特許第6922961号(P6922961)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6922961
(24)【登録日】2021年8月2日
(45)【発行日】2021年8月18日
(54)【発明の名称】回転運動検出用微小電気機械デバイス
(51)【国際特許分類】
   G01C 19/5712 20120101AFI20210805BHJP
【FI】
   G01C19/5712
【請求項の数】22
【外国語出願】
【全頁数】27
(21)【出願番号】特願2019-178710(P2019-178710)
(22)【出願日】2019年9月30日
(65)【公開番号】特開2020-91280(P2020-91280A)
(43)【公開日】2020年6月11日
【審査請求日】2020年1月22日
(31)【優先権主張番号】20185879
(32)【優先日】2018年10月18日
(33)【優先権主張国】FI
(73)【特許権者】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100189430
【弁理士】
【氏名又は名称】吉川 修一
(74)【代理人】
【識別番号】100190805
【弁理士】
【氏名又は名称】傍島 正朗
(72)【発明者】
【氏名】アンッシ・ブロムクヴィスト
(72)【発明者】
【氏名】ヴィッレ−ペッカ・リュトゥコネン
【審査官】 國田 正久
(56)【参考文献】
【文献】 特表2012−519295(JP,A)
【文献】 特開2014−182133(JP,A)
【文献】 特開2018−100966(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0313657(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01C 19/5705 − 19/5769
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持部と
前記支持部に結合される平面デバイス構造体と
を含む微小電気機械デバイスであって、
前記微小電気機械デバイスの初期静止状態において、前記平面デバイス構造体は、基準面を形成し、
第1面内方向および第2面内方向は、前記基準面と平行で、互いに直交しており、
面外方向は前記基準面に垂直であり、
前記デバイス構造体は、2つの慣性マスと、第1ばねシステムと、面外シーソー梁システムとを含み、
前記2つの慣性マスは、前記基準面に沿って延在し、
各慣性マスは、前記第1面内方向に延在する少なくとも2つの水平エッジと、前記第2面内方向に延在する少なくとも2つの垂直エッジとを有し、
前記2つの慣性マスにおける隣接する垂直エッジは、前記第1ばねシステムのばね構造体によって互いに結合され、
前記第1ばねシステムは、前記第2面内方向において前記慣性マス間でフレキシブルに曲がり、また、前記第1面内方向と平行であるばね軸を中心として、前記慣性マスシステム間でフレキシブルにねじれるように構成され、
前記第2面内方向の同じ方向を向いている前記慣性マスの少なくとも2つの水平エッジは、前記面外シーソー梁システムの梁の両端部に結合され、前記梁は、前記基準面内にあり、かつ前記第2面内方向と平行である軸を中心として回転するように構成され、
各慣性マスは、前記初期静止状態において前記面外方向と平行である駆動軸を中心として逆位相面内回転運動するように構成され、
前記微小電気機械デバイスは、前記初期静止状態において前記第2面内方向と平行である第1感知軸を中心とする前記慣性マスの回転に対応する第1感知信号を前記慣性マスの各々に対して生成するように構成された回路と、前記初期静止状態において前記第1面内方向と平行である第2感知軸を中心とする前記慣性マスの回転に対応する第2感知信号を前記慣性マスの各々に対して生成するように構成された回路とを含む
微小電気機械デバイス。
【請求項2】
前記回路は、前記微小電気機械デバイスの回転運動の差動検出のために、前記2つの慣性マスの第1感知信号または前記2つの慣性マスの第2感知信号を組み合わせて適用するように構成されている
請求項1に記載の微小電気機械デバイス。
【請求項3】
各面外シーソー梁システムは、梁と、第1取付要素の取付点と、第2ばねシステムのばね構造体とを含み、
前記第1取付要素の前記取付点は、前記支持部に固定され、
前記梁は、剛性を有し、前記第1面内方向に延在し、
前記梁は、前記第2ばねシステムの前記ばね構造体によって前記第1取付要素の前記取付点に結合され、
前記第2ばねシステムの前記ばね構造体は、前記初期静止状態において前記第2面内方向と平行である軸を中心としてフレキシブルにねじれるように構成される
請求項1または2に記載の微小電気機械デバイス。
【請求項4】
各面外シーソー梁システムは、さらに、第3ばねシステムのばね構造体を含み、
前記面外シーソー梁システムの剛性を有する前記梁の一端部は、前記第3ばねシステムの前記ばね構造体によって前記慣性マスの一方の水平エッジに結合され、剛性を有する前記梁の他端部は、前記第3ばねシステムの別のばねによって前記慣性マスの他方の水平エッジに結合され、
前記第3ばねシステムの各ばね構造体は、前記初期静止状態において前記第2面内方向と平行である軸を中心としてフレキシブルにねじれ、また、前記第1面内方向および前記第2面内方向の両方に曲がり、前記2つの慣性マスの前記逆位相面内回転運動を可能にするように構成される
請求項3に記載の微小電気機械デバイス。
【請求項5】
前記慣性マスの各々は、駆動要素に結合され、
前記駆動要素は、線形駆動要素および変換駆動要素を含み、
前記線形駆動要素は、前記面内方向の一方に線形駆動運動するように構成され、
前記変換駆動要素は、前記慣性マスおよび前記線形駆動要素に結合され、前記線形駆動要素の前記線形駆動運動を、前記駆動軸を中心とする前記慣性マスの面内回転運動に変換するように構成される
請求項1〜4のいずれか1項に記載の微小電気機械デバイス。
【請求項6】
前記駆動要素の各々は、それぞれの慣性マス内に配置される
請求項5に記載の微小電気機械デバイス。
【請求項7】
前記線形駆動要素は、2つの線形駆動マスと、第2取付要素の取付点と、第4ばねシステムのばね構造体とを含み、
前記第2取付要素の前記取付点は、前記支持部に固定され、
前記線形駆動マスは、前記第4ばねシステムの前記ばね構造体によって前記第2取付要素の前記取付点に結合され、
前記第4ばねシステムの前記ばね構造体は、前記第2面内方向における前記線形駆動マスの線形運動を可能にするように構成される
請求項5または6に記載の微小電気機械デバイス。
【請求項8】
前記第2取付要素は、前記支持部にそれぞれ固定された2対の取付点を含み、
前記線形駆動マスは、前記第2面内方向に延在する縦梁であり、
前記第4ばねシステムの1対のばね構造体は、各線形駆動マスの両端部を前記第2取付要素の1対の取付点に結合し、
前記線形駆動マスは、第5ばねシステムのばね構造体によって変換駆動要素の対向する垂直エッジに結合され、
前記第5ばねシステムの前記ばね構造体の一方は、前記線形駆動マスの一方の線形運動を前記変換駆動要素の一方の垂直エッジに中継するように構成され、前記第5ばねシステムの前記ばね構造体の他方は、前記線形駆動マスの他方の線形運動を前記変換駆動要素の反対側の垂直エッジに中継するように構成される
請求項7に記載の微小電気機械デバイス。
【請求項9】
前記変換駆動要素は、変換駆動マスと、第6ばねシステムのばね構造体とを含み、
前記変換駆動マスは、前記変換駆動要素の2つの前記垂直エッジと、前記第1面内方向に延在する2つの水平エッジとを有し、
前記変換駆動マスの各水平エッジは、前記第6ばねシステムのばね構造体によって前記慣性マスに結合され、前記ばね構造体は、前記初期静止状態において前記第2面内方向にある軸を中心としてねじれて曲がるように構成される
請求項8に記載の微小電気機械デバイス。
【請求項10】
前記変換駆動要素は、さらに、第3取付要素の取付点と、第7ばねシステムのばね構造体とを含み、
前記第3取付要素の前記取付点は、前記支持部に固定され、
前記変換駆動マスは、前記第7ばねシステムの前記ばね構造体によって前記第3取付要素の前記取付点に結合され、
前記第7ばねシステムの前記ばね構造体は、前記初期静止状態において前記第2面内方向である方向に曲がり、前記初期静止状態において前記第1面内方向にある軸を中心としてねじれて曲がるように構成され、
前記第3取付要素の前記取付点および前記第7ばねシステムの前記ばね構造体は、前記変換駆動要素の前記変換駆動マス内に配置される
請求項9に記載の微小電気機械デバイス。
【請求項11】
前記線形駆動要素は、前記第1面内方向に逆位相線形運動するように構成された2つの線形駆動マスを含み、
前記変換駆動要素は、前記線形駆動マスから前記慣性マスまでの結合部を含み、
前記線形駆動マスの各々は、前記慣性マスの外側に配置される
請求項5に記載の微小電気機械デバイス。
【請求項12】
前記慣性マスは、前記慣性マスの前記逆位相面内回転運動の前記駆動軸と同一位置にある回転中心を有し、
前記変換駆動要素は、前記2つの線形駆動マスのうちの第1線形駆動マスの動きを、前記慣性マス内の第1結合点に中継するように構成され、
前記変換駆動要素は、前記2つの線形駆動マスのうちの第2線形駆動マスの動きを、前記慣性マス内の第2結合点に中継するように構成され、
前記第1結合点および前記第2結合点は、前記第2面内方向において前記回転中心の両側にある
請求項11に記載の微小電気機械デバイス。
【請求項13】
前記変換駆動要素は、前記線形駆動マスの一方から前記慣性マスの結合点まで前記第1面内方向にそれぞれ延在する2つの縦梁を含む
請求項12に記載の微小電気機械デバイス。
【請求項14】
前記デバイス構造体は、さらに、第4取付要素の取付点と、前記第1面内方向の第1回転軸および前記第2面内方向と一致する第2回転軸を中心とする前記慣性マスの回転を可能にするように構成された第8ばねシステムのばね構造体とを含み、前記第1軸および前記第2軸は、前記回転中心と重なる
請求項12または13に記載の微小電気機械デバイス。
【請求項15】
前記慣性マスは、前記慣性マスの前記逆位相面内回転運動の前記駆動軸と同一位置にある回転中心を有し、
前記線形駆動要素は、前記慣性マスの外側に配置され、前記第1面内方向に線形運動するように構成された1つの線形駆動マスを含み、
前記変換駆動要素は、前記慣性マス内に位置する中央ばね構造体と、前記初期静止状態において前記第1面内方向である方向において、前記線形駆動マスと前記中央ばね構造体との間に延在する縦梁とを含み、
前記縦梁は、前記線形駆動マスから前記中央ばね構造体内の連結点まで延在し、前記連結点は、前記第2面内方向において前記回転中心からずれている
請求項5に記載の微小電気機械デバイス。
【請求項16】
1つの面外シーソー梁システムは、前記第2面内方向に沿った前記慣性マスの一方側で前記慣性マスを結合し、
各慣性マス用の前記線形駆動要素は、前記慣性マスの他方側にあり、
各慣性マス用の前記変換駆動要素は、当該変換駆動要素に含まれた面内シーソー梁システムによって、前記線形駆動要素の前記線形駆動運動を前記慣性マスの回転運動に変換するように構成された面内シーソー梁システムを含む
請求項5に記載の微小電気機械デバイス。
【請求項17】
前記慣性マスは、直交して重なる2つのバー形状から形成された十字形状を有し、第1バー形状は前記第1面内方向に延在し、前記第2バー形状は前記第2面内方向に延在し、前記慣性マスの前記水平エッジは前記第2バー形状の両端部によって設けられ、前記垂直エッジは前記第バー形状の両端部によって設けられ、
前記線形駆動要素は、十字形状の前記慣性マスの隣接するバー形状間の領域によって設けられた位置に配置される
請求項5に記載の微小電気機械デバイス。
【請求項18】
前記線形駆動要素は、フレームを前記支持部に結合する取付点を囲む当該フレームからそれぞれ形成される2つの線形駆動マスを含み、
前記線形駆動マスは、第5ばねシステムのばねによって変換駆動要素の対向する垂直エッジに結合され、
線形駆動マスと前記変換要素とを結合する前記第5ばねシステムの各ばねは、結合された当該線形駆動マスの前記線形運動を前記変換駆動要素の前記垂直エッジに中継するように構成される
請求項17に記載の微小電気機械デバイス。
【請求項19】
前記変換駆動要素は、前記線形駆動マスの一方から前記慣性マス内の結合点まで前記第1面内方向にそれぞれ延在する2つの縦梁を含む
請求項18に記載の微小電気機械デバイス。
【請求項20】
前記慣性マスは、前記慣性マスの前記逆位相面内回転運動の前記駆動軸と同一位置にある回転中心を有し、
前記変換駆動要素は、前記2つの線形駆動マスのうちの第1線形駆動マスの動きを前記慣性マス内の第1結合点に中継するように構成され、
前記変換駆動要素は、前記2つの線形駆動マスのうちの第2線形駆動マスの動きを前記慣性マス内の第2結合点に中継するように構成され、
前記第1結合点および前記第2結合点は、前記第2面内方向において前記回転中心の両側にある
請求項19に記載の微小電気機械デバイス。
【請求項21】
前記変換駆動要素は、前記線形駆動マスの一方から前記慣性マス内の結合点まで前記第1面内方向にそれぞれ延在する2つの縦梁を含む
請求項20に記載の微小電気機械デバイス。
【請求項22】
前記線形駆動要素は、2つの線形駆動マスと、第2取付要素の取付点と、第4ばねシステムのばね構造体とを含み、
前記第2取付要素の前記取付点は、前記支持部に固定され、
前記線形駆動マスは、前記第4ばねシステムの前記ばね構造体によって前記第2取付要素の前記取付点に結合され、
前記第4ばねシステムの前記ばね構造体は、前記第1面内方向における前記線形駆動マスの線形運動を可能にするように構成される
請求項5または6に記載の微小電気機械デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、微小電気機械デバイス、より詳細には、コリオリ力によって角運動を検出するように構成されたデバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
微小電気機械デバイスは、物体にかかる加速度を測定するために、その物体と共に動かすことができる。このため、微小機械デバイスは通常、可動慣性マス構造体を含み、微小機械デバイスに作用する加速力は、固定電極に対するこれらのマスの変位を検出することによって測定することができる。図1は、微小電気機械デバイスの基本要素を示す側面図を示す。
【0003】
微小電気機械デバイスは、支持部100およびデバイス構造体102を備える。支持部100という用語は、本明細書において、測定される物体と共に動くように固定され得る剛性機械要素を指す。したがって、支持部は、微小電気機械デバイスの可動要素に、剛性を有し、局部的に動かないリファレンスを与える構造要素である。微小電気機械デバイスの可動要素は、支持部から変形可能要素によって懸架することができる。ウェハ構造体では、支持部は、デバイス構造体を形成する可動要素または変形可能要素がパターニングされる構造体層から面外ギャップだけ離れた下部にある支持層によって設けられてもよい。支持部および構造体層内の要素は、例えば、支持部から突出する1以上の取付部位によって互いに結合されてもよい。あるいは、またはさらに、支持部は、支持層に強固に固定され、構造体層内のいくつか、またはすべての要素を取り囲むフレームを含んでもよい。支持部はまた、デバイス構造体の上方に配置され、面外ギャップだけデバイス構造体から離れたキャップ部によって設けられてもよいし、そのキャップ部を含んでもよい。
【0004】
デバイス構造体102という用語は、本明細書において、微小電気機械デバイスに作用する加速度によって引き起こされる動きの定義されたモードを構成するように共に構成される剛性要素と可撓性要素との組合せを指す。言いかえれば、デバイス構造体は、1以上の測定された方向の加速度による力が慣性マスの動きの定義されたモードを引き起こすように、支持部にフレキシブルに結合される慣性マス部を含む。一方、機械設計によって、可撓性部の変形は方向性を有するため、任意の他の方向の加速度によって引き起こされるデバイス構造体の変位または変形は、最小限に抑えられるか、デバイスの測定機能に影響を与えない。動きの定義されたモードでは、デバイス構造体の少なくとも一部の変位を容量的に検出し、測定された加速度を極めて正確に表す電気信号に変換することができる。
【0005】
デバイス構造体がパターニングされる構造体層は、主として平面形状を有する。デバイスの初期静止状態では、デバイス構造体102の平面は、デバイスの基準面104を形成する。初期静止状態とは、ここでは、支持部から懸架されたデバイス構造体が重力によって作用を受けるが、引き起こされるいずれの加速度にも影響を受けない状況を指す。基準面104は、デバイス構造体がパターニングされる平面構造体層の平面、有利には、中心面と一致すると考えられてもよい。図1の例では、基準面104は、デバイス構造体102の上面と底面との間の平面と一致すると考えることができる。よって、基準面のある方向に延在する要素についての表現は、本来平面である構造体層から、または本来平面である構造体層にパターニングされる要素として解釈することができる。これはまた、デバイス構造体内の要素の面外寸法が構造体層の厚さに相当することを意味する。しかしながら、ある特別な機能的な目的のために、要素をパターニング中に薄くすることもできる。
【0006】
本開示では、方向IP1、IP2、OPの直交セットが以下のように適用される。第1面内方向IP1および第2面内方向IP2は、互いに直交し、両方とも基準面104と平行である。面外方向OPは基準面104に垂直であり、そのため、第1面内方向IP1および第2面内方向IP2に対して直交している。
【0007】
動きには、6つの自由度、すなわち、3つの直交方向における並進および3つの直交軸周りの回転がある。後者の3つは、ジャイロスコープとしても知られている角速度センサによって測定されてもよい。微小電気機械(MEMS)ジャイロスコープは、コリオリの効果を利用して、角速度を測定する。マスは、一方向に動いて回転角速度が加わると、コリオリの効果によって直交方向の力を受ける。次いで、コリオリ力によって引き起こされる結果として生じる物理的変位が、例えば、当技術分野において一般に知られている適切な感知構造体によって容量的に、圧電的に、またはピエゾ抵抗的に検出されてもよい。
【0008】
微小電気機械ジャイロスコープでは、十分なベアリングが不足しているために、一次運動を従来のジャイロスコープのような連続回転にすることはできない。その代わりに、機械的振動が一次運動として利用されてもよい。振動ジャイロスコープが一次運動の方向に直交する角運動を受けると、波状のコリオリ力が生じる。これにより、一次運動と角運動軸とに直交し、かつ一次振動の周波数である二次振動が引き起こされる。この連成振動の振幅は、角速度の尺度として用いることができる。
【0009】
容量測定において、検出は、静止基準に対して動く慣性マスの静電容量の変化に基づく。例えば、図1の微小電気機械デバイスでは、デバイス構造体102内の慣性マスは、支持部100にフレキシブルに懸架されるため、可動ロータ電極として適用されてもよい。支持部100は、静止ステータ電極を含んでもよく、容量測定は、面外方向OPにおける慣性マスの変位に基づいてもよい。あるいは、構造体層は、支持部に固定される要素および支持部にフレキシブルに懸架される要素を含んでもよい。そして、固定された要素はステータ電極を設けるために使用されてもよく、懸架された要素はロータ電極を設けるために使用されてもよい。そして、容量測定は、面内方向IP1、IP2のどちらかにおけるステータ電極に対するロータ電極の変位に基づいてもよい。当業者によく知られている方法では、ステータ電極およびロータ電極の1対は、ロータ電極がステータ電極に対して変位すると、それらの間の静電容量の変化をステータ電極およびロータ電極が検出するように電気的に結合することができる。この変化はアナログ電圧信号に変換することができ、次いで、アナログ電圧信号は、例えば、電荷増幅、信号の調整、復調、フィルタリングによってデジタル形状に変換して、さらに信号処理することができる。
【0010】
通常、デバイスの構造体層は、利用可能領域をできるだけ効率的に使用するように非常に注意深く設計される。具体的には、多くのコンシューマ向けMEMS用途では、構造デバイス設計により、2方向または3方向においてさえも角速度の感知が可能になる。このような多軸構成により、電子機器をより単純にし、部品サイズを縮小して消費電力を低下させ、コストを下げることができる。しかしながら、このような多軸構成をより厳しい条件、例えば自動車用途で使用することは、車両用途の動作要件が非常に難しいために非常に制限される。デバイスは、高感度である必要がありながら、同時に、外部振動に対して非常にロバストでなければならない。これは、複数の異なる駆動機能および感知機能を実施するために様々なマス要素およびばね要素を本質的に含む必要のある多軸構成で実施するには非常に難しいバランスである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本開示の目的は、多軸検出を可能にし、さらに、厳しい動作条件において、よりロバストな微小電気機械デバイスの改善された設計を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本開示の目的は、独立クレームに記載することを特徴とするデバイス構造体によって達成される。本開示の好ましい実施形態を従属クレームに開示する。
【0013】
本開示は、2つの振動慣性マスによって形成され、かつ、組み合わされたデバイス構造体のロバスト性を高めるためにばね構造体の固有の剛性を最適に利用する特別な方法で結合された、バランスのとれた構造体に基づく。
【図面の簡単な説明】
【0014】
以下に、添付図面を参照しながら、好ましい実施形態によって本開示をより詳細に記載する。
図1図1は、微小電気機械デバイスの基本要素を示す側面図を示す。
図2図2は、新規のデバイス構造体の例を示す。
図3A図3Aは、図2の構造体によって可能になる動きのモードを示す。
図3B図3Bは、図2の構造体によって可能になる動きのモードを示す。
図3C図3Cは、図2の構造体によって可能になる動きのモードを示す。
図4図4は、動きの駆動モード段階における図2のデバイス構造体をより詳細に示す。
図5A図5Aは、図2におけるばねシステムの可能な形状を示す。
図5B図5Bは、図2におけるばねシステムの可能な形状を示す。
図6図6は、開示するデバイスの代替例を示す。
図7図7は、開示するデバイスの別の代替例を示す。
図8図8は、開示するデバイスのさらなる代替例を示す。
図9図9は、開示するデバイスのさらなる代替例を示す。
図10図10は、開示するデバイスのさらなる代替例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図2は、上記欠点を解消または少なくとも緩和する方法で平面構造体層から形成される新規のデバイス構造体を示す。
【0016】
示した例では、微小電気機械デバイスは、基準面内に並んで延在する2つの慣性マス204、206を含む。言いかえれば、2つの慣性マス204、206は、互いに接近しており、互いに隣同士または近くにある。慣性マスとは、本明細書において、単一体として外力に応答する機械的に剛性を有する物体を指す。慣性マス204、206は、実質的に平面の全体形状を有する。しかしながら、慣性マスの全体的な平面形状は、当然、以下に述べる、慣性マスの機能特性を可能にするための凹部および貫通エッチングパターンを含んでもよい。したがって、微小電気機械デバイスの初期静止状態では、2つの慣性マス204、206の上面または底面は、微小電気機械デバイスの基準面と平行に延在する。
【0017】
慣性マス204、206の各々は、直交する二方向にエッジを有する。本開示では、主として第1面内方向IP1に延在するエッジを水平エッジと呼び、主として第2面内方向IP2に延在するエッジを垂直エッジと呼ぶ。「エッジ」という用語は、本明細書において、慣性マスの一辺を形成する面を指し、その一辺は、一方の面内方向を向き、他方の直交面内方向に延在する。したがって、「主としてIPn面内方向に延在する」という表現は、ここでは、IPn面内方向の一辺の面の少なくとも一部がIPn面内方向と平行であるか、面の接線が少なくとも1点においてIPn面内方向と平行であることを定義している。したがって、「水平」および「垂直」という用語は、エッジ形状の線形性も平面性も暗示していない。各慣性マスは、少なくとも2つの水平エッジおよび少なくとも2つの垂直エッジを有する。それらに加えて、慣性マスは、さらなる構造エッジ形状、例えば、図2に示すコーナーくぼみ部を含んでもよい。図2は、第1垂直エッジ208、第2垂直エッジ210、第1水平エッジ212および第2水平エッジ214を備えた第1慣性マス204を示す。図2はまた、第1垂直エッジ216、第2垂直エッジ218、第1水平エッジ220および第2水平エッジ222を備えた第2慣性マス206を示す。
【0018】
慣性マス204、206の隣接する垂直エッジは、第1ばねシステムのばね構造体230によって互いに結合される。図2の例では、第1慣性マス204の第1垂直エッジ208は、第2慣性マス206の第1垂直エッジ216に隣接している。慣性マス204、206のそれぞれ第1垂直エッジ208、216は、第1ばねシステムのばね構造体230によって互いにそれぞれ結合される。
【0019】
本開示では、ばね構造体とは、その形状により、ある変形にはフレキシブルに、ある変形には剛性的に、機械的に抵抗するよう構成されるデバイス構造体のパターニングされた要素を指す。ばね構造体におけるフレキシブルな変形の剛性と剛性を有する変形の剛性との差は、有利には、10桁以上である。したがって、ばね構造体は、異なる方向から加えられた力に特定の応答を行う機械設計で構成された1以上の弾性変形可能なばねを含んでもよい。ばね構造体は、さらに、ばね構造体の方向機能を適切に制御するために、剛性を有するフレームまたは梁のような中間剛性部を含んでもよい。本開示のばね構造体は、慣性マスが製造されるのと同じ構造体層にパターニングされるため、本質的に面外方向の曲げに対して剛性的に抵抗する傾向がある。
【0020】
慣性マス204、206におけるバランスのとれたデュアル動作のために、内部対称性が基本要件である。本開示では、慣性マス204、206の両方の動きのモードにおいて定義された機能的特徴を、組み合わせて実施するように構成された1以上の同様のばね構造体の1セットをばねシステムと呼ぶ。したがって、以下において、別個のばね構造体は、特定の自由度の変形に対するそれらの抵抗(フレキシブルまたは剛性的な)の観点から定義する。ばねシステムは、ばねシステムを形成するばね構造体のそれぞれの組合せがデバイス構造体全体にもたらす結果の観点から定義する。
【0021】
多軸デバイスでは、比較的汎用性の高い構造体層厚さが必要とされる。しかしながら、厚い構造体層にパターニングされたばね構造体は、面外方向に容易に変形しない。多軸機能は、感覚および検出運動に複数の方向を用いる必要があるため、2以上の方向の回転運動を感知することができるロバストな構造体層構成を設けることは非常に難しい。角速度の測定には、デバイスのばねシステムは、測定された角運動から生じるコリオリ力によって共に引き起こされる、動きの駆動モードと、動きの少なくとも2つの感知モードとを可能にする必要がある。図2の例は、動きの2つの感知モードを可能にする。図2の構造体によって可能になる動きの3つのモードを、図3A図3Cに簡略化した機構で示す。動きのこれらのモードについては、以下の記載において詳述する。
【0022】
図3A図3Cでは、第1マス304は、第1慣性マス204の動きのモードを示し、第2マス306は、第2慣性マス206の動きのモードを示している。図3Aは、面外方向OPにおける慣性マスの上面図であり、構造体の動きの駆動モードを示す。駆動モードでは、第1マス304は駆動軸308を中心として振動し、第2マス306は駆動軸310を中心として振動する。第1マスの駆動軸308および第2マスの駆動軸310は、IP1方向に0でない距離だけ離れており、初期静止状態では、面外方向OPと平行である。図3Bは、第2面内方向IP2における慣性マスの側面図であり、構造体の動きのIP1感知モードを示す。IP1感知モードでは、第1マス304は第1感知軸312を中心として振動し、第2マス306は第1感知軸314を中心として振動する。第1マスの第1感知軸312および第2マスの第1感知軸310は、IP1方向に0でない距離だけ離れており、初期静止状態では、第2面内方向IP2と平行である。図3Cは、第1面内方向IP1における慣性マスの側面図であり、構造体の動きのIP2感知モードを示す。IP2感知モードでは、第1マス304および第2マス306は、初期静止状態において第1面内方向IP1と平行である共通第2感知軸316を中心として振動する。本明細書において、動きのモードは、初期静止状態において静止基準面に対して別々に記載していることに留意すべきである。動作中の慣性マスの動きは、通常、動きのこれらの意図した3つのモードの少なくとも1つの成分と、しばしば、直交誤差のようないくつかの望ましくない現象の成分とを含む。
【0023】
図2に戻ると、第1ばねシステムのばね構造体230は、動きの駆動モードでは慣性マス204と206との間で曲がり、動きのIP1感知モード中は、面外方向OPと平行の慣性マス204、206の隣接エッジを結合し、IP2感知モード中は、第1面内方向IP1の共通回転軸を設けるように構成される。
【0024】
図2は、第1ばねシステムのばね構造体230の一例示的形状を示す。このばね構造体230の形状によって、構造体230は、第2面内方向IP2において慣性マス204と206との間でフレキシブルに曲がり、第1面内方向IP1と平行であるばね軸を中心として、慣性マス204と206との間でフレキシブルにねじれ得る。さらに、ばね構造体の形状によって、ばね構造体は、面外方向OPの曲げに対して剛性的に抵抗するか、面外方向OPに真ん中から対称的に曲がり、対称的に曲がる間、ばね構造体によって結合された慣性マス204、206の隣接エッジは、面外方向において同じ高さを維持することができる。
【0025】
これらの特性は、様々な三次元ばね構造体で達成されてもよい。図2は、主として長尺のばね構造体230の例を示し、ばね構造体230の面外方向OPの寸法は、ばね構造体230の第2面内方向IP2の主要寸法の大きい倍数(通常5倍より大きい)であり、ばね構造体230の第1面内方向IP1の寸法は、ばね構造体230の第2面内寸法IP2の寸法の少なくとも5倍である。これにより、ばね構造体230は、第2面内方向IP2において2つの慣性マス204と206との間で容易に曲がり、慣性マス204、206に、図3Aに示す逆位相面内回転運動をさせることが可能になる。
【0026】
図4は、動きの駆動モード段階における図2のデバイス構造体をより詳細に示す。前述したように、微小電気機械デバイス内の要素の回転運動は、通常、平衡点を中心とする機械的振動、言いかえれば、要素の周期的振動運動である。面内回転運動とは、本明細書では、平面要素の平面に垂直な軸を中心とする円曲線に沿った平面要素の回転振動運動を指す。図4の例では、慣性マス204、206に垂直な軸400、402は、面外方向OPと平行である。面内回転運動における慣性マスの動きの位相は、ここでは、慣性マス内の点への線が基準面内軸方向、例えば第2面内軸IP2の方向となす角度に相当する。したがって、逆位相面内回転運動において、第1慣性マス204内の選択された点412への線410が第2面内方向IP2となす角度θ1は、第1慣性マス204の位相を表していると考えることができる。対応して、第2慣性マス206内の対称点422への線420が第2面内方向IP2となす角度θ2は、第2慣性マス206の位相を表していると考えることができる。逆位相面内回転運動では、角度θ1および角度θ2の絶対値は同じであるが、それらの角度の極性、すなわち符号は異なる(θ1=−θ2)。
【0027】
2つの慣性マスの逆位相面内回転運動は、一方の慣性マスの一時的な角運動量が常に、他方の慣性マスの一時的な角運動量の逆であるため、2つの慣性マスの駆動運動はバランスがよくとれている点で有利である。望ましくない外部振動および外部衝撃は、同相運動成分を引き起こし、言いかえれば、動きの共通モードを引き起こす傾向がある。しかしながら、示した構成では、動きのこのモードは、第1ばねシステムのばね構造体230の特性によって有効に除去される。
【0028】
図4に示すように、逆位相駆動運動では、ばね構造体230の部分430が第1慣性マス204と共に径方向に動こうとし、ばね構造体230の部分432が第2慣性マス206と共に径方向に動こうとする。第1慣性マス204が回転軸400を中心として時計回り方向に角度θ1だけ回転し、第2慣性マス206が回転軸402を中心として反時計回り方向に角度−θ1(θ2)だけ回転すると、ばね構造体230は、両端部で支持され、真ん中に横置きされる梁のように機能する。したがって、ばね構造体230は、真ん中で曲がり、実質的に弧を形成し、曲げの間、その中心点450が第2面内方向IP2において前後に動く。
【0029】
図4の例では、ばね構造体230は、部分430と432との間の中心点450を取り囲む任意選択の矩形部440を含む。この矩形部340は、ばね構造体の真ん中に配置し、面外方向OPにもいくらかの対称的な可撓性をばね構造体に加えてもよい。慣性マス204、206の隣接エッジにおける必要な結合部は、部分430と432との間に中間構造要素を用いることなく、単純な曲げ梁で実装することができる。しかしながら、結合されたエッジ間の距離は、3BのIP1感知モードの振動振幅によってわずかに変わるため、単純な曲げ梁は、かなり長く作られない限り、比較的剛性を有するばねを提供するであろう。また、矩形部により、図4に示すように、第1ばねシステムのばね構造体230は、懸架に対して過度の応力を引き起こすことなく、動きの駆動モードにおいて伸びることができる。それによって、矩形部は、駆動変位回転に対するばね力の線形性を改善する。
【0030】
動きの望ましくない共通モードでは、第1慣性マス204は回転軸400を中心として時計回り方向に角度θ1だけ回転しようとし、第2慣性マス206は回転軸402を中心として時計回り方向に同じ角度θ1(−θ2)だけ回転しようとするであろう。したがって、この場合、ばね構造体に作用する力は、ばね構造体をS字形に変形させようとするであろう。しかしながら、ばね構造体230がこのようなS字変形に強く抵抗することは、容易に理解される。
【0031】
図3Bで示すように、慣性マス204、206が逆位相面内回転運動で振動する場合、第1面内方向IP1の軸を中心とするデバイスの角回転は、慣性マスを、第2面内方向IP2と平行に延在するそれぞれの軸を中心として逆位相で回転させるコリオリ力を引き起こす。あるいは、第2面内方向IP2の軸を中心とするデバイスの角回転は、慣性マス204、206を、第1面内方向IP1に延在する共通軸を中心として回転させるコリオリ力を引き起こす。したがって、デバイスは、2つの面内方向の少なくとも一方、しかしそれらの両方における2つの慣性マス204、206の動きからでも感知信号を生成するように構成された回路を含んでもよい。回路はまた、差動検出において2つの慣性マス204、206の感知信号を使用するように構成されてもよい。両方の感知運動が逆位相で生じる際、感知運動のいずれにおいても慣性マスの一時的な角運動量は常に逆であり、これは、両方の感知方向における2つの慣性マスの動きの感知モードも、バランスがよくとれていることを意味する。したがって、駆動運動、および2つの感知運動においてさえ十分にバランスのとれたモードを有する開示した構造体により、セーフティクリティカルな自動車用途の条件のような、より厳しい条件にも十分ロバストな多軸ジャイロデバイスの提供が可能になる。
【0032】
図2に再び戻ると、デバイス構造体はまた、デバイス構造体のロバスト性を高めるように設計された1以上の面外シーソー梁システムを含む。面外シーソー梁システムについては、2つの慣性マス204、206の同じ方向を向いている少なくとも2つの水平エッジが、中間剛性梁の両端部に結合されてもよく、剛性梁は、第2面内方向IP2と平行である軸を中心として回転するように構成されてもよい。このような面外シーソー梁システムの支点は、支持部への機械的連結点を与え、慣性マスを面外方向OPに安定させる。面外シーソー梁システムはまた、慣性マスを、面外方向OPにおいてお互い反対方向に強制的に動かすため、具体的にはIP2感知モードにおいて、動きの共通モードをさらに除去する。
【0033】
図2の例には、2つの面外シーソー梁システムが含まれ、別の構成については明細書に後述する。図2では、正の第2面内方向IP2を向いている水平エッジ212、220が、1つの梁240に結合され、負の第2面内方向IP2を向いている水平エッジが、別の梁250に結合されている。より詳細には、図2は、正の第2面内方向IP2を向いている第1慣性マス204の第1水平エッジ212と、同じ方向を向いている第2慣性マス206の第1水平エッジ220とを示す。第1剛性梁240は第1面内方向IP1に延在し、第1慣性マス204の第1水平エッジ212は、第1剛性梁240の一端部に結合される。第2慣性マス206の第1水平エッジ220は、第1剛性梁240の他端部に結合される。第1剛性梁240および慣性マス204、206の結合は、慣性マスの一方が負の面外方向−OPに動くと、慣性マスの他方が正の面外方向+OPに動き、第1剛性梁240は、基本的に第1剛性梁の真ん中にある固定ヒンジである支点で枢動する、面外シーソー梁システムを形成するように構成される。第2剛性梁250および慣性マス204、206の結合は、対称的であり、同様に機能する。
【0034】
図2の面外シーソー梁システムでは、支点は、支持部への取付部と、ばね構造体との組合せによって提供される。好ましくは、剛性梁240の面外シーソー梁システムの支点と、剛性梁250の面外シーソー梁システムの支点とを横切る線は、慣性マス204と206との真ん中にあり、第1ばねシステムのばね構造体230の中心を横切る。
【0035】
支持部への取付は取付点で行われ、取付点とは、本明細書において、支持部、または構造体層に突出する支持部の一部に直接的または間接的に固定される構造体層の部位を指す。したがって、取付点は、面外シーソー梁システムの1以上の可撓部を結合する局部的静止点を提供する。本開示では、慣性マス204、206の両方に対して、定義された機能的固定特徴を、組み合わせて実施するように構成された1以上の取付点の1セットを取付要素と呼ぶ。それに応じて、取付点について、支持部に固定取付するように取付点が結合しているばね構造体に関連して以下に定義する。取付要素は、取付点のそれぞれの組合せがデバイス構造体全体にもたらす結果の観点から定義する。
【0036】
第1取付要素は、結合点と、そして同時に、慣性マス204、206の動きのモードを結合する1以上のシーソー梁システムの支点とを提供するように構成される。第2ばねシステムは、1以上の面外シーソー梁システムの剛性梁240、250を第1取付要素に結合するように構成される。第1剛性梁240は、第2ばねシステムの第1ばね構造体244によって第1取付要素の取付点242に結合され、第2剛性梁250は、第2ばねシステムの第2ばね構造体254によって第1取付要素の取付点252に結合される。
【0037】
第1ばね構造体244は、第2面内方向IP2と平行である軸を中心として、第1取付点242と第1剛性梁240との間でフレキシブルにねじれるように構成されたねじれ要素である。第1ばね構造体244の一端部は、第1取付点242に固定されてもよく、第1ばね構造体244の他端部は、第1剛性梁240の中心に固定されてもよい。図2の例では、第1取付点242は、慣性マス204、206が空けたままにしているスペースの第1剛性梁240から内方に(第1ばねシステムの方に)配置される。しかしながら、取付点は、それぞれの剛性梁から外方に、またはそれぞれの剛性梁の内部にも同様に配置することができる。対応する第2ばね構造254による、第2剛性梁250と、対応する第2取付点252との結合は、要素240、242および246の結合に類似しており、鏡面対称にすぎない。
【0038】
第3ばねシステムは、動きの駆動モードおよび動きの2つの感知モードを可能にする方法で、剛性梁240、250と慣性マス204、206とを結合するように構成される。図2のデバイス構造体では、第1剛性梁240の一端部は、第3ばねシステムの第1ばね構造体260によって第1慣性マス204の第1水平エッジ212に結合され、第1剛性梁240の他端部は、第3ばねシステムの第2ばね構造体262によって第2慣性マス206の第1水平エッジ220に結合される。対応して、第2剛性梁250の一端部は、第3ばねシステム258の第3ばね構造体264によって第1慣性マス204の第2水平エッジ214に結合され、第2剛性梁250の他端部は、第3ばねシステムの第4ばね構造体266によって第2慣性マス206の第2水平エッジ222に結合される。
【0039】
第3ばねシステムのばね構造体260、262、264、266の各々は、初期静止状態においてIP2方向に延在する軸を中心とする結合された慣性マスの振動回転を可能にするように構成される。これは、IP1感知モードにおける慣性マス204、206の回転振動に対応する。第3ばねシステムのばね構造体260、262、264、266の各々はまた、初期静止状態において、剛性梁への連結点と、慣性マスの水平エッジへの連結点との間で、第1面内方向IP1および第2面内方向IP2の両方に曲がるように構成され、その曲げにより、慣性マスへの連結点による基準面内の曲線に沿った動きが可能になる。図5Aおよび図5Bは、図2の第3ばねシステムの記載したばね機能特徴を可能にする1つの可能な形状をより詳細に示す。他の機能的に等価な形状が、その範囲内で適用されてもよい。
【0040】
図5Aは、初期静止状態における第3ばねシステムの第1ばね構造体260を示す。なお、図5Aおよび図5Bは、可能な機械的形状が所望のばね機能を生み出す方法について説明するために簡略化した概略図であり、特定の寸法を示していない。当業者であれば、開示したばね特性を構造ばねの様々な形状および寸法で実施することができる。第3ばねシステムの第1ばね構造体260は、第1剛性梁240への連結点500と、第1慣性マス204への連結点502とを有する。連結点間に、第2面内方向IP2の梁セクションが両端部において第1面内方向IP1の短い方の梁セクションによって交互に結合される蛇状ばねから形成され得る第1ばね構造体260が延在する。デバイス構造体の厚さにより、梁セクション、ひいてはばね構造体260全体は、面外方向OPの曲げに対して剛性的に抵抗する。少なくとも長い方の梁セクションは、それらの長さ寸法に垂直な方向に曲がってもよい。
【0041】
したがって、図5Bに示すように、縦部分の曲げによって、第1慣性マス204は面内回転駆動運動を受けることができ、第1剛性梁240への連結点は、その位置を維持し、第1慣性マス204への連結点は、基準面内の円曲線に沿って動く。一方、前述のように、第1面内方向IP1の軸を中心とするデバイスの角回転は、初期静止状態において第2面内方向IP2に延在する軸を中心として慣性マス204を回転させるコリオリ力を引き起こす。ここで、動きのこのIP1感知モードは、第1ばね構造体260のねじれによって容易になり、動きのこのようなモードから生じる信号をIP1感知信号と呼ぶ。当該IP1感知モードでは、ねじれの主な部分は、連結点502に結合される第1長梁セクションで起こる。しかしながら、第1梁セクション上のねじれの一部は次の長梁セクションに伝達されるようになってもよく、そして、そのねじれの一部は次の長梁セクションに伝達されるようになってもよく、その結果、すべての梁セクションがねじれを容易にすると考えることができる。IP1感知モードにおける回転軸は、第1慣性マス204の第1水平エッジ212の連結点502と、第1慣性マス204の第2水平エッジ214の連結点とを通る。第2面内方向IP2の軸を中心とするデバイスの回転は、初期静止状態において第1面内方向IP1に延在する共通軸を中心として慣性マスを回転させるコリオリ力を引き起こす。ここで、動きのこのIP2感知モードは、第2ばねシステムのばね構造体244、254のねじれによって容易になり、動きのこのようなモードから生じる信号をIP2感知信号と呼ぶ。蛇状ばね構造体は、面外方向に剛性を有する、言いかえれば、面外方向の曲げに対して剛性的に抵抗するため、第1ばね構造体260は、第1慣性マス204の第1水平エッジ212を第1剛性梁240の端部の面外運動に、剛性的に結合する。
【0042】
図2から分かるように、第3ばねシステムでは、第1剛性梁240の他端部の第2ばね構造体262は、第1ばね構造体260に鏡面対称である。バランスのよくとれた面内回転駆動運動では、慣性マス204、206を、それぞれの駆動軸を中心として回転させることができ、また、第1ばねシステムのばね構造体230によって強制的に逆位相で振動させる。これは、逆位相でもコリオリ誘起回転が生じることを意味する。よって、駆動モードおよび感知モードは共にバランスがとれている。IP1感知モードでは、第1ばねシステムのばね構造体230は、慣性マス204、206のIP1感知モードがIP2方向の平行な2つの軸を中心とする逆位相回転であるよう並んで動くように、第1垂直エッジ208、218を結合する。IP2感知モードでは、面外シーソー梁システムは、互いに反対方向に動くように第1水平エッジ212、220を剛性的に結合するため、IP1方向の共通軸を中心とする慣性マス204、206の逆位相回転振動が可能になる。
【0043】
IP1感知モードでは、ランダムな加速によって、両方の慣性マス204、206内の慣性マスは同位相で動こうとするであろう。そのため、第1垂直エッジ208は一方の面外方向に、第1垂直エッジ216は反対方向に動くはずである。しかしながら、このような動きは、第1ばねシステムのばね構造体230の面外剛性によって無効になる。
【0044】
一方、IP2感知モードでは、ランダムな加速によって、両方の慣性マス204、206は同位相で動こうとするであろう。そのため、正のIP2方向を向いている第1水平エッジ212、220は、一方の面外方向に同時に動くはずであり、一方、負のIP2方向を向いている第2水平エッジ214、222は、他方の面外方向に同時に動くはずである。しかしながら、支持部にしっかりと留められ、面外方向に剛性を有する面外シーソー梁システムは、動きのこのような共通モードに対して剛性的に抵抗する。
【0045】
また、駆動運動では、ランダムな加速によって、両方の慣性マス204、206は同位相で動こうとする。すなわち、その結果、慣性マスは、初期位置から同じ時計回り方向または反時計回り方向に回転するであろう。しかしながら、第1ばね構造体230が慣性マス204と206との間でS形状に曲がることができないため、これは無効になる。
【0046】
よって、開示した構成により、バランスのとれた駆動運動モードおよびバランスのとれた検出運動モードが容易になって第1面内方向IP1および第2面内方向IP2の軸を中心とするデバイスの角回転が感知され、同時に、外部衝撃に対して当該駆動モードおよび感知モードが安定する。上に開示したように、逆位相感知モードは、1つのモードにおける検出信号が、2つの慣性マスのそれぞれの面内軸を中心とする動きから生成された信号の差に対応する差動検出を可能にする。これによって、動作条件(温度、湿度、機械的応力、EMCなど)の一時的な変化の影響から生じる測定誤差が有効に低減される。
【0047】
図2はまた、慣性システムの逆位相面内駆動運動を生成するのに適用可能な有利な構造体を示す。図2に示すように、慣性マス204、206の各々は、それぞれの駆動要素270、290に結合されてもよい。線形駆動運動は、通常、回転駆動運動より有効に引き起こされるため、駆動要素は、線形駆動要素および変換駆動要素を含むように構成されてもよい。この第1例では、線形駆動要素は、面内方向のうちの一方向の線形駆動運動を受けるように構成されており、変換駆動要素は、慣性マスおよび線形駆動要素に結合され、線形駆動要素の線形駆動運動を面外方向の軸を中心とする慣性マスの面内回転運動に変換するように構成される。質量分布のバランスをとるために、慣性マスは鏡面対称性を有することが好ましいため、駆動要素の駆動機能について、第1慣性マス204の駆動要素270に関連して以下に説明する。当業者にとって、第2慣性マス206用の駆動要素290の実装は、簡単な作業である。この例では、駆動要素270は、第1慣性マス204内に配置される。他の例については後述する。
【0048】
図2の第1慣性マス204用の駆動要素270は、線形駆動要素271および変換駆動要素272を含む。線形駆動要素271は、第2取付要素の取付点によって支持部に結合され、かつ、第4ばねシステムのばね構造体によって線形振動することが可能な線形駆動マスを含む。第2取付要素は、慣性マス204、206の両方の駆動要素270、290を懸架するために支持部に静止結合するように構成される。第1慣性マス204の駆動要素270の線形駆動要素271は、2つの線形駆動マス273、274を含み、線形駆動マス273、274は、この例では、第2面内方向IP2に各々延在する縦梁である。第4ばねシステムは、両方の慣性マス204、206の線形駆動マスを第2取付要素の取付点に結合し、かつ第2面内方向IP2の線形駆動マスの線形逆位相運動を可能にするように構成される。線形駆動要素271の安定化を向上させるために、第2取付要素は、2対の取付点、すなわち各線形駆動マスにつき1対275、276を含んでもよい。対応して、線形駆動要素271について、第4ばねシステムは、第2取付要素の各取付点につき1つのばね構造体を含んでもよく、1対のばね構造体は、1つの線形駆動マスを支持部に結合する。例えば、図2に示すように、第4ばねシステムの1対のばね構造体277、278は、線形駆動マス273の縦梁の両端部に配置されてもよく、ばね構造体277、278の各々は、縦梁のそれぞれの端部を取付点275、276に結合するように配置されてもよい。線形駆動マス274についても、同様に配置されてもよい。
【0049】
この例では、変換駆動要素272は、第1線形駆動マス273と第2線形駆動マス274との間に配置される。変換駆動要素272は、第5ばねシステムのばねによって線形駆動マス273、274に、かつ第6ばねシステムのばねによって第1慣性マス204に結合される変換駆動マス279を含む。第5ばねシステムは、変換駆動マスの動きが線形駆動マスの動きの和であるように、2つの線形駆動マスの動きを慣性マス204、206の駆動要素内の中間変換駆動マス279に結合するように構成される。図2では、変換駆動マス279は、主として第1面内方向IP1に延在する2つの水平エッジと、主として第2面内方向IP2に延在する2つの垂直エッジとを有する。第5ばねシステムの第1ばね構造体280は、第1線形駆動マス273を変換駆動マス279の一方の垂直エッジに結合し、第5ばねシステムの第2ばね構造体281は、第2線形駆動マス274を変換駆動マス279の反対側の垂直エッジに結合する。第5ばねシステムのばね構造体280、281は、有利には、第2面内方向IP2および面外方向OPの変位に剛性的に抵抗するが、第1面内方向IP1の軸を中心としてねじれて曲がる。初期静止状態では、この軸は、慣性マス204の駆動軸と一致している。図2は、第5ばねシステムのばね構造体280、281が、第1面内方向IP1に延在する短梁と、それぞれの慣性マスへの梁の連結点付近において第2面内方向IP2に延在する縦凹部とを含む例を示す。梁により、説明したねじれおよび安定性が第2面内および面外方向にもたらされ、凹部により、線形駆動マスの線形運動と、被駆動慣性マスの回転運動との間の第1面内方向IP1における必要な可撓性が可能になる。
【0050】
したがって、ここで、第1線形駆動マス273には、線形駆動マス273をIP2方向の前後に振動させる容量性駆動システム(図示せず)が備えられてもよい。振動駆動運動の誘導は当業者によく知られており、本明細書ではより詳細には述べない。第2線形駆動マス274にはまた、線形駆動マスを、IP2方向、しかし常に第1線形駆動マス273と反対方向(逆位相)に振動させる容量性駆動システム(図示せず)が備えられてもよい。線形駆動マス273、274の逆位相線形運動は、第5ばねシステムのばね構造体280、281によって変換駆動マス279の対向する垂直エッジに中継され、それにより、変換駆動マス279は、OP方向の軸を中心とする回転運動で振動する。慣性マス内で起こるしっかりと留められた線形駆動運動は、有効であると同時に非常に正確であるため、測定結果のエラーが低減される。
【0051】
変換駆動マス279の水平エッジは、第6ばねシステムのばね282、283によって慣性マス204に結合される。第6ばねシステムは、内部変換駆動マスの回転振動が周囲の慣性マスの回転振動に中継されるように、慣性マス204、206の各々をその内部変換駆動マスに結合するように構成される。図2では、第6ばねシステムの第1ばね構造体282は、変換駆動マス279の一方の水平エッジと、第1慣性マス204の内部水平エッジとの間に結合され、初期静止状態において第2面内方向IP2に延在する軸を中心としてねじれて曲がるように構成される。対応して、第6ばねシステムの第2ばね構造体283は、変換駆動マス279の他方の水平エッジと、第1慣性マス204の別の内部水平エッジとの間に結合され、また、初期静止状態において第2面内方向IP2に延在する軸を中心としてねじれて曲がるように構成される。有利には、第6ばねシステム279のばね構造体282、283は、共線的であり、他の種類の変形に抵抗する。ばね構造体282、283は面内方向に曲がらないため、各変換駆動要素の面内回転は、周囲の慣性マスに有効に中継され、その結果、第1慣性マス204の駆動モードの動きを引き起こす。第6ばねシステムのばね構造体282、283によってもたらされるねじれ可撓性によって、慣性マス204はIP1感知モードで振動することができる。面外方向OPの曲げに対する第6ばねシステムのばね構造体282、283の剛性によって、IP2感知モードにおいて、変換駆動マス279は慣性マス204の回転振動に結合される。変換駆動マス279のこの動きは、第5ばねシステムのばね構造体280、281のねじれ可撓性によって可能になる。
【0052】
駆動マスおよび被駆動マスの動きのモードを定義するばねの開示した組合せにより、高感度で角速度を感知することができ、同時に、デバイスの慣性マスと同じ構造体層からパターニングされたばね構造体の固有の機械的特性を有利に利用することによって、外部衝撃に対するロバスト性が高まる。
【0053】
デバイス構成のロバスト性は、さらに駆動要素270、290を支持部に固定し、ひいては動きの駆動モードを安定させる中央アンカ部によって高められてもよい。中央アンカ部は、第3取付要素および第7ばねシステムで実装されてもよい。第3取付要素は、変換駆動マスを慣性マス204、206の内部駆動要素内に内部懸架するために支持部に静止結合するように構成される。第7ばねシステムは、第3取付要素から、慣性マス204、206の内部駆動要素内の変換駆動マスを懸架するように構成される。例えば、図2の例で示すように、第3取付要素の取付点285は、支持部に固定されてもよく、変換駆動マス279は、第7ばねシステムのばね構造体286によって取付点285に結合されてもよい。ばね構造体286は、第2面内方向IP2に曲がり、第1面内方向IP1の軸を中心としてねじれて曲がるように構成されてもよい。取付点285およびばね構造体286は、変換駆動マス279内に配置され、その結果、初期静止状態において、変換駆動マス279の回転軸は、第1感知軸、言いかえれば、動きのIP2感知モードにおける第1慣性マス204の回転軸と一致する。有利には、第7ばねシステムのばね構造体286は、変換駆動マス279の動きの他のモードによって生じる変形に抵抗する。図2の例では、ばね構造体286は、変換駆動マス279および取付点285を結合する梁で実装される。変換駆動マス279の中央位置におけるばね構造体286の面内曲げにより、動きの駆動モードにおいて回転駆動マスの面内回転が可能になる。面外方向の曲げに対するばね構造体286の剛性によって、駆動モードおよびIP1感知モードにおいて起こり得る寄生振動が有効に除去される。ばね構造体286のねじれ可撓性によって、IP2感知モードにおいて、変換駆動マス279の面外シーソー運動と第1慣性マス204とを直接結合することができる。
【0054】
前述したように、開示した構造体は対称であるため、第2慣性マスシステム202の慣性マス206の駆動要素290についての説明は、本明細書において提供する駆動要素270の説明から容易に導くことができる。
【0055】
図6は、開示するデバイスの代替例を示す。図2で既に説明した要素は、同じ参照番号で表示している。指摘するように、図6は慣性マスの代替形状を示し、その代替形状では、慣性マスがデバイスの利用可能な表面積をより広く占め得るため、駆動運動および感知運動に関して慣性マスが増大している。したがって、この実施形態では、慣性マスの水平エッジおよび垂直エッジは、へこみがなく真っ直ぐであるため、第1取付要素の部品および第2ばねシステムの部品は、面外シーソー梁システムの第1梁240から外方に配置される。さらに、ここでは、図2の完全に内部の駆動要素270、290が、図2で開示した慣性マス204、206の動きの逆位相面内駆動モードを対応して引き起こす部分的に外部の駆動要素600、602に置き換えられている。図6の例では、各駆動要素は、この場合も線形駆動要素および変換駆動要素を含むが、ここでは、線形駆動要素の各々は、それぞれの慣性マスの外側に配置される。
【0056】
第1慣性マス204の駆動要素600に関して、以下に詳細に説明する。600慣性マス206の駆動要素602の実装に関する開示は、同じ説明から容易に導くことができる。図2のように、図6の第1慣性マス204の駆動要素600は、線形駆動要素604および変換駆動要素606を含む。しかしながら、ここで、線形駆動要素604は、第1慣性マス204の外側の位置において支持部から懸架され、変換駆動要素606は、線形駆動要素604を、第1慣性マス204内の2つの結合点608、610に結合する。
【0057】
線形駆動要素604は、第1線形駆動マス612および第2線形駆動マス614を含む。図2のように、これらの線形駆動マス612、614は、線形駆動マス612、614の線形運動を可能にする方法で第2取付要素の取付点に線形駆動マス612、614を結合する第4ばねシステムの方向ばねで、第2取付要素の取付点から懸架することができる。しかしながら、図2の構成とは違って、方向ばねは、第1面内方向IP1における線形駆動マス612、614の線形運動を可能にするように構成され、第2取付要素の取付点は、第1慣性マス内にはなく、第1慣性マスの外側にある。
【0058】
第1慣性マス204は、第1慣性マス204の面内回転運動の回転軸を意味する駆動軸が基準面と交差する点に回転中心630を有する。この例では、2つの線形駆動マス612、614の線形運動は、線形駆動マスの逆位相振動を直接第1慣性マス204の2つの内部点に中継することによって、第1慣性マス204の回転運動に変換される。2つの内部点は、本質的に、回転中心630を横切る第2面内方向IP2の線において、回転中心の両側に位置する。ここで、この表現は本質的に、内部材料のひずみ、および面内方向と面外方向との異なる寸法の関係により、結合点用の第1慣性マス204の開口部を結ぶ線は、IP1感知モードにおいてIP2方向軸を中心とする回転がその周りで生じる内部材料ゼロひずみ点同士を結ぶ線からわずかにずれてもよいことを暗示している。機能としては、結合点および中心点の本質的な共線性は、IP1感知モードにおける慣性マスの回転が可能になるように結合点608、610が第1慣性マス204内に十分に深く延在することを意味する。
【0059】
したがって、図6は、変換駆動要素606が2つの縦梁622、624を含む例を示す。変換駆動要素606の第1梁622は、第1線形駆動マス612から第1慣性マス204内の第1結合点608まで延在する。変換駆動要素606の第2梁624は、第2線形駆動マス614から第1慣性マス204内の第2結合点610まで延在する。線形駆動マス612、614が逆位相で駆動される場合、梁622、624は、線形運動を第1慣性マス204内の内部点608、610に中継することによって、線形プッシュ・プルを引き起こし、回転駆動運動を引き起こす。
【0060】
デバイス構造体のロバスト性は、この場合も、中央アンカ部によってさらに高められてもよい。図6では、IP1方向の第1回転軸620は、IP2感知モード用の初期共通回転軸を示す。IP2方向の第2回転軸622は、IP1感知モード用の第1慣性マス204の初期回転軸を示す。中央アンカ部は、慣性マス204、206を支持部から中央懸架するために静止結合することが既に開示された第4取付要素の取付点と、第8ばねシステムのばね構造体とで実装される。図6では、第1慣性マス204用の第4取付要素の取付点640が、第1慣性マス204の回転中心630と一致することを示す。第8ばねシステムのばね構造体は、第1結合ばね構造体641と、フレーム642と、第2結合ばね構造体643とを含む。フレーム642は、ここでは、剛性を有し、内部の空きスペースの周りを少なくとも部分的に囲む境界を形成する構造要素を表す。フレーム642は、第1結合ばね構造体641によって取付点640に、また、第2結合ばね構造体643によって第1慣性マス204に結合される。結合ばね構造体641、643の一方または両方は、第1慣性マス204の面内回転が可能になるように、それぞれの面内方向にフレキシブルに曲がってもよい。第1結合ばね構造体641は、さらに、取付点640とフレーム642との間で、初期静止状態において第1面内方向IP1に延在する軸を中心としてフレキシブルにねじれるように構成されている。
【0061】
図6では、第1結合ばね構造体641は、第1面内方向IP1の両側に突出し、フレーム642の内側エッジ内に延在する2つの部分を含む。第2結合ばね構造体643は、さらに、第1慣性マス204とフレーム642との間で第2面内方向IP2の軸を中心としてフレキシブルにねじれるように構成されてもよい。図6では、第2結合ばね構造体643は、第2面内方向IP2の両側に突出し、第1慣性マス204の内側水平エッジ内に延在する2つの部分を含む。結合ばね構造体641、643とフレーム642とのこの組合せにより、動きのIP1感知モードおよび動きのIP2感知モードが可能になる。第1結合ばね構造体641は、面外方向に曲がることができず、フレーム642も面外方向に曲がることができない。第1慣性マス204がIP1感知モードにおいて第2回転軸622を中心として回転する場合、第2結合ばね構造体643は、フレーム642と第1慣性マスとの間でねじれ得る。同様に、第2結合ばね構造体643は、面外方向に曲がることができず、フレーム642も面外方向に曲がることができない。第1慣性マス204がIP2感知モードにおいて第1回転軸620を中心として回転する場合、第1結合ばね構造体641は、フレーム642と取付点640との間でねじれ得る。
【0062】
図7は、開示するデバイスのさらなる代替例を示す。図2で既に説明した要素は、この場合も、同じ参照番号で表示している。図6にように、図2の完全に内部の駆動要素270、290が、図2で開示した慣性マス204、206の動きの逆位相面内駆動モードを対応して引き起こす部分的に外部の駆動要素700、702で置き換えられている。図7の例では、各駆動要素は、この場合も線形駆動要素および変換駆動要素を含み、線形駆動要素の各々は、それぞれの慣性マスの外側に配置される。
【0063】
第1慣性マス204の駆動要素700に関して、以下に詳細に説明する。第2慣性マス206の駆動要素702の実装に関する開示は、同じ説明から容易に導くことができる。図2および図6のように、図7の第1慣性マス204の駆動要素700は、線形駆動要素704および変換駆動要素706を含む。しかしながら、図6のように、線形駆動要素704は、第1慣性マス204の外側の位置において支持部から懸架される。さらに、変換駆動要素706はまた、図6の構成における第1慣性マス204用の別個の要素として開示する中央アンカ部を提供する。
【0064】
線形駆動要素704は、1つの線形駆動マス712を含む。図2および図6のように、第4ばねシステムの方向ばねは、線形駆動マス712を第2取付要素の取付点に結合し、かつ線形駆動マス712の線形運動を可能にするように構成される。図7の構成では、方向ばねは、第1面内方向IP1における線形駆動マス712の線形運動を可能にするように構成される。線形駆動マス712の線形運動は、駆動マス712の振動を第1慣性マス204内に位置する中央ばね構造体に非対称的に中継することによって、第1慣性マス204の回転運動に変換される。
【0065】
第1慣性マス204は、第1慣性マス204の面内回転運動の回転軸(駆動軸)が基準面と交差する点に回転中心730を有する。図7では、IP1方向の第1回転軸720は、IP2感知モード中の共通回転軸を示す。IP2方向の第2回転軸722は、IP1感知モードにおける第1慣性マス204の回転軸を示す。図6のように、第1慣性マス204用の中央アンカ部は、慣性マス204、206を支持部から中央懸架するために静止結合するように構成された第4取付要素の取付点640で実装される。
【0066】
第1慣性マス204は、第9ばねシステムのばね構造体740によって取付点640に結合される。第1慣性マス204用の第9ばねシステムのばね構造体740は、第1結合ばね構造体741と、フレーム742と、第2結合ばね構造体743とを含む。フレーム742は、第1結合ばね構造体741によって取付点640に、また、第2結合ばね構造体743によって第1慣性マス204に結合される。第1結合ばね構造体741は、第2面内方向にフレキシブルに曲がり、第1慣性マス204の面内回転を可能にするように構成される。第1結合ばね構造体741は、さらに、初期静止状態において第1面内方向IP1に延在するばね軸を中心として、取付点740とフレーム742との間でフレキシブルにねじれるように構成される。回転中心730は、取付点640からずれており、第1結合ばね構造体741のばね軸のある点に位置する。しかしながら、第1結合ばね構造体741は、フレーム742と同様に面外方向OPにおいて剛性を有する。
【0067】
第2結合ばね構造体743は、第2面内方向IP2の軸を中心として、第1慣性マス204とフレーム742との間でフレキシブルにねじれるように構成される。図7では、第2結合ばね構造体743は、第2面内方向IP2の両側に突出し、第1慣性マス204の内側水平エッジ内に延在する2つの部分を含む。
【0068】
したがって、説明した構造的組合せは、第1慣性マス204がIP2感知モードにおいて第1回転軸720を中心として回転する場合、第1結合ばね構造体741を、フレーム742と取付点640との間でねじれるように構成する。一方、第1慣性マス204がIP1感知モードにおいて第2回転軸722を中心として回転する場合、第2結合ばね構造体743は、フレーム742と第1慣性マス204との間でねじれ得る。第2結合ばね構造体743は面内方向に曲がらず、フレーム742も面内方向に曲がないため、フレームに引き起こされる動きは、直接第1慣性マス204に中継される。
【0069】
この例では、線形駆動マス712の線形運動は、駆動マスの振動をフレーム742に非対称的に中継することによって、第1慣性マス204の回転運動に変換される。このため、変換駆動要素706は、線形駆動マス712からフレーム内の結合点まで第1面内方向IP1に延在する縦梁722を含む。有利には、梁722は、梁および第1回転軸720が同一平面上にあるが、0でない距離だけ離れているように、第1慣性マス204と同じ構造体材料層にパターニングされる。動作において、これは、正のIP1方向における線形駆動マス712の線形運動によってフレーム742が引っぱられようとすると、取付点640と第1結合ばね構造体との組合せによって、その引っ張る力が、回転中心730を中心とするフレーム742の時計回り回転運動に変換されることを意味する。対応して、負のIP1における線形駆動マス712の線形運動からの引っ張る力は、フレーム742の反時計回り回転運動に変換される。第2結合ばね構造体743は、フレーム742のこの回転運動を直接第1慣性マス204の回転振動に中継する。
【0070】
図8は、開示するデバイスのさらなる代替例を示す。図2で既に説明した要素は、この場合も、同じ参照番号で表示している。図6および図7のように、図2の完全に内部の駆動要素270、290が、図2で開示した慣性マス204、206の動きの逆位相面内駆動モードを対応して引き起こす部分的に外部の駆動要素800、802で置き換えられている。図8の例では、各駆動要素800、802は、この場合も線形駆動要素および変換駆動要素を含み、線形駆動要素の各々は、それぞれの慣性マスの外側に配置される。
【0071】
この例では、IP1方向のデバイス構造体の寸法は、先の例の面外シーソー梁システム250のうちの1つの位置に駆動要素800、802を配置することによって縮小されている。したがって、第2面内方向IP2に沿って、駆動運動が慣性マス204、206の一方側で駆動要素によって引き起こされ、安定化結合が慣性マス204、206の他方側にある面外シーソー梁システムによってなされる。
【0072】
第1慣性マス204の駆動要素800に関して、以下に詳細に説明する。第2慣性マス206の駆動要素802の実装に関する開示は、同じ説明から容易に導くことができる。図2図6および図7のように、図7の第1慣性マス204の駆動要素800は、線形駆動要素804および変換駆動要素806を含む。線形駆動要素804は、第1慣性マス204の外側の位置において支持部から懸架され、変換駆動要素806も振動運動のための中央アンカ部を提供する。
【0073】
線形駆動要素802は、線形駆動マス812の線形運動を可能にするように構成される第4ばねシステムの方向ばね854、856で第2取付要素の取付点850、852から懸架することができる1つの線形駆動マス812を含む。図8の構成では、方向ばね854、856は、第1面内方向IP1における線形駆動マス812の線形運動を可能にするように構成される。線形駆動マス812の線形運動は、変換駆動要素に含まれた面内シーソー梁システムによって第1慣性マス204の回転運動に変換される。
【0074】
第1慣性マス204は、第1慣性マス204の面内回転運動の回転軸が基準面と交差する点に回転中心830を有する。図8では、IP1方向の第1回転軸820は、IP2感知モード中の共通回転軸を示す。IP2方向の第2回転軸822は、IP1感知モードにおける第1慣性マス204の回転軸を示す。図6のように、第1慣性マス204用の中央アンカ部は、第4取付要素の取付点640で実装され、第4取付要素は、慣性マス204、206を支持部から中央懸架するために静止結合するように構成される。
【0075】
第1慣性マス204は、第10ばねシステムのばね構造体840によって取付点640に結合される。第1慣性マス204用の第10ばねシステムのばね構造体840は、第1結合ばね構造体841と、フレーム842と、第2結合ばね構造体843とを含む。フレーム842は、第1結合ばね構造体841によって取付点640に、また、第2結合ばね構造体843によって第1慣性マス204に結合される。第1結合ばね構造体841は、第1面内方向IP1にフレキシブルに曲がり、第1慣性マス204の面内回転を可能にするように構成される。第1結合ばね構造体841は、さらに、第2面内方向IP2のばね軸を中心として、取付点640とフレーム842との間でフレキシブルにねじれるように構成される。回転中心830は、取付点640からずれており、第1結合ばね構造体841のばね軸のある点に位置する。しかしながら、第1結合ばね構造体841は、フレーム842と同様に面外方向OPにおいて剛性を有する。
【0076】
第2結合ばね構造体843は、第1面内方向IP1の軸を中心として、第1慣性マス204とフレーム842との間でフレキシブルにねじれるように構成される。図8では、第2結合ばね構造体843は、第1面内方向IP1の両側に突出し、第1慣性マス204の内側垂直エッジ内に延在する2つの部分を含む。
【0077】
したがって、説明した構造的組合せは、第1慣性マス204がIP1感知モードにおいて第2回転軸822を中心として回転する場合、第1結合ばね構造体841を、フレーム842と取付点640との間でねじれるように構成する。一方、第1慣性マス204がIP2感知モードにおいて第1回転軸820を中心として回転する場合、第2結合ばね構造体843は、フレーム842と第1慣性マス204との間でねじれ得る。第2結合ばね構造体843は面内方向に曲がらず、フレーム842も面内方向に曲がらないため、フレームに引き起こされる動きは、直接第1慣性マス204に中継される。
【0078】
この例では、線形駆動マス812の線形振動を面内シーソー梁システムの梁の一端部に結合し、梁の他端部をフレーム842に結合することによって、線形駆動マス812の線形運動は第1慣性マス204の回転運動に変換される。フレーム842に結合する梁の端部における主としてIP1方向の動きはフレームに中継されるが、取付点640への結合によって、フレーム842は、強制的に、第2結合ばね構造体843によって第1慣性マス204に中継される回転運動をする。
【0079】
したがって、この例では、慣性マス204、206の各々の駆動要素内の変換駆動要素は、面内シーソー梁システムを含む。面内シーソーシステムは、第5取付要素の取付点によって支持部に結合される。慣性マス204用の面内シーソーシステムでは、剛性梁860は、第11ばねシステムのばね構造体によって第5取付要素の取付点861に結合される。第11ばねシステムは、梁860のシーソー運動の支点を局部的静止点に安定させるように構成される。このため、梁860の面内シーソー運動が可能になるように、図8のばね構造体862は、取付点861が連結するより小さい部位で梁860に連結する。梁860の端部は、第12ばねシステムのばね構造体863によって線形駆動マス812とフレームとに結合する。第1面内方向IP1におけるばね構造体863の形状は、梁860の形状より薄い。線形駆動マス812の端部にあるばね構造体863の一部では、これが線形駆動運動を面内シーソー運動に結合する。フレーム842の端部にあるばね構造体863の一部では、より薄い形状により、ばね構造体863は、IP1感知モードにおいて第2面内方向IP2の軸を中心として梁860の端部とフレームとの間でねじれ得る。
【0080】
動作において、この要素の組合せは、線形駆動マス812が正のIP1方向に動く場合に、線形駆動マス812が梁860の一端部を同じ方向へ引っ張ることによって、梁の他端部がフレーム842を反対方向に動かすように動作する。取付点640と第1結合ばね構造体841との組合せにより、引っ張る力が、回転中心830を中心とするフレーム842の時計回り回転運動に変換される。対応して、負のIP1方向における線形駆動マス812の線形運動からの引っ張る力は、フレーム842の反時計回り回転運動に変換される。第2結合ばね構造体843は、フレーム842のこの回転運動を直接第1慣性マス204の回転振動に中継する。
【0081】
図9は、開示するデバイスのさらなる代替例を示す。図2で既に説明した要素は、この場合も、同じ参照番号で表示している。図6図7および図8のように、図2の完全に内部の駆動要素270、290が、図2で開示した慣性マス204、206の動きの逆位相面内駆動モードを対応して引き起こす部分的に外部の駆動要素900、902で置き換えられている。図9の例では、各駆動要素900、902は、この場合も線形駆動要素および変換駆動要素を含む。この例では、慣性マスは、図9に示すように、第1バー形状が第1面内方向IP1に延在し、第2バー形状が第2面内方向IP2に延在し、慣性マス204の水平エッジ212、214は第2バー形状の両端部によって設けられ、垂直エッジ208、210は第1バー形状の両端部によって設けられる十字形状を有する。図9はまた、第2ばねシステムのばね構造体244の代替実装を示す。慣性マス204、206の十字形状がそれらの間にいくらかの空きスペースを残す場合、第1取付要素の取付点242、252は、個々のそれぞれの剛性梁240、250の内側に位置付けすることができる。ばね構造体244、254は、その取付点の異なる側からそれぞれの剛性梁まで各々突出している2つの部分からなるように対応して構成することができる。
【0082】
第1慣性マス204の駆動要素900に関して、以下に詳細に説明する。第2慣性マス206の駆動要素902の実装に関する開示は、同じ説明から容易に導くことができる。図2図6図7および図8にように、図9の第1慣性マス204の駆動要素900は、線形駆動要素904および変換駆動要素906を含む。線形駆動要素904は、図9に示すように、十字形状の第1慣性マス204におけるバー形状の隣接して直交する辺間の領域によって設けられた位置において支持部から懸架される。
【0083】
線形駆動要素904は、第1線形駆動マス912および第2線形駆動マス914を含む。線形駆動マス912、914は、この例では第1面内方向IP1における線形面内運動を可能にする第4ばねシステムの方向ばね構造体で第2取付要素の取付点から懸架することができる。
【0084】
第1慣性マス204は、第1慣性マス204の面内回転運動の回転軸が基準面と交差する点に回転中心930を有する。図6のように、2つの線形駆動マス912、914の線形運動は、第2面内方向IP2の回転中心930を横切る線において回転中心の両側に本質的に位置する2つの内部点に駆動マスの逆位相振動を中継することによって、第1慣性マス204の回転運動に変換される。
【0085】
したがって、図9は、変換駆動要素906が2つの縦梁を含む例を示す。変換駆動要素906の第1梁922は、第1線形駆動マス912から第1慣性マス204内の第1結合点908まで延在する。変換駆動要素906の第2梁924は、第2線形駆動マス914から第1慣性マス204内の第2結合点910まで延在する。有利には、梁922、924は、第1慣性マス204と同じ構造体材料層にパターニングされる。
【0086】
第1慣性マス204の十字形状により、梁922は、図2の梁622より短く見えるかもしれない。これによる動きのIP1感知モードにおける材料ひずみを回避するために、第1慣性マス204が第2回転軸922を中心として回転する場合に、第2面内方向IP2の軸に巻き付くねじれ部分930を含むように、第1慣性マス204への結合点908を実装することができる。さらに、梁922は、線形駆動マス912に結合するフォーク状拡張部を含むことができる。このフォーク状拡張部により、第1慣性マス204がIP2感知モードにおいて第1回転軸920を中心として回転する場合、結合点908は、線形駆動マス912に対して面外方向に動くことができる。
【0087】
図9では、構成のロバスト性は、図6のように、動きのすべてのモードを可能にする別個の中央アンカ部によって高められている。図9では、IP1方向の第1回転軸920は、IP2感知モード用の初期共通回転軸を示す。IP2方向の第2回転軸922は、IP1感知モード用の第1慣性マス204の初期回転軸を示す。中央アンカ部は、慣性マス204、206を支持部から中央懸架するために静止結合することが既に開示された第4取付要素の取付点と、第8ばねシステムのばね構造体とで実装される。しかしながら、図9に示すように、第1慣性マス204用の第4取付要素の取付点640は、第1慣性マス204の回転中心930と一致しない。図6で概説したように、第8ばねシステムのばね構造体は、第1結合ばね構造体641と、フレーム642と、第2結合ばね構造体643とを含む。フレーム642は、第1結合ばね構造体641によって取付点640に、また、第2結合ばね構造体643によって第1慣性マス204に結合される。この例は、1つのばね梁がフレーム642を取付点640に結合する第1結合ばね構造体641の代替実装を示す。第1結合ばね構造体641は、それぞれの面内方向にフレキシブルに曲がり、その結果、第1慣性マス204の面内回転が可能になるように構成される。第1結合ばね構造体641は、さらに、初期静止状態において第1面内方向IP1に延在する軸を中心として、取付点640とフレーム642の間でフレキシブルにねじれるように構成されている。
【0088】
第2結合ばね構造体643は、第2面内方向IP2の軸を中心として、第1慣性マス204とフレーム642との間でフレキシブルにねじれるように構成されてもよい。図9では、第2結合ばね構造体643は、この場合も、第2面内方向IP2の両側に突出し、第1慣性マス204内の内側結合点内に延在する2つの部分を含む。結合ばね構造体641、643とフレーム642とのこの組合せにより、図6で説明したように、動きのIP1感知モードおよび動きのIP2感知モードが可能になる。
【0089】
中央アンカ部は、第4取付要素の取付点と、第8ばねシステムのばね構造体とで実装される。この例は、1つのばね梁がフレーム642を取付点640に結合する第1結合ばね構造体641の代替実装を示す。
【0090】
図10は、開示するデバイスのさらなる代替例を示す。図2で既に説明した要素は、この場合も、同じ参照番号で表示している。構成は、駆動要素270、290の向きが、図2の駆動要素の向きから90度回転している点以外は図2の構成のとおりである。この向きにより、図2の実施形態における要素のバランスのとれた組合せによって達成されるのと同じ利点がもたらされるが、いくつかのさらに有利な設計可能性ももたらされる。
【0091】
前述のように、図2の構造体では、線形駆動マス273、274の逆位相線形駆動運動は、第5ばねシステムのばね構造体280、281によって変換駆動マス279の対向する垂直エッジに中継され、それにより、変換駆動マス279は、OP方向の軸を中心とする回転運動で振動する。第6ばねシステムのばね構造体282、283によってもたらされるねじれ可撓性によって、第1慣性マス204はIP2方向の軸を中心としてIP1感知モードで振動することができ、一方、面外方向OPの曲げに対する第6ばねシステムのばね構造体282、283の剛性によって、IP2感知モードにおいて、変換駆動マス279は、IP1方向の軸を中心とする第1慣性マス204の回転振動に結合される。変換駆動マス279のシーソー運動は、さらに、第5ばねシステムのばね構造体280、281のねじれ可撓性によって可能になる。
【0092】
これは、図2のIP1感知モードでは、変換駆動マス279は、第1慣性マス204の回転振動に加わらないことを意味する。一方、図10のIP1感知モードでは、第1慣性マス204の回転振動は、第5ばねシステムのばね構造体280、281によって可能になり、第6ばねシステムのばね構造体282、283は、変換駆動マス279と結合して第1慣性マス204と共に振動する。これは、IP1感知モードにおける容量感知の電極が、第1慣性マス204の代わりに変換駆動マス279に交互に配置されてもよいことを意味する。次いで、容量感知は、面外方向OPの電極の上または下に配置された静止対向電極で実施することができる。その配置により、クロスチャネル感度が最適に最小限に抑えられる。
【0093】
十分にバランスのとれた対称的な動作にするために、IP2感知モードにおける容量感知の電極が剛性梁240、250に配置されてもよい。図2のIP2感知モードでは、変換駆動マス279は、第1慣性マス204の回転振動の一部である。一方、図10のIP2感知モードでは、第1慣性マス204の回転振動は、第6ばねシステムのばね構造体282、283のねじれ可撓性によって可能になり、第5ばねシステムのばね構造体280、281および第4ばねシステムのばね構造体277、278の面外剛性により、変換駆動マス279は第1慣性マス204の回転振動に加わることはできない。
図1
図2
図3A
図3B
図3C
図4
図5A
図5B
図6
図7
図8
図9
図10