特許第6922658号(P6922658)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6922658プロファイル調整方法、プロファイル調整プログラム、プロファイル調整装置、及び、プロファイル調整システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6922658
(24)【登録日】2021年8月2日
(45)【発行日】2021年8月18日
(54)【発明の名称】プロファイル調整方法、プロファイル調整プログラム、プロファイル調整装置、及び、プロファイル調整システム
(51)【国際特許分類】
   H04N 1/401 20060101AFI20210805BHJP
   B41J 2/525 20060101ALI20210805BHJP
   G06T 1/00 20060101ALI20210805BHJP
   H04N 1/407 20060101ALI20210805BHJP
   H04N 1/46 20060101ALI20210805BHJP
   H04N 1/56 20060101ALI20210805BHJP
   H04N 1/60 20060101ALI20210805BHJP
【FI】
   H04N1/401
   B41J2/525
   G06T1/00 510
   H04N1/407 780
   H04N1/46
   H04N1/56
   H04N1/60 580
【請求項の数】11
【全頁数】31
(21)【出願番号】特願2017-211807(P2017-211807)
(22)【出願日】2017年11月1日
(65)【公開番号】特開2019-87777(P2019-87777A)
(43)【公開日】2019年6月6日
【審査請求日】2020年9月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096703
【弁理士】
【氏名又は名称】横井 俊之
(72)【発明者】
【氏名】山下 充裕
(72)【発明者】
【氏名】深沢 賢二
【審査官】 西谷 憲人
(56)【参考文献】
【文献】 特開2016−048905(JP,A)
【文献】 特開2011−010231(JP,A)
【文献】 特開2015−037224(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 1/401
B41J 2/525
G06T 1/00
H04N 1/407
H04N 1/46
H04N 1/56
H04N 1/60
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一機器従属色空間の第一座標値とプロファイル接続空間の機器独立座標値との対応関係を表す調整対象プロファイルを調整する処理をコンピューターにより行う、プロファイル調整方法であって、
調整対象の色に対応する調整点について第二機器従属色空間の座標を基準とした調整目標を取得する目標取得工程と、
前記機器独立座標値と前記第二機器従属色空間の第二座標値との対応関係を表す出力プロファイルにおいて前記機器独立座標値から前記第二座標値への変換に用いられる色変換テーブルを第一変換テーブルとし、前記調整点における前記機器独立座標値を調整対象PCS値として、該調整対象PCS値を変化させた暫定PCS値を前記第一変換テーブルに従って変換して得られる暫定カラー値を前記調整目標に近付ける要素を含む最適化処理により前記調整目標に対応する前記機器独立座標値の最適解を得る最適化工程と、
前記機器独立座標値の最適解に基づいて前記調整対象プロファイルを調整するプロファイル調整工程と、を含む、プロファイル調整方法。
【請求項2】
前記調整目標を表す前記第二座標値を目標カラー値として、
前記最適化工程では、前記第二機器従属色空間の各要素色について前記暫定カラー値と前記目標カラー値との差の二乗を含む目的関数を用いて前記最適化処理により前記最適解を得る、請求項1に記載のプロファイル調整方法。
【請求項3】
前記調整目標を表す前記第二座標値を目標カラー値とし、前記出力プロファイルにおいて前記第二座標値から前記機器独立座標値への変換に用いられる色変換テーブルを第二変換テーブルとして、
前記最適化工程では、前記第二機器従属色空間の各要素色について前記暫定カラー値と前記目標カラー値との差を含む目的関数であって、前記差とは別に、前記暫定PCS値と、前記目標カラー値を前記第二変換テーブルに従って変換して得られる前記機器独立座標値と、の色差を含む目的関数を用いて前記最適化処理により前記最適解を得る、請求項1又は請求項2に記載のプロファイル調整方法。
【請求項4】
前記最適化工程では、前記暫定PCS値の範囲の制約条件に前記機器独立座標値のとり得る範囲を適用して前記最適化処理により前記最適解を得る、請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載のプロファイル調整方法。
【請求項5】
前記調整目標を表す前記第二座標値を目標カラー値とし、前記出力プロファイルにおいて前記第二座標値から前記機器独立座標値への変換に用いられる色変換テーブルを第二変換テーブルとして、
前記最適化工程では、前記目標カラー値を前記第二変換テーブルに従って変換して得られる前記機器独立座標値を前記暫定PCS値の初期値として前記最適化処理に用いる、請求項1〜請求項4のいずれか一項に記載のプロファイル調整方法。
【請求項6】
前記最適化工程では、前記最適化処理における前記暫定PCS値の初期値を複数用い、目的関数を用いる前記最適化処理を前記複数の初期値のそれぞれについて行って前記機器独立座標値の最適解候補を複数得て、該複数の最適解候補に基づいて前記最適解を得る、請求項1〜請求項5のいずれか一項に記載のプロファイル調整方法。
【請求項7】
前記調整目標を表す前記第二座標値を目標カラー値とし、前記出力プロファイルにおいて前記第二座標値から前記機器独立座標値への変換に用いられる色変換テーブルを第二変換テーブルとし、前記目標カラー値を前記第二変換テーブルに従って変換して得られる前記機器独立座標値を基準座標値として、
前記最適化工程では、前記最適解候補で表される色が有彩色であると判断した場合、前記プロファイル接続空間の色相平面において前記基準座標値と同じ象限に属する前記最適解候補に基づいて前記最適解を得る、請求項6に記載のプロファイル調整方法。
【請求項8】
前記調整目標を表す前記第二座標値を目標カラー値とし、前記出力プロファイルにおいて前記第二座標値から前記機器独立座標値への変換に用いられる色変換テーブルを第二変換テーブルとし、前記目標カラー値を前記第二変換テーブルに従って変換して得られる前記機器独立座標値を基準座標値として、
前記最適化工程では、前記最適解候補が前記最適解を得るために適しているか否かを所定の判定基準に従って判断し、前記複数の最適解候補が前記最適解を得るために適していないと判断した場合、前記最適解を前記基準座標値にする、請求項6又は請求項7に記載のプロファイル調整方法。
【請求項9】
第一機器従属色空間の第一座標値とプロファイル接続空間の機器独立座標値との対応関係を表す調整対象プロファイルを調整するためのプロファイル調整プログラムであって、
調整対象の色に対応する調整点について第二機器従属色空間の座標を基準とした調整目標を取得する目標取得機能と、
前記機器独立座標値と前記第二機器従属色空間の第二座標値との対応関係を表す出力プロファイルにおいて前記機器独立座標値から前記第二座標値への変換に用いられる色変換テーブルを第一変換テーブルとし、前記調整点における前記機器独立座標値を調整対象PCS値として、該調整対象PCS値を変化させた暫定PCS値を前記第一変換テーブルに従って変換して得られる暫定カラー値を前記調整目標に近付ける要素を含む最適化処理により前記調整目標に対応する前記機器独立座標値の最適解を得る最適化機能と、
前記機器独立座標値の最適解に基づいて前記調整対象プロファイルを調整するプロファイル調整機能と、をコンピューターに実現させる、プロファイル調整プログラム。
【請求項10】
第一機器従属色空間の第一座標値とプロファイル接続空間の機器独立座標値との対応関係を表す調整対象プロファイルを調整するプロファイル調整装置であって、
調整対象の色に対応する調整点について第二機器従属色空間の座標を基準とした調整目標を取得する目標取得部と、
前記機器独立座標値と前記第二機器従属色空間の第二座標値との対応関係を表す出力プロファイルにおいて前記機器独立座標値から前記第二座標値への変換に用いられる色変換テーブルを第一変換テーブルとし、前記調整点における前記機器独立座標値を調整対象PCS値として、該調整対象PCS値を変化させた暫定PCS値を前記第一変換テーブルに従って変換して得られる暫定カラー値を前記調整目標に近付ける要素を含む最適化処理により前記調整目標に対応する前記機器独立座標値の最適解を得る最適化部と、
前記機器独立座標値の最適解に基づいて前記調整対象プロファイルを調整するプロファイル調整部と、を含む、プロファイル調整装置。
【請求項11】
第一機器従属色空間の第一座標値とプロファイル接続空間の機器独立座標値との対応関係を表す調整対象プロファイルを調整するプロファイル調整システムであって、
パッチを含むカラーチャートを印刷するための印刷装置と、
前記パッチを測色する測色装置と、
調整対象の色に対応する調整点について第二機器従属色空間の座標を基準とした調整目標を取得する目標取得部と、
前記機器独立座標値と前記第二機器従属色空間の第二座標値との対応関係を表す出力プロファイルにおいて前記機器独立座標値から前記第二座標値への変換に用いられる色変換テーブルを第一変換テーブルとし、前記調整点における前記機器独立座標値を調整対象PCS値として、該調整対象PCS値を変化させた暫定PCS値を前記第一変換テーブルに従って変換して得られる暫定カラー値を前記調整目標に近付ける要素を含む最適化処理により前記調整目標に対応する前記機器独立座標値の最適解を得る最適化部と、
前記機器独立座標値の最適解に基づいて前記調整対象プロファイルを調整するプロファイル調整部と、を含む、プロファイル調整システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機器従属色空間の座標値とプロファイル接続空間の座標値との対応関係を表すプロファイルを調整する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェットプリンターをオフセット印刷等といった印刷の校正用途に使う場合、要求される色再現精度(色を正確に再現する度合い)が非常に高い。これを実現する仕組みとしては、ICC(International Color Consortium)プロファイルを用いたカラーマネジメントシステムがある。ICCプロファイルは、印刷機(例えばオフセット印刷機)、インクジェットプリンター、等といったカラー機器の機器依存カラーと機器非依存カラーとの対応関係を表すデータである。印刷機やインクジェットプリンターの機器依存カラーは、機器従属色空間(device dependent color space)の座標値で表され、例えば、C(シアン)、M(マゼンタ)、Y(イエロー)、及び、K(ブラック)の使用量を表すCMYK値で表される。機器非依存カラーは、例えば、機器独立色空間(device independent color space)であるCIE(国際照明委員会)L***色空間の色彩値(「*」を省略してLab値とする。)やCIE XYZ色空間の色彩値で表される。
【0003】
ここで、印刷機のICCプロファイルを入力プロファイルとし、インクジェットプリンターのICCプロファイルを出力プロファイルとする。印刷機におけるCMYK値を入力プロファイルに従ってPCS(Profile Connection Space;プロファイル接続空間)の色彩値(例えばLab値)に変換すると、この色彩値を出力プロファイルに従ってインクジェットプリンターのCMYK値(CMYKp値とする。)に変換することができる。CMYKp値に従ってインクジェットプリンターで印刷を行うと、インクジェットプリンターで印刷機の色に近い色を再現することができる。実際には、プロファイルの誤差、色測定誤差、プリンターの変動、等により、期待する色が再現できない場合がある。このような場合、調整するスポットカラーを表す調整点を指定し、該調整点の調整目標を指定し、該調整目標に基づいてICCプロファイルを修正するという、スポットカラー調整が行われている。
【0004】
特許文献1には、第一のLab値に対してCMYKプリンターの出力プロファイルのB2Aデータを適用し、更にCMYKプリンターの出力プロファイルのA2Bデータを適用して得られた第二のLab値と、第一のLab値と、の色差を求めることが示されている。第二のLab値は、校正機の出力プロファイルをソース・プロファイルとし、CMYKプリンターの出力プロファイルをデスティネーション・プロファイルとして、CMYKプリンターによってプリント出力された色の色彩値のシミュレーション結果である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−87589号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
調整目標を入力プロファイルにフィードバックする場合、インクジェットプリンターのCMYKp値に対応するLab値を使用することがある。ここで、出力プロファイルのA2Bテーブルを使ってCMYKp値をLab値に変換すると、A2Bテーブルの誤差により、前記Lab値と実際の目標のLab値とに差が生じる。このため、入力プロファイルを調整しても、期待する色が得られなかったり、調整に手間がかかったりすることがある。
尚、上述のような問題は、インクジェットプリンターを対象とした入力プロファイルを調整する場合に限らず、種々のカラー機器を対象としたプロファイルを調整する場合にも存在する。
【0007】
本発明の目的の一つは、機器従属色空間の座標値とプロファイル接続空間の座標値との対応関係を表すプロファイルの色再現精度を向上させることが可能な技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的の一つを達成するため、本発明は、第一機器従属色空間の第一座標値とプロファイル接続空間の機器独立座標値との対応関係を表す調整対象プロファイルを調整する処理をコンピューターにより行う、プロファイル調整方法であって、
調整対象の色に対応する調整点について第二機器従属色空間の座標を基準とした調整目標を取得する目標取得工程と、
前記機器独立座標値と前記第二機器従属色空間の第二座標値との対応関係を表す出力プロファイルにおいて前記機器独立座標値から前記第二座標値への変換に用いられる色変換テーブルを第一変換テーブルとし、前記調整点における前記機器独立座標値を調整対象PCS値として、該調整対象PCS値を変化させた暫定PCS値を前記第一変換テーブルに従って変換して得られる暫定カラー値を前記調整目標に近付ける要素を含む最適化処理により前記調整目標に対応する前記機器独立座標値の最適解を得る最適化工程と、
前記機器独立座標値の最適解に基づいて前記調整対象プロファイルを調整するプロファイル調整工程と、を含む、態様を有する。
【0009】
また、本発明は、上述したプロファイル調整方法の各工程に対応する機能をコンピューターに実現させるプロファイル調整プログラムの態様を有する。
さらに、本発明は、上述したプロファイル調整方法の各工程に対応するユニット(「部」)を含むプロファイル調整装置の態様を有する。
さらに、本発明は、上述したプロファイル調整方法の各工程に対応するユニット(「部」)を含むプロファイル調整システムの態様を有する。
【0010】
上述した態様は、機器従属色空間の座標値とプロファイル接続空間の座標値との対応関係を表すプロファイルの色再現精度を向上させることが可能な技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】プロファイル調整システムの構成例を模式的に示すブロック図。
図2】カラーマネジメントフローの例を模式的に示す図。
図3】各種プロファイルの関係の例を模式的に示す図。
図4】プロファイルの構造例を模式的に示す図。
図5】出力プロファイルの第二変換テーブルの構造例を模式的に示す図。
図6】目標設定処理の例を示すフローチャート。
図7】ユーザーインターフェイス画面の例を模式的に示す図。
図8】最適化処理の例を示すフローチャート。
図9】暫定PCS値の初期値を変える例を模式的に示す図。
図10】最適解決定処理の例を示すフローチャート。
図11】有彩色の最適解候補のうち基準座標値と色相平面の象限が異なる最適解候補を除外する例を模式的に示す図。
図12】プロファイル調整処理の例を示すフローチャート。
図13】調整点を設定する例を模式的に示す図。
図14図14Aは調整対象プロファイルの出力色空間において調整する場合の各格子点の調整量を模式的に示す図、図14Bは調整対象プロファイルの入力色空間において調整する場合の各格子点の調整量を模式的に示す図。
図15図15Aは最近傍格子点に対する出力値の調整量を決定する例を模式的に示す図、図15B最近傍格子点の周囲の格子点に対する出力値の調整量を決定する例を模式的に示す図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態を説明する。むろん、以下の実施形態は本発明を例示するものに過ぎず、実施形態に示す特徴の全てが発明の解決手段に必須になるとは限らない。
【0013】
(1)本発明に含まれる技術の概要:
まず、図1〜15に示される例を参照して本発明に含まれる技術の概要を説明する。尚、本願の図は模式的に例を示す図であり、これらの図に示される各方向の拡大率は異なることがあり、各図は整合していないことがある。むろん、本技術の各要素は、符号で示される具体例に限定されない。
【0014】
[態様1]
図2,6〜13等に例示するように、本技術の一態様に係るプロファイル調整方法は、第一機器従属色空間CS1(例えばCMYK色空間)の第一座標値(例えばCMYK値)とプロファイル接続空間CS3(例えばLab色空間)の機器独立座標値(例えばLab値)との対応関係を表す調整対象プロファイル(例えば入力プロファイル610)を調整する処理をコンピューター(例えばホスト装置100)により行うプロファイル調整方法であって、目標取得工程ST1、最適化工程ST2、及び、プロファイル調整工程ST3を含む。前記目標取得工程ST1では、調整対象の色に対応する調整点P0について第二機器従属色空間CS2(例えばcmyk色空間)の座標を基準とした調整目標T0(例えばcmykT)を取得する。ここで、前記機器独立座標値(Lab値)と前記第二機器従属色空間CS2の第二座標値(例えばcmyk値)との対応関係を表す出力プロファイル620において前記機器独立座標値(Lab値)から前記第二座標値(cmyk値)への変換に用いられる色変換テーブルを第一変換テーブル(例えばB2Aテーブル621)とする。また、前記調整点P0における前記機器独立座標値(Lab値)を調整対象PCS値(例えばLabS1)とする。前記最適化工程ST2では、前記調整対象PCS値(LabS1)を変化させた暫定PCS値(例えばLabpS1)を前記第一変換テーブル(621)に従って変換して得られる暫定カラー値(例えばcmykpp)を前記調整目標T0に近付ける要素を含む最適化処理により前記調整目標T0に対応する前記機器独立座標値(Lab値)の最適解(例えばLabb)を得る。前記プロファイル調整工程ST3では、前記機器独立座標値(Lab値)の最適解(Labb)に基づいて前記調整対象プロファイル(610)を調整する。
【0015】
本態様では、暫定カラー値(cmykpp)を調整目標T0(cmykT)に近付ける要素を含む最適化処理による機器独立座標値(Lab値)の最適解(Labb)に基づいて調整対象プロファイル(610)が調整される。最適解Labbに出力プロファイル620のA2Bテーブル622の誤差が入らないので、調整対象プロファイル(610)と出力プロファイル620に従って色変換したときに第二機器(例えばプリンター200)の出力色が意図された色に近付く。
従って、本態様は、機器従属色空間の座標値とプロファイル接続空間の座標値との対応関係を表すプロファイルの色再現精度を向上させるプロファイル調整方法を提供することができる。
【0016】
ここで、プロファイル接続空間には、CIE Lab色空間、CIE XYZ色空間、等といった色空間が含まれる。
第一機器従属色空間には、CMYK色空間、CMY色空間、RGB色空間、等が含まれる。尚、Rは赤を意味し、Gは緑を意味し、Bは青を意味する。
第二機器従属色空間には、CMYK色空間、CMY色空間、RGB色空間、等が含まれる。以下述べる実施形態では、第二機器従属色空間がCMYK色空間である場合に第一機器従属色空間のCMYK色空間と区別するため第二機器従属色空間をcmyk色空間と表記している。
第二機器従属色空間の座標を基準とした調整目標は、第二機器従属色空間の座標値で表されてもよいし、第二機器従属色空間の現在の座標値からの差分で表されてもよい。
最適化処理には、準ニュートン法(Quasi-Newton Method)による最適化処理、ニュートン法による最適化処理、共役勾配法(Conjugate Gradient Method)による最適化処理、等を用いることができる。
最適化処理により最適解を得ることには、複数の最適化処理を行って得られる複数の解の中から最適解を決定すること、及び、1回の最適化処理により最適解を得ることが含まれる。
尚、上記態様1の付言は、以下の態様も同様である。
【0017】
[態様2]
ところで、前記調整目標T0を表す前記第二座標値(cmyk値)を目標カラー値(例えばcmykT)とする。図8に例示するように、前記最適化工程ST2では、前記第二機器従属色空間CS2の各要素色(例えばcmyk)について前記暫定カラー値(cmykpp)と前記目標カラー値(cmykT)との差(例えばDc,Dm,Dy,Dk)の二乗(例えばDc2,Dm2,Dy2,Dk2)を含む目的関数(例えばy=f(LabpS1))を用いて前記最適化処理により前記最適解(Labb)を得てもよい。尚、差の二乗が小さくなるほど目的関数の出力値が小さくなる場合、暫定カラー値(cmykpp)を目標カラー値(cmykT)に近付ける要素は目的関数の出力値を小さくすることである。本態様は、平方根の計算が不要になるので、最適化処理を高速化することができる。
尚、上記態様2には含まれないが、平方根を計算する場合も本技術に含まれる。
【0018】
[態様3]
ここで、前記出力プロファイル620において前記第二座標値(cmyk値)から前記機器独立座標値(Lab値)への変換に用いられる色変換テーブルを第二変換テーブル(例えばA2Bテーブル622)とする。図8に例示するように、前記最適化工程ST2では、前記第二機器従属色空間CS2の各要素色(cmyk)について前記暫定カラー値(cmykpp)と前記目標カラー値(cmykT)との差(Dc,Dm,Dy,Dk)を含む目的関数であって、前記差(Dc,Dm,Dy,Dk)とは別に、前記暫定PCS値(LabpS1)と、前記目標カラー値(cmykT)を前記第二変換テーブル(622)に従って変換して得られる前記機器独立座標値(例えばLabS2)と、の色差(例えばΔE00)を含む目的関数(例えばy=f(LabpS1))を用いて前記最適化処理により前記最適解(Labb)を得てもよい。暫定カラー値(cmykpp)と目標カラー値(cmykT)との差(Dc,Dm,Dy,Dk)とは別に暫定PCS値(LabpS1)と第二変換テーブル変換値(LabS2)との色差(ΔE00)が目的関数(y=f(LabpS1))に含まれていることにより、近いと予測される機器独立座標値LabS2から最適解Labbが大きくずれることが抑制される。従って、本態様は、調整対象プロファイルの色再現精度をさらに向上させる技術を提供することができる。
尚、上記態様3には含まれないが、目的関数に暫定PCS値と第二変換テーブル変換値との色差が含まれない場合も本技術に含まれる。
【0019】
[態様4]
図8に例示するように、前記最適化工程ST2では、前記暫定PCS値(LabpS1)の範囲の制約条件に前記機器独立座標値(Lab値)のとり得る範囲(例えば、Lについて0〜100、a,bについて−128〜127)を適用して前記最適化処理により前記最適解(Labb)を得てもよい。暫定PCS値(LabpS1)が機器独立座標値(Lab値)のとり得る範囲を超える調整を行うことはできないので、本態様は、好適な最適化処理を提供することができる。
ここで、本願において、「Min〜Max」は、最小値Min以上、且つ、最大値Max以下を意味する。
尚、上記態様4には含まれないが、上記制約条件が無い場合も本技術に含まれる。
【0020】
[態様5]
図8,9に例示するように、前記最適化工程ST2では、前記目標カラー値(cmykT)を前記第二変換テーブル(622)に従って変換して得られる前記機器独立座標値(LabS2)を前記暫定PCS値(LabpS1)の初期値(例えばLab0)として前記最適化処理に用いてもよい。第二変換テーブル(622)に誤差はあっても、機器独立座標値(LabS2)は最適解(Labb)に近い値となる。従って、本態様は、好適な最適化処理を提供することができる。
尚、上記態様5には含まれないが、機器独立座標値(LabS2)が暫定PCS値の初期値でない場合も本技術に含まれる。
【0021】
[態様6]
図8,9に例示するように、前記最適化工程ST2では、前記最適化処理における前記暫定PCS値(LabpS1)の初期値(例えばLabi)を複数用いてもよい。当該最適化工程ST2では、目的関数(y=f(LabpS1))を用いる前記最適化処理を前記複数の初期値(Labi)のそれぞれについて行って前記機器独立座標値(Lab値)の最適解候補(例えばLabpb)を複数得てもよい。当該最適化工程ST2では、前記複数の最適解候補(Labpb)に基づいて前記最適解(Labb)を得てもよい。目的関数(y=f(LabpS1))が複数の極小値、又は、複数の極大値を有することがあるが、暫定PCS値(LabpS1)の初期値(Labi)が複数用いられることにより、より好ましい解を得ることができる。従って、本態様は、好適な最適化処理を提供することができる。
尚、上記態様6には含まれないが、暫定PCS値の初期値が単数である場合も本技術に含まれる。
【0022】
[態様7]
ここで、前記目標カラー値(cmykT)を前記第二変換テーブル(622)に従って変換して得られる前記機器独立座標値(Lab値)を基準座標値(例えばLabS2)とする。図10,11に例示するように、前記最適化工程ST2では、前記最適解候補(Labpb)で表される色が有彩色であると判断した場合、前記プロファイル接続空間CS3の色相平面(例えばab平面)において前記基準座標値(LabS2)と同じ象限に属する前記最適解候補(Labpb)に基づいて前記最適解(Labb)を得てもよい。調整点P0の色が有彩色である場合、プロファイル接続空間CS3の色相平面(ab平面)において基準座標値(LabS2)と異なる象限に属する最適解候補(Labpb)は、ずれが大きすぎる可能性が大きい。従って、本態様は、好適な最適化処理を提供することができる。
【0023】
[態様8]
図10,11に例示するように、前記最適化工程ST2では、前記最適解候補(Labpb)が前記最適解(Labb)を得るために適しているか否かを所定の判定基準に従って判断してもよい。当該最適化工程ST2では、前記複数の最適解候補(Labpb)が前記最適解(Labb)を得るために適していないと判断した場合、前記最適解(Labb)を前記基準座標値(LabS2)にしてもよい。得られた複数の最適解候補(Labpb)がいずれも最適解を得るために適していない場合でも、最適解(Labb)を基準座標値(LabS2)にすることにより、解無しとならない。従って、本態様は、好適な最適化処理を提供することができる。
【0024】
[態様9]
ところで、本技術の一態様に係るプロファイル調整プログラムPR0は、目標取得工程ST1に対応する目標取得機能FU1、最適化工程ST2に対応する最適化機能FU2、及び、プロファイル調整工程ST3に対応するプロファイル調整機能FU3をコンピューター(例えばホスト装置100)に実現させる。本態様は、機器従属色空間の座標値とプロファイル接続空間の座標値との対応関係を表すプロファイルの色再現精度を向上させるプロファイル調整プログラムを提供することができる。
【0025】
[態様10]
また、本技術の一態様に係るプロファイル調整装置(例えばホスト装置100)は、目標取得工程ST1に対応する目標取得部U1、最適化工程ST2に対応する最適化部U2、及び、プロファイル調整工程ST3に対応するプロファイル調整部U3を含む。本態様は、機器従属色空間の座標値とプロファイル接続空間の座標値との対応関係を表すプロファイルの色再現精度を向上させるプロファイル調整装置を提供することができる。
【0026】
[態様11]
さらに、本技術の一態様に係るプロファイル調整システムSY1は、パッチを含むカラーチャートを印刷するための印刷装置(例えばプリンター200)、前記パッチを測色する測色装置120、及び、態様10の各部を含む。本態様は、機器従属色空間の座標値とプロファイル接続空間の座標値との対応関係を表すプロファイルの色再現精度を向上させるプロファイル調整システムを提供することができる。
【0027】
さらに、本技術は、プロファイル調整装置の制御方法、プロファイル調整装置を含む複合システム、複合システムの制御方法、プロファイル調整装置の制御プログラム、複合システムの制御プログラム、プロファイル調整プログラムや前記制御プログラムを記録したコンピューター読み取り可能な媒体、等に適用可能である。前述の装置は、分散した複数の部分で構成されてもよい。
【0028】
(2)プロファイル調整システムの構成の具体例:
図1は、プロファイル調整装置を含むプロファイル調整システムの構成例を模式的に示している。図1に示すプロファイル調整システムSY1は、ホスト装置100(プロファイル調整装置の例)、表示装置130、測色装置120、及び、インクジェットプリンター200を含んでいる。ホスト装置100は、CPU(Central Processing Unit)111、ROM(Read Only Memory)112、RAM(Random Access Memory)113、記憶装置114、入力装置115、通信I/F(インターフェイス)118、測色装置用I/F 119、等が接続されて互いに情報を入出力可能とされている。尚、ROM112とRAM113と記憶装置114はメモリーであり、少なくともROM112とRAM113は半導体メモリーである。表示装置130は、ホスト装置100からの表示データに基づいて該表示データに対応する画面を表示する。表示装置130には、液晶表示パネル等を用いることができる。
【0029】
記憶装置114は、図示しないOS(オペレーティングシステム)、プロファイル調整プログラムPR0、等を記憶している。これらは、適宜、RAM113に読み出され、プロファイル500の調整処理に使用される。ここで、プロファイル500は、入力プロファイル610、出力プロファイル620、及び、デバイスリンクプロファイル630を総称している。RAM113と記憶装置114の少なくとも一方には、各種情報、例えば、入力プロファイル610、出力プロファイル620、デバイスリンクプロファイル630、図示しない調整履歴、等が格納される。記憶装置114には、フラッシュメモリー等の不揮発性半導体メモリー、ハードディスク等の磁気記憶装置、等を用いることができる。
【0030】
入力装置115には、ポインティングデバイス、キーボードを含むハードキー、表示パネルの表面に貼り付けられたタッチパネル、等を用いることができる。通信I/F 118は、プリンター200の通信I/F 210に接続され、プリンター200に対して印刷データ等といった情報を入出力する。測色装置用I/F 119は、測色装置120に接続され、測色装置120から測色値を含む測色データを入手する。I/F 118,119,210の規格には、USB(Universal Serial Bus)、近距離無線通信規格、等を用いることができる。通信I/F 118,119,210の通信は、有線でもよいし、無線でもよく、LAN(Local Area Network)やインターネット等といったネットワーク通信でもよい。
測色装置120は、カラーチャートが形成される媒体の例である被印刷物(print substrate)に形成された各カラーパッチを測色して測色値を出力可能である。パッチは、色票とも呼ばれる。測色値は、例えば、CIE Lab色空間における明度L及び色度座標a,bを表す値とされる。ホスト装置100は、測色装置120から測色データを取得して各種処理を行う。
【0031】
図1に示すプロファイル調整プログラムPR0は、目標取得機能FU1、最適化機能FU2、及び、プロファイル調整機能FU3をホスト装置100に実現させる。
ホスト装置100のCPU111は、記憶装置114に記憶されている情報を適宜、RAM113に読み出し、読み出したプログラムを実行することにより各種処理を行う。CPU111は、RAM113に読み出されたプロファイル調整プログラムPR0を実行することにより、上述した機能FU1〜FU3に対応する処理を行う。プロファイル調整プログラムPR0は、コンピューターであるホスト装置100を、目標取得部U1、最適化部U2、及び、プロファイル調整部U3として機能させる。また、プロファイル調整プログラムPR0を実行するホスト装置100は、目標取得工程ST1、最適化工程ST2、及び、プロファイル調整工程ST3を実施する。上述した機能FU1〜FU3をコンピューターに実現させるプロファイル調整プログラムPR0を記憶したコンピューター読み取り可能な媒体は、ホスト装置の内部の記憶装置に限定されず、ホスト装置の外部の記録媒体でもよい。
【0032】
尚、ホスト装置100には、パーソナルコンピューター(タブレット型端末を含む。)といったコンピューター等が含まれる。例えば、デスクトップ型パーソナルコンピューターの本体をホスト装置100に適用する場合、通常、この本体に表示装置130、測色装置120、及び、プリンター200が接続される。ノート型パーソナルコンピューターのように表示装置一体型のコンピューターをホスト装置100に適用する場合、通常、このコンピューターに測色装置120、及び、プリンター200が接続される。表示装置一体型のホスト装置でも、内部の表示装置に表示データを出力していることに変わりない。また、ホスト装置100は、一つの筐体内に全構成要素111〜119を有してもよいが、互いに通信可能に分割された複数の装置で構成されてもよい。さらに、表示装置130と測色装置120とプリンター200の少なくとも一部がホスト装置100にあっても、本技術を実施可能である。
【0033】
図1に示すプリンター200(出力デバイスの例)は、色材としてC(シアン)インク、M(マゼンタ)インク、Y(イエロー)インク、及び、K(ブラック)インクを記録ヘッド220から吐出(噴射)して印刷データに対応する出力画像IM0を形成するインクジェットプリンターであるものとする。記録ヘッド220は、インクカートリッジCc,Cm,Cy,CkからそれぞれCMYK(シアン、マゼンタ、イエロー、及び、ブラック)のインクが供給され、ノズルNc,Nm,Ny,NkからそれぞれCMYKのインク滴280を吐出する。インク滴280が被印刷物ME1に着弾すると、インクドットが被印刷物ME1に形成される。その結果、被印刷物ME1上に出力画像IM0を有する印刷物が得られる。
【0034】
(3)カラーマネジメントシステムの具体例:
次に、図2を参照して、本技術を適用可能なカラーマネジメントシステムの例を説明する。
図2に示すカラーマネジメントシステムは、例えば上記ホスト装置100に実現されるRIP(Raster Image Processor)400で印刷原稿データD0から印刷色cmykp(シアン、マゼンタ、イエロー、及び、ブラック)を表す出力データに変換してインクジェットプリンター200に印刷物を形成させる。印刷原稿データD0は、色合わせのターゲット装置の例であるターゲット印刷機300のCMYKのインク(色材)で目標とする色(目標色CT)を再現するためのプロセスカラーCMYKinを表す。
【0035】
ターゲット印刷機300は、オフセット印刷機であるものとするが、グラビア印刷機、フレキソ印刷機、等でもよい。目標色CTは、例えば、CIE Lab色空間の座標値(Lab値)で表される。図2には、ターゲット印刷機300が被印刷物に目標色CTを表すカラーチャートCH0を印刷し、測色装置がカラーチャートCH0の各パッチを測色して測色値LabTを取得する様子が示されている。プロセスカラーCMYKinは、ターゲット印刷機300で使用されるCMYKのインクの使用量に対応し、ターゲット印刷機300に依存するCMYK色空間の座標を表す。
【0036】
図2に示すRIP400は、入力プロファイル610、及び、出力プロファイル620を有している。入力プロファイル610は、ターゲット印刷機300で使用されるインクの色特性を記述したファイルである。出力プロファイル620は、インクジェットプリンター200で使用されるインクの色特性を記述したファイルである。両プロファイル610,620には、例えば、ICCプロファイルのデータフォーマットを用いることができる。印刷原稿データD0のプロセスカラーCMYKinは、入力プロファイル610のA2Bテーブル611に従ってLab色空間の色LabS1に変換され、出力プロファイル620のB2Aテーブル621(第一変換テーブルの例)に従って印刷色cmykpに変換される。プリンター200がCMYKの計4色のインクを使用する場合、印刷色cmykpは、プリンター200に出力され、印刷物に再現される。図2には、プリンター200が被印刷物に印刷色cmykpを表すカラーチャートCH1を印刷し、測色装置120がカラーチャートCH1の各パッチを測色して測色値Labpを取得する様子が示されている。プリンター200がLc(ライトシアン)、Lm(ライトマゼンタ)、DY(ダークイエロー)、Lk(ライトブラック)、等のインクも使用する場合、RIP400又はプリンター200が印刷色cmykpを濃色と淡色に分版すると、プリンター200が印刷色cmykpを印刷物に再現することができる。むろん、印刷色自体も、CMYKの計4色に限定されない。
【0037】
尚、RIP400は、プロセスカラーCMYKin以外にも、減法混色となる三原色CMYのみの色材の使用量を表すプロセスカラー(CMYinとする。)、加法混色となる三原色R(赤)、G(緑)、及び、B(青)の強度を表すプロセスカラー(RGBinとする。)、等とLab色空間の座標値とを変換するための入力プロファイルも有している。従って、RIP400は、プロセスカラーCMYinやプロセスカラーRGBin等もLab色空間経由で印刷色cmykpに変換可能である。加えて、RIP400は、Lab色空間の色LabS1を入力して印刷色cmykpに変換することも可能である。
【0038】
以上により、インクジェットプリンター200でターゲット印刷機300の色に近い色を再現することができる。しかし、実際には、プロファイルの誤差、色測定誤差、プリンターの変動、等により、期待する色が再現できない場合がある。このような場合、プロファイル610,620を修正することにより、対象の色の変換精度を上げている。入力プロファイル610を修正する場合、調整目標の印刷色(cmykT)から測色値(Labp)を予測する演算を行い、得られたシミュレーション値(LabS2とする。)と目標色彩値(LabT)との色差を計算し、この色差を少なくするように入力プロファイル610を修正することが考えられる。
【0039】
ただ、出力プロファイル620のA2Bテーブル622(第二変換テーブルの例。図5参照)を使ってcmykp値をLab値に変換すると、A2Bテーブル622の誤差により、シミュレーション値LabS2と実際の目標色彩値LabTとに差が生じる。このため、入力プロファイル610を調整しても、期待する色が得られなかったり、調整に手間がかかったりすることがある。
【0040】
本具体例では、出力プロファイル620のB2Aテーブル621を用いて最適化処理を行うことにより、調整後の入力プロファイル610(少なくともA2Bテーブル611)と出力プロファイル620とを組み合わせた場合の色再現精度を向上させることにしている。図2には、調整目標である目標カラー値cmykTに最も近付くようにPCS値を最適化することが示されている。この最適化されたPCS値Labbが調整対象の入力プロファイル610の調整に用いられる。
【0041】
(4)プロファイルの具体例:
図3は、入力プロファイル610、出力プロファイル620、及び、デバイスリンクプロファイル630の関係を模式的に例示している。
図3に示すように、入力プロファイル610は、ターゲット印刷機300の使用インクに合わせたCMYK色空間(第一機器従属色空間CS1の例)のCMYK値(Ci,Mi,Yi,Ki)と、Lab色空間(PCS(プロファイル接続空間)CS3の例)のLab値(Li,ai,bi)と、の対応関係を規定したデータである。この場合のA2Bテーブル611の格子点GD1は、通常、CMYK色空間にC軸方向、M軸方向、Y軸方向、及び、K軸方向へ略等間隔となるように並べられる。尚、ここでの変数iは、CMYK色空間(CS1)に設定された格子点GD1を識別する変数である。CMYK値は、第一座標値の例である。Lab値は、機器独立座標値の例である。入力プロファイル610において、CMYK色空間(CS1)は入力色空間CS4の例であり、Lab色空間(CS3)は出力色空間CS5の例である。
尚、第一機器従属色空間を第一の色空間とも記載する。
【0042】
出力プロファイル620は、Lab色空間(CS3)のLab値(Lj,aj,bj)と、インクジェットプリンター200の使用インクに合わせたcmyk色空間(第二機器従属色空間CS2の例)のcmyk値(cj,mj,yj,kj)と、の対応関係を規定したデータである。この場合のB2Aテーブル621の格子点GD2は、通常、Lab色空間にL軸方向、a軸方向、及び、b軸方向へ略等間隔となるように並べられる。尚、ここでの変数jは、Lab色空間(CS3)に設定された格子点GD2を識別する変数である。「cmyk色空間」と表現しているのは、プリンター200の使用インクに合わせた色空間をターゲット印刷機300に合わせた色空間と区別するためである。cmyk値は、第二座標値の例である。出力プロファイル620において、Lab色空間(CS3)は入力色空間CS4の例であり、cmyk色空間(CS2)は出力色空間CS5の例である。cmyk値で表される出力色(cmykp)の色再現域は、プリンター200に依存する。従って、B2Aテーブル621のLab値(Lj,aj,bj)がプリンター200の色再現域外を表す値であっても、プリンター200の色再現域にマッピングすることにより得られたcmyk値(cj,mj,yj,kj)がLab値(Lj,aj,bj)に対応付けられている。
尚、第二機器従属色空間を第二の色空間とも記載する。
【0043】
デバイスリンクプロファイル630は、CMYK色空間(CS1)のCMYK値(Ci,Mi,Yi,Ki)と、cmyk色空間(CS2)のcmyk値(ci,mi,yi,ki)と、の対応関係を規定したデータである。この場合のデバイスリンクテーブル631の格子点GD1は、入力プロファイル610のA2Bテーブル611の格子点である。尚、ここでの変数iは、CMYK色空間(CS1)に設定された格子点GD1を識別する変数である。デバイスリンクプロファイル630は、入力プロファイル610(特にA2Bテーブル611)と出力プロファイル620(特にB2Aテーブル621)とを結合することにより得られる。デバイスリンクプロファイル630において、CMYK色空間(CS1)は入力色空間CS4の例であり、cmyk色空間(CS2)は出力色空間CS5の例である。
尚、プロファイル610,620,630に含まれる変換テーブルは、単一の変換テーブルに限定されず、1次元の変換テーブルと3又は4次元の変換テーブルと1次元の変換テーブルとの組合せ等、複数の変換テーブルの組合せでもよい。従って、図3に示す変換テーブルは、プロファイル610,620,630に含まれる3又は4次元の変換テーブルを直接示す場合もあれば、プロファイル610,620,630に含まれる複数の変換テーブルを組み合わせた状態を示す場合もある。
また、格子点(grid point)は入力色空間に配置された仮想の点を意味し、入力色空間における格子点の位置に対応する出力座標値が該格子点に格納されていると想定することにしている。複数の格子点が入力色空間内で均等に配置されるのみならず、複数の格子点が入力色空間内で不均等に配置されることも、本技術に含まれる。
【0044】
図4は、プロファイル500、特に入力プロファイル610及び出力プロファイル620の構造を模式的に例示している。図4に示すプロファイル500は、ICCプロファイルであり、プロファイルヘッダー510とタグテーブル520を含む。プロファイル500には、PCSと機器従属色空間との間でカラー情報を変換するために必要な情報であるタグ(tag)521が含まれている。タグ521には、プロファイル500をカスタマイズするためのプライベートタグ523が含まれてもよい。
【0045】
デバイス(300,200)用のA2Bxタグ(図4に示すxは0、1、又は、2)は、エレメントデータ530として、機器従属色空間(CMYK色空間、cmyk色空間)からLab色空間に変換するための色変換テーブルを含んでいる。デバイス(300,200)用のB2Axタグは、エレメントデータ530として、Lab色空間から機器従属色空間(CMYK色空間、cmyk色空間)に変換するための色変換テーブルを含んでいる。
【0046】
図4に示すA2B0タグ、及び、B2A0タグは、知覚的(Perceptual)な色変換を行うための情報である。知覚的な色変換は、階調再現を重視しているので、主に、色域の広い写真画像の変換に用いられる。図4に示すA2B1タグ、及び、B2A1タグは、相対的で測色的(Media-Relative Colorimetric)な色変換、又は、絶対的で測色的(Absolute Colorimetric)な色変換を行うための情報である。測色的な色変換は、測色値に忠実であるので、主に、正確な色の一致が求められるデジタルプルーフの色校正出力用の変換に用いられる。図4に示すA2B2タグ、及び、B2A2タグは、彩度重視(Saturation)の色変換を行うための情報である。彩度重視の色変換は、色味の正確さよりも色の鮮やかさ重視しているので、主に、ビジネスグラッフィクスでのグラフ表示等の変換に用いられる。
【0047】
図5は、出力プロファイル620におけるA2Bテーブル622(第二変換テーブルの例)の構造を模式的に例示している。図5の下部には、cmyk色空間(CS2)における格子点GD3の位置を模式的に例示している。ここで、cmyk色空間は4次元の色空間であるため、図5ではc軸とm軸とy軸とで形成される3次元の仮想空間を示している。A2Bテーブル622の格子点GD3は、通常、cmyk色空間にc軸方向、m軸方向、y軸方向、及び、k軸方向へ略等間隔となるように並べられる。図5の下部において、c軸方向における格子点GD3の間隔をGcと示し、m軸方向における格子点GD3の間隔をGmと示し、y軸方向における格子点GD3の間隔をGyと示している。A2Bテーブル622のLab値(Li,ai,bi)は、プリンター200の色再現域において出力色(cmyk値ci,mi,yi,ki)を表現する座標値である。尚、ここでの変数iは、cmyk色空間(CS2)に設定された格子点GD3を識別する変数である。むろん、図5に示す変換テーブルは、出力プロファイル620に含まれる4次元の変換テーブルを直接示す場合もあれば、出力プロファイル620に含まれる複数の変換テーブルを組み合わせた状態を示す場合もある。
【0048】
図3,5に示すように、出力プロファイル620は、Lab値からcmyk値への色変換に用いられるB2Aテーブル621、及び、cmyk値からLab値への色変換に用いられるA2Bテーブル622を有している。B2Aテーブル621はガマットマッピングが行われた3次元の色変換テーブルであり、A2Bテーブル622は出力可能な色を表すcmyk値がPCS値に対応付けられた4次元の色変換テーブルである。従って、PCS値LabS1をB2Aテーブル621によりcmyk値cmykpに変換し該cmyk値cmykpをA2Bテーブル622によりPCS値LabS2に変換したとき、このPCS値LabS2が元のPCS値LabS1にならないことがある。
【0049】
(5)プロファイル調整システムで行われる処理の具体例:
図6は、図1に示すホスト装置100で行われる目標設定処理を例示している。この目標設定処理の後、図8に例示する最適化処理が行われる。尚、ホスト装置100は、マルチタスクにより複数の処理を並列して実行している。図7は、図6のステップS102で表示されるUI(ユーザーインターフェイス)画面800の例を示している。ここで、図6のステップS113,S120〜S122は、目標取得工程ST1、目標取得機能FU1、及び、目標取得部U1に対応している。
【0050】
図6に示す目標設定処理が開始されると、ホスト装置100は、図7に示すUI画面800を表示装置130に表示させる(S102)。UI画面800は、入力プロファイル選択欄811、出力プロファイル選択欄812、調整対象色空間選択欄830、目標受付領域840、「画像から指定」ボタン841、追加ボタン842、削除ボタン843、調整データ選択欄845、チャート印刷ボタン846、測色ボタン847、調整範囲指定欄850、インテント指定欄860、調整実施ボタン870、履歴ロードボタン881、及び、履歴セーブボタン882を有している。
【0051】
ホスト装置100は、上述した欄、及び、ボタンへの操作を入力装置115により受け付け(S110)、調整実施ボタン870への操作を受け付けると処理をS120に進める。S110の処理は、以下の処理S111〜S115を含んでいる。
(S111)調整対象の入力プロファイル610と色変換用の出力プロファイル620の指定を受け付ける処理。
(S112)CMYK色空間(CS1)、cmyk色空間(CS2)、及び、PCS CS3の中からいずれか一つを調整対象色空間CS6として受け付ける処理。
(S113)調整対象色空間CS6の座標を基準として調整点P0における調整目標T0の入力を受け付ける処理。
(S114)CMYK色空間(CS1)において調整対象の入力プロファイル610のうち目標T0に基づいて調整する調整範囲A0(図13参照)の指定を受け付ける処理。
(S115)調整対象の入力プロファイル610の対応関係を規定するための複数のレンダリングインテントの中からいずれか一つを指定インテントとして受け付ける処理。
【0052】
まず、図7を参照して、S111の処理を説明する。
ホスト装置100は、入力装置115による入力プロファイル選択欄811への操作を受け付けると、記憶装置114に記憶されている入力プロファイル610の一覧を表示装置130に表示させることが可能である。ホスト装置100は、表示された入力プロファイル610の一覧から一つの入力プロファイルを調整対象として入力装置115により受け付ける。
また、ホスト装置100は、入力装置115による出力プロファイル選択欄812への操作を受け付けると、記憶装置114に記憶されている出力プロファイル620の一覧を表示装置130に表示させることが可能である。ホスト装置100は、表示された出力プロファイル620の一覧から一つの出力プロファイルを色変換用として入力装置115により受け付ける。
【0053】
次に、図7を参照して、S112の処理を説明する。
図7に示す調整対象色空間選択欄830の複数の選択項目には、「入力データ」と「出力データ」と「PCS値」が含まれる。「入力データ」は、CMYK色空間(CS1)を調整対象色空間CS6として選択する項目である。「出力データ」は、cmyk色空間(CS2)を調整対象色空間CS6として選択する項目である。「PCS値」は、Lab色空間(CS3)を調整対象色空間CS6として選択する項目である。ホスト装置100は、入力装置115により「入力データ」と「出力データ」と「PCS値」の中からいずれか一つを調整対象色空間CS6として受け付ける。
尚、調整対象色空間選択欄830に「入力データ」と「出力データ」と「PCS値」の一部が無くてもよい。むろん、予め、調整対象色空間CS6がCMYK色空間(CS1)とcmyk色空間(CS2)とPCS CS3のいずれか一つに決められていてもよい。
【0054】
さらに、図7,13を参照して、S113の処理を説明する。
ホスト装置100は、上述した調整対象色空間選択欄830における選択に応じて目標受付領域840の入力項目を変える処理を行っている。また、ホスト装置100は、調整データ選択欄845への選択に応じて目標受付領域840の入力項目を変える処理を行っている。調整データ選択欄845においては、「絶対値」と「相対値」のいずれか一方を選択可能である。「絶対値」は、調整目標T0を色空間の座標値として受け付ける選択肢である。「相対値」は、調整目標T0を色空間の現在の座標値からの差分として受け付ける選択肢である。
【0055】
まず、調整データ選択欄845において「PCS値」の指定が受け付けられた場合、すなわち、調整対象色空間CS6がPCS CS3である場合、以下の処理が行われる。
ホスト装置100は、調整データ選択欄845において「相対値」を受け付けると、図7に示すように、PCS CS3の現在の座標値からの相対値(ΔLabT-pとする。)としての調整目標T0の座標値(ΔL,Δa,Δb)の入力欄を目標受付領域840に表示させる。また、ホスト装置100は、調整データ選択欄845において「絶対値」を受け付けると、PCS CS3の現在の座標値(C_L,C_a,C_bとする。)の表示欄とともに調整目標T0の座標値(T_L,T_a,T_bとする。)の入力欄を目標受付領域840に表示させる。
【0056】
調整データ選択欄845において「入力データ」の指定が受け付けられた場合、すなわち、調整対象色空間CS6がCMYK色空間(CS1)である場合、以下の処理が行われる。
ホスト装置100は、調整データ選択欄845において「相対値」を受け付けると、CMYK色空間(CS1)の現在の座標値からの相対値(ΔCMYKT-pとする。)としての調整目標T0の座標値(ΔC,ΔM,ΔY,ΔKとする。)の入力欄を目標受付領域840に表示させる。また、ホスト装置100は、調整データ選択欄845において「絶対値」を受け付けると、CMYK色空間(CS1)の現在の座標値(C_C,C_M,C_Y,C_Kとする。)の表示欄とともに調整目標T0の座標値(T_C,T_M,T_Y,T_Kとする。)の入力欄を目標受付領域840に表示させる。
【0057】
調整データ選択欄845において「出力データ」の指定が受け付けられた場合、すなわち、調整対象色空間CS6がcmyk色空間(CS2)である場合、以下の処理が行われる。
ホスト装置100は、調整データ選択欄845において「相対値」を受け付けると、cmyk色空間(CS2)の現在の座標値からの相対値(ΔcmykT-pとする。)としての調整目標T0の座標値(Δc,Δm,Δy,Δkとする。)の入力欄を目標受付領域840に表示させる。また、ホスト装置100は、調整データ選択欄845において「絶対値」を受け付けると、cmyk色空間(CS2)の現在の座標値(C_c,C_m,C_y,C_kとする。)の表示欄とともに調整目標T0の座標値(T_c,T_m,T_y,T_kとする。)の入力欄を目標受付領域840に表示させる。
【0058】
図13に示すように、調整目標T0を設定するための調整点P0は、CMYK色空間(CS1)に設定される。ここで、CMYK色空間は4次元の色空間であるため、図13ではC軸とM軸とY軸とで形成される3次元の仮想空間を示している。尚、図13では調整点P0として2箇所の調整点P01,P02が示されているが、設定される調整点P0の数は、1点でもよいし、3点以上でもよい。例えば、ホスト装置100は、図7に示すUI画面800の「画像から指定」ボタン841の操作を受け付けると、CMYK色空間(CS1)を模式的に表す画面を表示装置130に表示させ、入力装置115による操作に応じたCMYK値を取得して目標受付領域840の情報を更新する。新たな調整点P0が指定されると、ホスト装置100は、対応するID(識別情報)を付与し、取得したCMYK値、及び、該CMYK値から求められるLab値等をIDに対応させて目標受付領域840に表示させる。追加ボタン842が操作されると、ホスト装置100は、IDを追加し、目標受付領域840に追加したIDに対応する入力欄を増やす。削除ボタン843が操作されると、ホスト装置100は、削除するIDの指定を受け付け、指定されたIDに対応する入力欄を削除する。
【0059】
また、ホスト装置100は、チャート印刷ボタン846の操作を受け付けると、各調整点P0の色を表すカラーパッチを有するカラーチャートCH1の印刷データを生成してプリンター200に送信する。この印刷データを受信したプリンター200は、各調整点P0の色を表すカラーパッチを有するカラーチャートCH1を被印刷物ME1に印刷する。
【0060】
さらに、ホスト装置100は、測色ボタン847の操作を受け付けると、カラーチャートCH1の各パッチの測色を測色装置120に指示する。この指示を受信した測色装置120は、カラーチャートCH1の各パッチを測色し、各パッチの測色値Labpをホスト装置100に送信する。測色値Labpを受信したホスト装置100は、測色値Labpを表示装置130に表示させてもよいし、プリンター200に印刷させてもよい。ユーザーは、出力された測色値Labpを見て目標受付領域840に調整目標T0を入力することができる。また、ホスト装置100は、各パッチの測色値Labpを目標T0の入力欄に自動的に入力してもよい。調整目標T0が相対値(ΔL,Δa,Δb)である場合、ホスト装置100は、現在の測色値Labpに対する目標の測色値LabTの各成分L,a,bの差分を計算して目標T0の入力欄に自動的に入力してもよい。
【0061】
さらに、ホスト装置100は、履歴ロードボタン881の操作を受け付けると、記憶装置114に記憶されている調整履歴を読み出して目標受付領域840に追加する。履歴セーブボタン882の操作が受け付けられると、ホスト装置100は、目標受付領域840の情報を調整履歴として記憶装置114に記憶する。
【0062】
さらに、図7,13を参照して、S114の処理を説明する。
ホスト装置100は、調整範囲指定欄850において調整点P0を基点とした半径(Radius)の入力を受け付ける。この半径は、例えば、第一の色空間CS1におけるユークリッド距離の相対値0〜100%で表現される。これにより、第一の色空間CS1において入力プロファイル610のうち調整範囲A0が指定される。尚、本願において、「Min〜Max」は、最小値Min以上、且つ、最大値Max以下を意味する。
図13には、半径(Radius)が指定された場合の調整範囲A0の例が模式的に示されている。調整範囲A0は、各調整点P0に設定される。図13に示す例では、調整点P01に調整範囲A01が設定され、調整点P02に調整範囲A02が設定されていることが示されている。ホスト装置100は、目標受付領域840において、各調整点P0の調整範囲A0の入力を受け付けることが可能である。
【0063】
さらに、図7を参照して、S115の処理を説明する。
ホスト装置100は、入力プロファイル610の対応関係を規定するためのレンダリングインテントの指定をインテント指定欄860において受け付ける。図7に示すインテント指定欄860の複数の指定項目は、図示を省略しているが、「Perceptual」(知覚的)、「Relative Colorimetric」(相対的測色的)、及び、「Saturation」(彩度重視)の3種類である。むろん、指定項目に「Absolute Colorimetric」(絶対的測色的)が含まれてもよいし、「Perceptual」と「Relative Colorimetric」と「Saturation」の内の一部が指定項目に無くてもよい。図7には、指定インテントとして「Perceptual」が指定されている例が示されている。
【0064】
ホスト装置100は、図7に示す調整実施ボタン870の操作を受け付けると、目標受付領域840に入力された各調整点P0について、現在の出力値である調整対象カラー値cmykpを取得する(S120)。これは、被印刷物ME1に形成される出力画像IM0の色に対応する出力色(cmykp)を基準として調整を行うためである。
【0065】
ここで、プロファイル(例えばICCプロファイル)に従った変換をficc(第1引き数,第2引き数,第3引き数)で表すことにする。第1引き数は、使用するプロファイルを表す。第1引き数において、InputProfileが入力プロファイルを表し、OutputProfileが出力プロファイルを表すことにする。第2引き数は、第1引き数で表されるプロファイルにおいて使用する色変換テーブルを表す。第2引き数において、A2Bがデバイスカラーからデバイス非依存カラーへの変換を表し、B2Aがデバイス非依存カラーからデバイスカラーへの変換を表すことにする。第3引き数は、調整点P0の入力値(CMYK、RGB、Lab、等)を表す。
【0066】
入力プロファイル610において、各調整点P0の入力値はCMYK値CMYKin(各成分をCp,Mp,Yp,Kpとする。)である。入力プロファイル610に従って得られるPCS値LabS1は、以下の式により算出することができる。
LabS1=ficc(InputProfile,A2B,CMYKin
現在の出力値である調整対象カラー値cmykp(各成分をcp,mp,yp,kpとする。)は、以下の式により算出することができる。
cmykp=ficc(OutputProfile,B2A,LabS1
=ficc(OutputProfile,B2A,ficc(InputProfile,A2B,CMYKin))
【0067】
調整対象カラー値cmykpの取得後、ホスト装置100は、目標受付領域840に入力された各調整点P0について、目標出力値である目標カラー値cmykTを求める(S122)。
【0068】
調整対象色空間CS6がCMYK色空間(CS1)である場合、調整目標T0の絶対値T_C,T_M,T_Y,T_K(CMYKTとする。)があれば、以下の式により目標カラー値cmykTを求める。
cmykT=ficc(OutputProfile,B2A,ficc(InputProfile,A2B,CMYKT))
調整目標T0の相対値ΔCMYKT-pがあれば、入力値CMYKinと併せて、以下の式により目標カラー値cmykTを求める。
cmykT
=ficc(OutputProfile,B2A,ficc(InputProfile,A2B,CMYKin+ΔCMYKT-p))
【0069】
調整対象色空間CS6がcmyk色空間(CS2)である場合、調整目標T0の絶対値T_c,T_m,T_y,T_kがあれば、これが目標カラー値cmykTである。
調整目標T0の相対値ΔcmykT-pがあれば、入力値CMYKinと併せて、以下の式により目標カラー値cmykTを求める。
cmykT
=ficc(OutputProfile,B2A,ficc(InputProfile,A2B,CMYKin))+ΔcmykT-p
【0070】
調整対象色空間CS6がPCS CS3である場合、調整目標T0の絶対値T_L,T_a,T_b(LabTとする。)があれば、以下の式により目標カラー値cmykTを求める。
cmykT=ficc(OutputProfile,B2A,LabT
調整目標T0の相対値ΔLabT-pがあれば、入力値CMYKinと併せて、以下の式により目標カラー値cmykTを求める。
cmykT
=ficc(OutputProfile,B2A,ficc(InputProfile,A2B,CMYKin)+ΔLabT-p
【0071】
以上のようにして、ホスト装置100は、各調整点P0についてcmyk色空間(CS2)の座標を基準とした調整目標T0(cmykT)を取得する。
【0072】
S122の処理後、ホスト装置100は、図8に示す最適化処理を行う。この最適化処理は、最適化工程ST2、最適化機能FU2、及び、最適化部U2に対応している。本具体例では、S210の解探索処理に準ニュートン法におけるBFGS法(Broyden-Fletcher-Goldfarb-Shanno method)を用いている。むろん、BFGS法以外の準ニュートン法、例えば、DFP法等をS210の解探索処理に用いることも可能である。また、準ニュートン法以外にも、ニュートン法、共役勾配法、等をS210の解探索処理に用いることが可能である。
図8に示す最適化処理が開始されると、ホスト装置100は、出力プロファイル620のA2Bテーブル622に従って目標カラー値cmykTをPCS値LabS2(基準座標値の例)に変換する(S202)。このPCS値LabS2は、図9に例示するように暫定PCS値LabpS1の初期値Lab0となる。
【0073】
次のS204において、ホスト装置100は、上記初期値Lab0に基づいて、暫定PCS値LabpS1の初期値Labiを設定する。ここでの変数iは、前記初期値を識別する変数である。
【0074】
図9は、暫定PCS値LabpS1の初期値Labiを変える例を模式的に例示している。図9中、ハッチングを付した丸印は基準座標値Lab1=LabS2の位置(L0,a0,b0)を示している。ここで、初期値の相対値ΔLabiの各成分を(ΔLi,Δai,Δbi)で表すことにする。初期値Labiの位置は、(L0+ΔLi,a0+Δai,b0+Δbi)となる。基準座標値Lab1の相対値は、(ΔLi,Δai,Δbi)=(0,0,0)である。本具体例では、基準座標値(L0,a0,b0)を中心として、L値を±SL(SL>0)、a値を±Sa(Sa>0)、及び、b値を±Sb(Sb>0)ずらした2×2×2=8個も初期値Labiにしている。計9個の初期値Labiの相対値(ΔLi,Δai,Δbi)は、以下の通りとなる。
(ΔLi,Δai,Δbi)=( 0, 0, 0)
(ΔLi,Δai,Δbi)=(+SL,+Sa,+Sb)
(ΔLi,Δai,Δbi)=(+SL,+Sa,−Sb)
(ΔLi,Δai,Δbi)=(+SL,−Sa,+Sb)
(ΔLi,Δai,Δbi)=(+SL,−Sa,−Sb)
(ΔLi,Δai,Δbi)=(−SL,+Sa,+Sb)
(ΔLi,Δai,Δbi)=(−SL,+Sa,−Sb)
(ΔLi,Δai,Δbi)=(−SL,−Sa,+Sb)
(ΔLi,Δai,Δbi)=(−SL,−Sa,−Sb)
むろん、初期値の数は、27個、81個、等、8個に限定されない。
【0075】
尚、PCS CS3においてL値のとり得る範囲は、限定されないが、0〜100(0≦L≦100)とすることができる。PCS CS3においてa値とb値のとり得る範囲は、限定されないが、−128〜127(−128≦a≦127、−128≦b≦127)とすることができる。
基準座標値Lab1を囲む初期値の間隔2×SL,2×Sa,2×Sbは、例えば、PCS値のとりうる範囲の5〜20%程度とすることができる。式で表すと、以下の通りとなる。
0.05×100≦2×SL≦0.2×100
0.05×255≦2×Sa≦0.2×255
0.05×255≦2×Sb≦0.2×255
初期値の間隔2×SL,2×Sa,2×SbをPCS値のとりうる範囲の5〜20%程度にすると、最適解Labbを効率よく決定することができる。
【0076】
暫定PCS値LabpS1の初期値Labiの設定後、ホスト装置100は、解探索処理を行う(S210)。この解探索処理では、S214〜S224の処理を繰り返し行う。
【0077】
まず、S214において、ホスト装置100は、調整対象PCS値LabS1を変化させた暫定PCS値LabpS1を出力プロファイル620のB2Aテーブル621に従って暫定カラー値cmykppに変換する。式で表すと、以下の通りとなる。
cmykpp=ficc(OutputProfile,B2A,LabpS1
図2では、調整目標T0に合わせるために調整対象PCS値LabS1に加える変化値を調整PCS値ΔLabと表している。
LabpS1=LabS1+ΔLab
【0078】
次のS216において、ホスト装置100は、cmyk色空間(CS2)を基準として、暫定カラー値cmykppと目標カラー値cmykTとのユークリッド距離Dの二乗を算出する。ここで、cmyk色空間(CS2)の各要素色cmykについて、暫定カラー値cmykppと目標カラー値cmykTとの差をそれぞれDc,Dm,Dy,Dkとする。前記ユークリッド距離Dは、以下の式で表される。
D=(Dc2+Dm2+Dy2+Dk21/2
尚、差Dc,Dm,Dy,Dkの少なくとも一部に係数を乗じて重みを異ならせてもよい。
【0079】
S216の処理においてユークリッド距離Dの二乗D2=Dc2+Dm2+Dy2+Dk2を用いることにより、ユークリッド距離Dに含まれる平方根の演算が無くなり、解探索処理が高速化される。目的関数y=f(LabpS1)は、各要素色cmykについて暫定カラー値cmykppと目標カラー値(cmykT)との差Dc,Dm,Dy,Dkの二乗Dc2,Dm2,Dy2,Dk2)を含む。これにより、目的関数y=f(LabpS1)は、調整対象PCS値LabS1を変化させた暫定PCS値LabpS1をB2Aテーブル621に従って変換して得られる暫定カラー値cmykppを調整目標T0(cmykT)に近付ける要素を含むことになる。
【0080】
尚、解探索処理により多くの時間がかかるものの、ユークリッド距離の二乗D2の代わりにユークリッド距離D自体を目的関数y=f(LabpS1)に含めてもよい。また、ユークリッド距離の二乗D2の代わりに、c値の差の絶対値とm値の差の絶対値とy値の差の絶対値とk値の差の絶対値の総和などを用いてもよい。
【0081】
次のS218において、ホスト装置100は、暫定PCS値LabpS1と基準座標値LabS2との色差の二乗を算出する。上述したように、基準座標値LabS2は、目標カラー値cmykTをA2Bテーブル622に従って変換して得られるPCS値である。ここで、色差には、CIEDE2000色差式で表される色差ΔE00、CIE1994年色差式で表される色差ΔE*94、1976年に提案されたCIE L***表色系による色差ΔE*ab(いわゆるΔE*76)、CIE L***表色系による色差ΔE*uv、等が含まれる。本具体例では、色差にΔE00を用いることにする。
S218の処理において色差の二乗ΔE002を用いることにより、色差ΔE00に含まれる平方根の演算が無くなり、解探索処理が高速化される。色差の二乗ΔE002は、目的関数y=f(LabpS1)に含まれる。
【0082】
尚、解探索処理により多くの時間がかかるものの、色差の二乗ΔE002の代わりに色差ΔE00自体を目的関数y=f(LabpS1)に含めてもよい。また、色差ΔE00の代わりに、色差ΔE*ab、L値の差の絶対値とa値の差の絶対値とb値の差の絶対値の総和、等を用いてもよい。
【0083】
次のS220において、ホスト装置100は、Lab値(機器独立座標値の例)のとり得る範囲の制約条件に基づくコストCを算出する。暫定PCS値LabpS1は、Lab値のとり得る範囲の範囲に収まるべきだからである。ここで、暫定PCS値LabpS1の各成分を(LpS1,apS1,bpS1)で表すことにする。コストCは、例えば、以下の式に従って算出することができる。
pS1<0である場合、 C=−LpS1×Cco
pS1>100である場合、 C=(LpS1−100)×Cco
pS1<−128である場合、C=(−128−apS1)×Cco
pS1>127である場合、 C=(apS1−127)×Cco
pS1<−128である場合、C=(−128−bpS1)×Cco
pS1>127である場合、 C=(bpS1−127)×Cco
上記以外の場合、 C=0
ただし、係数Ccoは正の数であり、Lab値のとり得る範囲と比べて十分に大きい数である103≦Cco≦109程度が好ましい。
上記コストCが目的関数y=f(LabpS1)に含まれると、暫定PCS値LabpS1の範囲の制約条件にLab値のとり得る範囲が適用された最適化処理が行われる。
【0084】
また、コストCには、機器独立座標値のとり得る範囲以外の要素が含まれてもよい。例えば、或る暫定PCS値LabpS1についてS214〜S220の処理を行った場合にエラーが生じる場合、コストCに103〜109程度の値を加算してもよい。
【0085】
次のS222において、ホスト装置100は、ユークリッド距離の二乗D2、色差の二乗ΔE002、及び、コストCを含む目的関数y=f(LabpS1)を計算する。目的関数y=f(LabpS1)は、例えば、以下の式で表される。
y=D2+w×ΔE002+C
ただし、係数wは、正の数である。B2Aテーブル621は3次元のLab色空間の座標値を4次元のcmyk色空間の座標値に変換する色変換テーブルであるため、4変数の目標カラー値cmykTとなる適切な3変数の解(最適解候補Labpb)が見つからない可能性がある。この点で、係数wは、1≦w≦10程度が好ましい。
【0086】
上述したS214〜S222の処理は、目的関数y=f(LabpS1)を極小値にする解(最適解候補Labpb)が見つかるまで繰り返される(S224)。最初にS224の処理が行われる場合は目的関数y=f(LabpS1)が極小値であるか否かを判断することができないため、ホスト装置100は、暫定PCS値LabpS1を微小量変えたうえ処理をS214に戻す。以後、ホスト装置100は、暫定PCS値LabpS1を微小量変えながらS214〜S224の処理を繰り返す。ホスト装置100は、目的関数y=f(LabpS1)を極小値にする解を見つけると、この解を最適解候補LabpbとしてS210の解探索処理を終了させる。
【0087】
ホスト装置100は、暫定PCS値LabpS1の初期値Labiを全て設定するまでS204〜S210の処理を繰り返す(S230)。これにより、初期値Labi毎に最適解候補Labpbが求められる。
【0088】
次のS232において、ホスト装置100は、複数の最適解候補Labpbに基づいて最適解Labbを決定する処理を行う。例えば、色再現域表面付近ではマッピングによる写像の影響を受けるため、解探索処理で得られる最適解候補が離散的になることがある。そこで、複数の最適解候補Labpbの内、最適解Labbとして不適切な解を除く必要がある。
【0089】
図10は、S232で行われる最適解決定処理を例示している。
最適解決定処理が開始されると、ホスト装置100は、複数の最適解候補Labpbの内、PCS値Labpbで表される色が有彩色である最適解候補を抽出する(S252)。ここで、最適解候補Labpbにおいて、a値をapb、b値をbpbとする。図11に例示するように、最適解候補Labpbで表される色は、|apb|>Ta(Ta>0)、又は、|bpb|>Tb(Tb>0)である場合に有彩色と定義することができる。この場合、|apb|≦Ta、且つ、|bpb|≦Tbである色は無彩色である。閾値Ta,Tbは、例えば、1≦Ta≦5程度、及び、1≦Tb≦5程度とすることができる。図11において、座標Z0は基準座標値LabS2の座標であり、座標Z1は無彩色の最適解候補の座標である。最適解候補の座標Z2,Z3,Z4は有彩色の座標であるので、座標Z2,Z3,Z4の最適解候補が抽出される。
【0090】
次のS254において、ホスト装置100は、有彩色の最適解候補Labpbの内、基準座標値LabS2と色相平面(a−b平面)の象限が異なる最適解候補を除外する。図11において、基準座標値LabS2の座標Z0は第1象限にある。最適解候補の座標Z2は第1象限にあるので、座標Z2の最適解候補は除外されずに残る。最適解候補の座標Z3は第2象限にあり、最適解候補の座標Z4は第4象限にあるので、座標Z3,Z4の最適解候補は除外される。
【0091】
次のS256において、ホスト装置100は、最適解候補Labpbが残っているか否かに応じて処理を分岐させる。S256の判定基準は、最適解候補Labpbが最適解Labbを得るために適しているか否かを判断するための所定の判定基準に含まれる。S210の解探索処理により得られた複数の最適解候補Labpbに無彩色の最適解候補(例えば座標Z1の最適解候補)があるか、又は、基準座標値LabS2と同じ象限の有彩色の最適解候補(例えば座標Z2の最適解候補)がある場合、S258に処理が進められる。
【0092】
上記S258において、ホスト装置100は、残っている最適解候補Labpbの内、座標が入力プロファイル610の色再現域外にある最適解候補を除外する。調整対象の入力プロファイル610は、ターゲット印刷機300に依存する色再現域を考慮する必要があるためである。最適解候補Labpbの座標が入力プロファイル610の色再現域の内にあるか外にあるかの判定は、例えば、入力プロファイル610のB2Aテーブルに従ってPCS値LabpbをCMYK値(CMYKpbとする。)に変換し、今度は入力プロファイル610のA2Bテーブル611に従ってCMYK値CMYKpbをPCS値(LabSpbとする。)に変換し、得られたPCS値LabSpbと元のPCS値Labpbとの色差(例えばΔE00)が閾値(Ethとする。)を超えたか否かを判断することにより行うことができる。閾値Ethは、正数であり、特に限定されないが、例えば、1.0〜3.0程度に設定することができる。例えば、ΔE00>Ethである場合に色再現域外と判定し、ΔE00≦Ethである場合に色再現域内と判定することができる。尚、Lab値Labpbがターゲット印刷機300の色再現域外にある場合、Lab値LabpbからCMYK値CMYKpbへの変換がターゲット印刷機300の色再現域内に圧縮される。このことから、PCS値LabSpb,Labpbの色差と閾値Ethとを比較することにより、色再現域の内外の判定を行うことができる。
【0093】
むろん、色再現域の内外の判定は、上述した方法に限定されず、例えば、特開平7-254995号公報に開示される方法等でもよい。例えば、この公報の段落0150〜0171には、明度Lに応じてプリンターの色再現域をa−b平面(互いに直交するa軸及びb軸により定まる平面)において表し、対象の明度において対象データがa−b平面の閉領域に含まれるか否かを判定することにより、色再現域の内外を判定することが示されている。
【0094】
次のS260において、ホスト装置100は、最適解候補Labpbが残っているか否かに応じて処理を分岐させる。S260の判定基準は、最適解候補Labpbが最適解Labbを得るために適しているか否かを判断するための所定の判定基準に含まれる。S256の判断処理で残った最適解候補Labpbに入力プロファイル610の色再現域内の最適解候補がある場合、S262に処理が進められる。
【0095】
上記S262において、ホスト装置100は、S210の解探索処理において計算された目的関数y=D2+w×ΔE002+Cの値が最も小さくなった場合の最適解候補Labpbを最適解Labbに決定し、最適解決定処理を終了させる。
得られる解Labbは、暫定カラー値cmykppを目標カラー値cmykT=cmykp+ΔcmykT-pに極力近付ける最適解である。最適解Labbを得る際、近いと予測される基準座標値LabS2から最適解Labbが大きくずれることが抑制され、暫定PCS値LabpS1がLab値のとり得る範囲に制約される。このような最適解Labbを用いて入力プロファイル610を調整することにより、色再現精度を向上させることができる。
【0096】
上述したように、B2Aテーブル621は入力が3次元で出力が4次元の色変換テーブルであるため、4変数の目標カラー値cmykTとなる適切な3変数の最適解候補cmykpbが残らない可能性がある。上記S256,S260において最適解候補Labpbが残らなかった場合、ホスト装置100は、基準座標値LabS2を最適解Labbに決定し(S264)、最適解決定処理を終了させる。
【0097】
尚、最適解決定処理において、S254の処理を行う代わりに、基準座標値LabS2とのなす色相角が閾値を超える最適解候補Labpbを除外する処理を行ってもよい。
また、S258〜S260の処理を無くし、入力プロファイル610の色再現域外の最適解候補Labpbを残すことも可能である。
【0098】
図8のS232の処理後、ホスト装置100は、図12に示すプロファイル調整処理を行う。このプロファイル調整処理は、プロファイル調整工程ST3、プロファイル調整機能FU3、及び、プロファイル調整部U3に対応している。ここで、インテント指定欄860で「Perceptual」(知覚的)が指定された場合、ホスト装置100は、S308以降の処理においてプロファイル500のうち図4で示したA2B0タグ、及び、B2A0タグに従った情報を使用する。インテント指定欄860で「Relative Colorimetric」(相対的測色的)が指定された場合、ホスト装置100は、S308以降の処理においてプロファイル500のうち図4で示したA2B1タグ、及び、B2A1タグに従った情報を使用する。インテント指定欄860で「Saturation」(彩度重視)が指定された場合、ホスト装置100は、S308以降の処理においてプロファイル500のうち図4で示したA2B2タグ、及び、B2A2タグに従った情報を使用する。
【0099】
まず、ホスト装置100は、各調整点P0について、調整対象の入力プロファイル610における入力値Input_P、及び、調整目標値TargetOut_Pを取得する(S308)。これは、調整対象の入力プロファイル610における入力値と出力値との対応関係を調整するためである。式としては、以下のように表される。
Input_P=CMYKin
TargetOut_P=Labb
また、入力プロファイル610における現在の出力値CurrentOut_Pは、入力プロファイル610の現在の出力値である調整対象PCS値LabS1である。
CurrentOut_P=LabS1
調整目標T0の相対値をPCS CS3で表すと、TargetOut_P−CurrentOut_Pとなる。
【0100】
入力値Input_P、及び、調整目標値TargetOut_Pの取得後、ホスト装置100は、S310〜S312において、調整目標T0に基づいて調整対象の入力プロファイル610の調整範囲A0を調整する。
【0101】
まず、図14A,14Bを参照して、調整範囲A0において入力プロファイル610を調整する概念を説明する。ここで、図14A,14Bにおいて、横軸は入力色空間CS4の或る座標軸に沿った入力値を示し、縦軸は出力色空間CS5の或る座標軸に沿った出力値を示している。入力色空間CS4がCMYK色空間である場合、横軸は、C軸、M軸、Y軸、又は、K軸となる。出力色空間CS5がLab色空間である場合、縦軸は、L軸、a軸、又は、b軸となる。横軸上の白丸は、格子点GD0を示している。
【0102】
図14Aは、出力値を調整する場合の各格子点GD0の調整量ADを模式的に例示している。ユーザーが指定した調整点P0は、入力値Input_Pに対応している。ユーザーが調整目標T0として調整量AdjustDataを指示すると、入力値Input_Pに対応する現在の出力値CurrentOut_Pに調整量AdjustDataが加えられた調整目標値TargetOut_Pが設定される。
図7で示した調整範囲指定欄850や目標受付領域840への入力により、調整量AdjustDataには調整範囲A0が設定される。基本的には、入力値Input_Pに対する出力値の調整量を最大にして調整範囲A0の境界で調整量を0にするようにしている。ただし、実際の調整は入力プロファイル610の格子点GD0に対して行われるため、設定された調整範囲A0よりも広い範囲まで調整が影響することがある。
【0103】
図14Bは、入力値を調整する場合の各格子点GD0の調整量ADを模式的に例示している。ユーザーが指定した調整点P0は、入力値Input_Pに対応している。ユーザーが調整目標T0として調整量AdjustDataを指示すると、入力値Input_Pに調整量AdjustDataが加えられた入力値Input_P+AdjustDataに対応する出力値がユーザー指定の調整点P0において期待される出力値となる。
【0104】
上述した補正は、CMYK色空間(CS1)の全座標軸、及び、PCS CS3の全座標値について、行われる。
【0105】
次に、図15A,15Bを参照して、調整範囲A0の各格子点GD0に調整量ADを設定する例を説明する。ここで、図15A,15Bにおいて、横軸はCMYK値である入力値を示し、縦軸はcmyk値である出力値の調整量ADを示している。また、横軸上の三角印は調整範囲A0にある格子点(最近傍格子点GDnearestを除く。)を示し、横軸上の四角印は調整範囲A0外の出力値が修正されない格子点を示している。
まず、図15Aに示すように、ホスト装置100は、各調整点P0について、調整点P0に最も近い格子点である最近傍格子点GDnearestに対する出力値の調整量AD1を決定する(図12のS310)。図15Aには、CMYK色空間(CS1)である入力色空間CS4の或る座標軸上に調整点P0(入力値Input_P)が2点指定された場合の出力値の調整量AD1を決定する例を示している。図15Aの例では、入力値Input_Pに対する調整量AdjustDataをそのまま最近傍格子点GDnearestに対する出力値の調整量AD1にしている。むろん、本技術は、最近傍格子点GDnearestに対する出力値の調整量AD1を調整量AdjustDataにすることに限定されない。
【0106】
尚、互いに近傍にある複数の調整点の最近傍格子点GDnearestが同じになることもあり得る。この場合、例えば、入力色空間CS4において最近傍格子点GDnearestから各調整点までの距離に反比例する割合で各調整点の調整量AdjustDataを平均すればよい。
【0107】
最近傍格子点GDnearestに対する出力値の調整量AD1の決定後、図15Bに示すように、ホスト装置100は、調整範囲A0において最近傍格子点GDnearestの周囲にある格子点(三角印の格子点)に対する出力値の調整量AD2を決定する(図12のS312)。例えば、調整範囲A0外の格子点に対する出力値の調整量を0にしておき、上述した各最近傍格子点GDnearestに対する出力値の調整量AD1をAdjustDataにして、4次元の3次スプライン関数による補間演算を行うことにより、周囲の格子点に対する出力値の調整量AD2を決定することができる。このような補間演算を行うことにより、周囲の格子点に対する出力値の調整量AD2が、各最近傍格子点GDnearestに対する出力値の調整量AD1と、調整範囲A0外の格子点に対する出力値の調整量「0」と、の間で滑らかに繋がる。
むろん、本技術は、補間演算にスプライン関数を用いることに限定されない。
【0108】
尚、調整量ADの対象は格子点であるため、複数の調整点が近傍にある場合、これらの調整点の入力色を入力プロファイル610に従って色変換する際に同じ格子点が参照されることがある。このような格子点では、各調整点の調整量AdjustDataが平均化されて調整される。
【0109】
調整範囲A0の各格子点に対する出力値の調整量ADの決定後、ホスト装置100は、決定した調整量ADを調整対象の入力プロファイル610に反映する(図12のS314)。すなわち、調整範囲A0の各格子点について、現在の出力値に調整量ADを加えた値を更新後の出力値として入力プロファイル610に対して書き込めばよい。入力プロファイル610の出力色空間CS5はLab色空間であるので、現在の出力値(Lq,aq,bqとする。)に調整量(ΔLq,Δa,Δbqとする。)に加えた値(Lq+ΔLq,aq+Δaq,bq+Δbq)が更新後の出力値となる。ここでの変数qは、調整範囲A0内の格子点を識別する変数である。
以上のようにして、第二の色空間CS2において現在の調整対象カラー値cmykpが目標カラー値cmykTに近付くように入力プロファイル610の対応関係が調整される。指定インテントに応じた情報が入力プロファイル610にある場合は、指定インテントに応じた対応関係において入力プロファイル610が調整される。
【0110】
入力プロファイル610の更新後、ホスト装置100は、目標受付領域840に入力された各調整点P0について、更新後の入力プロファイル610を用いて現在の調整対象カラー値cmykpを求める(S316)。更新後の調整対象カラー値cmykpは、図6のS120の処理と同じ式を用いて算出することができる。指定インテントに応じた情報がプロファイルにある場合は、指定インテントに応じた情報に従って色変換が行われる。
【0111】
また、ホスト装置100は、目標受付領域840に入力された各調整点P0について、更新後の調整対象カラー値cmykpと目標出力値cmykTとの差分dを求める(S318)。この差分は、例えば、cmyk色空間(CS2)において調整対象カラー値cmykpに対応する点と目標出力値cmykTに対応する点とのユークリッド距離とすることができる。
【0112】
その上で、ホスト装置100は、S308〜S320の繰り返し処理の終了条件が成立したか否かを判断し(S320)、終了条件が成立していない場合にはS308〜S320の処理を繰り返す。終了条件が成立した場合、ホスト装置100は、調整後の入力プロファイル610を記憶装置114に記憶させ、プロファイル調整処理を終了させる。例えば、全調整点P0について差分dが所定の閾値以下である場合に終了条件成立とすることができる。また、規定の回数に達した場合に終了条件成立としてもよい。
【0113】
以上説明したように、出力プロファイル620のB2Aテーブル621を用いる最適化処理により出力値が目標カラー値cmykTに極力近付くように最適解Labbが求められて入力プロファイル610(少なくともA2Bテーブル611)が調整される。最適解Labbに出力プロファイル620のA2Bテーブル622の誤差が入らないので、調整後の入力プロファイル610、及び、出力プロファイル620に従って色変換したときにプリンター200の出力色が意図された色に近付く。従って、本具体例は、機器従属色空間の座標値とPCSの座標値との対応関係を表すプロファイルの色再現精度を向上させることができる。
また、調整後の入力プロファイル610のA2Bテーブル611と出力プロファイル620のB2Aテーブル621とを結合することによりデバイスリンクプロファイル630のデバイスリンクテーブル631を作成することができる。従って、本具体例は、デバイスリンクプロファイルの色再現精度も向上させることができる。
【0114】
(6)変形例:
本発明は、種々の変形例が考えられる。
例えば、出力デバイスは、インクジェットプリンターに限定されず、色材としてトナーを使用するレーザープリンターといった電子写真方式のプリンター、3次元プリンター、表示装置、等でもよい。
画像を形成する色材の種類は、C,M,Y,Kに限定されず、C,M,Y,Kに加えて、Lc、Lm、Yよりも高濃度のDY(ダークイエロー)、Or(オレンジ)、Gr(グリーン)、Kよりも低濃度のLk(ライトブラック)、画質向上用の無着色の色材、等を含んでもよい。
むろん、第二の色空間は、cmyk色空間に限定されず、CMY色空間、RGB色空間、等でもよい。
ターゲットデバイスは、ターゲット印刷機に限定されず、表示装置等でもよい。
むろん、第一の色空間は、CMYK色空間に限定されず、CMY色空間、RGB色空間、等でもよい。
【0115】
上述した処理は、順番を入れ替える等、適宜、変更可能である。例えば、図8の最適化処理において、S216のユークリッド距離の二乗D2を算出する処理は、S218,S220のいずれの処理の後において行うことが可能である。また、図10の最適解決定処理において、S252〜S256の処理をS258〜S260の処理の後において行うことが可能である。
【0116】
また、S220のコストCを算出する処理を行わず、S222の計算処理において目的関数y=D2+w×ΔE002を計算してもよい。この場合でも、S232の最適解決定処理において複数の初期値Labiのそれぞれから得られる目的関数yの値が最も小さくなった場合の最適解候補Labpbを最適解Labbに決定すれば、入力プロファイル610の色再現精度が向上する。
さらに、S218の色差の二乗ΔE002を算出する処理を行わず、S222の計算処理において目的関数y=D2、又は、y=D2+Cを計算してもよい。この場合でも、S232の最適解決定処理において複数の初期値Labiのそれぞれから得られる目的関数yの値が最も小さくなった場合の最適解候補Labpbを最適解Labbに決定すれば、入力プロファイル610の色再現精度が向上する。
さらに、暫定PCS値LabpS1の初期値Labiを基準座標値Lab1など一つにしても、目標カラー値cmykTに極力近いcmyk値となるようなPCS値の最適解Labbが得られる。この最適解Labbを使用して入力プロファイル610を調整することにより、入力プロファイル610の色再現精度が向上する。
【0117】
(7)結び:
以上説明したように、本発明によると、種々の態様により、機器従属色空間の座標値とプロファイル接続空間の座標値との対応関係を表すプロファイルの色再現精度を向上させることが可能な技術等を提供することができる。むろん、独立請求項に係る構成要件のみからなる技術でも、上述した基本的な作用、効果が得られる。
また、上述した例の中で開示した各構成を相互に置換したり組み合わせを変更したりした構成、公知技術及び上述した例の中で開示した各構成を相互に置換したり組み合わせを変更したりした構成、等も実施可能である。本発明は、これらの構成等も含まれる。
【符号の説明】
【0118】
100…ホスト装置(プロファイル調整装置の例)、114…記憶装置、115…入力装置、120…測色装置、130…表示装置、200…プリンター(出力デバイスの例)、300…ターゲット印刷機、400…RIP、500…プロファイル、523…プライベートタグ、610…入力プロファイル、611…A2Bテーブル、620…出力プロファイル、621…B2Aテーブル(第一変換テーブルの例)、622…A2Bテーブル(第二変換テーブルの例)、630…デバイスリンクプロファイル、631…デバイスリンクテーブル、800…UI画面、811…入力プロファイル選択欄、812…出力プロファイル選択欄、830…調整対象色空間選択欄、840…目標受付領域、841…「画像から指定」ボタン、842…追加ボタン、843…削除ボタン、845…調整データ選択欄、846…チャート印刷ボタン、847…測色ボタン、850…調整範囲指定欄、860…インテント指定欄、870…調整実施ボタン、881…履歴ロードボタン、882…履歴セーブボタン、A0…調整範囲、CH0,CH1…カラーチャート、CS1…第一の色空間(第一機器従属色空間)、CS2…第二の色空間(第二機器従属色空間)、CS3…プロファイル接続空間、CS4…入力色空間、CS5…出力色空間、CS6…調整対象色空間、GD0,GD1,GD2,GD3…格子点、GDnearest…最近傍格子点、P0…調整点、PR0…プロファイル調整プログラム、
ST1…目標取得工程、ST2…最適化工程、ST3…プロファイル調整工程、SY1…プロファイル調整システム、T0…目標。
図1
図2
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