型的には、安定な押出物、続いて均一な形状及び寸法のペレットを生成するには、最低数バールの圧力が必要とされる。
【0016】
本発明において、押出機を操作する従来の様式とは異なり、押出機ダイヘッドは装備されるべきではないことが判った。当技術分野における予想は、これにより、粘性ポリマー溶融物が押出機からでること、及び造形された粒子はダイが使用されるときのみ得られることができることになることである。驚くべきことに、今回、本発明の特定の状況では、ダイ(ヘッド)の存在が、ダイの閉塞及び押出機操作の妨害になりうるが、ダイの非存在下、すなわち0のダイヘッド抵抗において、粒子材料が、制御された連続的な製造ルーチンで得られることが判った。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明は、以下でさらに明らかにされるだろう。
【0018】
本発明において、特定の組成の溶融物が使用される。それは、30〜70重量%のPDLA及び70〜30重量%のPLLA、特に40〜60重量%のPDLA及び60〜40重量%のPLLA、を含む。この比較的狭い範囲は、良好な特性を有する粒子を得るのに不可欠であることが判った。この要件が満たされない場合、得られるステレオコンプレックス結晶の量は、粉末形成生成物になるのに十分ではない可能性がある。該溶融物は好ましくは、45〜55重量%のPDLA及び45〜55重量%のPLLAを含みうる。
【0019】
本発明において使用されるPDLA及びPLLAは両方とも、一般的に少なくとも20.000g/mol、特に少なくとも25.000g/mol、の絶対重量平均分子量を有する。上限は、比較的高く、例えば最高で200.000g/molでありうる。しかし、分子量は好ましくは、多くとも100.000g/mol、特に多くとも70.000g/mol、さらに特に多くとも50.000g/mol、でありうる。これらの好適は、どちらか又は両方のポリマーに適用することができる。低分子量は、本発明に不可欠な結晶化の速度を増加させるので有益である。さらに、分子量が低くなることによって、粘度が低くなり、それによって、トルクが低くなり、従って処理量の増加を可能にしうる。これは、処理の観点から有利になりうる。さらに、低分子量ポリマーの使用は、同じ設定で処理量の増加を可能にしうる。ポリマーは、分子量が低くなるほど、加水分解による分解率が高くなる。潜在的用途に応じて、これは、不利な点にも有利な点にもなりうる。
【0020】
本発明において使用されるPDLA及びPLLAの分子量は、同じであっても異なっていてもよい。
【0021】
本明細書の文脈内において、分子量という語は、重量平均分子量を指すように意図されている。分子量は、光散乱検出並びに溶媒及び溶離液としてHFiP(ヘキサフルオロイソプロパノール)を使用する周知のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)技法を使用し、絶対分子量値、例えば数平均(Mn)及び重量平均(Mw)分子量を得ることで決定されうる。
【0022】
本発明において使用されるPDLA及びPLLAは、高い立体化学的純度を有する。該PDLAは、少なくとも70%がD−ラクチドから誘導される単位からなる。該PDLAは、少なくとも80%、特に少なくとも90%、さらに特に少なくとも95%、がD−ラクチドから誘導される単位からなることが好ましい。逆に、該PLLAは、少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、特に少なくとも90%、さらに特に少なくとも95%、がL−ラクチドから誘導される単位からなる。この好適の理由は、使用するポリマーの立体化学的純度が高いほど、ステレオコンプレックスのピーク融点が高く、且つ溶融熱が高くなるということである。
【0023】
該PDLA及びPLLAの残部は、反対の立体化学のL−ラクトイル単位(すなわち、該PDLA中のL−ラクチドモノマーから誘導されるL−ラクトイル単位及び該PLLA中のD−ラクチドモノマーから誘導されるD−ラクトイル単位)を含みうる。ラクチドと重合することができる他のモノマーも存在しうる。例としては、グリコリド及びε−カプロラクトンである。非ラクチドモノマーの量は、20重量%未満、特に15重量%未満、さらに特に10重量%未満、もっとさらに特に5重量%未満、特に2重量%未満、であることが好ましい。
【0024】
PLA溶融物は、様々な様式で得られることができる。一つの実施態様において、該PDLA及びPLLAは別々に溶融され、溶融された組成物は一緒にされ、混合され、該sc−PLA形成ゾーンに供給される。他の実施態様において、該PDLA及びPLLAは、固相で、例えばポリマー粒子又は粉末として混合され、次いで溶融され、溶融物は、該押出機の該sc−PLA形成ゾーンに供給される。
【0025】
本発明の好ましい実施態様において、PDLAの固体粒子及びPLLAの固体粒子が二軸押出機のフィーダゾーンに供給され、一緒にされたPLAフィードは該押出機の溶融ゾーンで溶融され、得られた溶融物は該押出機の該sc−PLA形成ゾーンに供給される。
【0026】
該フィーダゾーンは、該押出機の一部分であり、そこでポリマーが該押出機に供給される。固体のPDLA及びPLLAが該押出機に供給される場合、該フィーダゾーンは、一般的に該PDLA及びPLLAの融点未満のバレル温度で操作される。好適な温度は、例えば10〜100℃の範囲でありうる。要望があれば、冷却が適用されて、例えば10〜50℃のバレル温度を適用しうる。
【0027】
該溶融ゾーンは、開始部で全てのポリマーが該押出機に与えられ、終端部で全てのポリマーが溶融しているゾーンと定義される。該溶融ゾーンの温度は、該PDLA及びPLLAが完全に溶融されている限り重大ではない。一般に、該溶融ゾーンにおける該押出機の該バレル温度は、該PDLA及びPLLAの融点〜220℃未満である。該溶融ゾーンの終端部において、材料は、該PDLA及びPLLAの融点〜220℃未満の温度を有する。
【0028】
該溶融ゾーンにおける滞留時間は、元のポリマーが該ゾーンの終端部において完全に溶融されている限り重大ではない。DSC分析は、例えば元のPLLA又はPDLA結晶が生成物中に存在しているかどうか決定する為に使用されることができる。一般的な範囲として、5秒〜10分の値が挙げられうる。
【0029】
該溶融ゾーンは一般に、5〜20のL/D比を有する。それは、好ましくは搬送、圧力上昇並びに混練及び混合の為に構成されたスクリュー要素のモジュール式アセンブリを備えたスクリューを含む。要望があれば、例えば、10〜50℃の温度のフィードゾーン、例えば水冷フィードゾーンから始まり、下流のバレルセグメントにおいてポリマーの融点を超える値に増加する温度プロファイルが適用される。当業者に明らかであるように、スクリューの幾何形状は、材料を固体ペレットから粘性溶融物に変換することに関連付けられた材料特性の変化に対処するように適合されることができる。
【0030】
該sc−PLA形成ゾーンは、該押出機の一部分であり、そこでsc−PLA形成の大部分が起こる。該sc−PLA形成ゾーンにおいて、該バレル温度は、該PDLA及びPLLAの融点を超え且つ220℃未満の温度で維持される。
【0031】
該バレル温度が該PDLA及びPLLAの融点未満である場合、適切な溶融混合は起こらない。溶融混合は、該方法にとって重要である。なぜならば、ステレオコンプレックスPLA形成が個々のPLLA及びPDLAポリマー鎖の共結晶化を必要とするからである。該バレル温度が220℃を超える場合、ステレオコンプレックス結晶化は著しい速度で起こらない。なぜならば、溶融温度がsc−PLAの溶融範囲に近すぎ、その結晶化温度を超えて離れすぎているからである。以上に定義された該PDLA及びPLLAの融点は、典型的には150〜180℃である。該sc−PLA形成ゾーンにおける該バレル温度は好ましくは、低くとも170℃、特に低くとも180℃、でありうる。該sc−PLA形成ゾーンにおける該バレル温度は好ましくは、高くとも210℃、特に高くとも200℃、さらに特に高くとも195℃、の温度でありうる。
【0032】
該sc−PLA形成ゾーンにおける該生成物の温度については、該バレル温度について以上に記載されている範囲と同じ範囲が、同じ理由で当てはまる。
【0033】
該sc−PLA形成ゾーンにおける該滞留時間は、一般に少なくとも10秒である。滞留時間が30秒未満であるとき、高品質の生成物を得ることは困難であることが判った。滞留時間は好ましくは、少なくとも1分でありうる。一般に、該sc−PLA形成ゾーンにおける滞留時間は、15分未満、さらに特に10分未満、である。一般に、より長い滞留時間は、好適な生成物を得る為には必要とされない。
【0034】
該sc−PLA形成ゾーンは、全てのPDLA及びPLLAが溶融している箇所で始まり、バレル温度が160℃未満の値に設定されている箇所で終わる、該押出機の一部分と定義される。
【0035】
一般に、該sc−PLA形成ゾーンは、少なくとも6のL/D比を有する。該L/D比は、一般に高くとも30である。該L/D比が6未満である場合、混合が不十分でありうるので、高品質のsc−PLA生成物を得ることは困難である。好ましくは少なくとも10のL/D比でありうる。一方、30より高いL/D比は一般に、該生成物の品質を高めない。
【0036】
該sc−PLA形成ゾーンにおいて、溶融されたPDLAと溶融されたPLLAの完全な混合が目標とされている。これは、そうでなければステレオコンプレックスが形成されない為である。従って、溶融物において該PLLA及びPDLAを均質化する為に混合要素、特に効率的な分布混合を提供する要素、を好ましくは該押出機に装備しうる。混合を促進する為に、この区分における押出機スクリューは、一般に当業者に公知の混合要素を含有する。混合要素は、30、45又は90度の角度で組み立てられた様々な幅のいわゆる混練ブロックを多数含有することができる。歯車要素が均質化を促進するように特別に設計された他の市販のスクリュー要素であるように、前進搬送混合要素ではなくバックポンピングが使用されうる。
【0037】
該sc−PLA形成ゾーンの後に、仕上げゾーンが続く。該仕上げゾーンにおいて、該バレル温度は160℃未満である。該仕上げゾーンにおいて、sc−PLAの形成が完結され、粒子が形成される。該仕上げゾーンにおける該バレル温度は、該sc−PLA形成ゾーンにおける該バレル温度に比べて比較的低い。これは、結晶化が起こることができ、固体粒子が形成されることを保証するものである。該仕上げゾーンにおける該バレル温度は、例えば140℃未満、特に120℃未満、より具体的には100℃未満、でありうる。一般に、該仕上げゾーンにおける該バレル温度は20℃を超える。
【0038】
該仕上げゾーンにおける材料の温度は、220℃未満、特に200℃未満、である。これにより、sc−PLA粒子の適切な形成が可能になり、この温度を超えては起こらない。一般に、該仕上げゾーンの少なくとも開始部において、該材料は、該sc−PLA形成ゾーンから引き出されるので100℃より高い、特に120℃より高い、さらに特に150℃を超える、温度を有する。該仕上げゾーンの終端部における該材料温度は、一般に200℃未満である。それは、はるかに低く、例えば100℃未満でありうるが、比較的高く、例えば150℃を超えることもありうる。これは、該仕上げゾーンの長さ及び適用される温度に依存する。
【0039】
該仕上げゾーンにおいて、該sc−PLA形成ゾーンに連結されている該仕上げゾーンの該開始部における該バレル温度が、該仕上げゾーンの該終端部、すなわち該押出機の終端部における該バレル温度より高い、温度勾配を適用することは魅力的でありうる。これは、該ゾーン間の円滑な移行に貢献する。
【0040】
該仕上げゾーンは、一般に少なくとも3のL/D比を有する。該仕上げゾーンが短すぎる場合、粉末の特性はあまり魅力のないものとなりうる。該仕上げゾーンは好ましくは、少なくとも6のL/D比を有しうる。30を超えるL/D比を有する仕上げゾーンの使用は、追加の利点をもたらさないと考えられる。
【0041】
形成されるsc−PLAの粒径を低減する為に、微粉砕要素を該押出機仕上げゾーンに設けることは魅力的でありうる。
【0042】
該バレル温度と該材料温度の関係はそれほど直接的でなくてもよいことが注目される。これは、特に該仕上げゾーンにおいて当てはまる。これは、該材料の温度が、該バレル温度によって決定されるだけでなく、該仕上げゾーンにおいてあまり有効でないが該バレルから該材料への熱伝達、並びに他の供給源、例えばスクリュー回転量及び発熱sc−PLA形成反応によって供給されるエネルギーによっても決定されるからである。それにもかかわらず、該バレル温度は、該方法を制御する為に有効な様式である。
【0043】
該二軸押出機の性質は、本発明に重大な意味をもたない。同方向回転及び反対方向回転二軸押出機は両方とも、使用されることができる。もちろん、要望があれば、2より多いスクリューを有する押出機も使用されることができる。
【0044】
該押出機の全L/Dは、一般に20〜60、特に23〜50、の範囲である。L/D比が高くなれば、詳細な温度制御の為の能力が増加するが、同時に設備への投資にマイナスの影響をもたらす。
【0045】
本発明に従う方法の処理量の一般的な範囲は、押出機の構成に応じて5〜5000kg/時間でありうる。rpmの一般的な範囲は、押出機の構成に応じて20〜1200rpmの範囲でありうる。
【0046】
ポリ−D−ラクチド(PDLA)とポリ−L−ラクチド(PLLA)とのステレオコンプレックスを含む粒子は、ダイヘッドのない押出機の終端部から回収される。粒子は、一般に、粒子の平均体積直径が2mm未満、特に1mm未満、さらに特に0.75mm未満、であるような粒径分布を有する。
【0047】
粒径分布(PSD)は、Malvern Particle Sizer 3000レーザー回折装置を用いて圧力1バールで決定されることができる。試料が多分散系又は粗製でありすぎて、直接に測定することができない場合、均質化された試料は篩い分けによって分画されることができ、次いで様々な画分の分析結果は、数値的に組み合わされることができる。
【0048】
D[0.5]は、体積基準の粒子直径の中央値である。本発明の粒子は、50〜1500マイクロメートルの範囲、特に100〜750マイクロメートルの範囲、例えば150〜500マイクロメートルの範囲、のD[0.5]を有することが好ましい。
【0049】
D[0.90]は、粒径分布の90体積%における切片である。すなわち、粒子体積の90%が、この値未満の直径を有する粒子中に存在する。本発明の粒子は、2mm以下、特に1mm以下、のD[0.90]を有することが好ましい。
【0050】
D[0.10]は、粒径分布の10体積%における切片である。すなわち、粒子体積の10%が、この値未満の直径を有する粒子中に存在する。本発明の粒子は、0.4mm以下、特に0.2mm以下、のD[0.10]を有することが好ましい。
【0051】
D[4.3]は、体積平均径を表す。本発明の粒子は、2mm未満、特に1mm未満、さらに特に0.75mm未満、のD[4.3]を有することが好ましい。
【0052】
これらのパラメータは、粒径分布を決定する分野において通常のパラメータであり、従来の装置によって容易に生み出される。
【0053】
粉末の粒径分布は、押出条件、例えば処理量、スクリュー設計及びスクリュー速度を選択することによって影響されることができる。以上に示したように、正しい粒径を得るには温度制御及び混合効率も重要である。
【0054】
好ましい実施態様において、本質的に本発明に従う方法によって得られるステレオコンプレックスPLA粒子は、単一の溶融ピークを示す。これは、195〜250℃に及ぶステレオコンプレックスPLAの溶融ピークである。示差走査熱量測定(DSC)を使用して、10K/分での典型的な第1の加熱スキャンで検出された溶融熱は、少なくとも20J/グラム、特に少なくとも30J/グラム、であり、100J/グラムまで上昇することができる。sc−PLAピークの溶融熱の正確な値とは別に、本発明に従って生成されたsc−PLA粉末は、より低い溶融性のPLA、PLLA又はPDLAに帰属される150℃未満の溶融ピークを本質的に有しないことが好ましい。本発明に従って生成されたsc−PLA粉末は、より低い溶融性のPLA、PLLA又はPDLAに帰属される160℃未満、特に180℃未満、の溶融ピークを本質的に有しないことが好ましい。「本質的」とは、10J/g未満の溶融エンタルピーが指定された温度未満で観察されるということを意味する。
【0055】
PDLA及びPLLAに加えて、粒子に組み入れる為の別の成分を該押出機に添加することができる。
【0056】
更なる成分の例には、UV安定剤、抗酸化剤、結晶化核剤、可塑剤、蝋、鉱物充填剤、BioAdimideのような抗加水分解剤、反応性鎖延長剤、架橋剤、又は他のポリマー、加水分解促進性強酸若しくは塩基などを含む。追加の成分の含有量は、ステレオコンプレックス粒子の形成との干渉を防止するように制限された含有量を維持することが好ましい。より具体的には、他の成分が使用される場合、その量は好ましくは、20重量%未満、特に10重量%未満、一部の実施態様において5重量%未満、でありうる。
【0057】
生成物が石油及びガス産業で使用されるつもりである場合、更なる成分の存在を制限して、望ましくない成分を環境に持ち込むことを避けることも望まれうる。本発明の粒子が(生)分解性材料からなることは、本発明の粒子の利点の1つである。
【0058】
本発明は、ポリ−D−ラクチド(PDLA)とポリ−L−ラクチド(PLLA)とのステレオコンプレックスを含む粒子であって、2mm未満、特に1mm未満、さらに特に0.75mm未満、の平均体積径[4.3]且つ50ミクロン超のD[0.5]を有し、195〜250℃に単一の溶融ピーク及び少なくとも20J/グラムの溶融熱を有し、新規で進歩性があると考えられる粒子にも関する。本発明の方法によって得られる生成物について以上に示された好適は、これらの粒子にも当てはまる。これらの粒子は、本発明の方法によって得られる又は得られることができることが好ましい。
【0059】
本発明のステレオコンプレックス粒子は、様々な方式で、そのようなものとして又は粒径低減工程にかけられた後で使用されることができる。例えば、要望があれば、該押出機から得られる生成物が、更なる微粉砕工程、例えば(極低温)ミリング(milling)又は粉砕(grinding)にかけられることができる。篩い分けも適用されて、好適な粒径分布を有する画分を選択することができる。
【0060】
一つの実施態様において、該粒子は、石油及び/又はガス、特にシェール油及び/又はシェールガス、の水圧破砕による回収において使用されるフラッキング流体に使用される。それらは、例えば流体の進路を変える際にチャネラント及び/又はプロッパントとして使用されることができる。フラッキング方法は、当技術分野において公知であり、ここで更なる説明を必要としない。
【0061】
他の実施態様において、該粒子が、例えば自己強化複合材料において充填剤として使用される。
【0062】
粒子の使用のさらに他の実施態様は、PLAホモ結晶化の為の核剤としての使用である。伝統的なPLAグレードは、典型的には本発明の粒子の融点未満の温度で溶融処理されるので、該粒子は、持続性の結晶としてPLA化合物に留まり、そしてそうであるから、PLAマトリックス結晶化の為の核剤として働く。
【0063】
更なる実施態様において、ステレオコンプレックス粒子は、sc−PLA生成物の製造の為の出発物質として使用されることができる。一つの実施態様において、ステレオコンプレックス粒子は、ゲル紡糸方法において出発物質として使用されて、高配向sc−PLA繊維を製造する。例えば、第1の工程において、sc−PLA粒子は、好適な液体と一緒にされて、懸濁液を作製し、次に場合によって高せん断混合を行って、ペーストを得る。懸濁液又はペーストは押し出されて、均質ゲルを形成し、次いで紡糸ヘッドを通して凝固浴槽に押し出され、それから、繊維が乾燥及び熱延伸のような更なる処理の為に巻き取られることができて、最終のsc−PLA繊維を得る。
【0064】
本発明の様々な好ましい実施態様は、相互に排他的でない限り組み合わされることができることが当業者に明瞭であろう。
【0065】
本発明は、以下の実施例により説明されるが、それらに限定されることも又はそれらによって限定されることもない。
【0066】
実施例1:sc−PLA粉末の製造(I)
出発PDLAとして、絶対重量平均分子量45kg/mol、及びメルトフローインデックス12g/10分(ISO 1133-A、190℃/0.325kg)のPDLA(Luminy(商標)D070、Corbion)が選択された。立体化学的純度は99%超(D−異性体)であり、且つ融点は175℃(DSC)であった。
【0067】
出発PLLAとして、絶対重量平均分子量65kg/mol、及びメルトフローインデックス22g/10分(ISO 1133-A、190℃/2.16kg)のPLLA(Luminy(商標)L105、Corbion)が選択された。立体化学的純度は99%超(L−異性体)であり、且つ融点は175℃(DSC)であった。
【0068】
該2つの材料は、1:1の比でBerstorff 400rpm ZE40A−38D同方向回転二軸押出機の重量式フィーダに供給された。押出機バレルの温度設定は、以下のスキームに示されている通りであった。Z1はフィーディングゾーンである。溶融はZ2〜Z3で起こる。sc−形成の大部分はZ4〜Z5で起こり、Z6〜Z8は仕上げゾーンを構成する。スクリュー回転速度は70rpmに設定され、処理速度は約40kg/時であった。安定な操作中のトルクレベルは60〜70%であった。それぞれの該ゾーンのL/D値は以下の通りであった。Z1:L/Dは4である;Z2〜Z3:L/Dは10である;Z4〜Z5:L/Dは10である;Z6〜Z8:L/Dは14である。全L/Dは38であった。
【0070】
該押出機バレルから出て回収されたsc−PLA粉末の温度は、約170℃であった。該押出機の終端部において、ダイは存在しなかった。該押出機の該終端部は、0のダイヘッド抵抗を有した。ゾーンZ3〜Z8における材料温度は、170℃〜220℃であった。
【0071】
粒状生成物が該押出機の該終端部から回収された。自由流動性の白色粉末は、以下の粒径分布を有した。D[4.3]=430ミクロン、D[0.1]=102ミクロン、D[0.5]=330ミクロン、及びD[0.9]=896ミクロン。DSC(走査速度10K/分)を使用する熱的キャラクタリゼーションは、単一の溶融点231℃と、溶融エンタルピー73J/gを示した(
図1のDSCグラフオーバーレイを参照)。
【0072】
実施例2:sc−PLA粉末の製造(II)
同じ押出機において、同一の処理量(40kg/時)及びスクリュー速度(70rpm)、並びに同じPLLA/PDLA顆粒混合物で実施例1と同様にして、同様の粉末生成を実現した。温度設定は調整され、以下のスキームに示された。ゾーンZ3〜Z8における材料温度は、170℃〜220℃であった。
【0074】
これらの設定の下で、以下の特徴を有する粉末が生成された。D[4.3]=469ミクロン、D[0.1]=101ミクロン、D[0.5]=354ミクロン、及びD[0.9]=996ミクロン。DSCサーモグラフ(走査速度10K/分)により、231℃で唯一の溶融ピークの存在を確認した。
【0075】
比較例1:従来のブレンドストランド
実施例1と同様にして、50%のLuminy(商標)D070及び50%のLuminy(商標)L105のブレンドが、実施例1の二軸押出機にフィード速度20kg/時及びスクリュー速度227rpmで送り込まれた。今回は、押出ゾーンが以下の温度スキームに設定され、従来の二重ストランドダイヘッドが装備された。
【0077】
この古典的なコンパウンド操作は、15%のトルクで定常状態にて進行し、237℃の温度で均質で清澄なポリマー溶融物を生成した。粘性溶融物は結晶化せず、その結果、従来の透明な二重ストランドが押し出された。この例は、高すぎる(材料)温度及びダイの存在が、sc−PLA粉末の連続製造に適切な条件を構成しないことを示す。
【0078】
比較例2:押出機ブロック
比較例1と同様にして、同じ材料及び押出機構成を使用して、以下の温度設定が今回は選択された。
【0080】
該押出機中の混合物が過熱し、従ってやはり該押出機から粘性ポリマー溶融物として出るのを防止する為に、より低いスクリュー速度100rpmが使用されなければならなかった。該ダイヘッドの2つのオリフィスの一方から、不透明な溶融物が押し出され、他方のオリフィスは塞がれた。従って、これらの設定では結晶化は不完全であり、その上押出ダイの(部分)遮断をもたらし、従って実行可能な連続操作にならないことが示されることができた。
【0081】
実施例3:加水分解粒子としての使用
フラッキング用途におけるsc−PLA粉末の挙動を模倣する為に、実施例1で生成された粉末が、加水分解にかけられた。
【0082】
この目的の為に、12グラムの粉末が、600mLの反応器(Parr Instrument Company Series 4760 General Purpose Vessel)中で200mLの脱塩水と混合された。7バールの窒素圧が加えられ、温度が155℃に上げられ、維持された。この温度は、フラッキング産業で使用される典型的な高温分解プロファイルを模倣するので選択された。
【0083】
実験は16時間実行され、その後残留している固体は、Whatman濾紙#3で濾過され、続いて40℃で恒量になるまで乾燥された。該粉末の質量損失は82%であると判定された。sc−PLA粉末はそれ自体で、同一の状況で一貫して完全分解する典型的なポリ(L−ラクチド)粉末より高い加水分解抵抗性を示す。
【0084】
実施例4:核剤としての使用
実施例2の粉末の核剤としての使用を試験する為に、5重量%の粉末及び95重量%のLuminy(商標)L130(Corbion)で化合物が作製された。DSC分析を使用して、結晶化挙動の相違が分析された。PLLA L130とPLLA L130の両方及び5%の実施例2の粉末の試料が、以下のDSCプロトコルにかけられた。20℃で平衡化し、10K/分で200℃に加熱し、200℃で3分間保持し、5K/分で0℃に冷却する。純粋なPLLA L130試料の場合、極めてブロードな結晶化ピークが観察され、約12J/gの結晶化度が創出された。これは、溶融物からの結晶化が遅くて不完全であることを示す。5%のsc−PLA粉末を含む化合物では、110℃に極大を有するシャープな結晶化ピークが観察され、約37J/gの結晶を形成した。これは、sc−PLA粉末が結晶性PLA化合物において核剤として働くことを示す。