特許第6922461号(P6922461)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6922461位置情報提供装置及び位置情報提供システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6922461
(24)【登録日】2021年8月2日
(45)【発行日】2021年8月18日
(54)【発明の名称】位置情報提供装置及び位置情報提供システム
(51)【国際特許分類】
   G01S 1/68 20060101AFI20210805BHJP
   G01C 21/26 20060101ALI20210805BHJP
   G08G 1/005 20060101ALI20210805BHJP
   G01S 5/02 20100101ALI20210805BHJP
【FI】
   G01S1/68
   G01C21/26 P
   G08G1/005
   G01S5/02 Z
【請求項の数】5
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2017-118381(P2017-118381)
(22)【出願日】2017年6月16日
(65)【公開番号】特開2019-2819(P2019-2819A)
(43)【公開日】2019年1月10日
【審査請求日】2020年5月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005496
【氏名又は名称】富士フイルムビジネスイノベーション株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】特許業務法人太陽国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】110000039
【氏名又は名称】特許業務法人アイ・ピー・ウィン
(72)【発明者】
【氏名】大杉 彰義
(72)【発明者】
【氏名】橋本 浩平
(72)【発明者】
【氏名】張 軍
【審査官】 東 治企
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−199603(JP,A)
【文献】 特開2005−252419(JP,A)
【文献】 国際公開第2017/006528(WO,A1)
【文献】 特開2015−176157(JP,A)
【文献】 特開2004−246831(JP,A)
【文献】 特開2009−302888(JP,A)
【文献】 特開2017−106787(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/005
G09B 29/00−29/14
G01C 21/00−21/36
G01C 23/00−25/00
G01S 1/68
G01S 5/00−5/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
到達角度が直進方向に対して±15度の範囲以内である電波を介して位置情報を送信する送信部と、隣接する他の位置情報提供装置が設けられた方向に対して電波を送信する横方向送信部とを有する複数の位置情報提供装置と、
複数の前記横方向送信部から送信された電波を受信して、最も電波強度が強い電波を正面から受信した位置情報提供装置の電波として、自装置を所持した対象者が向いている方向を判断する判断部と、前記送信部からの電波を受信して現在の位置情報を前記対象者に通知し、かつ、前記判断部により判断された前記対象者が向いている方向を前記対象者に通知する通知部とを有する端末装置と、
を備えた位置情報提供システム。
【請求項2】
前記送信部は、設けられた位置に応じた位置情報を送信する請求項1に記載の位置情報提供システム
【請求項3】
前記送信部は、IEEE802.11adで規格されたWiGigにより情報を送信する請求項1又は2に記載の位置情報提供システム
【請求項4】
前記位置情報提供装置は、複数設けられている請求項1乃至3のいずれかに記載の位置情報提供システム。
【請求項5】
前記端末装置は、位置情報を音声で通知する請求項1乃至4のいずれかに記載の位置情報提供システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、位置情報提供装置及び位置情報提供システムに関する。
【背景技術】
【0002】
視覚が不自由な者が位置情報を得るための発明として、例えば、下記特許文献1に、外耳道内に挿入され、音声信号または音響信号を電気的信号に変換させた後、信号処理して体内に送信する音声処理器、及び乳突洞内に移植され、外部からRF通信によって電力の供給を受け、上記音声処理器から信号を受信して、蝸牛内の聴神経を刺激する体内移植体を含み、上記音声処理器と上記体内移植体間では赤外線通信によって信号を送受信することを特徴とする人工内耳システムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2011−516198号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
視覚が不自由な者が現在位置の情報を取得した場合、この現在位置を拠点としてどの方向に向いているのかを判断することが困難となる課題がある。
【0005】
本発明は、到達角度が直進方向に対して±15度の範囲を超える電波を送信する場合に比べて、指向性の高い電波により位置情報を送信することができる位置情報提供装置及び位置情報提供システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に係る本発明は、到達角度が直進方向に対して±15度の範囲以内である電波を介して位置情報を送信する送信部と、隣接する他の位置情報提供装置が設けられた方向に対して電波を送信する横方向送信部とを有する複数の位置情報提供装置と、
複数の前記横方向送信部から送信された電波を受信して、最も電波強度が強い電波を正面から受信した位置情報提供装置の電波として、自装置を所持した対象者が向いている方向を判断する判断部と、前記送信部からの電波を受信して現在の位置情報を前記対象者に通知し、かつ、前記判断部により判断された前記対象者が向いている方向を前記対象者に通知する通知部とを有する端末装置と、
を備えた位置情報提供システムである。
【0007】
請求項2に係る本発明は、前記送信部は、設けられた位置に応じた位置情報を送信する請求項1に記載の位置情報提供システムである。
【0008】
請求項3に係る本発明は、前記送信部は、IEEE802.11adで規格されたWiGigにより情報を送信する請求項1又は2に記載の位置情報提供システムである。
【0009】
請求項4に係る本発明は、前記位置情報提供装置は、複数設けられている請求項1乃至3のいずれかに記載の位置情報提供システムである。
【0010】
請求項5に係る本発明は、前記端末装置は、位置情報を音声で通知する請求項1乃至4のいずれかに記載の位置情報提供システムである。
【発明の効果】
【0013】
請求項1にかかる本発明によれば、到達角度が直進方向に対して±15度の範囲を超える電波を送信する場合に比べて、指向性の高い電波により位置情報を送信することができるようになる。
また、請求項1にかかる本発明によれば、位置情報を受信する端末装置がない場合に比べて、端末装置から位置情報を得ることができるようになる。
また、請求項1に係る本発明によれば、対象者が向いている方向を判断することができる。
【0014】
請求項2にかかる本発明によれば、請求項1に係る本発明の効果に加えて、設けられた位置に応じた位置情報を送信しない場合に比べて、位置に応じた位置情報を提供することができる。
【0015】
請求項3にかかる本発明によれば、請求項1又は2に係る本発明の効果に加えて、WiGigにより情報を送信しない場合に比べて、多くの情報を迅速に送信することができる。
【0016】
請求項4に係る本発明によれば、請求項1にかかる本発明の効果に加えて、位置情報提供装置が設けられた位置ごとに、その位置に応じた位置情報を得ることができる。
【0017】
請求項5に係る本発明によれば、請求項1にかかる本発明の効果に加えて、位置情報を音声で通知しない場合に比べて、目の不自由な対象者に対しても位置情報を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の実施形態1に係る位置情報提供装置と端末装置との構成を示す概略図である。
図2】実施形態1に係る位置情報提供装置の構成を示す概略図である。
図3】実施形態1に係る位置情報提供装置と端末装置の詳細を示す図である。
図4】実施形態2に係る位置情報提供システムを構成する位置情報提供装置と端末装置の詳細を示す図である。
図5】実施形態2に係る位置情報提供システムを説明する全体概略図である。
図6】実施形態2に係る位置情報提供システムの構成を示す概略図である。
図7】実施形態2に係る位置情報提供システムの動作を示す流れ図である。
図8】実施形態3に係る位置情報提供システムを構成する位置情報提供装置と端末装置の詳細を示す図である。
図9】実施形態3に係る位置情報提供システムを説明する全体概略図である。
図10】実施形態3に係る位置情報提供システムの構成を示す概略図である。
図11】実施形態3に係る位置情報提供システムを説明する図9に続く全体概略図である。
図12】実施形態3に係る位置情報提供システムの構成を示す図10に続く概略図である。
図13】実施形態3に係る位置情報提供システムの動作を示す流れ図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。ただし、以下に示す実施形態は、本発明の技術思想を具体化するための位置情報提供装置及び位置情報提供システムを例示するものであって、本発明をこれに特定することを意図するものではなく、特許請求の範囲に含まれるその他の実施形態のものにも等しく適応し得るものである。
【0022】
[実施形態1]
まず、図1図3を参照して、実施形態1にかかる位置情報提供装置10について説明する。実施形態1の位置情報提供装置10は、この位置情報提供装置10が設けられた位置に到達した位置情報が提供される対象としての全盲者や視覚障害者等の視覚が不自由な者30(以下、単に対象者30という。)に対して、指向性の高い電波を用いて対象者30に位置情報や位置情報提供装置10の周囲の情報を含む情報(以下、単に位置情報等という。)を提供するための装置である。
【0023】
また、位置情報提供装置10は、図1に示すように、地下街や建物内の屋内の通路62の天井64側に設けられており、天井64側から通路62の床面66側に向かって電波が送信されるようになっている。そして、位置情報提供装置10の位置情報等を送信できる範囲内に到達した場合に対象者30に対して、天井64側から電波を送信し、対象者30が有する端末装置40に位置情報等が提供されるようになっている。
【0024】
このとき、対象者30は、位置情報提供装置10から送信される電波を受信可能な端末装置40を所持しており、対象者30が有する端末装置40は、位置情報提供装置10から受信した位置情報等に基づいて、音声にて現在位置や、現在位置に付随する各種の情報等が対象者30に伝えられるようになる。なお、端末装置40は、携帯電話やタブレット形式の電子機器等を用いることができる。
【0025】
なお、実施形態1において指向性の高い電波としては、周波数の高いミリ波、例えばWiGig(Wireless Gigabit)が用いられる。このWiGigは、IEEE802.11adで規格化された短距離の高速デジタル無線通信であり、周波数60ギガヘルツのミリ波の電波を利用し、通信速度は最大7Gbpsと高速である。また、電波指向性が強いので、電波指向性が低い従来のIEEE802.11規格の無線通信等を用いた場合に比べ、送信を行いたい限られた範囲にだけ送信を行うことが可能となる。また、WiGigは高速転送が可能であるため、従来のIEEE802.11規格の無線通信等に比べ、多くの情報を迅速に送信することができる。
【0026】
なお、指向性の高いWiGigは、図2に示すように、電波の到達角度αは送信方向、実施形態1では、天井64側から床面66側の垂直方向に対しておよそ±15度の範囲、すなわち約30度の範囲(図2に示す円状の範囲)に伝達され、また、直進到達距離βは約10mとなっている。また、図2においては、説明のため、電波には後述する送信部の図番号14を付している。
【0027】
また、実施形態1の位置情報提供装置10は、図3に示すように、位置情報等が記憶された記憶部16と、高周波数のWiGigにより位置情報等を送信する送信部14と、対象者30の有する端末装置40からの電波を受信する受信部12とで構成されている。
【0028】
位置情報提供装置10の記憶部16には、地下街や建物内の図形(地図)情報や、位置情報提供装置10が取り付けられた位置やその周囲の各種の情報等が記憶されている。また、新たに入力された位置情報等が記憶されるようになる。
【0029】
送信部14は、記憶部16が記憶する位置情報等を高周波数のWiGigにより送信される。このとき、位置情報提供装置10が位置情報を送信可能な範囲に入った対象者30が有する端末装置40に対して、位置情報等が送信される。
【0030】
受信部12は、対象者30が有する端末装置40から送信された情報が受信され、必要に応じて、受信された情報が記憶部16に記憶される。また、対象者30が有する端末装置40以外にも、位置情報の更新情報等を受信されることで、記憶部16に記憶された位置情報を上書きすることができるようになる。
【0031】
また、位置情報提供装置10は、対象者30が位置情報等を必要とする地点、例えば、目的地までの距離や次の位置情報提供装置までの距離等を知らせる地点や、通路の分岐点等に設けられている。
【0032】
また、対象者30が有する端末装置40には、図3に示すように、端末受信部42、端末送信部44、端末記憶部46及び通知部48が設けられている。
【0033】
端末装置40の端末受信部42は、位置情報提供装置10の送信部14から送信された位置情報等を受信される。この端末受信部42は、指向性の高いWiGigが受信可能となっている。
【0034】
端末送信部44は、必要に応じて、端末装置40に記憶された情報を、位置情報提供装置10に送信する。なお、端末装置40からの送信は、WiGigに限らず、他の電波等を用いることができる。
【0035】
また、端末記憶部46は、端末装置40の情報や、受信した情報等を記憶されている。
【0036】
また、通知部48は、端末装置40から情報を対象者30に伝えるものであり、音声を発するスピーカや、文字や映像等を表示する表示装置等で構成される。なお、実施形態1では、目の不自由な対象者30に対して位置情報等を提供するので、通知部48は、音声を発する、スピーカ等で構成される。
【0037】
次に、図1図3を参照して、実施形態1の位置情報提供装置10の使用態様について説明する。なお、実施形態1の位置情報提供装置10が設けられる地点70は、屋内の通路62であって、通路の床面66には、移動方向を案内する案内部材、例えば、点字ブロック68が通路62に沿って設けられており、位置情報提供装置10は、この点字ブロック68の上方の天井64側に取り付けられている。
【0038】
そして、通路62の点字ブロック68に沿って移動している対象者30に対して、位置情報提供装置10の位置情報等が提供される範囲内に到達した対象者30に対して、位置情報提供装置10から対象者30の有する端末装置40に位置情報等が送信されるようになる。なお、実施形態1では、電波は、位置情報提供装置10から垂直下方向に送信され、到達範囲は、図2に示すように、位置情報提供装置10の垂直下方向から±15度の範囲内である。
【0039】
まず、図1の右側から通路62の点字ブロック68に沿って移動してきた対象者30が、位置情報提供装置10が設けられた地点70を通過しようとする場合、位置情報提供装置10は、この位置情報提供装置10が設けられた位置情報等を送信部14から指向性の高いWiGigによって送信する。
【0040】
そして、送信された位置情報等の電波を対象者30の有する端末装置40の端末受信部42が受信し、この受信された情報に基づいて、音声に変換した後、端末装置40の通知部48から対象者30に対して音声により提供され、対象者30は現在位置等の位置情報等が認知することができる。
【0041】
また、対象者30の端末装置40は、必要に応じて、位置情報提供装置10から提供された位置情報等の全部、又は一部の情報を端末記憶部46に記憶させておくことができる。
【0042】
なお、位置情報提供装置10は、対象者30が位置情報提供装置10の設けられた地点を通過する場合のみ、情報を送信してもよい。例えば、対象者30が有する端末装置40から送信される電波を位置情報提供装置10の受信部12が受信した場合にのみ、位置情報等の送信を行うようにすることができる。
【0043】
[実施形態2]
次に、図4図7を参照して、実施形態2の位置情報提供システムについて説明する。実施形態1では、対象者30が位置情報提供装置10の設けられた位置における位置情報等を提供する場合を説明したが、実施形態2では、複数の位置情報提供装置10Aを用いて、対象者30が向いている方向を判断し、向かう方向に応じた位置情報等を提供する位置情報提供システム60Aについて説明する。なお、実施形態1と共通する構成については同一の符号を付し、詳細な説明は省略する。
【0044】
実施形態2の位置情報提供システム60Aに用いられる複数の位置情報提供装置10Aは、図4に示すように、位置情報提供装置10Aがそれぞれ設けられた地点に応じて、各位置情報提供装置10Aの記憶部16に異なる情報が記憶されており、対象者30は異なる位置情報提供装置10Aを通過するごとに、異なる位置情報等が提供されるようになる。
【0045】
実施形態2の位置情報提供システム60Aでは、対象者30が有する端末装置40Aの記憶部16には、通過した地点の位置情報提供装置10Aの情報が記憶されるようになる。そして、通過した地点の位置情報提供装置10Aと異なる位置情報提供装置10Aに到達した場合に、この直近で通過した地点の位置情報提供装置10Aの位置情報等や、これまで通過してきた地点の位置情報提供装置10Aの位置情報等が送信される。
【0046】
また、実施形態2の位置情報提供装置10Aには、処理部18が設けられている。この処理部18は、対象者30の有する端末装置40Aの端末送信部44から送信された情報を処理し、位置情報提供装置10Aから提供される位置情報等を記憶部16から選択して、対象者30の移動方向に応じた位置情報等を提供することができるようになる。なお、実施形態2の位置情報提供装置10Aの他の構成は実施形態1の位置情報提供装置10と共通する。
【0047】
また、実施形態2の位置情報提供システム60Aでは、図5に示すように、複数の位置情報提供装置10Aが通路に沿ってそれぞれ設けられている。この位置情報提供装置10Aが設けられる地点は、対象者30に位置情報を提供することが必要な地点、例えば、目的地や次の位置情報提供装置10Aまでの距離の情報を提供したり、通路が分岐した地点において、向かう方向の情報を提供したりする必要がある地点等に設けられる。
【0048】
次に、図4図7を参照して、実施形態2の位置情報提供システム60Aの使用態様について説明する。なお、実施形態2では、複数の位置情報提供装置10Aは、通路の第1地点80、第2地点82、第3地点84及び第4地点86にそれぞれ設けられている。このとき、第1地点80の位置情報提供装置を10Aaとし、第2地点82の位置情報提供装置を10Abとし、第3地点84の位置情報提供装置を10Acとし、第4地点86の位置情報提供装置を10Adとし、また、これらをまとめて位置情報提供装置10Aという場合がある。
【0049】
第1地点80は、図5及び図6に示す右側であり、対象者30が現在いる地点である。
【0050】
第2地点82は、第1地点80からの移動先にあり、通路の分岐点88に設けられている。
【0051】
第3地点84は、第2地点82の分岐点88から直進する方向に設けられている。
【0052】
第4地点86は、第2地点82の分岐点88から左折する方向に設けられている。
【0053】
また、通路62には、天井64側に各第1地点80〜第4地点86にそれぞれ位置情報提供装置10が設けられており、各第1地点80〜第4地点86は床面66に設けられた点字ブロック68で結ばれている。そして、対象者30は、点字ブロック68に沿って通路62を移動している。
【0054】
このとき、対象者30がスタート地点としての第1地点80から第2地点82へ移動する場合の位置情報提供システム60Aについて説明する。
【0055】
まず、対象者30が第1地点80に到達した場合、第1地点80の位置情報提供装置10Aaの送信部14から、位置情報等が対象者30の有する端末装置40に指向性の高いWiGigにより送信する(ステップS01A)。
【0056】
送信された第1地点80の位置情報提供装置10Aaの位置情報等は、対象者30が有する端末装置40が受信する(ステップS02A)。
【0057】
このとき、対象者30がこれまでに他の位置情報提供装置10Aを通過しているかどうかが判別される(ステップS03A)。そして、対象者30がこれまでに他の位置情報提供装置10Aを通過していない場合(ステップS03AのNO)、すなわち、端末装置40Aの端末記憶部46に、位置情報等が記憶されていない場合は、対象者30の端末装置40Aの受信部12が受信した第1地点80の位置情報提供装置10Aaから送信された位置情報等を、受信した位置情報等に基づいて、端末装置40の通知部48から音声にて対象者30に情報が提供される(ステップS04A)。
【0058】
なお、このときの位置情報等としては、第1地点80の位置情報提供装置10Aaの記憶部16に記憶された、現在位置が第1地点であることや、第2地点82までの距離、第1地点80周辺の情報等が提供される。また、端末装置40Aの端末記憶部46には、第1地点80を通過したことが記憶される(ステップS05A)。
【0059】
次に、対象者30は、第1地点80の位置情報提供装置10Aaから提供された位置情報等を参照して通路62の点字ブロック68に沿って移動し、第2地点82に到達した場合、端末装置40Aは、第2地点82の位置情報提供装置10Abから送信された位置情報等を受信する(ステップS02A)。
【0060】
また、対象者30の有する端末装置40Aは、通過した位置情報等が記憶されているか判断される(ステップS03A)。このとき、端末装置40Aには、第1地点80を通過した位置情報等が記憶されているので(ステップS03AのYES)、端末装置40Aは、端末送信部44から第2地点82の位置情報提供装置10Abに、直近に第1地点80を通過した情報が送信される(ステップS06A)。
【0061】
次に、位置情報提供装置10Abは、端末装置40Aから送信された通過位置情報が受信される(ステップS07A)。そして、通過位置情報が送信された第2地点82の位置情報提供装置10Abの処理部18は、対象者30が第1地点80を通過して第2地点82に到達したとする通過位置情報から、現在の対象者30が第1地点80を背にして、第3地点84を正面にして向いていると処理する(ステップS08A)。
【0062】
そして、位置情報提供装置10Abの処理部18は、通過位置情報に基づいて、記憶部16から対象者30が第3地点84を正面にした状態に対応した位置情報等が選択され、位置情報提供装置10Abの送信部14から、選択された位置情報等が対象者30の端末装置40Aに送信される(ステップS09A)。このときの位置情報としては、例えば、現在位置が第2地点82であること、対象者30の正面が第3地点84であり、左側が第4地点86であること、及び、第2地点の周囲の情報等が挙げられる。
【0063】
その後、送信された位置情報等を端末装置40Aが受信し(ステップS10A)、この位置情報等に基づいて端末装置40Aの通知部48から音声として対象者30に提供される(ステップS11A)。
【0064】
また、対象者30の端末装置40Aには、第2地点82の位置情報提供装置10Abから第2地点82を通過した情報が記憶されるようになる(ステップS12A)。なお、各地点を通過したとする情報は、データとして時間情報と共に記憶するようにしてもよく、また、各地点に到達するごとに上書きするようにしてもよい。
【0065】
その後、対象者30は、第2地点82での位置情報等を参照して、希望する地点、例えば、第3地点84又は第4地点86に向かうことができ、第3地点84の位置情報提供装置10Ac又は第4地点86の位置情報提供装置10Adにて位置情報等が提供される。
【0066】
[実施形態3]
次に、図8図13を参照して実施形態3にかかる位置情報提供システムについて説明する。実施形態2の位置情報提供システム60Aは、通路62の床面66に点字ブロック68が設けられ、この点字ブロック68に沿って対象者30が移動する場合を説明したが、実施形態3では、通路に点字ブロックがない場合における位置情報提供システム60Bについて説明する。なお、実施形態1及び2と共通する構成については同一の符号を付し、詳細な説明は省略する。
【0067】
実施形態3の位置情報提供システム60Bに用いられる位置情報提供装置10Bは、図8に示すように、実施形態1及び2で説明したように天井側から床面側への垂直方向に指向性の高いWiGigを送信する送信部14と、隣接する他の地点へ指向性の高いWiGigを送信する横方向送信部20を少なくとも一つ有している。
【0068】
横方向送信部20は、隣接する位置情報提供装置10B同士が設けられた方向に向かって、それぞれ電波を送信し、位置情報提供装置10に到着した対象者30に対して、隣接する位置情報提供装置10Bからも位置情報等の電波を送信する構成となっている。
【0069】
また、端末装置40Bには、判断部50が設けられており、判断部50は、正面から受信した位置情報等の電波から、対象者30が現在どちらを向いているかを判断し、対象者30が向いている方向や、対象者30の正面にある地点が判断される。
【0070】
なお、横方向送信部20から送信される電波は、指向性の高いWiGigであり、図9図10に示すように、到達角度αは隣接する位置情報提供装置10Bに向かう斜め方向の中心線に対して±15度の範囲であって、到達距離βが約10m程度となっている。そのため、隣接する位置情報提供装置10B同士の距離は、少なくとも10m以内に設けられている。なお、横方向送信部20の角度γを変えることで、到達距離βを到達させたい任意の距離とすることができる。
【0071】
次に、図8図13を参照して、実施形態3の位置情報提供システム60Bの使用態様について説明する。なお、実施形態3の位置情報提供システム60Bは、実施形態2の位置情報提供システム60Aと同様に、位置情報提供装置10Bは、通路の第1地点80、第2地点82、第3地点84及び第4地点86にそれぞれ設けられている。一方、実施形態3では、通路には点字ブロックが設けられておらず、対象者30は点字ブロックに沿って通路を移動することができないようになっている。そのため、対象者30は、自身が向いている方向が判断し難い状態となっている。
【0072】
このとき、第1地点80の位置情報提供装置を10Baとし、第2地点82の位置情報提供装置を10Bbとし、第3地点84の位置情報提供装置を10Bcとし、第4地点86の位置情報提供装置を10Bdとし、また、これらをまとめて位置情報提供装置10Bという場合がある。
【0073】
また、各位置情報提供装置10Ba〜10Bdに設けられた各横方向送信部20は、第1地点80の位置情報提供装置10Baの横方向送信部を20aとし、第2地点82の位置情報提供装置10Bbの横方向送信部を20bとし、第3地点84の位置情報提供装置10Bcの横方向送信部を20cとし、第4地点86の位置情報提供装置10Bdの横方向送信部を20dとし、また、これらをまとめて横方向送信部20という場合がある。なお、図9図12では、説明のため、各横方向送信部20a〜20dから送信される電波に符号を付している。
【0074】
このとき、対象者30がスタート地点としての第1地点80から第2地点82へ移動する場合の位置情報提供システム60Bについて説明する。
【0075】
まず、対象者30が第1地点80に到達した場合、現在地点としての第1地点80の位置情報提供装置10Baの送信部14から、位置情報等が対象者30の有する端末装置40Bに指向性の高いWiGigにより送信する(ステップS01B)。
【0076】
送信された第1地点80の位置情報提供装置10Baからの位置情報等は、対象者30の端末装置40Bの受信部12が受信する(ステップS02B)。このとき、端末装置40Bは、位置情報等が現在地点の第1地点80に向けて他の地点から送信される電波のうち、正面から受信する電波があるかが判断される(ステップS03B)。
【0077】
そして、例えば、第1地点80において、端末装置40Bは、位置情報等が、現在の地点の位置情報提供装置10Baのみから受信している場合(ステップS03BのNO)、端末装置40Bの通知部48から音声にて現在地点の第1地点80の位置情報等が対象者30に情報が提供される(ステップS04B)。なお、このときの位置情報等としては、第1地点80の位置情報提供装置10Baの記憶部16に記憶された、現在位置が第1地点であることや、第2地点82までの距離、第1地点80周辺の情報等が提供される。
【0078】
一方、実施形態3では、第1地点80にいる対象者30の端末装置40Bは、第1地点80から見て対象者30の正面側にある第2地点82の位置情報提供装置10Bbの横方向送信部20bから送信されている第2地点82の位置情報等も受信するようになる(ステップS03BのYES)。
【0079】
このとき、端末装置40Bの判断部50は、第2地点82の位置情報提供装置10Bbの横方向送信部20bからの位置情報等の電波を正面から受信することで、対象者30の正面に第2地点82があることを判断する(ステップS04B)。
【0080】
そして、現在地点の第1地点80にいる対象者30には、対象者30が第2地点82を正面にして向いていることや、第2地点82に向かう距離等の位置情報等を、端末装置40Bの通知部48から音声により提供されるようになる(ステップS05B)。
【0081】
次に、対象者30は、提供された第2地点82の位置情報等を参照して、通路62を進み、第2地点82に到達する。
【0082】
対象者30が第2地点82に到達すると、第2地点82の位置情報提供装置10Bbの送信部14が第2地点82の位置情報等を対象者30の端末装置40Bに送信する(ステップS01B)。
【0083】
送信された第2地点82の位置情報提供装置10Bbからの位置情報等は、対象者30の端末装置40Bの受信部12が受信する(ステップS02B)。
【0084】
このとき、端末装置40Bは、位置情報等が現在地点の第2地点82に向けて他の地点から送信される電波のうち、正面から受信する電波があるかが判断される(ステップS03B)。
【0085】
すなわち、第2地点82においては、対象者30に対して、第1地点80の位置情報提供装置10Baの横方向送信部20、第3地点84の位置情報提供装置10Bcの横方向送信部20、及び第4地点86の位置情報提供装置10Bdの横方向送信部20から各地点の位置情報等が送信されているため、これらの電波から対象者30の端末装置40Bが正面から受信する電波がどの地点から送信されたものかを判断することで、対象者30がどちらの方向を向いているかがわかるようになる。
【0086】
そして、実施形態3では、対象者30は、第2地点82には、第1地点80から到達し、第3地点が正面となるように向いていることで、端末装置40Bには、第3地点84の位置情報提供装置10Bcの横方向送信部20からの電波を正面から受信することが判断される(ステップS03BのYES)。
【0087】
一方、第4地点86の位置情報提供装置10Bdからの電波は、側面側(対象者30の左側)から受けている。また、第1地点80の位置情報提供装置10Baから送信される電波は、対象者30自身が壁となり、電波が減衰したり、遮られたりするため、端末装置40Bでは、第1地点80からの電波を受信できなくなる。これは、指向性の高いWiGigは、高周波となるため、壁や人体などで電波が減衰しやすいためである。なお、仮に複数の位置情報提供装置からの電波を受信出来た場合は、電波強度の強い装置側を向いていると判定してもよい。
【0088】
以上より、端末装置40Bの判断部50は、端末装置40Bの正面から受信した電波が第3地点84の位置情報提供装置10Bcから位置情報等であると判断する(ステップS04B)。
【0089】
そして、端末装置40Bは、対象者30が、第3地点84を正面にして向いている場合における現在地点としての第2地点82の位置情報等を、対象者30に音声にて提供する(ステップS05B)。このときの位置情報としては、例えば、現在位置が第2地点82であること、対象者30の正面が第3地点84であり、左側が第4地点86であること、及び、第2地点の周囲の情報等が挙げられる。
【0090】
また、対象者30の向いている方向がわかることで、第2地点82の位置情報提供装置10Bbの記憶部16の地図情報等から、対象者30に左側が第4地点86であるとする位置情報等を音声にて提供することができる。
【0091】
その後、対象者30は、第2地点82での位置情報等を参照して、希望する地点、例えば、第3地点84又は第4地点86に向かうことができ、第3地点84の位置情報提供装置10Bc又は第4地点86の位置情報提供装置10Bdにおいて位置情報等が提供される。
【0092】
なお、実施形態1〜3では、各端末装置40、40A、40Bは、携帯式の電話やタブレット等の電子機器を用いた場合を説明したが、これに限らず、補聴器のように、対象者の耳に直接設置可能な装置を用いてもよい。また、端末装置として、対象者が有する白杖に上述した端末装置の機能を設けるようにしてもよい。また、対象者が弱視等のように視力が極めて弱い場合は、端末装置としてヘッドマウントディスプレイ等のウェアラブル端末に地図情報を提供するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0093】
10、10A、10B 位置情報提供装置
12 受信部
14 送信部
16 記憶部
18 処理部
20(20a、20b、20c、20d) 横方向送信部
30 対象者
40、40A、40B 端末装置
42 端末受信部
44 端末送信部
46 端末記憶部
48 通知部
50 判断部
60A、60B 位置情報提供システム
64 天井
68 点字ブロック
80 第1地点
82 第2地点
84 第3地点
86 第4地点


図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13