特許第6922981号(P6922981)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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6922981リチウムイオン二次電池システム、充電ユニット及びリチウムイオン二次電池の制御方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6922981
(24)【登録日】2021年8月2日
(45)【発行日】2021年8月18日
(54)【発明の名称】リチウムイオン二次電池システム、充電ユニット及びリチウムイオン二次電池の制御方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/48 20060101AFI20210805BHJP
   H01M 10/44 20060101ALI20210805BHJP
   H01M 4/505 20100101ALI20210805BHJP
   H01M 4/525 20100101ALI20210805BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20210805BHJP
   H02J 7/04 20060101ALI20210805BHJP
   H02J 7/10 20060101ALI20210805BHJP
【FI】
   H01M10/48 P
   H01M10/48 301
   H01M10/44 Q
   H01M4/505
   H01M4/525
   H02J7/00 P
   H02J7/04 L
   H02J7/10 L
【請求項の数】20
【全頁数】40
(21)【出願番号】特願2019-525650(P2019-525650)
(86)(22)【出願日】2018年6月20日
(86)【国際出願番号】JP2018023383
(87)【国際公開番号】WO2018235846
(87)【国際公開日】20181227
【審査請求日】2019年11月29日
(31)【優先権主張番号】特願2017-123018(P2017-123018)
(32)【優先日】2017年6月23日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100112874
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邊 薫
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 元気
【審査官】 辻丸 詔
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−089363(JP,A)
【文献】 特開2016−149917(JP,A)
【文献】 国際公開第2017/159031(WO,A1)
【文献】 特開2014−092428(JP,A)
【文献】 特開2016−133413(JP,A)
【文献】 特開2009−112113(JP,A)
【文献】 特開2005−192383(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 7/00− 7/12
7/34− 7/36
H01M 10/42−10/48
H01M 4/505
H01M 4/525
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、正極と負極とを含むリチウムイオン二次電池と、リチウム析出センサと、センサ測定部と、リチウム析出判断演算部と、を備え、
該リチウム析出センサが、該リチウムイオン二次電池の吸熱を電気信号として出力し、吸熱検知部を備え、
該吸熱検知部が定電流充電域で吸熱を検知し、
該センサ測定部が、前記リチウム析出センサから出力された前記電気信号を測定し、該測定された電気信号に基づく数値を該リチウム析出判断演算部に出力し、
該リチウム析出判断演算部が、該数値の変化を解析し、該解析の結果を充電制御部で取得される充電電流の変化及び/又は積算充電容量値と照らし合わせ、リチウム析出判断可能域か否かを判断するとともに、リチウム析出判断可能域であるとき、リチウム析出による吸熱が継続していると判断した場合、該判断の結果を該充電制御部に伝達する、リチウムイオン二次電池システム。
【請求項2】
前記吸熱検知部が前記定電流充電域で到達電圧まで継続的に吸熱を検知して、前記リチウム析出センサがリチウム析出を検出する、請求項1に記載のリチウムイオン二次電池システム。
【請求項3】
前記負極が負極活物質を含み、
該負極活物質の構造変化に伴う吸熱反応がない定電流充電域で、前記吸熱検知部が吸熱を検知する、請求項1から2のいずれか一項に記載のリチウムイオン二次電池システム。
【請求項4】
前記負極活物質が炭素系材料であり、
前記吸熱検知部が、前記負極の充電容量が180mAh/gを超えた定電流充電域で吸熱を検知する、請求項3に記載のリチウムイオン二次電池システム。
【請求項5】
前記正極が正極活物質を含み、
該正極活物質の構造変化に伴う吸熱反応がない定電流充電域で、前記吸熱検知部が吸熱を検知する、請求項1から4のいずれか一項に記載のリチウムイオン二次電池システム。
【請求項6】
前記正極活物質が、コバルト酸リチウム系材料(LCO系材料)又はニッケル系材料(NCA系材料)であり、
前記吸熱検知部が、前記正極の充電容量が60mAh/gを超えた定電流充電域で吸熱を検知する、請求項5に記載のリチウムイオン二次電池システム。
【請求項7】
前記正極活物質が、ニッケル−コバルト−マンガンの三元系材料(NCM系材料)であり、
前記吸熱検知部が、前記正極の充電容量が100mAh/gを超えた定電流充電域で吸熱を検知する、請求項5に記載のリチウムイオン二次電池システム。
【請求項8】
前記正極活物質が、マンガン酸リチウム系材料(LMO系材料)であり、
前記吸熱検知部が、前記正極の充電容量が70mAh/gを超えた定電流充電域で吸熱を検知する、請求項5に記載のリチウムイオン二次電池システム。
【請求項9】
前記吸熱検知部が、充電時の利用電圧範囲の80%以上の電圧域において吸熱を検知する、請求項1から8のいずれか一項に記載のリチウムイオン二次電池システム。
【請求項10】
前記吸熱検知部が温度計又は熱流センサを備える、請求項1から9のいずれか一項に記載のリチウムイオン二次電池システム。
【請求項11】
請求項1から10のいずれか一項に記載のリチウムイオン二次電池システムと、電流測定部と、電圧測定部と、充電制御部とを備える、充電ユニット。
【請求項12】
リチウム析出センサは、該リチウム析出センサが備える吸熱検出部の吸熱検知結果に基づき電気信号を出力し、
センサ測定部は、前記リチウム析出センサから出力された前記電気信号を測定し、該測定された電気信号に基づく数値をリチウム析出判断演算部に出力し、
該リチウム析出判断演算部は、該数値の変化を解析し、該解析の結果を充電制御部で取得される充電電流の変化及び/又は積算充電容量値と照らし合わせ、リチウム析出判断可能域か否かを判断するとともに、リチウム析出判断可能域であるとき、リチウム析出による吸熱が継続していると判断した場合、該判断の結果を該充電制御部に伝達し、定電流充電域の充電電流を制御する、リチウムイオン二次電池の制御方法。
【請求項13】
前記吸熱検出部の前記吸熱検知結果が、前記定電流充電域の到達電圧まで、吸熱が継続しているか否かを示す、請求項12に記載のリチウムイオン二次電池の制御方法。
【請求項14】
リチウム析出センサは、該リチウム析出センサが備える吸熱検出部の吸熱検知結果に基づき電気信号を出力し、
センサ測定部は、前記リチウム析出センサから出力された前記電気信号を測定し、該測定された電気信号に基づく数値をリチウム析出判断演算部に出力し、
該リチウム析出判断演算部は、該数値の変化を解析し、該解析の結果を充電制御部で取得される充電電流の変化及び/又は積算充電容量値と照らし合わせ、リチウム析出判断可能域か否かを判断するとともに、リチウム析出判断可能域であるとき、リチウム析出による吸熱が継続していると判断した場合、該判断の結果を該充電制御部に伝達し、定電流充電域の到達電圧を制御する、リチウムイオン二次電池の制御方法。
【請求項15】
前記吸熱検出部の前記吸熱検知結果が、前記定電流充電域の前記到達電圧まで、吸熱が継続しているか否かを示す、請求項14に記載のリチウムイオン二次電池の制御方法。
【請求項16】
請求項1から10のいずれか一項に記載のリチウムイオン二次電池システムを備える、電池パック。
【請求項17】
請求項1から10のいずれか一項に記載のリチウムイオン二次電池システムと、
該リチウムイオン二次電池システムから電力の供給を受けて車両の駆動力に変換する駆動力変換装置と、
該駆動力に応じて駆動する駆動部と
車両制御装置と、を備える、車両。
【請求項18】
請求項1から10のいずれか一項に記載のリチウムイオン二次電池システムを有する蓄電装置と、
該リチウムイオン二次電池システムから電力が供給される電力消費装置と、
該リチウムイオン二次電池システムからの該電力消費装置に対する電力供給を制御する制御装置と、
該リチウムイオン二次電池システムを充電する発電装置と、を備える、蓄電システム。
【請求項19】
請求項1から10のいずれか一項に記載のリチウムイオン二次電池システムと、
該リチウムイオン二次電池システムから電力が供給される可動部と、を備える、電動工具。
【請求項20】
請求項1から10のいずれか一項に記載のリチウムイオン二次電池システムを備え、
該リチウムイオン二次電池システムから電力の供給を受ける電子機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本技術は、リチウムイオン二次電池システム、充電ユニット及びリチウムイオン二次電池の制御方法に関し、より詳しくは、リチウムイオン二次電池システム、充電ユニット、電池パック、車両、蓄電システム、電動工具及び電子機器、並びにリチウムイオン二次電池の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、パーソナルコンピュータ(PC)、携帯通信端末などの電子機器、電気自動車などの自動車、風力発電などの新エネルギーシステム等の技術分野では、リチウムイオン二次電池の需要が急速に拡大している。
【0003】
例えば、組電池を構成するセル間に配置され前記セルの面圧分布を検出する圧力検出器と、前記圧力検出器の面圧分布の出力に応じて組電池の状態を推定する推定手段と、を有することを特徴とする組電池の状態検出装置が提案されている(特許文献1を参照)。
【0004】
また、例えば、積層された電極を含むリチウムイオン二次電池の電池制御装置であって、前記リチウムイオン二次電池には、前記リチウムイオン二次電池から前記リチウムイオン二次電池の外部に向かう熱流束を検出する複数の熱流束センサが、前記電極の積層方向に平行な前記リチウムイオン二次電池の2面のうち少なくとも1面に設けられ、前記複数の熱流束センサの検出値に基づいて、前記リチウムイオン二次電池の発熱分布を算出し、その算出結果に基づいて、前記電極におけるリチウムイオン濃度分布を推定する推定手段を備えることを特徴とする電池制御装置が提案されている(特許文献2を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2013−20826号公報
【特許文献2】特開2016−149917号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1〜2で提案された技術では更なる信頼性の向上が図れないおそれがある。したがって、更なる、信頼性の向上をさせたリチウムイオン二次電池システム及び充電ユニット、並びに高信頼性を図ることができるリチウムイオン二次電池の制御方法が望まれているのが現状である。
【0007】
そこで、本技術は、このような状況に鑑みてなされたものであり、優れた信頼性を有するリチウムイオン二次電池システム、充電ユニット、電池パック、車両、蓄電システム、電動工具及び電子機器、並びに高信頼性を図ることができるリチウムイオン二次電池の制御方法を提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上述の目的を解決するために鋭意研究を行った結果、充電レートを上げて不均一な充電を進めると、リチウム(Li)析出に伴い吸熱が生じ、この吸熱を検知することにより、リチウム(Li)析出有無の判断ができることを見出した。本発明者は、この独自の知見に基づいて、優れた信頼性を有するリチウムイオン二次電池システム及び充電ユニット、並びに高信頼性を図ることができるリチウムイオン二次電池の制御方法を開発することに成功し、本技術を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本技術では、少なくとも、正極と負極とを含むリチウムイオン二次電池と、リチウム析出センサとを備え、該リチウム析出センサが吸熱検知部を備え、該吸熱検知部が定電流充電域で吸熱を検知する、リチウムイオン二次電池システムを提供する。
【0010】
本技術に係るリチウムイオン二次電池システムは、センサ測定部と、リチウム析出判断演算部とを更に備えてよい。
【0011】
本技術に係るリチウムイオン二次電池システムにおいて、前記吸熱検知部が前記定電流充電域で到達電圧まで継続的に吸熱を検知して、前記リチウム析出センサがリチウム析出を検出してよい。
【0012】
本技術に係るリチウムイオン二次電池システムにおいて、前記負極が負極活物質を含み、該負極活物質の構造変化に伴う吸熱反応がない定電流充電域で、前記吸熱検知部が吸熱を検知してよい。
前記負極活物質が炭素系材料でよく、前記吸熱検知部が、前記負極の充電容量が180mAh/gを超えた定電流充電域で吸熱を検知してよい。
【0013】
本技術に係るリチウムイオン二次電池システムにおいて、前記正極が正極活物質を含み、該正極活物質の構造変化に伴う吸熱反応がない定電流充電域で、前記吸熱検知部が吸熱を検知してよい。
前記正極活物質が、コバルト酸リチウム系材料(LCO系材料)又はニッケル系材料(NCA系材料)でよく、前記吸熱検知部が、前記正極の充電容量が60mAh/gを超えた定電流充電域で吸熱を検知してよい。
前記正極活物質が、ニッケル−コバルト−マンガンの三元系材料(NCM系材料)でよく、前記吸熱検知部が、前記正極の充電容量が100mAh/gを超えた定電流充電域で吸熱を検知してよい。
前記正極活物質が、マンガン酸リチウム系材料(LMO系材料)でよく、前記吸熱検知部が、前記正極の充電容量が70mAh/gを超えた定電流充電域で吸熱を検知してよい。
【0014】
本技術に係るリチウムイオン二次電池システムにおいて、前記吸熱検知部が、充電時の利用電圧範囲の80%以上の電圧域において吸熱を検知してよい。
【0015】
本技術に係るリチウムイオン二次電池システムにおいて、前記吸熱検知部が温度計又は熱流センサを備えていてもよい。
【0016】
また、本技術では、本技術に係るリチウムイオン二次電池システムと、電流測定部と、電圧測定部と、充電制御部とを備える、充電ユニットを提供する。
【0017】
本技術では、リチウム析出センサが備える吸熱検出部の吸熱検知結果に基づき、定電流充電域の充電電流を制御する、リチウムイオン二次電池の制御方法を提供する。
本技術に係るリチウムイオン二次電池の制御方法において、前記吸熱検出部の前記吸熱検知結果が、前記定電流充電域の到達電圧まで、吸熱が継続しているか否かを示してよい。
【0018】
また、本技術では、リチウム析出センサが備える吸熱検出部の吸熱検知結果に基づき、定電流充電域の到達電圧を制御する、リチウムイオン二次電池の制御方法を提供する。
本技術に係るリチウムイオン二次電池の制御方法において、前記吸熱検出部の前記吸熱検知結果が、前記定電流充電域の前記到達電圧まで、吸熱が継続しているか否かを示してよい。
【0019】
さらに、本技術では、
本技術に係るリチウムイオン二次電池システムを備える、電池パックを提供し、
本技術に係るリチウムイオン二次電池システムと、該リチウムイオン二次電池システムの使用状態を制御する制御部と、該制御部の指示に応じて該リチウムイオン二次電池システムの使用状態を切り換えるスイッチ部と、を備える、電池パックを提供し、
本技術に係るリチウムイオン二次電池システムと、該リチウムイオン二次電池システムから電力の供給を受けて車両の駆動力に変換する駆動力変換装置と、該駆動力に応じて駆動する駆動部と、車両制御装置と、を備える、車両を提供し、
本技術に係るリチウムイオン二次電池システムを有する蓄電装置と、該リチウムイオン二次電池システムから電力が供給される電力消費装置と、該リチウムイオン二次電池システムからの該電力消費装置に対する電力供給を制御する制御装置と、該リチウムイオン二次電池システムを充電する発電装置と、を備える、蓄電システムを提供し、
本技術に係るリチウムイオン二次電池システムと、該リチウムイオン二次電池システムから電力が供給される可動部と、を備える、電動工具を提供し、
本技術に係るリチウムイオン二次電池システムを備え、該リチウムイオン二次電池システムから電力の供給を受ける、電子機器を提供する。
【0020】
さらにまた、本技術では、
本技術に係る充電ユニットを備える、電池パックを提供し、
本技術に係る充電ユニットと、該充電ユニットの使用状態を制御する制御部と、該制御部の指示に応じて該充電ユニットの使用状態を切り換えるスイッチ部と、を備える、電池パックを提供し、
本技術に係る充電ユニットと、該充電ユニットから電力の供給を受けて車両の駆動力に変換する駆動力変換装置と、該駆動力に応じて駆動する駆動部と、車両制御装置と、を備える、車両を提供し、
本技術に係る充電ユニットを有する蓄電装置と、該充電ユニットから電力が供給される電力消費装置と、該充電ユニットからの該電力消費装置に対する電力供給を制御する制御装置と、該充電ユニットを充電する発電装置と、を備える、蓄電システムを提供し、
本技術に係る充電ユニットと、該充電ユニットから電力が供給される可動部と、を備える、電動工具を提供し、
本技術に係る充電ユニットを備え、該充電ユニットから電力の供給を受ける、電子機器を提供する。
【発明の効果】
【0021】
本技術によれば、リチウムイオン二次電池の信頼性を向上させることができる。なお、ここに記載された効果は、必ずしも限定されるものではなく、本開示中に記載されたいずれかの効果、または、それらと異質な効果であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1図1は、本技術に係る第2の実施形態の充電ユニットの構成例を表すブロック図である。
図2図2は、電池電圧(V)と熱流(W/m)との関係を示すグラフである。
図3図3は、電池電圧(V)と熱流変化(W/m/V)との関係を示すグラフである。
図4図4は、黒鉛充電容量(mAh/g)とNCA充電容量(mAh/g)との関係を示すグラフである。
図5図5は、黒鉛充電容量(mAh/g)と熱流(W/m)との関係を示すグラフである。
図6図6は、黒鉛充電容量(mAh/g)と熱流変化(W/m/V)との関係を示すグラフである。
図7図7は、本技術に係るリチウムイオン二次電池システム及び充電ユニットの適用例(電池パック)の構成を表すブロック図である。
図8図8は、本技術に係るリチウムイオン二次電池システム及び充電ユニットの適用例(車両)の構成を表すブロック図である。
図9図9は、本技術に係るリチウムイオン二次電池システム及び充電ユニットの適用例(蓄電システム)の構成を表すブロック図である。
図10図10は、本技術に係るリチウムイオン二次電池システム及び充電ユニットの適用例(電動工具)の構成を表すブロック図である。
図11図11は、本技術に係るリチウムイオン二次電池システム及び充電ユニットの適用例(電子機器)の構成を表すブロック図である。
図12図12は、本技術に係るリチウムイオン二次電池システム及び充電ユニットの応用例1(プリント回路基板)の構成を表す図である。
図13図13は、本技術に係るリチウムイオン二次電池システム及び充電ユニットの応用例2(ユニバーサルクレジットカード)の構成の一例を表す図である。
図14図14は、本技術に係るリチウムイオン二次電池システム及び充電ユニットの応用例3(リストバンド型活動量計)の構成の一例を表す図である。
図15図15は、本技術に係るリチウムイオン二次電池システム及び充電ユニットの応用例3(リストバンド型活動量計)の構成の一例を表す図である。
図16図16は、本技術に係るリチウムイオン二次電池システム及び充電ユニットの応用例3(リストバンド型電子機器)の構成を表す図である。
図17図17は、本技術に係るリチウムイオン二次電池システム及び充電ユニットの応用例4(スマートウオッチ)の構成を表す分解斜視図である。
図18図18は、本技術に係るリチウムイオン二次電池システム及び充電ユニットの応用例4(バンド型電子機器)の内部構成の一部を表す図である。
図19図19は、本技術に係るリチウムイオン二次電池システム及び充電ユニットの応用例4(バンド型電子機器)の回路構成を示すブロック図である。
図20図20は、本技術に係るリチウムイオン二次電池システム及び充電ユニットの応用例5(眼鏡型端末)の構成の具体例を表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本技術を実施するための好適な形態について説明する。以下に説明する実施形態は、本技術の代表的な実施形態の一例を示したものであり、これにより本技術の範囲が狭く解釈されることはない。なお、図面については、同一又は同等の要素又は部材には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0024】
なお、説明は以下の順序で行う。
1.本技術の概要
2.第1の実施形態(リチウムイオン二次電池システムの例)
3.第2の実施形態(充電ユニットの例)
4.第3の実施形態(リチウムイオン二次電池の制御方法の例1)
5.第4の実施形態(リチウムイオン二次電池の制御方法の例2)
6.リチウムイオン二次電池システム及び充電ユニットの用途
6−1.リチウムイオン二次電池システム及び充電ユニットの用途の概要
6−2.第5の実施形態(電池パックの例)
6−3.第6の実施形態(車両の例)
6−4.第7の実施形態(蓄電システムの例)
6−5.第8の実施形態(電動工具の例)
6−6.第9の実施形態(電子機器の例)
【0025】
<1.本技術の概要>
まず、本技術の概要について説明をする。
【0026】
リチウムイオン二次電池に求められる性能の1つに急速充電性がある.急速充電時は、電池反応が均一に進みにくく、局所的にリチウム(Li)析出などの過充電状態になりやすい。過充電状態となると、熱的に不安定な状態となり、発火のリスクが高まる。
【0027】
例えば、リチウム(Li)析出を検出する手段として、面圧センサを用いて、電池が大域的な面圧上昇するケースと局所的な面圧上昇をするケースを場合分けし、前者をリチウム(Li)析出、後者を高レート劣化とそれぞれ判断する手法の技術がある。しかしながら、この技術では、電池構造によっては局所的なリチウム(Li)析出を伴う場合、前記判断は困難である。
【0028】
また、例えば、電池内の不均一な充電状態を検知する手段として、熱流センサを用いて通電に伴うジュール発熱の分布を検知することにより、リチウムイオン濃度の分布を推定する手法の技術がある。しかしながら、この技術では、過充電状態で吸熱反応が生じると、その推定ができない。
【0029】
本技術は以上の状況に基づくものであり、本技術によれば、リチウムイオン二次電池の信頼性の向上・維持を図ることが可能である、リチウムイオン二次電池システム、リチウムイオン二次電池システムを備える充電ユニット及びリチウムイオン二次電池システムの制御方法を提供することができる。すなわち、本技術によれば、リチウム(Li)析出による不安全化を検知することができ、リチウム(Li)析出を検知した場合、次回充電の充電電流を小さくするか、又は、設定電圧を低くすることで、リチウム(Li)を析出させない条件でリチウムイオン二次電池を使用することができる。
【0030】
本技術で用いられるリチウムイオン二次電池は、電池の形状、外装体の種類等は特に限定されないが、例えば、ラミネートフィルム型、円筒型、角型、コイン型、ボタン型、円盤型、平板型のリチウムイオン二次電池である。本技術に係るリチウムイオン二次電池システム及び充電ユニットは、電池パック、車両、蓄電システム、電動工具、電子機器等に好適に適用され得る。
【0031】
<2.第1の実施形態(リチウムイオン二次電池システムの例)>
本技術に係る第1の実施形態(リチウムイオン二次電池システムの例)のリチウムイオン二次電池システムは、少なくとも、正極と負極とを含むリチウムイオン二次電池と、リチウム析出センサとを備え、リチウム析出センサが吸熱検知部を備え、吸熱検知部が定電流充電域で吸熱を検知する、リチウムイオン二次電池システムである。
【0032】
本技術に係る第1の実施形態のリチウムイオン二次電池システムは、リチウム(Li)析出による不安全化を検知することができ、リチウム(Li)析出を検知したとき、次回充電の充電電流を小さくするか、又は設定電圧を低くすることで、リチウム(Li)を析出させない条件に変更することができる。この変更によって、リチウム(Li)の析出は防止されて、過充電状態による熱的に不安定な状態は回避されて、発火のリスクは抑制され得る。したがって、本技術に係る第1の実施形態のリチウムイオン二次電池システムによれば、安全性が高められて、優れた信頼性の効果が奏されることとなる。
【0033】
本技術に係る第1の実施形態のリチウムイオン二次電池システムにおいては、リチウム析出センサが備える吸熱検知部が定電流充電域で吸熱を検知して、リチウム(Li)析出の有無を判断する。充電は、一定電流で使用最大電圧まで充電(定電流充電)をしたのちに、引き続き、最大電圧を保つように電流を低下させながら、更に充電(定電圧充電)をする。本技術に係る第1の実施形態のリチウムイオン二次電池システムは、定電圧充電域では電流低下によりジュール発熱も低下するため、吸熱を検知してリチウム(Li)析出有無を判断することが困難であるので、定電流充電域で吸熱を検知して、リチウム(Li)析出の有無を判断する。
【0034】
リチウム析出センサは、リチウムイオン二次電池システム内の随意の箇所に設置されてよいが、例えば、リチウムイオン二次電池の外側表面に固定(例えば、接着)されて設置されてもよいし、リチウムイオン二次電池の内部に設置されてもよいし、リチウムイオン二次電池の外部に設置されてもよい。
【0035】
本技術に係る第1の実施形態のリチウムイオン二次電池システムは、センサ測定部と、リチウム析出判断演算部とを更に備えていてもよい。なお、センサ測定部と、リチウム析出判断演算部とは、リチウムイオン二次電池システムに備えられていなく、外部機器等(例えば充電器)に備えられていてもよい。
【0036】
リチウムイオン二次電池システムにおいて、吸熱検知部を備えるリチウム析出センサは、リチウムイオン二次電池の発熱や吸熱を、電気信号、例えば電圧値として出力する。センサ測定部は、電気信号、例えば、電圧値を測定し、その数値をリチウム析出判断演算部に出力する。リチウム(Li)析出判断演算部は、受けた数値の変化を解析し、後述する第2の実施形態の充電ユニットが備える充電制御部で取得される充電電流の変化や積算充電容量値と照らし合わせ、リチウム(Li)析出判断可能域か否かを判断するとともに、リチウム(Li)析出判断可能域であるとき、リチウム(Li)析出による吸熱が継続していると判断した場合、それを充放電制御部に伝達する。充電制御部が、次回充電の充電電流を制御して下げるか、又は到達電圧(設定電圧)制御して下げるかして、リチウム(Li)析出を抑制する。
【0037】
本技術に係る第1の実施形態のリチウムイオン二次電池システムにおいて、吸熱検知部が定電流充電域で到達電圧まで継続的に吸熱を検知して、リチウム析出センサがリチウム析出を検出することが好ましい。この好ましい態様により、リチウム(Li)析出有無をより的確に判断することができるからである。リチウム(Li)析出の発生箇所は、主には、負極活物質層の表面や、負極活物質層と集電体(集電箔)との界面である。しかしながら、リチウム(Li)析出の発生箇所は、リチウムイオン二次電池の電池構造に依拠し、負極活物質層の表面及び負極活物質層と集電体(集電箔)との界面以外の箇所でも発生する場合があり得る。
【0038】
本技術に係る第1の実施形態のリチウムイオン二次電池システムにおいて、負極は負極活物質を含み、その負極活物質の構造変化に伴う吸熱反応がない定電流充電域で、吸熱検知部が吸熱を検知することが好ましい。吸熱の検知は、負極活物質の構造変化と、イオン配置の秩序化に起因したエントロピー変化に影響を受ける場合があるからである。この好ましい態様により、吸熱検知部が確実に吸熱を検知して、リチウム(Li)析出の有無をより的確に判断することができる。したがって、本技術に係る第1の実施形態のリチウムイオン二次電池システムは、負極活物質の構造変化に伴う吸熱反応が、充電の到達電圧まで継続するような領域では適さない場合がある。
【0039】
以下に、本技術に係る第1の実施形態のリチウムイオン二次電池システムに備えられる負極について詳細に説明をする。
【0040】
負極は、例えば、負極集電体の両面に負極活物質層が設けられた構造を有している。なお、負極集電体の片面のみに負極活物質層を設けるようにしてもよい。負極集電体は、例えば、銅箔などの金属箔により構成されている。
【0041】
負極活物質層は、負極活物質として、リチウムを吸蔵および放出することが可能な負極材料のいずれか1種または2種以上を含んで構成されており、必要に応じて、グラファイトなどの導電剤およびポリフッ化ビニリデンなどの結着剤を含んで構成されている。
【0042】
なお、本技術に係る第1の実施形態のリチウムイオン二次電池システムに備えられるリチウムイオン二次電池では、充電の途中において負極にリチウム金属が析出しないようにすれば、リチウムを吸蔵および放出することが可能な負極材料の電気化学当量は、正極材料の電気化学当量よりも大きくてもよいし、小さくてもよい。
【0043】
また、このリチウムイオン二次電池は、完全充電時における開回路電圧(すなわち電池電圧)が、例えば4.2V以上4.6V以下の範囲内になるように設計されている。
【0044】
リチウムを吸蔵および放出することが可能な負極材料としては、例えば、難黒鉛化性炭素、易黒鉛化性炭素、黒鉛、熱分解炭素類、コークス類、ガラス状炭素類、有機高分子化合物焼成体、炭素繊維あるいは活性炭などの炭素系材料が挙げられる。このうち、コークス類には、ピッチコークス、ニードルコークスあるいは石油コークスなどがある。有機高分子化合物焼成体というのは、フェノール樹脂やフラン樹脂などの高分子材料を適当な温度で焼成して炭素化したものを意味し、一部には難黒鉛化性炭素または易黒鉛化性炭素に分類されるものもある。また、高分子材料としてはポリアセチレンあるいはポリピロールなどがある。これら炭素系材料は、充放電時に生じる結晶構造の変化が非常に少なく、高い充放電容量を得ることができると共に、良好なサイクル特性を得ることができるので好ましい。特に黒鉛は、電気化学当量が大きく、高いエネルギー密度を得ることができ好ましい。また、難黒鉛化性炭素は、優れた特性が得られるので好ましい。更にまた、充放電電位が低いもの、具体的には充放電電位がリチウム金属に近いものが、電池の高エネルギー密度化を容易に実現することができるので好ましい。
【0045】
また、リチウムを吸蔵および放出することが可能な負極材料としては、リチウムを吸蔵および放出することが可能であり、金属元素および半金属元素のうちの少なくとも1種を構成元素として含む材料も挙げられる。このような材料を用いれば、高いエネルギー密度を得ることができるからである。特に、炭素系材料と共に用いるようにすれば、高エネルギー密度を得ることができると共に、優れたサイクル特性を得ることができるのでより好ましい。この負極材料は金属元素あるいは半金属元素の単体でも合金でも化合物でもよく、またこれらの1種または2種以上の相を少なくとも一部に有するようなものでもよい。なお、この発明において、合金には2種以上の金属元素からなるものに加えて、1種以上の金属元素と1種以上の半金属元素とを含むものも含める。また、非金属元素を含んでいてもよい。その組織には固溶体、共晶(共融混合物)、金属間化合物あるいはそれらのうちの2種以上が共存するものがある。
【0046】
この負極材料を構成する金属元素あるいは半金属元素としては、例えば、マグネシウム(Mg)、ホウ素(B)、アルミニウム(Al)、ガリウム(Ga)、インジウム(In)、ケイ素(Si)、ゲルマニウム(Ge)、スズ(Sn)、鉛(Pb)、ビスマス(Bi)、カドミウム(Cd)、銀(Ag)、亜鉛(Zn)、ハフニウム(Hf)、ジルコニウム(Zr)、イットリウム(Y)、パラジウム(Pd)あるいは白金(Pt)が挙げられる。これらは結晶質のものでもアモルファスのものでもよい。
【0047】
なかでも、この負極材料としては、短周期型周期表における4B族の金属元素あるいは半金属元素を構成元素として含むものが好ましく、特に好ましいのはケイ素(Si)およびスズ(Sn)の少なくとも一方を構成元素として含むものである。ケイ素(Si)およびスズ(Sn)は、リチウム(Li)を吸蔵および放出する能力が大きく、高いエネルギー密度を得ることができるからである。
【0048】
スズ(Sn)の合金としては、例えば、スズ(Sn)以外の第2の構成元素として、ケイ素(Si)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、マンガン(Mn)、亜鉛(Zn)、インジウム(In)、銀(Ag)、チタン(Ti)、ゲルマニウム(Ge)、ビスマス(Bi)、アンチモン(Sb)、およびクロム(Cr)からなる群のうちの少なくとも1種を含むものが挙げられる。ケイ素(Si)の合金としては、例えば、ケイ素(Si)以外の第2の構成元素として、スズ(Sn)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、マンガン(Mn)、亜鉛(Zn)、インジウム(In)、銀(Ag)、チタン(Ti)、ゲルマニウム(Ge)、ビスマス(Bi)、アンチモン(Sb)およびクロム(Cr)からなる群のうちの少なくとも1種を含むものが挙げられる。
【0049】
スズ(Sn)の化合物あるいはケイ素(Si)の化合物としては、例えば、酸素(O)あるいは炭素(C)を含むものが挙げられ、スズ(Sn)またはケイ素(Si)に加えて、上述した第2の構成元素を含んでいてもよい。
【0050】
リチウムを吸蔵および放出することが可能な負極材料としては、更に、他の金属化合物あるいは高分子材料が挙げられる。他の金属化合物としては、MnO2、V25、V613などの酸化物、NiS、MoSなどの硫化物、あるいはLiN3などのリチウム窒化物が挙げられ、高分子材料としてはポリアセチレン、ポリアニリンあるいはポリピロールなどが挙げられる。
【0051】
また、リチウムを吸蔵および放出することが可能な負極材料としては、LTO系材料(リチウムチタン複合酸化物)が挙げられる。
【0052】
本技術に係る第1の実施形態のリチウムイオン二次電池システムにおいて、負極活物質が上記で述べた炭素系材料であるとき、吸熱検知部が、負極の充電容量が180mAh/gを超えた定電流充電域で吸熱を検知することが好ましい。
【0053】
炭素系材料のうち、例えば黒鉛は、リチウム(Li)の挿入に伴い、Li(0<X<1)のように組成変化すると同時に構造変化を起こす。この構造変化は、エントロピーの変化を伴うため、明瞭な吸発熱を示す。本技術に係る第1の実施形態のリチウムイオン二次電池システムにおいて、吸熱を検知することによってリチウム(Li)析出を検知するには、最も深い充電深度で起こる黒鉛の吸熱を超えた充電深度範囲で行う必要があり、この充電深度がX=0.5(約180mAh/g)に相当する。
【0054】
また、本技術に係る第1の実施形態のリチウムイオン二次電池システムにおいて、負極活物質が上記で述べたSi系材料(Siを含む負極材料)、Sn系材料(Snを含む負極材料)及びLTO系材料(リチウムチタン複合酸化物)であるときは、吸熱を伴う構造変化はないので、吸熱検知部が、吸熱を検知する定電流充電域の範囲指定はない。
【0055】
本技術に係る第1の実施形態のリチウムイオン二次電池システムにおいて、正極は正極活物質を含み、その正極活物質の構造変化に伴う吸熱反応がない定電流充電域で、吸熱検知部が吸熱を検知することが好ましい。吸熱の検知は、正極活物質の構造変化と、イオン配置の秩序化に起因したエントロピー変化に影響を受ける場合があるからである。この好ましい態様により、吸熱検知部が確実に吸熱を検知して、リチウム(Li)析出の有無をより的確に判断することができる。したがって、本技術に係る第1の実施形態のリチウムイオン二次電池システムは、正極活物質の構造変化に伴う吸熱反応が、充電の到達電圧まで継続するような領域では適さない場合がある。
【0056】
以下に、本技術に係る第1の実施形態のリチウムイオン二次電池システムに備えられる正極について詳細に説明をする。
【0057】
正極は、例えば、正極集電体の両面に正極活物質層が設けられた構造を有している。なお、正極集電体の片面のみに正極活物質層を設けるようにしてもよい。正極集電体は、例えば、アルミニウム箔などの金属箔により構成されている。正極活物質層は、例えば、正極活物質として、リチウムを吸蔵および放出することが可能な正極材料の1種または2種以上を含んでおり、必要に応じて負極活物質層と同様な結着剤を含んで構成されている。
【0058】
リチウムを吸蔵および放出することが可能な正極材料としては、例えば、リチウム酸化物、リチウムリン酸化物、リチウム硫化物あるいはリチウムを含む層間化合物などのリチウム含有化合物が適当であり、これらの2種以上を混合して用いてもよい。エネルギー密度を高くするには、リチウムと遷移金属元素と酸素(O)とを含むリチウム含有化合物が好ましく、中でも、遷移金属元素として、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、マンガン(Mn)および鉄(Fe)からなる群のうちの少なくとも1種を含むものであればより好ましい。このようなリチウム含有化合物としては、例えば、式(1)、式(2)もしくは式(3)に示した層状岩塩型の構造を有するリチウム複合酸化物、式(4)に示したスピネル型の構造を有するリチウム複合酸化物、または式(5)に示したオリビン型の構造を有するリチウム複合リン酸塩などが挙げられ、具体的には、LiNi0.50Co0.20Mn0.302、LiaCoO2(a≒1)、LibNiO2(b≒1)、Lic1Nic2Co1-c22(c1≒1、0<c2<1)、LidMn24(d≒1)あるいはLieFePO4(e≒1)などがある。
【0059】
LifMn(1-g-h)NigM1h(2-j)k ・・・(1)
(式中、M1は、コバルト(Co)、マグネシウム(Mg)、アルミニウム(Al)、ホウ素(B)、チタン(Ti)、バナジウム(V)、クロム(Cr)、鉄(Fe)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)、ジルコニウム(Zr)、モリブデン(Mo)、スズ(Sn)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)およびタングステン(W)からなる群のうちの少なくとも1種を表す。f、g、h、jおよびkは、0.8≦f≦1.2、0<g<0.5、0≦h≦0.5、g+h<1、−0.1≦j≦0.2、0≦k≦0.1の範囲内の値である。なお、リチウムの組成は充放電の状態によって異なり、fの値は完全放電状態における値を表している。)
【0060】
LimNi(1-n)M2n(2-p)q・・・(2)
(式中、M2は、コバルト(Co)、マンガン(Mn)、マグネシウム(Mg)、アルミニウム(Al)、ホウ素(B)、チタン(Ti)、バナジウム(V)、クロム(Cr)、鉄(Fe)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)、モリブデン(Mo)、スズ(Sn)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)およびタングステン(W)からなる群のうちの少なくとも1種を表す。m、n、pおよびqは、0.8≦m≦1.2、0.005≦n≦0.5、−0.1≦p≦0.2、0≦q≦0.1の範囲内の値である。なお、リチウムの組成は充放電の状態によって異なり、mの値は完全放電状態における値を表している。)
【0061】
LirCo(1-s)M3s(2-t)u・・・(3)
(式中、M3は、ニッケル(Ni)、マンガン(Mn)、マグネシウム(Mg)、アルミニウム(Al)、ホウ素(B)、チタン(Ti)、バナジウム(V)、クロム(Cr)、鉄(Fe)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)、モリブデン(Mo)、スズ(Sn)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)およびタングステン(W)からなる群のうちの少なくとも1種を表す。r、s、tおよびuは、0.8≦r≦1.2、0≦s<0.5、−0.1≦t≦0.2、0≦u≦0.1の範囲内の値である。なお、リチウムの組成は充放電の状態によって異なり、rの値は完全放電状態における値を表している。)
【0062】
LivMn2-wM4wxy・・・(4)
(式中、M4は、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、マグネシウム(Mg)、アルミニウム(Al)、ホウ素(B)、チタン(Ti)、バナジウム(V)、クロム(Cr)、鉄(Fe)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)、モリブデン(Mo)、スズ(Sn)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)およびタングステン(W)からなる群のうちの少なくとも1種を表す。v、w、xおよびyは、0.9≦v≦1.1、0≦w≦0.6、3.7≦x≦4.1、0≦y≦0.1の範囲内の値である。なお、リチウムの組成は充放電の状態によって異なり、vの値は完全放電状態における値を表している。)
【0063】
LizM5PO4・・・(5)
(式中、M5は、コバルト(Co)、マンガン(Mn)、鉄(Fe)、ニッケル(Ni)、マグネシウム(Mg)、アルミニウム(Al)、ホウ素(B)、チタン(Ti)、バナジウム(V)、ニオブ(Nb)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)、モリブデン(Mo)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)、タングステン(W)およびジルコニウム(Zr)からなる群のうちの少なくとも1種を表す。zは、0.9≦z≦1.1の範囲内の値である。なお、リチウムの組成は充放電の状態によって異なり、zの値は完全放電状態における値を表している。)
【0064】
リチウムを吸蔵および放出することが可能な正極材料としては、これらの他にも、MnO2、V25、V613、NiS、MoSなどのリチウムを含まない無機化合物も挙げられる。
【0065】
本技術に係る第1の実施形態のリチウムイオン二次電池システムにおいて、正極に含まれる正極活物質が上記で述べたコバルト酸リチウム系材料(LCO系材料)又はニッケル系材料(ニッケル酸リチウム系材料)(NCA系材料)であるとき、リチウム(Li)が引き抜かれると、LCO系材料又はNCA系材料の構造変化に伴ってブロードな吸熱を示すので、吸熱検知部が、正極の充電容量が60mAh/gを超えた定電流充電域で吸熱を検知することが好ましい。
【0066】
また、本技術に係る第1の実施形態のリチウムイオン二次電池システムにおいて、正極に含まれる正極活物質が上記で述べたニッケル−コバルト−マンガンの三元系材料(NCM系材料)であるとき、リチウム(Li)が引き抜かれると、NCM系材料の構造変化に伴ってブロードな吸熱を示すので、吸熱検知部が、正極の充電容量が100mAh/gを超えた定電流充電域で吸熱を検知することが好ましい。
【0067】
また、本技術に係る第1の実施形態のリチウムイオン二次電池システムにおいて、正極に含まれる正極活物質が上記で述べたマンガン酸リチウム系材料(LMO系材料)であるとき、リチウム(Li)が引き抜かれると、LMO系材料の構造変化に伴ってブロードな吸熱を示すので、吸熱検知部が、正極の充電容量が70mAh/gを超えた定電流充電域で吸熱を検知することが好ましい。
【0068】
なお、負極活物質及び正極活物質の組み合わせによって、定電流充電域における、吸熱を検知する充電容量の範囲指定がある場合は、吸熱を検知する充電深度が深い方に限定される。例えば、負極活物質を黒鉛とし、正極活物質をNCA系材料とした場合は、検知容量がより深い、黒鉛の180mAh/g以上で吸熱を検知してリチウム(Li)析出の有無を判断することとなる。また、例えば負極活物質がSi系材料である場合のように、定電流充電域における、吸熱を検知する充電容量の範囲指定がない場合は、定電流充電域における、吸熱を検知する正極活物質の充電容量の範囲指定で吸熱を検知してリチウム(Li)析出の有無を判断することとなる。
【0069】
本技術に係る第1の実施形態のリチウムイオン二次電池システムにおいて、吸熱検知部が、充電時の利用電圧範囲の80%以上の電圧域において吸熱を検知することが好ましい。利用電圧範囲の80%以上の電圧域において、充電レートを上げて不均一な充電を進めると、リチウム(Li)析出に伴う吸熱がより生じやすく、リチウム(Li)析出有無の判断がより容易となるからである。利用電圧範囲の80%以上の電圧域とは、例えば、利用電圧幅が1.2Vである、3V−4.2Vのリチウムイオン二次電池においては、1.2Vの80%以上である3.96V以上を意味する。
【0070】
吸熱検知部は、特に限定されないが、例えば、温度計、熱流センサ等が挙げられる。温度計としては、例えば、熱電対、抵抗温度計等が挙げられ、熱流センサとしては、例えば、サーモパイル型の熱流計が挙げられる。
【0071】
本技術に係る第1の実施形態のリチウムイオン二次電池システムが備えるリチウムイオン二次電池はセパレータを備えていてもよい。セパレータは、正極と負極とを隔離し、両極の接触による電流の短絡を防止しつつ、リチウムイオンを通過させるものである。セパレータは、例えばポリプロピレンあるいはポリエチレンなどのポリオレフィン系の材料よりなる多孔質膜、またはセラミック製の不織布などの無機材料よりなる多孔質膜により構成されており、これら2種以上の多孔質膜を積層した構造とされていてもよい。
【0072】
セパレータには、液状の電解質である電解液が含浸されている。この電解液は、例えば、溶媒と、電解質塩であるリチウム塩とを含んで構成されている。溶媒は、電解質塩を溶解し解離させるものである。また、溶媒として、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、ブチレンカーボネート(BC)といった環状炭酸エステル;ジメチルカーボネート(DMC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、ジプロピルカーボネート(DPC)、プロピルメチルカーボネート(PMC)、プロピルエチルカーボネート(PEC)といった鎖状炭酸エステル;テトラヒドロフラン(THF)、2−メチルテトラヒドロフラン(2−MeTHF)、1,3ジオキソラン(DOL)、4−メチル−1,3ジオキソラン(4−MeDOL)といった環状エーテル;1,2ジメトキシエタン(DME)、1,2ジエトキシエタン(DEE)といった鎖状エーテル;γ−ブチロラクトン(GBL)、γ−バレロラクトン(GVL)といった環状エステル;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、蟻酸メチル、蟻酸エチル、蟻酸プロピル、酪酸メチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸プロピルといった鎖状エステルを挙げることができる。あるいは又、有機溶媒として、テトラヒドロピラン、1,3ジオキサン、1,4ジオキサン、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N−ジメチルアセトアミド(DMA)、N−メチルピロリジノン(NMP)、N−メチルオキサゾリジノン(NMO)、N,N’−ジメチルイミダゾリジノン(DMI)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、トリメチルホスフェート(TMP)、ニトロメタン(NM)、ニトロエタン(NE)、スルホラン(SL)、メチルスルホラン、アセトニトリル(AN)、アニソール、プロピオニトリル、グルタロニトリル(GLN)、アジポニトリル(ADN)、メトキシアセトニトリル(MAN)、3−メトキシプロピオニトリル(MPN)、ジエチルエーテルを挙げることができる。あるいは又、イオン液体を用いることもできる。イオン液体として、従来公知のものを用いることができ、必要に応じて選択すればよい。
【0073】
リチウム塩としては、例えば、LiPF6、LiClO4、LiBF4、LiAsF6、LiSbF6、LiTaF6、LiNbF6、LiAlCl4、LiCF3SO3、LiCH3SO3、LiN(CF3SO22、LiC(CF3SO23、LiC49SO3、Li(FSO22N、Li(CF3SO22N、Li(C25SO22N、Li(CF3SO23C、LiBF3(C25)、LiB(C242、LiB(C654、LiPF3(C253、1/2Li21212、Li2SiF6、LiCl、LiBr、LiIを挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0074】
本技術に係る第1の実施形態のリチウムイオン二次電池システムが備えるリチウムイオン二次電池は、正極と負極とを、セパレータを間にして積層した積層電極体又は、正極と負極とをセパレータを間にして積層した後、さらに、巻回した巻回電極体と、積層電極体又は巻回電極体を収容する外装体とから構成されてもよい。
【0075】
また、本技術に係る第1の実施形態のリチウムイオン二次電池システムが備えるリチウムイオン二次電池は、電解質層を備えていてもよく、その場合は正極と負極とを、セパレータと、さらに、電解質層とを間にして積層した積層電極体又は、正極と負極とを、セパレータと、さらに、電解質層とを間にして積層した後、さらに、巻回した巻回電極体と、積層電極体又は巻回電極体を収容する外装体とから構成されてもよい。
【0076】
電解質層は、電解液が高分子化合物により保持されたものであり、必要に応じて、各種添加剤などの他の材料を含んでいてもよい。この電解質層は、例えば、いわゆるゲル状の電解質である。ゲル状の電解質は、高いイオン伝導率(例えば、室温で1mS/cm以上)が得られると共に電解液の漏液が防止されるので好ましい。
【0077】
高分子化合物としては、例えば、ポリアクリロニトリル、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリヘキサフルオロプロピレン、ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド、ポリフォスファゼン、ポリシロキサン、ポリフッ化ビニル、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ポリメタクリル酸メチル、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、スチレン−ブタジエンゴム、ニトリル−ブタジエンゴム、ポリスチレン、ポリカーボネート、またはフッ化ビニリデンとヘキサフルオロピレンとの共重合体などが挙げられる。これらは単独でもよいし、複数種が混合されてもよい。中でも、ポリフッ化ビニリデン、またはフッ化ビニリデンとヘキサフルオロピレンとの共重合体が好ましい。電気化学的に安定だからである。
【0078】
外装体は、上記で述べた積層電極体又は巻回電極体を収容することができれば特に限定されないが、例えば、ラミネートフィルム型のリチウムイオン二次電池を構成するラミネート材料を含む外装部材、円筒型又は角型のリチウムイオン二次電池を構成する電池缶等が挙げられる。
【0079】
ラミネート材料は、例えば、融着層、金属層および表面保護層がこの順に積層されたラミネートフィルムである。融着層は、例えば、ポリエチレンまたはポリプロピレンなどのポリオレフィン樹脂などで構成される。金属層は、例えば、アルミニウムなどで構成される。表面保護層は、例えば、ナイロンまたはポリエチレンテレフタレートなどで構成される。外装部材40は、他の積層構造を有するラミネートフィルムでもよく、高分子フィルム単体または金属フィルム単体でもよい。
【0080】
電池缶は、鉄(Fe)、ニッケル(Ni)、アルミニウム(Al)、チタン(Ti)、これらの合金、ステンレス鋼(SUS)等の材料から構成されてよい。電池缶には、リチウムイオン二次電池の充放電に伴う電気化学的な腐食を防止するために、例えばニッケル等のメッキが施されていてもよい。
【0081】
本技術に係る第1の実施形態のリチウムイオン二次電池システムが備えるリチウムイオン二次電池は、例えば、次のようにして製造することができる。
【0082】
まず、正極を作製する。最初に、正極活物質と、必要に応じて結着剤および導電剤などとを混合して正極合剤としたのち、例えば、有機溶剤などに分散させてペースト状またはスラリー状の正極合剤スラリーとする。
【0083】
続いて、正極集電体の両面に正極合剤スラリーを均一に塗布してから乾燥させて、正極活物質層を形成する。最後に、必要に応じて加熱しながら、ロールプレス機などを用いて正極活物質層を圧縮成型する。この場合には、複数回に渡って圧縮成型を繰り返してもよい。
【0084】
次に、上記した正極と同様の手順により、負極を作製する。最初に、負極活物質と、必要に応じて結着剤および導電剤などとを混合して負極合剤としたのち、例えば、有機溶剤などに分散させてペースト状またはスラリー状の負極合剤スラリーとする。
【0085】
この後、負極集電体の両面に負極合剤スラリーを均一に塗布してから乾燥させて、負極活物質層を形成したのち、その負極活物質層を圧縮成型する。
【0086】
上記のように作製した正極に正極リードを取り付けると共に、上記のように作製した負極に負極リードを取り付ける。続いて、両面にセパレータを介して正極と負極とを積層して固定部材を接着させて、積層電極体(電池素子)を作製する。
【0087】
次に、一辺の外周縁部を除いた残りの外周縁部を熱融着などで接着させて、ラミネート材料を含む外装部材の内部に積層電極体を収納する。続いて、電解液を、袋状のラミネート材料を含む外装部材の内部に注入したのち、その外装部材の開口部を熱融着などで密封して、リチウムイオン二次電池を得ることができる。なお、正極および負極のそれぞれに、溶媒と、電解質塩と、高分子化合物と、混合溶剤とを含む前駆溶液を塗布し、混合溶剤を揮発させて電解質層を形成して、リチウムイオン二次電池を得てもよい。
【0088】
また、本技術に係る第1の実施形態のリチウムイオン二次電池システムが備えるリチウムイオン二次電池は、例えば、次のようにして製造することもできる。
【0089】
上記のように、正極及び負極を作製して、次に、正極集電体に正極リードを溶接などにより取り付けると共に、負極集電体に負極リードを溶接などにより取り付ける。次に、正極と負極とをセパレータ23を介して巻回する。次に、正極リードの先端部を安全弁機構に溶接すると共に、負極リードの先端部を電池缶に溶接して、巻回した正極および負極を一対の絶縁板で挟み電池缶の内部に収納する。
【0090】
次に、正極および負極を電池缶の内部に収納したのち、電解液を電池缶の内部に注入し、セパレータに含浸させる。次に、電池缶の開口端部に電池蓋、安全弁機構および熱感抵抗素子を、封口ガスケットを介してかしめることにより固定する。これにより、リチウムイオン二次電池が得られる。
【0091】
<3.第2の実施形態(充電ユニットの例)>
本技術に係る第2の実施形態(充電ユニットの例)の充電ユニットは、本技術に係る第1の実施形態のリチウムイオン二次電池システムと、電流測定部と、電圧測定部と、充電制御部とを備える、充電ユニットである。本技術に係る第2の実施形態の充電ユニットが備える、本技術に係る第1の実施形態のリチウムイオン二次電池システムは、少なくともリチウムイオン二次電池と、リチウム析出センサとを備えていてもよいし、少なくともリチウムイオン二次電池と、リチウム析出センサと、センサ測定部と、リチウム析出判断演算部とを備えていてもよい。
【0092】
本技術に係る第2の実施形態の充電ユニットは、リチウム(Li)析出による不安全化を検知することができ、リチウム(Li)析出を検知したとき、充電制御部により、次回充電の充電電流を小さくするか、又は設定電圧を低くすることで、リチウム(Li)を析出させない条件に変更することができる。この変更によって、リチウム(Li)の析出は防止されて、過充電状態による熱的に不安定な状態は回避されて、発火のリスクは抑制され得る。したがって、本技術に係る第2の実施形態の充電ユニットによれば、安全性が高められて、優れた信頼性の効果が奏されることとなる。
【0093】
以下に、図1を用いて、本技術に係る第2の実施形態(充電ユニットの例)の充電ユニットについて更に詳細に説明する。図1は、本技術に係る第2の実施形態の充電ユニットの構成例を示すブロック図である。
【0094】
図1に示されるように、充電ユニット100は、リチウムイオン二次電池システム10と、電流測定部5と、電圧測定部6と、充電制御部7とから構成されている。そして、リチウムイオン二次電池システム10は、リチウム析出センサ1と、リチウムイオン二次電池2と、センサ測定部3と、リチウム(Li)析出判断演算部4とから構成されている。
【0095】
充電ユニット100において、吸熱検知部を備えるリチウム析出センサ1は、リチウムイオン二次電池2の発熱や吸熱を、電気信号、例えば電圧値として出力する。センサ測定部3は、電気信号、例えば、電圧値を測定し、その数値をリチウム析出判断演算部4に出力する。リチウム(Li)析出判断演算部4は、受けた数値の変化を解析し、充電制御部7で取得される充電電流の変化や積算充電容量値と照らし合わせ、リチウム(Li)析出判断可能域か否かを判断するとともに、リチウム(Li)析出判断可能域であるとき、リチウム(Li)析出による吸熱が継続していると判断した場合、それを充放電制御部7に伝達する。充電制御部7が、次回充電の充電電流を制御して下げるか、又は到達電圧(設定電圧)制御して下げるかして、リチウム(Li)析出を抑制する。電流測定部5は、電流検出抵抗器(図示せず)を用いて充電電流を測定し、測定結果を充電制御部7に出力する。電圧測定部6は、リチウムイオン二次電池2の電圧を測定し、測定電圧をアナログ−デジタル変換して充電制御部7に出力する。
【0096】
<4.第3の実施形態(リチウムイオン二次電池の制御方法の例1)>
本技術に係る第3の実施形態(リチウムイオン二次電池の制御方法の例1)のリチウムイオン二次電池の制御方法は、リチウム析出センサが備える吸熱検出部の吸熱検知結果に基づき、定電流充電域の充電電流を制御する、制御方法である。本技術に係る第3の実施形態のリチウムイオン二次電池の制御方法で用いられるリチウム析出センサは、本技術に係る第1の実施形態のリチウム析出センサでよい。
【0097】
本技術に係る第3の実施形態のリチウムイオン二次電池の制御方法を用いると、リチウム(Li)析出による不安全化を検知することができ、リチウム(Li)析出を検知したとき、次回定電流充電域の充電電流を制御して下げることができる。充電電流を下げる方法は、定電流充電域の全体にわたって充電電流を下げてもよいし、定電流充電域の初期は前回(当初)と同じ値の充電電流にして、定電流充電域の途中から充電電流を下げてもよい。充電電流を制御して下げることで、リチウム(Li)を析出させない条件に変更することができる。この変更によって、リチウム(Li)の析出は防止されて、過充電状態による熱的に不安定な状態は回避されて、発火のリスクは抑制され得る。したがって、本技術に係る第3の実施形態のリチウムイオン二次電池の制御方法によれば、安全性が高められて、高信頼性の効果が奏されることとなる。
【0098】
本技術に係る第3の実施形態のリチウムイオン二次電池の制御方法において、吸熱検出部の吸熱検知結果が、定電流充電域の到達電圧まで、吸熱が継続しているか否かを示すことが好ましい。この好ましい態様により、リチウム(Li)析出を検知したとき、次回定電流充電域の充電電流をより確実に制御して下げることができる。
【0099】
<5.第4の実施形態(リチウムイオン二次電池の制御方法の例2)>
本技術に係る第4の実施形態(リチウムイオン二次電池の制御方法の例2)のリチウムイオン二次電池の制御方法は、リチウム析出センサが備える吸熱検出部の吸熱検知結果に基づき、定電流充電域の到達電圧を制御する、制御方法である。本技術に係る第4の実施形態のリチウムイオン二次電池の制御方法で用いられるリチウム析出センサは、本技術に係る第1の実施形態のリチウム析出センサでよい。
【0100】
本技術に係る第4の実施形態のリチウムイオン二次電池の制御方法を用いると、リチウム(Li)析出による不安全化を検知することができ、リチウム(Li)析出を検知したとき、次回定電流充電域の到達電圧を制御して下げることができる。到達電圧を制御して下げることで、リチウム(Li)を析出させない条件に変更することができる。この変更によって、リチウム(Li)の析出は防止されて、過充電状態による熱的に不安定な状態は回避されて、発火のリスクは抑制され得る。したがって、本技術に係る第4の実施形態のリチウムイオン二次電池の制御方法によれば、安全性が高められて、高信頼性の効果が奏されることとなる。
【0101】
本技術に係るリチウムイオン二次電池の制御方法において、吸熱検出部の吸熱検知結果が、定電流充電域の到達電圧まで、吸熱が継続しているか否かを示すことが好ましい。この好ましい態様により、リチウム(Li)析出を検知したとき、次回定電流充電域の到達電圧をより確実に制御して下げることができる。
【0102】
<6.リチウムイオン二次電池システム及び充電ユニットの用途>
リチウムイオン二次電池システム及び充電ユニットの用途について下記に詳細に説明する。
【0103】
<6−1.リチウムイオン二次電池システム及び充電ユニットの用途の概要>
リチウムイオン二次電池システム及び充電ユニットの用途は、そのリチウムイオン二次電池システム又は充電ユニットを駆動用の電源または電力蓄積用の電力貯蔵源などとして利用可能な機械、機器、器具、装置およびシステム(複数の機器などの集合体)などであれば、特に限定されない。電源として使用されるリチウムイオン二次電池システム又は充電ユニットは、主電源(優先的に使用される電源)でもよいし、補助電源(主電源に代えて、または主電源から切り換えて使用される電源)でもよい。リチウムイオン二次電池システム又は充電ユニットを補助電源として利用する場合には、主電源の種類は電池及び電池モジュールに限られない。
【0104】
リチウムイオン二次電池システム及び充電ユニットの用途は、例えば、以下の通りである。ノート型パーソナルコンピュータ、タブレット型コンピュータ、携帯電話(例えばスマートフォンなど)、携帯情報端末(Personal Digital Assistants:PDA)、撮像装置(例えばデジタルスチルカメラ、デジタルビデオカメラなど)、オーディオ機器(例えばポータブルオーディオプレイヤー)、ゲーム機器、コードレスフォン子機、電子書籍、電子辞書、ラジオ、ヘッドホン、ナビゲーションシステム、メモリーカード、ペースメーカー、補聴器、照明機器、玩具、医療機器、ロボットなどの電子機器(携帯用電子機器を含む)である。電気シェーバなどの携帯用生活器具である。バックアップ電源およびメモリーカードなどの記憶用装置である。電動ドリルおよび電動鋸などの電動工具である。着脱可能な電源としてノート型パソコンなどに用いられる電池パックである。ペースメーカーおよび補聴器などの医療用電子機器である。電気自動車(ハイブリッド自動車を含む)などに用いられる車両である。非常時などに備えて電力を蓄積しておく家庭用バッテリシステムなどの蓄電システムである。勿論、上記以外の用途でもよい。
【0105】
リチウムイオン二次電池システムは、電池パック、車両、蓄電システム、電動工具、及び電子機器に適用されることが特に有効である。また、充電ユニットも、車両、蓄電システム、及び電子機器に適用されることが特に有効である。優れた信頼性が要求されるため、本技術に係るリチウムイオン二次電池システム又は充電ユニットを用いることで、有効に、電池の信頼性の向上を図ることができるからである。なお、電池パックは、リチウムイオン二次電池システム又は充電ユニットを用いた電源であり、いわゆる組電池などである。車両は、リチウムイオン二次電池システム又は充電ユニットを駆動用電源として作動(走行)する車両であり、上記したように、リチウムイオン二次電池システム又は充電ユニット以外の駆動源を併せて備えた自動車(ハイブリッド自動車など)でもよい。蓄電システムは、例えば、住宅用の蓄電システムが挙げられ、リチウムイオン二次電池システム又は充電ユニットを電力貯蔵源として用いるシステムである。蓄電システムでは、電力貯蔵源であるリチウムイオン二次電池システム又は充電ユニットに電力が蓄積されているため、その電力を利用して電力消費装置、例えば、家庭用の電気製品が使用可能になる。電動工具は、リチウムイオン二次電池システム又は充電ユニットを駆動用の電源として可動部(例えばドリルなど)が可動する工具である。電子機器は、リチウムイオン二次電池システム又は充電ユニットを駆動用の電源(電力供給源)として各種機能を発揮する機器である。
【0106】
ここで、リチウムイオン二次電池システム又は充電ユニットのいくつかの適用例について具体的に説明する。なお、以下で説明する各適用例の構成はあくまで一例であるため、適宜変更可能である。
【0107】
<6−2.第5の実施形態(電池パックの例)>
本技術に係る第5の実施形態の電池パックは、本技術に係る第1の実施形態のリチウムイオン二次電池システムを備える。また、本技術に係る第5の実施形態の電池パックは、本技術に係る第2の実施形態の充電ユニットを備える。例えば、本技術に係る第5の実施形態の電池パックは、本技術に係る第1の実施形態のリチウムイオン二次電池システムと、リチウムイオン二次電池システムの使用状態を制御する制御部と、制御部の指示に応じて、リチウムイオン二次電池システムの使用状態を切り換えるスイッチ部と、を備える、電池パックである。また、例えば、本技術に係る第5の実施形態の電池パックは、本技術に係る第2の実施形態の充電ユニットと、充電ユニットの使用状態を制御する制御部と、制御部の指示に応じて、充電ユニットの使用状態を切り換えるスイッチ部と、を備える、電池パックである。本技術に係る第5の実施形態の電池パックは、優れた信頼性を有する本技術に係る第1の実施形態のリチウムイオン二次電池システム又は第2の実施形態の充電ユニットを備えているので、電池パックの安全性等の信頼性の向上につながる。
【0108】
以下に、本技術に係る第5の実施形態の電池パックについて、図面を参照しながら説明する。
【0109】
図7は、電池パックのブロック構成を表している。この電池パックは、例えば、プラスチック材料などにより形成された筐体60の内部に、制御部61と、電源62と、スイッチ部63と、電流測定部64と、温度検出部65と、電圧検出部66と、スイッチ制御部67と、メモリ68と、温度検出素子69と、電流検出抵抗70と、正極端子71および負極端子72とを備えている。
【0110】
制御部61は、電池パック全体の動作(電源62の使用状態を含む)を制御するものであり、例えば、中央演算処理装置(CPU)などを含んでいる。電源62は、1または2以上の電池(図示せず)を含んでいる。この電源62は、例えば、2以上の電池を含む組電池であり、それらの電池の接続形式は、直列でもよいし、並列でもよいし、双方の混合型でもよい。一例を挙げると、電源62は、2並列3直列となるように接続された6つの電池を含んでいる。
【0111】
スイッチ部63は、制御部61の指示に応じて電源62の使用状態(電源62と外部機器との接続の可否)を切り換えるものである。このスイッチ部63は、例えば、充電制御スイッチ、放電制御スイッチ、充電用ダイオードおよび放電用ダイオード(いずれも図示せず)などを含んでいる。充電制御スイッチおよび放電制御スイッチは、例えば、金属酸化物半導体を用いた電界効果トランジスタ(MOSFET)などの半導体スイッチである。
【0112】
電流測定部64は、電流検出抵抗70を用いて電流を測定して、その測定結果を制御部61に出力するものである。温度検出部65は、温度検出素子69を用いて温度を測定して、その測定結果を制御部61に出力するようになっている。この温度測定結果は、例えば、異常発熱時において制御部61が充放電制御を行う場合や、制御部61が残容量の算出時において補正処理を行う場合などに用いられる。電圧検出部66は、電源62中における電池の電圧を測定して、その測定電圧をアナログ−デジタル変換して制御部61に供給するものである。
【0113】
スイッチ制御部67は、電流測定部64および電圧検出部66から入力される信号に応じて、スイッチ部63の動作を制御するものである。
【0114】
このスイッチ制御部67は、例えば、電池電圧が過充電検出電圧に到達した場合に、スイッチ部63(充電制御スイッチ)を切断して、電源62の電流経路に充電電流が流れないように制御する。これにより、電源62では、放電用ダイオードを介して放電のみが可能になる。なお、スイッチ制御部67は、例えば、充電時に大電流が流れた場合に、充電電流を遮断するようになっている。
【0115】
また、スイッチ制御部67は、例えば、電池電圧が過放電検出電圧に到達した場合に、スイッチ部63(放電制御スイッチ)を切断して、電源62の電流経路に放電電流が流れないようにする。これにより、電源62では、充電用ダイオードを介して充電のみが可能になる。なお、スイッチ制御部67は、例えば、放電時に大電流が流れた場合に、放電電流を遮断するようになっている。
【0116】
なお、電池では、例えば、過充電検出電圧は4.2V±0.05Vであり、過放電検出電圧は2.4V±0.1Vである。
【0117】
メモリ68は、例えば、不揮発性メモリであるEEPROMなどである。このメモリ68には、例えば、制御部61により演算された数値や、製造工程段階において測定された電池の情報(例えば初期状態の内部抵抗)などが記憶されている。なお、メモリ68に電池の満充電容量を記憶させておけば、制御部61が残容量などの情報を把握可能になる。
【0118】
温度検出素子69は、電源62の温度を測定すると共にその測定結果を制御部61に出力するものであり、例えば、サーミスタなどである。
【0119】
正極端子71および負極端子72は、電池パックを用いて稼働される外部機器(例えばノート型のパーソナルコンピュータなど)や、電池パックを充電するために用いられる外部機器(例えば充電器など)などに接続される端子である。電源62の充放電は、正極端子71および負極端子72を介して行われる。
【0120】
<6−3.第6の実施形態(車両の例)>
本技術に係る第6の実施形態の車両は、本技術に係る第1の実施形態のリチウムイオン二次電池システムと、リチウムイオン二次電池システムから供給された電力を駆動力に変換する駆動力変換装置と、駆動力に応じて駆動する駆動部と、車両制御装置と、を備える、車両である。また、本技術に係る第6の実施形態の車両は、本技術に係る第2の実施形態の充電ユニットと、充電ユニットから供給された電力を駆動力に変換する駆動力変換装置と、駆動力に応じて駆動する駆動部と、車両制御装置と、を備える、車両である。本技術に係る第6の実施形態の車両は、優れた信頼性を有する本技術に係る第1の実施形態のリチウムイオン二次電池システム又は第2の実施形態の充電ユニットを備えているので、車両の安全性等の信頼性の向上につながる。
【0121】
以下に、本技術に係る第6の実施形態の車両について、図8を参照しながら説明する。
【0122】
図8に、本技術が適用されるシリーズハイブリッドシステムを採用するハイブリッドの車両の構成の一例を概略的に示す。シリーズハイブリッドシステムはエンジンで動かす発電機で発電された電力、あるいはそれをバッテリーに一旦貯めておいた電力を用いて、電力駆動力変換装置で走行する車である。
【0123】
このハイブリッド車両7200には、エンジン7201、発電機7202、電力駆動力変換装置7203、駆動輪7204a、駆動輪7204b、車輪7205a、車輪7205b、バッテリー7208、車両制御装置7209、各種センサ7210、充電口7211が搭載されている。バッテリー7208に対して、蓄電装置(不図示)が適用される。
【0124】
ハイブリッド車両7200は、電力駆動力変換装置7203を動力源として走行する。電力駆動力変換装置7203の一例は、モータである。バッテリー7208の電力によって電力駆動力変換装置7203が作動し、この電力駆動力変換装置7203の回転力が駆動輪7204a、7204bに伝達される。なお、必要な個所に直流−交流(DC−AC)あるいは逆変換(AC−DC変換)を用いることによって、電力駆動力変換装置7203が交流モータでも直流モータでも適用可能である。各種センサ7210は、車両制御装置7209を介してエンジン回転数を制御したり、図示しないスロットルバルブの開度(スロットル開度)を制御したりする。各種センサ7210には、速度センサ、加速度センサ、エンジン回転数センサなどが含まれる。
【0125】
エンジン7201の回転力は発電機7202に伝えられ、その回転力によって発電機7202により生成された電力をバッテリー7208に蓄積することが可能である。
【0126】
図示しない制動機構によりハイブリッド車両が減速すると、その減速時の抵抗力が電力駆動力変換装置7203に回転力として加わり、この回転力によって電力駆動力変換装置7203により生成された回生電力がバッテリー7208に蓄積される。
【0127】
バッテリー7208は、ハイブリッド車両の外部の電源に接続されることで、その外部電源から充電口211を入力口として電力供給を受け、受けた電力を蓄積することも可能である。
【0128】
図示しないが、リチウムイオン二次電池システム又は充電ユニットに関する情報に基づいて車両制御に関する情報処理を行なう情報処理装置を備えていてもよい。このような情報処理装置としては、例えば、リチウムイオン二次電池システム又は充電ユニットの残量に関する情報に基づき、電池残量表示を行う情報処理装置などがある。
【0129】
なお、以上は、エンジンで動かす発電機で発電された電力、或いはそれをバッテリーに一旦貯めておいた電力を用いて、モータで走行するシリーズハイブリッド車を例として説明した。しかしながら、エンジンとモータの出力がいずれも駆動源とし、エンジンのみで走行、モータのみで走行、エンジンとモータ走行という3つの方式を適宜切り替えて使用するパラレルハイブリッド車に対しても本技術は有効に適用可能である。さらに、エンジンを用いず駆動モータのみによる駆動で走行する所謂、電動車両に対しても本技術は有効に適用可能である。
【0130】
<6−4.第7の実施形態(蓄電システムの例)>
本技術に係る第7の実施形態の蓄電システムは、本技術に係る第1の実施形態のリチウムイオン二次電池システムを有する蓄電装置と、リチウムイオン二次電池システムから電力が供給される電力消費装置と、リチウムイオン二次電池システムからの該電力消費装置に対する電力供給を制御する制御装置と、リチウムイオン二次電池システムを充電する発電装置と、を備える、蓄電システムである。また、本技術に係る第7の実施形態の蓄電システムは、本技術に係る第2の実施形態の充電ユニットを有する蓄電装置と、充電ユニットから電力が供給される電力消費装置と、充電ユニットからの該電力消費装置に対する電力供給を制御する制御装置と、充電ユニットを充電する発電装置と、を備える、蓄電システムである。本技術に係る第7の実施形態の蓄電システムは、優れた信頼性を有する本技術に係る第1の実施形態のリチウムイオン二次電池システム又は本技術に係る第2の実施形態の充電ユニットを備えているので、蓄電システムの安全性等の信頼性の向上につながる。
【0131】
以下に、本技術に係る第7の実施形態の蓄電システムの1例である住宅用の蓄電システムについて、図9を参照しながら説明する。
【0132】
例えば、住宅9001用の蓄電システム9100においては、火力発電9002a、原子力発電9002b、水力発電9002c等の集中型電力系統9002から電力網9009、情報網9012、スマートメータ9007、パワーハブ9008等を介し、電力が蓄電装置9003に供給される。これと共に、家庭内発電装置9004等の独立電源から電力が蓄電装置9003に供給される。蓄電装置9003に供給された電力が蓄電される。蓄電装置9003を使用して、住宅9001で使用する電力が給電される。住宅9001に限らずビルに関しても同様の蓄電システムを使用できる。
【0133】
住宅9001には、発電装置9004、電力消費装置9005、蓄電装置9003、各装置を制御する制御装置9010、スマートメータ9007、各種情報を取得するセンサ9011が設けられている。各装置は、電力網9009および情報網9012によって接続されている。発電装置9004として、太陽電池、燃料電池等が利用され、発電した電力が電力消費装置9005および/または蓄電装置9003に供給される。電力消費装置9005は、冷蔵庫9005a、空調装置9005b、テレビジョン受信機9005c、風呂9005d等である。さらに、電力消費装置9005には、電動車両9006が含まれる。電動車両9006は、電気自動車9006a、ハイブリッドカー9006b、電気バイク9006cである。
【0134】
蓄電装置9003に対して、上述した本技術に係る第1の実施形態のリチウムイオン二次電池システム又は第2の実施形態の充電ユニット(バッテリユニット)が適用される。蓄電装置9003は、リチウムイオン二次電池システム、充電ユニット又はキャパシタから構成されている。例えば、リチウムイオン二次電池によって構成されている。リチウムイオン二次電池は、定置型であっても、電動車両9006で使用されるものでもよい。スマートメータ9007は、商用電力の使用量を測定し、測定された使用量を、電力会社に送信する機能を備えている。電力網9009は、直流給電、交流給電、非接触給電の何れか一つまたは複数を組み合わせてもよい。
【0135】
各種のセンサ9011は、例えば人感センサ、照度センサ、物体検知センサ、消費電力センサ、振動センサ、接触センサ、温度センサ、赤外線センサ等である。各種センサ9011により取得された情報は、制御装置9010に送信される。センサ9011からの情報によって、気象の状態、人の状態等が把握されて電力消費装置9005を自動的に制御してエネルギー消費を最小とすることができる。さらに、制御装置9010は、住宅9001に関する情報を、インターネットを介して外部の電力会社等に送信することができる。
【0136】
パワーハブ9008によって、電力線の分岐、直流交流変換等の処理がなされる。制御装置9010と接続される情報網9012の通信方式としては、UART(Universal Asynchronous Receiver-Transmitter:非同期シリアル通信用送受信回路)等の通信インターフェースを使う方法、Bluetooth(登録商標)、ZigBee、Wi−Fi等の無線通信規格によるセンサーネットワークを利用する方法がある。Bluetooth(登録商標)方式は、マルチメディア通信に適用され、一対多接続の通信を行うことができる。ZigBeeは、IEEE(Institute of Electrical and Electronics Engineers) 802.15.4の物理層を使用するものである。IEEE802.15.4は、PAN(Personal Area Network) またはW(Wireless)PANと呼ばれる短距離無線ネットワーク規格の名称である。
【0137】
制御装置9010は、外部のサーバ9013と接続されている。このサーバ9013は、住宅9001、電力会社、サービスプロバイダーの何れかによって管理されていても良い。サーバ9013が送受信する情報は、たとえば、消費電力情報、生活パターン情報、電力料金、天気情報、天災情報、電力取引に関する情報である。これらの情報は、家庭内の電力消費装置(たとえばテレビジョン受信機)から送受信しても良いが、家庭外の装置(たとえば、携帯電話機等)から送受信しても良い。これらの情報は、表示機能を持つ機器、たとえば、テレビジョン受信機、携帯電話機、携帯情報端末(PDA)等に、表示されてもよい。
【0138】
各部を制御する制御装置9010は、CPU、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)等で構成され、この例では、蓄電装置9003に格納されている。制御装置9010は、蓄電装置9003、家庭内発電装置9004、電力消費装置9005、各種センサ9011、サーバ9013と情報網9012により接続され、例えば、商用電力の使用量と、発電量とを調整する機能を有している。なお、その他にも、電力市場で電力取引を行う機能等を備えていてもよい。
【0139】
以上のように、電力が火力9002a、原子力9002b、水力9002c等の集中型電力系統9002のみならず、家庭内発電装置9004(太陽光発電、風力発電)の発電電力を蓄電装置9003に蓄えることができる。したがって、家庭内発電装置9004の発電電力が変動しても、外部に送出する電力量を一定にしたり、または、必要なだけ放電するといった制御を行うことができる。例えば、太陽光発電で得られた電力を蓄電装置9003に蓄えると共に、夜間は料金が安い深夜電力を蓄電装置9003に蓄え、昼間の料金が高い時間帯に蓄電装置9003によって蓄電した電力を放電して利用するといった使い方もできる。
【0140】
なお、この例では、制御装置9010が蓄電装置9003内に格納される例を説明したが、スマートメータ9007内に格納されてもよいし、単独で構成されていてもよい。さらに、蓄電システム9100は、集合住宅における複数の家庭を対象として用いられてもよいし、複数の戸建て住宅を対象として用いられてもよい。
【0141】
<6−5.第8の実施形態(電動工具の例)>
本技術に係る第8の実施形態の電動工具は、本技術に係る第1の実施形態のリチウムイオン二次電池システムと、リチウムイオン二次電池システムから電力が供給される可動部とを備える、電動工具である。また、本技術に係る第8の実施形態の電動工具は、本技術に係る第2の実施形態の充電ユニットと、充電ユニットから電力が供給される可動部とを備える、電動工具である。本技術に係る第8の実施形態の電動工具は、優れた信頼性を有する本技術に係る第1の実施形態のリチウムイオン二次電池システム又は第2の実施形態の充電ユニットを備えているので、電動工具の安全性等の信頼性の向上につながる。
【0142】
以下に、本技術に係る第8の実施形態の電動工具について、図10を参照しながら説明する。
【0143】
図10は、電動工具のブロック構成を表している。この電動工具は、例えば、電動ドリルであり、プラスチック材料などにより形成された工具本体98の内部に、制御部99と、電源100とを備えている。この工具本体98には、例えば、可動部であるドリル部101が稼働(回転)可能に取り付けられている。
【0144】
制御部99は、電動工具全体の動作(電源100の使用状態を含む)を制御するものであり、例えば、CPUなどを含んでいる。電源100は、1または2以上の電池(図示せず)を含んでいる。この制御部99は、図示しない動作スイッチの操作に応じて、電源100からドリル部101に電力を供給するようになっている。
【0145】
<6−6.第9の実施形態(電子機器の例)>
本技術に係る第9の実施形態の電子機器は、本技術に係る第1の実施形態のリチウムイオン二次電池システムを備え、リチウムイオン二次電池システムから電力の供給を受ける、電子機器である。また、本技術に係る第9の実施形態の電子機器は、本技術に係る第2の実施形態の充電ユニットを備え、充電ユニットから電力の供給を受ける、電子機器である。上述したように、本技術に係る第9の実施形態の電子機器は、リチウムイオン二次電池システム又は充電ユニットを駆動用の電源(電力供給源)として各種機能を発揮する機器である。本技術に係る第9の実施形態の電子機器は、優れた信頼性を有する本技術に係る第1の実施形態のリチウムイオン二次電池システム又は本技術に係る第2の実施形態の充電ユニットを備えているので、電子機器の安全性等の信頼性の向上につながる。
【0146】
以下に、本技術に係る第9の実施形態の電子機器について、図11を参照しながら説明する。
【0147】
本技術の第9の実施形態に係る電子機器400の構成の一例について説明する。電子機器400は、電子機器本体の電子回路401と、電池パック300とを備える。電池パック300は、正極端子331aおよび負極端子331bを介して電子回路401に対して電気的に接続されている。電子機器400は、例えば、ユーザにより電池パック300を着脱自在な構成を有している。なお、電子機器400の構成はこれに限定されるものではなく、ユーザにより電池パック300を電子機器400から取り外しできないように、電池パック300が電子機器400内に内蔵されている構成を有していてもよい。
【0148】
電池パック300の充電時には、電池パック300の正極端子331a、負極端子331bがそれぞれ、充電器(図示せず)の正極端子、負極端子に接続される。一方、電池パック300の放電時(電子機器400の使用時)には、電池パック300の正極端子331a、負極端子331bがそれぞれ、電子回路401の正極端子、負極端子に接続される。
【0149】
電子機器400としては、例えば、ノート型パーソナルコンピュータ、タブレット型コンピュータ、携帯電話(例えばスマートフォンなど)、携帯情報端末(PDA)、撮像装置(例えばデジタルスチルカメラ、デジタルビデオカメラなど)、オーディオ機器(例えばポータブルオーディオプレイヤー)、ゲーム機器、コードレスフォン子機、電子書籍、電子辞書、ラジオ、ヘッドホン、ナビゲーションシステム、メモリーカード、ペースメーカー、補聴器、照明機器、玩具、医療機器、ロボットなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。具体例として、頭部装着型ディスプレイ及びバンド型電子機器を説明すると、頭部装着型ディスプレイは、画像表示装置、画像表示装置を観察者の頭部に装着するための装着装置、及び画像表示装置を装着装置に取り付けるための取付け部材を備え、本技術に係る第1の実施形態のリチウムイオン二次電池システム又は本技術に係る第2の実施形態の充電ユニットを駆動用の電源とした電子機器であり、バンド型電子機器は、バンド状に連結される複数のセグメントと、複数のセグメント内に配置される複数の電子部品と、複数のセグメント内の複数の電子部品を接続し、少なくとも1つのセグメント内に蛇行形状で配置されるフレキシブル回路基板と、を備え、上記電子部品として、例えば、本技術に係る第1の実施形態のリチウムイオン二次電池システム又は本技術に係る第2の実施形態の充電ユニットが、上記セグメントに配される電子機器である。
【0150】
電子回路401は、例えば、CPU、周辺ロジック部、インターフェース部および記憶部などを備え、電子機器400の全体を制御する。
【0151】
電池パック300は、組電池301と、充放電回路302とを備える。組電池301は、複数の電池301aを直列および/または並列に接続して構成されている。複数の電池301aは、例えばn並列m直列(n、mは正の整数)に接続される。なお、図11では、6つの電池301aが2並列3直列(2P3S)に接続された例が示されている。電池301aとしては、第1の実施形態のリチウムイオン二次電池システムが用いられてよく、又は第2の実施形態の充電ユニットが用いられてよい。
【0152】
充電時には、充放電回路302は、組電池301に対する充電を制御する。一方、放電時(すなわち電子機器400の使用時)には、充放電回路302は、電子機器400に対する放電を制御する。
【実施例】
【0153】
以下に、実施例を挙げて、本技術の効果について具体的に説明をする。なお、本技術の範囲は実施例に限定されるものではない。
【0154】
[熱流センサを設置したリチウムイオン二次電池の作製]
正極活物質として、NCA(リチウムとニッケルとコバルトとアルミニウムと酸素とを含むリチウム複合酸化物)を用いて、正極を作製し、次いで、負極活物質として、黒鉛を用いて、負極を作製した。電解液として、EC(エチレンカーボネート)/EMC(エチルメチルカーボネート)/VC(炭酸ビニレン)/LiPF(35/50/1/15(質量%))を用いて、セパレータを介して、正極及び負極を積層して、ラミネートフィルム型の3Ahのリチウムイオン二次電池を作製した。なお、利用電圧範囲は、3Vから4.2Vとした。
【0155】
熱流センサとして、ポリイミドフィルム基材のサーモパイル型センサを用いた。サイズは、10mm(W)−31.6mm(L)−0.28mm(T)であり、感度は、0.04μV/(W/m2)であった。
【0156】
この熱流センサを、リチウムイオン二次電池のラミネート外装表面に張り付けて、熱流センサを設置したリチウムイオン二次電池を作製した。
【0157】
[リチウム(Li)析出の評価]
上記で作製された熱流センサを設置したリチウムイオン二次電池を充電して、熱流センサの起電力変化を測定し、熱流を算出した。結果を図2図6に示す。
【0158】
図2は、充電電流値(0.5ItA〜2.2ItA)を変えて定電流充電した際の、電池電圧(4V〜4.2V)と、検知した熱流(W/m)との関係を示すグラフである。図2に示されるように、充電電流値を上げていくと、1.5ItAを超えると、すなわち、2.2ItAの矢印P1(電池電圧=4.14V、熱流値=33.1W/m)、2.05ItAの矢印P2(電池電圧=4.15V、熱流値=29.6W/m)及び1.9ItAの矢印P3(電池電圧=4.16V、熱流値=25.7W/m)で熱流極大を示した。熱流極大を示した矢印P1〜P3で熱流値が減少に転じ、最大電圧に到達するまで熱流値の減少が続き、吸熱挙動を示した。この吸熱挙動から、矢印P1〜P3の地点から、リチウム(Li)が析出していることがわかった。
【0159】
さらに、吸熱挙動を解析する。図3は、電流値(0.5ItA〜2.2ItA)を変えて定電流充電した際の、電池電圧(4V〜4.2V)と熱流変化(W/m/V)との関係を示すグラフである。図3に示されるように、充電電流値を上げていくと、1.5ItAを超えると、すなわち、2.2ItAの矢印Q1(電池電圧=4.14V、熱流変化=0W/m/V)、2.05ItAの矢印Q2(電池電圧=4.15V、熱流値変化=0W/m/V)及び1.9ItAの矢印Q3(電池電圧=4.16V、熱流値=0W/m/V)で熱流変化が負値に転じ、最大電圧に到達するまで負値が続き、吸熱挙動を示した。この吸熱挙動から、矢印Q1〜Q3の地点から、リチウム(Li)が析出していることがわかった。
【0160】
図4は、黒鉛充電容量(mAh/g)とNCA充電容量(mAh/g)との関係を示すグラフである。NCAについてのリチウム(Li)析出有無の判断の容量閾値が、60mAh/g以上であり、黒鉛についてのリチウム(Li)析出有無の判断の容量閾値が、180mAh/g以上である。したがって、図4に示されるように、当該実施例で作製されリチウムイオン二次電池(NCA/黒鉛系の電池)では、両閾値のうち、より充電深度の深い、黒鉛180mAh/g以上でリチウム(Li)析出有無を判断することになる。黒鉛180mAh/g以上でリチウム(Li)析出有無を判断することについては、下記の図5及び図6を用いて更に詳細に説明をする。
【0161】
図5は、電流値(0.5ItA〜2.2ItA)を変えて定電流充電した際の、黒鉛充電容量(mAh/g)と熱流(W/m)との関係を示すグラフである。図5に示されるように、充電電流値を上げていくと、1.5ItAを超えると、すなわち、2.2ItAの矢印R1(黒鉛充電容量=219mAh/g、熱流値=33.1W/m)、2.05ItAの矢印R2(黒鉛充電容量=225mAh/g、熱流値=29.6W/m)及び1.9ItAの矢印R3(黒鉛充電容量=228mAh/g、熱流値=25.7W/m)で熱流極大を示した。熱流極大を示した矢印R1〜R3で熱流値が減少に転じ、最大電圧に到達するまで熱流値の減少が続き、吸熱挙動を示した。この吸熱挙動から、黒鉛充電容量が180mAh/g以上である矢印R1〜R3の地点から、リチウム(Li)が析出していることがわかった。
【0162】
図6は、電流値(0.5ItA〜2.2ItA)を変えて定電流充電した際の、黒鉛充電容量(mAh/g)と熱流変化(W/m/V)との関係を示すグラフである。図6に示されるように、充電電流値を上げていくと、1.5ItAを超えると、すなわち、2.2ItAの矢印S1(黒鉛充電容量=219mAh/g、熱流変化=0W/m/V)、2.05ItAの矢印S2(黒鉛充電容量=225mAh/g、熱流値変化=0W/m/V)及び1.9ItAの矢印S3(黒鉛充電容量=228mAh/g、熱流値=0W/m/V)で熱流変化が負値に転じ、最大電圧に到達するまで負値が続き、吸熱挙動を示した。この吸熱挙動から、黒鉛充電容量が180mAh/g以上である矢印S1〜S3の地点から、リチウム(Li)が析出していることがわかった。
【0163】
図2中の矢印P1〜P3及び図5中の矢印R1〜R3についての充電レート(ItA)、黒鉛充電容量(Ah/g)、電池電圧(V)及び熱流(W/m)の値を表1に纏めて示す。
【0164】
【表1】
【0165】
本技術は、リチウムイオン二次電池の吸熱検知によりリチウム(Li)析出の有無を判断するリチウムイオン二次電池システムであればよく、上記の実施例に限定されるものではない。
【0166】
リチウム析出センサは、1個のリチウムイオン二次電池に対して複数個設置してもよいし、複数個のリチウムイオン二次電池に対して1個設置してもよい。
【0167】
正極活物質は、ニッケル系材料(NCA系材料)に限定されるものではなく、コバルト酸リチウム系材料(LCO系材料)、ニッケル−コバルト−マンガンの三元系材料(NCM系材料)、マンガン酸リチウム系材料(LMO系材料)、リチウム複合リン酸塩(例えば、LiFePO)等でもよい。また、負極活物質は、黒鉛(炭素系材料)に限られるものではなく、Si系材料、Sn系材料、LTO系材料(リチウムチタン複合酸化物)等でもよい。
【0168】
リチウムイオン二次電池は、積層型に限られるものではなく、巻回型でもよく、またラミネートフィルム型に限らず、円筒型、角型、コイン型、ボタン型、円盤型、平板型、でもよい。
【0169】
以下に、応用例1〜5を挙げて、本技術について更に具体的に説明をする。
【0170】
<応用例1:プリント回路基板>
上述したリチウムイオン二次電池システム又は充電ユニットは、図12に示すように、プリント回路基板1202(Print circuit board、以下「PCB」と称する。)上に充電回路等と共に実装することができる。例えば、PCB1202上に、本技術に係るリチウムイオン二次電池システム又は充電ユニット(図12中では、リチウムイオン二次電池システム又は充電ユニットのうち、リチウムイオン二次電池システム1203を示す。以下同じ。)及び充電回路等の電子回路をリフロー工程でもって実装することができる。PCB1202上にリチウムイオン二次電池システム1203及び充電回路等の電子回路が実装されたものを電池モジュール1201と称する。電池モジュール1201は、必要に応じてカード型の構成とされ、携帯可能なカード型モバイルバッテリとして構成することができる。
【0171】
PCB1202上には、また、充電制御IC(Integrated Circuit)1204、電池保護IC1205及び電池残量監視IC1206が形成されている。電池保護IC1205は、充放電時に充電電圧が過大となったり、負荷短絡によって過電流が流れたり、過放電が生じることがないように充放電動作を制御する。
【0172】
PCB1202に対してUSB(Universal Serial Bus)インターフェース1207が取り付けられている。USBインターフェース1207を通じて供給される電力によってリチウムイオン二次電池システム1203が充電される。この場合、充電制御IC1204によって充電動作が制御される。さらに、PCB1202に取り付けられている負荷接続端子1208a及び1208bから負荷1209に対して所定の電力(例えば電圧が4.2V)が供給される。リチウムイオン二次電池システム1203の電池残量が電池残量監視IC1206によって監視され、電池残量を表す表示(図示しない)が外部から分かるようになされる。なお、負荷接続のためにUSBインターフェース1207を使用してもよい。
【0173】
上述した負荷1209の具体例は以下のようなものである。
A.ウェアラブル機器(スポーツウオッチ、時計、補聴器等)、
B.IoT端末(センサネットワーク端末等)、
C.アミューズメント機器(ポータブルゲーム端末、ゲームコントローラ)、
D.IC基板埋め込み電池(リアルタイムクロックIC)、
E.環境発電機器(太陽光発電、熱電発電、振動発電等の発電素子用の蓄電素子)。
【0174】
<応用例2:ユニバーサルクレジットカード>
現在、複数枚のクレジットカードを持ち歩いている人が多い。しかしながら、クレジットカードの枚数が多くなるほど、紛失、盗難等の危険性が増す問題がある。そこで、複数枚のクレジットカードやポイントカードなどの機能を1枚のカードに集約した、ユニバーサルクレジットカードと呼ばれるカードが実用化されている。このカードの中には、例えば、様々なクレジットカードやポイントカードの番号や有効期限等の情報を取り込むことができるので、そのカード1枚を財布等の中の入れておけば、好きな時に好きなカードを選択して利用することができる。
【0175】
図13はユニバーサルクレジットカード1301の構成の一例を示す。カード型形状を有し、ICチップ及び本技術に係るリチウムイオン二次電池システム又は充電ユニット(不図示)が内蔵されている。さらに、小電力消費のディスプレイ1302及び操作部例えば方向キー1303a及び1303bが設けられている。さらに、充電用端子1304がユニバーサルクレジットカード1301の表面に設けられている。
【0176】
例えば、ユーザはディスプレイ1302を見ながら方向キー1303a及び1303bを操作して予めユニバーサルクレジットカード1301にロードされているクレジットカード等を特定することができる。複数のクレジットカードが予めロードされている場合には、ディスプレイ1302に各クレジットカードを示す情報が表示され、ユーザが方向キー1303a及び1303bを操作して所望のクレジットカードを指定することができる。その後は、従来のクレジットカードと同様に使用することができる。なお、上記は一例であって、本技術によるリチウムイオン二次電池システム又は充電ユニット(不図示)は、ユニバーサルクレジットカード1301以外のあらゆる電子カードに適用可能であることは言うまでもない。
【0177】
<応用例3:リストバンド型電子機器>
ウェアラブル端末の一例として、リストバンド型電子機器がある。その中でも、リストバンド型活動量計は、スマートバンドとも呼ばれ、腕に巻き付けておくのみで、歩数、移動距離、消費カロリー、睡眠量、心拍数などの人の活動に関するデータを取得することができるものである。さらに、取得されたデータをスマートフォンで管理することもできる。さらに、メールの送受信機能を備えることもでき、例えば、メールの着信をLED(Light Emitting Diode)ランプ及び/又はバイブレーションでユーザに知らせる通知機能を有するものが使用されている。
【0178】
図14及び図15は、例えば脈拍を計測するリストバンド型活動量計の一例を示す。図14は、リストバンド型活動量計1501の外観の構成例を示している。図15は、リストバンド型活動量計1501の本体部1502の構成例を示している。
【0179】
リストバンド型活動量計1501は、光学方式により被験者の例えば脈拍を計測するリストバンド型の計測装置である。図14に示されるように、リストバンド型活動量計1501は、本体部1502とバンド1503により構成され、腕時計のようにバンド1503が被験者の腕(手首)1504に装着される。そして、本体部1502が、所定の波長の計測光を被験者の腕1504の脈を含む部分に照射し、戻ってきた光の強度に基づいて、被験者の脈拍の計測を行う。
【0180】
本体部1502は、基板1521、LED1522、受光IC1523、遮光体1524、操作部1525、演算処理部1526、表示部1527、及び無線装置1528を含むように構成される。LED1522、受光IC1523、及び、遮光体1524は、基板1521上に設けられている。LED1522は、受光IC1523の制御の下に、所定の波長の計測光を被験者の腕1504の脈を含む部分に照射する。
【0181】
受光IC1523は、計測光が腕1504に照射された後に戻ってきた光を受光する。受光IC1523は、戻ってきた光の強度を示すデジタルの計測信号を生成し、生成した計測信号を演算処理部1526に供給する。
【0182】
遮光体1524は、基板1521上においてLED1522と受光IC1523の間に設けられている。遮光体1524は、LED1522からの計測光が、受光IC1523に直接入射されることを防止する。
【0183】
操作部1525は、例えば、ボタン、スイッチ等の各種の操作部材により構成され、本体部1502の表面等に設けられる。操作部1525は、リストバンド型活動量計1501の操作に用いられ、操作内容を示す信号を演算処理部1526に供給する。
【0184】
演算処理部1526は、受光IC1523から供給される計測信号に基づいて、被験者の脈拍を計測するための演算処理を行う。演算処理部1526は、脈拍の計測結果を表示部1527及び無線装置1528に供給する。
【0185】
表示部1527は、例えば、LCD(Liquid Crystal Display)等の表示装置により構成され、本体部1502の表面に設けられる。表示部1527は、被験者の脈拍の計測結果等を表示する。
【0186】
無線装置1528は、所定の方式の無線通信により、被験者の脈拍の計測結果を外部の装置に送信する。例えば、図15に示されるように、無線装置1528は、被験者の脈拍の計測結果をスマートフォン1505に送信し、スマートフォン1505の画面1506に計測結果を表示させる。さらに、計測結果のデータがスマートフォン1505によって管理され、計測結果をスマートフォン1505によって閲覧したり、ネットワーク上のサーバに保存することが可能とされている。なお、無線装置1528の通信方式には、任意の方式を採用することができる。なお、受光IC1523は、被験者の腕1504以外の部位(例えば、指、耳たぶ等)において脈拍の計測を行う場合にも用いることができる。
【0187】
上述したリストバンド型活動量計1501は、受光IC1523における信号処理によって、体動の影響を除去して、正確に被験者の脈波及び脈拍を計測することができる。例えば、被験者がランニング等の激しい運動を行っても、正確に被験者の脈波及び脈拍を計測することができる。また、例えば、被験者がリストバンド型活動量計1501を長時間装着して計測を行う場合にも、被験者の体動の影響を除去して、正確に脈波及び脈拍を計測し続けることができる。
【0188】
また、演算量を削減することにより、リストバンド型活動量計1501の消費電力を下げることができる。その結果、例えば、充電や電池の交換を行わずに、リストバンド型活動量計1501を被験者に長時間装着して、計測を行うことが可能になる。
【0189】
なお、電源として例えば薄型の電池がバンド1503内に収納されている。リストバンド型活動量計1501は、本体の電子回路と、電池パックを備える。例えばユーザにより電池パックが着脱自在な構成を有している。電子回路は、上述した本体部1502に含まれる回路である。電源として、リチウムイオン二次電池システム又は充電ユニットを使用する場合に本技術を適用することができる。
【0190】
図16にリストバンド型電子機器1601(以下、単に「電子機器1601」と称する。)の外観の構成例を示す。
【0191】
電子機器1601は、例えば、人体に着脱自在とされる時計型のいわゆるウェアラブル機器である。電子機器1601は、例えば、腕に装着されるバンド部1611と、数字や文字、図柄等を表示する表示装置1612と、操作ボタン1613とを備えている。バンド部1611には、複数の孔部1611aと、内周面(電子機器1601の装着時に腕に接触する側の面)側に形成される突起1611bとが形成されている。
【0192】
電子機器1601は、使用状態においては、図16に示すようにバンド部1611が略円形となるように折り曲げられ、孔部1611aに突起1611bが挿入されて腕に装着される。突起1611bを挿入する孔部1611aの位置を調整することにより、腕の太さに対応して径の大きさを調整することができる。電子機器1601は、使用されない状態では、孔部1611aから突起1611bが取り外され、バンド部1611が略平坦な状態で保管される。本技術の一実施形態に係るセンサは、例えば、バンド部1611の全体にわたって設けられている。
【0193】
<応用例4:スマートウオッチ>
スマートウオッチは、既存の腕時計のデザインと同様ないし類似の外観を有し、腕時計と同様にユーザの腕に装着して使用するものであり、ディスプレイに表示される情報で、電話や電子メールの着信などの各種メッセージをユーザに通知する機能を有する。さらに、電子マネー機能、活動量計等の機能を有するスマートウオッチも提案されている。スマートウオッチは、電子機器の本体部分の表面にディスプレイが組み込まれ、ディスプレイに様々な情報が表示される。また、スマートウオッチは、例えば、通信端末(スマートフォン等)とBluetooth(登録商標)などの近距離無線通信を行うことによって、通信端末等の機能やコンテンツ等と連携することも可能である。
【0194】
スマートウオッチの一つとして、バンド状に連結される複数のセグメントと、複数のセグメント内に配置される複数の電子部品と、複数のセグメント内の複数の電子部品を接続し少なくとも1つのセグメント内に蛇行形状で配置されるフレキシブル回路基板とを備えるものが提案されている。このような蛇行形状を有することで、フレキシブル回路基板は、バンドが屈曲しても、ストレスが加わらず、回路の切断が防止される。また、ウオッチ本体を構成する筐体ではなく、そのウオッチ本体に取り付けられるバンド側のセグメントに、電子回路部品を内蔵させることが可能になり、ウオッチ本体側には変更を加える必要がなくなり、従来の時計のデザインと同様のデザインのスマートウオッチを構成することが可能となる。また、本応用例のスマートウオッチは、電子メールや着信などの通知、ユーザの行動履歴などのログの記録、通話などを行うことができる。また、スマートウオッチは、非接触式ICカードとしての機能を備え、非接触で決済や認証等を行うことができる。
【0195】
本応用例のスマートウオッチは、金属製のバンド内に、通信処理や通知処理を行う回路部品を内蔵している。金属製のバンドを薄型化しながら、電子機器として機能するようにするために、バンドが複数のセグメントを連結した構成とされ、各セグメントに回路基板、振動モータ、電池、加速度センサが収納される。各セグメントの回路基板、振動モータ、電池、加速度センサなどの部品は、フレキシブルプリント回路基板(FPC)で接続されている。
【0196】
図17にスマートウオッチの全体構成(分解斜視図)を示す。バンド型電子機器2000は、時計本体3000に取り付けられる金属製のバンドであり、ユーザの腕に装着される。時計本体3000は、時刻を表示する文字盤3100を備える。時計本体3000は、文字盤3100の代わりに、液晶ディスプレイなどで電子的に時刻を表示してもよい。
【0197】
バンド型電子機器2000は、複数のセグメント2110〜2230を連結した構成である。時計本体3000の一方のバンド取付孔にセグメント2110が取り付けられ、時計本体3000の他方のバンド取付孔にセグメント2230が取り付けられる。本例では、それぞれのセグメント2110〜2230は金属で構成される。
【0198】
(セグメントの内部の概要)
図18は、バンド型電子機器2000の内部構成の一部を示す。例えば3個のセグメント2170、2180、2190、2200、2210の内部を示す。バンド型電子機器2000では、連続した5個のセグメント2170〜2210の内部にフレキシブル回路基板2400が配置される。セグメント2170内には、種々の電子部品が配置され、セグメント2190、2210には、本技術に係るリチウムイオン二次電池システム又は充電ユニットであるバッテリー2411、2421が配置され、これらの部品がフレキシブル回路基板2400で電気的に接続される。セグメント2170とセグメント2190との間のセグメント2180は、比較的小さなサイズであり、蛇行状態のフレキシブル回路基板2400が配置される。セグメント2180の内部では、防水部材に挟まれた状態でフレキシブル回路基板2400が配置される。なお、セグメント2170〜2210の内部は、防水構造とされている。
【0199】
(スマートウオッチの回路構成)
図19は、バンド型電子機器2000の回路構成を示すブロック図である。バンド型電子機器2000の内部の回路は、時計本体3000とは独立した構成である。時計本体3000は、文字盤3100に配置された針を回転させるムーブメント部3200を備える。ムーブメント部3200には、バッテリー3300が接続されている。これらのムーブメント部3200やバッテリー3300は、時計本体3000の筐体内に内蔵されている。
【0200】
時計本体3000に接続されたバンド型電子機器2000は、3つのセグメント2170、2190、2210に、電子部品が配置される。セグメント2170には、データ処理部4101と無線通信部4102とNFC通信部4104とGPS部4106とが配置される。無線通信部4102、NFC通信部4104、GPS部4106には、それぞれアンテナ4103、4105、4107が接続されている。それぞれのアンテナ4103、4105、4107は、セグメント2170の後述するスリット2173の近傍に配置される。
【0201】
無線通信部4102は、例えばBluetooth(登録商標)の規格で他の端末と近距離無線通信を行う。NFC通信部4104は、NFCの規格で、近接したリーダー/ライタと無線通信を行う。GPS部4106は、GPS(Global Positioning System)と称されるシステムの衛星からの電波を受信して、現在位置の測位を行う測位部である。これらの無線通信部4102、NFC通信部4104、GPS部4106で得たデータは、データ処理部4101に供給される。
【0202】
また、セグメント2170には、ディスプレイ4108とバイブレータ4109とモーションセンサ4110と音声処理部4111とが配置されている。ディスプレイ4108とバイブレータ4109は、バンド型電子機器2000の装着者に通知する通知部として機能するものである。ディスプレイ4108は、複数個の発光ダイオードで構成され、発光ダイオードの点灯や点滅でユーザに通知を行う。複数個の発光ダイオードは、例えばセグメント2170の後述するスリット2173の内部に配置され、電話の着信や電子メールの受信などが点灯又は点滅で通知される。ディスプレイ4108としては、文字や数字などを表示するタイプのものが使用されてもよい。バイブレータ4109は、セグメント2170を振動させる部材である。バンド型電子機器2000は、バイブレータ4109によるセグメント2170の振動で、電話の着信や電子メールの受信などを通知する。
【0203】
モーションセンサ4110は、バンド型電子機器2000を装着したユーザの動きを検出する。モーションセンサ4110としては、加速度センサ、ジャイロセンサ、電子コンパス、気圧センサなどが使用される。また、セグメント2170は、モーションセンサ4110以外のセンサを内蔵してもよい。例えば、バンド型電子機器2000を装着したユーザの脈拍などを検出するバイオセンサが内蔵されてもよい。音声処理部4111には、マイクロホン4112とスピーカ4113とが接続され、音声処理部4111が、無線通信部4102での無線通信で接続された相手と通話の処理を行う。また、音声処理部4111は、音声入力操作のための処理を行うこともできる。
【0204】
そして、セグメント2190にはバッテリー2411が内蔵され、セグメント2210にはバッテリー2421が内蔵される。バッテリー2411、2421は、本技術に係るリチウムイオン二次電池システム又は充電ユニットによって構成することができ、セグメント2170内の回路に駆動用の電源を供給する。セグメント2170内の回路とバッテリー2411、2421は、フレキシブル回路基板2400(図18)により接続されている。なお、図19には示さないが、セグメント2170は、バッテリー2411、2421を充電するための端子を備える。また、セグメント2190、2210には、バッテリー2411、2421以外の電子部品が配置されてもよい。例えば、セグメント2190、2210は、バッテリー2411、2421の充放電を制御する回路を備えるようにしてもよい。
【0205】
<応用例5:眼鏡型端末>
以下に説明するメガネ型端末は、目の前の風景にテキスト、シンボル、画像等の情報を重畳して表示することができるものである。すなわち、透過式メガネ型端末専用の軽量且つ薄型の画像表示装置ディスプレイモジュールを搭載している。代表的なものとして、頭部装着型ディスプレイ(ヘッドマウントディスプレイ(HMD))がある。
【0206】
この画像表示装置は、光学エンジンとホログラム導光板からなる。光学エンジンは、マイクロディスプレイレンズを使用して画像、テキスト等の映像光を出射する。この映像光がホログラム導光板に入射される。ホログラム導光板は、透明板の両端部にホログラム光学素子が組み込まれたもので、光学エンジンからの映像光を厚さ1mmのような非常に薄い透明板の中を伝搬させて観察者の目に届ける。このような構成によって、透過率が例えば85%という厚さ3mm(導光板前後の保護プレートを含む)レンズを実現している。かかるメガネ型端末によって、スポーツ観戦中にプレーヤ、チームの成績等をリアルタイムで見ることができたり、旅先での観光ガイドを表示したりできる。
【0207】
メガネ型端末の具体例は、図20に示すように、画像表示部が眼鏡型の構成とされている。すなわち、通常の眼鏡と同様に、眼前に右画像表示部5001及び左画像表示部5002を保持するためのフレーム5003を有する。フレーム5003は、観察者の正面に配置されるフロント部5004と、フロント部5004の両端に蝶番を介して回動自在に取り付けられた2つのテンプル部5005、5006から成る。フレーム5003は、金属や合金、プラスチック、これらの組合せといった、通常の眼鏡を構成する材料と同じ材料から作製されている。なお、ヘッドホン部を設けるようにしてもよい。
【0208】
右画像表示部5001および左画像表示部5002は、利用者の右の眼前と、左の眼前とにそれぞれ位置するように配置されている。テンプル部5005、5006が利用者の頭部に画像表示部5001および5002を保持する。フロント部5004とテンプル部5005の接続箇所において、テンプル部5005の内側に右表示駆動部5007が配置されている。フロント部5004とテンプル部5006の接続箇所において、テンプル部5006の内側に左表示駆動部5008が配置されている。
【0209】
図20では省略されているが、フレーム5003には、本技術に係るリチウムイオン二次電池システム又は充電ユニット、加速度センサ、ジャイロ、電子コンパス、マイクロホン/スピーカ等が搭載されている。さらに、撮像装置が取り付けられ、静止画/動画の撮影が可能とされている。さらに、メガネ部と例えば無線又は有線のインターフェースでもって接続されたコントローラを備えている。コントローラには、タッチセンサ、各種ボタン、スピーカ、マイクロホン等が設けられている。さらに、スマートフォンとの連携機能を有している。例えばスマートフォンのGPS機能を活用してユーザの状況に応じた情報を提供することが可能とされている。
【0210】
本技術は、上記各実施形態、実施例、及び各応用例に限定されるものではなく、本技術の要旨を逸脱しない範囲内において変更することが可能である。
【0211】
なお、本技術の効果は、電池に用いられる電極反応物質であれば電極反応物質の種類に依存せずに得られるはずであるため、その電極反応物質の種類を変更しても同様の効果を得ることができる。また、化合物等の化学式は代表的なものであって、同じ化合物の一般名称であれば、記載された価数等に限定されない。
【0212】
また、本技術は、以下のような構成を取ることもできる。
[1]
少なくとも、正極と負極とを含むリチウムイオン二次電池と、リチウム析出センサとを備え、
該リチウム析出センサが吸熱検知部を備え、
該吸熱検知部が定電流充電域で吸熱を検知する、リチウムイオン二次電池システム。
[2]
センサ測定部と、リチウム析出判断演算部とを更に備える、[1]に記載のリチウムイオン二次電池システム。
[3]
前記吸熱検知部が前記定電流充電域で到達電圧まで継続的に吸熱を検知して、前記リチウム析出センサがリチウム析出を検出する、[1]又は[2]に記載のリチウムイオン二次電池システム。
[4]
前記負極が負極活物質を含み、
該負極活物質の構造変化に伴う吸熱反応がない定電流充電域で、前記吸熱検知部が吸熱を検知する、[1]から[3]のいずれか1つに記載のリチウムイオン二次電池システム。
[5]
前記負極活物質が炭素系材料であり、
前記吸熱検知部が、前記負極の充電容量が180mAh/gを超えた定電流充電域で吸熱を検知する、[4]に記載のリチウムイオン二次電池システム。
[6]
前記正極が正極活物質を含み、
該正極活物質の構造変化に伴う吸熱反応がない定電流充電域で、前記吸熱検知部が吸熱を検知する、[1]から[5]のいずれか1つに記載のリチウムイオン二次電池システム。
[7]
前記正極活物質が、コバルト酸リチウム系材料(LCO系材料)又はニッケル系材料(NCA系材料)であり、
前記吸熱検知部が、前記正極の充電容量が60mAh/gを超えた定電流充電域で吸熱を検知する、[6]に記載のリチウムイオン二次電池システム。
[8]
前記正極活物質が、ニッケル−コバルト−マンガンの三元系材料(NCM系材料)であり、
前記吸熱検知部が、前記正極の充電容量が100mAh/gを超えた定電流充電域で吸熱を検知する、[6]に記載のリチウムイオン二次電池システム。
[9]
前記正極活物質が、マンガン酸リチウム系材料(LMO系材料)であり、
前記吸熱検知部が、前記正極の充電容量が70mAh/gを超えた定電流充電域で吸熱を検知する、[6]に記載のリチウムイオン二次電池システム。
[10]
前記吸熱検知部が、充電時の利用電圧範囲の80%以上の電圧域において吸熱を検知する、[1]から[9]のいずれか1つに記載のリチウムイオン二次電池システム。
[11]
前記吸熱検知部が温度計又は熱流センサを備える、[1]から[10]のいずれか1つに記載のリチウムイオン二次電池システム。
[12]
[1]から[11]のいずれか1つに記載のリチウムイオン二次電池システムと、電流測定部と、電圧測定部と、充電制御部とを備える、充電ユニット。
[13]
リチウム析出センサが備える吸熱検出部の吸熱検知結果に基づき、定電流充電域の充電電流を制御する、リチウムイオン二次電池の制御方法。
[14]
前記吸熱検出部の前記吸熱検知結果が、前記定電流充電域の到達電圧まで、吸熱が継続しているか否かを示す、[13]に記載のリチウムイオン二次電池の制御方法。
[15]
リチウム析出センサが備える吸熱検出部の吸熱検知結果に基づき、定電流充電域の到達電圧を制御する、リチウムイオン二次電池の制御方法。
[16]
前記吸熱検出部の前記吸熱検知結果が、前記定電流充電域の前記到達電圧まで、吸熱が継続しているか否かを示す、[15]に記載のリチウムイオン二次電池の制御方法。
[17]
[1]から[11]のいずれか1つに記載のリチウムイオン二次電池システムを備える、電池パック。
[18]
[1]から[11]のいずれか1つに記載のリチウムイオン二次電池システムと、
該リチウムイオン二次電池システムの使用状態を制御する制御部と、
該制御部の指示に応じて該リチウムイオン二次電池システムの使用状態を切り換えるスイッチ部と、を備える、電池パック。
[19]
[1]から[11]のいずれか1つに記載のリチウムイオン二次電池システムと、
該リチウムイオン二次電池システムから電力の供給を受けて車両の駆動力に変換する駆動力変換装置と、
該駆動力に応じて駆動する駆動部と
車両制御装置と、を備える、車両。
[20]
[1]から[11]のいずれか1つに記載のリチウムイオン二次電池システムを有する蓄電装置と、
該リチウムイオン二次電池システムから電力が供給される電力消費装置と、
該リチウムイオン二次電池システムからの該電力消費装置に対する電力供給を制御する制御装置と、
該リチウムイオン二次電池システムを充電する発電装置と、を備える、蓄電システム。
[21]
[1]から[11]のいずれか1つに記載のリチウムイオン二次電池システムと、
該リチウムイオン二次電池システムから電力が供給される可動部と、を備える、電動工具。
[22]
[1]から[11]のいずれか1つに記載のリチウムイオン二次電池システムを備え、
該リチウムイオン二次電池システムから電力の供給を受ける電子機器。
[23]
[12]に記載の充電ユニットを備える、電池パック。
[24]
[12]に記載の充電ユニットと、
該充電ユニットの使用状態を制御する制御部と、
該制御部の指示に応じて該充電ユニットの使用状態を切り換えるスイッチ部と、を備える、電池パック。
[25]
[12]に記載の充電ユニットと、
該充電ユニットから電力の供給を受けて車両の駆動力に変換する駆動力変換装置と、
該駆動力に応じて駆動する駆動部と
車両制御装置と、を備える、車両。
[26]
[12]に記載の充電ユニットを有する蓄電装置と、
該充電ユニットから電力が供給される電力消費装置と、
該充電ユニットからの該電力消費装置に対する電力供給を制御する制御装置と、
該充電ユニットを充電する発電装置と、を備える、蓄電システム。
[27]
[12]に記載の充電ユニットと、
該充電ユニットから電力が供給される可動部と、を備える、電動工具。
[28]
[12]に記載の充電ユニットを備え、
該充電ユニットから電力の供給を受ける電子機器。
【符号の説明】
【0213】
1・・・リチウム析出センサ
2・・・リチウムイオン二次電池
3・・・センサ測定部
4・・・リチウム(Li)析出判断演算部
5・・・電流測定部
6・・・電圧測定部
7・・・充電制御部
10・・・リチウムイオン二次電池システム
100・・・充電ユニット
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20