(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前進から中立を介する前進への前後進切替え指示、または後進から中立を介する後進への前後進切替え指示が前記前後進切替え指示部により行われた場合には、前記コントローラーは、前記クラッチ入出力回転数比率が前記所定の範囲に入っているか否かにかかわらず、前記第一種クラッチ接続圧力カーブを利用して前記制御を行うことを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の作業車両。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述された従来の作業車両においては、車体の動きの変化時において運転者に与える違和感が少ない好ましい体感フィーリングが十分に実現されないリスクがある。
【0005】
そして、本発明者は、このような違和感は停止している車体が発進する場合における標準的な体感フィーリングとの比較における体感フィーリングの差異に起因することに気付いた。
【0006】
本発明は、上述された従来の課題を考慮し、車体の動きの変化時において運転者に与える違和感が少ない好ましい体感フィーリングを実現する作業車両を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の本発明は、油圧式の前後進クラッチにより車体の前後進を切替えるための前後進切替え指示を行う前後進切替え指示部と、
前記前後進クラッチの入力側のクラッチ入力回転数を検出するクラッチ入力回転数検出センサーと、
前記前後進クラッチの出力側のクラッチ出力回転数を検出するクラッチ出力回転数検出センサーと、
経過時間に対応して前記前後進クラッチのクラッチ接続圧力を変化させるための制御を行うコントローラーと、
を備え、
前進から中立を介する後進への前後進切替え指示、または後進から中立を介する前進への前後進切替え指示が前記前後進切替え指示部により行われた場合には、前記コントローラーは、前記クラッチ出力回転数の前記クラッチ入力回転数に対するクラッチ入出力回転数比率が所定の範囲に入っているか否かを判断し、
前記クラッチ入出力回転数比率が前記所定の範囲に入っている場合には、あらかじめ定められた第一種クラッチ接続圧力カーブを利用して前記制御を行い、
前記クラッチ入出力回転数比率が前記所定の範囲に入っていない場合には、あらかじめ定められた第二種クラッチ接続圧力カーブを利用して前記制御を行い、前記制御を行いながら、前記クラッチ入出力回転数比率が前記所定の範囲に入っているか否かを判断し、前記クラッチ入出力回転数比率が前記所定の範囲に入った場合には、前記第一種クラッチ接続圧力カーブを利用して前記制御を行うことを特徴とする作業車両である。
【0008】
これにより、前進から中立を介する後進への前後進切替え指示、または後進から中立を介する前進への前後進切替え指示が前後進切替え指示部により行われた場合には、コントローラーは、クラッチ入出力回転数比率が所定の範囲に入っていない場合には、あらかじめ定められた第二種クラッチ接続圧力カーブを利用して制御を行い、制御を行いながら、クラッチ入出力回転数比率が所定の範囲に入っているか否かを判断し、クラッチ入出力回転数比率が所定の範囲に入った場合には、第一種クラッチ接続圧力カーブを利用して制御を行うので、車体の動きの変化時において運転者に与える違和感が少ない好ましい体感フィーリングを実現することができる。
【0009】
第2の本発明は、油圧式の前後進クラッチにより車体の前後進を切替えるための前後進切替え指示を行う前後進切替え指示部と、
前記前後進クラッチの入力側のクラッチ入力回転数を検出するクラッチ入力回転数検出センサーと、
前記前後進クラッチの出力側のクラッチ出力回転数を検出するクラッチ出力回転数検出センサーと、
経過時間に対応して前記前後進クラッチのクラッチ接続圧力を変化させるための制御を行うコントローラーと、
を備え、
中立から前進への前後進切替え指示、または中立から後進への前後進切替え指示が前記前後進切替え指示部により行われた場合には、前記コントローラーは、前記クラッチ出力回転数の前記クラッチ入力回転数に対するクラッチ入出力回転数比率が所定の範囲に入っているか否かを判断し、
前記クラッチ入出力回転数比率が前記所定の範囲に入っている場合には、あらかじめ定められた第一種クラッチ接続圧力カーブを利用して前記制御を行い、
前記クラッチ入出力回転数比率が前記所定の範囲に入っていない場合には、あらかじめ定められた第二種クラッチ接続圧力カーブを利用して前記制御を行い、前記制御を行いながら、前記クラッチ入出力回転数比率が前記所定の範囲に入っているか否かを判断し、前記クラッチ入出力回転数比率が前記所定の範囲に入った場合には、前記第一種クラッチ接続圧力カーブを利用して前記制御を行うことを特徴とする作業車両である。
【0010】
これにより、中立から前進への前後進切替え指示、または中立から後進への前後進切替え指示が前後進切替え指示部により行われた場合には、コントローラーは、クラッチ入出力回転数比率が所定の範囲に入っていない場合には、あらかじめ定められた第二種クラッチ接続圧力カーブを利用して制御を行い、制御を行いながら、クラッチ入出力回転数比率が所定の範囲に入っているか否かを判断し、クラッチ入出力回転数比率が所定の範囲に入った場合には、第一種クラッチ接続圧力カーブを利用して制御を行うので、車体の動きの変化時において運転者に与える違和感が少ない好ましい体感フィーリングを実現することができる。
【0011】
第3の本発明は、前記第一種クラッチ接続圧力カーブは、停止している前記車体を前進または後進させる場合に利用されるカーブであり、
前記第二種クラッチ接続圧力カーブは、前記経過時間に対応して増加するカーブであることを特徴とする第1または第2の本発明の作業車両である。
【0012】
これにより、第二種クラッチ接続圧力カーブは、経過時間に対応して増加するカーブであるので、簡素な構成で好ましい体感フィーリングを実現することができる。
【0013】
第4の本発明は、前進から中立を介する前進への前後進切替え指示、または後進から中立を介する後進への前後進切替え指示が前記前後進切替え指示部により行われた場合には、前記コントローラーは、前記クラッチ入出力回転数比率が前記所定の範囲に入っているか否かにかかわらず、前記第一種クラッチ接続圧力カーブを利用して前記制御を行うことを特徴とする第1から第3のいずれかの本発明の作業車両である。
【0014】
これにより、前進から中立を介する前進への前後進切替え指示、または後進から中立を介する後進への前後進切替え指示が前後進切替え指示部により行われた場合には、コントローラーは、クラッチ入出力回転数比率が所定の範囲に入っているか否かにかかわらず、第一種クラッチ接続圧力カーブを利用して制御を行うので、自然な体感フィーリングを実現することができる。
【0015】
第5の本発明は、前記車体の変速を切替えるための変速切替え指示を行う変速切替え指示部を備え、
複数の前記第二種クラッチ接続圧力カーブが、前記変速に応じて定められており、
前記コントローラーは、前記変速切替え指示による変速に応じた前記第二種クラッチ接続圧力カーブを利用して前記制御を行うことを特徴とする第1から第4のいずれかの本発明の作業車両である。
【0016】
これにより、複数の第二種クラッチ接続圧力カーブが、変速に応じて定められているので、変速に応じてより適切な体感フィーリングを実現することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明により、車体の動きの変化時において運転者に与える違和感が少ない好ましい体感フィーリングを実現することが可能な作業車両を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照しながら、本発明における実施の形態について詳細に説明する。
【0020】
(A)はじめに、
図1〜5を主として参照しながら、本実施の形態の農業用トラクターの構成および動作について具体的に説明する。
【0021】
ここに、
図1および2は本発明における実施の形態の農業用トラクターの模式的な左側面図(その一および二)であり、
図3は本発明における実施の形態の農業用トラクターの運転ユニット20近傍の模式的な部分斜視図であり、
図4は本発明における実施の形態の農業用トラクターの動力伝達系の説明図であり、
図5は本発明における実施の形態の農業用トラクターの制御系の説明図である。
【0022】
図1においては、作業機11が、重量があまり大きくない、ロータリー耕耘作業機のような作業機である状態が示されている。
図2においては、作業機11が、重量がかなり大きい、ビートハーベスターのような作業機である状態が示されている。
【0023】
本実施の形態の農業用トラクターは、本発明における作業車両の一例である。前後進レバー210は、本発明における前後進切替え指示部の一例である。主変速スイッチ220は本発明における変速切替え指示部の一例であり、副変速レバー230も本発明における変速切替え指示部の一例である。
【0024】
車体10の前部のボンネット31の内部には、エンジン30が設けられている。
【0025】
エンジン30の回転動力は、運転ユニット20のフロア22の下方に設けられているトランスミッションケースの内部のさまざまなクラッチを介して伝達される。そして、主変速装置120および副変速装置130で変速された回転動力は、左前輪40Lおよび右前輪40R、ならびに左後輪50Lおよび右後輪50Rへ伝達される。
【0026】
運転ユニット20には、主変速スイッチ220および走行モード切替え指示部240とともに、副変速レバー230が設けられている。
【0027】
エンジン30の後方には、前後進レバー210とともに、操舵ハンドル23が設けられている。
【0028】
操舵ハンドル23の後方には、運転席21が設けられている。
【0029】
操作コラムカバーの左側のフロア22には、ブレーキペダル連結解除ペダル25が配置されている。
【0030】
操作コラムカバーの右側のフロア22には、左ブレーキペダル24Lおよび右ブレーキペダル24R、ならびにアクセルペダル26が配置されている。
【0031】
車体10の後部には、作業機11が、たとえば、3点リンク機構を利用して装着される。
【0032】
作業機昇降機構60は、メインシリンダー61、リフトアーム62、トップリンク63およびロワーリンク64、ならびに回動カバー65aおよびサイドカバー65bを有する。
【0033】
トップリンク63およびロワーリンク64の前端部は車体10の側と接続されており、トップリンク63およびロワーリンク64の後端部は作業機11の側と接続されている。そして、メインシリンダー61により回動されるリフトアーム62の後端部は、ロワーリンク64と接続されている。
【0034】
耕耘深さセンサー66は回動カバー65aの回動角度を検出するセンサーであり、リフトアームセンサー67はリフトアーム62の回動角度を検出するセンサーである。
【0035】
メモリー201はコントローラー200と協働して動作するメモリーであり、タイマー250はコントローラー200と協働して動作するタイマーである。
【0036】
作業機11の情報は、作業機11と接続されたISOBUS281、および運転ユニット20に搭載された情報端末282などを利用して取得され、コントローラー200へ通知される。
【0037】
車体10の位置の情報は、車体位置測定機構270を利用して取得され、コントローラー200へ通知される。車体位置測定機構270は、GPS(Global Positioning System)機構であってもよいし、三角測量機構であってもよい。
【0038】
(B)つぎに、
図6を主として参照しながら、本実施の形態の農業用トラクターの構成および動作についてより具体的に説明する。
【0039】
ここに、
図6は、本発明における実施の形態の農業用トラクターの模式的な上面図である。
【0040】
エンジン30の回転動力は、前後進クラッチ110、主変速装置120、副変速装置130および後輪差動ギヤ312を介して、左後輪50Lおよび右後輪50Rへ伝達される。4WD(4−Wheel Drive)駆動が行われる場合には、エンジン30の回転動力は、前後進クラッチ110、主変速装置120、副変速装置130、4WDクラッチ320および前輪差動ギヤ311を介して、左前輪40Lおよび右前輪40Rへも伝達される。
【0041】
左ブレーキ装置500Lは、左ブレーキシリンダーの状態に応じて左後輪50Lの制動を行う装置である。
【0042】
右ブレーキ装置500Rは、右ブレーキシリンダーの状態に応じて右後輪50Rの制動を行う装置である。
【0043】
左前輪40Lおよび右後輪50Rのステアリングは、操舵シリンダー330の状態に応じて行われる。操舵シリンダー330の状態は、操舵ハンドル23からの指示により変化させられる。
【0044】
コントローラー200は、協働して動作する、耕耘作業機昇降制御部、エンジン制御部および走行制御部を有する。
【0045】
ブレーキペダル踏込みセンサー540、操舵角度センサー340、前進センサー461、後進センサー462、主変速スイッチ220、前進圧力センサー441および後進圧力センサー442の検出値は、コントローラー200の走行制御部へ入力される。そして、走行制御部は、前後進クラッチ110、主変速装置120、右ブレーキシリンダーおよび左ブレーキシリンダーの制御を、入力された検出値に基づいて行う。
【0046】
(B1)
図7を主として参照しながら、左後輪50Lおよび右後輪50Rの制動に関する構成および動作について具体的に説明する。
【0047】
ここに、
図7は、本発明における実施の形態の農業用トラクターの左ブレーキペダル24Lおよび右ブレーキペダル24R近傍の部分斜視図である。
【0048】
左ブレーキシリンダーの状態がスプリングで付勢されている左ブレーキペダル24Lの左ブレーキロッド510Lを介した左ブレーキペダル24Lからの指示により変化させられると、左後輪50Lの制動が行われる。
【0049】
右ブレーキシリンダーの状態がスプリングで付勢されている右ブレーキペダル24Rの右ブレーキロッド510Rを介した右ブレーキペダル24Rからの指示により変化させられると、右後輪50Rの制動が行われる。
【0050】
ブレーキペダル連結具520は、スプリングで付勢されて左ブレーキペダル24Lおよび右ブレーキペダル24Rを係留する閂形状の連結具である。
【0051】
ブレーキペダル連結解除ペダル25が踏込まれていない、直進動作などが行われる通常の場合には、ブレーキペダル連結具520は左ブレーキペダル24Lおよび右ブレーキペダル24Rを係留している。したがって、左ブレーキペダル24Lおよび右ブレーキペダル24Rの内の少なくとも一方が踏込まれると、左後輪50Lおよび右後輪50Rの両方の制動が行われる。
【0052】
ブレーキペダル連結解除ペダル25が踏込まれている、作業時旋回動作などが行われる場合には、ブレーキペダル連結具520は左ブレーキペダル24Lおよび右ブレーキペダル24Rを係留していない。したがって、左ブレーキペダル24Lが踏込まれると、左後輪50Lの制動が行われ、右ブレーキペダル24Rが踏込まれると、右後輪50Rの制動が行われる。
【0053】
ワイヤー530は、上端部がブレーキペダル連結具520に接続されており、下端部がブレーキペダル連結解除ペダル25のペダルアームに接続されているワイヤーである。
【0054】
(B2)
図8〜10を主として参照しながら、車体10の前後進切替えに関する構成および動作について具体的に説明する。
【0055】
ここに、
図8(a)から8(c)は本発明における実施の形態の農業用トラクターの前後進レバー210近傍の模式的な部分左側面図(その一から三)であり、
図9は本発明における実施の形態の農業用トラクターのクラッチ油圧系の説明図であり、
図10は本発明における実施の形態の農業用トラクターの前後進クラッチ110近傍の模式的な部分断面図である。
【0056】
図8(a)においては、前後進レバー210のレバー位置が前進位置である状態が示されている。
図8(b)においては、前後進レバー210のレバー位置が中立位置である状態が示されている。
図8(c)においては、前後進レバー210のレバー位置が後進位置である状態が示されている。
【0057】
前後進レバー210は、下端部が前後進カム450に接続されているレバーである。
【0058】
前後進カム450は、前後進レバー210のレバー位置に応じて回動するカムである。
【0059】
前後進レバー210のレバー位置が前進位置である場合には、前後進カム450が強く当接している前進センサー461のアクチュエーター461bは前進センサー461の感知部461aに接触しており、後進センサー462のアクチュエーター462bは後進センサー462の感知部462aから乖離しているので、前進状態が検出される。
【0060】
前後進レバー210のレバー位置が中立位置である場合には、前進センサー461のアクチュエーター461bは前進センサー461の感知部461aから乖離しており、後進センサー462のアクチュエーター462bは後進センサー462の感知部462aから乖離しているので、中立状態が検出される。
【0061】
前後進レバー210のレバー位置が後進位置である場合には、前進センサー461のアクチュエーター461bは前進センサー461の感知部461aから乖離しており、前後進カム450が強く当接している後進センサー462のアクチュエーター462bは後進センサー462の感知部462aに接触しているので、後進状態が検出される。
【0062】
前後進クラッチ110は、車体10の前後進切替えを行うクラッチである。前後進クラッチ110の状態は、コントローラー200の走行制御部からの指示により変化させられる。走行制御部からの指示は、前進切替えソレノイド411、後進切替えソレノイド412、前後進昇圧ソレノイド413、可変リリーフバルブ420およびポンプ430を利用して行われる。
【0063】
前進油圧クラッチ多板部491の状態が噛合状態であり、後進油圧クラッチ多板部492の状態が非噛合状態である場合には、前後進クラッチ110は入力軸471の回転を前進ギヤ部481および前進油圧クラッチ多板部491を介してカウンター軸472へ伝達するので、前進状態が実現される。
【0064】
前進油圧クラッチ多板部491の状態が非噛合状態であり、後進油圧クラッチ多板部492の状態が噛合状態である場合には、前後進クラッチ110は入力軸471の回転を後進ギヤ部482、逆転ギヤ部483および後進油圧クラッチ多板部492を介してカウンター軸472へ伝達するので、後進状態が実現される。
【0065】
前後進クラッチ110はメインクラッチとしても機能し、前進油圧クラッチ多板部491の状態が非噛合状態であり、後進油圧クラッチ多板部492の状態も非噛合状態である場合には、中立状態が実現される。
【0066】
クラッチペダルが踏込まれると、クラッチペダルソレノイド410を利用して、前進油圧クラッチ多板部491の非噛合状態および後進油圧クラッチ多板部492の非噛合状態が同時に実現される。
【0067】
(C)つぎに、
図10および11を主として参照しながら、本実施の形態の農業用トラクターの構成および動作についてさらにより具体的に説明する。
【0068】
ここに、
図11は、本発明における実施の形態の農業用トラクターの前後進制御タイミング図(その一)である。
【0069】
図11においては、グラフg11、g12、g21、g22、g31、g32、g4およびg5が示されており、共通な横軸は経過時間tを表す。
【0070】
グラフg11は経過時間に対応する前進スイッチ入切を示すグラフであり、グラフg12は経過時間に対応する後進スイッチ入切を示すグラフである。グラフg21は経過時間に対応する前進側昇圧指示値を示すグラフであり、グラフg22は経過時間に対応する後進側昇圧指示値を示すグラフである。グラフg31は経過時間に対応する前進側クラッチ圧力を示すグラフであり、グラフg32は経過時間に対応する後進側クラッチ圧力を示すグラフである。グラフg4は、経過時間に対応するクラッチ入出力回転数比率を示すグラフである。グラフg5は、経過時間に対応する車速を示すグラフである。
【0071】
前進に対応するプラス符号および後進に対応するマイナス符号は、グラフg4が示すクラッチ入出力回転数比率については無視されているが、グラフg5が示す車速については考慮されている。
【0072】
経過時間t=t1の時点においては、中立から前進への前後進切替え指示が、前後進レバー210により行われる。
【0073】
経過時間t=t4の時点においては、前進から中立を介する後進への前後進切替え指示が、前後進レバー210により行われる。
【0074】
本実施の形態の農業用トラクターの動作について説明しながら、本発明に関連した発明のクラッチ接続圧力制御方法についても説明する。
【0075】
前後進レバー210は、油圧式の前後進クラッチ110により車体10の前後進を切替えるための前後進切替え指示を行う指示部である。前後進レバー210の代わりに、車体10の前後進を切替えるための前後進切替え指示を行う、ペダル、スイッチまたはダイヤルなどが設けられていてもよい。
【0076】
クラッチ入力回転数検出センサー261は、前後進クラッチ110の入力側のクラッチ入力回転数を検出するセンサーである。クラッチ入力回転数検出センサー261が設けられている箇所は、前後進クラッチ110の入力側のクラッチ入力回転数が検出可能である、動力伝達系における任意の箇所である。
【0077】
クラッチ出力回転数検出センサー262は、前後進クラッチ110の出力側のクラッチ出力回転数を検出するセンサーである。クラッチ出力回転数検出センサー262が設けられている箇所は、前後進クラッチ110の出力側のクラッチ出力回転数が検出可能である、動力伝達系における任意の箇所である。
【0078】
主変速スイッチ220は、車体10の主変速を切替えるための主変速切替え指示を行う指示部である。主変速スイッチ220の代わりに、主変速切替え指示を行う、ペダル、レバーまたはダイヤルなどが設けられていてもよい。
【0079】
副変速レバー230は、車体10の副変速を切替えるための副変速切替え指示を行う指示部である。副変速レバー230の代わりに、副変速切替え指示を行う、ペダル、スイッチまたはダイヤルなどが設けられていてもよい。
【0080】
(C1)コントローラー200は、経過時間に対応して前後進クラッチ110のクラッチ接続圧力を変化させるための制御を行う。
【0081】
より具体的に説明すると、つぎの通りである。
【0082】
(C1a)前進から中立を介する後進への前後進切替え指示、または後進から中立を介する前進への前後進切替え指示が前後進レバー210により行われた場合には、コントローラー200は、クラッチ出力回転数のクラッチ入力回転数に対するクラッチ入出力回転数比率が所定の範囲に入っているか否かを判断し、
クラッチ入出力回転数比率が所定の範囲に入っている場合には、あらかじめ定められた第一種クラッチ接続圧力カーブC1を利用して制御を行い、
クラッチ入出力回転数比率が所定の範囲に入っていない場合には、あらかじめ定められた第二種クラッチ接続圧力カーブC2を利用して制御を行い、制御を行いながら、クラッチ入出力回転数比率が所定の範囲に入っているか否かを判断し、クラッチ入出力回転数比率が所定の範囲に入った場合には、第一種クラッチ接続圧力カーブC1を利用して制御を行う。
【0083】
第一種クラッチ接続圧力カーブC1は、停止している車体10を前進または後進させる場合に利用されるカーブである。
【0084】
第二種クラッチ接続圧力カーブC2は、経過時間に対応して増加するカーブである。
【0085】
第一種クラッチ接続圧力カーブC1は通常の昇圧カーブであってもよいし、第二種クラッチ接続圧力カーブC2は第一種クラッチ接続圧力カーブC1と同じ昇圧カーブであってもよい。
【0086】
上述された所定の範囲が全圧クラッチ接続に対応する100パーセントのクラッチ入出力回転数比率に対して0〜10パーセントの範囲であり、前進から中立を介する後進への前後進切替え指示が経過時間t=t4の時点において行われる場合について具体的に説明する。
【0087】
前進スイッチとしての前進センサー461が切にされる経過時間t=t4の時点から、後進スイッチとしての後進センサー462が入にされる、経過時間t=t4の時点の直後の時点までの短い期間に対応する後進側昇圧指示値の出力ディレーTdは、およそ500ミリ秒である。
【0088】
後進側シリンダー空間492aの体積は、矩形波カーブC0による後進側昇圧指示値のイニシャル出力が行われている期間において確実に増加させられ始める。イニシャル出力のD/A(Digital/Analog)値は、全圧クラッチ接続に対応するD/A値のおよそ半分である、157である。
【0089】
経過時間t=t5の時点における後進側昇圧指示値のイニシャル出力の終了の後、クラッチ入出力回転数比率が11パーセント以上であるので、第二種クラッチ接続圧力カーブC2による後進側昇圧指示値の昇圧出力が行われ、クラッチ入出力回転数比率が経過時間t=t6の時点においてゼロになったので、第一種クラッチ接続圧力カーブC1による後進側昇圧指示値の昇圧出力が追加的に行われる。もちろん、本発明における実施の形態の農業用トラクターの前後進制御タイミング図(その二)である
図12に示されているように、クラッチ入出力回転数比率が経過時間t=t6の時点においてゼロにならなくても、クラッチ入出力回転数比率が10パーセント以下になると、第一種クラッチ接続圧力カーブC1による後進側昇圧指示値の昇圧出力が追加的に行われる。
【0090】
上述されたように、経過時間t=t5の時点における後進側昇圧指示値のイニシャル出力の終了の後、クラッチ入出力回転数比率が10パーセント以下であると、第二種クラッチ接続圧力カーブC2による後進側昇圧指示値の昇圧出力が行われず、第一種クラッチ接続圧力カーブC1による後進側昇圧指示値の昇圧出力が直ちに行われる。
【0091】
前進から中立を介する後進への前後進切替え指示、または後進から中立を介する前進への前後進切替え指示が行われた場合でも、車体10がほぼ停止した時点から車体10が逆向きに動き始める時点までの期間の長さが安定化され、前後進切替えが円滑に行われるので、上述された制御を行うことにより、車体10の動きの変化時において運転者に与える違和感が少ない好ましい体感フィーリングを実現することができる。
【0092】
(C1b)中立から前進への前後進切替え指示、または中立から後進への前後進切替え指示が前後進レバー210により行われた場合には、コントローラー200は、クラッチ入出力回転数比率が所定の範囲に入っているか否かにかかわらず、第一種クラッチ接続圧力カーブC1を利用して制御を行う。
【0093】
中立から前進への前後進切替え指示が経過時間t=t1の時点において行われる場合について具体的に説明する。
【0094】
前進側シリンダー空間491aの体積は、矩形波カーブC0による前進側昇圧指示値のイニシャル出力が行われている期間において確実に増加させられ始める。
【0095】
経過時間t=t2の時点における前進側昇圧指示値のイニシャル出力の終了の後、第一種クラッチ接続圧力カーブC1による前進側昇圧指示値の昇圧出力が、経過時間t=t2の時点から経過時間t=t3の時点までの期間において行われる。
【0096】
中立から前進への前後進切替え指示、または中立から後進への前後進切替え指示が行われた瞬間には、平坦な道路で停止している車体10は通常は動いていないので、クラッチ入出力回転数比率が所定の範囲に入っているか否かを判断することはあまり意味がなく、上述された制御を行うことにより、車体10の動きの変化時において運転者に与える違和感が少ない好ましい体感フィーリングを実現することができる。
【0097】
なお、中立から前進への前後進切替え指示、または中立から後進への前後進切替え指示が前後進レバー210により行われた場合には、コントローラー200は、クラッチ出力回転数のクラッチ入力回転数に対するクラッチ入出力回転数比率が所定の範囲に入っているか否かを判断し、
クラッチ入出力回転数比率が所定の範囲に入っている場合には、あらかじめ定められた第一種クラッチ接続圧力カーブC1を利用して制御を行い、
クラッチ入出力回転数比率が所定の範囲に入っていない場合には、あらかじめ定められた第二種クラッチ接続圧力カーブC2を利用して制御を行い、制御を行いながら、クラッチ入出力回転数比率が所定の範囲に入っているか否かを判断し、クラッチ入出力回転数比率が所定の範囲に入った場合には、第一種クラッチ接続圧力カーブC1を利用して制御を行ってもよい。
【0098】
中立から前進への前後進切替え指示、または中立から後進への前後進切替え指示が行われた瞬間でも、傾斜した道路で停止している車体10はパーキングブレーキ解除にともなって少し動くことがあるので、クラッチ入出力回転数比率が所定の範囲に入っているか否かを判断することは意味があり、上述された制御を行うことにより、車体10の動きの変化時において運転者に与える違和感が少ない好ましい体感フィーリングを実現することができる。
【0099】
(C1c)前進から中立を介する前進への前後進切替え指示、または後進から中立を介する後進への前後進切替え指示が前後進レバー210により行われた場合には、コントローラー200は、クラッチ入出力回転数比率が所定の範囲に入っているか否かにかかわらず、第一種クラッチ接続圧力カーブC1を利用して制御を行う。
【0100】
前進から中立を介する前進への前後進切替え指示、または後進から中立を介する後進への前後進切替え指示が行われた場合には、車体10の動きの向きは変化しないので、上述された制御を行うことにより、自然な体感フィーリングを実現することができる。
【0101】
(C2)複数の第二種クラッチ接続圧力カーブC2が変速に応じて定められており、コントローラー200は変速切替え指示による変速に応じた第二種クラッチ接続圧力カーブC2を利用して制御を行ってもよい。
【0102】
より具体的に説明すると、つぎの通りである。
【0103】
複数の第二種クラッチ接続圧力カーブC2が主変速に応じて定められており、コントローラー200は主変速切替え指示による主変速に応じた第二種クラッチ接続圧力カーブC2を利用して制御を行ってもよい。ケーブルの牽引で主変速装置120を操作することができる主変速スイッチ220のスイッチ操作位置がセンサーで検出されてコントローラー200へ通知されてもよいし、主変速スイッチ220のスイッチ操作位置がモーターでケーブルを牽引して主変速装置120を操作することができるコントローラー200へ電気信号として通知されてもよい。
【0104】
複数の第二種クラッチ接続圧力カーブC2が副変速に応じて定められており、コントローラー200は副変速切替え指示による副変速に応じた第二種クラッチ接続圧力カーブC2を利用して制御を行ってもよい。ケーブルの牽引で副変速装置130を操作することができる副変速レバー230のレバー操作位置がセンサーで検出されてコントローラー200へ通知されてもよいし、副変速レバー230のレバー操作位置がモーターでケーブルを牽引して副変速装置130を操作することができるコントローラー200へ電気信号として通知されてもよい。
【0105】
複数の第二種クラッチ接続圧力カーブC2がエンジン回転数に応じて定められており、コントローラー200はエンジン30のエンジン回転数に応じた第二種クラッチ接続圧力カーブC2を利用して制御を行ってもよい。エンジン回転数は、センサーで検出されてコントローラー200へ通知されてもよいし、メーターパネルのようなメインモニター、作業設定サブモニター、またはアグリサポートシステムのインターフェースなどからのユーザー入力によりコントローラー200へ通知されてもよい。
【0106】
複数の第二種クラッチ接続圧力カーブC2がクラッチ油温に応じて定められており、コントローラー200は前後進クラッチ110のクラッチ油温に応じた第二種クラッチ接続圧力カーブC2を利用して制御を行ってもよい。クラッチ油温は、センサーで検出されてコントローラー200へ通知されてもよいし、メーターパネルのようなメインモニター、作業設定サブモニター、またはアグリサポートシステムのインターフェースなどからのユーザー入力によりコントローラー200へ通知されてもよい。
【0107】
上述された制御を行うことにより、たとえば、変速に応じてより適切な体感フィーリングを実現することができる。
【0108】
(C3)上述された制御は、クラッチ入力回転数検出センサー261およびクラッチ出力回転数検出センサー262の内の少なくとも一つが正常に動作していない場合には、行われなくてもよい。第二種クラッチ接続圧力カーブC2が不適切に利用されないので、発進ショックのような違和感がセンサー異常にともなってかえって多くなるリスクが低減される。
【0109】
(C4)上述された制御が行われるか否かは、メーターパネルのようなメインモニター、作業設定サブモニター、またはアグリサポートシステムのインターフェースなどからのユーザー入力により設定されてもよい。制御の入切設定は容易に切替えられるので、多様なユーザーの嗜好に対処することができる。
【0110】
なお、本発明に関連した発明のプログラムは、上述された本発明に関連した発明のクラッチ接続圧力制御方法の全部または一部のステップ(または工程、動作および作用など)の動作をコンピューターに実行させるためのプログラムであって、コンピューターと協働して動作するプログラムである。
【0111】
また、本発明に関連した発明の記録媒体は、上述された本発明に関連した発明のクラッチ接続圧力制御方法の全部または一部のステップ(または工程、動作および作用など)の全部または一部の動作をコンピューターに実行させるためのプログラムを記録した記録媒体であり、読取られたプログラムがコンピューターと協働して利用されるコンピューター読取り可能な記録媒体である。
【0112】
なお、上述された「一部のステップ(または工程、動作および作用など)」は、それらの複数のステップの内の一つまたはいくつかのステップを意味する。
【0113】
また、上述された「ステップ(または工程、動作および作用など)の動作」は、上述されたステップの全部または一部の動作を意味する。
【0114】
また、本発明に関連した発明のプログラムの一利用形態は、インターネット、光、電波または音波などのような伝送媒体の中を伝送され、コンピューターにより読取られ、コンピューターと協働して動作するという形態であってもよい。
【0115】
また、記録媒体としては、ROM(Read Only Memory)などが含まれる。
【0116】
また、コンピューターは、CPU(Central Processing Unit)などのような純然たるハードウェアに限らず、ファームウェア、OS(Operating System)、そしてさらに周辺機器を含んでもよい。
【0117】
なお、上述されたように、本発明の構成は、ソフトウェア的に実現されてもよいし、ハードウェア的に実現されてもよい。