(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記制御部は、前記新たな電波受信強度情報を送信しなかった場合、前記第1の所定値を、前記第1の所定値より小さい第2の所定値に更新し、前記新たな電波受信強度情報を送信した場合、前記第1の所定値を、前記第2の受信強度に応じた値に更新する、
請求項1または2に記載の無線通信装置。
1つの移動体から発せられた測定用信号の受信強度を、互いに異なる既知の位置に設置された複数の無線通信装置で測定し、当該測定された受信強度を含む電波受信強度情報を送信する位置検知データ通信方法であって、
前記複数の無線通信装置の各々は、
1つの移動体から逐次に発せられた複数の測定用信号の各々の受信強度を測定し、
当該測定された受信強度のうちの少なくとも2つの受信強度に基づき、前記受信強度が増加しているか、減少しているか、所定の増減にとどまっているかを判断することで、それぞれ、前記移動体が前記無線通信装置に対して接近しているか、遠ざかっているか、滞留しているかを判断し、
接近していると判断した場合には、第1頻度で前記電波受信強度情報を送信し、
遠ざかっていると判断した場合には、第1頻度よりも低い第2頻度で前記電波受信強度情報を送信し、
滞留していると判断した場合には、第1頻度よりも低く第2頻度よりも高い第3頻度で前記電波受信強度情報を送信する、
位置検知データ通信方法。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明に係る実施の形態について、図面を用いて詳細に説明する。なお、以下で説明する実施の形態は、いずれも包括的又は具体的な例を示すものである。以下の実施の形態で示される数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置および接続形態、ステップ、ステップの順序などは、一例であり、本発明を限定する主旨ではない。以下の実施の形態における構成要素のうち、独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素として説明される。
【0019】
(実施の形態1)
実施の形態1に係る位置検知システムは、互いに異なる既知の位置に設置された複数の無線通信装置で移動体から発せられる測定用信号(以下、ビーコン信号と言う)の信号強度を測定し、測定された信号強度に基づいて当該移動体の位置を検知するシステムである。
【0020】
図1は、位置検知システムの設置例を示す概念図である。
図1の例では、施設内を移動する移動体10a〜10cに、ビーコン信号を送信する送信器が取り付けられる。また、施設内に、無線通信装置20a〜20gが設置される。無線通信装置20a〜20gは、移動体10a〜10cから発せられたビーコン信号の信号強度を測定する受信部を有している。信号強度は、典型的には、受信信号強度指標RSSIで表される。
【0021】
図2は、位置検知システム100に設けられる通信ネットワークの構成例を示す模式図である。
図2に示されるように、無線通信装置20a〜20gは、無線メッシュネットワーク40を構成しており、無線通信装置20gは、インターネット上のサーバ30と接続するゲートウェイ装置(ルータ)を有する。ゲートウェイ装置は、無線通信装置20a〜20gの何れが有していてもよく、また無線通信装置20a〜20gとは別体に設けられてもよい。無線通信装置20a〜20g及びサーバ30は、無線メッシュネットワーク40を介して、互いに通信可能に接続される。
【0022】
図3は、RSSIと距離との対応関係の一例を示すグラフである。
図3では、横軸を無線通信装置から移動体までの距離とし、縦軸を無線通信装置で測定されるビーコン信号のRSSIとして、RSSIの事前の実測値をドットで表し、RSSIと距離との対応関係を回帰曲線で表している。回帰曲線は、RSSIが従う物理式を、実測値の最大値に当てはめて決定されている。実測値の中には、例えばマルチパスなどの影響のために、著しく小さい実測値がある。そのため、物理式を実測値の最大値に当てはめることで、運用環境での本来のRSSIと距離との対応関係が得られる。
図3の例によれば、例えば、RSSIが−60dBmと測定されたとき、移動体までの距離は4mと算出される。
【0023】
移動体10a〜10cが発したビーコン信号の複数の無線通信装置20a〜20gにおけるRSSIを、無線メッシュネットワーク40を介してサーバ30で収集することにより、サーバ30において、移動体10a〜10cの位置を推定することができる。
【0024】
位置検知システム100での移動体の位置推定は、例えば、本発明者らが考案し、関連特許出願である特願2016−231688号(本件出願時において未公開)にて提案した位置推定方法に基づいて行ってもよい。
【0025】
当該位置推定方法は、無線通信装置20a〜20gの何れか1つにおいて、移動体10a〜10cのうちの1つの移動体が発したビーコン信号のRSSIが取得されるたびに、サーバ30にて当該移動体の推定位置を逐次に更新していくものである。
【0026】
図4は、移動体の推定位置の1回の更新処理の一例を示す図である。
図4の更新処理は、当該移動体が発したビーコン信号の1つの無線通信装置で測定されたRSSIを用いて行われる。
図4に示されるように、RSSIに対応する距離をdと表記するとき、移動体は、無線通信装置を中心とし半径が距離dの円(いわゆる、存在推定円)上にあるものと推定される。そこで、移動体の推定位置を、現在の推定位置P0から、無線通信装置へ向かって存在推定円上の位置P1へ更新する。このとき、現在の推定位置P0がすでに存在推定円内にある場合、つまり、無線通信装置から移動体の現在の推定位置P0までの距離Dが距離dよりも小さい場合は、移動体の推定位置を無線通信装置から遠ざけることはせず、現在の推定位置P0に維持する。
【0027】
図5は、無線通信装置a、無線通信装置b、無線通信装置cで測定されたRSSIを逐次に用いて行われる更新処理の一例を示している。無線通信装置a、無線通信装置b、無線通信装置cは、限定はされないが、例えば、
図1の無線通信装置20a、無線通信装置20b、無線通信装置20cにそれぞれ対応してもよい。
【0028】
図5では、互いに異なる推定位置P0、Q0、R0の各々から開始して、
図4の更新処理を逐次行った場合の推定位置の移動例を一度に示している。
図5に示されるように、移動体の推定位置は、初期位置に依らず、無線通信装置ごとに規定される存在推定円の重複領域(斜線部分)にある点P3、Q3、R3に移動する。
【0029】
前述した処理は、複数の無線通信装置のうちの1つの無線通信装置で測定された受信強度に基づき、移動体の推定位置を求める計算の一例であり、サーバ30内で実行される。
【0030】
上述した位置推定方法によれば、移動体の推定位置は、現在の推定位置がすでに存在推定円の内にある場合には更新されない。言い換えると、移動体の推定位置は、移動体が無線通信装置に近づいていく場合には更新されるが、無線通信装置から遠ざかっていく場合には更新されない。そのため、前回と比べて増加したRSSIは、移動体の位置推定に用いられるが、前回と比べて減少したRSSIは、移動体の推定位置の更新には用いられないことになる。
【0031】
このように、移動体の位置検知において、移動体が無線通信装置に近づいていく状況でのRSSIが、移動体が無線通信装置から遠ざかっていく状況でのRSSIと比べて、より重要な情報として利用されることがある。
【0032】
そこで、本発明者らは、RSSIを含む電波受信強度情報の送信または非送信を、移動体の位置検知における重要性を考慮して制御することにより、無線ネットワーク全体で伝送される電波受信強度情報の総量を削減し、ネットワーク資源を節約する技術を提案する。当該技術は、次のように説明される。
【0033】
図6は、移動体10の無線通信装置20に対する位置移動の一例を示す図である。
図6に示されるように、移動体10は、無線通信装置20に接近し、無線通信装置20の傍で滞留し、無線通信装置20から離反する。ここで、接近し、滞留し、離反するとは、近づいていくこと、略同じ距離に留まること、遠ざかっていくことを、それぞれ意味する。無線通信装置20は、移動体10から発せられるビーコン信号のRSSIを含む電波受信強度情報を、サーバ30へ送信する。
【0034】
図7は、電波受信強度情報の送信頻度の一例を示す図である。移動体10は、ビーコン信号を周期的に送信しながら、無線通信装置20に接近し、滞留し、離反する。無線通信装置20では、一例として
図7に示されるような複数のRSSIが逐次に測定される。無線通信装置20は、移動体10が無線通信装置20に対して接近中、滞留中、および離反中の場合に測定されたRSSIを含む電波受信強度情報を、それぞれ高頻度、中頻度、および低頻度でサーバ30へ送信する。
【0035】
無線通信装置20は、移動体10が無線通信装置20に対して接近中、滞留中、および離反中のいずれであるかを、過去または新たに測定された複数のRSSIのうちの少なくとも2つのRSSIに基づいて判断してもよい。
【0036】
ここで高頻度は、第1頻度の一例であり、低頻度は、第1頻度よりも低い第2頻度の一例であり、中頻度は、第1頻度よりも低く第2頻度よりも高い第3頻度の一例である。
【0037】
以下では、このような特徴を備えた無線通信装置20について、具体的な構成例を挙げて説明する。
【0038】
図8は、無線通信装置20の機能的な構成の一例を示すブロック図である。無線通信装置20の構成は、
図1の無線通信装置20a〜20gに適用される。
図8に示されるように、無線通信装置20は、受信部21、送信部22、記憶部23、および制御部24を有している。
【0039】
受信部21は、移動体10から周期的に送信されるビーコン信号を受信し、受信のつど、ビーコン信号のRSSIを測定する。
【0040】
送信部22は、受信部21で受信されたビーコン信号のRSSIの測定値を含む電波受信強度情報を送信する。
【0041】
受信部21および送信部22は、一例として、有線LAN(Local Area Network)に接続するネットワークアダプタであってもよい。また、Zigbee(登録商標)やBluetooth(登録商標) low energyといった、省電力性に優れた近距離無線通信規格に従って無線メッシュネットワーク40を構成する無線装置であってもよい。
【0042】
記憶部23は、過去に測定されたビーコン信号のRSSIに関する第1の受信強度を記憶する。記憶される受信強度は、RSSIそのものではなく、関数で処理されたもの、他の情報が付加されたものであってもよい。
【0043】
制御部24は、記憶部23に記憶されている第1の受信強度に基づき、新たに受信されたビーコン信号について測定されたRSSIである第2の受信強度を含む新たな電波受信強度情報を送信するかまたは非送信とするかを制御する。
【0044】
記憶部23および制御部24は、一例として、プロセッサ、メモリ、入出力ポートなどを有するワンチップマイコンで構成されてもよい。制御部24は、メモリに記録されているプログラムをプロセッサが実行することにより果たされるソフトウェア機能によって、無線通信装置20の動作を制御してもよい。
【0045】
図9は、ビーコン信号のパケットフォーマットの一例を示す図である。
図9の例では、ビーコン信号は、プリアンブルP、送信元ID、ブロードキャストフラグB、及びRSSI測定用データの4つのフィールドを含むブロードキャストパケットである。
【0046】
プリアンブルPは、パケットの開始端を示すビット列である。
【0047】
送信元IDは、ビーコン信号を送信した移動体10のIDを示す情報である。
【0048】
ブロードキャストフラグBは、パケットが特定の宛先IDを含まず、すべてのノードを宛先としていることを示す。
【0049】
RSSI測定用データは、RSSIの測定に用いられる任意のデータである。
【0050】
このように、ビーコン信号は、移動体を識別するための移動体IDを含んでいてもよい。
【0051】
移動体10は、ビーコン信号として、
図9に示される無線パケットを周期的に送信する。
【0052】
図10は、電波受信強度情報のパケットフォーマットの一例を示す図である。
図10の例では、電波受信強度情報は、プリアンブルP、送信元ID、宛先ID、及び測定結果の4つのフィールドを含むユニキャストパケットである。
【0053】
送信元IDは、ビーコン信号を受信してRSSIを測定した無線通信装置20のIDを示す情報である。
【0054】
宛先IDは、ゲートウェイ装置を有する無線通信装置20gのIDを示す情報である。
【0055】
測定結果は、ビーコン信号に含まれる移動体10のIDおよびRSSIの測定値を表すデータである。
【0056】
このように、電波受信強度情報は、ビーコン信号を送信した移動体を識別するための移動体IDを含んでいてもよい。
【0057】
電波受信強度情報は、無線通信装置20a〜20g間で中継され、無線通信装置20gからサーバ30へ送信される。
【0058】
図11は、しきい値情報の一例を示す図である。
図11のしきい値情報は、記憶部23に記録されてもよい。しきい値情報は、エントリごとに、移動体IDとしきい値とを対応付けて保持している。移動体IDは、ビーコン信号を送信した移動体10のIDを示す。しきい値は、電波受信強度情報の送信または非送信を制御するために、新たに受信されたビーコン信号のRSSIと比較される値であり、過去に測定されたビーコン信号のRSSIに関する第1の受信強度の一例である。
【0059】
図12は、無線通信装置20の動作の一例を示すフローチャートである。
図12は、1つの移動体10について電波受信強度情報の送信または非送信を制御する処理の一例である。
図12の処理は、異なる複数の移動体10の各々について並行して行われてもよい。
【0060】
無線通信装置20は、ビーコン信号が受信されると(S100でYES)、しきい値情報に、移動体10のIDとしきい値の初期値とを含むエントリを追加する(S101)。しきい値の初期値は、例えば、測定可能なRSSIの最小値よりも小さい値としてもよい。
【0061】
続いて、受信したビーコン信号のRSSIを測定する(S102)。
【0062】
無線通信装置20は、RSSIの測定値がしきい値よりも大きければ(S103でYES)、RSSIの測定値を含む電波受信強度情報をサーバ30へ送信し(S104)、送信されたRSSIの測定値に応じてしきい値を更新する(S105)。つまり、しきい値は、今回測定されたRSSI、過去の電波受信強度情報に含まれるRSSI、今回測定されたRSSIを含む電波受信強度情報を他の無線通信装置へ送信したこと、に基づいて、更新される。しきい値は、一例として、送信されたRSSIの測定値に6(dB)を加算した値に更新してもよい。
【0063】
無線通信装置20は、後続のビーコン信号が受信されるまで(S106でNO)、一定時間ごとにしきい値を減らしながら、待機する。しきい値は、一例として、ビーコン信号の送信周期ごとに1(dB)デクリメントしてもよい。
【0064】
後続のビーコン信号が受信されると(S106でYES)、ステップS102へ進み、処理を繰り返す。
【0065】
図13および
図14は、
図12のフローチャートに従って制御される電波受信強度情報の送信および非送信の一例を示す図である。
【0066】
図13および
図14に示されるように、
図11のしきい値を、電波受信強度情報を送信したときに、例えば6(dB)上昇させ、その後ビーコン信号の送信周期ごとに、例えば1(dB)ずつ減じていく。新たに測定されたRSSIが記憶されたしきい値より大きい場合、新たに測定されたRSSIを含む電波受信強度情報が送信される。このようにすることで、RSSIが増加しているときは高い頻度で、RSSIの変化がわずかな増減にとどまるとき、または減少しているときは低い頻度で、電波受信強度情報が送信される。これにより、無線メッシュネットワーク40全体で伝送される電波受信強度情報の総量がRSSIの増減に応じて柔軟に削減される。
【0067】
なお、このようなRSSIの増減に応じて電波受信強度情報を送信または非送信とする制御は、電波受信強度情報の送信元となる無線通信装置20において行うことが、ネットワーク資源の効果的な節約に有効であるが、その例には限られない。
【0068】
例えば、電波受信強度情報を転送する無線通信装置20が、過去に転送のために受信した電波受信強度情報、および電波受信強度情報を転送したことを示す情報に基づき、今回受信した電波受信強度情報を転送するかまたは非転送としてもよい。すなわち、過去に受信された電波受信強度情報に含まれる第1の受信強度を記憶し、第1の受信強度に基づき、新たに受信された電波受信強度情報で示される第2の受信強度を含む新たな電波受信強度情報を転送するかまたは非転送とするかを制御してもよい。
【0069】
このように、無線メッシュネットワーク40において中継ノードとして機能する無線通信装置20が、電波受信強度情報を転送せずに破棄してもよい。このような構成によっても、ネットワーク資源を節約することができる。なお、中継ノードとして機能する無線通信装置20は、ビーコン信号の信号強度を測定する機能を備えていてもよい。
【0070】
(実施の形態2)
実施の形態2に係る無線通信装置は、過去に測定したビーコン信号のRSSI、および電波受信強度情報を送信したことを示す情報に基づき、今回測定したビーコン信号のRSSIを含む電波受信強度情報の送信または非送信を制御する。
【0071】
実施の形態2に係る無線通信装置は、実施の形態1に係る無線通信装置20と比べて、機能的な構成(
図8を参照)において同一であり、電波受信強度情報の送信または非送信を制御するための手順およびデータの細部が相違する。
【0072】
以下では、実施の形態2に係る無線通信装置の細部に関して、実施の形態1に係る無線通信装置と相違する事項を主に説明する。
【0073】
図15は、送信履歴情報の一例を示す図である。
図15の送信履歴情報は、記憶部23に記録されてもよい。送信履歴情報は、エントリごとに、移動体IDと、送信済RSSIと、非送信回数とを対応付けて保持している。移動体IDは、ビーコン信号を送信した移動体10のIDを示す。送信済RSSIは、電波受信強度情報に含めて最後にサーバ30へ送信したRSSIである。非送信回数は、電波受信強度情報を非送信とした回数を示す。
【0074】
図16は、非送信上限情報の一例を示す図である。
図16の非送信上限情報は、記憶部23に記録されてもよい。非送信上限情報は、エントリごとに、RSSI差分値範囲と、非送信上限数とを対応付けて保持している。RSSI差分値範囲は、送信済RSSIと今回測定されたRSSIとの差分値の分類条件を示す。非送信上限数は、分類された差分値に対応して電波受信強度情報を連続して非送信としてよい上限回数を示す。
【0075】
図17は、無線通信装置20の実施の形態2に係るフローチャートである。1つの移動体10について受信信号強度情報の送信または非送信を制御する処理の一例を示す。
図17の処理は、異なる複数の移動体10の各々について並行して行われてもよい。
【0076】
無線通信装置20は、ビーコン信号が受信されると(S200でYES)、送信履歴情報に、移動体10のIDと送信済RSSIの初期値と非送信回数の初期値とを含むエントリを追加する(S201)。送信済RSSIの初期値は、例えば、RSSIの測定値の最小値よりも小さい値としてもよく、また、非送信回数の初期値は、例えば、0としてもよい。
【0077】
受信したビーコン信号のRSSIを測定し(S202)、RSSIの測定値の送信済RSSIからの差分値を算出する(S203)。非送信上限情報から、算出された差分値が分類されるRSSI差分値範囲に対応する非送信上限数を参照する(S204)。
【0078】
非送信回数が非送信上限数に達しているかまたは上回っていれば(S205でYES)、RSSIの測定値を含む電波受信強度情報をサーバ30へ送信し(S206)、送信履歴情報の送信済RSSIを送信されたRSSIの測定値で更新し、非送信回数を初期化する(S207)。
【0079】
他方、非送信回数が非送信上限数に達していなければ(S205でNO)、非送信回数を1インクリメントする(S208)。
【0080】
その後、後続のビーコン信号が受信されるまで待ち合わせ(S209でNO)、後続のビーコン信号が受信されると(S209でYES)、ステップS202へ進み、処理を繰り返す。
【0081】
図18および
図19は、
図17のフローチャートに従って制御される電波受信強度情報の送信および非送信の一例を示す図である。
【0082】
図18および
図19に示されるように、電波受信強度情報に含めて最後に送信したRSSIからの差分値が大きいほど少ない非送信上限数を設定し、電波受信強度情報の非送信回数が非送信上限数に到達したときに、電波受信強度情報を送信している。このようにすることで、RSSIが増加しているときは高い頻度で、RSSIの変化がわずかな増減にとどまるとき、または減少しているときは低い頻度で、電波受信強度情報が送信される。これにより、無線メッシュネットワーク40全体で伝送される電波受信強度情報の総量がRSSIの増減に応じて柔軟に削減される。
【0083】
以上、本発明の実施の形態に係る無線通信装置、位置検知システム、無線通信方法、および位置検知データ通信方法について説明したが、本発明は、個々の実施の形態には限定されない。本発明の趣旨を逸脱しない限り、当業者が思いつく各種変形を本実施の形態に施したものや、異なる実施の形態における構成要素を組み合わせて構築される形態も、本発明の一つ又は複数の態様の範囲内に含まれてもよい。
【0084】
例えば、より単純に、無線通信装置20で受信したビーコン信号のRSSIの測定値が、前回受信したビーコン信号のRSSIの測定値よりも増加していたら電波受信強度情報を送信し、増加していなかったら電波受信強度情報を非送信としてもよい。
【0085】
また、RSSIの測定値が増加しているか否かは、2つのRSSIの比較だけで判断する他にも、RSSIの複数の測定値の微分値に応じて判断してもよい。
【0086】
(まとめ)
以上説明したように、本発明の一態様に係る無線通信装置は、他の1以上の無線通信装置とともに無線ネットワークを構成する無線通信装置であって、1つの移動体から測定用信号を受信し、受信された測定用信号の受信強度を測定する受信部と、受信強度を含む電波受信強度情報を他の無線通信装置へ送信する送信部と、過去に測定された測定用信号の受信強度を示す第1の受信強度を記憶する記憶部と、第1の受信強度に基づき、新たに受信された測定用信号の受信強度を示す第2の受信強度を含む新たな電波受信強度情報を送信するかまたは非送信とするかを制御する制御部と、を備える。
【0087】
この構成によれば、第2の受信強度を含む新たな電波受信強度情報を、過去に測定された測定用信号の受信強度を示す第1の受信強度に基づき、非送信とすることができる。つまり、移動体から測定用信号を最初に受信した無線通信装置が、電波受信強度情報を他の無線通信装置に対して非送信とすることができる。その結果、無線通信装置が送信する電波受信強度情報の総量が削減されるので、ネットワーク資源を従来よりも確実に節約できる。
【0088】
また、本発明の一態様に係る無線通信装置は、他の2以上の無線通信装置とともに無線ネットワークを構成する無線通信装置であって、1つの移動体から発せられた測定用信号の他の無線通信装置での受信強度を含む電波受信強度情報を受信する受信部と、受信された電波受信強度情報をさらに他の無線通信装置へ送信する送信部と、過去に受信された電波受信強度情報に含まれる第1の受信強度を記憶する記憶部と、第1の受信強度に基づき、新たに受信された電波受信強度情報に含まれる第2の受信強度を含む新たな電波受信強度情報を送信するかまたは非送信とするかを制御する制御部と、を備える。
【0089】
この構成によれば、第2の受信強度を含む新たな電波受信強度情報を、過去に受信された電波受信強度情報に含まれる第1の受信強度に基づき、非送信とすることができる。つまり、電波受信強度情報を中継する無線通信装置が、電波受信強度情報を他の無線通信装置に対して非送信とすることができる。その結果、無線通信装置が送信する電波受信強度情報の総量が削減されるので、ネットワーク資源を従来よりも確実に節約できる。
【0090】
また、制御部は、第2の受信強度の第1の受信強度に対する差を求め、差が第1の所定値以上の場合、新たな電波受信強度情報を送信するよう制御し、差が第1の所定値未満の場合、新たな電波受信強度情報を送信しないよう制御してもよい。
【0091】
第2の受信強度の第1の受信強度に対する差が第1の所定値以上となる第1及び第2の受信強度は、一般に、移動体が無線通信装置に近づいていく状況で得られるものである。例えば、移動体の位置検知において、移動体が無線通信装置に近づいていく状況での電波受信強度情報は、移動体が無線通信装置から遠ざかっていく状況での電波受信強度情報と比べて、より重要な情報として利用されることがある。その点、この構成によれば、移動体の位置検知においてより重要な電波受信強度情報を送信し、重要ではない電波受信強度情報を非送信とすることができる。これにより、無線ネットワーク全体で伝送される電波受信強度情報の総量を、移動体の位置検知に適した基準で削減して、ネットワーク資源を節約できる。
【0092】
また、制御部は、新たな電波受信強度情報を送信しなかった場合、第1の所定値を、第1の所定値より小さい第2の所定値に更新し、新たな電波受信強度情報を送信した場合、第1の所定値を、第2の受信強度に応じた値に更新してもよい。
【0093】
この構成によれば、移動体が無線通信装置に近づいていく状況において、電波受信強度情報が比較的高い頻度で送信されるよう構成することができる。一方、移動体が無線通信装置に対して滞留するか遠ざかっていく状況において、電波受信強度情報が比較的低い頻度で送信されるよう構成することができる。このように、電波受信強度情報の送信および非送信に応じて更新されるしきい値を用いて、電波受信強度情報の送信頻度を制御できる。
【0094】
また、本発明の一態様に係る位置検知システムは、互いに異なる既知の位置に設置され、移動体から発せられた測定用信号の受信強度を測定する、複数の無線通信装置と、複数の無線通信装置のうちの1つの無線通信装置で測定された受信強度に基づき、移動体の推定位置を求める計算部と、を備える。複数の無線通信装置の各々には前述した無線通信装置が用いられる。
【0095】
この構成によれば、前述した無線通信装置の効果に基づき、ネットワーク資源を従来よりも確実に節約することができる位置検知システムが得られる。
【0096】
また、本発明の一態様に係る無線通信方法は、他の1以上の無線通信装置とともに無線ネットワークを構成する無線通信装置における無線通信方法であって、1つの移動体から測定用信号を受信し、受信された測定用信号の受信強度を測定し、受信強度を含む電波受信強度情報を他の無線通信装置へ送信し、過去に測定された測定用信号の受信強度を示す第1の受信強度を記憶し、第1の受信強度に基づき、新たに測定された測定用信号の受信強度を示す第2の受信強度を含む新たな電波受信強度情報を送信するかまたは非送信とするかを制御する。
【0097】
この方法によれば、第2の受信強度を含む新たな電波受信強度情報を、過去に測定された測定用信号の受信強度に関する第1の受信強度に基づき、非送信とすることができる。その結果、無線通信装置が送信する電波受信強度情報の総量が削減されるので、ネットワーク資源を従来よりも確実に節約できる。
【0098】
また、本発明の一態様に係る位置検知データ通信方法は、1つの移動体から発せられた測定用信号の受信強度を、互いに異なる既知の位置に設置された複数の無線通信装置で測定し、当該測定された受信強度を含む電波受信強度情報を送信する位置検知データ通信方法であって、複数の無線通信装置の各々は、1つの移動体から逐次に発せられた複数の測定用信号の各々の受信強度を測定し、当該測定された受信強度のうちの少なくとも2つの受信強度に基づき、移動体が無線通信装置に対して接近しているか、遠ざかっているか、滞留しているかを判断する。
【0099】
接近していると判断した場合には、第1頻度で電波受信強度情報を送信し、遠ざかっていると判断した場合には、第1頻度よりも低い第2頻度で電波受信強度情報を送信し、滞留していると判断した場合には、第1頻度よりも低く第2頻度よりも高い第3頻度で電波受信強度情報を送信する。
【0100】
前述したように、例えば、移動体の位置検知において、移動体が無線通信装置に近づいていく状況での電波受信強度情報は、移動体が無線通信装置から遠ざかっていく状況での電波受信強度情報と比べて、より重要な情報として利用されることがある。その点、この方法によれば、移動体が無線通信装置に近づいていく状況での電波受信強度情報の送信頻度を最も高くし、移動体が無線通信装置に対して滞留している状態での電波受信強度情報、移動体が無線通信装置から遠ざかっていく状況での電波受信強度情報の順に送信頻度を低下させることができる。これにより、無線ネットワーク全体で伝送される電波受信強度情報の総量を、移動体の位置検知に適した基準で削減することにより、ネットワーク資源を節約できる。