(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
下記式(1−1)、(1−2)及び(1−3)のうちの少なくとも1種で表される第1構造単位と、
下記式(2−1)及び(2−2)のうちの少なくとも一方で表される第2構造単位と、を有することを特徴とする重合体。
【化20】
〔式(1−1)〜(1−3)中、R
1は、それぞれ独立して、ハロゲン原子、炭素数1〜20の1価の炭化水素基、炭素数1〜20の1価のハロゲン化炭化水素基、ニトロ基、シアノ基、1〜3級アミノ基、又は1〜3級アミノ基の塩である。nは、それぞれ独立して、0〜2の整数である。nが2の場合、複数のR
1は、同一であっても異なっていてもよく、任意の組み合わせで結合して環構造の一部を形成していてもよい。〕
【化21】
〔式(2−1)〜(2−2)中、R
2及びR
3は、それぞれ独立して、ハロゲン原子、炭素数1〜20の1価の炭化水素基、炭素数1〜20の1価のハロゲン化炭化水素基、ニトロ基又はシアノ基である。e及びfは、それぞれ独立して、0〜2の整数である。a及びbは、それぞれ独立して、0〜8の整数である。aが2以上の場合、複数のR
2は、同一であっても異なっていてもよく、任意の組み合わせで結合して環構造の一部を形成してもよい。bが2以上の場合、複数のR
3は、同一であっても異なっていてもよく、任意の組み合わせで結合して環構造の一部を形成してもよい。Z
1〜Z
4は、それぞれ独立して、−O−、又は、−S−である。R
5及びR
6は、それぞれ独立して、メチレン基又は炭素数2〜4のアルキレン基である。vは0〜2の整数である。vが2の場合、2つのR
5は同一であっても異なっていてもよく、2つのZ
1は同一であっても異なっていてもよい。wは0〜2の整数である。wが2の場合、2つのR
6は同一であっても異なっていてもよく、2つのZ
4は同一であっても異なっていてもよい。Gは、−O−、−S−、−C(=O)−、−S(O)−、又は、−S(O)
2−である。Lは、下記式(L−1)又は(L−2)で表される2価の基である。yは、1〜3の整数である。yが2以上の場合、複数のLは、同一であっても異なっていてもよい。yが2以上且つaが1以上の場合、複数のR
2は、同一であっても異なっていてもよい。〕
【化22】
〔式(L−1)〜(L−2)中、Aは、それぞれ独立して、−CO−、−S(O)−、又は−S(O)
2−である。Bは、それぞれ独立して、−O−、−S−、又は−N(R
8)−である。R
8は、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜20の1価の炭化水素基、
又は炭素数1〜20の1価のハロゲン化炭化水素基である。R
7は、それぞれ独立して、ハロゲン原子、炭素数1〜20の1価の炭化水素基、炭素数1〜20の1価のハロゲン化炭化水素基、ニトロ基又はシアノ基である。lは、それぞれ独立して、0〜2の整数である。sは、それぞれ独立して、0〜8の整数である。sが2以上の場合、複数のR
7は、同一であっても異なっていてもよく、任意の組み合わせで結合して環構造の一部を形成してもよい。尚、「*」は結合手を示す。〕
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の重合体、樹脂組成物及び樹脂成形体を詳細に説明する。
<重合体>
本発明の重合体(以下、「[A]重合体」ともいう)は、上記第1構造単位と、上記第2構造単位と、を有する重合体である。[A]重合体は、上記各構造単位を2種以上有していてもよい。尚、[A]重合体は、上記第1及び第2構造単位を有する限り、各構造単位の配列やその他の構造については特に限定されない。例えば、[A]重合体が第1及び第2構造単位以外の構造単位を有してもよい。また、[A]重合体が、後述するように、第1及び第2構造単位を含む繰り返しユニット(a)〜(f)を有してもよく、更にその他の繰り返しユニットを有してもよい。
【0010】
[第1構造単位]
[A]重合体における第1構造単位は、下記式(1−1)、(1−2)及び(1−3)のうちの少なくとも1種で表される。
【0011】
【化4】
〔式(1−1)〜(1−3)中、R
1は、それぞれ独立して、ハロゲン原子、炭素数1〜20の1価の炭化水素基、炭素数1〜20の1価のハロゲン化炭化水素基、ニトロ基、シアノ基、1〜3級アミノ基、又は1〜3級アミノ基の塩である。nは、それぞれ独立して、0〜2の整数である。nが2の場合、複数のR
1は、同一であっても異なっていてもよく、任意の組み合わせで結合して環構造の一部を形成していてもよい。〕
【0012】
R
1で表されるハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられる。
【0013】
R
1で表される炭素数1〜20の1価の炭化水素基としては、例えば、1価の鎖状炭化水素基、1価の脂環式炭化水素基、1価の芳香族炭化水素基等が挙げられる。
【0014】
上記1価の鎖状炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基等のアルキル基;エテニル基、プロペニル基、ブテニル基、ペンテニル基等のアルケニル基;エチニル基、プロピニル基、ブチニル基、ペンチニル基等のアルキニル基等が挙げられる。
【0015】
上記1価の脂環式炭化水素基としては、例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等の単環のシクロアルキル基;ノルボルニル基、アダマンチル基等の多環のシクロアルキル基;シクロプロペニル基、シクロブテニル基、シクロペンテニル基、シクロヘキセニル基等の単環のシクロアルケニル基;ノルボルネニル基等の多環のシクロアルケニル基等が挙げられる。
【0016】
上記1価の芳香族炭化水素基としては、例えば、フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基、アントリル基等のアリール基;ベンジル基、フェネチル基、フェニルプロピ
ル基、ナフチルメチル基等のアラルキル基等が挙げられる。
【0017】
R
1で表される炭素数1〜20の1価のハロゲン化炭化水素基としては、例えば、上記R
1で表される基として例示した炭素数1〜20の1価の炭化水素基の水素原子の一部又は全部をフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン原子で置換した基等が挙げられる。
【0018】
R
1で表される2級アミノ基及び3級アミノ基における置換基は特に限定されないが、例えば、上記R
1で表される基として例示した炭素数1〜20の1価の炭化水素基等が挙げられる。R
1で表される1〜3級アミノ基の塩におけるカチオン部位を構成するカチオンは特に限定されず、Na
+等の公知のカチオンとすることができる。
【0019】
R
1としては、第1構造単位を与える単量体の重合反応性や溶解性を向上させる観点から、ハロゲン原子、炭素数1〜6の1価の炭化水素基、炭素数1〜6の1価のハロゲン化炭化水素基、ニトロ基、シアノ基、1〜3級アミノ基、又は1〜3級アミノ基の塩が好ましく、フッ素原子、塩素原子、メチル基、ニトロ基、シアノ基、t−ブチル基、フェニル基、アミノ基がより好ましい。同様の観点から、nとしては、0又は1が好ましく、0がより好ましい。
【0020】
第1構造単位の一方の結合手に対する他方の結合手の位置は特に限定されないが、第1構造単位を与える単量体の重合反応性を向上させる観点からメタ位が好ましい。
【0021】
第1構造単位としては、第1構造単位を与える単量体の重合反応性を向上させる観点、及び各種有機溶媒への溶解性を向上させる観点から、ピリミジン骨格を有する上記式(1−2)で表される構造単位が好ましい。
【0022】
また、[A]重合体における第1構造単位を与える単量体としては、例えば、4,6−ジクロロピリミジン、4,6−ジブロモピリミジン、2,4−ジクロロピリミジン、2,5−ジクロロピリミジン、2,5−ジブロモピリミジン、5−ブロモ−2−クロロピリミジン、5−ブロモ−2−フルオロピリミジン、5−ブロモ−2−ヨードピリミジン、2−クロロ−5−フルオロピリミジン、2−クロロ−5−ヨードピリミジン、2,4−ジクロロ−5−フルオロピリミジン、2,4−ジクロロ−5−ヨードピリミジン、5−クロロ−2,4,6−トリフルオロピリミジン、2,4,6−トリクロロピリミジン、4,5,6−トリクロロピリミジン、2、4,5−トリクロロピリミジン、2,4,5,6−テトラクロロピリミジン、2−フェニル−4,6−ジクロロピリミジン、2−メチルチオ−4,6−ジクロロピリミジン、2−メチルスルフォニル−4,6−ジクロロピリミジン、5−メチル−4,6−ジクロロピリミジン、2−アミノ−4,6−ジクロロピリミジン、5−アミノ−4,6−ジクロロピリミジン、2,5−ジアミノ−4,6−ジクロロピリミジン、4−アミノ−2,6−ジクロロピリミジン、5−メトキシ−4,6−ジクロロピリミジン、5−メトキシ−2,4−ジクロロピリミジン、5−フルオロ−2,4−ジクロロピリミジン、5−ブロモ−2,4−ジクロロピリミジン、5−ヨード−2,4−ジクロロピリミジン、2−メチル−4,6−ジクロロピリミジン、5−メチル−4,6−ジクロロピリミジン、6−メチル−2,4−ジクロロピリミジン、5−メチル−2,4−ジクロロピリミジン、5−ニトロ−2,4−ジクロロピリミジン、4−アミノ−2−クロロ−5−フルオロピリミジン、2−メチル−5−アミノ−4,6−ジクロロピリミジン、5−ブロモ−4−クロロ−2−メチルチオピリミジン;3,6−ジクロロピリダジン、3,5−ジクロロピリダジン、4−メチル−3,6−ジクロロピリダジン;2,3−ジクロロピラジン、2,6−ジクロロピラジン、2,5−ジブロモピラジン、2,6−ジブロモピラジン、2−アミノ−3,5−ジブロモピラジン、5,6−ジシアノ−2,3−ジクロロピラジン等が挙げられる。尚、これらの単量体は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用し
てもよい。
【0023】
[A]重合体における第1構造単位の含有割合の下限は、[A]重合体における全構造単位の合計を100モル%とした場合に、5モル%であることが好ましく、より好ましくは10モル%、更に好ましくは20モル%、特に好ましくは33モル%である。また、上記含有割合の上限は、95モル%であることが好ましく、より好ましくは67モル%、更に好ましくは60モル%、特に好ましくは50モル%である。上記含有割合を上記範囲とすることにより、耐熱性を高く維持しつつ、機械特性及び各種有機溶媒への溶解性をより向上させることができる。
【0024】
[第2構造単位]
[A]重合体における第2構造単位は、下記式(2−1)及び(2−2)のうちの少なくとも一方で表される。
【0025】
【化5】
〔式(2−1)〜(2−2)中、R
2及びR
3は、それぞれ独立して、ハロゲン原子、炭素数1〜20の1価の炭化水素基、炭素数1〜20の1価のハロゲン化炭化水素基、ニトロ基又はシアノ基である。e及びfは、それぞれ独立して、0〜2の整数である。a及びbは、それぞれ独立して、0〜8の整数である。aが2以上の場合、複数のR
2は、同一であっても異なっていてもよく、任意の組み合わせで結合して環構造の一部を形成してもよい。bが2以上の場合、複数のR
3は、同一であっても異なっていてもよく、任意の組み合わせで結合して環構造の一部を形成してもよい。Z
1〜Z
4は、それぞれ独立して、−O−、又は、−S−である。R
5及びR
6は、それぞれ独立して、メチレン基又は炭素数2〜4のアルキレン基である。vは0〜2の整数である。vが2の場合、2つのR
5は同一であっても異なっていてもよく、2つのZ
1は同一であっても異なっていてもよい。wは0〜2の整数である。wが2の場合、2つのR
6は同一であっても異なっていてもよく、2つのZ
4は同一であっても異なっていてもよい。Gは、−O−、−S−、−C(=O)−、−S(O)−、又は、−S(O)
2−である。Lは、下記式(L−1)又は(L−2)で表される2価の基である。yは、1〜3の整数である。yが2以上の場合、複数のLは、同一であっても異なっていてもよい。yが2以上且つaが1以上の場合、複数のR
2は、同一であっても異なっていてもよい。〕
【0026】
【化6】
〔式(L−1)〜(L−2)中、Aは、それぞれ独立して、−C(O)−、−S(O)−、又は−S(O)
2−である。Bは、それぞれ独立して、−O−、−S−、又は−N(R
8)−である。R
8は、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜20の1価の炭化水素基、炭素数1〜20の1価のハロゲン化炭化水素基である。R
7は、それぞれ独立して、ハロゲン原子、炭素数1〜20の1価の炭化水素基、炭素数1〜20の1価のハロゲン化炭化水素基、ニトロ基又はシアノ基である。lは、それぞれ独立して、0〜2の整数である。sは、それぞれ独立して、0〜8の整数である。sが2以上の場合、複数のR
7は、同一であっても異なっていてもよく、任意の組み合わせで結合して環構造の一部を形成してもよい。尚、「*」は結合手を示す。〕
【0027】
R
2〜R
3で表されるハロゲン原子としては、例えば、上記式(1)におけるR
1で表されるハロゲン原子として例示したハロゲン原子等が挙げられる。
【0028】
R
2〜R
3で表される炭素数1〜20の1価の炭化水素基としては、例えば、上記式(1)におけるR
1で表される炭素数1〜20の1価の炭化水素基等が挙げられる。
【0029】
R
2〜R
3で表される炭素数1〜20の1価のハロゲン化炭化水素基としては、例えば、上記式(1)におけるR
1で表される炭素数1〜20の1価のハロゲン化炭化水素基等が挙げられる。
【0030】
R
2〜R
3としては、それぞれ、第2構造単位を与える単量体の重合反応性を向上させる観点から、ハロゲン原子、炭素数1〜6の1価の炭化水素基、炭素数1〜6の1価のハロゲン化炭化水素基、ニトロ基及びシアノ基が好ましく、フッ素原子、塩素原子、メチル基、t−ブチル基、フェニル基、ニトロ基及びシアノ基がより好ましく、フッ素原子、メチル基、t−ブチル基及びフェニル基が更に好ましい。
【0031】
a及びbとしては、それぞれ、第2構造単位を与える単量体の重合反応性を向上させる観点から、0及び1が好ましく、0がより好ましい。同様の観点から、e及びfとしては、0及び1が好ましく、0がより好ましい。
【0032】
Z
1〜Z
4としては、それぞれ、[A]重合体の構造安定性及び重合活性の観点から、−O−であることが好ましい。
【0033】
R
5及びR
6で表される炭素数2〜4のアルキレン基としては、例えば、エチレン基、n−プロピレン基、イソプロピレン基、n−ブチレン基、sec−ブチレン基、t−ブチレン基等が挙げられる。
【0034】
R
5及びR
6としては、それぞれ、第2構造単位を与える単量体の重合反応性を向上させる観点から、メチレン基及びエチレン基が好ましい。
【0035】
v及びwとしては、それぞれ、第2構造単位を与える単量体の重合反応性を向上させる観点から、0及び1が好ましく、0がより好ましい。
【0036】
yとしては、第2構造単位を与える単量体の重合反応性を向上させる観点から、1及び2が好ましく、1がより好ましい。
【0037】
Gは、重合活性、耐熱性の観点から−O−が好ましい。
【0038】
Lは、上記式(L−1)又は(L−2)で表される2価の基である。上記式(L−1)及び(L−2)におけるR
7で表されるハロゲン原子としては、例えば、上記式(1)におけるR
1で表されるハロゲン原子として例示したハロゲン原子等が挙げられる。
【0039】
R
7で表される炭素数1〜20の1価の炭化水素基としては、例えば、上記式(1)におけるR
1で表される炭素数1〜20の1価の炭化水素基等が挙げられる。
【0040】
R
7で表される炭素数1〜20の1価のハロゲン化炭化水素基としては、例えば、上記式(1)におけるR
1で表される炭素数1〜20の1価のハロゲン化炭化水素基等が挙げられる。
【0041】
R
7としては、第2構造単位を与える単量体の重合反応性を向上させる観点から、ハロゲン原子、炭素数1〜3の1価の炭化水素基、炭素数1〜3の1価のハロゲン化炭化水素基、ニトロ基及びシアノ基が好ましく、フッ素原子、塩素原子、メチル基、ニトロ基及びシアノ基がより好ましく、メチル基が更に好ましい。
【0042】
sとしては、それぞれ、第2構造単位を与える単量体の重合反応性を向上させる観点から、0及び1が好ましく、0がより好ましい。同様の観点から、lとしては、それぞれ、0及び1が好ましく、0がより好ましい。
【0043】
R
8で表されるハロゲン原子としては、例えば、上記式(1)におけるR
1で表されるハロゲン原子として例示したハロゲン原子等が挙げられる。
【0044】
R
8で表される炭素数1〜20の1価の炭化水素基としては、例えば、上記式(1)におけるR
1で表される炭素数1〜20の1価の炭化水素基等が挙げられる。
【0045】
R
8で表される炭素数1〜20の1価のハロゲン化炭化水素基としては、例えば、上記式(1)におけるR
1で表される炭素数1〜20の1価のハロゲン化炭化水素基等が挙げられる。
【0046】
式(L−1)及び(L−2)におけるAとしては、機械特性の向上及び線膨張係数の抑制の観点から、
−C(O)−が好ましい。式(L−1)及び(L−2)におけるBとしては、機械特性の向上及び線膨張係数の抑制の観点から、
−O−が好ましい。
【0047】
第2構造単位としては、耐熱性を高く維持しつつ、機械特性及び各種有機溶媒への溶解性をより向上させる観点から、上記式(2−1)で表される構造単位であることが好ましい。
【0048】
また、[A]重合体における第2構造単位を与える単量体としては、例えば、フェノールフタレイン、o−クレゾールフタレイン、p−キシレノールフタレイン、チモールフタレイン、3’,3’’,5’,5’’−テトラヨードフェノールフタレイン、4,5,6
,7−テトラブロモフェノールフタレイン、α−ナフトールフタレイン、フェノールスルホンフタレイン、o−クレゾールスルホンフタレイン、ブロモフェノールレッド、ブロモフェノールブルー、m−クレゾールパープル、クロロフェノールレッド、ブロモクロロフェノールブルー、2−フェニル−3,3’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フタルイミジン、2,3−ジヒドロキシ−3,3−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1H−イソインドール−1−オン、3,3−ビス(4−ヒドロキシフェニル)オキシンドール、フルオレセイン、5−カルボキシフルオレセイン、6−カルボキシフルオレセイン、5−アミノフルオレセイン、6−アミノフルオレセイン等が挙げられる。尚、これらの単量体は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0049】
[A]重合体における第2構造単位の含有割合の下限は、[A]重合体における全構造単位の合計を100モル%とした場合に、5モル%であることが好ましく、より好ましくは10モル%、更に好ましくは20モル%、特に好ましくは33モル%である。また、上記含有割合の上限は、95モル%であることが好ましく、より好ましくは67モル%、更に好ましくは60モル%、特に好ましくは50モル%である。上記含有割合を上記範囲とすることにより、耐熱性を高く維持しつつ、機械特性及び各種有機溶媒への溶解性をより向上させることができる。
【0050】
[他の構造単位]
[A]重合体は、上述した効果を損なわない範囲で、例えば、分子量の調整や溶媒への溶解性向上等のために上記第1及び第2構造単位とは異なる他の構造単位を有してもよい。
【0051】
上記他の構造単位としては、例えば、上記式(2−1)において、Lが、単結合、−O−、−S−、−C(O)−、−S(O)−、−S(O)
2−、−C(O)NH−、−C(O)O−、炭素数1〜20の2価の鎖状炭化水素基、炭素数1〜20の2価のフッ素化鎖状炭化水素基、炭素数6〜20の2価の芳香族炭化水素基、又は炭素数6〜20の2価のフッ素化芳香族炭化水素基である第3構造単位が挙げられる。
【0052】
上記第3構造単位における炭素数1〜20の2価の鎖状炭化水素基としては、例えば、メチレン基、エチレン基、1,2−プロピレン基、1,3−プロピレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基、1−メチル−1,3−プロピレン基、2−メチル−1,3−プロピレン基、2−メチル−1,2−プロピレン基、1−メチル−1,4−ブチレン基、2−メチル−1,4−ブチレン基等の直鎖状又は分岐状のアルキレン基等が挙げられる。また、第3構造単位における炭素数1〜20の2価のフッ素化鎖状炭化水素基としては、炭素数1〜20の2価の鎖状炭化水素基として例示した基の水素原子の一部又は全部がフッ素原子で置換された基等が挙げられる。
【0053】
更に、上記第3構造単位における炭素数6〜20の2価の芳香族炭化水素基としては、例えば、フェニレン基、トリレン基、ナフチレン基、アントリレン基等のアリーレン基等が挙げられる。また、第3構造単位における炭素数6〜20の2価のフッ素化芳香族炭化水素基としては、炭素数6〜20の2価の芳香族炭化水素基として例示した基の水素原子の一部又は全部がフッ素原子で置換された基等が挙げられる。
【0054】
更に、上記他の構造単位としては、下記式(4)で表される第4構造単位等が挙げられる。
【0055】
【化7】
〔式(4)中、R
11は、ハロゲン原子、炭素数1〜20の1価の炭化水素基、炭素数1〜20の1価のハロゲン化炭化水素基、ニトロ基又はシアノ基である。gは、0〜2の整数である。hは、0〜8の整数である。hが2以上の場合、複数のR
11は、同一であっても異なっていてもよく、任意の組み合わせで結合して環構造の一部を形成してもよい。R
12は、メチレン基又は炭素数2〜4のアルキレン基である。cは、0〜2の整数である。cが2の場合、2つのR
12は、同一であっても異なっていてもよい。R
13は、メチレン基又は炭素数2〜4のアルキレン基である。dは、0〜2の整数である。dが2の場合、2つのR
13は、同一であっても異なっていてもよい。〕
【0056】
R
11で表されるハロゲン原子としては、例えば、上記式(1)におけるR
1で表されるハロゲン原子として例示したハロゲン原子等が挙げられる。
【0057】
R
11で表される炭素数1〜20の1価の炭化水素基としては、例えば、上記式(1)におけるR
1で表される炭素数1〜20の1価の炭化水素基等が挙げられる。
【0058】
R
11で表される炭素数1〜20の1価のハロゲン化炭化水素基としては、例えば、上記式(1)におけるR
1で表される炭素数1〜20の1価のハロゲン化炭化水素基等が挙げられる。
【0059】
R
11としては、炭素数1〜10の1価の炭化水素基が好ましく、炭素数1〜10の1価の鎖状炭化水素基がより好ましく、炭素数1〜10の1価の分岐状炭化水素基が更に好ましく、i−ブチル基、sec−ブチル基及びt−ブチル基が特に好ましい。R
11を上記特定の基とすることにより、各種有機溶媒への溶解性をより向上させることができる。
【0060】
gとしては、第4構造単位を与える単量体の重合反応性を向上させる観点から、0及び1が好ましく、0がより好ましい。
【0061】
hとしては、各種有機溶媒への溶解性をより向上させる観点から、1〜8が好ましく、1〜4がより好ましく、1〜2が特に好ましい。
【0062】
R
12及びR
13で表される炭素数2〜4のアルキレン基としては、例えば、エチレン基、n−プロピレン基、イソプロピレン基、n−ブチレン基、sec−ブチレン基、t−ブチレン基等が挙げられる。
【0063】
R
12としては、第4構造単位を与える単量体の重合反応性を向上させる観点から、メチレン基、エチレン基が好ましい。同様の観点から、cとしては、0及び1が好ましく、0がより好ましい。
【0064】
R
13としては、第4構造単位を与える単量体の重合反応性を向上させる観点から、メ
チレン基、エチレン基が好ましい。同様の観点から、dとしては、0及び1が好ましく、0がより好ましい。
【0065】
上記他の構造単位としては、各種有機溶媒への溶解性をより向上させる観点から、第4構造単位が好ましい。第4構造単位としては、同様の観点から、上記式(4)において、−(OR
12)
cO−に対して−O(R
13O)
d−がオルト位に結合している構造単位が好ましい。
【0066】
[A]重合体が上記他の構造単位を含有する場合、他の構造単位の含有割合の合計の下限は、[A]重合体における全構造単位の合計を100モル%とした場合に、1モル%であることが好ましく、より好ましくは5モル%、更に好ましくは10モル%である。また、上記含有割合の上限は、40モル%であることが好ましく、より好ましくは30モル%である。上記含有割合を上記範囲とすることにより、上述した効果を損なわない範囲で分子量の調整を容易に行うことができる。
【0067】
[A]重合体が上記第3構造単位を含有する場合、第3構造単位の含有割合の下限は、[A]重合体における全構造単位の合計を100モル%とした場合に、1モル%であることが好ましく、より好ましくは5モル%、更に好ましくは10モル%である。また、上記含有割合の上限は、60モル%であることが好ましく、より好ましくは40モル%である。上記含有割合を上記範囲とすることにより、上述した効果を損なわない範囲で分子量の調整を容易に行うことができる。
【0068】
[A]重合体が上記第4構造単位を含有する場合、第4構造単位の含有割合の下限は、[A]重合体における全構造単位の合計を100モル%とした場合に、1モル%であることが好ましく、より好ましくは5モル%、更に好ましくは10モル%である。また、上記含有割合の上限は、60モル%であることが好ましく、より好ましくは40モル%である。上記含有割合を上記範囲とすることにより、各種有機溶媒への溶解性をより向上させることができる。
【0069】
[各構造単位の配列]
[A]重合体は、上記第1及び第2構造単位を有する限り、各構造単位の配列については限定されないが、耐熱性を高く維持しつつ、機械特性及び各種有機溶媒への溶解性をより向上させることができるという観点から、上記第1及び第2構造単位を主鎖中に有することが好ましい。ここで、「主鎖」とは、重合体中で相対的に最も長い結合鎖をいう。
【0070】
また、[A]重合体が上記第1及び第2構造単位を主鎖中に有すると、耐熱性、機械特性及び有機溶媒への溶解性に優れるため、例えば、[A]重合体から得られる成形体の熱劣化を抑制できるとともに、高い寸法安定性を付与することができる。
【0071】
[繰り返しユニット]
[A]重合体が第1及び第2構造単位を主鎖中に有する例としては、例えば、下記式(a)に示す繰り返しユニット(a)、下記式(b)に示す繰り返しユニット(b)、下記式(c)に示す繰り返しユニット(c)、下記式(d)に示す繰り返しユニット(d)、下記式(e)に示す繰り返しユニット(e)、下記式(f)に示す繰り返しユニット(f)、これらの繰り返しユニットの組み合わせ等を主鎖中に有する重合体が挙げられる。
【0078】
上記式(a)〜(f)において、R
1及びnは、それぞれ、上記式(1−1)〜(1−3)におけるR
1及びnと同義である。R
2、R
3、R
5、R
6、G、L、Z
1〜Z
4、a、b、e、f、v及びwは、それぞれ、上記式(2−1)〜(2−2)におけるR
2、R
3、R
5、R
6、G、L、Z
1〜Z
4、a、b、e、f、v及びwと同義である。
【0079】
<[A]重合体の合成方法>
本発明における[A]重合体の合成方法は特に限定されないが、例えば、第1構造単位を与える単量体と、第2構造単位を与える単量体と、必要に応じて他の化合物とを、有機溶媒中、所定の条件で反応させることで合成できる。
【0080】
上記他の化合物としては、例えば、アルカリ金属化合物、末端停止剤、相間移動触媒、他の構造単位を与える単量体等が挙げられる。
【0081】
上記アルカリ金属化合物としては、例えば、水素化リチウム、水素化ナトリウム、水素化カリウム等の水素化アルカリ金属;水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の水酸化アルカリ金属;炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等のアルカリ金属炭酸塩;炭酸水素リチウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム等のアルカリ金属炭酸水素塩などが挙げられる。これらの中で、水酸化アルカリ金属及びアルカリ金属炭酸塩が好ましく、水酸化ナトリウム及び炭酸カリウムがより好ましい。
【0082】
上記アルカリ金属化合物を使用する場合、その使用量の下限は、[A]重合体の合成に用いる全単量体のアミノ基に対するアルカリ金属化合物中の金属原子の量として、1倍当量が好ましく、1.1倍当量がより好ましく、1.2倍当量がさらに好ましく、1.5倍当量が特に好ましい。一方、上記使用量の上限としては、3倍当量が好ましく、2倍当量がより好ましい。
【0083】
上記有機溶媒としては、例えば、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチル−2−ピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、γ−ブチロラクトン、スルホラン、ジメチルスルホキシド、ジエチルスルホキシド、ジメチルスルホン、ジエチルスルホン、ジイソプロピルスルホン、ジフェニルスルホン、ジフェニルエーテル、ベンゾフェノン、塩化メチレン、ベンゼン、トルエン、キシレン、ベンゾニトリル、ジアルコキシベンゼン(アルコキシ基の炭素数1〜4)、トリアルコキシベンゼン(アルコキシ基の炭素数1〜4)等が挙げられる。尚、これらの有機溶媒は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0084】
先に例示した有機溶媒に加えて、ヘキサン、シクロヘキサン、オクタン、クロロベンゼン、ジオキサン、テトラヒドロフラン、アニソール、フェネトール等の水と共沸する溶媒を併用することもできる。尚、これらの溶媒は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0085】
[A]重合体の合成時の反応温度は、例えば、20℃以上250℃以下である。反応時間は、例えば、15分以上100時間以下である。[A]重合体は、溶液、粉体やペレットとして得ることができる。粉体で得る場合、貧溶媒中で凝固し、濾別後、洗浄、乾燥することで得られるが、その場合に、アルカリ金属化合物やアンモニア等を含む水溶液や溶媒で前処理してから凝固しても良い。あるいは、アルカリ金属化合物やアンモニア等を含む水溶液や貧溶媒に直接凝固しても得られる。
【0086】
<[A]重合体の重量平均分子量(Mw)>
[A]重合体の重量平均分子量(Mw)の下限は、500であることが好ましく、より
好ましくは1,000、更に好ましくは5,000、より更に好ましくは10,000、特に好ましくは30,000である。また、上記Mwの上限は、好ましくは600,000、より好ましくは400,000、更に好ましくは300,000、更により好ましくは200,000、特に好ましくは150,000である。上記Mwを上記下限以上とすることにより、耐熱性をより向上させることができる。一方、上記Mwが上記上限を超えると、粘度が高くなりすぎ、塗布性や操作性が低下するおそれがある。
【0087】
<[A]重合体のガラス転移温度(Tg)>
[A]重合体のガラス転移温度の下限としては、150℃が好ましく、180℃がより好ましい。上記ガラス転移温度の上限は特に限定されないが、例えば、320℃が好ましく、300℃がより好ましい。上記ガラス転移温度を上記下限以上とすることにより、耐熱性をより向上させることができる。尚、このガラス転移温度は、例えば、示差走査熱量測定装置を用い、窒素雰囲気下、昇温速度20℃/分で測定した値とすることができる。
【0088】
<組成物>
本発明における組成物は、上記[A]重合体及び有機溶媒を含有し、本発明の効果を損なわない範囲で他の成分を含有していてもよい。この組成物は、各種有機溶媒への溶解性に優れる[A]重合体を含有するため、各種用途に適用可能な汎用性の高い組成物として使用できる。また、本発明における組成物は、耐熱性及び機械特性に優れる[A]重合体を含有するため、この組成物から得られる成形体の熱劣化を抑制できるとともに、高い機械特性及び高い寸法安定性を付与することができる。
【0089】
上記組成物は、各種有機溶媒への溶解性に優れているため、極性溶媒、非極性溶媒を問わず使用することができる。具体的な有機溶媒としては、例えば、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチル−2−ピロリドン、N−エチル−2−ピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン等のアミド系溶剤;γ−ブチロラクトン、酢酸ブチル等のエステル系溶剤;シクロペンタノン、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン、ベンゾフェノン等のケトン系溶剤;1,2−メトキシエタン、ジフェニルエーテル等のエーテル系溶剤;1−メトキシ−2−プロパノール、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート等の多官能性溶剤;スルホラン、ジメチルスルホキシド、ジエチルスルホキシド、ジメチルスルホン、ジエチルスルホン、ジイソプロピルスルホン、ジフェニルスルホン等のスルホン系溶剤の他、塩化メチレン、ベンゼン、トルエン、キシレン、ジアルコキシベンゼン(アルコキシ基の炭素数;1〜4)、トリアルコキシベンゼン(アルコキシ基の炭素数;1〜4)等が挙げられる。これらの有機溶媒は、単独で使用しても2種以上を併用してもよい。
【0090】
本発明の組成物における[A]重合体の含有量としては、例えば、組成物の全固形分中、0.01質量%以上100質量%以下とすることができ、また、1質量%以上100質量%以下とすることができる。
【0091】
本発明の組成物における有機溶媒の含有量としては、例えば、[A]重合体100質量部に対して50質量部以上100,000質量部以下とすることができる。
【0092】
上記他の成分としては、例えば、酸化防止剤、滑剤、難燃剤、抗菌剤、着色剤、離型剤、発泡剤、[A]重合体以外の他の重合体等が挙げられる。尚、これらの他の成分は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0093】
上記酸化防止剤としては、例えば、ヒンダードフェノール系化合物、リン系化合物、硫黄系化合物、金属系化合物、ヒンダードアミン系化合物等が挙げられる。これらのなかでも、ヒンダードフェノール系化合物が好ましい。
【0094】
ヒンダードフェノール系化合物としては、分子量500以上のものが好ましい。分子量500以上のヒンダードフェノール系化合物としては、例えば、トリエチレングリコール−ビス[3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、1,6−ヘキサンジオール−ビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、2,4−ビス−(n−オクチルチオ)−6−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルアニリノ)−3,5−トリアジン、ペンタエリスリトールテトラキス[3−(3,5−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、1,1,3−トリス[2−メチル−4−〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ〕−5−t−ブチルフェニル]ブタン、2,2−チオ−ジエチレンビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、N,N−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−ヒドロシンナマミド)、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、トリス−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−イソシアヌレート、3,9−ビス[2−〔3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ〕−1,1−ジメチルエチル]−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン等が挙げられる。
【0095】
本発明における組成物が酸化防止剤を含有する場合、この酸化防止剤の含有量としては、例えば、[A]重合体100質量部に対して0.01質量部以上10質量部以下である。
【0096】
本発明における組成物は、[A]重合体、有機溶媒、及び必要に応じて酸化防止剤等の他の成分を均一に混合することによって調製される。この組成物は、液体状、ペースト状等に調製される。
【0097】
<成形体>
本発明における成形体は、[A]重合体を含有し、例えば、上記組成物により得られる。この成形体は、耐熱性及び機械特性に優れる[A]重合体を含有するため、熱劣化を抑制できるとともに、高い機械特性及び高い寸法安定性を付与することができる。
【0098】
本発明における成形体としては、例えば、光学部品(波長板、位相差板等の光学フィルム、円錐レンズ、球面レンズ、円筒レンズ等の各種特殊レンズ、レンズアレイ等)、プリント配線板用絶縁性フィルム、電気電子部品の封止材、層間絶縁膜、耐熱保護膜、積層板(プリント配線基板、層間接着剤、ソルダレジスト、ソルダペースト等)、接着剤(導電性接着剤、熱伝導性接着剤/接着シート等)、各種コーティング等が挙げられる。特に、“Demonstration of 20μm Pitch Micro-vias by Excimer Laser Ablation in Ultra-thin Dry-film Polymer Dielectrics for Multi-layer RDL on Glass Interposers”、 “2015 IEEE Electronic Components & Technology Conference, 922-927”、 “Demonstration of enhanced system-level reliability of ultra-thin BGA packages with circumferential polymer collars and doped solder alloys”、 “2016 IEEE 66th Electronic Components and Technology Conference, 1377-1385”、 “Modeling, Design, Fabrication and Demonstration of RF Front-End 3D IPAC Module with Ultra-thin Glass Substrates for LTE Applications”、 “2016 IEEE 66th Electronic Components and Technology Conference, 1297-1302”、 “Design, Demonstration and Characterization of Ultra-thin Low-warpage Glass BGA Packages for Smart Mobile Application Processor”、 “2016 IEEE 66th Electronic Components and Technology Conference, 1465-1470”、 “Design and Demonstration of Ultra-thin Glass 3D IPD Diplexers”, 2016 IEEE 66th Electronic Components and Technology Conference, 2348-2352”等に記載され
ている実装構造の材料として好適に使用することができる。
【0099】
本発明における成形体は、例えば、金型成形法、押出成形法、溶剤キャスト法等により製造できる。レンズの製造には、金型成形法が好適である。光学フィルム及びプリント配線板用絶縁性フィルムの製造には、押出成形法及び溶剤キャスト法が好適であり、押出成形法がより好ましい。
【0100】
上記光学フィルムの平均厚みの下限としては、10μmが好ましい。上記平均厚みの上限としては、1,000μmが好ましく、500μmがより好ましい。
【実施例】
【0101】
以下、実施例を挙げて、本発明を更に具体的に説明する。但し、本発明は、これらの実施例に何ら制約されるものではない。尚、下記において、部及び%は、特に断らない限り、質量基準である。
【0102】
[
1H−NMR分析]
重合体の
1H−NMR分析は、核磁気共鳴装置(日本電子社の「ECX400P」)を使用し、測定溶媒として重クロロホルムを用いて行った。
【0103】
[重合体の合成]
[1]重合体の合成
(実施例1)
攪拌装置を備えた四つ口セパラブルフラスコに、フェノールフタレイン(31.8g、100.0mmol)、4,6−ジクロロピリミジン(14.9g、100.0mmol)、及び炭酸カリウム(18.7g、135.0mmol)を量り入れ、N−メチル−2−ピロリドン(109g)を加え、窒素雰囲気下、110℃で6時間反応させた。反応終了後、N−メチル−2−ピロリドン(400g)を加えて、濾過により塩を除去した後、この溶液をメタノール(5.0kg)に投入した。析出した固体を濾別し、少量のメタノールで洗浄し、再度濾別して回収した後、真空乾燥機を用いて減圧下120℃で12時間乾燥し、下記式(P−1)に示す構造単位を有する重合体P−1を得た(収量34.4g、収率87.2%)。
【0104】
尚、得られた重合体P−1の構造は
1H−NMRにより同定した。この際の化学シフト値を以下に示す。
1H−NMR(CDCl
3、400MHz) δ(ppm):6.37(s,1H),7.27(d,4H),7.45(d,4H),7.59(m,2H),7.74(m,1H),7.95(d,1H),8.39(s,1H)
【0105】
【化14】
【0106】
(実施例2)
攪拌装置を備えた四つ口セパラブルフラスコに、フェノールフタレイン(25.5g、80.0mmol)、4,6−ジクロロ−2−フェニルピリミジン(18.0g、80.0mmol)、及び炭酸カリウム(14.9g、108.0mmol)を量り入れ、N−メチル−2−ピロリドン(101g)を加え、窒素雰囲気下、110℃で6時間反応させた。反応終了後、N−メチル−2−ピロリドン(300g)を加えて、濾過により塩を除去した後、この溶液をメタノール(5.0kg)に投入した。析出した固体を濾別し、少量のメタノールで洗浄し、再度濾別して回収した後、真空乾燥機を用いて減圧下120℃で12時間乾燥し、下記式(P−2)に示す構造単位を有する重合体P−2を得た(収量34.6g、収率92.1%)。
【0107】
尚、得られた重合体P−2の構造は
1H−NMRにより同定した。この際の化学シフト値を以下に示す。
1H−NMR(CDCl
3、400MHz) δ(ppm):6.12(s,1H),7.26(m,7H),7.46(d,4H),7.62(m,2H),7.77(m,1H),7.99(d,1H),8.07(d,2H)
【0108】
【化15】
【0109】
(実施例3)
攪拌装置を備えた四つ口セパラブルフラスコに、2−フェニル−3,3’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フタルイミジン(13.8g、35.0mmol)、4,6−ジクロロピリミジン(5.2g、35.0mmol)、及び炭酸カリウム(6.5g、47.3mmol)を量り入れ、N−メチル−2−ピロリドン(44g)を加え、窒素雰囲気下、110℃で19時間反応させた。反応終了後、N−メチル−2−ピロリドン(200g)を加えて、濾過により塩を除去した後、この溶液をメタノール(2.0kg)に投入した。析出した固体を濾別し、少量のメタノールで洗浄し、再度濾別して回収した後、真空乾燥機を用いて減圧下120℃で15時間乾燥し、下記式(P−3)に示す構造単位を有する重合体P−3を得た(収量12.5g、収率76.3%)。
【0110】
尚、得られた重合体P−3の構造は
1H−NMRにより同定した。この際の化学シフト値を以下に示す。
1H−NMR(CDCl
3、400MHz) δ(ppm):6.25(s,1H),6.96(d,2H),7.06(d,4H),7.19−7.24(m,4H),7.32(d,4H),7.50−7.59(m,2H),8.01(d,1H),8.43(s,1H)
【0111】
【化16】
【0112】
(実施例4)
攪拌装置を備えた四つ口セパラブルフラスコに、フルオレセイン(33.2g、100.0mmol)、4,6−ジクロロピリミジン(14.9g、100.0mmol)、及び炭酸カリウム(18.7g、135.0mmol)を量り入れ、N−メチル−2−ピロリドン(109g)を加え、窒素雰囲気下、110℃で6時間反応させた。反応終了後、N−メチル−2−ピロリドン(400g)を加えて、濾過により塩を除去した後、この溶液をメタノール(5.0kg)に投入した。析出した固体を濾別し、少量のメタノールで洗浄し、再度濾別して回収した後、真空乾燥機を用いて減圧下120℃で12時間乾燥し、下記式(P−4)に示す構造単位を有する重合体P−4を得た(収量34.8g、収率85.3%)。
【0113】
【化17】
【0114】
(比較例1)
攪拌装置を備えた四つ口セパラブルフラスコに、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)フルオレン(18.9g、50.0mmol)、4,6−ジクロロピリミジン(7.4g、50.0mmol)、及び炭酸カリウム(9.3g、67.5mmol)を量り入れ、N−メチル−2−ピロリドン(103g)を加え、窒素雰囲気下、110℃で6時間反応させた。反応終了後、N−メチル−2−ピロリドン(329g)を加えて、濾過により塩を除去した後、この溶液をメタノール(9.1kg)に投入した。析出した固体を濾別し、少量のメタノールで洗浄し、再度濾別して回収した後、真空乾燥機を用いて減圧下120℃で12時間乾燥し、下記式(R−1)に示す構造単位を有する重合体R−1を得た(収量11.5g、収率61.8%)。
【0115】
【化18】
【0116】
(比較例2)
攪拌装置を備えた四つ口セパラブルフラスコに、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(11.4g、50.0mmol)、4,6−ジクロロピリミジン(7.4g、50.0mmol)、及び炭酸カリウム(9.3g、67.5mmol)を量り入れ、N−メチル−2−ピロリドン(90g)を加え、窒素雰囲気下、110℃で6時間反応させた。反応終了後、N−メチル−2−ピロリドン(200g)を加えて、濾過により塩を除去した後、この溶液をメタノール(6.1kg)に投入した。析出した固体を濾別し、少量のメタノールで洗浄し、再度濾別して回収した後、真空乾燥機を用いて減圧下120℃で12時間乾燥し、下記式(R−2)に示す構造単位を有する重合体R−2を得た(収量12.1g、収率80%)。
【0117】
【化19】
【0118】
[重合体の物性評価]
上記のようにして得られた各重合体において、下記方法に従い、重量平均分子量(Mw)、ガラス転移温度(Tg)、1%質量減少温度(Td1)、各種有機溶媒に対する溶解性、及び機械特性(引張伸び、引張強度、CTE)を評価した。この評価結果を表1に示す。尚、表中における「−」は、該当する評価項目について測定していないことを意味する。
【0119】
<重量平均分子量(Mw)>
各重合体の重量平均分子量(Mw)は、GPC装置(東ソー社の「HLC−8320型」)を使用し、下記条件で測定した。
カラム:東ソー社の「TSKgel α―M」と、東ソー社の「TSKgel guardcоlumn α」とを連結したもの
展開溶媒:N−メチル−2−ピロリドン(LiBr 10mM添加)
カラム温度:40℃
流速:1.0mL/分
試料濃度:0.75質量%
試料注入量:50μL
検出器:示差屈折計
標準物質:単分散ポリスチレン
【0120】
<ガラス転移温度(Tg)>
各重合体のガラス転移温度(Tg)は、示差走査熱量測定装置(Rigaku社のDSC装置「Thermo Plus DSC8230」)を用いて、窒素雰囲気下、昇温速度20℃/分で得られたサーモグラムのDSC昇温曲線において、ベースラインと変曲点での接線との交点に対応する温度とした。上記変曲点は、DSC昇温曲線の微分曲線であるDDSC曲線におけるピークに対応する温度とした。また、DSCのベースラインの確認には、適宜DDSC曲線を参照した。
【0121】
<1%質量減少温度(Td1)>
各重合体の1%質量減少温度(Td1)は、差動型示差熱天秤(SIIナノテクノロジー社の「TG/DTA6200」)を用いて、窒素雰囲気下、昇温速度10℃/分の条件
で得られた熱質量曲線から、重合体の質量が累計で1質量%減少した時の温度とした。尚、Td1は、耐熱性の指標の1つであり、その値が大きいほど耐熱性に優れると評価できる。
【0122】
<各種有機溶媒に対する溶解性>
各重合体の各種有機溶媒に対する溶解性は、各重合体を以下に示す各種有機溶媒にそれぞれ濃度10質量%となるように加え、攪拌した後、目視で沈殿物を確認できなかった場合を「A」、目視で沈殿物が確認された場合を「B」として評価した。
(有機溶媒の種類)
CPN;シクロペンタノン
GBL;γ−ブチロラクトン
EDM;ジエチレングリコールエチルメチルエーテル
MMP;3−メトキシプロピオン酸メチル
【0123】
<機械特性>
以下のように評価用フィルムを作成し、下記の線膨張係数(CTE)、引張伸び、及び引張強度の測定に用いた。各重合体12.5gを塩化メチレン250mLに溶解し、ガラス基板に流し込み、室温、窒素雰囲気下で溶媒を12時間かけて蒸発させた後、得られたフィルム体を150℃で12時間、真空乾燥を行うことにより、評価用フィルムを得た。
【0124】
(線膨張係数(CTE))
得られた評価用フィルムの線膨張係数を、Seiko Instruments社製、SSC−5200型TMA測定装置を用いて測定した。この際、評価用フィルムを、そのガラス転移温度よりも20℃低い温度まで5℃/minで昇温した際の50〜150℃でのTMA曲線の勾配から線膨張係数を算出した。
【0125】
(引張伸び及び引張強度)
得られた評価用フィルムをJIS K6251 7号形ダンベルの短冊状に切り出し、小型卓上試験機(株式会社島津製作所製、「EZ−LX」)を使用して、室温、5.000mm/minの条件で引張り試験を実施して測定した。
【0126】
【表1】
【0127】
表1から明らかなように、実施例1〜4の重合体は、耐熱性及び機械的特性に優れ、C
TEが低く、且つ、各種有機溶媒への溶解性を向上させることができるものであった。特に、実施例1及び2は、238〜246℃のガラス転移温度を有し、Td1が416〜425℃であり、37〜70%の伸び(引張伸び)と105〜108MPa以上の高い靱性(引張強度)、36〜43ppm/KのCTEを示し、且つ2種以上の有機溶媒に可溶(A評価)であった。一方、比較例1は、ガラス転移温度が240℃、引張強度が122MPa、有機溶媒に2種以上可溶であったが、Td1が383℃と低く、CTEが50ppm/Kと高く、引張伸びが6%と低かった。また、比較例2は、Td1が430℃、引張伸びが102%、引張強度が61MPa、有機溶媒に2種以上可溶であったが、ガラス転移温度が153℃と低く、CTEが57ppm/Kと高かった。これらの結果から、本発明の重合体によれば、高いTg及びTd1を示しつつ、機械特性(CTE、引張伸び及び引張強度)、各種有機溶媒への溶解性を向上できることが確認できた。