【実施例】
【0013】
以下、本発明の一実施例に係る発電制御装置によって制御される発電機を搭載した車両について図面を参照して説明する。
【0014】
図1に示すように、車両1は、内燃機関としてのエンジン2と、エンジン2を制御するECM(Engine Control Module)11と、BMS(Battery Management System)15とを含んで構成される。
【0015】
エンジン2には、複数の気筒が形成されている。本実施例において、エンジン2は、各気筒に対して、吸気行程、圧縮行程、膨張行程及び排気行程からなる一連の4行程を行うように構成されている。エンジン2から出力された回転は、図示しないトランスミッションによって変速されて駆動輪に伝達される。
【0016】
エンジン2には、ISG(Integrated Starter Generator)20と、スタータ21とが連結されている。ISG20は、ベルト22などを介してエンジン2のクランクシャフトに連結されている。ISG20は、電力が供給されることにより回転することでエンジン2を回転駆動させる電動機の機能と、クランクシャフトから入力された回転力を電力に変換する発電機の機能とを有する。本実施例におけるISG20は、本発明に係る発電機を構成する。
【0017】
本実施例では、ISG20は、電動機として機能することで、エンジン2をアイドリングストップ機能による停止状態から再始動させるようになっている。ISG20は、電動機として機能することで、車両1の走行をアシストすることもできる。
【0018】
スタータ21は、図示しないモータとピニオンギヤとを含んで構成されている。スタータ21は、モータを回転させることにより、クランクシャフトを回転させて、エンジン2に始動時の回転力を与えるようになっている。このように、エンジン2は、スタータ21によって始動され、アイドリングストップ機能による停止状態からISG20によって再始動される。
【0019】
車両1は、バッテリとしての第1蓄電装置30と、第2蓄電装置31と、ケーブル36とを備えている。第1蓄電装置30及び第2蓄電装置31は、充電可能な二次電池から構成されている。第1蓄電装置30は鉛電池からなる。
【0020】
第2蓄電装置31は、第1蓄電装置30よりも高出力かつ高エネルギー密度な蓄電装置である。第2蓄電装置31は、第1蓄電装置30と比較して短い時間で充電が可能である。本実施例では、第2蓄電装置31はリチウムイオン電池からなる。なお、第2蓄電装置31はニッケル水素蓄電池であってもよい。
【0021】
第1蓄電装置30及び第2蓄電装置31は、約12Vの出力電圧を発生するようにセルの個数等が設定されたバッテリである。
【0022】
車両1には、電気負荷としての一般負荷37及び被保護負荷38が設けられている。一般負荷37及び被保護負荷38は、スタータ21及びISG20以外の電気負荷である。
【0023】
被保護負荷38は、常に安定した電力供給が要求される電気負荷である。この被保護負荷38は、車両1の横滑りを防止するスタビリティ制御装置、操舵輪の操作力を電気的にアシストする電動パワーステアリング制御装置、及びヘッドライトを含んでいる。なお、被保護負荷38は、図示しないインストルメントパネルのランプ類及びメータ類並びにカーナビゲーションシステムも含んでいる。
【0024】
一般負荷37は、被保護負荷38と比較して安定した電力供給が要求されず、一時的に使用される電気負荷である。一般負荷37には、例えば、図示しないワイパー、及び、エンジン2に冷却風を送風する電動クーリングファンが含まれる。
【0025】
第1蓄電装置30及び第2蓄電装置31は、ケーブル36を介して、スタータ21と、ISG20と、電気負荷としての一般負荷37及び被保護負荷38とに電力を供給可能に接続されている。被保護負荷38に対しては、第1蓄電装置30と第2蓄電装置31とが並列に電気的に接続されている。
【0026】
第2蓄電装置31と被保護負荷38との間のケーブル36には、スイッチ40が設けられている。第1蓄電装置30と被保護負荷38との間のケーブル36には、スイッチ41が設けられている。
【0027】
BMS15は、後述するECM11から指示信号を受信する機能を有しており、原則受信した指示信号に応じてスイッチ40、41を開閉制御する。ただし、第2蓄電装置31の保護や、
被保護負荷38の安定作動を目的として、ECM11からの指示信号とは異なる動作を行うこともある。
【0028】
BMS15は、スイッチ40、41の開閉を制御することで、第2蓄電装置31の充放電及び被保護負荷38への電力供給を制御している。BMS15は、アイドリングストップによりエンジン2が停止しているときは、スイッチ40を閉じてスイッチ41を開くことで、高出力かつ高エネルギー密度な第2蓄電装置31から被保護負荷38に電力を供給するようになっている。
【0029】
BMS15は、エンジン2をスタータ21によって始動するとき、及び、アイドリングストップ制御によって停止しているエンジン2をISG20によって再始動するときに、スイッチ40を閉じてスイッチ41を開くことで、第1蓄電装置30からスタータ21又はISG20に電力を供給するようになっている。スイッチ40を閉じてスイッチ41を開いた状態では、第1蓄電装置30から一般負荷37にも電力が供給される。
【0030】
このように、第1蓄電装置30は、エンジン2を始動する始動装置としてのスタータ21及びISG20に少なくとも電力を供給するようになっている。第2蓄電装置31は、一般負荷37及び被保護負荷38に少なくとも電力を供給するようになっている。
【0031】
第2蓄電装置31は、一般負荷37と被保護負荷38の両方に電力を供給可能に接続されているが、常に安定した電力供給が要求される被保護負荷38に優先的に電力を供給するようにスイッチ40、41がBMS15により制御される。
【0032】
BMS15は、第1蓄電装置30及び第2蓄電装置31の充電状態(充電残量)、並びに、一般負荷37及び被保護負荷38への作動要求を考慮し、被保護負荷38が安定して作動することを優先して、スイッチ40、41を上述した例と異なるように制御することがある。
【0033】
ECM11及びBMS15は、それぞれCPU(Central Processing Unit)と、RAM(Random Access Memory)と、ROM(Read Only Memory)と、バックアップ用のデータなどを保存するフラッシュメモリと、入力ポートと、出力ポートとを備えたコンピュータユニットによって構成されている。
【0034】
これらのコンピュータユニットのROMには、各種定数や各種マップ等とともに、当該コンピュータユニットをECM11及びBMS15としてそれぞれ機能させるためのプログラムが格納されている。
【0035】
すなわち、CPUがRAMを作業領域としてROMに格納されたプログラムを実行することにより、これらのコンピュータユニットは、本実施例におけるECM11及びBMS15としてそれぞれ機能する。
【0036】
本実施例において、ECM11は、アイドリングストップ制御を実行するようになっている。このアイドリングストップ制御において、ECM11は、所定の停止条件の成立時にエンジン2を停止させ、所定の再始動条件の成立時にISG20を駆動してエンジン2を再始動させるようになっている。このため、エンジン2の不要なアイドリングが行われなくなり、車両1の燃費を向上させることができる。
【0037】
車両1には、CAN(Controller Area Network)等の規格に準拠した車内LAN(Local Area Network)を形成するためのCAN通信線49が設けられている。ECM11及びBMS15は、CAN通信線49に接続され、CAN通信線49を介して制御信号等の信号の送受信を相互に行う。
【0038】
ECM11には、電流センサ、電圧センサ及びバッテリ温度センサなどにより構成されるバッテリセンサ32が接続されている。ECM11は、バッテリセンサ32の出力により第1蓄電装置30の充放電電流(以下「Pbバッテリ電流」という)、第1蓄電装置30の端子間電圧(以下「Pbバッテリ電圧」という)及び第1蓄電装置30の温度(以下「バッテリ温度」という)を検知できるようになっている。
【0039】
ECM11は、第1蓄電装置30の放電容量に対する放電量の比を表す放電深度(以下「DOD(Depth of Discharge)」という)[%]を算出するDOD算出部11Aとしての機能を有する。ECM11は、放電中の第1蓄電装置30の放電電流の積算値と第1蓄電装置30の放電容量とに基づきDODを算出する。具体的には、ECM11は、算出式「DOD[%]=100−第1蓄電装置30のSOC(State of Charge)[%]」に基づきDODを算出する。
【0040】
ECM11は、図示しないISG20を制御するためのコントローラを介して、ISG20の発電電圧を制御する発電電圧制御部11Bとしての機能を有する。ECM11は、後述する発電指示電圧上昇制御を実行することにより、ISG20による発電を開始する際に、異なる複数の変化率で発電電圧を上昇させるようになっている。本実施例における発電電圧は、ECM11からISG20に対して指示される発電指示電圧を意味する。
【0041】
本実施例においては、発電指示電圧を上昇させる際の発電指示電圧の変化率ΔVとして、発電指示電圧の上昇度合いが急な第1の変化率ΔV1と、第1の変化率ΔV1よりも小さい、すなわち第1の変化率ΔV1よりも発電指示電圧の上昇度合いが緩やかな第2の変化率ΔV2とを用いる。
【0042】
第1の変化率ΔV1及び第2の変化率ΔV2は、予め実験的に求められてECM11のROMに記憶された固定値であってもよいし、第1蓄電装置30の状態やエンジン回転速度等に応じて変動する値であってもよい。
【0043】
第1の変化率ΔV1と第2の変化率ΔV2とは、発電指示電圧を上昇させる際に、発電指示電圧が所定の変化率切替電圧閾値Va以下であるのか、所定の変化率切替電圧閾値Vaよりも大きいかによって切り替えられるようになっている。
【0044】
ECM11は、ISG20による発電を開始する際に、発電指示電圧が所定の変化率切替電圧閾値Va以下である場合には発電指示電圧の変化率ΔVとして第1の変化率ΔV1を設定する。ECM11は、ISG20による発電を開始する際に、発電指示電圧が所定の変化率切替電圧閾値Vaよりも大きい場合には発電指示電圧の変化率ΔVとして第2の変化率ΔV2を設定する。
【0045】
これにより、ECM11は、ISG20による発電を開始する際に、発電指示電圧が所定の変化率切替電圧閾値Va以下である場合に第1の変化率ΔV1で発電指示電圧を上昇させ、発電指示電圧が所定の変化率切替電圧閾値Vaよりも大きい場合に第2の変化率ΔV2で発電指示電圧を上昇させることができる。
【0046】
ECM11は、第1蓄電装置30のDODとバッテリ温度とに基づいて
図2に示す設定マップを参照して第1の変化率切替電圧閾値V1を算出するようになっている。
図2に示す設定マップにおいては、DODが大きく、かつバッテリ温度が低いほど第1の変化率切替電圧閾値V1の値が小さくなり、またDODが小さく、かつバッテリ温度が高いほど第1の変化率切替電圧閾値V1の値が大きくなるように規定されている。
【0047】
ECM11は、Pbバッテリ電圧とバッテリ温度とに基づいて第2の変化率切替電圧閾値V2を算出するようになっている。具体的には、ECM11は、第1蓄電装置30のバッテリ温度に基づき
図3の設定マップを参照してマージン電圧Vmgを算出する。
図3の設定マップにおいては、バッテリ温度が高いほどマージン電圧Vmgの値が小さくなるように規定されている。
【0048】
ECM11は、Pbバッテリ電圧からマージン電圧Vmgを差し引いた値を第2の変化率切替電圧閾値V2として算出する。したがって、第2の変化率切替電圧閾値V2は、バッテリ温度が高いほど大きな値として算出される。
【0049】
ECM11は、上述のように算出した第1の変化率切替電圧閾値V1と第2の変化率切替電圧閾値V2とのうち小さい方の値を所定の変化率切替電圧閾値Vaとして設定するようになっている。ECM11は、第1の変化率切替電圧閾値V1と第2の変化率切替電圧閾値V2とが同一の場合は、第1の変化率切替電圧閾値V1を所定の変化率切替電圧閾値Vaとして設定する。
【0050】
次に、
図4から
図6を参照して、本実施例に係る発電制御装置によって実行される発電電圧制御における発電指示電圧上昇制御について説明する。発電電圧制御は、ECM11によって所定の時間間隔で繰り返し実行される。発電電圧制御が開始されると、発電電圧は第1蓄電装置
30が充電される程度の所定の値になるよう制御されるが、このときの発電電圧を所定の値にするまでの間の上昇のさせ方を、
図4に示す発電指示電圧上昇制御によって制御する。すなわち、発電指示電圧上昇制御は、ECM11によって実行されるものであり、発電電圧制御の一部分のことを示す。
【0051】
図4に示すように、ECM11は、エンジン始動直後か否かを判定する(ステップS1)。具体的には、ECM11は、エンジン始動が完了してからの時間(以下、「始動後時間」という)が所定時間以内であるか否かを判定する。ECM11は、始動後時間が所定時間以内である場合にエンジン始動直後であると判定する。ECM11は、エンジン2が自立運転可能な完爆判定エンジン回転速度まで実際のエンジン回転速度が達した場合、すなわちエンジン完爆判定が成立した場合に、エンジン始動が完了したと判断する。
【0052】
ECM11は、ステップS1においてエンジン始動直後でないと判定した場合には、発電指示電圧上昇制御を終了する。ECM11は、ステップS1においてエンジン始動直後であると判定した場合には、発電指示電圧を所定値に維持する(ステップS2)。本ステップにおける「所定値」は、発電指示電圧の最小値であり、例えば10.6V程度である。なお、所定値は、発電指示電圧の最小値に限られない。
【0053】
次いで、ECM11は、エンジン始動が完了した後、所定時間が経過したか否かを判定する(ステップS3)。ECM11は、エンジン始動が完了した後、所定時間が経過してないと判定した場合には、処理をステップS2に戻す。
【0054】
ECM11は、エンジン始動が完了した後、所定時間が経過したと判定した場合には、処理をステップS4に移行する。これにより、発電指示電圧は、エンジン始動が完了した後、所定時間の間、所定値に維持される。
【0055】
ステップS3における「所定時間」は、エンジン始動が完了してからエンジン回転速度が安定するまでの時間に相当し、本実施例では例えば2秒程度とされる。これにより、ISG20による発電による発電負荷がエンジン始動完了直後のエンジン回転速度の安定化を妨げることがない。なお、所定時間は、車両やエンジンの諸元等により異なり、2秒に限られない。
【0056】
ステップS4において、ECM11は、
図5に示す変化率決定処理を実行する。本ステップでは、後述するステップS5において発電指示電圧を徐々に上昇させる際の発電指示電圧の変化率ΔVが決定される。
【0057】
次いで、ECM11は、ステップS4の変化率決定処理で決定された発電指示電圧の変化率ΔVで、ISG20に対する発電指示電圧を徐々に上昇させる(ステップS5)。
【0058】
その後、ECM11は、Pbバッテリ電圧が所望のPbバッテリ電圧に達したか否かを判定する(ステップS6)。所望のPbバッテリ電圧は、第1蓄電装置30に継続して充電することができる電圧であり、満充電時のPbバッテリ電圧よりも高い値である。本実施例においては例えば14Vから15V程度である。
【0059】
ECM11は、Pbバッテリ電圧が所望のPbバッテリ電圧に達していないと判定した場合には、処理をステップS4に戻す。ECM11は、Pbバッテリ電圧が所望のPbバッテリ電圧に達したと判定した場合には、発電指示電圧上昇制御を終了する。
【0060】
次に、
図5に示す変化率決定処理について説明する。変化率決定処理は、上述した通り、
図4に示す発電指示電圧上昇制御のステップS4において実行される処理である。
【0061】
図5に示すように、ECM11は、ステップS11において
図6に示す変化率切替閾値算出処理を実行する。本ステップでは、後述するステップS12の判定で用いられる変化率切替
電圧閾値Vaが算出される。
【0062】
次いで、ECM11は、発電指示電圧がステップS11の変化率切替閾値算出処理で算出された変化率切替
電圧閾値Va以下であるか否かを判定する(ステップS12)。
【0063】
ECM11は、発電指示電圧が変化率切替
電圧閾値Va以下であると判定した場合には、第1の変化率ΔV1を発電指示電圧の変化率ΔVとして決定し(ステップS13)、変化率決定処理を終了する。
【0064】
ECM11は、発電指示電圧が変化率切替
電圧閾値Va以下でないと判定した場合には、第2の変化率ΔV2を発電指示電圧の変化率ΔVとして決定し(ステップS14)、変化率決定処理を終了する。
【0065】
次に、
図6に示す変化率切替閾値算出処理について説明する。変化率切替閾値算出処理は、上述した通り、
図5に示す変化率決定処理のステップS11において実行される処理である。
【0066】
図6に示すように、ECM11は、ステップS21において、第1蓄電装置30のDODとバッテリ温度とに基づいて
図2に示す設定マップを参照して第1の変化率切替電圧閾値V1を算出する。
【0067】
次いで、ECM11は、Pbバッテリ電圧とバッテリ温度とに基づいて第2の変化率切替電圧閾値V2を算出する(ステップS22)。具体的には、ECM11は、Pbバッテリ電圧からマージン電圧Vmgを差し引いた値を第2の変化率切替電圧閾値V2として算出する。
【0068】
次いで、ECM11は、第1の変化率切替電圧閾値V1が第2の変化率切替電圧閾値V2以下であるか否かを判定する(ステップS23)。
【0069】
ECM11は、第1の変化率切替電圧閾値V1が第2の変化率切替電圧閾値V2以下であると判定した場合には、第1の変化率切替電圧閾値V1を所定の変化率切替電圧閾値Vaとして設定して(ステップS24)、変化率切替閾値算出処理を終了する。
【0070】
ECM11は、第1の変化率切替電圧閾値V1が第2の変化率切替電圧閾値V2以下でないと判定した場合には、第2の変化率切替電圧閾値V2を所定の変化率切替電圧閾値Vaとして設定して(ステップS25)、変化率切替閾値算出処理を終了する。
【0071】
ここで、上述した所定の変化率切替電圧閾値Vaは、Pbバッテリ電圧以下である。ISG20の発電指示電圧がPbバッテリ電圧を超えると、第1蓄電装置30への充電が開始される。このとき、ISG20の駆動は、エンジン2の負荷となる。このため、第1蓄電装置30への充電が開始される際には、小さい変化率で発電指示電圧を上昇させてエンジン2に急激な負荷がかからないようにするのが好ましい。
【0072】
本実施例では、第1蓄電装置30への充電が開始される際にエンジン2に急激な負荷がかからないように、第1蓄電装置30への充電が開始される際には小さい変化率で発電指示電圧を上昇させる。一方で、第1蓄電装置30への充電が開始されるまでは、発電指示電圧を大きな変化率で上昇させて速やかに第1蓄電装置30への充電が開始されるようにしている。
【0073】
したがって、発電指示電圧を大きな変化率で上昇させている状態から発電指示電圧を小さな変化率で上昇させる状態に切り替えるタイミングは、少なくとも第1蓄電装置30への充電が開始される前であるのが好ましい。このため、本実施例では、発電指示電圧の変化率ΔVが第1の変化率ΔV1から第2の変化率ΔV2に切り替わる基準となる所定の変化率切替電圧閾値VaがPbバッテリ電圧以下に設定される。
【0074】
次に、
図7及び
図8を参照して、本実施例のエンジン始動時のタイムチャートについて、発電指示電圧上昇制御が実行されない比較例と比較して説明する。
図7及び
図8は、いずれもISGによるエンジン再始動時のタイムチャートである。
【0075】
図7に示すように、本実施例では、時刻t1でエンジン完爆判定が成立してエンジン始動が完了すると、その後、時刻t2までの所定時間P1の間、発電指示電圧が例えば最小値に維持される。所定時間P1は、エンジン始動が完了してからエンジン回転速度が安定するまでの時間に相当する。
【0076】
その後、本実施例では、時刻t2から発電指示電圧の上昇が開始される。このときの発電指示電圧の変化率は、上昇度合いが急な第1の変化率ΔV1である。
【0077】
その後、第1の変化率ΔV1で上昇する発電指示電圧が時刻t3で変化率切替
電圧閾値Vaを超えると、発電指示電圧の変化率が第1の変化率ΔV1から、第1の変化率ΔV1よりも上昇度合いが緩やかな第2の変化率ΔV2に切り替えられる。これにより、時刻t3から第2の変化率ΔV2で発電指示電圧が上昇する。
【0078】
その後、発電指示電圧は、時刻t4でPbバッテリ電圧を超える。時刻t4において、発電指示電圧がPbバッテリ電圧を超えると、第1蓄電装置30にPbバッテリ電流として充電電流が流れ、第1蓄電装置30への充電が開始される。これにより、時刻t4からPbバッテリ電圧の上昇が開始される。
【0079】
時刻t4までは、発電指示電圧がPbバッテリ電圧を超えないため、ECM11はISG20に対して発電指示を出力しない。したがって、時刻t4までは、ISG発電トルクも生じない。
【0080】
その後、時刻t5において、Pbバッテリ電圧が所望のPbバッテリ電圧に達し、発電指示電圧上昇制御が終了する。すなわち、発電電圧の上昇が終了し、一定の値となるよう制御される。発電指示電圧上昇制御が終了した後は、第1蓄電装置30の残容量に応じて充電が継続される。充電が継続される際の発電電圧は、上述した所望のPbバッテリ電圧に制御される。
【0081】
これに対し、
図8に示すように、比較例では、エンジン始動完了後、所定時間P1経過後の時刻t12から発電指示電圧の上昇が開始されるが、このときの発電指示電圧の変化率は本実施例と比べて緩やかな変化率である。
【0082】
このため、比較例では、発電指示電圧の上昇を開始してから発電指示電圧がPbバッテリ電圧を超えるまで、比較的長い時間を要する。すなわち、比較例では、時刻t12から時刻t13までの時間P3が比較的長い。
【0083】
これに対して、本実施例では、
図7に示すように、まず上昇度合いが急な第1の変化率ΔV1で発電指示電圧を上昇させ、その後、上昇度合いが緩やかな第2の変化率ΔV2で発電指示電圧を上昇させる。このため、本実施例では、比較例と比較して、発電指示電圧の上昇を開始してから発電指示電圧がPbバッテリ電圧を超えるまでの時間P2が大幅に短縮される。
【0084】
以上のように、本実施例に係る発電制御装置は、ISG20による発電を開始する際、発電指示電圧が変化率切替
電圧閾値Vaに達するまでは変化率の大きな第1の変化率ΔV1で発電指示電圧を上昇させる。
【0085】
このため、本実施例に係る発電制御装置は、発電指示電圧がPbバッテリ電圧を超えるまでの時間P2(
図7参照)を短くすることができ、第1蓄電装置30への充電を速やかに開始することができる。第1蓄電装置30への充電を速やかに開始できれば、例えば長い充電時間を確保することができ、第1蓄電装置30の充電量を増やすことができる。
【0086】
また、本実施例に係る発電制御装置は、ISG20による発電を開始する際、発電指示電圧が変化率切替
電圧閾値Vaを超えた後は第1の変化率ΔV1よりも小さい第2の変化率ΔV2で発電指示電圧を上昇させる。
【0087】
このため、本実施例に係る発電制御装置は、第1蓄電装置30への充電が開始される際には発電指示電圧の上昇度合いを緩やかにすることができる。これにより、本実施例に係る発電制御装置は、第1蓄電装置30への充電が開始される際に、エンジン2に急激な負荷がかからないようにすることができる。したがって、本実施例に係る発電制御装置は、ISG20による発電開始によってエンジン2の始動及び運転が妨げられることを防止することができる。
【0088】
また、本実施例に係る発電制御装置は、第1の変化率切替電圧閾値V1と第2の変化率切替電圧閾値V2とのうち小さい方の値を変化率切替電圧閾値Vaとして設定する。このため、本実施例に係る発電制御装置は、例えばDODの算出に誤差が生じたり、Pbバッテリ電圧が誤検出されたりした場合であっても、Pbバッテリ電圧を超える変化率切替電圧閾値Vaが設定されることを防止することができる。
【0089】
なお、本実施例に係る発電制御装置においては、
図4に示すように、エンジン始動直後に発電指示電圧上昇制御が実行される例について説明したが、ISG20に対する発電指示電圧を上昇させるような状況であれば、エンジン始動直後に限らず発電指示電圧上昇制御を実行してもよい。
【0090】
本発明の実施例を開示したが、当業者によっては本発明の範囲を逸脱することなく変更が加えられうることは明白である。すべてのこのような修正および等価物が次の請求項に含まれることが意図されている。