特許第6921997号(P6921997)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6921997ウェアラブル注射器のモジュラ駆動トレイン
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6921997
(24)【登録日】2021年7月30日
(45)【発行日】2021年8月18日
(54)【発明の名称】ウェアラブル注射器のモジュラ駆動トレイン
(51)【国際特許分類】
   A61M 5/315 20060101AFI20210805BHJP
   A61M 5/142 20060101ALI20210805BHJP
【FI】
   A61M5/315 516
   A61M5/142 522
【請求項の数】20
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2019-566118(P2019-566118)
(86)(22)【出願日】2018年5月25日
(65)【公表番号】特表2020-521579(P2020-521579A)
(43)【公表日】2020年7月27日
(86)【国際出願番号】US2018034597
(87)【国際公開番号】WO2018222521
(87)【国際公開日】20181206
【審査請求日】2020年1月24日
(31)【優先権主張番号】62/512,505
(32)【優先日】2017年5月30日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】518123372
【氏名又は名称】ウェスト ファーマ サービシーズ イスラエル リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001357
【氏名又は名称】特許業務法人つばさ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】バルエル ヨッシ
(72)【発明者】
【氏名】イーガル ギル
(72)【発明者】
【氏名】フィルマン リューベン ワイ
【審査官】 上石 大
(56)【参考文献】
【文献】 欧州特許出願公開第02799740(EP,A2)
【文献】 米国特許出願公開第2013/0304021(US,A1)
【文献】 特表2012−516738(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2004/0000818(US,A1)
【文献】 特表2015−536162(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 5/315
A61M 5/142
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
カートリッジを内部に収め、前記カートリッジが一端でピストンにより封止されたウェアラブル注射器のモジュラ駆動トレインであって、
前記注射器の内部に据付可能なシャーシと、
前記シャーシの内部に取り付けられた入れ子式の駆動アセンブリ
を備え、
前記入れ子式の駆動アセンブリは、
前記シャーシに対して回転可能な第1軸と、
前記第1軸と入れ子式に接続され、前記第1軸に対して軸方向に移動可能であり、前記第1軸の回転により退避コンフィグレーションから繰出コンフィグレーションに前記軸方向に駆動されて、前記ピストンと係合し前記ピストンを前記カートリッジの内部で前進させるように構成され、前記シャーシに対して回転可能に固定された第2軸と、
を有し
前記シャーシは、ベアリングと、前記シャーシの後端から前記シャーシの内部へ軸方向前方に突出する、弾性的に拡張可能なカラーと、のうち一方を備え、さらに、前記第1軸は、前記ベアリングと、前記第1軸の後端から軸方向後方に突出する前記カラーと、のうち他方を備え、
前記カラーは、前記ベアリングの干渉要素を越えて弾性的に係合可能であり、
前記ベアリングとの前記カラーの係合により、前記第1軸が前記シャーシに対して前記軸方向に固定され、前記ベアリングを中心とした前記第1軸の回転が許容されるように構成されている
モジュラ駆動トレイン。
【請求項2】
前記ベアリングが、ほぼロッド状のコアを備え、前記ベアリングの前記干渉要素が、前記ロッド状のコアに、少なくとも1つの径方向外方に突出するタブを備える、
請求項1に記載のモジュラ駆動トレイン。
【請求項3】
前記カラーが、実質的に円筒状である、
請求項2に記載のモジュラ駆動トレイン。
【請求項4】
前記カラーが、角度を空けて配置された、径方向に柔軟性を有する複数の弓状部材を備える、
請求項3に記載のモジュラ駆動トレイン。
【請求項5】
前記ベアリングが、ほぼロッド状であるとともに、実質的に平坦な前端を画成し、前記カラーが、実質的に円筒状であるとともに、閉塞端と開放端とを備え、前記閉塞端が前記ベアリングの前記平坦な前端の方向に向く凸状の表面を画成し、前記カラーの前記閉塞端の前記凸状の表面の頂部が、前記カラーが前記ベアリングに嵌合した状態で、前記ベアリングの前記実質的に平坦な前端に接触して、前記カラーと前記ベアリングとの間の接触を軽減し、もって、回転摩擦を低減させるように構成された、
請求項1に記載のモジュラ駆動トレイン。
【請求項6】
前記カラーが、実質的に円筒状であるとともに、実質的に平坦な閉塞端と開放端とを備え、前記ベアリングが、ほぼロッド状であるとともに、前記カラーの前記平坦な閉塞端の方向に向く凸状の端面を画成し、前記ベアリングの前記凸状の端面の頂部が、前記カラーが前記ベアリングに嵌合した状態で、前記カラーの前記実質的に平坦な閉塞端に接触して、前記カラーと前記ベアリングとの間の接触を軽減し、もって、回転摩擦を低減させるように構成された、
請求項1に記載のモジュラ駆動トレイン。
【請求項7】
前記シャーシが、第1スリーブを備え、前記ベアリングが、前記第1スリーブの後端から前記第1スリーブの内部に軸方向前方に突出し、前記入れ子式の駆動アセンブリが、前記第1スリーブにスライド可能に受容される、
請求項1に記載のモジュラ駆動トレイン。
【請求項8】
前記第2軸が、前記第1スリーブに対して回転可能に固定された、
請求項7に記載のモジュラ駆動トレイン。
【請求項9】
前記入れ子式の駆動アセンブリの前記第1軸を回転させるアクチュエータをさらに備え、
前記シャーシが、第2スリーブをさらに備え、前記アクチュエータが、前記第2スリーブにスライド可能に受容される、
請求項7に記載のモジュラ駆動トレイン。
【請求項10】
前記第2スリーブおよび前記アクチュエータが、前記第2スリーブに前記アクチュエータをスライド式に取り付けおよび係止する、相補的なスナップ式の接続要素を備える、
請求項9に記載のモジュラ駆動トレイン。
【請求項11】
前記アクチュエータを入れ子式の駆動アセンブリの前記第1軸と接続する変速ギアをさらに備え、
前記シャーシが、第3スリーブをさらに備え、前記変速ギアが、前記第3スリーブに取り付けられる、
請求項9に記載のモジュラ駆動トレイン。
【請求項12】
前記入れ子式の駆動アセンブリが、前記第1軸を前記第2軸と接続する第3軸をさらに備え、前記第3軸が、前記第1軸にネジ式に接続されるとともに、前記第2軸にネジ式に接続され、前記第3軸が、前記第1軸に対して回転可能であるとともに、軸方向に移動可能であり、前記第2軸が、前記第1軸および前記第3軸に対して軸方向に移動可能であり、前記入れ子式の駆動アセンブリが、前記シャーシに対して回転方向に固定されるとともに、軸方向にスライド可能であり、さらに、前記第2軸に対して回転方向に固定されるとともに、軸方向にスライド可能な回転防止スリーブをさらに備える、
請求項1に記載のモジュラ駆動トレイン。
【請求項13】
カートリッジを内部に収め、前記カートリッジが一端でピストンにより封止されたウェアラブル注射器のモジュラ駆動トレインであって、
前記駆動トレインは、入れ子式の駆動アセンブリと、アクチュエータと、シャーシと、を備え、
前記入れ子式の駆動アセンブリは、
回転可能な第1軸と、
前記第1軸と入れ子式に接続され、前記第1軸に対して軸方向に移動可能な第2軸であって、前記第1軸の回転により退避コンフィグレーションから繰出コンフィグレーションへ軸方向に駆動されて、前記ピストンと係合しおよび前記ピストンを前記カートリッジの内部で前進させる、回転可能に固定された第2軸と、を備え、
前記アクチュエータは、前記入れ子式の駆動アセンブリの前記第1軸を回転させるように構成され、
前記シャーシは、前記注射器の内部に据付可能であり、
第1スリーブと、
前記第1スリーブに対してほぼ平行な第2スリーブと、を備え、
前記入れ子式の駆動アセンブリが、前記第1スリーブにスライド可能に受容されるとともに、前記第1軸が、前記第1スリーブに対して軸方向に固定され、
前記アクチュエータが、前記第2スリーブにスライド可能に受容される、モジュラ駆動トレイン。
【請求項14】
前記アクチュエータを前記入れ子式の駆動アセンブリの前記第1軸と接続する変速ギアをさらに備え、前記シャーシが、前記第1スリーブおよび前記第2スリーブを接続する第3スリーブをさらに備え、前記変速ギアが、前記第3スリーブに取り付けられた、
請求項13に記載のモジュラ駆動トレイン。
【請求項15】
前記第1軸が、入れ子式のアセンブリ回転ギアを備え、前記第1スリーブが、隣接する開口を備え、前記変速ギアが、前記開口を介して前記入れ子式のアセンブリ回転ギアに係合する、
請求項14に記載のモジュラ駆動トレイン。
【請求項16】
前記第2軸が、開いた前端および開いた後端を画成し、前記アクチュエータが、前記開いた後端に隣接して配置されたアクチュエータギアを備え、前記アクチュエータギアが、前記変速ギアと係合する、
請求項15に記載のモジュラ駆動トレイン。
【請求項17】
前記第2スリーブおよび前記アクチュエータが、前記第2スリーブに前記アクチュエータをスライド式に取り付けおよび係止する、相補的なスナップ式の接続要素を備える、
請求項13に記載のモジュラ駆動トレイン。
【請求項18】
前記第1スリーブが、ベアリングと、前記第1スリーブの閉じた後端から前記第1スリーブの内部に軸方向前方に突出する、弾性的に拡張可能なカラーと、のうち一方を備え、前記第1軸が、前記ベアリングと、前記第1軸の後端から軸方向後方に突出する、前記弾性的に拡張可能なカラーと、のうち他方を備え、前記カラーが、前記ベアリングの干渉要素を越えて弾性的に係合可能に構成され、前記ベアリングとの前記カラーの係合により、前記第1軸が前記第1スリーブに対して軸方向に固定され、前記ベアリングを中心とした前記第1軸の回転が許容される、
請求項13に記載のモジュラ駆動トレイン。
【請求項19】
前記ベアリングが、ほぼロッド状のコアを備え、前記ベアリングの前記干渉要素が、前記ロッド状のコアに、径方向外方に突出する少なくとも1つのタブを備える、
請求項18に記載のモジュラ駆動トレイン。
【請求項20】
前記ベアリングが、ほぼロッド状であるとともに、実質的に平坦な前端を画成し、前記カラーが、実質的に平坦であるとともに、閉塞端と開放端とを備え、前記閉塞端が、前記ベアリングの前記平坦な前端の方向に向く凸状の表面を画成し、前記カラーの前記閉塞端の前記凸状の表面の頂部が、前記カラーが前記ベアリングと係合させられた状態で、前記ベアリングの前記実質的に平坦な前端に接触して、前記カラーと前記ベアリングとの間の接触を軽減し、もって、回転摩擦を低減させるように構成された、
請求項18に記載のモジュラ駆動トレイン。
【発明の詳細な説明】
【関連出願】
【0001】
本願は、2017年5月30日付けで提出された米国仮特許出願第62/512505号(発明の名称「モジュラ駆動トレインインストレーション−TSA反転を許容するためのベアリングスナップ」)に基づく優先権を主張し、その全体的な内容は、参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
本開示は、概して、モジュラ駆動トレインに関し、より具体的には、ウェアラブル注射器に据付可能なモジュラ駆動トレインに関する。
【0003】
ウェアラブル注射器は、複雑な医療装置であり、ウェアラブル注射器に組み付けられた多数の相互に連結された操作要素を備える。典型的には、例えば、注射器の内部のリザーバから使用者へ注射針またはカニューレを介して物質を駆動しおよび投与する際に使用される注射器の駆動トレインは、複数の互いに動作接続された複合部分を備える。よく知られたように、標準以下の装置の製造および納入の最小化を目的として採用される品質管理手順のコストだけでなく、操作要素およびそれらの組み立てにかかる費用もまた、消費者に対する医療装置の費用に反映する。
【0004】
よって、要素の費用を最小化し、装置の組み立ての容易さを最大化することが望まれる。複数の可動モジュールから装置を構築することは、欠陥のある要素/モジュールを品質管理の一環として交換することの簡単さだけでなく、組み立て(装置への組み付けに先立って個々のモジュールを組み立てることによる)の簡単さのいずれにおける助けともなり得る。さらに、モジュールをポリマー要素から構成することで、費用をさらに削減可能である。
【0005】
従って、注射器に据付可能であり、少なくとも一部をポリマー要素から構成することが可能なモジュラ式の駆動トレインアセンブリを製造ことに利点がある。
【発明の概要】
【0006】
簡潔にいえば、本開示の一形態は、カートリッジを内部に収め、このカートリッジが一端でピストンにより封止されたウェアラブル注射器のモジュラ駆動トレインに関する。駆動トレインは、注射器の内部に選択的に据付可能なシャーシと、シャーシの内部に取り付けられた入れ子式の駆動アセンブリと、を備える。入れ子式の駆動アセンブリは、シャーシに対して回転可能な第1軸と、第1軸と入れ子式に接続され、第1軸に対して軸方向に移動可能な第2軸と、を備える。第1軸の回転により、第2軸が、退避コンフィグレーションから繰出コンフィグレーションに軸方向に駆動されて、ピストンと係合しおよびピストンをカートリッジの内部で前進させる。第2軸は、シャーシに対して回転可能に固定される。シャーシは、ベアリングと、シャーシの後端からシャーシの内部へ軸方向前方に突出する、弾性的に拡張可能なカラーと、のうち一方を備え、さらに、第1軸は、ベアリングと、第1軸の後端から軸方向後方に突出する、弾性的に拡張可能なカラーと、のうち他方を備える。カラーは、ベアリングの干渉要素を越えて弾性的に係合可能であり、ベアリングとのカラーの係合により、第1軸がシャーシに対して軸方向に固定され、ベアリングを中心とした第1軸の回転が許容される。
【0007】
本開示の他の形態は、カートリッジを内部に収め、カートリッジが一端でピストンにより封止されたウェアラブル注射器のモジュラ駆動トレインに関する。駆動トレインは、入れ子式の駆動アセンブリと、アクチュエータと、シャーシと、を備える。入れ子式の駆動アセンブリは、回転可能な第1軸と、第1軸と入れ子式に接続され、第1軸に対して軸方向に移動可能な第2軸と、を備える。第1軸の回転により、第2軸が、退避コンフィグレーションから繰出コンフィグレーションに軸方向に駆動されて、ピストンと係合しおよびピストンをカートリッジの内部で前進させる。第2軸は、回転可能に固定される。アクチュエータにより、入れ子式の駆動アセンブリの第1軸が回転させられる。シャーシは、注射器の内部に選択的に据付可能である。シャーシは、第1スリーブと、第1スリーブに対してほぼ平行な第2スリーブと、を備える。入れ子式の駆動アセンブリは、第1スリーブにスライド可能に受容され、第1軸は、第1スリーブに対して軸方向に固定される。アクチュエータは、第2スリーブにスライド可能に受容される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
本開示の幾つかの態様に係る以下の詳細な説明は、添付の図面を参照しながら読むことで、より充分に理解される。しかし、本開示について、これが図示の正確な構成および手段に限定されるものではないことが理解されるべきである。
【0009】
図1図1は、本開示の一実施形態に係るモジュラ駆動トレインが据え付けられたウェアラブル注射器の部分斜視図である。
図2図2は、図1のモジュラ駆動トレインの部分分解斜視図である。
図3図3は、図1のモジュラ駆動トレインの、図1に示す断面線3−3に沿った部分断面図であり、入れ子式の駆動アセンブリが操出コンフィグレーションにある。
図4A図4Aは、図1のモジュラ駆動トレインの第1スリーブの、図1に示す断面線4−4に沿った断面図であり、入れ子式の駆動アセンブリが退避コンフィグレーションにある。
図4B図4Bは、図1のモジュラ駆動トレインの代替的な構成を有する第1スリーブの、図1に示す断面線4−4に沿った断面図であり、代替的な構成を有する入れ子式の駆動アセンブリが退避コンフィグレーションにある。
図5図5は、図1のモジュラ駆動トレインの、図1に示す断面線5−5に沿った断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下の説明では、便宜上の理由のみにより、限定を目的とせずに幾つかの用語法が用いられる。「より低い」、「底部」、「より高い」および「上部」といった単語は、参照されるべき図面での方向を示す。「内方に」、「外方に」、「上方に」および「下方に」といった単語は、本開示に従い、モジュラ駆動トレインの幾何学的な中心およびその指定された部分に向けたおよび中心等から離れる方向を夫々示す。特に言及されない限り、「a」、「an」および「the」といった用語は、単一の要素に限定されず、むしろ、「少なくとも1つ」を意味するものとして理解されるべきである。用語法は、以上で示した単語以外に、その派生語および類義の言葉を含む。
【0011】
本開示に係る要素の寸法または特徴について述べる際に本明細書で使用される「約」、「およそ」、「概して」、「実質的に」等の用語は、開示される寸法/特徴が厳格な境界またはパラメータではなく、機能的な近似性を損なわない僅かな差異を排斥するものではないことを示すものと理解されるべきである。最低限でも、数値的なパラメータを含む記載は、本技術分野で受け入れられている数学的または工業的な原理(例えば、四捨五入、計測または他のシステム上の誤差、製作公差等)を用いて少なくとも有効数字の変化を伴わない差異を包含する。
【0012】
図面を詳細に参照すると、同様の要素は、全体を通して同様の符号により示され、図1から図5は、符号10により全体が示された、本開示の一実施形態に係るモジュラ駆動トレインを示す。概して、モジュラ駆動トレイン10は、例えば、限定を伴うものではなく、ウェアラブル医薬注射器等のウェアラブル注射器(パッチ注射器)50に用いられる。本技術分野の当業者により理解されるように、そして、図1に最もよく示されるように、ウェアラブル注射器は、概して、物質が収容されたカートリッジまたはリザーバ54を収めるハウジング52を備え、カートリッジ43は、ピストン54aにより一端で封止される(図3)。カートリッジ54は、注射針(図示せず)に対して流体接続可能であり、カートリッジ54に収まる物質を、使用者に対してこの針を介して投与することが可能である。
【0013】
図2に示されるように、モジュラ駆動トレイン10は、注射器50のハウジング52の内部に選択的に据付可能なシャーシ12、アクチュエータ14、入れ子式の駆動アセンブリ16および変速ギア18を備える。一実施形態では、シャーシ12は、ハウジング12の内部に取外可能に据え付けることが可能である。これに代え、シャーシ12は、例えば、限定を伴うものではなく、接着または溶接といった方法によりハウジング12の内部に恒久的に、つまり、取外不能に据え付けることも可能である。アクチュエータ14および入れ子式の駆動アセンブリ16は、(後により詳細に述べられるように)シャーシ12の内部に取り付けられる。図示の実施形態では、アクチュエータ14は、モータの形態であるが、本開示は、そのように限定されるものではない。例えば、アクチュエータ14は、バネ式のアクチュエータ、ガス式のアクチュエータ、化学作動式のアクチュエータ、電気式のアクチュエータまたは電気化学式のアクチュエータであってもよいし、これらの組み合わせによるもの等であってもよい。アクチュエータ14は、入れ子式の駆動アセンブリ16を繰り出させ、入れ子式の駆動アセンブリ16に対し、(後により詳細に述べられるように)変速ギア18を介して接続される。
【0014】
シャーシ12は、第1スリーブ26と、第1スリーブに対してほぼ平行な第2スリーブ28と、を備え、それらの間に第3スリーブ30が介在する。入れ子式の駆動アセンブリ16は、第1スリーブ26の内部にスライド可能に受容され、アクチュエータ14は、第2スリーブ28の内部にスライド可能に受容され、変速ギア18は、第3スリーブ30に取り付けられる。第2スリーブ28は、寸法および形状がアクチュエータ14とほぼ合致する。図示の実施形態では、アクチュエータ14および第2スリーブ28は、相補的な、つまり、相互的なスナップ式の接続要素14a、28aを夫々備え、アクチュエータ14を第2スリーブ28にスライド式に取り付け、固定することが可能である。図2に最もよく示されるように、第2スリーブ28のスナップ要素28aは、第2スリーブ28の径方向中心に向けて第2スリーブ28の側壁から先端側が内方に突出する柔軟部材の形態である。柔軟部材28aは、アクチュエータ14の挿入方向に沿って先端側が内方に近付く。アクチュエータ14のスナップ要素14aは、径方向リップまたは肩部の形態である。よって、アクチュエータ14が第2スリーブ28に挿入されると、径方向リップ14aが柔軟部材28aを外方に弾性的に付勢し、そして、柔軟部材28aを過ぎると、柔軟部材28aがその元の向きにスナップ式に復帰して、径方向リップ14aと突き当たり、アクチュエータ14を第2スリーブ28の内部に固定し、つまり、挿入方向とは反対の方向におけるアクチュエータ14の退避を阻止する。しかし、本技術分野における当業者により理解されるように、アクチュエータ14は、現に知られているかまたは後に知られるようになる他の結合方法により、第2スリーブ28に固定することも可能である。第2スリーブ28はまた、その後端に、アクチュエータ14が挿入された際に突き当たる停止部材28bを備える。図示の実施形態では、停止部材28bは、径方向内方に延びるリップの形態であるが、本開示は、そのように限定されるものではない。第2スリーブ28の内部でアクチュエータ14を固定するのに追加の要素が必要とはされない点で、有利である。
【0015】
入れ子式の駆動アセンブリ16に移り、入れ子式の駆動アセンブリ16は、ピストン54aと係合し、カートリッジ54に亘ってこれを前進させて、カートリッジ54から物質を排出するように構成される。入れ子式の駆動アセンブリ16の限定的でない一例は、米国特許出願第14/725009(発明の名称:「入れ子式のシリンジストッパ・ドライバ駆動アセンブリの線形回転スタビライザ」)に記載されており、その内容の全体は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0016】
図示の実施形態では、図3に最もよく示されるように、入れ子式の駆動アセンブリ16は、第1軸20と、第1軸20と入れ子式に接続され、第1軸20に対して軸方向に移動可能な第2軸22と、を備える。第1軸20の回転により、第2軸22が、退避コンフィグレーション(図2、4A、4B)から操出コンフィグレーション(図3)へ軸方向に駆動されて、ピストン54と係合し、これをカートリッジ54に亘って前進させる。図示の実施形態では、図3に最もよく示されるように、追加の第3軸24が第1軸20にネジ式に接続されるとともに、第2軸22にネジ式に接続され、第1軸20を第2軸22と接続させる。よって、第1軸20の回転により、第3軸24が回転させられるとともに、軸方向に駆動され、(後により詳細に述べられるように)これが第2軸22を軸方向に駆動することとなる。
【0017】
図3から図5に最もよく示されるように、第1軸20は、(後により詳細に述べられるように)第1スリーブ26に収められ、第1スリーブ26に対して軸方向に固定される。入れ子式の駆動アセンブリ16は、第1スリーブ26および第2軸22の双方に対して回転方向に固定され、軸方向にスライド可能な回転防止スリーブ30をさらに備える。例えば、図5に示されるように、シャーシ12の第1スリーブ26は、回転防止スリーブ30とほぼ同心であり、回転防止スリープ30は、(少なくとも駆動アセンブリ16の退避コンフィグレーションにおいて)第2軸22とほぼ同心である。図示の実施形態では、回転防止スリーブ30は、第1スリーブ26に対してキー結合され、第2軸22は、回転防止スリーブ30に対してキー結合される。とくに、第1スリーブ26は、その内側壁に沿って軸方向に延びる少なくとも1つのスロット32を画成し、回転防止スリーブ30は、スロット32に向けて径方向外方に延びる少なくとも1つの対応のリブ34を備える。リブ34は、スロット32に沿ってスライド可能であり、シャーシ12の第1スリーブ26に対する回転防止スリーブ30の軸方向の動きを、これらの間の相対的な回転を防止しながら許容する。
【0018】
同様に、回転防止スリーブ30は、その内側壁に沿って軸方向に延びる少なくとも1つのスロット36を画成し、第2軸22は、スロット36に向けて径方向外方に延びる少なくとも1つの対応のリブ34を備える。リブ38は、スロット36に沿ってスライド可能であり、回転防止スリーブ30に対する第2軸22の軸方向の動きを、これらの間の相対的な回転を防止しながら許容する。よって、第2軸22は、シャーシ12の第1スリーブ26に対し、回転防止スリーブ30を介して回転可能に固定されるとともに、軸方向にスライド可能である。しかし、本技術分野における当業者により理解されるように、第2軸22は、現に知られているかまたは後に知られるようになる他の結合方法により、シャーシ12に対して回転可能に固定しおよび軸方向にスライド可能とすることが可能である。第3軸24は、第1軸20および第2軸22のそれぞれに対してネジ式に接続され、よって、第1軸20に対して回転可能であり、軸方向に移動可能である。第2軸22は、第1軸20および第3軸24に対して軸方向に移動可能である。よって、第1、第3および第2軸20、24、22は、軸方向に入れ子式のアセンブリを形成する。
【0019】
図3から図4Bに移り、第1スリーブ26は、入れ子式の駆動アセンブリ16をスライド式に内部に収めるため、入れ子式の駆動アセンブリ16に対して寸法および形状がほぼ合致する。図4Aに示されるように、第1スリーブ26は、軸方向前方、つまり、第1スリーブ26の後端から第1スリーブ26の内方に突出するベアリング40を備える。第1軸20は、第1軸20の後端から軸方向後方に突出する、対応の弾性的に拡張可能なカラー42を備える。カラー42は、ベアリング40の干渉要素40bを越えて弾性的に係合可能に、つまり、干渉要素40b上で広がった後、その元の形状に実質的に復帰するように構成されている。ベアリング40の位置は、入れ子式の駆動アセンブリ16を、カラー42がベアリング40と係合させられる際に、第1スリーブ26と追加の接続具またはツールを必要とせず、自律的に整列させるものであるのが有利である。
【0020】
図4Aに示されるように、ベアリング40は、ほぼロッド状のコア40aを備え、干渉要素40bは、ロッド状のコア40a上で径方向外方に突出する少なくとも1つのタブの形態である。一実施形態では、タブ40bは、ロッド状のコア40aを中心とした環状のリップの形態であることも可能である。図2に最もよく示されるように、対応のカラー42は、実質的に円筒状であり、角度を空けて配置された、径方向外方に柔軟性を有する複数の弓状部材42aを備える。図示の実施形態では、弓状部材42aは、正反対の2つの半円部材42aの形態であるが、本開示は、そのように限定されるものではない。弓状部材42aは、タブ40bとの係合に際して径方向外方に弾性的に撓み、スナップ式に復元してタブ40bと係合し、第1軸20を第1スリーブ26に固定する。これに代え、カラー42は、実質的に連続した円筒の形態であってもよく、その材料の特性に基づき、少なくとも部分的に弾性的に拡張可能である。ベアリング40とのカラー42の係合により、第1軸20がベアリング40を中心として回転し、入れ子式の駆動アセンブリ16を、入れ子式の駆動アセンブリ16の軸方向の拡張(ピストン54aを前進させる)の間または入れ子式の駆動アセンブリ16の軸方向の退避の間に、第1軸20を第1スリーブ26に対して軸方向に固定しながら、駆動することが可能となる。つまり、第3軸24に対する第1軸20の回転により、第3軸24が軸方向前方に前進させられ、第2軸22に対する第3軸24の回転により、第2軸22が軸方向前方に移動させられる。
【0021】
図3から図4Aに最もよく示されるように、ベアリング40は、ロッド状のコア40aのほぼ平坦な前端40cを画成する。反対に、(カラー42の外側の開放端とは反対の)カラー42の内側の閉塞端42bは、外側の開放端の方向に向く凸状の表面を画成する。カラー42の内側の閉塞端42bに備わる凸状の表面の頂部は、カラー42にベアリング40が嵌合させられた状態で、ベアリング40のほぼ平坦な前端40cに接触する。よって、カラー42とベアリング40との間の接触は、第1軸20の回転中に生じる回転摩擦を低減させるため、最小限であるのが有利である。本技術分野における当業者に理解されるように、カラー42の閉塞端42bは、ほぼ平坦な表面を画成するものに代えることが可能であり、ベアリング40の端面40cは、カラー42の閉塞端42bの方向に向く凸状の表面を画成して、ベアリング40とカラー42との間に、同様の接触関係を達成することが可能である。
【0022】
これに代え、図4Bに示されるように、第1スリーブ26が、第1スリーブ26に対してその後端から内側へ軸方向前方に突出する、弾性的に拡張可能なカラー42を備えるとともに、第1軸20が、第1軸20の後端から軸方向後方に突出する、対応のベアリング40を備えることも可能である。カラー42の閉塞端42bは、ほぼ平坦な表面を画成することが可能であり、ベアリング40の端面40cは、カラー42の閉塞端42bの方向に向く凸状の表面を画成して、ベアリング40とカラー42との間に、同様の接触関係を達成することが可能である。しかし、本技術分野における当業者により理解されるように、ベアリング40は、ほぼ平坦な端面40cを画成し、カラー42の閉塞端42bは、ベアリング40の平坦面40cの方向に向く凸状の表面を画成することが可能である。
【0023】
図1から図3に示されるように、シャーシ12の第2スリーブ28は、内部に据え付けられたアクチュエータ14がいずれの端部においても他の作動要素と係合可能なように、少なくとも部分的に開いた前端および後端を画成する。アクチュエータ14が第2スリーブ28の内部に据え付けられた場合に、第2スリーブ28の後端近傍に配置されるアクチュエータ14のアクチュエータギアは、変速ギア18と係合する。第1軸20は、カラー42の内側の閉塞端42b近傍に、入れ子式のアセンブリ回転ギア44をさらに備える。変速ギア18は、第1スリーブ26の開口46を介して回転ギア44と係合する。よって、アクチュエータ14は、入れ子式の駆動アセンブリ16と動作可能に係合する。
【0024】
作動に際し、アクチュエータ14、入れ子式の駆動アセンブリ16および変速ギア18は、シャーシ12の内部に、先に述べられた態様で据え付けられる。シャーシ12に据え付けられると、アクチュエータ14は、アクチュエータギア14bの回転により入れ子式の駆動アセンブリ16が駆動されるように、入れ子式の駆動アセンブリ16と動作可能に係合させられる。入れ子式の駆動アセンブリ16は、モジュラ駆動トレイン10がハウジング52に据え付けられた場合に、カートリッジ54用のベイ/トラックと整列させられる。カートリッジ54がハウジング52のベイ/トラックに挿入され、注射器50が起動させられると、アクチュエータ14が、入れ子式の駆動アセンブリ16を駆動して、これを拡張させるとともに、ピストン54aと係合させ、カートリッジ54に亘ってこれを前進させ、カートリッジ54から物質を排出させる。
【0025】
アクチュエータ14、入れ子式の駆動アセンブリ16および変速ギア18は、(上で述べられたように、スナップ式の機構により)いずれもシャーシ12の内部に、ツールを用いずに軸方向に挿入可能であるのが有利である。駆動トレイン10の組み立ては、注射器50の外部で行うことができ、組み立て後の駆動トレイン10を、単一のモジュラユニットとして注射器50に据え付け可能であるのがさらに有利である。更に別の利点として、入れ子式の駆動アセンブリ16、変速ギア18およびシャーシ12は、成形ポリマー部品、例えば、プラスチック部品からなるものであるとよい。
【0026】
以上で述べられた実施形態に対し、その広義の発明概念から逸脱することなく変更を加え得ることが、当業者により理解される。よって、本開示は、開示された特定の実施形態に限定されるものではなく、本開示の精神および範囲における、添付の請求の範囲に記載される種々の変更例を含むことが意図されたものである。
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5