特許第6921603号(P6921603)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6921603
(24)【登録日】2021年7月30日
(45)【発行日】2021年8月18日
(54)【発明の名称】発光装置およびプロジェクター
(51)【国際特許分類】
   H01S 5/18 20210101AFI20210805BHJP
   H01S 5/20 20060101ALI20210805BHJP
【FI】
   H01S5/18
   H01S5/20
【請求項の数】6
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2017-85078(P2017-85078)
(22)【出願日】2017年4月24日
(65)【公開番号】特開2018-186114(P2018-186114A)
(43)【公開日】2018年11月22日
【審査請求日】2020年4月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】502350504
【氏名又は名称】学校法人上智学院
(74)【代理人】
【識別番号】100090387
【弁理士】
【氏名又は名称】布施 行夫
(74)【代理人】
【識別番号】100090398
【弁理士】
【氏名又は名称】大渕 美千栄
(74)【代理人】
【識別番号】100148323
【弁理士】
【氏名又は名称】川▲崎▼ 通
(74)【代理人】
【識別番号】100168860
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 充史
(74)【代理人】
【識別番号】100116665
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 和昭
(74)【代理人】
【識別番号】100179475
【弁理士】
【氏名又は名称】仲井 智至
(72)【発明者】
【氏名】野田 貴史
(72)【発明者】
【氏名】岸野 克巳
【審査官】 村井 友和
(56)【参考文献】
【文献】 特表2010−521059(JP,A)
【文献】 特開2006−352148(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01S 5/00− 5/50
H01L 33/00−33/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基体と、
第1半導体層と、
第2半導体層と、
前記第1半導体層と前記第2半導体層との間に設けられ、電流が注入されることで光を発することが可能な発光層と、
前記基体と前記第1半導体層との間に設けられ、複数の柱状部を有する柱状部含有層と、
を含み、
前記第1半導体層は、前記柱状部含有層と前記発光層との間に設けられ、
前記柱状部含有層は、
第1層と、
前記第1層と前記第1半導体層との間に設けられた第2層と、
を有し、
前記第2層の平均屈折率は、前記第1層の平均屈折率よりも高く、かつ前記第1半導体層の平均屈折率よりも低い、発光装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記柱状部は、
前記第1層を構成し、前記第1半導体層と前記発光層との積層方向からみた平面視において第1の面積を有する第1部分と、
前記第2層を構成し、前記平面視において前記第1の面積よりも大きい第2の面積を有する第2部分と、
を有する、発光装置。
【請求項3】
請求項2において、
前記第2部分は、前記基体から遠ざかるにつれて径が大きくなるテーパー形状を有する、発光装置。
【請求項4】
請求項2または3において、
前記第1部分と前記第2部分とでは、ドープされている不純物の種類および濃度の少なくとも一方が異なっている、発光装置。
【請求項5】
請求項1ないしのいずれか1項において、
隣り合う前記柱状部の間には、前記柱状部の屈折率よりも低い屈折率を有する部材が設けられている、発光装置。
【請求項6】
請求項1ないしのいずれか1項に記載の発光装置を含む、プロジェクター。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光装置およびプロジェクターに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体レーザーは、高輝度の次世代光源として期待されている。中でも、ナノ構造体を適用した半導体レーザーは、ナノ構造体によるフォトニック結晶の効果によって、狭放射角で高出力の発光が実現できると期待されている。このような半導体レーザーは、例えば、プロジェクターの光源として適用される。
【0003】
例えば特許文献1には、フォトニック結晶を形成するn型ポストと、n型ポストの上に配置された平坦なn型領域、発光領域、およびp型領域と、を含む半導体発光装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013−9002号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記のような発光装置では、柱状部(ポスト部)での光強度が十分ではなく、柱状部によるフォトニック結晶の効果を得難い場合があった。
【0006】
本発明のいくつかの態様に係る目的の1つは、高いフォトニック結晶の効果を得ることができる発光装置を提供することにある。また、本発明のいくつかの態様に係る目的の1つは、上記発光装置を含むプロジェクターを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る発光装置は、
基体と、
第1半導体層と、
第2半導体層と、
前記第1半導体層と前記第2半導体層との間に設けられ、電流が注入されることで光を発することが可能な発光層と、
前記基体と前記第1半導体層との間に設けられ、複数の柱状部を有する柱状部含有層と、
を含み、
前記第1半導体層は、前記第1層と前記発光層との間に設けられ、
前記柱状部含有層は、
第1層と、
前記第1層と前記第1半導体層との間に設けられた第2層と、
を有し、
前記第2層の平均屈折率は、前記第1層の平均屈折率よりも高く、かつ前記第1半導体層の平均屈折率よりも低い。
【0008】
このような発光装置では、例えば第2層の平均屈折率が第1層の平均屈折率よりも高いまたは等しい場合に比べて、光強度が基体側に向けて急峻に低下することを抑制することができ、第1層における光強度を高くすることができる。これにより、このような発光装置では、第1層による高いフォトニック結晶の効果を得ることができる。
【0009】
本発明に係る発光装置において、
前記柱状部は、
前記第1層を構成し、前記第1半導体層と前記発光層との積層方向からみた平面視において第1の面積を有する第1部分と、
前記第2層を構成し、前記平面視において前記第1の面積よりも大きい第2の面積を有する第2部分と、
を有してもよい。
【0010】
このような発光装置では、第2層の平均屈折率を、第1層の平均屈折率よりも高くすることができる。
【0011】
本発明に係る発光装置は、
基体と、
第1半導体層と、
第2半導体層と、
前記第1半導体層と前記第2半導体層との間に設けられ、電流が注入されることで光を発することが可能な発光層と、
前記基体と前記第1半導体層との間に設けられた複数の柱状部と、
を含み、
前記第1半導体層は、前記柱状部と前記発光層との間に設けられ、
前記柱状部は、
前記第1半導体層と前記発光層との積層方向からみた平面視において第1の面積を有する第1部分と、
前記第1部分と前記第1半導体層との間に設けられ、前記平面視において前記第1の面積よりも大きい第2の面積を有する第2部分と、
を有する。
【0012】
このような発光装置では、第2部分を含んで構成される第2層の平均屈折率を、第1部分を含んで構成される第1層の平均屈折率よりも高くすることができる。そのため、このような発光装置では、例えば第2層の平均屈折率が第1層の平均屈折率よりも高いまたは等しい場合に比べて、光強度が基体側に向けて急峻に低下することを抑制することができ、第1層における光強度を高くすることができる。これにより、このような発光装置では、第1層による高いフォトニック結晶の効果を得ることができる。
【0013】
本発明に係る発光装置において、
前記第2部分は、前記基体から遠ざかるにつれて径が大きくなるテーパー形状を有してもよい。
【0014】
このような発光装置では、第2層の平均屈折率を、基体から遠ざかるにつれて高くすることができる。
【0015】
本発明に係る発光装置において、
前記第1部分と前記第2部分とでは、ドープされている不純物の種類および濃度の少なくとも一方が異なっていてもよい。
【0016】
このような発光装置では、例えば第1部分の断面積と第2部分の断面積とを異ならせることなく、第2層の平均屈折率を、第1層の平均屈折率よりも高くすることができる。
【0017】
本発明に係る発光装置において、
隣り合う前記柱状部の間には、前記柱状部の屈折率よりも低い屈折率を有する部材が設けられていてもよい。
【0018】
このような発光装置では、柱状部によるフォトニック結晶の効果を得つつ、柱状部含有層の平均屈折率を調整することができる。
【0019】
本発明に係るプロジェクターは、
本発明に係る発光装置を含む。
【0020】
このような発光装置では、本発明に係る発光装置を含むことができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本実施形態に係る発光装置を模式的に示す断面図。
図2】参考例に係る発光装置を模式的に示す断面図。
図3】本実施形態に係る発光装置を模式的に示す断面図。
図4】本実施形態に係る発光装置の製造工程を模式的に示す断面図。
図5】本実施形態に係る発光装置の製造工程を模式的に示す断面図。
図6】本実施形態の第1変形例に係る発光装置を模式的に示す断面図。
図7】本実施形態の第2変形例に係る発光装置を模式的に示す断面図。
図8】本実施形態の第3変形例に係る発光装置を模式的に示す断面図。
図9】本実施形態に係るプロジェクターを模式的に示す図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の好適な実施形態について、図面を用いて詳細に説明する。なお、以下に説明する実施形態は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではない。また、以下で説明される構成の全てが本発明の必須構成要件であるとは限らない。
【0023】
1. 発光装置
まず、本実施形態に係る発光装置について、図面を参照しながら説明する。図1は、本実施形態に係る発光装置100を模式的に示す断面図である。
【0024】
発光装置100は、図1に示すように、例えば、基体10と、バッファー層20と、柱状部含有層30と、第1半導体層40と、発光層50と、第2半導体層60と、第1電極70と、第2電極72と、を含む。
【0025】
基体10は、例えば、板状の形状を有している。基体10は、例えば、Si基板、サファイア基板などである。基体10は、第1領域12と、第2領域14と、を有している。第1領域12は、上方に発光層50が設けられている領域である。第2領域14は、上方に発光層50が設けられていない領域である。第2領域14の上方には、第1電極70が設けられている。
【0026】
バッファー層20は、基体10上に設けられている。バッファー層20は、例えば、第1導電型(例えばn型)のGaN層(具体的にはSiがドープされたGaN層)である。バッファー層20の平均屈折率は、基体10の平均屈折率よりも高い。ここで、「平均屈折率」とは、第1半導体層40と発光層50との積層方向(発光層50の厚さ方向、例えば上下方向、以下単に「積層方向」ともいう)と直交する方向(例えば水平方向)における層の平均屈折率である。例えば、バッファー層20のように、水平方向において均一な材料からなる層では、平均屈折率は、単に層を構成する材料の屈折率である。図1では、発光装置100の第1領域12での積層方向の位置における平均屈折率および光強度を模式的に示している。
【0027】
なお、本発明において、「上」とは、積層方向において、発光層50からみて基体10から遠ざかる方向のことであり、「下」とは、積層方向において、発光層50からみて基体10に近づく方向のことである。
【0028】
バッファー層20上には、柱状部含有層30の柱状部32を形成するためのマスク層80が設けられている。なお、便宜上、図1に示す平均屈折率では、マスク層80の屈折率を考慮していない。また、図1では、第2電極72の平均屈折率および光強度を省略している。
【0029】
柱状部含有層30は、バッファー層20上に設けられている。柱状部含有層30は、基体10と第1半導体層40との間に設けられている。柱状部含有層30は、複数の柱状部32を有している。柱状部含有層30は、複数の柱状部32と、隣り合う柱状部32との間の空間2と、を含んで構成されている。柱状部32の材質は、例えば、第1導電型(例えばn型)のGaN(具体的にはSiがドープされたGaN)である。柱状部含有層30の平均屈折率は、例えば、バッファー層20の平均屈折率よりも低い。柱状部含有層30の平均屈折率は、積層方向のある位置において、誘電率εの柱状部32が充填率φで配置されているとすると、空間2の誘電率をεairとして、(ε×φ+εair(1−φ))の平方根として求めることができる。誘電率εは、柱状部32の第1半導体層40、活性層50、または、第2半導体層60の誘電率である。また、隣り合う柱状部30の間に、部材が設けられる場合は、空気の誘電率εairを該部材の誘電率と置き換えて、平均屈折率を求めることができる。
【0030】
柱状部32は、第1部分32aと、第2部分32bと、を有している。柱状部32の第1部分32aは、バッファー層20上に設けられている。第1部分32aの形状(積層方向からみた平面視における形状)は、例えば、円、多角形(例えば六角形)などである。図示の例では、積層方向において、第1部分32aの面積(積層方向からみた平面視における面積)は、変化していない(均一である)。第1部分32aの径(多角形の場合は、その多角形を内部に含む最小の円の径)は、例えば、nmオーダーであり、具体的には10nm以上500nm以下である。柱状部32は、例えば、ナノコラム、ナノワイヤー、ナノロッドとも呼ばれる。第1部分32aの高さ(積層方向の最大の大きさ)は、例えば、0.1μm以上2μm以下である。複数の第1部分32aは、互いに離間している。隣り合う第1部分32aの間隔は、例えば、5nm以上500nm以下である。
【0031】
柱状部32の第2部分32bは、第1部分32a上に設けられている。第2部分32bは、第1部分32aと第1半導体層40との間に設けられている。第2部分32bの積層方向からみた平面視における最大の面積(第2の面積)は、第1部分32aの積層方向からみた平面視における最大の面積(第1の面積)よりも大きい。第2部分32bの最大の径は、第1部分32aの最大の径よりも大きい。図示の例では、第2部分32bは、基体10から遠ざかるにつれて(第1部分32aから第1半導体層40に向かうにつれて)、径が大きくなるテーパー形状を有している。積層方向からみた平面視(以下、単に「平面視」ともいう)において、第2部分32bの形状は、例えば、第1部分32aの形状の相似形である。第2部分32bの高さは、例えば、第1部分32aの高さよりも小さい。
【0032】
柱状部32の第1部分32aは、第1層34を構成している。第1層34は、複数の第1部分32aと、空間2と、を含んで構成されている。柱状部32の第2部分32bは、第2層36を構成している。第2層36は、複数の第2部分32bと、空間2と、を含んで構成されている。第2層36は、第1層34と第1半導体層40との間に設けられている。柱状部含有層30は、第1層34と、第2層36と、を有している。第2層36の平均屈折率は、第1層34の平均屈折率よりも高く、かつ第1半導体層40の平均屈折率よりも低い。図示の例では、第2部分32bは、テーパー形状を有しているため、第2層36の平均屈折率は、基体10から遠ざかるにつれて高くなる。第1層34の平均屈折率は、バッファー層20の平均屈折率よりも低い。
【0033】
複数の柱状部32は、平面視において(積層方向からみて)、所定の方向に所定のピッチで配列されている。このような周期構造においては、ピッチと各部位の径および各部位の屈折率により決定されるフォトニックバンド端波長λにおいて光閉じ込め効果を得ることができる。発光層50において生じる光は波長λを含むため、フォトニック結晶の効果を発現することができる。
【0034】
第1半導体層40は、第2層36上に設けられている。第1半導体層40は、柱状部含有層30と発光層50との間に設けられている。第1半導体層40は、例えば、第1導電型と異なる第2導電型(例えばp型)のGaN層(具体的にはMgがドープされたGaN層)である。
【0035】
発光層50は、第1半導体層40上に設けられている。発光層50は、第1半導体層40と第2半導体層60との間に設けられている。発光層50は、電流が注入されることで光を発することが可能な層である。発光層50は、例えば、GaN層とInGaN層とから構成された量子井戸構造を有している。発光層50を構成するGaN層およびInGaN層の数は、特に限定されない。発光装置100は、発光層50において、積層方向の光強度が最も高くなるように設定される。これにより、発光装置100は、高い発光強度を有することができる。
【0036】
第2半導体層60は、発光層50上に設けられている。第2半導体層60は、例えば、第1導電型(例えばn型)のGaN層(具体的にはSiがドープされたGaN層)である。第1半導体層40の平均屈折率および第2半導体層60の平均屈折率は、例えば発光層50のInGaN層の平均屈折率よりも低い。半導体層40,60は、例えば、発光層50に光を閉じ込める(発光層50から光が漏れることを抑制する)機能を有することができる。半導体層40,60は、発光層50に光を閉じ込める(発光層50から光が漏れることを抑制する)機能を有するクラッド層である。
【0037】
発光装置100では、p型の第1半導体層40、不純物がドーピングされていない発光層50、およびn型の第2半導体層60により、pinダイオードが構成される。第1半導体層40および第2半導体層60の各々は、発光層50よりもバンドギャップが大きい層である。発光装置100では、第1電極70と第2電極72との間に、pinダイオードの順バイアス電圧を印加すると(電流を注入すると)、発光層50において電子と正孔との再結合が起こる。この再結合により発光が生じる。発光層50において発生した光は、半導体層40,60により積層方向と直交する方向に伝搬し、柱状部32によるフォトニック結晶の効果により、積層方向と直交する方向に伝搬して定在波を形成し、発光層50において利得を受けてレーザー発振する。そして、発光装置100は、+1次回折光および−1次回折光をレーザー光として、積層方向に(第2電極72側および基体10側に)出射する。
【0038】
なお、図示はしないが、基体10とバッファー層20との間に反射層が設けられていてもよい。該反射層は、例えば、DBR(Distributed Bragg Reflector)層である。該反射層によって、発光層50において発生した光を反射させることができ、発光装置100は、第2電極72側からのみ光を出射することができる。
【0039】
第1電極70は、第1半導体層40上に設けられている。第1電極70は、第1半導体層40と電気的に接続されている。第1電極70は、発光層50に電流を注入するための一方の電極である。第1電極70としては、例えば、第1半導体層40側から、Ni層、Au層の順序で積層したものなどを用いる。
【0040】
なお、図示はしないが、第1電極70と第1半導体層40との間には、第1コンタクト層が設けられていてもよい。第1コンタクト層は、第1電極70とオーミックコンタクトしていてもよい。第1コンタクト層は、p型のGaN層であってもよい。
【0041】
第2電極72は、第2半導体層60上に設けられている。第2電極72は、第2半導体層60と電気的に接続されている。第2電極72は、発光層50に電流を注入するための他方の電極である。第2電極72としては、例えば、ITO(Indium Tin Oxide)などの透明電極を用いる。これにより、発光層50において発光した光は、第2電極72を透過して出射されることができる。
【0042】
なお、図示はしないが、第2電極72と第2半導体層60との間には、第2コンタクト層が設けられていてもよい。第2コンタクト層は、第2電極72とオーミックコンタクトしていてもよい。第2コンタクト層は、n型のGaN層であってもよい。
【0043】
発光装置100は、例えば、以下の特徴を有する。
【0044】
発光装置100では、第2層36の平均屈折率は、第1層34の平均屈折率よりも高い。そのため、発光装置100では、例えば第2層36の平均屈折率が第1層34の平均屈折率よりも高いまたは等しい場合に比べて、光強度が基体10側に向けて急峻に低下することを抑制することができ、第1層34における光強度を高くすることができる。これにより、発光装置100では、第1層34による高いフォトニック結晶の効果を得ることができ、例えば、狭放射角で単一モードの光(狭放射角で特定の波長の光)を出射することができる。本発明に係る発光装置は、上記のように出射される光の波長を制御することができ、可視光線の他、例えば紫外線や赤外線を出射する発光装置にも応用することができる。
【0045】
例えば、図2に示すように、第2層36を有しない(第2部分32bを有しない)柱状部1032を含む発光装置1000では、発光装置100に比べて、柱状部1032における光強度が低く、柱状部1032によるフォトニック結晶の効果を得にくい。なお、発光装置1000は、基体1010と、バッファー層1020と、柱状部1032と、第1半導体層1040と、発光層1050と、第2半導体層1060と、第1電極1070と、第2電極1072と、を含む。
【0046】
さらに、発光装置100では、第2層36の平均屈折率は、第1半導体層40の平均屈折率よりも低い。そのため、発光装置100では、第2層36の平均屈折率が第1半導体層40の平均屈折率よりも高いまたは等しい場合に比べて、積層方向の光強度が発光層50で最も高くなるように設計しやくすく、高い発光強度を有することができる。
【0047】
さらに、発光装置100では、複数の柱状部32を有する柱状部含有層30を含む。そのため、発光装置100では、発光層50および半導体層40,60に発生する転位を少なくすることができ、高い品質を有することができるため、例えば高い効率特性を有することができる。
【0048】
例えば、基体10の格子定数とバッファー層20の格子定数は異なり、そのため、格子歪に伴う転位や点欠陥が存在し、複数の柱状部32が設けられていない場合は、発光層50および半導体層40,60にも転位が存在する場合がある。しかし、複数の柱状部32を設けることにより、図3に示すように、転位Tを柱状部32の外側に向かって逃がすことができ、一定の高さ以上の領域において、転位Tを少なくすることができる(例えば、転位Tをほぼ存在しないようにすることができる)。したがって、発光装置100では、発光層50および半導体層40,60に発生する転位を少なくすることができる。
【0049】
発光装置100では、柱状部32は、第1層34を構成し、平面視において第1の面積を有する第1部分32aと、第2層36を構成し、平面視において第1の面積よりも大きい第2の面積を有する第2部分32bと、を有する。そのため、発光装置100では、第2層36の平均屈折率を、第1層34の平均屈折率よりも高くすることができる。
【0050】
発光装置100では、第2部分32bは、基体10から遠ざかるにつれて径が大きくなるテーパー形状を有する。そのため、発光装置100では、第2層36の平均屈折率を、基体10から遠ざかるにつれて高くすることができる。
【0051】
2. 発光装置の製造方法
次に、本実施形態に係る発光装置100の製造方法について、図面を参照しながら説明する。図4および図5は、本実施形態に係る発光装置100の製造工程を模式的に示す断面図である。
【0052】
図4に示すように、基体10上にバッファー層20をエピタキシャル成長させる。エピタキシャル成長させる方法としては、例えば、MOCVD(Metal Organic Chemical Vapor Deposition)法、MBE(Molecular Beam Epitaxy)法などが挙げられる。
【0053】
次に、バッファー層20上にマスク層80を形成する。マスク層80は、例えば、Tiなどのメタル層、酸化シリコン層等の絶縁層、これらの積層膜などである。マスク層80は、MOCVD法やMBE法などによる成膜、ならびにフォトリソグラフィー技術およびエッチング技術によるパターニングによって形成される。
【0054】
図5に示すように、マスク層80をマスクとして、MOCVD法やMBE法などにより、バッファー層20上に第1部分32aおよび第2部分32bを、この順でエピタキシャル成長させる。これにより、柱状部32を形成することができる。第2部分32bは、例えば、第1部分32aよりも低い温度で成膜される。これにより、第2部分32bの径を第1部分32aの径よりも大きくすることができる。例えば、第2部分32bを成膜する際に、成膜温度を徐々に低くすることにより、テーパー形状を有する第2部分32bを形成することができる。
【0055】
なお、第2部分32bにp型の不純物(例えばMg)をドープすることにより、第1部分32aと第2部分32bとで成膜温度を変化させずに、第2部分32bの径を第1部分32aの径よりも大きくすることができる。ただし、第2部分32bにはn型の不純物もドープさせる。第2部分32bおいて、p型の不純物濃度は、n型の不純物濃度よりも低く、第2部分32bは、n型の導電型を有する。
【0056】
図1に示すように、MOCVD法やMBE法などにより、柱状部32上に、第1半導体層40、発光層50、第2半導体層60を、この順でエピタキシャル成長させる。発光層50および第2半導体層60は、例えば、フォトリソグラフィーおよびエッチングによって、第1領域12の上方に位置する第1半導体層40上に形成される。次に、第1半導体層40上に第1電極70を形成し、第2半導体層60上に第2電極72を形成する。電極70,72は、例えば、真空蒸着法などにより形成される。なお、第1電極70および第2電極72の形成順序は、特に限定されない。
【0057】
以上の工程により、発光装置100を製造することができる。
【0058】
3. 発光装置の変形例
3.1. 第1変形例
次に、本実施形態の第1変形例に係る発光像装置について、図面を参照しながら説明する。図6は、本実施形態の第1変形例に係る発光装置200を模式的に示す断面図である。さらに、図6では、発光装置200の第1領域12での積層方向の位置における平均屈折率および光強度を模式的に示している。
【0059】
以下、本実施形態の第1変形例に係る発光装置200において、上述した本実施形態に係る発光装置100の構成部材と同様の機能を有する部材については同一の符号を付し、その詳細な説明を省略する。このことは、以下に示す本実施形態の第2,第3,第4変形例に係る発光装置についても同様である。
【0060】
上述した発光装置100では、図1に示すように、柱状部32の第2部分32bは、基体10から遠ざかるにつれて径が大きくなるテーパー形状を有していた。これに対し、発光装置200では、図6に示すように、積層方向において、第2部分32bの断面積(積層方向と直交する方向における断面形状)は、変化していない(均一である)。そのため、発光装置200では、積層方向において、第2層36の平均屈折率は、変化しない。第2部分32bの断面積は、第1部分32aの断面積よりも大きい。
【0061】
発光装置200では、発光装置100と同様の効果を得ることができる。
【0062】
さらに、発光装置200では、積層方向において、第2部分32bの断面積は、変化しない。そのため、発光装置200では、積層方向において、第2層36の平均屈折率を変化しないようにすることができる。
【0063】
なお、便宜上、図6に示す平均屈折率では、マスク層80の屈折率を考慮してせず、第2電極72の平均屈折率および光強度を省略している。このことは、後述する図7においても同様である。
【0064】
3.2. 第2変形例
次に、本実施形態の第2変形例に係る発光像装置について、図面を参照しながら説明する。図7は、本実施形態の第2変形例に係る発光装置300を模式的に示す断面図である。さらに、図7では、発光装置300の第1領域12での積層方向の位置における平均屈折率および光強度を模式的に示している。
【0065】
上述した発光装置100では、図1に示すように、柱状部32の第1部分32aの断面積(径)と第2部分32bの断面積(径)とは、異なっていた。これに対し、発光装置300では、図7に示すように、第1部分32aの断面積(径)と第2部分32bの断面積(径)とは、同じである。
【0066】
発光装置300では、柱状部32の第1部分32aと第2部分32bとでは、ドープされている不純物の種類および濃度の少なくとも一方が異なっている。すなわち、第1部分32aと第2部分32bとでは、ドープされている不純物の種類が異なっていてもよいし、ドープされている不純物の濃度が異なっていてもよいし、ドープされている不純物の種類および濃度が異なっていてもよい。
【0067】
例えば、第1部分32aにはSiがドープされ、第2部分32bにはSiやAlがドープされている。これにより、第2部分32bは、第1部分32aよりも高い屈折率を有し、第2層36の平均屈折率を、第1層34の平均屈折率よりも高くすることができる。また、例えば、第2部分32bの不純物濃度は、第1部分32aの不純物濃度よりも低い。これにより、第2部分32bは、第1部分32aよりも高い屈折率を有し、第2層36の平均屈折率を、第1層34の平均屈折率よりも高くすることができる。発光装置300では、例えば、積層方向において、第2層36の平均屈折率は、変化しない。
【0068】
発光装置300では、発光装置100と同様の効果を得ることができる。
【0069】
さらに、発光装置300では、柱状部32の第1部分32aと第2部分32bとでは、ドープされている不純物の種類および濃度の少なくとも一方が異なっている。そのため、発光装置300では、例えば第1部分32aの断面積と第2部分32bの断面積とを異ならせることなく、第2層36の平均屈折率を、第1層34の平均屈折率よりも高くすることができる。
【0070】
なお、上述した発光装置100,200において、柱状部32の第1部分32aと第2部分32bとで、ドープされている不純物の種類および濃度の少なくとも一方を異ならせてもよい。
【0071】
3.3. 第3変形例
次に、本実施形態の第3変形例に係る発光像装置について、図面を参照しながら説明する。図8は、本実施形態の第3変形例に係る発光装置400を模式的に示す断面図である。
【0072】
上述した発光装置100では、図1に示すように、隣り合う柱状部32の間は、空間2であった。これに対し、発光装置400では、図8に示すように、隣り合う柱状部32の間には、柱状部32の屈折率よりも低い屈折率を有する低屈折率部材90が設けられている。低屈折率部材90は、柱状部32の側方に設けられている。
【0073】
低屈折率部材90は、隣り合う柱状部32に接して設けられている。低屈折率部材90は、隣り合う柱状部32の間の空間を充填している。低屈折率部材90の材質は、例えば、SiがドープされたGaNである。例えば、低屈折率部材90のドープされている不純物濃度は、柱状部32のドープされている不純物濃度よりも高い。これにより、低屈折率部材90は、柱状部32よりも低い屈折率を有することができる。
【0074】
低屈折率部材90は、柱状部32よりも熱伝導率の高い材料であってもよい。例えば、低屈折率部材90の材質が、SiがドープされたGaNである場合、低屈折率部材90のドープされている不純物濃度を、柱状部32のドープされている不純物濃度よりも高くすることにより、低屈折率部材90の熱伝導率を柱状部32の熱伝導率よりも高くすることができる。
【0075】
低屈折率部材90は、例えば、MOCVD法やMBE法などによるELO(Epitaxial Lateral Overgrowth)法によって形成される。
【0076】
発光装置400では、発光装置100と同様の効果を得ることができる。
【0077】
さらに、発光装置400では、隣り合う柱状部32の間には、柱状部32の屈折率よりも低い屈折率を有する低屈折率部材90が設けられている。そのため、発光装置400では、柱状部32によるフォトニック結晶の効果を得つつ、柱状部含有層30の平均屈折率を調整することができる。
【0078】
さらに、発光装置400では、低屈折率部材90は、柱状部32よりも熱伝導率の高い材料であってもよい。そのため、発光装置400では、発光層50において生じた熱を、効率的に基体10側へ放熱することができ、例えば、パルス発振のみならず大出力の連続発振(CW)が可能となる。
【0079】
なお、上述した発光装置100,200,300において、隣り合う柱状部32の間に低屈折率部材90を設けてもよい。発光装置300において低屈折率部材90を設ける場合は、低屈折率部材90の屈折率を、第1部分32aの屈折率および第2部分32bの屈折率よりも低くする。
【0080】
4. プロジェクター
次に、本実施形態に係るプロジェクターについて、図面を参照しながら説明する。図9は、本実施形態に係るプロジェクター900を模式的に示す図である。
【0081】
本発明に係るプロジェクターは、本発明に係る発光装置を含む。以下では、本発明に係る発光装置として発光装置100を含むプロジェクター900について説明する。
【0082】
プロジェクター900は、図9に示すように、赤色光、緑色光、青色光を出射する赤色光源100R、緑色光源100G、青色光源100Bを含む。赤色光源100R、緑色光源100G、および青色光源100Bの各々は、例えば、複数の発光装置100を積層方向と直交する平面にアレイ状に配置させ、複数の発光装置100において基体10を共通基板としたものである。光源100R,100G,100Bの各々を構成する発光装置100の数は、特に限定されない。なお、便宜上、図9では、プロジェクター900を構成する筐体を省略し、さらに光源100R,100G,100Bを簡略化している。
【0083】
プロジェクター900は、さらに、レンズアレイ902R,902G,902Bと、透過型の液晶ライトバルブ(光変調装置)904R,904G,904Bと、投射レンズ(投射装置)908と、を含む。
【0084】
光源100R,100G,100Bから出射された光は、各レンズアレイ902R,902G,902Bに入射する。光源100R,100G,100Bから出射された光は、レンズアレイ902R,902G,902Bによって、集光され、例えば重畳(一部重畳)されることができる。これにより、均一性よく液晶ライトバルブ904R,904G,904Bを照射することができる。
【0085】
各レンズアレイ902R,902G,902Bによって集光された光は、各液晶ライトバルブ904R,904G,904Bに入射する。各液晶ライトバルブ904R,904G,904Bは、入射した光をそれぞれ画像情報に応じて変調する。そして、投射レンズ908は、液晶ライトバルブ904R,904G,904Bによって形成された像(画像)を拡大してスクリーン(表示面)910に投射する。
【0086】
また、プロジェクター900は、液晶ライトバルブ904R,904G,904Bから出射された光を合成して投射レンズ908に導くクロスダイクロイックプリズム(色光合成手段)906を、含むことができる。
【0087】
各液晶ライトバルブ904R,904G,904Bによって変調された3つの色光は、クロスダイクロイックプリズム906に入射する。このプリズムは、4つの直角プリズムを貼り合わせて形成され、その内面に赤色光を反射する誘電体多層膜と青色光を反射する誘電体多層膜とが十字状に配置されている。これらの誘電体多層膜によって3つの色光が合成され、カラー画像を表す光が形成される。そして、合成された光は、投射光学系である投射レンズ908によりスクリーン910上に投射され、拡大された画像が表示される。
【0088】
なお、光源100R,100G,100Bは、光源100R,100G,100Bを構成する発光装置100を映像の画素として画像情報に応じて制御する(変調する)ことで、液晶ライトバルブ904R,904G,904Bを用いずに、直接的に映像を形成してもよい。そして、投射レンズ908は、光源100R,100G,100Bによって形成された映像を、拡大してスクリーン910に投射してもよい。
【0089】
また、上記の例では、光変調装置として透過型の液晶ライトバルブを用いたが、液晶以外のライトバルブを用いてもよいし、反射型のライトバルブを用いてもよい。このようなライトバルブとしては、例えば、反射型の液晶ライトバルブや、デジタルマイクロミラーデバイス(Digital Micromirror Device)が挙げられる。また、投射光学系の構成は、使用されるライトバルブの種類によって適宜変更される。
【0090】
また、光源100R,100G,100Bを、光源100R,100G,100Bからの光をスクリーン上で走査させることにより、表示面に所望の大きさの画像を表示させる画像形成装置である走査手段を有するような走査型の画像表示装置(プロジェクター)の光源装置にも適用することが可能である。
【0091】
本発明は、本願に記載の特徴や効果を有する範囲で一部の構成を省略したり、各実施形態や変形例を組み合わせたりしてもよい。
【0092】
本発明は、実施の形態で説明した構成と実質的に同一の構成(例えば、機能、方法及び結果が同一の構成、あるいは目的及び効果が同一の構成)を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成の本質的でない部分を置き換えた構成を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成と同一の作用効果を奏する構成又は同一の目的を達成することができる構成を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成に公知技術を付加した構成を含む。
【符号の説明】
【0093】
2…空間、10…基体、12…第1領域、14…第2領域、20…バッファー層、30…柱状部含有層、32…柱状部、32a…第1部分、32b…第2部分、34…第1層、36…第2層、40…第1半導体層、50…発光層、60…第2半導体層、70…第1電極、72…第2電極、80…マスク層、90…低屈折率部材、100…発光装置、100R,100G,100B…光源、200,300,400…発光装置、900…プロジェクター、902R,902G,902B…レンズアレイ、904R,904G,904B…液晶ライトバルブ、906…クロスダイクロイックプリズム、908…投射レンズ、910…スクリーン、1000…発光装置、1010…基体、1020…バッファー層、1032…柱状部、1040…第1半導体層、1050…発光層、1060…第2半導体層、1070…第1電極、1072…第2電極
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9