(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて詳細に説明する。なお、以下で説明する実施例および変形例は、いずれも包括的または具体的な例を示すものである。以下の実施例および変形例で示される数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置および接続形態などは、一例であり、本発明を限定する主旨ではない。以下の実施例および変形例における構成要素のうち、独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素として説明される。また、図面に示される構成要素の大きさまたは大きさの比は、必ずしも厳密ではない。
【0011】
(実施の形態1)
[1.マルチプレクサ1の回路構成]
図1は、実施の形態1に係るマルチプレクサ1の回路構成図である。同図に示すように、マルチプレクサ1は、共通端子100、第1端子110、第2端子120、第3端子130、および第4端子140と、送信フィルタ10および30と、受信フィルタ20および40と、インダクタLmと、を備える。
【0012】
送信フィルタ10は、第1端子110と出力端子111との間に配置され、BandC(第1周波数帯域)の送信帯域を通過帯域とする第1送信フィルタである。出力端子111は、インダクタLmを介して共通端子100に接続されている。
【0013】
送信フィルタ10は、直列腕共振子s11、s12、s13、s14およびs15と、並列腕共振子p11、p12、p13およびp14と、インダクタL11、L12、L13およびL14と、を備える。
【0014】
直列腕共振子s11〜s15は、共通端子100と第1端子110とを結ぶ第1経路上に配置された第1直列腕共振子である。
【0015】
並列腕共振子p11は、上記第1経路と並列腕端子t11(第1並列腕端子)との間に接続された第1並列腕共振子である。並列腕共振子p12は、上記第1経路と並列腕端子t12(第2並列腕端子)との間に接続された第2並列腕共振子である。並列腕共振子p13は、上記第1経路と並列腕端子t13(第2並列腕端子)との間に接続された第2並列腕共振子である。並列腕共振子p14は、上記第1経路と並列腕端子t14(第2並列腕端子)との間に接続された第2並列腕共振子である。
【0016】
インダクタL11は、一端が並列腕端子t11に接続され、他端がグランド端子g11に接続されている。インダクタL12は、一端が並列腕端子t12に接続され、他端がグランド端子g12に接続されている。インダクタL13は、一端が並列腕端子t13に接続され、他端がグランド端子g13に接続されている。インダクタL14は、一端が並列腕端子t14に接続され、他端がグランド端子g14に接続されている。
【0017】
上記構成により、送信フィルタ10は、直列腕共振子および並列腕共振子からなるラダー型のバンドパスフィルタを構成している。
【0018】
なお、送信フィルタ10において、インダクタL11〜L14のうちの少なくとも2つが共通化されていてもよい。つまり、並列腕端子t11〜t14の少なくとも2つが接続され、当該少なくとも2つの並列腕端子に接続されるインダクタが共通化され、当該共通化されたインダクタに接続される少なくとも2つのグランド端子同士が接続されていてもよい。これにより、送信フィルタ10の減衰極の周波数および減衰量、ならびに、通過帯域内の挿入損失およびリップルを調整することが可能となる。
【0019】
なお、送信フィルタ10は、弾性表面波フィルタ、BAW(Bulk Acoustic Wave)を用いた弾性波フィルタ、LC共振フィルタ、および誘電体フィルタのいずれかであってもよい。また、弾性表面波には、例えば、表面波、ラブ波、リーキー波、レイリー波、境界波、漏れSAW、疑似SAW、板波も含まれる。
【0020】
また、送信フィルタ10は、並列腕共振子p11およびp14の少なくとも2つを備えていればよく、直列腕共振子s11〜s15、並列腕共振子p12〜p13、およびインダクタL11〜L14を備えていなくてもよい。
【0021】
受信フィルタ20は、入力端子121と第2端子120との間に配置され、BandC(第1周波数帯域)の受信帯域を通過帯域とする第1受信フィルタである。入力端子121は、インダクタLmを介して共通端子100に接続されている。
【0022】
受信フィルタ20は、弾性表面波フィルタ、BAWを用いた弾性波フィルタ、LC共振フィルタ、および誘電体フィルタのいずれかに限定されず、その他、LCフィルタなどであってもよく、フィルタ構造は任意である。
【0023】
なお、送信フィルタ10と受信フィルタ20とは、BandC(第1周波数帯域)の高周波信号を同時に送受信可能なデュプレクサであってもよい。
【0024】
送信フィルタ30は、第3端子130と出力端子131との間に配置され、BandA(第2周波数帯域)の送信帯域を通過帯域とする第2送信フィルタである。出力端子131は、インダクタLmを介して共通端子100に接続されている。
【0025】
送信フィルタ30は、直列腕共振子s31、s32、s33およびs34と、並列腕共振子p31、p32、p33およびp34と、インダクタL32、L33およびL34と、を備える。
【0026】
直列腕共振子s31〜s34は、共通端子100と第3端子130とを結ぶ第2経路上に配置された第2直列腕共振子である。
【0027】
並列腕共振子p31は、上記第2経路と並列腕端子t31(第3並列腕端子)との間に接続された第3並列腕共振子である。並列腕共振子p32は、上記第2経路と並列腕端子t32(第3並列腕端子)との間に接続された第3並列腕共振子である。並列腕共振子p33は、上記第2経路と並列腕端子t33(第3並列腕端子)との間に接続された第3並列腕共振子である。並列腕共振子p34は、上記第2経路と並列腕端子t34(第4並列腕端子)との間に接続された第4並列腕共振子である。
【0028】
インダクタL32は、一端が並列腕端子t32に接続され、他端がグランド端子g32に接続されている。インダクタL33は、一端が並列腕端子t33に接続され、他端がグランド端子g33に接続されている。インダクタL34は、一端が並列腕端子t34に接続され、他端がグランド端子g34に接続されている。
【0029】
上記構成により、送信フィルタ30は、直列腕共振子および並列腕共振子からなるラダー型のバンドパスフィルタを構成している。
【0030】
なお、送信フィルタ30において、並列腕端子t31とグランド端子g31との間に、インダクタL31が配置されていてもよい。また、インダクタL31〜L34のうちの少なくとも2つが共通化されていてもよい。つまり、並列腕端子t31〜t34の少なくとも2つが接続され、当該少なくとも2つの並列腕端子に接続されるインダクタが共通化され、当該共通化されたインダクタに接続される少なくとも2つのグランド端子同士が接続されていてもよい。これにより、送信フィルタ30の減衰極の周波数および減衰量、ならびに、通過帯域内の挿入損失およびリップルを調整することが可能となる。
【0031】
なお、送信フィルタ30は、弾性表面波フィルタ、BAWを用いた弾性波フィルタ、LC共振フィルタ、および誘電体フィルタのいずれかであってもよい。また、弾性表面波には、例えば、表面波、ラブ波、リーキー波、レイリー波、境界波、漏れSAW、疑似SAW、板波も含まれる。
【0032】
また、送信フィルタ30は、並列腕共振子p31およびp34の少なくとも2つを備えていればよく、直列腕共振子s31〜s34、並列腕共振子p32〜p33、およびインダクタL32〜L34を備えていなくてもよい。
【0033】
受信フィルタ40は、入力端子141と第4端子140との間に配置され、BandA(第2周波数帯域)の受信帯域を通過帯域とするフィルタである。入力端子141は、インダクタLmを介して共通端子100に接続されている。
【0034】
受信フィルタ40は、弾性表面波フィルタ、BAWを用いた弾性波フィルタ、LC共振フィルタ、および誘電体フィルタのいずれかに限定されず、その他、LCフィルタなどであってもよく、フィルタ構造は任意である。
【0035】
なお、送信フィルタ30と受信フィルタ40とは、BandA(第2周波数帯域)の高周波信号を同時に送受信可能なデュプレクサであってもよい。
【0036】
インダクタLmは、共通端子100と、出力端子111および131ならびに入力端子121および141との間に直列配置されたインピーダンス整合素子である。なお、インダクタLmは、共通端子100と、グランドとの間に配置されていてもよい。
【0037】
なお、本実施の形態に係るマルチプレクサ1において、インダクタLm、第4端子140および受信フィルタ40は、なくてもよい。
【0038】
上記回路構成によれば、マルチプレクサ1は、BandC(第1周波数帯域)の高周波信号と、BandA(第2周波数帯域)の高周波信号とを、同時に送信、同時に受信、および同時に送受信(CA:キャリアアグリゲーション)することが可能である。
【0039】
[2.マルチプレクサ1の構造]
図2は、実施の形態1に係るマルチプレクサ1の断面構成図である。同図に示すように、マルチプレクサ1は、さらに、送信フィルタ10および30ならびに受信フィルタ20(図示せず)および40(図示せず)の一部を構成する多層基板50を備える。
【0040】
多層基板50は、主面51(第1主面)および主面57(第2主面)を有し、導体パターンが形成された複数の誘電体層52〜56の積層体で構成されている。
【0041】
送信フィルタ10は、例えば、圧電基板101と圧電基板101上に形成されたIDT(InterDigital Transducer)電極とで構成された弾性波共振子からなる。圧電基板101上に形成され、IDT電極に接続された接続電極が、主面51上に形成された電極と、バンプまたははんだなどを介してフェースダウン接続されている。主面51上に形成された電極には、並列腕共振子p11〜p14に接続される並列腕端子t11〜t14が含まれている。
【0042】
送信フィルタ30は、例えば、圧電基板103と圧電基板103上に形成されたIDT電極とで構成された弾性波共振子からなる。圧電基板103上に形成され、IDT電極に接続された接続電極が、主面51上に形成された電極と、バンプまたははんだなどを介してフェースダウン接続されている。主面51上に形成された電極には、並列腕共振子p31〜p34に接続される並列腕端子t31〜t34が含まれている。
【0043】
つまり、送信フィルタ10の並列腕共振子p11〜p14および直列腕共振子s11〜s15、ならびに、送信フィルタ30の並列腕共振子p31〜p34、ならびに、直列腕共振子s31〜s34は、多層基板50の主面51に表面実装されている。
【0044】
圧電基板101および103は、樹脂部材60で覆われている。なお、樹脂部材60は、信頼性強化のために配置されるが、必須の構成要素ではない。
【0045】
なお、並列腕端子t11とグランド端子g11とは、多層基板50の誘電体層52〜56を貫通するビア導体v11を介して接続されている。また、並列腕端子t14とグランド端子g14とは、多層基板50の誘電体層52〜55を貫通するビア導体v14を介して接続されている。また、並列腕端子t31とグランド端子g31とは、多層基板50の誘電体層52〜55を貫通するビア導体v31を介して接続されている。また、並列腕端子t34とグランド端子g34とは、多層基板50の誘電体層52〜56を貫通するビア導体v34を介して接続されている。また、図示していないその他の並列腕端子と、図示していないその他のグランド端子とは、多層基板50の誘電体層52〜55を貫通するビア導体を介して接続されている。
図1に示された、インダクタL11〜L14およびL32〜L34は、これらのビア導体のインダクタンス成分により形成されてもよい。あるいは、これらビア導体に替えて、
図3Aにて後述するように、各誘電体層に設けられたコイル状の導体パターンにより、インダクタL11〜L14およびL32〜L34が形成されてもよい。
図2に示された断面構成では、少なくとも誘電体層52〜54は、並列腕共振子に接続されるインダクタを形成するための層である。
【0046】
ここで、送信フィルタ10の並列腕端子t12(第2並列腕端子、図示せず)、t13(第2並列腕端子、図示せず)およびt14(第2並列腕端子)と、送信フィルタ30の並列腕端子t31(第3並列腕端子)、t32(第3並列腕端子、図示せず)およびt33(第3並列腕端子、図示せず)とは、主面51から3層目の誘電体層54までの層では接続されず、主面51から4層目の誘電体層55に形成されたグランド層G5により互いにグランド接続されている。一方、送信フィルタ10の並列腕端子t11(第1並列腕端子)と、送信フィルタ30の並列腕端子t34(第4並列腕端子)とは、主面51から4層目までの誘電体層において分離されている。
【0047】
つまり、送信フィルタ10の第2並列腕端子と送信フィルタ30の第3並列腕端子とは、主面51からn(nは自然数)層目までの多層基板50のいずれかの誘電体層において互いにグランド接続されており、送信フィルタ10の第1並列腕端子と送信フィルタ30の第4並列腕端子とは、主面51から上記n層目までの多層基板50の誘電体層において分離されている。
【0048】
なお、2つの並列腕端子がグランド層により互いにグランド接続されているとは、並列腕端子とグランド層との間に、インダクタが介している場合を含むものと定義される。
【0049】
複数の共振子で構成されたフィルタにおいて、当該フィルタの減衰特性を良化するには、複数の並列腕共振子のそれぞれが接続される並列腕端子を、できるだけ短い距離で共通のグランドに接続することが望ましい。
【0050】
しかしながら、複数の共振子で構成されたフィルタが、複数、共通端子100に接続されたマルチプレクサ1では、各並列腕端子が最短距離でグランド共通接続されると、例えば、送信フィルタ30から送信フィルタ10へ、大電力の高周波信号が、共通接続されるグランドを介して漏洩する。つまり、送信フィルタ10および30のそれぞれの減衰特性を強化できるが、送信フィルタ10と送信フィルタ30との間の、いわゆるクロスアイソレーションが悪化する。この場合、例えば、送信フィルタ30から送信フィルタ10へ高周波信号が漏洩し、該漏洩した高周波信号が送信フィルタ10と同一の周波数帯域の受信帯域を通過帯域とする受信フィルタ20に回り込み、受信フィルタ20の受信感度を低下させてしまう。
【0051】
これに対して、本実施の形態に係るマルチプレクサ1の構成によれば、送信フィルタ30の並列腕端子t31〜t33と、送信フィルタ10の並列腕端子t12〜t14とが、多層基板50の主面51から4層目の誘電体層55において互いにグランド接続されている。一方、送信フィルタ30の並列腕端子t34と送信フィルタ10の並列腕端子t11とは、多層基板50の主面51から4層目までの誘電体層55において分離されている。つまり、送信フィルタ30の並列腕共振子p31〜p33と送信フィルタ10の並列腕共振子p12〜p14とが、4層目までのできるだけ近距離の誘電体層55でグランド共通接続され、送信フィルタ30の並列腕共振子p34と送信フィルタ10の並列腕共振子p11とが、4層目までの近距離の誘電体層ではグランド分離されている。これにより、送信フィルタ10および送信フィルタ30のそれぞれの減衰特性を確保しつつ、送信フィルタ30と送信フィルタ10および受信フィルタ20とのクロスアイソレーションを向上できる。
【0052】
また、
図2に示すように、送信フィルタ10の並列腕共振子p11(第1並列腕共振子)と、送信フィルタ30の並列腕共振子34(第4並列腕共振子)とは、主面51から5層目の誘電体層56に形成されたグランド層G6により互いにグランド接続されている。つまり、送信フィルタ10の第1並列腕端子と送信フィルタ30の第4並列腕端子とは、(n+1)層目から主面57までの多層基板50のいずれかの誘電体層において互いにグランド接続されている。
【0053】
これにより、送信フィルタ30と送信フィルタ10および受信フィルタ20とのクロスアイソレーションを確保すべくn層目までの誘電体層においてグランド分離されていた第4並列腕共振子と第1並列腕共振子とが、(n+1)層目から主面57までの誘電体層でグランド共通接続されるので、送信フィルタ10および送信フィルタ30のそれぞれの減衰特性を確保できる。
【0054】
なお、本実施の形態に係るマルチプレクサ1のように、主面51からn(nは自然数)層目までの多層基板50のいずれかの誘電体層においてグランド接続されていない第1並列腕共振子は、送信フィルタ10が有する全ての並列腕共振子p11〜p14のうち、共通端子100に最も近く接続された並列腕共振子p11であることが望ましい。さらに、主面51からn(nは自然数)層目までの多層基板50のいずれかの誘電体層においてグランド接続されていない第4並列腕共振子は、送信フィルタ30が有する全ての並列腕共振子p31〜p34のうち、第3端子130に最も近く接続された並列腕共振子p34であることが望ましい。
【0055】
これにより、受信フィルタ20にとって不要な高周波信号の送信元である送信フィルタ30において、送信端子である第3端子130に最も近い並列腕共振子p34がn層目までの近距離でグランド共通接続されていない。このため、送信フィルタ30を通過する高周波信号のうち最も大電力の高周波信号が流れる第3端子130近辺から送信フィルタ10への高周波信号の漏洩を抑制できるので、送信フィルタ30から送信フィルタ10への高周波信号の漏洩を、最も効果的に抑制できる。また、送信フィルタ10を構成する並列腕共振子のうち、受信フィルタ20に最も近い並列腕共振子p11が、n層目までの近距離でグランド共通接続されていない。このため、送信フィルタ30から送信フィルタ10への高周波信号の漏洩成分が受信フィルタ20に流入することを、最も効果的に抑制できる。
【0056】
また、本実施の形態に係るマルチプレクサ1のように、送信フィルタ10および30が、直列腕共振子および並列腕共振子からなるラダー型フィルタである場合には、並列腕共振子のグランド接続の態様は、減衰特性に大きく影響する。
【0057】
上記構成によれば、ラダー型フィルタである送信フィルタ10および30の減衰特性の確保と、ラダー型フィルタ間のクロスアイソレーション特性の確保とを両立できる。
【0058】
[3.実施例および比較例に係るマルチプレクサの比較]
図3Aは、実施例に係るマルチプレクサの多層基板50の各層における導体パターンを示す図である。
図3Bは、比較例に係るマルチプレクサの多層基板50の各層における導体パターンを示す図である。
図3Aおよび
図3Bには、
図2に示された多層基板50の誘電体層52〜56のうち、誘電体層54から56を主面57側から平面視した場合の導体パターンが示されている。実施例に係るマルチプレクサと比較例に係るマルチプレクサとは、
図1に示された同じ回路構成を有するが、並列腕共振子p11の接続先であるグランド端子g11が接続されるグランド層が異なる。
【0059】
なお、実施例および比較例に係るマルチプレクサの双方において、
図3Aおよび
図3Bに示すように、誘電体層52〜54において、並列腕共振子p11がインダクタL11を介してグランド端子g11に接続され、並列腕共振子p34がインダクタL34を介してグランド端子g34に接続されている。なお、並列腕共振子p12〜p14が接続されるインダクタL12〜L14、および、並列腕共振子p31〜p33が接続されるインダクタL32〜L34は、
図3Aおよび
図3Bにおいて特定していない。また、並列腕共振子p12〜p14が接続されるグランド端子、および、並列腕共振子p31〜p33が接続されるグランド端子は、
図3Aおよび
図3Bに示されたグランド端子ga、gbおよびgcのいずれかであり、一部共通化されている。
【0060】
ここで、実施例に係るマルチプレクサでは、
図3Aに示すように、並列腕共振子p11の接続先であるグランド端子g11は、誘電体層55に形成されたグランド層G5に接続されておらず(
図3Aの誘電体層55における破線円)、誘電体層56に形成されたグランド層G6に接続されている(
図3Aの誘電体層56における破線円)。これに対して、並列腕共振子p34の接続先であるグランド端子g34は、誘電体層55に形成されたグランド層G5に接続されており、その他のグランド端子ga、gbおよびgcも誘電体層55に形成されたグランド層G5に接続されている。
【0061】
つまり、送信フィルタ10の並列腕端子t12〜t14(グランド端子g12〜g14)と送信フィルタ30の並列腕端子t31〜t34(グランド端子g31〜g34)とは、主面51から4層目までの誘電体層において互いにグランド接続されているが、送信フィルタ10の並列腕端子t11(グランド端子g11)と送信フィルタ30の並列腕端子t34(グランド端子g34)とは、主面51から4層目までの誘電体層において互いに分離されている。
【0062】
さらに、送信フィルタ10の並列腕端子t11(グランド端子g11)と、送信フィルタ30の並列腕端子t34(グランド端子g34)とは、主面51から5層目の誘電体層56に形成されたグランド層G6により互いにグランド接続されている。つまり、送信フィルタ10の並列腕端子t11と送信フィルタ30の並列腕端子t34とは、5層目の誘電体層56において互いにグランド接続されている。
【0063】
これに対して、比較例に係るマルチプレクサでは、
図3Bに示すように、並列腕共振子p11の接続先であるグランド端子g11は、誘電体層55に形成されたグランド層G5に接続されている(
図3Bの誘電体層55における破線円)。さらに、並列腕共振子p34の接続先であるグランド端子g34は、誘電体層55に形成されたグランド層G5に接続されており、その他のグランド端子ga、gbおよびgcも誘電体層55に形成されたグランド層G5に接続されている。
【0064】
つまり、送信フィルタ10の全ての並列腕端子t11〜t14(グランド端子g11〜g14)と送信フィルタ30の全ての並列腕端子t31〜t34(グランド端子g31〜g34)とは、主面51から4層目までの誘電体層において互いにグランド接続されている。
【0065】
図4は、比較例および実施例に係るマルチプレクサの送信フィルタ間の結合度を比較した概念図である。同図に示すように、比較例に係るマルチプレクサでは、送信フィルタ10および30を構成する並列腕共振子のグランド接続をすべて同じ誘電体層で実施している。これにより、共通接続されるグランド層を経由してグランドの結合を強化できるので、送信フィルタ10および30のそれぞれの減衰特性を向上させることが可能となる。しかしながら、上記グランド層を経由した強い結合により、送信フィルタ30と送信フィルタ10との間で、高周波信号が漏洩し易くなり、送信フィルタ30と送信フィルタ10との間のクロスアイソレーションを悪化させる。
【0066】
これに対して、実施例に係るマルチプレクサでは、送信フィルタ10および30を構成する並列腕共振子を、出来る限り短距離でグランド接続しつつ、送信フィルタ10を構成する一部の並列腕共振子と送信フィルタ30を構成する一部の並列腕共振子とをグランド共通接続するための距離を大きく確保している。
図4では、送信フィルタ10を構成する一部の並列腕共振子と送信フィルタ30を構成する一部の並列腕共振子とをグランド共通接続するための距離を、層間距離Dに相当する距離分だけ大きく確保している。これにより、送信フィルタ10および30のそれぞれの減衰特性を向上させつつ、送信フィルタ30と送信フィルタ10および受信フィルタ20との間のクロスアイソレーションを向上させることが可能となる。
【0067】
図5は、実施例および比較例に係るマルチプレクサのクロスアイソレーションを比較したグラフである。
【0068】
なお、送信フィルタ10は、LTE(Long Term Evolution)のBand25(第1周波数帯域)の送信帯域(1850−1915MHz)を通過帯域とする帯域通過型フィルタとした。また、受信フィルタ20は、LTEのBand25(第1周波数帯域)の受信帯域(1930−1995MHz)を通過帯域とする帯域通過型フィルタとした。
【0069】
送信フィルタ30は、LTEのBand66(第2周波数帯域)の送信帯域(1710−1780MHz)を通過帯域とする帯域通過型フィルタとした。また、受信フィルタ40は、LTEのBand66(第2周波数帯域)の受信帯域(2110−2200MHz)を通過帯域とする帯域通過型フィルタとした。
【0070】
図5に示すように、実施例に係るマルチプレクサは、比較例に係るマルチプレクサに比べて、第3端子130と第2端子120との間のアイソレーション(送信フィルタ30と受信フィルタ20との間のクロスアイソレーション)において、特に、受信フィルタ20の通過帯域におけるアイソレーションが向上していることが解る。
【0071】
(実施の形態2)
本実施の形態では、実施の形態1に係るマルチプレクサ1に対して、さらに、CAを実行する周波数帯域の組み合わせを選択するためのスイッチ回路が付加されたマルチプレクサ1A、および、マルチプレクサ1Aを含む通信装置6について示す。
【0072】
図6は、実施の形態2に係る通信装置6の回路構成図である。同図に示すように、通信装置6は、マルチプレクサ1Aと、送信増幅回路3Tと、受信増幅回路3Rと、RF信号処理回路(RFIC)4と、ベースバンド信号処理回路(BBIC)5と、を備える。
【0073】
マルチプレクサ1Aは、実施の形態1に係るマルチプレクサ1の構成要素に加えて、さらに、送信フィルタ15と、受信フィルタ25と、送受信フィルタ16および35と、スイッチ回路70と、スイッチ73および74と、ダイプレクサ80と、を備える。なお、インダクタLmは、共通端子100とダイプレクサ80との間に直列挿入されていてもよい。
【0074】
送信フィルタ10は、送信増幅回路3Tとスイッチ回路70との間に配置され、BandC(第1周波数帯域)の送信帯域を通過帯域とする第1送信フィルタである。
【0075】
受信フィルタ20は、スイッチ回路70と受信増幅回路3Rとの間に配置され、BandC(第1周波数帯域)の受信帯域を通過帯域とする第1受信フィルタである。
【0076】
送信フィルタ30は、送信増幅回路3Tとスイッチ回路70との間に配置され、BandA(第2周波数帯域)の送信帯域を通過帯域とする第2送信フィルタである。
【0077】
受信フィルタ40は、スイッチ回路70と受信増幅回路3Rとの間に配置され、BandA(第2周波数帯域)の受信帯域を通過帯域とするフィルタである。
【0078】
送信フィルタ15は、送信増幅回路3Tとスイッチ回路70との間に配置され、BandDの送信帯域を通過帯域とするフィルタである。
【0079】
受信フィルタ25は、スイッチ回路70と受信増幅回路3Rとの間に配置され、BandDの受信帯域を通過帯域とするフィルタである。
【0080】
送受信フィルタ16は、スイッチ回路70とスイッチ74との間に配置され、BandEの送受信帯域を通過帯域とするフィルタである。
【0081】
送受信フィルタ35は、スイッチ回路70とスイッチ73との間に配置され、BandBの送受信帯域を通過帯域とするフィルタである。
【0082】
スイッチ回路70は、スイッチ71および72で構成されている。スイッチ71は、送信フィルタ30および受信フィルタ40とダイプレクサ80との接続、および、送受信フィルタ35とダイプレクサ80との接続を排他的に切り替える。スイッチ71は、例えば、SPDT(Single Pole Double Throw)型のスイッチである。スイッチ72は、送信フィルタ10および受信フィルタ20とダイプレクサ80との接続、送信フィルタ15および受信フィルタ25とダイプレクサ80との接続、および、送受信フィルタ16とダイプレクサ80との接続を排他的に切り替える。スイッチ72は、例えば、SP3T(Single Pole 3 Throw)型のスイッチである。
【0083】
スイッチ73は、送受信フィルタ35と送信増幅回路3Tとの接続、および、送受信フィルタ35と受信増幅回路3Rとの接続を、排他的に切り替える。スイッチ73は、例えば、SPDT型のスイッチである。スイッチ74は、送受信フィルタ16と送信増幅回路3Tとの接続、および、送受信フィルタ16と受信増幅回路3Rとの接続を、排他的に切り替える。スイッチ74は、例えば、SPDT型のスイッチである。
【0084】
スイッチ回路70の上記構成によれば、マルチプレクサ1Aは、BandAおよびBandBのいずれかの高周波信号と、BandC、BandDおよびBandEのいずれかの高周波信号とを、同時送信、同時受信、または同時送受信することが可能である。
【0085】
なお、スイッチ回路70は、2つのスイッチ71および72で構成されていることに限定されず、2以上の経路を同時に接続できる回路であればよく、例えば、複数個のSPST(Sigle Pole Single Throw)型スイッチが並列配置されている構成であってもよい。
【0086】
ダイプレクサ80は、共通端子100とスイッチ回路70との間に配置され、ローパスフィルタとハイパスフィルタとを有している。ローパスフィルタは、共通端子100およびスイッチ71に接続され、BandAおよびBandBを含む低周波側帯域群の高周波信号を通過させる。ハイパスフィルタは、共通端子100およびスイッチ72に接続され、BandC、BandDおよびBandEを含む高周波側帯域群の高周波信号を通過させる。この構成により、ダイプレクサ80は、低周波側帯域群の高周波信号と高周波側帯域群の高周波信号とを分波および合波する。
【0087】
なお、ダイプレクサ80は、マルチプレクサ1Aに必須の構成要素ではない。また、ダイプレクサ80は、本実施の形態のように2つの周波数帯域群の高周波信号を分波および合波するほか、3つ以上の周波数帯域群を分波および合波するマルチプレクサであってもよい。
【0088】
また、本実施の形態に係るマルチプレクサ1Aが伝送する周波数帯域の数は、BandA〜BandEの5つに限定されず、2以上の周波数帯域であればよい。
【0089】
本実施の形態に係るマルチプレクサ1Aは、実施の形態1に係るマルチプレクサ1と同様に、
図2に示すように、送信フィルタ10の並列腕共振子p12〜p14(第2並列腕共振子)と、送信フィルタ30の並列腕共振子p31〜p33(第3並列腕共振子)とは、主面51から4層目の誘電体層55に形成されたグランド層G5により互いにグランド接続されている。つまり、送信フィルタ10の第2並列腕端子と送信フィルタ30の第3並列腕端子とは、主面51からn層目までの多層基板50のいずれかの誘電体層において互いにグランド接続されている。一方、送信フィルタ10の並列腕共振子p11(第1並列腕共振子)と、送信フィルタ30の並列腕共振子34(第4並列腕共振子)とは、主面51から5層目の誘電体層56に形成されたグランド層G6により互いにグランド接続されている。つまり、送信フィルタ10の第1並列腕端子と送信フィルタ30の第4並列腕端子とは、(n+1)層目から主面57までの多層基板50のいずれかの誘電体層において互いにグランド接続されている。
【0090】
これにより、例えば、送信フィルタ10を通過する高周波信号と、送信フィルタ30を通過する高周波信号とを同時送信する場合、上記スイッチ回路70を介して送信フィルタ30から送信フィルタ10へ高周波信号が漏洩することを抑制できる。つまり、送信フィルタ10、30および受信フィルタ20の減衰特性の確保と、送信フィルタ30と受信フィルタ20との間のクロスアイソレーション特性の確保とを両立できる。
【0091】
送信増幅回路3Tは、RFIC4から出力された高周波送信信号を増幅し、当該増幅された高周波送信信号をマルチプレクサ1Aへ出力する。受信増幅回路3Rは、アンテナ素子2で受信され、マルチプレクサ1Aを通過した高周波受信信号を増幅し、当該増幅された高周波受信信号をRFIC4へ出力する。
【0092】
RFIC4は、高周波信号を処理して送信増幅回路3Tへ出力し、受信増幅回路3Rから出力された高周波信号を処理するRF信号処理回路である。具体的には、RFIC4は、アンテナ素子2からマルチプレクサ1Aおよび受信増幅回路3Rを介して入力された高周波受信信号を、ダウンコンバートなどにより信号処理し、当該信号処理して生成された高周波受信信号をBBIC5へ出力する。また、RFIC4は、BBIC5から入力した送信信号をアップコンバートなどにより信号処理し、当該信号処理して生成された高周波送信信号を、送信増幅回路3Tおよびマルチプレクサ1Aへ出力する。
【0093】
また、本実施の形態では、RFIC4は、使用されるバンド(周波数帯域)に基づいて、マルチプレクサ1Aが有するスイッチ71〜74の接続を制御する制御部としての機能も有する。具体的には、RFIC4は、制御信号(図示せず)によって、スイッチ71〜74の接続を切り替える。なお、制御部は、RFIC4の外部に設けられていてもよく、例えば、マルチプレクサ1AまたはBBIC5に設けられていてもよい。
【0094】
上記構成によれば、マルチプレクサ1Aを構成する各フィルタの減衰特性を確保しつつ、異なる周波数帯域の高周波信号を通過させるフィルタ間のクロスアイソレーションが向上した通信装置6を提供できる。
【0095】
(その他の実施の形態)
以上、本発明に係るマルチプレクサおよび通信装置について、実施の形態および実施例を挙げて説明したが、本発明は、上記実施の形態および実施例に限定されるものではない。上記実施の形態および実施例における任意の構成要素を組み合わせて実現される別の実施の形態や、上記実施の形態に対して本発明の主旨を逸脱しない範囲で当業者が思いつく各種変形を施して得られる変形例や、本発明に係るマルチプレクサおよび通信装置を内蔵した各種機器も本発明に含まれる。
【0096】
また、例えば、実施の形態および実施例に係るマルチプレクサおよび通信装置において、各構成要素の間に、インダクタおよびキャパシタなどの整合素子、ならびにスイッチ回路が接続されていてもかまわない。なお、インダクタには、各構成要素間を繋ぐ配線による配線インダクタが含まれてもよい。