(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6921622
(24)【登録日】2021年7月30日
(45)【発行日】2021年8月18日
(54)【発明の名称】照明装置
(51)【国際特許分類】
F21S 41/176 20180101AFI20210805BHJP
F21S 41/141 20180101ALI20210805BHJP
F21S 41/16 20180101ALI20210805BHJP
F21S 41/40 20180101ALI20210805BHJP
F21S 41/675 20180101ALI20210805BHJP
F21V 9/30 20180101ALI20210805BHJP
F21W 102/135 20180101ALN20210805BHJP
F21Y 115/10 20160101ALN20210805BHJP
F21Y 115/30 20160101ALN20210805BHJP
【FI】
F21S41/176
F21S41/141
F21S41/16
F21S41/40
F21S41/675
F21V9/30
F21W102:135
F21Y115:10
F21Y115:30
【請求項の数】6
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2017-97491(P2017-97491)
(22)【出願日】2017年5月16日
(65)【公開番号】特開2018-195429(P2018-195429A)
(43)【公開日】2018年12月6日
【審査請求日】2020年4月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002303
【氏名又は名称】スタンレー電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】特許業務法人創成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 聡史
【審査官】
杉浦 貴之
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許出願公開第2016/0195232(US,A1)
【文献】
国際公開第2017/056468(WO,A1)
【文献】
特開2015−138735(JP,A)
【文献】
特開2015−230768(JP,A)
【文献】
特開2016−218367(JP,A)
【文献】
特開2013−089555(JP,A)
【文献】
特開2011−181381(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F21S 41/176
F21S 41/141
F21S 41/16
F21S 41/40
F21S 41/675
F21V 9/30
F21W 102/135
F21Y 115/10
F21Y 115/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1光源を備え、固定配光パターンを生成するための第1光学系と、
第2光源と、該第2光源からの光が入射するレンズ部と、該レンズ部を通過した光を所定の角度範囲に反射する回動ミラー部とからなり、可変配光パターンを生成するための第2光学系と、
前記第1光学系及び前記第2光学系からの光が入射したとき、波長の異なる光が出射される波長変換部と、
前記波長変換部から出射された光を集光して、前記固定配光パターンと前記可変配光パターンとを合成した合成配光パターンを投影する投影レンズと、を備え、
前記第1光学系は、前記第1光源からの光を反射する楕円曲面状の反射鏡と、該反射鏡で反射された光の一部を遮蔽して、前記波長変換部で前記固定配光パターンと前記可変配光パターンとの境界線を形成する遮光部と、をさらに備え、
前記反射鏡の内側の焦点位置に、前記第1光源と前記遮光部とが配置されることを特徴とする照明装置。
【請求項2】
請求項1に記載の照明装置において、
前記第1光学系は、前記第1光源からの光を平行光に変換するコリメートレンズと、該コリメートレンズを通過した光を集光する集光レンズと、をさらに備えることを特徴とする照明装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の照明装置において、
前記投影レンズは、複数のレンズで構成され、
前記可変配光パターンは、投影されるスクリーン上で前記固定配光パターンの上側に投影されることを特徴とする照明装置。
【請求項4】
請求項1〜3の何れか1項に記載の照明装置において、
前記第1光源からの光と前記第2光源からの光とを前記波長変換部上で部分的に重ねて、前記可変配光パターンと前記固定配光パターンの一部が重なった合成配光パターンを生成することを特徴とする照明装置。
【請求項5】
請求項1〜4の何れか1項に記載の照明装置において、
前記第1光源は、少なくとも2以上の発光ダイオードで構成され、
前記第2光源は、前記第1光源と波長が等しいレーザダイオードであることを特徴とする照明装置。
【請求項6】
請求項1〜5の何れか1項に記載の照明装置において、
前記第2光源の前記レンズ部は、入射した光を平行光に変換するコリメートレンズであることを特徴とする照明装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用灯具等に用いられる照明装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、レーザダイオードの光を傾倒可能なミラー部で反射させて走査し、さらに蛍光体パネルに照射して、配光パターンを投影する照明装置が普及し、車両用のヘッドライト等に利用されている。
【0003】
例えば、特許文献1の車両用前照灯は、互いに隣接して設けられた固定配光ユニットと、可変配光ユニットとで構成されている。固定配光ユニットは、車両用前照灯が形成する複数の配光パターンにおいて共通する部分(例えば、ロービーム/ハイビームを切り替える場合での水平線より下方の路面照射部分)を形成する。
【0004】
一方、可変配光ユニットは、車両用前照灯が形成する複数の配光パターンにおいて変化する部分、つまり、各配光パターンのうち固定配光ユニットが形成するパターン共通部分以外の部分を形成する。可変配光ユニットは、2つのレーザ装置、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)ミラー、蛍光体パネル等からなる光源モジュールと、投影レンズとを備えており、光源モジュールから出射された光が投影レンズによって車両前方へ投影されるように構成されている(段落0016〜0018,
図1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第5577138号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1のように、固定配光ユニットと可変配光ユニットとの2つの光学系がある場合、投影距離に応じて各配光パターンを重ね合わせることが難しいという問題が生じていた。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、効率よく配光パターンを生成することができる照明装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の照明装置は、第1光源を備え、固定配光パターンを生成するための第1光学系と、第2光源と、該第2光源からの光が入射するレンズ部と、該レンズ部を通過した光を所定の角度範囲に反射する回動ミラー部とからなり、可変配光パターンを生成するための第2光学系と、前記第1光学系及び前記第2光学系からの光が入射したとき、波長の異なる光が出射される波長変換部と、前記波長変換部から出射された光を集光して、前記固定配光パターンと前記可変配光パターンとを合成した合成配光パターンを投影する投影レンズと、を備えることを特徴とする。
【0009】
本発明の照明装置では、第1光学系で固定配光パターンが生成され、第2光学系で回動ミラー部により可変配光パターンが生成される。第1光学系及び第2光学系の光(例えば、青色光)は、それぞれ波長変換部に入射し、波長変換部上で1つの像が形成される。さらに、波長変換部で光の波長が変更され(例えば、白色光)、投影レンズにより合成配光パターンが投影される。
【0010】
各配光パターン用の光が波長変換部に照射された後には、1つユニットの1つの光軸で合成配光パターンが投影されるので、投影距離が変化しても各配光パターンの重なり具合が変化することがなく、効率よく合成配光パターンを生成することができる。
【0012】
この構成によれば、第1光学系では、第1光源からの光が楕円曲面状の反射鏡で反射される。また、反射鏡の内側の焦点位置に第1光源と遮光部とが配置されているので、反射鏡で反射された光は遮光部に集光され、一部の光が遮蔽されて波長変換部に入射する。このとき、遮光部は、固定配光パターンと可変配光パターンとの境界線を形成するので、明瞭な配光パターンを生成することができる。
【0013】
また、本発明の照明装置において、前記第1光学系は、前記第1光源からの光を平行光に変換するコリメートレンズと、該コリメートレンズを通過した光を集光する集光レンズと、をさらに備えることが好ましい。
【0014】
この構成によれば、第1光源からの光は、コリメートレンズにより平行光(ほぼ平行な光を含む)に変換された後、集光レンズで集光されて波長変換部に照射される。これにより、第1光源から出射された、固定配光パターンの元となる光が確実に波長変換部の所定位置に照射される。
【0015】
また、本発明の照明装置において、前記投影レンズは、複数のレンズで構成され、前記可変配光パターンは、投影されるスクリーン上で前記固定配光パターンの上側に投影されることが好ましい。
【0016】
この構成によれば、投影レンズとして複数のレンズを組み合わせることにより、収差を抑えたり、像を拡大したり、最終的な合成配光パターンを反転させたりすることができる。また、スクリーン上で可変配光パターンが固定配光パターンの上側に投影されるようにする。これにより、照明装置を配光可変ヘッドランプ(ADB:Adaptive Driving Beam)として用いたとき、可変配光パターンを対向車の位置等に応じて移動したり、マスクしたりすることができる。
【0017】
また、本発明の照明装置において、前記第1光源からの光と前記第2光源からの光とを前記波長変換部上で部分的に重ねて、前記可変配光パターンと前記固定配光パターンの一部が重なった合成配光パターンを生成することが好ましい。
【0018】
この構成によれば、固定配光パターンは、常にスクリーン上の同じ位置に現れ、可変配光パターンは、その位置や形状を変更することができる。第1光源からの光と第2光源からの光とを波長変換部上で部分的に重ねることで、可変配光パターンと固定配光パターンとを重ねることができる。両配光パターンを重ねて合成配光パターンとすることで、投影領域内に明るい領域(ホットゾーン)を生成することができる。
【0019】
また、本発明の照明装置において、前記第1光源は、少なくとも2以上の発光ダイオードで構成され、前記第2光源は、前記第1光源と波長が等しいレーザダイオードであることが好ましい。
【0020】
この構成によれば、第1光源を発光ダイオードとすることで、全ての光源をレーザダイオードで構成するより安価な照明装置とすることができる。また、少なくとも2以上の発光ダイオードを並べて使用することで、固定配光パターンを広角の配光とすることができる。
【0021】
さらに、第1光源の発光ダイオードの光と第2光源のレーザダイオードの光の波長を等しくすることで、固定配光パターンと可変配光パターンとの像の色ムラを抑えることができる。なお、波長が等しいとは、例えば、何れの光源も青色光(波長が約450nm)という程度の意味であり、1nmの精度で等しいことを意味するものではない。
【0022】
また、本発明の照明装置において、前記第2光源の前記レンズ部は、入射した光を平行光に変換するコリメートレンズであることが好ましい。
【0023】
この構成によれば、第2光源からの光は、コリメートレンズにより平行光(ほぼ平行な光を含む)に変換された後、回動ミラー部に入射する。これにより、第2光源から出射された、可変配光パターンの元となる光が確実に回動ミラー部に入射し、反射され、波長変換部の所定位置に照射される。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図2】第1光学系からの光と第2光学系からの光とが蛍光体プレートに入射した様子を示す図。
【
図4C】合成配光パターンの例(ホットゾーン有り)。
【発明を実施するための形態】
【0025】
図1は、本発明の実施形態に係る照明装置1の全体構成を示す図である。
【0026】
図1に示されるように、照明装置1は、光源10a、リフレクタ20、シェード30、レンズ40からなる第1光学系Aと、光源10b、レンズ60、光偏向器70からなる第2光学系Bと、蛍光体プレート80と、投影レンズ90とで構成されている。
【0027】
第1光学系Aは、プロジェクション方式の光学系であり、後述する固定配光パターン(水平方向パターン)を生成する。
【0028】
光源10a(本発明の「第1光源」に相当する)は、並列された3個の発光ダイオード(LED:Light Emitting Diode)で構成され、
図1においては、紙面奥の方向に発光ダイオードが並列されている。光源としてレーザダイオード(LD:Laser Diode)を用いてもよいが、レーザダイオードの数を減らすことにより、装置のコストダウンを図ることができる。
【0029】
発光ダイオードは、少なくとも2個以上を並列させて用いることが好ましい。これにより、最終的に生成される固定配光パターンを広角の配光とすることができる。なお、発光ダイオードの中心波長は約450nmであり、青色光を出力する。
【0030】
光源10aは、内面が反射部になっているリフレクタ20(本発明の「反射鏡」に相当する)の内側に配置されている。リフレクタ20は楕円曲面状であり、その内面にはアルミニウム膜が蒸着されている。より正確には、光源10aは、リフレクタ20の焦点位置に配置されているので、光源10aから出射された光は、リフレクタ20の内面で反射され、もう1つの焦点位置に収束する。なお、リフレクタは、完全な楕円曲面でなくてもよい。
【0031】
シェード30(本発明の「遮光部」に相当する)は、入射した光を遮蔽するとともに、固定配光パターン上端の境界線を形成する遮光板である。シェード30の光が入射する面には、アルミニウム膜が蒸着されている。また、シェード30は、リフレクタ20の焦点位置、かつ後述するコリメートレンズ40aの後側焦点に配置されている。リフレクタ20の内面で反射され、シェード30に入射した光の一部は、コリメートレンズ40aに入射する。
【0032】
レンズ40は、コリメートレンズ40aと集光レンズ40bとで構成されている。コリメートレンズ40aは、シェード30で反射された光が入射すると、その光を平行光に変換して集光レンズ40bに導光する。そして、集光レンズ40bに入射した光は、集光されて蛍光体プレート80に照射される。
【0033】
次に、第2光学系Bについて説明する。第2光学系Bは、後述する可変配光パターンを生成する。
【0034】
光源10b(本発明の「第2光源」に相当する)は、1個のレーザダイオード(LD:Laser Diode)で構成されている。レーザダイオードの中心波長は約450nmであり、青色光を出力することが好ましい。これは、第1光学系Aの光源10aにより生成される固定配光パターンとの像の差(色ムラ等)を低減させるためである。
【0035】
光源10bから出射された光は、レンズ60(本発明の「レンズ部」に相当する)に入射する。レンズ60はコリメートレンズであり、光源10bの光が入射すると、その光をほぼ平行な平行光に変更して光偏向器70に導光する。
【0036】
光偏向器70は、2次元的に傾倒可能なMEMSミラー(本発明の「回動ミラー部」に相当する)を備え、光源10bから出射され、レンズ60を通過した光を蛍光体プレート80の方向に反射させる。光偏向器70は、定位置のMEMSミラー中央部に光が入射するように、光軸上に配置される。
【0037】
このようなMEMSミラーを備えた光偏向器としては、例えば、特開2005−128147号公報や特許第4092283号公報に記載された公知の構成のミラーを適用することができる。
【0038】
次に、第1光学系Aの集光レンズ40bを通過した光と、第2光学系Bの光偏向器70のMEMSミラーで反射された光とが入射する蛍光体プレート80について説明する。
【0039】
蛍光体プレート80(本発明の「波長変換部」に相当する)は、サファイア基板上に一定の膜厚で蛍光体が塗布されたものを用いた。蛍光体は、光源10a,10bから出射された青色光が照射されることで励起され、青色光と補色の関係にある黄色光を発する蛍光材料である。このため、この蛍光体からは青色光と黄色光とが混色した白色光が出射される。
【0040】
蛍光体プレート80は、曲面状であってもよい。なお、本実施形態では、蛍光体として、Y
3Al
5O
12:Ce
3+の黄色蛍光体を用いた。
【0041】
次に、蛍光体プレート80から出射された光が入射する投影レンズ90について説明する。本実施形態の投影レンズ90は、4枚のレンズ90a〜90dで構成され、各レンズは、歪み等を抑えて配光パターンの解像度を向上させる役割がある。最も蛍光体プレート80に近いレンズ90aは、その後側焦点が蛍光体プレート80の位置となるように配置されている。
【0042】
投影レンズ90は4枚の構成に限られず、特に、蛍光体プレート80が曲面状であれば、より少ない数のレンズで配光パターンを投影することができる。
【0043】
投影レンズ90は、蛍光体プレート80からの光の収差を抑え、像を拡大しつつ前方へ反転投影する。最終的に仮想スクリーンS(本発明の「スクリーン」に相当する)に投影される配光パターンでは、固定配光パターンの上側に可変配光パターンが形成される(
図4参照)。従って、
図1に示されるように、第1光学系Aは、第2光学系Bの上方側に配置される。
【0044】
蛍光体プレート80からの光は、投影レンズ90に入射すると光軸が1つとなるので、投影距離に応じて各配光パターンの重なり具合が変化することがなく、効率よく合成配光パターンを生成することができる。また、照明装置1は、1つのユニットで全領域の配光パターンを生成することができるので、装置を小型化することができる。
【0045】
図2は、第1光学系Aからの光と、第2光学系Bからの光が入射した状態の蛍光体プレート80の様子を示している。蛍光体プレート80の上側のパターンP
A’は、第1光学系Aからの光の照射部分であり、最終的に固定配光パターンとなる。また、蛍光体プレート80の下側のパターンP
B’は、第2光学系Bからの光の照射部分であり、最終的に可変配光パターンとなる部分である。
【0046】
なお、パターンP
A’とパターンP
B’との境界線Lは、上述した第1光学系Aのシェード30により作られる。
【0047】
次に、
図3に、照明装置1の制御構成のブロック図を示す。
【0048】
図3に示されるように、照明装置1は、第1光学系Aの固定配光ユニット2、第2光学系Bの可変配光ユニット3に加え、前方センサ4と、記憶部5と、通信部6と、制御部7とを備えている。
【0049】
前方センサ4は、車両前方をセンシングして周辺情報を入手する。ここでいう周辺情報とは、歩行者、自転車、対向車、先行車及び障害物等の存在や路面状況のことである。このような前方センサ4としては、カメラ、レーダ、音響センサ等の公知のセンサを用いることができる。
【0050】
記憶部5は、交通信号や外部照明,道路標識等の位置情報に加え、道路に関する2次元及び3次元の幾何情報を含む地図情報を記憶している。また、通信部6は、車両外部との通信により自車位置情報や時刻,天候等の環境情報を入手する。なお、これら記憶部5及び通信部6に係る各種情報は、車両に設けられた機器から入手するようにしてもよい。
【0051】
制御部7は、上記各部に接続され、演算処理部7aと駆動制御部7bとを備えている。このうち、演算処理部7aは、前方センサ4、記憶部5及び通信部6から各種情報を受信して、形成すべき最適な配光パターンを決定する。そして、この配光パターンの形状や光度分布についての配光パターン情報を駆動制御部7bへ出力する。このとき、各部からの各種情報は逐次更新され、配光パターンの決定及び配光パターン情報の出力は所定の時間間隔で繰り返し行われる。
【0052】
一方、駆動制御部7bは、固定配光ユニット2の発光ダイオード(光源10a)の点灯制御を行う。また、演算処理部7aから入力された配光パターン情報に基づいてレーザダイオード(光源10b)及びMEMSミラー(光偏向器70)を制御する。具体的には、駆動制御部7bは、レーザダイオードから出射されるレーザ光の点灯強度及び点灯時間を制御するとともに、MEMSミラーの傾倒を制御する。
【0053】
続いて、照明装置1における配光パターンの形成プロセスについて説明する。まず、上述のように、演算処理部7aが各種情報に基づいて最適な配光パターンを決定すると、駆動制御部7bは、この配光パターンについての配光パターン情報に基づいてレーザダイオード及びMEMSミラーを制御する。駆動制御部7bは、固定配光ユニット2を点灯させ、上記配光パターンの水平方向パターン(
図2のパターンP
A’)を蛍光体プレート80上に形成させる。
【0054】
また、駆動制御部7bは、レーザダイオードから出射されてMEMSミラーで反射された光を、形成すべきパターン変化部分に対応した所定の走査パターンで蛍光体プレート80上を走査させる。
【0055】
なお、走査態様としては、パターン変化部分の形状をなぞるように光を走査させる、いわゆるベクトルスキャンであってもよいし、パターン変化部分外となる部分も含めて蛍光体プレート80全面に光を走査させる、いわゆるラスタースキャンであってもよい。或いは、両方式を組み合わせたものでもよい。ただし、パターン変化部分内の特定箇所だけを強く照射したい場合には、ベクトルスキャンの方が効率的である。
【0056】
次に、
図4A〜4Cを参照して、仮想スクリーンS上に形成される合成配光パターンについて説明する。
【0057】
合成配光パターンは、固定配光パターンと可変配光パターンとを合成したものであり、照明装置1が車両用灯具として用いられる場合には、主にロービーム用の配光として利用される。以下では、照明装置1を車両用灯具として用いた場合の例を説明する。
【0058】
まず、
図4Aは、通行帯が左側の場合の合成配光パターンの例を示している。仮想スクリーンSの下方には、固定配光パターンP
Aが投影され、固定配光パターンP
Aの上方に可変配光パターンP
Bが投影される。これは、蛍光体プレート80から出射された光は、投影レンズ90を通過することにより、上下が反転するためである。
【0059】
図4Aに示されるように、可変配光パターンP
Bは左側が高く、横方向の中心で高さが切替わり、右側が低くなっている。この形状はZビーム又はZラインと呼ばれ、各国の道路法規に対応させた典型的な配光パターンである。
【0060】
可変配光パターンP
Bは、第2光学系Bの光源10bのオン・オフやMEMSミラーを制御することで、車両前方の一部の領域を非照射とするマスク部を瞬時かつ多様に形成することができる。例えば、前方センサ4で検知した歩行者、先行車又は対向車が存在している領域をマスクすることで、歩行者、先行車又は対向車に対するグレアを抑制することができる。
【0061】
次に、
図4Bは、通行帯が右側の場合の合成配光パターンの例を示している。仮想スクリーンSの下方に固定配光パターンP
A、上方に可変配光パターンP
Bが照射される点は同じであるが、可変配光パターンP
Bは右側が高く、横方向の中心で高さが切替わり、左側が低くなっている。
図4Aに示した合成配光パターンから、可変配光パターンP
Bのみを変更することで、簡単に
図4Bに示す合成配光パターンに切替えることができる。
【0062】
次に、
図4Cは、固定配光パターンP
Aと可変配光パターンP
Bとを重ねた合成配光パターンの例を示している。ここでは、可変配光パターンP
Bの下辺中央付近を下向きに凸形状とすることで、可変配光パターンP
Bの一部を固定配光パターンP
Aに重ねている。
【0063】
配光パターンが重なった部分は、仮想スクリーンSに強い白色光が照射されるホットゾーンHとなる。ホットゾーンHの領域を拡大、縮小することで、走行環境に応じた配光パターンやユーザの好みに合わせた配光パターンを形成することができる。
【0064】
以上のように、照明装置1では、第1光学系Aにより固定配光パターンP
Aの元となる像が生成され、第2光学系Bにより可変配光パターンP
Bの元となる像が生成される。これらの像は、蛍光体プレート80上で合成されて1つの像となり、波長が変換されて投影レンズ90に入射する。そして、投影レンズ90により像が拡大され、上下が反転され、合成配光パターンが仮想スクリーンS上に投影される。
【0065】
蛍光体プレート80から出射された光は、1つの光軸を有する光学系で投影されるので、投影距離により固定配光パターンP
Aと可変配光パターンP
Bとがずれてしまうことを防止することができる。
【0066】
最後に、
図5A、
図5Bを参照して、照明装置1の変形例について説明する。
なお、
図1と同じ構成については同じ符号を付し、説明を省略する。
【0067】
まず、
図5Aに、第1光学系A1と第2光学系Bとで構成されるリフレクタ方式の照明装置100の例を示す。第1光学系A1には、光源10aとリフレクタ20とがあるが、コリメートレンズや集光レンズはない。このため、光源10aやリフレクタ20の配置を調整したり、蛍光体プレート80を大きくしたりする必要があるものの、このような簡易な構成でも固定配光パターンの元となる像を生成することができる。
【0068】
次に、
図5Bに、第1光学系A2と第2光学系Bとで構成されるダイレクトプロジェクション方式の照明装置120の例を示す。第1光学系A2には、光源10aとレンズ40とがあるが、リフレクタがない。このため、光源10aからの光がコリメートレンズ40a、集光レンズ40bの順に通過して、蛍光体プレート80に照射される。
【0069】
上記の照明装置100,120は、共にシェードがないので、第1光学系A1,A2による固定配光パターンと、第2光学系Bによる可変配光パターンとの明瞭な境界線を作り出すことはできないが、少ない部材により合成配光パターンを生成することができる。
【0070】
このように、本実施形態の照明装置1,100,120は、主に車両用前照灯に適用することができる。照明装置1,100,120を、一般照明に用いてもよい。また、上記の実施形態は一例であり、これ以外にも様々な変形例が考えられる。
【0071】
例えば、光源は青色光に限られず、紫外光等であってもよい。なお、光源の光の波長に応じて蛍光体プレートの蛍光体の種類を変えて、白色光が出射されるように工夫する必要がある。
【0072】
また、上述の蛍光体プレート80は、光が入射面から入射したとき、入射面の反対側の出射面から波長の異なる光を出射する透過型の蛍光体プレートであった。しかし、透過型に限られず、入射面側に反射膜が形成され、同じ面から反射光を出射させる反射型の蛍光体プレートを使用することもできる。
【符号の説明】
【0073】
1,100,120…照明装置、10a…光源(第1光源),10b…光源(第2光源)、20…リフレクタ(反射鏡)、30…シェード(遮光部)、40…レンズ,60…レンズ(レンズ部)、70…光偏向器(回動ミラー部)、80…蛍光体プレート(波長変換部)、90…投影レンズ。