特許第6922258号(P6922258)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6922258
(24)【登録日】2021年8月2日
(45)【発行日】2021年8月18日
(54)【発明の名称】インク補給容器及びインク補給システム
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/175 20060101AFI20210805BHJP
【FI】
   B41J2/175 133
   B41J2/175 141
   B41J2/175 115
【請求項の数】12
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2017-39147(P2017-39147)
(22)【出願日】2017年3月2日
(65)【公開番号】特開2018-144281(P2018-144281A)
(43)【公開日】2018年9月20日
【審査請求日】2020年1月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000028
【氏名又は名称】特許業務法人明成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石澤 卓
(72)【発明者】
【氏名】長島 巧
(72)【発明者】
【氏名】水谷 忠弘
【審査官】 中村 博之
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−146025(JP,A)
【文献】 特開2015−150700(JP,A)
【文献】 特開2004−122500(JP,A)
【文献】 特開2008−173832(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0008882(US,A1)
【文献】 中国実用新案第202782184(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01−2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プリンターのインクタンクから突出するとともにインク入口流路を有するインク入口流路部材から、インクを前記インクタンクに補給するインク補給容器であって、
前記インクを収容可能な容器本体と、
前記容器本体の先端側に装着され、インク出口を形成するインク出口形成部と、
を備え、
前記インク出口形成部は、
前記インク入口流路部材を挿入可能な補給流路を形成する管状流路部と、
前記管状流路部内に収納された出口弁ユニットと、
を有し、
前記出口弁ユニットは、
(i)前記管状流路部の中に前記インク入口流路部材が挿入されない非補給状態では、前記インク出口を封止し、
(ii)前記インク出口から前記管状流路部の中に前記インク入口流路部材が挿入された補給状態では、前記管状流路部の内部において前記補給流路が前記インク入口流路に連通する、
ように構成されており、
前記出口弁ユニットは、
前記管状流路部内に収納されたバネ部材と、
前記バネ部材の先端側に移動可能に収納され、前記バネ部材によって先端側に付勢される移動シール部材と、
前記移動シール部材の先端側において前記インク出口に固定され、前記インク入口流路部材が通過可能な開口を有する出口シール部材と、
を有し、
前記出口弁ユニットは、
(i)前記非補給状態では、前記移動シール部材が前記バネ部材によって先端側に付勢されて前記出口シール部材の前記開口を封止し、
(ii)前記補給状態では、前記移動シール部材が前記インク入口流路部材により押されて前記容器本体側に後退し、前記管状流路部の内部において前記補給流路が前記インク入口流路に連通する、
ように構成されており、
前記インク入口流路部材は、前記インク入口流路を複数のインク入口流路に区分する仕切壁を有し、前記複数のインク入口流路の開口は、前記仕切壁の先端よりも後端側に設けられており、
前記管状流路部の前記補給流路は、複数の補給流路を含み、
前記出口弁ユニットは、前記補給状態において、前記移動シール部材の先端が前記インク入口流路部材の前記仕切壁の先端に当接して、前記複数の補給流路の1つ以上が前記複数のインク入口流路の1つ以上に連通するとともに、前記複数の補給流路の他の1つ以上が前記複数のインク入口流路の他の1つ以上に連通するように構成されている、インク補給容器。
【請求項2】
請求項に記載のインク補給容器であって、
前記移動シール部材は、前記移動シール部材の先端側に突出した凸部を有し、
前記出口弁ユニットは、前記補給状態において、前記移動シール部材の前記凸部が前記インク入口流路部材に当接することにより、前記管状流路部の内部において前記移動シール部材と前記インク入口流路部材との間に隙間が形成され、前記隙間を介して前記補給流路が前記インク入口流路に連通するように構成されている、インク補給容器。
【請求項3】
請求項に記載のインク補給容器であって、
前記インク入口流路部材は、前記インク入口流路を複数のインク入口流路に区分する仕切壁を有し、
前記移動シール部材の前記凸部は、前記インク入口流路部材の前記仕切壁に対向する位置に設けられており、
前記管状流路部の前記補給流路は、複数の補給流路を含み、
前記出口弁ユニットは、前記補給状態において、前記移動シール部材の前記凸部が前記インク入口流路部材の前記仕切壁に当接して、前記複数の補給流路の1つ以上が前記複数のインク入口流路の1つ以上に連通するとともに、前記複数の補給流路の他の1つ以上が前記複数のインク入口流路の他の1つ以上に連通するように構成されている、インク補給容器。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載のインク補給容器であって、
前記インク入口流路部材の先端部は、前記複数のインク入口流路の開口が設けられた斜面を有し、
前記出口弁ユニットは、前記補給状態において、前記移動シール部材の先端と前記インク入口流路部材の前記斜面との間に隙間が形成され、前記隙間を介して前記複数の補給流路の1つ以上が前記複数のインク入口流路の1つ以上に連通するとともに、前記複数の補給流路の他の1つ以上が前記複数のインク入口流路の他の1つ以上に連通するように構成されている、インク補給容器。
【請求項5】
請求項に記載のインク補給容器であって、
前記インク入口流路部材の先端部は、前記複数のインク入口流路の開口が設けられた外周面を有し、
前記出口弁ユニットは、前記補給状態において、前記複数のインク入口流路の1つ以上のインク入口流路の開口が前記管状流路部の中において前記複数の補給流路の1つ以上に連通し、前記複数のインク入口流路の他の1つ以上のインク入口流路の開口が前記管状流路部の中において前記複数の補給流路の他の1つ以上に連通するように構成されている、インク補給容器。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項に記載のインク補給容器であって、
前記出口シール部材は、前記補給状態において前記インク入口流路部材の外周面に接するように変形して前記インク入口流路部材の外周面を封止するゴム部材で形成されている、インク補給容器。
【請求項7】
インク補給システムであって、
インクタンクを備えるプリンターであって、前記インクタンクは前記インクタンクから突出するとともにインク入口流路を有するインク入口流路部材を備える、プリンターと、
前記インク入口流路部材から、インクを前記インクタンクに補給するインク補給容器と、
を備え、
前記インク補給容器は、
前記インクを収容可能な容器本体と、
前記容器本体の先端側に装着され、インク出口を形成するインク出口形成部と、
を備え、
前記インク出口形成部は、
前記インク入口流路部材を挿入可能な補給流路を形成する管状流路部と、
前記管状流路部内に収納された出口弁ユニットと、
を有し、
前記出口弁ユニットは、
(i)前記管状流路部の中に前記インク入口流路部材が挿入されない非補給状態では、前記インク出口を封止し、
(ii)前記インク出口から前記管状流路部の中に前記インク入口流路部材が挿入された補給状態では、前記管状流路部の内部において前記補給流路が前記インク入口流路に連通する、
ように構成されており、
前記出口弁ユニットは、
前記管状流路部内に収納されたバネ部材と、
前記バネ部材の先端側に移動可能に収納され、前記バネ部材によって先端側に付勢される移動シール部材と、
前記移動シール部材の先端側において前記インク出口に固定され、前記インク入口流路部材が通過可能な開口を有する出口シール部材と、
を有し、
前記出口弁ユニットは、
(i)前記非補給状態では、前記移動シール部材が前記バネ部材によって先端側に付勢されて前記出口シール部材の前記開口を封止し、
(ii)前記補給状態では、前記移動シール部材が前記インク入口流路部材により押されて前記容器本体側に後退し、前記管状流路部の内部において前記補給流路が前記インク入口流路に連通する、
ように構成されており、
前記インク入口流路部材は、前記インク入口流路を複数のインク入口流路に区分する仕切壁を有し、前記複数のインク入口流路の開口は、前記仕切壁の先端よりも後端側に設けられており、
前記管状流路部の前記補給流路は、複数の補給流路を含み、
前記出口弁ユニットは、前記補給状態において、前記移動シール部材の先端が前記インク入口流路部材の前記仕切壁の先端に当接して、前記複数の補給流路の1つ以上が前記複数のインク入口流路の1つ以上に連通するとともに、前記複数の補給流路の他の1つ以上が前記複数のインク入口流路の他の1つ以上に連通するように構成されている、インク補給システム。
【請求項8】
請求項7に記載のインク補給システムであって、
前記移動シール部材は、前記移動シール部材の先端側に突出した凸部を有し、
前記出口弁ユニットは、前記補給状態において、前記移動シール部材の前記凸部が前記インク入口流路部材に当接することにより、前記管状流路部の内部において前記移動シール部材と前記インク入口流路部材との間に隙間が形成され、前記隙間を介して前記補給流路が前記インク入口流路に連通するように構成されている、インク補給システム。
【請求項9】
請求項8に記載のインク補給システムであって、
前記インク入口流路部材は、前記インク入口流路を複数のインク入口流路に区分する仕切壁を有し、
前記移動シール部材の前記凸部は、前記インク入口流路部材の前記仕切壁に対向する位置に設けられており、
前記管状流路部の前記補給流路は、複数の補給流路を含み、
前記出口弁ユニットは、前記補給状態において、前記移動シール部材の前記凸部が前記インク入口流路部材の前記仕切壁に当接して、前記複数の補給流路の1つ以上が前記複数のインク入口流路の1つ以上に連通するとともに、前記複数の補給流路の他の1つ以上が前記複数のインク入口流路の他の1つ以上に連通するように構成されている、インク補給システム。
【請求項10】
請求項7〜9のいずれか一項に記載のインク補給システムであって、
前記インク入口流路部材の先端部は、前記複数のインク入口流路の開口が設けられた斜面を有し、
前記出口弁ユニットは、前記補給状態において、前記移動シール部材の先端と前記インク入口流路部材の前記斜面との間に隙間が形成され、前記隙間を介して前記複数の補給流路の1つ以上が前記複数のインク入口流路の1つ以上に連通するとともに、前記複数の補給流路の他の1つ以上が前記複数のインク入口流路の他の1つ以上に連通するように構成されている、インク補給システム。
【請求項11】
請求項7に記載のインク補給システムであって、
前記インク入口流路部材の先端部は、前記複数のインク入口流路の開口が設けられた外周面を有し、
前記出口弁ユニットは、前記補給状態において、前記複数のインク入口流路の1つ以上のインク入口流路の開口が前記管状流路部の中において前記複数の補給流路の1つ以上に連通し、前記複数のインク入口流路の他の1つ以上のインク入口流路の開口が前記管状流路部の中において前記複数の補給流路の他の1つ以上に連通するように構成されている、インク補給システム。
【請求項12】
請求項7〜11のいずれか一項に記載のインク補給システムであって、
前記出口シール部材は、前記補給状態において前記インク入口流路部材の外周面に接するように変形して前記インク入口流路部材の外周面を封止するゴム部材で形成されている、インク補給システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリンターのインクタンクにインクを補給するインク補給容器に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェットプリンターには、インクを貯留するインクタンクが設けられており、インクタンクから印刷ヘッドにインクが供給される。プリンターのインクタンクとしては、カートリッジタイプとインク補給タイプの2つのタイプが存在する。カートリッジタイプのインクタンクは、インク残量が低下した場合に新たなインクタンクと交換される。インク補給タイプのインクタンクでは、インク残量が低下した場合にもインクタンクをそのまま使用して、インク補給容器からインクが補充される。
【0003】
特許文献1には、インク補給タイプのインクタンクにインクを補給するために使用されるインク補給容器が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2016−087844号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、インク補給容器は、使用時にはインク出口を下向きにした姿勢でインクタンクにインクを補給し、不使用時にはインク出口を上向きにした姿勢で保管される。このように、インク補給容器は、様々な姿勢を取る場合が多いので、インクのシール性の確保が重要な問題となる。また、インク補給容器の構成によっては、使用時に限らず、製造時や保管時においてもインクのシール性やその他の構造の問題が発生する場合がある。しかしながら、従来はインク補給容器の構造に関する工夫が十分に成されておらず、更なる改善が望まれていた。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態または適用例として実現することが可能である。
本発明の第1の形態は、プリンターのインクタンクから突出するとともにインク入口流路を有するインク入口流路部材から、インクを前記インクタンクに補給するインク補給容器である。このインク補給容器は、前記インクを収容可能な容器本体と、前記容器本体の先端側に装着され、インク出口を形成するインク出口形成部と、を備える。前記インク出口形成部は、前記インク入口流路部材を挿入可能な補給流路を形成する管状流路部と、
前記管状流路部内に収納された出口弁ユニットと、を有する。前記出口弁ユニットは、(i)前記管状流路部の中に前記インク入口流路部材が挿入されない非補給状態では、前記インク出口を封止し、(ii)前記インク出口から前記管状流路部の中に前記インク入口流路部材が挿入された補給状態では、前記管状流路部の内部において前記補給流路が前記インク入口流路に連通する、ように構成されており、前記出口弁ユニットは、前記管状流路部内に収納されたバネ部材と、前記バネ部材の先端側に移動可能に収納され、前記バネ部材によって先端側に付勢される移動シール部材と、前記移動シール部材の先端側において前記インク出口に固定され、前記インク入口流路部材が通過可能な開口を有する出口シール部材と、を有し、前記出口弁ユニットは、(i)前記非補給状態では、前記移動シール部材が前記バネ部材によって先端側に付勢されて前記出口シール部材の前記開口を封止し、(ii)前記補給状態では、前記移動シール部材が前記インク入口流路部材により押されて前記容器本体側に後退し、前記管状流路部の内部において前記補給流路が前記インク入口流路に連通する、ように構成されている。前記インク入口流路部材は、前記インク入口流路を複数のインク入口流路に区分する仕切壁を有し、前記複数のインク入口流路の開口は、前記仕切壁の先端よりも後端側に設けられており、前記管状流路部の前記補給流路は、複数の補給流路を含む。前記出口弁ユニットは、前記補給状態において、前記移動シール部材の先端が前記インク入口流路部材の前記仕切壁の先端に当接して、前記複数の補給流路の1つ以上が前記複数のインク入口流路の1つ以上に連通するとともに、前記複数の補給流路の他の1つ以上が前記複数のインク入口流路の他の1つ以上に連通するように構成されている。
本発明の第2の形態は、インクタンクを備えるプリンターであって、前記インクタンクは前記インクタンクから突出するとともにインク入口流路を有するインク入口流路部材を備える、プリンターと、上記第1の形態のインク補給容器と、を備えるインク供給システムである。
【0007】
(1)本発明の一形態によれば、プリンターのインクタンクから突出するとともにインク入口流路を有するインク入口流路部材から、インクを前記インクタンクに補給するインク補給容器が提供される。このインク補給容器は、前記インクを収容可能な容器本体と;前記容器本体の先端側に装着され、インク出口を形成するインク出口形成部と;を備え、前記インク出口形成部は;前記インク入口流路部材を挿入可能な補給流路を形成する管状流路部と;前記管状流路部内に収納された出口弁ユニットと、を有する。前記出口弁ユニットは、(i)前記管状流路部の中に前記インク入口流路部材が挿入されない非補給状態では、前記インク出口を封止し、(ii)前記インク出口から前記管状流路部の中に前記インク入口流路部材が挿入された補給状態では、前記管状流路部の内部において前記補給流路が前記インク入口流路に連通するように構成されている。
このインク補給容器によれば、出口弁ユニットが、非補給状態ではインク出口を封止し、補給状態では管状流路部の内部において管状流路部の補給流路がインク入口流路部材のインク入口流路に連通するように構成されているので、インク出口におけるシール耐圧の高いインク補給容器を提供できる。
【0008】
(2)上記インク補給容器において、前記出口弁ユニットは、前記管状流路部内に収納されたバネ部材と、前記バネ部材の先端側に移動可能に収納され、前記バネ部材によって先端側に付勢される移動シール部材と、前記移動シール部材の先端側において前記インク出口に固定され、前記インク入口流路部材が通過可能な開口を有する出口シール部材と、を有し、前記出口弁ユニットは、(i)前記非補給状態では、前記移動シール部材が前記バネ部材によって先端側に付勢されて前記出口シール部材の前記開口を封止し、(ii)前記補給状態では、前記移動シール部材が前記インク入口流路部材により押されて前記容器本体側に後退し、前記管状流路部の内部において前記補給流路が前記インク入口流路に連通するように構成されているものとしてもよい。
この構成によれば、移動シール部材の移動によってインク出口を閉じたり開放したりすることが可能であり、また、移動シール部材がバネ部材によって先端側に付勢されているので、シール耐圧を更に高めることができる。
【0009】
(3)上記インク補給容器において、前記移動シール部材は、前記移動シール部材の先端側に突出した凸部を有し、前記出口弁ユニットは、前記補給状態において、前記移動シール部材の前記凸部が前記インク入口流路部材に当接することにより、前記管状流路部の内部において前記移動シール部材と前記インク入口流路部材との間に隙間が形成され、前記隙間を介して前記補給流路が前記インク入口流路に連通するように構成されているものとしてもよい。
この構成によれば、移動シール部材の凸部によって移動シール部材とインク入口流路部材との間に隙間が形成されるので、この隙間を介して補給流路とインク入口流路とを連通させることができる。
【0010】
(4)上記インク補給容器において、前記インク入口流路部材は、前記インク入口流路を複数のインク入口流路に区分する仕切壁を有し、前記移動シール部材の前記凸部は、前記インク入口流路部材の前記仕切壁に対向する位置に設けられており、前記管状流路部の前記補給流路は、複数の補給流路を含み、前記出口弁ユニットは、前記補給状態において、前記移動シール部材の前記凸部が前記インク入口流路部材の前記仕切壁に当接して、前記複数の補給流路の1つ以上が前記複数のインク入口流路の1つ以上に連通するとともに、前記複数の補給流路の他の1つ以上が前記複数のインク入口流路の他の1つ以上に連通するように構成されているものとしてもよい。
この構成によれば、管状流路部の複数の補給流路がインク入口流路部材の複数のインク入口流路に連通するので、気液交換によるインクの補給を効率良く行うことができる。
【0011】
(5)上記インク補給容器において、前記インク入口流路部材は、前記インク入口流路を複数のインク入口流路に区分する仕切壁を有し、前記複数のインク入口流路の開口は、前記仕切壁の先端よりも後端側に設けられており、前記管状流路部の前記補給流路は、複数の補給流路を含み、前記出口弁ユニットは、前記補給状態において、前記移動シール部材の先端が前記インク入口流路部材の前記仕切壁の先端に当接して、前記複数の補給流路の1つ以上が前記複数のインク入口流路の1つ以上に連通するとともに、前記複数の補給流路の他の1つ以上が前記複数のインク入口流路の他の1つ以上に連通するように構成されているものとしてもよい。
この構成によれば、複数のインク入口流路の開口が仕切壁の先端よりも後端側に設けられているので、移動シール部材の先端がインク入口流路部材の仕切壁の先端に当接することにより、複数の補給流路をインク入口流路部材の複数のインク入口流路に連通させることができる。
【0012】
(6)上記インク補給容器において、前記インク入口流路部材の先端部は、前記複数のインク入口流路の開口が設けられた斜面を有し、前記出口弁ユニットは、前記補給状態において、前記移動シール部材の先端と前記インク入口流路部材の前記斜面との間に隙間が形成され、前記隙間を介して前記複数の補給流路の1つ以上が前記複数のインク入口流路の1つ以上に連通するとともに、前記複数の補給流路の他の1つ以上が前記複数のインク入口流路の他の1つ以上に連通するように構成されているものとしてもよい。
この構成によれば、複数のインク入口流路の開口がインク入口流路部材の斜面に設けられているので、移動シール部材の先端とインク入口流路部材の斜面との間の隙間を介して複数の補給流路を複数のインク入口流路に連通させることができる。
【0013】
(7)上記インク補給容器において、前記インク入口流路部材の先端部は、前記複数のインク入口流路の開口が設けられた外周面を有し、前記出口弁ユニットは、前記補給状態において、前記複数のインク入口流路の1つ以上のインク入口流路の開口が前記管状流路部の中において前記複数の補給流路の1つ以上に連通し、前記複数のインク入口流路の他の1つ以上のインク入口流路の開口が前記管状流路部の中において前記複数の補給流路の他の1つ以上に連通するように構成されているものとしてもよい。
この構成によれば、複数のインク入口流路の開口がインク入口流路部材の外周面に設けられているので、管状流路部の中において複数のインク入口流路の開口を複数の補給流路に連通させることができる。
【0014】
(8)上記インク補給容器において、前記出口シール部材は、前記補給状態において前記インク入口流路部材の外周面に接するように変形して前記インク入口流路部材の外周面を封止するゴム部材で形成されているものとしてもよい。
この構成によれば、補給状態において、インク入口流路部材の外周面のシール性能を高めることができる。
【0015】
本発明は、上述したインク補給容器以外の種々の形態で実現することが可能である。例えば、インクタンクとインク補給容器とを備えるインク補給システム等の形態で実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】第1実施形態のプリンターの斜視図。
図2】インクタンクにインク補給容器を挿入した状態を示す斜視図。
図3】第1実施形態のインク補給容器の分解斜視図。
図4】第1実施形態のインク補給容器の正面図。
図5】第1実施形態のインク補給容器の平面図。
図6】第1実施形態のインク補給容器の縦断面図。
図7図6の一部拡大図。
図8】第1実施形態のインクタンクの斜視図。
図9】第1実施形態における補給状態を示す断面図。
図10図9の一部拡大図。
図11図10に示した補給状態の直前の非補給状態を示す断面図。
図12】第2実施形態のインクタンクを示す斜視図。
図13】第2実施形態における補給状態を示す断面図。
図14】第3実施形態のインクタンクを示す斜視図。
図15】第3実施形態における補給状態を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1は、第1実施形態におけるプリンター100の斜視図である。このプリンター100は、インクを印刷媒体上に吐出して印刷を行うインクジェットプリンターである。図1には、互いに直交するXYZ軸が描かれている。X軸はプリンター100の幅方向に対応し、Y軸はプリンター100の奥行き方向に対応し、Z軸はプリンター100の高さ方向に対応する。プリンター100は、X方向とY方向とによって規定される水平な設置面に設置されている。
【0018】
プリンター100は、筐体110を有する。筐体110の内部には、主走査方向(X方向)に移動可能なキャリッジ(図示省略)が設けられている。キャリッジには、インクを印刷媒体上に吐出する印刷ヘッドが設置されている。筐体110の前面の一端には、複数のインクタンク700S,700Lを収容するインクタンク収容ユニット160が設けられている。インクタンク収容ユニット160は、その上部に開閉可能な蓋162を有している。なお、インクタンク700Sは小容量のタンクであり、インクタンク700Lは大容量のタンクである。但し、以下の説明では、両者を区別せずに単に「インクタンク700」と呼ぶ。各インクタンク700は、チューブ(図示省略)によってキャリッジの印刷ヘッドに接続されている。すなわち、インクタンク700は、プリンター100のキャリッジ上に載置されていない定置型のインクタンクである。また、各インクタンク700は、インク残量が低下した場合にインク補給容器からインクが補充されるインク補給タイプのインクタンクである。
【0019】
図2は、インク補給容器200を用いてインクタンク700にインクを補給する状態を示す斜視図である。各インクタンク700の前面は、透明部材で形成されており、各インクタンク700のインク残量が外部から目視可能である。インク残量が少なくなった場合には、図2に示すように、蓋162を開けて、インクタンク700のインク入口流路部材710からインクを補給することが可能である。
【0020】
各インクタンク700の上面には、インクをインクタンク700に補給するための筒状のインク入口流路部材710が設けられている。インクタンク収容ユニット160は、インク入口流路部材710の先端を封止するためのキャップ165を有するキャップ部材164を備えている。インクタンク700にインクを補給しない状態では、インク入口流路部材710の先端は、キャップ部材164のキャップ165で封止されている。インクタンク700にインクを補給する際には、キャップ部材164をインク入口流路部材710から外し、インク入口流路部材710の位置にインク補給容器200の先端部を挿入してインクを補給する。インク入口流路部材710の周囲には、インク補給容器200の嵌合部(後述)と嵌合する2つの凹部750が設けられている。これらの凹部750は、インク入口流路部材710を中心として180度の回転対称の形状を有する。
【0021】
本明細書において、「インクの補給」という用語は、インクタンク700にインクを供給してインク残量を増やす動作を意味している。但し、「インクの補給」によってインクタンク700をインクで満杯にする必要はない。また、「インクの補給」は、プリンター100の初回使用時に、空のインクタンク700にインクを充填する動作も含む。
【0022】
図3は、第1実施形態におけるインク補給容器200の分解斜視図である。インク補給容器200は、インクを収容可能な容器本体300と、インク出口460を形成するインク出口形成部400と、出口弁ユニット500とを有している。インク補給容器200は、更に、インク出口形成部400の先端側に装着されるキャップ(図示省略)を有する。容器本体300は、先端側に開口を有する中空円筒状の容器である。容器本体300の先端にある小径部分には、インク出口形成部400を装着するための外ネジ312が設けられている。インク出口形成部400の先端には、インク出口460が設けられている。インク出口460には、出口弁ユニット500が装着される。従って、出口弁ユニット500は、インク出口形成部400の一部を構成する部材とみなすことも可能である。インクタンク700へのインクの補給時には、インクタンク700のインク入口流路部材710(図2)がインク出口460内に挿入される。
【0023】
出口弁ユニット500は、出口シール部材510と、移動シール部材520と、バネ部材530とを有する。出口シール部材510は、略リング状の形状を有するゴム部材である。移動シール部材520は、略円筒状の形状を有する部材である。出口シール部材510は弁座としての機能を有し、移動シール部材520は弁体としての機能を有する。バネ部材530は、コイルスプリングである。出口弁ユニット500は、インクタンク700にインクを補給しない非補給状態ではインク出口460を封止してインクが外部に漏れないように構成されており、インクタンク700にインクを補給する補給状態では封止を解除してインク入口流路部材710にインクが流れ込むように構成されている。非補給状態と補給状態における出口弁ユニット500の動作については後述する。
【0024】
インク出口460の周囲には、2つの嵌合部450が設けられている。これらの嵌合部450は、インクタンク700のインク入口流路部材710の周囲に設けられた凹部750(図2)に嵌合することによって、インク補給容器200の位置決めを行う位置決め部材である。第1実施形態では、2つの嵌合部450は、インク補給容器200の中心軸Cを中心として180度の回転対称の形状を有する。インクタンク700のインク入口流路部材710の周囲に設けられた凹部750も同様に、インク入口流路部材710を中心として180度の回転対称の形状を有する。インクの補給時には、インク補給容器200の嵌合部450をインクタンク700のインク入口流路部材710の周囲の凹部750に嵌合させることにより、インク補給容器200の向きが、180度の回転対称である2つの向きに限定される。この結果、インク補給時にインク補給容器200を安定した姿勢に維持することが可能である。但し、嵌合部450は省略可能である。
【0025】
なお、本明細書において、インク補給容器200の中心軸Cと平行な方向を「軸方向」と呼び、中心軸Cから外側に向かう方向を「径方向」と呼ぶ。
【0026】
図4は、インク補給容器200の正置状態における正面図であり、図5はその平面図である。「インク補給容器200の正置状態」とは、容器本体300の底部を下にして机などの水平面の上に置いた状態を意味する。この正置状態におけるインク補給容器200の上端側を「先端側」と呼び、下端側を「後端側」と呼ぶ。図4以降の各図におけるZ方向は、インク補給容器200の正置状態における鉛直上向きの方向を示す。前述した図2に示すように、インクタンク700へのインクの補給は、インク補給容器200の先端側を下向きにした倒置姿勢で行われる。なお、図4及び図5は、図示しないキャップを外した状態である。
【0027】
図6は、インク補給容器200の縦断面図である。図3でも説明したように、インク出口形成部400の2つの嵌合部450の間には、インク出口460が設けられている。インク出口460は、インク入口流路部材710が挿入可能な補給流路を形成する管状流路部410を有している。出口弁ユニット500の出口シール部材510と移動シール部材520とバネ部材530は、管状流路部410に収納されている。バネ部材530は、管状流路部410内の最も後端側に収納されている。移動シール部材520は、管状流路部410内においてバネ部材530の先端側に移動可能に収納されており、バネ部材530によって先端側に付勢されている。出口シール部材510は、インク出口460に固定されている。出口シール部材510は、インク入口流路部材710が通過可能な開口を有する。この図6は、インクタンク700にインクを補給しない非補給状態での断面を示している。この非補給状態において、出口弁ユニット500は、インク出口460を封止している。なお、第1実施形態の出口弁ユニット500では、移動シール部材520がバネ部材530によって先端側に付勢されているので、例えばスリット弁などのような他の種類の弁に比べて、高いシール耐圧を得ることができる。具体的には、非補給状態においてインク補給容器200を倒置姿勢にした場合にも、インクがインク出口460から漏れ出る可能性を低減できる。
【0028】
図7は、図6の一部拡大図である。第1実施形態において、移動シール部材520は、先端側に突出した凸部526を有する。凸部526の周囲には、環状当接部528が形成されている。この環状当接部528は、図7に示す非補給状態において、出口シール部材510の後端の環状突起512と当接して出口シール部材510の開口を封止する。凸部526は、この環状当接部528よりも先端側に突出している。移動シール部材520の後端側には、筒状部524と、筒状部524の後端側にあるバネ係合部522とが設けられている。バネ係合部522は、筒状部524よりも小さな外径を有している。バネ係合部522の外周には、バネ部材530の先端部が係止される。
【0029】
管状流路部410内の流路(「補給流路」とも呼ぶ)は、2つの補給流路411,412に区分されている。後述するように、インクの補給状態では、2つの補給流路411,412の一方はインクの流路として使用され、他方は空気の流路として利用される。この結果、インク補給容器200は、インクタンク700と気液交換を行いながらインクの補給を行うことが可能である。気液交換を利用してインクの補給を行う際には、容器本体300を圧搾する必要はない。このように、容器本体300を圧搾せずにインクの補給を行うことが可能なインク補給容器の種類を「非圧搾タイプ」とも呼ぶ。なお、管状流路部410内の流路は、2つの補給流路411,412に区分されている必要はなく、1つの補給流路として形成されていてもよい。また、管状流路部410内の流路は、3つ以上の補給流路に区分されていても良い。
【0030】
出口シール部材510は、例えば、ゴム弾性を有するゴム部材(エラストマー)で形成することが可能である。移動シール部材520は、例えば、ポリエチレンやポリプロピレンのような熱可塑性樹脂で形成することが可能である。バネ部材530は、例えば、金属で形成することが可能である。出口弁ユニット500以外のインク補給容器200の部品は、例えば、ポリエチレンやポリプロピレンのような熱可塑性樹脂で形成することが可能である。
【0031】
インク補給容器200の製品発送時点では、インク出口460をフィルムによって封止しておいてもよい。この封止用のフィルムは、インク出口460に出口シール部材510を固定する固定部材を兼用することも可能である。なお、出口シール部材510と移動シール部材520との間は、移動シール部材520がバネ部材530によって付勢された状態で封止されているので、インク出口460を封止するフィルム自体にはインクを封止する機能は必要とされていない。従って、例えばフィルムに切れ込みを入れておくことによって、インクタンク700のインク入口流路部材710がフィルムを容易に突き破れるようにしてもよい。なお、封止用のフィルムの代わりに、インク出口460を形成する樹脂部材の熱加締め等の他の固定手段を用いて、出口シール部材510をインク出口460に固定してもよい。
【0032】
図8は、第1実施形態のインクタンク700の斜視図である。インクタンク700のインク入口流路部材710は、インクタンク700から上方に突出している。インク入口流路部材710は、2つのインク入口流路711,712を有している。2つのインク入口流路711,712は、仕切壁714によって区分されている。第1実施形態では、インク入口流路部材710の先端面は平坦であり、2つのインク入口流路711,712は、インク入口流路部材710の先端面でそれぞれ開口している。また、インク入口流路部材710の先端面の一部は、仕切壁714の端部に相当する。インクの補給時には、インク補給容器200の嵌合部450がインクタンク700のインク入口流路部材710の周囲の凹部750に嵌合され、インク補給容器200の周方向の位置決めがされる。これにより、2つのインク入口流路711,712は、下方のインク収容室760内に突出する2つのタンク内流路721,722にそれぞれ連通する。これらのタンク内流路721,722の下端は、インク収容室760の天井壁よりも下方の位置まで延びている。この理由は、インク補給容器200からインクタンク700にインクを補給する際に,インク収容室760内の液位がタンク内流路721,722の下端に達した時点で気液交換が停止し、これに伴ってインクの補給も停止するので、インクの補給作業が容易だからである。
【0033】
インク入口流路部材710の2つのインク入口流路711,712は、図7に示したインク補給容器200の管状流路部410の2つの補給流路411,412にそれぞれ対応している。なお、前述したように、補給状態では、インク補給容器200の向きとして、180度の回転対称である2つの向きのいずれをも取り得る。従って、補給状態では、インク補給容器200の嵌合部450をインクタンク700のインク入口流路部材710の周囲の凹部750に嵌合させることにより、インク補給容器200の向きが、180度の回転対称である2つの向きに限定されるため、補給流路411,412の一方がインク入口流路711,712の一方と連通し、補給流路411,412の他方がインク入口流路711,712の他方と連通する。但し、インク入口流路部材710のインク入口流路は、2つのインク入口流路711,712に区分されている必要は無く、1つの流路として形成されていてもよい。また、インク入口流路部材710のインク入口流路は、3つ以上のインク入口流路に区分されていてもよい。但し、インク入口流路部材710のインク入口流路が複数のインク入口流路に区分されていれば、気液交換を利用してインクの補給を効率的に行えるという利点がある。
【0034】
図9は、インク補給容器200からインクタンク700にインクを補給する補給状態を示す断面図である。この補給状態では、インク補給容器200は倒置姿勢を取る。また、インクタンク700のインク入口流路部材710は、出口シール部材510の開口を介して管状流路部410に挿入されている。出口弁ユニット500は、この補給状態において、管状流路部410内の補給流路411,412(図7)がインク入口流路部材710のインク入口流路711,712に連通するように構成されている。
【0035】
図10は、図9の一部拡大図である。但し、容器本体300は図示を省略している。移動シール部材520の凸部526は、インク入口流路部材710の仕切壁714に対向する位置に設けられている。補給状態では、移動シール部材520の凸部526がインク入口流路部材710により押されて容器本体300側に後退し、インク入口流路部材710のインク入口流路711,712が管状流路部410内の補給流路411,412とそれぞれ連通する。この結果、容器本体300内のインクが補給流路411,412を介してインク入口流路部材710に流れ込むことが許容される。図10において、実線の矢印はインクの流れを示し、破線の矢印は空気の流れを示している。このように、補給状態では、インク入口流路部材710の2つのインク入口流路711,712と、管状流路部410内の2つの補給流路411,412とを利用して、気液交換を行いながらインク補給容器200からインクタンク700にインクを効率的に補給することができる。この気液交換を円滑に行うために、管状流路部410内の補給流路は、複数の補給流路に区分されていることが好ましい。インク入口流路部材710のインク入口流路も同様である。この場合には、補給状態において、複数の補給流路の1つ以上が複数のインク入口流路の1つ以上に連通するとともに、複数の補給流路の他の1つ以上が複数のインク入口流路の他の1つ以上に連通するように構成されていることが好ましい。
【0036】
なお、第1実施形態では、補給状態において、移動シール部材520の凸部526がインク入口流路部材710に当接することによって、移動シール部材520とインク入口流路部材710との間に隙間を形成し、この隙間を介して管状流路部410の補給流路411,412のインク入口流路部材710のインク入口流路711,712に連通するように構成されている。このように、移動シール部材520の先端に凸部526を設けておき、凸部526がインク入口流路部材710に当接することによって移動シール部材520とインク入口流路部材710との間に隙間を形成するようにすれば、流路間の連通状態を容易に実現することが可能である。
【0037】
また、図10に示した補給状態では、出口シール部材510が、インク入口流路部材710の外周面に接してインク入口流路部材710の外周面を封止している。この構成によれば、インクが外部に漏れ出すことを防止することが可能であり、インク入口流路部材710の外周面のシール性能を高めることができる。
【0038】
図11は、図10に示した補給状態の直前の非補給状態を示している。この状態は、インク補給容器200の先端部をインクタンク700に向けて下降させてゆき、インク入口流路部材710の先端が、移動シール部材520の凸部526に接した状態である。このとき、移動シール部材520と出口シール部材510との間は封止されたままである。また、図11では、出口シール部材510とインク入口流路部材710の外周面との間の封止が開始されている。このように、補給状態に至る直前の状態において、インク入口流路部材710の外周面と出口シール部材510との封止が開始されるように出口弁ユニット500を構成すれば、その後にインク補給容器200を更に下降させて図10に示した補給状態に至るまでの間に、インクが外部に漏れ出す可能性を更に低下させることが可能である。
【0039】
以上のように、第1実施形態では、インクタンク700へのインクの補給を行わない非補給状態では、出口弁ユニット500がインク出口460を封止するように構成されている。一方、インクタンク700へのインクの補給を行う補給状態では、管状流路部410の内部において補給流路411,412がインク入口流路部材710のインク入口流路711,712に連通するように構成されている。従って、インク出口460におけるシール耐圧が高いインク補給容器200を提供することができる。
【0040】
図12は、第2実施形態のインク入口流路部材710aを有するインクタンク700aを示す斜視図であり、第1実施形態の図8に対応する図である。第2実施形態のインク入口流路部材710aの先端部は、2つのインク入口流路711,712の開口を有する斜面717と、ピーク部715とを有する形状に形成されている。斜面717は、ピーク部715からインク入口流路部材710aの後端側に傾斜している。
【0041】
図13は、図12に示した第2実施形態のインクタンク700aに対する補給状態を示す断面図であり、第1実施形態の図9に対応する図である。インク出口形成部400は、第1実施形態と同じ構造を有している。第2実施形態のインク入口流路部材710aのピーク部715は、2つのインク入口流路711,712を仕切る仕切壁714aの先端に相当する部分である。この補給状態において、出口弁ユニット500は、移動シール部材520の先端の凸部526が、インク入口流路部材710aのピーク部715に当接するように構成されている。また、このとき、インク入口流路部材710aの斜面717と移動シール部材520の環状当接部528との間に隙間が形成されており、この隙間を介して管状流路部410の複数の補給流路411,412がインク入口流路部材710aの複数のインク入口流路711,712に連通する。従って、この第2実施形態によっても、第1実施形態と同様の効果を得ることが可能である。
【0042】
図14は、第3実施形態のインク入口流路部材710bを有するインクタンク700bを示す斜視図である。第3実施形態のインク入口流路部材710bの先端部において、2つのインク入口流路711,712の開口は、インク入口流路部材710bの先端面718には形成されておらず、インク入口流路部材710bの外周面716に形成されている。
【0043】
図15は、図14に示した第3実施形態のインクタンク700bに対する補給状態を示す断面図である。インク出口形成部400は、第1実施形態と同じ構造を有している。第3実施形態のインク入口流路部材710bの先端面718は、2つのインク入口流路711,712を仕切る仕切壁714bの先端に相当する部分である。この補給状態において、インク出口形成部400は、移動シール部材520の先端の凸部526が、インク入口流路部材710bの先端面718に当接するように構成されている。インク入口流路部材710bの2つのインク入口流路711,712は、インク入口流路部材710bの外周面716に開口しているので、この開口を介して管状流路部410の補給流路411,412がインク入口流路部材710aのインク入口流路711,712に連通する。従って、この第3実施形態においても、第1実施形態と同様の効果を得ることが可能である。
【0044】
上述した第2実施形態と第3実施形態は、インク入口流路部材710の複数のインク入口流路711,712の開口が、仕切壁714の先端よりも後端側に設けられている点で共通している。このような構造を採用すれば、補給状態において、管状流路部410の内部で移動シール部材520の先端がインク入口流路部材710の仕切壁714の先端に当接することにより、管状流路部410の補給流路411,412をインク入口流路部材710のインク入口流路711,712にそれぞれ連通させることが可能である。
【0045】
なお、図13に示した第2実施形態において、移動シール部材520の先端に凸部526が形成されていない構造を採用することも可能である。この構造においても、移動シール部材520の先端とインク入口流路部材710aの斜面717との間に隙間が形成されるので、その隙間を介して管状流路部410の補給流路411,412をインク入口流路部材710aのインク入口流路711,712に連通させることができる。従って、移動シール部材520の凸部526は省略可能である。第3実施形態においても同様に、移動シール部材520の凸部526を省略することができる。
【0046】
・変形例:
本発明は上述した実施形態やその変形例に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能である。
【0047】
・変形例1:
上述した実施形態のインク補給容器200の部材の一部を任意に省略したり、変更したりすることが可能である。例えば、キャップを省略してもよい。また、容器本体300の一部又は全部を、可撓性の袋体で構成してもよい。また、出口弁ユニット500の具体的な構造も適宜変更可能である。但し、出口弁ユニット500は、管状流路部410の中にインク入口流路部材710が挿入されない非補給状態ではインク出口460を封止し、インク出口460から管状流路部410の中にインク入口流路部材710が挿入された補給状態では、管状流路部410の内部において管状流路部410の補給流路がインク入口流路部材710のインク入口流路に連通するように構成されることが好ましい。
【0048】
・変形例2:
上述した実施形態では、非圧搾タイプのインク補給容器について説明したが、本発明は圧搾タイプのインク補給容器にも適用可能である。また、本発明は、インク補給容器などのインク収容容器に限らず、インク以外の液体を収容する他の種類の液体収容容器にも適用可能である。
【符号の説明】
【0049】
100…プリンター、110…筐体、160…インクタンク収容ユニット、162…蓋、164…キャップ部材、165…キャップ、200…インク補給容器、300…容器本体、312…外ネジ、400…インク出口形成部、410…管状流路部、411,412補給流路、450…嵌合部、460…インク出口、500…出口弁ユニット、510…出口シール部材、512…環状突起、520…移動シール部材、522…バネ係合部、524…筒状部、526…凸部、528…環状当接部、530…バネ部材、700,700L,700S,700a,700b…インクタンク、710,710a,710b…インク入口流路部材、711,712…インク入口流路、714,714a,714b…仕切壁、715…ピーク部、716…外周面、717…斜面、718…先端面、721,722…タンク内流路、750…凹部、760…インク収容室、C…中心軸
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15