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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6922901
(24)【登録日】2021年8月2日
(45)【発行日】2021年8月18日
(54)【発明の名称】粒子分取装置及び粒子分取方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 15/14 20060101AFI20210805BHJP
   G01N 37/00 20060101ALI20210805BHJP
【FI】
   G01N15/14 K
   G01N37/00 101
【請求項の数】9
【全頁数】34
(21)【出願番号】特願2018-518093(P2018-518093)
(86)(22)【出願日】2017年2月22日
(86)【国際出願番号】JP2017006503
(87)【国際公開番号】WO2017199506
(87)【国際公開日】20171123
【審査請求日】2020年1月10日
(31)【優先権主張番号】特願2016-98927(P2016-98927)
(32)【優先日】2016年5月17日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002185
【氏名又は名称】ソニーグループ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112874
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邊 薫
(72)【発明者】
【氏名】清水 達夫
(72)【発明者】
【氏名】高橋 和也
(72)【発明者】
【氏名】広野 遊
【審査官】 野田 華代
(56)【参考文献】
【文献】 特表2002−505422(JP,A)
【文献】 特開2014−202573(JP,A)
【文献】 特表2015−507204(JP,A)
【文献】 国際公開第2016/031486(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2003/0170609(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 15/00−15/14
G01N 37/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アボート処理を行わずに、目標粒子を含む全体試料から当該目標粒子を含む分取試料を分取する第一分取部と、
前記分取試料に対してアボート処理を行い、前記目標粒子のみを分取する第二分取部と、
前記第一分取部と前記第二分取部との間に設けられ、前記分取試料における粒子間隔を変更する粒子間隔変更部と、
を備える、粒子分取装置。
【請求項2】
前記第一分取部及び第二分取部は互いに別部材として形成され、第一分取部による分取後、前記第二分取部による分取が行われる、請求項1記載の粒子分取装置。
【請求項3】
前記第一分取部及び第二分取部は同一部材として形成され、第一分取部による分取後、前記第二分取部による分取が行われる、請求項1記載の粒子分取装置。
【請求項4】
前記粒子間隔変更部は、前記第一分取部により分取された分取試料における粒子間隔を無作為状態に戻す、請求項2又は3に記載の粒子分取装置。
【請求項5】
更に、前記全体試料に対する目標粒子の比率を測定する測定部と、
前記測定部による測定結果に基づいて、前記第一分取部による分取作業と第二分取部による分取作業とを並列作業に切り替える分取切り替え部と、を備える、請求項1から4のいずれか一項に記載の粒子分取装置。
【請求項6】
アボート処理を行わずに、目標粒子を含む全体試料から当該目標粒子を含む分取試料を分取する第一分取工程と、
前記分取試料に対してアボート処理を行い、前記目標粒子のみを分取する第二分工程と、
前記第一分取工程と前記第二分取工程との間に行われ、前記分取試料における粒子間隔を変更する粒子間隔変更工程と、
を含む、粒子分取方法。
【請求項7】
前記粒子間隔変更工程では、前記分取試料における粒子間隔を無作為状態に戻す、請求項6に記載の粒子分取方法
【請求項8】
更に、前記全体試料に対する目標粒子の比率に基づいて、前記第一分取工程と第二分取工程とを並列に実行させる分取切り替え工程と、を含む、請求項7に記載の粒子分取方法
【請求項9】
アボート処理を行わずに、目標粒子を含む全体試料から当該目標粒子を含む分取試料を分取する第一分取部と、
前記分取試料に対してアボート処理を行い、前記目標粒子のみを分取する第二分取部と、
前記第一分取部と前記第二分取部との間に設けられ、前記分取試料における粒子間隔を変更する粒子間隔変更部と、
を備える、粒子分取用マイクロチップ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本技術は、粒子分取装置及び粒子分取方法に関する。より詳しくは、流路を通流するシースフローから目的とする微小粒子のみを高速かつ安定して取り出すことが可能な粒子分取装置等に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の粒子分取装置としては、例えば、流路内に微小粒子を含むシースフローを形成し、シースフロー中の微小粒子に光を照射して微小粒子から発生する蛍光及び散乱光を検出し、所定の光学特性を示す微小粒子群を分別回収する微小粒子分取装置が知られている。例えば、フローサイトメータでは、サンプル中に含まれる複数種類の細胞を蛍光色素により標識し、各細胞に標識された蛍光色素を光学的に識別することによって、特定の種類の細胞のみを分別、回収することが行われている。
【0003】
前記フローサイトメータにおいては、特許文献1に示されているような、フローセルやマイクロチップなどから排出される流体を液滴化して、その液滴にプラス(+)又はマイナス(−)の電荷を付与し、目的粒子を分取する、所謂液滴荷電方式や、特許文献2に示されているような、マイクロチップ内で分取を行うマイクロ流路方式などが知られている。
【0004】
このようなフローサイトメータの技術は、例えば免疫細胞療法などの分野で臨床用途として活用されることが期待され、無菌対応が可能で扱い易く、目的とする細胞を高純度で高速に分取することができる分取装置が求められている。(非特許文献1、非特許文献2)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−145213号公報
【特許文献2】特開2014−036604号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Leukemia (2016) 30, 492-500; doi:10.1038/leu.2015.247; published online 6 October 2015
【非特許文献2】Baghbaderani et al., cGMP-Manufactured Human Induced Pluripotent Stem Cells Are Available for Preclinical and Clinical Applications, Stem Cell Reports (2015), http://dx.doi.org/10.1016/j.stemcr.2015.08.015
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、従来の粒子分取技術では、分取を行う際にはある有限の体積中に存在する液体と粒子を一緒に取り込むため、目的粒子を分取しようとする場合、空間的に隣接する粒子との距離が近い場合には、その隣接粒子を伴連れして取り込む可能性が高くなる。このため、フローサイトメータにおいて目的粒子の高速分取を実現しようとすると、目的粒子と共に目的外粒子を伴連れする確率が高まり、分取された全体試料に対する目的粒子の比率(「純度」、「ピューリティ」ともいう)が低下するという問題があった。
また、純度の低下が許容できない場合、隣接粒子との通過時間間隔が短い粒子に関してはその粒子が目的粒子である場合にも、処理系に置いて分取を行わないという判断(以下、「アボート」ともいう)を行う必要があり、投入した目的粒子数に対する分取された目的粒子数の比率(「収率」、「イールド」ともいう)が低下し、その結果として分取を高速化できないという問題があった。
更に、粒子の分取を高速化するための手段としては、複数の分取機構を並列化して同時駆動させる方法が考えられるが、シース形成部に加えて、例えば染色された粒子の蛍光色素を励起するための励起光学系や、蛍光を検出するための検出系、検出した光を光電変換素子で電気信号に変換しそれを増幅しデジタル化する電気系、その信号に基づいて分取するかどうかを判断する処理系、などが分取機構の並列数に比例して粒子分取装置の大型化やコストアップを招くという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本技術は、アボート処理を行わずに、目標粒子を含む全体試料から当該目標粒子を含む分取試料を分取する第一分取部と、前記分取試料に対してアボート処理を行い、前記目標粒子のみを分取する第二分取部と、を備える、粒子分取装置を提供する。
本技術に係る粒子分取装置において、前記第一分取部及び第二分取部は互いに別部材として形成され、第一分取部による分取後、前記第二分取部による分取が行われる構成であってもよい。
また本技術に係る粒子分子装置において、前記第一分取部及び第二分取部は同一部材として形成され、第一分取部による分取後、前記第二分取部による分取が行われる構成であってもよい。
更に本技術に係る粒子分子装置において、前記第一分取部により分取された分取試料における粒子間隔を無作為状態に戻す撹拌部と、を備えていてもよい。
また本技術に係る粒子分子装置において、前記全体試料に対する目標粒子の比率を測定する測定部と、前記測定部による測定結果に基づいて、前記第一分取部による分取作業と第二分取部による分取作業とを並列作業に切り替える分取切り替え部と、を備えていてもよい。
【0009】
本技術は、アボート処理を行わずに、目標粒子を含む全体試料から当該目標粒子を含む分取試料を分取する第一分取工程と、前記分取試料に対してアボート処理を行い、前記目標粒子のみを分取する第二分工程と、を含む、粒子分取方法をも提供する。
本技術に係る粒子分取方法において、前記第一分取工程を行った後、前記分取試料における粒子間隔を無作為状態に戻す撹拌工程と、を含んでいてもよい。
また本技術に係る粒子分取方法において、更に、前記全体試料に対する目標粒子の比率に基づいて、前記第一分取工程と第二分取工程とを並列に実行させる分取切り替え工程と、を含んでいてもよい。
【0010】
更に、本技術は、アボート処理を行わずに、目標粒子を含む全体試料から当該目標粒子を含む分取試料を分取する第一分取部と、前記分取試料に対してアボート処理を行い、前記目標粒子のみを分取する第二分取部と、を備える、粒子分取用マイクロチップをも提供する。
【0011】
本技術において、「目的粒子」には、細胞や微生物、リポソームなどの生体関連微小粒子、あるいはラテックス粒子やゲル粒子、工業用粒子などの合成粒子などが広く含まれるものとする。
【0012】
前記生体関連微小粒子には、各種細胞を構成する染色体、リポソーム、ミトコンドリア、オルガネラ(細胞小器官)などが含まれる。細胞には、動物細胞(血球系細胞など)および植物細胞が含まれる。微生物には、大腸菌などの細菌類、タバコモザイクウイルスなどのウイルス類、イースト菌などの菌類などが含まれる。さらに、生体関連微小粒子には、核酸やタンパク質、これらの複合体などの生体関連高分子も包含され得るものとする。また、工業用粒子は、例えば有機もしくは無機高分子材料、金属などであってもよい。有機高分子材料には、ポリスチレン、スチレン・ジビニルベンゼン、ポリメチルメタクリレートなどが含まれる。無機高分子材料には、ガラス、シリカ、磁性体材料などが含まれる。金属には、金コロイド、アルミなどが含まれる。これら微小粒子の形状は、一般には球形であるのが普通であるが、非球形であってもよく、また大きさや質量なども特に限定されない。
【発明の効果】
【0013】
本技術によれば、流路を通流するシースフローから目的とする微小粒子のみを高速かつ安定して取り出すことが可能な微小粒子分取技術が提供される。
なお、ここに記載された効果は、必ずしも限定されるものではなく、本技術中に記載されたいずれかの効果であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本技術に係る粒子分取装置の第一実施形態の概念を模式的に示す模式概念図である。
図2図1に示す粒子分取装置が備える第一分取部における分取処理を模式的に示す模式概念図である。
図3図1に示す粒子分取装置が備える第二分取部における分取処理を模式的に示す模式概念図である。
図4】第一分取部において目的粒子を捕獲する際の、目的粒子と目的外粒子との位置関係を模式的に示す模式概念図である。
図5】第一分取部における分取直後に後続粒子を取り込めない時間帯を模式的に示す模式概念図である。
図6】第一分取部において、目的粒子を捕獲する際、当該目的粒子の近傍に存在する目的粒子を取り込む確率を説明するための模式概念図である。
図7】本技術に係る粒子分取装置の第二実施形態の概念を模式的に示す模式概念図である。
図8】本技術に係る粒子分取装置の第三実施形態の概念を模式的に示す模式概念図である。
図9】本技術に係る粒子分取用マイクロチップの第一実施形態の概念を模式的に示す模式概念図である。
図10図9に示す分取動作を説明する図である。
図11図9に示すマイクロチップが備える圧力室の機能を示す図である。
図12図9に示すマイクロチップの撹拌部の側面図である。
図13図9に示すマイクロチップが備える撹拌部の詳細を示す拡大図である。
図14】本技術に係る第一実施形態の粒子分取方法を示すフローチャートである。
図15】本技術に係る第二実施形態の粒子分取方法を示すフローチャートである。
図16】パラメータ1に基づいた、縦続方式と並列方式による性能比較の結果を示す図面代用グラフである。
図17】パラメータ2に基づいた、縦続方式と並列方式による性能比較の結果を示す図面代用グラフである。
図18】パラメータ3に基づいた、縦続方式と並列方式による性能比較の結果を示す図面代用グラフである。
図19】パラメータ4に基づいた、縦続方式と並列方式による性能比較の結果を示す図面代用グラフである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本技術を実施するための好適な形態について図面を参照しながら説明する。以下に説明する実施形態は、本技術の代表的な実施形態の一例を示したものであり、これにより本技術の範囲が狭く解釈されることはない。なお、説明は以下の順序で行う。
1.第一実施形態に係る粒子分取装置
(1)収容部
(2)送液部
(3)第一分取部
(3−1)検出系
(3−2)処理系
(3−3)分取系
(4)撹拌部
(5)第二分取部
(5−1)分取系
(6)貯留部
2.第二実施形態に係る粒子分取装置
(1)第一バルブ
(2)第二バルブ
(3)分取試料収容部
3.第三実施形態に係る粒子分取装置
(1)第一バルブ
(2)第二バルブ
(3)第三バルブ
(4)第四バルブ
4.第一実施形態に係る粒子分取用マイクロチップ
(1)第一分取区間
(2)送液区間
(3)第二分取区間
5.第一実施形態に係る粒子分取方法
(1)全体試料流入工程
(2)第一分取工程
(3)撹拌工程
(4)第二分取工程
(5)目的粒子貯留工程
6.第二実施形態に係る粒子分取方法
【0016】
<1.第一実施形態に係る粒子分取装置>
図1〜6を用いて、本技術に係る粒子分取装置の第一実施形態について説明する。
本技術に係る粒子分取装置1は、少なくとも、第一分取部11と、第二分取部12と、を備える。また、当該粒子分取装置1は、必要に応じて、攪拌部13、収容部14、貯留部15、送液部16を備えていてもよい。以下、粒子が流れる順に即して各部について説明する。当該粒子分取装置1では、第一分取部11による分取と、第二分取部12による分取と、二回の分取作業が行われる。尚、本技術に係る粒子分取装置1において、分取回数は特に限定されず、分取部が二以上備えている構成であればよい。
【0017】
(1)収容部
本技術に係る粒子分取装置1は、前記収容部14を備える。当該収容部14には、分取対象である目的粒子が含まれる全体試料が収容される。この収容部14の構成としては特に限定されず、目的粒子の保存環境状況や、粒子分取装置の使用環境などに応じて適宜変更することができ、公知の構造を採用することができる。例えば、目的粒子を外部雰囲気から隔離する必要があるような場合には、逆止弁などを備えて外部から他の試料が混入することができない構造や、試験管などの外部雰囲気と全体試料が触れた状態の容器の構造など多種多様な構造が考えられる。
【0018】
(2)送液部
本技術に係る粒子分取装置1は、必要に応じて、送液部16を備えていてもよい。この送液部16は、前記収容部14内に収容された全体試料を前記第一分取部11へと流入させる。この送液部16の構造としては、全体試料を第一分取部11へと送り出すことができる構成であればよく、公知の構造を採用することができる。
例えば、前記収容部14に管状部材(チューブなど)が接続され、当該管状部材を介して全体試料が第一分取部11へと送液されるような場合には、送液部16の構成としては、公知の送液ポンプなどが考えられる。
【0019】
(3)第一分取部
本技術に係る粒子分取装置1は、前記全体試料から目的試料を分取するための第一分取部11を備える。この第一分取部11は、全体試料から目的粒子を検出する検出系110と、検出系110の検出結果に基づいて目的粒子の分取を行う分取系120と、検出された光学情報を電気情報に変換する処理系130と、を備える。各系について、以下に説明する。
【0020】
(3−1)検出系
本技術に係る第一分取部11では、前記送液部16により前記全体試料が検出系110へと送り出されるようになっている。
この検出系110は、例えば、前記全体試料が流入する試料流路と、シース液が流入するシース液流路が形成され、流路内に目的粒子を含むシースフローが形成される構成となっている。
また、この検出系110は、シースフロー中の目的粒子に対して蛍光色素を標識する標識部(図示外)や、シースフロー中の全体試料に対して励起光を照射する照射部(図示外)、当該照射部による光の照射により目的粒子から発せられる蛍光及び/又は散乱光を検出する光検出部(図示外)を備えている。
前記標識部の構成としては特に限定されず、公知の構成を採用することができる。また、前記標識部が前記目的粒子に対して標識する蛍光色素の種類及び数は特に限定されるものではなく、FITC(fluorescein isothiocyanete:C2111NOS)、PE(phycoerythrin)、PerCP(periidininchlorophyll protein)、PE−Cy5及びPE−Cy7などの公知の色素を、必要に応じて適宜選択して使用することができる。更に、各分取対象試料が複数の蛍光色素で修飾されていてもよい。
【0021】
また、前記照射部の構成も特に限定されず、公知の構成を採用することができる、当該照射部が備える光源としては、特に限定されず、例えば、半導体レーザすなわちレーザダイオード、固体レーザまたはガスレーザ等であってもよい。このうち、半導体レーザを用いることで、装置を小型かつ安価に構成することができる。
また、前記照射部から照射される光の波長は特に限定されず、目的粒子の種類により適宜変更することができる。例えば、前記目的粒子が細胞である場合、300nm以下の波長は目的粒子にダメージを与える可能性があるので使用しないことが好ましい。
【0022】
更に、光検出部の構成としても特に限定されず、公知の構成を採用することができる。この光検出部では、前記目的粒子から発せられた蛍光及び/又は散乱光を検出し、その光学信号を電気信号へと変換する。この信号変換方法としては特に限定されず、公知の方法を用いることができる。そして、前記光検出部により検出された電気信号は前記処理系130へと出力される。
【0023】
(3−2)処理系
前記第一分取部11における処理系130では、入力された電気信号に基づいて分取系120により分取された分取試料の光学特性を判定する。そして、光学特性に応じて、目的粒子が含まれる分取試料が前記分取系120により分取されるよう、分取情報を分取系120に出力する。その一方で、目的粒子が含まれていない試料に関しては廃棄されるよう、廃棄情報を分取系120に出力する。
この処理系130の構成は特に限定されず、前記分取情報及び廃棄情報の出力処理を実行するためのプログラムとOSが格納されたハードディスク、CPU及びメモリにより構成してもよい。
【0024】
(3−3)分取系
第一分取部11における分取系120では、処理系130から出力された情報に基づいて、全体試料から、目的粒子が含まれる分取試料を分取する。
具体的には、図2を用いて説明する。図2において、左右方向は全体試料が流れる時間軸tを示しており、四角は目的粒子を示し、△は目的外粒子を示している。図2に示すように、第一分取部11の分取系120では、全体試料が流れている中で、目的粒子だけでなく、目的粒子に隣接して目的外粒子が存在している場合であっても、アボート処理(分取を行わないという判断)を行わずに、当該目的外粒子及び目的粒子を含む分取試料を分取する。
当該分取系120による分取方法は特に限定されず、アボート処理を行わず、目的粒子を含む分取試料を分取する構成であればよく、公知の方法を採用することができる。
【0025】
(4)撹拌部
本技術に係る粒子分取装置1は、必要に応じて、攪拌部13を備えていてもよい。
この撹拌部13は、前記第一分取部11と第二分取部12との間に設けられ、前記分取試料における粒子間隔の変更を行う。具体的には、第一分取部11により分取された分取試料中の粒子間隔を、全体試料時と同様、無作為な状態に戻す。そして、粒子間隔が無作為な状態となった分取試料を前記第二分取部12へと送液する。
この撹拌部13の構成としては特に限定されず、公知の撹拌器等を採用することができる。第一分取部11と第二分取12とは管状部材により接続され、当該管状部材の内部を分取試料が流れる構成である場合、攪拌部13としては、例えば所謂ペリスタルティック・ドージングポンプなどが挙げられ、これにより前記管状部材を圧迫・弛緩する構成が考えられる。
尚、前記分取試料を撹拌する方法としては特に限定されず、公知の方法を採用することができ、例えば、前記分取試料に対して圧力を負荷する方法などが挙げられる。
【0026】
(5)第二分取部
本技術に係る粒子分取装置1は、前記分取試料から目的粒子を分取する第二分取部12を備える。この第二分取部12は、分取試料から目的粒子を検出する検出系210と、検出系210の検出結果に基づいて目的粒子の分取を行う分取系220と、検出された光学信号を電気信号に変換する処理系230と、を備える。各系について、以下に説明する。
尚、検出系210に関しては、検出対象が分取試料であること以外は、第一分取部11の検出系110と同一の構成であるため、その説明は省略する。また、前記処理系230の構成に関しても、第一分取部11の処理系130と同一であるため、その説明を省略する。
【0027】
(5−1)分取系
第二分取部12における分取系220では、処理系230から出力された情報に基づいて、分取試料から目的粒子を分取する。
具体的には、図3を用いて説明する。図3において、左右方向は全体試料が流れる時間軸tを示しており、四角は目的粒子を示し、△は目的外粒子を示している。図3に示すように、分取系220では、第一分取部11の分取系120とは異なり、目標粒子のみを分取し、目的外粒子を認識した場合にはアボート処理を行う。
尚、当該分取系220による分取方法は特に限定されず、目的粒子のみを分取する構成であればよく、公知の方法を採用することができる。
【0028】
(6)貯留部
本技術に係る粒子分取装置1は、必要に応じて、貯留部16を備えていてもよい。
この貯留部16には、前記第二分取部12により分取された目的粒子のみが貯留されるようになっている。
当該貯留部16の構成としては特に限定されず、目的粒子の保存環境状況や粒子分取装置の使用環境などに応じて適宜変更することができ、公知の構造を採用することができる。例えば、目的粒子が外部環境により損傷を受けやすい等の条件がある場合には、貯留された目的粒子が外部雰囲気に触れない密閉容器などが挙げられる。
【0029】
以上のような本技術に係る粒子分取装置1では、例えば、第一分取部11及び第二分取部12により分取作業が二回行われるが、最終的に、目的粒子の回収率(以下、「イールド(Yield)」ともいう)を所望の値以上とする必要がある。
このため、本技術に係る粒子分取装置1では、第一分取部11による分取作業の際の、単位時間あたりの全体試料の検出数を、最終的な目的粒子の所望の回収率Ysとの関係で設定することが望ましい。
具体的には、例えば、第一分取部11における、単位時間あたりの全体試料の検出数λが、下記数式1が成り立つ範囲で設定する一態様が考えられる。
【0030】
【数1】
【0031】
以下、前記数式1を算出する方法について、図4〜6を用いて説明する。
ここで前述の如く、本技術に係る粒子分取装置1では、シースフローを形成して目的粒子の分取を行っており、いわゆるフローサイトメータの構成をなしている。
このフローサイトメータの性能指標を、下記表1に示すように定義する。
【0032】
【表1】
【0033】
以下、表1に示される定義に基づいて、前記数式1を導き出すための各パラメータについて説明する。
すなわち、フローサイトメータでは一般的に、単位時間当たりに検出部を通過する粒子数はPoisson分布に従うことが知られている。
ここで、単位時間当たりの平均通過粒子数をλとすると,t時間当たりの平均通過粒子数はλtで表される。またt時間当たりにx個の目的粒子が通過する確率は、下記数式2で表される。
【0034】
【数2】
【0035】
更に、t時間の間に、目的粒子が通過しない確率は、前記数式2に基づいて、下記数式3で表すことができる。
【0036】
【数3】
【0037】
また、ある目的粒子に着目し、当該目的粒子の前方T時間の間に粒子が存在せず,且つその後方T時間の間に粒子が存在しない確率は、前記数式2に基づいて、下記数式4で表すことができる。
【0038】
【数4】
【0039】
更に、フローサイトメータに関しては、目的粒子を分取するにあたり、当該目的粒子(単位時間当たりの通過数をλとする)と目的外粒子(単位時間当たりの通過数をλとする)とが混在することが考えられる。また、ある目的粒子を捕獲する場合、当該目的粒子とこの目的粒子の前後に存在する目的外粒子からなるλ+1個の集合を考えると、この集合に含まれる粒子は互いに相関が無いので,目的粒子の前方T時間の間に目的外粒子が通過せず且つその後方T時間の間に目的外粒子が通過しない確率は、下記数式5で表すことができる。
【0040】
【数5】
【0041】
次に、検出した目的粒子に対する分取効率Eについて、図4を用いて以下に説明する。
ここで、一回の分取動作で取り込まれる到来粒子群の時間幅(以下、「捕獲時間幅」という)をTと表す。
そして、フローサイトメータでは一般的に、分取試料中の目的粒子比率Pを確保するため、図4中、T+T>Tである場合はその目的粒子の取り込みを行う。その一方で、T+T≦Tである場合はその目的粒子の取り込みを行わないという判断(アボート処理)を行う。
このため、検出した目的粒子に対する分取効率Eは、下記数式6で表すことができる。
【0042】
【数6】
【0043】
また、フローサイトメータにより分取を行う際、特にマイクロ流路方式を採用している場合は図5に示すように、分取直後に後続粒子を取り込めない時間帯(以下、「デッドタイムT」という)が存在する。従って、数式1に基づいて、本技術に係る粒子分取装置1の第一分取部11における単位時間あたりの全体試料の検出数λを、最終的な目的粒子の回収率Yとの関係で示す場合には、前記デッドタイムTをも考慮する必要がある。
【0044】
更に、フローサイトメータにおいて、アボート処理を行わない場合、分取部に到達した目的粒子を捕獲する時、当該目的粒子の近傍に存在する目的粒子をも取り込む可能性がある。
かかる場合、捕獲しようとしている粒子より時間軸上過去に存在する粒子は既に全て捕獲されているはずなので、図6に示すように、一緒に取り込まれる可能性のある粒子は捕獲しようとしている粒子より未来の時間幅T/2内に存在している粒子だけと認識できる。
このため、捕獲される目的粒子一個に対して残りλ−1個の目的粒子集団がT/2の時間幅に混入する確率を考慮すると、一回の分取動作で捕獲される目的粒子数の平均値は、下記数式7で表すことができる。
【0045】
【数7】
【0046】
また、フローサイトメータにおいて、アボート処理を行う場合に、ある目的粒子の捕獲を試みてから実際に目的粒子を捕獲するのに要する時間の期待値Tを考慮する必要がある。
ここで、目的粒子の平均到来時間間隔は1/λであるため、e−λUTP≡Eと定義すると、期待値Tは、下記数式8で表すことができる。ここで、数式8の第1項目は最初の粒子をアボートせずに取り込む場合、第2項目は1番目の粒子をアボートし2番目の粒子を取り込む場合、第3項目は1、2番目の粒子をアボートし3番目の粒子を取り込む場合、第4項目は1、2、3番目の粒子をアボートし4番目の粒子を取り込む場合、等々、の時間を表している。
【0047】
【数8】
【0048】
この数式8に基づいて、下記数式9が算出される。
【0049】
【数9】
【0050】
尚、前記数式9の算出には、下記数式10に示す関係式を用いた。
【0051】
【数10】
【0052】
更に前述の如く、フローサイトメータにおいて、分取を行う上で、目的粒子と目的外粒子が混入する場合がある。
ここで、例えば、目的粒子が第一分取部11を通過する際の単位時間当たりの通過数をλと示し、目的外粒子が第一分取部11を通過する際の単位時間当たりの通過数をλと示した場合、粒子分取装置に投入される全体試料は、下記数式11で表すことができる。
【0053】
【数11】
【0054】
更に前記数式11により、全粒子数に対する目的粒子数の比率rは、下記数式12で表すことができる。
【0055】
【数12】
【0056】
以上から、目的粒子が第一分取部11を通過する際の単位時間当たりの通過数をλrと目的外粒子が第一分取部11を通過する際の単位時間当たりの通過数λは、下記数式13で表すことができる。
【0057】
【数13】
【0058】
数式2〜13に示すパラメータを用いて、本技術に係る第一分取部11における分取すべき全体試料に対する回収率Y1を算出することができる。
ここで、単位時間当たりの分取回数をNとすると、アボートで費やされる時間はN・Tとなり、デッドタイムで費やされる時間はN・Tとなる。このため、単位時間当たり分取に寄与する有効な時間は1−N・T−N・Tで表される。従って、単位時間当たりに捕獲される目的粒子数の平均値に関しては、下記数式14に示す等式が成り立つ。
【0059】
【数14】
【0060】
前記数式14を変換することにより、Nを下記数式15で表すことができる。
【0061】
【数15】
【0062】
この数式15からすれば、単位時間当たりに捕獲される目的粒子数の平均値は、下記数式16で表すことができる。
【0063】
【数16】
【0064】
そして、本技術における第一分取部11では、アボート処理を行わないため、前記数式Tの値が0となり、数式16は下記数式17に変換される。この値は単位時間当たりに第二分取部12に投入される目的粒子数λT2になる。
【0065】
【数17】
【0066】
これと同様に、単位時間当たりに捕獲される目的外粒子数の平均値は、下記数式18で表すことができる。この値は単位時間当たりに第二分取部12に投入される目的粒子数λU2になる。
【0067】
【数18】
【0068】
以上の結果から、第一分取部11における分取すべき全体試料に対する回収率Y1は、「分取された目的粒子数(数式17)」を「投入した全体試料中の目的粒子数λ」で除した値であり、下記数式19で示すことができる。
【0069】
【数19】
【0070】
次に、第二分取部12における分取すべき分取試料に対する目的粒子の回収率Y2について算出する。
先ず、単位時間当たりに捕獲される目的粒子数の平均値に関しては、下記数式20に示す等式が成り立つ。
【0071】
【数20】
【0072】
前記数式20を変換することにより、Nを下記数式21で表すことができる。
【0073】
【数21】
【0074】
この数式21からすれば、単位時間当たりに捕獲される目的粒子数の平均値は、下記数式22で表すことができる。
【0075】
【数22】
【0076】
第二分取部12における回収率Y2は、「分取された目的粒子数(数式22)」を「投入した全体試料中の目的粒子数λT2」で除した値である。
このため、回収率Y2は、下記数式23で表すことができる。
【0077】
【数23】
【0078】
本技術に係る粒子分取装置1では、第一分取部11による分取と第二分取部12による分取とが行われることから、当該粒子分取装置1の分取による目的粒子の回収率YCascodeは、下記数式24に示されるように、第一分取部11における回収率Y1と第二分取部12における回収率Y2とを掛け合わせた値となる。
【0079】
【数24】
【0080】
この数式24により、本技術に係る粒子分取装置1では、前記回収率YCascodeが、最終的な目的粒子の所望の回収率Ys以上であることが好ましい。
【0081】
以上のように構成された本技術に係る粒子分取装置1によれば、第一分取部11及び第二分取部12を備え、分取を担う構成を複数備えているため、高速且つ高純度で目的粒子の分取を行うことができる。
また、第一分取部11及び第二分取部12により重畳した分取作業を可能としており、単純に分取機構を複数設ける構成としているわけではないため、粒子分取装置の大型化やコストアップを可及的に避けることができる。
更に、本技術に係る粒子分取装置1において、回収率YCascodeが、最終的な目的粒子の所望の回収率Ys以上となるように、第一分取部11における単位時間あたりの全体試料の検出数λを設定することにより、より高純度で目的粒子を分取することができる。
【0082】
<2.第二実施形態に係る粒子分取装置>
次に、図7を用いて、本技術に係る粒子分取装置の第二実施形態について説明する。
図1等に示す本技術に係る粒子分取装置1では、第一分取部11と第二分取部12とが互いに別部材として構成されているが、第二実施形態に係る粒子分取装置2では、第一分取部11と第二分取部12が同一部材として形成され、単一の分取部21が第一実施形態に係る第一分取部11及び第二分取部12の機能を担う構成となっている。これに伴い、目的粒子を循環させるための第一バルブ22、第二バルブ23及び分取試料収容部24を備えている。
以下では、第一実施形態に係る粒子分取装置1と異なる構成、すなわち前記第一バルブ22、第二バルブ23及び分取試料収容部24の構成を中心に説明し、第一実施形態に係る粒子分取装置1と共通する構成については同一の符号を付してその説明を割愛する。
尚、本実施形態が備える単一の分取部の構成は、第一実施形態に係る粒子分取装置1の第一分取部11及び第二分取部12の構成と同一であるため、その説明に関しても割愛する。
【0083】
(1)第一バルブ
第二実施形態に係る粒子分取装置2は、目的粒子を含む全体試料が流れる流路上に、第一バルブ22を備える。この第一バルブ22は、前記全体試料を分取部21へと送る流路Lと、分取部21により分取された粒子が通流する流路Mとの連結領域に設けられており、流路L上に設けられる開閉弁22a,22bと、流路M上に設けられる開閉弁22cと、を備える。
【0084】
(2)第二バルブ
粒子分取装置2は、分取部21により分取された粒子が流れる流路上に第二バルブ23を備える。この第二バルブ23は、分取部21により分取された粒子が流れる流路Nと、前記貯留部15に接続される流路Oと、前記流路Mと、の連結領域に設けられており、前記流路M上に設けられる開閉弁23aと、前記流路N上に設けられる開閉弁23bと、流路O上に設けられる開閉弁23cと、を備える。
【0085】
(3)分取試料収容部
第二実施形態に係る粒子分取装置2は、前記流路Mに連結された分取試料収容部24を備える。この分取試料収容部24は、前記流路Mに連結されていることから、分取部21によって分取された前記分取試料が収容されるようになっている。
また、第二実施形態に係る粒子分取装置2では、前記分取試料収容部24において、分取試料の撹拌が行われ、分取試料内の粒子間隔が無作為状態に戻される。すなわち、第二実施形態に係る粒子分取装置2では、分取試料収容部24が第一実施形態に係る撹拌部13としても機能している。
この分取試料収容部24の構成としては特に限定されず、目的粒子の保存環境状況や粒子分取装置の使用環境などに応じて適宜変更することができ、公知の構造を採用することができる。
【0086】
このような第二実施形態に係る粒子分取装置2では先ず、前記第一バルブ22の開閉弁22a,22bを開き、且つ、開閉弁22cを閉めた状態とする。また、第二バルブ23の開閉弁23a,23bを開き、且つ、開閉弁23cを閉めた状態とする。
かかる状態で、送液部16を駆動させることにより、収容部14内の全体試料が分取部21へと送液される。
その後、分取部21は第一実施形態の第一分取部11と同一に機能し、全体試料から、目的粒子を含む分取試料を分取する。そして、分取された分取試料は、前記流路N、M内を通流し、最終的に分取試料収容部24へと収容される。更に、当該分取試料収容部24内にて、分取試料が撹拌され、分取試料内の粒子間隔が無作為状態に戻される。
【0087】
その後、前記第一バルブ22の開閉弁22aを閉め、且つ、開閉弁22b,22cを開いた状態とし、また第二バルブ23の開閉弁23aを閉め、且つ、開閉弁23b,23cを開いた状態とする。
かかる状態で、送液部16を駆動させることにより、分取試料収容部24内の分取試料は流路M、流路L内を通流し、再び前記分取部21に流入するようになっている。
この際には、分取部21が第一実施形態の第二分取部12と同一に機能し、分取試料から目的粒子が分取される。そして、分取された目的粒子は、流路N、流路Oを通流して前記貯留部15へと貯留されるようになる。
【0088】
すなわち、第二実施形態に係る粒子分取装置2では、目的粒子が流路L,N,Mを循環して分取が二回行われるようになっている。
このような粒子分取装置2によっても、高速且つ高純度で目的粒子の分取を行うことができる。また、単純に分取機構を複数設ける構成としているわけではないため、粒子分取装置の大型化やコストアップを可及的に避けることができる。
更に、本技術に係る粒子分取装置2において、回収率YCascodeが、最終的な目的粒子の所望の回収率Ys以上となるように、一巡目の分取部21における単位時間あたりの全体試料の検出数λを設定することにより、より高純度で目的粒子を分取することができる。
【0089】
尚、図7に示す第一バルブ22及び第二バルブ23の構成は一例に過ぎず、目的粒子が流路L,N,Mを循環して分取が複数回行われる構成であれば、他の構成を採用しても差し支えない。
【0090】
<3.第三実施形態に係る粒子分取装置>
次に、図8を用いて、本技術に係る粒子分取装置の第三実施形態について説明する。
ここで、全体試料における目的粒子の比率が所定の閾値よりも低い場合には、第一実施形態及び第二実施形態に係る粒子分取装置1,2のように、前記第一分取部11及び第二分取部12により縦続的な分取を行うことが好ましい(以下、「縦続方式」という)。その一方で、全体試料における目的粒子の比率が所定の閾値よりも高い場合には、第一分取部11による分取と、第二分取部12による分取と、を並列的に行う方が分取の高速化に適している(以下、「並列方式」という)。
このため、第三実施形態に係る粒子分取装置3では、全体試料における目的粒子の比率に応じて、第一分取部11及び第二分取部12による分取方法を切り替えることができるように構成されている。これに伴い、第一バルブ31、第二バルブ32、第三バルブ33及び第四バルブ34を備える。
以下では、第一実施形態に係る粒子分取装置1と異なる構成を中心に説明し、第一実施形態に係る粒子分取装置1と共通する構成については同一の符号を付してその説明を割愛する。
【0091】
第三実施形態に係る粒子分取装置3では、予め検出系110に対して少量のサンプルを流し、当該検出系110により、全体試料における目的粒子の比率を測定する。
尚、ユーザが全体試料における目的粒子の比率を認識することができる場合には、予め検出系110にて全体試料における目的粒子の比率を測定する必要はない。
【0092】
(1)第一バルブ
第三実施形態に係る粒子分取装置3は、第一バルブ31を備える。この第一バルブ31は、前記収容部14と撹拌部13とを連結する流路L上に設けられている。そして、当該第一バルブ31は、全体試料における目的粒子の比率に応じて、流路Lの開放・閉塞を行う。
この第一バルブ31の構成としては特に限定されず、流路Lの開放・閉塞を行うことが可能な構成であればよく、公知の開閉バルブなどを採用することができる。
【0093】
(2)第二バルブ
第三実施形態に係る粒子分取装置3は、第二バルブ32を備える。この第二バルブ32は、第二分取部12と貯留部15とを連結する流路Mから分岐して前記撹拌部13に連結される流路N上に設けられている。そして、当該第二バルブ32は、全体試料における目的粒子の比率に応じて、流路Nの開放・閉塞を行う。
この第二バルブ32の構成としては特に限定されず、流路Nの開放・閉塞を行うことが可能な構成であればよく、公知の開閉バルブなどを採用することができる。
【0094】
(3)第三バルブ
第三実施形態に係る粒子分取装置3は、第三バルブ33を備える。この第三バルブ33は、前記流路Lと、当該流路Lから分岐して第二分取部12と連結する流路Oと、の連結領域に設けられ、流路L上に設けられる開閉弁33a,33cと、流路O上に設けられる開閉弁33bと、を備える。
【0095】
(4)第四バルブ
第三実施形態に係る粒子分取装置3は、第四バルブ34をも備える。この第四バルブ34は、前記流路Nと、当該流路Nから分岐して第一分取部11と連結する流路Pと、の連結領域に設けられ、流路N上に設けられる開閉弁34a,34cと、流路P上に設けられる開閉弁34bと、を備える。
【0096】
このような第三実施形態に係る粒子分取装置3において、全体試料における目的粒子の比率が閾値(縦続方式における回収率YParallelと並列方式における回収率YCascodeが互いに等しくなる目的粒子比率)よりも低い場合には、第一バルブ31及び第三バルブ33の閉塞弁33aを閉めて流路Lを閉塞する。また、第二バルブ32及び第四バルブ34の閉塞弁34aを閉めて流路Nを閉塞する。
その結果として、目的粒子を含む全体試料は送液部16の駆動により第一分取部11へと送られるようになる。そして、当該第一分取部11により、全体試料から分取試料のみが分取される。
この分取試料は、前記流路P、攪拌部13、流路Oの順に通流し、前記第二分取部12へと流入する。そして、当該第二分取部12により分取試料から目的試料のみが分取され、当該目的粒子は流路Mを通流して、前記貯留部15に貯留される。
【0097】
かかる場合には、第一実施形態に係る粒子分取装置1と同一の構成であるため、第一分取部11における、単位時間あたりの全体試料の検出数λが、下記数式25が成り立つ範囲で設定することが好ましい。
【0098】
【数25】
【0099】
一方、全体試料における目的粒子の比率が前記閾値よりも高い場合には、第一バルブ31を開き、且つ、第三バルブ33において開閉弁33cを閉める一方、開閉弁33a,33bを開く。これにより、前記流路Lと流路Oとを連通させる。
また、第二バルブ31を開き、且つ、第四バルブ34において開閉弁34cを閉める一方、開閉弁34a,34bを開く。これにより、前記流路P、流路N、流路Mを連通させる。
このように設定することにより、送液部16の駆動により収容部14から排出された全体試料は、第一分取部11による分取及び第二分取部12による分取に同時に供され、最終的には各分取部11,12により分取された目的粒子は貯留部15に貯留される。
【0100】
ここで、単位時間当たりの分取回数をNとすると、アボートで費やされる時間はN・Tとなり、デッドタイムで費やされる時間はN・Tとなる。このため、単位時間当たり分取に寄与する有効な時間は1−N・T−N・Tで表される。従って、単位時間当たりに捕獲される目的粒子数の平均値に関しては、下記数式26に示す等式が成り立つ。
【0101】
【数26】
【0102】
前記数式26を変換することにより、Nを下記数式27で表すことができる。
【0103】
【数27】
【0104】
この数式27からすれば、単位時間当たりに捕獲される目的粒子数の平均値は、下記数式28で表すことができる。
【0105】
【数28】
【0106】
ここで、一回の分取における回収率は、「分取された目的粒子数(数式28)」を「投入した全体試料中の目的粒子数λ」で除した値、と定義することができるため、当該回収率Yは、下記数式29で表すことができる。
【0107】
【数29】
【0108】
そして、並列方式とした場合、並列数をMとすると、数式29におけるλ及びλはそれぞれ、λ/M及びλ/Mに置き換えることができる。その結果、並列方式の場合における回収率YParallelは、下記数式30で表すことができる。
【0109】
【数30】
【0110】
以上から、第三実施形態に係る粒子分取装置3において、並列方式を採用する場合には、各分取部11,12における、単位時間あたりの全体試料の検出数λが、下記数式31に示されるように、分取部11,12による回収率YParallelが最終的な目的粒子の所望の回収率Ys以上となるように、設定することが好ましい。
【0111】
【数31】
【0112】
縦続方式と並列方式との切り替え基準についてより具体的に説明すると、前記数式30を満たす最大のイベントレートを「λParallel_max」とし、前記数式25を満たす最大のイベントレートを「λCascode_max」とした場合、下記数式32の条件の場合には、並列方式を選択する。一方で、下記数式33の条件の場合には、縦続方式を選択する。
【0113】
【数32】
【0114】
【数33】
【0115】
このような第三実施形態に係る粒子分取装置3では、前記第一バルブ31、第二バルブ32、第三バルブ33及び第四バルブ34の開閉により、縦続式と並列式が切り替わるようになっている。
すなわち、これら第一バルブ31、第二バルブ32、第三バルブ33及び第四バルブ34が、本技術に係る分取切り替え部に相当する。
【0116】
以上のような第三実施形態に係る粒子分取装置3によれば、並列方式と縦続方式の切り替えが可能であるため、全体試料における目的粒子の比率に応じて高純度且つ高速に目的粒子の分取を行うことができる。
更に言えば、縦続方式を選択した場合には、高速且つ高純度で目的粒子の分取を行うことができる。また、単純に分取機構を複数設ける構成としているわけではないため、粒子分取装置の大型化やコストアップを可及的に避けることができる。また、本技術に係る粒子分取装置3において、回収率YCascodeが最終的な目的粒子の所望の回収率Ys以上となるように、第一分取部11における単位時間あたりの全体試料の検出数λを設定することにより、より高純度で目的粒子を分取することができる。
一方、並列方式を選択した場合であっても、高速且つ高純度で目的粒子の分取を行うことができる。また、単純に分取機構を複数設ける構成としているわけではないため、粒子分取装置の大型化やコストアップを可及的に避けることができる。
【0117】
<4.第一実施形態に係る粒子分取用マイクロチップ>
本技術は、粒子分取用マイクロチップをも提供する。
図9〜13を用いて、本技術に係る粒子分取用マイクロチップの第一実施形態について説明する。
【0118】
本技術に係る粒子分取用マイクロチップ4(以下、「マイクロチップ」ともいう)は、全体試料から目的粒子を含む分取試料を分取する第一分取区間Aと、第一分取区間4Aにて分取された分取試料を送液する送液区間4Bと、前記分取試料から目的粒子のみを分取する第二分取区間4Cと、を備える。各区間の構成について、以下に説明する。
【0119】
(1)第一分取区間
マイクロチップ4は、目的粒子を含む全体試料を導入するための試料インレット41を備える。この試料インレット41には全体試料が通流する試料流路42が接続されている。また、このマイクロチップ4は、シース液を導入するためのシース液インレット43を備える。このシース液インレット43からは二本のシース液流路44,44が分岐しており、前記シース液はこれらシース液流路44,44内を通流する。更に、これらシース液流路44,44は、前記試料流路42と合流して一本の主流路45を形成している。この主流路45において、試料流路42を送液される全体試料の層流と、シース液流路44,44を送液されるシース液層流と、が合流し、全体試料の層流がシース液層流に挟み込まれたシースフローを形成する。
【0120】
また、前記主流路45では、当該主流路45内を流れる全体試料、特に目的粒子に対して、照射部7Aにより励起光が照射される。この光照射により前記全体試料から発せられた蛍光及び/又は散乱光は、光検出部8Aにより検出される。この光検出部8Aにより検出された光学信号は電気信号へと変換され、駆動部9Aへと出力される。この駆動部9Aは、後述する圧力室47における圧力調整を行い、目的粒子を含む分取試料を前記圧力室47へと送り込む機能を発揮する。当該駆動部9Aが行う処理については後述する。
【0121】
更に、主流路45は下流において、三つの流路に分岐している。具体的には、主流路45は、分取流路46及び二本の廃棄流路48,48に分岐している。このうち、分取流路46は、目的粒子を含み、所定の光学特性を満たすと前記駆動部9Aによって判定された分取試料が取り込まれる流路である。また、分取流路46の下流には、目的粒子を含む分取試料が取り込まれる圧力室47が設けられている。この圧力室47の内空は、平面方向(分取流路46の幅方向)に拡張されるとともに、断面方向(分取流路46の高さ方向)にも拡張されている。すなわち、圧力室47では全体試料及びシース液の流れ方向に対する垂直断面が大きくなるように形成されている。
一方、駆動部9Aによって所定の光学特性を満たさないと判定された、目的粒子を含まない全体試料は、分取流路46内に取り込まれることなく、二本の廃棄流路48,48のいずれか一方に流れる。その後、廃棄ポート49より外部に排出される。
【0122】
すなわち、マイクロチップ101において、前記照射部7A、光検出部8A、駆動部9A、分取流路46及び圧力室47は、本技術の第一分取部に相当し、図1に示す粒子分取装置1の第一分取部11と同一の機能を発揮する。
【0123】
目的粒子の分取流路46内への取り込みは、駆動部9Aによって分取流路46内に負圧を発生させ、この負圧を利用して目的粒子を分取流路46内に吸い込むことによって行われる。負圧を発生させる構成としては、前記圧力室47の体積を増減させるアクチュエータが考えられ、一例としてピエゾ素子などの圧電素子が考えられる。
【0124】
前記アクチュエータは、印加される電圧の変化に伴って伸縮力を発生し、圧力室47内に圧力変化を生じさせる。これに伴って分取流路46内に流動が生じると、同時に、分取流路46内の体積が変化する。分取流路46内の体積は、印加電圧に対応したアクチュエータの変位量によって規定される体積に到達するまで変化する。
【0125】
以下、図10及び11を用いて、駆動部9Aにより分取について詳細に説明する。
駆動部9Aは、入力される電気信号に基づいて、全体試料、特に目的粒子の光学特性を判定する。粒子が目的粒子と判定された場合、駆動部9Aは、図10A及びBに示すように、当該目的粒子を含む分取試料が主流路45から分岐部に移動するまでの時間(遅れ時間)を経過した後に、アクチュエータに当該取試料を取得するための駆動信号を出力する。
【0126】
具体的には、アクチュエータがピエゾ素子である場合、駆動部9Aは、ピエゾ収縮となる電圧を印加し、圧力室47の容積を増加させ、分取流路46の内圧を負圧にすることで、分取試料を主流路45内から分取流路46内へ取り込む。
【0127】
一方、微小粒子が目的外粒子と判定された場合、駆動部9Aは、図10C及びDに示すように、アクチュエータに非取得の駆動信号を出力する。かかる場合、アクチュエータは動作せず、目的外粒子は二本の廃棄流路48,48のいずれか一方に流れる。
【0128】
駆動部9Aは、目的粒子の光学特性の判定と、アクチュエータへの駆動信号の出力とを分析終了まで繰り返し(図10E〜F参照)、目的粒子を含む分取試料のみを分取流路46内に蓄積する(図10F参照)。
【0129】
分取流路46内へ引き込まれた目的粒子は、図11Aに示すように、圧力室47内に取り込まれる。図中、符号Pは、圧力室47内に取り込まれた分取試料を示し、符号47aは、圧力室47への分取試料Pの取込口を示す。分取試料Pの流れは、内空が拡張された圧力室47に流入する際に噴流(ジェット)となり、流路壁面から剥離する(図11A中矢印参照)。このため、分取試料Pは、取込口47aから離れて、圧力室47の奥まで取り込まれる。
【0130】
前述の如く、第一分取区間4Aでは、図1に示す第一分取部11と同一の機能を発揮する。このため、第一分取区間4Aにおける、単位時間あたりの全体試料の検出数λは、下記数式34が成り立つ範囲で設定されることが好ましい。
【0131】
【数34】
【0132】
(2)送液区間
次に、送液区間4Bについて説明する。この送液区間4Bには、第一分取区間4Aに設けられる圧力室47に接続される分取試料流路51と、分取試料を撹拌する撹拌部52と、攪拌部52を通流した分取試料が通流する排出流路53と、分取試料流路51及び排出流路53上に設けられる二つのダンパー54,54と、を備える。
この送液区間4Bでは、第一分取区間4Aから流出された分取試料を送液する機能を発揮し、更に前記撹拌部52にて、分取試料の粒子間隔を全体試料の時と同様、再び無作為の状態とする。
【0133】
分取試料流路51は前記圧力室47と接続されており、第一分取区間4Aにて分取された分取試料が送液されるようになっている。そして、分取流路51内を通流した分取試料は、撹拌部52内へと送液される。
【0134】
次に、前記分取試料を撹拌する撹拌部52について、図12及び13を用いて説明する。
撹拌部52は、所謂ペリスタルティック・ドージングポンプの構成を採用しており、分取試料流路51及び排出流路53に接続される撹拌流路55と、当該撹拌流路55の圧縮・弛緩を行う回転盤56と、を備える。前記撹拌流路55は、前記回転盤56の回転軸Sを中心に周方向に沿って平面視略U字状に湾曲している。
【0135】
一方、前記回転盤56は、回転軸Sを中心に矢線X方向に回転駆動することができる。この回転盤56は、前記回転軸Sに対して半径方向に沿って設けられるローラ57を三つ備える。三つのローラ57,57,57は、前記回転軸Sに対して周方向に沿って等間隔に配置される。
そして、回転盤56が回転軸Sを中心に回転すると、各ローラ57,57,57は、ローラ回転軸Tを中心に回転する。この際、各ローラ57,57,57の軌跡は、前記撹拌流路55に沿って形成される。
【0136】
このように構成された回転盤56が回転することにより、撹拌流路55の圧迫・弛緩が繰り返し行われるようになっている。その結果、第一分取区間4Aにより、粒子間隔が整った分取試料は、攪拌流路55内にて、その粒子間隔が全体試料の時と同様、再び無作為の状態になる。
そして、攪拌された分取試料は、排出流路53内を通流し、第二分取区間4Cへと送液される。
【0137】
尚、図12等で示す撹拌部52は、ペリスタルティック・ドージングポンプの構成を採用しているが、当該撹拌部52の構成は特に限定されず、前記分取試料における粒子間隔を再び無作為の状態とすることができる構成であれば、公知の構成を用いてもよい。
【0138】
前述のように、この送液区間4Bでは、撹拌部52が所謂ペリスタルティック・ドージングポンプの構成を採用しており、攪拌流路55を圧迫・弛緩する。このため、攪拌流路55において、脈流が発生することとなる。このため、本技術に係る粒子分取用マイクロチップでは、前記一対のダンパー54により、攪拌流路55で発生する脈流を吸収するように構成されている。
【0139】
(3)第二分取区間
前記撹拌部52によって撹拌された分取試料は、前記排出流路53を通流して第二分取区間4Cへと送液される。
この第二分取区間4Cは、排出流路53を通流してきた分取試料を導入するための試料インレット61を備える。この試料インレット61には前記分取試料が通流する分取試料流路62が接続されている。また、シース液を導入するためのシース液インレット63も備える。このシース液インレット63からは二本のシース液流路64,64が分岐しており、前記シース液はこれらシース液流路64,64内を通流する。更に、これらシース液流路64,64は、前記試料流路62と合流して、一本の主流路65を形成している。この主流路65において、試料流路62を送液される分取試料の層流と、シース液流路64,64を送液されるシース液層流と、が合流し、分取試料の層流がシース液層流に挟み込まれたシースフローを形成される。
【0140】
更に、前記主流路65では、当該主流路65内を流れる分取試料、特に目的粒子に対して、照射部7Bにより励起光が照射される。この光照射により前記分取試料から発せられた蛍光及び/又は散乱光は、光検出部8Bにより検出される。この光検出部8Bにより検出された光学信号は電気信号へと変換され、駆動部9Bへと出力される。この駆動部9Bは、前記主流路65と連結された圧力室67における圧力調整を行い、目的粒子のみを前記圧力室67へと送り込む機能を発揮する。
【0141】
更に、主流路65は下流において、三つの流路に分岐している。具体的には、主流路65は、分取流路66及び二本の廃棄流路68,68に分岐している。このうち、分取流路66は、所定の光学特性を満たすと前記駆動部9Bによって判定された目的粒子が取り込まれる流路である。また、分取流路66の下流には、目的粒子のみが取り込まれる圧力室67が設けられている。
この圧力室67には貯留流路69が接続され、圧力室67内の目的粒子は当該貯留流路69を通流して、目的粒子が貯留される貯留部(図示外)に送液される。
一方、駆動部9Bによって所定の光学特性を満たさないと判定された、目的外粒子は、分取流路66内に取り込まれることなく、二本の廃棄流路68,68のいずれか一方に流れる。その後、廃棄ポート70より外部に排出される。
【0142】
以上のような第二分取区間4Cにおいて、試料インレット61は第一分取区間4Aの試料インレット42に、分取試料流路62は同試料流路42に、シース液インレット63は同シース液インレット43に、シース液流路64は同シース液流路44に、主流路65は同主流路45に、分取流路66は同分取流路46に、圧力室67は同圧力室47に、廃棄流路68は同廃棄流路48に、廃棄ポート70は同廃棄ポート49に対応しており、同一の構成をなしている。また、照射部7Bは第一分取区間4Aの照射部7Aに、光検出部8Bは同光検出部8Aに、駆動部9Bは同駆動部9Aに対応し、構造自体は同一である。
【0143】
但し、第二分取区間4Cでは、前記照射部7B、光検出部8B、駆動部9B、分取流路66及び圧力室67が、本技術の第二分取部に相当し、図1に示す粒子分取装置1の第二分取部12と同一の機能を発揮するようになっている。すなわち、第二分取区間4Cでは、分取試料から目的粒子のみが分取される。
【0144】
以上のように構成されたマイクロチップ4は三層の基板層からなり、試料流路42、シース液流44、主流路45、分取流路46、圧力室47、廃棄流路48、試料流路62、シース液流64、主流路65、分取流路66、圧力室67、分取試料流路51、攪拌流路55及び排出流路53は、1層目の基板層aと2層目の基板層aにより形成されている(図12参照)。
一方、試料インレット41、分取試料流路51、貯留流路68、廃棄ポット70は2層目の基板層aと3層目の基板層aにより形成されている。
【0145】
このマイクロチップ4は、主流路45等が形成された基板層を貼り合わせて構成できる。
基板層への主流路45等の形成は、金型を用いた熱可塑性樹脂の射出成形により行うことができる。熱可塑性樹脂には、ポリカーボネート、ポリメタクリル酸メチル樹脂(PMMA)、環状ポリオレフィン、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリジメチルシロキサン(PDMS)及びシクロオレフィンポリマーなどの従来マイクロチップの材料として公知のプラスチックを採用できる。
【0146】
前述の如く、本技術に係るマイクロチップ4では、攪拌部52により撹拌流路55を圧迫・弛緩することにより分取試料における粒子間隔を無作為な状態に戻すことが好ましい。このため、攪拌部52の各ローラ53が接触する基板層aは比較的軟質な樹脂で形成されていることが好ましく、例えば、ポリジメチルシロキサン(PDMS)などが挙げられる。
なお、マイクロチップ4の基板層の層構造は、三層に限定されることはないものとする。
【0147】
以上のような本技術に係るマイクロチップ4によれば、第一分取区間4A及び第二分取区間4Cを備え、分取を担う構成を複数備えているため、高速且つ高純度で目的粒子の分取を行うことができる。
また、第一分取区間4A及び第二分取区間4Cにより重畳した分取作業を可能としており、単純に分取機構を複数設ける構成としているわけではないため、マイクロチップ自体の大型化やコストアップを可及的に避けることができる。
更に、本技術に係るマイクロチップ4において、回収率YCascodeが、最終的な目的粒子の所望の回収率Ys以上となるように、第一分取区間4Aにおける単位時間あたりの全体試料の検出数λを設定することにより、より高純度で目的粒子を分取することができる。
【0148】
<5.第一実施形態に係る粒子分取方法>
本技術は、目的粒子を分取するための粒子分取方法をも提供する。
図14は、第一実施形態に係る粒子分取方法のフローチャートである。
当該方法は、少なくとも、第一分取工程S2と、第二分取工程S4と、を含み、必要に応じて、全体試料流入工程S1、攪拌工程S3、目的粒子貯留工程S5を含んでいてもよい。各工程について、工程が行われる順序に即して以下に説明する。
【0149】
(1)全体試料流入工程
本技術に係る粒子分取方法では、目的粒子を含む全体試料を、例えば、図1に示す粒子分取装置1に流入させる全体試料流入工程S1を含んでいてもよい。
全体試料を流入させる方法としては特に限定されず、例えば、前記送液部16を用いて全体試料が通流する流路を圧迫・弛緩し、前記収容部14内の全体試料を流入させる方法が考えられる。
【0150】
(2)第一分取工程
流入された全体試料は、例えば、図1に示す粒子分取装置1における第一分取部11により分取作業に供される。
第一分取工程S2では、前記第一分取部11と同様、アボート処理を行わずに、目的粒子を含む分取試料を分取する。
具体的には、全体試料の層流がシース液層流に挟み込まれたシースフローを形成し、フローサイトメトリー原理を用いて分取を行う。
すなわち、前記第一分取部11と同様、シースフロー中の目的粒子に光を照射して目的粒子から発生する蛍光及び/又は散乱光を検出し、所定の光学特性を示す目的粒子が含まれる分取試料のみを分別する。
この第一分取工程S2では、前記第一分取部11と同様、単位時間あたりの全体試料の検出数λは、下記数式35が成り立つ範囲で設定されることが好ましい。
【0151】
【数35】
【0152】
尚、第一分取工程S1による分取方法は特に限定されず、アボート処理を行わず、目的粒子を含む分取試料を分取する構成であればよく、公知の方法を採用することができる。
【0153】
(3)撹拌工程
本技術に係る粒子分取方法は、第一分取工程S2により分取された分取試料を撹拌する撹拌工程S3を含んでいてもよい。
具体的には、この撹拌工程S3では、第一分取工程S2により粒子間隔が調整された分子試料を撹拌し、その粒子間隔が全体試料の時と同様、再び無作為の状態とする。
この撹拌工程S3における撹拌方法は特に限定されず、例えば、公知のペリスタルティック・ドージングポンプを用いて、分取試料が通流する流路を圧迫・弛緩する方法等が挙げられる。
【0154】
(4)第二分取工程
本技術に係る粒子分取方法は、第一分取工程S2により分取された分取試料から目的粒子のみを分取する第二分取工程S4を含んでいる。
この第二分取工程S4は、第一分取工程S2と同様、フローサイトメトリー原理を用いて分取を行う。すなわち、分取試料の層流がシース液層流に挟み込まれたシースフローを形成し、当該シースフロー中の目的粒子に光を照射して目的粒子から発生する蛍光及び/又は散乱光を検出し、所定の光学特性を示す目的粒子のみを分別する。
換言すると、この第二分取工程S4では、図1に示す粒子分取装置1が備える第二分取部12と同様の分取が行われる。
【0155】
(5)目的粒子貯留工程
本技術に係る粒子分取方法は、必要に応じて、目的粒子を貯留するための目的粒子貯留工程S5を含んでいてもよい。
この目的粒子貯留工程S5では、前記第二分取工程S4により分取された目的粒子の貯留を行う。
目的粒子を貯留する方法としては特に限定されず、目的粒子に適した保存環境などを考慮し、公知の方法を採用することができる。目的粒子が細胞である場合には、例えば、貯留工程S5にて、細胞を貯留するために適した温度調整や、培養等を適用しても差し支えない。
本技術に係る粒子分取方法は、当該目的粒子貯留工程S5が終了することにより、完了する。
【0156】
以上の本技術に係る粒子分取方法によれば、第一分取工程S1及び第二分取工程S2を備え、分取を担う構成を複数備えているため、高速且つ高純度で目的粒子の分取を行うことができる。
また、本技術に係る粒子分取方法において、回収率YCascodeが、最終的な目的粒子の所望の回収率Ys以上となるように、第一分取工程S1における単位時間あたりの全体試料の検出数λを設定することにより、より高純度で目的粒子を分取することができる。
【0157】
<6.第二実施形態に係る粒子分取方法>
図15を用いて、本技術に係る粒子分取方法の第二実施形態について説明する。
本開示の粒子分取技術において、全体試料における目的粒子の比率が所定の閾値よりも低い場合には、第一分取工程S1及び第二分取工程S4を縦続的に行うことが好ましい(以下、「縦続方式」という)。その一方で、全体試料における目的粒子の比率が所定の閾値よりも高い場合には、第一分取工程S1と第二分取工程S4とを並列的に行う方が分取の高速化に適している(以下、「並列方式」という)。
このため、本技術は、全体試料における目的粒子の比率に応じて、縦続方式と並列方式とを切り替えることが可能な粒子分取方法をも提供する。
当該方法は、図8に示される粒子分取装置3を用いた粒子分取方法に関する。
尚、図15は、第二実施形態に係る粒子分取方法における、分取切り替え工程を示すフローチャートである。
【0158】
この粒子分取方法では先ず、前記第一分取部11と第二分取部12とが従属的に接続された状態に設定する(縦続式設定工程S101)。
そして、ユーザが全体試料における目的粒子の比率を知っているか否かを判定し(S102)、ユーザは当該比率を知らない場合には(S102におけるNO)、目的粒子比率の測定工程S103へと進む。
この測定工程S103では、前記第一分取部11に対して全体試料を流入させ、当該第一分取部11における検出系110、処理系130を用いて、目的粒子の比率を測定する。尚、目的粒子を測定する方法は特に限定されず、公知の方法を用いることができる。
そして、全体試料における目的試料の比率が既知の状態となったら(S102におけるYES)、目的粒子の比率が所定の閾値よりも低いか否かの判定を行う(S104)。
【0159】
ここで前述の如く、縦続方式において、第一分取部11における、単位時間あたりの全体試料の検出数λは、下記数式36が成り立つ範囲で設定されることが好ましい。
【0160】
【数36】
【0161】
一方、並列方式として場合には、各分取部11,12における、単位時間あたりの全体試料の検出数λが、下記数式37に示されるように、分取部11,12による回収率YParallelが最終的な目的粒子の所望の回収率Ys以上となるように、設定することが好ましい。
【0162】
【数37】
【0163】
以上から、前記数式36を満たす最大のイベントレートを「λParallel_max」とし、前記数式35を満たす最大のイベントレートを「λCascode_max」とした場合、縦続方式と並列方式との切り替え基準となる前記閾値は、下記数式38で表すように、縦続方式における回収率YParallelと並列方式における回収率YCascodeが互いに等しくなる目的粒子比率で表される。
【0164】
【数38】
【0165】
そして、判定工程S104において、全体試料における目的粒子の比率が前記閾値よりも低いと判定された場合には(S104におけるNO)、下記数式39が成立するため、並列方式への変更が行われる(並列式変更工程S105)。
その後、第一分取部11による分取と第二分取部12による分取が開始される(S106)。
【0166】
【数39】
【0167】
かかる場合、各分取部11,12における、単位時間あたりの全体試料の検出数λが、下記数式40に示されるように、分取部11,12による回収率YParallelが最終的な目的粒子の所望の回収率Ys以上となるように、設定することが好ましい。
【0168】
【数40】
【0169】
一方、判定工程S104において、全体試料における目的粒子の比率が前記閾値よりも高いと判定された場合には(S104におけるYES)、下記数式41が成立するため、切り替え作業は行わず、縦続方式にて、第一分取部11による分取と第二分取部12による分取が開始される(S106)。
【0170】
【数41】
【0171】
かかる場合、第一分取部11における、単位時間あたりの全体試料の検出数λは、下記数式42が成り立つ範囲で設定することが好ましい。
【0172】
【数42】
【0173】
以上のような第二実施形態に係る粒子分取方法によれば、並列方式と縦続方式の切り替えが可能であるため、全体試料における目的粒子の比率に応じて高純度且つ高速に目的粒子の分取を行うことができる。
更に言えば、縦続方式を選択した場合には、高速且つ高純度で目的粒子の分取を行うことができる。また、回収率YCascodeが最終的な目的粒子の所望の回収率Ys以上となるように、第一分取部11における単位時間あたりの全体試料の検出数λを設定することにより、より高純度で目的粒子を分取することができる。
一方、並列方式を選択した場合であっても、高速且つ高純度で目的粒子の分取を行うことができる。また、単純に分取機構を複数設ける構成としているわけではないため、粒子分取装置の大型化やコストアップを可及的に避けることができる。
尚、図15に示す本技術に係る粒子分取方法では、測定工程S103により、全体試料における目的粒子の比率を測定しているが、予め検出系110に対して少量のサンプルを流し、全体試料における目的粒子の比率を測定するようにしてもよく、測定工程S103を含まなくともよい。
【0174】
なお、本技術に係る粒子分取装置は、以下のような構成も取ることができる。
(1)
アボート処理を行わずに、目標粒子を含む全体思料から当該目標粒子を含む分取試料を分取する第一分取部と、
前記第一分取部により分取された前記分取試料に対してアボート処理を行い、前記目標粒子のみを分取する第二分取部と、
を備える、粒子分取装置。
(2)
前記第一分取部及び第二分取部は互いに別部材として形成され、第一分取部による分取後、前記第二分取部による分取が行われる、(1)記載の粒子分取装置。
(3)
前記第一分取部及び第二分取部は同一部材として形成され、第一分取部による分取後、前記第二分取部による分取が行われる、(1)記載の粒子分取装置。
(4)
更に、前記第一分取部により分取された分取試料における粒子間隔を無作為状態に戻す撹拌部と、を備える、(2)又は(3)に記載の粒子分取装置。
(5)
更に、前記全体試料に対する目標粒子の含有率を測定する測定部と、
前記測定部による測定結果に基づいて、前記第一分取部による分取作業と第二分取部による分取作業とを並列作業に切り替える分取切り替え部と、を備える、(1)〜(4)のいずれか一つに記載の粒子分取装置。
【0175】
また、本技術に係る位粒子分取方法は、以下のような構成も取ることができる。
(6)
アボート処理を行わずに、目標粒子を含む全体思料から当該目標粒子を含む分取試料を分取する第一分取工程と、
前記第一分取部により分取された前記分取試料に対してアボート処理を行い、前記目標粒子のみを分取する第二分工程と、
を含む、粒子分取方法。
(7)
前記第一分取工程を行った後、前記分取試料における粒子間隔を無作為状態に戻す撹拌工程と、を含む、(6)に記載の粒子分取装置。
(8)
更に、前記全体試料に対する目標粒子の比率に基づいて、前記第一分取工程と第二分取工程とを並列に実行させる分取切り替え工程と、を含む、(6)又は(7)に記載の粒子分取装置。
【実施例】
【0176】
以下、実施例に基づいて本技術を更に詳細に説明する。なお、以下に説明する実施例は、本技術の代表的な実施例の一例を示したものであり、これにより本発明の範囲が狭く解釈されることはない。
【0177】
実施例として、本願発明者らは、縦続方式により分取を行う粒子分取装置と、並列方式により分取を行う粒子分取装置と、の性能比較を実施した。
具体的には、前述の導き出された数式に基づいて、幾つかのパラメータ(パラメータ1〜4)を設定して性能比較を行い、本開示に係る粒子分取方法の効果を定量的に示した。各パラメータに基づいた性能比較結果を図16〜19に示す。ここで、各図において、横軸は、Event Rateであり、縦軸はYieldである.更に、各図において、一点鎖線は並列方式の結果を、二点鎖線は縦続方式の結果を示す。
【0178】
図16は、パラメータ1に基づいた、縦続方式と並列方式による性能比較の結果を示す図面代用グラフである。パラメータ1としては、R=1.0、r=0.03、T=50us、TD=75usに設定した。
図16から把握されるように、パラメータ1の場合、Event Rate=0−100kepsの範囲では、常に縦続方式のほうが並列方式と比べて高収率を実現できることが確認された。
すなわち、例えばYieldスペックが80%の場合、縦続方式では約35keps動作が可能であることが確認された。
【0179】
図17は、パラメータ2に基づいた、縦続方式と並列方式による性能比較の結果を示す図面代用グラフである。パラメータ1としては、R=0.9、r=0.03、T=50us、TD=75usに設定した。
図17から把握されるように、パラメータ2の場合、Event Rate=0−5kepsの範囲では並列方式が、Event Rate=5k−100kepsの範囲では縦続方式の方が高収率を実現できることが確認された。
すなわち、例えばYieldスペックが80%の場合、並列方式による分取が有利で、約4keps動作が可能であることが確認された。
一方、Yieldスペックが少し低い60%の場合には、縦続方式による分取で約48keps動作が可能であることが確認された。
【0180】
図18は、パラメータ3に基づいた、縦続方式と並列方式による性能比較の結果を示す図面代用グラフである。パラメータ3としては、R=1.0、r=0.10、T=50us、TD=75usに設定した。
図18から把握されるように、パラメータ3の場合、Event Rate=0−100kepsの範囲では、常に縦続方式の方が並列方式に比べて高収率を実現できることが確認された。
すなわち、例えばYieldスペックが80%の場合、縦続方式では約14keps動作が可能であることが確認された。
【0181】
図19は、パラメータ4に基づいた、縦続方式と並列方式による性能比較の結果を示す図面代用グラフである。パラメータ4としては、R=0.9、r=0.10、T=50us、TD=75usに設定した。
図19から把握されるように、パラメータ4の場合、Event Rate=0−10kepsの範囲では並列方式が,Event Rate=10k−100kepsの範囲では縦続方式の方が高収率を実現できることが確認された。
すなわち、例えばYieldスペックが80%の場合には並列方式による分取が有利で、約5keps動作が可能であることは確認された。
一方、Yieldスペックが少し低い60%の場合には縦続方式による分取で約20keps動作が可能であることが確認された。
【符号の説明】
【0182】
1、2、3 粒子分取装置
11 第一分取部
12 第二分取部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19