特許第6922279号(P6922279)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6922279ワイヤーグリッド偏光素子および投射型表示装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6922279
(24)【登録日】2021年8月2日
(45)【発行日】2021年8月18日
(54)【発明の名称】ワイヤーグリッド偏光素子および投射型表示装置
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/30 20060101AFI20210805BHJP
   G02B 5/18 20060101ALI20210805BHJP
   G03B 21/00 20060101ALI20210805BHJP
   G02F 1/13 20060101ALI20210805BHJP
   G02F 1/1335 20060101ALN20210805BHJP
【FI】
   G02B5/30
   G02B5/18
   G03B21/00 E
   G02F1/13 505
   !G02F1/1335 510
【請求項の数】10
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2017-48368(P2017-48368)
(22)【出願日】2017年3月14日
(65)【公開番号】特開2018-151542(P2018-151542A)
(43)【公開日】2018年9月27日
【審査請求日】2020年1月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100116665
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 和昭
(74)【代理人】
【識別番号】100179475
【弁理士】
【氏名又は名称】仲井 智至
(74)【代理人】
【識別番号】100216253
【弁理士】
【氏名又は名称】松岡 宏紀
(72)【発明者】
【氏名】大堀 光隆
(72)【発明者】
【氏名】赤坂 康一郎
(72)【発明者】
【氏名】熊井 啓友
【審査官】 堀井 康司
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−143580(JP,A)
【文献】 特開2013−200339(JP,A)
【文献】 特開2004−045672(JP,A)
【文献】 特開2013−232003(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/30
G02B 5/18
G03B 21/00
G02F 1/13
G02F 1/1335
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
透光性の第1基板と、
前記第1基板の一方面に配置されたワイヤーグリッドと、
前記第1基板の前記一方面に対向する透光性の第2基板と、
を有し、
前記第1基板の前記一方面、および前記第2基板の前記第1基板と対向する面の少なく
とも一方には、底部と、前記底部の両端にテーパー面を有する内壁と、を含む凹部を有し

前記第1基板と前記第2基板とが前記凹部の外側で接合されて、前記ワイヤーグリッド
が配置されている空間が密閉されており、
前記ワイヤーグリッドは、平面視において、前記底部と重なる領域に配置され、前記第
1基板と前記第2基板とが接合される領域と離隔して配置されていることを特徴とするワ
イヤーグリッド偏光素子。
【請求項2】
請求項1に記載のワイヤーグリッド偏光素子において、
前記ワイヤーグリッドは、前記内壁と離隔して配置されていることを特徴とするワイヤ
ーグリッド偏光素子。
【請求項3】
請求項1または2に記載のワイヤーグリッド偏光素子において、
前記ワイヤーグリッドが配置されている空間に不活性ガスが充填されていることを特徴
とするワイヤーグリッド偏光素子。
【請求項4】
請求項1から3までの何れか一項に記載のワイヤーグリッド偏光素子において、
前記ワイヤーグリッドは、アルミニウム、アルミニウムを主成分とする合金、銀、また
は銀を主成分とする合金からなることを特徴とするワイヤーグリッド偏光素子。
【請求項5】
請求項1から4までの何れか一項に記載のワイヤーグリッド偏光素子において、
前記ワイヤーグリッドの前記第1基板とは反対側の端部に光吸収層が形成されているこ
とを特徴とするワイヤーグリッド偏光素子。
【請求項6】
請求項1から5までの何れか一項に記載のワイヤーグリッド偏光素子において、
前記第1基板の前記一方面、前記第1基板の前記一方面とは反対側の面、前記第2基板
の前記第1基板と対向する面、および前記第2基板の前記第1基板とは反対側の面の少な
くとも1面に反射防止層が形成されていることを特徴とするワイヤーグリッド偏光素子。
【請求項7】
請求項1から6までの何れか一項に記載のワイヤーグリッド偏光素子において、
前記第1基板と前記第2基板とは同一の材料からなることを特徴とするワイヤーグリッ
ド偏光素子。
【請求項8】
請求項1から7までの何れか一項に記載のワイヤーグリッド偏光素子において、
前記第1基板に前記凹部が形成されていることを特徴とするワイヤーグリッド偏光素子
【請求項9】
請求項1から7までの何れか一項に記載のワイヤーグリッド偏光素子において、
前記第2基板に前記凹部が形成されていることを特徴とするワイヤーグリッド偏光素子
【請求項10】
請求項1から9までの何れか一項に記載のワイヤーグリッド偏光素子を備えた投射型表
示装置であって、
液晶パネルと、
前記液晶パネルに供給される光を出射する光源部と、
前記液晶パネルによって変調された光を投射する投射光学系と、
を有し、
前記光源部から前記液晶パネルを経由して前記投射光学系に到る光路に前記ワイヤーグ
リッド偏光素子が配置されていることを特徴とする投射型表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属製のワイヤーグリッドを備えたワイヤーグリッド偏光素子、および投射型表示装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
投射型表示装置は、液晶パネルと、液晶パネルに供給される光を出射する光源部と、ライドバルブによって変調された光を投射する投射光学系とを有しており、光源部から液晶パネルを経由して投射光学系に到る光路に偏光素子が配置されている。かかる偏光素子には、有機材料からなる偏光素子が多用されているが、有機材料からなる偏光素子は、耐熱性が低い。そこで、透光性基板にアルミニウムやアルミニウム合金等からなる金属製のワイヤーグリッドが形成されたワイヤーグリッド偏光素子(無機偏光素子)を用いることが提案されている。しかしながら、アルミニウムやアルミニウム合金等からなる金属製のワイヤーグリッドは、空気中の水分や酸素等と反応し、腐食や酸化が発生しやすいという問題がある。一方、透光性基板のワイヤーグリッドが形成されている一方面側に対してスペーサーを介してガラスカバーシートを対向させるとともに、スペーサーが配置されている外周側で透光性基板とガラスカバーシートとを封止剤(接着剤)によって固定した構成が提案されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2005−513547号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の構成のように、スペーサーを介して透光性基板とガラスカバーシートとを対向させた構成では、外周側での透光性基板とガラスカバーシートとの間隔が広いため、封止剤(接着剤)によって封止しても、封止剤を透過して水分や酸素が侵入するおそれがある。
【0005】
以上の問題点に鑑みて、本発明の課題は、ワイヤーグリッドが形成されている空間を確実に密閉することのできるワイヤーグリッド偏光素子、および投射型表示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明に係るワイヤーグリッド偏光素子は、透光性の第1
基板と、前記第1基板の一方面に配置されたワイヤーグリッドと、前記第1基板の前記一
方面に対向する透光性の第2基板と、を有し、前記第1基板の前記一方面、および前記第
2基板の前記第1基板と対向する面の少なくとも一方には、底部と、前記底部の両端にテ
ーパー面を有する内壁と、を含む凹部を有し、前記第1基板と前記第2基板とが前記凹部
の外側で接合されて、前記ワイヤーグリッドが配置されている空間が密閉されており、前
記ワイヤーグリッドは、平面視において、前記底部と重なる領域に配置され、前記第1基
板と前記第2基板とが接合される領域と離隔して配置されていることを特徴とする。
また、前記ワイヤーグリッドは、前記内壁と離隔して配置されている。
【0007】
本発明では、金属製のワイヤーグリッドが形成された透光性の第1基板の一方面側に透光性の第2基板が配置され、第1基板の一方面、および第2基板の第1基板と対向する面の少なくとも一方には、ワイヤーグリッドが形成されている領域と平面視で重なる領域に凹部が形成されている。このため、第1基板と第2基板との間には、スペーサーを用いなくても、ワイヤーグリッドが配置される空間を確保することができる。また、ワイヤーグリッドが配置される空間を密閉する際に凹部の外側で第1基板と第2基板とを接合するので、接合部分での第1基板と第2基板との間隔が狭い。従って、第1基板と第2基板との間から水分や酸素が侵入しにくい等、ワイヤーグリッドが形成されている空間を確実に密閉することができる。
【0008】
本発明において、前記凹部の内壁がテーパー面になっている態様を採用することができる。かかる態様によれば、第1基板に対して研削等の機械加工を行わなくても、エッチング等を行って凹部を効率よく形成することができ、この場合、凹部の内壁がテーパー面となる。
【0009】
本発明において、前記ワイヤーグリッドが配置されている空間に不活性ガスが充填されている態様を採用することができる。かかる態様によれば、ワイヤーグリッドの腐食や酸化を抑制することができる。
【0010】
本発明において、前記ワイヤーグリッドは、アルミニウム、アルミニウムを主成分とする合金、銀、または銀を主成分とする合金からなる態様を採用することができる。かかる態様によれば、可視光波長領域においてワイヤーグリッドでの吸収損失が小さい。
【0011】
本発明において、前記ワイヤーグリッドの前記第1基板とは反対側の端部に光吸収層が形成されている態様を採用することができる。かかる態様によれば、ワイヤーグリッドの先端部での反射を防止することができる。
【0012】
本発明において、前記第1基板の前記一方面、前記第1基板の前記一方面とは反対側の面、前記第2基板の前記第1基板と対向する面、および前記第2基板の前記第1基板とは反対側の面の少なくとも1面に反射防止層が形成されている態様を採用することができる。かかる態様によれば、第1基板や第2基板での反射を抑制することができる。
【0013】
本発明において、前記第1基板と前記第2基板とは同一の材料からなる態様を採用することができる。
【0014】
本発明において、前記第2基板に前記凹部が形成されている態様を採用してもよい。
【0015】
本発明に係るワイヤーグリッド偏光素子は投射型表示装置等に用いることができる。投射型表示装置は、液晶パネルと、前記液晶パネルに供給される光を出射する光源部と、前記液晶パネルによって変調された光を投射する投射光学系と、を有しており、前記光源部から前記液晶パネルを経由して前記投射光学系に到る光路に前記ワイヤーグリッド偏光素子が配置される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の実施形態1に係るワイヤーグリッド偏光素子の外観を示す説明図である。
図2図1に示すワイヤーグリッド偏光素子の断面図である。本発明の実施の形態1に係る電気光学装置の説明図である。
図3図2に示すワイヤーグリッド偏光素子の製造方法を示す工程断面図である。
図4】本発明の実施形態2に係るワイヤーグリッド偏光素子の断面図である。
図5】本発明の実施形態3に係るワイヤーグリッド偏光素子1のワイヤーグリッドを拡大して示す説明図である。
図6】透過型の液晶パネルを用いた投射型表示装置の説明図である。
図7】透過型の液晶パネルを用いた投射型表示装置の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図面を参照して、本発明の実施の形態を説明する。なお、以下の説明で参照する図においては、各層や各部材を図面上で認識可能な程度の大きさとするため、各層や各部材毎に縮尺を異ならしめてある。また、以下の説明では、ワイヤーグリッド4(金属細線41)が延在している方向をY方向とし、金属細線41が並列している方向をX方向としてある。
【0018】
[実施形態1]
(ワイヤーグリッド偏光素子1の構成)
図1は、本発明の実施形態1に係るワイヤーグリッド偏光素子1の外観を示す説明図である。図2は、図1に示すワイヤーグリッド偏光素子1の断面図である。図1および図2に示すワイヤーグリッド偏光素子1は、透光性の第1基板2と、第1基板2の一方面2aに形成された金属製のワイヤーグリッド4とを有している。ワイヤーグリッド4は、平行に並列した複数の金属細線41からなり、金属細線41の太さおよびスペース(金属細線41の間隔)は、例えば400nm以下である。本実施形態において、金属細線41の太さおよびスペースは各々、例えば100nmから200nmである。このように構成したワイヤーグリッド4において、金属細線41のピッチが入射光の波長よりも十分短ければ、入射光のうち、金属細線41の長手方向に直交する電場ベクトルを有する成分である第1偏光の光は透過し、金属細線41の長手方向と平行な電場ベクトルを有する成分である第2偏光の光は反射される。
【0019】
ワイヤーグリッド4(金属細線41)は、アルミニウム、銀、銅、白金、金、またはそれらを主成分とする合金である。本実施形態では、可視光波長領域においてワイヤーグリッド4での吸収損失を小さく抑えるという観点から、アルミニウム、アルミニウムを主成分とする合金、銀、または銀を主成分とする合金からなる。
【0020】
本形態では、ワイヤーグリッド4と水分や酸素との反応を防止するという観点から、第1基板2の一方面2aに対向する透光性の第2基板3を設け、ワイヤーグリッド4が配置された空間を密閉してある。本実施形態において、第1基板2および第2基板3としては、ガラス基板、石英基板、水晶基板等が用いられる。本形態において、第1基板2および第2基板3は、水晶基板であり、同一材料からなる。
【0021】
上記の密閉構造を実現するにあたって、第1基板2の一方面2a、および第2基板3の第1基板2と対向する面3aの少なくとも一方には、ワイヤーグリッド4が形成されている領域と平面視で重なる領域に凹部が形成されており、凹部の外側で第1基板2の一方面2aと第2基板3の面3aとを接合してある。
【0022】
本実施形態では、第2基板3が平板状であり、第1基板2の一方面2aには、ワイヤーグリッド4が形成されている領域と平面視で重なる領域に凹部21が形成されている。従って、ワイヤーグリッド4は、凹部21の底部211に形成されている。また、凹部21の内壁212は、開口側に斜面を向けた順テーパー面になっている。また、第1基板2の一方面2aと第2基板3の面3aとは、凹部21を全周にわたって囲む枠部213において、原子拡散接合、オプチカルコンタクト等のガラス接合、接着剤を用いた接合等の方法で接合されており、ワイヤーグリッド4が配置された空間10が密閉されている。
【0023】
(ワイヤーグリッド偏光素子1の製造方法)
図3は、図2に示すワイヤーグリッド偏光素子1の製造方法を示す工程断面図である。図2に示すワイヤーグリッド偏光素子1の製造工程では、まず、図2に示す凹部形成用マスク形成工程ST1において、第1基板2を製造するための平板状の透光性基板20の一方面20aに対して、レジストの塗布、露光および現像を行って、枠状のエッチングマスク20xを形成する。
【0024】
次に、図2に示す凹部形成用エッチング形成工程ST2において、エッチングマスク20xの開口部20yから透光性基板20の一方面20aに対してエッチングを行った後、エッチングマスク20xを除去する。その結果、透光性基板20の一方面20aに凹部21が形成された第1基板2が得られる。かかるエッチング工程では、例えば、ドライエッチングを行い、エッチングマスク20xをエッチングしながら透光性基板20の一方面20aをエッチングする。従って、凹部21の内壁212がテーパー面となる。それ故、透光性基板20に対して研削等の機械加工を行わなくても、エッチング等を行って凹部21を効率よく形成することができ、この場合、凹部21の内壁212がテーパー面となる。また、凹部21の内壁212がテーパー面になっているので、以降の工程において、第1基板2を洗浄した後、乾燥した際、凹部21の内部に洗浄液が残りにくい。
【0025】
次に、図3に示す成膜工程ST3において、蒸着法やスパッター法等によって、第1基板2の一方面2aにアルミニウム、アルミニウムを主成分とする合金、銀、または銀を主成分とする合金からなる金属膜40を形成する。
【0026】
次に、図3に示すパターニング用マスク形成工程ST4において、レジストの塗布、露光および現像を行って、金属膜40の表面にエッチングマスク40xを形成する。エッチングマスク40xは、図2に示すワイヤーグリッド4と同一のパターンを有している。
【0027】
次に、図2に示すパターニング形成工程ST5において、エッチングマスク40xの開口部40yから金属膜40に対してエッチングを行った後、エッチングマスク40xを除去する。その結果、ワイヤーグリッド4が形成される。
【0028】
次に、接合工程では、図2に示すように、第1基板2の一方面2aと第2基板3の面3aとを凹部21を全周にわたって外側で囲む枠部213において、原子拡散接合、オプチカルコンタクト等のガラス同士の接合、接着剤を用いた接合等の方法で接合すると、ワイヤーグリッド偏光素子1が得られる。なお、上記の工程では、第1基板2(透光性基板20)、および第2基板3として大型基板を用い、接合工程の後、第1基板2(透光性基板20)、および第2基板3を単品サイズに切断してもよい。
【0029】
(本実施形態の主な効果)
以上説明したように、本実施形態に係るワイヤーグリッド偏光素子1では、金属製のワイヤーグリッド4が形成された透光性の第1基板2の一方面2a側に透光性の第2基板3が配置され、第1基板2の一方面2aには、ワイヤーグリッド4が形成されている領域と平面視で重なる領域に凹部21が形成されている。このため、第1基板2と第2基板3との間には、スペーサーを用いなくても、ワイヤーグリッド4が配置される空間10を確保することができる。また、ワイヤーグリッド4が配置される空間10を密閉する際に凹部21の外側で第1基板2と第2基板3とを接合するので、接合部分での第1基板2と第2基板3との間隔が狭い。従って、第1基板2と第2基板3との間から水分や酸素が侵入しにくい等、ワイヤーグリッド4が形成されている空間10を確実に密閉することができる。
【0030】
[実施形態2]
図4は、本発明の実施形態2に係るワイヤーグリッド偏光素子1の断面図である。なお、本実施形態の基本的な構成は、実施形態1と同様であるため、共通する部分には同一の符号を付してそれらの説明を省略する。
【0031】
実施形態1では、凹部21が第1基板2に形成されていたが、本実施形態では、第2基板3に凹部31が形成されている。より具体的には、図4に示すワイヤーグリッド偏光素子1は、実施形態1と同様、透光性の第1基板2と、第1基板2の一方面2aに形成された金属製のワイヤーグリッド4とを有している。ワイヤーグリッド4(金属細線41)は、アルミニウムを主成分とする合金、銀、または銀を主成分とする合金からなる。また、第1基板2の一方面2aに対向する透光性の第2基板3を設け、ワイヤーグリッド4が配置された空間を密閉してある。第1基板2および第2基板3は、水晶基板であり、同一材料からなる。
【0032】
かかる密閉構造を実現するにあたって、第1基板2は平板状であり、第2基板3の一方面3aには、ワイヤーグリッド4が形成されている領域と平面視で重なる領域に凹部31が形成されている。従って、ワイヤーグリッド4は、凹部31の底部311に対向する領域に形成されている。凹部31の内壁312は、開口側に斜面を向けたテ順テーパー面になっている。また、第1基板2の一方面2aと第2基板3の面3aとは、凹部31を全周にわたって囲む枠部313において、原子拡散接合、オプチカルコンタクト等のガラス接合、接着剤を用いた接合等の方法で接合されており、ワイヤーグリッド4が配置された空間10が密閉されている。
【0033】
このように構成したワイヤーグリッド偏光素子1でも、実施の形態1と同様、第1基板2と第2基板3との間には、スペーサーを用いなくても、ワイヤーグリッド4が配置される空間10を確保することができる。また、ワイヤーグリッド4が配置される空間10を密閉する際に凹部31の外側で第1基板2と第2基板3とを接合するので、接合部分での第1基板2と第2基板3との間隔が狭い。従って、第1基板2と第2基板3との間から水分や酸素が侵入しにくい等、ワイヤーグリッド4が形成されている空間10を確実に密閉することができる。また、第1基板2が平板状であるため、第1基板2に対するワイヤーグリッド4の形成が容易である。
【0034】
[実施形態3]
図5は、本発明の実施形態3に係るワイヤーグリッド偏光素子1のワイヤーグリッド4を拡大して示す説明図である。なお、本実施形態の基本的な構成は、実施形態1と同様であるため、共通する部分には同一の符号を付してそれらの説明を省略する。実施形態1、2では、ワイヤーグリッド4が金属細線41のみによって形成されていたが、図5に示すように、ワイヤーグリッド4の第1基板2と反対側の端部(金属細線41の先端部)にシリコンやゲルマニウム等の光吸収層51が形成されている場合に本発明を適用してもよい。かかる構成によれば、第2基板3の側から入射した光のワイヤーグリッド4での反射を抑制することができる。
【0035】
[実施形態4]
実施形態1、2、3において、第1基板2と第2基板3との間でワイヤーグリッド4が配置されている空間10には、窒素等の不活性ガスを充填しておいてもよい。かかる態様によれば、製造直後からワイヤーグリッド4の腐食や酸化をより抑制することができる。かかる態様は、第1基板2と第2基板3との接合工程を窒素ガス雰囲気等の不活性ガス雰囲気中で行うことによって実現することができる。
【0036】
[実施形態5]
実施形態1、2、3、4において、第1基板2の一方面2a、第1基板2の一方面2aとは反対側の面、第2基板3の第1基板2と対向する面3a、および第2基板3の第1基板2とは反対側の面の少なくとも1面に誘電体多層膜からなる反射防止層が形成されている態様を採用することができる。かかる態様によれば、第1基板2や第2基板3での反射を抑制することができる。
【0037】
[投射型表示装置の構成例1]
上述した実施形態に係るワイヤーグリッド偏光素子1を用いた投射型表示装置(液晶プロジェクター)を説明する。図6は、透過型の液晶パネルを用いた投射型表示装置の説明図である。なお、図6に示す投射型表示装置110、および図7を参照して後述する投射型表示装置1000のいずれにおいても、液晶パネルと、液晶パネルに供給される光を出射する光源部と、液晶パネルによって変調された光を投射する投射光学系とが設けられ、光源部から液晶パネルを経由して投射光学系に到る光路に、図1図5を参照して説明したワイヤーグリッド偏光素子1が配置される。
【0038】
図6に示す投射型表示装置110は、透過型の液晶パネルを用いた液晶プロジェクターであり、スクリーン等からなる被投射部材111に光を照射し、画像を表示する。かかる投射型表示装置110においては、以下に説明する第1偏光板115b、116b、117b、および第2偏光板115d、116d、117dの一方または両方に本発明を適用したワイヤーグリッド偏光素子1が用いられる。
【0039】
投射型表示装置110は、装置光軸L0に沿って、照明装置160と、照明装置160から出射された光が供給される複数のライトバルブ(液晶ライトバルブ115〜117)と、液晶ライトバルブ115〜117から出射された光を合成して出射するクロスダイクロイックプリズム119(光合成光学系)と、クロスダイクロイックプリズム119により合成された光を投射する投射光学系118とを有している。また、投射型表示装置110は、ダイクロイックミラー113、114、およびリレー系120を備えている。投射型表示装置110において、液晶ライトバルブ115〜117およびクロスダイクロイックプリズム119は、光学ユニット150を構成している。
【0040】
照明装置160では、装置光軸L0に沿って、光源部161、フライアイレンズ等のレンズアレイからなる第1インテグレーターレンズ162、フライアイレンズ等のレンズアレイからなる第2インテグレーターレンズ163、偏光変換素子164、およびコンデンサーレンズ165が順に配置されている。光源部161は、赤色光R、緑色光Gおよび青色光Bを含む白色光を出射する光源168と、リフレクター169とを備えている。光源168は超高圧水銀ランプ等により構成されており、リフレクター169は、放物線状の断面を有している。第1インテグレーターレンズ162および第2インテグレーターレンズ163は、光源部161から出射された光の照度分布を均一化する。偏光変換素子164は、光源部161から出射された光を、例えばs偏光のような特定の振動方向を有する偏光にする。
【0041】
ダイクロイックミラー113は、照明装置160から出射された光に含まれる赤色光Rを透過させるとともに、緑色光Gおよび青色光Bを反射する。ダイクロイックミラー114は、ダイクロイックミラー113で反射された緑色光Gおよび青色光Bのうち、青色光Bを透過させるとともに緑色光Gを反射する。このように、ダイクロイックミラー113、114は、照明装置160から出射された光を赤色光R、緑色光Gおよび青色光Bに分離する色分離光学系を構成している。
【0042】
液晶ライトバルブ115は、ダイクロイックミラー113を透過して反射ミラー123で反射した赤色光Rを画像信号に応じて変調する透過型の液晶装置である。液晶ライトバルブ115は、λ/2位相差板115a、第1偏光板115b、液晶パネル100R、および第2偏光板115dを備えている。ここで、液晶ライトバルブ115に入射する赤色光Rは、ダイクロイックミラー113を透過しても光の偏光は変化しないことから、s偏光のままである。
【0043】
λ/2位相差板115aは、液晶ライトバルブ115に入射したs偏光をp偏光に変換する光学素子である。第1偏光板115bは、s偏光を遮断してp偏光を透過させる偏光板である。液晶パネル100Rは、p偏光を画像信号に応じた変調によってs偏光(中間調であれば円偏光又は楕円偏光)に変換する構成となっている。第2偏光板115dは、p偏光を遮断してs偏光を透過させる偏光板である。従って、液晶ライトバルブ115は、画像信号に応じて赤色光Rを変調し、変調した赤色光Rをクロスダイクロイックプリズム119に向けて出射する。
【0044】
液晶ライトバルブ116は、ダイクロイックミラー113で反射した後にダイクロイックミラー114で反射した緑色光Gを画像信号に応じて変調する透過型の液晶装置である。液晶ライトバルブ116は、液晶ライトバルブ115と同様に、第1偏光板116b、液晶パネル100G、および第2偏光板116dを備えている。液晶ライトバルブ116に入射する緑色光Gは、ダイクロイックミラー113、114で反射されて入射するs偏光である。第1偏光板116bは、p偏光を遮断してs偏光を透過させる偏光板である。液晶パネル100Gは、s偏光を画像信号に応じた変調によってp偏光(中間調であれば円偏光又は楕円偏光)に変換する構成となっている。第2偏光板116dは、s偏光を遮断してp偏光を透過させる偏光板である。従って、液晶ライトバルブ116は、画像信号に応じて緑色光Gを変調し、変調した緑色光Gをクロスダイクロイックプリズム119に向けて出射する。
【0045】
液晶ライトバルブ117は、ダイクロイックミラー113で反射し、ダイクロイックミラー114を透過した後でリレー系120を経た青色光Bを画像信号に応じて変調する透過型の液晶装置である。液晶ライトバルブ117は、液晶ライトバルブ115、116と同様に、λ/2位相差板117a、第1偏光板117b、液晶パネル100B、および第2偏光板117dを備えている。液晶ライトバルブ117に入射する青色光Bは、ダイクロイックミラー113で反射してダイクロイックミラー114を透過した後にリレー系120の2つの反射ミラー125a、125bで反射することから、s偏光となっている。
【0046】
λ/2位相差板117aは、液晶ライトバルブ117に入射したs偏光をp偏光に変換する光学素子である。第1偏光板117bは、s偏光を遮断してp偏光を透過させる偏光板である。液晶パネル100Bは、p偏光を画像信号に応じた変調によってs偏光(中間調であれば円偏光又は楕円偏光)に変換する構成となっている。第2偏光板117dは、p偏光を遮断してs偏光を透過させる偏光板である。従って、液晶ライトバルブ117は、画像信号に応じて青色光Bを変調し、変調した青色光Bをクロスダイクロイックプリズム119に向けて出射する。
【0047】
リレー系120は、リレーレンズ124a、124bと反射ミラー125a、125bとを備えている。リレーレンズ124a、124bは、青色光Bの光路が長いことによる光損失を防止するために設けられている。リレーレンズ124aは、ダイクロイックミラー114と反射ミラー125aとの間に配置されている。リレーレンズ124bは、反射ミラー125a、125bの間に配置されている。反射ミラー125aは、ダイクロイックミラー114を透過してリレーレンズ124aから出射した青色光Bをリレーレンズ124bに向けて反射する。反射ミラー125bは、リレーレンズ124bから出射した青色光Bを液晶ライトバルブ117に向けて反射する。
【0048】
クロスダイクロイックプリズム119は、2つのダイクロイック膜119a、119bをX字型に直交配置した色合成光学系である。ダイクロイック膜119aは青色光Bを反射して緑色光Gを透過する膜であり、ダイクロイック膜119bは赤色光Rを反射して緑色光Gを透過する膜である。従って、クロスダイクロイックプリズム119は、液晶ライトバルブ115〜117のそれぞれで変調された赤色光Rと緑色光Gと青色光Bとを合成し、投射光学系118に向けて出射する。
【0049】
なお、液晶ライトバルブ115、117からクロスダイクロイックプリズム119に入射する光はs偏光であり、液晶ライトバルブ116からクロスダイクロイックプリズム119に入射する光はp偏光である。このようにクロスダイクロイックプリズム119に入射する光を異なる種類の偏光としていることにより、クロスダイクロイックプリズム119において各液晶ライトバルブ115〜117から入射する光を合成できる。ここで、一般に、ダイクロイック膜119a、119bはs偏光の反射特性に優れている。このため、ダイクロイック膜119a、119bで反射される赤色光R、および青色光Bをs偏光とし、ダイクロイック膜119a、119bを透過する緑色光Gをp偏光としている。投射光学系118は、投影レンズ(図示略)を有しており、クロスダイクロイックプリズム119で合成された光をスクリーン等の被投射部材111に投射する。
【0050】
[投射型表示装置の構成例2]
図7は、反射型の液晶パネルを用いた投射型表示装置の説明図であり、以下に説明するワイヤーグリッド偏光板1032r、1032g、1032bに本発明を適用したワイヤーグリッド偏光素子1が用いられる。また、入射側偏光板1037b、1037g、1037r、および出射側偏光板1038b、1038g、1038rの一方または双方に本発明を適用したワイヤーグリッド偏光素子1を用いてもよい。
【0051】
図7に示す投射型表示装置1000は、光源光を発生する光源部1021と、光源部1021から出射された光源光を赤、緑、青の3色に分離する色分離導光光学系1023と、色分離導光光学系1023から出射された各色の光源光によって照明される光変調部1025とを有している。また、投射型表示装置1000は、光変調部1025から出射された各色の像光を合成するクロスダイクロイックプリズム1027(合成光学系)と、クロスダイクロイックプリズム1027を経た像光をスクリーン(不図示)に投射するための投射光学系である投射光学系1029とを備えている。
【0052】
かかる投射型表示装置1000において、光源部1021は、光源1021aと、一対のフライアイ光学系1021d、1021eと、偏光変換部材1021gと、重畳レンズ1021iとを備えている。本形態においては、光源部1021は、放物面からなるリフレクター1021fを備えており、平行光を出射する。フライアイ光学系1021d、1021eは、システム光軸と直交する面内にマトリクス状に配置された複数の要素レンズからなり、これらの要素レンズによって光源光を分割して個別に集光・発散させる。偏光変換部材1021gは、フライアイ光学系1021eから出射した光源光を、例えば図面に平行なp偏光成分のみに変換して光路下流側光学系に供給する。重畳レンズ1021iは、偏光変換部材1021gを経た光源光を全体として適宜収束させることにより、光変調部1025に設けた複数の液晶パネル100(R)、(G)、(B)を各々均一に重畳照明可能とする。
【0053】
色分離導光光学系1023は、クロスダイクロイックミラー1023aと、ダイクロイックミラー1023bと、反射ミラー1023j、1023kとを備える。色分離導光光学系1023において、光源部1021からの略白色の光源光は、クロスダイクロイックミラー1023aに入射する。クロスダイクロイックミラー1023aを構成する一方の第1ダイクロイックミラー1031aで反射された赤色(R)の光は、反射ミラー1023jで反射された後、ダイクロイックミラー1023bを透過して、入射側偏光板1037r、ワイヤーグリッド偏光板1032r、および光学補償板1039rを介して、p偏光のまま、赤色(R)用の液晶パネル100(R)に入射する。
【0054】
また、第1ダイクロイックミラー1031aで反射された緑色(G)の光は、反射ミラー1023jで反射された後、ダイクロイックミラー1023bでも反射されて、入射側偏光板1037g、ワイヤーグリッド偏光板1032g、および光学補償板1039gを介して、p偏光のまま、緑色(G)用の液晶パネル100(G)に入射する。
【0055】
これに対して、クロスダイクロイックミラー1023aを構成する他方の第2ダイクロイックミラー1031bで反射された青色(B)の光は、反射ミラー1023kで反射されて、入射側偏光板1037b、ワイヤーグリッド偏光板1032b、および光学補償板1039bを介して、p偏光のまま、青色(B)用の液晶パネル100(B)に入射する。なお、光学補償板1039r、1039g、1039bは、液晶パネル100(B)への入射光および出射光の偏光状態を調整することで、液晶層の特性を光学的に補償している。
【0056】
このように構成した投射型表示装置1000では、光学補償板1039r、1039g、1039bを経て入射した3色の光は各々、各液晶パネル100(R)、(G)、(B)において変調される。その際、液晶パネル100(R)、(G)、(B)から出射された変調光のうち、s偏光の成分光は、ワイヤーグリッド偏光板1032r、1032g、1032bで反射し、出射側偏光板1038r、1038g、1038bを介してクロスダイクロイックプリズム1027に入射する。クロスダイクロイックプリズム1027には、X字状に交差する第1誘電体多層膜1027aおよび第2誘電体多層膜1027bが形成されており、一方の第1誘電体多層膜1027aはR光を反射し、他方の第2誘電体多層膜1027bはB光を反射する。従って、3色の光は、クロスダイクロイックプリズム1027において合成され、投射光学系1029に出射される。そして、投射光学系1029は、クロスダイクロイックプリズム1027で合成されたカラーの像光を、所望の倍率でスクリーン(図示せず。)に投射する。
【0057】
(他の投射型表示装置)
なお、投射型表示装置については、光源部として、各色の光を出射するLED光源等を用い、かかるLED光源から出射された色光を各々、別の液晶装置に供給するように構成してもよい。
【符号の説明】
【0058】
1…ワイヤーグリッド偏光素子、2…第1基板、2a、3a…一方面、3…第2基板、4…ワイヤーグリッド、10…空間、20…透光性基板、20x、40x…エッチングマスク、20y、40y…開口部、21、31…凹部、40…金属膜、41…金属細線、51…光吸収層、100、100B、100G、100R…液晶パネル、110、1000…投射型表示装置、115、116、117…液晶ライトバルブ、115b、116b、117b…第1偏光板、115d、116d、117d…第2偏光板、118、1029…投射光学系、161、1021…光源部、1032b、1032g、1032r…ワイヤーグリッド偏光板、1037b、1037g、1037r…入射側偏光板、1038b、1038g、1038r…出射側偏光板。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7