特許第6922587号(P6922587)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6922587電子写真感光体、電子写真感光体の製造方法、プロセスカートリッジ、及び画像形成装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6922587
(24)【登録日】2021年8月2日
(45)【発行日】2021年8月18日
(54)【発明の名称】電子写真感光体、電子写真感光体の製造方法、プロセスカートリッジ、及び画像形成装置
(51)【国際特許分類】
   G03G 5/04 20060101AFI20210805BHJP
   G03G 5/06 20060101ALI20210805BHJP
【FI】
   G03G5/04
   G03G5/06 373
   G03G5/06 312
   G03G5/06 313
   G03G5/06 314B
【請求項の数】12
【全頁数】33
(21)【出願番号】特願2017-179935(P2017-179935)
(22)【出願日】2017年9月20日
(65)【公開番号】特開2019-56749(P2019-56749A)
(43)【公開日】2019年4月11日
【審査請求日】2020年8月31日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005496
【氏名又は名称】富士フイルムビジネスイノベーション株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】特許業務法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】上條 由紀子
(72)【発明者】
【氏名】中村 博史
【審査官】 福田 由紀
(56)【参考文献】
【文献】 特開2017−049425(JP,A)
【文献】 特開2016−062060(JP,A)
【文献】 特開2016−151754(JP,A)
【文献】 特開2017−161773(JP,A)
【文献】 特開平11−202508(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 5/04−5/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性基体と、
前記導電性基体上に設けられ結着樹脂と電荷発生材料とを含有する単層型の感光層であって、前記導電性基体側の領域に前記電荷発生材料が存在せず、かつ、前記電荷発生材料が存在しない前記導電性基体側の領域の厚みは前記単層型の感光層における膜厚の1%以上15%以下である単層型の感光層と、
を有する電子写真感光体。
【請求項2】
前記電荷発生材料が存在しない前記導電性基体側の領域の厚みは、前記単層型の感光層における膜厚の1%以上10%以下である請求項1に記載の電子写真感光体。
【請求項3】
前記電荷発生材料が存在しない前記導電性基体側の領域の厚みは、前記単層型の感光層における膜厚の1%以上5%以下である請求項2に記載の電子写真感光体。
【請求項4】
前記電荷発生材料は、ヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料及びクロロガリウムフタロシアニン顔料の少なくとも一方を含む請求項1に記載の電子写真感光体。
【請求項5】
前記電荷発生材料の含有量は、前記単層型の感光層全体に対し、0.5質量%以上10質量%以下である請求項4に記載の電子写真感光体。
【請求項6】
前記電荷発生材料の含有量は、前記単層型の感光層全体に対し、1質量%以上7質量%以下である請求項5に記載の電子写真感光体。
【請求項7】
前記単層型の感光層は、正孔輸送材料を含有する請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載の電子写真感光体。
【請求項8】
前記正孔輸送材料は、下記一般式(1)で表される正孔輸送材料である請求項7に記載の電子写真感光体。
【化1】

(一般式(1)中、R、R、R、R、R、及びRは、各々独立に、水素原子、低級アルキル基、アルコキシ基、フェノキシ基、ハロゲン原子、又は、低級アルキル基、低級アルコキシ基及びハロゲン原子から選ばれる置換基を有していてもよいフェニル基を示す。m及びnは、各々独立に0又は1を示す。)
【請求項9】
前記単層型の感光層は、電子輸送材料を含有する請求項1〜請求項8のいずれか1項に記載の電子写真感光体。
【請求項10】
前記電子輸送材料は、下記一般式(2)で表される電子輸送材料である請求項9に記載の電子写真感光体。
【化2】

(一般式(2)中、R11、R12、R13、R14、R15、R16、及びR17は、各々独立に、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、又はアラルキル基を示す。R18は、アルキル基、−L19−O−R20で示される基、アリール基、又はアラルキル基を示す。ただし、L19はアルキレン基を示し、R20はアルキル基を示す。)
【請求項11】
請求項1〜請求項10のいずれか1項に記載の電子写真感光体を備え、
画像形成装置に着脱するプロセスカートリッジ。
【請求項12】
請求項1〜請求項10のいずれか1項に記載の電子写真感光体と、
前記電子写真感光体の表面を帯電する帯電手段と、
帯電した前記電子写真感光体の表面に静電潜像を形成する静電潜像形成手段と、
トナーを含む現像剤により、前記電子写真感光体の表面に形成された静電潜像を現像してトナー像を形成する現像手段と、
前記トナー像を記録媒体の表面に転写する転写手段と、
を備える画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真感光体、電子写真感光体の製造方法、プロセスカートリッジ、及び画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、「導電性基体と、結着樹脂、電荷発生材料、正孔輸送材料、特定の一般式で表される電子輸送材料、及びターフェニル化合物を含む単層型の感光層と、を備え、前記結着樹脂の粘度平均分子量Mvが7000以上100000以下であり、前記単層型の感光層の全固形分に対する前記結着樹脂の含有比率Pが35質量%以上であって、且つ、当該粘度平均分子量Mv及び当該含有比率Pが特定の関係を満たす電子写真感光体。」が開示されている。
【0003】
特許文献2には、「導電性基体と、前記導電性基体上に設けられた単層型の感光層であって、結着樹脂、ヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料およびクロロガリウムフタロシアニン顔料の2種の電荷発生材料、特定の一般式で表される正孔輸送材料、並びに特定の一般式で表される電子輸送材料を含み、前記ヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料とクロロガリウムフタロシアニン顔料との含有比(質量比)が2:8乃至8:2であり、且つ前記ヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料およびクロロガリウムフタロシアニン顔料の総含有率が0.8質量%以上1.5質量%以下である感光層と、を備える電子写真感光体。」が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2016−065950号公報
【特許文献2】特許2016−065888公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
単層型の感光層を有する電子写真感光体を使用すると、画像形成を繰り返した後に、意図しない色点が発生した画像が形成されることがある。この意図しない色点は、積層型の感光層を有する電子写真感光体を使用した場合に比べて、単層型の感光層を有する電子写真感光体を使用した場合に起こりやすく、単層型の感光層のうち導電性基体側に偏在した電荷発生材料に起因すると考えられる。その一方で、導電性基体側の面側の広い領域で電荷発生材料が全く存在しない場合は、電荷の円滑な移動が妨げられ、速いプロセススピード(例えば、プロセススピード:150mm/sec以上)で画像を形成すると前サイクルの履歴による残像現象が起こることがある。
【0006】
本発明の課題は、導電性基体上に設けられ結着樹脂と電荷発生材料とを含有する単層型の感光層を有する電子写真感光体において、単層型の感光層のうち電荷発生材料が存在しない導電性基体側の領域の厚みが単層型の感光層における膜厚の0%以上1%未満又は15%を超える場合に比べ、速いプロセススピードで形成された画像における前サイクルの履歴による残像現象を抑制しつつ、画像形成を繰り返した後に形成された画像における意図しない色点の発生を抑制した電子写真感光体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題は、以下の手段により解決される。即ち、
請求項1に係る発明は、
導電性基体と、
前記導電性基体上に設けられ結着樹脂と電荷発生材料とを含有する単層型の感光層であって、前記導電性基体側の領域に前記電荷発生材料が存在せず、かつ、前記電荷発生材料が存在しない前記導電性基体側の領域の厚みは前記単層型の感光層における膜厚の1%以上15%以下である単層型の感光層と、
を有する電子写真感光体である。
【0008】
請求項2に係る発明は、
前記電荷発生材料が存在しない前記導電性基体側の領域の厚みは、前記単層型の感光層における膜厚の1%以上10%以下である請求項1に記載の電子写真感光体である。
請求項3に係る発明は、
前記電荷発生材料が存在しない前記導電性基体側の領域の厚みは、前記単層型の感光層における膜厚の1%以上5%以下である請求項2に記載の電子写真感光体である。
【0009】
請求項4に係る発明は、
前記電荷発生材料は、ヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料及びクロロガリウムフタロシアニン顔料の少なくとも一方を含む請求項1に記載の電子写真感光体である。
請求項5に係る発明は、
前記電荷発生材料の含有量は、前記単層型の感光層全体に対し、0.5質量%以上10質量%以下である請求項4に記載の電子写真感光体である。
請求項6に係る発明は、
前記電荷発生材料の含有量は、前記単層型の感光層全体に対し、1質量%以上7質量%以下である請求項5に記載の電子写真感光体である。
【0010】
請求項7に係る発明は、
前記単層型の感光層は、正孔輸送材料を含有する請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載の電子写真感光体である。
請求項8に係る発明は、
前記正孔輸送材料は、下記一般式(1)で表される正孔輸送材料である請求項7に記載の電子写真感光体である。
【0011】
【化1】
【0012】
一般式(1)中、R、R、R、R、R、及びRは、各々独立に、水素原子、低
級アルキル基、アルコキシ基、フェノキシ基、ハロゲン原子、又は、低級アルキル基、低級アルコキシ基及びハロゲン原子から選ばれる置換基を有していてもよいフェニル基を示す。m及びnは、各々独立に0又は1を示す。
【0013】
請求項9に係る発明は、
前記単層型の感光層は、電子輸送材料を含有する請求項1〜請求項8のいずれか1項に記載の電子写真感光体である。
請求項10に係る発明は、
前記電子輸送材料は、下記一般式(2)で表される電子輸送材料である請求項9に記載の電子写真感光体である。
【0014】
【化2】
【0015】
一般式(2)中、R11、R12、R13、R14、R15、R16、及びR17は、各々独立に、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、又はアラルキル基を示す。R18は、アルキル基、−L19−O−R20で示される基、アリール基、又はアラルキル基を示す。ただし、L19はアルキレン基を示し、R20はアルキル基を示す。
【0016】
請求項11に係る発明は、
請求項1〜請求項10のいずれか1項に記載の電子写真感光体を備え、
画像形成装置に着脱するプロセスカートリッジである。
請求項12に係る発明は、
請求項1〜請求項10のいずれか1項に記載の電子写真感光体と、
前記電子写真感光体の表面を帯電する帯電手段と、
帯電した前記電子写真感光体の表面に静電潜像を形成する静電潜像形成手段と、
トナーを含む現像剤により、前記電子写真感光体の表面に形成された静電潜像を現像してトナー像を形成する現像手段と、
前記トナー像を記録媒体の表面に転写する転写手段と、
を備える画像形成装置である。
【発明の効果】
【0017】
請求項1、7、8、9、又は10に係る発明によれば、導電性基体上に設けられ結着樹脂と電荷発生材料とを含有する単層型の感光層を有する電子写真感光体において、単層型の感光層のうち電荷発生材料が存在しない導電性基体側の領域の厚みが単層型の感光層における膜厚の0%以上1%未満又は15%を超える場合に比べ、速いプロセススピードで形成された画像における前サイクルの履歴による残像現象を抑制しつつ、画像形成を繰り返した後に形成された画像における意図しない色点の発生を抑制した電子写真感光体が提供される。
【0018】
請求項2に係る発明によれば、単層型の感光層のうち電荷発生材料が存在しない導電性基体側の領域の厚みが単層型の感光層における膜厚の10%を超える場合に比べ、速いプロセススピードで形成された画像における前サイクルの履歴による残像現象を抑制した電子写真感光体が提供される。
請求項3に係る発明によれば、単層型の感光層のうち電荷発生材料が存在しない導電性基体側の領域の厚みが単層型の感光層における膜厚の5%を超える場合に比べ、速いプロセススピードで形成された画像における前サイクルの履歴による残像現象を抑制した電子写真感光体が提供される。
【0019】
請求項4に係る発明によれば、単層型の感光層がヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料及びクロロガリウムフタロシアニン顔料の少なくとも一方を含む電荷発生材料を含有する電子写真感光体において、単層型の感光層のうち電荷発生材料が存在しない導電性基体側の領域の厚みが単層型の感光層における膜厚の0%以上1%未満又は15%を超える場合に比べ、速いプロセススピードで形成された画像における前サイクルの履歴による残像現象を抑制しつつ、画像形成を繰り返した後に形成された画像における意図しない色点の発生を抑制した電子写真感光体が提供される。
請求項5に係る発明によれば、電荷発生材料の含有量が単層型の感光層全体に対し0.5質量%以上10質量%以下であっても、単層型の感光層のうち電荷発生材料が存在しない導電性基体側の領域の厚みが単層型の感光層における膜厚の0%以上1%未満又は15%を超える場合に比べ、速いプロセススピードで形成された画像における前サイクルの履歴による残像現象を抑制しつつ、画像形成を繰り返した後に形成された画像における意図しない色点の発生を抑制した電子写真感光体が提供される。
請求項6に係る発明によれば、電荷発生材料の含有量が単層型の感光層全体に対し1質量%以上7質量%以下であっても、単層型の感光層のうち電荷発生材料が存在しない導電性基体側の領域の厚みが単層型の感光層における膜厚の0%以上1%未満又は15%を超える場合に比べ、速いプロセススピードで形成された画像における前サイクルの履歴による残像現象を抑制しつつ、画像形成を繰り返した後に形成された画像における意図しない色点の発生を抑制した電子写真感光体が提供される。
【0020】
請求項11又は請求項12に係る発明によれば、導電性基体上に設けられ結着樹脂と電荷発生材料とを含有する単層型の感光層を有する電子写真感光体において、単層型の感光層のうち電荷発生材料が存在しない導電性基体側の領域の厚みが単層型の感光層における膜厚の0%以上1%未満又は15%を超える場合に比べ、速いプロセススピードで形成された画像における前サイクルの履歴による残像現象を抑制しつつ、画像形成を繰り返した後に形成された画像における意図しない色点の発生を抑制した電子写真感光体を備えるプロセスカートリッジ又は画像形成装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本実施形態に係る電子写真感光体を示す概略部分断面図である。
図2】本実施形態に係る画像形成装置を示す概略構成図である。
図3】他の本実施形態に係る画像形成装置を示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の一例である実施形態について説明する。
【0023】
[電子写真感光体]
本実施形態に係る電子写真感光体(以下、単に「感光体」又は「単層型感光体」と称することがある)は、導電性基体を備え、導電性基体上に単層型の感光層を有する。
そして、単層型の感光層は、結着樹脂と電荷発生材料とを含有し、導電性基体側の領域に電荷発生材料が存在せず、かつ、電荷発生材料が存在しない導電性基体側の領域の厚みは単層型の感光層における膜厚の1%以上15%以下である。
以下、「電荷発生材料が存在しない導電性基体側の領域」を「特定領域」ともいう。
なお、単層型の感光層とは、電荷発生能と共に、正孔輸送性及び電子輸送性を持つ感光層である。
以下、「単層型の感光層」を単に「感光層」と称する場合がある。
【0024】
ここで、前記「電荷発生材料が存在しない」とは、下記方法により得られる「1万倍の倍率で観察したTEM画像」において確認される電荷発生材料が存在しないことをいう。つまり、下記方法により得られる「1万倍の倍率で観察したTEM画像」において確認されない電荷発生材料(例えば、結着樹脂に細かく分散又は相溶した結果、TEM画像において確認されない電荷発生材料)は、特定領域に存在していてもよい。
また、「導電性基体側の領域」とは、感光層における導電性基体側の面(すなわち、感光層の内周面)を含む領域をいう。
そして、電荷発生材料が存在しない導電性基体側の領域の厚み(つまり特定領域の厚み)は、感光層の内周面から、感光層の内周面に最も近い位置に存在する電荷発生材料までの距離であり、以下の測定により得られる値を意味する。
【0025】
具体的には、まず、感光層の断面(感光体の回転軸を含む面)のうち感光層の内周面を含む12μm×10μmの領域を、透過型電子顕微鏡(TEM、(株)日立ハイテクノロジーズ製、型番:H−7500)により1万倍の倍率で観察したTEM画像を得る。
次に、得られたTEM画像において確認された電荷発生材料のうち、感光層と下層(例えば導電性基体)との界面(すなわち感光層の内周面)から、前記界面に最も近い電荷発生材料までの距離を求める。
そして、上記測定を、感光体の軸方向に3箇所、周方向に4箇所(すなわち、合計12箇所)を観察したTEM画像について行い、求められた距離のうち最も短い距離を採用して「特定領域の厚み」とする。
上記TEM画像の観察に用いる測定試料の作製は、例えば、ダイヤモンドナイフを用いた切削機(例えばUltracutUCT(Leica社製))を用いて、感光体の回転軸を含む面で切断することで行い、それによって厚み200nmの測定試料を得る。
【0026】
本実施形態に係る感光体は、特定領域の厚みが感光層の膜厚の1%以上15%以下であることにより、速いプロセススピードで形成された画像における前サイクルの履歴による残像現象(以下「ゴースト」ともいう)を抑制しつつ、画像形成を繰り返した後に形成された画像における意図しない色点(以下「成長型色点」ともいう)の発生が抑制される。その理由は定かでは無いが、以下のように推測される。
【0027】
単層型感光体では、露光によって感光層で発生した電荷の一部が、感光層から導電性基体に注入される。このとき、例えば、感光層の内周面に接するように又は前記内周面から感光層の膜厚の1%未満の位置に電荷発生材料が存在すると、前記電荷発生材料に電荷が集中しやすくなる。そして、前記内周面側に存在する電荷発生材料に電荷が集中すると、感光層のうち電荷が集中した箇所に劣化が生じるとともに、感光層に接する下層(特にその感光層に接する面)も劣化することで、その後に形成された画像に意図しない色点が発生することがある。
【0028】
これに対して、本実施形態では、特定領域の厚みが感光層の膜厚の1%以上15%以下である。つまり、感光層の内周面から感光層の膜厚の1%未満の位置に電荷発生材料が存在しないため、上記電荷発生材料に電荷が集中することに起因する感光層及び下層の劣化が起こりにくくなり、成長型色点の発生が抑制される。
【0029】
一方、特定領域の厚みが感光層の膜厚の15%を超えると、感光層の内周面から最も近い電荷発生材料までの距離が長くなる。そのため、電荷の円滑な移動が妨げられることで、速いプロセススピードで画像を形成すると電荷の移動が間に合わず、ゴーストが生じることがある。
しかし、本実施形態では、特定領域の厚みが感光層の膜厚の1%以上15%以下であるため、上記ゴーストを抑制しつつ、成長型色点の発生も抑制される。
【0030】
以上のようにして、本実施形態の感光体では、速いプロセススピードで形成された画像におけるゴーストを抑制しつつ、成長型色点の発生も抑制されるものと推測される。
ここで、「プロセススピード」は記録媒体の搬送速度をいい、速いプロセススピードとは、例えば、150mm/sec以上が挙げられる。
なお、特定領域の厚みは、上記ゴーストの抑制の観点から、1%以上10%以下が好ましく、1%以上5%以下がより好ましい。
【0031】
以下、図面を参照しつつ、本実施形態に係る電子写真感光体を詳細に説明する。
図1は、本実施形態に係る電子写真感光体7の一部の断面を概略的に示している。
図1に示した電子写真感光体7は、例えば、導電性基体3を備え、導電性基体3上に、単層型の感光層2が設けられて構成されている。
なお、必要に応じてその他の層を設けてもよい。その他の層としては、例えば、導電性基体3と単層型の感光層2との間に設けられる下引層、単層型の感光層2上に設けられる保護層等が挙げられる。
【0032】
以下、本実施形態に係る電子写真感光体の一例として、図1に示す感光体7の各層について詳細に説明する。なお、符号は省略して説明する。
【0033】
(導電性基体)
導電性基体としては、例えば、金属(アルミニウム、銅、亜鉛、クロム、ニッケル、モリブデン、バナジウム、インジウム、金、白金等)又は合金(ステンレス鋼等)を含む金属板、金属ドラム、及び金属ベルト等が挙げられる。また、導電性基体としては、例えば、導電性化合物(例えば導電性ポリマー、酸化インジウム等)、金属(例えばアルミニウム、パラジウム、金等)又は合金を塗布、蒸着又はラミネートした紙、樹脂フィルム、ベルト等も挙げられる。ここで、「導電性」とは体積抵抗率が1013Ωcm未満であることをいう。
【0034】
導電性基体の表面は、電子写真感光体がレーザプリンタに使用される場合、レーザ光を照射する際に生じる干渉縞を抑制する目的で、中心線平均粗さRaで0.04μm以上0.5μm以下に粗面化されていることが好ましい。なお、非干渉光を光源に用いる場合、干渉縞防止の粗面化は、特に必要ないが、導電性基体の表面の凹凸による欠陥の発生を抑制するため、より長寿命化に適する。
【0035】
粗面化の方法としては、例えば、研磨剤を水に懸濁させて支持体に吹き付けることによって行う湿式ホーニング、回転する砥石に導電性基体を圧接し、連続的に研削加工を行うセンタレス研削、陽極酸化処理等が挙げられる。
【0036】
粗面化の方法としては、導電性基体の表面を粗面化することなく、導電性又は半導電性粉体を樹脂中に分散させて、導電性基体の表面上に層を形成し、その層中に分散させる粒子により粗面化する方法も挙げられる。
【0037】
陽極酸化による粗面化処理は、金属製(例えばアルミニウム製)の導電性基体を陽極とし電解質溶液中で陽極酸化することにより導電性基体の表面に酸化膜を形成するものである。電解質溶液としては、例えば、硫酸溶液、シュウ酸溶液等が挙げられる。しかし、陽極酸化により形成された多孔質陽極酸化膜は、そのままの状態では化学的に活性であり、汚染され易く、環境による抵抗変動も大きい。そこで、多孔質陽極酸化膜に対して、酸化膜の微細孔を加圧水蒸気又は沸騰水中(ニッケル等の金属塩を加えてもよい)で水和反応による体積膨張でふさぎ、より安定な水和酸化物に変える封孔処理を行うことが好ましい。
【0038】
陽極酸化膜の膜厚は、例えば、0.3μm以上15μm以下が好ましい。この膜厚が上記範囲内にあると、注入に対するバリア性が発揮される傾向があり、また繰り返し使用による残留電位の上昇が抑えられる傾向にある。
【0039】
導電性基体には、酸性処理液による処理又はベーマイト処理を施してもよい。
酸性処理液による処理は、例えば、以下のようにして実施される。先ず、リン酸、クロム酸及びフッ酸を含む酸性処理液を調製する。酸性処理液におけるリン酸、クロム酸及びフッ酸の配合割合は、例えば、リン酸が10質量%以上11質量%以下の範囲、クロム酸が3質量%以上5質量%以下の範囲、フッ酸が0.5質量%以上2質量%以下の範囲であって、これらの酸全体の濃度は13.5質量%以上18質量%以下の範囲がよい。処理温度は例えば42℃以上48℃以下が好ましい。被膜の膜厚は、0.3μm以上15μm以下が好ましい。
【0040】
ベーマイト処理は、例えば90℃以上100℃以下の純水中に5分から60分間浸漬すること、又は90℃以上120℃以下の加熱水蒸気に5分から60分間接触させて行う。被膜の膜厚は、0.1μm以上5μm以下が好ましい。これをさらにアジピン酸、硼酸、硼酸塩、燐酸塩、フタル酸塩、マレイン酸塩、安息香酸塩、酒石酸塩、クエン酸塩等の被膜溶解性の低い電解質溶液を用いて陽極酸化処理してもよい。
【0041】
(単層型の感光層)
単層型の感光層は、少なくとも結着樹脂と、電荷発生材料と、を含み、必要に応じて電子輸送材料、正孔輸送材料、その他添加剤を含んでもよい。
そして、単層型の感光層における特定領域は、前記の通り、1%以上15%以下である。
【0042】
−結着樹脂−
結着樹脂としては、特に制限はないが、例えば、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアリレート樹脂、メタクリル樹脂、アクリル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリビニルアセテート樹脂、スチレン−ブタジエン共重合体、塩化ビニリデン−アクリロニトリル共重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル−無水マレイン酸共重合体、シリコーン樹脂、シリコーン−アルキッド樹脂、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂、スチレン−アルキッド樹脂、ポリ−N−ビニルカルバゾール、ポリシラン等が挙げられる。これらの結着樹脂は、単独又は2種以上混合して用いてもよい。
【0043】
感光層の機械的強度等の観点からは、結着樹脂の中でも、ポリカーボネート樹脂、ポリアリレート樹脂が好ましい。
また、感光層の成膜性の観点から、粘度平均分子量30000以上80000以下のポリカーボネート樹脂、及び粘度平均分子量30000以上80000以下のポリアリレート樹脂の少なくとも1種を用いることがよい。
【0044】
なお、ポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量の測定方法としては、例えば、次の方法により測定される。樹脂1gをメチレンクロライド100cmに溶解し、25℃の測定環境下でウベローデ粘度計により、その比粘度ηspを測定し、ηsp/c=〔η〕+0.45〔η〕cの関係式(ただしcは濃度(g/cm)より極限粘度〔η〕(cm/g)をもとめ、H.Schnellによって与えられている式、〔η〕=1.23×10−4Mv0.83の関係式より粘度平均分子量Mvを求める。
【0045】
結着樹脂の感光層の全固形分に対する含有量は、35質量%以上60質量%以下であることがよく、好ましくは20質量%以上35質量%以下である。
【0046】
−電荷発生材料−
電荷発生材料としては、ビスアゾ、トリスアゾ等のアゾ顔料;ジブロモアントアントロン等の縮環芳香族顔料;ペリレン顔料;ピロロピロール顔料;フタロシアニン顔料;酸化亜鉛;三方晶系セレン等が挙げられる。
【0047】
これらの中でも、近赤外域のレーザ露光に対応させるためには、電荷発生材料としては、金属フタロシアニン顔料、又は無金属フタロシアニン顔料を用いることが好ましい。具体的には、例えば、特開平5−263007号公報、特開平5−279591号公報等に開示されたヒドロキシガリウムフタロシアニン;特開平5−98181号公報等に開示されたクロロガリウムフタロシアニン;特開平5−140472号公報、特開平5−140473号公報等に開示されたジクロロスズフタロシアニン;特開平4−189873号公報等に開示されたチタニルフタロシアニンが挙げられる。
【0048】
その中でも特に、電荷発生材料としては、ヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料及びクロロガリウムフタロシアニン顔料から選択される少なくとも1種が好ましく用いられる。
電荷発生材料は、1種のみ使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0049】
・ヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料
ヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料としては、特に制限はないが、感光体の高感度化の観点から、V型のヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料がよい。
特に、ヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料としては、例えば、600nm以上900nm以下の波長域での分光吸収スペクトルにおいて、810nm以上839nm以下の範囲に最大ピーク波長を有するヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料がより優れた分散性が得られる観点から好ましい。電子写真感光体の材料として用いた場合に、優れた分散性と、十分な感度、帯電性及び暗減衰特性とが得られ易くなる。
【0050】
また、上記の810nm以上839nm以下の範囲に最大ピーク波長を有するヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料は、平均粒径が特定の範囲であり、且つ、BET比表面積が特定の範囲であることが好ましい。具体的には、平均粒径が0.20μm以下であることが好ましく、0.01μm以上0.15μm以下であることがより好ましい。一方、BET比表面積が45m/g以上であることが好ましく、50m/g以上であることがより好ましく、55m/g以上120m/g以下であることが特に好ましい。平均粒径は、体積平均粒径(d50平均粒径)でレーザ回折散乱式粒度分布測定装置(LA−700、堀場製作所社製)にて測定した値である。また、BET式比表面積測定器(島津製作所製:フローソープII2300)を用い窒素置換法にて測定した値である。
ここで、平均粒径が0.20μmより大きい場合、又は比表面積が45m/g未満である場合は、顔料粒子が粗大化しているか、又は顔料粒子の凝集体が形成される場合がある。そして、分散性や、感度、帯電性及び暗減衰特性といった特性に欠陥が生じやすい場合があり、それにより画質欠陥を生じ易くなることがある。
【0051】
ヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料の最大粒径(一次粒子径の最大値)は、1.2μm以下であることが好ましく、1.0μm以下であることがより好ましく、より好ましくは0.3μm以下である。かかる最大粒径が上記範囲を超えると、黒点が発生しやすい。
【0052】
ヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料は、感光体が蛍光灯などに暴露されたことに起因する濃度ムラを抑制する観点から、平均粒径が0.2μm以下、最大粒径が1.2μm以下であり、且つ、比表面積値が45m/g以上であることが好ましい。
【0053】
ヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料は、CuKα特性X線を用いたX線回折スペクトルにおいて、ブラッグ角度(2θ±0.2°)が少なくとも7.3°、16.0°、24.9°、28.0°に回折ピークを有するV型であることが好ましい。
【0054】
・クロロガリウムフタロシアニン顔料
クロロガリウムフタロシアニン顔料としては、特に制限はないが、電子写真感光体材料として優れた感度が得られる、ブラッグ角度(2θ±0.2°)7.4°、16.6°、25.5°及び28.3°に回折ピークを有するものであることが好ましい。
クロロガリウムフタロシアニン顔料の好適な分光吸収スペクトルの最大ピーク波長、平均粒径、最大粒径、及び比表面積値は、ヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料と同様である。
【0055】
電荷発生材料の含有量は、感光層全体に対し、0.5質量%以上10質量%以下が好ましく、感光体の感度の観点から1質量%以上7質量%以下がより好ましく、1質量%以上5質量%以下がさらに好ましい。
【0056】
−正孔輸送材料−
正孔輸送材料としては、特に制限はないが、例えば、2,5−ビス(p−ジエチルアミノフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール等のオキサジアゾール誘導体;1,3,5−トリフェニル−ピラゾリン、1−[ピリジル−(2)]−3−(p−ジエチルアミノスチリル)−5−(p−ジエチルアミノスチリル)ピラゾリン等のピラゾリン誘導体;トリフェニルアミン、N,N′−ビス(3,4−ジメチルフェニル)ビフェニル−4−アミン、トリ(p−メチルフェニル)アミニル−4−アミン、ジベンジルアニリン等の芳香族第3級アミノ化合物;N,N′−ビス(3−メチルフェニル)−N,N′−ジフェニルベンジジン等の芳香族第3級ジアミノ化合物、3−(4′−ジメチルアミノフェニル)−5,6−ジ−(4′−メトキシフェニル)−1,2,4−トリアジン等の1,2,4−トリアジン誘導体;4−ジエチルアミノベンズアルデヒド−1,1−ジフェニルヒドラゾン等のヒドラゾン誘導体;2−フェニル−4−スチリル−キナゾリン等のキナゾリン誘導体;6−ヒドロキシ−2,3−ジ(p−メトキシフェニル)ベンゾフラン等のベンゾフラン誘導体;p−(2,2−ジフェニルビニル)−N,N−ジフェニルアニリン等のα−スチルベン誘導体;エナミン誘導体;N−エチルカルバゾール等のカルバゾール誘導体;ポリ−N−ビニルカルバゾール及びその誘導体等;上記した化合物で構成される基を主鎖又は側鎖に有する重合体;などが挙げられる。これらの正孔輸送材料は、1種又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0057】
正孔輸送材料の具体例としては、例えば、下記一般式(B−1)で示される化合物、下記一般式(B−2)で示される化合物、及び下記一般式(B−3)で示される化合物が挙げられる。さらに、正孔輸送材料の具体例として、下記一般式(1)で表される化合物が挙げられる。これらの中でも、電荷移動度の観点から、下記一般式(1)で表される正孔輸送材料が適用されることが好ましい。
【0058】
【化3】
【0059】
一般式(B−1)中、RB1は、水素原子又はメチル基を示す。n11は1又は2を示す。ArB1およびArB2は各々独立に置換若しくは未置換のアリール基、−C−C(RB3)=C(RB4)(RB5)、又は−C−CH=CH−CH=C(RB6)(RB7)を示し、RB3乃至RB7はそれぞれ独立に水素原子、置換若しくは未置換のアルキル基、又は置換若しくは未置換のアリール基を表す。置換基としてはハロゲン原子、炭素数1以上5以下のアルキル基、炭素数1以上5以下のアルコキシ基、又は炭素数1以上3以下のアルキル基で置換された置換アミノ基を示す。
【0060】
【化4】
【0061】
一般式(B−2)中、RB8およびRB8’は同一でも異なってもよく、各々独立に水素原子、ハロゲン原子、炭素数1以上5以下のアルキル基、炭素数1以上5以下のアルコキシ基、を示す。RB9、RB9’、RB10、およびRB10’は同一でも異なってもよく、各々独立にハロゲン原子、炭素数1以上5以下のアルキル基、炭素数1以上5以下のアルコキシ基、炭素数1以上2以下のアルキル基で置換されたアミノ基、置換若しくは未置換のアリール基、−C(RB11)=C(RB12)(RB13)、又は−CH=CH−CH=C(RB14)(RB15)を示し、RB11乃至RB15は各々独立に水素原子、置換若しくは未置換のアルキル基、又は置換若しくは未置換のアリール基を表す。m12、m13、n12およびn13は各々独立に0以上2以下の整数を示す。
【0062】
【化5】
【0063】
一般式(B−3)中、RB16およびRB16’は同一でも異なってもよく、各々独立に水素原子、ハロゲン原子、炭素数1以上5以下のアルキル基、炭素数1以上5以下のアルコキシ基、を示す。RB17、RB17’、RB18、およびRB18’は同一でも異なってもよく、各々独立にハロゲン原子、炭素数1以上5以下のアルキル基、炭素数1以上5以下のアルコキシ基、炭素数1以上2以下のアルキル基で置換されたアミノ基、置換若しくは未置換のアリール基、−C(RB19)=C(RB20)(RB21)、又は−CH=CH−CH=C(RB22)(RB23)を示し、RB19乃至RB23は各々独立に水素原子、置換若しくは未置換のアルキル基、又は置換若しくは未置換のアリール基を表す。m14、m15、n14およびn15は各々独立に0以上2以下の整数を示す。
【0064】
ここで、一般式(B−1)で示される化合物、一般式(B−2)で示される化合物、及び一般式(B−3)で示される化合物のうち、特に、「−C−CH=CH−CH=C(RB6)(RB7)」を有する一般式(B−1)で示される化合物、及び「−CH=CH−CH=C(RB14)(RB15)」を有する一般式(B−2)で示される化合物が好ましい。
【0065】
【化6】
【0066】
一般式(1)中、R、R、R、R、R、及びRは、各々独立に、水素原子、低級アルキル基、アルコキシ基、フェノキシ基、ハロゲン原子、又は、低級アルキル基、低級アルコキシ基及びハロゲン原子から選ばれる置換基を有していてもよいフェニル基を示す。m及びnは、各々独立に、0又は1を示す。
【0067】
一般式(1)中、R〜Rが示す低級アルキル基としては、例えば、直鎖状又は分岐状で、炭素数1以上4以下のアルキル基が挙げられ、具体的には、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基等が挙げられる。
これらの中でも、低級アルキル基としては、メチル基、エチル基が好ましい。
【0068】
一般式(1)中、R〜Rが示すアルコキシ基としては、例えば、炭素数1以上4以下のアルコキシ基が挙げられ、具体的には、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基等が挙げられる。
【0069】
一般式(1)中、R〜Rが示すハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられる。
【0070】
一般式(1)中、R〜Rが示すフェニル基としては、例えば、未置換のフェニル基;p−トリル基、2,4−ジメチルフェニル基等の低級アルキル基置換のフェニル基;p−メトキシフェニル基等の低級アルコキシ基置換のフェニル基;p−クロロフェニル基等のハロゲン原子置換のフェニル基等が挙げられる。
なお、フェニル基に置換し得る置換基としては、例えば、R〜Rが示す低級アルキル基、低級アルコキシ基、ハロゲン原子が挙げられる。
【0071】
一般式(1)の正孔輸送材料の中でも、高感度化の観点から、m及びnが1を示す正孔輸送材料が好ましく、R〜Rが各々独立に、水素原子、低級アルキル基、又はアルコキシ基を示し、m及びnが1を示す正孔輸送材料がより好ましい。
【0072】
以下、一般式(1)の正孔輸送材料の例示化合物を示すがこれに限定されるわけではない。なお、以下の例示化合物番号は、例示化合物(1−番号)と以下表記する。具体的には、例えば、例示化合物15は、「例示化合物(1−15)」と以下表記する。
【0073】
【化7】
【0074】
【化8】
【0075】
【化9】
【0076】
【化10】
【0077】
なお、上記例示化合物中の略記号は、以下の意味を示す。
・4−Me:フェニル基の4−位に置換するメチル基
・3−Me:フェニル基の3−位に置換するメチル基
・4−Cl:フェニル基の4−位に置換する塩素原子
・4−MeO:フェニル基の4−位に置換するメトキシ基
・4−F:フェニル基の4−位に置換するフッ素原子
・4−Pr:フェニル基の4−位に置換するプロピル基
・4−PhO:フェニル基の4−位に置換するフェノキシ基
【0078】
一般式(1)の正孔輸送材料は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を組合せて用いてもよい。また、一般式(1)で表される正孔輸送材料を用いる場合、一般式(1)で表される正孔輸送材料以外の正孔輸送材料と併用してもよい。
なお、式(1)の正孔輸送材料以外の他の正孔輸送材料を含有させる場合の含有量としては、正孔輸送材料全体に対し、例えば25質量%以下の範囲が挙げられる。
【0079】
正孔輸送材料の含有量は、結着樹脂に対して10質量%以上98質量%以下がよく、好ましくは60質量%以上95質量%以下、より好ましくは70質量%以上90質量%以下である。
なお、この正孔輸送材料の含有量は、2種以上の正孔輸送材料を併用した場合、それらの正孔輸送材料全体の含有量である。
【0080】
−電子輸送材料−
電子輸送材料は、電子輸送材料としては、特に制限はないが、例えば、クロラニル、ブロモアニル等のキノン系化合物;テトラシアノキノジメタン系化合物;2,4,7−トリニトロフルオレノン、9−ジシアノメチレン−9−フルオレノン−4−カルボン酸オクチル、9−フルオレノン−4−カルボン酸オクチル、2,4,5,7−テトラニトロ−9−フルオレノン等のフルオレノン化合物;2−(4−ビフェニル)−5−(4−t−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール、2,5−ビス(4−ナフチル)−1,3,4−オキサジアゾール、2,5−ビス(4−ジエチルアミノフェニル)1,3,4−オキサジアゾール等のオキサジアゾール系化合物;キサントン系化合物;チオフェン化合物;3,3’−ジ−tert−ペンチル-ジナフトキノン等のジナフトキノン化合物;3,3’−ジ−tert−ブチル−5,5’−ジメチルジフェノキノン、3,3’,5,5’−テトラ−tert−ブチル−4,4’−ジフェノキノン等のジフェノキノン化合物;上記した化合物で構成される基を主鎖又は側鎖に有する重合体;などが挙げられる。これらの電子輸送材料は、1種又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0081】
これらの中でも、高感度化等の点で、フルオレノン化合物が好ましく、フルオレノン化合物の中でも、下記一般式(2)で示される化合物が好ましい。
以下、下記一般式(2)で示される電子輸送材料について説明する。
【0082】
【化11】
【0083】
一般式(2)中、R11、R12、R13、R14、R15、R16、及びR17は、各々独立に、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、又はアラルキル基を示す。R18は、アルキル基、−L19−O−R20で示される基、アリール基、又はアラルキル基を示す。ただし、L19はアルキレン基を示し、R20はアルキル基を示す。
【0084】
一般式(2)中、R11〜R17が示すハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられる。
【0085】
一般式(2)中、R11〜R17が示すアルキル基としては、例えば、直鎖状又は分岐状で、炭素数1以上4以下(好ましくは1以上3以下)のアルキル基が挙げられ、具体的には、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基等が挙げられる。
【0086】
一般式(2)中、R11〜R17が示すアルコキシ基としては、例えば、炭素数1以上4以下(好ましくは1以上3以下)のアルコキシ基が挙げられ、具体的には、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基等が挙げられる。
【0087】
一般式(2)中、R11〜R17が示すアリール基としては、例えば、フェニル基、トリル基等が挙げられる。これらの中でも、R11〜R17が示すアリール基としては、フェニル基が好ましい。
一般式(2)中、R11〜R17が示すアラルキル基としては、例えば、ベンジル基、フェネチル基、フェニルプロピル基等が挙げられる。
【0088】
一般式(2)中、R18が示すアルキル基としては、例えば、炭素数1以上12以下(好ましくは炭素数5以上10以下)の直鎖状のアルキル基、炭素数3以上10以下(好ましくは炭素数5以上10以下)の分岐状のアルキル基が挙げられる。
炭素数1以上12以下の直鎖状のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル、n−ウンデシル、n−ドデシル基等が挙げられる。
炭素数3以上10以下の分岐状のアルキル基としては、例えば、イソプロピル基、
イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、tert−ペンチル基、イソヘキシル基、sec−ヘキシル基、tert−ヘキシル基、イソヘプチル基、sec−ヘプチル基、tert−ヘプチル基、イソオクチル基、sec−オクチル基、tert−オクチル基、イソノニル基、sec−ノニル基、tert−ノニル基、イソデシル基、sec−デシル基、tert−デシル基等が挙げられる。
【0089】
一般式(2)中、R18が示す−L19−O−R20で示される基は、L19がアルキレン基を示し、R20は、アルキル基を示す。
19が示すアルキレン基としては、直鎖状又は分岐状の炭素数1以上12以下のアルキレン基が挙げられ、メチレン基、エチレン基、n−プロピレン基、イソプロピレン基、n−ブチレン基、イソブチレン基、sec−ブチレン基、tert−ブチレン基、n−ペンチレン基、イソペンチレン基、ネオペンチレン基、tert−ペンチレン基等が挙げられる。
20が示すアルキル基としては、上記R11〜R17が示すアルキル基と同様の基が挙げられる。
【0090】
一般式(2)中、R18が示すアリール基としては、例えば、フェニル基、メチルフェニル基、ジメチルフェニル基、エチルフェニル基等が挙げられる。
なお、R18が示すアリール基は、アルキル基で置換されたアルキル置換アリール基であることが、溶解性の観点で好ましい。アルキル置換アリール基のアルキル基としては、R11〜R17が示すアルキル基と同様の基が挙げられる。
【0091】
一般式(2)中、R18が示すアラルキル基としては、−L21−Arで示される基が挙げられる。但し、L21は、アルキレン基を示す、Arは、アリール基を示す。
21が示すアルキレン基としては、直鎖状又は分岐状の炭素数1以上12以下のアルキレン基が挙げられ、メチレン基、エチレン基、n−プロピレン基、イソプロピレン基、n−ブチレン基、イソブチレン基、sec−ブチレン基、tert−ブチレン基、n−ペンチレン基、イソペンチレン基、ネオペンチレン基、tert−ペンチレン基等が挙げられる。
Arが示すアリール基としては、フェニル基、メチルフェニル基、ジメチルフェニル基エチルフェニル基等が挙げられる。
【0092】
一般式(2)中、R18が示すアラルキル基として具体的には、ベンジル基、メチルベンジル基、ジメチルベンジル基、フェニルエチル基、メチルフェニルエチル基、フェニルプロピル基、フェニルブチル基等が挙げられる。
【0093】
一般式(2)の電子輸送材料としては、高感度化の観点から、R18が炭素数5以上10以下の分岐状のアルキル基又はアラルキル基を示す電子輸送材料が好ましく、特に、R11〜R17が各々独立に、水素原子、ハロゲン原子、又はアルキル基を示し、かつ、R18が炭素数5以上10以下の分岐状のアルキル基又はアラルキル基を示す電子輸送材料が好ましい。
【0094】
以下、一般式(2)の電子輸送材料の例示化合物を示すが、これに限定されるわけではない。なお、以下の例示化合物番号は、例示化合物(2−番号)と以下表記する。具体的には、例えば、例示化合物15は、「例示化合物(2−15)」と以下表記する。
【0095】
【化12】
【0096】
なお、上記例示化合物中の略記号は、以下の意味を示す。
・Ph:フェニル基
【0097】
一般式(2)の電子輸送材料は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を組合せて用いてもよい。また、一般式(2)で表される電子輸送材料を用いる場合、一般式(2)で表される電子輸送材料以外の電子輸送材料と併用してもよい。
なお、一般式(2)で表される電子輸送材料以外の電子輸送材料を含有させる場合の含有量としては、電子輸送材料全体に対し、10質量%以下の範囲であることが好ましい。
【0098】
電子輸送材料の含有量は、結着樹脂に対して10質量%以上70質量%以下がよく、好ましくは15質量%以上50質量%以下、より好ましくは20質量%以上40質量%以下である。
なお、この電子輸送材料の含有量は、2種以上の電子輸送材料を併用した場合、それらの電子輸送材料全体の含有量である。
【0099】
−正孔輸送材料と電子輸送材料との比率−
正孔輸送材料と電子輸送材料との比率は、質量比(正孔輸送材料/電子輸送材料)で、50/50以上90/10以下が好ましく、より好ましくは60/40以上80/20以下である。
なお、本比率は、他の電荷輸送材料を併用した場合、その合計での比率である。
【0100】
−その他添加剤−
単層型の感光層には、界面活性剤、酸化防止剤、光安定剤、熱安定剤等の周知のその他添加剤を含んでいてもよい。また、単層型の感光層が表面層となる場合、フッ素樹脂粒子、シリコーンオイル等を含んでいてもよい。
【0101】
−感光層の形成−
感光層の形成は、上記成分を溶剤に加えた感光層形成用塗布液を用いて行われる。具体的には、上記成分を溶剤に加えた後、粒子を分散させて得られた感光層形成用塗布液を導電性基体上(又は下引層を有する場合は下引層上)に塗布し、乾燥して単層型の感光層が形成される。
【0102】
溶剤としては、ベンゼン、トルエン、キシレン、クロロベンゼン等の芳香族炭化水素類、アセトン、2−ブタノン等のケトン類、塩化メチレン、クロロホルム、塩化エチレン等のハロゲン化脂肪族炭化水素類、テトラヒドロフラン、エチルエーテル等の環状もしくは直鎖状のエーテル類等の通常の有機溶剤が挙げられる。これら溶剤は単独又は2種以上混合して用いる。
【0103】
感光層形成用塗布液中に粒子(例えば電荷発生材料)を分散させる方法としては、ボールミル、振動ボールミル、アトライター、サンドミル、横型サンドミル、ダイノーミル等のメディア分散機や、攪拌、超音波分散機、ロールミル、高圧ホモジナイザー等のメディアレス分散機が利用される。高圧ホモジナイザーとしては、高圧状態で分散液を液−液衝突や液−壁衝突させて分散する衝突方式や、高圧状態で微細な流路を貫通させて分散する貫通方式などが挙げられる。
これらの中でも、吸光度比A1000/A830が25以下に制御し易くなる点で、サンドミル等のメディア分散機よりも、高圧ホモジナイザー等のメディアレス分散機を用いることが好ましい。
【0104】
感光層形成用塗布液を塗布する方法としては、浸漬塗布法、突き上げ塗布法、ワイヤーバー塗布法、スプレー塗布法、ブレード塗布法、ナイフ塗布法、カーテン塗布法等が挙げられる。
【0105】
ここで、特定領域の厚みが前記範囲の感光層を形成する方法としては、例えば、感光層形成用塗布液を塗布する際に、塗布対象(例えば導電性基体)の温度と感光層形成用塗布液の温度との温度差を調整することで、特定領域の厚みを制御する方法が挙げられる。上記温度差が大きいほど、電荷発生材料が塗布対象から離れやすく、特定領域の厚みが厚くなる。その理由は定かでは無いが、上記温度差が大きいほど、塗布対象に塗布された感光層形成用塗布液の塗膜内で対流が起こりやすく、かつ溶媒の蒸発により感光体表面から徐々に固化するため、固形分が先に表面付近で固定され動けなくなるため、結果として電荷発生材料が塗布対象から離れやすくなるものと推測される。
上記温度差は、感光層形成用塗布液の組成や塗布液内における電荷発生材料の分散状態によっても異なるが、例えば導電性基体が塗布対象であり、導電性基体の温度が25℃である場合、感光層形成用塗布液の温度としては、28℃以上35℃以下が挙げられる。
【0106】
単層型の感光層の膜厚は、好ましくは5μm以上60μm以下、より好ましくは5μm以上50μm以下、さらに好ましくは10μm以上40μm以下の範囲に設定される。
また、特定領域の厚みとしては、例えば0.1μm以上10μm以下が挙げられ、成長型色点及びゴーストの抑制の観点から、0.1μm以上6μm以下が好ましく、0.1μm以上5μm以下がより好ましい。
【0107】
(その他の層)
−下引層−
本実施形態に係る感光体は、導電性基体上に単層型の感光層が直接設けられていることが好ましいが、これに限られず、導電性基体上に下引層を介して単層型の感光層が設けられていてもよい。
下引層としては、特に限定されず、例えば、結着樹脂と電荷輸送材料(例えば上述した正孔輸送材料等)とを含む層、結着樹脂と無機粒子(例えば金属酸化物粒子)とを含む層、結着樹脂と樹脂粒子を含む層、硬化膜(架橋膜)で形成された層、硬化膜に種々の粒子を含む層等が挙げられる。
下引層に含まれる結着樹脂としては、例えば、アルコール可溶性ポリアミド樹脂、ポリビニル樹脂等が挙げられる。
下引層の形成は、例えば、下引層形成用塗布液を用い、浸漬塗布法にて導電性基体上に塗布し、乾燥させることで行う。
下引層の膜厚としては、例えば、0.1μm以上30μm以下の範囲が挙げられる。
【0108】
−保護層−
本実施形態に係る感光体は、必要に応じて、感光層上に最表面層として保護層を設けてもよい。
保護層は特に限定されないが、例えば、硬化膜(架橋膜)で構成された層が挙げられる。
【0109】
保護層の形成は、特に制限はなく、周知の形成方法が利用されるが、例えば、上記成分を溶剤に加えた保護層形成用塗布液の塗膜を形成し、当該塗膜を乾燥し、必要に応じて加熱等の硬化処理することで行う。
【0110】
保護層の膜厚は、例えば、好ましくは1μm以上20μm以下、より好ましくは2μm以上10μm以下の範囲内に設定される。
【0111】
[画像形成装置(及びプロセスカートリッジ)]
本実施形態に係る画像形成装置は、電子写真感光体と、電子写真感光体の表面を帯電する帯電手段と、帯電した電子写真感光体の表面に静電潜像を形成する静電潜像形成手段と、トナーを含む現像剤により電子写真感光体の表面に形成された静電潜像を現像してトナー像を形成する現像手段と、トナー像を記録媒体の表面に転写する転写手段と、を備える。そして、電子写真感光体として、上記本実施形態に係る電子写真感光体が適用される。
【0112】
本実施形態に係る画像形成装置は、記録媒体の表面に転写されたトナー像を定着する定着手段を備える装置;電子写真感光体の表面に形成されたトナー像を直接記録媒体に転写する直接転写方式の装置;電子写真感光体の表面に形成されたトナー像を中間転写体の表面に一次転写し、中間転写体の表面に転写されたトナー像を記録媒体の表面に二次転写する中間転写方式の装置;トナー像の転写後、帯電前の電子写真感光体の表面をクリーニングするクリーニング手段を備えた装置;トナー像の転写後、帯電前に電子写真感光体の表面に除電光を照射して除電する除電手段を備える装置;電子写真感光体の温度を上昇させ、相対温度を低減させるための電子写真感光体加熱部材を備える装置等の周知の画像形成装置が適用される。
【0113】
中間転写方式の装置の場合、転写手段は、例えば、表面にトナー像が転写される中間転写体と、電子写真感光体の表面に形成されたトナー像を中間転写体の表面に一次転写する一次転写手段と、中間転写体の表面に転写されたトナー像を記録媒体の表面に二次転写する二次転写手段と、を有する構成が適用される。
【0114】
本実施形態に係る画像形成装置は、乾式現像方式の画像形成装置、湿式現像方式(液体現像剤を利用した現像方式)の画像形成装置のいずれであってもよい。
【0115】
なお、本実施形態に係る画像形成装置において、例えば、電子写真感光体を備える部分が、画像形成装置に対して着脱されるカートリッジ構造(プロセスカートリッジ)であってもよい。プロセスカートリッジとしては、例えば、本実施形態に係る電子写真感光体を備えるプロセスカートリッジが好適に用いられる。なお、プロセスカートリッジには、電子写真感光体以外に、例えば、帯電手段、静電潜像形成手段、現像手段、転写手段からなる群から選択される少なくとも一つを備えてもよい。
【0116】
以下、本実施形態に係る画像形成装置の一例を示すが、これに限定されるわけではない。なお、図に示す主要部を説明し、その他はその説明を省略する。
【0117】
図2は、本実施形態に係る画像形成装置の一例を示す概略構成図である。
本実施形態に係る画像形成装置100は、図2に示すように、電子写真感光体7を備えるプロセスカートリッジ300と、露光装置9(静電潜像形成手段の一例)と、転写装置40(一次転写装置)と、中間転写体50とを備える。なお、画像形成装置100において、露光装置9はプロセスカートリッジ300の開口部から電子写真感光体7に露光し得る位置に配置されており、転写装置40は中間転写体50を介して電子写真感光体7に対向する位置に配置されており、中間転写体50はその一部が電子写真感光体7に接触して配置されている。図示しないが、中間転写体50に転写されたトナー像を記録媒体(例えば用紙)に転写する二次転写装置も有している。なお、中間転写体50、転写装置40(一次転写装置)、及び二次転写装置(不図示)が転写手段の一例に相当する。
【0118】
図2におけるプロセスカートリッジ300は、ハウジング内に、電子写真感光体7、帯電装置8(帯電手段の一例)、現像装置11(現像手段の一例)、及びクリーニング装置13(クリーニング手段の一例)を一体に支持している。クリーニング装置13は、クリーニングブレード(クリーニング部材の一例)131を有しており、クリーニングブレード131は、電子写真感光体7の表面に接触するように配置されている。なお、クリーニング部材は、クリーニングブレード131の態様ではなく、導電性又は絶縁性の繊維状部材であってもよく、これを単独で、又はクリーニングブレード131と併用してもよい。
【0119】
なお、図2には、画像形成装置として、潤滑材14を電子写真感光体7の表面に供給する繊維状部材132(ロール状)、及び、クリーニングを補助する繊維状部材133(平ブラシ状)を備えた例を示してあるが、これらは必要に応じて配置される。
【0120】
以下、本実施形態に係る画像形成装置の各構成について説明する。
【0121】
−帯電装置−
帯電装置8としては、例えば、導電性又は半導電性の帯電ローラ、帯電ブラシ、帯電フィルム、帯電ゴムブレード、帯電チューブ等を用いた接触型帯電器が使用される。また、非接触方式のローラ帯電器、コロナ放電を利用したスコロトロン帯電器やコロトロン帯電器等のそれ自体公知の帯電器等も使用される。
【0122】
−露光装置−
露光装置9としては、例えば、電子写真感光体7表面に、半導体レーザ光、LED光、液晶シャッタ光等の光を、定められた像様に露光する光学系機器等が挙げられる。光源の波長は電子写真感光体の分光感度領域内とする。半導体レーザの波長としては、780nm付近に発振波長を有する近赤外が主流である。しかし、この波長に限定されず、600nm台の発振波長レーザや青色レーザとして400nm以上450nm以下に発振波長を有するレーザも利用してもよい。また、カラー画像形成のためにはマルチビームを出力し得るタイプの面発光型のレーザ光源も有効である。
【0123】
−現像装置−
現像装置11としては、例えば、現像剤を接触又は非接触させて現像する一般的な現像装置が挙げられる。現像装置11としては、上述の機能を有している限り特に制限はなく、目的に応じて選択される。例えば、一成分系現像剤又は二成分系現像剤をブラシ、ローラ等を用いて電子写真感光体7に付着させる機能を有する公知の現像器等が挙げられる。中でも現像剤を表面に保持した現像ローラを用いるものが好ましい。
【0124】
現像装置11に使用される現像剤は、トナー単独の一成分系現像剤であってもよいし、トナーとキャリアとを含む二成分系現像剤であってもよい。また、現像剤は、磁性であってもよいし、非磁性であってもよい。これら現像剤は、周知のものが適用される。
【0125】
−クリーニング装置−
クリーニング装置13は、クリーニングブレード131を備えるクリーニングブレード方式の装置が用いられる。
なお、クリーニングブレード方式以外にも、ファーブラシクリーニング方式、現像同時クリーニング方式を採用してもよい。
【0126】
−転写装置−
転写装置40としては、例えば、ベルト、ローラ、フィルム、ゴムブレード等を用いた接触型転写帯電器、コロナ放電を利用したスコロトロン転写帯電器やコロトロン転写帯電器等のそれ自体公知の転写帯電器が挙げられる。
【0127】
−中間転写体−
中間転写体50としては、半導電性を付与したポリイミド、ポリアミドイミド、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリエステル、ゴム等を含むベルト状のもの(中間転写ベルト)が使用される。また、中間転写体の形態としては、ベルト状以外にドラム状のものを用いてもよい。
【0128】
図3は、本実施形態に係る画像形成装置の他の一例を示す概略構成図である。
図3に示す画像形成装置120は、プロセスカートリッジ300を4つ搭載したタンデム方式の多色画像形成装置である。画像形成装置120では、中間転写体50上に4つのプロセスカートリッジ300がそれぞれ並列に配置されており、1色に付き1つの電子写真感光体が使用される構成となっている。なお、画像形成装置120は、タンデム方式であること以外は、画像形成装置100と同様の構成を有している。
【0129】
なお、本実施形態に係る画像形成装置100は、上記構成に限られず、例えば、電子写真感光体7の周囲であって、転写装置40よりも電子写真感光体7の回転方向下流側でクリーニング装置13よりも電子写真感光体の回転方向上流側に、残留したトナーの極性を揃え、クリーニングブラシで除去しやすくするための第1除電装置を設けた形態であってもよいし、クリーニング装置13よりも電子写真感光体の回転方向下流側で帯電装置8よりも電子写真感光体の回転方向上流側に、電子写真感光体7の表面を除電する第2除電装置を設けた形態であってもよい。
【0130】
また、本実施形態に係る画像形成装置100は、上記構成に限れず、周知の構成、例えば、電子写真感光体7に形成したトナー像を直接記録媒体に転写する直接転写方式の画像形成装置を採用してもよい。
【実施例】
【0131】
以下、実施例及び比較例に基づき本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に何ら限定されるものではない。なお、特に断りがないかぎり、「部」は「質量部」、「%」は「質量%」であることを示す。
【0132】
<実施例1>
−感光層形成用塗布液の製造−
電荷発生材料としてCukα特性X線を用いたX線回折スペクトルのブラッグ角度(2θ±0.2°)が少なくとも7.3゜、16.0゜、24.9゜、8.0゜の位置に回折ピークを有するヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料(以下「HOGaPC」ともいう)1.2部と、結着樹脂としてビスフェノールZポリカーボネート樹脂(粘度平均分子量:5万)46.8部と、前記一般式(2)で表される電子輸送材料である例示化合物(2−1)15部と、前記一般式(1)で表される正孔輸送材料である例示化合物(1−1)37部と、溶剤としてテトラヒドロフラン250部と、からなる混合物を、直径1mmφのガラスビーズを用いてサンドミルにて4時間分散し、感光層形成用塗布液を得た。
【0133】
−感光層の形成−
得られた感光層形成用塗布液を27℃に制御しながら、浸漬塗布法にて、直径30mm、長さ244.5mmであり、温度を25℃に制御されたアルミニウム基材上に塗布し、140℃、30分の乾燥硬化を行い、膜厚30μmの単層型の感光層を形成した。
以上の工程を経て、実施例1における電子写真感光体を作製した。
【0134】
<実施例2>
感光層の形成において、感光層形成用塗布液を表1に示す温度に制御した以外は、実施例1と同様にして、実施例2における電子写真感光体を作製した。
【0135】
<実施例3〜4>
感光層形成用塗布液の製造において、用いた電荷発生材料の種類を、Cukα特性X線を用いたX線回折スペクトルのブラッグ角度(2θ±0.2°)が少なくとも7.4゜、16.6゜、25.5゜、28.3゜の位置に回折ピークを有するクロロガリウムフタロシアニン顔料(以下「ClGaPC」ともいう)に変更した以外は、実施例1及び実施例2と同様にして、それぞれ、実施例3における電子写真感光体及び実施例4における電子写真感光体を作製した。
【0136】
<実施例5>
感光層形成用塗布液の製造において、用いた電荷発生材料の種類を、Cukα特性X線を用いたX線回折スペクトルのブラッグ角度(2θ±0.2°)が少なくとも7.3゜、16.0゜、24.9゜、28.0゜の位置に回折ピークを有するヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料(HOGaPC)と、Cukα特性X線を用いたX線回折スペクトルのブラッグ角度(2θ±0.2°)が少なくとも7.4゜、16.6゜、25.5゜、28.3゜の位置に回折ピークを有するクロロガリウムフタロシアニン顔料(ClGaPC)と、の1:1(質量比 HOGaPC:ClGaPC)混合物とした以外は、実施例1と同様にして、実施例5における電子写真感光体を作製した。
【0137】
<実施例6>
感光層形成用塗布液の製造において、用いた電荷発生材料の種類を、Cukα特性X線を用いたX線回折スペクトルのブラッグ角度(2θ±0.2°)が少なくとも7.3゜、16.0゜、24.9゜、28.0゜の位置に回折ピークを有するヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料(HOGaPC)と、Cukα特性X線を用いたX線回折スペクトルのブラッグ角度(2θ±0.2°)が少なくとも7.4゜、16.6゜、25.5゜、28.3゜の位置に回折ピークを有するクロロガリウムフタロシアニン顔料(ClGaPC)と、の1:2(質量比 HOGaPC:ClGaPC)混合物とした以外は、実施例2と同様にして、実施例6における電子写真感光体を作製した。
【0138】
<実施例7>
感光層の形成において、感光層形成用塗布液を表1に示す温度に制御した以外は、実施例1と同様にして、実施例7における電子写真感光体を作製した。
【0139】
<実施例8>
感光層形成用塗布液の製造において、電荷発生材料の添加量を3部、結着樹脂の添加量を50部、電子輸送材料の添加量を20部、正孔輸送材料の添加量を20部に変更した以外は、実施例1と同様にして、実施例8における電子写真感光体を作製した。
【0140】
<実施例9>
感光層形成用塗布液の製造において、電荷発生材料の添加量を5部、結着樹脂の添加量を50部、電子輸送材料の添加量を20部、正孔輸送材料の添加量を20部に変更した以外は、実施例1と同様にして、実施例9における電子写真感光体を作製した。
【0141】
<実施例10>
感光層の形成において、単層型の感光層の膜厚を20μmとした以外は、実施例1と同様にして、実施例10における電子写真感光体を作製した。
【0142】
<実施例11>
感光層の形成において、単層型の感光層の膜厚を40μmとした以外は、実施例1と同様にして、実施例11における電子写真感光体を作製した。
【0143】
<比較例1〜3>
感光層の形成において、感光層形成用塗布液を表1に示す温度に制御した以外は、実施例1と同様にして、それぞれ、比較例1における電子写真感光体、比較例2における電子写真感光体、及び比較例3における電子写真感光体を作製した。
【0144】
<比較例4〜5>
感光層形成用塗布液の製造において、用いた電荷発生材料の種類を、Cukα特性X線を用いたX線回折スペクトルのブラッグ角度(2θ±0.2°)が少なくとも7.4゜,16.6゜,25.5゜,28.3゜の位置に回折ピークを有するクロロガリウムフタロシアニン顔料(ClGaPC)に変更した以外は、比較例1及び比較例2と同様にして、それぞれ比較例4における電子写真感光体及び比較例5における電子写真感光体を作製した。
【0145】
得られた感光体における、感光層全体に対する電荷発生材料の含有量(表中の「含有量(質量%)」)、感光層全体の膜厚(表中の「膜厚(μm)」)、特定領域の厚み(表中の「厚み(μm)」)、感光層全体の膜厚に対する特定領域の厚みの割合(表中の「割合」)を表1に示す。
【0146】
【表1】
【0147】
<評価>
得られた各電子写真感光体について、以下の評価を行った。その結果を表3に示す。
【0148】
−画質評価(成長型色点の評価)−
Brother社製HL2270DWに、得られた電子写真感光体を取り付けた改造機を用いて画質評価を行った。
具体的には、上記改造機を用い、50%ハーフトーン画像を形成し、10枚目、1000枚、50000枚目の画像の点欠陥を以下に示した基準で評価した。評価方法の詳細としては、得られた画像の点欠陥(色点)を3つの大きさに分類し、各々の大きさの点欠陥の個数が基準に対して最も悪くなる評価を与えることとした。
評価基準は下記表2の通りである。なお、評価基準「6」以上であると実用上問題を生ずることがあると評価する。
【0149】
【表2】
【0150】
−ゴースト評価−
Brother社製HL2270DWに、得られた電子写真感光体を取り付けた改造機を用いてゴースト評価を行った。
具体的には、上記改造機を用い、10℃、湿度15%の条件下にて、プロセススピード180mm/secで10枚画像形成した後、次のサイクルで全面ハーフトーン画像を印字し、ハーフトーン画像上に浮き出たゴースト画像を以下の基準に基づいて目視で評価し下記のとおりに分類した。同様に、プロセススピード180mm/secで1000枚画像形成した後の次サイクルにおける全面ハーフトーン画像、及びプロセススピード180mm/secで50000枚画像形成した後の次サイクルにおける全面ハーフトーン画像についてもゴースト評価を行った。
G1:発生なし。
G2:極軽微に発生。
G3:軽微に発生。実使用上問題なし。
G4:軽微に発生。実使用上問題あり。
G5:発生
【0151】
【表3】
【0152】
上記結果から、本実施例の感光体は、比較例の感光体に比べ、速いプロセススピードで形成された画像におけるゴーストを抑制しつつ成長型色点が抑制されていることがわかる。
【符号の説明】
【0153】
2 感光層、3 導電性基体、7 電子写真感光体、8 帯電装置、9 露光装置、11 現像装置、13 クリーニング装置、14 潤滑材、40 転写装置、50 中間転写体、100 画像形成装置、120 画像形成装置、131 クリーニングブレード、132 繊維状部材、133 繊維状部材、300 プロセスカートリッジ
図1
図2
図3