(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記エピクロロヒドリンゴムの含有量が、前記弾性材料100質量部に対して10質量部以上100質量部以下である請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の画像形成装置。
前記エピクロロヒドリンゴムの含有量が、前記弾性材料100質量部に対して50質量部以上100質量部以下である請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の画像形成装置。
前記第一の制御が、画像形成の開始から終了までの間に、前記像保持体の表面を帯電するための直流電圧を前記帯電部材に印加した印加時間を100としたとき、5以上150以下の範囲の印加時間で前記逆極性の直流電圧を前記帯電部材に印加する制御であり、
前記第二の制御が、画像形成の開始から終了までの間に、前記トナー像を記録媒体の表面に転写するための直流電圧を前記転写部材に印加した印加時間を100としたとき、5以上150以下の範囲の印加時間で前記逆極性の直流電圧を前記転写部材に印加する制御である請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の画像形成装置。
前記第一の制御が、画像形成の開始から終了までの間に、前記像保持体の表面を帯電するための直流電圧を前記帯電部材に印加した印加時間を100としたとき、20以上120以下の範囲の印加時間で前記逆極性の直流電圧を前記帯電部材に印加する制御であり、
前記第二の制御が、画像形成の開始から終了までの間に、前記トナー像を記録媒体の表面に転写するための直流電圧を前記転写部材に印加した印加時間を100としたとき、20以上120以下の範囲の印加時間で前記逆極性の直流電圧を前記転写部材に印加する制御である請求項6に記載の画像形成装置。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に、本発明の一例である実施形態について説明する。
なお、本明細書において、成分に該当する物質が複数種存在する場合、成分の量は、特に断らない限り、複数種の物質の合計量を意味する。
本明細書において、「導電性」とは、常温常湿環境(22℃55%RH環境)における体積抵抗率が10
14Ω・cm以下であることを意味している。
【0022】
<画像形成装置>
本実施形態に係る画像形成装置は、
像保持体と、
像保持体の表面を帯電する帯電部材と帯電部材に電流を印加する電流印加部とを有する帯電装置と、
帯電した像保持体の表面に静電潜像を形成する静電潜像形成装置と、
トナーを含む現像剤により、像保持体の表面に形成された静電潜像を現像してトナー像を形成する現像装置と、
トナー像を記録媒体の表面に転写する転写部材と転写部材に電流を印加する電流印加部とを有する転写装置と、
画像を形成する期間以外の期間に、帯電装置の電圧印加部により、像保持体の表面を帯電するために印加する直流電圧とは逆極性の直流電圧を帯電部材に印加する第一の制御、及び、転写装置の電圧印加部により、トナー像を記録媒体の表面に転写するために印加する直流電圧とは逆極性の直流電圧を転写部材に印加する第二の制御の少なくとも一方の制御を行う制御装置と、
を備える。
【0023】
そして、制御装置が第一の制御を行う制御装置である場合、帯電部材が、導電性基材と、導電性基材上に配置され、イオン導電を主体とする導電性弾性層であって、エピクロロヒドリンゴムを含む弾性材料を含有し、かつ塩素イオンの遊離量が1μg/g以上80μg/g以下である導電性弾性層と、を備える導電性部材(以下、「特定の導電性部材」とも称する)で構成されている。
一方、制御装置が第二の制御を行う制御装置である場合、
転写部材が、特定の導電性部材で構成されている。
【0024】
ここで、エピクロロヒドリンゴム(以下「ECO」とも称する)を含む導電性弾性層には、成形時の加硫などにより、ECOの側鎖に配位する塩素(Cl)が離脱して塩素イオンが遊離することがある。そして、遊離した塩素イオンを含む導電性弾性層を有する導電性部材に、同じ極性の通電を繰り返し印加すると、塩素イオンが導電性弾性層の厚み方向の一方側に偏在する。偏在した塩素イオンは電子の授受を阻害する。そのため、イオン導電を主体とする導電性弾性層を有する導電性部材では、この偏在した塩素イオンによる電子教授の阻害で、抵抗上昇が生じる。
【0025】
そして、導電性部材を画像形成装置の帯電部材に適用した場合、繰り返し画像を形成すると、像保持体の表面を帯電するための直流電圧の印加によって、帯電部材には同じ極性の通電が繰り返し印加されることになる。そのため、繰り返しの画像形成により、帯電部材の抵抗上昇が生じ、帯電不良が生じる。
一方、導電性部材を画像形成装置の転写部材に適用した場合、繰り返し画像を形成すると、トナー像を記録媒体の表面に転写するための直流電圧の印加によって、転写部材には同じ極性の通電が繰り返し印加されることになる。そのため、繰り返しの画像形成により、転写部材の抵抗上昇が生じ、帯電不良が生じる。
【0026】
それに対して、本実施形態に係る画像形成装置では、エピクロロヒドリンゴムを含み、イオン導電を主体とする導電性弾性層における塩素イオンの遊離量を1μg/g以上80μg/g以下とする特定の導電性部材を、帯電部材及び転写部材の少なくとも一方に適用する。
この特定の導電性部材は、導電性弾性層の塩素イオンの遊離量を80μg/g以下に抑えることで、塩素イオンが導電性弾性層の厚み方向の一方側に偏在しても、電子の授受が塩素イオンにより阻害され難くなる。そのため、特定の導電性部材は、同じ極性の通電を繰り返し印加したときに生じる抵抗上昇を抑制する。
【0027】
そして、帯電部材及び転写部材の少なくとも一方に特定の導電性部材を適用すると、帯電不良及び転写不良の少なくとも一方が抑制される。
【0028】
それに加え、本実施形態に係る画像形成装置では、制御装置により、画像を形成する期間以外の期間に、帯電装置の電圧印加部により、像保持体の表面を帯電するために印加する直流電圧とは逆極性の直流電圧を帯電部材に印加する第一の制御、及び、転写装置の電圧印加部により、前記トナー像を記録媒体の表面に転写するために印加する直流電圧とは逆極性の直流電圧を前記転写部材に印加する第二の制御の少なくとも一方の制御を行う。
【0029】
制御装置により、第一の制御及び第二の制御の少なくとも一方の制御を行うと、帯電部材及び転写部材の少なくとも一方において、導電性弾性層中の塩素イオンの偏在化が緩和される。つまり、逆極性の直流電圧を印加することで、画像形成時に印加する直流電圧によって導電性弾性層中で塩素イオンが移動する方向とは逆方向に移動させる。それにより、相対的に、導電性弾性層中で、塩素イオンの一方の方向への移動量が少なくなり、導電性弾性層中の塩素イオンの偏在化し難くなる。その結果、さらに、帯電部材及び転写部材の少なくとも一方の抵抗上昇が抑えられ、帯電不良及び転写不良の少なくとも一方が抑制される。
【0030】
また、本実施形態に係る画像形成装置において、特定の導電性部材は、エピクロロヒドリンゴムを含み、イオン導電を主体とする導電性弾性層における塩素イオンの遊離量を1μg/g以上としている。それにより、高温高湿環境下(例えば35℃85%RH環境下)での過剰な抵抗低下が抑制される。導電性弾性層の塩素イオンの遊離量が過剰に少なくなると、高温高湿環境下(例えば35℃85%RH環境下)では、水分が導電機能を発現し、導電性弾性層の抵抗が過剰に低下することがある。導電性弾性層の抵抗低下が生じると、感光体のピンホール形成部、感光体の異物付着部、感光体の薄膜部などで、局所的な電荷集中(リーク)により電圧降下が生じ、帯電不良による色点、又はトナーを転写するに十分な電界が得られないなどのため転写不良による濃度むらが発生することがある。
よって、導電性弾性層の塩素イオン量が1μg/g以上である特定の導電性部材を、帯電部材及び転写部材の少なくとも一方に適用すると、帯電不良(電荷集中(リーク))による色点及び転写不良による濃度むらの少なくとも一方が抑制される。
【0031】
なお、エピクロロヒドリンゴムを含んでも、電子導電性の導電剤(カーボンブラック等)を含み、電子導電を主体とする導電性弾性層を有する導電性部材では、偏在した塩素イオンによって電子の授受が阻害されるものの、電子導電性の導電剤による導電パスを有するため、抵抗上昇は生じにくい。なお、特許文献1の半導電性ロールは、電子導電を主体とする導電性弾性層を有する導電性部材に該当する。
【0032】
ここで、「イオン導電を主体とする導電性弾性層」とは、導電性部材を高温高湿環境下(35℃85%RH環境下)で10時間保管した後の導電性弾性層の体積抵抗率と、導電性部材を低温低湿環境下(10℃、15%RH)で10時間保管した後の導電性弾性層の体積抵抗率と、の差が、0.8logΩ・cm以上の導電性弾性層を示す。
なお、この体積抵抗率差が、0.8logΩ・cm未満であると、電子導電を主体とする導電性弾性層に該当する。
【0033】
導電性弾性層の体積抵抗率の測定方法は、次の通りである。
導電性部材の導電性弾性層から、導電性弾性層の同じ厚さを有する測定試料を採取する。その測定試料に対し、JIS K 6911(1995)に従って、測定治具(MPCプローブ UR−SS:三菱ケミカルアナリテック社製)と高抵抗測定器(R8340Aデジタル高抵抗/微小電流計:アドバンテスト社製)とを用いて、体積抵抗率を測定する。具体的には、電場(印加電圧/測定試料)が1000V/cmになるよう調節した電圧を測定試料に30秒印加した後、その流れる電流値より、体積抵抗率を下記式を用いて算出する。測定環境は、常温常湿環境(22℃55%RH環境)とする。
体積抵抗率(Ωcm)=(0.071×印加電圧(V))/(電流値(A)×測定試料厚(cm))
なお、導電性弾性層(測定試料)の厚さは、サンコー電子社製渦電流式膜厚計CTR−1500Eを使用し測定する。
【0034】
本実施形態に係る画像形成装置は、像保持体の表面に形成されたトナー像を直接記録媒体に転写する直接転写方式の装置;像保持体の表面に形成されたトナー像を中間転写体の表面に一次転写し、中間転写体の表面に転写されたトナー像を記録媒体の表面に二次転写する中間転写方式の装置;トナー像の転写後、帯電前に像保持体の表面に除電光を照射して除電する除電装置を備える装置等の周知の画像形成装置が適用される。
中間転写方式の装置の場合、転写装置は、例えば、表面にトナー像が転写される中間転写体と、像保持体の表面に形成されたトナー像を中間転写体の表面に一次転写する一次転写部材と、中間転写体の表面に転写されたトナー像を記録媒体の表面に二次転写する二次転写部材と、を有する構成が適用される。
ここで、中間転写方式の装置の場合、転写装置において、一次転写部材および二次転写部材の少なくとも一方は特定の導電性部材が適用される。そして、特定の導電性部材が適用された転写部材について第二の制御を実施する。
【0035】
なお、本実施形態に係る画像形成装置において、例えば、像保持体を少なくとも含む部分が、画像形成装置に対して着脱されるカートリッジ構造(プロセスカートリッジ)であってもよい。
【0036】
以下、本実施形態に係る画像形成装置の一例を示すが、これに限定されるわけではない。なお、図に示す主要部を説明し、その他はその説明を省略する。
【0037】
図3は、本実施形態に係る画像形成装置の一例を示す概略構成図である。
本実施形態に係る画像形成装置10には、
図3に示すように、例えば、電子写真感光体(像保持体の一例;以下「感光体」と称する)12が設けられている。感光体12は、円柱状とされ、モータ等の駆動部27にギア等の駆動力伝搬部材(不図示)を介して連結されており、当該駆動部27により、黒点で示す回転軸の周りに回転駆動される。
図3に示す例では、矢印A方向に回転駆動される。
【0038】
感光体12の周辺には、例えば、帯電装置15、静電潜像形成装置16、現像装置18、転写装置31、クリーニング装置22、及び除電装置24が、感光体12の回転方向に沿って順に配設されている。そして、画像形成装置10には、定着装置26も配設されている。また、画像形成装置10には、各装置(各部)の動作を制御する制御装置36を有している。
【0039】
画像形成装置10は、少なくとも感光体12を一体化したプロセスカートリッジとしてもよい。このプロセスカートリッジは、他の装置も一体化したプロセスカートリッジであってもよい。
【0040】
以下、画像形成装置10の各装置(各部)の詳細について説明する。
【0041】
(感光体)
感光体12は、例えば、導電性基体と、この導電性基体上に形成された下引き層と、この下引き層の上に形成された感光層と、を有する。この感光層は、電荷発生層と電荷輸送層との2層構造であってもよい。感光層は、有機感光層であってもよいし、無機感光層であってもよい。感光体12は、感光層上に保護層を設けた構成であってもよい。
【0042】
(帯電装置)
帯電装置15は、感光体12の表面を帯電する。帯電装置15は、例えば、感光体12表面に接触または非接触で設けられ、感光体12の表面を帯電する帯電部材14であって、特定の導電性部材で構成された帯電部材14、及び帯電部材14に帯電電圧(直流電圧)を印加する電源28(電圧印加部の一例)を備えている。電源28は、帯電部材14に電気的に接続されている。
【0043】
帯電装置15(電源28を含む)は、例えば、画像形成装置10に設けられた制御装置36に電気的に接続されており、制御装置36により駆動制御されて、帯電部材14に帯電電圧を印加する。電源28から帯電電圧を印加された帯電部材14は、印加された帯電電圧に応じた帯電電位に、感光体12を帯電させる。このため、電源28から印加される帯電電圧が調整されることで、感光体12は、異なる帯電電位に帯電される。
【0044】
(静電潜像形成装置)
静電潜像形成装置16は、帯電された感光体12の表面に静電潜像を形成する。具体的には、例えば、静電潜像形成装置16は、画像形成装置10に設けられた制御装置36に電気的に接続されており、制御装置36により駆動制御されて、帯電部材14により帯電された感光体12の表面に、形成する対象となる画像の画像情報に基づいて変調された光Lを照射して、感光体12上に画像情報の画像に応じた静電潜像を形成する。
【0045】
静電潜像形成装置16としては、例えば、半導体レーザ光、LED光、液晶シャッタ光等の光を像様に露光する光源を持つ光学系機器等が挙げられる。
【0046】
(現像装置)
現像装置18は、例えば、静電潜像形成装置16による光Lの照射位置より感光体12の回転方向下流側に設けられている。現像装置18内には、現像剤を収容する収容部が設けられている。この収容部には、トナーを含む静電荷像現像剤が収容されている。トナーは、例えば、現像装置18内で帯電された状態で収容されている。
【0047】
現像装置18は、例えば、トナーを含む現像剤により、感光体12の表面に形成された静電潜像を現像する現像部材18Aと、現像部材18Aに現像電圧を印加する電源32と、を備えている。この現像部材18Aは、例えば、電源32に電気的に接続されている。
【0048】
現像装置18の現像部材18Aとしては、現像剤の種類に応じて選択されるが、例えば、磁石が内蔵された現像スリーブを有する現像ロールが挙げられる。
【0049】
現像装置18(電源32を含む)は、例えば、画像形成装置10に設けられた制御装置36に電気的に接続されており、制御装置36により駆動制御されて、現像部材18Aに現像電圧を印加する。現像電圧を印加された現像部材18Aは、現像電圧に応じた現像電位に帯電される。そして、現像電位に帯電された現像部材18Aは、例えば、現像装置18内に収容された現像剤を表面に保持して、現像剤に含まれるトナーを現像装置18内から感光体12表面へと供給する。
【0050】
感光体12上に供給されたトナーは、例えば、感光体12上の静電荷像に静電力により付着する。詳細には、例えば、感光体12と現像部材18Aとの向かい合う領域における電位差、すなわち、該領域における感光体12の表面の電位と現像部材18Aの現像電位との電位差によって、現像剤に含まれるトナーが感光体12の静電荷像の形成された領域に供給される。なお、現像剤にキャリアが含まれている場合には、該キャリアは現像部材18Aに保持されたまま現像装置18内に戻る。
【0051】
例えば、感光体12上の静電潜像は、現像部材18Aから供給されたトナーによって現像されて、感光体12上には、静電潜像に応じたトナー像が形成される。また、例えば、単位面積当たりの現像量は、2.0g/m
2以上8.0g/m
2以下である。
【0052】
(転写装置)
転写装置31は、例えば、現像部材18Aの配設位置より感光体12の回転方向下流側に設けられている。転写装置31は、例えば、感光体12の表面に形成されたトナー像を記録媒体30Aへ転写する転写部材20であって、特定の導電性部材で構成された転写部材20と、転写部材20に転写電圧(直流電圧)を印加する電源30(電圧印加部の一例)と、を備えている。転写部材20は、例えば、円柱状とされており、感光体12との間で記録媒体30Aを挟んで搬送する。転写部材20は、例えば、電源30に電気的に接続されている。
【0053】
転写装置31(電源30を含む)は、例えば、画像形成装置10に設けられた制御装置36に電気的に接続されており、制御装置36により駆動制御されて、転写部材20に転写電圧を印加する。転写電圧を印加された転写部材20は、転写電圧に応じた転写電位に帯電される。
【0054】
転写部材20の電源30から転写部材20に、感光体12上に形成されたトナー像を構成するトナーとは逆極性の転写電圧が印加されると、例えば、感光体12と転写部材20との向かい合う領域(
図3中、転写領域32A参照)には、感光体12上のトナー像を構成する各トナーを静電力により感光体12から転写部材20側へと移動させる電界強度の転写電界が形成される。
【0055】
記録媒体30Aは、例えば、図示を省略する収容部に収容されており、この収容部から図示を省略する複数の搬送部材によって搬送経路34に沿って搬送され、感光体12と転写部材20との向かい合う領域である転写領域32Aに到る。
図3中に示す例では、矢印B方向に搬送される。転写領域32Aに到った記録媒体30Aは、例えば、転写部材20に転写電圧が印加されることにより該領域に形成された転写電界によって、感光体12上のトナー像が転写される。すなわち、例えば、感光体12表面から記録媒体30Aへのトナーの移動により、記録媒体30A上にトナー像が転写される。
【0056】
感光体12上のトナー像は、転写電界により記録媒体30A上に転写される。転写電界の大きさは転写電流値に基づいて制御されている。転写電流値は、定電流制御で転写電界を印加したときに転写装置31で検出される電流値である。転写電流値は、転写電界の大きさを表す。例えば、転写電流値は、10μA以上45μA以下である。
【0057】
(クリーニング装置)
クリーニング装置22は、転写領域32Aより感光体12の回転方向下流側に設けられている。クリーニング装置22は、トナー像を記録媒体30Aに転写した後に、感光体12に付着した残留トナーをクリーニングする。クリーニング装置22では、残留トナー以外にも、紙粉等の付着物をクリーニングする。
【0058】
クリーニング装置22は、感光体12の表面に接触して、残留トナーをクリーニングするブレード220を有するブレード方式の装置である。
【0059】
(除電装置)
除電装置24は、例えば、クリーニング装置22より感光体12の回転方向下流側に設けられている。除電装置24は、トナー像を転写した後、感光体12の表面を露光して除電する。具体的には、例えば、除電装置24は、画像形成装置10に設けられた制御装置36に電気的に接続されており、制御装置36により駆動制御されて、感光体12の全表面(具体的には例えば画像形成領域の全面)を露光して除電する。
【0060】
除電装置24としては、例えば、白色光を照射するタングステンランプ、赤色光を照射する発光ダイオード(LED)等の光源を有する装置が挙げられる。
【0061】
(定着装置)
定着装置26は、例えば、転写領域32Aより記録媒体30Aの搬送経路34の搬送方向下流側に設けられている。定着装置26は、例えば、記録媒体30A上に転写されたトナー像を定着する。具体的には、例えば、定着装置26は、画像形成装置10に設けられた制御装置36に電気的に接続されており、制御装置36により駆動制御されて、記録媒体30A上に転写されたトナー像を熱または熱及び圧力によって記録媒体30Aに定着する。
【0062】
定着装置26としては、それ自体公知の定着器、例えば熱ローラ定着器、オーブン定着器等が挙げられる。
【0063】
ここで、搬送経路34に沿って搬送されて感光体12と転写部材20との向かい合う領域(転写領域32A)を通過することによりトナー像を転写された記録媒体30Aは、例えば、図示を省略する搬送部材によってさらに搬送経路34に沿って定着装置26の設置位置に到り、記録媒体30A上のトナー像の定着が行われる。
【0064】
トナー像の定着によって画像形成された記録媒体30Aは、図示を省略する複数の搬送部材によって画像形成装置10の外部へと排出される。なお、感光体12は、除電装置24による除電後、再度、帯電装置15によって帯電電位に帯電される。
【0065】
(制御装置)
制御装置36は、装置全体の制御及び各種演算を行うコンピュータとして構成されている。具体的には、制御装置36は、
図4に示すように、CPU(中央処理装置; Central Processing Unit)36A、各種プログラムを記憶したROM(Read Only Memory)36B、プログラムの実行時にワークエリアとして使用されるRAM(Random Access Memory)36C、各種情報を記憶する不揮発性メモリ36D、及び入出力インターフェース(I/O)36Eを備えている。CPU36A、ROM36B、RAM36C、不揮発性メモリ36D、及びI/O36Eの各々は、バス36Fを介して接続されている。
【0066】
また、画像形成装置10は、制御装置36の外に、操作表示部40、画像処理部42、画像メモリ44、画像形成部46、記憶部48、及び通信部50を備えている。操作表示部40、画像処理部42、画像メモリ44、画像形成部46、記憶部48、及び通信部50の各部は、制御装置36のI/O36Eに接続されている。制御装置36は、操作表示部40、画像処理部42、画像メモリ44、画像形成部46、記憶部48、及び通信部50の各部との間で情報の授受を行って、各部を制御する。
【0067】
操作表示部40は、スタートボタンやテンキー等の各種ボタン、警告画面や設定画面等の各種画面を表示するためのタッチパネルなどを含んで構成されている。操作表示部40は、上記構成により、利用者からの操作を受け付けると共に、利用者に対し各種情報を表示する。
【0068】
画像処理部42は、外部装置52から通信部50を介して取得した画像情報に対し、予め定めた画像処理を行って、画像形成部46に出力するための画像情報を生成する。例えば、ページ記述言語で記述されたPDLデータを展開処理して、RGB各色に展開処理されたラスタデータ(RGBデータ)に変換し、RGBデータを色変換処理して、画像形成装置で再現される色で表現されたYMCKデータ等を生成する。更に、スクリーン処理やガンマ補正処理等を行ってもよい。
【0069】
画像メモリ44は、外部装置52から取得した画像情報、画像処理部42で生成された画像情報等、画像形成装置10で取得された各種の画像情報を記憶する。画像メモリ44は、例えば、少なくとも、画像処理部42で画像処理された後の画像情報、即ち、画像形成部46に出力するための画像情報を記憶している。
【0070】
画像形成部46は、画像形成装置10の主要構成として説明したものである。画像形成部46は、感光体12(その駆動部27)、帯電装置15(電源28を含む)、静電潜像形成装置16、現像装置18(電源32を含む)、転写装置31(電源30を含む)、クリーニング装置22、除電装置24、及び定着装置26を有している。感光体12(その駆動部27)、帯電装置15、静電潜像形成装置16、現像装置18、転写装置31、除電装置24、及び定着装置26の各々は、制御装置36と接続されている。制御装置36は、これら各部との間で情報の授受を行って各部を制御する。
【0071】
記憶部48は、ハードディスク等の記憶装置を備えている。記憶部48には、ログデータ等の各種データ、各種プログラム等が記憶される。
通信部50は、有線又は無線の通信回線を介して外部装置52と通信を行うためのインターフェースである。例えば、通信部50は、外部装置52から、画像形成指示や電子文書の画像情報と共に、画像形成情報を取得する。画像形成情報には、ページ、部数、カラーモード等の属性を表すパラメータが含まれる。
【0072】
なお、制御装置36には、各種ドライブが接続されていてもよい。各種ドライブは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、CD−ROM、DVD-ROM、USBメモリなどのコンピュータ読み取り可能な可搬性の記録媒体からデータを読み込んだり、記録媒体に対してデータを書き込んだりする装置である。各種ドライブを備える場合には、可搬性の記録媒体に制御プログラムを記録しておいて、これを対応するドライブで読み込んで実行してもよい。
【0073】
(画像形成装置の動作)
本実施形態に係る画像形成装置10の動作の一例について説明する。なお、画像形成装置10の各種動作は、制御装置36において実行する制御プログラムにより行われる。
【0074】
ここで、画像形成装置10では、例えば、「画像形成処理」、「帯電部材14の逆極性電圧印加処理」、「転写部材20の逆極性電圧印加処理」の制御プログラムが、ROM36Bに予め記憶されている。予め記憶された制御プログラムは、CPU36Aにより読み出され、RAM36Cをワークエリアとして実行される。また、画像形成装置10では、例えば、不揮発性メモリ36Dに、「帯電部材14の逆極性電圧印加条件」、「転写部材20の逆極性電圧印加条件」、「画像形成条件(各種のプロセス制御値)」等の各種データが予め記憶されている。なお、「画像形成条件(各種のプロセス制御値)」には、感光体12の表面を帯電するために帯電部材14に直流電圧を印加する電圧印加情報、及び、感光体12の表面に形成されたトナー像を記録媒体30Aへ転写するために転写部材20に直流電圧を印加する電圧印加情報が含まれる。
これら制御プログラムや各種データは、ROM36B、不揮発性メモリ36D、又は記憶部48等の他の記憶装置に記憶されていてもよいし、通信部50を介して外部から取得されてもよい。
【0075】
まず、画像形成装置10の画像形成動作について説明する。画像形成動作は、制御装置36において実行する「画像形成処理」の制御プログラムにより行われる。
まず、感光体12の表面が帯電装置15により帯電される。静電潜像形成装置16は、帯電された感光体12の表面を画像情報に基づいて露光する。これにより、感光体12上に画像情報に応じた静電荷像が形成される。現像装置18では、トナーを含む現像剤により、感光体12の表面に形成された静電荷像が現像される。これにより、感光体12の表面に、トナー像が形成される。転写装置31では、感光体12の表面に形成されたトナー像が記録媒体30Aへ転写される。記録媒体30Aに転写されたトナー像は、定着装置26により定着される。一方、トナー像を転写した後の感光体12の表面が、クリーニング装置22によりクリーニング(清掃)され、除電装置24により除電される。
【0076】
一方、画像形成装置10では、画像形成動作終了後に、帯電装置15の電源28により、感光体12の表面を帯電するために印加する直流電圧とは逆極性の直流電圧を帯電部材14に印加する「帯電部材14の逆極性電圧印加動作(第一の制御の一例)」を実行する。加えて、転写装置31の電源30により、トナー像を記録媒体30Aの表面に転写するために印加する直流電圧とは逆極性の直流電圧を転写部材20に印加する「転写部材20の逆極性電圧印加動作(第二の制御の一例)」を実行する。
【0077】
「帯電部材14の逆極性電圧印加動作」および「転写部材20の逆極性電圧印加動作は、制御装置36において実行する「帯電部材14の逆極性電圧印加処理」および「転写部材20の逆極性電圧印加処理」の制御プログラムにより行われる。
「帯電部材14の逆極性電圧印加処理」および「転写部材20の逆極性電圧印加処理」の制御プログラムは、例えば、画像形成動作の終了後、開始される。
【0078】
具体的には、次の通りである。
図5に示すように、ステップS100で、例えば、操作表示部40から又は通信部50を介して外部装置52から画像形成指示を受けると、画像形成動作を開始する。
【0079】
次に、ステップS102で、例えば、画像形成動作が終了すると、「帯電部材14の逆極性電圧印加動作」および「転写部材20の逆極性電圧印加動作」を実行する。
【0080】
「帯電部材14の逆極性電圧印加動作」は、例えば、次の通り実行する。
「帯電部材14の逆極性電圧印加動作」は、予め定められた印加時間で、感光体12の表面を帯電するために帯電部材14に印加する直流電圧とは逆極性の直流電圧を帯電部材14に印加する。
具体的には、画像形成の開始から終了までの間に(つまり直前の画像形成動作で)、直流電圧を帯電部材14に印加した圧印加時間を不揮発性メモリ36Dに記憶する。記憶した不揮発性メモリ36Dから印加時間を抽出する。この抽出した印加時間を100としたとき、5以上150以下(好ましくは20以上120以下)の範囲の印加時間で逆極性の直流電圧を帯電部材14に印加する。
なお、逆極性の直流電圧の電圧値の絶対値は、直前の画像形成動作で帯電部材14に印加した直流電圧の電圧値の絶対値と同じとする。ただし、逆極性の直流電圧の電圧値の絶対値と、直前の画像形成動作で帯電部材14に印加した直流電圧の電圧値の絶対値とは、±100Vの範囲で異なっていてもよい。
【0081】
「転写部材20の逆極性電圧印加動作」は、例えば、次の通り実行する。
「転写部材20の逆極性電圧印加動作」は、予め定められた印加時間で、トナー像を記録媒体30Aへ転写するために転写部材20に印加する直流電圧とは逆極性の直流電圧を転写部材20に印加する。
具体的には、画像形成の開始から終了までの間に(つまり直前の画像形成動作で)、直流電圧を転写部材20に印加した圧印加時間を不揮発性メモリ36Dに記憶する。記憶した不揮発性メモリ36Dから印加時間を抽出する。この抽出した印加時間を100としたとき、5以上150以下(好ましくは20以上120以下)の範囲の印加時間で逆極性の直流電圧を転写部材20に印加する。
なお、逆極性の直流電圧の電圧値の絶対値は、直前の画像形成動作で転写部材20に印加した直流電圧の電圧値の絶対値と同じとする。ただし、逆極性の直流電圧の電圧値の絶対値と、直前の画像形成動作で転写部材20に印加した直流電圧の電圧値の絶対値とは、例えば、±100Vの範囲で異なっていてもよい。
【0082】
そして、「帯電部材14の逆極性電圧印加動作」および「転写部材20の逆極性電圧印加動作」が終了すると、ルーチンを終了する。
【0083】
以上説明した本実施形態に係る画像形成装置10では、「帯電部材14の逆極性電圧印加動作」および「転写部材20の逆極性電圧印加動作」するため、特性の導電性部材で構成された帯電部材14及び転写部材20の抵抗上昇が抑制される。そして、帯電部材14及び転写部材20の抵抗上昇に起因する帯電不良及び転写不良が抑制される。
【0084】
なお、本実施形態に係る画像形成装置10では、「帯電部材14の逆極性電圧印加動作」および「転写部材20の逆極性電圧印加動作」を、画像形成動作終了直後に実行した対応を説明したがこれに限られない。各動作は、画像を形成する期間以外の期間に実行すればよい。具体的には、各動作の実行時期は、例えば、次の態様であってもよい。
1)各動作を、画像形成動作開始直前に実行する態様
2)各動作を、電源を入れた直後に実行する態様
3)各動作を、電源が切れた直後に実行する態様
4)各動作を、画像形成動作終了後、予め定められた期間経過後に実行する態様
5)各動作を、記録媒体への画像形成の予め定められた出力枚数毎に実行する態様
6)各動作を、画像形成動作で直流電圧を帯電部材14に印加した圧印加時間の累積時間毎に実行する態様
なお、1)〜6)の態様の場合、実行する各動作と実行する前に実行した各動作との間に実行した画像形成動作で印加した圧印加時間(又は、累積印加時間)に基づいて、逆極性の直流電圧の印加時間を決定する。
【0085】
<特定の導電性部材>
以下、特定の導電性部材(以下、「本実施形態に係る導電性部材」とも称する)ついて、図面を参照しつつ、説明する。
図1は、本実施形態に係る導電性部材の一例を示す概略斜視図である。
図2は、本実施形態に係る導電性部材の一例を示す概略断面図である。なお、
図2は、
図1のA−A断面図である。
【0086】
本実施形態に係る導電性部材310は、
図1及び
図2に示すように、例えば、円筒状または円柱状の導電性基材312(シャフト)と、導電性基材312の外周面に配置された導電性弾性層314と、導電性弾性層314の表層を処理した表面処理層316と、を有するロール部材である。なお、本実施形態に係る導電性部材は、ベルト部材であってもよい。
【0087】
本実施形態に係る導電性部材310は、上記構成に限られず、例えば、表面処理層316を有しない態様、つまり、本実施形態に係る導電性部材310は、導電性基材312と導電性弾性層314とで構成される態様であってもよい。
また、導電性部材310は、導電性弾性層314と導電性基材312との間に配置される中間層(例えば接着層)、導電性弾性層314と表面処理層316との間に配置される抵抗調整層又は移行防止層を設けた態様であってもよい。
【0088】
以下、本実施形態に係る導電性部材310の詳細について説明する。なお、符号は省略して説明する。
【0089】
(導電性基材)
導電性基材について説明する。
導電性基材としては、例えば、アルミニウム、銅合金、ステンレス鋼等の金属または合金;クロム、ニッケル等で鍍金処理を施した鉄;導電性の樹脂などの導電性の材質で構成されたものが用いられる。
【0090】
導電性基材は、帯電ロールの電極および支持部材として機能するものであり、例えば、その材質としては鉄(快削鋼等),銅,真鍮,ステンレス,アルミニウム,ニッケル等の金属が挙げられる。導電性基材としては、外周面にメッキ処理を施した部材(樹脂部材、セラミック部材等)、導電剤が分散された部材(樹脂部材、セラミック部材等)等も挙げられる。導電性基材は、中空状の部材(筒状部材)であってもよし、非中空状の部材であってもよい。
【0091】
(弾性層)
導電性弾性層について説明する。
導電性弾性層は、イオン導電を主体とする導電性弾性層である。そして、導電性弾性層は、弾性材料を含有する。導電性弾性層は、必要に応じて、イオン導電剤、その他添加剤等を含有する。
なお、導電性弾性層は、発泡弾性層であってもよいし、非発泡弾性層であってもよい。
【0092】
−塩素イオンの遊離量−
導電性弾性層の塩素イオンの遊離量は、1μg/g以上80μg/g以下であるが、5μg/g以上60μg/g以下が好ましく、10μg/g以上40μg/g以下がより好ましい。
導電性弾性層の塩素イオンの遊離量を上記範囲にするには、洗浄の導入、加硫温度の低温化等を利用することがよい。例えば、洗浄時間、洗浄後の乾燥時間を長くすると、塩素イオンの遊離量が低下する傾向が見られる。また、導電性弾性層を形成するときの加硫温度を低温化すると、塩素イオンの遊離量が低下する傾向が見られる。
【0093】
導電性弾性層の塩素イオンの遊離量の測定方法は、次の通りである。
導電性部材の導電性弾性層から、0.5gの試料を採集する。0.5gの試料を脂製容器に投入し、脂製容器に超純水(0.058μS/cm)100mLを加え、30分間浸漬し、イオン成分を抽出する。抽出液を50倍希釈し、イオンクロマト(Thermo Fisher Scientific製、ICS−2100)に注入し塩素イオンを測定する。カラムはAS−19(Thermo Fisher Scientific製)、溶離液は水酸化カリウムを使用し、流速1.0mL/minで送液した。そして、電気伝導度検出器を用い、塩素イオンを含む混合標準溶液(関東化学、陰イオン混合標準液I)を使用した絶対検量線法により塩素イオンを定量し、塩素イオン量を求める。
導電性部材の導電性弾性層の厚み方向の両端部および中央部から採取した3種類の試料について、この操作を実施し、その平均値を塩素イオンの遊離量とする。
【0094】
−弾性材料−
弾性材料は、エピクロロヒドリンゴムを含む。弾性材料は、エピクロロヒドリンゴム以外の他の弾性材料を含んでもよい。
ただし、弾性材料100質量部に対するエピクロロヒドリンゴムの含有量は、10質量部以上100質量部以下が好ましく、20質量部以上100質量部以下がより好ましく、50質量部以上100質量部以下がさらに好ましく、70質量部以上100質量部以下が特に好ましく、90質量部以上100質量部以下が最も好ましい。
【0095】
エピクロロヒドリンゴムとしては、例えば、エピクロロヒドリン単独重合ゴム、共重合ゴム(エピクロロヒドリン−エチレンオキシド共重合ゴム、エピクロロヒドリン−アリルグリシジルエーテル共重合ゴム、エピクロロヒドリン−エチレンオキシド−アリルグリシジルエーテル3元共重合ゴム等)、これらの混合ゴム等が挙げられる。
【0096】
他の弾性材料としては、イソプレンゴム、クロロプレンゴム、ブチルゴム、ポリウレタン、シリコーンゴム、フッ素ゴム、スチレン−ブタジエンゴム、ブタジエンゴム、ニトリルゴム、エチレンプロピレンゴム、エピクロロヒドリン−エチレンオキシド共重合ゴム、エピクロロヒドリン−エチレンオキシド−アリルグリシジルエーテル共重合ゴム、エチレン−プロピレン−ジエン3元共重合ゴム(EPDM)、アクリロニトリル−ブタジエン共重合ゴム(NBR)、天然ゴム、これらの混合ゴム等が挙げられる。
【0097】
−イオン導電剤−
イオン導電剤としては、例えば、四級アンモニウム塩(例えば、ラウリルトリメチルアンモニウム、ステアリルトリメチルアンモニウム、オクタドデシルトリメチルアンモニウム、ドデシルトリメチルアンモニウム、ヘキサデシルトリメチルアンモニウム又は変性脂肪酸・ジメチルエチルアンモニウムの過塩素酸塩、塩素酸塩、ホウフッ化水素酸塩、硫酸塩、エトサルフェート塩、臭化ベンジル塩又は塩化ベンジル塩)、脂肪族スルホン酸塩、高級アルコール硫酸エステル塩、高級アルコールエチレンオキサイド付加硫酸エステル塩、高級アルコール燐酸エステル塩、高級アルコールエチレンオキサイド付加燐酸エステル塩、ベタイン、高級アルコールエチレンオキサイド、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、多価アルコール脂肪酸エステル等が挙げられる。イオン導電剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0098】
イオン導電剤の含有量は、弾性材料100質量部に対して、0.1質量部以上5.0質量部以下が好ましく、0.5質量部以上3.0質量部以下がより好ましい。
−その他添加剤−
その他添加剤としては、例えば、軟化剤、可塑剤、硬化剤、加硫剤、加硫促進剤、酸化防止剤、界面活性剤、カップリング剤、充填剤(シリカ、炭酸カルシウム等)等の通常弾性層に添加され得る材料が挙げられる。
【0099】
−導電性弾性層の特性−
導電性弾性層における導電性基材側の面(以下「内周面」とも称する)の表面粗さRzは、7μm以上30μm以下(又は10μm以上20μm以下)がよい。導電性弾性層の内周面の表面粗さRzが上記範囲であると、高温高湿保管後に形状が変化しにくい点で有利である。一方で、導電性弾性層と導電性基材との界面において、導通性が低下し、導電性部材の抵抗が低下する傾向が高くなる。しかし、本実施形態に係る導電性部材では、導電性弾性層の内周面の表面粗さRzが上記範囲であっても、同じ極性の通電を繰り返し印加したときに生じる抵抗上昇が抑制されやすくなる。
【0100】
導電性弾性層が発泡弾性層である場合、導電性弾性層の内周面の表面粗さRzは、導電性弾性層の内周面に形成されているスキン層の表面粗さRzとする。
【0101】
導電性弾性層の内周面の表面粗さRzを上記範囲にする方法は、例えば、次の通りである。目的とする導電性弾性層の内周面の表面粗さRzを付与する表面粗さRzの外周面を有する導電性基材を準備する。次に、導電性基材の外周面に導電性弾性層を押し出し成形する。次に、導電性弾性層付き導電性基材の端部から、空気を吹き込み、筒状の導電性弾性層を取り外す。次に、取り出した筒状の導電性弾性層に他の導電性基材を嵌め込む。
【0102】
導電性弾性層の内周面の表面粗さRzの測定方法は、次の通りである。
導電性部材の軸方向に沿って導電性弾性層に導電性基材まで到達する切り込みを2本入れる。2本の切り込み間の導電性弾性層を、導電性弾性層の表面性状が変化しないように、導電性基材からゆっくり剥離して、測定試料を採取する。測定試料における導電性弾性層の内周面に相当する面に対し、導電性部材の軸方向に相当する方向に沿って、表面粗さRzを測定する。
また、次の方法により、表面粗さRzを測定してもよい。導電性部材の端部から空気を吹き込む。次に、中心部に孔が開いた状態の導電性弾性層を導電性基材から取り外す。次に、取り外した筒状の導電性弾性層を半分に切り開く。切り開いた導電性弾性層の内周面に相当する面に対し、導電性部材の軸方向に相当する方向に沿って、表面粗さRzを測定する。
そして、表面粗さRzの測定は、表面粗さ計サーフコム1400A(東京精密社製)を用いて、JIS B0601−1994に準拠し、評価長さLnを4mm、基準長さLを0.8mm、カットオフ値を0.8mmとした測定条件で行う。
【0103】
導電性弾性層の厚みは、1mm以上10mm以下とすることが好ましく、2mm以上5mm以下とすることがより好ましい。
そして、導電性弾性層の体積抵抗率は10
3Ωcm以上10
14Ωcm以下が好ましい。
【0104】
(表面処理層)
表面処理層は、例えば、弾性層の表層に樹脂等が含浸した層(つまり、気泡に樹脂等が含浸した弾性層の表層を表面処理層とした態様)である。
【0105】
表面処理層は、イソシアネート化合物を含む表面処理液を弾性層の表層に含浸させ、表面処理液(イソシアネート)を硬化させた層であることがよい。
表面処理層は、表面から内部に向かって漸次疎になるように弾性層の表層と一体的に形成される。表面処理層により、帯電部材の表面への可塑剤等の汚染物質の移行を抑制し、像保持体への汚染性が低い帯電部材となる。
【0106】
表面処理層を形成するための表面処理液としては、イソシアネート化合物と有機溶剤とを含み、さらに必要に応じて、導電剤を含む表面処理液が挙げられる。
【0107】
イソシアネート化合物としては、2,6−トリレンジイソシアネート(TDI)、4,4´−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、パラフェニレンジイソシアネート(PPDI)、1,5−ナフタレンジイソシアネート(NDI)及び3,3−ジメチルジフェニル−4,4´−ジイソシアネート(TODI)、並びにそれらの多量体およびそれらの変性体等が挙げられる。
【0108】
導電剤としては、例えば、ケッチェンブラック、アセチレンブラック等のカーボンブラック;熱分解カーボン、グラファイト;アルミニウム、銅、ニッケル、ステンレス鋼等の金属又は合金;酸化錫、酸化インジウム、酸化チタン、酸化錫−酸化アンチモン固溶体、酸化錫−酸化インジウム固溶体等の導電性金属酸化物;絶縁物質の表面を導電化処理した物質;などの粉末が挙げられる。これらの中でも、導電剤としては、カーボンブラックが好ましい。
導電剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0109】
導電剤の含有量は、イソシアネート化合物に対して2質量%以上40質量%以下であることが好ましい。導電剤の含有量が上記範囲であると、有効な帯電特性が発揮され易くなる。また、導電剤の表面処理層からの離脱が抑制される。
【0110】
有機溶剤としては、特に限定されないが、酢酸エチル、メチルエチルケトン(MEK)、トルエン等の有機溶剤が挙げられる。
【0111】
ここで、表面処理液を弾性層の表層に含浸させる方法としては、弾性層付き導電性基材を表面処理液に浸漬させる方法、スプレー等により表面処理液を弾性層上に塗布する方法等が挙げられる。表面処理液への浸時間、スプレーで吹き付ける回数、又は表面処理液の量は適宜調節すればよい。
【0112】
なお、表面処理層に代えて表面層を設けてもよい。例えば、表面層は、弾性層上に独立して設けられた層であって、樹脂を含む層である。表面層は、必要に応じて、その他添加剤等を含んでもよい。
【0113】
−樹脂−
樹脂としては、例えば、アクリル樹脂、フッ素変性アクリル樹脂、シリコーン変性アクリル樹脂、セルロース樹脂、ポリアミド樹脂、共重合ナイロン、ポリウレタン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリイミド樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、セルロース樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、エチレンテトラフルオロエチレン樹脂、メラミン樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリビニル樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリチオフェン樹脂。ポリエチレンテレフタレート樹脂(PET)、フッ素樹脂(ポリフッ化ビニリデン樹脂、4フッ化エチレン樹脂、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)等)が挙げられる。また、樹脂は、硬化性樹脂を硬化剤若しくは触媒により硬化又は架橋したものが好ましい。
ここで、共重合ナイロンは、610ナイロン、11ナイロン、12ナイロン、の内のいずれか1種又は複数種を重合単位として含む共重合体である。なお、共重合ナイロンには、6ナイロン、66ナイロン等の他の重合単位を含んでいてもよい。
【0114】
これらの中でも、表面層の汚染を抑える点から、樹脂としては、ポリフッ化ビニリデン樹脂、4フッ化エチレン樹脂、ポリアミド樹脂が好ましく、ポリアミド樹脂がより好ましい。ポリアミド樹脂は、被帯電体(例えば像保持体)との接触による摩擦帯電を起こし難く、トナー、外添剤の付着が抑制され易い。
【0115】
ポリアミド樹脂としては、ポリアミド樹脂ハンドブック,福本修(日刊工業新聞社)に記述のポリアミド樹脂が挙げられる。これらの中でも、特に、ポリアミド樹脂としては、表面層316の汚染を抑える点から、アルコール可溶性ポリアミドが好ましく、アルコキシメチル化ポリアミド(アルコキシメチル化ナイロン)がより好ましく、メトキシメチル化ポリアミド(メトキシメチル化ナイロン)が更に好ましい。
【0116】
なお、樹脂は、表面層の機械的強度を向上させ、表面層の割れの発生を抑制する点から、架橋構造を有していてもよい。
【実施例】
【0117】
以下、本発明を、実施例を挙げてさらに具体的に説明する。ただし、これら各実施例は、本発明を制限するものではない。なお、文中、「部」、「%」は、特に断りがない限り、質量基準である。
【0118】
<実施例1>
(弾性ロールの作製)
下記混合物をオープンロールで混練りしゴム練り材Aを得た後、ゴム練り材Aと表面粗さRz0.8μmのSUS製、直径6mmのシャフトを同時に押し出して円筒形状のロールに成形した。次いで、円筒形状のロールを160℃で30分間加熱して加硫させた。
次いで、円筒形状のロールのシャフトにエアーを吹き込み、加硫後のゴムを抜き出して、長さ224mmにカットした。
次いで、加硫後のゴムの中心部の孔に、表面粗さRz0.4μmSUS製、直径6mmのシャフト(導電性基材の一例)を差し込み、ロールの外周面を研磨して外径9mm(弾性層厚1.5mm)の弾性ロール(シャフトの外周面に導電性弾性層が形成されたロール)を得た。
【0119】
−混合物の組成−
・ゴム材 ・・・・・・・・・100質量
(エピクロルヒドリン−エチレンオキシド−アリルグリシジルエーテル共重合ゴム:CG102:大阪ソーダ社製60%、ニトリルアクリロブタジエンゴム:N230SV:40%:JSR社製)
・カーボンブラック(#55:旭カーボン社製) ・・・・15質量部
・加硫剤(硫黄)200メッシュ:鶴見化学工業社製 ・・・・1質量部
・加硫促進剤(ノクセラーDM:大内新興化学工業社製) ・・1.5質量部
・加硫促進剤(ノクセラーTET:大内新興化学工業社製)・・1.0質量部
・酸化亜鉛(亜鉛華1号:正同化学工業社製) ・・・・5質量部
・炭酸カルシウム(ホワイトンSSB:白石カルシウム) ・・・10質量部
・ステアリン酸(ステアリン酸S:花王社製) ・・・・1質量部
【0120】
(弾性ロールの洗浄)
次に、研磨後の弾性ロールを1μS/cmの純水(20℃)を入れた超音波洗浄機で40分間洗浄し、水中から取り出して、120rpmで1分間回転させた後、105℃のオーブンにて15分間乾燥させた。
【0121】
(表面処理の実施)
洗浄後の弾性ロールをイソシアネート化合物溶液(住友バイエルン社製:バイヒジュール3100)に15秒間浸漬させた。その後、室温にて15分間乾燥し、乾燥炉にて140℃で15分間乾燥させた。それにより、弾性層の表層に表面処理層を形成した。
【0122】
上記工程を経て、導電性ロール1を得た。
【0123】
(導電性ロールの特性測定)
各例で得られた導電性ロールについて、1)導電性弾性層の塩素イオンの遊離量(弾性層の「塩素イオン量」と表記)、2)導電性弾性層の内周面の表面粗さRz(表中「内周面のRz」と表記)、および、3)導電性ロールを高温高湿環境下(28℃85%RH環境下)で10時間保管した後の導電性弾性層の体積抵抗率と導電性ロールを低温低湿環境下(10℃、15%RH)で10時間保管した後の導電性弾性層の体積抵抗率との差(表中、「環境依存性」と表記)を既述の方法に従って測定した。
【0124】
また、導電性ロールにおけるシャフトと導電性弾性層との密着力(表中「密着力」と表記)について、次の通り測定した。導電性ロールの端部から20mm位置に周方向に切り込みを入れて、端部20mmの導電性弾性層からなる筒状体をその他の導電性弾性層から独立させた。その後、導電性ロールの外径と同じ内径を持つ幅20mmの金属カラーの内側に接着剤を付けて上記で独立させた端部20mmの導電性弾性層からなる筒状体に差し込み接着剤が乾くまで1日放置した。その後に、シャフトを固定して金属カラーを回した時に金属カラーが動き出すときの荷重をトルクリミッターにて測定した。
【0125】
(試験)
−導電性ロールの抵抗変化−
下記実機試験1を実施する前(初期)と後(経時)との導電性ロールの抵抗値を測定した。そして、その差を求めた。なお、抵抗値は、常用対数で示す。
導電性ロールの抵抗値は、次の通り測定した。
温度22℃、湿度55%RHの環境下で、導電性ロールを金属板上に置き、シャフトの両端に500gの荷重を掛けた状態とする。この状態で、シャフトと金属板との間に印加電圧1000Vを印加して、10秒後の電流値I(A)を読み取り、式「R=V/I」によって抵抗値(R)を計算した。この測定と計算を、導電性ロールを90°ずつ周方向に回転させて4点について行い、その平均値を導電性ロールの抵抗値とした。
【0126】
−実機試験1−
導電性ロールを帯電ロールとして、試験機「DocuPrint CP400d):富士ゼロックス社製」に装着した。
試験機により、画像濃度20%のハーフトーン画像をA4用紙に300,000枚出力するテスト(28℃85%RH環境下で150,000枚出力後、10℃15%RH環境下で150,000枚出力するテスト)を行った。
ただし、出力枚数10枚毎に、出力枚数10枚で帯電ロールに印加した印加時間を100としたとき20となる印加時間で逆極性の直流電圧を帯電ロールに印加する処理を実施した。以下、出力枚数10枚で帯電ロールに印加した印加時間に対する逆極性の電圧を印加する時間の比率を「逆極性電圧印加時間比率」と称する。なお、実施例1の逆極性電圧印加時間比率は、20である。
【0127】
そして、300,000枚前に出力した画像について、白点、かぶり又は色スジの画像欠陥(帯電不良による画像欠陥)の有無を目視により観察し、下記基準で評価した。
A(◎):画質欠陥が見られない
B(○):目視でわずかに画質欠陥が見られる
C(△):画質欠陥が見られるが許容範囲内
D(×):画質欠陥できない白点が見られる。
【0128】
また、実機試験1後、帯電ロールを新品に交換して、画像濃度20%のハーフトーン画像をA4用紙に1枚出力した。そして、出力した画像について、白点、かぶり又は色スジの画像欠陥の有無を目視により観察し、上記基準で評価した。
【0129】
上記実施試験1により、帯電ロールによる画質欠陥、帯電ロール以外による画質欠陥を切り分けて評価した。
【0130】
(実機試験2(リーク性))
導電性ロールを帯電ロールとして、直径0.15mmのアルミ基材に達する穴を開けた感光体とともに、カラー複写機DocuPrint CP400d:富士ゼロックス社製に装着し、画出しを実施し、リークの発生による画像の黒点を以下の基準で判定した。結果を表1に示す。
A(◎):直径0.5mm未満の黒点
B(○):直径0.5mm以上1.0mm未満の黒点。
C(△):直径1.0mm以上2.0mm未満の黒点
D(×):直径2.0mm以上の黒点
【0131】
<実施例2>
弾性ロールの洗浄時間を20分にした以外は実施例1と同様にして導弾性ロール2を得た。そして、得られた導電性ロールを使用し、実施例1と同様にして、導電性ロールの特性測定、及び試験を実施した。
【0132】
<実施例3>
弾性ロールの洗浄時間を60分にした以外は実施例1と同様にして導電性ロール3を得た。そして、得られた導電性ロールを使用し、実施例1と同様にして、導電性ロールの特性測定、及び試験を実施した。
【0133】
<実施例4>
弾性ロールの洗浄時間を100分にした以外は実施例1と同様にして導電性ロール4を得た。そして、得られた導電性ロールを使用し、実施例1と同様にして、導電性ロールの特性測定、及び試験を実施した。
【0134】
<実施例5>
弾性ロールの洗浄時間を10分にし、以外は実施例1と同様にして導電性ロール5を得た。そして、得られた導電性ロールを使用し、逆極性電圧印加時間比率を5とした以外は、実施例1と同様にして、導電性ロールの特性測定、及び試験を実施した。
【0135】
<実施例6>
実施例1の導電性ロール1を使用し、逆極性電圧印加時間比率を120とした以外は、実施例1と同様にして、導電性ロールの特性測定、及び試験を実施した。
【0136】
<実施例7>
実施例1の導電性ロール1を使用し、逆極性電圧印加時間比率を150とした以外は、実施例1と同様にして、導電性ロールの特性測定、及び試験を実施した。
【0137】
<実施例8>
弾性ロールの洗浄時間を3分にした以外は実施例1と同様にして半導電性ロール6を得た。そして、得られた導電性ロールを使用し、実施例1と同様にして、導電性ロールの特性測定、及び試験を実施した。
【0138】
<実施例9>
実施例5の導電性ロール5を使用し、実施例1と同様にして、導電性ロールの特性測定、及び試験を実施した。
【0139】
<実施例10>
弾性ロールの洗浄時間を80分にした以外は実施例1と同様にして半導電性ロール7を得た。そして、得られた導電性ロールを使用し、実施例1と同様にして、導電性ロールの特性測定、及び試験を実施した。
【0140】
<実施例11>
ゴム練り材Aと表面粗さRz0.6μmのSUS製、直径6mmのシャフト(導電性基材の一例)と同時に押し出しだす以外は、実施例1と同様にして、導電性ロールを得た。そして、得られた導電性ロールを使用し、実施例1と同様にして、導電性ロールの特性測定、及び試験を実施した。
【0141】
<実施例12>
ゴム練り材Aと表面粗さRz3.0μmのSUS製、直径6mmのシャフト(導電性基材の一例)と同時に押し出す以外は、実施例1と同様にして、導電性ロールを得た。そして、得られた導電性ロールを使用し、実施例1と同様にして、導電性ロールの特性測定、及び試験を実施した。
【0142】
<比較例1>
弾性ロールの洗浄時間を0分(洗浄なし)にした以外は実施例1と同様にして半導電性ロール10を得た。そして、得られた導電性ロールを使用し、逆極性電圧印加時間比率を5とした以外は、実施例1と同様にして、導電性ロールの特性測定、及び試験を実施した。
【0143】
<比較例2>
実施例5の導電性ロール5を使用し、逆極性の直流電圧を帯電ロールに印加する処理を実施しない以外は、実施例1と同様にして、導電性ロールの特性測定、及び試験を実施した。
【0144】
<比較例3>
弾性ロールの洗浄時間を0分(洗浄なし)にした以外は実施例1と同様にして半導電性ロール11を得た。そして、得られた導電性ロールを使用し、逆極性の直流電圧を帯電ロールに印加する処理を実施しない以外は、実施例1と同様にして、導電性ロールの特性測定、及び試験を実施した。
【0145】
<比較例4>
弾性ロールの洗浄時間を120分にした以外は、実施例1と同様にして半導電性ロール12を得た。そして、得られた導電性ロールを使用し、実施例1と同様にして、導電性ロールの特性測定、及び試験を実施した。
【0146】
<比較例5>
ゴム練り材Aと表面粗さRz5.0μmのSUS製、直径6mmのシャフト(導電性基材の一例)と同時に押し出す以外は、実施例1と同様にして、導電性ロールを得た。 次に、弾性ロールを洗浄せずに、導電性ロール13を得た。
そして、得られた導電性ロールを使用し、逆極性の直流電圧を帯電ロールに印加する処理を実施しない以外は、実施例1と同様にして、導電性ロールの特性測定、及び試験を実施した。
【0147】
<比較例6>
ゴム練り材Aと同時に押し出す「SUS製のシャフト」の粗さRzを0.3μmにした以外は、比較例5と同様にして、導電性ロール14を得た。そして、得られた導電性ロールを使用し、逆極性の直流電圧を帯電ロールに印加する処理を実施しない以外は、実施例1と同様にして、導電性ロールの特性測定、及び試験を実施した。
【0148】
<参考例1>
カーボンブラック(#55:旭カーボン社製)に代えて、2種類のカーボンブラック(商品名:粒状アセチレンブラック:電気化学株式会社製、10質量部、商品名:アサヒサーマルFT 旭カーボン株式会社製、50質量部)を添加したゴム練り材Aを使用した以外は、比較例1と同様にして導電性ロール15を得た。
そして、得られた導電性ロールを使用し、逆極性の直流電圧を帯電ロールに印加する処理を実施しない以外は、実施例1と同様にして、導電性ロールの特性測定、及び試験を実施した。
【0149】
【表1】
【0150】
上記結果より、本実施例は、比較例1〜3、5〜6に比べ、帯電ロール(導電性ロール)の抵抗変化(つまり、同じ極性の通電を繰り返し印加したときに生じる抵抗上昇)が抑制されていることがわかる。そして、帯電不良による画像欠陥が抑制されていることがわかる。
また、本実施例は、導電性弾性層の塩素イオンの遊離量が過剰に少ない導電性ロールを帯電ロールとして適用した比較例4に比べ、高温高湿環境下での帯電不良(電荷集中(リーク))による色点が抑制されていることがわかる。つまり、高温高湿環境下での抵抗低下が抑制されていることがわかる。
これら評価の結果から、本実施例の導電性ロールは、帯電ロールに有用であることがわかる。
【0151】
なお、電子導電を主体とする導電性弾性層を有する導電性ロールを帯電ロールに適用した参考例では、帯電ロール(導電性ロール)の導電性弾性層の塩素イオンの遊離量が多くても、帯電ロール(導電性ロール)の抵抗変化(つまり、同じ極性の通電を繰り返し印加したときに生じる抵抗上昇)が生じ難いことがわかる。つまり、帯電不良による画像欠陥が生じ難いことがわかる。
【0152】
<実施例101>
弾性層を形成するための混合物の組成に「発泡剤(ネオセルボン:永和化成工業社製)5質量部」を加え、表面処理層を形成しない且つロールの外径を18mm(弾性層厚6mm)とした以外は、実施例1と同様にして、導電性ロールを得た。そして、次の試験を実施した。
【0153】
(試験)
−導電性ロールの抵抗変化−
下記実機試験1を実施する前(初期)と後(経時)との導電性ロールの抵抗値を測定した。そして、その差を求めた。なお、抵抗値は、常用対数で示す。
導電性ロールの抵抗値は、次の通り測定した。
温度22℃、湿度55%RHの環境下で、導電性ロールを金属板上に置き、シャフトの両端に500gの荷重を掛けた状態とする。この状態で、シャフトと金属板との間に印加電圧1000Vを印加して、10秒後の電流値I(A)を読み取り、式「R=V/I」によって抵抗値(R)を計算した。この測定と計算を、導電性ロールを90°ずつ周方向に回転させて4点について行い、その平均値を導電性ロールの抵抗値とした。
【0154】
−実機試験11−
導電性ロールを2次転写ロールとして、試験機「DocuPrint CP400d:富士ゼロックス社製」に装着した。
試験機により、画像濃度20%のハーフトーン画像をA4用紙に300,000枚出力するテスト(28℃85%RH環境下で150,000枚出力後、10℃15%RH環境下で150,000枚出力するテスト)を行った。
ただし、出力枚数10枚毎に、出力枚数10枚で2次転写ロールに印加した印加時間を100としたとき20となる印加時間で逆極性の直流電圧を2次転写ロールに印加する処理を実施した。なお、実施例101の逆極性電圧印加時間比率は、20である。
【0155】
そして、300,000枚前に出力した画像について、白点、かぶり又は色スジの画像欠陥(転写不良による画像欠陥)の有無を目視により観察し、下記基準で評価した。
A(◎):画質欠陥が見られない
B(○):目視でわずかに画質欠陥が見られる
C(△):画質欠陥が見られるが許容範囲内
D(×):画質欠陥できない白点が見られる。
【0156】
また、実機試験1後、2次転写ロールを新品に交換して、画像濃度20%のハーフトーン画像をA4用紙に1枚出力した。そして、出力した画像について、白点、かぶり又は色スジの画像欠陥の有無を目視により観察し、上記基準で評価した。
【0157】
上記実施試験1により、転写ロールによる画質欠陥、転写ロール以外による画質欠陥を切り分けて評価した。
【0158】
(実機試験12(濃度ムラ))
導電性ロールを2次転写ロールとして、評価機「DocuPrint CP400d:富士ゼロックス社製」に装着した。
評価機により、35℃、85%RH環境下で、画像濃度30%のハーフトーン画像をA4用紙に10枚出力した。
ただし、逆極性電圧印加時間比率を20となる印加時間で逆極性の直流電圧を転写ロールに印加する処理を実施した。
【0159】
そして、1から10枚目の画像について、転写不良による濃度ムラの有無を目視により観察し、下記基準で評価した。
A(◎):濃度ムラが見られない
B(○):目視でわずかに濃度ムラが見られる
C(△):濃度ムラが見られるが許容範囲内
D(×):許容できない濃度ムラが見られる。
【0160】
<実施例102〜112、比較例101〜106、参考例101>
弾性層の混合物の組成として発泡剤(ネオセルボン:永和化成工業社製)を5質量部添加し、表面処理を施さない且つロールの外径を18mm(弾性層厚6mm)とした以外は、実施例2〜12、比較例1〜6、参考例1と同様にして、各々、導電性ロールを得た。そして、得られた導電性ロールを使用し、実施例101と同様にして、試験を実施した。ただし、逆極性電圧印加時間比率は、表2に示す比率とした。
【0161】
【表2】
【0162】
上記結果から、本実施例の導電性ロールは、転写ロールに適用すると、転写不良による画像欠陥、高温高湿環境下での転写不良による濃度ムラが抑制されていることがわかる。
これら評価の結果から、本実施例の導電性ロールは、転写ロールにも有用であることがわかる。