(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
電磁波加熱装置で加熱される第1領域及び第2領域を有する物品と共に前記電磁波加熱装置の内部に配置されて、前記物品へ照射される電磁波を制御する加熱用電磁波制御体であって、
前記電磁波加熱装置により放射される電磁波を受けて電磁波を再放射する複数の放射体で構成されるアンテナを備え、
前記複数の放射体は、前記再放射の電磁波の干渉によって、前記電磁波加熱装置の内部に、電磁波の振幅を強め合う領域と弱め合う領域とを形成することで、前記物品の前記第2領域に比べて前記第1領域の加熱を促進し、
前記複数の放射体が並ぶ方向を第1方向とし、前記第1方向に交差する方向を第2方向とするとき、
前記複数の放射体は、面に沿って形成された、前記第2方向の長さの異なる線状または面状の導体パターンで構成される、
加熱用電磁波制御体。
前記複数の放射体の前記導体パターンのうち、最長の電気長は、前記電磁波加熱装置により放射される電磁波の波長の1/2以下であり、最短の電気長は、前記電磁波加熱装置により放射される電磁波の波長の1/2以上である、
請求項1又は2に記載の加熱用電磁波制御体。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以降、図を参照して幾つかの具体的な例を挙げて、本発明を実施するための複数の形態を示す。各図中には同一箇所に同一符号を付している。要点の説明又は理解の容易性を考慮して、便宜上実施形態を分けて示すが、異なる実施形態で示した構成の部分的な置換又は組み合わせは可能である。第2の実施形態以降では第1の実施形態と共通の事柄についての記述を省略し、異なる点についてのみ説明する。特に、同様の構成による同様の作用効果については実施形態毎には逐次言及しない。
【0023】
《第1の実施形態》
図1は第1の実施形態に係る加熱用電磁波制御体付き物品201の加熱状態を示す図である。加熱用電磁波制御体付き物品201は電磁波加熱装置(電子レンジ)300の庫内55に入れられる。電磁波加熱装置300は、高圧トランス51、マグネトロン52、アンテナ53、導波管54、庫内55、ターンテーブル56等を備える。
【0024】
マグネトロン52は高圧トランス51からの高圧を電源としてマイクロ波発振し、アンテナ53から放射されるマイクロ波は導波管54を伝搬し、庫内55内に照射される。加熱用電磁波制御体付き物品201はこのマイクロ波を受けて発熱する。なお、マグネトロン52や庫内55などの電磁波加熱装置300の構成要素の配置関係は、
図1に示したものに限定されない。例えば、庫内55に対して、下方もしくは上下両方にマグネトロン52や導波管54があってもよい。
【0025】
図2(A)は加熱用電磁波制御体付き物品201の平面図である。
図2(B)はその斜視図である。
【0026】
加熱用電磁波制御体付き物品201は、例えば樹脂容器でパックされた弁当である。樹脂容器には後述するアンテナ11が形成されている。
【0027】
加熱用電磁波制御体101は、上記電磁波加熱装置300により放射される電磁波を受けて電磁波を再放射する、放射体11A,11B,11C,11Dで構成されるアンテナ11を備える。これら放射体11A,11B,11C,11Dは、樹脂容器の面に沿って形成された、長さの異なる線状の複数の導体パターンで構成される。上記樹脂容器はPP(ポリプロピレン)やPS(ポリスチレン)等の樹脂成型体であり、放射体11A,11B,11C,11Dは、例えばアルミニウム箔のパターンニングにより形成された導体パターンである。
【0028】
放射体11A,11B,11C,11Dは、再放射の電磁波の位相を定める。放射体11A,11B,11C,11Dからそれぞれ再放射される電磁波が干渉することで、電磁波加熱装置内に電磁波の振幅が強め合う領域と弱め合う領域とが形成される。
図2(A)、
図2(B)に示す例では、放射体11A,11B,11C,11Dはこの順に線長が長くなるように、各放射体の線長が定められている。放射体11A,11B,11C,11Dの各電気長は、入力電磁波EMW0の波長の約1/2以上又は約1/2以下であることが好ましい。これにより、入力電磁波EMW0の波長の約1/2より長い電気長の放射体と、入力電磁波EMW0の波長の約1/2より短い放射体とが近接する場合のような、位相反転が生じることがなく、それによる放電が生じにくくなる。
【0029】
また、電気長が長い方が短い方に比べて燃えにくいため、すべての電気長が入力電磁波EMW0の波長の約1/2以上であることがさらに好ましい。また、すべての電気長が入力電磁波EMW0の波長の約1/2以上である場合、すべての電気長が入力電磁波EMW0の1波長以下であることが好ましい。これにより、さらなる位相反転による放電が生じにくくなる。
【0030】
また、すべての放射体11A,11B,11C,11Dの電気長は、入力電磁波EMW0の波長の約1/2より大きいこと又は約1/2より小さいことが好ましい。これにより、製造精度の誤差により発生してしまう寸法誤差に起因する位相反転を低減でき、さらに放電が生じにくくなる。すなわち、入力電磁波EMW0の波長をλで表すとき、最短放射体の電気長≧λ/2の関係よりも、最短放射体の電気長>λ/2の関係であることが好ましい。同様に、最長放射体の電気長≦λ/2の関係よりも、最長放射体の電気長<λ/2の関係であることが好ましい。
【0031】
ここで電気長とは、線長に対して各放射体が設けられている基材の誘電性及び透磁性や導体パターン形状による波長短縮効果を考慮した長さである。例えば入力電磁波EMW0の周波数が2.4GHzであれば、波長の約1/2は62.5mmである。このとき物理的な長さである線長がこれより短い場合であっても、波長短縮効果を考慮すれば電気長が波長の約1/2相当になる場合がある。
【0032】
放射体11A,11B,11C,11Dは、入力電磁波EMW0を受けて、合成された再放射電磁波EMW1を放射する。この再放射電磁波は、後に示すとおり、線長の短い放射体11Aから線長の長い放射体11D方向の成分を有する方向において、振幅を強め合う。
【0033】
加熱用電磁波制御体付き物品201は、樹脂容器内において局部的に特に加熱させる集中加熱部HPを有する。上記再放射電磁波EMW1は集中加熱部HPにおいて、振幅を強め合う。このことにより、集中加熱部HPは集中的に加熱される。つまり、集中加熱部HPは、集中加熱部HP以外の一部に比べて加熱が促進される。第1の実施形態において集中加熱部HPは本発明の「第1領域」に、集中加熱部HP以外の一部は本発明の「第2領域」にそれぞれ相当する。また、「第2領域に比べて第1領域の加熱を促進する」状態の一例は、物品の第1領域と第2領域とが同じ物質であるとき、第1領域の単位時間あたりの温度上昇率が、第2領域の単位時間あたりの温度上昇率より高い状態である。
【0034】
図3は上記放射体11Aの再放射電磁波の放射パターンを示す図である。
図3中の上部は放射体11Aの正面における電界放射パターンであり、
図3中の下部は放射体11Aの平面における電界放射パターンである。放射体11Aは(放射体11B,11C,11Dについても同様に)ダイポールアンテナとして作用するので、
図3に示すとおりドーナツ状放射パターンの強度分布で電磁波を再放射する。
【0035】
図4(A)、
図4(B)は放射体11A,11B,11C,11Dから再放射される電磁波が集中加熱部HPにおいて振幅を強め合う様子を示す図である。特に、
図4(B)は、放射体11A,11B,11C,11Dから再放射される電磁波の拡がりを示す図であり、円は再放射電磁波の同位相の位置を示している。放射体11A,11B,11C,11Dから再放射される電磁波は、線長が長い程、共振に要する時間が掛かる。そのため、線長の長い放射体は、線長の短い放射体に比べて、再放射電磁波の位相が遅れる。その結果、再放射電磁波は、線長の短い放射体11Aから、線長の長い放射体11D方向において振幅を強め合う。
図4(A)に示すとおり、加熱用電磁波制御体付き物品201の物品100の集中加熱部HPが選択的集中的に加熱される。
【0036】
図5は、放射体11A,11B,11C,11Dが電磁波を再放射する状態での、ある位相における電位分布を示す平面図である。放射体11A,11B,11C,11Dはいずれもダイポールアンテナとして作用するので、かつ隣り合う放射素子の再放射の位相差が90度以内で近接しているので、放射体11A,11B,11C,11Dの共振状態における両端の電位の極性は、
図5に示すように揃っているこの状態は、隣接する放射体同士が、同電位部で近接する状態であるので、放射体11A,11B,11C,11Dうち隣接する放射体間の電位差が小さい。そのため、隣接する放射体間で放電(スパーク)が生じることはない。
【0037】
本実施形態によれば、次のような効果を奏する。
【0038】
(a)物品の集中加熱部を選択的に加熱できる。
【0039】
(b)加熱用電磁波制御体を物品に接触させる必要がないので、両者が貼り付くことがない。
【0040】
(c)アンテナの再放射で加熱を促進するため、それ自体が発熱する「発熱体」を近接させることなく、食品の局所加熱が可能となり、安全性が向上する。
【0041】
(d)入力電磁波を遮断することなく、エネルギーを有効活用されるため、加熱効率が高い。
【0042】
(e)各放射体11A,11B,11C,11Dの共振周波数は入力電磁波EMW0の周波数の近傍であるので、再放射電磁波の放射効率が高い(放射体11A,11B,11C,11Dの放射抵抗が高い状態であって、損失が小さい)。そのため、入力電磁波を受けることによる放射体の発熱量は少ない。
【0043】
(f)複数の放射体11A,11B,11C,11Dのうち、隣接する放射体間での放電が防止できる。
【0044】
《第2の実施形態》
第2の実施形態では、物品の所定部の加熱を抑制する加熱用電磁波制御体について示す。
【0045】
図6(A)は第2の実施形態に係る加熱用電磁波制御体付き物品202の平面図である。
図6(B)はその斜視図である。
【0046】
加熱用電磁波制御体付き物品202は、例えば樹脂容器でパックされた弁当である。樹脂容器にはアンテナ11が形成されている。
【0047】
加熱用電磁波制御体102は、
図1に示した電磁波加熱装置300により放射される電磁波を受けて電磁波を再放射する、放射体11A,11B,11C,11Dで構成されるアンテナ11を備える。これら放射体11A,11B,11C,11Dは、樹脂容器の面に沿って形成された、長さの異なる線状の複数の導体パターンで構成される。
【0048】
第1の実施形態とは異なり、第2の実施形態では、放射体11A,11B,11C,11Dから再放射される電磁波が非加熱部に照射されないようにしている。
【0049】
放射体11A,11B,11C,11Dは、再放射の電磁波の位相を定めることによって、当該再放射の電磁波の振幅を強め合う領域を定める。
図6(A)、
図6(B)に示す例では、放射体11A,11B,11C,11Dはこの順に線長が長くなるように、各放射体の線長が定められている。放射体11A,11B,11C,11Dは、入力電磁波EMW0を受けて、再放射電磁波EMW1を放射する。この再放射電磁波は、後に示すとおり、線長の短い放射体11Aから線長の長い放射体11D方向の成分を有する方向において振幅を強め合う。この作用自体は第1の実施形態で示した加熱用電磁波制御体101と同様である。
【0050】
図7は、放射体11A,11B,11C,11Dから再放射される電磁波の指向作用を示す図である。本実施形態の加熱用電磁波制御体付き物品202は、樹脂容器内において、局部的に特に加熱させない非加熱部NHPを有する。この非加熱部NHPは、平面視で放射体11A,11B,11C,11Dの一部と重なり、また、再放射電磁波EMW1は非加熱部NHPにおいて振幅を弱め合う。このことにより、非加熱部NHPの加熱が特別に抑制される。つまり、選択的非加熱の制御が行われる。第2の実施形態において、非加熱部NHPは本発明の第2領域に、非加熱部NHP以外の一部は本発明の第1領域にそれぞれ相当する。
【0051】
前述の通り、第1の実施形態と第2の実施形態との組み合わせは可能である。例えば、加熱用電磁波制御体付き物品202が弁当である場合、ごはんや唐揚げなどを集中加熱部HPに相当する領域に配置し、ポテトサラダなどを非加熱部NHPに相当する領域に配置することで、ごはんや唐揚げなどは電磁波により加熱され、ポテトサラダなどは電磁波による加熱を避けることができる。なお、弁当内は、集中加熱部HPや非加熱部NHP以外にも食品が配置され得る。
【0052】
《第3の実施形態》
第3の実施形態では、第1、第2の実施形態で示した例とは、放射体の形状が異なる加熱用電磁波制御体について示す。
【0053】
図8(A)は第3の実施形態に係る加熱用電磁波制御体付き物品203Aの平面図である。
図8(B)はその斜視図である。
【0054】
加熱用電磁波制御体103Aは、
図1に示した電磁波加熱装置300により放射される電磁波を受けて電磁波を再放射する、放射体11A,11B,11Cで構成されるアンテナ11を備える。これら放射体11A,11B,11Cは、樹脂容器の面に沿って形成された複数の導体パターンで構成される。放射体11A,11B,11Cはいずれも十字形状の導体パターンであり、クロスダイポールアンテナとして作用する。
【0055】
放射体11A,11B,11Cは、電磁波加熱装置300により放射される電磁波を受けて、Y方向に延びる導体部分で、電界がY方向に振幅する偏波成分で励振され、この偏波の再放射電磁波を放射する。また、X方向に延びる導体部分で、電界がX方向に振幅する偏波成分で励振され、この偏波の再放射電磁波を放射する。つまり、偏波面がX方向を向く成分と、偏波面がY方向を向く成分のいずれについても励振され再放射される。
【0056】
図9(A)は第3の実施形態に係る、別の加熱用電磁波制御体付き物品203Bの平面図である。
図9(B)はその斜視図である。加熱用電磁波制御体103Bは、
図1に示した電磁波加熱装置300により放射される電磁波を受けて電磁波を再放射する。この加熱用電磁波制御体103Bの放射体11A,11B,11Cのうち、放射体11Bの向きが
図8(A)、
図8(B)に示した例とは異なる。この例も、放射体11A,11B,11Cはクロスダイポールアンテナとして作用する。
【0057】
図9(A)において、両端矢尻の矢印は、隣接する放射体間の最短距離である。加熱用電磁波制御体付き物品203Bにおいては、
図8(A)、
図8(B)に示した加熱用電磁波制御体付き物品203Aに比べて、隣接する放射体間の最短距離が大きい。そのため、放射体11A,11B,11Cのうち、隣接する放射体間での放電を効果的に抑制できる。
【0058】
なお、
図8(A)、
図8(B)、
図9(A)、
図9(B)に示した例では、放射体11A,11B,11Cのすべてが十字形状であるが、複数の放射体のうち、一つ又は幾つかだけが十字形状の放射体であってもよい。
【0059】
《第4の実施形態》
第4の実施形態では、複数のアンテナを備える加熱用電磁波制御体について示す。
【0060】
図10(A)は第4の実施形態に係る加熱用電磁波制御体付き物品204の平面図である。
図10(B)はその斜視図である。
【0061】
加熱用電磁波制御体104は、
図1に示した電磁波加熱装置300により放射される電磁波を受けて電磁波を再放射する、アンテナ11,12,13を備える。アンテナ11は放射体11A,11B,11C,11Dで構成され、アンテナ12は放射体12A,12B,12C,12Dで構成され、アンテナ13は放射体13A,13B,13C,13Dで構成される。
【0062】
放射体11A,11B,11C,11Dは、樹脂容器の面に沿って形成された複数の導体パターンで構成される。放射体12A,12B,12C,12Dは、樹脂容器の面に沿って形成された複数の導体パターンで構成される。さらに、放射体13A,13B,13C,13Dも、樹脂容器の面に沿って形成された複数の導体パターンで構成される。
【0063】
アンテナ11を構成する放射体11A,11B,11C,11Dは、X方向に線長が順次長くなるように、各放射体の線長が定められているので、再放射電磁波は+X方向成分を有する方向において、振幅を強め合う。アンテナ12を構成する放射体12A,12B,12C,12Dは、−X方向に線長が順次長くなるように、各放射体の線長が定められているので、再放射電磁波は−X方向成分を有する方向において、振幅を強め合う。また、アンテナ13を構成する放射体13A,13B,13C,13Dは、−Y方向に線長が順次長くなるように、各放射体の線長が定められているので、再放射電磁波は−Y方向成分を有する方向において、振幅を強め合う。これらの振幅を強め合う方向が、本発明の「再放射の電磁波の振幅を強めあう方向」に相当する。
【0064】
上記アンテナ11,12,13において振幅を強め合う方向はいずれも集中加熱部HP方向である。このように方向が異なる複数のアンテナで集中加熱部HPが集中的に加熱されるので、広面積の電磁波エネルギーが再放射電磁波に変換されて、集中加熱部HPが高効率で加熱される。
【0065】
《第5の実施形態》
第5の実施形態では、互いに異なる複数の面にアンテナを備える加熱用電磁波制御体について示す。
【0066】
図11は第5の実施形態に係る加熱用電磁波制御体付き物品205の斜視図である。
【0067】
加熱用電磁波制御体105は、
図1に示した電磁波加熱装置300により放射される電磁波を受けて電磁波を再放射する、アンテナ11,12を備える。アンテナ11は放射体11A,11B,11C,11Dで構成され、アンテナ12は放射体12A,12B,12C,12Dで構成される。
【0068】
放射体11A,11B,11C,11Dは、樹脂容器のX−Y面に平行な面に沿って形成された複数の導体パターンで構成される。放射体12A,12B,12C,12Dは、樹脂容器のX−Z面に平行な面に沿って形成された複数の導体パターンで構成される。
【0069】
アンテナ11を構成する放射体11A,11B,11C,11Dは、X方向に線長が順次長くなるように、各放射体の線長が定められているので、入力電磁波EMW01を受けて、+X方向成分かつ−Z方向成分を有する方向において、振幅を強め合う再放射電磁波EMW11を放射する。また、アンテナ12を構成する放射体12A,12B,12C,12Dは、+X方向成分に線長が順次長くなるように、各放射体の線長が定められているので、入力電磁波EMW02を受けて、+X方向成分かつ+Y方向成分を有する方向において、振幅を強め合う再放射電磁波EMW12を放射する。これら再放射電磁波の方向が、本発明の「再放射の電磁波の振幅を強めあう方向」に相当する。
【0070】
本実施形態では、樹脂容器のX−Y面に入射する電磁波だけでなく、樹脂容器のX−Z面に入射する電磁波からの再放射電磁波が放射されて、集中加熱部HPが集中的に加熱されるので、広面積の電磁波エネルギーが再放射電磁波に変換されて、集中加熱部HPが高効率で加熱される。
【0071】
《第6の実施形態》
第6の実施形態では、加熱対象である物品以外の部材にアンテナを備える加熱用電磁波制御体について示す。
【0072】
図12は第6の実施形態に係る加熱用電磁波制御体付き物品206の斜視図である。加熱用電磁波制御体付き物品206は樹脂容器でパックされた弁当であり、この樹脂容器の外面に包装体21が包装されている。この包装体21が加熱用電磁波制御体106を構成している。
【0073】
加熱用電磁波制御体106は、
図1に示した電磁波加熱装置300により放射される電磁波を受けて電磁波を再放射する、放射体11A,11B,11C,11Dで構成されるアンテナ11を備える。これら複数の放射体11A,11B,11C,11Dは、包装体21の面に沿って形成された、長さの異なる線状の複数の導体パターンで構成される。包装体21は例えばPET(ポリエチレンテレフタレート)フィルムであり、放射体11A,11B,11C,11Dはアルミニウム箔のパターンニングにより形成された導体パターンである。
【0074】
放射体11A,11B,11C,11Dで構成されるアンテナ11の作用は第1の実施形態又は第2の実施形態で示したとおりである。
【0075】
本実施形態に示すように、アンテナ11等のアンテナは、加熱対象である物品以外の包装体に形成してもよい。
図12に示した例では、物品の容器を覆う包装体にアンテナ11を形成したが、物品の容器に貼り付けるラベルやシールにアンテナ11等を形成してもよい。
【0076】
《第7の実施形態》
第7の実施形態では、加熱対象の物品に貼付する加熱用電磁波制御体について示す。
【0077】
図13(A)は第7の実施形態に係る加熱用電磁波制御体107Aの平面図であり、
図13(B)はその正面図である。この加熱用電磁波制御体107Aは、絶縁基材22と、その表面に形成された、導体パターンによる放射体11A,11B,11Cとで構成されている。絶縁基材22は例えばPET(ポリエチレンテレフタレート)、PE(ポリイミド)、LCP(液晶ポリマー)等の樹脂フィルムである。放射体11A,11B,11Cは、アルミニウム、銅、銀等の導体パターンである。本実施形態によれば、絶縁基材22の誘電率の波長短縮効果により、放射体11A,11B,11Cの線長が短縮化され、全体に小型化できる。
【0078】
図14(A)は第7の実施形態に係る別の加熱用電磁波制御体107Bの平面図であり、
図14(B)はその正面図である。この加熱用電磁波制御体107Bは、
図13(A)、
図13(B)に示した絶縁基材22の、放射体11A,11B,11C形成面に粘着剤24を設けたものである。この粘着剤24の形成面を例えば物品収納容器の面に貼り付ける。本実施形態によれば、既存の容器や包装体に貼付するだけで、加熱用電磁波制御体付き物品を容易に構成できる。また、加熱用電磁波制御体107Bは包装体よりも小型であってもよいので、低コスト化できる。
【0079】
図15(A)は第7の実施形態に係るさらに別の加熱用電磁波制御体107Cの平面図であり、
図15(B)は、
図15(A)におけるX−X部分の断面図である。この加熱用電磁波制御体107Cは、2つの絶縁基材22,23の層間に放射体11A,11B,11Cを設けたものである。絶縁基材23は絶縁基材22と同様に、例えばPET(ポリエチレンテレフタレート)、PE(ポリイミド)、LCP(液晶ポリマー)等の樹脂フィルムである。本実施形態によれば、放射体11A,11B,11Cが絶縁基材22,23の層間に埋設された構造であるので、放射体11A,11B,11Cの発火や燃焼が効果的に防止される。
【0080】
《第8の実施形態》
第8の実施形態では、これまでに示した実施形態とは、絶縁基材の構成が異なる加熱用電磁波制御体について示す。
【0081】
図16(A)は第8の実施形態に係る加熱用電磁波制御体108の平面図であり、
図16(B)はその比較例としての加熱用電磁波制御体の平面図である。加熱用電磁波制御体108は、絶縁基材22A,22B,22Cと、その表面に形成された、導体パターンによる放射体11A,11B,11Cとで構成されている。放射体11Aは絶縁基材22Aに形成されていて、放射体11Bは絶縁基材22Bに形成されていて、放射体11Cは絶縁基材22Cに形成されている。絶縁基材22Aの誘電率をεa、絶縁基材22Bの誘電率をεb、絶縁基材22Cの誘電率をεcで表すと、εa<εb<εc という関係にある。そのため、絶縁基材22Cの波長短縮効果は最も高く、絶縁基材22Aの波長短縮効果は最も低く、絶縁基材22Bの波長短縮効果は中間的である。
【0082】
図16(A)に示した例では、放射体11A,11B,11Cの線長が同じであるが、上記波長短縮効果によって、実効的な線長は放射体11Cが最も長く、放射体11Aが最も短く、放射体11Bが中間的な長さである。したがって、これまでに示した実施形態の放射体と同様に再放射電磁波の振幅を強め合う領域の位置を制御することが可能となる。
【0083】
図16(B)に示す比較例の加熱用電磁波制御体では、誘電率が均一の絶縁基材22に放射体11A,11B,11Cが形成されている。これら放射体11A,11B,11Cは、隣接放射体で線長が異なる。そのため、
図16(B)中に両端矢尻の矢印で示すように、隣接する放射体の一方の端部が最接近する箇所での電位差が比較的大きい。
【0084】
本実施形態によれば、隣接する箇所での電位差を比較的小さくできるため、隣接する放射体間での放電がより発生しにくくなる。
【0085】
上記波長短縮効果は、単に、絶縁基材の誘電率だけでなく、絶縁基材の厚み、放射体周辺の誘電体材料の配置等によっても変更可能である。また、隣接する放射体を絶縁基材の両面に形成することによっても、絶縁基材の誘電率による波長短縮効果の大きさを定めることができる。
【0086】
《第9の実施形態》
第9の実施形態では、アンテナの放射体のパターンがこれまでに示した例とは異なる加熱用電磁波制御体について示す。
【0087】
図17は第9の実施形態に係る加熱用電磁波制御体付き物品209の平面図である。加熱用電磁波制御体109は、
図1に示した電磁波加熱装置300により放射される電磁波を受けて電磁波を再放射する、この加熱用電磁波制御体109は放射体11A,11B,11C,11D,12A,12B,12C,12D,13A,13B,13C,13Dで構成される。放射体12A,12B,12C,12Dは、放射体11A,11B,11C,11Dと同様であり、放射体13A,13B,13C,13Dは、放射体11A,11B,11C,11Dと同様である。つまり、線長の異なる放射体の配置パターンが繰り返されている。集中加熱部HPは放射体11A,11B,11C,11D,12A,12B,12C,12D,13A,13B,13C,13Dの配列方向に拡がっている。
【0088】
本実施形態によれば、広範囲に亘って再放射電磁波の振幅を強め合う方向が制御されるので、比較的広範囲の集中加熱部HPを効率良く加熱できる。
【0089】
《第10の実施形態》
第10の実施形態では、反射導体を備える加熱用電磁波制御体の例を示す。
【0090】
図18(A)は第10の実施形態に係る加熱用電磁波制御体付き物品210の平面図であり、
図18(B)はその正面図である。
【0091】
加熱用電磁波制御体付き物品210は、例えば樹脂容器でパックされた弁当である。この樹脂容器の上面に加熱用電磁波制御体110が設けられている。加熱用電磁波制御体110は、放射体11A,11B,11C,11Dで構成されるアンテナ11を備える。放射体11A,11B,11C,11Dは絶縁基材22の下面に形成されている。この絶縁基材22の上面には反射導体31が設けられている。反射導体31は、例えば絶縁基材22にラミネートされたアルミニウム箔である。
【0092】
上記反射導体31は、入力電磁波EMW0を受けても、これを透過させず反射する。つまり、入力電磁波EMW0を遮蔽する。本実施形態の加熱用電磁波制御体付き物品210は、樹脂容器内において、局部的に特に加熱させない非加熱部NHPを有する。加熱用電磁波制御体110は非加熱部NHPの上部に設けられている。そのため、本来非加熱部NHPに照射される入力電磁波EMW0は加熱用電磁波制御体110によって遮蔽されて非加熱部NHPの加熱が抑制される。また、樹脂容器の下方から照射される入力電磁波が反射導体31で反射して非加熱部NHPを照射するような条件でも、アンテナ11が、下方から反射導体31に入射する電磁波を受けて、再放射電磁波EMW1の振幅を強め合う方向が制御される。この再放射電磁波EMW1は非加熱部NHPを避ける方向を向くので、やはり非加熱部NHPの加熱が抑制される。
【0093】
《第11の実施形態》
第11の実施形態では、放射体の導体パターンが、これまでに示した例とは異なる加熱用電磁波制御体について示す。
【0094】
図19(A)は第11の実施形態に係る加熱用電磁波制御体付き物品211の平面図であり、
図19(B)はその正面図である。
【0095】
加熱用電磁波制御体付き物品211は、例えば樹脂容器でパックされた弁当である。この樹脂容器の上面に加熱用電磁波制御体111が設けられている。加熱用電磁波制御体111は、放射体11A,11B,11Cで構成されるアンテナ11、及び放射体12A,12B,11Cで構成されるアンテナ12を備える。放射体11A,11B,11C,12A,12Bは絶縁基材22の下面に形成されている。以降に示すように、加熱用電磁波制御体111は、樹脂容器内に集中加熱部HPを集中的に加熱する。
【0096】
放射体11A,11B,11C,12A,12Bはいずれも矩形の導体パターンであり、それぞれパッチアンテナとして作用する。放射体11A,11B,11Cは、この順に−X方向に配列されている。また、放射体12A,12B,11Cは、この順に+Y方向に配列されている。
【0097】
放射体11A,11B,11Cは、この順で一辺の寸法が長くなるように、各放射体の線長が定められている。同様に、放射体12A,12B,11Cは、この順で一辺の寸法が長くなるように、各放射体の線長が定められている。放射体11A,11B,11Cの各辺の電気長は、入力電磁波EMW0の波長の約1/2以上又は約1/2以下であることが好ましい。同様に、放射体12A,12B,11Cの各辺の電気長は、入力電磁波EMW0の波長の約1/2以上又は約1/2以下であることが好ましい。これにより、入力電磁波EMW0の波長の約1/2より長い電気長の放射体と、入力電磁波EMW0の波長の約1/2より短い放射体とが近接する場合のような、位相反転が生じることがなく、それによる放電が生じにくくなる。
【0098】
また、各辺の電気長が長い方が短い方に比べて燃えにくいため、すべての辺の電気長が入力電磁波EMW0の波長の約1/2以上であることがさらに好ましい。また、すべての辺の電気長が入力電磁波EMW0の波長の約1/2以上である場合、すべての辺の電気長が入力電磁波EMW0の1波長以下であることが好ましい。これにより、さらなる位相反転による放電が生じにくくなる。
【0099】
また、すべての放射体11A,11B,11C,12A,12Bの各辺の電気長は、入力電磁波EMW0の波長の約1/2より大きいこと又は約1/2より小さいことが好ましい。これにより、製造精度の誤差により発生してしまう寸法誤差に起因する位相反転を低減でき、さらに放電が生じにくくなる。
【0100】
上記アンテナ11によって、X−Z面内での再放射電磁波の振幅の強め合う方向が定められる。同様に、上記アンテナ12によって、Y−Z面内での再放射電磁波の振幅の強め合う方向が定められる。したがって、この例では加熱用電磁波制御体111は、その真下より+Y方向成分及び−X方向成分を有する方向に傾斜した方向において振幅が強め合って、集中加熱部HPが集中的に加熱される。
【0101】
本実施形態で示したように、放射体はダイポールアンテナに限らず、入力電磁波を受けて励振され、電磁波を再放射する導体パターンであれば、それを用いることができる。
【0102】
《第12の実施形態》
第12の実施形態では、入力電磁波の到来方向、アンテナ及び集中加熱部の位置関係が、これまでに示した例とは異なる、加熱用電磁波制御体付き物品の例を示す。
【0103】
図20は第12の実施形態に係る加熱用電磁波制御体付き物品212の正面図である。加熱用電磁波制御体付き物品212は、例えば樹脂容器でパックされた弁当である。この樹脂容器の下面に加熱用電磁波制御体112が設けられている。加熱用電磁波制御体112は、放射体11A,11B,11C,11Dで構成されるアンテナ11を備える。
【0104】
アンテナ11から再放射される電磁波EMW1は、入力電磁波の到来方向(つまり戻る方向)へも放射されるので、加熱用電磁波制御体112は、集中加熱部HPを集中的に加熱する。
【0105】
このように、加熱用電磁波制御体は、物品を収める容器の面のうち、入力電磁波EMW0の到来方向から遠い側に設けてもよい。
【0106】
最後に、上述の実施形態の説明は、すべての点で例示であって、制限的なものではない。当業者にとって変形及び変更が適宜可能である。本発明の範囲は、上述の実施形態ではなく、特許請求の範囲によって示される。さらに、本発明の範囲には、特許請求の範囲内と均等の範囲内での実施形態からの変更が含まれる。
【0107】
例えば、加熱用電磁波制御体は容器の内面に設けられていてもよい。また、加熱用電磁波制御体は物品を収める容器に設けることに限らず、加熱対象の物品に直接的に配置してもよい。
【0108】
また、例えば、放射体としての導体パターンは金属箔をパターンニングすること以外に導電性ペーストの印刷により形成してもよい。
【0109】
また、加熱用電磁波制御体は容器や包装体に設けることに限らず、加熱対象の物品に被せるカバー等に設けることもできる。
加熱用電磁波制御体(101)は、電磁波加熱装置で加熱される物品の近傍に配置されて、物品へ照射される電磁波を制御する。加熱用電磁波制御体(101)は、電磁波加熱装置により放射される電磁波を受けて、電磁波を再放射する複数の放射体(11A,11B,11C,11D)で構成されるアンテナ(11)を備える。複数の放射体(11A,11B,11C,11D)は、再放射の電磁波の位相を定めることで、当該再放射の電磁波の振幅を強め合う方向を定める。このように、加熱用電磁波を受けて、加熱対象物品に対し照射される電磁波を制御することで、物品の選択的加熱又は選択的非加熱を行う加熱用電磁波制御体を構成する。